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特許7590282部材の接合方法およびその方法に使用される複合弾性体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-18
(45)【発行日】2024-11-26
(54)【発明の名称】部材の接合方法およびその方法に使用される複合弾性体
(51)【国際特許分類】
   B21D 39/20 20060101AFI20241119BHJP
   B21D 39/06 20060101ALI20241119BHJP
【FI】
B21D39/20 D
B21D39/06 B
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021107023
(22)【出願日】2021-06-28
(65)【公開番号】P2023005238
(43)【公開日】2023-01-18
【審査請求日】2023-09-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100111039
【弁理士】
【氏名又は名称】前堀 義之
(74)【代理人】
【識別番号】100218132
【弁理士】
【氏名又は名称】近田 暢朗
(72)【発明者】
【氏名】新野 晃一朗
(72)【発明者】
【氏名】前田 康裕
【審査官】程塚 悠
(56)【参考文献】
【文献】特開昭54-008155(JP,A)
【文献】国際公開第2017/169298(WO,A1)
【文献】実開昭60-071435(JP,U)
【文献】特開2020-078823(JP,A)
【文献】特開昭53-084865(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21D 39/20
B21D 39/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
孔部が設けられた第1部材と、管状の第2部材と、硬度の異なる少なくとも2種類の弾性体を組み合わせた複合弾性体とを準備し、
前記第1部材の前記孔部に前記第2部材を挿通し、
前記第2部材の内部に前記複合弾性体を挿入し、
前記複合弾性体を押圧して前記第2部材を膨出させ、それによって前記第1部材および前記第2部材をかしめ接合する
ことを含み、
前記複合弾性体は、
挟み込まれるように押圧力を受ける平坦な第1端面および平坦な第2端面と、前記第1端面および前記第2端面を繋ぐ側面とを有する柱状であり、
相対的に高い硬度を有する第1弾性体と、相対的に低い硬度を有する第2弾性体とを含み、
前記第2弾性体は、前記第1端面の少なくとも一部と、前記第2端面の少なくとも一部とを構成している、部材の接合方法。
【請求項2】
前記第1弾性体は、前記第1端面と前記側面との接続部である第1縁部と、前記第2端面と前記側面との接続部である第2縁部とを構成している、請求項1に記載の部材の接合方法。
【請求項3】
前記第2弾性体は、前記側面の少なくとも一部を構成している、請求項1に記載の部材の接合方法。
【請求項4】
前記第1弾性体および前記第2弾性体の境界が曲面で構成されている、請求項2又は3に記載の部材の接合方法。
【請求項5】
前記第2部材が延びる軸線方向に沿った前記第2弾性体の断面形状が半円形状である、請求項4に記載の部材の接合方法。
【請求項6】
前記第1端面を押圧する駆動面を有するとともに前記第1端面に垂直な方向に駆動される押子と、前記第2端面を支持する固定面を有するとともに位置固定された受子とをさらに準備し、
前記押子の前記駆動面と前記受子の前記固定面とによって挟み込むように前記複合弾性体を押圧する
ことをさらに含み、
前記第1弾性体は、前記第1端面から前記第2端面まで先細って延びる柱状であり、
前記第2弾性体は、前記第1弾性体の周囲に配置され、前記側面の全体を構成している、請求項1に記載の部材の接合方法。
【請求項7】
前記第1端面を押圧する駆動面を有するとともに前記第1端面に垂直な方向に駆動される押子と、前記第2端面を支持する固定面を有するとともに位置固定された受子とをさらに準備し、
前記第2部材の下面と前記複合弾性体の前記第2端面とを前記受子の前記固定面上に面一に配置し、
前記押子の前記駆動面と前記受子の前記固定面とによって挟み込むように前記複合弾性体を押圧する
ことをさらに含み、
前記第2弾性体は、前記第2端面全体と、前記第1端面の一部とを構成する、請求項1に記載の部材の接合方法。
【請求項8】
