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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-18
(45)【発行日】2024-11-26
(54)【発明の名称】空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 11/13 20060101AFI20241119BHJP
【FI】
B60C11/13 C
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020201310
(22)【出願日】2020-12-03
(65)【公開番号】P2022089076
(43)【公開日】2022-06-15
【審査請求日】2023-10-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003395
【氏名又は名称】弁理士法人蔦田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】谷口 二朗
【審査官】菅 和幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-269500(JP,A)
【文献】特開2005-280455(JP,A)
【文献】特開2020-152126(JP,A)
【文献】特開2010-030583(JP,A)
【文献】特開2019-064591(JP,A)
【文献】特開2016-068628(JP,A)
【文献】特開昭49-096403(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 11/13
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤ周方向に延びる複数の主溝と、前記主溝に交差する方向に延びる複数の横溝とにより、トレッドにブロック列が設けられた空気入りタイヤにおいて、
前記横溝は、タイヤ幅方向両側に位置する一対の第1横溝部と、一対の前記第1横溝部の間に位置し前記第1横溝部より溝幅が狭い第2横溝部とを備え、
前記第1横溝部は、前記主溝よりも浅い深さを持つ第1浅溝部を有し、
前記第2横溝部は、前記第1浅溝部よりも浅い深さを持つ第2浅溝部を有し、
前記ブロック列が、前記トレッドのタイヤ幅方向中央部に位置し前記主溝間に挟まれたセンターブロック列を含み、
前記センターブロック列に設けられた前記第1横溝部は、前記センターブロック列の幅方向中心に行くに従ってタイヤ周方向一方へ向かうように傾斜した後、屈曲部において長さ方向が変化し、タイヤ周方向他方へ向かうように逆向きに傾斜し、
前記センターブロック列に設けられた前記第1浅溝部のタイヤ幅方向外側端が、前記屈曲部よりタイヤ幅方向外側に位置する空気入りタイヤ。
【請求項2】
複数の前記主溝は、タイヤ幅方向外側に形成された一対のショルダー主溝を含み、
前記ブロック列のタイヤ幅方向外側に一対の前記ショルダー主溝と接地端との間に形成された一対のショルダー陸部を備え、
前記ブロック列が、一対の前記ショルダー陸部の内側に位置し、
前記ブロック列を構成するブロックにタイヤ幅方向に延びる第1サイプが設けられ、
前記ショルダー陸部にタイヤ周方向に延びる第2サイプが設けられている請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
空気入りタイヤのトレッドには、タイヤ周方向に延びる複数の周方向溝が設けられており、周方向溝により区画された陸部に横溝を設けて、複数のブロックからなるブロック列を設けた、ブロックパターンのタイヤも知られている。
【0003】
このようなブロックパターンのタイヤでは、タイヤ周方向におけるブロック剛性を高めて耐偏摩耗性を向上するために、横溝の溝底から隆起するブリッジを設けて、横溝を挟んでタイヤ周方向に隣接するブロックを繋ぐことが提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2010-69956
