(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-18
(45)【発行日】2024-11-26
(54)【発明の名称】作業機械
(51)【国際特許分類】
E02F 9/00 20060101AFI20241119BHJP
【FI】
E02F9/00 N
(21)【出願番号】P 2021051799
(22)【出願日】2021-03-25
【審査請求日】2024-03-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000442
【氏名又は名称】弁理士法人武和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石田 裕之
【審査官】松本 泰典
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-169519(JP,A)
【文献】実開平5-32642(JP,U)
【文献】特開2014-105497(JP,A)
【文献】特開2019-56292(JP,A)
【文献】特開2013-204379(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0308162(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンを搭載したエンジン建屋を有する車体と、
基端に設けられたヒンジを介して前記エンジン建屋に対して開閉可能に取り付けられたカバーと、
自由端である前記カバーの他端を前記エンジン建屋に対して前記エンジンを始動するための鍵によりロックするロック機構と、
前記カバーに形成された貫通穴と、
前記エンジン建屋に形成され、前記カバーが閉じられた状態で前記貫通穴と連通するナットと、
前記貫通穴に挿通され、前記ナットに螺合されて、前記エンジン建屋に対して前記カバーを締結するボルトと、
を備える作業機械において、
前記ロック機構は、
前記カバーに支持されたロック部材と、
前記エンジン建屋に支持されたストッパ部材と、
を備え、
前記ロック部材は、
前記エンジン建屋に対して前記カバーをロックするロック姿勢と、前記エンジン建屋に対する前記カバーのロックを解除する解除姿勢とを切り換えられるように構成されており、
前記ロック姿勢では、前記鍵を抜去可能な状態となり、
前記解除姿勢では、前記鍵を抜去不能な状態となり、
前記ストッパ部材は、
前記ロック部材の前記解除姿勢から前記ロック姿勢への移動を許容する許容状態、及び前記ロック部材の前記解除姿勢から前記ロック姿勢への移動を阻止する阻止状態に切り換えられるように構成され、
前記ナットに前記ボルトが螺合されることによって、前記ストッパ部材が前記許容状態に切り換わるように構成される、
ことを特徴とする作業機械。
【請求項2】
請求項1に記載の作業機械において、
前記ロック部材は、前記ロック姿勢において前記エンジン建屋に設けられた係止片に係止され、前記解除姿勢において前記係止片から離間するように、前記カバーに回動可能に支持され、
前記ストッパ部材は、
前記貫通穴及び前記ナットに螺合された前記ボルトが当接する当接部と、
前記阻止状態において前記係止片及び前記解除姿勢の前記ロック部材の間に介在し、前記許容状態において前記係止片及び前記解除姿勢の前記ロック部材の間から外れる阻止部とを有し、
前記当接部及び前記阻止部の間を回動中心として、前記エンジン建屋に回動可能に支持されていることを特徴とする作業機械。
【請求項3】
請求項2に記載の作業機械において、
前記ストッパ部材は、前記ボルトが前記当接部から離間することによって自重で前記阻止状態となり、前記当接部に当接する前記ボルトによって重力に抗して前記許容状態に向けて回動されることを特徴とする作業機械。
【請求項4】
請求項2に記載の作業機械において、
前記ロック機構は、前記ストッパ部材を前記阻止状態に向けて付勢する付勢部材を有し、
前記ストッパ部材は、前記当接部に当接する前記ボルトによって、前記付勢部材の付勢力に抗して前記許容状態に向けて回動されることを特徴とする作業機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、開閉可能なカバーを備える作業機械に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ヒンジを介して車体に取り付けられたカバーを開けることによって、車体の内部(例えば、エンジン建屋内)にアクセス可能な作業機械が知られている。このような作業機械では、安全上の観点からエンジンを始動した状態でカバーを開放したり、カバーを開けたまま作業機械を動作させることを防止する必要がある。
