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特許7590250タンディッシュカー、および連続鋳造設備
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-18
(45)【発行日】2024-11-26
(54)【発明の名称】タンディッシュカー、および連続鋳造設備
(51)【国際特許分類】
   B22D 11/10 20060101AFI20241119BHJP
   B22D 41/12 20060101ALI20241119BHJP
【FI】
B22D11/10 310Q
B22D41/12 A
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2021057392
(22)【出願日】2021-03-30
(65)【公開番号】P2022154376
(43)【公開日】2022-10-13
【審査請求日】2023-09-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】弁理士法人ATEN
(72)【発明者】
【氏名】川口 浩志
(72)【発明者】
【氏名】西岡 智則
【審査官】有田 恭子
(56)【参考文献】
【文献】特開昭61-007053(JP,A)
【文献】特開2002-239689(JP,A)
【文献】特許第5030598(JP,B2)
【文献】特開2018-065189(JP,A)
【文献】特開2018-061971(JP,A)
【文献】特開2014-151331(JP,A)
【文献】特開2009-166101(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22D 11/00-11/12
B22D 41/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右方向に延びるように配置された前側軌条と、前記前側軌条との間に前後方向の間隔をあけて配置されるとともに左右方向に延びるように配置された後側軌条と、に沿って走行可能なタンディッシュカーであって、
前記前側軌条を走行可能な前側走行台車と、
前記前側走行台車との間に前後方向の間隔をあけて、前記前側走行台車と一体ではなく独立して設けられ、前記後側軌条を走行可能な後側走行台車と、
前記前側走行台車および前記後側走行台車のそれぞれに設けられる昇降装置と、
前記昇降装置に取り付けられ、複数の前記昇降装置が連動して駆動することで前記前側走行台車および前記後側走行台車に対して昇降させられる昇降フレームと、
溶けた金属が入れられる容器であり、上から見たときに前記昇降フレームに囲まれるように前記昇降フレームの横に配置されるタンディッシュ本体と、
前記タンディッシュ本体から横に張り出され、前記昇降フレームに下から支持される張出部材と、
を備える、
タンディッシュカー。
【請求項2】
請求項1に記載のタンディッシュカーであって、
前記昇降フレームは、上から見たときに複数の辺を備え、
前記昇降フレームの一部分であって上から見たときの前記辺の長手方向中央部を含む通路上昇降フレームは、前記昇降フレームのうち前記通路上昇降フレームとは異なる部分よりも、上側に配置される、
タンディッシュカー。
【請求項3】
請求項1または2記載のタンディッシュカーであって、
前記タンディッシュ本体は、前記昇降フレームとの間に隙間をあけて配置され、
前記張出部材は、前記昇降フレームに対して前記タンディッシュ本体を傾動自在に支持
上から見たときに前記昇降フレームに囲まれるように前記昇降フレームの横に前記タンディッシュ本体が配置された状態で、前記昇降フレームに対して前記タンディッシュ本体が傾動することにより、残滓を含む溶けた金属が前記タンディッシュ本体から排出可能に構成された、
タンディッシュカー。
【請求項4】
請求項3に記載のタンディッシュカーであって、
前記前側走行台車、前記後側走行台車、前記昇降装置、および前記昇降フレームの少なくともいずれかに支持され、前記昇降フレームに対して前記タンディッシュ本体を傾動させるように駆動する傾動駆動部を備える、
タンディッシュカー。
【請求項5】
請求項4に記載のタンディッシュカーであって、
前記傾動駆動部は、前記昇降フレームと前記タンディッシュ本体との間に配置される、
タンディッシュカー。
【請求項6】
請求項4または5に記載のタンディッシュカーであって、
前記傾動駆動部は、前記昇降フレームに支持され、前記タンディッシュ本体を押し上げることで、前記昇降フレームに対して前記タンディッシュ本体を傾動させるように配置される、
タンディッシュカー。
【請求項7】
請求項4~6のいずれか1項に記載のタンディッシュカーであって、
前記傾動駆動部は、前記タンディッシュ本体を押し上げる押上位置と前記昇降フレームに格納される格納位置との間で回動自在に、前記昇降フレームに取り付けられる、
タンディッシュカー。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載のタンディッシュカーであって、
前記昇降フレームに設けられ、前記タンディッシュ本体の内容物の質量を測定する計重装置を備える、
タンディッシュカー。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載のタンディッシュカーであって、
前記昇降フレームに設けられ、前記昇降フレームに対する前記タンディッシュ本体の前記前後方向の位置を変える前後位置調整部を備える、
タンディッシュカー。
【請求項10】
左右方向に延びるように配置された前側軌条と、前記前側軌条との間に前後方向の間隔をあけて配置されるとともに左右方向に延びるように配置された後側軌条と、に沿って走行可能なタンディッシュカー
固定側傾動駆動部と、
を備え、
前記タンディッシュカーは、
前記前側軌条を走行可能な前側走行台車と、
前記前側走行台車から独立して設けられ、前記後側軌条を走行可能な後側走行台車と、
前記前側走行台車および前記後側走行台車のそれぞれに設けられる昇降装置と、
前記昇降装置に取り付けられ、複数の前記昇降装置が連動して駆動することで前記前側走行台車および前記後側走行台車に対して昇降させられる昇降フレームと、
溶けた金属が入れられる容器であり、上から見たときに前記昇降フレームに囲まれるように前記昇降フレームの横に配置され、前記昇降フレームとの間に隙間をあけて配置されるタンディッシュ本体と、
前記タンディッシュ本体から横に張り出され、前記昇降フレームに下から支持され、前記昇降フレームに対して前記タンディッシュ本体を傾動自在に支持する張出部材と、
を備え、
前記固定側傾動駆動部は、前記タンディッシュカーを下側から支持する固定部に設けられ、前記タンディッシュ本体を押し上げることで、前記昇降フレームに対して前記タンディッシュ本体を傾動させるように配置される、
連続鋳造設備
【請求項11】
左右方向に延びるように配置された前側軌条と、前記前側軌条との間に前後方向の間隔をあけて配置されるとともに左右方向に延びるように配置された後側軌条と、に沿って走行可能なタンディッシュカー
前記タンディッシュカーを下側から支持する固定部に設けられる傾動支持部材と、
を備え、
前記タンディッシュカーは、
前記前側軌条を走行可能な前側走行台車と、
前記前側走行台車から独立して設けられ、前記後側軌条を走行可能な後側走行台車と、
前記前側走行台車および前記後側走行台車のそれぞれに設けられる昇降装置と、
前記昇降装置に取り付けられ、複数の前記昇降装置が連動して駆動することで前記前側走行台車および前記後側走行台車に対して昇降させられる昇降フレームと、
溶けた金属が入れられる容器であり、上から見たときに前記昇降フレームに囲まれるように前記昇降フレームの横に配置され、前記昇降フレームとの間に隙間をあけて配置されるタンディッシュ本体と、
前記タンディッシュ本体から横に張り出され、前記昇降フレームに下から支持され、前記昇降フレームに対して前記タンディッシュ本体を傾動自在に支持する張出部材と、
を備え、
前記傾動支持部材は、前記タンディッシュ本体が前記傾動支持部材に支持された状態で、前記昇降装置が前記昇降フレームを降下させたときに、前記昇降フレームに対して前記タンディッシュ本体を傾動させるように配置される、
連続鋳造設備
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軌条に沿って走行するタンディッシュカー、および連続鋳造設備に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1、2などに、従来のタンディッシュカーが記載されている。同文献に記載のタンディッシュカーは、2本の軌条を走行可能な走行台車を有している。同文献に記載のタンディッシュカーでは、タンディッシュ本体が、昇降フレーム(特許文献1における支持フレーム、特許文献2における昇降主フレーム)に支持されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第5030598号公報
【文献】特公平3-25258号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の発明では、2本の軌条を走行する走行台車どうしを直接的につなぐつなぎ部材(同文献における梁材)が設けられている(同文献の図2の符号11を参照)。そのため、昇降フレーム(同文献の図2の符号20を参照)を配置可能なスペースが、つなぎ部材により制限される。特許文献2に記載の発明では、昇降フレーム(同文献の図2の符号30を参照)が、タンディッシュ本体(同符号31を参照)を下から支持している。そのため、昇降フレームを配置可能なスペースが、タンディッシュ本体よりも下の狭いスペースに制限される。このように、特許文献1、2に記載の発明では、昇降フレームを配置可能なスペースが狭い。その結果、昇降フレームの梁せいの確保が難しく、昇降フレームの強度を確保することが難しいおそれがある。
【0005】
そこで、本発明は、昇降フレームの配置スペースを容易に確保することができる、タンディッシュカー、および連続鋳造設備を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
タンディッシュカーは、前側軌条と、後側軌条と、に沿って走行可能である。前記前側軌条は、左右方向に延びるように配置される。前記後側軌条は、前記前側軌条との間に前後方向の間隔をあけて配置されるとともに左右方向に延びるように配置される。タンディッシュカーは、前側走行台車と、後側走行台車と、昇降装置と、昇降フレームと、タンディッシュ本体と、張出部材と、を備える。前記前側走行台車は、前記前側軌条を走行可能である。前記後側走行台車は、前記前側走行台車から独立して設けられ、前記後側軌条を走行可能である。前記昇降装置は、前記前側走行台車および前記後側走行台車のそれぞれに設けられる。前記昇降フレームは、前記昇降装置に取り付けられ、複数の前記昇降装置が連動して駆動することで前記前側走行台車および前記後側走行台車に対して昇降させられる。前記タンディッシュ本体は、溶けた金属が入れられる容器であり、上から見たときに前記昇降フレームに囲まれるように前記昇降フレームの横に配置される。前記張出部材は、前記タンディッシュ本体から横に張り出され、前記昇降フレームに下から支持される。
【発明の効果】
【0007】
上記構成により、昇降フレームの配置スペースを容易に確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態のタンディッシュカー20などを横から見た図であり、昇降フレーム50が下降位置の状態を示す図である。
