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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-18
(45)【発行日】2024-11-26
(54)【発明の名称】運転支援装置
(51)【国際特許分類】
   B60W 50/14 20200101AFI20241119BHJP
   G08G 1/00 20060101ALI20241119BHJP
   B60K 35/26 20240101ALI20241119BHJP
【FI】
B60W50/14
G08G1/00 D
B60K35/26
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020162296
(22)【出願日】2020-09-28
(65)【公開番号】P2022054982
(43)【公開日】2022-04-07
【審査請求日】2023-08-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110000419
【氏名又は名称】弁理士法人太田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】澄川 瑠一
(72)【発明者】
【氏名】鳥居 武史
【審査官】稲本 遥
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-191230(JP,A)
【文献】特開2017-062690(JP,A)
【文献】米国特許第10373257(US,B1)
【文献】特開2006-347296(JP,A)
【文献】特開平11-078729(JP,A)
【文献】国際公開第2013/099245(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0322715(US,A1)
【文献】国際公開第2013/099246(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 10/00-10/30
30/00-60/00
G08G 1/00-99/00
B60K 35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の走行中に、車体の挙動を示すデータを取得するとともに、前記挙動を示すデータから得られる前記挙動の安定度を示す情報に基づいて所定の音を出力する制御部を備え、
前記制御部は、所定の区間を走行するごとに、前記所定の区間における前記挙動の安定度が第1範囲内である場合に音声を含まない報酬音を出力する一方、前記所定の区間における前記挙動の安定度が前記第1範囲よりも低い第2範囲内である場合に前記報酬音を出力しない音出力制御処理を実行する、運転支援装置。
【請求項2】
前記報酬音を第1の報酬音とした場合、
前記制御部は、前記所定の区間における前記挙動の安定度が前記第1範囲より低くかつ前記第2範囲より高い第3範囲内である場合に前記第1の報酬音の出力回数、前記第1の報酬音の音程、前記第1の報酬音の音量、前記第1の報酬音の種類、前記第1の報酬音を構成する音の数、又は前記第1の報酬音のピッチのうちの少なくともいずれかを変更した第2の報酬音を出力する、請求項1に記載の運転支援装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記所定の区間における前記挙動の大きさを示す指標値が所定の閾値以下である場合に前記所定の区間における前記挙動の安定度が前記第1範囲内であると判定する、請求項1又は2に記載の運転支援装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記車両のドライバの運転技能に関連する情報に基づいて、前記ドライバの運転技能が高いほど前記所定の閾値が小さい値となるように前記所定の閾値を設定する、請求項3に記載の運転支援装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記所定の区間における前記車体の挙動の大きさを示す指標値が所定の閾値を超えた回数が所定値より小さい場合に前記所定の区間における前記挙動の安定度が前記第1範囲内であると判定する、請求項1又は2に記載の運転支援装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記車両のドライバの運転技能に関連する情報に基づいて、前記ドライバの運転技能が高いほど前記所定値が小さくなるように前記所定値を設定する、請求項5に記載の運転支援装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記挙動の安定度が前記第1範囲内である前記所定の区間が所定回数連続した場合に、前記報酬音とは異なる効果音を出力する、請求項1に記載の運転支援装置。
【請求項8】
前記制御部は、前記挙動の安定度が前記第1範囲内である前記所定の区間が所定回数連続した場合に、前記第1の報酬音及び前記第2の報酬音とは異なる効果音を出力する、請求項2に記載の運転支援装置。
【請求項9】
前記制御部は、前記車両のドライバの運転技能に関連する情報に基づいて、前記挙動の安定度を示す情報の算出に使用するデータの種類又は種類の数を設定する、請求項1~8のいずれか1項に記載の運転支援装置。
【請求項10】
前記報酬音は、メダル獲得音、拍手音、花火音、あるいは音の高さ又は音色が異なる複数の音からなる和音である、請求項1~9のいずれか1項に記載の運転支援装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の運転操作の技術の向上を図る運転支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の運転操作の技術レベルは、ドライバによってさまざまである。運転操作の技術レベルは、乗り心地や交通安全に影響する。これに対して、車両の運転操作を判定し、ドライバに対して運転操作の判定結果を通知したり、アドバイスを提示したりする装置が種々提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、運転操作状態を精度よく判定するとともに、ドライバが、今回の運転における運転操作状態の総合評価についての情報を知ることができるようにし、次回の運転における運転操作の技術向上を図れるようにした運転支援装置が提案されている。具体的に、特許文献1には、加速度の変化量に関連する第1関連値を算出する変化量算出部と、躍度に関連する第2関連値を算出する躍度算出部と、第1及び第2関連値から、振動モデルを用いてあらかじめ設定された判定基準にしたがって、しなやかな運転状態であるか、ゆれる運転状態であるかを判定する状態判定部と、今回の運転における状態判定部による判定結果についての点数を算出し、この点数を今回の運転における状態判定部による判定回数で除することにより第1評価指数を算出し、この第1評価指数に基づいて、今回の運転における運転操作状態の総合評価点を算出する総合判定部とを設けた運転支援装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2012-198344号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の運転支援装置は、今回の運転中において行われた一連の運転操作を評価するものであるため、ドライバは、具体的にどの時点での運転操作について評価された評価であるかを理解することが困難である。これに対して、運転中のドライバに対して、評価結果や運転操作に対するアドバイスを音声テキストや画像表示によって提示した場合、評価結果やアドバイスの内容を確認する際に車両の周囲に対する注意力が低下するおそれがある。