【0003】
このような課題を解決するために、特許文献1には、エンジンを始動するための鍵と、カバーを開閉するための鍵とを共通化し、カバーを閉じなければ鍵をカバーから抜くことができないロック装置を備えた作業機械が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、特許文献1に記載のカバーは、側端縁の一方がヒンジを介して車体に接続され、他方が着脱可能なボルトで車体に締結される構造となっている。しかしながら、特許文献1のロック装置では、車体とカバーとをボルトで締結しなくても鍵をカバーから抜くことができる。この場合、カバーはヒンジとロック装置とで支持される。しかしながら、ロック装置は、本来、カバーを車体にロックするためのものであり、カバーを支持するためのものではない。
【0006】
そのため、車体に対してカバーをボルトで締結せずにヒンジとロック装置のみで接続された状態で、作業機械を動作させると、ヒンジを基点にカバーが振動し、ヒンジに大きな負荷が作用することになる。特に、大型の作業機械ではカバーの重量が10kgを超えることもあり、ヒンジの負荷が非常に大きくなる。
【0007】
本発明は、上記した実状に鑑みてなされたものであり、その目的は、車体に対して開閉可能なカバーを備える作業機械において、作業機械の動作時にカバーを適切に支持する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は、エンジンを搭載したエンジン建屋を有する車体と、基端に設けられたヒンジを介して前記エンジン建屋に対して開閉可能に取り付けられたカバーと、自由端である前記カバーの他端を前記エンジン建屋に対して前記エンジンを始動するための鍵によりロックするロック機構と、前記カバーに形成された貫通穴と、前記エンジン建屋に形成され、前記カバーが閉じられた状態で前記貫通穴と連通するナットと、前記貫通穴に挿通され、前記ナットに螺合されて、前記エンジン建屋に対して前記カバーを締結するボルトと、を備える作業機械において、前記ロック機構は、前記カバーに支持されたロック部材と、前記エンジン建屋に支持されたストッパ部材と、を備え、前記ロック部材は、前記エンジン建屋に対して前記カバーをロックするロック姿勢と、前記エンジン建屋に対する前記カバーのロックを解除する解除姿勢とを切り換えられるように構成されており、前記ロック姿勢では、前記鍵を抜去可能な状態となり、前記解除姿勢では、前記鍵を抜去不能な状態となり、前記ストッパ部材は、前記ロック部材の前記解除姿勢から前記ロック姿勢への移動を許容する許容状態、及び前記ロック部材の前記解除姿勢から前記ロック姿勢への移動を阻止する阻止状態に切り換えられるように構成され、前記ナットに前記ボルトが螺合されることによって、前記ストッパ部材が前記許容状態に切り換わるように構成される、ことを特徴とする作業機械。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、車体に対して開閉可能なカバーを備える作業機械において、作業機械の動作時にカバーを適切に支持することができる。なお、上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本実施形態に係るホイールローダの側面図である。
【
図2】リアカバーが閉じた状態(A)及び開いた状態(B)を示す斜視図である。
【
図3】ロックリンクが解除姿勢で、ストッパブロックが阻止状態で、ストッパリンクが阻止状態のロック機構を示す斜視図である。
【
図4】ロックリンクが解除姿勢で、ストッパブロックが許容状態で、ストッパリンクが阻止状態のロック機構を示す斜視図である。
【
図5】ロックリンクが解除姿勢で、ストッパブロックが許容状態で、ストッパリンクが許容状態のロック機構を示す斜視図である。
【
図6】ロックリンクがロック姿勢で、ストッパブロックが許容状態で、ストッパリンクが許容状態のロック機構を示す斜視図である。
【