図2図1に示すタンディッシュカー20などを上から見た図である。
図3図1に示すタンディッシュカー20などを前側X1から見た図である。
図4図1に示すタンディッシュカー20などを後側X2から見た図である。
図5図1のF5部分を示す図であり、昇降装置40の断面を示す図である。
図6図1に示す昇降フレーム50が上昇位置の状態を示す図1相当図である。
図7】変形例1の図3相当図である。
図8】変形例1の図4相当図である。
図9】変形例2-1の図3相当図である。
図10】変形例2-1の図4相当図である。
図11】変形例2-2の図3相当図である。
図12】変形例2-2の図4相当図である。
図13】変形例3-1の図2相当図である。
図14】変形例3-2の図2相当図である。
図15】変形例3-3の図2相当図である。
図16】変形例3-4の図1相当図である。
図17】変形例3-4の図2相当図である。
図18】変形例3-4の図4相当図である。
図19図16のF19-F19矢視断面図である。
図20】変形例4の図1相当図である。
図21図20に示す載置部60などを上から見た図である。
図22図21のF22-F22矢視断面図である。
図23図21図22のF23-F23矢視断面図である。
図24】変形例5の図1相当図である。
図25】変形例5の図2相当図である。
図26図24に示すタンディッシュ本体71が傾動した状態を示す図24相当図である。
図27図26のF27-F27矢視断面図である。
図28】変形例6の図1相当図である。
図29図28に示すタンディッシュ本体71が傾動した状態を示す図28相当図である。
図30図29のF30-F30矢視断面図である。
図31】変形例7の図1相当図である。
図32図31に示す状態よりも昇降フレーム50が降下した状態を示す図31相当図である。
図33図32に示す状態よりも昇降フレーム50が降下した状態を示す図32相当図である。
図34】変形例8の図2相当図である。
図35】変形例8の図3相当図である。
図36】変形例8の図4相当図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1図6を参照して、タンディッシュカー20、およびタンディッシュカー20が設けられる連続鋳造設備1について説明する。
【0010】
連続鋳造設備1は、連続的に鋳造を行う設備である。連続鋳造設備1では、溶けた金属(例えば鉄鋼)が、タンディッシュ本体71から鋳型13に供給され、鋳片Sが、鋳型13から引き出される。連続鋳造設備1は、固定部11と、鋳型13と、軌条17と、タンディッシュカー20と、を備える。
【0011】
固定部11は、タンディッシュカー20を下側Z2から支持する部分である。「下側Z2」などの方向の詳細は後述する。固定部11は、鋳込床11aと、床下11b(図26参照)と、を備える。鋳込床11aは、軌条17が固定される床である。床下11bは、鋳込床11aの表面よりも下側Z2の部分である。
【0012】
鋳型13は、タンディッシュ本体71から溶けた金属が流し込まれる型である。鋳型13は、固定部11に振動可能に設置され、鋳込床11aよりも上側Z1に突出する。
【0013】
軌条17は、タンディッシュカー20を支持し、タンディッシュカー20の走行をガイドする部材(レール)である。軌条17は、鋳込床11aに固定(敷設)される。軌条17は、複数設けられ、少なくとも2本設けられる。軌条17は、前側軌条17fと、後側軌条17rと、を備える。図2に示すように、前側軌条17fは、左右方向Yに延びるように配置される(後側軌条17rも同様)。後側軌条17rは、前側軌条17fとの間に前後方向Xの間隔をあけて配置される。
【0014】
(方向)
タンディッシュカー20が走行する方向を、左右方向Yとする。左右方向Yの一方側(例えば後側X2から前側X1に向かって見たときの左)を左側Y1とし、その逆側を右側Y2とする。なお、左側Y1と右側Y2とは互いに逆でもよい。左右方向Yに直交する水平方向を、前後方向Xとする。前後方向Xの一方側を前側X1とし、その逆側を後側X2とする。例えば、図1に示すように、前後方向Xにおいて、タンディッシュカー20の前後方向X中央部に対して、溶けた金属が吐出される部分(例えば浸漬ノズル73(後述)または吐出口)が設けられる側を、後側X2とする。上下方向Z(上側Z1、下側Z2)は、鉛直方向である。
【0015】
タンディッシュカー20は、走行可能である。タンディッシュカー20は、前側軌条17fおよび後側軌条17rに沿って走行可能である。タンディッシュカー20は、固定部11に下側Z2から支持され、さらに詳しくは、軌条17を介して固定部11に下側Z2から支持される。タンディッシュカー20は、走行台車30と、昇降装置40と、昇降フレーム50と、載置部60と、タンディッシュ70と、を備える。
【0016】
走行台車30は、軌条17を走行可能である。走行台車30は、前側走行台車30fと、後側走行台車30rと、を備える。図3に示すように、前側走行台車30fは、前左側走行台車30flと、前右側走行台車30frと、を備える。図4に示すように、後側走行台車30rは、後左側走行台車30rlと、後右側走行台車30rrと、を備える。図3に示す前左側走行台車30fl、前右側走行台車30fr、図4に示す後左側走行台車30rl、および後右側走行台車30rrのそれぞれ(複数の走行台車30のそれぞれ)は、車輪31と、車輪フレーム33と、を備える。
【0017】
前側走行台車30fは、図3に示すように、前側軌条17fを走行可能である。前左側走行台車30flおよび前右側走行台車30frのそれぞれは、前側軌条17fを走行可能である。前右側走行台車30frは、前左側走行台車30flから独立して設けられる。さらに詳しくは、前右側走行台車30frは、前左側走行台車30flと一体ではなく、前左側走行台車30flとの間に左右方向Yの間隔をあけて配置され、前左側走行台車30flと直接的にはつながれない。前右側走行台車30frは、前左側走行台車30flに間接的につながれ、具体的には昇降装置40および昇降フレーム50を介して前左側走行台車30flにつながれる。なお、前右側走行台車30frは、前左側走行台車30flと直接的につながれてもよい(図9参照などを参照)。
【0018】
後側走行台車30rは、図4に示すように、後側軌条17rを走行可能である。後左側走行台車30rlおよび後右側走行台車30rrのそれぞれは、後側軌条17rを走行可能である。
【0019】
この後側走行台車30rは、図1に示すように、前側走行台車30fから独立して設けられる。さらに詳しくは、後側走行台車30rは、前側走行台車30fと一体ではなく、前側走行台車30fとの間に前後方向Xの間隔をあけて配置され、前側走行台車30fと直接的にはつながれない。後側走行台車30rは、前側走行台車30fと間接的につながれ、具体的には昇降装置40および昇降フレーム50を介して前側走行台車30fにつながれる。後側走行台車30rと前側走行台車30fとを直接的につなぐ「つなぎ部材」は、設けられない。よって、昇降フレーム50の昇降フレーム左辺50y1(後述)および昇降フレーム右辺50y2(図2参照、後述)の梁せい(上下方向Zの幅)を容易に確保することができ、昇降フレーム50の強度を容易に確保することができる。昇降フレーム50の梁せいを容易に確保することができる結果、後述する計重装置455(図20参照)を昇降フレーム50の内部に容易に配置することができる。走行台車30に上記「つなぎ部材」が設けられないので、走行台車30を軽量化することができる結果、タンディッシュカー20を軽量化することができる。走行台車30に上記「つなぎ部材」が設けられないので、タンディッシュカー20をシンプルな構造にすることができる。走行台車30に上記「つなぎ部材」が設けられないので、鋳型13の周辺に作業者が容易にアクセスすることができる。
【0020】
後右側走行台車30rrは、図4に示すように、後左側走行台車30rlから独立して設けられる(前左側走行台車30flと前右側走行台車30frとの関係と同様)。なお、後右側走行台車30rrは、後左側走行台車30rlと直接的につながれてもよい(図10などを参照)。
【0021】
車輪31は、軌条17に沿って(左右方向Yに)軌条17を転がる。車輪フレーム33(台車フレーム)は、車輪31を回転可能に支持する。1つの車輪フレーム33は、1つの車輪31を支持する。1つの車輪フレーム33は、複数の車輪31を支持してもよい(図7図8などを参照)。
【0022】
昇降装置40は、図1に示す走行台車30に対して昇降フレーム50を昇降(上下方向Zに移動)させる。昇降装置40は、走行台車30に対する昇降フレーム50の水平方向(左右方向Yおよび前後方向X)への移動を制限(拘束)する。昇降装置40は、走行台車30に対する昇降フレーム50の、上下方向Zに対して傾いた方向への移動を制限する。昇降装置40は、昇降フレーム50を昇降させることで、タンディッシュ本体71(後述)を昇降させる(図6参照)。昇降装置40は、昇降フレーム50にタンディッシュ本体71が載せられた状態で、タンディッシュ本体71を昇降させることができる。よって、タンディッシュ本体71を昇降させるための別設の装置(タンディッシュカー20とは別に設けられる装置)への、タンディッシュ本体71の載せ替えは、不要である。よって、別設の装置が設けられる場合に比べ、連続鋳造設備1を(鋳込みヤードを)コンパクトにすることができる。
【0023】
この昇降装置40は、走行台車30(前側走行台車30fおよび後側走行台車30rのそれぞれ)に設けられる。図2に示すように、昇降装置40は、上側Z1から見たときの昇降フレーム50の四隅または略四隅の位置に配置される。昇降装置40は、上側Z1から見たときの昇降フレーム50の各辺(昇降フレーム前辺50x1、昇降フレーム後辺50x2、昇降フレーム左辺50y1、および昇降フレーム右辺50y2(それぞれ後述))の交点または略交点の位置に配置される。昇降装置40は、前左側昇降装置40flと、前右側昇降装置40frと、後左側昇降装置40rlと、後右側昇降装置40rrと、を備える。図3に示すように、前左側昇降装置40flは、前左側走行台車30flに設けられる。前右側昇降装置40frは、前右側走行台車30frに設けられる。図4に示すように、後左側昇降装置40rlは、後左側走行台車30rlに設けられる。後右側昇降装置40rrは、後右側走行台車30rrに設けられる。
【0024】
前左側昇降装置40fl(図3参照)、前右側昇降装置40fr(図3参照)、後左側昇降装置40rl、および後右側昇降装置40rrのそれぞれ(複数の昇降装置40のそれぞれ)は、上下方向Zに伸縮する装置を備え、例えば伸縮シリンダを備える。この伸縮シリンダは、油圧シリンダでもよく、電動シリンダでもよい。具体的には例えば、複数の昇降装置40のそれぞれは、図5に示すように、筒状部材41と、ロッド43と、ネジ軸45と、昇降駆動部47と、を備える。
【0025】
筒状部材41は、筒状であり、例えば上側Z1部分が略塞がれた筒状である。筒状部材41は、昇降フレーム50に固定される。筒状部材41は、上下方向Zに延びるように設けられる。筒状部材41は、上下方向Zから見たときに、円形状(中空円筒部材)でもよく、多角形状(例えば矩形状)でもよい。
【0026】
