(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-18
(45)【発行日】2024-11-26
(54)【発明の名称】コネクタ
(51)【国際特許分類】
H01R 13/44 20060101AFI20241119BHJP
H01R 13/453 20060101ALI20241119BHJP
【FI】
H01R13/44 K
H01R13/453
(21)【出願番号】P 2021031856
(22)【出願日】2021-03-01
【審査請求日】2024-01-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】小園 誠二
(72)【発明者】
【氏名】津島 義高
(72)【発明者】
【氏名】岡本 征也
【審査官】▲高▼橋 杏子
(56)【参考文献】
【文献】特表2019-500654(JP,A)
【文献】特開平11-008005(JP,A)
【文献】特開2001-351747(JP,A)
【文献】特開2004-335289(JP,A)
【文献】特開2004-071400(JP,A)
【文献】特開平08-138785(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 13/40-13/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
相互に嵌合して電気的に接続される第一コネクタおよび第二コネクタからなるコネクタにおいて、
前記第一コネクタは、前記第一コネクタおよび前記第二コネクタの嵌合方向において前記第二コネクタ側に延びる突出部を有し、
前記第二コネクタは、
前記嵌合方向に延びる端子と、
前記端子の前面を覆うカバー部と、前記カバー部の縁部に設けられた回動軸と、前記回動軸を挟んで前記カバー部と反対側に延び、前記突出部が当接する当接部と、を有するキャップと、
前記回動軸を支持するハウジングと、
レールピンと、を有し、
前記カバー部は、前記回動軸が設けられた第一カバー部と、前記第一カバー部に隣接し、レールピンが設けられた第二カバー部と、前記第一カバー部と前記第二カバー部とを互いに回動可能に接続する接続部と、を有し、
前記ハウジングは、前記嵌合方向と交差する方向に延在するレールを有し、
前記レールピンは、前記突出部による前記当接部の押圧および/又は押圧解除に伴い前記レールに沿って移動
し、
前記当接部が前記嵌合方向において後方に押圧されることで、前記回動軸を中心に、前記第一カバー部が前記端子から離間する方向に回動する、
コネクタ。
【請求項2】
前記第二コネクタは、前記キャップを閉方向に付勢する付勢部材をさらに有する、
請求項1に記載のコネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車やハイブリッド自動車に設けられた受電側コネクタに対して、給電側コネクタを嵌合させて、充電が行われる。この種のコネクタには、防塵、端子保護、周囲への関電防止等の目的で開閉キャップが設けられたものがあり、コネクタの非接続時にはキャップを閉じて端子の露出を防いでいる(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
特許文献1に記載のコネクタにおいては、受電側コネクタのハウジングに、ピンを基点に回動可能なキャップが設けられ、コネクタ嵌合時に、給電側コネクタのハウジング(嵌合フード部)先端部によってキャップの端を押す。キャップの端が押されることでピンを基点にキャップが回動して開き、ハウジング内の端子を開放露出させ、両端子の結合が可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この特許文献1に記載のコネクタにおいては、ピンを基点として回動するキャップの端の軌跡と、給電側コネクタの嵌合フード部内に位置する端子収容壁とが干渉しない程度に、給電側コネクタのストローク(サイズ)が設定されている。言い換えれば、キャップの大きさ(キャップにおけるピンの取付位置と端との距離)分、コネクタのサイズが大きくなる。