図7】ストッパリンクの阻止状態(A)及び許容状態(B)を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、本発明に係るホイールローダ10の実施形態について説明する。なお、本明細書中の前後左右は、特に断らない限り、ホイールローダ10に搭乗して操作するオペレータの視点を基準としている。なお、作業機械の具体例はホイールローダ10に限定されず、油圧ショベル、ダンプトラック、クレーン等でもよい。
【0012】
図1は、本実施形態に係るホイールローダ10の側面図である。
図1に示すように、ホイールローダ10は、前フレーム11と後フレーム12とで構成される車体を有する。前フレーム11と後フレーム12とは、センタピン13によって、左右方向に回転可能に連結されている。また、前フレーム11と後フレーム12とは、左右一対のステアリングシリンダ14L、14Rによって接続されている。一対のステアリングシリンダ14L、14Rは、油圧ポンプ(図示省略)から作動油の供給を受けて伸縮する。
【0013】
一対のステアリングシリンダ14L、14Rのうち一方を伸長、他方を縮退させることにより、センタピン13を中心として前フレーム11が後フレーム12に対して左右方向に屈曲する。これにより、前フレーム11と後フレーム12との相対的な取付角度が変化し、車体が屈曲して換向する。すなわち、このホイールローダ10は、センタピン13を中心に前フレーム11と後フレーム12とが屈曲されるアーティキュレート式である。
【0014】
前フレーム11は、左右一対の前タイヤ15L、15Rと、フロント作業機16とを支持している。フロント作業機16は、左右一対のリフトアーム17L、17Rと、バケット18と、一対のリフトアームシリンダ(図示省略)と、バケットシリンダ19と、ベルクランク20とで構成される。
【0015】
一対のリフトアーム17L、17Rは、ホイールローダ10の幅方向(左右方向)に離間して前フレーム11に取付られている。また、左右一対のリフトアーム17L、17Rは、前後方向に延設されている。より詳細には、一対のリフトアーム17L、17Rは、前端がバケット18に回動可能に連結され、後端が前フレーム11に回動可能に連結されている。そして、一対のリフトアーム17L、17Rは、一対のリフトアームシリンダの伸縮によって上下方向に回動(俯仰動)する。
【0016】
バケット18は、荷物(土砂など)を収容可能な凹形状の空間を有する。また、バケット18は、一対のリフトアーム17L、17Rの前端において、起伏(クラウドまたはダンプ)可能に支持されている。より詳細には、バケット18は、バケットシリンダ19の伸縮に伴ってベルクランク20が回動することによって、上下方向に回動する。
【0017】
後フレーム12は、左右一対の後タイヤ21L、21Rと、キャブ22と、エンジン建屋23とを支持している。
【0018】
キャブ22には、ホイールローダ10を操作するオペレータが搭乗する内部空間が形成されている。キャブ22の内部には、オペレータが着席するシート(図示省略)と、シートに着席したオペレータが操作する操作装置(図示省略)が配置されている。キャブ22に搭乗したオペレータが操作装置を操作することによって、ホイールローダ10が走行し、フロント作業機16が動作する。
【0019】
また、キャブ22には、キーシリンダと、キーシリンダの奥にエンジン29aを始動させるためのイグニッションスイッチとが配置されている。そして、オペレータがキーシリンダに鍵31aを挿入して回転させることによって、イグニッションスイッチの状態(START、ON、OFF)が切り換えられる。
【0020】
イグニッションスイッチがOFFからSTARTに切り換えられると、エンジン29aが始動する。また、イグニッションスイッチがSTARTからONに切り換えられると、エンジン29aの駆動が継続すると共に、ホイールローダ10の各部に電力が供給される。さらに、イグニッションスイッチがONからOFFに切り換えられると、エンジン29aが停止する。
【0021】
また、キーシリンダは、イグニッションスイッチがSTART、ONのときに鍵31aの抜去を阻止し、イグニッションスイッチがOFFのときに鍵31aの抜去を許容する構成になっている。すなわち、鍵31aは、エンジン29aが駆動しているときにキーシリンダから抜去不能で、エンジン29aが停止しているときにキーシリンダから抜去可能になっている。
【0022】