ロッド43は、筒状部材41に上下方向Zに移動可能に差し込まれる。ロッド43は、上下方向Zに延びるように設けられる。ロッド43の下側Z2端部は、走行台車30の車輪フレーム33に固定(接合)される。上記「端部」は、端および端の近傍を意味する(以下同様)。上下方向Zから見たロッド43の断面(図示なし)は、円形状でもよく、多角形状(例えば矩形)でもよい。ロッド43は、ロッド穴43aと、ネジ軸結合部43bと、を備える。ロッド穴43aは、ネジ軸45が差し込まれる穴(ネジ軸45が進入するための穴)である。ロッド穴43aは、ロッド43の内部に設けられる。ロッド穴43aは、ロッド43の上側Z1端部から下側Z2に延びるように設けられる。ネジ軸結合部43bは、ネジ軸45から駆動力が伝えられる部分である。ネジ軸結合部43bは、例えばネジ軸45のオネジにネジにより結合(螺合)されるメネジでもよい。ネジ軸結合部43bは、ネジ軸45のオネジと結合される、ボールねじのナットでもよい。例えば、ネジ軸結合部43bは、ロッド43の上側Z1部分に設けられる。例えば、ネジ軸結合部43bは、ロッド穴43aの上側Z1部分の内面に設けられる。
【0027】
ネジ軸45は、ロッド穴43aに差し込まれ、ネジ軸結合部43bに結合される。ネジ軸45は、上下方向Zに延びるように設けられる部材である。例えば、ネジ軸45の長手方向(上下方向Z)に延びるネジ軸45の中心軸は、車輪フレーム33に対する車輪31の回転軸と交差する。なお、ネジ軸45の中心軸は、車輪フレーム33に対する車輪31の中心軸と交差しなくてもよい(図7などを参照)。
【0028】
昇降駆動部47は、走行台車30に対して昇降フレーム50を昇降させるための駆動力を発生させる。昇降駆動部47は、ロッド43に対して筒状部材41を昇降させるための駆動力を発生させる。昇降装置40がネジ軸45を備える場合、昇降駆動部47は、ネジ軸45の中心軸を回転軸としてネジ軸45を回転させる。この場合、昇降駆動部47は、ネジ軸45の軸方向(上下方向Z)の荷重を受ける。例えば、昇降駆動部47は、電動機(電動モータ)でもよく、油圧モータでもよい。昇降駆動部47は、減速機付きのモータでもよい。昇降駆動部47は、例えば筒状部材41に取り付けられる。図5に示す例では、昇降駆動部47は、筒状部材41の上側Z1部分(例えば上側Z1端部よりも上側Z1)に配置される。1つの昇降駆動部47が、図2に示す複数の昇降装置40に兼用されてもよい。例えば、1つの昇降駆動部47(図5参照)が、前左側昇降装置40flと前右側昇降装置40frとに兼用されてもよい。1つの昇降駆動部47(図5参照)が、後左側昇降装置40rlと後右側昇降装置40rrとに兼用されてもよい。1つの昇降駆動部47(図5参照)が、4つの昇降装置40(前左側昇降装置40fl、前右側昇降装置40fr、後左側昇降装置40rl、および後右側昇降装置40rr)に兼用されてもよい。1つの昇降駆動部47が複数の昇降装置40に兼用される場合、昇降駆動部47の駆動力は、例えばスピンドルやかさ歯車などが組み合わされた装置により、複数の昇降装置40に分配される。
【0029】
昇降フレーム50は、図1に示すように、昇降装置40に取り付けられる。具体的には、昇降フレーム50は、筒状部材41に固定される。昇降フレーム50は、複数の昇降装置40が連動して駆動することで、走行台車30に対して昇降させられる。図2に示すように、昇降フレーム50は、上側Z1から見たとき、四角形枠状でもよく、略四角形枠状でもよい。例えば、昇降フレーム50は、上側Z1から見たとき、矩形枠状でもよく、略矩形枠状(図15参照)でもよく、矩形以外の四角形(例えば台形など)の枠状でもよく、矩形以外の略四角形の枠状でもよい。例えば、昇降フレーム50は、昇降フレーム前辺50x1と昇降フレーム後辺50x2とで辺の長さ(左右方向Yの長さ)が相違するものでもよい。例えば、昇降フレーム前辺50x1よりも昇降フレーム後辺50x2の方が、左右方向Yの長さが長くてもよい。昇降フレーム50は、上側Z1から見たとき、C字状でもよく、略C字状でもよい(図13図14を参照)。ここでは一例として、上側Z1から見て昇降フレーム50が矩形である場合について説明する。昇降フレーム50は、昇降フレーム前辺50x1と、昇降フレーム後辺50x2と、昇降フレーム左辺50y1と、昇降フレーム右辺50y2と、を備える。また、昇降フレーム50には、通路上昇降フレーム50z(昇降フレーム特定部とも言う)がある。
【0030】
昇降フレーム前辺50x1は、昇降フレーム50の前側X1部分である。昇降フレーム前辺50x1は、左右方向Yに延びるように設けられる(昇降フレーム後辺50x2も同様)。昇降フレーム前辺50x1は、前左側昇降装置40flと、前右側昇降装置40frと、に取り付けられる(接合される、つながれる)。昇降フレーム後辺50x2は、昇降フレーム50の後側X2部分である。昇降フレーム後辺50x2は、後左側昇降装置40rlと、後右側昇降装置40rrと、に取り付けられる。昇降フレーム左辺50y1は、昇降フレーム50の左側Y1部分である。昇降フレーム左辺50y1は、前後方向Xに延びるように設けられる(昇降フレーム右辺50y2も同様)。昇降フレーム左辺50y1は、前左側昇降装置40flと、後左側昇降装置40rlと、に取り付けられる。昇降フレーム右辺50y2は、昇降フレーム50の右側Y2部分である。昇降フレーム右辺50y2は、前右側昇降装置40frと、後右側昇降装置40rrと、に取り付けられる。昇降フレーム50の各辺(昇降フレーム前辺50x1、昇降フレーム後辺50x2、昇降フレーム左辺50y1、および昇降フレーム右辺50y2)は、昇降装置40(さらに詳しくは筒状部材41(図1参照))を介して、互いに固定される。昇降フレーム50の各辺は、互いに直接的に固定されてもよい(図15図17参照)。図1に示す昇降フレーム左辺50y1は、昇降フレーム50が最も下側Z2に降ろされた状態でタンディッシュカー20が走行したときでも、昇降フレーム左辺50y1が鋳型13に干渉しないように配置される(詳細は後述)。具体的には、昇降フレーム50が最も下側Z2に降ろされたとき、昇降フレーム左辺50y1の下側Z2端部は、鋳型13の上側Z1端部よりも上側Z1に配置される(昇降フレーム右辺50y2(図2参照)も同様)。
【0031】
通路上昇降フレーム50z(昇降フレーム特定部)は、図2に示すように、昇降フレーム50の一部分である。通路上昇降フレーム50zは、昇降フレーム50のうち通路(後述)の真上に配置される部分である。通路上昇降フレーム50zは、昇降フレーム50の1か所にのみ設けられてもよく、複数か所に設けられてもよい。例えば、通路上昇降フレーム50zは、昇降フレーム50の各辺のうち、1つの辺でもよく、複数の辺でもよい。図4に示す例では、通路上昇降フレーム50zは、昇降フレーム後辺50x2である。上記「通路」は、図2に示す昇降フレーム50に囲まれた空間の内と外とをつなぐ通路であり、作業者(オペレータ)が通る部分である。通路は、鋳込床11a(図1参照)の一部である。通路は、1か所にのみ設けられてもよく、複数か所に設けられてもよい。図2に示す例では、通路上昇降フレーム50zが昇降フレーム後辺50x2であり、昇降フレーム50よりも後側X2の位置から、鋳型13(図1参照)周辺へ、作業者がアクセスするための通路が設けられる。
【0032】
この通路上昇降フレーム50zは、作業者が通路を通りやすくなるように配置されることが好ましい。具体的には、図4に示すように、通路上昇降フレーム50zは、通路に立つ作業者の頭と通路上昇降フレーム50zとの間に隙間(頭上の隙間)を確保できるように配置される。通路上昇降フレーム50zは、昇降フレーム50のうち通路上昇降フレーム50zとは異なる部分よりも上側Z1(高い位置)に配置される。例えば、通路上昇降フレーム50zが昇降フレーム後辺50x2である場合、通路上昇降フレーム50zは、昇降フレーム前辺50x1(図2参照)、昇降フレーム左辺50y1、および昇降フレーム右辺50y2よりも上側Z1に配置される。通路上昇降フレーム50zの少なくとも一部の下側Z2端部は、昇降フレーム50のうち通路上昇降フレーム50zとは異なる部分の下側Z2端部よりも、上側Z1に配置される。
【0033】
載置部60は、図1に示すように、タンディッシュ70の張出部材75(後述)が載置される部分であり、張出部材75を下側Z2から支持する部分(サドル)である。載置部60は、昇降フレーム50に設けられる。載置部60は、昇降フレーム50の上側Z1部分に設けられる。載置部60は、昇降フレーム50の上側Z1の面から上側Z1に突出する。図2に示すように、載置部60は、昇降フレーム右辺50y2および昇降フレーム左辺50y1のそれぞれに設けられる。左右の載置部60・60のそれぞれは、図1に示すように、第1受け部61と、第2受け部62と、を備える。
【0034】
第1受け部61は、第1張出部材75a(後述)を回転自在に支持する部分(受け座)である。第1受け部61は、例えば下側Z2に凹んだ形状の凹部を有し、具体的には左右方向Yから見てU字状の凹部を有する。
【0035】
第2受け部62は、第2張出部材75b(後述)を支持する部分(受け座)である。第2受け部62は、第1受け部61に対して前後方向Xに間隔をあけて配置され、例えば第1受け部61よりも後側X2に配置される。例えば、第2受け部62は、水平方向(前後方向Xおよび左右方向Y)に延びる平面状(平坦部)である。
【0036】
タンディッシュ70は、昇降フレーム50に支持される。タンディッシュ70は、タンディッシュ本体71と、浸漬ノズル73と、張出部材75と、を備える。
【0037】
タンディッシュ本体71は、溶けた金属が入れられる容器である。図2に示すように、タンディッシュ本体71は、上側Z1から見たときに昇降フレーム50に囲まれるように配置される。タンディッシュ本体71は、上側Z1から見たときに昇降フレーム50に全周を囲まれるように配置されてもよい。タンディッシュ本体71は、上側Z1から見たときに昇降フレーム50に3方向から囲まれるように配置されてもよい(図13図14参照)。タンディッシュ本体71は、上側Z1から見たときの昇降フレーム50の内部(開口部の中)に配置(収容)される。図1に示すように、タンディッシュ本体71は、昇降フレーム50の横に配置される。タンディッシュ本体71は、昇降フレーム50と水平方向(左右方向Yおよび前後方向X)に対向するように配置される。タンディッシュ本体71は、昇降フレーム50の真上には配置されない。タンディッシュ本体71は、昇降フレーム50と上下方向Zには対向しない。タンディッシュ本体71は、昇降フレーム50に対してタンディッシュ本体71が傾動したとき(図26などを参照)に、タンディッシュ本体71が昇降フレーム50に干渉しないように配置される。具体的には、タンディッシュ本体71は、昇降フレーム50との間に隙間をあけて配置される。なお、昇降フレーム50に対するタンディッシュ本体71の傾動については、後述する変形例5で説明する。また、タンディッシュ本体71は、昇降フレーム50に対して傾動可能でなくてもよい。タンディッシュ本体71は、タンディッシュ本体底部71z2と、タンディッシュ本体前部71x1と、タンディッシュ本体後部71x2と、タンディッシュ本体左部71y1と、タンディッシュ本体右部71y2(図2参照)と、を備える。
【0038】
タンディッシュ本体底部71z2は、タンディッシュ本体71の下側Z2の部分(底部)である。タンディッシュ本体71が鋳込姿勢(図1に示す姿勢)のとき、タンディッシュ本体底部71z2は、水平または略水平に配置され、鋳込床11aと平行または略平行に配置される。以下、特に断らない限り、タンディッシュ本体71が鋳込姿勢である場合について説明する。タンディッシュ本体底部71z2の下側Z2端部は、昇降フレーム50の下側Z2端部に対して、上側Z1に配置されてもよく、下側Z2に配置されてもよく、同じ高さに配置されてもよい。
【0039】