【0006】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、運転中のドライバに対して、ドライバの運転操作の評価に関する情報をリアルタイムに、かつ、注意力の低下を抑制可能な方法で通知可能な運転支援装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、車両の走行中に、車体の挙動を示すデータを取得するとともに、挙動を示すデータから得られる挙動の安定度を示す情報に基づいて所定の音を出力する制御部を備え、制御部は、所定の区間を走行するごとに、所定の区間における挙動の安定度に応じた報酬音を出力する運転支援装置が提供される。
【0008】
上記の運転支援装置を構成するにあたり、制御部は、所定の区間における挙動の安定度を示す情報に基づいて、報酬音の出力回数、報酬音の音程、報酬音の音量、報酬音の種類、報酬音を構成する音の数、又は報酬音のピッチのうちの少なくともいずれかを制御してもよい。
【0009】
上記の運転支援装置を構成するにあたり、制御部は、所定の区間における挙動の大きさを示す値を所定の閾値と比較することにより、挙動の安定度を示す情報を求めてもよい。
【0010】
上記の運転支援装置を構成するにあたり、制御部は、ドライバの運転技能に関連する情報に基づいて、所定の閾値を設定してもよい。
【0011】
上記の運転支援装置を構成するにあたり、制御部は、ドライバの運転技能に関連する情報に基づいて、挙動の安定度を示す情報の算出に使用するデータの種類又は種類の数を設定してもよい。
【発明の効果】
【0012】
以上説明したように本発明によれば、運転中のドライバに対して、ドライバの運転操作の評価に関する情報をリアルタイムに、かつ、注意力の低下を抑制可能な方法で通知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態に係る運転支援装置の構成例を示すブロック図である。
図2】同実施形態に係る運転支援装置による条件設定の一例を示す説明図である。
図3】同実施形態に係る運転支援装置によるデータ処理を示す説明図である。
図4】同実施形態に係る運転支援装置による音変換処理を示す説明図である。
図5】報酬音の設定例を示す説明図である。
図6】閾値を変更する例を示す説明図である。
図7】同実施形態に係る運転支援装置による制御処理のフローチャートである。
図8】同実施形態に係る運転支援装置による条件設定処理のフローチャートである。
図9】同実施形態に係る運転支援装置による音出力制御処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0015】
<1.運転支援装置の概略>
はじめに、本実施形態に係る運転支援装置の概略を簡単に説明する。運転支援装置は、車両の走行中に、車体の挙動を示すデータを取得するとともに取得したデータから得られる挙動の安定度の情報に基づいて所定の音を出力する。車体の挙動には、主にドライバのステアリング操作状態、アクセル操作状態及びブレーキ操作状態が反映されるため、ドライバは、自身の運転操作状態の評価を、聴覚刺激を通じてリアルタイムに、かつ、直感的に認識することができる。
【0016】
本実施形態に係る運転支援装置は、所定の区間を走行するごとに、所定の区間における挙動の安定度に応じた報酬音を出力する。これにより、運転支援装置は、ドライバに対して、所定の区間を走行中の運転操作状態の評価を、聴覚刺激を通じてリアルタイムに、かつ、直感的に認識させる。これにより、運転支援装置は、当該区間の走行時に車体の挙動が安定していた場合には、運転操作状態の評価を報酬音としてドライバに提示し、良好な運転操作状態を維持させるモチベーションの向上を図る。
【0017】
以下、本発明の一実施形態に係る運転支援装置について具体的に説明する。
【0018】
<2.運転支援装置の構成>
まず、本実施形態に係る運転支援装置の構成を説明する。図1は、本実施形態に係る運転支援装置1の構成の一例を示すブロック図である。
【0019】
運転支援装置1は、情報処理装置50を備えている。情報処理装置50は、例えば、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサや電気回路、RAM(Random Access Memory)及びROM(Read Only Memory)等の記憶素子を備えて構成される。情報処理装置50の一部又は全部は、ファームウェア等の更新可能なもので構成されてもよく、また、CPU等からの指令によって実行されるプログラムモジュール等であってもよい。
【0020】
また、運転支援装置1は、車体挙動計測装置11、車両位置情報検出装置17、入力部19及び音出力装置31を備えている。これらの車体挙動計測装置11、車両位置情報検出装置17、入力部19及び音出力装置31は、直接的に、又は、CAN(Controller Area Network)等の通信バスを介して、情報処理装置50と通信可能に接続されている。
【0021】
(2-1.車体挙動計測装置)
車体挙動計測装置11は、車両の挙動を示すデータを計測する装置である。車体挙動計測装置11は、例えば車速センサ、加速度センサ及び角速度センサのうちの少なくとも一つを含む。車速センサは、例えば車両の駆動軸の回転速度を検出する。加速度センサは、少なくとも車体前後方向の加速度である前後加速度及び車幅方向の加速度である横加速度を検出する。加速度センサは、さらに、車体高さ方向の加速度である上下加速度を検出してもよい。角速度センサは、車体前後方向の軸回り回転角(ロール角)、車幅方向の軸回りの回転角(ピッチ角)及び車体高さ方向の軸回りの回転角(ヨー角)それぞれの変化速度を検出する。角速度センサは、ヨー角の変化速度を検出するヨーレートセンサであってもよい。
【0022】
車体挙動計測装置11により計測されるデータは、ドライバによるステアリング操作、アクセル操作、ブレーキ操作により変化し得るデータであり、車体の挙動を示すデータとして情報処理装置50に入力される。情報処理装置50は、車体挙動計測装置11により計測されたデータを示す情報を取得可能に構成される。車体挙動計測装置11は、車速センサ、加速度センサ及び角速度センサ以外に、車両の挙動が反映されるデータを計測可能なセンサを含んでいてもよい。
【0023】
(2-2.車両位置情報検出装置)
車両位置情報検出装置17は、GPS(Global Positioning System)に代表されるGNSS(Global Navigation Satellite System)から送信される測位信号を受信し、車両の位置を計測する。車両位置情報検出装置17は、GNSSの代わりに、あるいは、GNSSと併せて、準天頂衛星システム等の他のシステムから送信される測位信号を受信し、車両の位置を計測してもよい。車両位置情報検出装置17により検出される車両の位置の情報は、情報処理装置50に入力される。情報処理装置50は、車両位置情報検出装置17により検出された位置情報を取得可能に構成される。
【0024】
(2-4.入力部)
入力部19は、ユーザの操作入力を受け付け、情報処理装置50へ送信する。入力部19は、例えばタッチパネル式のディスプレイであってもよく、ダイヤル式の操作機器であってもよい。あるいは、入力部19は、乗員の音声により入力を受け付ける音声認識装置であってもよく、ジェスチャにより入力を受け付ける画像認識装置であってもよい。
【0025】
