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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-18
(45)【発行日】2024-11-26
(54)【発明の名称】汚染水処理設備および汚染水処理方法
(51)【国際特許分類】
   G21F 9/06 20060101AFI20241119BHJP
   G21F 9/12 20060101ALI20241119BHJP
【FI】
G21F9/06 561
G21F9/06 511A
G21F9/06 511E
G21F9/12 501K
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2021084161
(22)【出願日】2021-05-18
(65)【公開番号】P2022177725
(43)【公開日】2022-12-01
【審査請求日】2024-03-07
(73)【特許権者】
【識別番号】507250427
【氏名又は名称】日立GEニュークリア・エナジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】馬渕 勝美
(72)【発明者】
【氏名】浅野 隆
(72)【発明者】
【氏名】岩佐 淳司
(72)【発明者】
【氏名】小林 慶鑑
【審査官】坂上 大貴
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-170959(JP,A)
【文献】特開2012-71263(JP,A)
【文献】特開2013-124918(JP,A)
【文献】特開2015-59852(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21F 9/00-9/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射性核種を含む汚染水を処理する汚染水処理設備であり、
前記汚染水を電気分解して次亜塩素酸含有液を生成する電解槽と、
前記汚染水および前記次亜塩素酸含有液を攪拌して、その攪拌液中に含まれる放射性核種を酸化態にする攪拌槽と、を備える
ことを特徴とする汚染水処理設備。
【請求項2】
請求項1において、
前記電解槽の前に、取り込んだ前記汚染水を濃縮して濃縮汚染水とする逆浸透濃縮塔を備えており、
前記電解槽で電気分解される前記汚染水が、前記逆浸透濃縮塔で濃縮された前記濃縮汚染水である
ことを特徴とする汚染水処理設備。
【請求項3】
請求項1において、
前記攪拌槽の前に、前記電解槽と、取り込んだ前記汚染水を濃縮して濃縮汚染水とする逆浸透濃縮塔と、を備えており、
前記攪拌槽は、前記汚染水として前記逆浸透濃縮塔で濃縮された前記濃縮汚染水を取り込み、かつ、前記電解槽から前記次亜塩素酸含有液を取り込んで、その攪拌液を攪拌する
ことを特徴とする汚染水処理設備。
【請求項4】
請求項1において、
前記電解槽および前記攪拌槽の前に、取り込んだ前記汚染水を濃縮して濃縮汚染水とする逆浸透濃縮塔を備えており、
前記電解槽は、前記汚染水として前記逆浸透濃縮塔で濃縮された前記濃縮汚染水を取り込んで電気分解を行い、前記次亜塩素酸含有液を生成し、
前記攪拌槽は、前記汚染水として前記逆浸透濃縮塔で濃縮された前記濃縮汚染水を取り込み、かつ、前記電解槽において前記濃縮汚染水から生成された前記次亜塩素酸含有液を取り込んで、その攪拌液を攪拌する
ことを特徴とする汚染水処理設備。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1項において、
前記攪拌槽における次亜塩素酸濃度を、前記電解槽において電極に供給する電流密度で制御する
ことを特徴とする汚染水処理設備。
【請求項6】
請求項3または請求項4において、
前記攪拌槽における次亜塩素酸濃度を、前記電解槽において電極に供給する電流密度と、前記逆浸透濃縮塔から取り込んだ前記濃縮汚染水および前記電解槽から取り込んだ前記次亜塩素酸含有液の流量比と、で制御する
ことを特徴とする汚染水処理設備。
【請求項7】
請求項1から請求項4のいずれか1項において、
前記攪拌槽における次亜塩素酸濃度が、50ppm以下である
ことを特徴とする汚染水処理設備。
【請求項8】
請求項1から請求項4のいずれか1項において、
前記攪拌槽の後に、前記攪拌液に含まれる次亜塩素酸を除去する活性炭塔と、前記攪拌液に含まれる放射性核種を吸着除去する複数の吸着塔と、をこの順に有し、かつ、
前記活性炭塔と前記複数の吸着塔のうちの最初の吸着塔との間に、前記攪拌液の酸化還元電位を測定して前記次亜塩素酸の有無を検出する酸化還元電位測定装置を備えている
ことを特徴とする汚染水処理設備。
【請求項9】
請求項8において、
前記酸化還元電位測定装置が前記次亜塩素酸を検出した場合に、前記電解槽による前記汚染水の電気分解を停止する第1停止機構を有する
ことを特徴とする汚染水処理設備。
【請求項10】
請求項8において、
前記電解槽と前記攪拌槽との間に、前記攪拌槽への前記攪拌液の供給流量を調節する流量調節弁を有しており、
