(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-18
(45)【発行日】2024-11-26
(54)【発明の名称】鉛蓄電池
(51)【国際特許分類】
H01M 4/14 20060101AFI20241119BHJP
H01M 4/62 20060101ALI20241119BHJP
【FI】
H01M4/14 Q
H01M4/62 B
(21)【出願番号】P 2021038820
(22)【出願日】2021-03-11
【審査請求日】2023-11-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000005382
【氏名又は名称】古河電池株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【氏名又は名称】宮坂 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【氏名又は名称】森 哲也
(72)【発明者】
【氏名】赤阪 有一
【審査官】福井 晃三
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-016971(JP,A)
【文献】特開2001-332264(JP,A)
【文献】国際公開第2020/066764(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/077657(WO,A1)
【文献】特開2020-115424(JP,A)
【文献】特開2001-035486(JP,A)
【文献】特開2008-243489(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/00- 4/62
H01M 10/00-10/04
H01M 10/06-10/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
負極活物質、炭素材料、及びナトリウムイオンを含む負極合剤を備えた負極板を有する鉛蓄電池であって、
前記負極合剤の比表面積S(m
2/g)に対する、前記炭素材料の比表面積C(m
2/g)と前記負極活物質に対する前記炭素材料の添加量の割合F(質量%)との積CFが、次式(1)の関係を満たし、
0.3 ≦ CF/S ≦ 5.0 ・・・・・・(1)
且つ、前記負極合剤中のナトリウムイオンの量が20ppm以上220ppm以下であることを特徴とする鉛蓄電池。
【請求項2】
前記負極活合剤中に含まれる前記炭素材料が2種類以上であることを特徴とする請求項1に記載の鉛蓄電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉛蓄電池に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境負荷低減のため、車両には充電制御システムやアイドリングストップシステムなど、ガソリン消費を抑制する制御システムが標準的に搭載されるようになった。
上述の制御システムにより、鉛蓄電池はしばしば部分充電状態(以下、Partial State of Chargeの頭文字をとって「PSOC」とも呼ぶ)で運用される。PSOCでは電解液の電気分解に伴うガス発生と、それによる電解液の撹拌が生じにくい。結果として電解液の成層化が十分に抑制できず、鉛蓄電池は短寿命に至りやすくなる。成層化に起因する劣化プロセスとして、例えば、正極板では極板下部の活物質の軟化や脱落、格子腐食が生じ、負極板では極板下部で不働態の硫酸鉛結晶が肥大化するサルフェーションが生じて放電容量が低下する。係る劣化が進行すると、鉛蓄電池の内部抵抗が増大し、エンジン始動に必要な大電流が取り出しにくくなるため、始動性の低下を招く。
【0003】