このタンディッシュ本体底部71z2は、昇降フレーム50が最も下側Z2に降ろされた状態でタンディッシュカー20が走行したときでも、タンディッシュ本体底部71z2が鋳型13に干渉しないように配置される。具体的には例えば、昇降フレーム50が最も下側Z2に降ろされたとき、タンディッシュ本体底部71z2の下側Z2端部は、鋳型13の上側Z1端部よりも上側Z1に配置される(昇降フレーム左辺50y1および昇降フレーム右辺50y2(図2参照)も同様)。この配置により、溶けた金属がタンディッシュ70から漏れるなどのトラブル(例えば漏鋼)が生じた場合に、タンディッシュ70を鋳込み位置(鋳型13の周辺)から素早く退避させることができる。この効果の詳細は、次の通りである。タンディッシュ70でトラブルが生じた場合、一刻も早くタンディッシュ70を鋳込み位置から退避させる必要がある。このとき、通常、タンディッシュ70の直上には取鍋(図示なし)が存在する。そのため、タンディッシュ70を上昇させることは不可能または困難である。また、取鍋を退避させてからタンディッシュ70を上昇させると、取鍋を退避させるのに時間がかかり、トラブルによる被害が拡大するおそれがある。そのため、トラブルが生じた場合、タンディッシュ70を上昇させず(昇降フレーム50を上昇させず)、例えば浸漬ノズル73を折ってでも、タンディッシュカー20を走行させて、タンディッシュ70を鋳込み位置から退避させる場合がある。タンディッシュカー20では、昇降フレーム50が最も下側Z2に降ろされた状態でも、タンディッシュ本体底部71z2および昇降フレーム50が鋳型13に干渉することなく、タンディッシュカー20を走行させることができる。よって、トラブルが生じた場合でも、タンディッシュカー20を容易に退避させることができる。
【0040】
タンディッシュ本体前部71x1は、タンディッシュ本体71の前側X1の部分である。タンディッシュ本体前部71x1は、タンディッシュ本体底部71z2よりも上側Z1に配置される(タンディッシュ本体後部71x2、タンディッシュ本体左部71y1、およびタンディッシュ本体右部71y2(図2参照)も同様)。図2に示すように、タンディッシュ本体前部71x1は、昇降フレーム前辺50x1と前後方向Xに対向し、昇降フレーム前辺50x1と前後方向Xに隙間をあけて配置される。タンディッシュ本体後部71x2は、タンディッシュ本体71の後側X2の部分である。タンディッシュ本体後部71x2は、昇降フレーム後辺50x2と前後方向Xに対向し、昇降フレーム後辺50x2と前後方向Xに隙間をあけて配置される。タンディッシュ本体左部71y1は、タンディッシュ本体71の左側Y1の部分である。タンディッシュ本体左部71y1は、昇降フレーム左辺50y1と左右方向Yに対向し、昇降フレーム左辺50y1と左右方向Yに隙間をあけて配置される。タンディッシュ本体右部71y2は、タンディッシュ本体71の右側Y2の部分である。タンディッシュ本体右部71y2は、昇降フレーム右辺50y2と左右方向Yに対向し、昇降フレーム右辺50y2と左右方向Yに隙間をあけて配置される。
【0041】
浸漬ノズル73は、図1に示すように、タンディッシュ本体71から鋳型13内に溶けた金属を供給するための部材である。浸漬ノズル73は、タンディッシュ本体底部71z2から下側Z2に突出する。浸漬ノズル73の下側Z2部分は、鋳型13内に差し込まれる。なお、浸漬ノズル73は、設けられなくてもよい。タンディッシュ本体71内の溶けた金属は、タンディッシュ本体底部71z2に設けられた吐出口から鋳型13内に供給されてもよい。
【0042】
張出部材75は、昇降フレーム50に対してタンディッシュ本体71を支持する。図2に示すように、張出部材75は、タンディッシュ本体71から左右方向Yの外側の両側に張り出される。2つの張出部材75・75のうち左側Y1の張出部材75は、タンディッシュ本体左部71y1から左側Y1に突出する。2つの張出部材75・75のうち右側Y2の張出部材75は、タンディッシュ本体右部71y2から右側Y2に突出する。図1に示すように、張出部材75は、昇降フレーム50に下側Z2から支持され、さらに詳しくは、載置部60を介して昇降フレーム50に下側Z2から支持される。張出部材75は、昇降フレーム50に対するタンディッシュ本体71の傾動(図26などを参照)を、所定の傾動角度範囲内で許容し、上記「所定の傾動角度範囲」外で制限する。具体的には例えば、張出部材75は、第1張出部材75aと、第2張出部材75bと、を備える。
【0043】
第1張出部材75aは、昇降フレーム50に対してタンディッシュ本体71を傾動自在に支持する。昇降フレーム50に対するタンディッシュ本体71の傾動の回転軸を、傾動中心A70とする。傾動中心A70は、左右方向Yに延びる(図2参照)。第1張出部材75aが、昇降フレーム50に対してタンディッシュ本体71を傾動自在に支持するので、昇降フレーム50にタンディッシュ本体71が載せられたまま、昇降フレーム50に対してタンディッシュ本体71を傾動させることができる。よって、タンディッシュ本体71を傾動させる際に、昇降フレーム50から離れた位置に設けられた装置(別設の装置)に、タンディッシュ本体71を載せ替える必要がない。よって、例えば、タンディッシュ本体71からの排滓・排鋼(図26などを参照)を、迅速に行うことができる(時間ロスを抑制することができる)。また、別設の装置が設けられる場合に比べ、連続鋳造設備1を(鋳込みヤードを)コンパクトにすることができる。
【0044】
第1張出部材75aの中心(具体的には傾動中心A70)は、図2に示すように、できるだけタンディッシュ70の重心G70に近いことが好ましい。傾動中心A70が重心G70に近いほど、タンディッシュ本体71を傾動させるのに必要な力を小さくすることができる。この場合、タンディッシュ本体71を傾動させるための駆動部(例えば傾動駆動部583(図24参照))を小さくすることができる。また、タンディッシュ本体71を傾動させるための駆動部のパワー(仕事率)が同一の条件であれば、第1張出部材75aの中心が重心G70に近いほど、タンディッシュ本体71を傾動させるのに必要な時間を抑制することができる。その結果、タンディッシュ本体71からの排滓・排鋼(図26などを参照)を、迅速に行うことができる(時間ロスを抑制することができる)。
【0045】
この第1張出部材75aは、例えば略棒状などである。第1張出部材75aは、例えばトラニオンであり、具体的には、円筒状でもよく、円柱状でもよい。この場合、図1に示すように、第1受け部61は、トラニオンである第1張出部材75aを受けることが可能な形状を有し、具体的には下側Z2に凹む凹部などを有する。なお、例えば、載置部60にトラニオンが設けられ、第1張出部材75aが、このトラニオンを上側Z1から受けるような形状(上側Z1に凹む凹部)を有してもよい。
【0046】
第2張出部材75bは、昇降フレーム50に対するタンディッシュ本体71の傾動中心A70を中心とする傾動を制限する。第2張出部材75bは、第2受け部62に接触可能(例えば載置可能)に配置される。第2張出部材75bは、第1張出部材75aとの間に前後方向Xの間隔をあけて配置され、例えば第1張出部材75aよりも後側X2に配置される。第2張出部材75bの上下方向Zにおける位置は、第1張出部材75aの上下方向Zにおける位置に対して、図1に示す例では同じであり、同じでなくてもよい。図2に示すように、タンディッシュ70の重心G70は、第1張出部材75aよりも後側X2に配置される。重心G70は、第2張出部材75bよりも前側X1に配置される。重心G70が、第1張出部材75aよりも後側X2かつ第2張出部材75bよりも前側X1に配置される場合、タンディッシュ70が昇降フレーム50の中で傾転する(図1における時計回りに回転する)ことが抑制される。第2張出部材75bは、例えば略棒状などであり、例えば四角柱状などである。
【0047】
(作動)
図1に示すタンディッシュカー20は、以下のように作動するように構成される。ここでは昇降フレーム50の昇降について説明する。なお、タンディッシュ70の傾動(図26参照)については変形例5で説明する。
【0048】
(昇降)
昇降装置40は、昇降フレーム50が水平方向に対して傾かないように(水平状態を保った状態で)、昇降フレーム50を昇降させる。具体的には、図2に示す4つの昇降装置40(前左側昇降装置40fl、前右側昇降装置40fr、後左側昇降装置40rl、および後右側昇降装置40rr)は、同時に駆動する(同調する)。4つの昇降装置40の伸縮量は、常時同一(または略同一)とされる。さらに具体的には、4つの昇降装置40の、ネジ軸45(図5参照)の回転量が、同調する。
【0049】
(鋳造時)
図1に示すように、連続鋳造設備1での鋳造時(鋳込時)には、昇降フレーム50は、下降位置に配置される。上記「下降位置」は、例えば、昇降フレーム50の昇降可能な範囲のうち、最も下側Z2または略最も下側Z2の位置である。このとき、浸漬ノズル73は、鋳型13の内部に差し込まれた状態である。また、浸漬ノズル73が設けられない場合、タンディッシュ本体71の吐出口は、鋳型13の内部空間の真上の位置に配置される。
【0050】
(走行時)
図6に示すように、タンディッシュカー20の走行時には、浸漬ノズル73が鋳型13に干渉しないように、昇降フレーム50は、上昇位置に配置される。上記「上昇位置」は、昇降フレーム50の上記「下降位置」よりも上側Z1の位置である。例えば、「上昇位置」は、昇降フレーム50の昇降可能な範囲のうち、最も上側Z1の位置または略最も上側Z1の位置である。
【0051】
(第1の発明の効果)
図1に示すタンディッシュカー20による効果は次の通りである。タンディッシュカー20は、前側軌条17fと、後側軌条17rと、に沿って走行可能である。図2に示すように、前側軌条17fは、左右方向Yに延びるように配置される。後側軌条17rは、前側軌条17fとの間に前後方向Xの間隔をあけて配置されるとともに左右方向Yに延びるように配置される。図1に示すように、タンディッシュカー20は、前側走行台車30fと、後側走行台車30rと、昇降装置40と、昇降フレーム50と、タンディッシュ本体71と、張出部材75と、を備える。
【0052】
[構成1-1]前側走行台車30fは、前側軌条17fを走行可能である。後側走行台車30rは、前側走行台車30fから独立して設けられ、後側軌条17rを走行可能である。
【0053】
[構成1-2]昇降装置40は、前側走行台車30fおよび後側走行台車30rのそれぞれに設けられる。昇降フレーム50は、昇降装置40に取り付けられ、複数の昇降装置40が連動して駆動することで前側走行台車30fおよび後側走行台車30rに対して昇降させられる。
【0054】
[構成1-3]図2に示すように、タンディッシュ本体71は、溶けた金属が入れられる容器であり、上側Z1から見たときに昇降フレーム50に囲まれるように昇降フレーム50の横に配置される。
【0055】
[構成1-4]張出部材75は、タンディッシュ本体71から横に張り出され、昇降フレーム50に下側Z2から支持される。
【0056】