【0006】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、コネクタのストロークに要するスペースを抑制可能な開閉キャップ付きコネクタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前述した目的を達成するために、本発明に係るコネクタは、下記(1)~(2)を特徴としている。
(1)相互に嵌合して電気的に接続される第一コネクタおよび第二コネクタからなるコネクタにおいて、
前記第一コネクタは、前記第一コネクタおよび前記第二コネクタの嵌合方向において前記第二コネクタ側に延びる突出部を有し、
前記第二コネクタは、
前記嵌合方向に延びる端子と、
前記端子の前面を覆うカバー部と、前記カバー部の縁部に設けられた回動軸と、前記回動軸を挟んで前記カバー部と反対側に延び、前記突出部が当接する当接部と、を有するキャップと、
前記回動軸を支持するハウジングと、
レールピンと、を有し、
前記カバー部は、前記回動軸が設けられた第一カバー部と、前記第一カバー部に隣接し、レールピンが設けられた第二カバー部と、前記第一カバー部と前記第二カバー部とを互いに回動可能に接続する接続部と、を有し、
前記ハウジングは、前記嵌合方向と交差する方向に延在するレールを有し、
前記レールピンは、前記突出部による前記当接部の押圧および/又は押圧解除に伴い前記レールに沿って移動し、
前記当接部が前記嵌合方向において後方に押圧されることで、前記回動軸を中心に、前記第一カバー部が前記端子から離間する方向に回動する、
コネクタ。
(2)前記第二コネクタは、前記キャップを閉方向に付勢する付勢部材をさらに有する、
上記(1)に記載のコネクタ。
【0008】
上記(1)の構成のコネクタによれば、キャップのカバー部が接続部で屈曲可能とされ、当接部が押圧されることにより、回動軸を中心に第一カバー部が端子から離間する方向に回動する。第一カバー部の回動に追従して、第二カバー部のキャップピンが取り付けられた縁部が回動する。このとき、第二カバー部の反対側の側辺(レールピンが取り付けられた側辺)は、レールピンがレールに沿って移動するのに伴って、軸ピンに近接する方向に移動する。このように、キャップが接続部で折り畳まれて開くため、キャップの接続部と第一コネクタの例えば端子収容壁とが干渉しない程度に、第一コネクタのストローク(サイズ)を設定すればよい。
キャップが折り畳み構造でない場合には、第一コネクタの端子収容壁とキャップの端とが干渉しない程度に、第一コネクタの突出部のサイズを設定する必要がある。これに対し、キャップが折り畳み構造である上記(1)の構成の場合には、第一コネクタの突出部のサイズを、キャップの接続部と端子収容壁とが干渉しない程度に設定すればよい。一例として、キャップの接続部を、キャップにおけるピンの取付位置と先端との中間に設けた場合には、ピンの取付位置と先端との距離の略半分に相当するサイズ分、突出部のサイズを低減できる。
【0009】
上記(2)の構成のコネクタによれば、キャップが閉方向に付勢されるので、突出部による押圧がされない場合にはキャップの閉状態が維持される。また、突出部によって当接部が押圧されてキャップが開いた後、突出部による押圧が解除されると、キャップが閉じる。すなわち、必要なときにのみキャップを開くことができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、コネクタのストロークに要するスペースを抑制可能な開閉キャップ付きコネクタを提供できる。
【0011】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という。)を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係るコネクタの斜視図である。
【
図3】
図3は、嵌合前の第一および第二コネクタを示す下面図である。
【
図4】
図4は、嵌合途中の第一および第二コネクタを示す下面図である。
【
図5】
図5は、嵌合後の第一および第二コネクタを示す下面図である。
【
図6】
図6は、嵌合途中の第一および第二コネクタを示す断面図である。
【
図7】
図7は、キャップを閉方向に付勢する捩りコイルばね近傍を示す斜視図である。
【
図8】
図8は、参考例に係るキャップと一実施形態のキャップとを対比する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明に関する具体的な実施形態について、各図を参照しながら以下に説明する。本実施形態のコネクタは、一例として、電気自動車等の給電側コネクタと受電側コネクタとが相互に嵌合して電気的に接続されるコネクタに適用される。
