(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-18
(45)【発行日】2024-11-26
(54)【発明の名称】淡水生生物含有乾燥植物の製造方法
(51)【国際特許分類】
A23K 30/00 20160101AFI20241119BHJP
A23K 10/30 20160101ALI20241119BHJP
A23K 50/80 20160101ALI20241119BHJP
【FI】
A23K30/00
A23K10/30
A23K50/80
(21)【出願番号】P 2021033800
(22)【出願日】2021-03-03
【審査請求日】2024-02-27
(31)【優先権主張番号】P 2020046834
(32)【優先日】2020-03-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】518381444
【氏名又は名称】宇野 正秀
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宇野 正秀
【審査官】吉田 英一
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-281848(JP,A)
【文献】特開2020-65508(JP,A)
【文献】特表2005-522983(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第104396896(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23K 30/00
A23K 10/30
A23K 50/80
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
淡水生生物として、淡水生単細胞生物(ゾウリムシ属を除く)又は淡水生多細胞生物を培養液に投入して培養する培養工程と、
上記培養工程で増殖した淡水生単細胞生物、淡水生多細胞生物又はそれらの産生体を、微生物又は微生物の芽胞を含む植物に、吸着、付着又は活着させつつ乾燥させる乾燥工程と、
を有しており、
上記産生体が、上記淡水生生物の胞子、芽胞、卵、種、茎、根又は葉であり、
上記乾燥後の植物を水に投入することにより、上記淡水生生物が蘇生する、淡水生生物含有乾燥植物の製造方法。
【請求項2】
上記培養工程後に、増殖した淡水生単細胞生物、淡水生多細胞生物又はそれらの産生体を含む培養液を濃縮する濃縮工程をさらに有する、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
上記培養工程で増殖した淡水生単細胞生物、淡水生多細胞生物又はそれらの産生体を、吸着、付着又は活着させつつ乾燥させた上記植物を、水又は培養液に投入し、この淡水生単細胞生物又は淡水生多細胞生物を蘇生させて培養する再培養工程をさらに有する、請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
上記淡水生生物を、上記微生物又は微生物の芽胞を含む植物の存在下で培養する、請求項1から3のいずれかに記載の製造方法。
【請求項5】
上記淡水生生物が、上記微生物を餌として増殖する、請求項1から4のいずれかに記載の製造方法。
【請求項6】
上記微生物が枯草菌又は酵母を含む、請求項1から5のいずれかに記載の製造方法。
【請求項7】
上記淡水生単細胞生物がクロレラ属又は酵母である、請求項1から6のいずれかに記載の製造方法。
【請求項8】
上記淡水生多細胞生物が、ミジンコ属及びタマミジンコ属、カワリヌマエビ属、スジエビ属、キャラハゴケ属及びエキノドルス属からなる群から選択される1又は2以上、若しくは、輪形動物門から選択される1又は2以上である、請求項1から7のいずれかに記載の製造方法。
【請求項9】
上記植物が穀類のもみ殻、わら又はぬかを含む、請求項1から8のいずれかに記載の製造方法。
【請求項10】
上記植物が乾燥果実を含む、請求項1から9のいずれかに記載の製造方法。
【請求項11】
上記植物が、稲わら、麦わら及び干し草からなる群から選択される1又は2以上である、請求項1から10のいずれかに記載の製造方法。
【請求項12】
上記植物が乾燥植物を主原料とする加工品である、請求項1から10のいずれかに記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、淡水生生物を含む乾燥植物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、観賞魚、養殖魚等の養魚用飼料として、ミジンコ等の淡水生生物が使用されている。養魚は、飼料として生き餌を好む傾向にある。また、淡水生生物は、水草等観賞植物としても有用である。
