(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-18
(45)【発行日】2024-11-26
(54)【発明の名称】電動式流量調節弁
(51)【国際特許分類】
F16K 31/04 20060101AFI20241119BHJP
【FI】
F16K31/04 A
(21)【出願番号】P 2021009315
(22)【出願日】2021-01-25
【審査請求日】2023-10-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000115854
【氏名又は名称】リンナイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000305
【氏名又は名称】弁理士法人青莪
(72)【発明者】
【氏名】丹下 雅斗
(72)【発明者】
【氏名】近藤 秀幸
(72)【発明者】
【氏名】深尾 英臣
【審査官】山崎 孔徳
(56)【参考文献】
【文献】特開昭60-231079(JP,A)
【文献】特開2002-196825(JP,A)
【文献】実開平06-078677(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 31/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁座と、弁座に接近する閉じ方向と弁座から離隔する開き方向とに移動自在な弁体と、弁体を送りネジ機構を介して閉じ方向と開き方向とに移動させるステッピングモータとを備え、弁体の移動で弁体と弁座との間の開度が変化して流量が調節されるようにした電動式流量調節弁
であって、
送りネジ機構は、ステッピングモータの出力軸に連結されるネジ軸と、内周面にネジ軸の外周面に形成した雄ネジに螺合する雌ネジを有する回り止めされた摺動子とで構成され、摺動子は、送りネジ機構の配置部を弁体が収納されている弁室に対し仕切るダイヤフラムに当接し、ダイヤフラムに、弁体に開き方向から当接する押圧体が連結されるものにおいて、
弁体が弁座に着座した状態でステッピングモータを停止した後に、送りネジ機構に設けられた
ネジ軸の雄ネジと
摺動子の雌ネジとが食付いてロック状態になることを抑制するロック抑制手段と、ロック状態を解除し易くするロック解除促進手段との少なくとも一方を備えることを特徴とする電動式流量調節弁。
【請求項2】
前記ロック抑制手段は、前記弁体が前記弁座に着座する際に、前記ステッピングモータの出力トルクが低下するように、ステッピングモータの駆動周波数を増加させる手段で構成されることを特徴とする請求項1記載の電動式流量調節弁。
【請求項3】
前記ロック解除促進手段は、前記弁体を前記弁座に着座した状態から開き方向に移動させる際に、前記ステッピングモータの出力トルクが増加するように、ステッピングモータの駆動周波数を低下させる手段で構成されることを特徴とする請求項1又は2記載の電動式流量調節弁。
【請求項4】
前記ロック抑制手段は、前記弁体が前記弁座に着座した状態で前記ステッピングモータを停止した後に、ステッピングモータを弁体の開き方向に駆動してから弁体の閉じ方向に駆動する開閉動作を所定の時間間隔で行わせる手段で構成されることを特徴とする請求項1記載の電動式流量調節弁。
【請求項5】
弁座と、弁座に接近する閉じ方向と弁座から離隔する開き方向とに移動自在な弁体と、弁体を送りネジ機構を介して閉じ方向と開き方向とに移動させるステッピングモータとを備え、弁体の移動で弁体と弁座との間の開度が変化して流量が調節されるようにした電動式流量調節弁であって
、弁体は
、弁座に着座したときに、弁座に当接して圧縮される弾性材料製のパッキン部材を有するものにおいて、
弁体が弁座に着座した状態でステッピングモータを停止した後に、送りネジ機構に設けられた雄ネジと雌ネジとが食付いてロック状態になることを抑制するロック抑制手段を備え、