前記酸化還元電位測定装置が前記次亜塩素酸を検出した場合に、前記電解槽による前記汚染水の電気分解を停止する第1停止機構および前記流量調節弁を調節して前記電解槽から前記攪拌槽への前記次亜塩素酸含有液の供給を停止する第2停止機構を有する
ことを特徴とする汚染水処理設備。
【請求項11】
請求項1から請求項4のいずれか1項において、
前記放射性核種が、遷移金属、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類、ハロゲンまたは非金属である
ことを特徴とする汚染水処理設備。
【請求項12】
請求項11において、
前記遷移金属が、ルテニウム、テクネチウムおよびニオブから選択される少なくとも1種であり、
前記アルカリ金属が、セシウムであり、
前記アルカリ土類金属が、ストロンチウムであり、
前記希土類が、セリウムであり、
前記ハロゲンが、アンチモン、テルルおよびヨウ素から選択される少なくとも1種であり、
前記非金属が、炭素およびホウ素から選択される少なくとも1種である
ことを特徴とする汚染水処理設備。
【請求項13】
放射性核種を含む汚染水を処理する汚染水処理方法であり、
前記汚染水を電気分解して次亜塩素酸含有液を生成する電解工程と、
前記汚染水および前記次亜塩素酸含有液を攪拌して、その攪拌液中に含まれる放射性核種を酸化態にする攪拌工程と、
を有することを特徴とする汚染水処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、汚染水処理設備および汚染水処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明の背景技術として、特許文献1、2がある。特許文献1には、放射性廃液、特に高濃度の塩を含む放射性廃液から放射性核種を分離除去することを目的として、放射性核種を含む放射性廃液から放射性核種を分離除去するにあたり、放射性廃液に酸化剤または還元剤或いはpH調整剤を添加し、その後放射性廃液を吸着材に通水して放射性核種を吸着除去する放射性廃液の処理方法が記載されている。特許文献1には、酸化剤としてオゾン、過酸化水素、過マンガン酸およびその塩の水溶液、次亜塩素酸およびその塩の水溶液のいずれか1つ以上を添加できる旨記載されている。特許文献1には、還元剤としてアスコルビン酸、ヒドラジン、シュウ酸のいずれか1つ以上を添加できる旨記載されている。特許文献1には、pH調整剤として塩酸、硝酸、硫酸、リン酸、炭酸水素ナトリウム水溶液、炭酸ナトリウム水溶液、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液のいずれか一つ以上を添加できる旨記載されている。ここで添加される各種酸化剤は、それぞれタンク内に保存し、それから供給するシステムとなっている。
【0003】
また、特許文献2には、放射性ヨウ素を含有する放射性物質汚染水の除染方法であって、ヨウ素吸着剤を用いて除染処理した後の汚染水を酸化処理し、次いで、ヨウ素酸イオン吸着剤を用いて通水処理する除染方法が記載されている。特許文献2には、前記酸化処理に、次亜塩素酸塩水溶液、次亜臭素酸塩水溶液、過酸化水素水、オゾンガスから選択される1種以上の酸化促進剤を用いる旨記載されている。また、特許文献2には、注入ラインを使用して汚染水にそれらを導入する旨記載されている。
【0004】
これらに示された酸化剤などの添加は、いずれにおいても汚染水中に含まれている放射性核種を効率よく除去するために用いられている技術である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2013-170959号公報
【文献】特開2020-8498号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
背景技術の説明で述べたように、汚染水に含まれる放射性核種を吸着材で効率良く除去するためには、様々な酸化剤を使用する必要がある。特許文献1、2に記載された技術においては、酸化剤を添加するために、いずれもタンク内に酸化剤を貯蔵して、それをポンプ等で供給するシステムを採用している。しかしながら、効率良く放射性核種を除去できる酸化剤は、それ自身が分解し易く、安定性が乏しく、長期保存が困難であるという問題がある。酸化剤を長期保存するためには、低温での保存が不可欠であり、コストがかかるという問題点がある。そのため、タンク等で酸化剤を保存し、ポンプで供給するという形式以外の手法の開発が熱望されていた。
【0007】
本発明は前記状況に鑑みてなされたものであり、酸化剤の長期保存が不要な汚染水処理設備および汚染水処理方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決した本発明に係る汚染水処理設備は、放射性核種を含む汚染水を処理する汚染水処理設備であり、前記汚染水を電気分解して次亜塩素酸含有液を生成する電解槽と、前記汚染水および前記次亜塩素酸含有液を攪拌して、その攪拌液中に含まれる放射性核種を酸化態にする攪拌槽と、を備えている。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、酸化剤の長期保存が不要な汚染水処理設備および汚染水処理方法を提供できる。