【0003】
淡水生生物を安定的に供給するためには、淡水生生物を増殖可能な状態で培養しておく必要がある。さらには、供給が不要な期間にも、淡水生生物を連続培養しておく必要がある。
【0004】
淡水生生物は、餌又は養分を含む培養液中で培養されることにより増殖する。通常、増殖可能な淡水生生物は、例えば、水又は培養液中で保存され、配送されている。この保存及び配送には、水温調整、エアレーション等の設備が必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
水又は培養液から取り出された淡水生生物は、乾燥してその活動を停止する。乾燥した淡水生生物の蘇生、培養及び増殖は、困難である。特に、多細胞生物であれば、その困難性は極めて大きい。
【0006】
水及び培養液を要することなく、増殖可能な淡水生生物を保存及び配送する技術が求められている。本発明の目的は、常温で保存及び配送可能な淡水生生物含有乾燥植物の製造方法の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る製造方法は、乾燥後の植物を水に投入することにより、淡水生生物が蘇生する、淡水生生物含有乾燥植物の製造方法である。この製造方法は、
(1)淡水生生物として、淡水生単細胞生物(ゾウリムシ属を除く)又は淡水生多細胞生物を培養液に投入して培養する培養工程、
及び
(2)培養工程で増殖した淡水生単細胞生物、淡水生多細胞生物又はそれらの産生体を、微生物又は微生物の芽胞を含む植物に、吸着、付着又は活着させつつ乾燥させる乾燥工程
を有している。この産生体は、淡水生生物の胞子、芽胞、卵、種、茎、根又は葉である。
【0008】
好ましくは、この製造方法は、
(3)培養工程後に、増殖した淡水生単細胞生物、淡水生多細胞生物又はそれらの産生体を含む培養液を濃縮する濃縮工程をさらに有する。
【0009】
好ましくは、この製造方法は、
(4)培養工程で増殖した淡水生単細胞生物、淡水生多細胞生物又はそれらの産生体を、吸着、付着又は活着させつつ乾燥させた植物を、水又は培養液に投入し、この淡水生単細胞生物又は淡水生多細胞生物を蘇生させて培養する再培養工程をさらに有する。
【0010】
好ましくは、この製造方法では、淡水生生物を、微生物又は微生物の芽胞を含む植物の存在下で培養する。
【0011】
好ましくは、この淡水生生物は微生物を餌として増殖する。この微生物は、枯草菌又は酵母を含むものであってよい。
【0012】
好ましくは、この淡水生単細胞生物は、クロレラ属又は酵母である。好ましくは、この淡水生多細胞生物は、ミジンコ属、タマミジンコ属、カワリヌマエビ属、スジエビ属、キャラハゴケ属及びエキノドルス属からなる群から選択される1又は2以上、若しくは、輪形動物門から選択される1又は2以上である。
【0013】
この植物は穀類のもみ殻、わら又はぬかを含むものであってよい。この植物は乾燥果実を含むものであってよい。
【0014】
好ましくは、この植物は、稲わら、麦わら及び干し草からなる群から選択される1又は2以上である。この植物は、植物を主原料とする加工品であってよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る製造方法によれば、水に投入されることで容易に蘇生及び増殖する淡水生生物を含む植物を、乾燥状態で得ることができる。この淡水生生物含有乾燥植物は、保存及び配送が容易である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、好ましい実施形態に基づいて本発明が詳細に説明されるが、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。
【0017】
本発明の一実施形態に係る淡水生生物含有乾燥植物の製造方法は、培養工程及び乾燥工程を、必須の工程として有している。培養工程は、淡水生生物として、淡水生単細胞生物(ゾウリムシ属を除く)又は淡水生多細胞生物を培養液に投入して培養する工程である。乾燥工程は、培養工程で増殖した淡水生単細胞生物、淡水生多細胞生物又はそれらの産生体を、微生物又は微生物の芽胞を含む植物に、吸着、付着又は活着させつつ乾燥させる工程である。好ましくは、この製造方法は、準備工程、濃縮工程、再培養工程及び希釈海水培養工程をさらに含んでいる。以下、各工程の詳細を説明する。
【0018】
[準備工程]
準備工程は、培養工程で使用する培養液を準備する工程である。この実施形態では、乾燥状態の植物を水に投入して煮沸した後、この植物を含む煮沸液を冷却して、室温で静置することにより培養液を得る。好ましくは、この培養液は、淡水生生物の餌となるバクテリア(典型的には、枯草菌)及び養分であるミネラルを含む。この培養液が、酵母を含むものであってよい。