【0014】
図1は、本発明の一実施形態に係るコネクタ1の斜視図である。
図1は、第一コネクタ10と第二コネクタ20とが嵌合される途中の様子を示し、第二コネクタ20の上ハウジング31を透過した状態を示す。
図2は、
図1に示す第二コネクタ20の分解斜視図である。以下、説明の便宜上、
図1に示すように、「前」、「後」、「左」、「右」、「上」、および「下」を定義する。「前後方向」、「左右方向」および「上下方向」は、互いに直交する。
【0015】
図1に示すコネクタ1は、相互に嵌合して電気的に接続される第一コネクタ10および第二コネクタ20からなる。第一コネクタ10には複数の端子Tが装着され、第二コネクタ20には複数の端子Tに接続する複数の端子T1、T2が装着される。端子T1、T2は、第二コネクタ20の左右両側にそれぞれ設けられる。端子T1は端子T2よりも大きな径を有し、端子T1には例えば1本の電力ケーブルが接続され、端子T2には例えば4本の通信線が接続される。第一コネクタ10の複数の端子Tは、各端子T1、T2に対応して設けられる。なお、
図1において端子T、T1に接続される電線W、W1を示し、端子T2、Tに接続される他の電線は図示を省略する。
【0016】
第一コネクタ10は、直方体形状の前後に延びる各辺が円弧状とされたハウジング11を有する。ハウジング11の後側に、第二コネクタ20の端子T1、T2が挿入される開口を有し、前側に、電線Wに接続された端子Tを嵌挿、装着させる開口を有する。第一コネクタ10は、ハウジング11の前側および左右側を覆う、上下方向に視てU字形状の壁部12を有する。壁部12は、前面部12aと二つの突出部12bとを有する。前面部12aは、左右方向の中央を下方に突出させた略矩形板状を有し、ハウジング11の前側に取り付けられ、各端子Tを挿通可能な開口を有する。二つの突出部12bは、矩形板状を有し、前面部12aの左右端から、第一コネクタ10および第二コネクタ20の嵌合方向において第二コネクタ20側に、すなわち、後方にそれぞれ突出する。第一コネクタ10は、ハウジング11の上面に凹部13を有する。凹部13は、ハウジング11の上面に平行な底部13aと、底部13aとハウジング11の上面とを接続する、前後方向に延びる左右の側壁部13bと、側壁部13bから前後方向に傾斜した方向にそれぞれ延びる斜辺部13cとを有する。左右の斜辺部13cは、後方に向かうにつれて互いに離間し、凹部13は、上面視略Y字状の輪郭を有する。
【0017】
第二コネクタ20は、
図2に示すように、ハウジング30と、ハウジング30に装着された複数の端子T1、T2と、端子T1、T2の前面を覆うように開閉可能な2つのキャップ40と、を有する。ハウジング30は、上ハウジング31、下ハウジング32および端子保持部33を含む。
【0018】
上ハウジング31は、略正方形板状を有し、後端から前側に向けて直線状に延びる凸部31aを下面に有する。上ハウジング31は、一例として、上面が車体に取り付けられる。凸部31aは、一辺の四分の三程度の長さを有し、前方に向けて次第に細くされた前端部31bを有する。凸部31aは、第一コネクタ10と第二コネクタ20との嵌合時に、前端部31bを第一コネクタ10の凹部13の側壁に摺動させながら第二コネクタ20を正しい嵌合位置にガイドする。
【0019】
下ハウジング32は、上ハウジング31の下方において上ハウジング31の後方側に配置される。下ハウジング32は、上ハウジング31と平行に延在する略矩形板状の底面部32aと、底面部32aの後端から上方向に垂直に延在する後面部32bと、を有し、左右方向に視てL字形状を呈する。
底面部32aは、左右方向に延在する矩形状の開口部32cと、開口部32cの左右側壁から開口部32c中央に向けて(第一コネクタ10および第二コネクタ20の嵌合方向と交差する方向に)それぞれ延在するレール32dと、を有する。各レール32dは、上下方向に視てU字状を有する。底面部32aには、前側の左右角部に、軸ピン42が挿通される孔32eがそれぞれ設けられる。
後面部32bは、中央に、略楕円形状にくりぬかれた開口32fを有する。
【0020】
端子保持部33は、