前記した以外の課題、構成および効果は以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の第1実施形態に係る汚染水処理設備100の要部の構成を説明する概略図である。
図2】逆浸透濃縮し、塩化物イオン濃度を高めた汚染水を電解した場合における電流密度と有効塩素濃度との関係の線流速依存性として示したグラフである。図中の横軸は有効塩素濃度(ppm)であり、縦軸は電流密度(A/dm)である。
図3】汚染水を濃縮しない場合における電流密度と有効塩素濃度との関係の線流速依存性として示したグラフである。図中の横軸は有効塩素濃度(ppm)であり、縦軸は電流密度(A/dm)である。
図4】有効塩素濃度と次亜塩素酸濃度との関係を示すグラフである。図中の横軸は有効塩素濃度(ppm)であり、縦軸は次亜塩素酸濃度(ppm)である。
図5】20000ppmのClおよび15ppmのClOを含む溶液をpH3.5に調整した際の酸化還元電位(ORP)およびpHの変化を示すグラフである。図中の横軸は時間(Time)(h)であり、縦軸はORP(mV vs.Ag/AgCl)である。
図6】20000ppmのClおよび15ppmのClOを含む溶液をpH8.5に調整した際の酸化還元電位(ORP)およびpHの変化を示すグラフである。図中の横軸は時間(Time)(h)であり、縦軸はORP(mV vs.Ag/AgCl)である。
図7】第2実施形態に係る汚染水処理設備200の要部の一構成例を説明する概略図である。
図8】第3実施形態に係る汚染水処理設備300の要部の一構成例を説明する概略図である。
図9】第4実施形態に係る汚染水処理設備400の要部の一構成例を説明する概略図である。
図10】第5実施形態に係る汚染水処理設備500の要部の一構成例を説明する概略図である。
図11】第6実施形態に係る汚染水処理方法の内容を説明するフローチャートである。
図12】第6実施形態に係る汚染水処理方法の他の態様の内容を説明するフローチャートである。
図13】第6実施形態に係る汚染水処理方法の他の態様の内容を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、適宜図面を参照して本発明に係る汚染水処理設備および汚染水処理方法の一実施形態について詳細に説明する。
〔第1実施形態〕
図1は、本発明の第1実施形態に係る汚染水処理設備100の要部の構成を説明する概略図である。汚染水処理設備100は、放射性核種を含む汚染水を処理する汚染水処理設備である。
【0012】
図1に示すように、汚染水処理設備100は、少なくとも電解槽3と攪拌槽6とを備えている。電解槽3は、前記した汚染水を電気分解して次亜塩素酸含有液を生成する。電解槽3は、汚染水を電気分解するための電極4と、電極4に電気を供給する直流電源5とを有する。攪拌槽6は、汚染水および次亜塩素酸含有液を攪拌して、その攪拌液中に含まれる放射性核種を酸化態にする。攪拌槽6における攪拌液の次亜塩素酸濃度は、50ppm以下であることが好ましい。このようにすると、効率よく放射性核種を酸化態にすることができる。
【0013】
放射性核種としては、例えば、遷移金属、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類、ハロゲン、非金属などが挙げられる。遷移金属としては、例えば、ルテニウム、テクネチウムおよびニオブから選択される少なくとも1種が挙げられる。アルカリ金属としては、例えば、セシウムが挙げられる。アルカリ土類金属としては、例えば、ストロンチウムが挙げられる。希土類としては、例えば、セリウムが挙げられる。ハロゲンとしては、例えば、アンチモン、テルルおよびヨウ素から選択される少なくとも1種が挙げられる。非金属としては、例えば、炭素およびホウ素から選択される少なくとも1種が挙げられる。ただし、放射性核種は前記したものに限定されない。
【0014】
ここで、汚染水処理設備100が酸化剤の長期保存が不要になる理由について説明する。汚染水は多量の塩化物イオン(Cl)を含んでいる。そのため、汚染水を電解することにより下記のように次亜塩素酸(HClO)を発生させることができる。なお、電解した場合、それぞれの電極においては以下の反応が生じる。
<アノード側>
(1) 2Cl→Cl+2e
(2) 塩素の不均化反応 Cl+HO→HCl+HClO
(3) 酸素と水素イオンの発生 H→1/2O+2H+2e
<カソード側>
(1) 水素と水酸化物イオンの発生 2HO+2e→H+2OH
【0015】
隔膜を使用しない場合、アノードで発生した水素イオンとカソードで発生した水酸化物イオンは直ちに中和して中性となる。汚染水処理設備100は、このようにして汚染水から発生させた次亜塩素酸を酸化剤として用いる。従って、汚染水処理設備100は、その場で次亜塩素酸を製造しそれを供給できるので、別途、次亜塩素酸保存用のタンクや配管ライン、ポンプなどを設置する必要がなく、酸化剤(次亜塩素酸)の長期保存が不要である。
【0016】