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、横溝にブリッジを設けると横溝の溝容積が小さくなり、排雪性や排土性の低下の要因となる。
【0006】
本発明はこのような実情に鑑みてなされたものであり、排雪性や排土性の低下を抑えつつ、タイヤ周方向におけるブロック剛性を高め、耐偏摩耗性を向上することができる空気入りタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の空気入りタイヤは、タイヤ周方向に延びる複数の主溝と、前記主溝に交差する方向に延びる複数の横溝とにより、トレッドにブロック列が設けられた空気入りタイヤにおいて、前記横溝は、タイヤ幅方向両側に位置する一対の第1横溝部と、一対の前記第1横溝部の間に位置し前記第1横溝部より溝幅が狭い第2横溝部とを備え、前記第1横溝部は、前記主溝よりも浅い深さを持つ第1浅溝部を有し、前記第2横溝部は、前記第1浅溝部よりも浅い深さを持つ第2浅溝部を有し、
前記ブロック列が、前記トレッドのタイヤ幅方向中央部に位置し前記主溝間に挟まれたセンターブロック列を含み、
前記センターブロック列に設けられた前記第1横溝部は、前記センターブロック列の幅方向中心に行くに従ってタイヤ周方向一方へ向かうように傾斜した後、屈曲部において長さ方向が変化し、タイヤ周方向他方へ向かうように逆向きに傾斜し、
前記センターブロック列に設けられた前記第1浅溝部のタイヤ幅方向外側端が、前記屈曲部よりタイヤ幅方向外側に位置する空気入りタイヤ。
【発明の効果】
【0008】
上記の空気入りタイヤでは、排雪性や排土性の低下を抑えつつ、タイヤ周方向におけるブロック剛性を高め、耐偏摩耗性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の第1実施形態に係る空気入りタイヤの半断面図
図2図1の空気入りタイヤのトレッド部及びバットレス部の展開図
図3図2の要部拡大図
図4図1のA-A断面図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照して説明する。図1は空気入りタイヤTのタイヤ子午線断面図、図2は空気入りタイヤTの展開図である。図1では右半分のみを示している。
【0011】
図中、符号CLは、タイヤ幅方向中心に相当するタイヤ赤道面を示す。この例では、空気入りタイヤTは、タイヤ赤道面CLに関して左右対称である。
【0012】
ここで、タイヤ幅方向とは、タイヤ回転軸に平行な方向であり、図において符号WDに示す。タイヤ幅方向WD内側とはタイヤ赤道面CLに近づく方向であり、タイヤ幅方向WD外側とはタイヤ赤道面CLから離れる方向である。また、タイヤ径方向とは、タイヤ回転軸に垂直な方向であり、図において符号RDで示す。タイヤ径方向RD内側とはタイヤ回転軸に近づく方向であり、タイヤ径方向RD外側とはタイヤ回転軸から離れる方向である。タイヤ周方向とは、タイヤ回転軸を中心とした円周上の方向であり、図において符号CDに示す。である。
【0013】
本明細書では、特に断らない限り、空気入りタイヤの各部の寸法等は、空気入りタイヤを正規リムに装着して正規内圧を充填した無負荷の正規状態でのものである。
【0014】
また、図1及び図2において、符号Eは、空気入りタイヤを正規リムに装着し、正規内圧を充填した状態で平坦な路面に垂直に置き、正規荷重を加えた状態における接地端を示す。
【0015】
正規リムとは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、当該規格がタイヤ毎に定めるリムであり、例えばJATMAであれば標準リム、TRAであれば"Design Rim"、ETRTOであれば"MeasuringRim"である。正規内圧とは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている空気圧であり、JATMAであれば最高空気圧、TRAであれば表"TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES"に記載の最大値、ETRTOであれば"INFLATION PRESSURE"である。
