IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 神鋼建材工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-流出防止柵の設計方法及び製造方法 図1
  • 特許-流出防止柵の設計方法及び製造方法 図2
  • 特許-流出防止柵の設計方法及び製造方法 図3
  • 特許-流出防止柵の設計方法及び製造方法 図4
  • 特許-流出防止柵の設計方法及び製造方法 図5
  • 特許-流出防止柵の設計方法及び製造方法 図6
  • 特許-流出防止柵の設計方法及び製造方法 図7
  • 特許-流出防止柵の設計方法及び製造方法 図8
  • 特許-流出防止柵の設計方法及び製造方法 図9
  • 特許-流出防止柵の設計方法及び製造方法 図10
  • 特許-流出防止柵の設計方法及び製造方法 図11
  • 特許-流出防止柵の設計方法及び製造方法 図12
  • 特許-流出防止柵の設計方法及び製造方法 図13
  • 特許-流出防止柵の設計方法及び製造方法 図14
  • 特許-流出防止柵の設計方法及び製造方法 図15
  • 特許-流出防止柵の設計方法及び製造方法 図16
  • 特許-流出防止柵の設計方法及び製造方法 図17
  • 特許-流出防止柵の設計方法及び製造方法 図18
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-18
(45)【発行日】2024-11-26
(54)【発明の名称】流出防止柵の設計方法及び製造方法
(51)【国際特許分類】
   E02B 3/06 20060101AFI20241119BHJP
【FI】
E02B3/06 ESW
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021118184
(22)【出願日】2021-07-16
(65)【公開番号】P2023013774
(43)【公開日】2023-01-26
【審査請求日】2024-05-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000192615
【氏名又は名称】日鉄神鋼建材株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100109058
【弁理士】
【氏名又は名称】村松 敏郎
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 幸裕
【審査官】小倉 宏之
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-013743(JP,A)
【文献】特開2020-169536(JP,A)
【文献】特開2015-183376(JP,A)
【文献】国際公開第2018/047696(WO,A1)
【文献】特開2007-302281(JP,A)
【文献】特開2018-025007(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02B 3/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
港湾の岸壁に所定の設置間隔で立設される複数の支柱とその複数の支柱の隣り合うもの同士を繋ぐ複数のビームとを有していて前記岸壁上から波にさらわれて漂流する漂流物が海上へ流出するのを防止する流出防止柵を設計する方法であって、
前記漂流物が前記流出防止柵に衝突するときの衝突エネルギの値を取得する衝突エネルギ取得過程と、
前記複数の支柱の前記設置間隔を前記漂流物の幅の半分よりも大きく且つ前記漂流物の幅よりも小さい間隔に設定する支柱間隔設定過程と、
前記複数の支柱のうちの任意の1本の支柱である第1被衝突支柱に前記漂流物が衝突して当該第1被衝突支柱が傾くように曲げ変形するとともに前記第1被衝突支柱の両隣の前記支柱である2本の隣支柱が前記ビームを介して前記第1被衝突支柱の曲げ変形に引きつられて傾くように曲げ変形することにより前記漂流物の衝突エネルギを吸収する第1の衝突エネルギ吸収形態と、前記複数の支柱のうちの互いに隣り合う支柱である2本の第2被衝突支柱に前記漂流物が衝突して当該2本の第2被衝突支柱が共に傾くように曲げ変形することにより前記漂流物の衝突エネルギを吸収する第2の衝突エネルギ吸収形態とのいずれにおいても前記衝突エネルギ取得過程で取得された値に相当する衝突エネルギを吸収しきることが可能となる鋼管を、前記支柱を構成する支柱材として選定する支柱材選定過程と、を備える、流出防止柵の設計方法。
【請求項2】
前記第1の衝突エネルギ吸収形態において前記第1被衝突支柱が直立姿勢から所定の傾斜角度まで曲げ変形するとともに前記2本の隣支柱が直立姿勢から前記所定の傾斜角度の半分の傾斜角度まで曲げ変形する場合の前記第1被衝突支柱と前記2本の隣支柱による合計の吸収エネルギである第1吸収エネルギを算出する第1吸収エネルギ算出過程と、
前記第2の衝突エネルギ吸収形態において前記2本の第2被衝突支柱が直立姿勢から共に前記所定の傾斜角度まで曲げ変形する場合の前記2本の第2被衝突支柱による合計の吸収エネルギである第2吸収エネルギを算出する第2吸収エネルギ算出過程と、をさらに備え、
前記支柱材選定過程では、前記第1吸収エネルギ算出過程で算出される前記第1吸収エネルギの算出値と前記第2吸収エネルギ算出過程で算出される前記第2吸収エネルギの算出値とのいずれもが前記衝突エネルギ取得過程で取得された衝突エネルギの値よりも大きくなる鋼管を前記支柱材として選定する、請求項1に記載の流出防止柵の設計方法。
【請求項3】
前記漂流物が前記流出防止柵に衝突した後、当該漂流物がその幅方向に沿う横方向で前記流出防止柵を押すときの力である抗力の値を取得する抗力取得過程を、さらに備え、
前記支柱材選定過程では、前記第1の衝突エネルギ吸収形態と前記第2の衝突エネルギ吸収形態とのいずれにおいても前記衝突エネルギ取得過程で取得された値に相当する衝突エネルギを吸収しきることが可能となるという条件に加えて、前記抗力取得過程で取得された値に相当する抗力が前記流出防止柵に作用した場合に前記支柱に作用する曲げ応力よりも大きい許容曲げ応力度を有するという条件を満たす鋼管を前記支柱材として選定する、請求項1又は2に記載の流出防止柵の設計方法。
【請求項4】
前記ビームを構成するビーム材を選定するビーム材選定過程をさらに備え、
前記ビーム材選定過程では、前記抗力取得過程で取得された値に相当する抗力が前記流出防止柵に作用した場合に前記ビームに作用する曲げ応力よりも大きい許容曲げ応力度を有する部材を前記ビーム材として選定する、請求項3に記載の流出防止柵の設計方法。
【請求項5】
前記流出防止柵は、前記支柱に対して前記ビームを固定するビーム固定ボルトを有し、
前記流出防止柵の設計方法は、前記抗力取得過程で取得された値に相当する抗力が前記流出防止柵に作用した場合に前記ビーム固定ボルトに作用するせん断応力よりも大きい許容せん断応力度を有するボルトを前記ビーム固定ボルトとして選定するビーム固定ボルト選定過程をさらに備える、請求項3又は4に記載の流出防止柵の設計方法。
【請求項6】
前記流出防止柵は、前記岸壁の地盤中に埋め込まれる鋼管杭であってその内側に差し込まれる前記支柱の基部を固定するものを有し、
前記流出防止柵の設計方法は、前記鋼管杭を構成する杭材として、前記漂流物が前記流出防止柵に衝突するときに前記鋼管杭に作用する転倒モーメントにより前記鋼管杭が前記岸壁の地盤中で転倒するのを回避可能となる鋼管を前記地盤の物性に応じて選定する杭材選定過程をさらに備える、請求項1~5のいずれか1項に記載の流出防止柵の設計方法。
【請求項7】
前記流出防止柵は、前記鋼管杭の内側に設けられて前記支柱の基部を前記鋼管杭に固定する支柱固定コンクリートを有し、
前記支柱は、前記支柱固定コンクリートに埋め込まれる部分である支柱埋込部を有し、
前記流出防止柵の設計方法は、前記漂流物が前記流出防止柵に衝突するときに前記支柱埋込部に発生する曲げモーメントにより前記支柱固定コンクリートに作用する最大圧縮応力度が規定値であるコンクリートの短期許容圧縮応力度よりも小さくなるように前記支柱埋込部の長さを設定する支柱埋込長設定過程をさらに備える、請求項6に記載の流出防止柵の設計方法。
【請求項8】
請求項1~3のいずれか1項に記載の設計方法により設計された流出防止柵を製造する方法であって、
前記支柱材選定過程で選定された鋼管を前記支柱材とする複数の前記支柱を前記支柱間隔設定過程で設定された前記設置間隔で港湾の岸壁に立設し、その複数の支柱の隣り合うもの同士を前記ビームでそれぞれ繋いで前記流出防止柵を製造する、流出防止柵の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、港湾の岸壁上から波にさらわれて漂流する漂流物が海上へ流出するのを防止する流出防止柵の設計方法及び製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
津波又は高潮などの発生時には、港湾の岸壁を乗り越えた波により、岸壁上にある船舶、コンテナもしくは車両等がさらわれて漂流する場合がある。そのため、港湾の岸壁に設置されてこのような漂流物を捕捉し、当該漂流物が海上へ流出するのを防止する流出防止柵が従来から知られている。下記特許文献1には、このような流出防止柵の一例としての漂流物捕捉柵が開示されている。