本実施形態において、入力部19は、ドライバの属性に関する情報の入力を受け付ける。ドライバの属性に関する情報は、ドライバの運転技能に関連する情報であり、例えばドライバの年齢、免許取得後経過年数、運転頻度、直前に運転した後の経過年数等のうちの少なくともいずれかの情報を含む。さらに、ドライバの運転技能を推定可能な他の情報が含まれていてもよい。これらの情報は、情報処理装置50から提示される質問に対してドライバ等が回答するアンケートの形式で入力されてもよく、あらかじめこれらの情報を判定あるいは蓄積したデータが入力されてもよい。
【0026】
また、入力部19は、出力音として希望する音の情報の入力を受け付けてもよい。例えば、情報処理装置90から提示される音色あるいは音の種類の中から、ドライバ等が希望する音を選択できるように構成されていてもよい。具体的には、出力する楽器音や効果音の種類が選択可能になっていてもよい。選択される音のデータは、あらかじめ情報処理装置50の記憶部55に記憶されるが、音のデータは、外部のサーバ等と通信することによって更新あるいは追加可能になっていてもよい。
【0027】
(2-4.音出力装置)
音出力装置31は、ドライバに認識可能な音を出力する装置である。音出力装置31は、車両に備えられたスピーカであってもよく、運転支援装置1専用のスピーカであってもよい。音出力装置31は、情報処理装置50により出力の制御が行われ、聴覚刺激を通じてドライバに対して運転操作状態の評価を認識させる。
【0028】
(2-5.情報処理装置)
情報処理装置50は、通信部51、制御部53及び記憶部55を備えている。制御部53は、取得部61、データ処理部63、音変換処理部65、出力制御部67及び条件設定部69を備える。制御部53は、CPU等のプロセッサであり、取得部61、データ処理部63、音変換処理部65、出力制御部67及び条件設定部69の各部は、プロセッサによるプログラムの実行により実現される機能であってもよい。
【0029】
(2-5-1.記憶部)
記憶部55は、RAM又はROM等の一つ又は複数の記憶素子を含んで構成される。記憶部55は、制御部53により実行されるプログラムやプログラムの実行に用いられる種々のパラメータの他、取得されたデータ、演算結果のデータ等を記憶する。
【0030】
(2-5-2.通信部)
通信部51は、車体挙動計測装置11、車両位置情報検出装置17、入力部19及び音出力装置31と、データや信号の送受信をするためのインタフェースである。
【0031】
(2-5-3.取得部)
制御部53の取得部61は、通信部51を介して、車体挙動計測装置11、車両位置情報検出装置17及び入力部19から出力される情報を取得する。取得部61により取得される情報は、車体挙動計測装置11から出力される車体の挙動を示すデータを含む。取得部61は、所定の演算周期で情報を取得し、取得したデータを記憶部55に記憶する。
【0032】
(2-5-4.データ処理部)
制御部53のデータ処理部63は、取得部61により取得された車体の挙動を示すデータに対して所定のデータ処理を実行する。具体的に、データ処理部63は、取得された車速、加速度(前後加速度、横加速度、上下加速度)又は角速度(ヨー角、ロール角、ピッチ角の角速度)の計測データに対して、平滑化処理、絶対値変換処理又は微分処理のうちの少なくともいずれかの処理を実行し、車体の挙動の大きさを示す値である指標値を算出する。
【0033】
例えばデータ処理部63は、車速、加速度又は角速度の計測データに対して平滑化処理、絶対値変換処理及び微分処理を実行して、加速度の絶対値、加速度の絶対値の躍度(加加速度:ジャーク)又は角速度の絶対値の躍度(角加速度)を算出する。算出された加速度、角速度、加加速度又は角加速度の絶対値は、車体の挙動の大きさを示す指標値として用いられる。中でも、加加速度又は角加速度の絶対値を指標値とすることにより、走行路の軌道や他車両の加減速の影響による車速、加速度又は角速度の変化の影響が低減され、ドライバの運転操作状態に起因する車体の挙動の変化をより精度よく評価することができる。
【0034】
また、データ処理部63は、加速度、角速度、加加速度又は角加速度の絶対値のうちの複数のデータを用いて一つの指標値を算出してもよい。この場合、データ処理部63は、使用する個々のデータの値を同一の指標(例えば、0~100の値)に置き換え、使用するすべてのデータの値を同一の指標に置換した値の平均値を指標値としてもよい。
【0035】
本実施形態において、データ処理部63は、後述する条件設定部69により車両の運転条件に基づいて設定される数(種類)のデータを使用してそれぞれ又は一つの指標値を算出する。
【0036】
なお、算出される加速度及び加加速度は、前後加速度、横加速度、上下加速度のうちの少なくとも一つについてそれぞれ個別に算出される。また、算出される角速度及び角加速度は、ヨー角、ロール角、ピッチ角のうちの少なくとも一つのそれぞれについて個別に算出される。また、データ処理部63により算出される指標値は、車体の挙動が大きいほど大きい値となる一方、挙動が小さいほど小さい値となる。
【0037】
(2-5-5.音変換処理部)
制御部53の音変換処理部65は、所定の区間を走行するごとに、当該区間に計測された計測データからデータ処理部63によって算出された指標値に基づいて車体の挙動の安定度を示す情報を算出し、算出した挙動の安定度を示す情報を、出力させる音の情報に変換する。
【0038】
評価値を算出する単位となる所定の区間は、例えば、所定の走行距離ごとに区切られる区間であってもよく、所定の走行時間により区切られる区間であってもよく、あるいは、信号機が設けられた交差点ごとに区切られる区間であってもよい。かかる区間ごとに挙動の安定度を評価して、挙動の安定度に応じた報酬音を出力することにより、所定の間隔で、挙動の安定度が高いほどドライバに達成感を感じさせ得る報酬音が出力され、車両の運転操作状態を、車体の挙動がより安定化する運転操作状態へと誘導することができる。
【0039】
また、所定の区間は、あらかじめ設定された特定の区間であってもよい。例えば、ドライバのステアリング操作状態の安定度を評価するには、所定距離以上の直線が続く直進区間、あるいは、一定の曲率のカーブが続く旋回区間を所定の区間とすることが好ましい。また、ドライバのアクセル操作状態又はブレーキ操作状態を評価するには、所定距離以上の直線が続く直進区間を所定の区間とすることが好ましい。これらの特定の区間を走行したか否かは、車両位置情報検出装置17により検出される車両の位置情報と、ナビゲーションシステムの地図データとに基づいて判定することができる。
【0040】
例えば、音変換処理部65は、所定の区間を走行するごとに、当該区間における指標値の最大値を、条件設定部69により設定される所定の閾値と比較することによって、車体の挙動の安定度を評価し、挙動の安定度に応じた出力音を設定する。これにより、当該区間を走行中に、最も挙動が不安定になったときの指標値に基づいて挙動の安定度が評価される。この場合、加速度、角速度、加加速度又は角加速度の絶対値である指標値の最大値が小さいほど、挙動の安定度が高いと評価される。
【0041】
車体の挙動の安定度を評価するための閾値は、ドライバの運転技能のレベルに基づいて設定される可変値であってもよい。閾値が小さいほど、挙動の安定度を高めるために車体の挙動をより小さくする必要があり、車体の挙動をさらに安定化させるように誘導することができる。また、閾値は、一つであってもよいし複数であってもよい。閾値の数が一つの場合、指標値の最大値が閾値以下のときに挙動の安定度が高いと判定される一方、指標値の最大値が閾値を超えたときに挙動の安定度が低いと判定される。また、閾値の数が二つの場合、指標値の最大値が、値が小さい方の第1の閾値以下のときに挙動の安定度が高いと判定され、指標値の最大値が、第1の閾値を超えかつ値が大きい方の第2の閾値以下のときに挙動の安定度が中程度と判定され、指標値の最大値が、第2の閾値を超えるときに挙動の安定度が低いと判定される。