【0016】
また、正規荷重は、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている荷重であり、JATMAであれば最大負荷能力、TRAであれば上記の表に記載の最大値、ETRTOであれば"LOAD CAPACITY"である。
【0017】
この空気入りタイヤTは、左右一対のビード1と、そのビード1からタイヤ径方向外側に延びる左右一対のサイドウォール2と、サイドウォール2の各々のタイヤ径方向外側端に連なるトレッド3と、トレッド3のタイヤ径方向内側に配置された左右一対のバットレス14とを備えてなる。バットレス14は、サイドウォール2とトレッド3との境界領域であり、サイドウォール2とトレッド3との間を繋ぐように設けられている。
【0018】
ビード1には、環状のビードコア1aとビードフィラー1bが設けられている。一対のビード1間にはトロイダル状のカーカス4が設けられている。
【0019】
カーカス4は、トレッド3からバットレス14及びサイドウォール2を経て、ビード1にてビードコア1aにより係止されており、ビード1、サイドウォール2、バットレス14及びトレッド3を補強する。カーカス4は、この例では、両端部がビードコア1aの周りをタイヤ幅方向内側から外側に折り返すことにより係止されている。カーカス4の内側には、空気圧を保持するためのインナーライナーが配設されている。
【0020】
カーカス4は、有機繊維やスチールのコードをタイヤ周方向CDに対して所定の角度(例えば、70°~90°)で配列し、トッピングゴムで被覆してなる少なくとも1枚のプライを有している。この例では2プライで構成されている。カーカス4を構成する有機繊維コードとしては、例えば、ポリエステル繊維、レーヨン繊維、アラミド繊維、ナイロン繊維等が好ましく用いられる。
【0021】
サイドウォール2においてカーカス4の外側(即ち、タイヤ外面側)にはサイドウォールゴム5が設けられている。
【0022】
トレッド3には、カーカス4のタイヤ径方向RD外側にベルト層6が設けられるとともに、ベルト層6のタイヤ径方向RD外側にトレッドゴム7が積層されている。
【0023】
ベルト層6は、トレッドゴム7のタイヤ径方向RD内側に設けられた複数のベルト8、9から構成されている。ベルト8、9は、スチールコード等のベルトコードをタイヤ周方向CDに対して例えば10°~35°の傾斜した角度で配列しゴムで被覆してなる。この例では、ベルト層6は、タイヤ径方向RD内側から順に、第1ベルト8及び第2ベルト9の2枚のベルトを持つ二層構造である。なお、ベルト層6は、2枚の場合に限定されるものではなく、3枚以上のものであってもよい。
【0024】
第1ベルト8は、タイヤ径方向RDにおいて最も内側に配される最内ベルトである。第1ベルト8は、2枚のベルトのうち、幅(ベルト幅、即ちベルトのタイヤ幅方向WDにおける寸法)が最大である最大幅ベルト(以下、第1ベルト8を「最大幅ベルト8」ということもある。)である。第2ベルト9は、タイヤ径方向RDにおいて最も外側に配される最外ベルト(以下、第2ベルト9を「外側ベルト9」ということもある。)である。
【0025】
最大幅ベルト8とカーカス4との間には、最大幅ベルト8のタイヤ幅方向端(以下、「最大幅ベルト端8a」ということもある)に行くに従ってカーカス4から次第に離隔するように、有機繊維やスチールのコード等のコード補強材を含まないベルト下ゴム層10が設けられている。
【0026】
外側ベルト9は、タイヤ幅方向WD全体にわたって最大幅ベルト8のタイヤ径方向外側に重ねられており、外側ベルト9のタイヤ幅方向端9a(以下、「外側ベルト端9a」ということもある)も最大幅ベルト8のタイヤ径方向外側に重ねられている。
【0027】