PSOC運用下でも優れた性能を発揮する鉛蓄電池として、出願人は、特許文献1に開示されるように、電解液中にアルミニウムイオンが添加された鉛蓄電池を提案している。電解液中にアルミニウムイオンが添加された鉛蓄電池は、優れた充電受入性を有し、成層化およびサルフェーションが抑制されるため、始動性にも優れている。
しかし、昨今の環境負荷低減に対する需要は高まる一方である。車両の制御システムが頻繁にエンジンを停止させることでガソリン消費を規制すると、エンジンと接続したオルタネータによって充電される鉛蓄電池は、より低いPSOCでの運用に至りやすく、より高い充電受入性が求められるようになる。
【0004】
特許文献2では、低温ハイレート性能(すなわち低温下でのエンジン始動性)および充電受入性能を損なうことなく、PSOC寿命性能を高めるために、粒子径や粉体抵抗の異なる2種類の炭素材料を負極に含有させた鉛蓄電池が提案されている。
【0005】
他方、タイやインドといった熱帯地域でも、充電制御システムやアイドリングストップシステムを搭載した車両が普及しつつある。上記のような熱帯地域では、鉛蓄電池が搭載されるエンジンルームが高温になりやすいため、電解液中の水分が蒸発しやすく、電解液の減少(「減水」とも呼ぶ)量が増える傾向がある。
減水の進行は、鉛蓄電池の短寿命化を加速する。例えば、電解液の比重が増大するため、正極板では極板下部の活物質の軟化や脱落、格子腐食が生じやすくなる。一方、負極板ではサルフェーションの進行がより顕著になる。そして係る劣化防止のため、ユーザーは頻繁な電解液の補充作業(「補水」とも呼ぶ)を強いられる。
【0006】
したがって、鉛蓄電池の長寿命化を図るとともに、メンテナンスフリー化によるユーザーの利便性を向上するには、高い耐減水性が必要となる。ところが、前述の耐減水性は、充電受入性とはトレードオフの関係にある。すなわち、充電受け入れ性を向上する比表面積の高いカーボンが添加された鉛蓄電池は、電気分解によって減水が進行しやすい難点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特許第4799560号公報
【文献】WO2018/199124号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明者が検討した結果、特許文献2に記載の鉛蓄電池のように、粒子径や粉体抵抗の異なる2種類の炭素材料を負極に含有させただけでは、始動性と充電受入性を両立できても、耐減水性が不十分であることがわかった。
上記事情を鑑み、本発明は、始動性を確保しつつ、より高い充電受入性と耐減水性を有する鉛蓄電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
係る課題を解決するため、本発明の鉛蓄電池は、負極活物質、炭素材料、及びナトリウムイオン含む負極合剤を備えた負極板を有する鉛蓄電池であって、負極合剤の比表面積S(m2/g)に対する、炭素材料の比表面積C(m2/g)と負極合剤に対する炭素材料の添加量の割合F(質量%)との積CFが、次式(1)を満たし、且つ、負極合剤中のナトリウムイオンの量が20ppm以上220ppm以下であることを特徴とする。
0.3 ≦ CF/S ≦ 5.0 ・・・・・・(1)
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、始動性を確保しつつ、より高い充電受入性と耐減水性を有する鉛蓄電池が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明の一つの実施形態に係る鉛蓄電池について詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
〔負極合剤〕
負極合剤は、負極活物質と、炭素材料と、添加剤と、必要に応じて添加される補強材及び防縮剤とを含む。負極合剤は、化成後において比表面積S(m2/g)を有する。
負極活物質は、充放電反応に使用される物質であって、鉛蓄電池が完全に充電された状態においては、主として海綿状の金属鉛からなる。
