(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-18
(45)【発行日】2024-11-26
(54)【発明の名称】コネクタ
(51)【国際特許分類】
H01R 13/631 20060101AFI20241119BHJP
【FI】
H01R13/631
(21)【出願番号】P 2021031857
(22)【出願日】2021-03-01
【審査請求日】2024-01-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】小園 誠二
(72)【発明者】
【氏名】津島 義高
(72)【発明者】
【氏名】岡本 征也
【審査官】▲高▼橋 杏子
(56)【参考文献】
【文献】中国特許第107302155(CN,B)
【文献】特開平11-008005(JP,A)
【文献】特開2001-351747(JP,A)
【文献】特開2004-335289(JP,A)
【文献】特開2004-071400(JP,A)
【文献】特開平08-138785(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 13/40-13/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
相互に嵌合して電気的に接続される第一コネクタおよび第二コネクタからなるコネクタにおいて、
前記第一コネクタは、
第一ハウジングと、
前記第一ハウジングの端部から突出して、前記第一コネクタ及び前記第二コネクタの嵌合方向において前記第二コネクタ側に延びる突出部と、を有し、
前記第二コネクタは、
前記嵌合方向に延びる端子と、
前記端子の前記第一コネクタ側の面を覆うカバー部と、前記カバー部の縁部に設けられた回動軸と、前記回動軸を挟んで前記カバー部と反対側に延び、前記突出部が当接する当接部と、を有するキャップと、
前記突出部をガイドするガイド溝を有し、かつ、前記回動軸を支持する第二ハウジングと、を有し、
前記ガイド溝は、前記回動軸よりも前記第一コネクタ側の開口部から、前記第一コネクタと反対側に向けて、前記嵌合方向に沿って延在
し、
前記第二ハウジングは、少なくとも、前記回動軸に対応する位置から、前記嵌合方向において前記第一コネクタ側に延びる平板部を有し、
前記ガイド溝は、前記平板部に設けられ、前記第一コネクタ側から前記開口部に向かうにつれて幅が減少するテーパ部を有する、
コネクタ。
【請求項2】
前記端子は、第一端子と、前記第一端子よりも径が小さい第二端子と、を含み、
前記ガイド溝は、前記第二ハウジングにおける、前記第二端子に近接する領域に設けられる、
請求項1
に記載のコネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車やハイブリッド自動車に設けられた受電側コネクタに対して、給電側コネクタを嵌合させて、充電が行われる。この種のコネクタには、防塵、端子保護、周囲への関電防止等の目的で開閉キャップが設けられたものがあり、コネクタの非接続時にはキャップを閉じて端子の露出を防いでいる(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
特許文献1に記載のコネクタにおいては、受電側コネクタのハウジングに、ピンを基点に回動可能なキャップが設けられ、コネクタ嵌合時に、給電側コネクタのハウジング(嵌合フード部)先端部によってキャップの端を押す。キャップの端が押されることでピンを基点にキャップが回動して開き、ハウジング内の端子を開放露出させ、両端子の結合が可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に記載のコネクタにおいては、嵌合時に、給電側コネクタの嵌合フード部の先端部によってキャップの端を押せばキャップが回動して開くが、給電側コネクタ及び受電側コネクタの相対的な位置関係が正しい嵌合位置からずれていても嵌合可能である。このため、コネクタ嵌合時にあらゆる角度から組み付けられる可能性があり、正しくない角度から組み付けられた場合にはキャップの開閉動作に支障をきたし、両コネクタをスムーズに嵌合できないおそれがある。
