(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-18
(45)【発行日】2024-11-26
(54)【発明の名称】空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
B60C 9/08 20060101AFI20241119BHJP
B60C 9/02 20060101ALI20241119BHJP
B60C 15/00 20060101ALI20241119BHJP
【FI】
B60C9/08 J
B60C9/02 B
B60C15/00 H
(21)【出願番号】P 2020187549
(22)【出願日】2020-11-10
【審査請求日】2023-09-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003395
【氏名又は名称】弁理士法人蔦田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三宅 正也
【審査官】上谷 公治
(56)【参考文献】
【文献】特開昭50-030203(JP,A)
【文献】特開平05-042803(JP,A)
【文献】特開昭63-203403(JP,A)
【文献】特開平07-047817(JP,A)
【文献】特開2009-214628(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 9/08
B60C 9/02
B60C 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対のビードコアと、前記一対のビードコア間に掛け渡されたカーカスプライと、前記カーカスプライのクラウン部のタイヤ半径方向外側に配置されたベルトと、を備え、
前記カーカスプライは、前記一対のビードコア間に掛け渡された第1プライと、前記第1プライのタイヤ外面側に配置されてトレッドの両端部から両側のサイド部にそれぞれ延在する一対のプライからなる第2プライと、を含み、
前記第1プライと前記第2プライの少なくとも一方は、ベルト端とビードコアとの間の範囲内にプライ重なり部を有し、前記プライ重なり部が、当該プライ重なり部からタイヤ半径方向外側に延びる外側プライ片の端部と、当該プライ重なり部からタイヤ半径方向内側に延びる内側プライ片の端部とを重ね合わせてな
り、
前記第2プライのタイヤ半径方向の外側端部が前記ベルトの端部と重なり合う位置にあり、かつ、前記第2プライがビードに延在したプライ本体部を有する、空気入りタイヤ。
【請求項2】
前記第1プライが前記プライ重なり部を有する、請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
前記第2プライが前記プライ重なり部を有する、請求項1又は2に記載の空気入りタイヤ。
【請求項4】
一対のビードコアと、前記一対のビードコア間に掛け渡されたカーカスプライと、前記カーカスプライのクラウン部のタイヤ半径方向外側に配置されたベルトと、を備え、
前記カーカスプライは、前記一対のビードコア間に掛け渡された第1プライと、前記第1プライのタイヤ外面側に配置されてトレッドの両端部から両側のサイド部にそれぞれ延在する一対のプライからなる第2プライと、を含み、
前記第1プライと前記第2プライの少なくとも一方は、ベルト端とビードコアとの間の範囲内にプライ重なり部を有し、前記プライ重なり部が、当該プライ重なり部からタイヤ半径方向外側に延びる外側プライ片の端部と、当該プライ重なり部からタイヤ半径方向内側に延びる内側プライ片の端部とを重ね合わせてなり、
前記空気入りタイヤの前記両側のサイド部のうちの一方側のサイド部のみに前記プライ重なり部が設けられた
、空気入りタイヤ。
【請求項5】
前記空気入りタイヤの前記両側のサイド部の双方に前記プライ重なり部が設けられた、請求項1~3のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
空気入りタイヤには、トレッドからサイドウォールを経てビードに至るカーカスプライが設けられ、カーカスプライのクラウン部外周にベルトが配置されている。
【0003】
