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特許7590191光酸発生剤とそれを用いた光硬化性樹脂組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-18
(45)【発行日】2024-11-26
(54)【発明の名称】光酸発生剤とそれを用いた光硬化性樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C09K 3/00 20060101AFI20241119BHJP
   C08L 101/02 20060101ALI20241119BHJP
   C07C 381/12 20060101ALI20241119BHJP
   C07F 9/26 20060101ALI20241119BHJP
   C07F 9/90 20060101ALI20241119BHJP
   G03F 7/038 20060101ALI20241119BHJP
【FI】
C09K3/00 K
C08L101/02
C07C381/12
C07F9/26
C07F9/90
G03F7/038 503
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021004028
(22)【出願日】2021-01-14
(65)【公開番号】P2022108851
(43)【公開日】2022-07-27
【審査請求日】2023-09-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000106139
【氏名又は名称】サンアプロ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118061
【弁理士】
【氏名又は名称】林 博史
(72)【発明者】
【氏名】赤澤 慶彦
(72)【発明者】
【氏名】南里 武
(72)【発明者】
【氏名】木村 秀基
【審査官】柴田 啓二
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-215616(JP,A)
【文献】国際公開第2004/113396(WO,A1)
【文献】特開2002-241363(JP,A)
【文献】特開昭54-151936(JP,A)
【文献】特開平07-238148(JP,A)
【文献】米国特許第05012001(US,A)
【文献】特開2006-131612(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 3/00
C07C 381/12
G03F 7/038
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表わされるスルホニウム塩(A)と、下記一般式(2)~(5)で表わされる酸(B)及びその塩(C)の群から選ばれる少なくとも1種の化合物とを含有するスルホニウム塩組成物からなり、該組成物中の該化合物の合計含有量が0.02~3.0重量%である光酸発生剤(G)。
【化1】
[式(1)中、R~Rはベンゼン環に結合している有機基であり、有機基が炭素数6~30のアリール基であり、R 、およびR の個数は0であり、R 、およびR の個数は0または1であり、0の場合は水素原子が結合しており、はSbF 、又はPF を表す。]
【化2】
【化3】
【化4】
【化5】
【請求項2】
塩(C)を構成するカチオンが、スルホニウム塩(A)を構成するカチオンと同一である請求項1に記載の光酸発生剤(G)。
【請求項3】
請求項1または2に記載の光酸発生剤(G)とカチオン重合性有機化合物(D)を含有してなり、光酸発生剤がカチオン重合性有機化合物(D)の重量に基づいて0.1~10重量%の割合で含有する光硬化性樹脂組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光酸発生剤とそれを用いた光硬化性樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、熱あるいは光、電子線などの活性エネルギー線照射によってエポキシ化合物などのカチオン重合性化合物を硬化させるカチオン重合開始剤として、ヨードニウムやスルホニウム塩等のオニウム塩が知られている。これらのオニウム塩は、酸を発生する光酸発生剤として知られている(特許文献1~3)。またこれらの光酸発生剤を用いた光硬化性樹脂組成物は、塗料、コーティング剤、各種被覆材料(ハードコート、耐汚染被覆材、防曇被覆材、耐触被覆材、光ファイバー等)、各種接着剤(各種電子部品用仮固定剤、HDD用接着剤、光学部材、成形材料(建築材料用、光学部品、レンズ)などさまざまな用途で使用されている(特許文献4~6)。
【0003】
また、光酸発生剤ゆえに外部からの光により全く分解しないようにすることは難しく、長期貯蔵安定性に問題がある。一方で、硬化物の物性を良好なものにするには、光に対する感度を優先すべきだが、そうすると、実使用において長期貯蔵安定性に問題と相反してしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開昭55-125105号公報
【文献】特開昭61-190524号公報
【文献】特開昭61-212554号公報
【文献】特開2002-193925号公報
【文献】特開平2001-354669号公報
【文献】特開平2001-294570号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、本発明の目的は、長期貯蔵安定性に優れ、かつ硬化性や光照射又は加熱処理を施すことにより得られた硬化物の耐熱性などの物性も優れた光酸発生剤とそれを用いた光硬化性樹脂組成物を提供することにある。
【0006】
本発明者は上記目的に好適な光酸発生剤とそれを用いた光硬化性樹脂組成物を見出した。すなわち本発明は下記一般式(1)で表わされるスルホニウム塩(A)と、下記一般式(2)~(5)で表わされる酸(B)及びその塩(C)の群から選ばれる少なくとも1種の化合物とを含有するスルホニウム塩組成物からなり、該組成物中の該化合物の合計含有量が0.02~3.0重量%である光酸発生剤(G)である。
【0007】
【化1】
【0008】
[式(1)中、R~Rはベンゼン環に結合している有機基であり、Rの個数は0~4、R、R、Rの個数は0~5であり、0の場合は水素原子が結合しており、R~Rが複数結合する場合はそれぞれ互いに同一であっても異なっても良く、またR~Rが互いに直接または-O-、-S-、-SO-、-SO-、-NH-、-CO-、-COO-、-CONH-、アルキレン基もしくはフェニレン基を介して環構造を形成しても良い。YはSbF 、又はPF を表す。]
【0009】
【化2】
【0010】
【化3】
【0011】
【化4】
【0012】
【化5】
【発明の効果】
【0013】
本発明の光酸発生剤は、活性エネルギー線に対し高い活性を有しており硬化性に優れ、かつ光照射又は加熱処理を施すことにより得られた硬化物の耐熱性も優れる。さらにこのものを使用した光硬化性樹脂組成物は良好な貯蔵安定性を有する。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0015】
式(1)中のR~Rはベンゼン環に結合している有機基を表し、同一であっても異なってもよい。R~Rとしては、炭素数6~30のアリール基、炭素数4~30の複素環基、炭素数1~30のアルキル基、炭素数2~30のアルケニル基または炭素数2~ 30のアルキニル基を表し、これらはアルキル、ヒドロキシ、アルコキシ、アルキルカルボニル、アリールカルボニル、アルコキシカルボニル、アリールオキシカルボニル、アリールチオカルボニル、アシロキシ、アリールチオ、アルキルチオ、アリール、複素環、アリールオキシ、アルキルスルフィニル、アリールスルフィニル、アルキルスルホニル、アリールスルホニル、アルキレンオキシ、アミノ、シアノ、ニトロの各基およびハロゲンからなる群より選ばれる少なくとも1種で置換されていてもよい。
