(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-18
(45)【発行日】2024-11-26
(54)【発明の名称】沸騰水型原子炉
(51)【国際特許分類】
G21C 15/00 20060101AFI20241119BHJP
G21C 3/33 20060101ALI20241119BHJP
G21C 3/34 20060101ALI20241119BHJP
【FI】
G21C15/00 B
G21C3/33 510
G21C3/34 100
(21)【出願番号】P 2021135858
(22)【出願日】2021-08-23
【審査請求日】2023-08-24
(73)【特許権者】
【識別番号】507250427
【氏名又は名称】日立GEニュークリア・エナジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉田 慶太
(72)【発明者】
【氏名】菊地 義春
(72)【発明者】
【氏名】瀬戸 武裕
(72)【発明者】
【氏名】大滝 健斗
(72)【発明者】
【氏名】三浦 宏起
(72)【発明者】
【氏名】赤池 正則
(72)【発明者】
【氏名】安田 賢一
(72)【発明者】
【氏名】早川 啓朗
【審査官】藤田 健
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-117771(JP,A)
【文献】特表2014-515475(JP,A)
【文献】特開平09-230077(JP,A)
【文献】実開平05-073597(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21C 15/00
G21C 3/33
G21C 3/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料集合体の側面を囲むように配置された四角筒状のチャンネルボックスと、
前記チャンネルボックスの側面上部を支持する円板状の格子板と、を備え、
前記チャンネルボックスの上部には、他のチャンネルボックスを板ばねで押して隙間を確保するチャンネルファスナと、前記チャンネルファスナの板ばねが縮んだ場合において他の
チャンネルボックスとの間の隙間を維持するチャンネルスペーサと、が取り付けられており、
前記チャンネルボックスの側面上部が前記格子板に支持されている状態において、前記チャンネルファスナの下端と前記チャンネルスペーサの下端は、前記格子板の厚さの1/2よりも下に配置され
、
前記チャンネルファスナは、ファスナガードを有しており、
前記チャンネルファスナの取付部は、前記チャンネルファスナの下端が浮き上がった場合にファスナガードの下端が前記格子板の上面に引っ掛からないように、機械加工された機械加工面として形成されている
ことを特徴とする沸騰水型原子炉。
【請求項2】
請求項1に記載の沸騰水型原子炉において、
一体の前記チャンネルボックスが挿入される孔が形成された前記格子板の領域を1バンドルセルとし、二体の前記チャンネルボックスの上部が挿入される孔が形成された前記格子板の領域を2バンドルセルとし、
前記1バンドルセルと前記2バンドルセルで、前記チャンネルボックスの側面上部が前記格子板に支持されている状態において、前記チャンネルファスナの下端と前記チャンネルスペーサの下端は、前記格子板の厚さの1/2よりも下に配置される
ことを特徴とする沸騰水型原子炉。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、沸騰水型原子炉に関する。
【背景技術】
【0002】
沸騰水型原子炉は、正方格子状に並べられた複数の燃料集合体の側面を四角筒状のチャンネルボックスで囲み、チャンネルボックスを介して燃料集合体の側面上部を格子板で支持する構成になっている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
ところで、改良型沸騰水型原子炉を含む今後の新設沸騰水型原子炉(以下、「新設BWR型原子炉」と称する)では、従来型沸騰水型原子炉(以下、「従来BWR型原子炉」と称する)の格子板よりも板厚(鉛直方向の幅)が薄い格子板(以下、「薄型格子板」と称する)を用いている。新設BWR型原子炉は、薄型格子板の上面を従来とおおよそ同じ位置に配置するとともに、薄型格子板の下面を従来よりも高い位置に配置している。
【0004】
近年、自立型制御棒が海外(日本国外)BWR5型原子炉において採用されている。自立型制御棒は、制御棒を格子板に届くように延長することで、制御棒全挿入時に格子板を支えとして自立する構造とした制御棒である。これにより、ダブルブレードガイドを用いずに燃料交換を実施することが可能となる。
【0005】
自立型制御棒を新設BWR型原子炉に用いる場合、薄型格子板の板厚が従来BWR型原子炉の格子板の板厚よりも薄いため、薄型格子板の上面を従来BWR型原子炉とおおよそ同じ位置に配置した構成では、格子板の下面位置が高くなるため、自立型制御棒を成立させるためには、制御棒の全長をより長くする必要がある。しかしながら、制御棒を長くすると、原子炉の運転中に全引き抜きされた制御棒が受ける照射の影響が大きくなる等の影響があるため、新設BWR型原子炉では自立型制御棒の成立が困難である。そこで、薄型格子板の上面を従来よりも低い位置に配置することが考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、薄型格子板の上面を従来よりも低い位置に配置した場合、炉心外周部において、取り合い上、チャンネルボックス(燃料集合体)の水平方向の支持性能(サポート性能)が低い。