【0042】
また、音変換処理部65は、所定の区間を走行するごとに、当該区間における指標値を、条件設定部69により設定される所定の閾値と比較し、指標値が閾値を超えた回数を車体の挙動の安定度を示す評価値として、評価値に応じた出力音を設定してもよい。指標値が閾値を超えた回数を評価値とすることにより、当該区間を走行中に、一度だけ指標値が閾値を超えたときの指標値によって車体の挙動の安定度が評価されることが避けられ、当該区間全体にわたる挙動の安定度を評価することができる。
【0043】
この場合、加速度、角速度、加加速度又は角加速度の絶対値である指標値が閾値を超える回数を示す評価値が小さいほど、挙動の安定度が高いと評価される。例えば、指標値が閾値を超えた回数が0のときに挙動の安定度が高いと判定され、指標値が閾値を超えた回数が1~3回のときに挙動の安定度が中程度と判定され、指標値が閾値を超えた回数が4回以上のときに挙動の安定度が低いと判定される。閾値は、ドライバの運転技能のレベルに基づいて設定される可変値であってもよい。閾値が小さいほど、挙動の安定度を高めるために車体の挙動をより小さくする必要があり、車体の挙動をさらに安定化させるように誘導することができる。また、挙動の安定度を評価するために用いられる回数についても、ドライバの運転技能のレベルに基づいて設定されてもよい。
【0044】
なお、車体の挙動の安定度を評価するための閾値をドライバの運転技能のレベルに基づいて設定する方法は、条件設定部69の項目で詳しく説明する。
【0045】
出力される報酬音は、車体の挙動の安定度が高いほどドライバに達成感を感じさせることが可能な音であり、算出される挙動の安定度あるいは評価値によって変化する。報酬音は、例えばメダル獲得音、拍手音、花火音、あるいは音の高さ又は音色が異なる複数の音からなる和音のように、ドライバが心地よさを感じる音とすることができる。
【0046】
例えば報酬音がメダル獲得音である場合、車体の挙動の安定度が高いほどメダルの獲得数が増えるように設定される。なお、メダル獲得音は、例えば金属製の硬貨を固い床に落としたときの衝撃音とすることができる。また、報酬音が拍手音である場合、車体の挙動の安定度が高いほど拍手する人数が増えるように設定される。また、報酬音が花火音である場合、車体の挙動の安定度が高いほど、花火の数が増えるように設定される。また、報酬音が和音である場合、車体の挙動の安定度が高いほど音の数が増えるように設定される。
【0047】
ただし、設定される報酬音は、これらの例に限られない。例えば、メダル獲得数、拍手する人数、花火の数、和音を構成する音の数を変更することに代えて、あるいは、これらを変更することと併せて、音量又は音程を変更してもよい。この場合、車体の挙動の安定度が高いほど、音量を大きく又は音程を低く設定することにより、ドライバに対して、より達成感を感じさせることができる。また、報酬音がメダルの獲得音、拍手音又は花火音である場合、出力される音のピッチを変更してもよい。この場合、車体の挙動の安定度が高いほど、ピッチが速くなるように設定することにより、ドライバに対して、より達成感を感じさせることができる。さらに、報酬音が和音である場合、車体の挙動の安定度が高い場合には和音に設定する一方、車体の挙動の安定度が低い場合には、和音を構成する音のうちの少なくとも一つを半音変更し、不協和音に設定してもよい。
【0048】
また、加速度、角速度、加加速度又は角加速度のうちの複数のデータを用いて挙動の安定度を評価する場合、音変換処理部65は、複数のデータそれぞれの指標値に基づいて、それぞれ挙動の安定度を評価してもよい。この場合、音変換処理部65は、それぞれの指標値を閾値と比較し、各指標値についての評価の結果を合わせて、上記のメダルの獲得数、拍手する人数、花火の数、又は音の数を設定してもよい。あるいは、複数のデータそれぞれに閾値及び報酬音の種類が設定され、音変換処理部65は、それぞれのデータの指標値と閾値との関係に基づいてデータごとの出力音を設定し、一つの報酬音として出力してもよい。
【0049】
また、車体の前後方向の挙動の評価と、車体の左右方向の挙動の評価とを、それぞれ独立した報酬音としてもよい。これにより、ドライバに対して、車体の前後方向又は左右方向を区別して、自身の運転操作による挙動の安定度を認識させることができる。
【0050】
このように、音変換処理部65は、報酬音の音色又は種類を、ドライバ等のユーザにより選択された音色又は種類に設定するとともに、データ処理部63で算出された指標値に基づいて車体の挙動の安定度を示す情報を算出し、算出した挙動の安定度に対応する報酬音を設定する。これにより、データ処理部63で算出された指標値が、出力させる音の情報に変換される。
【0051】
また、音変換処理部65は、所定の区間ごとの車体の挙動の安定度が高い状態が複数の区間にわたって継続した場合に、通常の報酬音とは異なる効果音を発生させてもよい。これにより、ドライバに対して、車体の挙動が安定した運転操作状態を継続させるモチベーションを刺激することができる。例えば、音変換処理部65は、データ処理部63により算出された指標値が閾値を超えなかった区間の継続回数があらかじめ設定された回数に到達したときに、報酬音に代えて、あるいは報酬音とともに効果音を発生させる。効果音は、ドライバに達成感を感じさせる音であり、例えばファンファーレ等、報酬音よりもさらに達成感を感じさせることが可能な音であることが好ましい。
【0052】
例えば一つの閾値を用いて挙動の安定度あるいは評価値を算出する場合、それぞれの区間の計測データから算出された指標値が当該閾値を超えない区間の継続回数があらかじめ設定された回数に到達するごとに所定の効果音を発生させる。また、複数の閾値を用いて挙動の安定度あるいは評価値を算出する場合、それぞれの区間の計測データから算出された指標値が、複数の閾値のうちの最大の閾値を超えない区間の継続回数があらかじめ設定された回数に到達するごとに所定の効果音を発生させる。あるいは、複数の閾値のそれぞれに異なる効果音を設定しておき、指標値がそれぞれの閾値を超えない区間の継続回数があらかじめ設定された回数に到達するごとに所定の効果音を発生させてもよい。
【0053】
(2-5-6.出力制御部)
制御部53の出力制御部67は、音変換処理部65により算出された出力音の情報に基づいて音出力装置31の駆動を制御し、報酬音を発生させる。本実施形態において、出力制御部67は、所定の区間を走行するごとに、音変換処理部65により設定された音色又は種類の報酬音を、挙動の安定度に応じた態様で出力させる。
【0054】
(2-5-7.条件設定部)
制御部53の条件設定部69は、音変換処理部65による音変換処理の条件を設定する。本実施形態において、条件設定部69は、車体の挙動の安定度を評価するための閾値を、入力部19から入力されたドライバの属性の情報に基づいて設定する。
【0055】
具体的に、条件設定部69は、ドライバの属性の情報として取得されたドライバの運転技能に関連する情報に基づき、推定される運転技能が高いほど閾値を小さい値に設定し、推定される運転技能が低いほど閾値を大きい値に設定する。これにより、例えば運転技能が高く車体の挙動が安定しているドライバの場合、閾値が下げられ、同じ報酬音を発生させるには、運転技能が低いドライバに比べて車体の挙動の安定度をより高くする必要がある。したがって、運転技能が高いドライバに対して、さらに車体の挙動を安定化させるように誘導することができる。一方、運転技能が低いドライバに対しては、ドライバの運転技能に応じた適切なレベルの挙動の安定度へと誘導することができる。
【0056】