ロック抑制手段は、弁体が弁座に着座した状態でステッピングモータを停止した後に、ステッピングモータを弁体の開き方向に駆動してから弁体の閉じ方向に駆動する開閉動作を所定の時間間隔で行わせる手段で構成され、開閉動作での弁体の開き方向への移動ストロークは、パッキン部材の圧縮代の範囲内に設定されることを特徴とする電動式流量調節弁。
【請求項6】
弁座と、弁座に接近する閉じ方向と弁座から離隔する開き方向とに移動自在な弁体と、弁体を送りネジ機構を介して閉じ方向と開き方向とに移動させるステッピングモータとを備え、弁体の移動で弁体と弁座との間の開度が変化して流量が調節されるようにした電動式流量調節弁であって
、弁体は
、弁座に着座したときに、弁座に当接して圧縮される弾性材料製のパッキン部材を有するものにおいて、
弁体が弁座に着座した状態でステッピングモータを停止した後に、送りネジ機構に設けられた雄ネジと雌ネジとが食付いてロック状態になることを抑制するロック抑制手段を備え、
ロック抑制手段は、弁体
が弁座に着座した後
、ステッピングモータを弁体の閉じ方向に脱調するまで駆動させてから、ステッピングモータを、弁体の開き方向に、弁体がパッキン部材の圧縮代の範囲内に設定される所定ストロークだけ開き方向に移動するように駆動させてから停止させる手段で構成されることを特徴とする電動式流量調節弁。
【請求項7】
前記ロック抑制手段は、前記送りねじ機構と前記弁体との間に介設した弾性部材と、前記弁体が前記弁座に着座した後、弾性部材が前記ステッピングモータの脱調を生ずるほど圧縮される前にステッピングモータを停止させる手段とで構成されることを特徴とする請求項1記載の電動式流量調節弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バーナへのガス供給路等に介設する電動式流量調節弁に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の電動式流量調節弁として、弁座と、弁座に接近する閉じ方向と弁座から離隔する開き方向とに移動自在な弁体と、弁体を送りネジ機構を介して閉じ方向と開き方向とに移動させるステッピングモータとを備え、弁体の移動で弁体と弁座との間の開度が変化して流量が調節されるようにしたものは知られている(例えば、特許文献1参照)。このような電動式流量調節弁では、一般的に、閉弁させる際に、弁体を弁座に着座させた状態でステッピングモータを脱調させて原点出しを行った後に、ステッピングモータを停止している。
【0003】
ところで、従来は、ステッピングモータの出力トルクを、弁体が多少のこじりを生じても確実に開閉動作されるように高めに設定している。ここで、弁体が弁座に着座すると、送りネジ機構に設けられた雄ネジと雌ネジとの間に、弁座に対する弁体の当接反力分の応力が作用する。そして、この応力は、モータ停止後も継続して作用する。弁座に対する弁体の当接反力は、ステッピングモータの出力トルクに比例するため、出力トルクを比較的高めに設定した従来例のものでは、雄ネジと雌ネジとの間にモータ停止後もある程度大きな応力が作用したままになる。そのため、閉弁状態に長時間維持されると、クリープ現象により雄ネジと雌ネジの変形が進み、両者の食付きを生じてロック状態になり、開弁不良(うまく開弁動作できなくなること)を生ずることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、以上の点に鑑み、閉弁状態に長時間維持された後の開弁不良を防止できるようにした電動式流量調節弁を提供することをその課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は、弁座と、弁座に接近する閉じ方向と弁座から離隔する開き方向とに移動自在な弁体と、弁体を送りネジ機構を介して閉じ方向と開き方向とに移動させるステッピングモータとを備え、弁体の移動で弁体と弁座との間