【0016】
上記において炭素数6~30のアリール基としては、フェニル基、ビフェニリル基などの 単環式アリール基およびナフチル、アントラセニル、フェナンスレニル、ピレニル、クリセニル、ナフタセニル、ベンズアントラセニル、アントラキノリル、フルオレニル、ナフ トキノン、アントラキノンなどの縮合多環式アリール基が挙げられる。
【0017】
炭素数4~30の複素環基としては、酸素、窒素、硫黄などの複素原子を1~3個含む環 状のものが挙げられ、これらは同一であっても異なっていてもよく、具体例としてはチエニル、フラニル、ピラニル、ピロリル、オキサゾリル、チアゾリル、ピリジル、ピリミジル、ピラジニルなどの単環式複素環基およびインドリル、ベンゾフラニル、イソベンゾフラニル、ベンゾチエニル、イソベンゾチエニル、キノリル、イソキノリル、キノキサリニル、キナゾリニル、カルバゾリル、アクリジニル、フェノチアジニル、フェナジニル、キサンテニル、チアントレニル、フェノキサジニル、フェノキサチイニル、クロマニル、イソクロマニル、ジベンゾチエニル、キサントニル、チオキサントニル、ジベンゾフラニルなどの縮合多環式複素環基が挙げられる。
【0018】
炭素数1~30のアルキル基としてはメチル、エチル、プロピル、ブチル、ヘキサデシル、オクダデシルなどの直鎖アルキル基、イソプロピル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、イソペンチル、ネオペンチル、tert-ペンチル、イソヘキシルなどの分岐 アルキル基、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルなどのシクロアルキル基が挙げられる。
また、炭素数2~30のアルケニル基としては、ビニル、アリル、1-プロペニル、イソプロペニル、1-ブテニル、2-ブテニル、3-ブテニル、1-メチル-1-プロペニルなどの直鎖または分岐状のものが挙げられる。
さらに、炭素数2~30のアルキニル基としては、エチニル、1-プロピニル、2-プロピニル、1-ブチニル、2-ブチニル、3-ブチニル、1-メチル-1-プロピニル、1-メチル- 2-プロピニルなどの直鎖または分岐状のものが挙げられる。
【0019】
上記の炭素数6~30のアリール基、炭素数4~30の複素環基、炭素数1~30のアルキル基、炭素数2~30のアルケニル基または炭素数2~30のアルキニル基は少なくとも1種の置換基を有してもよく、置換基の例としては、メチル、エチル、プロピル、ブチル、オクダデシルなど炭素数1~18の直鎖アルキル基;イソプロピル、イソブチル 、sec-ブチル、tert-ブチルなど炭素数1~18の分岐アルキル基;シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルなど炭素数3~18のシクロアルキル基;ヒドロキシ基;メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、イソブトキ シ、sec-ブトキシ、tert-ブトキシ、ドデシルオキシなど炭素数1~18の直鎖または分岐のアルコキシ基;アセチル、プロピオニル、ブタノイル、2-メチルプロピオニル、ヘプタノイル、2-メチルブタノイル、3-メチルブタノイル、オクタノイルなど炭素数2~18の直鎖または分岐のアルキルカルボニル基;ベンゾイル、ナフトイルなど炭素数7~11のアリールカルボニル基;メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、プロポキシカルボニル、イソプロポキシカルボニル、ブトキシカルボニル、イソブトキシカルボニル、sec-ブトキシカルボニル、tert-ブトキシカルボニルなど炭素数2~19の直鎖または分岐のアルコキシカルボニル基;フェノキシカルボニル、ナフトキシカルボニルなど炭素数7~11のアリールオキシカルボニル基;フェニルチオカルボニル、ナフトキシチオカルボニルなど炭素数7~11のアリールチオカルボニル基;アセトキシ、エチルカルボニルオキシ、プロピルカルボニルオキシ、イソブチルカルボニルオキシ、sec-ブチルカルボニルオキシ、tert-ブチルカルボニルオキシ、オクタデシルカルボニルオキ シなど炭素数2~19の直鎖または分岐のアシロキシ基;フェニルチオ、ビフェニリルチオ、メチルフェニルチオ、クロロフェニルチオ、ブロモフェニルチオ、フルオロフェニルチオ、ヒドロキシフェニルチオ、メトキシフェニルチオ、ナフチルチオ、4-[4-(フェニルチオ)ベンゾイル]フェニルチオ、4-[4-(フェニルチオ)フェノキシ]フェニルチオ、4-[4-(フェニルチオ)フェニル]フェニルチオ、4-(フェニルチオ)フェニルチオ、4-ベンゾイルフェニルチオ、4-ベンゾイル-クロロフェニルチオ、4-ベンゾイル-メチルチオフェニルチオ、4-(メチルチオベンゾイル)フェニルチオ、4 -(p-tert-ブチルベンゾイル)フェニルチオ、など炭素数6~20のアリールチオ基;メチルチオ、エチルチオ、プロピルチオ、tert-ブチルチオ、ネオペンチルチオ、ドデシ ルチオなど炭素数1~18の直鎖または分岐のアルキルチオ基;フェニル、トリル、ジメチルフェニル、ナフチルなど炭素数6~10のアリール基;チエニル、フラニル、ピラニル、キサンテニル、クロマニル、イソクロマニル、キサントニル、チオキサントニル、ジベンゾフラニルなど炭素数4~20の複素環基;フェノキシ、ナフチルオキシなど炭素数6~10のアリールオキシ基;メチルスルフィニル、エチルスルフィニル、プロピルスルフィニル、tert-ペンチルスルフィニル、オクチルスルフィニルなど炭素数1~18の直鎖または分岐のアルキルスルフィニル基;フェニルスルフィニル、トリルスルフィニル、ナフチルスルフィニルなど炭素数6~10のアリールスルフィニル基;メチルスルホニル、エチルスルホニル、プロピルスルホニル、イソプロピルスルホニル、ブチルスルホニル、オクチルスルホニルなど炭素数1~18の直鎖または分岐のアルキルスルホニル基;フェニルスルホニル、トリルスルホニル(トシル基)、ナフチルスルホニルなど炭素数の6~10のアリールスルホニル基;アルキレンオキシ基;シアノ基;ニトロ基;フッ素、塩素、臭素 、ヨウ素などのハロゲンなどが挙げられる。
【0020】
~Rは複数結合する場合は、互いに直接または-O-、-S-、-SO-、-SO-、-NH-、-CO-、-COO-、-CONH-、アルキレン基もしくはフェニレン基を介して環構造を形成しても良い 。例えば、Rが2以上の場合、そのうちの2つのRが互いに直接または-O-、-S-、-SO-、-SO-、-NH-、-CO-、-COO-、-CONH-、アルキレン基もしくはフェニレン基を介して環構造を形成することを意味する。
【0021】
これら有機基のうち、好ましくは炭素数1~6のアルキル基、炭素数6~14のアリー ル基、ヒドロキシ基、炭素数1~6のアルコキシ基、炭素数1~6のアルキルチオ基、炭 素数6~14のアリールチオ基、炭素数6~10のアリールオキシ基、塩素原子、フッ素 原子であり、さらに好ましくは炭素数1~6のアルキル基、炭素数6~14のアリール基 、炭素数1~6のアルコキシ基である。
【0022】
式(1)中の置換基であるRの個数は0~4個で、R、R、Rの個数は0~5個であり、0の場合は水素原子が結合している。R~Rの個数は0~3であることが好ましく、0または1であることがより好ましい。さらには、R、Rの個数は0であることが好ましい。R~Rの個数がこれらの好ましい範囲にあると、スルホニウム塩の光感応性や溶解性が良好となる。
【0023】
式(1)で表されるスルホニウム塩のうち、好ましいカチオン部の具体例を以下に示す。
【0024】
【化6】
【0025】