【0012】
炭素材料は、カーボンブラックや黒鉛、活性炭、気相成長炭素繊維、カーボンナノチューブ、フラーレン、その他公知の炭素材料から選択できる。炭素材料は種類や粒子形状、粒子径、比表面積C(m2/g)、表面官能基等の種々のパラメータによって、添加後における負極板の導電性、キャパシタ容量など電池性能に及ぼす影響が異なる。また、炭素材料は製造時の負極合剤ペーストの硬さや流動性にも影響し、過剰添加した場合には、負極合剤ペーストの流動性を低下させ、著しい製造性の悪化をもたらすこともある。係る炭素材料の添加比率は、負極活物質に対する炭素材料の添加量の割合F(質量%)で定量化される。
【0013】
補強材は、主として負極合剤の形状を保持することを目的として添加される短繊維等を指し、例えばアクリルやポリプロピレンの短繊維が好適である。
防縮剤は、負極合剤の収縮を抑制し、低温始動性を損なわないために添加される添加物を指し、例えば硫酸バリウムやリグニンスルホン酸ナトリウム(「リグニン」とも呼ぶ)、合成防縮剤などが好適である。
本発明の負極板に用いられる負極合剤は、化成後の状態で、次式(1)の条件を満たす。
0.3 ≦ CF/S ≦ 5.0 ・・・・・・(1)
【0014】
本願の発明者は、負極合剤の比表面積S(m2/g)に対する、炭素材料の比表面積C(m2/g)と負極活物質に対する炭素材料添加量の割合F(質量%)との積CFの比CF/Sの値が上記範囲であるとき、低いPSOCで運用された場合であっても、始動性が損なわれず、充電受入性と耐減水性のバランスが優れた鉛蓄電池が提供されることを見出した。CF/Sが0.3未満の場合、耐減水性は比較的高いものの負極活物質の導電性が不足し、充電受入性が低い。一方、5.0を超えると、充電受入性が高いが耐減水性が低下する。
【0015】
さらに発明者が研究を重ねたところ、式(1)を満たす負極合剤を有する鉛蓄電池において、負極合剤中のナトリウムイオンの量が20ppm以上220ppm以下であると、より優れた耐減水性がもたらされることが分かった。負極合剤中のナトリウムイオンが20ppm未満の場合、耐減水性を抑制する効果は低い。220ppmを越えると、耐減水性を抑制する効果が飽和するばかりか、充電受入性が低下する。理由は定かではないが、負極合剤に添加されたナトリウムイオンが、充放電中に負極板の水素過電圧を増大させ、水素発生を抑制することで、電気分解の過剰な進行を抑制するのではないか考えられる。例えば、電解液中のナトリウムイオンは充電受入性を低下させることが知られており(GSユアサテクニカルレポート、p22~28、第8巻第2号2011年)、負極合剤中のナトリウムイオンも、その量によっては充電受入性を低下させるのではないかと推測される。
【0016】
炭素材料は、2種類以上を組み合わせて選択しても良い。その場合、CF/Sは各カーボンの合計となる。例えば、炭素材料Aと炭素材料Bの2種類の炭素材料を選択した場合は以下のような式(2)の条件を持たすものとする。
0.3 ≦ (CA×FA+CB×FB)/S ≦ 5.0 ・・・・・・(2)
なお、上記の式(2)において、それぞれの符号の意味は下記の通りである。
CA:炭素材料Aの比表面積(m2/g)
CB:炭素材料Bの比表面積(m2/g)
FA:炭素材料Aの負極活物質に対する添加量の割合(質量%)
FB:炭素材料Bの負極活物質に対する添加量の割合(質量%)
S:負極合剤の比表面積S(m2/g)
【0017】
負極合剤の比表面積Sおよび炭素材料の比表面積Cは、BET比表面積を採用するものとする。BET比表面積とは、BET法で測定する比表面積であって、一つの分子の大きさが既知の不活性ガス(例えば窒素ガス)を測定試料の表面に吸着させ、その吸着量と不活性ガスの占有面積とから表面積を求める方法であって、比表面積の一般的な測定手法である。負極合剤の比表面積SはJIS Z 8830:2013に規定される手順に従って測定される。また、炭素材料の比表面積Cは、JIS K 6217-7:2013に規定される手順に従って測定される。