の開度が変化して流量が調節されるようにした電動式流量調節弁であって、送りネジ機構は、ステッピングモータの出力軸に連結されるネジ軸と、ネジ軸の外周面に形成した雄ネジに螺合する雌ネジを内周面に形成した回り止めされた摺動子とで構成され、摺動子は、送りネジ機構の配置部を弁体が収納されている弁室に対し仕切るダイヤフラムに当接し、ダイヤフラムに、弁体に開き方向から当接する押圧体が連結されるものにおいて、弁体が弁座に着座した状態でステッピングモータを停止した後に、送りネジ機構に設けられたネジ軸の雄ネジと摺動子の雌ネジとが食付いてロック状態になることを抑制するロック抑制手段と、ロック状態を解除し易くするロック解除促進手段との少なくとも一方を備えることを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、閉弁状態に長時間維持されても、送りネジ機構の雄ネジと雌ネジとが食付いてロック状態になることをロック抑制手段により抑制でき、また、ロック状態になっても、ロック解除促進手段によりロック状態が解除され易くなるため、開弁不良を効果的に防止することができる。
【0008】
また、本発明において、上記ロック抑制手段は、弁体が弁座に着座する際に、ステッピングモータの出力トルクが低下するように、ステッピングモータの駆動周波数を増加させる手段で構成できる。これによれば、ステッピングモータの出力トルクの低下で弁座に対する弁体の当接反力が低下して、送りネジ機構の雄ネジと雌ネジとの間に作用する応力も低下することになる。そのため、雄ネジと雌ネジのクリープ現象による変形が抑制される。その結果、閉弁状態に長時間維持されても、送りネジ機構の雄ネジと雌ネジとが食付いてロック状態になることを抑制でき、開弁不良を有効に防止することができる。
【0009】
更に、本発明において、上記ロック解除促進手段は、弁体を弁座に着座した状態から開き方向に移動させる際に、ステッピングモータの出力トルクが増加するように、ステッピングモータの駆動周波数を低下させる手段で構成できる。これによれば、送りネジ機構の雄ネジと雌ネジとが食付いてロック状態になっても、ステッピングモータの出力トルクの増加でロック状態が解除され易くなり、開弁不良を効果的に防止することができる。
【0010】
また、本発明において、上記ロック抑制手段は、弁体が弁座に着座した状態でステッピングモータを停止した後に、ステッピングモータを弁体の開き方向に駆動してから弁体の閉じ方向に駆動する開閉動作を所定の時間間隔で行わせる手段で構成してもよい。これによれば、モータ停止後、ステッピングモータを弁体の開き方向に駆動することで、送りネジ機構の雄ネジと雌ネジとの間に作用する応力が一旦低下して、クリープ現象による雄ネジと雌ネジの変形の進行が停止する。そして、開閉動作を所定の時間間隔で行うことにより、雄ネジと雌ネジの変形が両者の食付きを生ずる程には進行せず、ロック状態になることを抑制できる。
【0011】
また、本発明は、弁座と、弁座に接近する閉じ方向と弁座から離隔する開き方向とに移動自在な弁体と、弁体を送りネジ機構を介して閉じ方向と開き方向とに移動させるステッピングモータとを備え、弁体の移動で弁体と弁座との間の開度が変化して流量が調節されるようにした電動式流量調節弁であって、弁体が、弁座に着座したときに、弁座に当接して圧縮される弾性材料製のパッキン部材を有するものにおいて、弁体が弁座に着座した状態でステッピングモータを停止した後に、送りネジ機構に設けられた雄ネジと雌ネジとが食付いてロック状態になることを抑制するロック抑制手段を備え、ロック抑制手段は、弁体が弁座に着座した状態でステッピングモータを停止した後に、ステッピングモータを弁体の開き方向に駆動してから弁体の閉じ方向に駆動する開閉動作を所定の時間間隔で行わせる手段で構成され、開閉動作での弁体の開き方向への移動ストロークは、パッキン部材の圧縮代の範囲内に設定されることを特徴とする。これによれば、上記開閉動作で弁体を開き方向に移動させたときにも、パッキン部材が弁座に接する状態、即ち、閉弁状態に維持され、流量調節弁の下流側に流体が流れることがない。