【0003】
下記特許文献1に開示された漂流物捕捉柵は、その両端部にそれぞれ配置された2つの端部支柱と、その2つの端部支柱の間に配置された中間支柱と、2つの端部支柱間に中間支柱を貫通して張り渡された複数のワイヤーロープと、を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第6611320号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、漂流物は、船舶、コンテナもしくは車両等の大型のものであり、この漂流物が流出防止柵によって捕捉されるときに流出防止柵に加わる当該漂流物の衝突エネルギは非常に大きいため、流出防止柵には、衝突エネルギの高い吸収能力が求められる。流出防止柵の支柱を構成する支柱材に高強度の部材を用いて支柱の衝突エネルギの吸収能力を高めたり、支柱をより狭い間隔で設置して漂流物と衝突する支柱の本数を増やしたりすれば、流出防止柵の衝突エネルギの吸収能力を高めることが可能ではあるが、その場合には、流出防止柵の製造コストが増大するとともに、流出防止柵の設置工事の規模が増大するという問題がある。
【0006】
本発明の目的は、流出防止柵による漂流物の衝突エネルギの吸収能力を向上しつつ、流出防止柵の製造コストの削減及び流出防止柵の設置工事の規模の抑制が可能な流出防止柵の設計方法及び製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明により提供される流出防止柵の設計方法は、港湾の岸壁に所定の設置間隔で立設される複数の支柱とその複数の支柱の隣り合うもの同士を繋ぐ複数のビームとを有していて前記岸壁上から波にさらわれて漂流する漂流物が海上へ流出するのを防止する流出防止柵を設計する方法である。この流出防止柵の設計方法は、前記漂流物が前記流出防止柵に衝突するときの衝突エネルギの値を取得する衝突エネルギ取得過程と、前記複数の支柱の前記設置間隔を前記漂流物の幅の半分よりも大きく且つ前記漂流物の幅よりも小さい間隔に設定する支柱間隔設定過程と、前記複数の支柱のうちの任意の1本の支柱である第1被衝突支柱に前記漂流物が衝突して当該第1被衝突支柱が傾くように曲げ変形するとともに前記第1被衝突支柱の両隣の前記支柱である2本の隣支柱が前記ビームを介して前記第1被衝突支柱の曲げ変形に引きつられて傾くように曲げ変形することにより前記漂流物の衝突エネルギを吸収する第1の衝突エネルギ吸収形態と、前記複数の支柱のうちの互いに隣り合う支柱である2本の第2被衝突支柱に前記漂流物が衝突して当該2本の第2被衝突支柱が共に傾くように曲げ変形することにより前記漂流物の衝突エネルギを吸収する第2の衝突エネルギ吸収形態とのいずれにおいても前記衝突エネルギ取得過程で取得された値に相当する衝突エネルギを吸収しきることが可能となる鋼管を、前記支柱を構成する支柱材として選定する支柱材選定過程と、を備える。
【0008】
この流出防止柵の設計方法によれば、漂流物が縦方向もしくはそれに近い方向で1本の第1被衝突支柱のみもしくは隣り合う2本の第2被衝突支柱のみに衝突するという衝突エネルギの吸収には厳しい形態での漂流物の衝突がある場合でもその漂流物の衝突エネルギを吸収しきることが可能となる支柱材が選定されるため、流出防止柵による漂流物の衝突エネルギの吸収能力を向上でき、また、漂流物の衝突エネルギの吸収形態を2本もしくは3本の支柱の共同した曲げ変形により漂流物の衝突エネルギを吸収しきるという各支柱に必要な衝突エネルギの吸収能力が制限される吸収形態に特定して支柱材を選定することから、各支柱の支柱材として衝突エネルギの吸収能力を抑えた低コストな鋼管を採用して流出防止柵の製造コストを削減できるとともに、支柱の設置本数の過剰な増大を抑制して流出防止柵の設置工事の規模を抑制できる。
【0009】
具体的に、本発明による流出防止柵の設計方法では、支柱間隔設定過程において複数の支柱の設置間隔を漂流物の幅の半分よりも大きく且つ漂流物の幅よりも小さい間隔に設定することにより、漂流物がその幅方向に直交する長さ方向に沿う縦方向もしくはそれに近い方向で流出防止柵に衝突するときに任意の1本の支柱である第1被衝突支柱のみもしくは互いに隣り合う2本の第2被衝突支柱のみに衝突するように当該支柱同士の間隔が設定され、その上で、支柱材選定過程において、第1被衝突支柱に漂流物が衝突してその第1被衝突支柱が曲げ変形するとともにその第1被衝突支柱の曲げ変形に引きつられて両隣の2本の隣支柱が曲げ変形することにより漂流物の衝突エネルギを吸収する第1の衝突エネルギ吸収形態と、互いに隣り合う2本の第2被衝突支柱に漂流物が衝突してその2本の第2被衝突支柱が曲げ変形することにより漂流物の衝突エネルギを吸収する第2の衝突エネルギ吸収形態とのいずれにおいても衝突エネルギ取得過程で取得された値に相当する漂流物の衝突エネルギを吸収しきることが可能となる鋼管を支柱材として選定するため、漂流物が縦方向もしくはそれに近い方向で1本の第1被衝突支柱のみもしくは隣り合う2本の第2被衝突支柱のみに衝突するという衝突エネルギの吸収には厳しい形態での漂流物の衝突がある場合でもその漂流物の衝突エネルギを吸収しきることが可能な流出防止柵を設計でき、流出防止柵による漂流物の衝突エネルギの吸収能力を向上できる。しかも、本発明による設計方法では、支柱間隔設定過程における前記の支柱の設置間隔の設定により、流出防止柵の設計の前提となる漂流物の衝突エネルギの吸収形態を特定し、それによって、各支柱に必要な衝突エネルギの吸収能力を制限することができる。これにより、各支柱の支柱材として衝突エネルギの吸収能力を抑えた低コストな鋼管を採用することができ、流出防止柵の製造コストを削減できる。また、流出防止柵の衝突エネルギの吸収能力を高めるためには、支柱の設置間隔をより小さくして漂流物が縦方向もしくはそれに近い向きで衝突するときにその漂流物と衝突可能な支柱の本数を3本以上に増やすことも考えられるが、この場合には、流出防止柵の設置工事の規模が著しく増大する。これに対し、本発明による設計方法では、前記支柱間隔設定過程において複数の支柱の設置間隔を漂流物の幅の半分よりも大きく且つ漂流物の幅よりも小さい間隔に設定するため、漂流物が衝突する支柱の本数が2本以下になる適度な間隔で支柱を設置することになり、支柱の設置本数の過剰な増大による流出防止柵の設置工事の規模の増大を防ぐことができる。
【0010】
前記流出防止柵の設計方法は、前記第1の衝突エネルギ吸収形態において前記第1被衝突支柱が直立姿勢から所定の傾斜角度まで曲げ変形するとともに前記2本の隣支柱が直立姿勢から前記所定の傾斜角度の半分の傾斜角度まで曲げ変形する場合の前記第1被衝突支柱と前記2本の隣支柱による合計の吸収エネルギである第1吸収エネルギを算出する第1吸収エネルギ算出過程と、前記第2の衝突エネルギ吸収形態において前記2本の第2被衝突支柱が直立姿勢から共に前記所定の傾斜角度まで曲げ変形する場合の前記2本の第2被衝突支柱による合計の吸収エネルギである第2吸収エネルギを算出する第2吸収エネルギ算出過程と、をさらに備え、前記支柱材選定過程では、前記第1吸収エネルギ算出過程で算出される前記第1吸収エネルギの算出値と前記第2吸収エネルギ算出過程で算出される前記第2吸収エネルギの算出値とのいずれもが前記衝突エネルギ取得過程で取得された衝突エネルギの値よりも大きくなる鋼管を前記支柱材として選定することが好ましい。
【0011】
こうすれば、前記第1の衝突エネルギ吸収形態と前記第2の衝突エネルギ吸収形態とのいずれにおいても前記衝突エネルギ取得過程で取得された漂流物の衝突エネルギの値を吸収しきることが可能となる鋼管を支柱材として選定する支柱材選定過程を実現できる。
【0012】
前記流出防止柵の設計方法は、前記漂流物が前記流出防止柵に衝突した後、当該漂流物がその幅方向に沿う横方向で前記流出防止柵を押すときの力である抗力の値を取得する抗力取得過程を、さらに備え、前記支柱材選定過程では、前記第1の衝突エネルギ吸収形態と前記第2の衝突エネルギ吸収形態とのいずれにおいても前記衝突エネルギ取得過程で取得された値に相当する衝突エネルギを吸収しきることが可能となるという条件に加えて、前記抗力取得過程で取得された値に相当する抗力が前記流出防止柵に作用した場合に前記支柱に作用する曲げ応力よりも大きい許容曲げ応力度を有するという条件を満たす鋼管を前記支柱材として選定することが好ましい。
【0013】
こうすれば、漂流物の衝突エネルギを吸収しきることができるとともに、漂流物が横方向で押す抗力が流出防止柵に作用したときに支柱に塑性的な曲げ変形が生じるのを防ぐことが可能な流出防止柵を設計できる。
【0014】
前記流出防止柵の設計方法は、前記ビームを構成するビーム材を選定するビーム材選定過程をさらに備え、前記ビーム材選定過程では、前記抗力取得過程で取得された値に相当する抗力が前記流出防止柵に作用した場合に前記ビームに作用する曲げ応力よりも大きい許容曲げ応力度を有する部材を前記ビーム材として選定することが好ましい。
【0015】
こうすれば、漂流物が横方向で押す抗力が流出防止柵に作用したときにビームに塑性的な曲げ変形が生じるのを防ぐことが可能な流出防止柵を設計できる。
【0016】