図2に示すように、上ハウジング31および下ハウジング32の間に設けられ、複数の端子T1、T2を保持する。端子保持部33は、前後方向に視て略楕円形を有する板状部材であり、複数の端子T1、T2がそれぞれ挿通される開口を有する。端子保持部33は、上部中央に、上ハウジング31の凸部31aの形状に対応する凹部33aを有する。
【0021】
キャップ40は、ハウジング30の左右両側にそれぞれ設けられ、それぞれ、折り畳み構造を有し、端子T1、T2の前面を左右側から覆うように開閉可能とされる。キャップ40は、端子T1、T2の前面を覆う矩形板状のカバー部41と、カバー部41の縁部に設けられた上下方向に延びる貫通孔に挿通された軸ピン42(回動軸)と、を有する。キャップ40は、軸ピン42を挟んでカバー部41と反対側に延び、第一コネクタ10と第二コネクタ20との嵌合時に第一コネクタ10の突出部12bが当接する、矩形板状の当接部43を有する。
【0022】
カバー部41は、軸ピン42が設けられた第一カバー部41aと、第一カバー部41aに隣接する第二カバー部41bと、第一カバー部41aと第二カバー部41bとを互いに回動可能に接続するキャップピン41c(接続部)と、を有する。第一カバー部41aは第二カバー部41bに隣接する側辺の中央に凹部を有し、第二カバー部41bの側辺にこの凹部に対応する凸部を有する。第一カバー部41aおよび第二カバー部41bには、この凹部と凸部とを貫通する貫通孔が設けられ、キャップピン41cがこの貫通孔に挿通されて、第一カバー部41aと第二カバー部41bとが互いに回動可能に接続される。第二カバー部41bは、キャップピン41cが取り付けられる側辺と反対側の側辺に、上下方向に延びる貫通孔が設けられ、この貫通孔にレールピン44が挿通される。レールピン44は、下端が第二カバー部41bの下方に突出して、レール32dの内部に挿通される。レールピン44の上下端には拡径部が設けられて、第二カバー部41bおよびレール32dからの抜けが防止される。レールピン44は、突出部12bによる当接部43の押圧および/又は押圧解除に伴いレール32dに沿って移動する。
【0023】
軸ピン42は、下端が下ハウジング32に設けた孔に挿通され、上端が上ハウジング31の下面に当接して、上ハウジング31および下ハウジング32に支持される。軸ピン42の下端には、捩りコイルばね41d(付勢部材)が嵌装される。捩りコイルばね41dは、一端がキャップ40の当接部43に固定され、他端が下ハウジング32の底面部32aに挿入されて固定され、キャップ40を閉方向に(当接部43及びカバー部41が左右方向に沿って延在するように)付勢する(
図7参照)。捩りコイルばね41dによって、キャップ40が閉方向に付勢されるので、突出部12bによって当接部43が押圧されない場合にはキャップ40の閉状態が維持される。
【0024】
キャップ40は、当接部43およびカバー部41が左右方向に沿って直線状に配置されることで、端子T1、T2の前面を覆う閉状態となる。当接部43が後方に押圧されることで、軸ピン42を中心に、第一カバー部41aが端子T1から離間する方向に回動する。第一カバー部41aの回動に追従して、第二カバー部41bのキャップピン41cが取り付けられた側辺(縁部、第一カバー部41aと接続された側辺)が回動する。このとき、第二カバー部41bの反対側の側辺(レールピン44が取り付けられた側辺)は、レールピン44がレール32dに沿って移動するのに伴って、軸ピン42に近接する方向に移動する。このように、キャップ40は、キャップピン41cを中心にして第一カバー部41aと第二カバー部41bとが近接するように折り畳まれながら、端子T1、T2の前面を露出した開状態となる。
【0025】
第二コネクタ20の組み付けについて説明する。
端子T1、T2を保持した端子保持部33は、凹部33aに上ハウジング31の凸部31aを嵌め合わせて、上ハウジング31に固定される。底面部32aの孔32eにキャップ40の軸ピン42を挿通し、下ハウジング32の開口32f内に端子T1、T2が位置するようにして、上ハウジング31の下面に後面部32bの上部を取り付けることで、
図1に示すように第二コネクタ20が構成される。
【0026】
図3から
図6を参照して、第一コネクタ10と第二コネクタ20との嵌合について説明する。
図3から
図5は、嵌合前、嵌合途中、嵌合後の第一コネクタ10および第二コネクタ20の各状態を示す下面図である。