【0012】
また、本発明は、弁座と、弁座に接近する閉じ方向と弁座から離隔する開き方向とに移動自在な弁体と、弁体を送りネジ機構を介して閉じ方向と開き方向とに移動させるステッピングモータとを備え、弁体の移動で弁体と弁座との間の開度が変化して流量が調節されるようにした電動式流量調節弁であって、弁体が、弁座に着座したときに、弁座に当接して圧縮される弾性材料製のパッキン部材を有するものにおいて、弁体が弁座に着座した状態でステッピングモータを停止した後に、送りネジ機構に設けられた雄ネジと雌ネジとが食付いてロック状態になることを抑制するロック抑制手段を備え、ロック抑制手段は、弁体が弁座に着座した後、ステッピングモータを弁体の閉じ方向に脱調するまで駆動させてから、ステッピングモータを、弁体の開き方向に、弁体がパッキン部材の圧縮代の範囲内に設定される所定ストロークだけ開き方向に移動するように駆動させてから停止させる手段で構成されることを特徴とする。ここで、ステッピングモータを脱調後に弁体の開き方向に上記の如く駆動させてから停止させたとき、パッキン部材は弁座に接していて閉弁状態に維持される。そして、ステッピングモータを脱調後に弁体の開き方向に駆動させることで、送りネジ機構の雄ネジと雌ネジとの間に作用する応力が小さくなる。従って、閉弁状態に長時間維持されても、雄ネジと雌ネジとの間に作用する応力が小さいため、クリープ現象による雄ネジと雌ネジの変形の進行が抑制され、雄ネジと雌ネジの食付きでロック状態になることを抑制できる。
【0013】
また、本発明においては、上記ロック抑制手段を、送りネジ機構と弁体との間に介設した弾性部材と、弁体が弁座に着座した後、弾性部材がステッピングモータの脱調を生ずるほど圧縮される前にステッピングモータを停止させる手段とで構成してもよい。これによれば、弾性部材のクッション作用により、送りネジ機構の雄ネジと雌ネジとの間に作用する応力が比較的小さく維持されている状態で、ステッピングモータが停止されることになる。そのため、この状態に長時間維持されても、クリープ現象による雄ネジと雌ネジの変形の進行が抑制され、雄ネジと雌ネジの食付きでロック状態になることを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の第1実施形態の電動式流量調節弁の切断側面図。
【
図2】(a)(b)第1実施形態の電動式流量調節弁の作動を示す要部の切断側面図。
【
図3】第1実施形態の電動式流量調節弁におけるステッピングモータの制御内容を示すフロー図。
【
図4】(a)本発明の第2実施形態の電動式流量調節弁の切断側面図、(b)第2実施形態の電動式流量調節弁の作動を示す要部の切断側面図。
【
図5】(a)本発明の第3実施形態の電動式流量調節弁の切断側面図、(b)第3実施形態の電動式流量調節弁の作動を示す要部の切断側面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は、コンロバーナ等のバーナBへのガス供給路Gに介設する本発明の第1実施形態の電動式流量調節弁を示している。この電動式流量調節弁は、ガス供給路Gの上流側部分と下流側部分とを夫々接続する流入口11と流出口12とを有する弁筐1を備えている。弁筐1内には、流入口11に連通する弁室13と、弁室13の一端の第1弁座14とが設けられ、第1弁座14に、流出口12に連通する第1弁孔15が開設されている。
【0016】
電動式流量調節弁は、更に、第1弁座14に接近する閉じ方向と第1弁座14から離隔する開き方向とに移動自在な第1弁体2と、第1弁体2に設けられた本発明の弁座たる後述する第2弁座25に接近する閉じ方向(
図1の右方)と第2弁座25から離隔する開き方向(