孔部が設けられた第1部材と、管状の第2部材とをかしめ接合するために、前記第1部材の前記孔部に前記第2部材を挿通した状態で前記第2部材内に配置されて押圧されることによって前記第2部材を膨出させる複合弾性体であって、
前記複合弾性体は、
硬度の異なる少なくとも2種類の弾性体を備え、
挟み込まれるように押圧力を受ける平坦な第1端面および平坦な第2端面と、前記第1端面および前記第2端面を繋ぐ側面とを有する柱状であり、
相対的に高い硬度を有する第1弾性体と、相対的に低い硬度を有する第2弾性体とを含み、
前記第2弾性体は、前記第1端面の少なくとも一部と、前記第2端面の少なくとも一部とを構成している、複合弾性体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、部材の接合方法およびその方法に使用される複合弾性体に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の軽量化や安全性向上のために、ハイテンション鋼と呼ばれる高強度の鋼板が使用されている。ハイテンション鋼は軽量化や安全性向上に有効であるが、アルミなどの低比重材料と比較すると重い。また、ハイテンション鋼を使用すると、高強度ゆえに、成形性の低下、成形荷重の上昇、および寸法精度の低下などの問題が生じる。これらの問題を解決するために、近年、鋼よりも低比重のアルミを用いた押し出し成形品、鋳造品、またはプレス成形品を、鋼製部品と合わせて活用するマルチマテリアル化が行われている。
【0003】
マルチマテリアル化で問題となるのは鋼製部品とアルミ製部品のような異種金属の接合である。一般に、このように性質の異なる異種金属を接合することは困難であるが、例えば、特許文献1では、弾性体を利用することによりマルチマテリアル化における異種金属の接合を可能にする部材の接合方法が開示されている。詳細には、特許文献1の部材の接合方法では、板部材の孔部に管体を挿入し、管体の内側に弾性体を挿入し、弾性体を加圧することで変形させ、それによって管体を拡管し、板部材と管体とをかしめ接合している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-147309号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示された接合方法では、管体内部に挿入した弾性体を押圧した際、弾性体の端部に局所変形が生じる場合がある。その局所変形が大きい場合、弾性体に永久ひずみや割れが生じるおそれがある。そのため、弾性体の押圧量を制限する必要があり、その結果、管体の拡管量も制限され、強固にかしめ接合されないおそれがある。
【0006】
また、弾性体を押圧した際、弾性体と管体の内面との摩擦力が大きいと、押圧力が弾性体の全域に均等に伝わらず、弾性体の変形に偏りが生じるおそれがある。その結果、管体の変形にも偏りが生じ、強固にかしめ接合されないおそれがある。
【0007】
本発明は、孔部が設けられた第1部材と、管状の第2部材とを弾性体を使用してかしめ接合する際、弾性体を十分に変形させ、第1部材および第2部材を強固に接合できる部材の接合方法およびその方法に使用される複合弾性体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の態様は、孔部が設けられた第1部材と、管状の第2部材と、硬度の異なる少なくとも2種類の弾性体を組み合わせた複合弾性体とを準備し、前記第1部材の前記孔部に前記第2部材を挿通し、前記第2部材の内部に前記複合弾性体を挿入し、前記複合弾性体を押圧して前記第2部材を膨出させ、それによって前記第1部材および前記第2部材をかしめ接合することを含み、前記複合弾性体は、挟み込まれるように押圧力を受ける平坦な第1端面および平坦な第2端面と、前記第1端面および前記第2端面を繋ぐ側面とを有する柱状であり、相対的に高い硬度を有する第1弾性体と、相対的に低い硬度を有する第2弾性体とを含み、前記第2弾性体は、前記第1端面の少なくとも一部と、前記第2端面の少なくとも一部とを構成している、部材の接合方法を提供する。
【0009】
この方法によれば、複合弾性体を使用することによって以下のように第1部材および第2部材を強固に接合できる。仮に、材質が一様な弾性体を使用した場合、弾性体は相対的に大きな応力や摩擦力を受ける箇所において局所的に大きく変形する。これに対し、複合弾性体を使用する場合、相対的に大きな応力を受ける箇所に硬度が相対的に高い弾性体を配置することで、局所的に大きく変形することを抑制できる。また、硬度が相対的に低い弾性体は摩擦係数が小さいため、相対的に大きな摩擦力を受ける箇所に硬度が低い弾性体を配置することで、局所的に大きく変形することを抑制できる。これにより、複合弾性体において局所変形に伴う永久ひずみや割れが生じることを抑制できる。従って、複合弾性体に対する押圧量を増加させ、第2部材の膨出量を増加させることができ、第1部材および第2部材を強固に接合できる。なお、上記硬度については、例えばショアAの数値に基づいて高低を決定してもよい。
