IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ キャンドゥ・エナジー・インコーポレーテッドの特許一覧

特許7590181原子力冷却剤ポンプの封止部、および封止する方法
<>
  • 特許-原子力冷却剤ポンプの封止部、および封止する方法 図1
  • 特許-原子力冷却剤ポンプの封止部、および封止する方法 図2A
  • 特許-原子力冷却剤ポンプの封止部、および封止する方法 図2B
  • 特許-原子力冷却剤ポンプの封止部、および封止する方法 図2C
  • 特許-原子力冷却剤ポンプの封止部、および封止する方法 図3
  • 特許-原子力冷却剤ポンプの封止部、および封止する方法 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-18
(45)【発行日】2024-11-26
(54)【発明の名称】原子力冷却剤ポンプの封止部、および封止する方法
(51)【国際特許分類】
   F04D 29/10 20060101AFI20241119BHJP
   F04D 29/08 20060101ALI20241119BHJP
【FI】
F04D29/10 B
F04D29/08 C
【請求項の数】 30
(21)【出願番号】P 2020544423
(86)(22)【出願日】2019-02-21
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-06-10
(86)【国際出願番号】 CA2019050214
(87)【国際公開番号】W WO2019161500
(87)【国際公開日】2019-08-29
【審査請求日】2022-01-26
(31)【優先権主張番号】62/633,578
(32)【優先日】2018-02-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】517284359
【氏名又は名称】キャンドゥ・エナジー・インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【氏名又は名称】中西 基晴
(74)【代理人】
【識別番号】100188329
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 義行
(72)【発明者】
【氏名】ダム,リチャード
【審査官】大瀬 円
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2013/0322794(US,A1)
【文献】特開2012-241724(JP,A)
【文献】西独国特許出願公開第02614884(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D 29/10
F04D 29/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷却剤ポンプであって、
グランドハウジングを有するケーシングアセンブリと、
第1および第2の封止チャンバを画定するステージングフローパスを有する、封止アセンブリと、
冷却剤流体を前記グランドハウジングを通して圧送し、少なくとも1つの加速面を有するロータアセンブリであって、前記ステージングフローパスを通過する流体が、前記少なくとも1つの加速面によって加速される、ロータアセンブリと、
前記第1および第2の封止チャンバ内の、第1および第2の封止ステージであって、各々が、互いに係合してステータ封止部材とロータ封止部材の間に規定される封止インターフェイス上の封止を形成するように構成された、ステータ封止部材およびロータ封止部材を有する、第1および第2の封止ステージと、
前記冷却剤流体を前記ステージングフローパスに供給し、前記加速面を越えさせるための入口通路と
を備え、
前記ステータ封止部材と前記ロータ封止部材とは、熱膨張するように構成されており、
第1膨張制御リングと第2膨張制御リングとは、前記ロータ封止部材の膨張を制約し、
前記第1膨張制御リングと前記第2膨張制御リングとは、閾値温度未満での前記ロータ封止部材の膨張を制限するよう構成されており、
前記第1膨張制御リングは、前記第2膨張制御リングよりも低い温度で、前記ロータ封止部材から離れるように膨張するように構成されている、
冷却剤ポンプ。
【請求項2】
前記第1および第2の封止チャンバは、前記ロータアセンブリの構成要素に隣接したそれぞれのフローパスを画定し、
前記フローパスは同じ長さを有する、
請求項1に記載の冷却剤ポンプ。
【請求項3】
前記第1および第2の封止チャンバの各々にそれぞれ位置付けられたロータアセンブリを備え、
各ロータアセンブリは、少なくとも1つの加速面を有する、
請求項2に記載の冷却剤ポンプ。
【請求項4】
前記ロータアセンブリは、流体速度を加速させるための、複数の表面特徴部を伴う複数の加速面を有する、
請求項3に記載の冷却剤ポンプ。
【請求項5】
前記入口通路は径方向に延びる、
請求項1から4のいずれか一項に記載の冷却剤ポンプ。
【請求項6】
前記ステージングフローパスは、前記ポンプのシャフトに平行に、軸方向に延びる、
請求項1から4のいずれか一項に記載の冷却剤ポンプ。
【請求項7】
前記第1の封止ステージにわたる圧力低下と、前記第2の封止ステージにわたる圧力低下とは等しい、
請求項1から4のいずれか一項に記載の冷却剤ポンプ。
【請求項8】
前記閾値温度は動作温度範囲よりも高い、
請求項1に記載の冷却剤ポンプ。
【請求項9】
前記封止アセンブリは、第3の封止チャンバを画定し、
前記冷却剤ポンプは、ステータ封止部材およびロータ封止部材を有する第3の封止チャンバを備える、
請求項8に記載の冷却剤ポンプ。
【請求項10】
前記第1および第2の封止チャンバは、それぞれの封止ステージに近接した流体速度または動圧を制御するための、それぞれの外形を有し、
前記外形は、前記少なくとも1つの加速面、前記ステータ封止部材、前記ロータ封止部材、前記入口通路、および前記ステージングフローパスの少なくとも1つの外形を含む、
請求項9に記載の冷却剤ポンプ。
【請求項11】
ポンプを封止する方法であって、
加圧流体を、ステージングフローパスの第1のセクションを通して第1の封止部に向けて導くことと、
前記加圧流体が、前記ポンプのロータアセンブリの運動によって、前記ステージングフローパスを横断する際に、前記加圧流体の角速度を増加させることと、
前記加圧流体を、前記ステージングフローパスの第2のセクションを通して第2の封止部に向けて導くことであって、前記第1の封止部及び前記第2の封止部の各々は、ステータ封止部材およびロータ封止部材を有し、前記ロータ封止部材は、前記ロータ封止部材の膨張を制約する第1膨張制御リングおよび第2膨張制御リングを備え、前記第1膨張制御リングは、前記第2膨張制御リングよりも低い温度で、前記ロータ封止部材から離れるように膨張するように構成されていることと、