【0019】
この準備工程において、乾燥状態の植物を煮沸するための水は、特に限定されない。地下水、汲み置き水等が適宜選択して用いられる。なお、汲み置き水とは、水道水を半日以上太陽光に曝して、塩素等を除去したものを意味する。この準備工程では、水として水道水をそのまま用いることも可能である。
【0020】
乾燥状態の植物が微生物又は微生物の芽胞を含む限り、その種類は特に限定されない。好ましい微生物として、枯草菌、酵母等が挙げられる。枯草菌及び酵母は、土壌、植物等自然界に広く存在している。従って、自然環境下で採取された植物の乾燥体であれば、好適に用いられる。植物全体の乾燥体であってもよく、茎、葉、根、外皮、穀物殻、実の殻、種子等の植物の一部の乾燥体であってもよい。好ましい乾燥植物として、穀類のもみ殻、わら、ぬか等が挙げられる。乾燥体の入手が容易であり、安価であることから、稲わら、麦わら及び干し草が好ましい。酵母を含む乾燥植物としては、干し葡萄等の乾燥果実が好ましい。また、乾燥状態の植物として、植物を主原料とする加工品を使用することも可能である。好ましい加工品として、例えば、紙、布、綿等が挙げられる。
【0021】
乾燥状態の植物には、通常、種々の微生物が付着している。乾燥状態の植物を水に投入して煮沸することにより、一部のバクテリアの芽胞を除いて、ほとんどの微生物は死滅する。特に、淡水生生物が餌として好む枯草菌の芽胞は、耐熱性に優れている。乾燥状態の植物の煮沸処理によって、淡水生生物の培養に悪影響を及ぼす可能性のある他の微生物が除去され、耐熱性の高い枯草菌の芽胞を含む煮沸液が得られる。
【0022】
例えば、乾燥状態の植物を煮沸して得られた煮沸液を冷却し、この植物を取り出すことなく、遮光状態で室温下静置することにより、枯草菌の芽胞が発芽して、枯草菌が優先的に繁殖する。また、この植物からは、淡水生生物の増殖に寄与するミネラルも放出される。これにより、淡水生生物の培養に適した培養液が得られる。枯草菌の繁殖状態に応じて、適宜希釈したものを培養液としてもよい。なお、希釈には、汲み置き水を用いることが好ましい。
【0023】
準備工程において、冷却前の煮沸液から植物の一部を取り出し、室温で乾燥させてもよい。この乾燥植物は、煮沸処理されている。この乾燥植物は、枯草菌の芽胞を含み、かつ、淡水生生物の培養に悪影響を及ぼしうる他の微生物を含まない。この煮沸処理された乾燥植物は、水中で淡水生生物の餌となる枯草菌及び養分となるミネラルを放出することができる。
【0024】
他の実施形態として乾燥植物として乾燥果実を使用する場合、準備工程において、乾燥果実を水に投入して煮沸することなく、室温又はヒトの体温程度の温度で静置することにより培養液を得る。これにより、有用な淡水生生物である酵母を含む培養液が得られる。大きな乾燥果実はみじん切り又はミキサーで粉砕して用いることが好ましい。吸着面積の小さい乾燥果実は、針等で穴を開けることが好ましい。
【0025】
[培養工程]
培養工程では、種となる淡水生生物を、準備した培養液に投入して培養する。ここで、淡水生生物とは、淡水中及び/又は淡水に依存して生存する生物種の意味であり、動物性であっても植物性であってもよく、動物性の場合、無脊椎動物であってもよく、脊椎動物であってもよい。
【0026】
本発明において、種となる淡水生生物は、淡水生単細胞生物(ゾウリムシ属を除く)又は淡水生多細胞生物である。本発明の効果が得られる限り、その種類に特に限定はないが、枯草菌、酵母等の微生物を餌として増殖する生物種がこの製造方法に適している。
【0027】
本願明細書において「淡水生単細胞生物」には、複数の細胞が集まって群体を形成する生物種も含まれる。淡水生単細胞生物(ゾウリムシ属を除く)の具体例としては、クロレラ(chlorella)属、クラミドモナス(Chlamydomonas)属、イカダモ(Scenedesmus)属、デスモデスムス(Desmodesmus)属、ミカヅキモ(Closterium)属、ツヅミモ(Cosmarium)属、イトクズモ(Ankistrodesmus)属、ツノモ(Ceratium)属、クンショウモ(Pediastrum)属、タイコケイソウ(Cyclotella)属、コアミケイソウ(Coscinodiscus)属、ツツガタケイソウ(Rhizosolenia)属、ツノケイソウ(Chaetoceros)属、ディノフィシス(Dinophysis)属、ハネケイソウ(Pinnularia)属、フナガタケイソウ(Navicula)属、アミミドロ(Hydrodictyon)属、カラキウム(Characium)属、プランクトスフェリア(Planktosphaeria)属、ボルボックス(Volvox)属、ミドリムシ(Euglena)属、アスタシア(Astasia)属、シクリディオプシス(Cyclidiopsis)属、レポキンクリス(Lepocinclis)属、ウチワヒゲムシ(Phacus)属、ラッパムシ(Stentor)属等が挙げられる。有用性の観点から、クロレラ属、ミドリムシ属等が好ましい。他の有用な淡水生単細胞生物として酵母が挙げられる。酵母の種類は特に限定されないが、人間の飲食物として利用されるパン酵母、ビール酵母、ワイン酵母等が好ましい。
