(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-18
(45)【発行日】2024-11-26
(54)【発明の名称】促進酸化処理設備
(51)【国際特許分類】
C02F 1/32 20230101AFI20241119BHJP
C02F 1/72 20230101ALI20241119BHJP
C02F 1/76 20230101ALI20241119BHJP
【FI】
C02F1/32
C02F1/72 Z
C02F1/72 101
C02F1/76 Z
(21)【出願番号】P 2021028175
(22)【出願日】2021-02-25
【審査請求日】2023-11-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000238186
【氏名又は名称】株式会社フソウ
(74)【代理人】
【識別番号】100141586
【氏名又は名称】沖中 仁
(74)【代理人】
【識別番号】100102211
【氏名又は名称】森 治
(72)【発明者】
【氏名】一番ヶ瀬 宏之
【審査官】相田 元
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-062201(JP,A)
【文献】国際公開第2021/025991(WO,A1)
【文献】特開2004-097992(JP,A)
【文献】特開2017-083183(JP,A)
【文献】特開2013-075271(JP,A)
【文献】特開2011-121026(JP,A)
【文献】特表2022-542227(JP,A)
【文献】特開平10-123118(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 1/20- 1/26
C02F 1/30- 1/38
C02F 1/70- 1/78
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
濾過処理を施した被処理水に、薬剤添加装置によって次亜塩素酸塩
を添加するとともに、紫外線照射装置によって紫外線の照射を行って、被処理水に溶解している夾雑物質を分解処理する促進酸化処理設備であって、前記促進酸化処理設備が、複数の紫外線ランプを設置した紫外線照射装置と、被処理水中の除去対象物質
であるカビ臭物質(異臭味物質)、農薬、1、4-ジオキサン及び有機フッ素化合物の少なくともいずれかの濃度を測定する測定手段と、被処理水中の除去対象物質濃度と紫外線の必要照射量
及び次亜塩素酸塩の必要添加量の相関関係を記憶させる記憶手段と、前記測定手段により測定した被処理水中の除去対象物質濃度と、前記記憶手段に記憶されている被処理水中の除去対象物質濃度と紫外線の必要照射量
及び次亜塩素酸塩の必要添加量の相関関係とに基づいて、紫外線の照射量が必要照射量となるように紫外線照射装置の紫外線ランプの点灯を制御する制御手段と、
次亜塩素酸塩の添加量が必要添加量となるように薬剤添加装置による薬剤添加量を制御する制御手段とを備えてなることを特徴とする促進酸化処理設備。
【請求項2】
前記紫外線照射装置が低圧UVランプを備え、前記次亜塩素酸塩に次亜塩素酸ナトリウムを用いてなり、被処理水に対する紫外線の照射量を200~1000mJ/cm
2
に、次亜塩素酸ナトリウムの注入率を0.2~4mg/Lに設定してなることを特徴とする請求項1に記載の促進酸化処理設備。
【請求項3】
前記紫外線照射装置が中圧UVランプを備え、前記次亜塩素酸塩に次亜塩素酸ナトリウムを用いてなり、被処理水に対する紫外線の照射量を100~500mJ/cm
2
に、次亜塩素酸ナトリウムの注入率を0.2~4mg/Lに設定してなることを特徴とする請求項1に記載の促進酸化処理設備。
【請求項4】
前記促進酸化処理後の被処理水の残留塩素濃度を測定する残留塩素濃度計を設置し、該残留塩素濃度計の測定値に基づいて次亜塩素酸塩の添加量を制御する制御手段を備えてなることを特徴とする請求項1、2
又は
3に記載の促進酸化処理設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、促進酸化処理設備に関し、特に、地表水や地下水等の原水から水道水や工業用水を生成する浄水処理設備や廃水を処理する廃水処理設備等において、原水や廃水中に含まれる溶解性有機物を効果的に分解するようにした促進酸化処理設備に関するものである。
【背景技術】
【0002】