【化7】
【0026】
式(1)において、YはSbF 、又はPF である。
【0027】
Sbはアンチモン原子、Pはリン原子、Fはフッ素原子をそれぞれ表す。
【0028】
上記一般式(2)~(5)に表わされる酸(B)は、それぞれの化学式で示された酸化合物であり、Sbはアンチモン原子、Pはリン原子、Fはフッ素原子、Oは酸素原子、Hはプロトンをそれぞれ表す。
【0029】
塩(C)は、一般式(2)~(5)で表わされる酸(B)の塩であり、塩としては有機カチオンと組み合わせた塩が好ましい。有機カチオンはヨードニウム、スルホニウム、アンモニウムなどがあげられる。
【0030】
ヨードニウムとしての具体例を以下に例示する
ジフェニルヨードニウム、ジ-p-トリルヨードニウム、ジ(4-tert-ブチルフェニル)ヨードニウム、ジ(4-ドデシルフェニル)ヨードニウム、ジ(4-メトキシフェニル)ヨードニウム、(4-オクチルオキシフェニル)フェニルヨードニウム、ジ(4-デシルオキシフェニル)ヨードニウム、4-(2-ヒドロキシテトラデシルオキシ)フェニルフェニルヨードニウム、4-イソプロピルフェニル(p-トリル)ヨードニウム、フェニル(2,4,6-トリメトキシフェニル)ヨードニウムおよび4-イソブチルフェニル(p-トリル)ヨードニウムなどのヨードニウムイオンなどが挙げられる。
【0031】
スルホニウムとしての具体例を以下に例示する
トリフェニルスルホニウム、トリ-p-トリルスルホニウム、トリ-o-トリルスルホニウム、トリス(4-メトキシフェニル)スルホニウム、1-ナフチルジフェニルスルホニウム、2-ナフチルジフェニルスルホニウム、トリス(4-フルオロフェニル)スルホニウム、トリ-1-ナフチルスルホニウム、トリ-2-ナフチルスルホニウム、トリス(4-ヒドロキシフェニル)スルホニウム、4-(フェニルチオ)フェニルジフェニルスルホニウム、4-(p-トリルチオ)フェニルジ-p-トリルスルホニウム、4-(4-メトキシフェニルチオ)フェニルビス(4-メトキシフェニル)スルホニウム、4-(フェニルチオ)フェニルビス(4-フルオロフェニル)スルホニウム、4-(フェニルチオ)フェニルビス(4-メトキシフェニル)スルホニウム、4-(フェニルチオ)フェニルジ-p-トリルスルホニウム、[4-(4-ビフェニリルチオ)フェニル]-4-ビフェニリルフェニルスルホニウム、[4-(2-チオキサントニルチオ)フェニル]ジフェニルスルホニウム、ビス[4-(ジフェニルスルホニオ)フェニル]スルフィド、ビス〔4-{ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]スルホニオ}フェニル〕スルフィド、ビス{4-[ビス(4-フルオロフェニル)スルホニオ]フェニル}スルフィド、ビス{4-[ビス(4-メチルフェニル)スルホニオ]フェニル}スルフィド、ビス{4-[ビス(4-メトキシフェニル)スルホニオ]フェニル}スルフィド、4-(4-ベンゾイル-2-クロロフェニルチオ)フェニルビス(4-フルオロフェニル)スルホニウム、4-(4-ベンゾイル-2-クロロフェニルチオ)フェニルジフェニルスルホニウム、4-(4-ベンゾイルフェニルチオ)フェニルビス(4-フルオロフェニル)スルホニウム、4-(4-ベンゾイルフェニルチオ)フェニルジフェニルスルホニウム、7-イソプロピル-9-オキソ-10-チア-9,10-ジヒドロアントラセン-2-イルジ-p-トリルスルホニウム、7-イソプロピル-9-オキソ-10-チア-9,10-ジヒドロアントラセン-2-イルジフェニルスルホニウム、2-[(ジ-p-トリル)スルホニオ]チオキサントン、2-[(ジフェニル)スルホニオ]チオキサントン、4-(9-オキソ-9H-チオキサンテン-2-イル)チオフェニル-9-オキソ-9H-チオキサンテン-2-イル フェニルスルホニウム、4-[4-(4-tert-ブチルベンゾイル)フェニルチオ]フェニルジ-p-トリルスルホニウム、4-[4-(4-tert-ブチルベンゾイル)フェニルチオ]フェニルジフェニルスルホニウム、4-[4-(ベンゾイルフェニルチオ)]フェニルジ-p-トリルスルホニウム、4-[4-(ベンゾイルフェニルチオ)]フェニルジフェニルスルホニウム、5-(4-メトキシフェニル)チアントレニウム、5-フェニルチアントレニウム、5-トリルチアントレニウム、5-(4-エトキシフェニル) チアントレニウム、5-(2,4,6-トリメチルフェニル) チアントレニウムなどのトリアリールスルホニウム;ジフェニルフェナシルスルホニウム、ジフェニル4-ニトロフェナシルスルホニウム、ジフェニルベンジルスルホニウム、ジフェニルメチルスルホニウムなどのジアリールスルホニウム;フェニルメチルベンジルスルホニウム、4-ヒドロキシフェニルメチルベンジルスルホニウム、4-メトキシフェニルメチルベンジルスルホニウム、4-アセトキシフェニルメチルベンジルスルホニウム、4-アセトキシフェニルジメチルスルホニウム、4-ヒドロキシフェニル(1-ナフチルメチル)メチルスルホニウム、2-ナフチルメチルベンジルスルホニウム、4-ヒドロキシフェニル(4-ニトロベンジル)メチルスルホニウム、2-ナフチルメチル(1-エトキシカルボニル)エチルスルホニウム、フェニルメチルフェナシルスルホニウム、4-ヒドロキシフェニルメチルフェナシルスルホニウム、4-メトキシフェニルメチルフェナシルスルホニウム、4-アセトキシフェニルメチルフェナシルスルホニウム、2-ナフチルメチルフェナシルスルホニウム、2-ナフチルオクタデシルフェナシルスルホニウム、9-アントラセニルメチルフェナシルスルホニウムなどのモノアリールスルホニウム;ジメチルフェナシルスルホニウム、フェナシルテトラヒドロチオフェニウム、ジメチルベンジルスルホニウム、ベンジルテトラヒドロチオフェニウム、オクタデシルメチルフェナシルスルホニウムなどのトリアルキルスルホニウムなどが挙げられる。
【0032】
アンモニウムとしての具体例を以下に例示する
テトラメチルアンモニウム、エチルトリメチルアンモニウム、ジエチルジメチルアンモニウム、トリエチルメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウムなどのテトラアルキルアンモニウム;N,N-ジメチルピロリジニウム、N-エチル-N-メチルピロリジニウム、N,N-ジエチルピロリジニウムなどのピロリジニウム;N,N'-ジメチルイミダゾリニウム、N,N'-ジエチルイミダゾリニウム、N-エチル-N'-メチルイミダゾリニウム、1,3,4-トリメチルイミダゾリニウム、1,2,3,4-テトラメチルイミダゾリニウムなどのイミダゾリニウム;N,N'-ジメチルテトラヒドロピリミジニウムなどのテトラヒドロピリミジニウム;N,N'-ジメチルモルホリニウムなどのモルホリニウム;N,N'-ジエチルピペリジニウムなどのピペリジニウム;N-メチルピリジニウム、N-ベンジルピリジニウム、N-フェナシルピリジウムなどのピリジニウム;N,N'-ジメチルイミダゾリウム、などのイミダゾリウム;N-メチルキノリウム、N-ベンジルキノリウム、N-フェナシルキノリウムなどのキノリウム;N-メチルイソキノリウムなどのイソキノリウム;ベンジルベンゾチアゾニウム、フェナシルベンゾチアゾニウムなどのチアゾニウム;ベンジルアクリジウム、フェナシルアクリジウムなどのアクリジウムが挙げられる。
【0033】
これらの中で、スルホニウムが好ましく、上記、スルホニウム塩(A)を構成するカチオンと同一のスルホニウムカチオンを用いることがさらに好ましい。
【0034】
本発明の光酸発生剤は、一般式(1)で表わされるスルホニウム塩(A)と、下記一般式(2)~(5)で表わされる酸(B)及びその塩(C)の群から選ばれる少なくとも1種の化合物とを含有するスルホニウム塩組成物からなり、該組成物中の該化合物の合計含有量が0.02~3.0重量%であるが、より好ましい含有量の範囲は、0.50~2.0重量%である。0.02重量%以上ならば貯蔵安定性が良くなり、3.0重量%を超えると感度が悪くなる。