前記第1膨張制御リングおよび前記第2膨張制御リングによって、閾値温度未満での前記第1及び前記第2の封止部の熱膨張を制限することと、
前記第1膨張制御リングおよび前記第2膨張制御リングの互いに異なる膨張率に基づいて、前記閾値温度よりも高く上昇した流体温度に対応して、前記第2膨張制御リングよりも先に、前記第1膨張制御リングを前記ロータ封止部材から係合解除することと
を含む、
方法。
【請求項12】
前記速度を増加させることは、前記加圧流体を前記ロータアセンブリの少なくとも1つの加速面を越えるよう導くことを含む、
請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記ステージングフローパスの前記第2のセクションにおける前記角速度を、前記加圧流体を前記ロータアセンブリの前記少なくとも1つの加速面を越えるように導くことによって、増加させることを含む、
請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記ステージングフローパスは、前記ポンプのシャフトに平行に、概ね軸方向に延びる、
請求項11または12に記載の方法。
【請求項15】
前記加圧流体を、径方向に延びた入口通路を通して前記ステージングフローパスの中に導くことを含む、
請求項11から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記閾値温度は、動作温度範囲よりも高い、
請求項11に記載の方法。
【請求項17】
前記加圧流体を、前記ステージングフローパスの第3のステージを通して、第3の封止部に向けて導くステップを含む、
請求項11から16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
ポンプのための封止アセンブリであって、
ポンプケーシングに取り付けるための、グランドハウジングと、
第1および第2の封止チャンバを画定する、前記グランドハウジング内のステージングフローパスと、
冷却剤流体を前記グランドハウジングを通して圧送し、少なくとも1つの加速面を有するロータアセンブリであって、前記ステージングフローパスを通過する流体は、前記少なくとも1つの加速面によって加速される、ロータアセンブリと、
前記第1および第2の封止チャンバ内の、第1および第2の封止ステージであって、各々が、互いに係合してステータ封止要素とロータ封止要素との間に規定される封止インターフェイス上の封止を形成するように構成された、ステータ封止部材およびロータ封止部材を有する、第1および第2の封止ステージと、
前記冷却剤流体を前記ステージングフローパスに供給し、前記少なくとも1つの加速面を越えさせるための入口通路と
を備え、
前記ステータ封止部材と前記ロータ封止部材とは、熱膨張するように構成されており
第1膨張制御リングと第2膨張制御リングとは、前記ロータ封止部材の膨張を制約し、
前記第1膨張制御リングと前記第2膨張制御リングとは、閾値温度未満での前記ロータ封止部材の膨張を制限するよう構成されており、
前記第1膨張制御リングは、前記第2膨張制御リングよりも低い温度で、前記ロータ封止部材から離れるように膨張するように構成されている、
封止アセンブリ。
【請求項19】
前記第1および第2の封止チャンバは、前記ロータアセンブリの構成要素に隣接したそれぞれのフローパスを画定し、前記フローパスは同じ長さを有する、
請求項18に記載の封止アセンブリ。
【請求項20】
前記第1および第2の封止チャンバの各々にそれぞれ位置付けられたロータアセンブリを備え、
各ロータアセンブリは、少なくとも1つの加速面を有する、
請求項19に記載の封止アセンブリ。
【請求項21】
前記ロータアセンブリは、流体速度を加速させるための、複数の表面特徴部を伴う複数の加速面を有する、
請求項20に記載の封止アセンブリ。
【請求項22】
前記入口通路は径方向に延びる、
請求項18から21のいずれか一項に記載の封止アセンブリ。
【請求項23】
前記ステージングフローパスは、前記ポンプのシャフトに平行に、軸方向に延びる、
請求項18から22のいずれか一項に記載の封止アセンブリ。
【請求項24】
前記第1の封止ステージにわたる圧力低下と、前記第2の封止ステージにわたる圧力低下とは等しい、
請求項18から23のいずれか一項に記載の封止アセンブリ。
【請求項25】
前記閾値温度は、動作温度範囲よりも高い、
請求項18に記載の封止アセンブリ。
【請求項26】
前記グランドハウジング内の前記ステージングフローパスは、第3の封止チャンバを画定し、
前記封止アセンブリは、前記第3の封止チャンバ内に第3の封止ステージを備え、
前記第3の封止ステージは、ステータ封止部材およびロータ封止部材を有する、
請求項18から25のいずれか一項に記載の封止アセンブリ。
【請求項27】
前記第1および第2の封止チャンバは、それぞれの前記封止ステージに近接した流体速度または動圧を制御するための、それぞれの外形を有する、
請求項18から26のいずれか一項に記載の封止アセンブリ。
【請求項28】
前記少なくとも1つの加速面と、前記第1および第2の封止チャンバとは、前記第1および第2の封止ステージの一貫したバランス比を提供するために、前記冷却剤流体の所望の速度を生成するように構成されており、
前記第1および第2の封止ステージの前記バランス比は、前記封止の各々を閉じようとする力と、前記封止の各々を開けようとする力との比である、
請求項1~10のいずれか一項に記載の冷却剤ポンプ。
【請求項29】
前記角速度を増加させることは、前記加圧流体を前記ロータアセンブリの少なくとも1つの加速面を越えるよう導くことを含み、
前記少なくとも1つの加速面と、前記ステージングフローパスの前記第1及び第2のセクションとは、前記第1および第2の封止ステージの一貫したバランス比を提供するために、前記加圧流体の所望の速度を生成するように構成されており、
前記第1および第2の封止ステージの前記バランス比は、前記第1及び第2の封止の各々を閉じようとする力と、前記第1及び第2の封止の各々を開けようとする力との比である、
請求項11~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記少なくとも1つの加速面と、前記第1および第2の封止チャンバとは、前記第1および第2の封止ステージの一貫したバランス比を提供するために、前記冷却剤流体の所望の速度を生成するように構成されており、
前記第1および第2の封止ステージの前記バランス比は、前記封止の各々を閉じようとする力と、前記封止の各々を開けようとする力との比である、