【0028】
淡水生多細胞生物の具体例としては、ミジンコ(Daphnia)属、ケンミジンコ(Cyclops)属、ゾウミジンコ(Bosmina)属、ゾウミジンコモドキ(Bosminopsis)属、ケブカミジンコ(Macrothrix)属、ヒラタミジンコ(Camptocercus)属、ハシミジンコ(Pleuroxus)属、マルミジンコ(Chydorus)属、タマミジンコ(Moina)属、ノロ(Leptodora)属、アオムキミジンコ(Scapholeberis)属、オカメミジンコ(Simocephalus)属、ネコゼミジンコ(Ceriodaphnia)属、シダ(Sida)属、オナガミジンコ(Diaphanosoma)属、ツボワムシ(Btachionus)属、ツノワムシ(Schizocerca)属、トゲワムシ(Notholca)属、ミズワムシ(Epiphanes)属、ネズミワムシ(Trichocerca)属、ホウネンエビ(Branchinella)属、ヌマエビ(Paratya)属、カワリヌマエビ(Neocaridina)属、スジエビ(Palaemon)属、カブトエビ(Triops)属、カイエビ(Cyzicus)属、ヨコエビ(Gammarus)属、ヒゲナガヨコエビ(Ampithoe)属、チビマルヨコエビ(Gitanopsis)属、ホソヨコエビ(Ericthonius)属、マミズヨコエビ(Crangonyx)属、テナガエビ(Macrobrachium)属、サワガニ(Geothelphusa)属、カワニナ(Semisulcospira)属、ヌマカイメン(Spongilla)属、ヨワカイメン(Eunapius)属、カワカイメン(Ephydatia)属、シジミ(Corbicula)属、マメシジミ(Pisidium)属、カワヤツメ(Lethenteron)属、マリモ(Aegagropila)属、カワモズク(Batrachospermum)属、シャジクモ(Chara)属、シラタマモ(Lamprothamnium)属、ホシツリモ(Nitellopsis)属、フラスコモ(Nitella))属、カワノリ(Prasiola)属、キャラハゴケ(Taxiphyllum)属(通称ウィローモス)、エキノドルス(Echinodorus)属(通称アマゾンソードプラント)、オモダカ(Sagittaria)属、バルデリア(Baldellia)属、アヌビアス(Anubias)属、ウキクサ(Spirodela)属、ブセファランドラ(Bucephalandra)属、クリプトコリネ(Cryptocoryne)属、ヌカボシクリハラン(Microsorum)、ヘツカシダ(Bolbitis)属、ハゴロモモ(Cabomba)属、シソクサ(Limnophila)属、マツモ(Ceratophyllum)属、キカシグサ(Rotala)属、オギノツメ(Hygrophila)属、ホウオウゴケ(Fissidens)属、スジゴケ(riccardia)属等様々な生物種が挙げられる。有用性の観点から、ミジンコ属、タマミジンコ属、カワリヌマエビ属、スジエビ属、キャラハゴケ属及びエキノドルス属から選択される1又は2以上、若しくは、輪形動物門から選択される1又は2以上が好ましい。
【0029】
この製造方法では、種とする淡水生生物の入手方法は特に限定されない。例えば、水田、池、湖沼、小川等野外で自然発生したものを採取する方法、市販品を購入する方法が挙げられる。本発明に係る製造方法で得られる淡水生生物含有乾燥植物を培養して得られる淡水生生物を、種として用いることも可能である。また、淡水生生物含有乾燥植物を、直接、種として培養液に投入してもよい。
【0030】
この製造方法における淡水生生物の培養条件は、培養する淡水生生物の種類により適宜選択される。典型的な培養条件は、人間の居住労働環境であればよく、培養温度は、通常室温である10℃以上30℃以下である。生産効率上、25℃が好ましい。ヒトの体温程度に加温してもよい。淡水生生物が酵母の場合には、ヒトの体温程度の約35℃が好ましく、酵母以外の淡水生生物であれば室温程度(約25℃)で十分である。培養時間は特に限定されず、所定の生物密度に増殖するまで、培養を継続してもよい。この製造方法では、ルーペ、顕微鏡等を用いて淡水生生物の増殖状態を観察し、増殖した淡水生生物が局在化せず、培養液中に遍在している場合に、高密度に増殖した状態と判断した。なお、培養液の過剰な温度変化を抑制するため、直射日光を避けることが好ましいが、光合成をおこなう生物種及びこれと共生する生物種を培養する際には、必要に応じて光照射することが好ましい。