特許文献1には、カーカスプライを2枚のプライで構成し、タイヤ内面側のプライを一対のビードコア間にわたって連なり両端部をビードコアの周りに折り返したターンアッププライとし、タイヤ外面側のプライをクラウン部において欠落部を設けた中抜きプライとしたタイヤが開示されている。
【0004】
特許文献2には、中抜きプライを有する空気入りタイヤにおいて、タイヤ内面側の第1プライのクラウン部(即ち、中央部分)におけるコーナリング時の浮き上がりを抑制するために、クラウン部において一対のプライ片の内端部同士を重ね合わせてなるプライ重なり部を第1プライに設けることが開示されている。
【0005】
一方、特許文献3には、中抜きプライを持たない一般的なカーカスプライ構造に持つタイヤにおいて、路面からの振動を緩和してロードノイズを低減するために、カーカスプライを、トレッドからサイドウォールを経てビードフィラーのタイヤ幅方向内側の途切れ端で終端する本体ケースと、該途切れ端よりもタイヤ半径方向外側の上端を起点とすることで本体ケースとの重なり部を有してビードコアまで延びる分断ケースとで構成することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2017-109517号公報
【文献】特開2020-100302号公報
【文献】特開平11-5408号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
カーカスプライをターンアッププライと中抜きプライで構成することにより、空気入りタイヤのサイド部の剛性を確保しながら軽量化を図ることができる。しかしながら、例えば横剛性を向上するために局部的にサイド部の剛性を高めることが望ましいことがある。
【0008】
本発明の実施形態は、サイド部の剛性向上と軽量化を両立することができる空気入りタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の実施形態に係る空気入りタイヤは、一対のビードコアと、前記一対のビードコア間に掛け渡されたカーカスプライと、前記カーカスプライのクラウン部のタイヤ半径方向外側に配置されたベルトと、を備える。前記カーカスプライは、前記一対のビードコア間に掛け渡された第1プライと、前記第1プライのタイヤ外面側に配置されてトレッドの両端部から両側のサイド部にそれぞれ延在する一対のプライからなる第2プライと、を含む。そして、前記第1プライと前記第2プライの少なくとも一方は、ベルト端とビードコアとの間の範囲内にプライ重なり部を有し、前記プライ重なり部が、当該プライ重なり部からタイヤ半径方向外側に延びる外側プライ片の端部と、当該プライ重なり部からタイヤ半径方向内側に延びる内側プライ片の端部とを重ね合わせてなる。
【0010】
本実施形態においては、前記空気入りタイヤの前記両側のサイド部のうちの一方側のサイド部のみに前記プライ重なり部が設けられてもよい。また、前記空気入りタイヤの前記両側のサイド部の双方に前記プライ重なり部が設けられてもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明の実施形態に係る空気入りタイヤであると、サイド部の剛性向上と軽量化を両立することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】第1実施形態に係る空気入りタイヤの半断面図
【
図2】第1実施形態に係る空気入りタイヤの断面模式図
【
図4】
図1の一部拡大図(トレッドの端部の断面図)
【
図5】第2実施形態に係る空気入りタイヤの断面模式図
【
図6】第3実施形態に係る空気入りタイヤの半断面模式図
【
図7】第4実施形態に係る空気入りタイヤの半断面模式図
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0014】
[第1実施形態]
図1に示す第1実施形態に係る空気入りタイヤ10(以下、単にタイヤ10という。)は、リムに固定される左右一対のビード12と、該一対のビード12からそれぞれタイヤ半径方向外側に連なる左右一対のサイドウォール14と、該一対のサイドウォール14の間に跨がって延び接地面を構成するトレッド16とを有する。
図1は、タイヤ回転軸を含む子午線断面でタイヤ10を切断した半断面図である。
【0015】