請求項18~27のいずれか一項に記載の封止アセンブリ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
[0001]本出願は、2018年2月21日に出願された、「NUCLEAR COOLANT PUMP SEAL AND METHODS OF SEALING」と題する、米国仮特許出願第62/633,578号の、優先権を含む全ての利益を主張する。その内容の全ては、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
[0002]本出願は原子力発電に関し、詳細には原子力発電施設のための冷却剤ポンプに関する。
【背景技術】
【0003】
[0003]原子力発電施設において、水などの流体冷却剤は、原子炉の温度および反応速度を制御するために、ポンプを使用して循環される。ポンプの封止は、性能のために非常に重要である。さらに有効な封止は、例えば放射性物質の漏洩を防ぐための規制遵守に重要となり得る。
【0004】
[0004]ポンプなどの回転機械内では、封止部は固定構成要素と回転構成要素との間に設置され得る。このような状況では、封止部にわたって維持され得る圧力差は、封止要素が共に付勢される圧力に比例し得る。しかし、増加した封止圧は、封止要素の摩耗の増加をもたらし得る。
【0005】
[0005]封止部にわたる有効な圧力低下は、圧力および流体速度など、封止部に近接する流体条件に依拠し得る。したがって封止の有効性と寿命とのバランスは、同様に流体条件に依拠し得る。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
[0006]原子力発電施設のための冷却剤ポンプは、グランドハウジングを有するケーシングアセンブリと、第1および第2の封止チャンバを画定するステージングフロー経路を有する、封止アセンブリと、冷却剤流体をグランドハウジングを通して圧送し、加速面を有するロータアセンブリであって、ステージングフロー経路を通過する流体は、加速面によって加速される、ロータアセンブリと、第1および第2の封止チャンバ内の、第1および第2の封止ステージであって、各々が、互いに係合して液密封止部を形成する静的封止要素および回転封止要素を有する、第1および第2の封止ステージと、冷却剤流体をステージングフロー経路に供給し、加速面を越えさせるための入口通路と、を備える。
【0007】
[0007]原子力発電施設におけるポンプを封止する方法の例は、加圧流体を、ステージングフローパスの第1のセクションを通して第1の封止部に向けて導くステップと、加圧流体が、ポンプのロータアセンブリの運動によって、ステージングフローパスを横断する際に、加圧流体の角速度を増加させるステップと、加圧流体を、ステージングフローパスの第2のセクションを通して第2の封止部に向けて導くステップと、を含む。
【0008】
[0008]ポンプのための封止アセンブリは、ポンプケーシングに取り付けるための、グランドハウジングと、第1および第2の封止チャンバを画定する、グランドハウジング内のステージングフロー経路と、冷却剤流体をグランドハウジングを通して圧送し、加速面を有するロータアセンブリであって、ステージングフロー経路を通過する流体は、加速面によって加速される、ロータアセンブリと、第1および第2の封止チャンバ内の、第1および第2の封止ステージであって、各々が、互いに係合して液密封止部を形成する静的封止要素および回転封止要素を有する、第1および第2の封止ステージと、冷却剤流体をステージングフロー経路に供給し、加速面を越えさせるための入口通路と、を備える。
【0009】
[0009]図面で実施形態の例を示す。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】[0010]冷却剤ポンプの概略図である。
図2A】[0011]図1のポンプの断面図である。
図2B】[0012]ロータのサブアセンブリを示す、図2Aの領域IIの部分拡大図である。
図2C】[0013]ステータのサブアセンブリを示す、図2Aの領域IIの部分拡大図である。
図3】[0014]冷却剤ポンプを通る水のフローパスを示す、図2Aの領域IIの拡大図である。
図4】[0015]封止ステージの詳細を示す、図3の領域IVの拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[0016]図1は、原子力発電施設で使用するための冷却剤ポンプ100を示す。冷却剤ポンプ100は、ケーシング102を有する。
[0017]ポンプ100は、作動流体を循環させるためのポンプインペラ110(例えばインペラ)に連結された駆動シャフト108を有する、ポンプ回転アセンブリを含む。駆動シャフト108は、静圧軸受101と共にケーシング102に取り付けられる。作動流体は、水などの原子炉冷却剤であってよい。ポンプインペラ110は、作動流体を、入口112を介してポンプ100の中に引き込み、出口114を介し、圧力をかけて作動流体をポンプから押し出す。
【0012】
[0018]グランド113は、ケーシング102の上に、静圧軸受101を囲んで設置され、シャフト108を受ける。グランド113は、ポンプ100からの流体の漏洩に抵抗するために、封止アセンブリ116を包含する。封止アセンブリ116は、ポンプ回転アセンブリ104と称する、駆動シャフト108に取り付けられた回転構成要素と、ステータアセンブリ106と称する、グランド113に取り付けられるか、またはグランド113の一部を形成する固定構成要素と、の間の封止をもたらす。グランド113は、内部の流体チャンバ118を画定する。流体チャンバ118は、高圧下で流体を保持し、作動流体をポンプ100の主インペラケーシング内に保持する。
【0013】
[0019]流体は、ステージング回路117および再循環ループ119において、流体チャンバ118を通って循環する。ステージング回路117は、作動流体を、段階的封止のための一連のチャンバを通して導く。再循環ループ119は、内部の流体チャンバ118と冷却リザーバ121との間に、作動流体のフローをもたらす。冷却リザーバ121を介した循環は、ステージング回路117を通して循環させるための、冷たい作動流体の供給をもたらし、それによって、ステージング回路117を通るフローは、封止アセンブリ116の構成要素を冷却する。再循環ループ119を通るフローは、補助ロータ123によって駆動され得る。補助ロータは、流体チャンバ118内の加圧流体のフローも、静圧軸受101に向けて作り出し、静圧軸受101を通過する流体が、チャンバ118からポンプ100の主インペラケーシングの中に流れるのを保証する。
【0014】