トレッドゴム7は、路面と接触するトレッド面を備えるキャップゴム層12と、該キャップゴム層12のタイヤ径方向RD内側に配されたベースゴム層13とからなる二層構造をなす。トレッドゴム7は、サイドウォールゴム5のタイヤ径方向外端部を覆っている。
【0028】
キャップゴム層12は、そのタイヤ幅方向外端部が、ベースゴム層13のタイヤ幅方向外端部を覆い、かつ、当該ベースゴム層13のタイヤ幅方向外端よりもタイヤ径方向RD内側で終端している。すなわち、キャップゴム層12のタイヤ幅方向外端は、ベースゴム層13のタイヤ幅方向外端よりも、タイヤ幅方向WD外側かつタイヤ径方向RD内側に位置している。これにより、ベースゴム層13は、その全幅がキャップゴム層12により覆われており、タイヤ外側面に露出していない。
【0029】
キャップゴム層12には、タイヤ周方向CDに沿って延びる複数の主溝20A、20A、20B、20Bがタイヤ幅方向WDに間隔をあけて形成されている。この例では、タイヤ赤道面CLの両側に設けられた一対のセンター主溝20A、20Aと、その外側にそれぞれ配された一対のショルダー主溝20B、20Bである。4本の主溝20A、20A、20B、20Bは、タイヤ幅方向WDに振幅を持って屈曲しながらタイヤ周方向CDに延びるジグザグ状の溝である。
【0030】
キャップゴム層12には溝20A、20A、20B、20Bによって複数の陸部がタイヤ幅方向WDに区画形成されている。詳細には、一対のセンター主溝20A、20A間に挟まれたセンター陸部21と、センター主溝20Aとショルダー主溝20Bの間に挟まれた左右一対の中間陸部22と、ショルダー主溝20Bと接地端Eとの間に形成された左右一対のショルダー陸部23とが設けられている。
【0031】
センター陸部21には、センター主溝20Aに対して交差して延びるセンター横溝24がタイヤ周方向CDに間隔をおいて複数設けられている。センター横溝24は、センター陸部21を横断するように設けられている。センター陸部21は、センター横溝24により区画された複数のセンターブロックをタイヤ周方向CDに配設してなるセンターブロック列として形成されている。
【0032】
図3及び図4に示すように、センター横溝24は、タイヤ幅方向WDの両側に設けられた一対の第1センター横溝部34と、一対の第1センター横溝部34の間に設けられた第2センター横溝部35とを備える。
【0033】
一対の第1センター横溝部34は、タイヤ幅方向WDの一端が互いにタイヤ周方向CDにずれた位置においてセンター主溝20Aに開口している。第1センター横溝部34は、センター主溝20A側からセンターブロックの幅方向中心に行くに従ってタイヤ周方向一方へ向かうように傾斜した後、屈曲部34a(図3参照)において第1センター横溝部34の長さ方向が変化し、タイヤ周方向他方へ向かうように逆向きに傾斜する。
【0034】
第2センター横溝部35は、第1センター横溝部34より溝幅が狭い幅狭な横溝であって、タイヤ幅方向WDに対して傾斜する方向に延び、一対の第1センター横溝部34を連結する。
【0035】
このような一対の第1センター横溝部34及び第2センター横溝部35には、センター横溝24を挟んで対向するセンターブロックの横側面21a(図3参照)を連結するブリッジ37が設けられおり、ブリッジ37が設けられた位置においてセンター主溝20Aに対して深さの浅い浅溝部38、39が形成されている(図4参照)。
【0036】
具体的には、ブリッジ37は、センター主溝20Aの溝底と同じ高さにあるセンター横溝24の溝底部分から隆起する量が、第1センター横溝部34より第2センター横溝部35において大きく設けられている。これにより、第1センター横溝部34には、センター主溝20Aより溝深さが浅い第1浅溝部38が形成され、第2センター横溝部35には、第1浅溝部38よりも浅い深さを持つ第2浅溝部39が形成されている。
【0037】
このようなブリッジ37は、第1浅溝部38のタイヤ幅方向外側端が、屈曲部34aよりタイヤ幅方向外側に位置するように、第1センター横溝部34の屈曲部34aよりタイヤ幅方向外側に設けられてもよい。
【0038】