【0006】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、嵌合過程で位置補正が可能なコネクタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前述した目的を達成するために、本発明に係るコネクタは、下記(1)~(2)を特徴としている。
(1)相互に嵌合して電気的に接続される第一コネクタおよび第二コネクタからなるコネクタにおいて、
前記第一コネクタは、
第一ハウジングと、
前記第一ハウジングの端部から突出して、前記第一コネクタ及び前記第二コネクタの嵌合方向において前記第二コネクタ側に延びる突出部と、を有し、
前記第二コネクタは、
前記嵌合方向に延びる端子と、
前記端子の前記第一コネクタ側の面を覆うカバー部と、前記カバー部の縁部に設けられた回動軸と、前記回動軸を挟んで前記カバー部と反対側に延び、前記突出部が当接する当接部と、を有するキャップと、
前記突出部をガイドするガイド溝を有し、かつ、前記回動軸を支持する第二ハウジングと、を有し、
前記ガイド溝は、前記回動軸よりも前記第一コネクタ側の開口部から、前記第一コネクタと反対側に向けて、前記嵌合方向に沿って延在し、
前記第二ハウジングは、少なくとも、前記回動軸に対応する位置から、前記嵌合方向において前記第一コネクタ側に延びる平板部を有し、
前記ガイド溝は、前記平板部に設けられ、前記第一コネクタ側から前記開口部に向かうにつれて幅が減少するテーパ部を有する、
コネクタ。
(2)前記端子は、第一端子と、前記第一端子よりも径が小さい第二端子と、を含み、
前記ガイド溝は、前記第二ハウジングにおける、前記第二端子に近接する領域に設けられる、
上記(1)に記載のコネクタ。
【0008】
上記(1)の構成のコネクタは、第一コネクタが、第一ハウジングの端部から突出して嵌合方向に延びる突出部を有し、第二コネクタが、回動軸を中心に回動して端子を覆うキャップと、突出部をガイドし開口部から嵌合方向に沿って延在するガイド溝とを有する。この構成によれば、コネクタの嵌合時に、突出部が、ガイド溝によってガイドされて、回動軸よりも手前の開口部に進入することにより、突出部が正しい嵌合方向に位置補正された状態でキャップの当接部を押すことができる。よって、嵌合開始時に第一コネクタおよび第二コネクタが正しい嵌合方向から位置ずれしている場合であっても、突出部がガイド溝にガイドされて位置補正されるため、確実にキャップを開くことができ、嵌合不良を防止して確実にコネクタを嵌合できる。
また、第一コネクタに突出部を設け、第二コネクタにガイド溝を設けたことにより、キャップの当接部を押す機能、ならびに、第一および第二コネクタの相対位置を補正しながら正しい嵌合位置に矯正するガイド機能の双方を実現できる。したがって、コネクタの体格拡大抑制が可能となり、機能ごとに新規部位をそれぞれ設ける必要がなくなる。
【0009】
更に、上記(1)の構成のコネクタによれば、ガイド溝がテーパ部を有するため、第一コネクタが正しい嵌合方向に対して傾いた状態で第二コネクタに嵌合開始されたとしても、突出部がテーパ部にガイドされて、第一コネクタは半自動的に正しい嵌合方向に位置補正される。
【0010】
上記(2)の構成のコネクタによれば、第一端子よりも小径な第二端子の周辺(近接する領域)には第一端子の周辺よりも広いスペースが確保されるため、このスペースにガイド溝を設けることで、デッドスペースを有効に活用できる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、嵌合過程で位置補正が可能なコネクタを提供できる。
【0012】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という。)を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係るコネクタの斜視図である。
【
図3】
図3は、コネクタの組み付けイメージを示す側面図である。
【
図4】