[0020]作動流体は、チャンバ118から、加圧されたステージング回路117に通され、封止アセンブリ116の構成要素を越えて運ばれて、1つまたは複数の封止ステージにおいて圧力を段階的に下げられてよい。ステージング回路117を通るフローは、封止界面および他の構成要素も、冷却かつ潤滑し得る。詳細には、各封止ステージは、回転封止要素と固定封止要素との間の界面を含んでよく、それらは密封のために共に付勢され得る。共に付勢されている間の、このような封止構成要素の相対的運動は、封止構成要素に摩耗をもたらし、摩擦による熱を強める場合がある。
【0015】
[0021]封止部に作用する力は、バランス比、すなわち封止部を閉じようとする力と封止部を開けようとする力との比として表され得る。封止部のバランス比は、封止部の漏洩または故障する傾向に相関し得る。高いバランス比は、より密な(漏洩抵抗が高い)封止部に対応し、低いバランス比は、より緩い(漏洩抵抗が低い)封止部に対応する。
【0016】
[0022]封止要素を共に付勢することは、漏洩に対する封止部の抵抗を増加させる傾向がある。しかし、封止要素が互いに対して動く際の封止部の摩耗率および生じる熱が、増加する傾向もある。通常、封止部は、漏洩抵抗と寿命との間の妥協を実現するために、特定のバランス比を目標に設計される。特定の封止用途のために選択されたバランス比は、封止部にわたって作り出される圧力差、および必要とされる封止部の有効寿命に依拠し得る。
【0017】
[0023]封止部のバランス比は、他の要因の中でも、ステータリングの内径および外径など封止部の外形、封止部の高圧側および低圧側における流体圧、ならびに封止要素を共に付勢するために加えられる任意の機械的な力によって影響され得る。
【0018】
[0024]図2A図2B、および図2Cは、より詳細に封止アセンブリ116を示す。図2Aは、完全な封止アセンブリ116の断面図である。図2Bは、図2Aの領域IIの拡大図であり、駆動シャフト208と共に回転するよう取り付けられた、ポンプ回転アセンブリ104の構成要素を示す。図2Cは、図2Aの領域IIの拡大図であり、固定され、かつグランド113に取り付けられた、ステータアセンブリ106の構成要素を示す。
【0019】
[0025]示された実施形態において、封止アセンブリ116は2つの封止ステージ120を有し、個々に、封止ステージ120-1および120-2と称する。封止ステージ120-1、120-2は、第1および第2の封止ステージを形成する。封止ステージ120-1、120-2は、それぞれロータ封止部材126-1、126-2(集合的にロータ封止部材126)を有する。封止ステージ120-1、120-2は、それぞれステータ封止部材128-1、128-2(集合的に封止部材128)を有する。
【0020】
[0026]図2Aおよび図3で最も良好に示されるように、回転アセンブリ142は、一次ステージングチャンバ130および二次ステージングチャンバ132に受け入れられ、それらはステージングフロー回路117の一部を形成する。
【0021】
[0027]ステータ封止部材128は、ブロック構造150内に取り付けられる。ブロック構造150はチャンバ118内に取り付けられ、ステータ封止部材128を固定位置に堅固に保持する。ブロック構造150は、複数の内部ステージングチャンバを画定する。示されるように、ブロック構造150は、2つのステージングチャンバ、すなわち一次ステージングチャンバ130および二次ステージングチャンバ132を画定する。各ステージングチャンバは、封止アセンブリ116の封止ステージに対応する。他の実施形態において、例えば各封止ステージ120に1つのチャンバなど、2つより多くの、または2つより少ないステージングチャンバが画定され得る。
【0022】
[0028]示された実施形態において、封止ステージ120-1、120-2の回転アセンブリ142は同一である。このような設計は、回転アセンブリ142を取り換え可能にして、ポンプ100における独自の部品およびアセンブリの数を制限し得る。
【0023】
[0029]図3は、封止アセンブリ116の封止ステージ120-1、120-2の簡略化した概略図であり、冷却流体のステージングフローを示す。
[0030]一次ステージングチャンバ130および二次ステージングチャンバ132は、図3に示されたステージングフロー通路134a、134bを含むステージングフロー通路134によって連通する。ステージングフロー通路134は、一次ステージングチャンバ130からのフローを受け入れ、コイルなどの回旋状のフロー導管を含む。回旋状のフローパスは、通路134を流れ抜けるのを制限するよう協働し、それによって冷却流体は、規定された速度かつ特定の圧力低下を伴い通路を横断する。いくつかの実施形態において、回旋状のフローパスは、圧力低下を起こさせるようなサイズのオリフィスを有し得る。
【0024】
[0031]二次ステージングチャンバ132は、ステージングフロー通路134からのフローを受け入れ、吐出通路138を通してステージングフローを吐出する。示されるように、吐出通路138は、ステータブロック150を貫通して延びる。図3に示された吐出通路138a、138bを含む吐出通路138を通して出るフローは、さらなる制限、および概ね大気圧までの圧力低下を受ける。吐出通路138は、通路134のフロー制限と同様のフロー制限を起こすよう構成され得る。例えば、吐出通路138は、フロー制限を起こすために回旋状の導管を備え得るか、または入口もしくは別の箇所においてフローを制限する小さい断面積を有する、オリフィスを有し得る。代替として、このようなフロー制限は、吐出通路138の外部で起こさせてもよい。追加のステージングおよび冷却フローは、集積ダクト139を通過し得る。集積ダクト139は、プレナム136によって吐出通路138と連通し得る。
【0025】
[0032]液圧チャンバ147、149は、それぞれ封止ステージ120-1、120-2の後ろで画定される。各封止ステージ120は、少量の流体がそれぞれの液圧チャンバに入るのを可能にするよう設計される。すなわち、封止ステージ120-1は、流体のわずかな漏洩が液圧チャンバ147に入るのを可能にし、封止ステージ120-2は、流体のわずかな漏洩が液圧チャンバ149に入るのを可能にする。液圧チャンバ147は、二次ステージングチャンバ132の中に排水する。液圧チャンバ149は、出口140に排水する。
【0026】
[0033]液圧チャンバ147、149は、封止ステージ120-1、120-2の低圧側にある。封止ステージ120-1にわたる圧力差は、ステージングフロー通路134a、134bを介して生じる圧力低下と、概ね等しい。封止ステージ120-2にわたる圧力差は、吐出通路138a、138bへの入口と出口140の圧力(例えば大気圧)との間の圧力低下と、概ね等しい。
【0027】