中間陸部22には、センター主溝20A及びショルダー主溝20Bに対して交差して延びる中間横溝25がタイヤ周方向CDに間隔をおいて複数設けられている。中間横溝25は、中間陸部22を横断するように設けられている。中間陸部22は、中間横溝25により区画された複数の中間ブロックをタイヤ周方向CDに配設してなる中間ブロック列として形成されている。
【0039】
中間横溝25は、タイヤ幅方向WDの両側に設けられた一対の第1中間横溝部40と、一対の第1中間横溝部40の間に設けられた第2中間横溝部41とを備える。
【0040】
一対の第1中間横溝部40は、タイヤ幅方向WDの一端が互いにタイヤ周方向CDにずれた位置において主溝20A、20Bに開口している。第1中間横溝部40は、主溝20A、20B側から中間ブロックの幅方向中心に行くに従ってタイヤ周方向一方へ向かうように傾斜する。
【0041】
第2中間横溝部41は、第1中間横溝部40より溝幅が狭い幅狭な横溝であって、タイヤ幅方向WDに対して傾斜する方向に延び、一対の第1中間横溝部40を連結する。
【0042】
このような一対の第1中間横溝部40及び第2中間横溝部41には、中間横溝25を挟んで対向する中間ブロックの横側面22a(図3参照)を連結するブリッジ42が設けられおり、ブリッジ42が設けられた位置においてセンター主溝20Aやショルダー主溝20Bに対して深さの浅い浅溝部43,44が形成されている(図4参照)。
【0043】
具体的には、ブリッジ42は、センター主溝20Aやショルダー主溝20Bの溝底と同じ高さにある中間横溝25の溝底部分から隆起する量が、第1中間横溝部40より第2中間横溝部41において大きく設けられている。これにより、第1中間横溝部40には、ショルダー主溝20Bより溝深さが浅い第1浅溝部43が形成され、第2中間横溝部41には、第1浅溝部43よりも浅い深さを持つ第2浅溝部44が形成されている。
【0044】
第1浅溝部38、43及び第2浅溝部39、44の溝深さは、例えば、次のように設定してもよい。第1浅溝部38、43の溝深さは、センター主溝20A又はショルダー主溝20Bの溝深さの50~70%であることが好ましい。第2浅溝部39、44の溝深さは、センター主溝20A又はショルダー主溝20Bの溝深さの15~25%であることが好ましい。センター主溝20A、ショルダー主溝20B、第1浅溝部38、43、第2浅溝部39、44の溝深さの一例を挙げると、センター主溝20A及びショルダー主溝20Bの溝深さが8~12mm、第1浅溝部38、43の溝深さが4~8.4mm、第2浅溝部39、44の溝深さが1.2~3.0mmとすることができる。
【0045】
センター陸部21及び中間陸部22に設けられたセンターブロック及び中間ブロックには、タイヤ幅方向WDに延びる第1サイプ51及び第3サイプ53が設けられている。
【0046】
第1サイプ51は、センターブロック及び中間ブロックのタイヤ周方向中央部にブロックを貫通するように設けられている。第1サイプ51はタイヤ幅方向WDに対して若干傾斜する方向へ波状に延びる。
【0047】
第3サイプ53は、第1サイプ51のタイヤ周方向両側にタイヤ周方向CDに間隔をあけ、第1サイプ51と同じ方向に傾斜するように複数本設けられている。第3サイプ53は、センターブロック及び中間ブロック内で終端するように設けられている。
【0048】
第1サイプ51及び第3サイプ53は、空気入りタイヤを正規リムに装着し正規内圧を充填した状態で路面に接地させ、正規荷重を負荷したときに路面への開口部が閉じる微小な溝幅を持つ切れ込みであり、第1サイプ51が第3サイプ53より溝幅が大きい。
【0049】
ショルダー陸部23には、ショルダー主溝20Bに対して交差して延びるショルダー横溝26がタイヤ周方向CDに間隔をおいて複数設けられている。ショルダー横溝26は、タイヤ幅方向外側が接地端Eにおいて開口し、タイヤ幅方向内側がショルダー主溝20Bに開口することなくショルダー陸部23内で終端する。
【0050】