図中、符号CLは、タイヤ軸方向中心に相当するタイヤ赤道面を示す。本明細書において、タイヤ幅方向とは、タイヤ回転軸に平行な方向をいい、図において符号WDで示す。タイヤ幅方向WD内側とはタイヤ赤道面CLに近づく方向であり、タイヤ幅方向WD外側とはタイヤ赤道面CLから離れる方向である。タイヤ半径方向とは、タイヤ回転軸に垂直な方向をいい、図において符号RDで示す。タイヤ半径方向RD内側とはタイヤ回転軸に近づく方向であり、タイヤ半径方向RD外側とはタイヤ回転軸から離れる方向である。タイヤ周方向とは、タイヤ回転軸を中心として回転する方向をいう。
【0016】
図1及び
図2に示すように、タイヤ10は、一対のビードコア18,18と、該一対のビードコア18,18間に掛け渡されたカーカスプライ20と、カーカスプライ20のクラウン部のタイヤ半径方向RD外側に配置されたベルト22と、ビードコア18のタイヤ半径方向RD外側に配置されたビードフィラー24と、を備える。
【0017】
ビードコア18は、スチール製のビードワイヤで構成されたタイヤ周方向の全周にわたって延びる環状部材であり、ビード12に埋設されている。ビード12にはまた、ビードコア18の外周に設置されたビードフィラー24が埋設されている。ビードフィラー24は、タイヤ半径方向RD外側ほど幅狭の断面略三角形状をなしてタイヤ周方向の全周にわたって延びる環状の硬質ゴム部材である。
【0018】
カーカスプライ20は、一対のビードコア18,18間にトロイダル状に掛け渡されており、すなわち、トレッド16から両側のサイドウォール14,14を経て一対のビード12,12に至り、ビード12において係止されている。カーカスプライ20は、補強材としての有機繊維コードを含み、詳細には、有機繊維コードの配列体と該配列体を被覆するトッピングゴムを含む。配列体は、有機繊維コードを所定の打ち込み本数で平行配列してなる。有機繊維コードはタイヤ周方向に対して実質上直角(例えば80°~90°)に、即ち子午線方向に沿って配されている。有機繊維コードとしては、例えば、ポリエステル繊維、レーヨン繊維、アラミド繊維、ナイロン繊維等が挙げられる。
【0019】
ベルト22は、トロイダル状をなすカーカスプライ20のクラウン部(即ち、頂部)の外周側に設置されており、トレッド16においてカーカスプライ20の外周面に重ねて設けられている。ベルト22は、少なくとも1枚、好ましくは2枚以上のベルトプライで構成されている。この例では、ベルト22は、最大幅ベルトとしての第1ベルト26と、その外周に重ねて配された第1ベルト26よりも幅の狭い第2ベルト28との2枚で構成されている。第1ベルト26及び第2ベルト28は、スチールコード等の金属コードを含み、詳細には、金属コードをタイヤ周方向に対して所定角度(例えば15°~35°)で傾斜させかつタイヤ幅方向WDに所定間隔で配設し、トッピングゴムで被覆してなる。該金属コードは2枚のベルト26,28間で互いに交差するよう配設されている。
【0020】
ベルト22のタイヤ半径方向RD外側には、接地面をなすトレッドゴム30が設けられている。この例では、ベルト22とトレッドゴム30との間にはベルト補強層32が設けられている。ベルト補強層32は、タイヤ周方向に対して実質的に平行に延びる有機繊維コードを有するキャッププライにより構成されている。
【0021】
ベルト22の端部22A、詳細には第1ベルト26の端部とカーカスプライ20との間には、ゴム製のベルト下パッド34が設置されている。
【0022】
サイドウォール14におけるカーカスプライ20のタイヤ外面側には、タイヤ外表面を構成するサイドウォールゴム36が設けられている。
【0023】
ビード12には、ビード12の外表面をなしてリムと接触するリムストリップゴム38がサイドウォールゴム36に隣接して設けられている。
【0024】
タイヤ10の内面、即ちカーカスプライ20のタイヤ内面側には、空気非透過性ゴムからなるインナーライナー40が設けられている。
【0025】
本実施形態において、カーカスプライ20は、一対のビードコア18,18間に掛け渡された第1プライ42と、該第1プライ42のタイヤ外面側(例えばサイドウォール14ではタイヤ幅方向WD外側)に重ねて配置された第2プライ44とで構成されている。
【0026】