[0034]ステージングフロー回路117は、チャンバ118から一次ステージングチャンバ130に入り、次にステージングフロー通路134を通って二次ステージングチャンバ132に入り、出口通路138を通って最終的に吐出口140を通る、フローパスを画定する。ステージングフロー回路117のフローパスは、概ね軸方向、すなわちポンプ100の駆動シャフトの軸に平行な方向に延びる。
【0028】
[0035]チャンバ118内の流体は、一般にポンプ100の吐出圧を超過する高圧で加圧される。出口138に吐出される流体は低圧であり、概ね大気圧であってよい。一例において、ステージングフローパス117を介した圧力低下は、概ね6895kPa(1000psi)である。他の実施形態において、圧力低下はより大きく、例えば10342kPa(1500psi)、またはより小さく、例えば1379kPa(200psi)である。
【0029】
[0036]封止ステージ120-1、120-2、およびステージングフロー回路117は、圧力低下を分割するよう構成される。換言すると、複数のステージ120は、各ステージが、アセンブリ116にわたる合計圧力低下の一部のみを分担するよう構成され得る。第1の圧力低下は、封止ステージ120-1にわたって生じてステージングフロー通路134を通り、第2の圧力低下は、封止ステージ120-2にわたって生じて吐出通路138a、138bを通る。入口から一次ステージングチャンバ130までの、流体の合計淀み圧は、封止ステージ120-1の封止界面(図3のポイントB)における合計淀み圧と概ね等しい。入口から一次ステージングチャンバ130までの合計淀み圧は、二次ステージングチャンバ132の入口の合計淀み圧よりも、概ねステージングフロー通路134を介した圧力低下分だけ高い。例えば図3のポイントDにおける大気圧は、封止ステージ120-2の封止界面(図3のポイントC)における圧力よりも、概ね吐出通路138a、138bを介した圧力低下分だけ低い。示されるように、ステージングフロー通路134および出口通路140は、おおよそ同じ圧力低下、すなわち3447kPa(500psi)の圧力低下を起こす。本明細書で使用するとき、用語「淀み圧」は、流体フローの静圧と動圧との合計、すなわち、流体フローを損失なく淀みまで減速させて得られる圧力を指す。
【0030】
[0037]本明細書で説明する実施形態の例は、2つのステージ120-1、120-2を示すが、他の実施形態においては、3つ以上のステージが含まれる。第3および/または追加のステージは、フロー経路において初めの2つのステージに続けて位置付けられる。いくつかの実施形態において、第3のセクションの構成要素および第3のセクションと接続する構成要素、またはフローパスのステージは、各ステージが、アセンブリにわたる合計圧力低下の所望の一部を分担するよう、構成され得る。これらの構成要素および界面は、チャンバ外形、ステージングフロー値、封止要素構成、表面特徴部、フローパスの長さなど、および/または、2つのステージ設計に対して本明細書で説明する任意の他の特徴部を含むことができる。
【0031】
[0038]第1および第2のステージを有するアセンブリに対する言及は、いくつかの実施形態においては、2つより多いステージを有するアセンブリを指すことができる。
[0039]図4は、封止ステージ120における封止要素の拡大概略図を示す。言及したように、封止ステージ120は、わずかに漏洩するよう設計される。したがって、流体の薄い漏洩層127が、一般に封止要素間に存在する。封止要素は、漏洩層の流体圧によって離れるよう付勢され、かつ封止ステージの高圧側における流体圧によって、およびロータアセンブリ142をブロック構造150に向けて付勢することによって、共に付勢される。封止要素126、128の周り、および漏洩層127を通る封止要素126、128間の流体フローは、封止要素に冷却をもたらし、それは、封止要素126、128の一定および/または予測可能な温度を促進する傾向がある。
【0032】
[0040]ロータアセンブリ142は、軸方向に自由に動く。そのため、ロータアセンブリ142の位置、および封止要素を共に付勢する圧力は、ロータアセンブリ142に作用する流体圧に依拠する。
【0033】
[0041]図4に示されるように、封止部材126、128は、対向する面126a、128a、高圧面126b、128b、および低圧面126a、128aを有する。高圧面は、ステージングチャンバ130/132の中に延びる方向に、互いから離れるよう(示された実施形態では径方向外側に)テーパーが付く。
【0034】
[0042]一般的に、対向する面126a、128aおよび高圧面126b、128bに作用する圧力は、封止部材126、128を離すように付勢する傾向がある。荷重条件は、封止部材126、128の変形を生じさせ、それは封止部材の外部形状、したがって封止部材の面に作用する力を変更させ得る。したがって、封止ステージ120のバランス比は、封止要素の近傍の流体圧によって、ならびに、ロータアセンブリ142に作用する流体圧および固定構成要素(例えばステータ128)における圧力によって、影響される。
【0035】
[0043]動作中、封止ステージ120が漏洩する傾向は、封止ステージ120のバランス比に関連され得る。封止部は、低いバランス比において漏洩しやすく、高いバランス比において漏洩しにくい傾向にあり得る。
【0036】
[0044]他方で、封止部材が摩耗する速度も、バランス比に関連され得る。特に、封止部は高いバランス比において、より早く摩耗し得る。各封止ステージ120の、ロータ封止部材126およびステータ封止部材128は、互いに対して動き、封止ステージのバランス比に比例して摩耗を生じさせる。
【0037】
[0045]したがって、有効な封止設計は、バランス比の精確な決定に依存し得る。封止部のバランス比を過小に見積もると、漏洩しがちな設計をもたらし得る。封止部のバランス比を過大に見積もると、早く摩耗する設計をもたらし得る。複数ステージ構成において、各ステージにおける封止性能および封止部の寿命は、そのステージにおける圧力低下に依拠し得る。実施形態において、各ステージにおける圧力低下とバランス比とのバランスをとることが望ましい場合があり、それによって封止要素は均等に摩耗し、同等の封止性能をもたらす。例えば、2つのステージを有する封止部では、各ステージが圧力低下の概ね半分を分担し、それらのステージが概ね等しいバランス比を有する場合、それらのステージは均等に摩耗する傾向がある。反対に、一方のステージが、より大きい圧力低下を分担し、より大きいバランス比を有する場合、そのステージは、他方のステージよりも早く摩耗し、故障する傾向となるが、他方のステージは漏洩しがちとなり得る。
【0038】
[0046]一般に、封止パラメータは、静的解析に基づいて選択される。すなわち、圧力およびバランス比は、通常は動圧を無視できるという仮定に基づいて計算される。