上記[構成1-1]では、図1に示すように、前側走行台車30fと後側走行台車30rとが互いに独立して設けられる。すなわち、前側走行台車30fと後側走行台車30rとを直接的につなぐ「つなぎ部材」が、設けられない。ここで「つなぎ部材」が設けられる場合は、次の問題がある。タンディッシュカー20が走行するためには、「つなぎ部材」の下面は、鋳型13の上端よりも上側Z1に配置される必要がある。また、「つなぎ部材」の真上に昇降フレーム50が配置され、昇降フレーム50の真上に張出部材75(上記[構成1-4])が配置される場合がある。この場合、昇降フレーム50は、張出部材75よりも下側Z2かつ「つなぎ部材」よりも上側Z1に配置される必要がある。すると、上下方向Zに狭小な空間に昇降フレーム50を配置する必要がある。そのため、昇降フレーム50の梁せい(上下方向Zの寸法)の確保が難しくなり、昇降フレーム50の強度を確保することが難しくなる。また、昇降フレーム50の梁せいを確保するために、タンディッシュ本体71を高い位置に配置すれば、浸漬ノズル73の長さが増大し、ランニングコストが増大する。または、昇降フレーム50の梁せいを確保するために、タンディッシュ本体71を高い位置に配置すれば、タンディッシュ本体底部71z2の吐出口から鋳型13へと落下する溶けた金属の運動エネルギが増加する。一方、上記[構成1-1]では、上記「つなぎ部材」が設けられないので、昇降フレーム50の配置スペースを容易に確保することができる。
【0057】
上記[構成1-3]では、図2に示すように、タンディッシュ本体71は、上側Z1から見たときに昇降フレーム50に囲まれるように昇降フレーム50の横に配置される。ここで、タンディッシュ本体71が、昇降フレーム50の真上に配置される場合は、次の問題がある。図1に示すように、タンディッシュカー20が走行するためには、昇降フレーム50の下面は、鋳型13の上端よりも上側Z1に配置される必要がある。すると、タンディッシュ本体71が昇降フレーム50の真上に配置される場合は、昇降フレーム50は、タンディッシュ本体底部71z2よりも下側Z2かつ鋳型13の上端よりも上側Z1に配置される必要がある。そのため、上下方向Zに狭小な空間に昇降フレーム50を配置する必要がある。そのため、上記「つなぎ部材」が設けられる場合と同様に、昇降フレーム50の梁せい(上下方向Zの寸法)の確保が難しくなる。また、タンディッシュ本体71を高い位置に配置すれば、浸漬ノズル73が長くなる問題が生じる、または、吐出口から落下する溶けた金属の運動エネルギが増加する問題が生じる。一方、上記、上記[構成1-3]では、図2に示すように、タンディッシュ本体71は、上側Z1から見たときに昇降フレーム50に囲まれるように昇降フレーム50の横に配置される。よって、図1に示すように、昇降フレーム50の配置スペースを容易に確保することができる。
【0058】
上記[構成1-1]および[構成1-3]により、昇降フレーム50の配置スペースを容易に確保することができる。その結果、昇降フレーム50の梁せいを容易に確保することができ、昇降フレーム50の強度を容易に確保することができる。
【0059】
(第2の発明の効果)
[構成2]図4に示すように、昇降フレーム50の一部分である通路上昇降フレーム50z(昇降フレーム特定部)は、昇降フレーム50のうち通路上昇降フレーム50zとは異なる部分(例えば昇降フレーム左辺50y1、昇降フレーム右辺50y2など)よりも、上側Z1に配置される。
【0060】
上記[構成2]により、通路上昇降フレーム50zよりも下側Z2の空間を作業者が容易に通ることができる。その結果、昇降フレーム50に囲まれた空間の外から内への作業者のアクセスが容易になる。また、昇降フレーム50に囲まれた空間の内から外へ作業者が出ることが容易になる。
【0061】
(第3の発明の効果)
[構成3]図2に示すように、タンディッシュ本体71は、昇降フレーム50との間に隙間をあけて配置される。図1に示すように、張出部材75は、昇降フレーム50に対してタンディッシュ本体71を傾動自在に支持する。
【0062】
上記[構成3]により、タンディッシュ本体71が昇降フレーム50に載せられた状態で、タンディッシュ本体71を傾動させることができる。よって、タンディッシュ本体71を昇降フレーム50から取り外して傾動させる作業の手間がかからない。よって、昇降フレーム50に対するタンディッシュ本体71の傾動を迅速に行うことができる(時間ロスを抑制できる)。また、タンディッシュ本体71を昇降フレーム50から取り外して傾動させる作業を行うための設備を設ける必要がない。よって、連続鋳造設備1(鋳込みヤード)をコンパクトに構成することができる。
【0063】
(変形例1)
図7図8を参照して、変形例1のタンディッシュカー120について、上記実施形態との相違点を説明する。なお、変形例1のタンディッシュカー120のうち、上記実施形態との共通点については、説明を省略する。共通点の説明を省略する点については、後述する各変形例も同様である。
【0064】
図3に示す例では、1つの走行台車30(例えば前左側走行台車30fl)に1つの車輪31が設けられた。図7に示すように、本変形例では、1つの走行台車30(例えば前左側走行台車30fl)に複数の車輪31が設けられ、例えば2つの車輪31が設けられる。図7に示す例では、前左側走行台車30flおよび前右側走行台車30frのそれぞれは、複数(例えば2つ)の車輪31を備える。図8に示す例では、後左側走行台車30rlおよび後右側走行台車30rrのそれぞれは、複数(例えば2つ)の車輪31を備える。1つの走行台車30に複数の車輪31が設けられることで、車輪31にかかる輪圧を軽減させることができる。この効果は、例えばタンディッシュ本体71が大型である場合などに有効である。車輪31の数は、各走行台車30で共通する必要はない。例えば、車輪31の数は、図1に示す前側走行台車30fと後側走行台車30rとで相違してもよい。具体的には例えば、前側走行台車30fの車輪31は2つずつ、後側走行台車30rの車輪31は1つずつでもよい。車輪31の数は、図7に示す前左側走行台車30flと前右側走行台車30frとで相違してもよい(図8に示す後左側走行台車30rlと後右側走行台車30rrとの関係も同様)。
【0065】
(変形例2)
図3などに示す走行台車30の車輪フレーム33の構成は、様々に変形可能である。
【0066】
(変形例2-1)
図9および図10に、変形例2-1のタンディッシュカー220-1を示す。図3に示す例では、前左側走行台車30flと前右側走行台車30frとで車輪フレーム33が独立して設けられた。また、図4に示す例では、後左側走行台車30rlと後右側走行台車30rrとで車輪フレーム33が独立して設けられた。一方、図9に示すように、本変形例では、前左側走行台車30flと前右側走行台車30frとで車輪フレーム33が共通(一体)でもよい。図10に示すように、後左側走行台車30rlと後右側走行台車30rrとで車輪フレーム33が共通でもよい。
【0067】
図9に示すように、前側走行台車30fの車輪フレーム33は、前左側車輪支持部233flと、前右側車輪支持部233frと、前側連結部233gと、を備える。前左側車輪支持部233flは、図3に示す前左側走行台車30flの車輪フレーム33と同様に、車輪31を支持する。図9に示す前右側車輪支持部233frは、図3に示す前右側走行台車30frの車輪フレーム33と同様に、車輪31を支持する。前側連結部233gは、前左側車輪支持部233flと前右側車輪支持部233frとを連結(一体的に連結)する。前側連結部233gが設けられることにより、タンディッシュカー20の前側X1部分の強度を向上させることができる。この効果は、例えば、昇降フレーム前辺50x1の強度を十分に確保できない場合などに有効である。
【0068】
図10に示すように、後側走行台車30rの車輪フレーム33は、後左側車輪支持部233rlと、後右側車輪支持部233rrと、後側連結部233mと、を備える。後側走行台車30rの車輪フレーム33は、図9に示す前側走行台車30fの車輪フレーム33と略同様に構成される。図10に示す後側走行台車30rの車輪フレーム33について、前側走行台車30f(図9参照)の車輪フレーム33との相違点を説明する。
【0069】
後側連結部233mは、後左側車輪支持部233rlと後右側車輪支持部233rrとを連結(一体的に連結)する。ここで、図4に示す例では、昇降フレーム後辺50x2と、後左側昇降装置40rlの筒状部材41と、後右側昇降装置40rrの筒状部材41とが、前後方向Xから見て略逆U字状(U字を上下逆にしたような形状)の構造物を構成する。そのため、タンディッシュカー20の後側X2部分の強度の確保が難しい場合がある。一方、図10に示す例では、後側連結部233mが設けられる。よって、後側連結部233m、2つの昇降装置40・40、および昇降フレーム後辺50x2が、前後方向Xから見て略矩形状の構造物を構成する。よって、タンディッシュカー220-1の後側X2部分の強度を容易に確保することができる。特に、タンディッシュカー220-1の後側X2部分の、左右方向Yの荷重(外力)に対する強度を向上させることができる(堅牢になる)。
【0070】
この後側連結部233mは、作業者の通路の真上に配置される通路上連結部233zである。通路上連結部233zは、通路上昇降フレーム50zと同様に、作業者が通路を通りやすいように配置されることが好ましい。具体的には、通路上連結部233zは、作業者が通路上連結部233zを容易に跨げるように、鋳込床11aに対する通路上連結部233zの段差を軽減できるように設けられる。さらに具体的には、例えば、通路上連結部233zの上面(上側Z1の面)の少なくとも一部は、後左側車輪支持部233rlの上面よりも下側Z2(低い位置)に配置される(後右側車輪支持部233rrも同様)。例えば、通路上連結部233zの左右方向Y中央部の上面は、後左側車輪支持部233rlの上面よりも下側Z2に配置される(後右側車輪支持部233rrも同様)。
【0071】
(変形例2-2)
図11および図12に、変形例2-2のタンディッシュカー220-2を示す。図5に示す例では、車輪フレーム33に対する車輪31の回転軸は、昇降装置40の中心軸(さらに詳しくはネジ軸45の中心軸)と交差する。一方、図11に示す例では、車輪フレーム33に対する車輪31の回転軸は、昇降装置40の中心軸よりも左右方向Yの外側に配置される。例えば、車輪31の回転軸は、ロッド43の左右方向Yの外側の端よりも、左右方向Yの外側に配置される。例えば、車輪31の回転軸は、筒状部材41の左右方向Y外側の端よりも、左右方向Y外側に配置される。車輪31が左右方向Yの外側に配置されるほど、タンディッシュカー220-2が走行方向(左右方向Y)に転倒することを抑制することができる。この効果は、例えば1つのタンディッシュ本体71に対して引き出される鋳片S(図1参照)が1つ(1ストランドマシン)である場合など、左右方向Yの幅が狭いタンディッシュカー220-2に有効である。
【0072】
(変形例3)
図2に示す昇降フレーム50の構成は、様々に変形可能である。
【0073】
(変形例3-1)
図13に、変形例3-1のタンディッシュカー320-1を示す。図2に示す例では、昇降フレーム50は、上側Z1から見て矩形状であった。一方、図13に示すように、本変形例では、昇降フレーム50は、上側Z1から見て略C字状である。具体的には、タンディッシュカー320-1の昇降フレーム50は、通路上昇降フレーム50z(図2参照)を備えない。よって、作業者が通路を容易に通ることができる。通路上昇降フレーム50zが設けられない場合に、図10に示す通路上連結部233zが設けられない場合(図4参照)は、作業者がより容易に通路を通ることができる。図13に示すように通路上昇降フレーム50zが設けられない場合に、図10に示す通路上連結部233zが設けられる場合は、図13に示す昇降フレーム50の後側X2部分の強度を高めることができる。具体的には、昇降フレーム50の後側X2部分が開いたり閉じたりするのを抑制することができ、後右側昇降装置40rrと後左側昇降装置40rlとの間隔が広がったり狭くなったりすることを抑制することができる。
【0074】
(変形例3-2)