第1プライ42は、両端部がビードコア18,18の周りに折り返されたターンアッププライである。すなわち、第1プライ42は、一対のビードコア18,18間にわたるトロイダル状のプライ本体部42Aと、プライ本体部42Aから延びビードコア18の周りにタイヤ幅方向WD内側から外側に向かって折り返された折返し部42B,42Bと、を備える。第1プライ42は、このように両端部で折り返すことにより係止されている。そのため、プライ本体部42Aと折返し部42Bとの間に、ビードコア18とビードフィラー24が配されている。
【0027】
第1プライ42のプライ本体部42Aは、トレッド16から両側のサイドウォール14,14を経てそれぞれビード12,12に至る。プライ本体部42Aは、ビード12においてビードフィラー24のタイヤ幅方向WD内側の側面(即ち、内側側面)24Aに沿って延びてビードコア18の内周面まで延在している。
【0028】
第1プライ42の折返し部42Bは、ビードコア18の内周面からビードフィラー24のタイヤ幅方向WD外側の側面(即ち、外側側面)24Bに沿ってタイヤ半径方向RD外側に延びている。この例では、折返し部42Bは、ビードフィラー24のタイヤ半径方向RD外側端(即ち、外端)24Cを越え、タイヤ最大幅位置P1を越えて延在しており、ベルト22の端部22Aに達する前(詳細にはベルト下パッド34に重ならない位置)で終端している。従って、折返し部42Bのタイヤ半径方向RDの外側端42B1はタイヤ最大幅位置P1よりもタイヤ半径方向RD外側に位置している。なお、折返し部42Bの外側端42B1の位置は特に限定されず、例えばタイヤ最大幅位置P1よりもタイヤ半径方向RD内側でもよい。
【0029】
ここで、タイヤ最大幅位置P1は、サイドウォール14におけるタイヤ10の外表面のプロファイルラインが、タイヤ赤道面CLからタイヤ幅方向WDに最も離れる位置であり、そのタイヤ半径方向RDにおける位置である。該プロファイルラインは、リムプロテクターなどの突起を除いたサイドウォール本体の外表面の輪郭であり、通常、複数の円弧を滑らかに接続することで規定されるタイヤ子午線断面形状を有する。
【0030】
第2プライ44は、トロイダル状をなすカーカスプライ20のクラウン部、即ち頂部に欠落部46を持つ中抜き構造のプライであり、中抜きプライとも称される。すなわち、第2プライ44は、トレッド16に位置するクラウン部が取り除かれており、トレッド16の両端部から両側のサイド部13,13にそれぞれ延在する左右一対のプライからなる。なお、サイド部13とは、サイドウォール14とビード12を包括する概念である。
【0031】
この例では、第2プライ44、詳細には当該第2プライ44を構成する上記一対のプライは、それぞれ、両端部がビードコア18,18の周りに折り返されている。従って、第2プライ44は、クラウン部に欠落部46を持つ中抜きのプライ本体部44Aと、該プライ本体部44Aから延びビードコア18の周りにタイヤ幅方向WD内側から外側に向かって折り返された折返し部44B,44Bと、を備える。
【0032】
図2及び
図3に示すように、第2プライ44のタイヤ半径方向RDの外側端部44Cは、ベルト22のタイヤ幅方向WDにおける端部22Aと重なり合っている。この例では、ベルト下パッド34を介して、第2プライ44の外側端部44Cと第1ベルト26の幅方向端部とが重なり合っている。これにより、第2プライ44の外側端部44Cは、第1プライ42のプライ本体部42Aとベルト22の端部22Aとの間に挟まれて係止されている。
【0033】
詳細には、第2プライ44の外側端部44Cはベルト22の端部22Aと重なり合う位置にある。第2プライ44のタイヤ半径方向RDの外側端(即ち、外側端部44Cの先端)44C1はベルト端(即ち、ベルト22の幅方向外端)22A1よりもタイヤ幅方向WD内側に位置している。ここで、ベルト22の端部22Aと重なり合う位置とは、ベルト端22A1からベルト22のタイヤ幅方向WDにおける全幅の15%までの範囲であり、より好ましくは10%までの範囲である。第2プライ44とベルト22との重なり幅L1は、特に限定されないが、第2プライ44に沿う長さで、例えば5~20mmでもよい。第2プライ44に沿う長さとは、詳細には、ベルト端22A1から第2プライ44に法線N1を引き、該法線N1と第2プライ44との交点から外側端44C1までの第2プライ44に沿う長さである。
【0034】
図2及び
