(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-18
(45)【発行日】2024-11-26
(54)【発明の名称】濃淡バーナ
(51)【国際特許分類】
F23D 14/08 20060101AFI20241119BHJP
【FI】
F23D14/08 H
F23D14/08 C
(21)【出願番号】P 2020196624
(22)【出願日】2020-11-27
【審査請求日】2023-09-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000115854
【氏名又は名称】リンナイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000305
【氏名又は名称】弁理士法人青莪
(72)【発明者】
【氏名】太田 弘逸
【審査官】大谷 光司
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-317070(JP,A)
【文献】特開2004-308945(JP,A)
【文献】特開平07-310906(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23D 14/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上端部に、理論空燃比よりも燃料濃度が希薄な淡混合気を噴出する前後方向に長手の淡炎口と、淡炎口の少なくとも横方向一側に所定の横幅の空隙部を存して隣接し、理論空燃比よりも燃料濃度が濃い濃混合気を噴出する濃炎口とを有する濃淡バーナであって、
バーナ構成部材として、横方向に対峙する一対の側板を有し、これら両側板の上端部間に淡炎口と空隙部とが画成されるバーナ本体と、バーナ本体を少なくとも横方向一側から覆う側板を有し、この側板の上端部とバーナ本体の側板の上端部との間に濃炎口が画成されるバーナキャップと、バーナ本体の両側板の上端部間に装着され、淡炎口を横方向複数の領域に区分けする複数の整流板を有する整流部材とを備え、
整流部材の前後複数個所に、複数の整流板同士をこれら整流板の上部で密着させて淡炎口を前後方向に分割する絞り部が設けられると共に、淡炎口と空隙部とを仕切る整流部材の横方向最外側の整流板に、淡混合気の一部を空隙部に導入する複数の導入孔が形成されるものにおいて、
導入孔は、横方向最外側の整流板の絞り部以外の部分であって、絞り部の下端よりも上方に位置する部分に、前後方向の間隔を存して複数形成され
、
横方向最外側の整流板の上端と導入孔との間の上下方向距離は、空隙部の横幅以下であることを特徴とする濃淡バーナ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、上端部に、理論空燃比よりも燃料濃度が希薄な淡混合気を噴出する前後方向に長手の淡炎口と、淡炎口の少なくとも横方向一側に所定の横幅の空隙部を存して隣接し、理論空燃比よりも燃料濃度が濃い濃混合気を噴出する濃炎口とを有する濃淡バーナに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の濃淡バーナは、バーナ構成部材として、横方向に対峙する一対の側板を有し、これら両側板の上端部間に淡炎口と空隙部とが画成されるバーナ本体と、バーナ本体を少なくとも横方向一側から覆う側板を有し、この側板の上端部とバーナ本体の側板の上端部との間に濃炎口が画成されるバーナキャップと、バーナ本体の両側板の上端部間に装着され、淡炎口を横方向複数の領域に区分けする複数の整流板を有する整流部材とを備えている。また、整流部材の前後複数個所には、複数の整流板同士をこれら整流板の上部で密着させて淡炎口を前後方向に分割する絞り部が設けられている。
【0003】
ところで、このような濃淡バーナにおいて、濃炎口から噴出する濃混合気は、淡炎口と反対の外側部分では、バーナ外側に流れる二次空気が供給されて燃焼し、淡炎口寄りの内側部分では、淡炎口との間の空隙部の上方位置で淡混合気中の余剰空気が供給されて燃焼する。然し、濃混合気に淡混合気中の余剰空気が供給されて空気過剰率が1.0となる位置が高くなると、濃混合気の燃焼で形成される濃火炎の淡炎口側の基部が不安定になり、60~80Hzの比較的低い周波数の振動燃焼を生じて、燃焼騒音の原因になることがある。