前記流出防止柵は、前記支柱に対して前記ビームを固定するビーム固定ボルトを有し、前記流出防止柵の設計方法は、前記抗力取得過程で取得された値に相当する抗力が前記流出防止柵に作用した場合に前記ビーム固定ボルトに作用するせん断応力よりも大きい許容せん断応力度を有するボルトを前記ビーム固定ボルトとして選定するビーム固定ボルト選定過程をさらに備えることが好ましい。
【0017】
こうすれば、漂流物が横方向で押す抗力が流出防止柵に作用したときにビーム固定ボルトが破損することなく、そのビーム固定ボルトによる支柱に対するビームの固定を維持可能な流出防止柵を設計できる。
【0018】
前記流出防止柵は、前記岸壁の地盤中に埋め込まれる鋼管杭であってその内側に差し込まれる前記支柱の基部を固定するものを有し、前記流出防止柵の設計方法は、前記鋼管杭を構成する杭材として、前記漂流物が前記流出防止柵に衝突するときに前記鋼管杭に作用する転倒モーメントにより前記鋼管杭が前記岸壁の地盤中で転倒するのを回避可能となる鋼管を前記地盤の物性に応じて選定する杭材選定過程をさらに備えることが好ましい。
【0019】
こうすれば、漂流物が流出防止柵に衝突したときに鋼管杭に作用する転倒モーメントにより岸壁の地盤中で鋼管杭が転倒するのを防ぐことが可能な流出防止柵を設計できる。
【0020】
前記流出防止柵は、前記鋼管杭の内側に設けられて前記支柱の基部を前記鋼管杭に固定する支柱固定コンクリートを有し、前記支柱は、前記支柱固定コンクリートに埋め込まれる部分である支柱埋込部を有し、前記流出防止柵の設計方法は、前記漂流物が前記流出防止柵に衝突するときに前記支柱埋込部に発生する曲げモーメントにより前記支柱固定コンクリートに作用する最大圧縮応力度が規定値であるコンクリートの短期許容圧縮応力度よりも小さくなるように前記支柱埋込部の長さを設定する支柱埋込長設定過程をさらに備えることが好ましい。
【0021】
こうすれば、漂流物が流出防止柵に衝突したときに支柱埋込部に発生する曲げモーメントによって支柱固定コンクリートが圧縮されて破損するのを防ぐことが可能な流出防止柵を設計できる。
【0022】
また、本発明による流出防止柵の製造方法は、前記設計方法により設計された流出防止柵を製造する方法である。この製造方法では、前記支柱材選定過程で選定された鋼管を前記支柱材とする複数の前記支柱を前記支柱間隔設定過程で設定された前記設置間隔で港湾の岸壁に立設し、その複数の支柱の隣り合うもの同士を前記ビームでそれぞれ繋いで前記流出防止柵を製造する。
【0023】
この製造方法によれば、前記設計方法による理由と同様の理由により、流出防止柵による漂流物の衝突エネルギの吸収能力を向上しつつ、流出防止柵の製造コストの削減及び流出防止柵の設置工事の規模の抑制が可能な流出防止柵を製造できる。
【発明の効果】
【0024】
以上説明したように、本発明によれば、流出防止柵による漂流物の衝突エネルギの吸収能力を向上しつつ、流出防止柵の製造コストの削減及び流出防止柵の設置工事の規模の抑制が可能な流出防止柵の設計方法及び製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の一実施形態による設計方法で設計される流出防止柵の正面図である。
図2図1に示した流出防止柵を上方から見た図である。
図3図1中のIII-III線に沿った断面図である。
図4図1に示した流出防止柵の中間支柱の頂部とそれに連結された両側のビームの端部付近を部分的に拡大して示す図である。
図5図4に示した流出防止柵の中間支柱の頂部とそれに連結された両側のビームの端部付近を上方から見た図である。
図6図3の断面図における中間支柱の頂部付近を部分的に拡大して示す図である。
図7】漂流物が流出防止柵に衝突するときの第1の衝突形態を上方から見た状態で模式的に示す図である。
図8】漂流物が流出防止柵に衝突するときの第2の衝突形態を上方から見た状態で模式的に示す図である。
図9】漂流物が図7に示した第1の衝突形態で流出防止柵に衝突するときの第1被衝突支柱及び2本の隣支柱の変形の挙動を上方から見た状態で模式的に示す図である。
図10】漂流物が図8に示した第2の衝突形態で流出防止柵に衝突するときの2本の第2被衝突支柱の変形の挙動を上方から見た状態で模式的に示す図である。
図11】漂流物が流出防止柵に衝突するときの第1被衝突支柱の曲げ変形の挙動を示す図である。
図12】漂流物が流出防止柵に衝突するときの隣支柱の曲げ変形の挙動を示す図である。
図13】漂流物が流出防止柵に衝突するときの第2被衝突支柱の曲げ変形の挙動を示す図である。
図14】漂流物が横方向で流出防止柵を押すときの漂流物と流出防止柵との接触状態を上方から見た状態で模式的に示す図である。
図15】漂流物が横方向で流出防止柵を押すときの漂流物と流出防止柵との接触状態を上方から見た状態で模式的に示す図である。
図16】漂流物が横方向で流出防止柵を押してその流出防止柵に漂流物から抗力が作用するときの状態をビームの延び方向に沿う方向から見た状態で示す図である。
図17】鋼管杭の転倒モーメントの算出方法について説明するための模式図であり、岸壁の地盤中に埋め込まれた鋼管杭を側方から見た状態で示す図である。
図18】鋼管杭の転倒モーメントの算出方法について説明するための模式図であり、鋼管杭を上方から見た状態で示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0027】
本発明の一実施形態による設計方法で設計される流出防止柵1は、図1に示すように港湾の岸壁100に設置され、岸壁100上から波にさらわれて漂流する漂流物102(図7等参照)を捕捉して当該漂流物102が海上へ流出するのを防止するものである。本実施形態による設計方法では、漂流物102を岸壁100上から海上へさらおうとする波の一例である津波の引き波を対象として設定し、その引き波によってさらわれる漂流物102の海上への流出を防止する流出防止柵1を設計する。また、漂流物102は、船舶、もしくは、自動車等の車両、もしくは、空のコンテナ等である。当該漂流物102は、平面視における長手方向の寸法である長さと、同平面視において前記長手方向に直交する短手方向の寸法である幅と、前記長手方向及び前記短手方向の両方に直交する方向の寸法である高さと、を有する。漂流物102が船舶である場合には、長さは船舶の全長であり、幅は船舶の全幅であり、高さは船舶の全高である。漂流物102が車両である場合には、長さは車両の全長であり、幅は車両の全幅であり、高さは車両の全高である。
【0028】
流出防止柵1は、複数の鋼管杭2と、複数の支柱4と、複数のビーム6と、複数のビーム締結具8(図4参照)と、複数の支柱固定コンクリート10と、を備える。
【0029】
複数の鋼管杭2は、岸壁100の海側の縁に沿って所定間隔で岸壁100の地盤中に埋め込まれ、後述のようにその内側に差し込まれる支柱4の支柱本体12の基部12aを支えて固定するものである。各鋼管杭2は、円筒状の鋼管によって構成され、鉛直方向に延びる姿勢で岸壁100の地盤中に埋め込まれる。
【0030】
複数の支柱4は、それぞれ、複数の鋼管杭2の対応するものに固定されて岸壁100の海側の縁に沿って所定の設置間隔で立設される。複数の支柱4は、流出防止柵1の両端にそれぞれ配置される一対の端部支柱4aと、その一対の端部支柱4a間に配置される複数の中間支柱4bと、を有する。
【0031】
各端部支柱4aは、支柱本体12と、1つのブラケット14と、を有する。
【0032】
支柱本体12は、鋼管杭2の内径よりも小さい外径を有する円筒状の鋼管によって構成される。支柱本体12は、対応する鋼管杭2の内側に差し込まれた状態で固定される基部12aと、その基部12aと反対側の端部である頂部12bと、を有する。基部12aは、図3に示すように、岸壁100の地盤中に埋め込まれた鋼管杭2の内側にその鋼管杭2の内周面と当該基部12aの外周面との間に隙間がある状態で差し込まれ、その状態で、鋼管杭2の内側に設けられた支柱固定コンクリート10によって固定される。このように基部12aが固定されることによって、支柱本体12が岸壁100の上面から上方へ略鉛直方向に延びるように設置される。支柱本体12は、その基部12aが内側に差し込まれる鋼管杭2と略同心となるように配置される(図2参照)。
【0033】
ブラケット14は、ビーム6の端部が結合されてその端部を支持する部分である。当該ブラケット14は、支柱本体12の頂部12bから側方へ突出する姿勢でその頂部12bの外周面に取り付けられている。当該ブラケット14は、支柱本体12からの当該ブラケット14の突出方向に沿う方向から見てU状をなす湾曲した板材からなる。当該ブラケット14は、その湾曲形状の開口が当該ブラケット14の支柱本体12からの突出方向及び支柱本体12の軸方向(延び方向)の両方に対して直交する方向を向くように配置されている。端部支柱4aが岸壁100に設置された状態では、ブラケット14は、その湾曲形状の開口が海側と反対側(陸側)を向くように配置される。また、ブラケット14のうち支柱本体12の軸方向に沿う方向において互いに対向する箇所を有し、それらの箇所に図略の貫通孔がそれぞれ設けられている。ブラケット14には、合計で二対の貫通孔が設けられている。この二対の貫通孔のうちの一対の貫通孔ともう一対の貫通孔とは、支柱本体12からのブラケット14の突出方向において互いに離間して配置されている。