図4に示すように、第2プライ44のプライ本体部44Aは、ビード12において、ビードフィラー24の内側側面24Aに沿って延びてビードコア18の内周面まで延在しており、ビードフィラー24と第1プライ42のプライ本体部42Aとの間に挟まれている。
【0035】
第2プライ44の折返し部44Bは、ビードコア18の内周面からビードフィラー24の外側側面24Bに沿ってタイヤ半径方向RD外側に延びており、ビードフィラー24と第1プライ42の折返し部42Bとの間に挟まれている。第2プライ44の折返し部44Bは、この例では、ビードフィラー24の外端24Cを越え、タイヤ最大幅位置P1に達する前に終端している。終端である外側端44B1は、第1プライ42の折返し部42Bの外側端42B1よりもタイヤ半径方向RD内側に位置している。
【0036】
本実施形態では、第1プライ42がベルト端22A1とビードコア18との間の範囲R1(
図1参照)内にプライ重なり部48を有する。プライ重なり部48は、分断したプライの端部同士を重ね合わせることにより形成されている。詳細には、プライ重なり部48は、当該プライ重なり部48からタイヤ半径方向RD外側に延びる外側プライ片50の端部(内側端部)50Aと、プライ重なり部48からタイヤ半径方向RD内側に延びる内側プライ片52の端部(外側端部)52Aとを重ね合わせることにより形成されている。この例では、プライ重なり部48は、タイヤ10の左右一対のサイド部13,13のうちの一方側のサイド部13のみに設けられている。
【0037】
詳細には、本実施形態に係るタイヤ10は、車両への装着向きが指定されたタイヤであり、車両に装着する際に外側に装着される面と内側に装着される面とが指定されている。そのため、タイヤ10の例えばサイド部には、車両への装着向きを指定するための表示が設けられている。
図2中、符号OUTで示す側が車両装着姿勢において外側(車両装着外側)に向き、符号INで示す側が車両装着姿勢において内側(車両装着内側)に向くように、車両に装着される。
図1は車両装着外側の半断面図である。
【0038】
第1プライ42は、外側プライ片50と内側プライ片52との2枚のプライ片で構成されている。
【0039】
外側プライ片50は、車両装着内側の折返し部42Bから車両装着内側のビード12及びサイドウォール14を経てトレッド16に延在し、更にトレッド16から車両装着外側のサイドウォール14をタイヤ半径方向RD内側に延在し、車両装着外側のサイドウォール14において終端している。この例では、外側プライ片50は、ビードフィラー24の外端24Cよりもタイヤ半径方向RD外側に位置する端末50A1で終端している。より詳細には、該端末50A1は、第1プライ42の折返し部42Bの外側端42B1よりもタイヤ半径方向RD内側、タイヤ最大幅位置P1よりもタイヤ半径方向RD内側、かつ、第2プライ44の折返し部44Bの外側端44B1よりもタイヤ半径方向RD内側に位置している。
【0040】
内側プライ片52は、外側プライ片50の端末50A1よりもタイヤ半径方向RD外側に位置する端末52A1を起点としてタイヤ半径方向RD内側に延び、ビードコア18で折り返されて、車両装着外側の折返し部42Bの外側端42B1で終端している。この例では、内側プライ片52の端末52A1は、第1プライ42の折返し部42Bの外側端42B1よりもタイヤ半径方向RD内側、タイヤ最大幅位置P1よりもタイヤ半径方向RD内側、かつ、第2プライ44の折返し部44Bの外側端44B1よりもタイヤ半径方向RD内側に位置している。
【0041】
外側プライ片50の端末50A1と内側プライ片52の端末52A1との間で、外側プライ片50と内側プライ片52の端部50A,52A同士が、両者のトッピングゴムの加硫接着により接合された状態に重ね合わされ、これによりプライ重なり部48が形成されている。この例では、外側プライ片50の内側端部50Aのタイヤ外面側に内側プライ片52の外側端部52Aが重ねられ、そのため、内側プライ片52の外側端部52Aは、外側プライ片50の内側端部50Aと第2プライ44のプライ本体部44Aとの間に挟まれている。
【0042】
プライ重なり部48は、ベルト端22A1とビードコア18に挟まれた範囲R1内に設けられている。ここで、範囲R1は、カーカスプライ20におけるベルト端22A1に相当する位置よりもビードコア18側、かつ、ビードコア18の外周面18Aよりもタイヤ半径方向RD外側の範囲である(