【0004】
そこで、従来、特許文献1により、淡炎口と空隙部とを仕切る整流部材の横方向最外側の整流板に、淡混合気の一部を空隙部に導入する複数の導入孔を形成した濃淡バーナが知られている。これによれば、濃混合気に淡混合気中の余剰空気が供給されて空気過剰率が1.0となる位置が空隙部からの淡混合気の供給で低くなる。
【0005】
然し、特許文献1に記載のものでは、横方向最外側の整流板の絞り部の下端よりも下方に位置する部分に導入孔を形成しているため、以下の不具合を生ずることが判明した。即ち、淡混合気は、バーナ本体下部の淡混合管部の下流端からバーナ本体内の淡通路部を介して淡炎口に供給されるが、淡混合管部の下流端から前後方向にある程度以上離れた淡炎口の部分には、前後方向の方向成分を持って淡混合気が流入する。そして、上記の如く横方向最外側の整流板の絞り部の下端よりも下方に位置する部分に導入孔を形成していると、淡混合気が空隙部にも導入孔を介して前後方向の方向成分を持って流入し、空隙部の上方における淡混合気の分布に前後方向で大きな分布むらを生ずる。その結果、淡混合気の分布が悪くなる部分では、濃混合気に淡混合気中の余剰空気が供給されて空気過剰率が1.0となる位置が高くなってしまい、60~80Hzの比較的低い周波数の振動燃焼を生じて、燃焼騒音を十分に抑制できなくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、以上の点に鑑み、比較的低い周波数の振動燃焼による燃焼騒音を十分に抑制できるようにした濃淡バーナを提供することをその課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明は、上端部に、理論空燃比よりも燃料濃度が希薄な淡混合気を噴出する前後方向に長手の淡炎口と、淡炎口の少なくとも横方向一側に所定の横幅の空隙部を存して隣接し、理論空燃比よりも燃料濃度が濃い濃混合気を噴出する濃炎口とを有する濃淡バーナであって、バーナ構成部材として、横方向に対峙する一対の側板を有し、これら両側板の上端部間に淡炎口と空隙部とが画成されるバーナ本体と、バーナ本体を少なくとも横方向一側から覆う側板を有し、この側板の上端部とバーナ本体の側板の上端部との間に濃炎口が画成されるバーナキャップと、バーナ本体の両側板の上端部間に装着され、淡炎口を横方向複数の領域に区分けする複数の整流板を有する整流部材とを備え、整流部材の前後複数個所に、複数の整流板同士をこれら整流板の上部で密着させて淡炎口を前後方向に分割する絞り部が設けられると共に、淡炎口と空隙部とを仕切る整流部材の横方向最外側の整流板に、淡混合気の一部を空隙部に導入する複数の導入孔が形成されるものにおいて、導入孔は、横方向最外側の整流板の絞り部以外の部分であって、絞り部の下端よりも上方に位置する部分に、前後方向の間隔を存して複数形成され、横方向最外側の整流板の上端と導入孔との間の上下方向距離は、空隙部の横幅以下であることを特徴とする。
【0009】
ここで、整流部材の絞り部の下端より上方の絞り部以外の部分では、淡混合気の流れが真直ぐ上を向くように整流される。従って、本発明の如く、横方向最外側の整流板の絞り部以外の部分であって、絞り部の下端よりも上方に位置する部分に導入孔を形成すれば、空隙部に各導入孔から前後方向の方向成分を殆ど持たずに淡混合気が流入する。そのため、空隙部の上方における淡混合気の分布に前後方向で大きな分布むらを生じなくなり、濃混合気に淡混合気中の余剰空気が供給されて空気過剰率が1.0となる位置が全体的に低くなる。その結果、60~80Hzの比較的低い周波数の振動燃焼による燃焼騒音を十分に抑制することができる。
【0010】
また、本発明によれば、上記の如く横方向最外側の整流板の上端と導入孔との間の上下方向距離が空隙部の横幅以下であるため、導入孔から空隙部に流入した淡混合気が、空隙部内で外側(濃炎口側)まで拡散せずに、横方向最外側の整流板に近い位置で空隙部の上方に流れることになる。そして、この淡混合気の流れにより、横方向最外側の整流板の上端近傍での還流渦の発生が抑制され、これに起因する150~200Hzの比較的高い周波数の振動燃焼も抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図2】実施形態の濃淡バーナのバーナ本体と整流部材の分離状態の斜視図。