水道水や工業用水は、その原水を河川や湖沼等の地表水とする場合と、地下水とする場合とに大きく分けられるが、特に、地表水は外的因子の影響を受け易く、湖沼における藻類(原因物質:2-メチルイソボルネオール、ジェオスミン)に起因する異臭味の発生や、河川における工場排水に起因する微量有害物質汚染など、従来から水質汚濁が大きな問題となっている。
【0003】
ところで、水質汚濁の主な原因物質である溶解性有機物は、従来プロセスである凝集沈殿や砂濾過では、十分な除去、分解が困難であることから、オゾン処理、活性炭処理等の高度処理プロセスを追加して対策がなされている。
【0004】
この高度処理プロセスのうち、特に、異臭味物質を含む溶解性有機物の分解処理には、促進酸化プロセスが提案されている(例えば、特許文献1~2参照。)。
促進酸化プロセスは、オゾン、紫外線、酸化剤等を組み合わせ、酸化力の高い活性酸素を発生させることで分解を行うものであるが、高い分解率を達成するためには、長時間の反応、若しくは、オゾン、紫外線等の大量投与が必要となり、実用化されている分野は限定的であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2008-62201号公報
【文献】特開2013-220395号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記促進酸化プロセスを採用するに当たり、処理コストの上昇を抑制しながら、異臭味物質に代表される溶解性有機物の分解処理を効率よく、かつ、確実に行うことができるようにした促進酸化処理設備を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の促進酸化処理設備は、被処理水に、薬剤添加装置によって次亜塩素酸塩又は過酸化水素を添加するとともに、紫外線照射装置によって紫外線の照射を行って、被処理水に溶解している夾雑物質を分解処理する促進酸化処理設備であって、前記促進酸化処理設備が、複数の紫外線ランプを設置した紫外線照射装置と、被処理水中の除去対象物質濃度を測定する測定手段と、被処理水中の除去対象物質濃度と紫外線の必要照射量の相関関係を記憶させる記憶手段と、前記測定手段により測定した被処理水中の除去対象物質濃度と、前記記憶手段に記憶されている被処理水中の除去対象物質濃度と紫外線の必要照射量の相関関係とに基づいて、紫外線の照射量が必要照射量となるように紫外線照射装置の紫外線ランプの点灯を制御する制御手段とを備えてなることを特徴とする。
【0008】
この場合において、前記紫外線照射装置による紫外線の照射を、濾過処理を施した被処理水に対して行うようにすることができる。
【0009】
前記紫外線の必要照射量と次亜塩素酸塩又は過酸化水素の必要添加量の相関関係を記憶させる記憶手段と、前記記憶手段に記憶されている紫外線の必要照射量と次亜塩素酸塩又は過酸化水素の必要添加量の相関関係とに基づいて、次亜塩素酸塩又は過酸化水素の添加量が必要添加量となるように薬剤添加装置による薬剤添加量を制御する制御手段とを備えてなるようにすることができる。
【0010】
また、前記紫外線照射装置によって紫外線の照射を行う前の被処理水に過酸化水素を添加する薬剤添加装置に加え、紫外線照射装置によって紫外線の照射を行った後の被処理水に次亜塩素酸塩を添加する残留過酸化水素除去用薬剤添加装置を備えてなるようにすることができる。
【0011】
また、前記促進酸化処理後の被処理水の残留塩素濃度を測定する残留塩素濃度計を設置し、該残留塩素濃度計の測定値に基づいて次亜塩素酸塩の添加量を制御する制御手段を備えてなるようにすることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の促進酸化処理設備によれば、処理コストの上昇を抑制しながら、異臭味物質に代表される溶解性有機物の分解処理を効率よく、かつ、確実に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】各条件によるカビ臭除去率の実験結果である。
【
図2】各条件によるカビ臭除去率の実験結果である。
【
図4】本発明の促進酸化処理設備の実施例を示す説明図である。
【
図5】本発明の促進酸化処理設備の実施例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の促進酸化処理設備の実施の形態を、浄水処理設備に適用した例に基づいて説明する。
【実施例1】
【0015】
[低圧UVランプ+次亜塩素酸ナトリウム(NaOCl)]
○被処理水
・対象:浄水処理
・除去対象物質:カビ臭物質(異臭味物質)、農薬、1、4-ジオキサン、有機フッ素化合物
○UV促進酸化処理条件
・照射量:200~1000mJ/cm
2
・NaOCl注入率:0.2~4mg/L(+浄水中の残留塩素(0.5mg/L程度))