図14に、変形例3-2のタンディッシュカー320-2を示す。本変形例では、昇降フレーム50は、昇降フレーム前辺50x1(図2参照)を備えない。よって、昇降フレーム50に対してタンディッシュ70が傾動され、排滓や排鋼される際(図26参照)に、昇降フレーム前辺50x1(図2参照)が輻射熱に曝される問題が生じない。なお、昇降フレーム前辺50x1が設けられない場合に、図9に示す前側連結部233gが設けられても設けられなくてもよい。
【0075】
(変形例3-3)
図15に、変形例3-3のタンディッシュカー320-3を示す。図2に示す例では、昇降装置40は、上側Z1から見て矩形の昇降フレーム50の4辺の交点に配置された。一方、図15に示すように、本変形例では、昇降装置40の一部は、昇降フレーム50の4辺の交点とは異なる位置に配置される(変形例3-4も同様)。具体例は、以下の通りである。
【0076】
昇降フレーム前辺350x1の左側Y1の端部は、昇降フレーム左辺50y1よりも左側Y1に配置される。昇降フレーム前辺350x1と、昇降フレーム左辺50y1の前側X1端部と、が直接的に(昇降装置40を介さずに)固定される。昇降フレーム前辺350x1の右側Y2の端部は、昇降フレーム右辺50y2よりも右側Y2に配置される。昇降フレーム前辺350x1と、昇降フレーム右辺50y2の前側X1端部と、が直接的に(昇降装置40を介さずに)固定される。昇降装置40は、昇降フレーム前辺350x1の左右方向Yの外側端部に配置される。昇降装置40は、昇降フレーム左辺50y1の左側Y1の端よりも左側Y1に配置される。よって、タンディッシュカー320-3が走行方向(左右方向Y)に転倒することを抑制することができる。昇降装置40は、昇降フレーム右辺50y2の右側Y2の端よりも右側Y2に配置される。よって、タンディッシュカー320-3が走行方向(左右方向Y)に転倒することを抑制することができる。なお、昇降フレーム後辺50x2が、昇降フレーム前辺350x1と同様に構成されてもよい。
【0077】
(変形例3-4)
図16図19に、変形例3-4のタンディッシュカー320-4を示す。図17に示すように、通路上昇降フレーム350z(昇降フレーム後辺50x2)は、昇降フレーム左辺50y1および昇降フレーム右辺50y2のそれぞれの後側X2端部よりも前側X1に配置される。通路上昇降フレーム350zは、昇降フレーム左辺50y1および昇降フレーム右辺50y2のそれぞれに、直接的に(昇降装置40を介さずに)固定される。図19に示すように、通路上昇降フレーム350zは、前後方向Xから見たときに略逆U字などである。例えば、通路上昇降フレーム350zは、第1部分350z1と、第2部分350z2と、を備える。第1部分350z1・350z1は、昇降フレーム右辺50y2および昇降フレーム左辺50y1のそれぞれの上側Z1の面から上側Z1に延びるように設けられる。第2部分350z2は、第1部分350z1・350z1の上側Z1部分どうしをつなぐように設けられる。図19に示す例では、第2部分350z2の下側Z2の面は、例えば張出部材75(例えば第2張出部材75b)の上端よりも上側Z1に配置される。なお、図17に示す昇降フレーム前辺50x1が、通路上昇降フレーム350z(昇降フレーム後辺50x2)と同様に構成されてもよい。
【0078】
(変形例4)
図20図23に示す変形例4のタンディッシュカー420について、上記実施形態との相違点を説明する。図20に示すタンディッシュカー420は、タンディッシュ本体71の内容物の質量を計測できてもよい。鋳込床11aに対するタンディッシュ本体71の前後方向Xの位置は、調整可能でもよい。具体的には例えば、タンディッシュカー420では、昇降フレーム50は、計重装置取付部451(図21参照)を備える。また、タンディッシュカー420は、スライド部材453と、計重装置455と、センタリング部456(前後位置調整部)(図21参照)と、を備える。なお、図23は、各部材の構造の概略を示したものであり、図21図23とで左右方向Yの寸法が対応しない部分がある。
【0079】
計重装置取付部451は、図22に示すように、計重装置455を収容する。計重装置取付部451は、計重装置455を収容したスライド部材453を収容する。計重装置取付部451は、昇降フレーム50に設けられ、さらに詳しくは、図20に示す昇降フレーム左辺50y1および昇降フレーム右辺50y2(図2参照)のそれぞれに設けられる。図23に示すように、計重装置取付部451は、昇降フレーム50の上側Z1の面から下側Z2に凹む凹部である。例えば、計重装置取付部451は、溝でもよく、貫通しない孔でもよく、貫通孔でもよい。
【0080】
スライド部材453は、図22に示すように、計重装置455を収容する部材(ケーシング)である。スライド部材453は、昇降フレーム50に対して前後方向Xにスライド可能である。図23に示すように、スライド部材453は、スライド部材本体部453aと、スライド部材突出部453bと、を備える。スライド部材本体部453aは、計重装置取付部451に収容される。例えば、スライド部材本体部453aは、前後方向Xから見てU字状などである。スライド部材突出部453bは、昇降フレーム50に対するスライド部材453の下側Z2への移動を制限する。スライド部材突出部453bは、昇降フレーム50に対する前後方向Xへの移動をガイドする。スライド部材突出部453bは、具体的には例えば、スライド部材本体部453aの上側Z1端部から左右方向Y外側に突出する。スライド部材突出部453bの下側Z2の面は、昇降フレーム50の上側Z1の面に接触する。
【0081】
計重装置455は、図20に示すタンディッシュ本体71の内容物の質量を測定するための装置である。計重装置455は、タンディッシュ本体71の内容物を含む質量を測定できれば、どこに設けられてもよい。計重装置455は、走行台車30に設けられてもよく、昇降装置40に設けられてもよく、昇降フレーム50に設けられてもよく、載置部60に設けられてもよい。計重装置455は、昇降フレーム50に設けられることが好ましい。上記のように、タンディッシュカー420では、昇降フレーム50の梁せいを容易に確保することが可能であるため、計重装置455を昇降フレーム50に容易に設けることができる(センタリング部456も同様)。例えば、計重装置455は、昇降フレーム50に取り付けられる。例えば、計重装置455は、昇降フレーム50に内蔵される(図21図23参照)。計重装置455は、昇降フレーム50とタンディッシュ70との間に配置されることが好ましい。この場合、重量物である昇降フレーム50を含めずに、タンディッシュ70および内容物を含む質量を測定することができる。この場合、昇降フレーム50の質量を含めた質量を計測する場合に比べ、タンディッシュ70および内容物を含む質量を、精度良く計測することができる。例えば、計重装置455は、昇降フレーム50と載置部60との間に配置される。この場合、計重装置455は、載置部60、タンディッシュ70、および内容物を含む質量を測定することができる。図22に示す例では、計重装置455は、スライド部材453の下側Z2部分(底部)と、載置部60の下側Z2の面と、の間に配置される。計重装置455は、昇降フレーム50に内蔵され、計重装置取付部451の内部に配置される。計重装置455は、スライド部材453の内部に配置される。
【0082】
センタリング部456(前後位置調整部)は、図21に示すように、タンディッシュカー420の走行方向に直交する水平方向(前後方向X)の、タンディッシュ70の位置を変える(調整する)。例えば、センタリング部456は、図20に示す浸漬ノズル73(または吐出口)が、鋳型13の中心位置に配置されるように、鋳込床11aに対するタンディッシュ70の前後方向Xの位置を変える。具体的には、センタリング部456(図21参照)は、昇降フレーム50に対するタンディッシュ70の前後方向Xの位置を変える。センタリング部456は、昇降フレーム50に対するタンディッシュ本体71の前後方向Xの位置を変える結果、昇降フレーム50に対するタンディッシュ70の前後方向Xの位置を変える。さらに具体的には、図21に示すように、センタリング部456は、昇降フレーム50に対する、スライド部材453および載置部60の前後方向Xの位置を変える結果、昇降フレーム50に対するタンディッシュ70(図20参照)の前後方向Xの位置を変える。センタリング部456は、昇降フレーム50に設けられることが好ましい(計重装置455と同様)。センタリング部456は、例えば昇降フレーム50に取り付けられる。さらに詳しくは、センタリング部456は、昇降フレーム50およびスライド部材453に接続される。センタリング部456は、前後方向Xに駆動する装置であり、例えば前後方向Xに伸縮するシリンダ(電動シリンダまたは油圧シリンダ)などである。
【0083】
(第8の発明の効果)
[構成8]図20に示すように、に示すタンディッシュカー420は、計重装置455を備える。計重装置455は、昇降フレーム50に設けられ、タンディッシュ本体71の内容物の質量を測定する。
【0084】
上記[構成8]では、計重装置455は、昇降フレーム50に設けられる。ここで、上記[構成1-1]および[構成1-3]により、昇降フレーム50の梁せいを容易に確保することができる。よって、計重装置455を昇降フレーム50に容易に設けることができる。
【0085】
(第9の発明の効果)
[構成9]タンディッシュカー420は、図21に示すように、センタリング部456(前後位置調整部)を備える。センタリング部456は、昇降フレーム50に設けられ、昇降フレーム50に対するタンディッシュ本体71の前後方向Xの位置を変える。
【0086】
上記[構成9]では、センタリング部456は、昇降フレーム50に設けられる。ここで、上記[構成1-1]および[構成1-3]により、昇降フレーム50の梁せいを容易に確保することができる。よって、センタリング部456を昇降フレーム50に容易に設けることができる。
【0087】
(変形例5)
図24図27に示す変形例5のタンディッシュカー520について、上記実施形態との相違点を説明する。図26に示すように、固定部11に、排滓容器515が設けられる。図24に示すように、タンディッシュ70は、傾動用受け部577を備える。タンディッシュカー520は、タンディッシュ本体71を傾動させる傾動手段580を備える。
【0088】
排滓容器515は、図26に示すように、排滓が入れられる容器(排滓ポット)である。排滓容器515は、床下11bに配置(収納)される。排滓容器515は、前側軌条17fと後側軌条17rとの前後方向Xにおける間に配置される。
【0089】
傾動用受け部577は、後述するロッド先端部583btから力を受ける部分である。図27に示すように、傾動用受け部577は、タンディッシュ本体71の側面(タンディッシュ本体左部71y1およびタンディッシュ本体右部71y2のそれぞれ)から、左右方向Y外側に突出する。図26に示すように、傾動用受け部577は、タンディッシュ本体71が傾動する際に、後述するシリンダロッド583bと張出部材75とが干渉しないような位置に配置される。ここで、図24に示すように、タンディッシュ本体底部71z2が水平方向または略水平方向に延びる状態を、タンディッシュ本体71の「非傾動状態」という。図24に示す例では、タンディッシュ本体71が非傾動状態のときに、傾動用受け部577の上下方向Zにおける位置は、張出部材75の上下方向Zにおける位置と同じである。例えば、タンディッシュ本体71が非傾動状態のときに、傾動用受け部577は、傾動中心A70よりも後側X2に配置され、第1張出部材75aよりも後側X2に配置され、重心G70よりも後側X2に配置される(図25参照)。例えば、タンディッシュ本体71が非傾動状態のときに、傾動用受け部577は、第2張出部材75bよりも前側X1に配置される。図26に示すように、ロッド先端部583btがU字状凹部を備える場合(後述)、傾動用受け部577は、円柱状または円筒状の部材(傾動用トラニオン)などである。