【0010】
前記複合弾性体は、挟み込まれるように押圧力を受ける平坦な第1端面および平坦な第2端面と、前記第1端面および前記第2端面を繋ぐ側面とを有する柱状であり、前記複合弾性体は、相対的に高い硬度を有する第1弾性体と、相対的に低い硬度を有する第2弾性体とを含んでもよい。
【0011】
前記の方法によれば、複合弾性体において押圧力を受ける部分が平坦な面(第1端面および第2端面)で構成されている。そのため、複合弾性体は、押圧力を平坦な面(第1端面および第2端面)で均等に受けることができる。従って、複合弾性体は均等に変形し得る。
【0012】
前記第1弾性体は、前記第1端面と前記側面との接続部である第1縁部と、前記第2端面と前記側面との接続部である第2縁部とを構成していてもよい。
【0013】
前記の方法によれば、プレスの際に大きな力がかかる複合弾性体の第1縁部および第2縁部を第1弾性体で構成することによって、複合弾性体が局所的に大きく変形することを抑制できる。従って、複合弾性体に対する押圧量を増加させ、第2部材の膨出量を増加させることができ、第1部材および第2部材を強固に接合できる。
【0014】
前記第2弾性体は、前記側面の少なくとも一部を構成していてもよい。
【0015】
前記の方法によれば、複合弾性体および第2部材が接する部分の少なくとも一部が相対的に摩擦係数の小さな第2弾性体で構成されている。そのため、複合弾性体および第2部材の間で生じる摩擦力が低減され得る。従って、複合弾性体が当該摩擦力によって意図せず変形することを抑制できるため、複合弾性体に対してより大きな押圧力を付加できる。よって、第2部材の膨出量を増加させることができ、第1部材および第2部材を強固に接合できる。
【0016】
前記第2弾性体は、前記第1端面の少なくとも一部と、前記第2端面の少なくとも一部とを構成していてもよい。
【0017】
前記の方法によれば、第1端面および第2端面に生じる摩擦力が低減され得る。押圧力を受ける第1端面および第2端面には、押圧力の方向に対して垂直に摩擦力が生じる。この摩擦力は、第1端面および第2端面における複合弾性体の押圧力の方向に対して垂直な方向の変形を抑制する。第1端面および第2端面の少なくとも一部を第2弾性体で構成することで、その摩擦力を低減でき、第1端面および第2端面における複合弾性体の押圧力の方向に垂直な方向の変形量を増加できる。従って、比較的変形し難い第1端面および第2端面における変形量を増加できるため、第2部材を均等に変形させることができる。
【0018】
前記第1弾性体および前記第2弾性体の境界が曲面で構成されていてもよい。
【0019】
前記の方法によれば、第1弾性体および第2弾性体の境界での応力集中が低減され得る。仮に、第1弾性体および第2弾性体の境界に角部が設けられていた場合、押圧時にその角部に応力が集中し、第1弾性体または第2弾性体に割れが生じるおそれがある。これに対し、第1弾性体および第2弾性体の境界が曲面で構成されているため、応力集中が低減され、割れが生じることを抑制できる。従って、複合弾性体の耐久性が向上し得る。
前記第2部材が延びる軸線方向に沿った前記第2弾性体の断面形状が半円形状であってもよい。
【0020】
前記方法は、前記第1端面を押圧する駆動面を有するとともに前記第1端面に垂直な方向に駆動される押子と、前記第2端面を支持する固定面を有するとともに位置固定された受子とをさらに準備し、前記押子の前記駆動面と前記受子の前記固定面とによって挟み込むように前記複合弾性体を押圧することをさらに含んでもよく、前記第1弾性体は、前記第1端面から前記第2端面まで先細って延びる柱状であってもよく、前記第2弾性体は、前記第1弾性体の周囲に配置され、前記側面の全体を構成していてもよい。
【0021】
前記の方法によれば、第2弾性体が側面全体に配置されているため、複合弾性体と第2部材との間で生じる摩擦力が低減され、複合弾性体の均一な変形が促進され得る。また、押子から複合弾性体に付加する押圧力は当該摩擦力によって第2端面側ほど伝わり難いため、複合弾性体は第2端面側ほど変形し難い。これに対し、第1弾性体が第2端面側へ先細り、第2弾性体が第2端面側ほど厚くなっているため、複合弾性体の剛性は第2端面側ほど小さくなっている。従って、第2端面側の複合弾性体の変形が促進されることにより、複合弾性体の均一な変形が促進され得る。