図1参照)。ベルト端22A1に相当する位置とは、ベルト端22A1からカーカスプライ20に引いた法線N1とカーカスプライ20との交点の位置である(
図3参照)。
【0043】
この例では、外側プライ片50の端末50A1がビードフィラー24の外端24Cよりもタイヤ半径方向RD外側に位置しているため、プライ重なり部48は、ビードフィラー24との間で重なりを有しておらず、ベルト端22A1とビードフィラー24の外端24Cとの間に設けられている。これにより、ビードフィラー24が設けられた部分に比べて相対的に剛性が低い部分に限定した局部的な剛性向上を図ることができる。
【0044】
プライ重なり部48の重なり幅L2は、特に限定されないが、タイヤ半径方向RDにおける寸法で、タイヤ断面高さHの5~50%であることが好ましく、より好ましくは5~30%である。一例として重なり幅L2は10~20mm程度でもよい。ここで、タイヤ断面高さHは、ビードヒールからタイヤ赤道上でのトレッド踏面までの垂直高さであり、タイヤ外径とリム径との差の1/2である。
【0045】
上記のように第1プライ42を外側プライ片50と内側プライ片52との2枚のプライ片に分割構成したタイヤ10を製造する方法は特に限定されない。例えば、常法に従いグリーンタイヤを作製する際、成形ドラムにカーカスプライ20を巻き付けるときに、外側プライ片50と内側プライ片52を、端部50A,52A同士を重ね合わせながら巻き付ければよい。
【0046】
本実施形態に係るタイヤ10であると、カーカスプライ20を、一対のビードコア18,18に掛け渡された第1プライ42と、クラウン部に欠落部46を設けた中抜き構造の第2プライ44とで構成している。これにより、サイド部13の剛性を確保しながら軽量化を図ることができる。また、第1プライ42のサイド部13に設けたプライ重なり部48によりサイド部13の剛性を局部的に高めることができ、タイヤ10の強度向上や操縦安定性の向上に繋がる。特に、この例では、サイドウォール14の一部が、プライ重なり部48に加えて、第2プライ44のプライ本体部44A、第1プライ42の折返し部42Bおよび第2プライ44の折返し部44Bにより、合計5枚のプライが重ねられて補強されている。そのため、より高い剛性向上効果が得られる。
【0047】
本実施形態であると、また、車両装着外側のサイド部13のみにプライ重なり部48を設けている。タイヤの操縦安定性は特に車両装着外側のサイド部13の寄与が大きい。そのため、車両装着外側のサイド部13に限ってプライ重なり部48を設けたことにより、タイヤの質量増加を極力抑えながら、効果的に横剛性を高めて操縦安定性を向上することができる。よって、低燃費性と操縦安定性との両立効果に優れる。
【0048】
また、本実施形態であると、カーカスプライ20を構成するプライ片の種類は、第1プライ42を構成する外側プライ片50及び内側プライ片52の2種類と、第2プライ44を構成する左右一対のプライ片の1種類との、合計3種類である。そのため、例えば4種類のプライ片が必要な後述する第4実施形態に比べてプライ片の種類が少なく、工程管理上有利である。
【0049】
[第2実施形態]
図5は第2実施形態に係る空気入りタイヤ10Aの断面模式図である。第2実施形態では、プライ重なり部48をタイヤ10Aの左右一対のサイド部13,13の双方に設けた点で、第1実施形態とは異なる。
【0050】
第2実施形態に係るタイヤ10Aは左右対称であり、車両への装着向きが指定されていないタイヤである。そして、第1プライ42には、その両側のサイド部13,13に第1実施形態と同様のプライ重なり部48,48がそれぞれ設けられている。そのため、第2実施形態において、第1プライ42は、1枚の外側プライ片60と2枚の内側プライ片62,62との3枚のプライ片で構成されている。
【0051】
外側プライ片60は、トレッド16から両側のサイドウォール14,14をタイヤ半径方向RD内側に延在し、サイドウォール14,14において端末60A1,60A1で終端している。内側プライ片62は、第1実施形態の内側プライ片52と同様、外側プライ片60の端末60A1よりもタイヤ半径方向RD外側に位置する端末62A1を起点としてタイヤ半径方向RD内側に延びている。但し、該内側プライ片62が各サイド部13にそれぞれ設けられている点で第1実施形態とは異なる。