【0090】
傾動手段580は、タンディッシュ本体71を(タンディッシュ70を)傾動中心A70を中心に傾動させる。傾動手段580は、タンディッシュ本体71を傾動させることで、タンディッシュ本体71の内容物を、排滓容器515に、排滓や排鋼させる。傾動手段580は、タンディッシュカー520の機内に設けられる(詳細は後述)。図25に示すように、傾動手段580は、タンディッシュ本体71よりも左右方向Yの外側の両側に設けられる。傾動手段580は(左右の傾動手段580・580のそれぞれは)、傾動駆動部支持部581と、傾動駆動部583と、を備える。
【0091】
傾動駆動部支持部581は、昇降フレーム50に対して傾動駆動部583を回転可能に支持する(図25および図26を参照)。図27に示すように、昇降フレーム50に対する傾動駆動部583の回転軸(傾動駆動部回転軸A583)は、傾動中心A70と平行(または略平行)である。図25に示すように、傾動駆動部支持部581は、昇降フレーム左辺50y1とタンディッシュ本体左部71y1との間に配置される。傾動駆動部支持部581は、昇降フレーム右辺50y2とタンディッシュ本体右部71y2との間に配置される。
【0092】
傾動駆動部583は、図26に示すように、昇降フレーム50に対してタンディッシュ本体71を傾動させるように駆動する。傾動駆動部583は、傾動中心A70を中心にタンディッシュ本体71を傾動させる。図24に示すように、傾動駆動部583は、タンディッシュカー520の機内に配置される。傾動駆動部583は、走行台車30、昇降装置40、および昇降フレーム50の少なくともいずれかに支持される。本変形例では、傾動駆動部583は、昇降フレーム50に支持され、さらに詳しくは、傾動駆動部支持部581を介して昇降フレーム50に支持される。傾動駆動部583は、タンディッシュカー520の機内に配置されるので、タンディッシュ本体71を傾動させるための設備を、タンディッシュカー520とは別に設ける必要がない。よって、タンディッシュカー520の機外に、タンディッシュ本体71を傾動させるための設備を配置するスペースを設ける必要がない。また、タンディッシュカー520の機外のタンディッシュ本体71を傾動させるための設備と、タンディッシュ本体71と、の接続作業が不要であるため、接続作業にかかる時間ロスを抑制することができる。
【0093】
この傾動駆動部583は、図25に示すように、昇降フレーム50とタンディッシュ本体71との間(隙間)に配置される(傾動駆動部支持部581も同様)。傾動駆動部583は、昇降フレーム左辺50y1とタンディッシュ本体左部71y1との間に配置される。傾動駆動部583は、昇降フレーム右辺50y2とタンディッシュ本体右部71y2との間に配置される。
【0094】
この傾動駆動部583は、押上位置(図26参照)と、格納位置(図24参照)と、の間で回動自在に昇降フレーム50に取り付けられる。図26に示すように、押上位置は、傾動駆動部583がタンディッシュ本体71を押し上げ、昇降フレーム50に対してタンディッシュ本体71を傾動させる際の、傾動駆動部583の位置(例えば昇降フレーム50に対する角度)である。押上位置のときの傾動駆動部583の長手方向は、上下方向Zまたは略上下方向Zである。図24に示すように、格納位置は、傾動駆動部583が格納されているときの、傾動駆動部583の位置である。格納位置のときの傾動駆動部583は、タンディッシュカー520の周囲物(後述)との干渉を抑制できるように配置される。具体的には例えば、格納位置のときの傾動駆動部583は、左右方向Yから見たときにタンディッシュ本体71からはみ出さないように配置される。格納位置のときの傾動駆動部583は、左右方向Yから見たときに昇降フレーム50からはみ出さないように配置される。格納位置のときの傾動駆動部583の長手方向は、例えば前後方向X(水平方向)または略前後方向X(略水平方向)である。
【0095】
この傾動駆動部583は、傾動駆動部583の長手方向に伸縮するシリンダ(油圧シリンダまたは電動シリンダ)である。図26に示すように、傾動駆動部583は、シリンダチューブ583aと、シリンダロッド583bと、を備える。シリンダチューブ583aは、昇降フレーム50に回転可能に取り付けられ、具体的には傾動駆動部支持部581に取り付けられる。シリンダロッド583bは、シリンダチューブ583aに対して、シリンダチューブ583aの長手方向に移動可能である。シリンダロッド583bは、ロッド先端部583btを備える。ロッド先端部583btは、シリンダロッド583bのうち、シリンダチューブ583aに差し込まれる側とは反対側の端部である。ロッド先端部583btは、傾動用受け部577に接触し、タンディッシュ本体71を傾動させるための駆動力を傾動用受け部577に伝える。傾動用受け部577が円筒状または円柱状である場合、ロッド先端部583btは、左右方向Yから見てU字状の凹部を有する形状(例えば略Y字状)などである。なお、傾動用受け部577が、左右方向Yから見てU字状の凹部を備え、ロッド先端部583btが、円柱状または円筒状でもよい。
【0096】
(作動)
タンディッシュカー520は、以下のように作動するように構成される。
【0097】
(鋳造時)
図24に示すように、連続鋳造設備1での鋳造時(鋳込時)には、昇降フレーム50は、下降位置に配置される(上記実施形態と同様)。連続鋳造設備1での鋳造時には、傾動駆動部583は、格納位置に配置される。よって、傾動駆動部583が、傾動駆動部583の周囲物と干渉することが抑制される。傾動駆動部583の周囲物は、例えば鋳込床11a、鋳型13、鋳型13のカバー、傾動駆動部583の周辺の機器(図示なし)などである。
【0098】
(走行時)
タンディッシュカー520の走行時には、昇降フレーム50は、上昇位置に配置される(図6参照)(上記実施形態と同様)。タンディッシュカー520の走行時には、傾動駆動部583は、格納位置に配置される。よって、傾動駆動部583が、傾動駆動部583の周囲物と干渉することが抑制される。
【0099】
(傾動)
タンディッシュカー520が、排滓容器515(図6参照)の真上の位置(排滓場、待機位置)に配置され、タンディッシュ本体71が、傾動させられる。この作動の詳細は、次の通りである。図24に示す傾動駆動部583の長手方向の延長上に傾動用受け部577が配置されるように、傾動駆動部583が、昇降フレーム50に対して回転させられる。このとき、例えば、傾動駆動部583の長手方向は、上下方向Zまたは略上下方向Zとなる(図示なし)。この状態で、傾動駆動部583が、伸長させられる。さらに詳しくは、図26に示すシリンダロッド583bが、シリンダチューブ583aに対して上側Z1に移動(進出)する。すると、ロッド先端部583btが、傾動用受け部577に接触する。このとき、傾動駆動部583が、押上位置となる。傾動駆動部583が、さらに伸長させられ、傾動用受け部577を押し上げる。すると、タンディッシュ本体71が、傾動中心A70を中心に傾動する。このとき、タンディッシュ本体前部71x1が下側Z2、タンディッシュ本体後部71x2が上側Z1に移動する向きに、タンディッシュ本体71が傾動する。すると、タンディッシュ本体71の内容物、具体的には残滓(例えばスラグなど)を含む溶けた金属が、タンディッシュ本体71から排滓容器515に排出される(排滓、排鋼される)。
【0100】
なお、排滓時に、昇降フレーム50は、上昇位置(図26参照)でも、下降位置(図24参照)でも、上昇位置と下降位置との間の位置でもよい。また、タンディッシュ本体71が傾動した状態のときに、傾動駆動部583の押上力(推力)が小さくされることで、タンディッシュ本体71が、傾動中心A70を中心に回転し、非傾動状態に戻る。
【0101】
(第4の発明の効果)
図24に示すタンディッシュカー520による効果は、次の通りである。タンディッシュカー520は、傾動駆動部583を備える。
【0102】
[構成4]傾動駆動部583は、前側走行台車30f、後側走行台車30r、昇降装置40、および昇降フレーム50の少なくともいずれかに支持される。傾動駆動部583は、昇降フレーム50に対してタンディッシュ本体71を傾動させるように駆動する。
【0103】
上記[構成4]では、傾動駆動部583は、前側走行台車30f、後側走行台車30r、昇降装置40、昇降フレーム50、およびタンディッシュ本体71の少なくともいずれかに支持される。よって、傾動駆動部583は、タンディッシュカー520の機内に設けられる。よって、タンディッシュカー520とは別に(機外に)、タンディッシュ本体71を傾動させる設備を設ける必要がない。よって、タンディッシュカー520が設けられる連続鋳造設備1(鋳込みヤード)をコンパクトに構成することができる。
【0104】
(第5の発明の効果)
[構成5]図25に示すように、傾動駆動部583は、昇降フレーム50とタンディッシュ本体71との間に配置される。
【0105】
上記[構成5]により、昇降フレーム50とタンディッシュ本体71との隙間のスペースを、傾動駆動部583を配置するスペースとして活用することができる。また、昇降フレーム50に対してタンディッシュ本体71とは反対側(具体的には昇降フレーム50よりも左右方向Y外側)に傾動駆動部583が配置される場合に比べ、傾動駆動部583をタンディッシュ本体71の近くに配置することができる。よって、傾動駆動部583からタンディッシュ本体71への駆動力が作用する部分(具体的には傾動用受け部577)の強度を容易に確保することができる。
【0106】
(第6の発明の効果)
[構成6]図26に示すように、傾動駆動部583は、昇降フレーム50に支持され、タンディッシュ本体71を押し上げることで、昇降フレーム50に対してタンディッシュ本体71を傾動させるように配置される。
【0107】
上記[構成6]では、傾動駆動部583は、タンディッシュ本体71を押し上げる。すなわち、傾動駆動部583からタンディッシュ本体71に作用する力の向きは、上側Z1と一致または略一致する。また、タンディッシュ本体71が非傾動状態(図24参照)から傾動し始めるとき、傾動駆動部583からタンディッシュ本体71に力が作用する部分(具体的には傾動用受け部577)の移動の向きは、上側Z1と一致または略一致する。よって、上記[構成6]により、タンディッシュ本体71が非傾動状態から傾動し始めるときの、傾動駆動部583からタンディッシュ本体71に作用する力の向きと、この力が作用する部分(傾動用受け部577)の移動の向きと、を近づけることができる。よって、傾動駆動部583からタンディッシュ本体71に作用させる力であってタンディッシュ本体71を傾動させるのに必要なの大きさを抑制することができる。その結果、傾動駆動部583を小型化することができる。
【0108】
(第7の発明の効果)
[構成7]傾動駆動部583は、タンディッシュ本体71を押し上げる押上位置と、昇降フレーム50に格納される格納位置(図24参照)と、の間で回動自在に、昇降フレーム50に取り付けられる。
【0109】