図1の左方)とに移動自在な本発明の弁体たる第2弁体3と、第1弁体2を開き方向に付勢する第1付勢手段4
1と、第1弁体2に対し第2弁体3を第1付勢手段4
1よりも強い付勢力で開き方向に付勢する第2付勢手段4
2と、第1弁体2に対する第2弁体3の開き方向への移動を定位置で制止するストッパ手段5と、第2弁体3に開き方向から当接する押圧体6と、押圧体6、即ち、第2弁体3を送りネジ機構7を介して開き方向及び閉じ方向に移動させるステッピングモータ8とを備えている。
【0017】
第1弁体2は、第1弁孔15に挿入可能なニードル部22を有する、硬質材料で形成される弁本体21を備えている。弁本体21には、ニードル部22の開き方向の端部に形成した鍔部22aにより抜け止めされる、第1弁座14に着座可能な、ゴム等の弾性材料で形成された環状の閉塞部23が外嵌固定されている。更に、弁本体21には、第1弁体2、即ち、閉塞部23が第1弁座14に着座した状態でも第1弁体2の上流側から下流側にガスを流す第2弁孔24と、第2弁体3が着座可能で、第2弁孔24が開口する第2弁座25とが形成されている。第2弁孔24には、バーナBの最小火力を規定するオリフィス部24aが設けられている。また、弁本体21の開き方向の端部には、第2弁体3を囲うようにして開き方向にのびるガイド筒部26が結合されている。ガイド筒部26の外周面には、弁室13の周壁面に摺接する複数の突条26aが突設され、また、ガイド筒部26の基端部には、ガイド筒部26の内外を連通する透孔26bが形成されている。
【0018】
ストッパ手段5は、第1弁体2のガイド筒部26に形成した窓孔51と、第2弁体3の外周面に突設した、窓孔51に遊びを持って挿入される爪部52とで構成されている。そして、第2弁体3が第1弁体2に対し開き方向に移動して、窓孔51の開き方向の端縁に爪部52が係合したところで、第2弁体3が第1弁体2に対しそれ以上開き方向に移動しないようにしている。
【0019】
押圧体6は、閉じ方向の端面が球面状の凸面に形成されており、この凸面を、第2弁体3の開き方向の端面に当接させている。送りネジ機構7は、ステッピングモータ8の出力軸81に連結されるネジ軸71と、回り止めされた筒状の摺動子72とで構成されている。そして、ネジ軸71の外周面に形成した雄ネジ71aを摺動子72の内周面に形成した雌ネジ72aに螺合させ、ネジ軸71の回転に伴い摺動子72が開閉方向に移動するようにしている。摺動子72は、送りネジ機構7の配置部を弁室13に対し仕切るダイヤフラム61に当接しており、このダイヤフラム61に押圧体6を連結している。尚、ネジ軸71は金属製であるが、摺動子72は樹脂製である。
【0020】
図1に示す如く、第1弁体2(正確には、第1弁体2の閉塞部23)が第1弁座14に着座すると共に、第2弁体3が第1弁体2の第2弁座25に着座して第2弁孔24を閉塞する状態が、電動式流量調節弁の全閉状態であって、バーナBへのガス供給が停止される。この全閉状態からステッピングモータ8により送りネジ機構7を介して押圧体6を開き方向に移動させると、第2弁体3が第2付勢手段4
2の付勢力により押圧体6に追従して開き方向に移動する。第1弁体2に対する第2弁体3の開き方向への移動がストッパ手段5で制止されるまでは、第1弁体2の開き方向への移動が第2付勢手段4
2の付勢力によって阻止される。そのため、
図2(a)に示す如く、第1弁体2が第1弁座14に着座した状態に維持されると共に、第2弁体3が第2弁座25から離隔して、第2弁孔24が開放され、バーナBの火力を最小にする最小火力状態になる。第1弁体2に対する第2弁体3の開き方向への移動がストッパ手段5で制止された後、第2弁体3を更に開き方向に移動させれば、第1弁体2が第1付勢手段4
1の付勢力により第2弁体3に追従して開き方向に移動し、第1弁体2が第1弁座14から離隔して、バーナBの火力が次第に増加する。そして、
図2(b)に示す如く、第1弁体2のニードル部22が第1弁孔15から抜け出ると、バーナBの火力を最大にする最大火力状態になる。