【0031】
培養工程において、培養液に投入された淡水生単細胞生物及び淡水生多細胞生物は、培養液中の枯草菌及びミネラルを餌として増殖する。また、淡水生生物は、培養工程において増殖しつつ、胞子、芽胞、卵、種等を産生する。例えば、ミジンコの卵は、水又は培養液中で孵化して、成体であるミジンコが生成する。また、ミズキャラハゴケ(ウィローモス)では、その成体の一部である茎、根、葉等が発芽して、成体であるミズキャラハゴケが生成する。本願明細書では、水又は培養液中で淡水生生物の成体を生成しうる機能を有するものを、「産生体」と総称する。従って、本願における「産生体」とは、淡水生生物の胞子、芽胞、卵、種、茎、根、葉等を含む概念である。
【0032】
好ましい実施形態では、培養工程において、前述した煮沸処理後の乾燥植物を含む培養液中で、淡水生生物を培養する。前述した通り、煮沸処理後の乾燥植物は、枯草菌の芽胞を含む。この乾燥植物は、培養液中で枯草菌及びミネラルを放出する。放出された枯草菌及びミネラルにより、淡水生生物が培養中に消費した枯草菌及びミネラルが補充される。枯草菌の芽胞を含む植物の存在下で淡水生生物を培養する工程では、他にバクテリア等の栄養源の添加を要さない。なお、必要に応じて、他の栄養源を添加してもよい。
【0033】
他の好ましい実施形態では、培養工程において、乾燥果実を含む培養液中で酵母を培養する。前述した通り、乾燥果実は少量の酵母を含む。この培養工程によれば、乾燥果実に含まれる少量の酵母も活用することができる。培養液には、必要に応じて、穀類のぬか及び穀類の煮沸液、砂糖水等を添加してもよい。培養液の種類により、得られる酵母の種類が異なる場合がある。
【0034】
[乾燥工程]
乾燥工程では、培養工程で増殖した淡水生単細胞生物、淡水生多細胞生物又はそれらの産生体を、微生物又は微生物の芽胞を含む植物に、吸着、付着又は活着させつつ乾燥させる。乾燥されることにより、植物に吸着、付着又は活着された淡水生生物又はその産生体は、その活動を一時的に停止して休眠状態となる。ここで、「休眠状態」とは、淡水生生物がその活動を一時的に停止した状態であり、水又は培養液に投入されることにより、蘇生、孵化又は発芽することができる状態を意味する。
【0035】
蘇生、孵化又は発芽しやすいとの観点から、植物に吸着、付着又は活着される淡水生生物又はその産生体としては、淡水生単細胞生物及びその芽胞、並びに、淡水生多細胞生物の胞子、卵、種、茎、根及び葉が好ましい。
【0036】
例えば、培養工程後の培養液に、前述した煮沸処理後の乾燥植物を浸して混合した後、淡水生生物又はその産生体をこの植物に吸着、付着又は活着させつつ、乾燥させることにより、休眠状態の淡水生生物又はその産生体を含む乾燥植物を得てもよい。また、枯草菌の芽胞を含む植物の存在下で培養工程をおこなう実施形態では、この培養中にも、淡水生生物又はその産生体の植物への吸着、付着又は活着が生じうる。この場合、培養工程後、新たに乾燥植物を投入することなく、培養液に残る淡水生生物又はその産生体をこの植物にさらに吸着、付着又は活着させつつ、乾燥させることにより、休眠状態の淡水生生物又はその産生体が吸着、付着又は活着した乾燥植物を得てもよい。
【0037】
乾燥工程における乾燥方法は、好ましくは、自然乾燥又は室温での送風乾燥である。本願明細書において、室温とは10℃以上30℃以下を意味する。異性物の混入を避けるため、閉鎖環境(例えば、室内)で乾燥させることが好ましい。
【0038】
乾燥時間は、淡水生生物又はその産生体が吸着、付着又は活着した植物の色を観察することにより、適宜調整される。乾燥工程で水分が除去されることで、植物の色は、濃色から淡色に変化する。目視観察により、この色の変化がなくなったときに、乾燥工程を終了することが好ましい。より好ましくは、得られた淡水生生物含有乾燥植物をビニール袋等に密封した場合に、一定時間経過後、その内部に水蒸気等が付着しない状態まで乾燥させる。この状態まで乾燥させて得られた淡水生生物含有乾燥植物の含水率は、約10質量%以下である。この含水率は、100℃で2時間加熱後の質量減少率として求められる。
【0039】