なお、次亜塩素酸濃度は、電極4に流す電流密度で制御できる。より具体的には、電解槽3において発生させる次亜塩素酸濃度は、電解槽3内における汚染水の線流速と電流密度により決まり、これらにより制御できる。図2は、逆浸透濃縮(RO濃縮)し、塩化物イオン濃度を高めた汚染水を電解した場合における電流密度と有効塩素濃度との関係の線流速依存性として示したグラフである。なお、図2のグラフの作成にあたり、電極は、チタン板に白金-酸化イリジウムで被覆したものを使用した。電解槽3の電極4もこれと同じものを使用できる。なお、電極4は前記したもの以外にも、例えば、白金、白金-チタン、過酸化鉛、黒鉛、磁性酸化鉄、鉛-銀などを用いて作製されたものを使用することができる。
【0017】
図2に示す例から、例えば、次亜塩素酸濃度を50ppmに設定したい場合、流速0.5cm/sでは、0.1A/dmに設定すればよいことが分かる。このように、流速が分かれば、電流密度制御に有効塩素濃度、次亜塩素酸の濃度の制御が可能となる。なお、この関係は、当然、塩化物イオン濃度により変化する。
【0018】
例えば、図3は、汚染水を濃縮しない場合における電流密度と有効塩素濃度との関係の線流速依存性として示したグラフである。図3のグラフの作成にあたり、電極は、前記同様、チタン板に白金-酸化イリジウムで被覆したものを使用した。図3に示すように、電流密度の変化による有効酸素濃度の変化量は、汚染水を濃縮した場合と比較するといずれの線流速においても小さいことから、汚染水を濃縮した方がより精度の良い次亜塩素酸濃度の制御が可能であることが分かる。
【0019】
なお、図4は、有効塩素濃度と次亜塩素酸濃度との関係を示すグラフである。図4に示すように、有効塩素濃度と次亜塩素酸濃度とは略一次関数的に増大する関係にある。すなわち、有効塩素濃度をモニタすることにより次亜塩素酸濃度を精度よく把握することができる。有効塩素濃度のモニタは、酸化還元電位測定装置で汚染水の酸化還元電位を測定することにより行うことができる。このようにすると、測定の正確性や簡便性が高く、リアルタイムでの制御が可能になる。
【0020】
従って、汚染水処理設備100は、図4に示すように、有効塩素濃度から次亜塩素酸濃度を把握しつつ、図2図3に示すように、汚染水の線流速および電流密度を適宜調節することにより、電解槽3で発生させる有効塩素濃度、ひいては、攪拌槽6における次亜塩素酸の濃度を任意に調整できる。
【0021】
海水と同程度の濃度を含む塩化物水溶液中において、次亜塩素酸は、低pHの状態では数時間で分解する。図5は、20000ppmのClおよび15ppmのClOを含む溶液をpH3.5に調整した際の酸化還元電位(ORP)およびpHの変化を示すグラフである。図5に示すように、40℃の条件下、Clを20000ppm含有するpH3.5の溶液にClOが15ppmになるように次亜塩素酸ナトリウムを添加すると、酸化還元電位は300mV付近から急激に1050mV付近までシフトした。次亜塩素酸ナトリウムを添加したためpHが若干アルカリ側にシフトするので、HClを添加してpHを3.5付近に再調整した。その結果、酸化還元電位は、HClを添加した2時間後付近から卑側にシフトし始め、ほぼ6時間程度でClOの添加前とほぼ同じ値に戻った。
【0022】
なお、図6は、20000ppmのClおよび15ppmのClOを含む溶液をpH8.5に調整した際の酸化還元電位およびpHの変化を示すグラフである。図6に示すように、25℃の条件下、Clを20000ppm含有するpH8.5の溶液にClOが15ppmになるように次亜塩素酸ナトリウムを添加すると、酸化還元電位は200mV付近から急激に750mV付近までシフトした後、徐々に貴側にシフトした。pH8.5の溶液の場合、pH3.5の溶液の場合とは違って、20時間経過しても酸化還元電位は低下しなかった。従って、本実施形態においては、次亜塩素酸含有液のpHが中性付近になるようにpH調整剤などを添加して調整してもよい。このようにすると、次亜塩素酸の分解を抑制できる。
【0023】
図5および図6に示すこれらのことは、酸化還元電位は次亜塩素酸濃度の変化に対応していること、および、酸性では次亜塩素酸が分解してしまうが、pH8程度の中性では次亜塩素酸は分解しないことを示している。汚染水処理設備100は、電解槽3で放射性核種を含む汚染水を電気分解して次亜塩素酸含有液を生成し、その後直ぐに生成した次亜塩素酸含有液と別途取り込んだ汚染水とを攪拌槽6で混合して攪拌し、その攪拌液中に含まれる放射性核種を酸化態にする。従って、汚染水処理設備100は、次亜塩素酸を生成しつつこれが分解される前に使用するので、次亜塩素酸(酸化剤)の長期保存が不要である。また、汚染水処理設備100は、酸化剤を貯蔵するタンクや供給するためのポンプおよび配管ラインが不要であるため、設備の建設コストやランニングコストなどを低廉化することができる。また、汚染水処理設備100は、酸化剤としての次亜塩素酸を購入する必要がなくなるか、または大幅に低減できるので、酸化剤の購入コストを削減できる。
【0024】
〔第2実施形態〕
次に、図7を参照して、第2実施形態に係る汚染水処理設備200について説明する。なお、以下の説明において、既に説明している構成要素については同一の符号を付し、重複する説明は省略する場合がある。図7は、第2実施形態に係る汚染水処理設備200の要部の一構成例を説明する概略図である。
【0025】