【0021】
ステッピングモータ8を制御するコントローラ9には、点消火指示手段91と火力指示手段92とからの信号が入力される。点消火指示手段91からコントローラ9に消火指令信号が入力されると、コントローラ9は、ステッピングモータ8を弁体閉じ方向に駆動させて、電動式流量調節弁を全閉状態にし、更に、ステッピングモータ8を弁体閉じ方向に脱調するまで駆動させてから停止して、ステッピングモータ8の原点位置をこの停止位置(停止したときのモータの回転位置)に更新する。そして、点消火指示手段91から点火指令が出されるまで、ステッピングモータ8を原点位置にしたまま待機する。
【0022】
ここで、第2弁体3が第2弁座25に着座して全閉状態になると、送りネジ機構7の雄ネジ71aと雌ネジ72aとの間に、第2弁座25に対する第2弁体3の当接反力分の応力が作用する。そして、この応力は、モータ停止後も継続して作用する。第2弁座25に対する第2弁体3の当接反力は、ステッピングモータ8の出力トルクに比例する。ステッピングモータ8の出力トルクは、第1と第2の両弁体2,3が多少のこじりを生じても確実に開閉動作するように高めに設定されている。従って、このままでは、雄ネジ71aと雌ネジ72aとの間にモータ停止後もある程度大きな応力が作用したままになる。その結果、全閉状態に長時間維持されると、クリープ現象により雄ネジ71aと雌ネジ72aの変形が進む。特に、本実施形態の如く雌ネジ72aを樹脂製にすると、雌ネジ72aの変形が進み易くなる。そして、この変形が進むと、雄ネジ71aと雌ネジ72aの食付きを生じてロック状態になり、開弁不良を生ずる虞がある。
【0023】
そこで、本実施形態では、全閉状態でステッピングモータ8を停止した後に、雄ネジ71aと雌ネジ72aとが食付いてロック状態になることを抑制するロック抑制手段と、ロック状態を解除し易くするロック解除促進手段とを設けている。以下、この点について詳述する。
【0024】
図3に示す如く、点消火指示手段91から点火指令が出されると(STEP1)、コントローラ9は、ステッピングモータ8の駆動周波数(ステッピングモータ8に入力する単位時間当たりのパルス数)を通常値Fn(上記の如く高めに設定した出力トルクが得られる周波数)よりも所定割合(例えば、50%)低い値Flにして、ステッピングモータ8を弁体開き方向に駆動する(STEP2)。そして、ステッピングモータ8の回転位置が所定の周波数切換位置に到達したときに(STEP3)、駆動周波数を通常値Fnに切換えて、ステッピングモータ8を所定の点火位置(点火に適した火力になるモータ回転位置)まで駆動して停止する(STEP4、STEP5、STEP6)。尚、周波数切換位置は、原点位置から所定のパルス数(例えば、20パルス)分の回転角度だけ離れた位置に設定される。
【0025】
ここで、駆動周波数を低下させると、ステッピングモータ8の出力トルクが増加する。そして、STEP1からSTEP3までの制御が、第2弁体3を第2弁座25に着座した状態から開き方向に移動させる際に、ステッピングモータ8の出力トルクが増加するように、ステッピングモータ8の駆動周波数を低下させる手段として機能する。これによれば、送りネジ機構7の雄ネジ71aと雌ネジ72aとが食付いてロック状態になっても、ステッピングモータ8の出力トルクの増加でロック状態が解除され易くなり、開弁不良を効果的に防止することができる。従って、STEP1からSTEP3までの制御による機能的手段で上記ロック解除促進手段が構成されることになる。
【0026】