ショルダー横溝26は、ショルダー主溝20B側(タイヤ幅方向内側)に第1横溝部27と、第1横溝部27のタイヤ幅方向外側に第1横溝部27より溝幅が幅広に設けられた第2横溝部28と、第1横溝部27と第2横溝部28を繋ぐ連結部29とを備える。第2横溝部28は、最大幅ベルト端8a及び外側ベルト端9aとタイヤ径方向RDに重なるように、外側ベルト端9aよりタイヤ幅方向内側まで延びている。
【0051】
ショルダー横溝26には、ショルダー横溝26を形成するショルダー陸部23の横側面23a、23aを連結するように溝底から隆起する底上げ部30が設けられている。
【0052】
具体的には、図1に示すように、底上げ部30は、溝深さが浅くなるようにショルダー横溝26の溝底26aから隆起するフラット部31と、横溝26のタイヤ幅方向内側端部の溝底26a(ここでは、第1横溝部27の溝底)とフラット部31を繋ぐ付け根部32aと、横溝26のタイヤ幅方向外側端部の溝底26a(ここでは、第2横溝部28の溝底)とフラット部31を繋ぐ付け根部32aを備える。
【0053】
フラット部31は、トレッド面の輪郭線(プロファイルライン)と平行に設けられ、フラット部31における溝深さが一定となっている。フラット部31における溝深さは、第1横溝部27の溝底における溝深さや第2横溝部28の溝底における溝深さより浅くなっている。
【0054】
ショルダー陸部23には、タイヤ周方向CDに延びる第2サイプ52及び第4サイプ54が設けられている。
【0055】
第2サイプ52は、タイヤ周方向CDに隣接するショルダー横溝26の第1横溝部27を繋ぐようにショルダー陸部23をタイヤ周方向CDに貫通している。第2サイプ52はタイヤ周方向CDに波状に延びる。
【0056】
第4サイプ54は、第2サイプ52のタイヤ幅方向両側にタイヤ周方向CDに間隔をあけて複数設けられている。第4サイプ54は、タイヤ幅方向WDに対して若干傾斜する方向へ波状に延び、ショルダー陸部23内で終端するように設けられている。
【0057】
第2サイプ52及び第4サイプ54は、空気入りタイヤを正規リムに装着し正規内圧を充填した状態で路面に接地させ、正規荷重を負荷したときに路面への開口部が閉じる微小な溝幅を持つ切れ込みである。第2サイプ52は、第4サイプ54より溝幅が大きく、上記した第1サイプ51と同じ溝幅であってもよい。
【0058】
第1サイプ51、第2サイプ52、第3サイプ53及び第4サイプ54の幅寸法は、例えば、次のように設定してもよい。第1サイプ51の幅は、0.6~1.2mmであることが好ましい。第2サイプ52の幅は、0.6~1.2mmであることが好ましい。第3サイプ53の幅は、0.3~0.6mmであることが好ましい。第4サイプ54の幅は、0.3~0.6mmであることが好ましい。 以上のような本実施形態の空気入りタイヤTでは、センター横溝24や中間横溝25のタイヤ幅方向中央部に溝幅が狭く溝深さの浅い第2浅溝部39、44が設けられているため、タイヤ周方向CDにおけるブロック剛性を効率的に向上させることができる。また、第2浅溝部39、44の幅方向外側に設けられた第1浅溝部38、43は、第2浅溝部39、44より溝幅が広くかつ溝深さが深いため、センター横溝24や中間横溝25に入り込んだ雪や土が主溝20A、20Bへ排出されるのを阻害しにくく、溝底に設けたブリッジ37、42による排雪性や排土性の低下を抑えることができる。
【0059】
また、本実施形態の空気入りタイヤTでは、センター横溝24に設けられた第1センター横溝部34に長さ方向が変化する屈曲部34aが設けられているため、トラクション性を向上することができる。
【0060】
しかも、ショルダー横溝26に設けられた第1浅溝部38のタイヤ幅方向外側端が、屈曲部34aよりタイヤ幅方向外側に位置するため、屈曲部34a近傍のブロック剛性が向上し、トラクション性も向上することができる。
【0061】