【0035】
本発明の光酸発生剤には、必要に応じ、従来公知の他の光酸発生剤を含有させて使用してもよい。他の光酸発生剤としては、オニウム塩(スルホニウム、ヨードニウム、セレニウム、アンモニウム及びホスホニウム等)並びに遷移金属錯体イオンと、アニオンとの塩等の従来公知のものが含まれる。
【0036】
本発明の光酸発生剤を用いると、カチオン重合開始剤として機能する。
本発明の光硬化性樹脂組成物は、光酸発生剤(G)とカチオン重合性有機化合物(D)を含有してなり、光酸発生剤がカチオン重合性有機化合物(D)の重量に基づいて0.1~10重量%の割合で含有する。
この光硬化性樹脂組成物は、エネルギー線を照射することにより硬化させて、硬化体を得ることができる。
エネルギー線としては、本発明の光酸発生剤の分解を誘発するエネルギーを有する限りいかなるものでもよいが、低圧、中圧、高圧若しくは超高圧の水銀灯、メタルハライドランプ、LEDランプ、キセノンランプ、カーボンアークランプ、蛍光灯、半導体固体レーザ、アルゴンレーザ、He-Cdレーザ、KrFエキシマレーザ、ArFエキシマレーザ又はFレーザ等から得られる紫外~可視光領域(波長:約100~約800nm)のエネルギー線が好ましい。なお、エネルギー線には、電子線又はX線等の高エネルギーを有する放射線を用いることもできる。
【0037】
カチオン重合性有機化合物(D)としては、エポキシ化合物、オキセタン化合物があげられる。さらに、エポキシ化合物としては、脂環族エポキシ化合物、脂肪族エポキシ化合物、芳香族エポキシ化合物などのエポキシ化合物を挙げることができる。
【0038】
脂環族エポキシ化合物としては、少なくとも1個の脂環族環を有する多価アルコールのポリグリシジルエーテル、或いはシクロヘキセン環含有化合物またはシクロペンテン環含有化合物を過酸化水素、過酸等の適当な酸化剤でエポキシ化して得られるシクロヘキセンオキサイド構造含有化合物またはシクロペンテンオキサイド構造含有化合物などを挙げることができる。より具体的には、脂環族エポキシ化合物として、例えば、下記の一般式(D-1)が挙げられる。
【0039】
【化8】
【0040】
(式中、R12は、水素添加ビスフェノールA残基、水素添加ビスフェノールF残基、水素添加ビスフェノールS残基、水素添加ビスフェノールZ残基、水素添加ビスフェノールAD残基、シクロヘキサンジメタノール残基またはトリシクロデカンジメタノール残基を示す。)で表される脂環式ジグリシジルエーテル化合物[以下「脂環式ジグリシジルエーテル化合物(D-1)」という]としては、水素添加ビスフェノールAジグリシジルエーテル、水素添加ビスフェノールFジグリシジルエーテル、水素添加ビスフェノールSジグリシジルエーテル、水素添加ビスフェノールADジグリシジルエーテル、水素添加ビスフェノールZジグリシジルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル、トリシクロデカンジメタノールジグリシジルエーテル)を挙げることができる。
【0041】
また、シクロヘキセンオキサイド構造含有化合物またはシクロペンテンオキサイド構造含有化合物としては、例えば、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3’,4’-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、3,4-エポキシ-1-メチルシクロヘキシル-3,4-エポキシ-1-メチルシクロヘキサンカルボキシレート、6-メチル-3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-6-メチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、3,4-エポキシ-3-メチルシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシ-3-メチルシクロヘキサンカルボキシレート、3,4-エポキシ-5-メチルシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシ-5-メチルシクロヘキサンカルボキシレート、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル-5,5-スピロ-3,4-エポキシ)シクロヘキサン-メタジオキサン、ビス(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、ビス( 3 , 4-エポキシ-6-メチルシクロヘキシルメチル)アジペート、3,4-エポキシ-6-メチルシクロヘキシルカルボキシレート、ジシクロペンタジエンジエポキサイド、エチレンビス(3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート)、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジオクチル、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジ-2-エチルヘキシルなどを挙げることができる。
また、株式会社ダイセルから販売されている、ε-カプロラクトン変性3’,4’-エポキシシクロヘキシルメチル3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、トリメチルカプロラクトン変性3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3’,4’-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、β-メチル-δ-バレロラクトン変性3 ,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3’,4’-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、メチレンビス(3,4-エポキシシクロヘキサン)、2,2-ビス(ヒドロキシメチル)-1-ブタノールの1,2-エポキシー4-(2-オキシラニル)シクロヘキサン付加物も挙げることができる。
さらに、ビス(3,4-エポキシシクロヘキシル)メタン、2,2-ビス(3,4-エポキシシクロヘキシル)プロパン、1,1-ビス(3,4-エポキシシクロヘキシル)エタン、アルファピネンオキサイド、カンファレンアルデヒド、リモネンモノオキサイド、リモネンジオキサイド、4-ビニルシクロヘキセンモノオキサイド、4-ビニルシクロヘキセンジオキサイドなども挙げることができる。
【0042】
脂肪族エポキシ化合物は特に限定されず、脂肪族エポキシ化合物としては、例えば、脂肪族多価アルコールまたはそのアルキレンオキサイド付加物のポリグリシジルエーテル、脂肪族長鎖多塩基酸のポリグリシジルエステル、グリシジルアクリレートまたはグリシジルメタクリレートのビニル重合により合成したホモポリマー、グリシジルアクリレートおよび/またはグリシジルメタクリレートとその他のビニルモノマーとのビニル重合により合成したコポリマーなどを挙げることができる。