図4は、コネクタの組み付けイメージを示す下面図である。
【
図5】
図5は、コネクタの組み付けイメージを示す下面図である。
【
図6】
図6は、コネクタの組み付けイメージを示す下面図である。
【
図7】
図7は、コネクタ嵌合時の動作イメージを示す断面図である。
【
図8】
図8は、コネクタ嵌合後のイメージを示す下面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明に関する具体的な実施形態について、各図を参照しながら以下に説明する。
【0015】
本発明に関する具体的な実施形態について、各図を参照しながら以下に説明する。本実施形態のコネクタは、一例として、電気自動車等の給電側コネクタと受電側コネクタとが相互に嵌合して電気的に接続されるコネクタに適用される。
【0016】
図1は、本発明の一実施形態に係るコネクタ1の斜視図である。
図1は、第一コネクタ10と第二コネクタ20とが嵌合される途中の様子を示し、第二コネクタ20の上ハウジング31を透過した状態を示す。
図2は、
図1に示す第二コネクタ20の分解斜視図である。以下、説明の便宜上、
図1に示すように、「前」、「後」、「左」、「右」、「上」、および「下」を定義する。「前後方向」、「左右方向」および「上下方向」は、互いに直交する。「前後方向」は、第一コネクタ10および第二コネクタ20の嵌合方向に相当する。
【0017】
図1に示すコネクタ1は、相互に嵌合して電気的に接続される第一コネクタ10および第二コネクタ20からなる。第一コネクタ10には複数の端子Tが装着され、第二コネクタ20には複数の端子Tに接続する複数の端子T1、T2(第一端子、第二端子)が装着される。端子T1、T2は、第二コネクタ20の左右両側にそれぞれ設けられる。端子T1は端子T2よりも大きな径を有し、端子T1には例えば1本の電力ケーブルが接続され、端子T2には例えば4本の通信線が接続される。第一コネクタ10の複数の端子Tは、各端子T1、T2に対応して設けられる。なお、
図1において端子T、T1に接続される電線W、W1を示し、端子T2、Tに接続される他の電線は図示を省略する。
【0018】
第一コネクタ10は、直方体形状の前後に延びる各辺が円弧状とされたハウジング11を有する。ハウジング11の後側に、第二コネクタ20の端子T1、T2が挿入される開口を有し、前側に、電線Wに接続された端子Tを嵌挿、装着させる開口を有する。第一コネクタ10は、ハウジング11の前側を覆う前面部13を有する。前面部13は、左右方向の中央を下方に突出させた略矩形板状を有し、ハウジング11の前側に取り付けられ、各端子Tを挿通可能な開口を有する。
【0019】
第一コネクタ10は、ハウジング11の上面11aに、ハウジング11の後方側の端部11bから後方に(第二コネクタ20側に)延びる棒状の突出部12を有する。突出部12は、上面11aの前端部(前面部13の位置)における左右方向の中央において、上方に延びる根元部12aと、根元部12aの上端から後方に向けて直線状に延びる本体部12bと、後方に向けて次第に細くされた先端部12cを有する。本体部12bは、前後方向に長い直方体形状を有する。
【0020】
先端部12cは、本体部12bの上面12b1に連続する上面12c1と、本体部12bの下面12b2に連続し後方に向けて次第に上面12c1に近接する(すなわち上面12c1に対して傾斜する)下面12c2と、を有する(
図7参照)。先端部12cは、上面12c1と下面12c2とを接続する左右の側面12c3を有する(
図4参照)。側面12c3は、本体部12bの左右の側面12b3に連続し、先端部12cの前後方向における略中央まで両側面12c3は平行であり、後方に向かうにつれて互いに近接する。
【0021】
第二コネクタ20は、
図2に示すように、ハウジング30と、ハウジング30に装着され、前後方向に延びる複数の端子T1、T2と、複数の端子T1、T2の前面(第一コネクタ10側の面)を覆うように開閉可能なキャップ40と、を有する。ハウジング30は、上ハウジング31、下ハウジング32および端子保持部33を含む。
【0022】