また、タイヤ幅方向WDの両側のショルダー陸部23の間に形成されたセンター陸部21や中間陸部22を構成するブロックにタイヤ幅方向に延びる第1サイプ51が設けられ、ショルダー陸部23に周方向に延びる第2サイプ52が設けられている。そのため、摩擦係数の高い路面の走行時に、センター陸部21や中間陸部22を構成するブロック中央部の滑りを解消することができ、センター横溝24や中間横溝25のタイヤ周方向両側に生じるヒールアンドトウ摩耗を抑制することができるとともに、ショルダー陸部23においてワイピングによって生じるタイヤ幅方向への滑りや接地圧力分布の不均一化を解消することができ、ショルダー陸部23においてタイヤ幅方向に発生する偏摩耗を抑制することができる。摩擦係数の低い路面の走行時に、センター陸部21や中間陸部22を構成するブロックの中央部やショルダー陸部23のタイヤ幅方向中央部における剛性を低下させて接地圧の均一化を図ることができる。
【0062】
また、空気入りタイヤTでは、ショルダー陸部23の溝底から隆起する底上げ部30のフラット部31が、外側ベルト端9aのタイヤ径方向外側に設けられているため、タイヤ転動時に歪みが生じやすい外側ベルト端9aの近傍においてゴム厚みを確保することができ、タイヤ転動時にベルトリフトと呼ばれるベルト端がタイヤ径方向外側へ浮き上がる動きを抑えることができる。
【0063】
また、空気入りタイヤTでは、底上げ部30のフラット部31が、最大幅ベルト端8aよりタイヤ幅方向内側において終端しているため、ゴム量の増加やショルダー横溝26の排水性能の低下を抑えることができる。しかも、最大幅ベルト端8aの近傍では、ベルト層6のタイヤ内面側(カーカス4側)が外面側(トレッドゴム側)に比べてタイヤ径方向内側に向かって大きく湾曲しており、最大幅ベルト端8aの近傍においてトレッドゴム7の厚みを確保しやすいため、最大幅ベルト端8aのタイヤ径方向外側にフラット部31がなくてもベルトリフトを抑えることができる。
【0064】
また、空気入りタイヤTでは、第1横溝部27とこれより幅広に設けた第2横溝部28とを備えるショルダー陸部23、23を設け、第2横溝部28を区画する横側面23a、23aを連結するように底上げ部30を第2横溝部28の溝底に設けているため、ショルダー陸部23の溝容積を確保して排水性能を向上しつつ、底上げ部30によって第2横溝部28近傍の陸部剛性の低下を抑えることができる。
【0065】
また、空気入りタイヤTでは、最大幅ベルト8の幅方向端部とカーカス4との間にベルト下ゴム層10が配置されており、最大幅ベルト端8aが、有機繊維やスチールのコード等を含むカーカス4と直接接触することがないため、タイヤ転動時に最大幅ベルト端8a近傍に生じる歪みを緩和することができ、ベルトリフトを抑えることができる。
【0066】
上記の実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。
【0067】
例えば、上記した実施形態では、センター陸部21及びショルダー陸部22に第1浅溝部38,43及び第2浅溝部39,44を備える横溝24,25を設けたが、センター陸部21及びショルダー陸部22のいずれか一方の陸部のみに第1浅溝部及び第2浅溝部を設け、他方の陸部に第1浅溝部及び第2浅溝部設けなくてもよい。
【符号の説明】
【0068】
T…タイヤ、1…ビード、2…サイドウォール、3…トレッド、4…カーカス、5…サイドウォールゴム、6…ベルト層、7…トレッドゴム、8…最大幅ベルト、8a…最大幅ベルト端、9…外側ベルト、9a…外側ベルト端、10…ベルト下ゴム層、12…キャップゴム層、13…ベースゴム層、14…バットレス、20A…センター主溝、20B…ショルダー主溝、21…センター陸部、22…中間陸部、23…ショルダー陸部、24…センター横溝、25…中間横溝、26…ショルダー横溝、27…第1横溝部、28…第2横溝部、29…連結部、30…底上げ部、31…フラット部、32a…付け根部、32b…付け根部、34…第1センター横溝部、34a…屈曲部、35…第2センター横溝部、37…ブリッジ、38…第1浅溝部、39…第2浅溝部、40…第1中間横溝部、41…第2中間横溝部、42…ブリッジ、43…第1溝浅部、44…第2溝浅部、51…第1サイプ、52…第2サイプ、53…第3サイプ、54…第4サイプ
図1
図2
図3
図4