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特許7590287貫入杭の施工方法、掘削装置接続用治具、および杭打設装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-18
(45)【発行日】2024-11-26
(54)【発明の名称】貫入杭の施工方法、掘削装置接続用治具、および杭打設装置
(51)【国際特許分類】
   E02D 7/00 20060101AFI20241119BHJP
   E02D 5/28 20060101ALI20241119BHJP
【FI】
E02D7/00 Z
E02D5/28
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021134852
(22)【出願日】2021-08-20
(65)【公開番号】P2023028886
(43)【公開日】2023-03-03
【審査請求日】2024-02-09
(73)【特許権者】
【識別番号】322004843
【氏名又は名称】ジャパンホームシールド株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100161506
【弁理士】
【氏名又は名称】川渕 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100179833
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 将尚
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】内山 雅紀
(72)【発明者】
【氏名】山内 晃
(72)【発明者】
【氏名】岡田 宗治
【審査官】荒井 良子
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-141801(JP,A)
【文献】特開2011-074726(JP,A)
【文献】実開昭61-146536(JP,U)
【文献】特開2015-113683(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 7/00-7/30
E02D 5/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
施工重機を使用して地盤中に打ち込まれて設置される貫入杭の施工方法であって、
前記施工重機に貫入杭の上端部を支持する工程と、
前記貫入杭の下端部に掘削機能を有する掘削装置を接続して、前記掘削装置で前記貫入杭の打設位置の地盤を掘削する工程と、
前記掘削装置による掘削後、前記掘削装置を前記地盤から引き抜き、前記貫入杭の下端から前記掘削装置を取り外す工程と、
前記貫入杭を前記掘削装置で掘削した前記地盤に貫入する工程と、
を有することを特徴とする貫入杭の施工方法。
【請求項2】
前記掘削装置は、前記貫入杭の下端部に対して着脱可能な掘削装置接続用治具によって接続されることを特徴とする請求項1に記載の貫入杭の施工方法。
【請求項3】
施工重機を使用して地盤中に打ち込まれて設置される貫入杭に対して、掘削機能を有する掘削装置を接続するための掘削装置接続用治具であって、
前記貫入杭の下端部を着脱可能に、かつ前記貫入杭の回転方向への回転を規制して接続する第1接続部と、
前記掘削装置の上端部に着脱可能に、かつ前記貫入杭の回転方向への回転を規制して接続する第2接続部と、
を備え
前記貫入杭は、杭軸方向に延びる杭本体と、前記杭本体の下端を杭軸方向に直交する板面を有し前記杭軸方向から見て前記杭本体の外周面より拡大された平板状の拡大翼と、を備え、
前記第1接続部は、前記拡大翼を収容可能な収容部と、前記拡大翼が上方から進入可能な開口部と、を有し、
前記収容部は、前記拡大翼が前記開口部から進入する進入位置と、前記拡大翼の上下方向への移動を規制する係止位置と、の間で所定の回転角度で杭軸回りに回転可能に設けられ、
前記拡大翼が前記係止位置のときに、前記貫入杭に接続されることを特徴とする掘削装置接続用治具。
【請求項4】
請求項3に記載の掘削装置接続用治具を用いた杭打設装置であって、
地盤中に打ち込まれて設置される前記貫入杭の上端部を支持する前記施工重機と、