【0022】
前記方法は、前記第1端面を押圧する駆動面を有するとともに前記第1端面に垂直な方向に駆動される押子と、前記第2端面を支持する固定面を有するとともに位置固定された受子とをさらに準備し、前記第2部材の下面と前記複合弾性体の前記第2端面とを前記受子の前記固定面上に面一に配置し、前記押子の前記駆動面と前記受子の前記固定面とによって挟み込むように前記複合弾性体を押圧することをさらに含んでもよく、前記第2弾性体は、前記第2端面全体と、前記第1端面の一部とを構成してもよい。
【0023】
前記の方法によれば、複合弾性体の均一な変形が促進され得る。第1端面側からのプレスでは、第1端面が相対的に大きな力を受け、第2端面が相対的に小さな力を受ける。このような相対的な受ける力の差異に合わせて第2弾性体が第2端面全体と第1端面の一部とを構成している。つまり、第1端面側に比べて第2端面側では第2弾性体の割合が大きい。従って、複合弾性体の均一な変形が促進され得る。
【0024】
本発明の第2の態様は、孔部が設けられた第1部材と、管状の第2部材とをかしめ接合するために、前記第1部材の前記孔部に前記第2部材を挿通した状態で前記第2部材内に配置されて押圧されることによって前記第2部材を膨出させる複合弾性体であって、前記複合弾性体は、硬度の異なる少なくとも2種類の弾性体を備え、挟み込まれるように押圧力を受ける平坦な第1端面および平坦な第2端面と、前記第1端面および前記第2端面を繋ぐ側面とを有する柱状であり、相対的に高い硬度を有する第1弾性体と、相対的に低い硬度を有する第2弾性体とを含み、前記第2弾性体は、前記第1端面の少なくとも一部と、前記第2端面の少なくとも一部とを構成している、複合弾性体を提供する。
【0025】
この構成によれば、複合弾性体を使用することによって以下のように第1部材および第2部材を強固に接合できる。仮に、材質が一様な弾性体を使用した場合、弾性体は相対的に大きな応力や摩擦力を受ける箇所において局所的に大きく変形する。これに対し、複合弾性体を使用する場合、相対的に大きな応力を受ける箇所に硬度が相対的に高い弾性体を配置することで、局所的に大きく変形することを抑制できる。また、硬度が相対的に低い弾性体は摩擦係数が小さいため、相対的に大きな摩擦力を受ける箇所に硬度が低い弾性体を配置することで、局所的に大きく変形することを抑制できる。これにより、複合弾性体において局所変形に伴う永久ひずみや割れが生じることを抑制できる。従って、複合弾性体に対する押圧量を増加させ、第2部材の膨出量を増加させることができ、第1部材および第2部材を強固に接合できる。なお、上記硬度については、例えばショアAの数値に基づいて高低を決定してもよい。
【発明の効果】
【0026】
本発明に係る部材の接合方法およびその方法に使用される複合弾性体によれば、孔部が設けられた第1部材と、管状の第2部材とを複合弾性体を使用してかしめ接合する際、複合弾性体を十分に変形させることができる。よって、第1部材および第2部材を強固に接合できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明の第1実施形態に係る部材の接合方法を適用する壁面体、管体、および複合弾性体の斜視図。
図2図1の壁面体および管体のかしめ接合前を示す概略断面図。
図3図1の壁面体および管体のかしめ接合後を示す概略断面図。
図4】本発明の第1実施形態に係る複合弾性体の斜視図。
図5図4の軸線Lに沿った断面図。
図6図5の複合弾性体の第1変形例を示す断面図。
図7図5の複合弾性体の第2変形例を示す断面図。
図8図5の複合弾性体の第3変形例を示す断面図。
図9】本発明の第2実施形態に係る複合弾性体の図5と同様の断面図。
図10図9の複合弾性体の変形例を示す断面図。
図11】本発明の第3実施形態に係る複合弾性体の図5と同様の断面図。
図12】本発明の第4実施形態に係る複合弾性体の図5と同様の断面図。
図13】本発明の第5実施形態に係る複合弾性体の図5と同様の断面図。
図14】本発明の第6実施形態に係る複合弾性体の図5と同様の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態を説明する。以下の説明では、方向や位置を表す用語(例えば、「上側」、「下側」等)を用いる場合があるが、これらは発明の理解を容易にするためであり、それらの用語の意味によって本発明の技術的範囲が限定されるものではない。また、以下の説明は、本発明の一形態の例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0029】