上記[構成7]により、傾動駆動部583が押上位置に配置されることで、傾動駆動部583がタンディッシュ本体71を押し上げることができる。また、図24に示すように、傾動駆動部583が、昇降フレーム50に格納される格納位置に配置されることで、傾動駆動部583の周囲物への干渉を抑制することができる。例えば、傾動駆動部583が格納位置に配置され、傾動駆動部583の周囲物への干渉を抑制した状態で、タンディッシュカー520を走行させることができる。また、例えば、傾動駆動部583が格納位置に配置され、傾動駆動部583の周囲物への干渉を抑制した状態で、タンディッシュ本体71から鋳型13に溶けた金属を供給する(鋳込を行う)ことができる。
【0110】
(変形例6)
図28図30に示す変形例6のタンディッシュカー620を備える連続鋳造設備601について、変形例5との相違点を説明する。図24に示す例では、傾動手段580は、タンディッシュカー520の機内に配置された。一方、図28に示すように、本変形例では、傾動手段680は、タンディッシュカー620の機外に配置される。
【0111】
図24に示す例では、タンディッシュ本体71が非傾動状態のときに、傾動用受け部577の上下方向Zにおける位置は、第1張出部材75aの上下方向Zにおける位置と同じであった。一方、図28に示す例では、タンディッシュ本体71が非傾動状態のときに、傾動用受け部577の上下方向Zにおける位置は、第1張出部材75aの上下方向Zにおける位置よりも下側Z2である。この配置により、図29に示すように、タンディッシュ本体71の傾動時に、第1張出部材75aとシリンダロッド583bとの干渉を抑制することができる。
【0112】
傾動手段680は、図28に示すように、固定部11に設けられる。傾動手段680は、傾動駆動部支持部681と、固定側傾動駆動部683と、を備える。図24に示す例では、傾動駆動部支持部581は、昇降フレーム50に設けられた。一方、図28に示す例では、傾動駆動部支持部681は、固定部11に固定され、例えば床下11bに固定され、例えば鋳込床11aに固定されてもよい(図示なし)。
【0113】
固定側傾動駆動部683は、次のように構成される。図24に示す例では、傾動駆動部583は、昇降フレーム50に取り付けられた。一方、図28に示す例では、固定側傾動駆動部683は、固定部11に取り付けられる。さらに詳しくは、固定側傾動駆動部683は、傾動駆動部支持部681を介して、固定部11に回転可能に取り付けられる。例えば、固定側傾動駆動部683では、シリンダチューブ583aの大部分は、床下11bに配置される。ロッド先端部583btは、鋳込床11aよりも上側Z1に配置される。固定側傾動駆動部683は、傾動駆動部583(図24参照)と同様に、例えば固定側傾動駆動部683の長手方向に伸縮するシリンダである。
【0114】
この固定側傾動駆動部683は、図29に示すように、タンディッシュ本体71を押し上げることで、昇降フレーム50に対してタンディッシュ本体71を傾動させるように配置される。固定側傾動駆動部683は、タンディッシュ本体71に水平方向の力が掛からないまたは略掛からないように配置される。具体的には、固定側傾動駆動部683の長手方向は、上下方向Zまたは略上下方向Zである。固定側傾動駆動部683の長手方向が上下方向Zまたは略上下方向Zである状態を維持できるように、傾動駆動部回転軸A583および傾動用受け部577の位置などが設定される。さらに詳しくは、タンディッシュ本体71が傾動する際、固定側傾動駆動部683は、傾動駆動部回転軸A583を中心に円弧運動する。このとき、ロッド先端部583btも、傾動駆動部回転軸A583を中心に、前後方向Xに移動(首振り運動)する。このロッド先端部583btの前後方向Xへの移動ができるだけ小さくなるように、傾動駆動部回転軸A583および傾動用受け部577の位置などが設定される。具体的には、図28に示すように、タンディッシュ本体71が非傾動状態のとき、傾動駆動部回転軸A583は、傾動用受け部577の真下または略真下に配置される。
【0115】
(第10の発明の効果)
図28に示すタンディッシュカー620を備える連続鋳造設備601による効果は、次の通りである。連続鋳造設備601は、固定側傾動駆動部683を備える。
【0116】
[構成10-1]固定側傾動駆動部683は、タンディッシュカー620を下側Z2から支持する固定部11に設けられる。
【0117】
[構成10-2]図29に示すように、固定側傾動駆動部683は、タンディッシュ本体71を押し上げることで、昇降フレーム50に対してタンディッシュ本体71を傾動させるように配置される。
【0118】
上記[構成10-1]により、固定側傾動駆動部683がタンディッシュカー620の機内に設けられる場合に比べ、タンディッシュカー620を小型化することができる。
【0119】
上記[構成10-2]により、タンディッシュ本体71を傾動させるために、固定側傾動駆動部683が、水平方向の大きな力をタンディッシュ本体71に作用させる必要はない。よって固定側傾動駆動部683からタンディッシュ本体71に作用させる力の大きさを抑制することができる。その結果、固定側傾動駆動部683を小型化することができる。
【0120】
(変形例7)
図31図33に示す変形例7のタンディッシュカー720を備える連続鋳造設備701について、変形例6との相違点を説明する。図28に示す例では、傾動手段680は、固定側傾動駆動部683を備えた。一方、図31に示すように、本変形例では、傾動手段780は、固定側傾動駆動部683(図28参照)を備えない。昇降装置40が昇降フレーム50を降下させることで、タンディッシュ本体71が傾動する。
【0121】
図28に示す例では、傾動用受け部577は、ロッド先端部583btが接触可能であった。一方、図31に示す例では、後述する支持部材先端部785tが接触可能である。
【0122】
傾動手段780は、傾動支持部材785を備える。傾動支持部材785は、傾動用受け部577を支持する部材である。傾動支持部材785は、固定部11に設けられる。傾動支持部材785は、例えば鋳込床11aに取り付けられ、例えば床下11bに取り付けられてもよい(図示なし)。傾動支持部材785は、固定部11に回転可能に取り付けられ、例えば前後方向Xに回転可能に固定部11に取り付けられる。図33に示すように、傾動支持部材785は、タンディッシュ本体71の傾動時に、水平方向の力がタンディッシュ本体71に掛からないまたは略掛からないように配置される。傾動支持部材785の長手方向が上下方向Zまたは略上下方向Zとなる状態を維持できるように、固定部11に対する傾動支持部材785の回転軸(支持部材回転軸A785)、および傾動用受け部577の位置が設定される。傾動支持部材785は、例えば棒状(支持棒)である。傾動支持部材785は、支持部材先端部785tを備える。支持部材先端部785tは、例えば図26に示すロッド先端部583btと同様に構成される。
【0123】
(作動)
図31に示すタンディッシュカー720を備える連続鋳造設備701は、次のように作動するように構成される。タンディッシュカー720の作動の概要は、次の通りである。タンディッシュ本体71が傾動支持部材785に支持された状態で、昇降装置40が昇降フレーム50を降下させたときに、傾動支持部材785が、昇降フレーム50に対してタンディッシュ本体71を傾動させる。この作動の具体例は、次の通りである。
【0124】
タンディッシュカー720が、排滓容器515の真上に配置され、昇降フレーム50が、上昇位置に配置される。傾動支持部材785の長手方向が、上下方向Zまたは略上下方向となるように、傾動支持部材785が配置される(立てられる)。支持部材先端部785tが、傾動用受け部577の真下の位置に配置される。支持部材先端部785tが傾動用受け部577の真下の位置に配置された状態で、昇降装置40の駆動により、昇降フレーム50が降下する。すると、傾動用受け部577が、支持部材先端部785tに接触する(載置される)。図32および図33に示すように、昇降フレーム50がさらに降下する。このとき、傾動用受け部577の高さは略一定であるとともに、傾動中心A70が降下する。その結果、タンディッシュ本体71が、傾動中心A70を中心に傾動する。このとき、傾動支持部材785が、支持部材回転軸A785を中心にわずかに回転する。このとき、支持部材先端部785tが、支持部材回転軸A785を中心にわずかに前後方向Xに回転する。傾動支持部材785が固定部11に対して回転自在なので、傾動支持部材785が傾動用受け部577を適切に支持できる(傾動支持部材785がこじれない)。
【0125】
(第11の発明の効果)
図31に示すタンディッシュカー720を備える連続鋳造設備701による効果は、次の通りである。連続鋳造設備701は、傾動支持部材785を備える。
【0126】
[構成11]傾動支持部材785は、タンディッシュカー720を下側Z2から支持する固定部11に設けられる。図32に示すように、傾動支持部材785は、タンディッシュ本体71が傾動支持部材785に支持された状態で、昇降装置40が昇降フレーム50を降下させたときに、昇降フレーム50に対してタンディッシュ本体71を傾動させるように配置される。
【0127】
上記[構成11]では、昇降フレーム50を昇降させる昇降装置40が、昇降フレーム50に対してタンディッシュ本体71を傾動させる。よって、昇降装置40とは別に、タンディッシュ本体71を傾動させるための駆動装置(例えば固定側傾動駆動部683(図28参照)など)が設けられる場合に比べ、連続鋳造設備701を簡素に構成することができる。
【0128】
(変形例8)
図34図36に、変形例8のタンディッシュカー820を示す。図1に示すタンディッシュカー20では、1つのタンディッシュ本体71に対して、1つの鋳型13が設けられ、1つの鋳片Sが引き出される。すなわちタンディッシュカー20のストランド数は1である。一方、図34に示すように、タンディッシュカー820のストランド数は複数でもよい。タンディッシュカー820のストランド数は、図34に示す例では3である。この場合、図35に示す浸漬ノズル73(または排出口)は、左右方向Yに並ぶように、左右方向Yに間隔をあけて複数設けられる。
【0129】
(他の変形例)
上記実施形態および各変形例は、さらに様々に変形されてもよい。例えば、互いに異なる実施形態および変形例の構成要素どうしが組み合わされてもよい。例えば、各構成要素の配置や形状が変更されてもよい。例えば、構成要素の数が変更されてもよく、構成要素の一部が設けられなくてもよい。例えば、構成要素どうしの固定や連結などは、直接的でも間接的でもよい。例えば、互いに異なる複数の部材や部分として説明したものが、一つの部材や部分とされてもよい。例えば、一つの部材や部分として説明したものが、互いに異なる複数の部材や部分に分けて設けられてもよい。
【符号の説明】
【0130】
1、601、701 連続鋳造設備
11 固定部
17f 前側軌条
17r 後側軌条
20、120、220-1、220-2、320-1、320-2、320-3、320-4、420、520、620、720、820 タンディッシュカー
30f 前側走行台車
30r 後側走行台車
40 昇降装置
50 昇降フレーム
50z、350z 通路上昇降フレーム(昇降フレーム特定部)
71 タンディッシュ本体
75 張出部材
455 計重装置
456 センタリング部(位置調整部)
583 傾動駆動部
683 固定側傾動駆動部
785 傾動支持部材
X 前後方向
Y 左右方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
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図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31
図32
図33
図34
図35
図36