カビ臭に対する処理実験結果の一例を
図1に示す。
UV照射量が高い程、カビ臭除去率が向上する傾向が確認できた。
また、NaOCl注入については、注入なしの場合、UV照射量を上昇させても除去率はほとんど向上しないのに対し、NaOCl注入を行うと同じUV照射量における除去率が向上することが確認できた。
一方、NaOCl注入率1mg/L以上になると除去率向上への効果はあまりみられないことが明らかとなった。
以上の結果から、本原水に対する最適条件(除去率70%)は、
・照射量:500mJ/cm
2
・NaOCl注入率:1mg/L
であると判断した。
ただし、原水水質及び対象物質によって最適条件は異なると考えられるため、都度実験によって確認を行う必要がある。
また、この時の処理水の残留塩素濃度は0.5mg/L程度であった。これは一般的な浄水処理での後塩素処理後の残留塩素濃度であることから、これを管理することによって塩素注入管理を行うことが、本システムにおける効率的な運用方法であることが確かめられた。
【0016】
○紫外線照射量の調整
この促進酸化浄水処理設備においては、
図4に示すように、急速濾過池P1の後段に配設した紫外線照射装置2でUVランプ(本実施例においては、低圧UVランプ。)を使用しているが、この紫外線照射装置2において、必要照射量を確保するために多数のUVランプを設置することとなる。
そこで、その特徴を活かし、原水中のターゲット物質の種類及び濃度と必要照射量の相関をあらかじめ実験によって確認し、制御手段に記憶しておき、原水中のターゲット物質の種類及び濃度に応じて、制御手段により、紫外線ランプの点灯を制御する、具体的には、必要照射量に対応するUVランプの点灯本数を制御するシステムとする。
制御盤にターゲット物質の種類及び濃度を入力することで、自動的にUVランプの点灯本数を制御し、最適運転制御ができるシステムとする。
ターゲット物質の種類及び濃度の連続測定機器がある場合は、その信号を入力することで完全自動制御運転をすることが可能となる。
○NaOCl注入率(注入量)の調整
原水中のターゲット物質の種類及び濃度によって、紫外線の必要照射量とその時に必要なNaOCl注入率(注入量)には相関関係がある。
そこで、その相関関係をあらかじめ実験によって確認し、制御手段に記憶しておき、原水中のターゲット物質の種類及び濃度に応じて、制御手段により、NaOCl注入率(注入量)を制御するシステムとする。
【実施例2】
【0017】
[低圧UVランプ+H
2O
2]
○被処理水
・対象:浄水処理
・除去対象物質:カビ臭物質(異臭味物質)、農薬、1、4-ジオキサン、有機フッ素化合物
○UV促進酸化処理条件
・照射量:100~500mJ/cm
2
・H
2O
2注入率:0.2~2mg/L
カビ臭に対する処理実験結果の一例を
図2に示す。
H
2O
2注入率が高くなるに従って、UV照射量に対するカビ臭除去率が向上する傾向が確認できた。
一方、H
2O
2注入率を1.5mg/L以上にしても、カビ臭除去率はほとんど向上しなかった。
以上の結果から、本原水に対する最適条件(除去率70%)は、
・照射量:350mJ/cm
2
・H
2O
2注入率:1.5mg/L
であると判断した。
ただし、原水水質及び対象物質によって最適条件は異なると考えられるため、都度実験
によって確認を行う必要がある。
【0018】
○紫外線照射量の調整
この促進酸化浄水処理設備においては、
図5に示すように、急速濾過池P1の後段に配設した紫外線照射装置2でUVランプ(本実施例においては、低圧UVランプ。)を使用しているが、この紫外線照射装置2において、必要照射量を確保するために多数のUVランプを設置することとなる。
そこで、その特徴を活かし、原水中のターゲット物質の種類及び濃度と必要照射量の相関をあらかじめ実験によって確認し、制御手段に記憶しておき、原水中のターゲット物質の種類及び濃度に応じて、制御手段により、紫外線ランプの点灯を制御する、具体的には、必要照射量に対応するUVランプの点灯本数を制御するシステムとする。
制御盤にターゲット物質の種類及び濃度を入力することで、自動的にUVランプの点灯本数を制御し、最適運転制御ができるシステムとする。
ターゲット物質の種類及び濃度の連続測定機器がある場合は、その信号を入力することで完全自動制御運転をすることが可能となる。
○H
2O
2注入率(注入量)の調整
原水中のターゲット物質の種類及び濃度によって、紫外線の必要照射量とその時に必要なH
2O
2注入率(注入量)には相関関係がある。
そこで、その相関関係をあらかじめ実験によって確認し、制御手段に記憶しておき、原水中のターゲット物質の種類及び濃度に応じて、制御手段により、H