以下で説明する各実施形態では、個々の部材の材料を例示しているが、全実施形態において個々の部材の材料は特に例示しているものに限定されず、任意の材料に対して本発明は適用できる。
【0030】
(第1実施形態)
図1から図3を参照して、壁面体(第1部材)1および管体(第2部材)5をかしめ接合する部材の接合方法について説明する。
【0031】
本実施形態では、壁面体1は、ハイテンション鋼からなる概ね平坦な板状の部品である。壁面体1は、板状の本体部2と、本体部2に設けられ管体5が挿通される孔部3と、孔部3の周囲に沿って設けられた当接部4とを備える。当接部4は、孔部3をバーリング加工することによって形成されている。なお、壁面体1は、平坦な板状に限らず、孔部を有する任意の形状であり得る。また、孔部3は、バーリング加工を施されていなくてもよい。
【0032】
管体5は、アルミニウム合金からなる断面円形の管状の部品である。管体5は、軸線L方向に延びている。軸線Lは、管体5の中心と、壁面体1の孔部3の中心とを通っている。
【0033】
図3に示すように、管体5は、壁面体1の当接部4の上下の領域で内側から外側に向かって膨出し、かつ、当接部4では壁面体1によって膨出が抑えられていることで、壁面体1の孔部3にかしめ接合されている。壁面体1の孔部3の形状と寸法は、管体5の断面形状と相似形で、管体5が挿通可能な範囲で極力小さい方が好ましい。
【0034】
図4を併せて参照すると、壁面体1および管体5のかしめ接合は、複合弾性体10を用いて行われる。複合弾性体10は、硬度の異なる2種類の弾性体(第1弾性体100および第2弾性体200)を組み合わせたものである。第1弾性体100は相対的に高い硬度を有しており、第2弾性体200は相対的に低い硬度を有している。本実施形態では、上記硬度は、例えばショアAの数値に基づいて決定される。本実施形態では、第1弾性体100のショアAの値は例えば95であり、第2弾性体200のショアAの値は例えば50である。
【0035】
複合弾性体10は、上面を構成する平坦な第1端面11と、第1端面11と対向して下面を構成する平坦な第2端面12と、第1端面11および第2端面12を繋ぐ側面13とを有する柱状である。本実施形態では、複合弾性体10は、管体5に挿入可能な径の円柱形状である。本実施形態では、軸線L方向において、複合弾性体10の長さは、管体5の長さよりも短い。従って、セットされた状態では、複合弾性体10は管体5の内部に収納されている。
【0036】
図5は、複合弾性体10の軸線Lに沿った断面図である。第2弾性体200については、断面であることを示すハッチングを付すが、第1弾性体100については図示を明瞭にするためハッチングを省略する。
【0037】
図4および図5を参照すると、第1弾性体100は、第1端面11と側面13との接続部である第1縁部14、第2端面12と側面13との接続部である第2縁部15、および複合弾性体10の重心付近である中心部16を構成している。本実施形態では、第2弾性体200は、複合弾性体10の側面13の一部を構成するように、環状に配置されている。加えて、第2弾性体200は、複合弾性体10の第1端面11の一部と、第2端面12の一部とを構成するように配置されている。
【0038】
また、第2弾性体200の断面形状は、半円形状である。換言すると、第1弾性体100および第2弾性体の境界が曲面で構成されている。
【0039】
また、第1弾性体100および第2弾性体200は本実施形態では別体に構成されているが、代替的には別体に構成されている必要はなく、一体で構成されていてもよい。
【0040】
図2および図3を参照して、壁面体1および管体5の接合方法を説明する。
【0041】
まず、図2のように、壁面体1の孔部3に管体5を挿通し、管体5の内部に複合弾性体10を挿入し、プレス装置6にセットする。ただし、管体5は、内部に複合弾性体10を挿入された状態で孔部3に挿通されてもよい。
【0042】
プレス装置6は、押子7および受子8を備える。本実施形態では、押子7は第1端面11に垂直な方向、つまり鉛直方向に駆動され、受子8は固定されている。プレス装置6にセットされた状態では、壁面体1と、管体5と、複合弾性体10とは、軸線Lに一致する中心軸を共有し、当該中心軸は鉛直方向に沿って配置される。押子7は上方から管体5に部分的に挿入されており、受子8は下方から管体5に部分的に挿入されている。押子7は平坦な下面である駆動面7aを有し、駆動面7aで複合弾性体10の第1端面11を押圧する。受子8は、平坦な上面である固定面8aを有し、第2端面12が固定面8aに接するように複合弾性体10が載置されている。代替的には、プレス装置6は、押子7および受子8の両方が駆動されて押圧するように構成されていてもよい。また、プレス装置6は、例えば、水平方向にプレスするような構成であってもよい。