【0008】
本発明は、前記した課題を解決するためになされたものであり、チャンネルボックス(燃料集合体)の支持性能(サポート性能)を向上させた沸騰水型原子炉を提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するため、本発明は、沸騰水型原子炉であって、燃料集合体の側面を囲むように配置された四角筒状のチャンネルボックスと、前記チャンネルボックスの側面上部を支持する円板状の格子板と、を備え、前記チャンネルボックスの上部には、他のチャンネルボックスを板ばねで押して隙間を確保するチャンネルファスナと、前記チャンネルファスナの板ばねが縮んだ場合において他のチャンネルボックスとの間の隙間を維持するチャンネルスペーサと、が取り付けられており、前記チャンネルボックスの側面上部が前記格子板に支持されている状態において、前記チャンネルファスナの下端と前記チャンネルスペーサの下端は、前記格子板の厚さの1/2よりも下に配置され、前記チャンネルファスナは、ファスナガードを有しており、前記チャンネルファスナの取付部は、前記チャンネルファスナの下端が浮き上がった場合にファスナガードの下端が前記格子板の上面に引っ掛からないように、機械加工された機械加工面として形成されている構成とする。
その他の手段は、後記する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、チャンネルボックス(燃料集合体)の支持性能(サポート性能)を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施形態1に係る沸騰水型原子炉の内部構造を示すために一部を切断して示した斜視図である。
【
図2】実施形態1に係る沸騰水型原子炉に配置される燃料集合体の支持構造を示す斜視図である。
【
図3A】実施形態1に係るチャンネルボックスの側面図である。
【
図3B】実施形態1に係るチャンネルボックスの上部の上面図である。
【
図4】実施形態2に係るチャンネルボックスの側面図である。
【
図5A】実施形態3に係るチャンネルボックスの側面図である。
【
図5B】実施形態3に係るチャンネルボックスの部分断面図である。
【
図5C】実施形態3に係るチャンネルボックスの背面図である。
【
図6A】実施形態4に係るチャンネルボックスの側面図である。
【
図6B】実施形態4に係るチャンネルボックスの部分断面図である。
【
図7A】実施形態5に係るチャンネルボックスの側面図である。
【
図7B】実施形態5に係るチャンネルボックスに取り付けられる一体型部品の上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態(以下、「本実施形態」と称する)について詳細に説明する。なお、各図は、本発明を十分に理解できる程度に、概略的に示しているに過ぎない。よって、本発明は、図示例のみに限定されるものではない。また、各図において、共通する構成要素や同様な構成要素については、同一の符号を付し、それらの重複する説明を省略する。
【0013】
[実施形態1]
<沸騰水型原子炉の構成>
以下、
図1を参照して、本実施形態1に係る沸騰水型原子炉11の構成について説明する。
図1は、本実施形態1に係る沸騰水型原子炉11の内部構造を示すために一部を切断して示した斜視図である。
【0014】
図1に示すように、本実施形態1に係る沸騰水型原子炉11は、原子炉圧力容器12と、炉心13と、炉心シュラウド14と、制御棒案内管15と、制御棒駆動機構ハウジング16と、格子板17と、炉心支持板18と、を備え、炉心13に燃料集合体20が装荷されるようになっている。
【0015】
原子炉圧力容器12の内部には、複数の燃料集合体20が装荷される炉心13と、炉心13(燃料集合体20)を取り囲む炉心シュラウド14と、制御棒25(
図2参照)が格納される制御棒案内管15と、炉心シュラウド14の上部に配置され燃料集合体20の横方向の支持の役目を持つ格子形状をした格子板17と、炉心シュラウド14の下部に配置され燃料集合体20を支持する炉心支持板18と、が配置されている。
【0016】
原子炉圧力容器12の底部には、複数の制御棒駆動機構ハウジング16が設けられている。制御棒駆動機構ハウジング16の上部は、原子炉圧力容器12の底部を貫通して、制御棒案内管15の下部と接続されている。制御棒案内管15の上部は、炉心支持板18(燃料支持金具19)に嵌め込まれている。制御棒駆動機構ハウジング16の内部には、制御棒駆動機構(図示せず)が設けられており、制御棒案内管15に格納された制御棒25(
図2参照)を炉心13に挿入することができるようになっている。
【0017】
<燃料集合体の支持構造>
図2は、沸騰水型原子炉11に配置される燃料集合体20の支持構造を示す斜視図である。
図2では、手前側の燃料集合体20と格子板17の一部を切断して示している。
【0018】
図2に示すように、炉心13を構成する燃料集合体20は、複数の燃料棒21が正方格子状に並べられている。燃料集合体20の側面は、四角筒状のチャンネルボックス22で囲まれている。チャンネルボックス22の上部側面は、格子板17によって支持されている。
【0019】