図7に示すように、汚染水処理設備200は、第1実施形態に係る汚染水処理設備100の電解槽3の前に、逆浸透濃縮塔1を有している。すなわち、汚染水処理設備200は、逆浸透濃縮塔1、電解槽3、攪拌槽6の順にこれらが直列に設けられている。
また、汚染水処理設備200は、第1実施形態に係る汚染水処理設備100の攪拌槽6の後に、第1酸化還元電位測定装置7、活性炭塔8、第2酸化還元電位測定装置9、第1吸着塔10、第2吸着塔11、第3吸着塔12、還元剤塔13、第4吸着塔14をこの順で有している。
【0026】
逆浸透濃縮塔1は、外部から取り込んだ前記汚染水を、逆浸透膜を用いて濃縮し、濃縮汚染水とするものである。従って、汚染水処理設備200では、電解槽3で電気分解される汚染水は、逆浸透濃縮塔1で濃縮された濃縮汚染水となる。濃縮汚染水には、濃縮していない汚染水と比較して高濃度のClが含まれているので、その分、電気分解により次亜塩素酸濃度を高めることができる。そのため、攪拌槽6において攪拌液中の放射性核種がより酸化態になり易くなる。従って、汚染水処理設備200は、酸化剤の長期保存が不要となる。逆浸透膜は公知のものを使用できるが、放射性核種の使用に耐えるものを用いることが好ましい。
【0027】
第1酸化還元電位測定装置7および第2酸化還元電位測定装置9は、配管ライン中の溶液の酸化還元電位を測定するものである。また、本実施形態においては、これらの酸化還元電位測定装置とともにpH測定装置を備えていることが好ましい。pH測定装置を備えていると溶液のpHを測定できるので、次亜塩素酸の有無や濃度をより正確に測定できる。酸化還元電位測定装置およびpH測定装置は、公知のものを使用できる。
【0028】
活性炭塔8は、活性炭を備えており、この活性炭と攪拌液とを接触させることにより、攪拌液に含まれる次亜塩素酸を除去する。活性炭は公知のものを用いることができる。
【0029】
第1吸着塔10、第2吸着塔11、第3吸着塔12および第4吸着塔14はそれぞれ、除去したい放射性核種(例、ストロンチウムやセシウムなど)に対応する樹脂製の吸着材有しており、対応する放射性核種を当該吸着材に吸着させて除去する。つまり、放射性核種を除去するプロセスは、第1吸着塔10、第2吸着塔11、第3吸着塔12および第4吸着塔14で行われる。
なお、図7では、第1吸着塔10~第4吸着塔14の4つを示しているが、その数はこれに限定されず、吸着したい放射性核種の種類や数に応じて適宜増減できる。本実施形態では、例えば、第4吸着塔14が、除去が難しいとされている放射性ヨウ素を吸着対象としている。吸着材は、吸着したい放射性核種の種類に応じた公知のものを使用できる。
【0030】
還元剤塔13は、第4吸着塔14で放射性ヨウ素を除去し易くするため、次亜塩素酸で酸化態にさせた放射性ヨウ素を還元態にする。還元剤塔13は、例えば、L-アスコルビン酸、硫酸鉄、亜硫酸塩、ヒドラジンなどの還元剤を攪拌液に添加し、攪拌する。これにより、前記したように酸化態の放射性ヨウ素を還元態にすることができる。
図7では、還元剤塔13は、第3吸着塔12と第4吸着塔14の間の配管に還元剤を供給する記載となっている。しかし、この例にとらわれず、第3吸着塔12と第4吸着塔14との間に還元剤塔13が配置され、第3吸着塔12から供給からの汚染水に還元剤塔13内で還元剤を供給・攪拌し、その汚染水を後段の第4吸着塔14に供給する構成でもよい。
【0031】
次亜塩素酸は、吸着材などの樹脂や、表面を樹脂などでコーティングしていない金属製の配管ラインおよび吸着塔の構造体などの腐食を加速する。そのため、放射性核種を除去するための吸着塔に次亜塩素酸が流入することを防止することが好ましい。本実施形態では、これを達成するために活性炭塔8を攪拌槽6の後に設置し、活性炭塔8で次亜塩素酸を除去するシステム構成となっている。
【0032】
また、汚染水処理設備200は、逆浸透濃縮塔1と電解槽3との間に、流速測定装置2を備えている。流速測定装置2は、逆浸透濃縮塔1から電解槽3に供給する汚染水(濃縮汚染水)の線流速を測定する。汚染水処理設備200の制御部(例、コンピュータなどで構成されたコントロールシステム(図示せず))は、流速測定装置2で測定した線流速を考慮して、攪拌槽6における次亜塩素酸濃度が所定の目標値となるように、電極4に印加する電流値を決定する。前述したように、塩化物イオン濃度(有効塩素濃度)が変化すれば、同じ電流密度で電解していても発生する次亜塩素酸濃度が異なる。そのため、第1酸化還元電位測定装置7が、好ましくはpH測定装置とともに、常に次亜塩素酸濃度を測定し、その測定結果を基に、前記制御部が直流電源5にフィードバックをかけて制御することが好ましい。つまり、前記制御部が、攪拌槽6における次亜塩素酸濃度が所定の目標値となるように、電解槽3において電極4に供給する電流密度で制御することが好ましい。このようにすると、次亜塩素酸濃度の制御を好適に行うことができる。
【0033】