前記施工重機に支持された前記貫入杭の下端部に着脱可能に接続され、掘削機能を有する前記掘削装置と、を備え
前記掘削装置接続用治具は、前記貫入杭の下端部に対して着脱可能に設けられ、
前記掘削装置は、前記掘削装置接続用治具によって前記貫入杭に接続されていることを特徴とする杭打設装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貫入杭の施工方法、掘削装置接続用治具、および杭打設装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、貫入杭を地中に打ち込む施工の際には、掘削先端部にカッタを備えた掘削装置を施工重機に取り付け、先行して掘削装置で貫入杭の設置位置の地盤を緩める事前掘削を行った後、その地盤に対して貫入杭を打ち込む方法が一般的ある。
【0003】
一方で、地盤に設置する貫入杭の打設深度が浅い場合には、掘削装置による事前掘削を行わずに、貫入杭を施工重機にセットして地盤に対して回転圧入を行うことで、効率よく貫入杭の打設を行う方法もある(例えば、特許文献1参照)。このような直接貫入杭を地盤に貫入させる方法としては、貫入杭を圧入させて土砂を側方に押し広げながら貫入させる方法や、貫入杭の先端の土砂を切削し順次上方へ排土して貫入させる方法が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第2981463号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来のように直接地盤に貫入杭を打設する方法では、地中に貫入する貫入杭を施工重機にセットして回転圧入を開始した後、打設地盤の表層部に地盤強度が大きな堅固層があることによって貫入杭を貫入させることができない場合がある。
この場合には、施工重機にセットした貫入杭を一旦取り外し、掘削機能を有する掘削用ロッド等の掘削装置に交換する。さらに、その掘削装置によって対象地盤の掘削した後、掘削装置を施工重機から取り外して貫入杭を再度取り付けて、事前に掘削装置によって緩めた対象地盤に対して貫入杭を貫入する作業となる。そのため、施工にかかる時間と手間が大きく作業効率が低下することになり、その点で改善の余地があった。
【0006】
本発明は、施工にかかる時間と手間を低減することにより、作業効率を向上できる貫入杭の施工方法、掘削装置接続用治具、および杭打設装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明に係る貫入杭の施工方法は、施工重機を使用して地盤中に打ち込まれて設置される貫入杭の施工方法であって、前記施工重機に貫入杭の上端部を支持する工程と、前記貫入杭の下端部に掘削機能を有する掘削装置を接続して、前記掘削装置で前記貫入杭の打設位置の地盤を掘削する工程と、前記掘削装置による掘削後、前記掘削装置を前記地盤から引き抜き、前記貫入杭の下端から前記掘削装置を取り外す工程と、前記貫入杭を前記掘削装置で掘削した前記地盤に貫入する工程と、を有することを特徴としている。
【0009】
本発明では、例えば貫入杭の打設対象地盤の表層部が堅固層である場合に、施工重機に支持された貫入杭の下端部に掘削機能を有する掘削装置を接続し、表層部を掘削装置で掘削する。そして、掘削装置による掘削後、一旦、掘削装置を地盤から引き抜いて貫入杭の下端部から掘削装置を取り外し、貫入杭を掘削装置で掘削した地盤に貫入することができる。この場合、施工重機に対して掘削装置に交換するために貫入杭を着脱する従来の作業工程を省略することができるので、施工にかかる時間と手間を低減することにより、作業効率を向上できる。とくに、貫入杭の施工本数が多い場合には、1日当りの施工量を増大させることができ、工期の短縮と工費を低減できる。
【0010】
また、本発明に係る貫入杭の施工方法では、前記掘削装置は、前記貫入杭の下端部に対して着脱可能な掘削装置接続用治具によって接続されることを特徴としてもよい。
【0012】
この場合には、掘削装置接続用治具を設けることで、貫入杭の下端部と掘削装置の上端部に特殊な加工を施すことなく、貫入杭の下端部に掘削装置接続用治具を用いて掘削装置を容易に接続することができる。
【0013】