【0052】
そして、外側プライ片60の両端部60A,60Aに一対の内側プライ片62,62の端部62A,62Aがそれぞれ重ね合わせられ、両側のサイド部13,13におけるベルト端22A1とビードコア18との間の範囲R1(
図1参照)内にそれぞれプライ重なり部48,48が設けられている。プライ重なり部48のタイヤ半径方向RDにおける位置は第1実施形態と同じである。
【0053】
第2実施形態であると、第1実施形態と同様、タイヤの軽量化を図りながら、サイド部13の剛性を部分的に向上することができ、タイヤ10Aの強度向上や操縦安定性の向上を図ることができる。また、第2実施形態であると、左右双方のサイド部13,13にプライ重なり部48,48を設けたので、タイヤ10Aのユニフォミティに優れる。第2実施形態について、その他の構成及び効果は第1実施形態と同じであり、説明は省略する。
【0054】
[第3実施形態]
図6は第3実施形態に係る空気入りタイヤ10Bの半断面模式図である。第3実施形態では、プライ重なり部48の位置が第1実施形態とは異なる。
【0055】
すなわち、第3実施形態では、プライ重なり部48がビードフィラー24との間で重なりを有している。外側プライ片50の端末50A1は、ビードフィラー24の外端24Cよりもタイヤ半径方向RD内側、かつビードコア18の外周面18Aよりもタイヤ半径方向RD外側に位置している。内側プライ片52の端末52A1は、ビードフィラー24の外端24Cよりもタイヤ半径方向RD外側に位置している。
【0056】
そのため、プライ重なり部48は、ビードフィラー24の内側側面24Aと重なる部分を有するとともに、ビードフィラー24の外端24Cを越えてタイヤ半径方向RD外側に延在する部分を有する。このようにプライ重なり部48をビードフィラー24に部分的にかかるように設けることにより、剛性の高いビードフィラー24から連なる高剛性部を設けることができる。
【0057】
プライ重なり部48によるサイドウォール14に対する補強効果の観点から、プライ重なり部48は、そのタイヤ半径方向RDにおける寸法(
図4に示すプライ重なり幅L2と同じ)の半分以上が、ビードフィラー24の外端24Cを越えて外側に延在する部分であることが好ましい。
【0058】
図6に示す例では、第2プライ44の折返し部44Bの高さを低くしており、詳細には折返し部44Bの外側端44B1を、ビードフィラー24の外端24Cよりもタイヤ半径方向RD内側に配置している。そのため、この例では、ビードフィラー24の外端24Cよりもタイヤ半径方向RD外側では、プライ重なり部48と、第2プライ44のプライ本体部44Aと、第1プライ42の折返し部42Bとにより、合計4枚のプライが重ねられることで補強されている。なお、第1プライ42の折返し部42Bの高さをビードフィラー24の外端24Cよりも低くして、プライ重なり部48と、第2プライ44のプライ本体部44Aとにより、合計3枚のプライが重ねられるようにしてもよい。
【0059】
第3実施形態について、その他の構成及び効果は第1実施形態と同じであり、説明は省略する。なお、
図6に示す構造を、第2実施形態のように、左右双方のサイド部に適用して左右対称のタイヤに構成してもよい。
【0060】
[第4実施形態]
図7は第4実施形態に係る空気入りタイヤ10Cの半断面模式図である。第4実施形態では、第2プライ44にプライ重なり部74を設けた点で、第1プライ42にプライ重なり部48を設けた第1実施形態とは異なる。
【0061】
すなわち、第4実施形態では、第1プライ42は一対のビードコア18,18間にわたって連なる1枚のプライ片で構成されている。その一方、中抜きプライである第2プライ44は、ベルト端22A1とビードコア18との間の範囲R1(
図1参照)内に、第1実施形態のプライ重なり部48と同様のプライ重なり部74を有している。詳細には、車両装着外側の第2プライ44が外側プライ片70と内側プライ片72との2枚のプライ片で構成されている。図示しないが、車両装着内側の第2プライ44は、第1実施形態と同様、1枚のプライ片で構成されている。
【0062】
外側プライ片70は、トレッド16の端部から車両装着外側のサイドウォール14をタイヤ半径方向RD内側に延在し、車両装着外側のサイドウォール14において終端している。この例では、外側プライ片70は、第1実施形態の外側プライ片50と同様、ビードフィラー24の外端24Cよりもタイヤ半径方向RD外側に位置する端末70A1で終端している。