【0043】
本実施形態では、押子7および受子8の軸線Lに垂直な断面形状は、管体5の軸線Lに垂直な断面形状と相似形、つまり、円形状である。また、押子7および受子8の直径は、管体5の内径より若干小さい。これにより、押子7および受子8を管体5に挿入し、複合弾性体10を上下から押圧できるようになっている。なお、押子7および受子8の直径は、管体5に挿入可能な範囲で極力大きい方が好ましい。
【0044】
次に、図3に示すように、押子7および受子8により複合弾性体10に対して軸線L方向に圧縮の外力を付与する。具体的には、受子8は不動のまま押子7を下方へ降下させ、第1端面11および第2端面12に挟み込むように押圧力を与える。複合弾性体10は軸線L方向の寸法が小さくなるにつれて、径方向の寸法が拡大する。このように、複合弾性体10を押圧して、複合弾性体10を軸線Lから外側に向けて弾性変形(膨出)させ、それによって管体5を膨出させ、壁面体1とかしめ接合する。
【0045】
かしめ接合後、押子7および受子8による圧縮力が除去された複合弾性体10は、自身の弾性力により図2のような元の形状に復元し、容易に管体5から取り除くことができる。
【0046】
本実施形態に係る部材の接合方法よれば、複合弾性体10を使用することによって以下のように壁面体1および管体5を強固に接合できる。仮に、材質が一様な弾性体を使用した場合、弾性体は相対的に大きな応力や摩擦力を受ける箇所において局所的に大きく変形する。これに対し、複合弾性体10を使用する場合、相対的に大きな応力を受ける箇所に硬度が相対的に高い弾性体(第1弾性体100)を配置することで、局所的に大きく変形することを抑制できる。また、硬度が相対的に低い弾性体(第2弾性体200)は摩擦係数が小さいため、相対的に大きな摩擦力を受ける箇所に第2弾性体200を配置することで、局所的に大きく変形することを抑制できる。これにより、複合弾性体10において局所変形に伴う永久ひずみや割れが生じることを抑制できる。従って、複合弾性体10に対する押圧量を増加させ、管体5の膨出量を増加させることができ、壁面体1および管体5を強固に接合できる。
【0047】
また、複合弾性体10は押圧力を受ける部分が平坦な面(第1端面11および第2端面12)で構成されている。そのため、複合弾性体10は、押圧力を平坦な面(第1端面11および第2端面12)で均等に受けることができる。従って、複合弾性体10は均等に変形し得る。
【0048】
また、プレスの際に大きな力がかかる複合弾性体10の第1縁部14および第2縁部15を第1弾性体100で構成しているので、複合弾性体10が局所的に大きく変形することを抑制できる。従って、複合弾性体10に対する押圧量を増加させ、管体5の膨出量を増加させることができ、壁面体1および管体5を強固に接合できる。
【0049】
また、複合弾性体10および管体5の内面が接する部分の一部が相対的に摩擦係数の小さな第2弾性体200で構成されている。そのため、複合弾性体10および管体5の間で生じる摩擦力が低減され得る。従って、複合弾性体10が当該摩擦力によって意図せず変形することを抑制できるため、複合弾性体10に対してより大きな押圧力を付加できる。よって、管体5の膨出量を増加させることができ、壁面体1および管体5を強固に接合できる。
【0050】
また、押圧力を受ける第1端面11および第2端面12には、押圧力の方向に対して垂直に摩擦力が生じる。この摩擦力は、第1端面11および第2端面12における複合弾性体10の軸線Lに垂直な方向の変形を抑制する。第1端面11および第2端面12の少なくとも一部を第2弾性体200で構成することで、その摩擦力を低減でき、第1端面11および第2端面12における複合弾性体10の軸線Lに垂直な方向の変形量を増加できる。従って、比較的変形し難い第1端面11および第2端面12における変形量を増加できるため、管体5を均等に変形させることができる。
【0051】