【
図4】
図3のIV-IVで切断した拡大切断正面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1乃至
図4を参照して、1は本発明の実施形態の濃淡バーナを示している。この濃淡バーナ1は、上端部に、理論空燃比より燃料濃度が希薄な淡混合気を噴出する前後方向に長手の淡炎口2と、淡炎口2の横方向両側に夫々所定の横幅の空隙部3,3を存して隣接する、理論空燃比より燃料濃度が濃い濃混合気を噴出する一対の濃炎口4,4とを有する。
【0013】
濃淡バーナ1は、バーナ構成部材として、横方向に対峙する一対の側板51,51を有し、これら両側板51,51の上端部間に淡炎口2とその横方向両側の空隙部3,3とが画成されるバーナ本体5と、バーナ本体5を横方向両側から覆う一対の側板61,61を有し、これら両側板61,61の上端部とバーナ本体5の両側板51,51の上端部との間に濃炎口4,4が画成されるバーナキャップ6と、バーナ本体5の両側板51,51の上端部間に装着され、淡炎口2を横方向複数の領域に区分けする複数の整流板を有する整流部材7とを備える。
【0014】
バーナ本体5の両側板51,51は、一枚の板をバーナ本体5の下縁となる折り曲げ線で合掌状態に折り曲げることにより形成されている。また、バーナ本体5には、両側板51,51をプレス加工することで形成した、バーナ本体5の下部前端に開口する流入口52aから後方にのびる淡混合管部52と、淡混合管部52からの淡混合気を淡炎口2に導く淡通路部53とが設けられている。淡混合管部52の流入口52aの開口面積は比較的広く、この流入口52aに対向する淡ガスノズル(図示せず)からの燃料ガスと共に比較的多量の一次空気が淡混合管部52に流入して、淡混合気が生成される。淡通路部53は、淡混合管部52の後端部から上方に向かって前方に広がるようにのびている。
【0015】
また、バーナ本体5の淡混合管部52と淡通路部53との間の部分には、両側板51,51をプレス加工することで形成した濃混合管部54が設けられている。濃混合管部54は、バーナ本体5の前端に開口する流入口54aから後方に少しのびて終端しており、その後部外側面に流出孔54bが開設されている。濃混合管部54の流入口54aの開口面積は比較的狭く、この流入口54aに対向する濃ガスノズル(図示せず)からの燃料ガスと共に比較的少量の一次空気が濃混合管部54に流入して、濃混合気が生成される。
【0016】
濃混合管部54の流出孔54bから流出する濃混合気は、バーナ本体5の各側板51とバーナキャップ6の各側板61との間に画成される濃通路部62を介して各濃炎口4に導かれる。また、バーナキャップ6の各側板61の上部の前後複数個所には、濃炎口4を前後複数(具体的には12個)のブロックに区画する凹部63が形成されている。
【0017】
整流部材7は、横方向内側の一対の内側整流板71,71と、横方向両外側に位置する一対の外側整流板72,72とを有している。そして、整流部材7に、これら内側と外側の整流板71,72同士をその上部で密着させて淡炎口2を前後複数(具体的には12個)のブロックに区画する前後複数個所の絞り部73を設けている。尚、
図2で♯1の符号を付した前から3番、6番、9番の絞り部73以外の絞り部73は、上方部分では外側整流板72を内側整流板71に密着させ、下方部分では内側整流板71,71同士を密着させるように形成されている。
【0018】
ここで、整流部材7の各絞り部73の前後方向位置とバーナキャップ6の側板61の各凹部63の前後方向位置とは同一である。また、♯1の符号を付した絞り部73と前後方向位置が同一の
図1で♯1の符号を付した凹部63は、他の凹部63よりも大きい。更に、バーナキャップ6に、♯1の符号を付した各絞り部73及び各凹部63と同一の前後方向位置で、バーナキャップ6の両側板61,61をその上縁で連結するブリッジ部64を設けている。