エンジン建屋23は、キャブ22の後方に配置されている。エンジン建屋23は、一対のサイドカバー24L、24Rと、トップカバー25と、リアカバー26とで囲まれた内部空間を有する。一対のサイドカバー24L、24Rは、左右方向に離間して立設されて、エンジン建屋23の左右方向の端部を画定する。トップカバー25は、一対のサイドカバー24L、24Rの上端にかけ渡されて、エンジン建屋23の上端を画定する。リアカバー26は、一対のサイドカバー24L、24R及びトップカバー25の後端にかけ渡されて、エンジン建屋23の後端を画定する。また、サイドカバー24L、24R及びリアカバー26には、通気用の開口が設けられている。
【0023】
図2は、リアカバー26が閉じた状態(A)及び開いた状態(B)を示す斜視図である。
図2に示すように、リアカバー26は、エンジン建屋23(サイドカバー24L)に対して開閉可能に取り付けられている。より詳細には、リアカバー26は、右端(水平方向の一端=基端)がヒンジ27を介してサイドカバー24Rに取り付けられている。すなわち、リアカバー26は、右端を回動基端として水平方向に回動することによって、リアカバー26の左端(水平方向の他端=自由端)がサイドカバー24Lに対して接離する。換言すれば、リアカバー26は、リアカバー26の右端において上下方向に延びる回動軸線周りに回動する。また、
図2(A)に示すように、リアカバー26が閉じられた状態において、リアカバー26の左端は、ボルト28a、28bによってサイドカバー24Lに締結される。
【0024】
なお、
図2(B)にはヒンジ27が1箇所だけ図示されているが、上下方向に離間した複数の位置にヒンジ27が設けられていてもよい。また、
図2(A)では、上下方向に離間した2箇所にボルト28a、28bが取り付けられているが、ボルト28a、28bの数はこれに限定されない。
【0025】
図1及び
図2(B)に示すように、エンジン建屋23の内部には、エンジン29a、ラジエータ29b、及び冷却ファン29cが収容されている。また図示は省略するが、エンジン建屋23の内部には、排気ガスを浄化する浄化装置、フロント作業機16を動作させる油圧回路(例えば、作動油タンク、油圧ポンプ)などが収容されている。そして、
図2(B)に示すように、リアカバー26を開放することによって、エンジン建屋23の内部に収容された部品にアクセス(例えば、メンテナンス)することができる。
【0026】
エンジン29aは、ホイールローダ10を動作させるための駆動力を発生させる。エンジン29aの駆動力が伝達されることによって、前タイヤ15L、15R及び後タイヤ21L、21Rが回転する。これにより、ホイールローダ10が走行する。ラジエータ29bは、エンジン29aに冷却液を供給し、エンジン29aから還流した冷却液を冷却風と熱交換させる。冷却ファン29cは、エンジン29aの駆動力によって回転して、ラジエータ29bに冷却風を供給する。
【0027】
さらに、エンジン建屋23には、ロック機構30が設けられている。ロック機構30は、エンジン29aを始動するための鍵31aによって、リアカバー26の左端をサイドカバー24Lに対してロックするものである。すなわち、ロック機構30がロック状態になると、サイドカバー24Lに対してリアカバー26が開放できなくなる(換言すれば、閉じた状態が維持される。)。一方、ロック機構30が非ロック状態になると、サイドカバー24Lに対してリアカバー26が開放できるようになる。
【0028】
図3~
図6は、エンジン建屋23の内部からロック機構30を見た斜視図である。
図3は、ロックリンク33が解除姿勢で、ストッパブロック34が阻止状態で、ストッパリンク49が阻止状態のロック機構30を示す斜視図である。
図4は、ロックリンク33が解除姿勢で、ストッパブロック34が許容状態で、ストッパリンク49が阻止状態のロック機構30を示す斜視図である。
図5は、ロックリンク33が解除姿勢で、ストッパブロック34が許容状態で、ストッパリンク49が許容状態のロック機構30を示す斜視図である。
図6は、ロックリンク33がロック姿勢で、ストッパブロック34が許容状態で、ストッパリンク49が許容状態のロック機構30を示す斜視図である。
図7は、ストッパリンク49の阻止状態(A)及び許容状態(B)を示す側面図である。
【0029】
図3~