また、何らかのトラブルで活性炭塔8の機能が働かなかったり、非定常状態になったりして、一定濃度以上の次亜塩素酸が、活性炭塔8と複数の吸着塔のうちの最初の吸着塔(第1吸着塔10)との間に備えられた第2酸化還元電位測定装置9で検出された場合は、下流側の第1吸着塔10~第4吸着塔14の腐食による損傷が懸念される。その際は、前記制御部は、活性炭塔8が次亜塩素酸を処理しきれなかったと判断し、電解槽3による汚染水の電気分解を停止する(第1停止機構)。具体的には、直流電源5から電極4への電力供給を停止する。これにより、電解槽3は、次亜塩素酸の発生を止めることができ、下流側の第1吸着塔10~第4吸着塔14に次亜塩素酸が含まれる処理水(攪拌液)が流れることを防止できる。従って、汚染水処理設備200は、次亜塩素酸による吸着材などの樹脂や、表面を樹脂などでコーティングしていない金属製の配管ラインおよび吸着塔の構造体などの腐食を防止することができる。
【0034】
〔第3実施形態〕
次に、図8を参照して、第3実施形態に係る汚染水処理設備300について説明する。図8は、第3実施形態に係る汚染水処理設備300の要部の一構成例を説明する概略図である。
【0035】
図8に示すように、汚染水処理設備300は、第1実施形態に係る汚染水処理設備100の攪拌槽6の前に、電解槽3と逆浸透濃縮塔1とを備えている。
また、汚染水処理設備300は、第1実施形態に係る汚染水処理設備100の攪拌槽6の後に、第1酸化還元電位測定装置7、活性炭塔8、第2酸化還元電位測定装置9、第1吸着塔10、第2吸着塔11、第3吸着塔12、還元剤塔13、第4吸着塔14をこの順で有している。すなわち、汚染水処理設備300の攪拌槽6以降の構成は第2実施形態と同様であるのでその説明は省略し、攪拌槽6の前の構成および効果等を中心に以下説明する。
【0036】
図8に示すように、汚染水処理設備300は、電解槽3と逆浸透濃縮塔1とを並列に設けている。そして、汚染水処理設備300は、外部から取り込んだ汚染水を電解槽3と逆浸透濃縮塔1との両方に供給する。汚染水処理設備300における電解槽3は、取り込んだ汚染水を前記したように電気分解して次亜塩素酸含有液を生成する。また、汚染水処理設備300における逆浸透濃縮塔1は、同じく取り込んだ汚染水を濃縮して濃縮汚染水とする。そして、このようにして生成された次亜塩素酸含有液および濃縮汚染水(汚染水)は、攪拌槽6に取り込まれる。このような態様とした場合も、攪拌槽6は、取り込んだ次亜塩素酸含有液および濃縮汚染水を攪拌して、その攪拌液中に含まれる放射性核種を酸化態にする。従って、汚染水処理設備300も、酸化剤の長期保存が不要である。
【0037】
なお、前述した例では、攪拌槽6における次亜塩素酸濃度を、電解槽3において電極4に供給する電流密度のみで制御していた。これに対し、第3実施形態に係る汚染水処理設備300では、電解槽3が、逆浸透濃縮塔1→攪拌槽6の配管ラインとは別の配管ライン上に設けられている。そのため、汚染水処理設備300では、攪拌槽6における次亜塩素酸濃度を、電解槽3で電極4に供給する電流密度に加えて、逆浸透濃縮塔1から取り込む濃縮汚染水および電解槽3から取り込む次亜塩素酸含有液の流量比で制御することができる。このようにすると、汚染水処理設備300では、攪拌槽6における次亜塩素酸濃度を制御する制御手段が増えるため、前述した例と比較してより細やかにかつ正確にこれを制御できる。流量比で制御された攪拌液中の次亜塩素酸濃度は、前記したように、例えば、50ppm以下とすることが好ましい。
【0038】
また、前記したように、汚染水処理設備300は、攪拌槽6の後に、活性炭塔8と、攪拌液に含まれる放射性核種を吸着除去する複数の吸着塔(例、第1吸着塔10、第2吸着塔11、第3吸着塔12、第4吸着塔14)とをこの順で有している。
また、汚染水処理設備300は、活性炭塔8と、複数の吸着塔のうちの最初の吸着塔(第1吸着塔10)との間に、第2酸化還元電位測定装置9を備えている。
さらに、汚染水処理設備300は、電解槽3と攪拌槽6との間に、攪拌槽6への攪拌液の供給流量を調節する流量調節弁15を有している。
【0039】
汚染水処理設備300の制御部は、第2酸化還元電位測定装置9が次亜塩素酸を検出した場合、活性炭塔8が次亜塩素酸を処理しきれなかったと判断し、電解槽3による汚染水の電気分解を停止する(第1停止機構)。具体的には、汚染水処理設備300の制御部は、直流電源5から電極4への電力供給を停止する。また、汚染水処理設備300の制御部は、汚染水の電気分解の停止とともに、流量調節弁15を調節して電解槽3から攪拌槽6への次亜塩素酸含有液の供給(取り込み)を停止する(第2停止機構)。汚染水処理設備300は、第1停止機構により電解槽3における次亜塩素酸の発生を止めることができ、第2停止機構により下流側の第1吸着塔10~第4吸着塔14に次亜塩素酸が含まれる処理水(攪拌液)が流れることをより確実に防止できる。
【0040】
〔第4実施形態〕
次に、図9を参照して、第4実施形態に係る汚染水処理設備400について説明する。図9は、第4実施形態に係る汚染水処理設備400の要部の一構成例を説明する概略図である。
【0041】
図9に示すように、汚染水処理設備400は、第1実施形態に係る汚染水処理設備100の電解槽3および攪拌槽6の前に、逆浸透濃縮塔1を備えている。