代表的な化合物としては、例えば、ブチルグリシジルエーテル、2-エチルヘキシルグリシジルエーテル、高級アルコールのグリシジルエーテル、アルキレンジオールのジグリシジルエーテル(例えば、エチレングリコールのジ(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)エーテル、1,4-ブタンジオールのジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールのジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールのジグリシジルエーテルなど)、グリセリンのトリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンのジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンのトリグリシジルエーテル、ソルビトールのテトラグリシジルエーテル、ジペンタエリスリトールのヘキサグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールのジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールのジグリシジルエーテル、ポリテトラメチレングリコールのジグリシジルエーテルなどの多価アルコールのグリシジルエーテルを挙げることができる。
さらに、プロピレン、トリメチロールプロパン、グリセリンなどの脂肪族多価アルコールに1種または2種以上のアルキレンオキサイドを付加することにより得られるポリエーテルポリオールのポリグリシジルエーテル、脂肪族長鎖二塩基酸のジグリシジルエステルなどが挙げられる。
さらに、脂肪族高級アルコールのモノグリシジルエーテル、フェノール、クレゾール、ブチルフェノールまたはこれらにアルキレンオキサイドを付加することによって得られるポリエーテルアルコールのモノグリシジルエーテル、高級脂肪酸のグリシジルエステル、エポキシ化大豆油、エポキシステアリン酸ブチル、エポキシステアリン酸オクチル、エポキシ化アマニ油、エポキシ化ポリブタジエン、エポキシノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、グリシジル化ポリブタジエンなどを挙げることができる。
また、エポキシアルカンとしては、1,2-エポキシデカン、1,2-エポキシドデカン、1,2-エポキシテトラデカン、1,2-エポキシセタン、1,2-エポキシオクタデカン、1,2-エポキシイコサンを挙げることができる。上記の市販品の例としてはGrilonit F713(EMS-CHEMI社製)を挙げることができる。
【0043】
芳香族エポキシ化合物としては特に制限されず、例えば、多価フェノールまたはそのアルキレンオキサイド付加物のポリグリシジルエーテル、ポリグリシジルエステルなどを挙げることができ、具体的には、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールE、ビスフェノールF、ビスフェノールS、ビスフェノールAD、ビスフェノールZ、臭素化ビスフェノールA、臭素化ビスフェノールF、臭素化ビスフェノールSまたはこれらに更にエチレンオキサイドやプロピレンオキサイドなどのアルキレンオキサイドを付加した化合物のグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、tert-ブチルフェニルグリシジルエーテル、レゾルシノールジグリシジルエーテル、テトラフェノールエタンのテトラグリシジルエーテル、トリフェノールメタンのトリグリシジルエーテル、フェノール類またはナフトール類とアルデヒド類との縮合物(例えばフェノール樹脂やノボラック樹脂)のグリシジル化物、フェノール類とイソプロペニルアセトフェノンとの縮合物のグリシジル化物、フェノール類とジシクロペンタジエンの反応物ノグリシジル化物、テレフタル酸のジグリシジルエステル、イソフタル酸のジグリシジルエステル、o-フタル酸のジグリシジルエステルなどを挙げることができる。
さらに、ビフェノールのジグリシジルエーテル、テトラメチルビフェノールのジグリシジルエーテル、株式会社プリンテックより発売されているEPOX-MK R710,R1710、下記の化学式で表されるVG3101Lやその他の芳香族エポキシ化合物などを挙げることができる。
【0044】
【化9】
【0045】
本発明では、カチオン重合性有機化合物(D)として、上記したエポキシ化合物の1種または2種以上を用いることができ、カチオン重合性有機化合物(D)の全重量に基づいて、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するポリエポキシ化合物を30重量%以上の割合で含むことが好ましい。
【0046】
本発明の光硬化性樹脂組成物中に、カチオン重合性有機化合物(D)の一部として上記の一般式(D-1)で表される脂環式ジグリシジルエーテル化合物を含有させると、一般に、経時寸法安定性、耐水性、耐湿性、耐熱性などが優れたものとなる。
また、本発明の光硬化性樹脂組成物に、カチオン重合性有機化合物(D)の一部として、下記の式(D-2a)で表されるグリシジルエーテル化フェノール基を3個以上有する芳香族化合物[以下「芳香族化合物(D-2)」という]を含有させると、熱変形温度が高くて耐熱性に優れる硬化性樹脂組成物を得ることができる。
耐熱性を向上させるためにカチオン重合性有機化合物(D)の一部として芳香族化合物(D-2)を含有させる場合は、芳香族化合物(D-2)の含有量は、カチオン重合性有機化合物(D)の全重量に基づいて、5~80重量%であることが好ましく、10~50重量%であることがより好ましく、20~40重量%であることが更に好ましい。
【0047】
【化10】
【0048】
芳香族化合物(D-2)としては、光硬化性樹脂組成物の粘度を適する粘度に維持し得るものであればいずれでも使用でき、例えば、ノボラック樹脂やレゾール樹脂などのフェノール樹脂のポリグリシジルエーテル、テトラフェノールエタンのテトラグリシジルエーテル、トリフェノールメタンのトリグリシジルエーテル、上記したVG3101L、すなわち、2-[4-(2,3-エポキシプロポキシ)フェニル]-2-[4-[1,1-ビス[4-([2,3-エポキシプロポキシ]フェニル]エチル]フェニル]プロパンなどを挙げることができる。
【0049】
上記したVG3101L、すなわち、2-[4-(2,3-エポキシプロポキシ)フェニル]-2-[4-[1,1-ビス[4-([2,3-エポキシプロポキシ]フェニル]エチル]フェニル]プロパンをカチオン重合性有機化合物の一部として光硬化性樹脂組成物に含有させると、熱変形温度が高くなって耐熱性が向上する。耐熱性を向上させるためにカチオン重合性有機化合物(D)の一部としてVG3101Lを含有させる場合は、VG3101Lの含有量は、カチオン重合性有機化合物(D)の全重量に基づいて、1.5~80重量%が好ましく、5~50重量%がより好ましく、20~40重量%がより好ましい。
【0050】
本発明の光硬化性樹脂組成物は、光硬化性樹脂組成物の光硬化性能や、低粘度化による作業性の向上などの点から、光硬化性樹脂組成物に含まれるカチオン重合性有機化合物(D)の全重量に基づいて、オキセタン化合物(D-3)を1~35重量%の割合で含有することが好ましく、5~20重量%の割合で含有することがより好ましい。
【0051】
オキセタン化合物[以下「オキセタン化合物(D-3)」ということがある]としては、1分子中にオキセタン基を1個有するモノオキセタン化合物および1分子中にオキセンタン基を2個以上有するポリオキセタン化合物のうちの1種または2種以上を用いることができる。
特に、カチオン重合性有機化合物(D)の一部としてオキセタン化合物(D-3)を用い、その際にオキセタン化合物(D-3)として、1分子中にオキセタン基を1個有するモノオキセタン化合物(D-3a)と1分子中にオキセンタン基を2個以上有するポリオキセタン化合物(D-3b)を、モノオキセタン化合物(A-3a):ポリオキセタン化合物(D-3b)=95:5~5:95の重量比、更には10:90~90:10の重量比、特に20:80~20:80の重量比で用いると、高湿度状態での光硬化性樹脂組成物の水分および湿気の吸収率が少なくなり、当初の高い硬化感度を長期にわたって維持することができ、しかも靭性が向上する。
【0052】