上ハウジング31は、略正方形板状の平板部311と、平板部311の後端縁から下方に延びる略矩形板状の後壁部312と、を有する。平板部311は、第一コネクタ10の突出部12をガイドするガイド溝31aと、ガイド溝31aと交差するように左右方向に延びる凹部31bと、を有する。凹部31bは、下方に配置されるキャップ40の位置に対応して設けられる。上ハウジング31は、一例として、平板部311の上面が車体に取り付けられる。
【0023】
ガイド溝31aは、平板部311の前端縁から後端縁にわたって前後方向に沿って延在し、上面視略Y字状の輪郭を有する。ガイド溝31aは、平板部311を下面311a側から上方に窪ませた底部31a1を有する。底部31a1は、下面311aに平行である。ガイド溝31aは、下面311aと底部31a1とを接続する左右の斜辺部31a2と、各斜辺部31a2にそれぞれ接続する左右の側壁部31a3とを有する。左右の斜辺部31a2は、平板部311の前端縁の左右両縁近傍から後方に向かうにつれて徐々に近接し、平板部311の前後の長さのうち略4分の3程度、前端縁から離間した位置で、左右の側壁部31a3に接続する。
【0024】
左右の側壁部31a3は、左右の斜辺部31a2にそれぞれ接続した位置から平板部311の後端縁まで、互いに平行に延在する。左右の側壁部31a3の間隔は、突出部12(本体部12b)の幅(左右方向の長さ)に対応する。ガイド溝31aは、上ハウジング31が下ハウジング32に組付けられた状態で、左右の側壁部31a3の前端位置近傍において、後述する下ハウジング32の凹部32c3の直上に配置され、凹部32c3とともに第一開口部K1(
図1参照)を形成する。第一開口部K1の上下方向のサイズは、突出部12の本体部12bの上下方向のサイズに対応する。
【0025】
ガイド溝31aは、第一開口部K1から後方(第一コネクタ10と反対側)に向けて嵌合方向(前後方向)に沿って延在する。また、ガイド溝31aは、斜辺部31a2が平板部311に設けられることにより、平板部311の第一コネクタ10側端部(平板部311の前端縁)から第一開口部K1に向かうにつれて幅が減少するテーパ部TPを有する。ガイド溝31aの両側壁部31a3は、第二コネクタ20のハウジング30(上ハウジング31、下ハウジング32)における、端子T2に近接する領域に設けられる。端子T2は端子T1よりも小径であり、端子T1、T2は下面の上下方向における位置が共通するように配置されるため、端子T2の上方には端子T1の上方よりも広いスペースが確保される。このスペースにガイド溝31aを設けることにより、デッドスペースを有効に活用できる。
【0026】
ガイド溝31aは、第一コネクタ10と第二コネクタ20との嵌合時に、突出部12の先端部12cが、底部31a1、斜辺部31a2および側壁部31a3に摺動しながら後方に進むことで、第一コネクタ10が第二コネクタ20に正しい角度で組み付くようにガイドする。
【0027】
後壁部312は、端子T1、T2を挿通可能な矩形状の開口312aを左右に有し、図示しないボルトが挿通される孔312bが四隅にそれぞれ設けられる。後壁部312は、左右の開口312aの間において前面側から前方に延びるブロック状の取付部312cと、後壁部312の左右両側縁から左右側にそれぞれ突出して前方に延びるブロック状の取付部312dと、を有する。後壁部312は、一例として平板部311と一体成形されることにより、後壁部312の上端縁が平板部311の下面311aに接続される。後壁部312の上端縁における、平板部311のガイド溝31a(側壁部31a3)に対応する位置には、凹部が設けられて第二開口部K2が形成される。
【0028】
下ハウジング32は、上ハウジング31の下方において上ハウジング31の後方側に配置される。下ハウジング32は、上ハウジング31の下面311aに平行な矩形板状の底壁部32aと、底壁部32aの左右両側縁から上方に延びる略正方形板状の側壁部32bと、底壁部32aおよび側壁部32bの前側に取り付けられる前壁部32cと、を有する。下ハウジング32は、左右の側壁部32b間に底壁部32aと平行に配置された矩形板状の上壁部32dを有する。上壁部32dの前後方向の長さは底壁部32aの前後方向の長さよりも短くされ、上壁部32dの前端と前壁部32cとは離間している。