【0034】
複数の中間支柱4bは、一対の端部支柱4a間において所定の設置間隔で配置される。各中間支柱4bは、前記端部支柱4aの支柱本体12と同様の支柱本体12と、2つのブラケット18と、を有する。
【0035】
中間支柱4bの支柱本体12は、前記端部支柱4aの支柱本体12と同様の鋼管からなる。この中間支柱4bの支柱本体12は、前記端部支柱4aの支柱本体12と同様、基部12aと頂部12bとを有し、対応する鋼管杭2の内側に基部12aが差し込まれた状態でその鋼管杭2の内側に設けられた支柱固定コンクリート10によって固定されることにより、岸壁100の上面から上方へ略鉛直方向に延びるように設置される。また、当該中間支柱4bの支柱本体12は、その基部12aが内側に差し込まれる鋼管杭2と略同心となるように配置される。
【0036】
中間支柱4bの2つのブラケット18は、共に、前記端部支柱4aのブラケット14と同様の構造を有する。2つのブラケット18のうちの一方のブラケット18は、支柱本体12に対して一方側に位置するビーム6の端部が結合されてその端部を支持し、他方のブラケット18は、支柱本体12に対して他方側に位置するビーム6の端部が結合されてその端部を支持する(図4及び図5参照)。一方のブラケット18は、中間支柱4bの支柱本体12の頂部12bから一方の側方へ突出する姿勢でその頂部12bの外周面に取り付けられている。他方のブラケット18は、中間支柱4bの支柱本体12の頂部12bから前記一方のブラケット18と反対側へ突出する姿勢でその頂部12bの外周面に取り付けられている。また、2つのブラケット18は、共に、その湾曲形状の開口が当該2つのブラケット18の各々の支柱本体12からの突出方向及び支柱本体12の軸方向(延び方向)の両方に対して直交する方向を向くように配置されている(図6参照)。中間支柱4bが岸壁100に設置された状態では、当該2つのブラケット18は、それらの湾曲形状の開口が海側と反対側(陸側)を向くように配置される。また、当該2つのブラケット18には、それぞれ、前記ブラケット14と同様に図略の二対の貫通孔が設けられている。
【0037】
複数のビーム6は、それぞれ、隣り合う支柱4間に配置されてその隣り合う支柱4同士を繋ぐものである。各ビーム6は、円筒状の鋼管からなり、隣り合う支柱4間において略水平方向に延びる姿勢で配置される。すなわち、各ビーム6は、それが間に配置された隣り合う支柱4に対して垂直に配置される。各ビーム6の軸方向(延び方向)における両端部は、それぞれ、対応する支柱4の湾曲したブラケット14,18の内側に配置されてそのブラケット14,18によって支持され、その状態でビーム締結具8によってブラケット14,18に締結されて固定される。
【0038】
具体的には、各ビーム6の両端部には、それぞれ、その両端部の管壁を当該ビーム6の径方向に貫通する図略の二対の挿通孔が設けられている。二対の挿通孔のうちの一対の挿通孔は、ビーム6の径方向において互いに対向する位置に配置されている。もう一対の挿通孔は、前記一対の挿通孔からビーム6の軸方向において離間した位置でビーム6の径方向において互いに対向する位置に配置されている。
【0039】
複数のビーム締結具8は、それぞれ、各ビーム6の端部を対応するブラケット14,18に締結するものである。具体的には、各ビーム締結具8は、支柱4のブラケット14,18に対してビーム6の端部を固定するビーム固定ボルト20及びビーム固定ナット22からなる。
【0040】
各ブラケット14,18に設けられた図略の一対の貫通孔とそのブラケット14,18に支持されたビーム6の端部に設けられた図略の一対の挿通孔とにビーム固定ボルト20が挿通され、また、そのブラケット14,18に設けられた図略のもう一方の貫通孔とそのブラケット14,18に支持されたビーム6の端部に設けられた図略のもう一対の挿通孔とに別のビーム固定ボルト20が挿通される。そして、それらのビーム固定ボルト20にそれぞれビーム固定ナット22が螺合されて締め付けられることによって、各ブラケット14,18とそれに支持されたビーム6の端部とが締結される。
【0041】
次に、以上のような構成を有する流出防止柵1を設計するための本発明の一実施形態による設計方法について説明する。
【0042】
本実施形態による設計方法では、流出防止柵1が捕捉する漂流物102の諸元と、流出防止柵1が設置される港湾における海水の流れ及び地盤についての現地条件とに基づいて、流出防止柵1を設計する。本実施形態による設計方法は、設計条件入手過程と、衝突エネルギ取得過程と、抗力取得過程と、支柱間隔設定過程と、構成部材選定過程と、支柱埋込長設定過程と、を備える。
【0043】
前記設計条件入手過程では、流出防止柵1が捕捉する対象の漂流物102の諸元と、流出防止柵1が設置される港湾において漂流物102を漂流させる海水の流れに関する条件及び岸壁100の地盤に関する条件を含む現地条件とを、設計条件として入手する。
【0044】
漂流物102の前記諸元は、流出防止柵1を設計するにあたってその流出防止柵1による捕捉対象として設定された漂流物102(船舶もしくは車両もしくは空のコンテナ等)の長さL(平面視における漂流物102の長手方向の寸法)、幅B(平面視において漂流物102の長手方向に直交する短手方向の寸法)、高さH、及び、質量Wと、当該漂流物102が海水に浮かんだときの当該漂流物102の喫水D(漂流物102の底面から水面までの距離)と、である。
【0045】
また、前記現地条件のうち漂流物102を漂流させる海水の流れに関する条件は、漂流物102を漂流させる海水の流れの速度V(津波の引き波により漂流物102が受ける海水の流れの速度V)と、漂流物102が漂流するときの海水による抗力係数Cと、漂流物102を漂流させる海水が浸水する岸壁100上でのその海水の深さ(浸水した海水面から岸壁100の上面までの距離)である浸水深Hと、である。
【0046】
また、前記現地条件のうち岸壁100の地盤に関する条件は、岸壁100の地盤の単位体積当たりの重量γと、岸壁100の地盤の粘着度Cと、岸壁100の地盤の内部摩擦角φと、標準貫入試験によって得られる岸壁100の地盤のN値と、である。
【0047】
前記衝突エネルギ取得過程では、漂流物102が流出防止柵1に衝突するときの衝突エネルギの値を取得する。本実施形態では、この衝突エネルギ取得過程において、前記設計条件入手過程で入手した漂流物102の諸元と前記現地条件のうちの漂流物102を漂流させる海水の流れに関する条件とに基づいて漂流物102が流出防止柵1に衝突するときの衝突エネルギの値を算出することによって取得する。
【0048】
漂流物102の衝突形態として、漂流物102がその長さ方向に沿って漂流してその長さ方向が流出防止柵1の支柱4の並び方向に対して垂直となる縦方向で流出防止柵1に衝突する第1衝突形態と、漂流物102が平面視で僅かに回転しながら漂流してその漂流物102の長さ方向が流出防止柵1の支柱4の並び方向に対して斜めに傾いた状態で流出防止柵1に衝突する第2衝突形態とがある。漂流物102が前記第1衝突形態で流出防止柵1に衝突する場合には次式(1)によって漂流物102の衝突エネルギEを算出し、漂流物102が前記第2衝突形態で衝突する場合には次式(2)によって漂流物102の衝突エネルギEを算出する。
E=n・W・V/(2・g) ・・・(1)
E=n・W・V/(4・g) ・・・(2)
【0049】
漂流物102が船舶である場合、津波の流向の不規則性に伴って船体が回転運動しながら海水の流れに乗って漂流することが一般的であるため、その衝突形態は前記第2衝突形態となることが一般的である。このため、漂流物102が船舶である場合には、通常、前記式(2)によって漂流物102の衝突エネルギEを算出する。ただし、漂流物102が船舶である場合であっても、漂流物102の衝突エネルギの吸収の確実性がより高くなるように流出防止柵1を設計することを優先する場合には、衝突エネルギの値が大きくなる前記第1衝突形態に対応する前記式(1)によって漂流物102の衝突エネルギEを算出する。
【0050】
また、漂流物102が車両もしくは空のコンテナである場合には、津波の流向に不規則性があってもその車両もしくはコンテナは回転運動をほぼ生じずに海水の流れに乗って漂流することが一般的であるため、その衝突形態は前記第1衝突形態となることが一般的である。このため、漂流物102が車両もしくは空のコンテナである場合には、通常、前記式(1)によって漂流物102の衝突エネルギEを算出する。ただし、漂流物102が車両もしくは空のコンテナである場合であっても、何らかの要因によりその車両もしくはコンテナが回転運動しながら漂流することが想定される場合には、前記第2衝突形態に対応する前記式(2)によって漂流物102の衝突エネルギEを算出する。
【0051】
なお、前記式(1)及び(2)において、nは、流出防止柵1に対する漂流物102の衝突回数である。例えば、漂流物102が流出防止柵1に最初に衝突した後、跳ね返った当該漂流物102が流出防止柵1に繰り返し衝突する場合があり、そのように繰り返し衝突が発生する場合を想定してその場合に対応する流出防止柵1を設計する場合には、前記nの値としてその衝突回数を適用する。また、流出防止柵1に対する漂流物102の衝突が1回である場合を想定してその場合に対応する流出防止柵1を設計する場合には、前記nの値として1を適用する。また、前記式(1)及び(2)において、Wは漂流物102が漂流するときの当該漂流物102の仮想重量であり、Vは前記現地条件の海水の流れに関する条件のうちの漂流物102を漂流させる海水の流れの速度であり、gは重力加速度である。