次に、火力指示手段92から火力変更指令が出されると(STEP7)、コントローラ9は、駆動周波数を通常値Fnに維持したまま、ステッピングモータ8を変更された火力に対応する回転位置まで駆動する火力調節制御を行う(STEP8)。その後、点消火指示手段91から消火指令が出されると(STEP9)、コントローラ9は、駆動周波数を通常値Fnに維持したまま、ステッピングモータ8を弁体閉じ方向に駆動する(STEP10)。そして、ステッピングモータ8の回転位置が上記周波数切換位置に到達したときに(STEP11)、駆動周波数を通常値Fnよりも所定割合(例えば、200%)高い値Fhに切換えて、ステッピングモータ8を弁体閉じ方向に駆動する(STEP12)。次に、第2弁体3が第2弁座25に着座して全閉状態になった後も、駆動周波数を高い値Fhにしたままステッピングモータ8を駆動して、ステッピングモータ8を脱調させてから(STEP13)、ステッピングモータ8を停止する(STEP14)。そして、ステッピングモータ8の原点位置をこの停止位置に更新し(STEP15)、次の点火指令が出されるまで、ステッピングモータ8を原点位置に待機させる。
【0027】
ここで、駆動周波数を増加させると、ステッピングモータ8の出力トルクが低下する。そして、STEP11からSTEP14までの制御が、第2弁体3が第2弁座25に着座する際に、ステッピングモータ8の出力トルクが低下するように、ステッピングモータ8の駆動周波数を増加させる手段として機能する。これによれば、ステッピングモータ8の出力トルクの低下で第2弁座25に対する第2弁体3の当接反力が低下して、送りネジ機構7の雄ネジ71aと雌ネジ72aとの間に作用する応力も低下することになる。そのため、雄ネジ71aと雌ネジ72aのクリープ現象による変形が抑制される。その結果、全閉状態に長時間維持されても、雄ネジ71aと雌ネジ72aとが食付いてロック状態になることを抑制でき、開弁不良を有効に防止することができる。従って、STEP11からSTEP14までの制御による機能的手段で上記ロック抑制手段が構成されることになる。
【0028】
次に、
図4に示す本発明の第2実施形態の電動式流量調節弁について説明する。第2実施形態の電動式流量調節弁の基本的な構造は、上記第1実施形態のものと特に異ならず、第1実施形態のものと同様の部材、部位に上記と同一の符号を付している。
【0029】
第2実施形態の電動式流量調節弁の第1実施形態のものとの相違点は、第2弁体3が、第2弁座25に着座したときに、第2弁座25に当接して圧縮される弾性材料製のパッキン部材32を有することである。第2弁体3は、硬質材料で形成される弁本体31を備えている。そして、弁本体31に、第2弁座25に対向する弁本体31の先端面に開口する中空部31aを形成して、この中空部31aにパッキン部材32を装着している。自由状態において、パッキン部材32の先端部は、弁本体31の先端面から所定の圧縮代分だけ突出している。
【0030】
第2実施形態のものでは、ステッピングモータ8を弁体閉じ方向に駆動することで、第2弁体3を第2弁座25に着座させて全閉状態にし、更に、ステッピングモータ8を弁体閉じ方向に脱調するまで駆動してから停止させた後に、次の点火指令が出されるまでの間、コントローラ9により、ステッピングモータ8を弁体開き方向に駆動してから弁体閉じ方向に駆動する開閉動作を所定の時間間隔(例えば、1分間隔)で行わせる制御を実行するようにしている。尚、ステッピングモータ8は、第2弁体3のパッキン部材32が圧縮されて、
図4(a)に示す如く弁本体31の先端面が第2弁座25に当接したときに脱調する。
【0031】
上記制御によれば、モータ停止後、ステッピングモータ8を弁体開き方向に駆動することで、雄ネジ71aと雌ネジ72aとの間に作用する応力が一旦低下して、クリープ現象による雄ネジ71aと雌ネジ72aの変形の進行が停止する。そして、開閉動作を所定の時間間隔で行うことにより、雄ネジ71aと雌ネジ72aの変形が両者の食付きを生ずる程には進行せず、ロック状態になることを抑制できる。従って、上記制御による機能的手段で上記ロック抑制手段が構成されることになる。
【0032】
更に、第2実施形態では、上記開閉動作での第2弁体3の開き方向への移動ストロークを、パッキン部材32の圧縮代の範囲内に設定している。そのため、開閉動作で第2弁体3を開き方向に移動したときにも、