【0018】
負極合剤中のナトリウムイオンの量は、ICP発光分析によって測定した。ICP発光分析とは、プラズマのエネルギーを与えることによって励起された成分元素から放出される発光量を測定し、成分元素の含有量を求める一般的な分析法である。本発明において、負極合剤中のナトリウムイオンの量は、JIS K 0116:2014に規定される手順に従って測定される。負極合剤中へのナトリウムイオンの導入方法としては、負極ペースト中にナトリウムイオン源として硫酸ナトリウムやリグニンスルホン酸ナトリウム等のナトリウム化合物を添加する方法や、電解液として注液される希硫酸中にナトリウム化合物を添加する方法などが考えられる。
【実施例】
【0019】
以下に、実施例および比較例を示して、本発明を更に具体的に説明する。言及のない手順や構成については、従来公知の技術から任意に選択して良い。
<実施例1~3及び比較例1、2>
初めに、実施例1の鉛蓄電池の作製方法について、正極板の作製から順に説明する。正極板は、正極集電体と正極合剤とを有し、正極合剤は正極集電体に保持される。正極集電体は、鉛合金からなる板状格子体と耳とを有し、重力鋳造法等によって作製される。実施例1において、平面視において略長方形である板状格子体には、長方形の四辺をなす枠骨と、枠骨によって囲繞される複数本の内骨とを形成した。そして、長方形の一辺をなす枠骨には、面方向外側へ突出するようにして耳を形成した。説明の便宜上、当該耳を有する枠骨を上枠骨、上枠骨と平行な枠骨を下枠骨、上枠骨と下枠骨の左右の端部をそれぞれ接続する互いに平行な枠骨を左枠骨および右枠骨と呼称する。内骨は、上枠骨と下枠骨とを接続する縦桟と、左枠骨と右枠骨とを接続する横桟とを形成した。枠骨と内骨とによって、板状格子体には複数の開口部が形成されている。
【0020】
正極合剤は、化成後の充電状態において、正極活物質として二酸化鉛を含む。化成前の正極合剤のペースト(以下、正極ペーストという。)は、一酸化鉛を主成分とする鉛粉と鉛丹、補強材としてのポリエステル繊維のカットファイバー、酸化ビスマスを含有した化合粒とを混合(以下、乾式混合と称する)し、次いで、水を添加し練合わせ(以下、水練りと称する)、その後、希硫酸を添加して、再度練合わせて(以下、酸練りと称する)作製した。得られた正極ペーストをJIS-Bサイズ用に重力鋳造法で作成した正極集電体(約50g/枚、厚み約1.3mm)に充填し、希硫酸を所定の圧力で極板表面に均一に噴霧した後、予熱乾燥炉を通過させた。その後、所定の条件にて熟成乾燥を行い、正極熟成板を得た。
【0021】
負極板は、負極集電体と負極合剤とを有し、負極合剤は負極集電体に保持される。負極集電体は、正極集電体と同様に、枠骨と内骨とを有する板状格子体と、耳とを有し、連続鋳造法等によって製造される。負極合剤は、化成後の充電状態において、負極活物質として金属鉛(海綿状鉛など)を含む。化成前の負極合剤のペースト(以下、負極ペーストという。)は、一酸化鉛を主成分とする鉛粉に加え、補強材としてのポリエステル繊維のカットファイバー、防縮剤としての硫酸バリウム及びリグニン(リグニンスルホン酸ナトリウム)、導電材となる炭素材料としてケッチェンブラック、添加剤としての硫酸ナトリウムを乾式混合し、次に、水練り、その後、酸練りを行い、作製した。得られた負極ペーストをJIS-Bサイズ用の連続鋳造基板基板(約40g/枚、厚み約1.0mm)に連続充填し、予熱乾燥炉を通過させた。その後、所定の条件にて熟成乾燥を行い、負極熟成板を得た。
【0022】
なお、実施例1では、負極合剤中にナトリウムイオン源として硫酸ナトリウム及びリグニンを添加し、化成後の鉛蓄電池において、負極合剤中のナトリウムイオンの合計量が25ppmになるようにした。また、炭素材料として負極合剤中に添加したケッチェンブラックの比表面積C(BET比表面積(m2/g))は1000m2/gであり、添加量は、負極活物質量に対し0.2重量%とした。なお、負極活物質に対する炭素材料の添加量の割合F(質量%)が、電解液中への流出等によって製造過程で変化する場合は、化成後の値を採用するものとする。