【0029】
左右の側壁部32bは、軸ピン42が挿通される孔32b1を、上壁部32dの取付位置の直上にそれぞれ有する。左右の側壁部32bは、各外側(左右側)に、側壁部32bの後端縁に沿って上下に二つ配置されたブロック状の取付部32b2をそれぞれ有する。
前壁部32cは、第一コネクタ10のハウジング11を受け入れ可能な矩形状の開口32c1を有する。前壁部32cは、上端縁における左右両端を除く中央が低くされた段差部32c2を有し、段差部32c2の左右方向中央に凹部32c3が設けられる。
【0030】
端子保持部33は、
図2に示すように、上ハウジング31に取り付けられる。端子保持部33は、上ハウジング31の後壁部312と、下ハウジング32の底壁部32a、左右の側壁部32b、前壁部32c、および上壁部32dとに囲まれた空間に配置された複数の端子T1、T2を保持する。端子保持部33は、略矩形板状の本体部33aと、本体部33aの左右両側縁に膨出部33bと、本体部33aの前面において左右に設けられた取付板33cと、有する。本体部33aおよび取付板33cは、複数の端子T1、T2がそれぞれ挿通される開口をそれぞれ有する。本体部33aにおいて、左右の取付板33cの間および左右の膨出部33bには、それぞれナットNが取り付けられた貫通孔が設けられる。
【0031】
キャップ40は、下ハウジング32に設けられ、複数の端子T1、T2の前面(第一コネクタ10側の面)を上側から覆うように開閉可能とされる。キャップ40は、端子T1、T2の前面を覆う矩形板状のカバー部41と、カバー部41の上側の縁部に設けられた左右方向に延びる貫通孔41aに挿通された軸ピン42(回動軸)と、を有する。キャップ40は、軸ピン42を挟んでカバー部41と反対側に延び、第一コネクタ10と第二コネクタ20との嵌合時に第一コネクタ10の突出部12が当接する、矩形板状の当接部43を有する。カバー部41の左右側には、貫通孔41aに挿通された軸ピン42に捩りコイルばね45を取り付けるためのばね取付部44が設けられる。捩りコイルばね45は、一例として、一端がキャップ40のカバー部41に固定され、他端が下ハウジング32の前壁部32cに固定され、キャップ40を閉方向に(キャップ40が上下方向に沿って延在するように)付勢する。捩りコイルばね45は、左右のばね取付部44の少なくともいずれか一方に取り付けられればよい。捩りコイルばね45によって、キャップ40が閉方向に付勢されるので、突出部12によって当接部43が押圧されない場合にはキャップ40の閉状態が維持される。
【0032】
キャップ40は、当接部43およびカバー部41が上下方向に沿って配置されることで、端子T1、T2の前面を覆う閉状態となる。当接部43が後方に押圧されることで、軸ピン42を中心に、カバー部41が端子T1、T2から離間する方向に回動する。このようにキャップ40が回動することで、端子T1、T2の前面を露出した開状態となる。
【0033】
第二コネクタ20の組み付けについて説明する。
端子保持部33は、複数の端子T1、T2が上ハウジング31の開口312aに後方から挿入され、取付板33cが開口312aに嵌め合わされた状態に配置される。この状態で各ナットNが各取付部312c、312d内に設けられた各ねじ穴と位置合わせされ、図示しないボルトが後方からそれぞれ回転挿入されることで、端子保持部33が上ハウジング31に組み付けられる。
【0034】
キャップ40を下ハウジング32に組み付ける際は、一方のばね取付部44に捩りコイルばね45が嵌挿され、軸ピン42がキャップ40の貫通孔41aに挿通された状態で、キャップ40が、下ハウジング32の上壁部32dと前壁部32cとの間に配置される。そして、軸ピン42の両端が側壁部32bの孔32b1に嵌められることにより、キャップ40が下ハウジング32に組付けられる。
【0035】
次に、上ハウジング31の後壁部312が下ハウジング32の側壁部32bおよび底壁部32aに当接するように配置される。この状態で上ハウジング31の四つの孔312bと下ハウジング32の四つの取付部32b2内に設けられた各ねじ穴とが位置合わせされ、ボルトBが後方からそれぞれ回転挿入されることで、上ハウジング31と下ハウジング32とが組付けられる。このようにして、