[0047]しかし、本発明者は、以前の設計における封止ステージは、不均等に摩耗し、予想よりも多く漏洩する傾向にあることを観測した。すなわち、等しいバランス比を有すると予測された、単一の封止を伴う封止ステージ120は、互いに対して不均等に摩耗したことを観測した。加えて、いくつかの封止ステージ120では、それらが予測よりも小さいバランス比を有するように働いたことが観測された。
【0039】
[0048]本発明者は、動的効果がポンプ100において顕著であり得ることを発見した。特に、静圧は、ステージングフロー回路内の動的効果によって変化し得る。例えば、封止ステージ120-1にかけられた圧力は、図3のポイントBにおける流体の淀み圧、ならびに、平均の流体流線の速度など、ポイントBにおける流体速度に依拠する。同様に、封止ステージ120-2にかけられた圧力は、図3のポイントCにおける淀み圧、および、平均流体流線の速度などの、ポイントCにおける流体速度に依拠する。したがって、各封止ステージ120のバランス比は、封止ステージにわたる圧力低下、フロー通路134を介した圧力損失、および封止要素に作用する静圧に依拠し得る(これは次に流体速度に依拠する)。一般的に、封止ステージ120の高圧側における高い流体速度は、高圧面126b、128bに作用する力を減少させる。追加として、封止ステージ120-1(図3のポイントB)の近くの速度および圧力に対する、ステージングチャンバ130(図3のポイントA)の底部における速度(したがって圧力)は、封止ステージ120-1のバランス比および封止有効性に影響を与え得る。特に、ロータアセンブリとステータアセンブリ(図3のポイントB)との間における、より低い速度およびより高い圧力は、ロータアセンブリをステータアセンブリから離すよう付勢する傾向にあり得る。一方で、ステージングチャンバ130への入口(図3のポイントA)における、より低い速度およびより高い圧力は、ロータアセンブリをステータアセンブリに向けて付勢する傾向にあり得る。
【0040】
[0049]ロータ封止要素126の各々は、回転アセンブリ142の部品を形成する。チャンバ130、132の流体フローは、回転アセンブリ142を越えて通過し、加速される。したがって、チャンバ130、132に入るフローは、チャンバ130、132を出るフローよりも低い速度および高い静圧を有する。
【0041】
[0050]静的解析が、通路134、138を介した予想される損失に基づいて、封止ステージ120-1、120-2のバランスをとる一方で、示された設計は、通路134、138および動的効果の両方を介した損失を補う。例えば、フロー状態のシミュレーションに基づいて、チャンバ130、132、およびフロー通路134、138は、ステージ120-1、120-2における流体加速の効果のバランスをとるよう設計される。特に、流体フローが、図3の矢印Fによって示される方向に、平均で一定の方向に流れるよう、チャンバ130、132は形成され、そのような通路134、138のフロー抵抗とされる。
【0042】
[0051]流体が一次ステージングチャンバ130を流れ抜ける際に、流体は回転アセンブリ142に隣接したパスを横断し、したがって平均速度が増すような回転アセンブリ142の運動によって加速される。流体が加速すると、その動圧は増加し、それに対応して、その静圧は減少する。したがって、静圧は、ステージングチャンバ130(図3のポイントA)の入口と、封止ステージ120-1(図3のポイントB)に近接した領域との間で、減少される。同様に、流体が二次ステージングチャンバ132を流れ抜ける際に、流体は、回転アセンブリ142の運動によって加速され、それによってステージングフロー通路134の出口と、封止ステージ120-2(図3のポイントC)に近接した領域との間で、速度は増加して静圧は減少される。
【0043】
[0052]明白であるように、回転アセンブリ142の表面における任意のポイントの接線速度は、回転速度および回転軸からの半径に依拠する。示された実施形態において、回転アセンブリ142は、相対的に大きい半径の、外側の円筒面143を有する。動作中、円筒面143のポイントにおける回転アセンブリの接線速度は、相対的に高く、そのため円筒面143は、周りの流体に相対的に顕著な加速を生じさせる。したがって、円筒面143は、加速面と称され得る。
【0044】
[0053]いくつかの実施形態において、チャンバ130、132、および回転アセンブリ142は、封止ステージ120に近接した流体速度(したがって静圧)を制御するよう構成され得る。詳細には、流体は、1つまたは複数の加速面143に隣接したパスを横断する際に、加速され得る。したがって、チャンバ130、132は、加速面143、146による累積加速を制御するよう構成され得る。いくつかの実施形態において、封止ステージ120-1、120-2に近接した流体は、概ね等しい速度まで加速され得る。換言すると、封止ステージ120-1、120-2に近接した流体速度および動圧は、概ね等しくてよい。例えば、チャンバ130、132は、封止ステージ120-1、120-2それぞれに近接した等しい断面積を有し得る。
【0045】
[0054]いくつかの実施形態において、1つまたは複数の加速面143、146は、流体速度を促進させるよう構成された、表面特徴部を含む。いくつかの実施形態において、これら特徴部は、回転アセンブリ内および回転アセンブリ周りの冷却したフローを維持する。いくつかの実施形態において、表面特徴部は、楔、溝、および/または任意の他の好適な突起、窪み、または他の表面特徴部を含むことができる。いくつかの実施形態において、表面特徴部は、機械加工したスロットおよび/または窓を含むことができる。いくつかの実施形態において、加速面143は窓を含み、加速面146は機械スロットを含む。
【0046】
[0055]いくつかの実施形態において、1つまたは複数の加速面143、146は、流体の再循環をもたらし、表面の温度を制御する。いくつかの実施形態において、1つまたは複数の加速面143、146は、追加または代替として、力のバランスのための所望の速度を生成するために働くことができる。
【0047】
[0056]いくつかの実施形態において、チャンバ130、132を通り、かつ回転アセンブリ142に隣接したフローパスの長さは、同じであってよく、それによって流体は、同様の時間だけチャンバ130、132内に滞留し、それによって回転アセンブリ142によって同様の速度まで加速される。フローパスの長さは、チャンバ130、132および回転アセンブリ142の形状、ならびに、流体フローが各それぞれのチャンバ130、132に入る箇所、に依拠し得る。
【0048】
[0057]いくつかの実施形態において、本明細書で説明した1つまたは複数の構成要素によってもたらされた速度は、絶対速度および/または相対速度に基づく。絶対速度は、圧力を調整するための目標とすることができ、相対速度は熱伝達を調整するための目標とすることができる。