図6は、嵌合途中の第一コネクタ10および第二コネクタ20を示す断面図であり、上ハウジング31の直下において前後方向および左右方向に延在する面で切断した状態を示す。尚、
図3以降の図面において、端子T1、Tに接続される電線W1、Wは図示を省略する。
【0027】
図3に示すように、第一コネクタ10と第二コネクタ20とが嵌合されていない状態では、第二コネクタ20の端子T1、T2の前面に、キャップ40が左右方向に沿って配置される。カバー部41は、端子T1、T2の前面を閉じた状態で、第一カバー部41aおよび第二カバー部41bが端子T1、T2を覆ってその露出を防ぐサイズとされる。
図3に示す、第一コネクタ10の突出部12bを第二コネクタ20に向けた状態から、第一コネクタ10および第二コネクタ20の嵌合を開始する。
【0028】
第一コネクタ10および第二コネクタ20を相対的に移動させると、第二コネクタ20の凸部31aが、第一コネクタ10の凹部13内に進入し、凹部13の斜辺部13cおよび側壁部13bにガイドされて、第一コネクタ10および第二コネクタ20の嵌合が進行する。このとき、凸部31aの前端部31bが底部13aに当接することで、嵌合時の上下方向の傾きが矯正される。また、嵌合方向が左右方向に傾いていた場合には、凸部31aの前端部31bが凹部13の斜辺部13cに当接しながら左右の側壁部13b間にガイドされ、正しい嵌合方向に矯正される(
図6参照)。
【0029】
図4に示すように、第一コネクタ10および第二コネクタ20が互いに近接し、カバー部41の当接部43が第一コネクタ10の突出部12bによって後方に押圧されると、軸ピン42を中心に、第一カバー部41aが端子T1から離間する方向に回動する。第一カバー部41aの回動に伴い、キャップピン41cおよび第二カバー部41bを介して、レールピン44がレール32dに沿って軸ピン42に近接する方向にスライドする。このように、キャップ40は、第一カバー部41aと第二カバー部41bとがキャップピン41cを介して折り畳まれて、第二カバー部41bによって覆われていた端子T2が露出した状態となる。
【0030】
図4に示す状態において、当接部43が突出部12bによってさらに後方に押圧されると、軸ピン42を中心に、第一カバー部41aが端子T1から離間する方向に回動する。第一カバー部41aの回動に伴い、キャップピン41cおよび第二カバー部41bを介して、レールピン44がレール32dに沿って軸ピン42に近接する方向にスライドする。このように、軸ピン42を中心に第一カバー部41aがさらに回動することで、第二カバー部41bがキャップピン41cを介して第一カバー部41aに近接するように折り畳まれて、第一カバー部41aによって覆われていた端子T1も露出する。すなわち、第二コネクタ20の端子T1、T2の前面が開放された状態(
図5参照)となり、第二コネクタ20の端子T1、T2が、第一コネクタ10のハウジング11内に挿入されて、第一コネクタ10の端子Tと接続される。
【0031】
図5に示す端子T1、T2の前面が露出した状態(開状態)から、第一コネクタ10と第二コネクタ20とを互いに離間させると、複数の端子T、T1、T2間の接続が解除され、突出部12bによる当接部43の押圧が解除される。突出部12bによる押圧が解除されると、捩りコイルばね41dの付勢力によって、軸ピン42を中心に第一カバー部41aが端子T1に近接する方向に回動する。第一カバー部41aの回動に伴い、キャップピン41cおよび第二カバー部41bを介して、レールピン44がレール32dに沿って軸ピン42から離間する方向にスライドする。このように、軸ピン42を中心に第一カバー部41aが回動することで、第二カバー部41bがキャップピン41cを介して第一カバー部41aから離間するように伸張されて、カバー部41が端子T1、T2の前面を覆うようにキャップ40が閉じる。捩りコイルばね41dの付勢力により、必要なときにのみキャップ40を開くことができる。
【0032】
以上説明したように、本実施形態のコネクタ1によれば、第一コネクタ10と第二コネクタ20との嵌合に伴い、突出部12bが当接部43を押圧する。当接部43が押圧されることにより、キャップ40がキャップピン41cを介して第二カバー部41bが第一カバー部41aに近接するように折り畳まれて開く。このため、キャップ40の第一カバー部41aの端部(キャップピン41c)と第一コネクタ10のハウジング11後端部とが干渉しない程度に、第一コネクタ10のストローク(サイズ)を設定すればよい。