図7に示すように、ロック機構30の構成要素は、リアカバー26と、サイドカバー24Lとに分散配置されている。リアカバー26側に配置されたロック機構30の構成要素は、錠31と、台座32と、ロックリンク33(ロック部材)と、ストッパブロック34と、ストッパプレート35と、貫通穴36と、操作アーム44と、連結ピン45とを含む。サイドカバー24L側に配置されたロック機構30の構成要素は、ナット46と、係止片47と、当接片48と、ストッパリンク49(ストッパ部材)とを含む。また、ロック機構30は、着脱可能なボルト28b及び鍵31aを含む。
【0030】
錠31は、鍵31aが挿入されて回動することによって、施錠状態と開錠状態とに状態変化する。すなわち、ロック機構30の錠31は、エンジン29aを始動させるためのキーシリンダと共通の鍵31aによって状態変化する。さらに、鍵31aは、キャブ22の扉を開錠及び施錠するためのものであってもよい。
【0031】
錠31が施錠状態に状態変化することによって、ロック機構30がロック状態となる。一方、錠31が開錠状態に状態変化することによって、ロック機構30が非ロック状態となる。また、施錠状態の錠31は鍵31aを抜去可能にし、開錠状態の錠31は鍵31aを抜去不能に保持する。すなわち、鍵31aは、ロック機構30がロック状態のときに錠31から引き抜くことができ、ロック機構30が非ロック状態のときに錠31から引き抜くことができない。
【0032】
台座32は、錠31に対面する位置において、リアカバー26の内面に固定されている。台座32は、錠31に挿入された鍵31aの回動軸線の延長線上において、ロックリンク33を回転可能に支持する。より詳細には、台座32は、ロックリンク33を回動させる支軸37を支持する。すなわち、錠31に挿入された鍵31aと、ロックリンク33とは、同一の回動軸線周りに回動する。
【0033】
ロックリンク33は、リアカバー26に直交する方向に延設された支軸37を介して、台座32(すなわち、リアカバー26)に回動可能に支持されている。リアカバー26が閉じられた状態において、支軸37は前後方向に延設される。ロックリンク33は、回動中心(支軸37)から互いに異なる向きに延設された第1アーム38及び第2アーム39を有する。換言すれば、ロックリンク33は、第1アーム38及び第2アーム39の間を回動中心として回動する。
【0034】
第1アーム38は、ストッパブロック34及びストッパプレート35によって拘束される部分である。第2アーム39は、錠31に挿入された鍵31aと連結され、ストッパリンク49によって拘束され、係止片47に係止される部分である。また、第2アーム39には、厚み方向に貫通する貫通孔40が形成されている。
【0035】
図7に示すように、錠31に挿入された鍵31aとロックリンク33とは、操作アーム44及び連結ピン45によって連結されて、互いに連動して回動する。操作アーム44は、鍵31aと共に回動する錠31の内筒から径方向外向きに延設されている。連結ピン45は、操作アーム44の先端からロックリンク33に向けて延びて、貫通孔40に挿通されている。
【0036】
これにより、ロックリンク33は、錠31に挿入された鍵31aの回動に連動して、
図3~
図5に示す解除姿勢と、
図6に示すロック姿勢との間で回動(姿勢変化)する。より詳細には、ロックリンク33は、錠31を開錠状態から施錠状態に切り換える鍵31aの回動に連動して、解除姿勢からロック姿勢に向けて回動する。また、ロックリンク33は、錠31を施錠状態から開錠状態に切り換える鍵31aの回動に連動して、ロック姿勢から解除姿勢に向けて回動する。一方、ロックリンク33の回動がストッパブロック34及びストッパリンク49によって阻止されている場合、鍵31aは、錠31を開錠状態から施錠状態に切り換える向きに回転することができない。
【0037】
ロック姿勢は、エンジン建屋23に対してリアカバー26をロックする姿勢である。ロック姿勢は、第2アーム39の後面が係止片47の前面に係止されているロックリンク33の姿勢である。このとき、リアカバー26は、閉じた状態に維持されて、開くことができない。また、ロックリンク33がロック姿勢のとき、鍵31aは錠31から抜去可能な状態となる。解除姿勢は、エンジン建屋23に対するリアカバー26のロックを解除する姿勢である。解除姿勢は、係止片47に対する第2アーム39の係止が解除されたロックリンク33の姿勢である。このとき、リアカバー26は、開くことができる。また、ロックリンク33が解除姿勢のとき、鍵31aは錠31から抜去不能な状態となる。
【0038】