【0052】
漂流物102の前記仮想重量Wは、漂流物102の前記諸元のうちの漂流物102の質量W、長さL及び喫水Dと、規定値である海水の単位体積重量γと、円周率πとから、次式(3)によって算出される。
W=W+(π/4)・D ・L・γ ・・・(3)
【0053】
前記抗力取得過程では、漂流物102が流出防止柵1に衝突した後、当該漂流物102の幅方向に沿う横方向で流出防止柵1を押すときの力である抗力の値を取得する。本実施形態では、この抗力取得過程において、津波の引き波により漂流物102に作用する海水の流れによって当該漂流物102が前記横方向で流出防止柵1を押す抗力の値を算出する。これは、漂流物102は、流出防止柵1に衝突した後、海水の流れ等の影響により横向きになって流出防止柵1に接触し、海水の流れを受けて横方向で流出防止柵1を押し続ける場合が多いため、このような横方向での漂流物102の抗力の値を算出する。この抗力Fは、前記現地条件の海水の流れに関する条件のうちの抗力係数C、浸水深H、及び、漂流物102を漂流させる海水の流れの速度Vと、流出防止柵1のうち海水が通過可能な支柱4間の空間が当該流出防止柵1を横方向で押す漂流物102によって遮蔽される割合である遮蔽率φと、規定値である海水の単位体積重量γと、重力加速度gとから、次式(4)によって算出される。
F=C・φ・γ・H・V/(2・g) ・・・(4)
【0054】
なお、漂流物102が横方向で流出防止柵1を押す抗力により支柱4の塑性的な曲げ変形が発生するのを防止する確実性を高めることを重視する場合には、横方向の漂流物102による遮蔽の条件としてその漂流物102から流出防止柵1に付与される抗力が最も大きくなる条件である、流出防止柵1の各支柱4間の全ての空間が横方向の漂流物102によって遮蔽されるという条件を設定して前記抗力Fを算出してもよい。この場合、抗力Fを算出するための前記式(4)において、前記遮蔽率φに1を適用する。
【0055】
そして、前記支柱間隔設定過程では、流出防止柵1に含まれる複数の支柱4の設置間隔を漂流物102の幅の半分よりも大きく且つ漂流物102の幅よりも小さい間隔に設定する。すなわち、漂流物102が前記縦方向で流出防止柵1に衝突する場合に流出防止柵1に含まれる複数の支柱4のうちの単一の支柱4もしくは隣り合う2本の支柱4に衝突するように支柱4の設置間隔を設定する。
【0056】
また、前記構成部材選定過程では、流出防止柵1を構成する部材を選定する前記構成部材選定過程を行う。この構成部材選定過程は、支柱材選定過程と、ビーム材選定過程と、ビーム固定ボルト選定過程と、杭材選定過程と、を含む。
【0057】
前記支柱材選定過程は、各支柱4の支柱本体12を構成する支柱材を選定する過程である。この支柱材選定過程では、漂流物102が縦方向で流出防止柵1の複数の支柱4(中間支柱4b)のうち任意の1本の支柱4である第1被衝突支柱24のみに衝突する第1の衝突形態(図7参照)においてその漂流物102の衝突エネルギを吸収する第1の衝突エネルギ吸収形態(図9参照)と、漂流物102が縦方向で流出防止柵1の複数の支柱4(中間支柱4b)のうちの互いに隣り合う2本の支柱4である第2被衝突支柱26のみに衝突する第2の衝突形態(図8参照)においてその漂流物102の衝突エネルギを吸収する第2の衝突エネルギ吸収形態(図10参照)とのいずれにおいても、前記衝突エネルギ取得過程で取得された衝突エネルギの値に相当する衝突エネルギを吸収しきることが可能で、且つ、前記抗力取得過程において取得された抗力の値に相当する抗力が流出防止柵1に作用した場合に各支柱4の支柱本体12の塑性的な曲げ変形が生じるのを防ぐことが可能な鋼管を、各支柱4の支柱本体12を構成する支柱材として選定する。
【0058】
具体的に、漂流物102が前記第1の衝突形態で流出防止柵1に衝突する場合の前記第1の衝突エネルギ吸収形態(図9参照)では、第1被衝突支柱24が漂流物102の衝突方向へ所定の角度(本実施形態では15°)まで傾くように曲げ変形するとともに、その第1被衝突支柱24の両隣の支柱4である2本の隣支柱25がビーム6を介して第1被衝突支柱24の曲げ変形に引きつられて漂流物102の衝突方向へ前記所定の角度の半分の角度(本実施形態では7.5°)まで傾くように曲げ変形することにより、漂流物102の衝突エネルギを吸収するものとする。また、漂流物102が前記第2の衝突形態で流出防止柵1に衝突する場合の前記第2の衝突エネルギ吸収形態(図10参照)では、互いに隣り合う2本の第2被衝突支柱26が漂流物102の衝突方向へ所定の角度(本実施形態では15°)まで傾くように曲げ変形することにより、漂流物102の衝突エネルギを吸収するものとする。
【0059】
本実施形態による設計方法の構成部材選定過程は、支柱材の候補の鋼管を各支柱4の支柱本体12に適用したと仮定して、前記第1の衝突エネルギ吸収形態において第1被衝突支柱24が直立姿勢から所定の角度まで曲げ変形するとともに2本の隣支柱25が直立姿勢から前記所定の角度の半分の角度まで曲げ変形する場合の第1被衝突支柱24と2本の隣支柱25による合計の吸収エネルギである第1吸収エネルギを算出する第1吸収エネルギ算出過程と、前記第2の衝突エネルギ吸収形態において2本の第2被衝突支柱26が直立姿勢から共に前記所定の角度まで曲げ変形する場合の当該2本の第2被衝突支柱26による合計の吸収エネルギである第2吸収エネルギを算出する第2吸収エネルギ算出過程と、を含む。
【0060】
そして、支柱材選定過程では、第1吸収エネルギ算出過程で算出される第1吸収エネルギの算出値と第2吸収エネルギ算出過程で算出される第2吸収エネルギの算出値とのいずれもが前記衝突エネルギ取得過程で取得された衝突エネルギの値よりも大きい場合、すなわち、算出した第1吸収エネルギと第2吸収エネルギとのうち小さい方の吸収エネルギの値が前記衝突エネルギの算出値よりも大きい場合に、前記支柱材の候補の鋼管を各支柱4の支柱本体12に適用すれば漂流物102が縦方向で衝突するときの衝突エネルギを吸収しきることが可能であると判断して当該支柱材の候補の鋼管を各支柱4の支柱本体12に適用可能であると判断する。一方、算出した第1吸収エネルギと第2吸収エネルギの少なくとも一方が前記衝突エネルギ取得過程で取得された衝突エネルギの値以下である場合、すなわち、算出した第1吸収エネルギと第2吸収エネルギとのうち小さい方の吸収エネルギの値が前記衝突エネルギの算出値以下である場合には、前記支柱材の候補の鋼管を各支柱4の支柱本体12に適用すると漂流物102が縦方向で衝突するときの衝突エネルギを吸収しきることができない場合があると判断して当該支柱材の候補の鋼管を各支柱4の支柱本体12に適用できないと判断する。
【0061】
前記第1吸収エネルギEP1は、次式(5)によって算出される。
EP1=F・δ15+2・F・δ7.5 ・・・(5)
【0062】
この式(5)において、δ15は、漂流物102の衝突により第1被衝突支柱24の支柱本体12が図11に示すように直立姿勢から15°傾くように曲げ変形するときに、その漂流物102の衝突の荷重が作用する高さ位置である荷重作用位置の水平方向への変位量であり、荷重作用位置の岸壁100上面からの高さhから次式(6)によって算出される。本実施形態では、荷重作用位置の高さhは、岸壁100上面からの流出防止柵1の高さに等しいものとする。
δ15=h・tan15° ・・・(6)
【0063】
また、式(5)において、δ7.5は、第1被衝突支柱24の前記の曲げ変形に引きつられて隣支柱25の支柱本体12が図12に示すように直立姿勢から7.5°傾くように曲げ変形するときの荷重作用位置の水平方向への変位量であり、荷重作用位置の岸壁100上面からの高さhから次式(7)によって算出される。
δ7.5=h・tan7.5° ・・・(7)
【0064】
また、前記式(5)において、Fは、支柱本体12(支柱材)の降伏外力である。この降伏外力Fは、次式(8)によって算出される。
=(Z・σyd)/h ・・・(8)
【0065】
この式(8)において、Zは、支柱本体12(支柱材)の塑性時断面係数であり、支柱材の候補の鋼管の直径Dとその鋼管の管壁の厚みtとから、次式(9)によって算出される。
=1/6・D {1-(1-2・t/D} ・・・(9)
【0066】
また、前記式(8)において、σydは支柱本体12(支柱材)の動的降伏応力であり、次式(10)のように支柱本体12(支柱材)の降伏応力σを1.2倍することで求められる。
σyd=1.2σ ・・・(10)
【0067】
前記降伏応力σは、支柱材の候補の鋼管が、例えばJIS G 3444に規定された一般構造用炭素鋼鋼管STK400であり、その鋼管の直径Dと管壁の厚みtとの比D/tが8よりも大きく且つ110よりも小さい場合には、次式(11)によって算出される。
σ=527.5・(D/t-0.104 ・・・(11)
【0068】
また、支柱材の候補の鋼管がJIS G 3444に規定された一般構造用炭素鋼鋼管STK490であり、その鋼管の直径Dと管壁の厚みtとの比D/tが8よりも大きく且つ110よりも小さい場合には、前記降伏応力σは、次式(12)によって算出される。