ドライバの運転技能に関連するドライバの属性の情報としては、入力部19を介して取得されたドライバの年齢、免許取得後経過年数、運転頻度、直前に運転した後の経過年数等のうちの少なくともいずれかの情報が用いられる。つまり、ドライバの年齢が高齢に属する場合、運転技能が低下している可能性が高いために閾値を大きくする。また、免許取得後経過年数が長いほど、運転技能が高いと推定されるため閾値を小さくする。また、運転頻度が多いほど、運転技能が高いと推定されるため閾値を小さくする。また、最後に運転してからの経過年数(ブランク年数)が長いほど、運転技能が低下している可能性が高いために閾値を大きくする。
【0057】
また、条件設定部69は、入力部19を介して取得された情報と併せて、同一ドライバの過去の運転時における挙動の安定度のデータに基づいて閾値を調整してもよい。例えば、条件設定部69は、同一ドライバの過去の運転時において、データ処理部63により算出された指標値が閾値を超えた回数又は頻度の情報を用いてもよい。この場合、指標値が閾値を超えた回数が少ないほど又は頻度が少ないほど運転技能が高いと推定されるため閾値を小さくする。あるいは、条件設定部69は、同一ドライバの過去の運転時において、音変換処理部65により求められた挙動の安定度の評価の情報を用いてもよい。この場合、挙動の安定度の評価が高いほど運転技能が高いと推定されるため閾値を小さくする。
【0058】
また、条件設定部69は、ドライバの運転技能を推定し得るドライバの属性の情報に基づいて閾値の数を変更してもよい。この場合、推定されるドライバの運転技能が高いほど、閾値の数を増やす。閾値の数が多いほど、ドライバに対して、車体の挙動の安定度をより詳細に提示することができる。
【0059】
さらに、本実施形態では、条件設定部69は、上記のドライバの属性の情報に基づいて、データ処理部63によるデータ処理の条件を設定してもよい。具体的に、本実施形態において、条件設定部69は、上記のドライバの属性の情報に基づいて、データ処理部63において車体の挙動の大きさを示す指標値を算出する際に用いるデータの種類の数を設定する。
【0060】
例えば、条件設定部69は、ドライバの属性の情報から推定されるドライバの運転技能が高いほど、指標値の算出に用いるデータの種類を増やし、推定されるドライバの運転技能が低いほど、指標値の算出に用いるデータの種類を減らす。これにより、例えば運転技能が高く車体の挙動が安定しているドライバの場合、より多くの種類のデータに基づいて運転操作状態が評価され、さらに車体の挙動を安定化させるように誘導することができる。一方、運転技能が低いドライバに対しては、相対的に少ない数のデータに基づいて運転操作状態が評価されるため、ドライバの運転技能に応じた適切なレベルの挙動の安定度へと誘導することができる。
【0061】
なお、指標値の算出に用いるデータの種類を増減する場合においても、使用するデータの種類の数にかかわらず、横加加速度又はヨー角の角加速度のデータを優先的に用いることにより、ドライバのステアリング操作状態を評価しやすくなる。また、前後加加速度又はロール角の角加速度のデータを優先的に用いることにより、ドライバのアクセル操作及びブレーキ操作の状態を評価しやすくなる。
【0062】
図2は、ドライバの属性の情報に基づく閾値の設定方法及び指標値の算出に用いるデータの種類の増減方法の例を示す説明図である。
【0063】
図2に示すように、ドライバの年齢があらかじめ設定された年齢を超える高齢に属する場合に、閾値が所定数大きくされるとともに、指標値の算出に用いるデータの種類が減らされる。また、免許取得後経過年数が長いほど閾値が所定数小さくされるとともに、指標値の算出に用いるデータの種類が増やされる。一方、免許取得後経過年数が短いほど閾値が所定数大きくされるとともに、指標値の算出に用いるデータの種類が減らされる。
【0064】
また、運転頻度が多いほど閾値が所定数小さくされるとともに、指標値の算出に用いるデータの種類が増やされる。一方、運転頻度が少ないほど閾値が所定数大きくされるとともに、指標値の算出に用いるデータの種類が減らされる。また、最後に運転してからの経過年数(ブランク年数)が長いほど閾値が所定数大きくされるとともに、指標値の算出に用いるデータの種類が減らされる。
【0065】
例えば第1の閾値及び第2の閾値(第1の閾値<第2の閾値)を用いて挙動の安定度を評価する場合、条件設定部69は、あらかじめ設定された第1の閾値及び第2の閾値それぞれの基準値に対して、ドライバの属性の情報に基づいて閾値を増減させるとともにデータの種類を増減させる。例えば、指標値を0~100の指標値として算出する場合、第1の閾値の基準値を30とし、第2の閾値の基準値を60として、各情報に基づいて1未満の係数又は1を超える係数を掛けることにより、第1の閾値及び第2の閾値を増減してもよい。あるいは、挙動の安定度の評価に使用可能なデータを、前後加速度、横加速度、上下加速度、ヨー角の角速度、ピッチ角の角速度、ロール角の角速度、前後加加速度、横加加速度、上下加加速度、ヨー角の角加速度、ピッチ角の角加速度、ロール角の角加速度の12とする場合、基準とするデータ数を5つとして、各情報に基づいてデータ数を1つずつ増減して、使用するデータ数を設定してもよい。ただし、閾値及びデータの種類の数は、それぞれあらかじめ設定された最大値及び最小値の範囲内で増減される。これにより、データ処理部63によるデータ処理及び音変換処理部65による音変換処理の条件が設定される。
【0066】
なお、閾値を大きく又は小さくする際の係数、及び、データの種類の数を増減する際の増減数は、情報にかかわらず一定であってもよく、情報に応じて重み付けされていてもよい。
【0067】
以下、図3図5を参照して、制御部53によるデータ変換処理、音変換処理及び条件設定処理を具体例に沿って説明する。以下の例では、車体の挙動の安定度を評価する所定の区間を所定の走行時間により区切られる区間とし、各区間を走行するごとに、計測された横加速度のデータから求められる横加加速度の値の絶対値を第1の閾値thre1及び第2の閾値thre2と比較して報酬音を発生させる例を説明する。
【0068】
図3図4は、データ処理部63によるデータ変換処理及び音変換処理部65による音変換処理の一例を示す説明図である。図3及び図4は、車体挙動計測装置11の一つとしての加速度センサにより検出される横加速度の計測データから求められる横加加速度(横ジャーク)の値を指標値として挙動の安定度を評価し、報酬音を設定する例を示している。
【0069】
図3に示すように、データ処理部63は、横加速度の計測データに対して平滑化処理及び絶対値変換処理を実行して横加速度の絶対値のデータに変換するとともに、さらに時間微分処理を実行して横加速度の計測データを横加加速度(横ジャーク)の絶対値のデータに変換する。
【0070】
図4に示すように、音変換処理部65は、それぞれの区間seg1~seg5を走行するごとに、各区間seg1~seg5における横加加速度の絶対値(指標値)の最大値を第1の閾値thre1及び第2の閾値thre2と比較した結果に基づいて報酬音を設定する。具体的に、第1の区間seg1においては指標値の最大値が第1の閾値thre1以下であるため、音変換処理部65は、報酬音を第1の報酬音に設定する。また、第2の区間seg2、第4の区間seg4及び第5の区間seg5においては指標値の最大値が第1の閾値thre1を超えかつ第2の閾値thre2以下であるため、音変換処理部65は、報酬音を第2の報酬音に設定する。一方、第3の区間seg3においては指標値の最大値が第2の閾値thre2を超えているため、音変換処理部65は、報酬音を出力しないように設定する。
【0071】