【0019】
バーナ本体5の各側板51の上部には、外側整流板7に絞り部73よりも下方位置で接する前後方向に長手の凹条55が形成されており、この凹条55よりも上方の側板51の部分と外側整流板72との間に空隙部3が画成される。従って、整流部材7の横方向最外側の整流板たる外側整流板72により淡炎口2と空隙部3とが仕切られることになる。
【0020】
外側整流板72には、淡炎口2に流入した淡混合気の一部を空隙部3に導入する複数の導入孔74が形成されている。空隙部3に導入孔74から淡混合気を導入すれば、濃炎口4から噴出する濃混合気に空隙部3を通過した淡混合気中の余剰空気が供給される。そのため、濃混合気に淡混合気中の余剰空気が供給されて空気過剰率が1.0となる位置が低くなり、この位置が高くなることで発生する60~80Hzの比較的低い周波数の振動燃焼を抑制することができる。
【0021】
ところで、淡混合気は、淡混合管部52の下流端から淡通路部53を介して淡炎口2に供給されるが、淡混合管部52の下流端たる後端から前方にある程度以上離れた淡炎口2の部分には、前方への方向成分を持って淡混合気が流入する。そして、
図5に2点鎖線で示す如く、各絞り部73の下端よりも下方に位置する部分に導入孔74´が形成されていると、淡混合気が空隙部3にも導入孔74´を介して前方への方向成分を持って流入し、空隙部3の上方における淡混合気の分布に前後方向で大きな分布むらを生ずる。その結果、淡混合気の分布が悪くなる部分(
図5にAで示す部分)では、濃混合気に淡混合気中の余剰空気が供給されて空気過剰率が1.0となる位置が
図5にb線で示す如く高くなってしまい、60~80Hzの比較的低い周波数の振動燃焼を生じて、燃焼騒音を十分に抑制できなくなる。
【0022】
そこで、本実施形態では、外側整流板72の絞り部73以外の部分であって、絞り部73の下端よりも上方に位置する部分に、前後方向の間隔を存して複数の導入孔74を形成している。これによれば、絞り部73の下端より上方の絞り部73以外の部分で真直ぐ上を向くように整流された淡混合気が各導入孔74から空隙部3に前後方向の方向成分を殆ど持たずに流入する。そのため、空隙部3の上方における淡混合気の分布に前後方向で大きな分布むらを生じなくなり、濃混合気に淡混合気中の余剰空気が供給されて空気過剰率が1.0となる位置が
図5にa線で示す如く全体的に低くなる。その結果、60~80Hzの比較的低い周波数の振動燃焼による燃焼騒音を十分に抑制することができる。
【0023】
ところで、導入孔74から空隙部3に流入した淡混合気が空隙部3の全幅に亘って拡散してから空隙部3の上方に流れると、外側整流板72の上端近傍での淡炎口2からの淡混合気の還流渦の発生を抑制できなくなる。外側整流板72の上端近傍で還流渦が発生すると、淡混合気の燃焼で形成される淡火炎の基部の燃焼速度が還流渦の影響を受けて大きく変動し、150~200Hzの比較的高い周波数の振動燃焼が発生してしまう。
【0024】
そこで、本実施形態では、外側整流板72の上端と導入孔74との間の上下方向距離Lを空隙部3の横幅W以下にしている。例えば、上記横幅Wを1.6mm、上記上下方向距離Lを1.0mmに設定している。これによれば、導入孔74から空隙部3に流入した淡混合気が、空隙部3内で外側(濃炎口4側)まで拡散せずに、外側整流板72に近い位置で空隙部3の上方に流れることになる。そして、この淡混合気の流れにより、外側整流板72の上端近傍での還流渦の発生が抑制され、これに起因する150~200Hzの比較的高い周波数の振動燃焼も抑制できる。
【0025】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、上記実施形態では、淡炎口2の横方向両側に空隙部3,3を介して一対の濃炎口4,4が設けられているが、淡炎口の横方向片側だけに空隙部を介して濃炎口を設けた濃淡バーナにも同様に本発明を適用できる。
【符号の説明】
【0026】
1…濃淡バーナ、2…淡炎口、3…空隙部、4…濃炎口、5…バーナ本体、51…側板、6…バーナキャップ、61…側板、7…整流部材、72…外側整流板(横方向最外側の整流板)、73…絞り部、74…導入孔。