【0049】
[0058]いくつかのシナリオにおいて、ステージングフローは、新しい設計または設置において調整され得るパラメータである。後付けなど、他のシナリオにおいて、ステージングフローのパラメータは、適宜システムによって予め規定することができる。
【0050】
[0059]再び図3を参照すると、一次ステージングチャンバ130は入口通路145を有し、それを通して流体はチャンバ118からチャンバ130の中に引き込まれる。入口通路145は、概ねブロック構造150を貫通して径方向に延びる。通路145を通して引き込まれた流体のいくらかは、概ね封止ステージ120-1に向けて矢印Fで示された方向に流れる。通路145を通して引き込まれた流体のいくらかは、軸方向面にあるステージングチャンバのスロート148を通して、概ね矢印Rで示された逆フロー方向に排出され得る。いくつかの実施形態において、これは補助インペラによって駆動することができる。
【0051】
[0060]示されるように、入口通路145は、ステージングチャンバのスロート148と加速面143との間の軸方向位置に位置される。封止ステージ120ー1に流れる流体によって生じる加速は、通路145の位置に依拠し得る。例えば、通路145が、示された位置に対して方向Fに動かされた場合、回転アセンブリ142による流体加速は、流体が加速面143に隣接した短いパスを横断するときに減少され得る。反対に、通路145が方向Rに動かされた場合、より多くの流体が概ね方向Rに排出され得、封止ステージ120-1に流れる流体の加速は増加され得る。
【0052】
[0061]ステージングフロー回路117は、動作中に封止ステージ120-1、120-2が、概ねそれらの所望のバランス比にあるよう構成される。すなわち、ステージングチャンバ130、132内のフローおよび圧力状態は、それらの所望のバランス比まで封止ステージ120-1、120-2の機械的荷重を発生させる。次にフローおよび圧力状態は、入口通路145の箇所によって影響を受ける。例えば、入口通路145の箇所は、一次ステージングチャンバ130内の静圧プロファイルに影響する。スロート148に近接した高圧は、回転アセンブリ142を、ブロックアセンブリ150に対して付勢し、封止ステージのバランス比を増加させる傾向にある。反対に、スロート148に近接した低圧は、回転アセンブリ142に小さい力しか加えない。いくつかの実施形態において、通路134、138を介した損失と共に、動圧のバランスをとることによって、封止要素に荷重をかけることも同様にバランスがとられる。換言すると、損失と動的効果の両方のために設計することは、封止ステージ120-1、120-2の一定のバランス比をもたらす。封止ステージの性能および寿命は、同様にバランスがとられる。したがって、封止ステージ120-1、120-2は同様の速度で摩耗し、同じサービス間隔で働くか、または交換され得る。反対に、ステージ120-1、120-2間の不均一な摩耗は、早期の故障をもたらし得る。または、より短い間隔で封止ステージ120の交換が必要となり得る。いくつかのシナリオでは、一方のステージが交換されるときに両方のステージが交換され、摩耗が不均一であることによって、より摩耗していない封止部を、その潜在的な能力を完全に利用する前に交換することになる場合がある。
【0053】
[0062]図2a~図2c、図3および図4は、封止アセンブリ116の断面図である。簡略化のため、封止アセンブリ116のいくつかの構成要素は、平面的配向で概略的に示される。しかし明白であるように、このような構造は、径方向に、例えば示した断面の平面に対して直角方向または斜め方向に延び得る。同様に、図2a~図2c、図3および図4で平面的に示されたフローパスは、封止アセンブリ116の半径の周りに延び得る。例えば、チャンバ130、132、ならびに流体通路147、149、および136は、概ね環状であってよい。追加または代替として、平面的に示され、単体として説明された構造は、例えば異なる角度方向に離隔されて径方向に延びる通路の連続した構造であってもよい。例えば、通路145は径方向に延び得る。単一の通路145が存在してもよく、または複数の通路145が、封止アセンブリ116の周りに均一間隔で離隔されて存在してもよい。
【0054】
[0063]ポンプ100の動作中、封止アセンブリ116内の温度は上昇し、構成要素の膨張を生じさせ得る。膨張率および膨張方向は、部品形状および材料特性などの要因に依拠し得る。
【0055】
[0064]構成要素の膨張差は、封止外形の変化を生じさせ得る。このような変化は、遊隙の増加または封止要素126、128間の圧力減少をもたらす場合があるので、封止ステージ120の安定性または封止有効性を減少させる。
【0056】
[0065]したがって、封止性能を保証するため、および構成要素の摩耗を管理するために、封止アセンブリ116の構成要素は、封止ステージ120-1、120-2およびそれらそれぞれの封止要素126、128の寸法的な安定性を、ポンプ100の正常な動作中に生じ得る一般の温度範囲を通して、促進または維持するよう構成され得る。いくつかの例において、正常動作中に、封止アセンブリ116の構成要素は、一般に概ね32℃(90°F)から93℃(200°F)の間の温度を受け得る。封止構成要素は、予想される動作熱範囲において、比較的低い熱膨張係数を有する、炭化ケイ素または炭化チタンなどの材料で形成され得る。明白であるように、動作温度は、原子炉設計によって変化し得る。材料の選択も同様に変化し得る。好適な材料は、適切な封止および摩耗性能を達成し、正常動作温度によって封止性能が過度に劣化しないような、十分に低い熱膨張を有する材料である。例えば、封止要素126、128が自己緩和するよう設計された場合、部品の外形および材料は、自己緩和性能が正常動作温度範囲全体にわたって維持されるよう設計され得る。
【0057】
[0066]いくつかの実施形態において、封止要素126、128の一方または両方は、1つまたは複数の膨張制御リング160によって拘束され得る。膨張制御リング160は、封止要素126または128の周りに設置される、高強度の金属製構成要素であってよい。膨張制御リング160は、周りに設置される封止要素126、128を径方向に拘束するサイズを決められた、公称内径のサイズであってよい。膨張制御リング160は、ポンプ100の正常動作温度における低い膨張係数を有する材料で形成され得る。このような温度において、膨張制御リング160は、封止要素126、128の熱膨張に機械的に抵抗し、それによって封止要素126、128の形状は維持される。例えば、示された実施形態において、封止要素126、128は、それらの界面の径方向に最も外側の部分において、互いからわずかに離れるようテーパーが付いている。封止要素のテーパーが付いた部分に対して作用する圧力は、封止要素を互いから離すよう付勢する傾向がある。したがって、封止要素の形状は、自己緩和機能に役立ち得る。