その際に、モノオキセタン化合物(D-3a)としては、1分子中にオキセタン基を1個有する化合物であればいずれも使用できるが、特に1分子中にオキセタン基を1個有し且つアルコール性水酸基を1個有するモノオキセタンモノアルコール化合物が好ましく用いられる。
そのような、モノオキセタンモノアルコール化合物のうちでも、入手の容易性、高反応性、粘度が低いなどの点から、下記の一般式(D-3a1)および下記の一般式(D-3a2)で表される化合物が好ましく用いられる。
【0053】
【化11】
【0054】
(式中、R13およびR14は炭素数1~5のアルキル基、R15はエーテル結合を有していてもよい炭素数2~10のアルキレン基を示す。)
【0055】
上記の一般式(D-3a1)において、R13の例としては、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチルを挙げることができる。
モノオキセタンアルコール(D-3a1)の具体例としては、3-ヒドロキシメチル-3-メチルオキセタン、3-ヒドロキシメチル-3-エチルオキセタン、3-ヒドロキシメチル-3-プロピルオキセタン、3-ヒドロキシメチル-3-ノルマルブチルオキセタン、3-ヒドロキシメチル-3-プロピルオキセタンなどを挙げることができ、これらの1種または2種以上を用いることができる。そのうちでも、入手の容易性、反応性などの点から、3-ヒドロキシメチル-3-メチルオキセタン、3-ヒドロキシメチル-3-エチルオキセタンがより好ましく用いられる。
【0056】
上記の一般式(D-3a2)において、R14の例としては、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチルを挙げることができる。
また、上記の一般式(D-3a2)において、R15は炭素数2~10のアルキレン基であれば、鎖状のアルキレン基または分岐したアルキレン基のいずれであってもよく、或いはアルキレン基(アルキレン鎖)の途中にエーテル結合(エーテル系酸素原子)を有する炭素数2~10の鎖状または分岐状のアルキレン基であってもよい。R15の具体例としては、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、ヘプタメチレン基、3-オキシペンチレン基などを挙げることができる。そのうちでも、R15はトリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基またはヘプタメチレン基であることが、合成の容易性、化合物が常温で液体である取り扱い易いなどの点から好ましい。
【0057】
また、ポリオキセタン化合物(D-3b)としては、オキセタン基を2個有する化合物、オキセタン基を3個以上有する化合物、オキセタン基を4個以上有する化合物のいずれもが使用できるが、オキセタン基を2個有するジオキセタン化合物が好ましく用いられ、そのうちでも下記の一般式(D-3b0)で表されるジオキセタン化合物が、入手性、反応性、低吸湿性、硬化物の力学的特性などの点から好ましく用いられる。
【0058】
【化12】
【0059】
(式中、2個のR16は互いに同じかまたは異なる炭素数1~5のアルキル基、R17は芳香環を有しているかまたは有していない2価の有機基、nは0または1を示す。)
【0060】
上記の一般式(D-3b0)において、R16の例としては、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチルを挙げることができる。また、R17の例としては、炭素数1~12の直鎖状または分岐状のアルキレン基(例えばエチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ネオペンチレン基、n-ペンタメチレン基、n-ヘキサメチレン基など)、式:-CH-Ph-CH-または-CH-Ph-Ph-CH-で表される2価の基、水素添加ビスフェノールA残基、水素添加ビスフェノールF残基、水素添加ビスフェノールS残基、水素添加ビスフェノールZ残基、シクロヘキサンジメタノール残基、トリシクロデカンジメタノール残基、テレフタル酸残基、イソフタル酸残基、o-フタル酸残基などを挙げることができる。
【0061】
ジオキセタン化合物(D-3b0)の具体例としては、下記の式(D-3b1)または式(D-3b2)で表されるジオキセタン化合物を挙げることができる。
【0062】
【化13】
【0063】
(式中、2個のR18は互いに同じかまたは異なる炭素数1~5のアルキル基、R19は芳香環を有しているかまたは有していない2価の有機基を示す。)
【0064】
上記の式(D-3b1)で表されるジオキセタン化合物の具体例としては、ビス(3-メチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、ビス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、ビス(3-プロピル-3-オキセタニルメチル)エーテル、ビス(3-ブチル-3-オキセタニルメチル)エーテルなどを挙げることができる。
また、上記の式(D-3b2)で表されるジオキセタン化合物の具体例としては、上記の式(D-3b2)において2個のR18が共にメチル、エチル、プロピル、ブチルまたはペンチル基で、R19がエチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ネオペンチレン基、n-ペンタメチレン基、n-ヘキサメチレン基など)、式:-CH-Ph-CH-または-CH-Ph-Ph-CH-で表される2価の基、水素添加ビスフェノールA残基、水素添加ビスフェノールF残基、水素添加ビスフェノールS残基、水素添加ビスフェノールZ残基、シクロヘキサンジメタノール残基、トリシクロデカンジメタノール残基であるジオキセタン化合物を挙げることができる。
【0065】
そのうちでも、ジオキセタン化合物(D-3b0)としては、上記の式(D-3b1)において、2個のR18が共にメチル基またはエチル基であるビス(3-メチル-3-オキセタニルメチル)エーテルおよび/またはビス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテルが、入手の容易性、低吸湿性、硬化物の力学的特性などの点から好ましく用いられ、特にビス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテルがより好ましく用いられる。
【0066】
また、本発明の光硬化性樹脂組成物にアルキレンジオールのジグリシジルエーテルを含有させると、靭性が向上する。アルキレンジオールのジグリシジルエーテルとしては、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ブタンジオールジグリシジルエーテル、ペンタンジオールジグリシジルエーテル、ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、へプタンジオールジグリシジルエーテル、オクタンジオールジグリシジルエーテル、ノナンジオールジグリシジルエーテル、デカンジオールジグリシジルエーテルなどの炭素数2~10のアルキレンジオールのジグリシジルエーテルが好ましく、これらの1種または2種以上を用いることができる。そのうちでも、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテルが硬化性能の点からより好ましく用いられる。
靭性を向上させるために、本発明の光硬化性樹脂組成物にアルキレンジオールのジグリシジルエーテルを含有させる場合は、アルキレンジオールのジグリシジルエーテルの含有量は、光硬化性樹脂組成物に含まれるカチオン重合性有機化合物(D)の全重量に基づいて、0.1~20重量%であることが好ましく、0.5~10重量%であることがより好ましく、1~5重量%であることが更に好ましい。