また、本発明に係る掘削装置接続用治具では、施工重機を使用して地盤中に打ち込まれて設置される貫入杭に対して、掘削機能を有する掘削装置を接続するための掘削装置接続用治具であって、前記貫入杭の下端部を着脱可能に、かつ前記貫入杭の回転方向への回転を規制して接続する第1接続部と、前記掘削装置の上端部に着脱可能に、かつ前記貫入杭の回転方向への回転を規制して接続する第2接続部と、を備え、前記貫入杭は、杭軸方向に延びる杭本体と、前記杭本体の下端を杭軸方向に直交する板面を有し前記杭軸方向から見て前記杭本体の外周面より拡大された平板状の拡大翼と、を備え、前記第1接続部は、前記拡大翼を収容可能な収容部と、前記拡大翼が上方から進入可能な開口部と、を有し、前記収容部は、前記拡大翼が前記開口部から進入する進入位置と、前記拡大翼の上下方向への移動を規制する係止位置と、の間で所定の回転角度で杭軸回りに回転可能に設けられ、前記拡大翼が前記係止位置のときに、前記貫入杭に接続されることを特徴としている。
また、本発明に係る杭打設装置では、上述した掘削装置接続用治具を用いた杭打設装置であって、地盤中に打ち込まれて設置される前記貫入杭の上端部を支持する前記施工重機と、前記施工重機に支持された前記貫入杭の下端部に着脱可能に接続され、掘削機能を有する前記掘削装置と、を備え、前記掘削装置接続用治具は、前記貫入杭の下端部に対して着脱可能に設けられ、前記掘削装置は、前記掘削装置接続用治具によって前記貫入杭に接続されていることを特徴としている。
【0014】
本発明では、掘削装置接続用治具に第1接続部と第2接続部を設けるといった簡単な構造により、貫入杭の下端部に掘削装置を容易に接続することができる。
【0016】
この場合には、開口部から収容部に進入された拡大翼を杭軸回りに回転させることで、第1接続部に対する拡大翼の上下方向への移動が規制された状態となり、貫入杭の下端部に掘削装置接続用治具を用いて掘削装置を接続することができる。貫入杭の貫入時には、貫入杭を進入位置から係止位置に回転させる方向と同じ方向に貫入杭を回転させることで、掘削装置接続用治具は貫入杭から外れることなく貫入できる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の貫入杭の施工方法、掘削装置接続用治具、および杭打設装置によれば、施工にかかる時間と手間を低減することにより、作業効率を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施形態による杭打設装置を使用した施工状態を示す斜視図である。
図2】貫入杭の構成を示す斜視図である。
図3】貫入杭の構成を示す側面図である。
図4】貫入杭の拡大翼を上方から見た平面図である。
図5】アタッチメントに掘削装置を取り付ける前の構成を示す側面図である。
図6】アタッチメントの第1接続部の構成を示す斜視図である。
図7図6においてアタッチメントに貫入杭の拡大翼を装着した状態を示す図である。
図8図7に示すアタッチメントを上方から見た平面図である。
図9】(a)~(e)は、貫入杭の施工手順を示す要部側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下では、本発明の実施形態の貫入杭の施工方法、掘削装置接続用治具、および杭打設装置について図面を参照して説明する。
【0020】
図1及び図2に示すように、本実施形態の貫入杭の施工方法は、貫入杭1を地盤G中に設置するための施工方法である。本実施形態の施工方法は、貫入杭1に対してアタッチメント2(掘削装置接続用治具)を用いて掘削装置3を着脱させることで、貫入杭1を施工重機4によって回転力と下向き荷重(圧入)により地盤Gに打ち込む施工である。
【0021】
杭打設装置10は、地盤G中に打ち込まれて設置される貫入杭1の上端部1aを支持する施工重機4と、施工重機4に支持された貫入杭1の下端部1bに対して着脱可能なアタッチメント2(掘削装置接続用治具)と、アタッチメント2の下端部に着脱可能に接続され、掘削機能を有する掘削装置3と、を備える。すなわち、掘削装置3は、アタッチメント2を介して貫入杭1に接続可能である。
【0022】
本施工方法に使用される貫入杭1は、鋼管からなる杭本体11と、杭本体11の下端11aを杭軸O方向に直交する板面によって閉塞するとともに、杭軸O方向から見て杭本体11の外周面11bより拡大され、外周縁12cに切削爪13を有する平板状の拡大翼12と、を備えている。
【0023】