図4(b)に示す如く、パッキン部材32が第2弁座25に接する状態、即ち、全閉状態に維持され、電動式流量調節弁の下流側にガスが流れることはない。
【0033】
また、第2実施形態の構造の電動式流量調節弁において、ステッピングモータ8を弁体閉じ方向に駆動することで、第2弁体3を第2弁座25に着座させて全閉状態にし、更に、ステッピングモータ8を弁体閉じ方向に脱調するまで、即ち、
図4(a)に示す状態になるまで駆動させてから、コントローラ9により以下の制御を実行するようにしてもよい。この制御は、ステッピングモータ8を、弁体開き方向に、第2弁体3がパッキン部材32の圧縮代の範囲内に設定される所定ストロークだけ開き方向に移動するように、即ち、
図4(b)に示す状態になるように駆動させてから停止させる制御である。
【0034】
この制御によれば、ステッピングモータ8を脱調後に弁体開き方向に駆動させることで、送りネジ機構7の雄ネジ71aと雌ネジ72aとの間に作用する応力が小さくなる。従って、
図4(b)に示す全閉状態に長時間維持されても、雄ネジ71aと雌ネジ72aとの間に作用する応力が小さいため、クリープ現象による雄ネジ71aと雌ネジ72aの変形の進行が抑制され、雄ネジ71aと雌ネジ72aの食付きでロック状態になることを抑制できる。従って、上記制御による機能的手段で上記ロック抑制手段が構成されることになる。
【0035】
次に、第2実施形態の電動式流量調節弁の構造を一部変更した
図5に示す第3実施形態の電動式流量調節弁について説明する。第3実施形態の電動式流量調節弁の第2実施形態のものとの相違点は、押圧体6を、ダイヤフラム61に連結される第1部材62と、第2弁体3の開き方向の端面に当接する第2部材63との2部材構造として、第1部材62に対し第2部材63を第2付勢手段4
2の付勢力よりも強い付勢力で閉じ方向に付勢する弾性部材64を設けたことである。即ち、第3実施形態のものでは、送りネジ機構7と第2弁体3との間に弾性部材64が介設されることになる。
【0036】
そして、第3実施形態のものでは、全閉状態にする際に、コントローラ9により以下の制御を実行する。この制御は、第2弁体3が第2弁座25に着座した後、弾性部材64がステッピングモータ8の脱調を生ずるほど圧縮される前の
図5(a)に示す状態でステッピングモータ8を停止させる制御である。
【0037】
この制御によれば、弾性部材64のクッション作用により、雄ネジ71aと雌ネジ72aとの間に作用する応力が比較的小さく維持されている状態で、ステッピングモータ8が停止されることになる。そのため、この状態に長時間維持されても、クリープ現象による雄ネジ71aと雌ネジ72aの変形の進行が抑制され、両者の食付きでロック状態になることを抑制できる。従って、弾性部材64と上記制御による機能的手段とで上記ロック抑制手段が構成されることになる。
【0038】
尚、原点位置を更新するために、定期的にステッピングモータ8を脱調させる必要がある。ステッピングモータ8を脱調させる際は、
図5(a)に示す状態からステッピングモータ8を更に弁体閉じ方向に駆動して、
図5(b)に示す如く、押圧体6の第1部材62を第2部材63に当接させる。脱調させて原点位置を更新した後は、
図5(a)に示す状態まで戻し、この状態で待機させる。
【0039】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、上記実施形態の電動式流量調節弁は、第1と第2の2つの弁体2,3を備えるが、単一の弁体を備える電動式流量調節弁にも同様に本発明を適用できる。
【符号の説明】
【0040】
25…第2弁座(弁座)、3…第2弁体(弁体)、32…パッキン部材、64…弾性部材、7…送りネジ機構、71a…雄ネジ、72a…雌ネジ、8…ステッピングモータ、9…コントローラ(ロック抑制手段、ロック解除促進手段)。