σ=703.3・(D/t-0.104 ・・・(12)
【0069】
また、前記第2吸収エネルギEP2は、次式(13)によって算出される。
EP2=2・F・δ15 ・・・(13)
【0070】
この式(13)において、δ15は、漂流物102の衝突により第2被衝突支柱26の支柱本体12が図13に示すように直立姿勢から15°傾くように曲げ変形するときの荷重作用高さ位置の水平方向への変位量であり、前記式(5)で用いられる変位量δ15と同様に前記式(6)によって算出される。また、式(13)において、Fは、前記式(5)で用いられる降伏外力Fと同様、支柱本体12(支柱材)の降伏外力であり、前記式(8)によって算出される。
【0071】
また、前記抗力取得過程で取得された抗力の値に相当する抗力が流出防止柵1に作用した場合に各支柱4の支柱本体12の塑性的な曲げ変形が生じるのを防ぐことが可能な支柱材の選定では、前記抗力取得過程で取得された抗力の値に相当する抗力が流出防止柵1に作用した場合に当該抗力を及ぼす横向きの漂流物102が関与する(接触する)各支柱4の支柱本体12に対して作用する曲げ応力を算出し、その算出した曲げ応力よりも大きい短期の許容曲げ応力度を有する鋼管を各支柱4の支柱本体12の支柱材として選定する。
【0072】
前記抗力を及ぼす横向きの漂流物102が関与する各支柱4の支柱本体12に対して作用する曲げ応力σは、次式(14)によって算出される。
σ=M/Z ・・・(14)
【0073】
この式(14)において、Zは、支柱本体12を構成する支柱材の断面係数、すなわち支柱材の候補の鋼管の断面係数である。また、Mは、支柱本体12に作用する曲げモーメントであり、次式(15)によって算出される。
=F’/h ・・・(15)
【0074】
この式(15)において、F’は、図16に示すように漂流状態で浮かんだ横向きの漂流物102が流出防止柵1を押すことで1本当たりの支柱4の支柱本体12に作用する抗力であり、前記抗力取得過程で取得した抗力の値を漂流物102が横方向で流出防止柵1を押すときに関与する支柱4間のスパンの数(関与スパン数)で除して得られる値である。例えば、図14に示すように漂流物102の長さ方向の両端のそれぞれが隣り合う支柱4間に位置する状態で当該漂流物102が横方向で流出防止柵1を押す場合には、漂流物102の長さ方向の両端のそれぞれが関与するスパンを0.5ずつと見なして、漂流物102の関与スパン数を6とする。また、図15に示すように漂流物102の長さ方向の両端のそれぞれが対応する支柱4に当たるように当該漂流物102が横方向で流出防止柵1を押す場合も、漂流物102の関与スパン数は6である。
【0075】
支柱材の候補の鋼管が前記のように算出される曲げ応力σよりも大きい短期許容曲げ応力度を有する場合には、その鋼管を各支柱4の支柱本体12に適用すれば、漂流物102が横方向で流出防止柵1を押す抗力が流出防止柵1に作用する場合に関与する支柱4の支柱本体12に塑性的な曲げ変形が生じるのを防ぐことができると判断してその鋼管を各支柱4の支柱本体12に適用可能であると判断する。一方、支柱材の候補の鋼管が前記のように算出される曲げ応力σ以下の短期許容曲げ応力度を有する場合には、その鋼管を各支柱4の支柱本体12に適用すると、漂流物102が横方向で流出防止柵1を押す抗力が流出防止柵1に作用する場合に関与する支柱4の支柱本体12に塑性的な曲げ変形が生じるのを防ぐことができないと判断してその鋼管を各支柱4の支柱本体12に適用できないと判断する。
【0076】
そして、前記衝突エネルギ取得過程で取得された衝突エネルギの値に相当する衝突エネルギを吸収しきることが可能な支柱材の選定において各支柱4の支柱本体12に適用可能であると判断し、且つ、前記抗力取得過程で取得された抗力の値に相当する抗力が流出防止柵1に作用した場合に各支柱4の支柱本体12の塑性的な曲げ変形が生じるのを防ぐことが可能な支柱材の選定において各支柱4の支柱本体12に適用可能であると判断した支柱材の候補の鋼管を、各支柱4の支柱本体12を構成する支柱材として採用する。
【0077】
また、前記ビーム材選定過程は、各ビーム6を構成するビーム材を選定する過程である。このビーム材選定過程では、前記抗力取得過程で取得された抗力の値に相当する抗力が流出防止柵1に作用した場合に各ビーム6に塑性的な曲げ変形が生じるのを防ぐことが可能な鋼管を、各ビーム6のビーム材として選定する。具体的には、このビーム材選定過程では、前記抗力取得過程で取得された抗力の値に相当する抗力が流出防止柵1に作用した場合に当該抗力を及ぼす横向きの漂流物102が関与する各ビーム6に対して作用する曲げ応力を算出し、その算出した各ビーム6に作用する曲げ応力よりも大きい短期許容曲げ応力度を有する鋼管を各ビーム6のビーム材として選定する。
【0078】
前記抗力を及ぼす横向きの漂流物102が関与する各ビーム6に対して作用する曲げ応力σは、次式(16)によって算出される。
σ=M/Z ・・・(16)
【0079】
この式(16)において、Zは、ビーム6を構成するビーム材の断面係数、すなわちビーム材の候補の鋼管の断面係数である。また、Mは、ビーム6に作用する曲げモーメントであり、次式(17)によって算出される。
=(F’・S)/(4・N) ・・・(17)
【0080】
この式(17)において、Sは、隣り合う支柱4間の間隔である。Nは、流出防止柵1の高さ方向におけるビーム6の段数であり、本実施形態では、このビーム6の段数は1である。また、F’は、1本当たりのビーム6に作用する抗力であり、前記抗力取得過程で取得した抗力の値を漂流物102が横方向で流出防止柵1を押すときに関与するビーム6の数で除して得られる値である。漂流物102が横方向で流出防止柵1を押すときに関与するビーム6の数は、漂流物102が横方向で流出防止柵1を押すときの前記関与スパン数と同じである。このため、式(17)におけるF’には、前記式(15)におけるF’と同じ値を用いる。
【0081】
ビーム材の候補の鋼管が前記のように算出される曲げ応力σよりも大きい短期許容曲げ応力度を有する場合には、その鋼管を各ビーム6に適用すれば、漂流物102が横方向で流出防止柵1を押す抗力が流出防止柵1に作用する場合に関与するビーム6に塑性的な曲げ変形が生じるのを防ぐことができると判断してその鋼管を各ビーム6のビーム材として採用する。一方、ビーム材の候補の鋼管が前記のように算出される曲げ応力σ以下の短期許容曲げ応力度を有する場合には、その鋼管を各ビーム6に適用すると、漂流物102が横方向で流出防止柵1を押す抗力が流出防止柵1に作用する場合に関与するビーム6に塑性的な曲げ変形が生じるのを防ぐことができないと判断してその鋼管を各ビーム6のビーム材として採用しない。
【0082】
また、前記ビーム固定ボルト選定過程は、ビーム締結具8のビーム固定ボルト20に採用するボルトを選定する過程である。このビーム固定ボルト選定過程では、前記抗力取得過程で取得された抗力の値に相当する抗力が流出防止柵1に作用した場合に各ビーム締結具8のビーム固定ボルト20が破損するのを回避可能なボルトをビーム固定ボルト20として選定する。具体的には、このビーム固定ボルト選定過程では、前記抗力取得過程で取得された抗力の値に相当する抗力が流出防止柵1に作用した場合にビーム固定ボルト20に作用するせん断応力を算出し、その算出したせん断応力よりも大きい短期許容せん断応力度を有するボルトをビーム固定ボルト20に採用するボルトとして選定する。
【0083】
ビーム固定ボルト20に作用するせん断応力τは、次式(18)によって算出される。
τ=F’/(A・N) ・・・(18)
【0084】
この式(18)において、Aは、ビーム固定ボルト20の有効断面積である。Nは、1本のビーム6を固定するビーム固定ボルト20の本数であり、本実施形態では4である。また、この式(18)におけるF’は、1本の当たりのビーム6に作用する抗力であり、前記式(17)におけるF’と同じ値を用いる。
【0085】
ビーム固定ボルト20に採用する候補のボルトが前記のように算出されるせん断応力τよりも大きい短期許容せん断応力度を有する場合には、そのボルトをビーム固定ボルト20に採用すれば、漂流物102が横方向で流出防止柵1を押す抗力が流出防止柵1に作用する場合にビーム固定ボルト20が破損するのを回避できると判断して当該ボルトをビーム固定ボルト20に採用する。一方、ビーム固定ボルト20に採用する候補のボルトが前記のように算出されるせん断応力τ以下の短期許容せん断応力度を有する場合には、そのボルトをビーム固定ボルト20に採用すると、漂流物102が横方向で流出防止柵1を押す抗力が流出防止柵1に作用した場合にビーム固定ボルト20が破損する可能性があると判断して当該ボルトをビーム固定ボルト20に採用しない。
【0086】
また、前記杭材選定過程は、各鋼管杭2を構成する杭材を選定する過程である。この杭材選定過程では、漂流物102が縦方向で流出防止柵1に衝突した場合に流出防止柵1に加わる力によって鋼管杭2が岸壁100の地盤中で転倒するのを防止可能であり、且つ、流出防止柵1の自重による地盤中での鋼管杭2の沈み込みを防止可能な鋼管を、各鋼管杭2の杭材として選定する。具体的には、この杭材選定過程は、岸壁100の地盤中での転倒を防止可能な杭材の選定と、岸壁100の地盤中での沈み込みを防止可能な杭材の選定と、を含む。