この場合、音変換処理部65は、各区間を走行する間に指標値が最も大きい閾値(図4の例では第2の閾値thre2)を超えたときには、現在の区間を終了して次の区間を開始してもよい。具体的に、区間を走行時間又は走行距離によって区切る場合、現在の区間を走行する間に指標値が最も大きい閾値を超えたときに、時間又は距離のカウントをリセットして、次の区間の走行時間又は走行距離のカウントを開始してもよい。これにより、車体の挙動が一瞬だけ大きくなった場合であっても、その後の車体の挙動の安定度が高くなることによって報酬音が出力されるため、ドライバが達成感を得やすくすることができる。
【0072】
図5は、第1の報酬音及び第2の報酬音の設定例を示す説明図である。上記の図4に示した例では、第1の報酬音は、挙動の安定度が高い場合に設定され、第2の報酬音は、挙動の安定度が中程度の場合に設定される。報酬音の種類がメダル獲得音に設定されている場合、第1の報酬音のメダル獲得数は2枚に設定され、第2の報酬音のメダル獲得数は1枚に設定される。また、報酬音の種類が拍手音に設定されている場合、第1の報酬音は複数の人の拍手音に設定され、第2の報酬音は一人の拍手音に設定される。また、報酬音の種類が花火音に設定されている場合、第1の報酬音は複数の花火の音に設定され、第2の報酬音は一つの花火の音に設定される。また、報酬音の種類が和音に設定されている場合、第1の報酬音は5つの音からなる和音に設定され、第2の報酬音は3つの音からなる和音に設定される。
【0073】
このようにして、車体の挙動の安定度に応じた報酬音が出力される。これにより、車体の挙動の安定度が可聴化され、ドライバは、車両の走行中に、リアルタイムに、かつ、注意力の低下を抑制可能な方法で、自身の運転操作状態の評価を認識することができる。
【0074】
続いて、図4及び図6を参照して、ドライバの運転技能の違いにより閾値の設定が変更される例を説明する。図6は、ドライバの運転技能に応じて第1の閾値及び第2の閾値を小さくした例を示す説明図である。図4が、運転技能の低いドライバの運転操作から得られた横加加速度の絶対値を示し、図6が運転技能の高いドライバの運転操作から得られた横加加速度の絶対値を示すものとする。図6中の第1の閾値thre1_a及び第2の閾値thre2_aは、図4に示した第1の閾値thre1及び第2の閾値thre2に相当する。
【0075】
図4に示すように、運転技能の低いドライバの運転操作では横加加速度の絶対値(指標値)は比較的大きくなるため、第1の閾値thre1_a及び第2の閾値thre2_aは相対的に大きい値に設定される。また、図6に示すように、運転技能の高いドライバの運転操作では横加加速度の絶対値(指標値)は比較的小さくなるため、第1の閾値thre1_b及び第2の閾値thre2_bはそれぞれ相対的に小さい値に設定される。図6に示した例では、第1の閾値thre1_a及び第2の閾値thre2_aに対してそれぞれ0.5を掛けた値が第1の閾値thre1_b及び第2の閾値thre2_bとなっている。
【0076】
図6に示した横加加速度の絶対値のデータに対して第1の閾値thre1_a及び第2の閾値thre2_aをそのまま適用した場合、第1の区間seg1、第2の区間seg2、第4の区間seg4及び第5の区間seg5の報酬音が第1の報酬音に設定され、第3の区間seg3の報酬音が第2の報酬音に設定される。これに対して、図6に示した横加加速度の絶対値のデータに対して第1の閾値thre1_b及び第2の閾値thre2_bを適用した場合、第1の区間seg1の報酬音が第1の報酬音に設定され、第2の区間seg2、第4の区間seg4及び第5の区間seg5の報酬音が第2の報酬音に設定され、第3の区間seg3の報酬音は出力されないように設定される。したがって、ドライバの運転技能が高いほど第1の報酬音及び第2の報酬音を出力させるために求められる挙動の安定度が高くなるため、さらに挙動の安定度を向上させる運転操作状態へと誘導することができる。
【0077】
また、条件設定部69は、車体の挙動の安定度が低下する走行環境において、音の出力を停止させてもよい。例えば、砂利道等の未舗装の道路を走行するシーンや、混雑時等の他車両を避けながら走行するシーンにおいては、ドライバの運転技能にかかわらず車体の挙動の安定度が低下しやすいことから、条件設定部69は、音の出力を停止させる。これにより、ドライバに不正確な評価を提示することが避けられる。また、不正確な評価に基づいて、ドライバの運転操作を適切でない操作状態へと誘導することを防ぐことができる。車体の挙動の安定度が低下する走行環境は、例えば車外撮影カメラやLiDAR(Light Detection and Ranging/Laser Imaging Detection and Ranging)、レーダセンサ等による検出データに基づいて推定される走行路の路面状態や他車両の数から特定される。また、未舗装の道路は、車体挙動計測装置11から入力される計測データに含まれる車体上下方向の加速度の変化に基づいて特定されてもよい。
【0078】
<3.運転支援装置の動作>
次に、本実施形態に係る運転支援装置の動作として、情報処理装置50による制御処理の一例を説明する。図7は、情報処理装置50の制御部53による制御処理のメインルーチンを示すフローチャートであり、図8は、制御部53による条件設定処理のルーチンを示すフローチャートであり、図9は、制御部53による音出力制御処理のルーチンを示すフローチャートである。以下の例では、所定の時間で区切られた区間を走行するごとに、評価値を第1の閾値thre1及び第2の閾値thre2と比較して報酬音を発生させる例を説明する。
【0079】
まず、制御部53は、ドライバの運転操作状態の評価を、聴覚刺激を通じてドライバに提示する制御(以下、「聴覚刺激制御」ともいう)の実行を開始するか否かを判別する(ステップS11)。聴覚刺激制御の実行を開始する条件は特に限定されるものではない。例えば、車両の運転システムが起動されている間、常時聴覚刺激制御が実行される場合、制御部53は、運転システムの起動時に聴覚刺激制御の実行を開始すると判定してもよい。あるいは、制御部53は、ドライバ撮影カメラや運転席に設置された荷重センサの出力信号に基づいてドライバが運転席に着座したことを検知したときに聴覚刺激制御の実行を開始すると判定してもよい。また、ドライバ等の乗員が聴覚刺激制御の実行のオンオフを切り替え可能になっている場合、制御部53は、聴覚刺激制御の実行がオフからオンに切り替えられたときに聴覚刺激制御の実行を開始すると判定してもよい。
【0080】
聴覚刺激制御の実行を開始すると判定しない場合(S11/No)、制御部53は、ステップS11の判別処理を繰り返し実行する。聴覚刺激制御の実行を開始すると判定した場合(S11/Yes)、制御部53は、条件設定処理を実行する(ステップS13)。
【0081】
図8に示すように、条件設定処理において、まず、取得部61は、入力部19から送信されるドライバの属性に関する情報を取得する(ステップS31)。例えば取得部61は、ドライバの年齢、免許取得後経過年数、運転頻度、直前に運転した後の経過年数等のうちの少なくともいずれかの情報を取得する。これらの情報は、情報処理装置50から提示される質問に対してドライバ等が回答するアンケートの形式で入力された情報であってもよく、あらかじめこれらの情報を判定あるいは蓄積したデータが入力された情報であってもよい。さらに、取得部61は、同一のドライバに関する過去の運転操作状態の評価のデータを記憶部55から取得してもよい。
【0082】