図1に示す第二コネクタ20が構成される。
【0036】
図3から
図8を参照して、第一コネクタ10と第二コネクタ20との嵌合について説明する。
図3(a)、
図3(b)は、コネクタ1の組み付けイメージを示す側面図であり、
図3(c)は、コネクタ1の側面図において、第二コネクタ20を左側の側壁部32bの右側において上下方向および前後方向に沿う平面で切断した断面で示す。
図3(a)~
図3(c)の順に、コネクタ1の組み付けが進行する様子を示す。
図4から
図6は、
図3(a)~
図3(c)にそれぞれ対応した下面図であり、
図6は第二コネクタ20の底壁部32aを透過した状態を示す。
図7は、コネクタ1嵌合時の動作イメージを示す断面図であり、左側の端子T1の左側を上下方向及び前後方向に沿う平面で切断したコネクタ1の一部の断面を示す。
図7(a)~
図7(c)は、突出部12がキャップ40の当接部43を押す前(閉状態)、押す途中、押した後(開状態、嵌合後)のキャップ40近傍をそれぞれ示す。
図8は、
図7(c)に示す嵌合後のコネクタ1を示す下面図である。尚、
図3以降の図面において、端子T1、Tに接続される電線W1、Wは図示を省略する。
【0037】
図3(a)および
図4に示すように、
図4において実線で示す第一コネクタ10のように正しい嵌合方向(前後方向)ではなく、
図4において破線で示すように左右にずれた角度で、第一コネクタ10と第二コネクタ20との嵌合が開始される場合がある。このように正しい嵌合方向でない場合であっても、嵌合が進むにつれて、突出部12の先端部12cが、ガイド溝31aの斜辺部31a2に摺動しながら(
図3(b)および
図5参照)、左右の側壁部31a3間に誘導されて位置補正される(
図3(c)および
図6参照)。また、この一連の流れにおいて、第一コネクタ10が第二コネクタ20に対して上下方向にずれて嵌合が開始された場合であっても、突出部12の上面12b1をガイド溝31aの底部31a1に摺動させることで、上下方向の傾き(位置ずれ)が補正される。
【0038】
図6に示すように、突出部12の先端部12cがガイド溝31aの左右の側壁部31a3間に収まった状態では、第一コネクタ10は第二コネクタ20に対して正しい嵌合方向となるよう位置補正されている。このため、
図7に示す、この後のキャップ40を開く動作は、突出部12によるキャップ40の当接部43を押す角度が規制された状態で行われるため、確実にキャップ40を開くことができる。
【0039】
図7(a)に示すように、突出部12の先端部12cがキャップ40の当接部43を押す直前において、先端部12cはガイド溝31aの左右の側壁部31a3間に収まっており、正しい嵌合方向に補正されている。突出部12は、ガイド溝31aの左右側壁部31a3間によって左右方向の移動が規制される。このため、先端部12cは正しい方向で当接部43を押し(
図7(b)参照)、第一コネクタ10は第二コネクタ20に対し、正しい嵌合方向からずれることなく嵌合する(
図7(c)参照)。このように、第一コネクタ10のハウジング11が第二コネクタ20のハウジング30内に挿入されて、ハウジング11内の複数の端子Tが、ハウジング30内の複数の端子T1、T2とそれぞれ接続される。嵌合完了後において、
図8に示すように、突出部12は第二コネクタ20のハウジング30(第二開口部K2)から後方に突出している。
【0040】
図8に示す嵌合完了後の状態から第一コネクタ10と第二コネクタ20とを離間させると、突出部12による当接部43の押圧が解除されるため、捩りコイルばね45の付勢力により、キャップ40が端子T1、T2に近接するように回動されて閉状態となる。
【0041】