また、汚染水処理設備400は、第1実施形態に係る汚染水処理設備100の攪拌槽6の後に、第1酸化還元電位測定装置7、活性炭塔8、第2酸化還元電位測定装置9、第1吸着塔10、第2吸着塔11、第3吸着塔12、還元剤塔13、第4吸着塔14をこの順に有している。すなわち、汚染水処理設備400の攪拌槽6以降の構成は第2実施形態と同様であるのでその説明は省略し、攪拌槽6の前の構成および効果等を中心に以下説明する。
【0042】
図9に示すように、汚染水処理設備400における逆浸透濃縮塔1は、外部から取り込んだ汚染水を濃縮して濃縮汚染水とする。この濃縮汚染水は、電解槽3および攪拌槽6に取り込まれる。
汚染水処理設備400における電解槽3は、汚染水として、逆浸透濃縮塔1で濃縮された濃縮汚染水を取り込んで電気分解を行い、次亜塩素酸含有液を生成する。前述したように、濃縮汚染水には、濃縮していない汚染水と比較してより高濃度のClが含まれているので、電解槽3で電気分解を行うと、次亜塩素酸をより高濃度に含有する次亜塩素酸含有液を得ることができる。
【0043】
また、汚染水処理設備400における攪拌槽6は、汚染水として、逆浸透濃縮塔1で濃縮された濃縮汚染水を取り込み、かつ、電解槽3において濃縮汚染水から生成された次亜塩素酸含有液を取り込んで、その攪拌液を攪拌する。汚染水処理設備400では、次亜塩素酸含有液の次亜塩素酸濃度が高いので、その攪拌液中に含まれる放射性核種をより効率良く酸化態にできる。従って、汚染水処理設備400も、酸化剤の長期保存が不要である。
【0044】
なお、第4実施形態に係る汚染水処理設備400も第3実施形態に係る汚染水処理設備300と同様に、電解槽3が、逆浸透濃縮塔1→攪拌槽6の配管ラインとは別の配管ライン上に設けられている。そのため、汚染水処理設備400では、攪拌槽6における次亜塩素酸濃度を、電解槽3で電極4に供給する電流密度に加えて、逆浸透濃縮塔1から取り込む濃縮汚染水および電解槽3から取り込む次亜塩素酸含有液の流量比で制御することができる。このようにすると、汚染水処理設備400においても、攪拌槽6における次亜塩素酸濃度を制御する制御手段が増えるため、前述した例と比較してより細やかにかつ正確に制御できる。
【0045】
また、前記したように、汚染水処理設備400は、第3実施形態に係る汚染水処理設備300と同様、攪拌槽6の後に、活性炭塔8と、攪拌液に含まれる放射性核種を吸着除去する複数の吸着塔(例、第1吸着塔10、第2吸着塔11、第3吸着塔12、第4吸着塔14)とをこの順で有している。
また、汚染水処理設備400は、活性炭塔8と、複数の吸着塔のうちの最初の吸着塔(第1吸着塔10)との間に、第2酸化還元電位測定装置9を備えている。
さらに、汚染水処理設備400は、電解槽3と攪拌槽6との間に、攪拌槽6への攪拌液の供給流量を調節する流量調節弁15を有している。
【0046】
従って、汚染水処理設備400の制御部は、第3実施形態に係る汚染水処理設備300と同様、第2酸化還元電位測定装置9が次亜塩素酸を検出した場合、活性炭塔8が次亜塩素酸を処理しきれなかったと判断し、電解槽3による汚染水(濃縮汚染水)の電気分解を停止する(第1停止機構)。具体的には、汚染水処理設備400の制御部は、直流電源5への電力供給を停止する。また、汚染水処理設備300の制御部は、汚染水の電気分解の停止とともに、流量調節弁15を調節して電解槽3から攪拌槽6への次亜塩素酸含有液の供給を停止する(第2停止機構)。汚染水処理設備400は、第1停止機構により電解槽3における次亜塩素酸の発生を止めることができ、第2停止機構により下流側の第1吸着塔10~第4吸着塔14に次亜塩素酸が含まれる処理水(攪拌液)が流れることをより確実に防止できる。
【0047】
〔第5実施形態〕
次に、図10を参照して、第5実施形態に係る汚染水処理設備500について説明する。図10は、第5実施形態に係る汚染水処理設備500の要部の一構成例を説明する概略図である。
【0048】
図10に示す第5実施形態に係る汚染水処理設備500は、第4実施形態に係る汚染水処理設備400の構成に、貯蔵タンク16、第1停止弁17および第2停止弁18を追加したものである。なお、貯蔵タンク16、第1停止弁17および第2停止弁18は、第2実施形態に係る汚染水処理設備200や第3実施形態に係る汚染水処理設備300にも同様に追加することができる。
【0049】
貯蔵タンク16は、第2酸化還元電位測定装置9と第1吸着塔10との間に設けられている。第1停止弁17は、第2酸化還元電位測定装置9と第1吸着塔10との間の配管ラインに設けられている。第2停止弁18は、第2酸化還元電位測定装置9と第1停止弁17との間で分岐し、貯蔵タンク16に繋がる配管ラインに設けられている。
【0050】
前記した例では、一定濃度以上の次亜塩素酸が活性炭塔8の下流側に流れて第1吸着塔10~第4吸着塔14が腐食するのを防止するため、第1停止機構や第2停止機構を備えることを説明した。しかし、それでもなお、攪拌液中に残存する次亜塩素酸によって第1吸着塔10~第4吸着塔14やこれらに内蔵された吸着材がダメージを負い、放射性核種の吸着性が低下するおそれがある。そのため、汚染水処理設備500は、第2酸化還元電位測定装置9で次亜塩素酸が検出されたら、第1停止弁17を閉止し、第2停止弁18を開放することとしている(通常は、第1停止弁17を開放し、第2停止弁18を閉止している)。これにより、活性炭塔8から導出された次亜塩素酸を含有する攪拌液を貯蔵タンク16に一時保管することができる。トラブル等が解消した後、貯蔵タンク16に保存した攪拌水を再度、攪拌槽6の直前の任意の箇所から配管ラインに導入し、攪拌槽6に供給して攪拌液中に含まれる放射性核種を酸化態にする処理を再開する。