【0067】
以下、実施例および比較例をあげて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれにより限定されるものではない。なお、各例中の部は重量部を示す。
【実施例
【0068】
以下、実施例および比較例をあげて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれにより限定されるものではない。なお、各例中の部は重量部を示す。
【0069】
比較光酸発生剤(G’1)~(G’5)の製造例
【0070】
比較製造例1(光酸発生剤(G’1)の製造)
ヘキサフルオロホスホネート・カリウム43g、アセトニトリル100 ml、ジフェニルスルホキシド40g、無水酢酸60g、および濃硫酸46gを仕込み、均一に混合した。そこへジフェニルスルフィド36gを滴下した。途中発熱により温度が上昇したが、35℃を超えないように冷却した。40℃ で1時間攪拌後、室温まで冷却し、水200mlを加えて10分間攪拌したところ、油状物が分離した。これに酢酸エチル200mlを加えて油状物を溶解させ、有機層を分液した。この有機層を20%苛性ソーダ90mlと、さらに水100mlで洗浄した後、アセトニトリルと酢酸エチルを減圧下で留去して、光酸発生剤(G’1)を得た。H-NMR、C-NMR、およびF-NMRの結果、主成分は、4-(フェニルチオ)フェニルジフェニルスルホニウム・ヘキサフルオロホスホネート(A1)であり、副生物として塩(C1)を3.5重量%と、塩(C2)を3.4重量%、それぞれ含有していた。
【0071】
【化14】
【0072】
【化15】
【0073】
【化16】
【0074】
比較製造例2(光酸発生剤(G’2)の製造)
ヘキサフルオロアンチモン酸・カリウム64g、アセトニトリル100 ml、ジフェニルスルホキシド40g、無水酢酸60g、および濃硫酸46gを仕込み、均一に混合した。そこへジフェニルスルフィド36gを滴下した。途中発熱により温度が上昇したが、35℃を超えないように冷却した。40℃ で1時間攪拌後、室温まで冷却し、水200mlを加えて10分間攪拌したところ、油状物が分離した。これに酢酸エチル200mlを加えて油状物を溶解させ、有機層を分液した。この有機層を20%苛性ソーダ90mlと、さらに水100mlで回洗浄した後、アセトニトリルと酢酸エチルを減圧下で留去して、光酸発生剤(G’2)を得た。H-NMR、C-NMR、およびF-NMRの結果、主成分は、4-(フェニルチオ)フェニルジフェニルスルホニウム・ヘキサフルオロホアンチモン酸(A2)であり、副生物として塩(C3)を3.2重量%と、塩(C4)を3.3重量%、それぞれ含有していた。
【0075】
【化17】
【0076】
【化18】
【0077】
【化19】
【0078】
比較製造例3(光酸発生剤(G’3)の製造)
ヘキサフルオロリン酸カリウム43g、アセトニトリル100 ml、4-[(フェニル)スルフィニル]ビフェニル55g、無水酢酸60g、およびメタンスルホン酸20gを仕込み、均一に混合した。そこへ4-(フェニルチオ)ビフェニル51gを滴下した。途中発熱により温度が上昇したが、40℃を超えないように冷却した。40℃ で1時間攪拌後、室温まで冷却し、水200mlを加えて10分間攪拌したところ、油状物が分離した。これに酢酸エチル200mlを加えて油状物を溶解させ、有機層を分液した。この有機層を20%苛性ソーダ90mlと、さらに水100mlで洗浄した後、アセトニトリルと酢酸エチルを減圧下で留去して、光酸発生剤(G’3)を得た。H-NMR、C-NMR、およびF-NMRの結果、主成分は、[4-(4-ビフェニルチオ)フェニル]-4-ビフェニルフェニルスルホニウム・ヘキサフルオロホスホネート(A3)であり、副生物として塩(C5)を3.6重量%と、塩(C6)を3.4重量%、それぞれ含有していた。
【0079】
【化20】
【0080】
【化21】
【0081】
【化22】
【0082】
比較製造例4(光酸発生剤(G’4)の製造)
ヘキサフルオロホスホネート・カリウム43g、アセトニトリル100 ml、ジフェニルスルホキシド40g、無水酢酸60g、および濃硫酸46gを仕込み、均一に混合した。そこへジフェニルスルフィド36gを滴下した。途中発熱により温度が上昇したが、35℃を超えないように冷却した。40℃ で1時間攪拌後、室温まで冷却し、水200mlを加えて10分間攪拌したところ、油状物が分離した。これに酢酸エチル200mlを加えて油状物を溶解させ、有機層を分液した。この有機層を水100mlで洗浄した後、アセトニトリルと酢酸エチルを減圧下で留去して、光酸発生剤(G’4)を得た。H-NMR、C-NMR、およびF-NMRの結果、主成分は、4-(フェニルチオ)フェニルジフェニルスルホニウム・ヘキサフルオロホスホネート(A1)であり、副生物として酸(B1)を3.3重量%と、酸(B2)を3.4重量%それぞれ含有していた。
【0083】
【化23】
【0084】
【化24】
【0085】
比較製造例5(光酸発生剤(G’5)の製造)
ヘキサフルオロアンチモン酸・カリウム64g、アセトニトリル100 ml、ジフェニルスルホキシド40g、無水酢酸60g、および濃硫酸46gを仕込み、均一に混合した。そこへジフェニルスルフィド36gを滴下した。途中発熱により温度が上昇したが、35℃を超えないように冷却した。40℃ で1時間攪拌後、室温まで冷却し、水200mlを加えて10分間攪拌したところ、油状物が分離した。これに酢酸エチル200mlを加えて油状物を溶解させ、有機層を分液した。この有機層を水100mlで洗浄した後、アセトニトリルと酢酸エチルを減圧下で留去して、光酸発生剤(G’5)を得た。H-NMR、C-NMR、およびF-NMRの結果、主成分は、4-(フェニルチオ)フェニルジフェニルスルホニウム・ヘキサフルオロホアンチモン酸(A2)であり、副生物として酸(B3)を2.8重量%と、酸(B4)を1.8重量%、それぞれ含有していた。
【0086】
【化25】
【0087】
【化26】
【0088】
本発明の光酸発生剤(G1)~(G5)の製造例
【0089】
製造例1(光酸発生剤(G1)の製造)
光酸発生剤(G’1)10gを酢酸エチル100g、水100gで抽出を1回行い、水を除去したのち、酢酸エチルを減圧下で留去して、光酸発生剤(G1)を得た。H-NMR、C-NMR、およびF-NMRの結果、主成分は、4-(フェニルチオ)フェニルジフェニルスルホニウム・ヘキサフルオロホスホネート(A1)であり、副生物として酸(C1)を1.4重量%、酸(C2)を1.5重量%それぞれ含有していた。
【0090】
製造例2(光酸発生剤(G2)の製造)
光酸発生剤(G’2)10gを酢酸エチル100g、水100gで抽出を2回繰り返し、水を除去したのち、酢酸エチルを減圧下で留去して、光酸発生剤(G2)を得た。H-NMR、C-NMR、およびF-NMRの結果、主成分は、4-(フェニルチオ)フェニルジフェニルスルホニウム・ヘキサフルオロホアンチモン(A2)であり、副生物として塩(C3)を0.20重量%、塩(C4)を0.20重量%それぞれ含有していた。
【0091】
製造例3(光酸発生剤(G3)の製造)
光酸発生剤(G’3)10gを酢酸エチル100g、水100gで抽出を2回繰り返し、水を除去したのち、酢酸エチルを減圧下で留去して、光酸発生剤(G3)を得た。H-NMR、C-NMR、およびF-NMRの結果、主成分は、[4-(4-ビフェニルチオ)フェニル]-4-ビフェニルフェニルスルホニウム・ヘキサフルオロホスホネート(A3)であり、副生物として塩(C5)を0.30重量%、塩(C6)を0.30重量%それぞれ含有していた。
【0092】
製造例4(光酸発生剤(G4)の製造)