【0063】
内側プライ片72は、外側プライ片70の端末70A1よりもタイヤ半径方向RD外側に位置する端末72A1を起点としてタイヤ半径方向RD内側に延び、ビードコア18で折り返されて、車両装着外側の折返し部44Bの外側端44B1で終端している。内側プライ片72の端末72A1は、第1実施形態の内側プライ片52と同様、カーカスプライ20におけるベルト端22A1に相当する位置よりもビードコア18側に位置している。
【0064】
そして、外側プライ片70の内側端部70Aと内側プライ片72の外側端部72Aとを重ね合わせることにより、プライ重なり部74が形成されている。この例では、外側プライ片70の内側端部70Aのタイヤ外面側に内側プライ片72の外側端部72Aが重ねられている。そのため、外側プライ片70の内側端部70Aは、第1プライ42のプライ本体部42Aと内側プライ片72の外側端部72Aとの間に挟まれている。
【0065】
プライ重なり部74のタイヤ半径方向RDにおける配置は、第1実施形態のプライ重なり部48と同様である。従って、プライ重なり部74は、ビードフィラー24との間で重なりを有しておらず、ベルト端22A1とビードフィラー24の外端24Cとの間に設けられている。
【0066】
この例では、第1プライ42の折返し部42Bの高さと第2プライ44の折返し部44Bの高さがともに低く形成されている。詳細には折返し部42Bの外側端42B1と折返し部44Bの外側端44B1を、ともにビードフィラー24の外端24Cよりもタイヤ半径方向RD内側に配置している。そのため、この例では、サイドウォール14の一部は、プライ重なり部74と、第1プライ42のプライ本体部42Aとにより、合計3枚のプライが重ねられることで補強されている。
【0067】
本実施形態であると、第1プライ42を一対のビードコア18,18間にわたって連なる1枚のプライ片で構成したことにより、グリーンタイヤの作製時におけるカーカスプライ20のタイヤ半径方向RD外方への拡張時に第1プライ42により張力を負担することができる。そのため、製造安定性に優れる。
【0068】
第4実施形態について、その他の構成及び効果は第1実施形態と同じであり、説明は省略する。なお、
図7に示す構造を、第2実施形態のように、左右双方のサイド部に適用して左右対称のタイヤに構成してもよい。
【0069】
[その他]
第1~3実施形態で例示したような第1プライ42にプライ重なり部48を設ける構成と、第4実施形態で例示したような第2プライ44にプライ重なり部74を設ける構成とを組み合わせてもよい。
【0070】
本実施形態における各部の寸法やタイヤ最大幅位置等は、空気入りタイヤを正規リムに装着して正規内圧を充填して無負荷状態で測定される値である。正規リムとは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、当該規格がタイヤ毎に定めるリムであり、例えばJATMAであれば標準リム、TRAであれば"Design Rim"、ETRTOであれば"MeasuringRim"である。正規内圧とは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている空気圧であり、JATMAであれば最高空気圧、TRAであれば表"TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES"に記載の最大値、ETRTOであれば"INFLATION PRESSURE"である。
【0071】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これら実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0072】
10,10A,10B,10D…空気入りタイヤ、13…サイド部、16…トレッド、18…ビードコア、20…カーカスプライ、22…ベルト、22A1…ベルト端、42…第1プライ、44…第2プライ、46…欠落部、48,74…プライ重なり部、50,60,70…外側プライ片、52,62,72…内側プライ片、WD…タイヤ軸方向、RD…タイヤ半径方向