次いで、条件設定部69は、取得されたドライバの属性に関する情報に基づいて、車体の挙動の安定度の評価に用いるデータの数及び種類を設定する(ステップS33)。本実施形態では、図2に示した設定例にしたがって、挙動の安定度の評価に用いるデータの数を設定する。例えば、使用可能なデータを、前後加速度、横加速度、上下加速度、ヨー角の角速度、ピッチ角の角速度、ロール角の角速度、前後加加速度、横加加速度、上下加加速度、ヨー角の角加速度、ピッチ角の角加速度、ロール角の角加速度の12とし、これらのデータのうち、挙動の安定度の評価に用いるデータの数を設定する。
【0083】
図2に示した設定例によれば、ドライバの属性に関する情報に基づいてドライバの運転技能が高いと推定されるほど用いるデータの数が増やされる一方、ドライバの運転技能が低いと推定されるほど用いるデータの数が減らされる。例えば条件設定部69は、最小数を1、最大数を12として、5を基準値として情報ごとに1を加算又は減算して用いるデータの数を設定する。このとき、条件設定部69は、ドライバの運転操作状態の影響がより反映される、前後加加速度、横加加速度、ヨー角の角加速度及びピッチ角の角加速度を優先的に用いるデータとして設定する。あるいは、条件設定部69は、車体の前後方向の挙動又は左右方向の挙動のいずれかの評価対象の挙動に対応するデータを、用いるデータとして設定してもよい。
【0084】
次いで、条件設定部69は、取得されたドライバの属性に関する情報に基づいて、第1の閾値thre1及び第2の閾値thre2を設定する(ステップS35)。本実施形態では、図2に示した設定例にしたがって、第1の閾値thre1及び第2の閾値thre2を設定する。本実施形態では、一つ又は複数のデータを用いて一つの指標値を算出するため、使用するそれぞれのデータを同一の指標(例えば、0~100の値)に置き換え、使用するすべてのデータの値の平均値が指標値とされる。条件設定部69は、第1の閾値thre1の基準値を30とし、第2の閾値thre2の基準値を60として、情報ごとに1を超える係数又は1未満の係数を掛けることによって求められる。ただし、複数のデータを用いる場合の指標値の求め方、及び、第1の閾値thre1及び第2の閾値thre2の設定方法については、この例に限られない。
【0085】
図2に示した設定例によれば、ドライバの属性に関する情報に基づいてドライバの運転技能が高いと推定されるほど第1の閾値thre1及び第2の閾値thre2が小さい値に設定される一方、ドライバの運転技能が低いと推定されるほど第1の閾値thre1及び第2の閾値thre2が大きい値に設定される。
【0086】
図7に戻り、ステップS13において、条件設定処理を行った後、音変換処理部65は、車体の挙動の安定度が同一の区間の継続回数をカウントするカウンタBを初期化する(ステップS15)。車体の挙動の安定度が同一の区間の継続回数とは、例えば指標値が第1の閾値thre1以下の区間、又は、指標値が第1の閾値thre1を超えかつ第2の閾値thre2以下の区間、又は指標値が第2の閾値thre2を超える区間がそれぞれ連続する回数である。なお、当該カウンタBがあらかじめ設定されたカウンタ値C2に到達した場合、音変換処理部65は、報酬音とは異なる効果音(ファンファーレ)を出力するように設定されている。
【0087】
次いで、音変換処理部65は、それぞれの区間において指標値が第1の閾値thre1を超えたか否かを識別するためのフラグをONにする(ステップS17)。フラグがONの場合、指標値が第1の閾値thre1を超えていないことを示し、フラグがOFFの場合、指標値が第1の閾値thre1を超えたことを示す。
【0088】
次いで、音変換処理部65は、それぞれの区間の走行時間を計測するカウンタAを初期化する(ステップS19)。なお、カウンタAがあらかじめ設定されたカウンタ値C1に到達した場合、音変換処理部65は、車両が所定の区間の走行を完了したと判定するように設定されている。
【0089】
次いで、制御部53は、車両の運転が終了したか否かを判別する(ステップS21)。車両の運転が終了した場合(S21/Yes)、制御部53は、聴覚刺激制御を終了する(ステップS23)。一方、車両の運転が終了していない場合(S21/No)、取得部61は、車体挙動計測装置11から送信される車体の挙動を示すデータを取得する(ステップS25)。本実施形態では、取得部61は、車速、前後加速度、横加速度、上下加速度、ロール角の角速度、ピッチ角の角速度、ヨー角の角速度のデータを取得する。
【0090】
次いで、データ処理部63は、取得したそれぞれのデータに対して、平滑化処理、絶対値変換処理及び微分処理を実行し、車体の挙動の大きさを示す指標値を算出する(ステップS27)。このとき、データ処理部63は、ステップS13の条件設定処理において設定された数及び種類のデータのみに対してデータ処理を実行し、指標値を算出してもよい。あるいは、データ処理部63は、車体の挙動の大きさを示すすべてのデータに対してデータ処理を実行し、ステップS13の条件設定処理において設定された数及び種類のデータのみを用いて指標値を算出してもよい。また、本実施形態において、データ処理部63は、使用するそれぞれのデータを同一の指標(例えば、0~100の値)に置き換え、使用するすべてのデータの値の平均値を指標値とする。
【0091】
次いで、音変換処理部65は、算出された指標値を、出力させる音の情報に変換し出力する制御を実行する(ステップS29)。
【0092】
図9に示すように、まず、音変換処理部65は、ステップS27においてデータ処理部63により求められた指標値が第2の閾値thre2以下であるか否かを判別する(ステップS41)。指標値が第2の閾値thre2を超えている場合(S41/No)、音変換処理部65は、フラグのON/OFFの切り替えや、カウンタA及びカウンタBのカウントアップを行うことなくそのままステップS15に戻る。
【0093】
一方、指標値が第2の閾値thre2以下である場合(S41/Yes)、音変換処理部65は、指標値が第1の閾値thre1以下であり、かつ、フラグがONになっているか否かを判別する(ステップS43)。指標値が第1の閾値thre1以下であり、かつ、フラグがONになっている場合(S43/Yes)、音変換処理部65は、カウンタAをカウントアップする(ステップS45)。次いで、音変換処理部65は、カウンタAがあらかじめ設定したカウンタ値C1に到達したか否かを判別する(ステップS47)。ステップS47では、カウンタAがカウンタ値C1に到達したか否かによって車両が所定の区間の走行を完了したか否かが判別される。
【0094】
カウンタAがカウンタ値C1未満の場合(S47/No)、つまり、車両が今回の区間の走行を完了していない場合、ステップS21に戻って、車両の運転が継続している間は計測データの取得、指標値の算出及び指標値の評価を繰り返す。一方、カウンタAがカウンタ値C1に到達している場合(S47/Yes)、今回走行した区間における指標値の最大値は第1の閾値thre1以下であるため、音変換処理部65は、報酬音を第1の報酬音に設定する(ステップS49)。これにより、出力制御部67は、音出力装置31の駆動を制御して、第1の報酬音を発生させる。
【0095】
次いで、音変換処理部65は、カウンタBをカウントアップする(ステップS51)。次いで、音変換処理部65は、カウンタBがあらかじめ設定したカウンタ値C2に到達したか否かを判別する(ステップS53)。ステップS53では、カウンタBがカウンタ値C2に到達したか否かによって、指標値の最大値が第1の閾値thre1以下である区間が所定回数(カウンタ値C2)以上となったか否かが判別される。
【0096】