【0023】
次に、負極熟成板をギアシールで袋状にしたポリエチレンセパレータにそれぞれ収納し、該正極熟成板5枚と該負極熟成板6枚とを交互に積層し組み合わせ、COS方式(キャストオンストラップ方式)で同極性の極板同士を溶接して、正極ストラップ及び負極ストラップを形成し極板群とした。正極ストラップ及び負極ストラップは、従来公知のような正極中間極柱及び負極中間極柱と、外部端子となる正極極柱及び負極極柱を有する。この極板群6つを、上方に開口したPP製(ポリプロピレン製)のモノブロックタイプの電槽のセル室に、1つずつ収納した。隣接するセル室同士は隔壁によって隔てられているが、隔壁の上部には連通口を形成し、全ての極板群が電気的に直列に接続されるように、中間極柱同士を連通口において抵抗溶接した。なお、セル室に収納する際、極板群の圧迫力は10kPaとした。続いて、電槽の開口部に、ブッシングをインサート成型した蓋を冠着させ、ヒートシールによって熱溶着し、蓋の注液口から比重1.22g/cm3の希硫酸を注入して液口栓で封止し、B20型の未化成の鉛蓄電池を得た。最後に、従来公知の方法で電槽化成を行い、化成後の比重を1.285(20℃換算値)に調整して、実施例1の鉛蓄電池を得た。
【0024】
なお、本発明において鉛蓄電池は同一の作製条件毎に6つずつ作製し、3つは電池性能試験に供し、残りの3つは化成後に解体し、比表面積の測定及び組成分析を行った。各試験及び測定、分析においては、3つの鉛蓄電池の平均値を採用した。また、同一の作製条件で得たテストセルは、同一電池性能と構成を有するものと推定した。
なお、本明細書中においては、化成を経て、正極熟成板の鉛酸化物が正極活物質に変化したものを正極板と呼び、負極熟成板の鉛酸化物が負極活物質に変化したもの負極板と呼ぶ。当該活物質の化学組成および合剤の比表面積等の機械的構造は充電状態によって変化するが、特に断りのない場合は、化成後の満充電状態における組成や構造を指すものとする。
【0025】
なお、実施例2~3及び比較例2の鉛蓄電池は、負極合剤中にナトリウムイオン源として、硫酸ナトリウム及びリグニンを添加し、化成後の状態において、負極合剤中のナトリウムイオンの合計量が、105ppm、185ppm、230ppmになるようにしたこと以外は、実施例1の鉛蓄電池と同一である。また、比較例1の鉛蓄電池は、負極合剤中にナトリウムイオンを導入するためのイオン源として、リグニンのみを添加し、硫酸ナトリウムは添加していない。比較例1の鉛蓄電池において、リグニンの添加量は、化成後の状態において、負極合剤中のナトリウムイオンの量が15ppmとなるように調整した。化成後の負極合剤中のナトリウムイオンの量を除き、比較例1の鉛蓄電池は実施例1の鉛蓄電池と同一である。
実施例1~3及び比較例1、2について、化成後の負極合剤の比表面積S(BET比表面積(m2/g))は、0.8m2/gであり、CF/Sの値は2.5であった。
【0026】
<比較例3~比較例7>
負極合剤中の炭素材料を比表面積Cが1177.5m2/gである高比表面積のカーボンブラックとし、添加量Fは負極活物質量に対して0.35重量%としたこと以外は、比較例3は比較例1と、比較例4は実施例1と、比較例5は実施例2と、比較例6は実施例3と、比較例7は比較例2と同様にして鉛蓄電池を作製した。比較例3~比較例7について、化成後の負極合剤の比表面積S(BET比表面積(m2/g))は、0.8m2/gであり、CF/Sの値は5.2であった。
【0027】
<比較例8~比較例12>
負極合剤中の炭素材料を比表面積Cが75.4m2/gであるアセチレンブラックと、比表面積Cが1.03m2/gである黒鉛とし、添加量Fをそれぞれ負極活物質量に対し0.2wt%、1.0wt%としたこと以外は、比較例8は比較例1と、比較例9は実施例1と、比較例10は実施例2と、比較例11は実施例3と、比較例12は比較例2と同様にして鉛蓄電池を作製した。比較例8~比較例12について、化成後の負極合剤の比表面積S(BET比表面積(m2/g))は、0.8m2/gであり、CF/Sの値は0.2であった。