この製造方法により得られた淡水生生物含有乾燥植物が、水又は培養液に投入されることにより、休眠状態の淡水生生物が蘇生して増殖する、又は、その産生体から淡水生生物が孵化又は発芽して成長する。本発明に係る製造方法によれば、淡水生生物の単なる乾燥体と比べて、淡水生生物の蘇生率、孵化率、発芽率等が飛躍的に向上した淡水生生物含有乾燥植物が得られる。また、この淡水生生物含有乾燥植物は、微生物又は微生物の芽胞を含む。この乾燥植物は、水に投入されることにより、微生物及びミネラルを放出する。蘇生、孵化又は発芽した淡水生生物は、この微生物及びミネラルを餌として、数日で高密度まで増殖又は成長する。この淡水生生物含有乾燥植物によれば、一定期間、培養液に栄養源を添加する必要がない。この淡水生生物含有乾燥植物を入手した使用者は、必要に応じてこれを水等に投入して培養することで、容易に増殖又は成長した淡水生生物を得ることができる。また、この製造方法により得られる酵母には、従来のドライイーストとは異なり、製造上、乳化剤等の添加物が一切使用されない。そのため、この製造方法により得られた酵母を用いてパンを製造する場合、パンに添加物が残らないという利点がある。
【0040】
また、この淡水生生物含有乾燥植物を、製造後ビニール袋等に密封して室温で1年間保存した後に、開封して水に投入した場合も、淡水生生物が蘇生又は発生する。この淡水生生物含有乾燥植物の保存には、冷蔵庫等の設備は不要である。さらに、この淡水生生物含有乾燥植物は、軽量である。この淡水生生物含有乾燥植物は、例えば、ビニール袋等に密封して出荷し、通常の流通過程を利用して常温で配送することが可能である。この製造方法によれば、保存及び輸送コストが軽減される。
【0041】
[濃縮工程]
この製造方法では、培養工程後、乾燥工程前に、濃縮工程をおこなってもよい。濃縮工程では、培養工程で増殖させた淡水生単細胞生物、淡水生多細胞生物又はそれらの産生体を含む培養液を濃縮する。濃縮した培養液を乾燥工程に供することにより、淡水生生物又はその産生体が高密度に吸着、付着又は活着した乾燥植物を得ることができる。これにより、淡水生生物の蘇生率、孵化率、発芽率等がさらに向上する。
【0042】
本発明の効果が得られる限り、濃縮倍率は特に限定されず、淡水生生物の種類に応じて適宜選択される。高密度化の観点から、濃縮倍率は高いほど好ましく、培養中の淡水生生物が生存可能な極限濃度まで濃縮することが好ましい。濃縮方法としては、濾過、遠心分離等、既知の方法が選択して用いられる。
【0043】
[再培養工程]
この製造方法では、乾燥工程後に再培養工程をおこなってもよい。再培養工程では、培養工程で増殖した淡水生単細胞生物、淡水生多細胞生物又はそれらの産生体を、吸着、付着又は活着させつつ乾燥させた植物を、再度、水又は培養液に投入し、この淡水生単細胞生物又は淡水生多細胞生物を蘇生又は発生させて培養する。枯草菌の芽胞を含む植物の存在下で培養することが好ましい。好ましくは、この水には、汲み置き水が用いられる。
【0044】
再培養工程では、淡水生生物含有乾燥植物が水に投入されることにより、乾燥状態に強い淡水生生物が、その活動を再開して増殖する。一方、乾燥状態に弱い淡水生生物は、再度水に投入されても、蘇生しないか、低い速度でしか増殖しない。換言すれば、この再培養工程では、乾燥状態に強い淡水生生物が優先的に増殖する。
【0045】
この実施形態に係る製造方法では、再培養工程において、休眠状態から蘇生して増殖した淡水生生物を含む植物が、再度乾燥工程に供される。これにより、蘇生率、孵化率、発芽率等の高い淡水生生物を選択的に含む乾燥植物が得られる。再培養工程では、培養工程で前述した培養条件が用いられうる。再培養工程の培養条件と、培養工程の培養条件とは、同じであってもよく、異なっていてもよい。培養液の過剰な温度変化が抑制される条件が好ましい。
【0046】
この実施形態に係る製造方法において、再培養工程及び乾燥工程を複数回繰り返してもよい。これにより、乾燥耐性に優れた淡水生生物が選別され、短期間で蘇生して増殖する淡水生生物を含む乾燥植物が得られる。再培養工程を複数回繰り返す場合、各工程における培養条件は同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0047】
[希釈海水培養工程]
希釈海水培養工程は、乾燥工程後の淡水生生物含有乾燥植物を、希釈海水に投入して、この植物の存在下で、淡水生生物を培養する工程である。ここで、希釈海水とは、2倍以上に希釈した海水を意味する。通常、淡水生生物は、海水中での生存ができないか、その活動を著しく低下する。この希釈海水培養工程は、少なくとも2倍以上に希釈した海水に対する耐性(以下、海水部分耐性と称する)を有する淡水生生物を選別する工程である。
【0048】
希釈海水培養工程では、淡水生生物含有乾燥植物が希釈海水に投入されることにより、海水部分耐性の高い淡水生生物が、その活動を再開して増殖する。例えば、枯草菌の芽胞を含む乾燥植物からは、海水部分耐性を有する枯草菌とミネラルとが放出される。蘇生した淡水生生物は、この枯草菌及びミネラルを餌として、希釈海水中で増殖する。一方、海水部分耐性の低い淡水生生物は、蘇生しないか、その増殖速度が低い。