【0087】
まず、地盤中での転倒防止可能な杭材の選定では、次式(19)によって算出される鋼管杭2の転倒に対する安全率Fが1.5以上になる鋼管を杭材として選定する。
=M/M ・・・(19)
【0088】
この式(19)において、Mは、漂流物102が縦方向で流出防止柵1に衝突した場合に鋼管杭2に作用する転倒モーメントである。この転倒モーメントMは、前記式(8)によって算出される支柱本体12の降伏外力Fと、前記荷重作用位置の高さhと、鋼管杭2の埋込長Lとから、次式(20)によって算出される。本実施形態では、鋼管杭2の上端が岸壁100の上面の位置と揃うように鋼管杭2が岸壁100の地盤中に埋め込まれることから、鋼管杭2の埋込長Lとして、杭材に採用する候補の鋼管の長さに等しい長さを用いる。
=F・(h+0.7・L) ・・・(20)
【0089】
また、前記式(19)において、Mは、岸壁100の地盤中に埋め込まれた鋼管杭2の転倒に対抗するモーメントである。このモーメントMは、前記鋼管杭2の埋込長Lと、鋼管杭2が埋め込まれる岸壁100の地盤の極限水平支持力Rと、鋼管杭2の底面の極限水平支持力Sと、水平方向における不釣り合い力Pとから、次式(21)によって算出される。
=1/3・0.7・L・R+0.3・L・S+1/2・0.3・L・P ・・・(21)
【0090】
前記地盤の極限水平支持力Rは、次式(22)によって算出される。
={W・(cosα+sinα・tanφ)+C・Ac}/(sinα-cosα・tanφ) ・・・(22)
【0091】
この式(22)において、αは、すべり角であり、具体的には、岸壁100の地盤のうち漂流物102が縦方向で流出防止柵1に衝突して鋼管杭2に転倒モーメントが作用したときにその鋼管杭2によって押されて移動するA部(すべり土塊:図17中のドットハッチングが付された部分)と不動地盤との間の境界面であるすべり面104と鋼管杭2との間の角度である。φは、前記現地条件の岸壁100の地盤に関する条件のうちの岸壁100の地盤の内部摩擦角であり、Cは、その岸壁100の地盤に関する条件のうちの岸壁100の地盤の粘着度である。
【0092】
また、前記式(22)において、Wは、前記A部の重量であり、次式(23)によって算出される。
=[{0.7・L・c・d・(1/2)・(1/3)・2+0.7・L・c・(1/2)・D}-{f・g・j・(1/2)・(1/3)・2}]・γ ・・・(23)
【0093】
この式(23)において、cは、水平方向における鋼管杭2の上端から前記すべり面104までの距離である。また、d図18参照)は、鋼管杭2の上端と同じ高さ位置での前記すべり面104の拡がり幅である。また、L図17参照)は、鋼管杭2の埋込長であり、Dは、杭材の候補の鋼管の直径である。また、f、g及びj(図17及び図18参照)は、1つの鋼管杭2に転倒モーメントが作用したときにその鋼管杭2によって押されて移動する地盤のA部のうち、その鋼管杭2の隣の鋼管杭2に同様に転倒モーメントが作用してその隣の鋼管杭2によって押されて移動する地盤のA部と重なる重なり部分の寸法を示す値であり、fは鋼管杭2の並び方向及び高さ方向に対して垂直な方向における当該重なり部分の寸法、gは当該重なり部分の高さ方向の寸法、jは鋼管杭2の並び方向における当該重なり部分の寸法である。また、γは、前記現地条件の地盤に関する条件のうちの岸壁100の地盤の単位体積当たりの重量である。
【0094】
また、前記式(22)において、Acは、前記すべり面104の面積であり、次式(24)によって算出される。
Ac=(d+D)・l-(j・l)/d ・・・(24)
【0095】
この式(24)におけるd、D及びjの値は、上述のd、D及びjと同様の値である。また、式(24)において、lは、前記すべり面104のうち鋼管杭2に接する下端から鋼管杭2の上端と同じ高さ位置(岸壁100の上面の高さ位置)までの当該すべり面104の傾斜に沿う方向の長さである。
【0096】
また、前記式(21)における鋼管杭2の底面の極限水平支持力Sは、前記支柱材選定過程で選定された鋼管を支柱材とする支柱4の重量Nと、後述のように支柱埋込長設定過程で設定される支柱4の埋込長Lと、杭材の候補の鋼管の単位長さ当たりの重量Wと、前記鋼管杭2の埋込長Lと、前記現地条件の岸壁100の地盤に関する条件のうち岸壁100の地盤の内部摩擦角φとから、次式(25)によって算出される。
={N・(h+L)+W・L}・tan{(2/3)・φ} ・・・(25)
【0097】
また、前記式(21)において、水平方向における不釣り合い力Pは、上述のように算出される岸壁100の地盤の極限水平支持力Rと、前記支柱本体12の降伏外力Fと、前記式(25)によって算出される鋼管杭2の底面の極限水平支持力Sとから、次式(26)によって算出される。
P=R-F-S ・・・(26)
【0098】
また、地盤中での沈み込み防止可能な杭材の選定では、岸壁100の地盤中において鋼管杭2がその延び方向である鉛直方向に沈み込むのを防止するのに必要な当該鋼管杭2の長さである必要杭長Lを次式(27)によって算出し、算出した必要杭長Lよりも大きい長さを有する鋼管を杭材として選定する。次式(27)では、前記支柱材選定過程で選定された鋼管を支柱材とする支柱4の重量Nと、岸壁100の上面からの流出防止柵1の高さHと、後述のように支柱埋込長設定過程で設定される支柱4の埋込長Lと、杭材の候補の鋼管の単位長さ当たりの重量Wと、前記鋼管杭2の埋込長Lと、安全係数sfと、杭材の候補の鋼管の周長Uと、岸壁100の地盤中に埋め込まれた鋼管杭2に作用する周面摩擦力度fとから、必要杭長Lが算出される。
={N・(H+L)+W・L}・sf/(U・f) ・・・(27)
【0099】
この式(27)において、安全係数sfとしては3が適用される。この安全係数sf=3という条件は、地盤中の摩擦杭について地震の発生時であっても沈み込みが発生するのを防止可能とする条件である。
【0100】
また、前記杭材の候補の鋼管の周長Uは、杭材の候補の鋼管の直径Dと円周率πとから、次式(28)によって算出される。
U=D・π ・・・(28)
【0101】
また、前記周面摩擦力度fは、前記現地条件の地盤に関する条件のうちの岸壁100の地盤のN値を2倍した値(2N)とする。この周面摩擦力度fの値は、岸壁100の地盤の地質が砂質土であり、その地盤中に中堀り杭工法で鋼管杭2が設置される場合に適用される値である。
【0102】
そして、前記地盤中での転倒防止可能な杭材の選定において鋼管杭2の転倒に対する安全率Fが1.5以上になるとして杭材に選定され、且つ、前記地盤中での沈み込み防止可能な杭材の選定において必要杭長Lよりも大きい長さを有するとして杭材に選定された鋼管を、鋼管杭2の杭材として採用する。
【0103】
また、前記支柱埋込長設定過程は、各支柱4のうち支柱固定コンクリート10に埋め込まれる部分である支柱埋込部30の長さを設定する過程である。この支柱埋込長設定過程では、漂流物102が縦方向で流出防止柵1に衝突するときに支柱埋込部30に発生する曲げモーメントにより支柱固定コンクリート10に作用する最大圧縮応力度が規定値であるコンクリートの短期許容圧縮応力度よりも小さくなるように支柱埋込部30の長さを設定する。
【0104】
支柱固定コンクリート10に作用する前記最大圧縮応力度σc1は、前記支柱材選定過程で支柱材として選定された鋼管の直径Dと、支柱4の埋込長Lと、漂流物102の縦方向での流出防止柵1への衝突により支柱4に加わるせん断力Qo1と、支柱埋込部30のうちの支柱本体12の軸方向における中央部に生じる曲げモーメントMとから、次式(29)によって算出される。
σc1={Qo1/(D・L)}+{6・M/(D・L )} ・・・(29)
【0105】
この式(29)において、前記せん断力Qo1としては、前記降伏外力Fと等しい値を適用する。
【0106】
また、前記曲げモーメントMは、前記せん断力Qo1と、前記荷重作用位置の高さhと、支柱4の埋込長Lとから、次式(30)によって算出される。
=Qo1・(h+L/2) ・・・(30)
【0107】
また、コンクリートの短期許容圧縮応力度fは、コンクリートの設計基準強度Fcから次式(31)によって規定される値であり、コンクリートの設計基準強度Fは例えば18N/mmである。
=1.5・(F/4) ・・・(31)
【0108】
以上のように算出される支柱固定コンクリート10の最大圧縮応力度σc1がコンクリートの短期許容圧縮応力度fよりも小さくなるように支柱4の埋込長Lを設定する。
【0109】