また、第2弾性体200の断面形状が半円形状であるため、第1弾性体100および第2弾性体200の境界が曲面となり、当該境界での応力集中が低減され得る。仮に、第1弾性体100および第2弾性体200の境界に角部が設けられていた場合、押圧時にその角部に応力が集中し、第1弾性体100または第2弾性体200に割れが生じるおそれがある。これに対し、第1弾性体100および第2弾性体200の境界が曲面で構成されているため、応力集中が低減され、割れが生じることを抑制できる。従って、複合弾性体10の耐久性が向上し得る。
【0052】
図6を参照すると、本実施形態に係る複合弾性体10の第1変形例では、第2弾性体200の断面形状は、三角形である。そのため、第1弾性体100および第2弾性体200の形状が単純となり、製造が容易となり得る。
【0053】
図7を参照すると、本実施形態に係る複合弾性体10の第2変形例では、第1弾性体100は、第1縁部14、第2縁部15、および複合弾性体10の中心部16に配置されている。本変形例では、複合弾性体10の中心部16に配置された第1弾性体100は球状である。そのため、第1弾性体100および第2弾性体200の形状が単純となり、製造が容易となり得る。
【0054】
図8を参照すると、本実施形態に係る複合弾性体10の第3変形例では、第1弾性体100は、第1縁部14および第2縁部15にのみに配置されている。そのため、複合弾性体10の構造が単純となり、製造が容易となり得る。また、第1弾性体100の断面形状は、三角形である。そのため、第1弾性体100および第2弾性体200の形状が単純となり、製造が容易となり得る。
【0055】
(第2実施形態)
図9および図10を参照して、第2実施形態における部材の接合方法について説明する。
【0056】
図9および図10に示す第2実施形態は、複合弾性体10に関する以外は第1実施形態と実質的に同じである。従って、第1実施形態にて示した部分については説明を省略する場合がある。
【0057】
図9を参照すると、第2実施形態に係る複合弾性体10では、第1弾性体100は、第1端面11全体および第2端面12全体を構成している。第2弾性体200は、側面13の一部を構成するように、環状に配置されている。
【0058】
図10を参照すると、第2実施形態に係る複合弾性体10の変形例では、第1弾性体100は、第1端面11全体および第2端面12全体を構成している。第2弾性体200は円柱状で、第1弾性体100に上下から挟まれるように配置されている。本変形例においても、第2弾性体200は、側面13の一部を構成している。
【0059】
第2実施形態に係る複合弾性体10では、第1端面11全体および第2端面12全体が第1弾性体100である。そのため、押子7および受子8が管体5の径より小さ過ぎる場合、つまり、押子7および受子8と管体5との隙間が大きい場合であっても、その隙間で生じる局所変形を抑制しつつ、十分に押圧し得る。また、部品点数が低減され、かつ、構造が単純であるため、製造が容易となり得る。
【0060】
(第3実施形態)
図11を参照して、第3実施形態における部材の接合方法について説明する。
【0061】
図11に示す第3実施形態は、複合弾性体10に関する以外は第1実施形態と実質的に同じである。従って、第1実施形態にて示した部分については説明を省略する場合がある。
【0062】
第3実施形態に係る複合弾性体10では、第1弾性体100は、側面13全体を構成している。第2弾性体200は、円柱状で、第1端面11の一部と、第2端面12の一部とを構成している。
【0063】
第3実施形態に係る複合弾性体10では、第1端面11および第2端面12に生じる軸線Lに垂直な方向の摩擦力が軽減され得る。そのため、第1端面11および第2端面12における複合弾性体10の軸線Lに垂直な方向の変形量を増加できる。よって、比較的変形し難い第1端面11および第2端面12における変形量を増加できるため、管体5を均等に変形させることができる。
【0064】
(第4実施形態)
図12を参照して、第4実施形態における部材の接合方法について説明する。
【0065】
図12に示す第4実施形態は、複合弾性体10に関する以外は第1実施形態と実質的に同じである。従って、第1実施形態にて示した部分については説明を省略する場合がある。
【0066】
第4実施形態に係る複合弾性体10では、円柱状の第1弾性体100の表面全体を覆うように第2弾性体200は配置されている。すなわち、第2弾性体200は、第1端面11全体、第2端面12全体、および側面13全体を構成するように配置されている。
【0067】