以上説明したように、コネクタ1の嵌合時に、突出部12がガイド溝31aによってガイドされて、軸ピン42よりも手前の開口部K1に進入することにより、突出部12が、正しい嵌合方向に位置補正された状態でキャップ40の当接部43を押すことができる。よって、嵌合開始時に第一コネクタ10および第二コネクタ20が正しい嵌合方向から位置ずれしている場合であっても、突出部12がガイド溝31aにガイドされて位置補正されるため、確実にキャップ40を開くことができる。したがって、嵌合不良を防止して確実にコネクタ1を嵌合できる。
【0042】
また、本実施形態のコネクタ1によれば、第一コネクタ10の上側に突出部12を設け、第二コネクタ20の上ハウジング31にガイド溝31aを設ける構成により、キャップ40を押す機能およびコネクタ1の嵌合をガイドする機能の双方を実現できる。このため、各機能を実現するためにそれぞれの構造を設ける必要がないため、コネクタ1の体格拡大抑制が可能となり、新規部位を設ける必要がなくなる。
【0043】
尚、本発明は、前述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、前述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数値、形態、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【0044】
ここで、上述した本発明の実施形態に係るコネクタの特徴をそれぞれ以下[1]~[3]に簡潔に纏めて列記する。
[1]相互に嵌合して電気的に接続される第一コネクタ(10)および第二コネクタ(20)からなるコネクタ(1)において、
前記第一コネクタ(10)は、
第一ハウジング(ハウジング11)と、
前記第一ハウジングの端部(11b)から突出して、前記第一コネクタ及び前記第二コネクタの嵌合方向(前後方向)において前記第二コネクタ側に延びる突出部(12)と、を有し、
前記第二コネクタ(20)は、
前記嵌合方向に延びる端子(T1、T2)と、
前記端子の前記第一コネクタ側の面(前面)を覆うカバー部(41)と、前記カバー部の縁部に設けられた回動軸(軸ピン42)と、前記回動軸を挟んで前記カバー部と反対側に延び、前記突出部が当接する当接部(43)と、を有するキャップ(40)と、
前記突出部をガイドするガイド溝(31a)を有し、かつ、前記回動軸を支持する第二ハウジング(ハウジング30)と、を有し、
前記ガイド溝は、前記回動軸よりも前記第一コネクタ側の開口部(第一開口部K1)から、前記第一コネクタと反対側(後方)に向けて、前記嵌合方向に沿って延在する、
コネクタ(1)。
[2]前記第二ハウジング(ハウジング30)は、少なくとも、前記回動軸に対応する位置(凹部31bの位置)から、前記嵌合方向において前記第一コネクタ側(前方)に延びる平板部(311)を有し、
前記ガイド溝は、前記平板部に設けられ、前記第一コネクタ側から前記開口部に向かうにつれて幅が減少するテーパ部(TP)を有する、
上記[1]に記載のコネクタ。
[3]前記端子は、第一端子(端子T1)と、前記第一端子よりも径が小さい第二端子(端子T2)と、を含み、
前記ガイド溝は、前記第二ハウジングにおける、前記第二端子(端子T2)に近接する領域に設けられる、
上記[1]又は[2]に記載のコネクタ。
【符号の説明】
【0045】
1 コネクタ
10 第一コネクタ
11 ハウジング
11a 上面
11b 端部
12 突出部
12a 根元部
12b 本体部
12b1 上面
12b2 下面
12b3 側面
12c 先端部
12c1 上面
12c2 下面
12c3 側面
13 前面部
20 第二コネクタ
30 ハウジング
31 上ハウジング
31a ガイド溝
31a1 底部
31a2 斜辺部
31a3 左右側壁部
31a3 側壁部
31a3 両側壁部
31b 凹部
32 下ハウジング
32a 底壁部
32b 側壁部
32b1 孔
32b2 取付部
32c 前壁部
32c1 開口
32c2 段差部
32c3 凹部
32d 上壁部
33 端子保持部
33a 本体部
33b 膨出部
33c 取付板
40 キャップ
41 カバー部
41a 貫通孔
42 軸ピン
43 当接部
44 ばね取付部
45 捩りコイルばね
311 平板部
311a 下面
312 後壁部
K1 第一開口部
K2 第二開口部
T、T1、T2 端子
TP テーパ部
W、W1 電線