ストッパブロック34は、ストッパプレート35より上方において、リアカバー26の内面に取り付けられている。ストッパブロック34は、上下方向に延びる支軸41周りに回動可能に構成されている。ストッパブロック34は、
図3に示す阻止状態と、
図4~
図6に示す許容状態との間で回動(状態変化)する。また、ストッパブロック34は、阻止部42と、当接部43とで構成される。
【0039】
阻止状態は、解除姿勢からロック姿勢に向けて回動する第1アーム38の回動軌跡に、阻止部42が配置されたストッパブロック34の状態である。すなわち、阻止状態のストッパブロック34は、ロックリンク33が解除姿勢からロック姿勢に向けて回動(移動)するのを阻止する。許容状態は、第1アーム38の回動軌跡から外れた位置に、阻止部42が配置されたストッパブロック34の状態である。すなわち、許容状態のストッパブロック34は、ロックリンク33が解除姿勢からロック姿勢に向けて回動(移動)するのを許容する。
【0040】
また、当接部43は、開かれたリアカバー26を閉じる過程において、サイドカバー24Lの当接片48の後面に当接することによって、ストッパブロック34を阻止状態から許容状態に回動させる。一方、阻止部42は、閉じられたリアカバー26を開く過程において、サイドカバー24Lの当接片48の前面に当接することによって、ストッパブロック34を許容状態から阻止状態に回動させる。すなわち、ストッパブロック34は、ロックリンク33が解除姿勢からロック姿勢に向けて回動するのを、リアカバー26が開いた状態で阻止し、リアカバー26が閉じた状態で許容する。
【0041】
ストッパプレート35は、ストッパブロック34より下方において、リアカバー26の内面に取り付けられている。そして、ストッパプレート35は、第1アーム38に下側から当接して、解除姿勢のロックリンク33がさらに回動するのを阻止する。
【0042】
貫通穴36は、リアカバー26の左端において、リアカバー26を厚み方向に貫通する。ナット46は、閉じられたリアカバー26の貫通穴36に連通する位置において、サイドカバー24Lに形成されている。そして、ボルト28bが貫通穴36に挿通され且つナット46に螺合されることによって、サイドカバー24Lに対してリアカバー26が締結される。また、貫通穴36に挿通され且つナット46に螺合されたボルト28bは、ヒンジ27と共にリアカバー26を支持する。さらに、貫通穴36に挿通され且つナット46に螺合されたボルト28bは、ナット46を通じてエンジン建屋23の内部にまで延設される。
【0043】
係止片47は、ロック姿勢のロックリンク33の第2アーム39を係止する位置で、且つ解除姿勢のロックリンク33の第2アーム39から離間する位置において、サイドカバー24Lに固定されている。当接片48は、開かれたリアカバー26が閉じる過程で当接部43に当接し、閉じられたリアカバー26が開く過程で阻止部42に当接する位置において、サイドカバー24Lに固定されている。
【0044】
ストッパリンク49は、解除姿勢のロックリンク33の第2アーム39と係止片47との間において、サイドカバー24L(エンジン建屋23)に取り付けられている。ストッパリンク49は、サイドカバー24Lに支持されて左右方向に延びる支軸50周りに回動可能に構成されている。すなわち、リアカバー26が閉じられた状態において、ロックリンク33及びストッパリンク49は、互いに直交する支軸37、50周りに回動する。
【0045】
ストッパリンク49は、
図3、
図4、及び
図7(A)に示す阻止状態と、
図5、
図6、及び
図7(B)に示す許容状態との間で回動(状態変化)する。また、ストッパリンク49は、当接アーム51(当接部)と、押圧壁52と、阻止アーム53(阻止部)とで構成される。当接アーム51及び阻止アーム53は、回動中心(支軸50)から互いに異なる向きに延設されている。換言すれば、ストッパリンク49は、当接アーム51及び阻止アーム53の間を回動中心として回動する。
【0046】
当接アーム51は、押圧壁52を支持している。阻止状態のストッパリンク49において、当接アーム51は、貫通穴36及びナット46に対するボルト28bの挿入軌跡に押圧壁52を位置させる。また、当接アーム51は、自然状態(ボルト28bによって押圧壁52が押圧されていない状態)において、ストッパリンク49が阻止状態となるように、重心位置などが調整される。そして、ストッパリンク49は、ボルト28bによって押圧壁52が押圧されることによって、重力に抗して阻止状態から許容状態に向けて回動する。