カウンタBがカウンタ値C2未満の場合(S53/No)、ステップS19に戻り、カウンタAをリセットするところからステップS19以降の処理を実行する。一方、カウンタBがカウンタ値C2に到達している場合(S53/Yes)、指標値の最大値が第1の閾値thre1以下である区間が所定回数以上継続したため、音変換処理部65は、出力音を、報酬音とは異なる効果音(ファンファーレ)に設定する(ステップS55)。これにより、出力制御部67は、音出力装置31の駆動を制御して、効果音を発生させる。効果音の発生後は、ステップS15に戻り、カウンタBをリセットするところからステップS15以降の処理を実行する。
【0097】
一方、上記のステップS43において、指標値が第1の閾値thre1を超えているか、又は、フラグがOFFになっている場合(S43/No)、音変換処理部65は、フラグをOFFの状態にする(ステップS57)。これにより、現在走行する区間における指標値の最大値が、第1の閾値thre1以下ではないこと、つまり、第1の閾値thre1を超えかつ第2の閾値thre2未満であることを示す状態になる。次いで、音変換処理部65は、カウンタAをカウントアップする(ステップS59)。次いで、音変換処理部65は、カウンタAがあらかじめ設定したカウンタ値C1に到達したか否かを判別する(ステップS61)。ステップS61では、カウンタAがカウンタ値C1に到達したか否かによって車両が所定の区間の走行を完了したか否かが判別される。
【0098】
カウンタAがカウンタ値C1未満の場合(S61/No)、つまり、車両が今回の区間の走行を完了していない場合、ステップS21に戻って、車両の運転が継続している間は計測データの取得、指標値の算出及び指標値の評価を繰り返す。一方、カウンタAがカウンタ値C1に到達している場合(S61/Yes)、今回走行した区間における指標値の最大値は第1の閾値thre1を超えかつ第2の閾値thre2以下であるため、音変換処理部65は、報酬音を第2の報酬音に設定する(ステップS63)。これにより、出力制御部67は、音出力装置31の駆動を制御して、第2の報酬音を発生させる。
【0099】
次いで、音変換処理部65は、カウンタBをカウントアップする(ステップS65)。次いで、音変換処理部65は、カウンタBがあらかじめ設定したカウンタ値C2に到達したか否かを判別する(ステップS67)。ステップS53では、カウンタBがカウンタ値C2に到達したか否かによって、指標値の最大値が第1の閾値thre1を超えかつ第2の閾値thre2以下である区間が所定回数(カウンタ値C2)以上となったか否かが判別される。
【0100】
カウンタBがカウンタ値C2未満の場合(S67/No)、ステップS19に戻り、カウンタAをリセットするところからステップS19以降の処理を実行する。一方、カウンタBがカウンタ値C2に到達している場合(S67/Yes)、指標値の最大値が第1の閾値thre1を超えかつ第2の閾値thre2以下である区間が所定回数以上継続したため、音変換処理部65は、出力音を、報酬音とは異なる効果音(ファンファーレ)に設定する(ステップS69)。これにより、出力制御部67は、音出力装置31の駆動を制御して、効果音を発生させる。
【0101】
設定される効果音は、指標値の最大値が第1の閾値thre1以下である区間が所定回数以上継続したステップS55において設定される効果音とは異なる効果音であることが好ましい。効果音が異なることにより、ドライバは、どのレベルの挙動の安定度が所定回数継続したかを認識することができる。効果音の発生後は、ステップS15に戻り、カウンタBをリセットするところからステップS15以降の処理を実行する。
【0102】
制御部53は、ステップS21において、車両の運転が終了していると判定されるまでの間上記の制御処理を繰り返し実行し、所定の区間ごとに、車体の挙動の安定度に応じて報酬音の出力を制御する。
【0103】
<4.本実施形態による効果>
以上説明したように、本実施形態に係る運転支援装置1は、車両の走行中に、車体の挙動を示すデータを取得し、所定の区間を走行するごとに、取得したデータから得られる挙動の安定度の情報に基づいて挙動の安定度に応じた報酬音を出力する。このため、運転中のドライバに対して、所定の区間を走行した際の運転操作状態をリアルタイムに認識させることができる。また、出力音は、表示又は音声のテキスト情報を含まないことから、ドライバに対して聴覚刺激を通じて直感的に運転操作状態の情報を認識させることができ、注意力の低下を抑制することができる。また、出力される音が、ドライバに達成感を感じさせる報酬音であるため、ドライバに対して、車体の挙動がより安定する運転操作を行わせるモチベーションを与えることができる。
【0104】
また、本実施形態に係る運転支援装置1は、所定の区間における挙動の安定度を示す情報に基づいて、報酬音の出力回数、報酬音の音程、報酬音の音量、報酬音の種類、報酬音を構成する音の数、又は報酬音のピッチのうちの少なくともいずれかを制御する。このため、ドライバに対して、挙動の安定度のレベルを直感的に認識させることができる。
【0105】
また、本実施形態に係る運転支援装置1では、所定の区間を走行中に取得された計測データから得られる指標値の最大値を挙動の安定度を示す情報として報酬音が制御されてもよい。この場合、各区間において車体の挙動が最も不安定になったときの挙動の大きさに基づいて運転操作状態が評価される。
【0106】
また、本実施形態に係る運転支援装置1では、所定の区間を走行中に取得された計測データから得られる指標値を所定の閾値と比較して指標値が所定の閾値を超えた回数を挙動の安定度の情報として、報酬音を出力させる。これにより、一度だけ指標値が閾値を超えたときの指標値によって車体の挙動の安定度が評価されることが避けられ、当該区間全体にわたる挙動の安定度を評価することができる。
【0107】
また、本実施形態に係る運転支援装置1では、ドライバの運転技能に関連する属性の情報に基づいて閾値が設定される。特に、ドライバの運転技能が高いほど閾値は小さくされ、ドライバの運転技能が低いほど閾値は大きくされるため、運転技能の高いドライバについては、車体の挙動の安定度がより高められる運転操作状態へと誘導することができる。また、運転技能の低いドライバについては、ドライバの運転技能に応じた適切なレベルの挙動の安定度へと誘導することができる。
【0108】
また、本実施形態に係る運転支援装置1では、車両の挙動の安定度が低下する走行環境において、聴覚刺激制御が停止される。このため、ドライバに不正確な評価を提示することが避けられる。また、不正確な評価に基づいて、ドライバの運転操作を適切でない操作状態へと誘導することを防ぐことができる。
【0109】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例又は修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0110】
例えば、あらかじめ車体の前後方向の挙動の安定度又は左右方向の挙動の安定度あるいはその両方を評価するための走行区間が設定され、運転支援装置1は、当該区間の走行開始時から走行完了時までに、前後加速度、前後加加速度、ピッチ角の角速度、ピッチ角の角加速度、横加速度、横加加速度、ヨー角の角速度、ヨー角の角加速度の中から必要なデータのみを算出して、所望の挙動の安定度を評価するようにしてもよい。これにより、情報処理装置50の演算の負荷を軽減することができる。
【符号の説明】
【0111】
1…運転支援装置、11…車体挙動計測装置、17…車両位置情報検出装置、19…入力部、31…音出力装置、50…情報処理装置、53…制御部、61…取得部、63…データ処理部、65…音変換処理部、67…出力制御部、69…条件設定部
図1
図2
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図5
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図9