【0049】
好ましくは、希釈海水培養工程では、例えば、8倍希釈、4倍希釈、3倍希釈、2.5倍希釈、2.2倍希釈、2倍希釈のように、段階的に希釈倍率を高くした希釈海水を用いて、それぞれ数日間ずつ、淡水生生物を培養する。これにより、海水部分耐性を有する淡水生生物を、効率的に、高密度に増殖させることができる。
【0050】
希釈海水は、採取した海水を、汲み置き水又は地下水等で所定濃度に希釈することにより得られる。希釈海水培養工程において、希釈倍率を変更する場合、培養を継続しながら、原液である海水を所定量ずつ添加することによりおこなってもよい。希釈海水培養工程では、培養工程において前述した培養条件が用いられうる。培養液の過剰な温度変化を抑制する条件が好ましい。
【0051】
希釈海水培養工程後の培養液は、再度乾燥工程に供される。乾燥工程において、希釈海水中で増殖した淡水生生物又はその産生体を、枯草菌の芽胞を含む植物に吸着、付着又は活着させつつ、乾燥させることにより、希釈海水中で蘇生及び増殖が可能な淡水生生物又はその産生体を含む乾燥植物が得られる。さらにこの製造方法によれば、希釈海水培養工程において、希釈海水に対する耐性の高い枯草菌が選別される。この淡水生生物含有乾燥植物は、希釈海水中で、淡水生生物の餌となる枯草菌及びミネラルを放出することができる。
【0052】
この実施形態に係る製造方法で得られた淡水生生物含有乾燥植物を、希釈海水中に投入した場合、海水部分耐性を有する淡水生生物が蘇生、孵化又は発芽して、植物から放出される枯草菌及びミネラルを餌として増殖又は成長する。
【0053】
(用途)
本発明に係る製造方法により得られる淡水生生物含有乾燥植物を水に投入すると、休眠状態の淡水生生物が速やかにその活動を再開する。活動を再開した淡水生生物は、増殖又は成長の際に、植物から放出される微生物又はミネラルを餌として活用することができる。この淡水生生物含有乾燥植物を投入する水は、前述した汲み置き水でもよく、水道水でもよい。必要に応じて、前述した培養液を栄養源として添加してもよい。
【0054】
淡水生生物含有乾燥植物を用いて得られる淡水生生物は、稚魚を含む養魚等の飼料として好適に用いられる。また、海水部分耐性を有する淡水生生物であれば、従来の淡水生生物と比較して、海水中での生存期間が長いので、例えば、淡水魚のみならず、海水魚に対する生き餌としても使用することができる。養魚用飼料とする場合、濾過等により植物を除去して、淡水生生物及び微生物を含む液体として給餌してもよい。淡水生生物及び微生物を含む液体を、牛、馬等の家畜用飼料としてもよく、犬、猫等のペット用飼料としてもよい。また、淡水生生物含有乾燥植物をそのまま、家畜用飼料とすることも可能である。
【0055】
乾燥植物が淡水生生物として酵母を含む場合、この乾燥植物をヒトの体温程度のぬるま湯等に投入して数時間放置することで、酵母液が得られる。乾燥植物を投入するぬるま湯には、砂糖を添加してもよい。得られる酵母液は、パンをこねる水の一部として使用することができる。酵母の種類によっては、酒類の製造に使用することも可能である。
【実施例】
【0056】
以下、実施例によって本発明の効果が明らかにされるが、この実施例の記載に基づいて本発明が限定的に解釈されるべきではない。なお、以下の実施例において、特に言及しない限り、淡水生生物の培養は全て室内(25℃±5℃)でおこなったものである。また、以下の試験では汲み置き水を用いたが、通常の水(例えば水道水)でも同様の結果を得ることができる。
【0057】
[実施例1]
始めに、適量の水道水を容器に汲み取り、半日以上太陽光に曝すことにより、汲み置き水を準備した。続いて、容量10Lの容器に、長さ1~3cmに切断した稲わら1把と、この稲わらが浸る程度の量の汲み置き水とを投入して、5~10分間煮沸した。得られた濃褐色の煮沸液から、約2/3量の稲わらを取り出して、室温で自然乾燥させた。
【0058】
次に、約1/3量の稲わらを含む煮沸液を室温に冷却した後、その色が濃褐色から薄茶色になるまで、汲み置き水で希釈することにより、培養液を得た。
【0059】
培養工程では、培養用の水槽に、深さ1~5cmとなる量の培養液を投入し、野外で採取したクロレラ(Chlorella)を添加した。室温下で7日間静置して、稲わらの存在下で、クロレラを培養した。培養中、クロレラの増殖状態を顕微鏡で観察した。培養液中でクロレラが高密度に増殖するまで、培養を継続した。
【0060】
次に、クロレラが高密度に増殖した水槽に、煮沸処理して乾燥させた稲わらを投入し、数分間十分に撹拌した。水槽中の培養液の一部は、投入した稲わらに吸収された。