第4実施形態に係る複合弾性体10では、第2弾性体200が第1端面11全体および第2端面12全体を構成するように配置されているため、第1端面11および第2端面12における摩擦力が大幅に低減され得る。そのため、複合弾性体10は、第1端面11および第2端面12において、軸線Lに垂直な方向の変形量を増加でき、管体5を均等に変形させることができる。また、第2弾性体200が側面13全体を構成するように配置されているため、側面13における摩擦力が大幅に低減され得る。そのため、複合弾性体10が側面13において当該摩擦力によって意図せず変形することを抑制できる。従って、管体5の膨出量を増加させることができ、壁面体1および管体5を強固に接合できる。
【0068】
(第5実施形態)
図13を参照して、第5実施形態における部材の接合方法について説明する。
【0069】
図13に示す第5実施形態は、複合弾性体10に関する以外は第1実施形態と実質的に同じである。従って、第1実施形態にて示した部分については説明を省略する場合がある。
【0070】
第5実施形態に係る複合弾性体10では、第1弾性体100は、第1端面11から第2端面12まで先細って延びる円柱状である。第2弾性体200は、第1弾性体100の周囲に配置されている。すなわち、第1弾性体100は、第1端面11の中心側から中心部16を介して第2端面12の中心側までを構成するように配置され、第2弾性体200は、第1縁部14、第2縁部15、および側面13の全体を構成するように配置されている。また、第2弾性体200は、第1端面11から第2端面12に向かって厚くなっている。
【0071】
第5実施形態では、受子8は固定されている。すなわち、押子7の方向に駆動されて複合弾性体10を押圧することはない。
【0072】
第5実施形態に係る複合弾性体10を用いた方法によれば、第2弾性体200が側面13全体に配置されているため、複合弾性体10と管体5との間で生じる摩擦力が低減され、複合弾性体10の均一な変形が促進され得る。また、押子7から複合弾性体10に付加する押圧力は当該摩擦力によって下方(第2端面12側)ほど伝わり難いため、複合弾性体10は下方ほど変形し難い。これに対し、第1弾性体100が下方へ先細り、第2弾性体200が下方ほど厚くなっているため、複合弾性体10の剛性は下方ほど小さくなっている。従って、第2端面12側の複合弾性体10の変形が促進されることにより、複合弾性体10の均一な変形が促進され得る。
【0073】
(第6実施形態)
図14を参照して、第6実施形態における部材の接合方法について説明する。
【0074】
図14に示す第6実施形態は、複合弾性体10および受子8に関する以外は第1実施形態と実質的に同じである。従って、第1実施形態にて示した部分については説明を省略する場合がある。
【0075】
第6実施形態に係る複合弾性体10では、第2弾性体200は、第1端面11の一部、具体的には、第1端面11の中心から円形に構成されている。即ち、第1端面11では、第1弾性体100および第2弾性体200は、同心円を形成している。また、複合弾性体10の下部が第2弾性体200で構成されている。すなわち、第2弾性体200は第2端面12全体を構成している。
【0076】
第6実施形態では、受子9は、位置固定されており、管体5の径よりも大きな固定面9aを有している。プレスの際には、管体5の下面5aと複合弾性体10の第2端面12とを受子9の固定面9a上に面一に配置する。この配置状態で、押子7を下方へ降下させ、複合弾性体10を押子7および受子8によって挟み込むように押圧する。また、管体5は、固定面9aに載置されているため、管体5の下方の開口5bは、固定面9aによって塞がれている。代替的には、受子9を床面や固定台に置換してもよい。
【0077】
第6実施形態に係る複合弾性体10を用いた方法によれば、複合弾性体10の均一な変形が促進され得る。上方(第1端面11側)からのプレスでは、第1端面(上面)11が相対的に大きな力を受け、第2端面(下面)12が相対的に小さな力を受ける。このような相対的な受ける力の差異に合わせて第2弾性体200が第2端面12全体と第1端面11の一部とを構成している。つまり、第1端面11側に比べて第2端面12側では第2弾性体200の割合が大きい。従って、複合弾性体10の均一な変形が促進され得る。
【符号の説明】
【0078】
1 壁面体(第1部材)
2 本体部
3 孔部
4 当接部
5 管体(第2部材)
5a 下面
5b 開口
6 プレス装置
7 押子
7a 駆動面
8,9 受子
8a,9a 固定面
10 複合弾性体
11 第1端面
12 第2端面
13 側面
14 第1縁部
15 第2縁部
16 中心部
100 第1弾性体
200 第2弾性体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14