【0058】
[0067]いくつかの実施形態において、温度が上昇すると、封止面はより大きく開くよう、かつより多く漏洩するように偏向するよう構成される。この漏洩は、摩擦面を冷却し、それによって封止部品にわたる熱を軽減するのに役立つ。
【0059】
[0068]原子力発電施設における特定の動作条件は、冷却剤フローの損失をもたらし得る。そのような事象では、冷却剤ポンプ100の動作は停止し得る。ポンプ100内の流体温度は劇的に上昇する場合があり、正常動作範囲を大幅に超過し得る。安全性および規制問題は、このような事象における漏洩に対する防護を必要とし得る。いくつかの例では、260℃(500°F)まで、または260℃(500°F)を超過する流体温度は、停電などの、冷却剤フローを損失する事象において生じ得る。膨張制御リング160は、封止要素126およびロータアセンブリ142よりも大きい熱膨張係数を有し得る。したがって、温度が上昇すると、封止要素126と膨張制御リング160との間の遊隙は増加し得る。代替として、膨張制御リング160は、冷却剤フローの損失事象の間に想定される範囲、および正常動作温度よりも高い、閾値温度を超えた大きい熱膨張係数を有するよう構成され得る。冷却剤フロー損失事象において、膨張制御リング160は膨張し、封止要素126と膨張制御リング160との間の遊隙を作り出す。次にこれは、封止要素126、128が互いに向かって膨張するのを可能にする。封止要素126、128の膨張は、封止ステージ120を介した漏洩を排除するのに十分であり得る。さらに温度が上昇すると、封止要素126、128を共に膨張し続けることによって、封止を補強し得る。
【0060】
[0069]いくつかの実施形態において、これらの構成要素のための材料は、それらの材料特性に基づいて選択される。いくつかのシナリオにおいて、異なる材料を選択することで、所与の閾値を超えると回転アセンブリの全体的挙動が変化するよう、選択的にリングの係合解除を可能にする。
【0061】
[0070]示された実施形態において、特定の封止要素126の周りに設置された膨張制御リング160は、異なる熱膨張率を有する異なる材料で形成され得る。例えば、一方のリング160はナイトロニック50で形成され、他方のリングはステンレススチールで形成され得る。膨張制御リング160の異なる膨張率は、一方のリング160を、他方のリング160の前に、封止要素126から係合解除させ得る。次にこれは、封止要素126が正常動作温度を超えて膨張するときに、封止要素126を変形させる。例えば、封止要素126は封止要素128に向けて偏向し得る。それによって封止部の任意の自己緩和特性が取り除かれる。
【0062】
[0071]他の実施形態において、図4に膨張制御160-1及び160-2として示された膨張制御リング160は、同じ材料で形成され得るが、封止要素126と異なる公称遊隙(または干渉)でサイズを決められてもよい。このような設計において、一方の膨張制御リング160-1、160-2は、他方の前に、封止要素126との接触を離れ膨張し得る。代替または追加として、封止要素126は、その径が変化して、膨張制御リング160の公称内径が異なるように形状付けられてよい。このような構成において、膨張制御リング160の等しい割合での変化は、2つのリングのうち大きい方の径において、より大きい絶対変化に対応し得る。したがって、膨張制御リング160は、封止要素126に対して、同じ量の公称遊隙または干渉のためにサイズが決められてもよく、同じ材料で形成され得る。しかし、大きいリングは、小さいリングよりも、低い温度で封止要素126を解放し得る。
【0063】
[0072]いくつかの実施形態において、封止要素126、128の外形は、単一の膨張制御リングが使用され得るよう、または、同じ温度で封止要素126を解放するよう構成された複数のリングが使用され得るようなものであってよい。特に、封止要素126、128は、正常動作温度において封止要素126、128が少量の漏洩を可能にするか、熱膨張下で自己緩和するか、またはその両方であり、一方で正常動作範囲より上の温度において、1つまたは複数の膨張制御リング160は緩和して、封止要素126は封止要素128に向けて膨張することを可能とされ、それによって漏洩または自己緩和特性を軽減、または排除するよう設計され、かつ膨張が限定され得る。
【0064】
[0073]したがって、封止アセンブリ116は、漏洩に対する安全装置を提供する。しかし、構成要素が比較的低い膨張係数を有するので、日常の動作中における封止のバランス比は実質的に影響を受けず、正常動作条件下で、摩耗率または封止性能も影響を受けない。
【0065】
[0074]上述のように、流体フローは、一次ステージングチャンバ130および二次ステージングチャンバ132のうちのそれぞれ1つに、入口端部から各々入り、一方で封止ステージ120-1、120-2は、ステージングチャンバ130’、132’の出口端部に近接して位置付けられる。流体フローは、それぞれの封止ステージ120に到達する前に、チャンバ130またはチャンバ132を横断し、その横断中に加速される。加速の効果、すなわち静圧の減少は、ステージ間でバランスがとられる。さらに、加速量、したがって封止ステージ120における静圧の変化は、加速面143、146に近接した流体フローパスの長さを変えることによって、制御され得る。本明細書で説明したように、いくつかの実施形態において、これはチャンバ130、132の形状、および表面143、146の特徴部によっても制御される。
【0066】
[0075]実施形態を詳細に説明したが、様々な変化、取り換え、および代替が、本明細書で成され得ることを理解されたい。
[0076]さらに、本出願の範囲は、本明細書で説明したプロセス、機械、製造、組成物、手段、方法、およびステップの特定の実施形態に限定することは意図しない。当業者は、本発明の開示から、現存または将来的に開発されることになり、実質的に同じ機能を実施し、または本明細書で説明した対応する実施形態と実質的に同じ結果を実現するプロセス、機械、製造、組成物、手段、方法、またはステップが利用され得ることを、容易に理解するであろう。したがって、添付の特許請求の範囲は、このようなプロセス、機械、製造、組成物、手段、方法、またはステップを、それらの範囲内に含むよう意図される。
【0067】
[0077]理解され得るように、上述の詳細な実施形態および例示は、例のみとして意図される。本発明は、添付の特許請求の範囲によって定義される。
図1
図2A
図2B
図2C
図3
図4