【0051】
〔第6実施形態〕
次に、図11から図13を参照して、第6実施形態に係る汚染水処理方法(以下、単に「本方法」ということがある)について説明する。図11は、第6実施形態に係る汚染水処理方法の内容を説明するフローチャートである。図12および図13は、第6実施形態に係る汚染水処理方法の他の態様の内容を説明するフローチャートである。
【0052】
本方法は、放射性核種を含む汚染水を処理するための方法である。図11に示すように、本方法は、電解工程S2と攪拌工程S3とを有する。
電解工程S2では、汚染水を電気分解して次亜塩素酸含有液を生成する。
攪拌工程S3では、汚染水および次亜塩素酸含有液を攪拌して、その攪拌液中に含まれる放射性核種を酸化態にする。
つまり、この態様は、前述した第1実施形態に対応し、電解工程S2は電解槽3で行うことができ、攪拌工程S3は攪拌槽6で行うことができる。本方法はこれらの工程を有することにより、その場で次亜塩素酸を製造しそれを使用できるので、別途、次亜塩素酸保存用のタンクや配管ライン、ポンプなどを設置する必要がなく、また、酸化剤(次亜塩素酸)の長期保存が不要である。
【0053】
本方法の他の実施形態として、例えば、図11に示すように、電解工程S2の前に、逆浸透濃縮工程S1を有していてもよい。つまり、逆浸透濃縮工程S1、電解工程S2、攪拌工程S3を有するようにしてもよい。この態様は、前述した第2実施形態に対応し、逆浸透濃縮工程S1は逆浸透濃縮塔1で行うことができ、電解工程S2は電解槽3で行うことができ、攪拌工程S3は攪拌槽6で行うことができる。
【0054】
この態様の場合、逆浸透濃縮工程S1では、外部から取り込んだ汚染水を、逆浸透膜を用いて濃縮し、濃縮汚染水とする。前述したように、濃縮汚染水には、濃縮していない汚染水と比較してより高濃度のClが含まれているので、電解工程S2で電気分解を行うと、次亜塩素酸濃度を高めることができる。そのため、攪拌工程S3において攪拌液中の放射性核種がより酸化態になり易くなる。
【0055】
また、本方法のさらなる他の実施形態として、例えば、図12に示すように、前記した逆浸透濃縮工程S1と電解工程S2とを同時に行ってもよい。次いで、逆浸透濃縮工程S1で濃縮された濃縮汚染水と、電解工程S2で生成された次亜塩素酸含有液とを攪拌工程S3で取り込ませてもよい。そして、攪拌工程S3では、取り込んだ濃縮汚染水と次亜塩素酸含有液とを攪拌して、その攪拌液中の放射性核種を酸化態にするという態様とすることができる。この態様は、前述した第3実施形態に対応し、逆浸透濃縮工程S1は逆浸透濃縮塔1で行うことができ、電解工程S2は電解槽3で行うことができ、攪拌工程S3は攪拌槽6で行うことができる。従って、この態様とすると、次亜塩素酸含有液で濃縮汚染水を処理するので、攪拌工程S3において攪拌液中の放射性核種がより酸化態になり易くなる。
【0056】
また、本方法のさらなる他の実施形態として、例えば、図13に示すように、前記した逆浸透濃縮工程S1を行って濃縮汚染水を得た後、この濃縮汚染水を電解工程S2で電気分解し、次亜塩素酸濃度を高めた次亜塩素酸含有液を生成して攪拌工程S3で取り込ませてもよい。そして、それとともに、前記した逆浸透濃縮工程S1で得た濃縮汚染水を攪拌工程S3で取り込ませてもよい。次いで、攪拌工程S3では、取り込んだ濃縮汚染水から生成した次亜塩素酸含有液と濃縮汚染水とを攪拌して、その攪拌液中の放射性核種を酸化態にするという態様とすることができる。この態様は、前述した第4実施形態に対応し、逆浸透濃縮工程S1は逆浸透濃縮塔1で行うことができ、電解工程S2は電解槽3で行うことができ、攪拌工程S3は攪拌槽6で行うことができる。従って、この態様とすると、より高濃度の次亜塩素酸を含有する次亜塩素酸含有液で濃縮汚染水を処理するので、攪拌工程S3において攪拌液中の放射性核種がさらに酸化態になり易くなる。
【0057】
以上、本発明に係る汚染水処理設備および汚染水処理方法について実施形態により詳細に説明したが、本発明の主旨はこれに限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、前記した実施形態は本発明を分かり易く説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【符号の説明】
【0058】
100、200、300、400、500 汚染水処理設備
1 逆浸透濃縮塔
2 流速測定装置
3 電解槽
4 電極
5 直流電源
6 攪拌槽
7 第1酸化還元電位測定装置
8 活性炭塔
9 第2酸化還元電位測定装置
10 第1吸着塔
11 第2吸着塔
12 第3吸着塔
13 還元剤塔
14 第4吸着塔
15 流量調節弁
16 貯蔵タンク
17 第1停止弁
18 第2停止弁
S1 逆浸透濃縮工程
S2 電解工程
S3 攪拌工程
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13