2O
2注入率(注入量)を制御するシステムとする。
【実施例3】
【0019】
[中圧UVランプ+次亜塩素酸ナトリウム(NaOCl)]
○被処理水
・対象:浄水処理
・除去対象物質:カビ臭物質(異臭味物質)、農薬、1、4-ジオキサン、有機フッ素化合物
○UV促進酸化処理条件
・照射量:100~500mJ/cm2
・NaOCl注入率:0.2~4mg/L(+浄水中の残留塩素(0.5mg/L程度))
【0020】
○紫外線照射量の調整
この促進酸化浄水処理設備においては、
図4に示すように、急速濾過池P1の後段に配設した紫外線照射装置2でUVランプ(本実施例においては、中圧UVランプ。)を使用しているが、この紫外線照射装置2において、必要照射量を確保するために多数のUVランプを設置することとなる。
そこで、その特徴を活かし、原水中のターゲット物質の種類及び濃度と必要照射量の相関をあらかじめ実験によって確認し、制御手段に記憶しておき、原水中のターゲット物質の種類及び濃度に応じて、制御手段により、紫外線ランプの点灯を制御する、具体的には、必要照射量に対応するUVランプの点灯本数及び/又はランプ光強度を制御するシステムとする。
制御盤にターゲット物質の種類及び濃度を入力することで、自動的にUVランプの点灯本数及び/又はランプ光強度を制御し、最適運転制御ができるシステムとする。
ターゲット物質の種類及び濃度の連続測定機器がある場合は、その信号を入力することで完全自動制御運転をすることが可能となる。
○NaOCl注入率(注入量)の調整
原水中のターゲット物質の種類及び濃度によって、紫外線の必要照射量とその時に必要なNaOCl注入率(注入量)には相関関係がある。
そこで、その相関関係をあらかじめ実験によって確認し、制御手段に記憶しておき、原水中のターゲット物質の種類及び濃度に応じて、制御手段により、NaOCl注入率(注入量)を制御するシステムとする。
【実施例4】
【0021】
[中圧UVランプ+H2O2]
○被処理水
・対象:浄水処理
・除去対象物質:カビ臭物質(異臭味物質)、農薬、1、4-ジオキサン、有機フッ素化合物
○UV促進酸化処理条件
・UV照射量:20~300mJ/cm2
・H2O2注入率:0.2~2.0mg/L
【0022】
○紫外線照射量の調整
この促進酸化浄水処理設備においては、
図5に示すように、急速濾過池P1の後段に配設した紫外線照射装置2でUVランプ(本実施例においては、中圧UVランプ。)を使用しているが、この紫外線照射装置2において、必要照射量を確保するために多数のUVランプを設置することとなる。
そこで、その特徴を活かし、原水中のターゲット物質の種類及び濃度と必要照射量の相関をあらかじめ実験によって確認し、制御手段に記憶しておき、原水中のターゲット物質の種類及び濃度に応じて、制御手段により、紫外線ランプの点灯を制御する、具体的には、必要照射量に対応するUVランプの点灯本数及び/又はランプ光強度を制御するシステムとする。
制御盤にターゲット物質の種類及び濃度を入力することで、自動的にUVランプの点灯本数及び/又はランプ光強度を制御し、最適運転制御ができるシステムとする。
ターゲット物質の種類及び濃度の連続測定機器がある場合は、その信号を入力することで完全自動制御運転をすることが可能となる。
○H
2O
2注入率(注入量)の調整
原水中のターゲット物質の種類及び濃度によって、紫外線の必要照射量とその時に必要なH
2O
2注入率(注入量)には相関関係がある。
そこで、その相関関係をあらかじめ実験によって確認し、制御手段に記憶しておき、原水中のターゲット物質の種類及び濃度に応じて、制御手段により、H
2O
2注入率(注入量)を制御するシステムとする。
【0023】
[実施例1~4に共通の構成]
この促進酸化浄水処理設備においては、紫外線処理は被処理水の紫外線透過率が高い程処理効果が高いことから、
図4及び
図5に示すように、濾過後にUV促進酸化処理を行うことで効率的な処理を行うことが可能となる。また、クリプトスポリジウムをはじめとした耐塩素性病原生物への対策としてのUV消毒も兼ねたシステムとすることができる。
【0024】
また、UV処理後の残留塩素濃度管理として、促進酸化処理後の被処理水の残留塩素濃度が、目的の残留塩素濃度(例えば、0.2~1.0mg/L)になるように、塩素注入率にフィードバックさせるシステムとする。また、浄水処理で一般的に行われている後塩素処理を兼ねたシステムとすることで、従来技術で言われていた塩素注入管理の煩雑さを解消することができる。
また、UV促進酸化処理後は、通常の処理と比較して塩素(次亜塩素酸ナトリウム(NaOCl))注入4時間後までの残留塩素濃度の低下が比較的大きいことが実験で確かめられた。