光酸発生剤(G’4)10gを酢酸エチル100g、20%苛性ソーダ20g、および水100gで抽出を2回繰り返し、水を除去したのち、酢酸エチルを減圧下で留去して、光酸発生剤(G4)を得た。H-NMR、C-NMR、およびF-NMRの結果、主成分は、4-(フェニルチオ)フェニルジフェニルスルホニウム・ヘキサフルオロホスホネート(A1)であり、副生物として酸(B1)を0.90重量%、酸(B2)を0.90重量%それぞれ含有していた。
【0093】
製造例5(光酸発生剤(G5)の製造)
光酸発生剤(G’5)10gを酢酸エチル100g、20%苛性ソーダ20g、および水100gで抽出を2回繰り返し、水を除去したのち、酢酸エチルを減圧下で留去して、光酸発生剤(G5)を得た。H-NMR、C-NMR、およびF-NMRの結果、主成分は、4-(フェニルチオ)フェニルジフェニルスルホニウム・ヘキサフルオロホアンチモン酸(A2)であり、副生物として酸(B3)を0.02重量%と、酸(B4)を0.02重量%、それぞれ含有していた。
【0094】
製造例6(光酸発生剤(G6)の製造)
光酸発生剤(G1)10gを酢酸エチル100g、水100gで抽出を2回繰り返し、水を除去したのち、酢酸エチルを減圧下で留去して、光酸発生剤(G6)を得た。H-NMR、C-NMR、およびF-NMRの結果、主成分は、4-(フェニルチオ)フェニルジフェニルスルホニウム・ヘキサフルオロホスホネート(A1)であり、副生物として酸(C1)を0.01重量%、酸(C2)を0.01重量%それぞれ含有していた。
【0095】
比較製造例6(光酸発生剤(G’6)の製造)
光酸発生剤(G1)10gを酢酸エチル100g、水100gで抽出を5回繰り返し、水を除去したのち、酢酸エチルを減圧下で留去して、光酸発生剤(G’6)を得た。H-NMR、C-NMR、およびF-NMRの結果、主成分は、4-(フェニルチオ)フェニルジフェニルスルホニウム・ヘキサフルオロホスホネート(A1)であり、副生物として塩(C1)、および塩(C2)は含有していなかった。
【0096】
本発明の光酸発生剤(G1)~(G6)、および(G’1)~(G’6)の内容を表1、および表2にまとめた。
【0097】
【表1】
【0098】
【表2】
【0099】
実施例1~6、比較例1~6
本発明の光酸発生剤(G)および比較の光酸発生剤(G’)とカチオン重合性有機化合物(D)を表3のように配合し、光硬化性樹脂組成物を作成した。なお表中の数値は部数を表す。また、それぞれの光硬化性樹脂組成物の評価結果も表3に記載した。
【0100】
光硬化性樹脂組成物を下記、保管条件で保管した後、それぞれの試験を実施した。
<保管条件>
保管条件-1:40℃×3ヶ月
(貯蔵安定性)
上記組成物を遮光瓶から一部取り出し、組成物の粘度変化、析出有無について評価した。
(評価基準)
◎:保管前後の組成物の粘度変化が1.2倍未満。
〇:保管前後の組成物の粘度変化が1.5倍未満。
△:保管前後の組成物の粘度変化が1.7倍未満。
×:保管前後の組成物の粘度変化が1.8倍以上。または析出有り。
<光硬化性樹脂組成物の調整>
上記光硬化性樹脂組成物を、ガラス基板に塗布した後、ガラス基板に紫外線照射装置を用いて、フィルターによって波長を限定した紫外光を照射した(500mJ/cm)。なお、フィルターは365フィルター(アイグラフィックス株式会社製、365nm未満の光をカットするフィルター)を使用した。照射後、100℃で2時間加熱して後硬化させ、物性測定用の試験片(JIS K-7113に準拠したダンベル形状の試験片とJIS K-7171に準拠したバー形状の試験片、JIS K-7110に準拠したアイゾット衝撃試験用の試験片)を作製した。
後硬化後の試験片を用いて力学的特性、熱変形温度を以下の方法で測定した。
【0101】
硬化物の力学的特性[引張り特性(引張破断強度、引張弾性率)、曲げ特性(曲げ強度)、衝撃強度]、熱変形温度の測定は、次のようにして行なった。
【0102】
(1)硬化物の引張り特性(引張破断強度、引張弾性率):
以下の実施例または比較例で作製した硬化物(JIS K-7113に準拠したダンベル形状の試験片)を用いて、株式会社島津製作所のオートグラフ「AGS-10kNX」を使用して、JIS K-7113にしたがって、試験片の引張破断強度(引張強度)、および引張弾性率を測定した。
【0103】
(2)硬化物の曲げ特性(曲げ強度):
以下の実施例または比較例で作製した硬化物(JIS K-7171に準拠したバー形状の試験片)を用いて、JIS K-7171にしたがって、試験片の曲げ強度を測定した。
【0104】
(3)硬化物の衝撃強度:
株式会社安田精機製作所の衝撃試験機「No.258-D」を使用して、JIS K-7110に準じて、ノッチ付きでアイゾット衝撃強度を測定した。
【0105】
(4)硬化物の熱変形温度:
以下の実施例または比較例で作製した硬化物(JIS K-7171に準拠したバー形状の試験片)を用い、株式会社安田精機製作所のヒートデストーションテスター「No.148-HDPC3」を使用して、試験片に1.81MPaの荷重を加えてJIS K-7207(A法)に準拠して試験片の熱変形温度を測定し、さらに試験片に0.45MPaの荷重を加えてJIS K-7207(B法)に準拠して試験片の熱変形温度を測定した。
【0106】
【表3】
【0107】
D1:3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3’,4’-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(株式会社ダイセル製「Cel-2021P」)
D2b:[2-[4-(2,3-エポキシプロポキシ)フェニル]-2-[4-[1,1-ビス[4-([2,3-エポキシプロポキシ]フェニル]エチル]フェニル]プロパン](株式会社プリンテック製「VG3101L」)
D3:水素化ビスフェノールAジグリシジルエーテル(新日本理化株式会社製「HBE-100」)
D4:3-エチル-3-ヒドロキシメチルキセタン(東亞合成株式会社製「OXT101」)
D5:ビス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル(東亞合成株式会社製「OXT221」)
D6:1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル(ナガセケムテックス株式会社製「EX-212」)
【0108】
表3の結果より、本発明によって得られる光酸発生剤を含有する光硬化性樹脂組成物は、貯蔵安定性にすぐれ、靭性に優れていて丈夫で破損しにくく、さらに高い熱変形温度を有していて耐熱性に優れる硬化物を製造することができ、更に寸法精度、その他の力学的特性、耐熱性にも優れる。
【産業上の利用可能性】
【0109】
本発明の光酸発生剤を使用した光硬化性樹脂組成物は、塗料、コーティング剤、各種被覆材料(ハードコート、耐汚染被覆材、防曇被覆材、耐触被覆材、光ファイバー等)、粘着テープの背面処理剤、粘着ラベル用剥離シート(剥離紙、剥離プラスチックフィルム、剥離金属箔等)の剥離コーティング材、印刷板、歯科用材料(歯科用配合物、歯科用コンポジット)インキ、インクジェットインキ、レジストフィルム、液状レジスト、ネガ型レジスト(半導体素子等の表面保護膜、層間絶縁膜、平坦化膜等の永久膜材料等)、MEMS用レジスト、ネガ型感光性材料、各種接着剤(各種電子部品用仮固定剤、HDD用接着剤、ピックアップレンズ用接着剤、FPD用機能性フィルム(偏向板、反射防止膜等)用接着剤等)、ホログラフ用樹脂、FPD材料(カラーフィルター、ブラックマトリックス、隔壁材料、ホトスペーサー、リブ、液晶用配向膜、FPD用シール剤等)、光学部材、成形材料(建築材料用、光学部品、レンズ)、注型材料、パテ、ガラス繊維含浸剤、目止め材、シーリング材、封止材、光半導体(LED)封止材、光導波路材料、ナノインプリント材料、光造用、及びマイクロ光造形用材料等に好適に用いられる。