【0028】
<実施例4~6及び比較例13、14>
負極合剤中の炭素材料を比表面積Cが75.4m2/gであるアセチレンブラックと、比表面積Cが1.03m2/gである黒鉛とし、添加量Fをそれぞれ負極活物質量に対し0.3wt%、1.5wt%としたこと以外は、比較例13は比較例1と、実施例4は実施例1と、実施例5は実施例2と、実施例6は実施例3と、比較例14は比較例2と同様にして鉛蓄電池を作製した。実施例4~6及び比較例13、14について、化成後の負極合剤の比表面積S(BET比表面積(m2/g))は、0.8m2/gであり、CF/Sの値は0.3であった。
【0029】
<実施例7~9及び比較例15、16>
負極活物質ペースト中の炭素材料を比表面積Cが1177.5m2/gである高比表面積のカーボンブラックと、比表面積Cが1.03m2/gである黒鉛とし、添加量Fをそれぞれ負極活物質量に対し0.3wt%、1.5wt%としたこと以外は、比較例15は比較例1と、実施例7は実施例1と、実施例8は実施例2と、実施例9は実施例3と、比較例16は比較例2と同様にして鉛蓄電池を作製した。実施例7~9及び比較例15、16について、化成後の負極合剤の比表面積S(BET比表面積(m2/g))は、0.8m2/gであり、CF/Sの値は4.4であった。
【0030】
充電受入性能を評価する試験として、欧州規格(EN規格)のBS EN 50342-6:2015に規定される「7.3 Dynamic Charge acceptance test(DCA)」を実施した。また、耐減水性を評価する試験として、BS EN 50342-1:2015に規定される「6.9 Water consumption test」を実施した。なお、DCA、耐減水性、総合判定は、比較例8の性能を100%として、それぞれ、次のように判定した。
【0031】
DCA:X(%)
X<90:×(不十分)
90≦X<110:△(普通)
110≦X<120:〇(良好)
120≦X:◎(優れている)
【0032】
耐減水性:Y(%)
100<Y:×(不十分)
90≦Y≦100:△(普通)
75≦Y<90:〇(良好)
Y<75:◎(優れている)
【0033】
総合判定
DCA判定及び減水判定の両方が◎、または、一方が◎で他方が〇の場合:◎
DCA判定及び減水判定の両方が〇の場合:〇
DCA判定及び減水判定の両方が△の場合:△
DCA判定及び減水判定の少なくともどちらか一方が×の場合:×
【0034】
試験結果と評価を表1に示す。尚、表1において、カーボンAはケッチェンブラックであり、同様に、カーボンBはアセチレンブラック、カーボンCは高比表面積のカーボンブラック、カーボンDは黒鉛である。表1においてNAMはNegative Active Materialの略であり、直接的には負極活物質を意味するが、表1においては負極合剤を指す。また、Na+はナトリウムイオンを指し、したがって表1の同欄は負極合剤中のナトリウムイオンの含有量を指す。表1から、次のことが明らかになった。
【0035】
実施例1~9の鉛蓄電池は、CF/Sが0.3以上5.0以下の範囲内であり、負極合剤中のナトリウムイオンの含有量が20ppm以上220ppm以下の範囲内であり、充電受入性と耐減水性が高いレベル両立されている。
比較例3~7の鉛蓄電池は、CF/Sが5.0を超えているため、充電受入性が高いが耐減水性が低い。
比較例1、3、8、13、15の鉛蓄電池は負極合剤中のナトリウムイオンの含有量が20ppm未満であり、減水抑制効果が低い。
比較例2、7、12、14、16の鉛蓄電池は負極合剤中のナトリウムイオンの含有量が220ppmを超えており、充電受入性が大きく低下し、耐減水性抑制効果も飽和している。
【0036】