杭本体11は、横断面で正方形の角形鋼管が採用されている。杭本体11の下端11aは、杭軸Oに対して直交している。杭本体11としては、図3に示す1辺の第1幅寸法L1が例えば75~150mmとなる比較的小断面の角形鋼管が用いられる。杭本体11は、貫入杭1の長さに応じて複数本を長さ方向に継ぎ足すことにより所定長の杭体に構成される。
【0024】
上述した杭軸Oは、杭本体11の中心軸を通る軸線である。貫入杭1において、杭軸O方向で拡大翼12側を下方、下側とし、拡大翼12側と反対側を上方、上側とする。また、杭軸O方向から見て杭軸O回りに周回する方向を周方向として以下説明する。なお、本実施形態では、杭軸O方向で上方からみて時計回りに周回する方向(図1及び図2に示す矢印E方向)に貫入杭1が回転圧入される。
【0025】
図1に示すように、拡大翼12は、貫入杭1の貫入時において地盤Gの切削機能を有し、杭本体11の下端11a周辺の地盤Gを下向きに押圧し、十分な先端支持力を確保するための部材である。図2及び図3に示すように、拡大翼12は、一定の厚さDからなる板状部材である。拡大翼12は、板面中心を杭軸Oに一致させ、拡大翼12の一方の面(上面12a)を杭本体11の下端11aに当接させた状態で例えば工場や作業現場で溶接等の固定手段によって一体的に接合されている。拡大翼12は、板面(上面12a及び下面12b)が杭軸Oに対して直交する方向に向けて設けられている。
【0026】
拡大翼12は、杭軸O方向から見て正方形状となっている。拡大翼12は、杭本体11に対して杭軸O方向から見て相似形状に配置されている。図3に示すように、拡大翼12の1辺の第2幅寸法L2は、杭本体11の1辺の第1幅寸法L1より大きく設定され、例えば75~300mmに設定することができる。拡大翼12の厚さDは、例えば12~19mmのものを採用できる。
【0027】
拡大翼12は、貫入杭1を地盤Gに打ち込む際に、杭本体11の杭軸Oを略鉛直方向に向けて地盤Gに圧入させたときに拡大翼12の下面12bが掘削する地盤Gに直接接触した状態となる。図3及び図4に示すように、拡大翼12の外周縁12cに設けられる切削爪13は、拡大翼12における一方の対角線方向の角部12dに配置されている。具体的に切削爪13は、図4に示すように、上方から見て拡大翼12の外周縁12cの一辺のうち、貫入杭1の掘削圧入時の回転方向(本実施形態では符号E)の上流側(図4で下辺部では紙面右側、上辺部では紙面左側)に設けられている。一対の切削爪13は、図3に示すように、外周縁12cより側方に張り出すとともに、拡大翼12の下面12bよりも下方に突出している。すなわち、貫入杭1を地盤G(図2参照)に貫入させる際には、拡大翼12よりも切削爪13が先行して拡大翼12の下面側の地盤Gを切削する。
【0028】
図4に示すように、拡大翼12は、杭本体11とともに杭軸Oを中心にして周方向(矢印Eは掘削圧入時の回転方向を示す)に回転する。拡大翼12は、切削爪13による切削機能に加え、角部12dの周囲に位置する地盤Gを周方向の回転によって切削する切削機能を有している。拡大翼12の中心が貫入杭1の回転中心と一致しているので、切削爪13の回転軌跡(図4に示す符号W)は円形となる。
【0029】
図1に示すように、施工重機4は、リーダー(図示省略)と、リーダーによって上下に案内される回転駆動部(図示省略)と、を備えている。貫入杭1は、杭本体11が回転駆動部に支持され、回転駆動部の重量と貫入杭1の自重とによって下向き荷重P(圧力)が付与され、回転駆動部の回転駆動によって所定の方向に回転される。なお、本実施形では、貫入杭1の杭軸Oが鉛直方向に向けて配置されるが、施工条件によっては鉛直方向に対して傾斜した方向に杭軸Oを向けて施工するものであってもかまわない。
【0030】
図5に示すように、掘削装置3は、上端部3aがアタッチメント2に接続可能な管状の回転軸部31と、回転軸部31の下端に接続されるビット部32と、を備えている。回転軸部31とビット部32とは、分割可能に設けられている。図5は、回転軸部31とビット部32とが分割された状態を示している。回転軸部31の下端部には、ビット部32の嵌合雌部32aの内側に嵌合する嵌合雄部31aが形成されている。
【0031】