【0033】
図8は、参考例に係るコネクタと実施形態のコネクタ1とを対比する説明図である。
図8(a)において、第二コネクタ20のキャップ40に代えて、折り畳み構造でないキャップ140を参考例として破線で示す。参考例のキャップ140の形状およびサイズは、閉状態におけるキャップ40の形状およびサイズと同じである。
図8(b)において、参考例のキャップ140を用いた場合における、第一コネクタ10の突出部112bを破線で示す。キャップ140の場合には、第一コネクタ10のハウジングの後端部とキャップ140との干渉を避けるために、折り畳み構造のキャップ40の場合と比べて、隙間D1が余分に必要である。このため、
図8(b)に示すように、隙間D1に相当するサイズD2分、突出部12bの長さを長くする必要がある。これに対し、本実施形態の折り畳み構造のキャップ40を用いることにより、参考例の場合と比べて、隙間D1に相当するサイズD2分、突出部12bの長さを低減できる。
【0034】
尚、本発明は、前述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、前述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数値、形態、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。上記実施形態では、キャップ40がキャップピン41cの位置で二つ折りにされる例を示したが、キャップは折り畳み構造であればよく、二つ折りに限定されず、二箇所以上で屈曲可能な構造(蛇腹構造)であってもよい。また、上記実施形態では、ハウジング30の左右両側にそれぞれキャップ40が設けられたが、一の折り畳み構造のキャップですべての端子を覆うようにしてもよい。
【0035】
ここで、上述した本発明の実施形態に係るコネクタの特徴をそれぞれ以下[1]~[2]に簡潔に纏めて列記する。
[1]相互に嵌合して電気的に接続される第一コネクタ(10)および第二コネクタ(20)からなるコネクタ(1)において、
前記第一コネクタ(10)は、前記第一コネクタおよび前記第二コネクタの嵌合方向において前記第二コネクタ側に延びる突出部(12b)を有し、
前記第二コネクタ(20)は、
前記嵌合方向に延びる端子(T1、T2)と、
前記端子の前面を覆うカバー部(41)と、前記カバー部の縁部に設けられた回動軸(軸ピン42)と、前記回動軸を挟んで前記カバー部と反対側に延び、前記突出部が当接する当接部(43)と、を有するキャップ(40)と、
前記回動軸(軸ピン42)を支持するハウジング(上ハウジング31、下ハウジング32)と、
レールピン(44)と、を有し、
前記カバー部(41)は、前記回動軸(軸ピン42)が設けられた第一カバー部(41a)と、前記第一カバー部に隣接し、レールピンが設けられた第二カバー部(41b)と、前記第一カバー部と前記第二カバー部とを互いに回動可能に接続する接続部(キャップピン41c)と、を有し、
前記ハウジング(下ハウジング32)は、前記嵌合方向と交差する方向に延在するレール(32d)を有し、
前記レールピン(44)は、前記突出部(12b)による前記当接部(43)の押圧および/又は押圧解除に伴い前記レールに沿って移動する、
コネクタ(1)。
[2]前記第二コネクタ(20)は、前記キャップを閉方向に付勢する付勢部材(捩りコイルばね41d)をさらに有する、
上記[1]に記載のコネクタ。
【符号の説明】
【0036】
1 コネクタ
10 第一コネクタ
11 ハウジング
12 壁部
12a 前面部
12b、112b 突出部
13 凹部
13a 底部
13b 側壁部
13c 斜辺部
20 第二コネクタ
30 ハウジング
31 上ハウジング
31a 凸部
31b 前端部
32 下ハウジング
32a 底面部
32b 後面部
32c 開口部
32d レール
32e 孔
32f 開口
33 端子保持部
33a 凹部
40、140 キャップ
41 カバー部
41a 第一カバー部
41b 第二カバー部
41c キャップピン
42 軸ピン
43 当接部
44 レールピン
T、T1、T2 端子
W、W1 電線