本実施形態による流出防止柵1の設計方法では、支柱間隔設定過程において流出防止柵1の複数の支柱4の設置間隔を漂流物102の幅Bの半分よりも大きく且つ漂流物102の幅Bよりも小さい間隔に設定することにより、漂流物102が縦方向もしくはそれに近い方向で流出防止柵1に衝突するときに任意の1本の支柱4である第1被衝突支柱24のみもしくは互いに隣り合う支柱4である2本の第2被衝突支柱26のみに衝突するように支柱4同士の間隔が設定され、その上で、支柱材選定過程において、第1被衝突支柱24に漂流物102が衝突してその第1被衝突支柱24が曲げ変形するとともにその第1被衝突支柱24の曲げ変形に引きつられて両隣の2本の隣支柱25が曲げ変形することにより漂流物102の衝突エネルギを吸収する第1の衝突エネルギ吸収形態と、互いに隣り合う2本の第2被衝突支柱26に漂流物102が縦方向で衝突してその2本の第2被衝突支柱26が曲げ変形することにより漂流物102の衝突エネルギを吸収する第2の衝突エネルギ吸収形態とのいずれにおいても衝突エネルギ取得過程で取得された衝突エネルギの値に相当する漂流物102の衝突エネルギを吸収しきることが可能な鋼管を支柱材として選定する。このため、漂流物102が縦方向もしくはそれに近い方向で1本の第1被衝突支柱24のみもしくは隣り合う2本の第2被衝突支柱26のみに衝突するという衝突エネルギの吸収には厳しい形態での漂流物102の衝突がある場合でもその漂流物102の衝突エネルギを吸収しきることが可能な流出防止柵1を設計でき、流出防止柵1による漂流物102の衝突エネルギの吸収能力を向上できる。
【0110】
しかも、本実施形態による設計方法では、支柱間隔設定過程における前記の支柱4の設置間隔の設定により流出防止柵1の設計の前提となる漂流物102の衝突エネルギの吸収形態を特定し、それによって、各支柱4に必要な衝突エネルギの吸収能力を制限することができる。これにより、各支柱4の支柱材として衝突エネルギの吸収能力を抑えた低コストな鋼管、具体的には直径及び管壁の厚みを抑えた鋼管を採用することができ、流出防止柵1の製造コストを削減できる。
【0111】
また、流出防止柵1の衝突エネルギの吸収能力を高めるためには、支柱4の設置間隔をより小さくして漂流物102が縦方向もしくはそれに近い方向で衝突するときにその漂流物102と衝突可能な支柱4の本数を3本以上に増やすことも考えられるが、この場合には、流出防止柵1の設置工事の規模が著しく増大する。これに対し、本実施形態による設計方法では、支柱間隔設定過程において複数の支柱4の設置間隔を漂流物102の幅の半分よりも大きく且つ漂流物102の幅よりも小さい間隔に設定するため、漂流物102が衝突する支柱4の本数が2本以下(1本の第1被衝突支柱24のみ、もしくは、2本の第2被衝突支柱26)になる適度な間隔で支柱4を設置することになり、支柱4の設置本数の過剰な増大による流出防止柵1の設置工事の規模の増大を防ぐことができる。
【0112】
また、本実施形態による流出防止柵1の設計方法では、抗力取得過程において、漂流物102に作用する海水の流れにより当該漂流物102がその幅方向に沿う横方向で流出防止柵1を押す力である抗力の値を取得し、支柱材選定過程において、前記抗力取得過程で取得された抗力の値に相当する抗力が流出防止柵1に作用した場合に支柱4の支柱本体12に作用する曲げ応力よりも大きい許容曲げ応力度を有する鋼管を支柱材として選定する。このため、漂流物102が横方向で押す抗力が流出防止柵1に作用したときに支柱4に塑性的な曲げ変形が生じるのを防ぐことが可能な流出防止柵1を設計できる。
【0113】
また、本実施形態による流出防止柵1の設計方法では、ビーム材選定過程において、抗力取得過程で取得された抗力の値に相当する抗力が流出防止柵1に作用した場合にビーム6に作用する曲げ応力よりも大きい許容曲げ応力度を有する鋼管をビーム材として選定する。このため、漂流物102が横方向で押す抗力が流出防止柵1に作用したときにビーム6に塑性的な曲げ変形が生じるのを防ぐことが可能な流出防止柵1を設計できる。
【0114】
また、本実施形態による流出防止柵1の設計方法では、ビーム固定ボルト選定過程において、抗力取得過程で取得された抗力の値に相当する抗力が流出防止柵1に作用した場合にビーム固定ボルト20に作用するせん断応力よりも大きい許容せん断応力度を有するボルトをビーム固定ボルト20として選定する。このため、漂流物102が横方向で押す抗力が流出防止柵1に作用したときにビーム固定ボルト20が破損することなく、そのビーム固定ボルト20による支柱4のブラケット14,18に対するビーム6の固定を維持可能な流出防止柵1を設計できる。
【0115】
また、本実施形態による流出防止柵1の設計方法では、杭材選定過程において、鋼管杭2を構成する杭材として、漂流物102が縦方向で流出防止柵1に衝突するときに鋼管杭2に作用する転倒モーメントにより鋼管杭2が岸壁100の地盤中で転倒するのを回避可能となる鋼管を岸壁100の地盤の物性に応じて選定する。このため、漂流物102が縦方向で流出防止柵1に衝突したときに鋼管杭2に作用する転倒モーメントにより岸壁100の地盤中で鋼管杭2が転倒するのを防ぐことが可能な流出防止柵1を設計できる。
【0116】
また、本実施形態による流出防止柵1の設計方法では、支柱埋込長設定過程において、漂流物102が縦方向で流出防止柵1に衝突するときに支柱埋込部30に発生する曲げモーメントにより支柱固定コンクリート10に作用する最大圧縮応力度が規定値であるコンクリートの短期許容圧縮応力度よりも小さくなるように支柱埋込部30の長さである支柱4の埋込長Lを設定する。このため、漂流物102が縦方向で流出防止柵1に衝突したときに支柱埋込部30に発生する曲げモーメントによって支柱固定コンクリート10が圧縮されて破損するのを防ぐことが可能な流出防止柵1を設計できる。
【0117】
また、本実施形態による流出防止柵1の製造方法では、以上のような設計方法により設計した流出防止柵1を製造する。
【0118】
具体的には、当該製造方法では、前記支柱材選定過程で選定された鋼管を支柱材とする複数の支柱4を前記支柱間隔設定過程で設定された設置間隔で港湾100の岸壁に立設し、その複数の支柱4の隣り合うもの同士を複数のビーム6でそれぞれ繋いで流出防止柵1を製造する。
【0119】
また、当該製造方法では、前記複数の支柱4の隣り合うもの同士をそれぞれ繋ぐ複数のビーム6のビーム材として、前記ビーム材選定過程で選定された鋼管を用いる。また、その隣り合う支柱4同士をビーム6で繋ぐ際に支柱4のブラケット14,18にビーム6を固定するビーム固定ボルト20として、前記ビーム固定ボルト選定過程で選定されたボルトを用いる。
【0120】
また、当該製造方法では、前記複数の支柱4を港湾の岸壁100に立設する前に前記杭材選定過程で選定された鋼管を杭材とする複数の鋼管杭2を所定間隔で岸壁100の地盤中に埋め込む。その際、各鋼管杭2の延び方向の一端が岸壁100の上面の位置に揃うようにその各鋼管杭2を鉛直方向に延びる姿勢で設置する。そして、その各鋼管杭2の内側に支柱固定コンクリート10を打設するとともに、各支柱4の支柱本体12の基部12aを各鋼管杭2の内側に差し込んで支柱固定コンクリート10内に埋め込む。この際、支柱固定コンクリート10内に埋め込まれる各支柱4の支柱埋込部30の長さを、前記支柱埋込長設定過程で設定された埋込長Lに等しい長さに調節する。
【0121】
(変形例)
本発明による流出防止柵の設計方法は、前記のようなものに必ずしも限定されない。例えば、本発明による流出防止柵の設計方法に以下のような構成を採用可能である。
【0122】
本発明による設計方法で設計する流出防止柵は、津波の引き波により漂流する漂流物の海上への流出を防止するものに必ずしも限定されず、高潮の引き波により漂流する漂流物の海上への流出を防止するものであってもよい。この場合、衝突エネルギ取得過程において漂流物の衝突エネルギの値を算出するときに、漂流物が受ける海水の流れに加えて当該漂流物が受ける風の影響を加味した衝突エネルギの値を算出し、抗力取得過程において漂流物が流出防止柵を横向きで押す抗力の値を算出するときに、漂流物が受ける海水の流れに加えて当該漂流物が受ける風の影響を加味した抗力の値を算出する。
【0123】
また、本発明による設計方法における衝突エネルギ取得過程は、漂流物の衝突エネルギの値を算出することによって取得するものに必ずしも限定されず、例えば、予め用意された漂流物の衝突エネルギの値の情報を入手することによって取得するものであってもよい。また、本発明による設計方法における抗力取得過程は、漂流物が横方向で流出防止柵を押す抗力の値を算出することによって取得するものに必ずしも限定されず、例えば、予め用意された漂流物の衝突エネルギの値の情報を入手することによって取得するものであってもよい。
【0124】
流出防止柵の各支柱の岸壁に対する固定構造は、前記実施形態のように岸壁の地盤中に埋設した鋼管杭に支柱の基部を差し込んで支柱固定コンクリートで固定するものに必ずしも限定されない。例えば、岸壁の上面上に設置されてアンカーボルトで岸壁に固定されたベースプレートに対して支柱の基部が固定される固定構造、もしくは、岸壁がその上部に打設されたコンクリートを含んでいてそのコンクリート中にアンカープレートが埋め込まれるとともに、岸壁上部のコンクリートの上面上に設置されたベースプレートがアンカーボルトによって前記アンカープレートに固定され、そのベースプレートに対して支柱の基部が固定される固定構造を、本発明による流出防止柵の各支柱の岸壁に対する固定構造として採用可能である。
【0125】
また、本発明による流出防止柵は、隣り合う支柱間に高さ方向に並んで配置された複数段のビームを備えていてもよい。
【符号の説明】
【0126】
1 流出防止柵
2 鋼管杭
4 支柱
6 ビーム
10 支柱固定コンクリート
20 ビーム固定ボルト
24 第1被衝突支柱
25 隣支柱
26 第2被衝突支柱
100 岸壁
102 漂流物
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18