ビット部32は、支持軸33と、支持軸33の下端に設けられた掘削ビット34と、支持軸33の周面に設けられた複数の攪拌翼35と、を有している。支持軸33は、断面円形の管状に形成され、アタッチメント2に対して貫入杭1(杭軸O)と同軸に接続される。支持軸33の先端33aには、切削機能をもつ超硬部331が設けられている。掘削ビット34の下面には、切削刃341が設けられている。切削刃341は、回転軸部31の超硬部331よりも下方に位置している。複数の攪拌翼35は、掘削ビット34の上方に配置され、掘削ビット34と同径、あるいはやや小径の範囲で回転可能に設けられている。
【0032】
図6乃至図8に示すように、アタッチメント2は、施工重機4を使用して地盤G中に打ち込まれて設置される貫入杭1に対して、掘削機能を有する掘削装置3を接続するための接続治具である。
アタッチメント2は、貫入杭1の下端部を着脱可能に、かつ貫入杭1の回転方向Eへの回転を規制して接続する第1接続部2Aと、掘削装置3の上端部に着脱可能に、かつ貫入杭1の回転方向Eへの回転を規制して接続する第2接続部2B(図5参照)と、を備えている。
【0033】
第1接続部2Aは、上下方向に間隔をあけた矩形状の上板21と下板22とが平行に配置され、上板21と下板22とが複数(ここでは4つ)の連結ピン23によって連結されている。上板21と下板22との間には、拡大翼12が収容可能な収容部2Cが形成されている。収容部2Cの高さ(上板21と下板22との離間)は、少なくとも拡大翼12の厚さD(図3参照)より大きくなるように設定されている。
【0034】
上板21は、平面視で中央に開口部24が形成された枠形状をなしている。開口部24は、一対の切削爪13を備えた拡大翼12が通過可能な形状である。開口部24は、拡大翼12の杭軸O方向から見た平面形状と略同形状で、拡大翼12よりも僅かに大きく形成されている。開口部24は、平面視で拡大翼12と略同形状の第1開口部24Aと、一対の切削爪13と略同形状の第2開口部24Bと、を有する。拡大翼12は、貫入杭1を接続する際において、上板21に干渉することなく開口部24を通過して上板21と下板22との間の収容部2Cに配置される。
【0035】
下板22は、上板21に形成される開口部24のうち一対の第2開口部24Bのそれぞれの下方部分に切欠部25が設けられている。切欠部25には、収容部2C内に進入された拡大翼12の切削爪13が落とし込まれて配置される。切欠部25は、図8に示す平面視で、貫入杭1の回転方向E側に収容部2Cに収容された拡大翼12を回転させたときに切削爪13が回転方向Eに移動可能に切り欠かれている。
【0036】
貫入杭1の拡大翼12は、開口部24から収容部2Cに進入された状態で回転方向Eに回転されることで、連結ピン23に切削爪13が当接する。これにより、拡大翼12は第1接続部2Aに対する上下方向への移動が規制され、第1接続部2Aと拡大翼12とが接続される。このように、収容部2Cは、拡大翼12が開口部24から進入する進入位置T1と、拡大翼12の上下方向への移動を規制する係止位置T2と、の間で所定の回転角度で杭軸O回りに回転可能に設けられている。係止位置T2の拡大翼12は、切削爪13が配置される部分が上板21と下板22に挟まれた状態となることから、上下方向への移動が規制されることになる。
【0037】
図5に示すように、第2接続部2Bは、アタッチメント2の下方に掘削装置3を着脱可能に接続するものである。第2接続部2Bは、下板22の下面22aの中央から下方に突出する接続管26を備えている。接続管26の管軸は、アタッチメント2が装着される貫入杭1の杭軸Oと同軸になるように設けられている。接続管26は、掘削装置3の上端部3aに形成される上端雌部31b内に回転不能な状態で嵌合される。
【0038】
次に、施工重機4を使用して地盤G中に打ち込まれて設置される貫入杭1の施工方法について、図面に基づいて説明する。
図9(a)~(e)に示すように、本施工方法では、図1に示す施工重機4に貫入杭1の上端部1aを支持する工程と、貫入杭1の下端部1bにアタッチメント2を介して掘削機能を有する掘削装置3を接続して、掘削装置3で貫入杭1の打設位置の地盤Gを掘削する工程と、掘削装置3による掘削後、掘削装置3を地盤Gから引き抜き、貫入杭1の下端から掘削装置3を取り外す工程と、貫入杭1を掘削装置3で掘削した地盤Gに貫入する工程と、を有する。
【0039】
なお、本施工方法の説明では、地盤Gの表層に地盤強度が大きな堅固層がある場合について説明する。
使用する貫入杭1は、予め工場や作業現場において、杭本体11の下端11aに拡大翼12を溶接等の固定手段で接合して加工しておく。