よって、浄水池P2に残留塩素濃度計5を設置し、その値に滞留時間経過後の残留塩素
濃度低下分を加味して塩素注入管理を行うようにする。
【0025】
ところで、促進酸化処理を行った場合、通常の処理水と比較して有機物質が低分子化し、その結果塩素消費の量や消費の仕方に特徴があることが明らかとなった。
実施例2における実験で、処理水の塩素要求量は3.3mg/Lであった。
そこで、(次亜塩素酸ナトリウム(NaOCl))注入率を塩素要求量+0.5mg/L(3.8mg/L)、+1.0mg/L(4.3mg/L)、+2.0mg/L(5.3mg/L)とし、残留塩素濃度の経時変化を比較したものを
図3に示す。
その結果、注入率3.8mg/Lの場合1時間後の時点では残留塩素が残っているものの、4時間後の時点では残留塩素が消失してしまうことが明らかとなった。
また、実施例1における実験処理水においても同様の傾向が観察された。
このことは、公定法である塩素要求量の測定方法(次亜塩素酸ナトリウム(NaOCl)注入1時間後の塩素消費を確認する)では、促進酸化処理水の正確な塩素要求量を把握できないことを示している。
以上の結果から、実施例1~4を含む促進酸化処理システムにおけるNaOClの設定注入率を、被処理水の塩素要求量+1.0mg/L以上とする。
原水水質によって最適注入率は異なると考えられるので、2時間後以降(例えば、4時間後)の残留塩素濃度を確認しながら随時調整を行うようにする(特に被処理水中の有機物質濃度によっては注入率を高く設定する必要がある場合がある。)。
この技術の対象としては、実施例1~4のほか、H
2O
2を使用する処理全般(O
3/H
2O
2、H
2O
2単独処理等)の後工程に適用可能である。
【0026】
[実施例2及び4に共通の構成]
この促進酸化浄水処理設備においては、
図5に示すように、残留過酸化水素の除去するための機構を設けるようにしている。
すなわち、H
2O
2を使用する処理を行った後の被処理水は、ほとんどの場合でH
2O
2が残存する状態である。
従来は、これを除去する技術として粒状活性炭濾過を行って、残留するH
2O
2を水に還元する方法が採用されている。この場合、粒状活性炭処理工程を別途設ける必要があり、その分のコストの増大につながる問題があった。また、粒状活性炭処理水中に活性炭微粒子や粒状活性炭処理槽で繁殖した微生物等の混入の問題も近年指摘されている。
一方、浄水処理では一定程度の残留塩素が存在する状態で配水することが水道法で定められている。
そこで、残留過酸化水素除去用薬剤添加装置6を設け、次亜塩素酸ナトリウム(NaOCl)注入工程を付加することにより、残留H
2O
2を除去するようにしている。
NaOClとH
2O
2の反応は以下の式で表すことができる。
NaOCl+H
2O
2→NaCl+H
2O+O
2
この反応を利用して、処理水中に残留するH
2O
2に対して一定量のNaOClを添加することにより、対象水中の残留H
2O
2を除去し、かつ、一定の残留塩素を確保させることができる。
この方式を採用することで、従来技術のような大規模な処理工程を設けることなく、残留H
2O
2を除去することが可能となる。
また、浄水処理で従来から行われている後塩素処理を兼ねたシステムとすることで、全体の処理システムを低コスト、かつ、省スペースにすることができる。
この技術の対象としては、実施例2及び4のほか、H
2O
2を使用する処理全般(O
3/H
2O
2、H
2O
2単独処理等)の後工程に適用可能である。
【0027】
以上、本発明の促進酸化処理設備について、浄水処理設備の複数の実施例に基づいて説明したが、本発明は上記実施例に記載した構成に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜その構成を変更することができるものである。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明の促進酸化処理設備は、促進酸化プロセスを採用するに当たり、処理コストの上昇を抑制しながら、異臭味物質に代表される溶解性有機物の分解処理を効率よく、かつ、確実に行うことができるという特性を有していることから、新設、既存の浄水処理設備のいずれにも広く適用することができるほか、例えば、廃水を処理する廃水処理設備にも適用することができる。
【符号の説明】
【0029】
1 薬剤添加装置
2 紫外線照射装置
3 ターゲット物質濃度計(測定手段)
4 制御部(制御手段)
5 残留塩素濃度計
6 残留過酸化水素除去用薬剤添加装置
P1 急速濾過池(濾過池)
P2 浄水池