【0047】
阻止状態は、解除姿勢からロック姿勢に向けて回動する第2アーム39の回動軌跡に、阻止アーム53が配置されたストッパリンク49の状態である。すなわち、阻止状態のストッパリンク49は、ロックリンク33が解除姿勢からロック姿勢に向けて回動(移動)するのを阻止する。許容状態は、第2アーム39の回動軌跡から外れた位置に、阻止アーム53が配置されたストッパリンク49の状態である。すなわち、許容状態のストッパリンク49は、ロックリンク33が解除姿勢からロック姿勢に向けて回動(移動)するのを許容する。
【0048】
[ロック機構30の動作]
まず、リアカバー26を閉める過程におけるロック機構30の動きを説明する。まず、リアカバー26が開いている状態では、
図3に示すように、ロックリンク33が解除姿勢で、ストッパブロック34が阻止状態で、ストッパリンク49が阻止状態となっている。また、錠31が開錠状態で、鍵31aが錠31から抜去不能になっている。
【0049】
次に、オペレータがリアカバー26を閉めると、
図4に示すように、ストッパブロック34の当接部43が当接片48に当接して、ストッパブロック34が阻止状態から許容状態に回動する。すなわち、リアカバー26を閉めることによって、ストッパブロック34による第1アーム38の拘束が解除される。但し、ストッパリンク49は未だに阻止状態なので、ロックリンク33は解除姿勢からロック姿勢に回動できない。そのため、錠31が開錠状態から施錠状態に状態変化できず、錠31から鍵31aを抜去することもできない。
【0050】
次に、オペレータがボルト28bを貫通穴36に挿通し且つナット46に螺合すると、連通した貫通穴36及びナット46にオペレータがボルト28bを螺合すると、ナット46を通過したボルト28bの先端が押圧壁52を押圧する。これにより、
図5に示すように、ストッパリンク49が重力に抗して阻止状態から許容状態に回動する。すなわち、ボルト28bが貫通穴36に挿通され且つナット46に螺合されることによって、ストッパリンク49による第2アーム39の拘束が解除される。また、サイドカバー24L及びリアカバー26は、ボルト28aによっても締結される。
【0051】
次に、オペレータは、錠31が開錠状態から施錠状態に状態変化する向きに、錠31に挿入された鍵31aを回動させる。これにより、
図6に示すように、操作アーム44及び連結ピン45を介して連動するロックリンク33が解除姿勢からロック姿勢に回動する。その結果、第2アーム39が係止片47に係止されて、リアカバー26が閉じた状態でロックされる。さらに、錠31から鍵31aが抜去可能になる。
【0052】
これにより、リアカバー26は、閉じられた状態でロックされると共に、ヒンジ27及びボルト28a、28bによって支持される。そして、オペレータは、錠31から抜去した鍵31aを持ってキャブ22に搭乗し、当該鍵31aを用いてエンジン29aを始動させることができる。
【0053】
次に、リアカバー26を開ける過程におけるロック機構30の動きを説明する。まず、リアカバー26が閉じられており、錠31に鍵31aが挿入されていない状態では、
図6に示すように、ロックリンク33がロック姿勢で、ストッパブロック34が許容状態で、ストッパリンク49が許容状態で、錠31が施錠状態になっている。
【0054】
オペレータは、キーシリンダに挿入された鍵31aを回動させて、イグニッションスイッチをOFFにする。そして、オペレータは、キーシリンダから抜去した鍵31aを錠31に挿入して、錠31が施錠状態から開錠状態に状態変化する向きに回動させる。これにより、
図5に示すように、ロックリンク33がロック状態から解除状態に回動し、ロック機構30によるリアカバー26のロックが解除される。但し、サイドカバー24Lとリアカバー26とは、未だボルト28a、28bによって締結されているので、リアカバー26を開けることはできない。また、錠31から鍵31aが抜去不能になる。
【0055】
次に、オペレータは、サイドカバー24L及びリアカバー26を締結しているボルト28a、28bを取り外す。これにより、
図4に示すように、ボルト28bが押圧壁52から離間して、ストッパリンク49が自重によって許容状態から阻止状態に回動する。その結果、リアカバー26を閉じた状態でロックリンク33が解除姿勢からロック姿勢に回動することが阻止されると共に、リアカバー26が開く状態になる。