【0040】
先ず、加工された貫入杭1を施工重機4(図1参照)に取り付ける。図1に示すように、杭本体11の下端11aに拡大翼12を一体的に接合した貫入杭1を地盤G上に配置する。このとき杭軸Oが鉛直方向を向いているので、拡大翼12の下面12bは水平になる。貫入杭1は、杭軸Oが鉛直方向となるように施工重機4に保持される。
【0041】
次に、図1及び図9(a)に示すように、貫入杭1は、上述した施工重機4によって下降させることによって、回転駆動部の重量と貫入杭1の自重による下向き荷重Pを貫入杭1に付与する。これにより、貫入杭1は、圧力が作用する拡大翼12によって下方の地盤Gを変形させて地盤Gに圧入されて沈下する。その後、貫入杭1に対する下向き荷重Pの付与と同時に回転駆動部を回転させて、貫入杭1に回転力を付与して回転方向Eに回転させる。これにより拡大翼12は、杭軸Oを中心にして水平面内で回転し、一対の切削爪13が作用して圧入によって変形していない非変形部分の地盤Gを切削する。
【0042】
ここで、図9(b)に示すように、貫入杭1による地盤Gの切削が困難になった場合には、地盤Gから貫入杭1を一旦引抜き、貫入杭1の下端部1bにアタッチメント2を用いて掘削機能を有する掘削装置3を接続する。具体的には、図7及び図8に示すように、先ず引き上げた貫入杭1の拡大翼12を、アタッチメント2の開口部24から収容部2Cに進入させて進入位置T1とし、さらに杭軸O回りに一方向(矢印E方向)に回転させて連結ピン23に当接させて係止位置T2とする。これによりアタッチメント2の第1接続部2Aが拡大翼12に対して上下方向への移動が規制された状態で貫入杭1に接続される。続いて、図5に示すように、貫入杭1に接続したアタッチメント2の第2接続部2Bの接続管26に掘削装置3の回転軸部31の上端雌部31bを嵌合させることで、貫入杭1の下方にアタッチメント2を介して掘削装置3が接続される。
【0043】
次に、図9(c)に示すように、施工重機4(図1参照)によって掘削装置3を貫入杭1とともに回転させることで貫入杭1の打設位置の地盤Gを掘削して、貫入杭1で切削が困難な堅固層の地盤Gを緩める。
【0044】
その後、図9(d)に示すように、地盤Gから掘削装置3を一旦引抜き、貫入杭1の下端部1bから掘削装置3を取り外す。具体的には、アタッチメント2から掘削装置3を取り外すとともに、アタッチメント2を貫入杭1の下端部1bから取り外す。
【0045】
次に、図9(e)に示すように、貫入杭1の拡大翼12の下面12bを掘削装置3で緩めた地盤Gに対して直接接触させた状態で、貫入杭1に対して下方に圧力を与えて拡大翼12を地盤Gに圧入させ、貫入杭1を回転させて地盤Gを掘削する。具体的には、図1に示すように、貫入杭1に対して下向き荷重Pと回転力とを連続的に付与することにより、拡大翼12の切削爪13で地盤Gが切削されるとともに、拡大翼12が下面12b側の地盤Gに圧入されて下降し、貫入杭1が地盤Gに打ち込まれる。
【0046】
なお、掘削土砂は、図1及び図2に示すように、拡大翼12と掘削孔壁Gaとの間に排土領域Sが形成され、この排土領域Sから拡大翼12の上方に排土される。拡大翼12の周囲に形成される排土領域Sに拡大翼12の直下の掘削土砂を通過させることによって、貫入杭1の先端の周辺地盤の乱れが少なく、小さな圧入力で貫入杭1を地盤Gに貫入させることが可能である。
【0047】
このように掘削される貫入杭1を所定の深さに到達するまで打ち込むことで、貫入杭1を地盤G中に構築する作業が完了となる。
【0048】
次に、本実施形態による貫入杭の施工方法、掘削装置接続用治具、および杭打設装置の作用について、図面に基づいて詳細に説明する。
【0049】
図3及び図7に示すように、本実施形態では、上述したように貫入杭1の打設対象地盤の表層部が堅固層である場合に、施工重機4に支持された貫入杭1の下端部1bに掘削機能を有する掘削装置3を接続し、表層部を掘削装置3で掘削することができる。そして、掘削装置3による掘削後、一旦、掘削装置3を地盤Gから引き抜いて貫入杭1の下端部1bから掘削装置3を取り外し、貫入杭1を掘削装置3で掘削した地盤Gに貫入することができる。