【0061】
乾燥工程では、水槽から全ての稲わらを取り出し、軽く水を切った後、直射日光を避けて、室温下で送風して乾燥させた。これにより、淡水生生物含有乾燥植物(1)を得た。淡水生生物含有乾燥植物(1)には、乾燥状態のクロレラが吸着されていることを確認した。
【0062】
[実施例2-4]
淡水生生物として、ミジンコ(Daphnia)、タマミジンコ(Moinidae)、カワリヌマエビ(Neocaridina)及びスジエビ(Palaemon paucidens)を使用した以外は、実施例1の製造方法と同様にして、それぞれ、淡水生生物含有乾燥植物(2)-(4)を得た。淡水生生物含有乾燥植物(2)-(4)には、ミジンコ、タマミジンコ、カワリヌマエビ及びスジエビがそれぞれ培養工程で産生した卵が、乾燥状態で吸着されていることを確認した。
【0063】
[実施例5-6]
淡水生生物として、アマゾンソードプラント(Echinodorus amazonicus)及びミズキャラハゴケ(Taxiphyllum barbieri)を使用した以外は、実施例1の製造方法と同様にして、それぞれ、淡水生生物含有乾燥植物(5)-(6)を得た。淡水生生物含有乾燥植物(5には、アマゾンソードプラントのランナー(脇芽)が、乾燥状態で活着されていることを確認した。淡水生生物含有乾燥植物(6)には、乾燥状態のミズキャラハゴケ(成体)が活着されていることを確認した。
【0064】
[実施例7]
実施例7では、実施例1と同様にして培養工程をおこなった後、乾燥工程前に、濃縮工程をおこなった。濃縮工程では、培養工程後の培養液(稲わらを含む)を濾過して、その容量が約1/2になるまで濃縮した。その後、実施例1と同様にして乾燥工程を行うことにより、淡水生生物含有乾燥植物(7)を得た。
【0065】
[実施例8]
実施例8では、実施例1と同様にして、培養工程及び乾燥工程をおこなった後、再培養工程をおこなった。
【0066】
再培養工程では、実施例1と同様にして得た淡水生生物含有乾燥植物(1)を適量の汲み置き水に投入して、室温で静置した。顕微鏡観察により、クロレラが増殖していることを確認した後、再度、乾燥工程をおこなった。その後、再培養工程及び乾燥工程を5回繰り返すことにより、淡水生生物含有乾燥植物(8)を得た。
【0067】
[実施例9]
実施例9では、実施例8と同様にして培養工程及び乾燥工程をおこない、再培養工程及び乾燥工程を各5回繰り返した後、希釈海水培養工程をおこなった。
【0068】
希釈海水培養工程では、実施例8と同様にして得た淡水生生物含有乾燥植物(8)を、8倍希釈した希釈海水に投入して、2日間室温で静置した。その後、原液である海水を、所定量添加して、4倍希釈、3倍希釈、2.5倍希釈、2.2倍希釈及び2倍希釈の希釈海水中で、各2日間ずつ培養をおこなった。顕微鏡観察により、クロレラが増殖していることを確認した後、再度、乾燥工程をおこなうことにより、淡水生生物含有乾燥植物(9)を得た。
【0069】
[比較例1]
比較例1では、稲わらを含まない培養液を用いてクロレラを培養した。その後、増殖したクロレラを含む培養液を自然乾燥させることにより、乾燥クロレラを得た。
【0070】
(培養試験1)
実施例1-8で得た淡水生生物含有乾燥植物(1)-(8)と、比較例1で得た乾燥クロレラとを、室温下、直射日光を避けて、大気中に3週間保存した後、適量の汲み置き水に投入して、7日間室温で静置した。その結果、淡水生生物含有乾燥植物(1)-(8)では、それぞれ、淡水生生物が蘇生、孵化又は発芽して増殖した。一方、比較例1の乾燥クロレラでは、蘇生及び増殖が確認されなかった。
【0071】
(培養試験2)
実施例9で得た淡水生生物含有乾燥植物(9)を、適量の希釈海水(希釈倍率2倍)に投入して、7日間室温で静置した。その結果、淡水生生物が蘇生して増殖していることを確認した。
【0072】
[実施例10]
始めに、前述した汲み置き水と市販のレーズンとを準備した。レーズンがひたひたに浸る程度の量の水にレーズンを投入して、培養液とした。この培養液にパン酵母を投入し、適宜撹拌しながら、約35℃で7日間培養して、パン酵母を増殖させた。その後、約35℃に保温しつつ、適宜撹拌しながら、約1日送風乾燥させることにより、実施例10の淡水生生物含有乾燥植物(10)を得た。
【0073】
次に、少量の淡水生生物含有植物(10)に、適量の水と砂糖とを投入し、適宜撹拌しながら、約35℃で約1日間静置した。その結果、淡水生生物含有乾燥植物(10)に付着した酵母が蘇生して増殖したことを確認した。
【産業上の利用可能性】
【0074】
以上説明された方法は、蘇生可能な種々の有用水生生物を含む乾燥植物の製造にも適用されうる。