【0056】
そして、オペレータは、リアカバー26を開ける。これにより、
図3に示すように、阻止部42が当接片48に当接して、ストッパブロック34が許容状態から阻止状態に回動する。その結果、リアカバー26が開いた状態でロックリンク33が解除姿勢からロック姿勢に回動することが阻止されると共に、オペレータがエンジン建屋23の内部にアクセスできるようになる。
【0057】
上記の実施形態によれば、ボルト28bを貫通穴36に挿通し且つナット46に螺合しなければ、ストッパリンク49によるロックリンク33の拘束を解除することができない。これにより、サイドカバー24L及びリアカバー26をボルト28bで締結しなければ、錠31から鍵31aが抜けないので、エンジン29aが始動できない。その結果、リアカバー26がヒンジ27に片持ち支持された状態で、ホイールローダ10が動作することを防止できる。すなわち、ホイールローダ10の動作中に、ヒンジ27及びボルト28a、28bによってリアカバー26の左右方向の両端を適切に支持することができる。
【0058】
また、上記の実施形態によれば、ロックリンク33、ストッパブロック34、及びストッパリンク49を、支軸37、41、50周りに回動する構成とすることによって、直線運動させる場合と比較して、ロック機構30を小型化することができる。
【0059】
また、上記の実施形態によれば、ボルト28bが押圧壁52から離間することによって、ストッパリンク49が自重によって自動的に阻止状態に状態変化する。これにより、ストッパリンク49を阻止状態に状態変化させる機構を省略できるので、ロック機構30を簡素化することができる。
【0060】
但し、ストッパリンク49を阻止状態に状態変化させる構成は、前述の例に限定されない。他の例として、ロック機構30は、ストッパリンク49を阻止状態に向けて付勢する付勢部材(例えば、コイルバネ)を備えてもよい。この場合のストッパリンク49は、貫通穴36に挿通され且つナット46に螺合されたボルト28bに押圧されて、付勢部材の付勢力に抗して阻止状態から許容状態に状態変化する。また、ストッパリンク49は、ボルト28bが離間することによって、付勢部材の付勢力によって許容状態から阻止状態に状態変化する。
【0061】
さらに、上記の実施形態によれば、リアカバー26を閉じなければ、ストッパブロック34によるロックリンク33の拘束を解除することができない。これにより、リアカバー26を閉じなければ、錠31から鍵31aが抜けないので、エンジン29aが始動できない。その結果、リアカバー26を閉じたうえで、サイドカバー24L及びリアカバー26をボルト28bで締結しなければ、ホイールローダ10を動作させることができない。但し、ストッパブロック34は省略可能である。
【0062】
なお、ロック機構30を備え且つ開閉可能なカバーは、リアカバー26に限定されない。他の例として、左右一対のサイドカバー24L、24Rの一部を開閉可能とし且つロック機構30を取り付けてもよい。すなわち、本発明に係るカバーは、ホイールローダ10の任意の位置に設けられていてもよい。
【0063】
上述した実施形態は、本発明の説明のための例示であり、本発明の範囲をそれらの実施形態にのみ限定する趣旨ではない。当業者は、本発明の要旨を逸脱することなしに、他の様々な態様で本発明を実施することができる。
【符号の説明】
【0064】
10 ホイールローダ
11 前フレーム
12 後フレーム
13 センタピン
14L,14R ステアリングシリンダ
15L,15R 前タイヤ
16 フロント作業機
17L,17R リフトアーム
18 バケット
19 バケットシリンダ
20 ベルクランク
21L,21R 後タイヤ
22 キャブ
23 エンジン建屋
24L,24R サイドカバー(カバー)
25 トップカバー
26 リアカバー
27 ヒンジ
28a,28b ボルト
29a エンジン
29b ラジエータ
29c 冷却ファン
30 ロック機構
31 錠
31a 鍵
32 台座
33 ロックリンク(ロック部材)
34 ストッパブロック
35 ストッパプレート
36 貫通穴
37,41,50 支軸
38 第1アーム
39 第2アーム
40 貫通孔
42 阻止部
43 当接部
44 操作アーム
45 連結ピン
46 ナット
47 係止片
48 当接片
49 ストッパリンク(ストッパ部材)
51 当接アーム(当接部)
52 押圧壁
53 阻止アーム(阻止部)