この場合、施工重機4に対して掘削装置3に交換するために貫入杭1を着脱する従来の作業工程を省略することができるので、施工にかかる時間と手間を低減することにより、作業効率を向上できる。とくに、貫入杭1の施工本数が多い場合には、1日当りの施工量を増大させることができ、工期の短縮と工費を低減できる。
【0050】
また、本実施形態では、アタッチメント2を設けることで、第1接続部2Aを貫入杭1の下端部1bに接続し、第2接続部2Bに掘削装置3の上端部3aを接続することができる。このように、貫入杭1の下端部1bや掘削装置3の上端部3aに特殊な加工を施すことなく、アタッチメント2に第1接続部2Aと第2接続部2Bを設けるといった簡単な構造により、貫入杭1の下端部1bにアタッチメント2を用いて掘削装置3を容易に接続することができる。
【0051】
しかも、本実施形態では、開口部24から収容部2Cに進入された拡大翼12を杭軸O回りに回転させることで、第1接続部2Aに対する拡大翼12の上下方向への移動が規制された状態となり、貫入杭1の下端部にアタッチメント2を用いて掘削装置3を接続することができる。貫入杭1の貫入時には、貫入杭1を進入位置T1から係止位置T2に回転させる方向と同じ方向に貫入杭を回転させることで、アタッチメント2は貫入杭1から外れることなく貫入できる。
【0052】
このように本実施形態による貫入杭の施工方法、掘削装置接続用治具、および杭打設装置では、施工にかかる時間と手間を低減することにより、作業効率を向上できる。
【0053】
以上、本発明による貫入杭の施工方法、掘削装置接続用治具、および杭打設装置について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではない。
【0054】
例えば、上記実施形態において、貫入杭1の下端部1bに掘削装置3を取り付けることなく、地盤強度が大きい表層部の地盤Gを貫入杭1で掘削を開始した後、貫入杭1を引き上げて貫入杭1の下端部1bに掘削装置3をアタッチメント2によって接続する工程を含む例を示しているが、貫入杭1で表層部の地盤Gを掘削する工程は省略することも可能である。すなわち、予め表層部の地盤が硬い堅固層であることがわかっている場合には、貫入杭1の下端部1bに掘削装置をアタッチメント2を用いて接続して、先ず掘削装置3で表層部の地盤Gを掘削する工程とすることで、さらに施工効率を向上できる。
【0055】
また、本実施形態では、アタッチメント2を使用して貫入杭1の下端部1bに掘削装置3を接続しているが、アタッチメント2を省略することも可能である。すなわち、貫入杭1の下端部1bと掘削装置3の上端部3aとが接続可能な構成であれば、貫入杭1の下端部1bに直接、掘削装置3を接続することも可能である。
また、アタッチメント2の構成は、本実施形態に限定されることはなく、貫入杭や掘削装置の構造に合わせた構成に適宜変更可能である。
【0056】
また、本実施形態では、拡大翼12(貫入杭1)を上方から見て時計回り(矢印E方向)に回転させて掘削圧入する方法としているが、反時計回りであってもかまわない。反時計回りに拡大翼12を回転させて掘削圧入する際には、拡大翼12に設けられる切削爪13の取り付け位置、アタッチメントの切欠部の位置等の構成も掘削圧入時における反時計回りの回転方向に対応した位置に設けられる。
【0057】
貫入杭1や掘削装置3の構成は、上述した実施形態に限定されることはなく、他の構成であってもよい。例えば、本実施形態では、貫入杭1として断面四角形の鋼管杭を使用し、その鋼管杭の下端に平板状の拡大翼12を設けた構成としているが、拡大翼12の形状や杭本体11の断面形状などは適宜変更可能である。また、拡大翼12を省略した貫入杭であってもよい。さらに、鋼管杭ではなく、コンクリート杭であってもよい。
【0058】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上記した実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能である。
【符号の説明】
【0059】
1 貫入杭
1b 下端部
2 アタッチメント(掘削装置接続用治具)
2A 第1接続部
2B 第2接続部
2C 収容部
3 掘削装置
3a 上端部
4 施工重機
11 杭本体
12 拡大翼
13 切削爪
24 開口部
25 切欠部
26 接続管
O 杭軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9