格子板17は、円板状の形状を呈している。格子板17は、原子炉圧力容器12(
図1参照)の内部に水平に配置される。格子板17は、ステンレス鋼によって構成されている。格子板17の内部には、チャンネルボックス22の上部が挿入される複数の孔が設けられている。本実施形態では、格子板17は、従来BWR型原子炉の格子板よりも板厚(鉛直方向の幅)が薄い薄型格子板として構成されている。本実施形態に係る沸騰水型原子炉11は、新設BWR型原子炉で自立型制御棒を適用するために格子板17の上面の位置を従来の格子板よりも下げた構成になっている。
【0020】
チャンネルボックス22(燃料集合体20)の上部には、チャンネルファスナ23とチャンネルスペーサ24が取り付けられている。チャンネルファスナ23は、板ばね(以下、「ファスナスプリング」と称する場合もある。)を有しており、隣り合うチャンネルボックス22(燃料集合体20)を板ばねで押し合うことで、チャンネルボックス22間の水ギャップを確保する構成要素である。チャンネルスペーサ24は、地震等でチャンネルボックス22の上部に横方向の荷重が加わり、チャンネルファスナ23の板ばねが縮んだ場合でも水ギャップを維持する構成要素である。ただし、
図3Aに示すように、チャンネルスペーサ24は、その他の構造に同様の機能を持たせる場合にはチャンネルボックス22に取り付けないようにしてもよい。
【0021】
炉心支持板18には、複数の燃料支持金具19が配置されている。燃料集合体20は、4体を1組として、燃料支持金具19によって支持されるようになっている。これにより、4体を1組として支持される燃料集合体20の相互間には、水ギャップ(図示せず)が形成される。燃料支持金具19の下側には、制御棒案内管15の上部が嵌め込まれている。
【0022】
制御棒25は、制御棒駆動機構ハウジング16(
図1参照)の内部に設けられた制御棒駆動機構(図示せず)により駆動されるようになっている。制御棒駆動機構(図示せず)を動作させることにより、十字断面の制御棒25は、制御棒案内管15から燃料支持金具19に形成される十字断面の貫通孔19aを通って、4体を1組として支持される燃料集合体20の間の水ギャップ(図示せず)に挿入されるようになっている。
【0023】
<チャンネルボックスの構成>
本実施形態では、格子板17は、従来BWR型原子炉の格子板よりも板厚が薄い薄型格子板として構成されており、かつ従来(日本国内の既設の改良型沸騰水型原子炉)の格子板よりも低い位置に設置されている。そのため、格子板17は、炉心外周部分においてチャンネルボックス22を支持する性能が低下している。そこで、沸騰水型原子炉11は、チャンネルボックス22の構成を改良することによって、チャンネルボックス22の側面上部を格子板17に係合(支持)させ易くしている。
【0024】
以下、
図3A及び
図3Bを参照して、チャンネルボックス22の構成について説明する。
図3Aは、チャンネルボックス22の側面図である。
図3Bは、チャンネルボックス22の上部の上面図である。
【0025】
図3Aに示すように、チャンネルボックス22の本体部122は、第1部材31と第2部材32とを溶接部33で固定した構成になっている。溶接部33は、第1部材31と第2部材32とを周溶接で固定している。第1部材31は、本体部122の下部を構成する部材である。第2部材32は、本体部122の上部を構成する部材である。チャンネルボックス22の上部には、他のチャンネルボックス22を押して隙間を確保するための板ばね41が取り付けられている。板ばね41の縦幅(高さ方向の長さ)は、第2部材32の縦幅より若干短くなっている。板ばね41は、上部が格子板17よりも上に位置し、下部が格子板17の内部に入り込むように、配置される。板ばね41は、ボルト42で燃料体43の上部に締結されている。
【0026】
図3Bに示すように、チャンネルボックス22の上部を構成する第2部材32は、上面視で四角形の形状を呈しており、隣り合う2つの面が肉薄部32aとして構成されており、他の隣り合う2つの面が肉厚部32bとして構成されている。肉薄部32aは、板厚が薄い部分であり、チャンネルボックス22の下部を構成する第1部材31の板厚と同等の板厚になっている。肉厚部32bは、肉薄部32aよりも板厚が厚い部分である。
【0027】
肉薄部32aの表面は、格子板17に当接する。肉薄部32aの表面は、好ましくは、平坦な機械加工面35として形成されているとよい。
【0028】
2つの肉厚部32bの互いが隣接する角付近には、溝状の取付部34が設けられている。取付部34は、板ばね41の下部が収まる部位である。なお、
図3Bに示す例では、チャンネルスペーサ24(
図2参照)がチャンネルスペーサ24に取り付けられていないが、チャンネルボックス22の上部を厚くした部分(肉厚部32b)がチャンネルスペーサ24(
図2参照)の機能を果たす。
【0029】
図3Aに示すように、チャンネルボックス22は、好ましくは、上部(第2部材32)の横幅(横方向の長さ)が下部(第1部材31)の横幅よりもチャンネルスペーサ24(
図2参照)の板厚相当に厚くなっているとよい。つまり、チャンネルボックス22は、上部(第2部材32)の横幅(横方向の長さ)が下部(第1部材31)の横幅よりもチャンネルスペーサ24(
図2参照)の板厚と同等の厚さ分大きいとよい。そして、チャンネルボックス22は、その厚い部分に板ばね41を追設した構造になっている。
【0030】
<沸騰水型原子炉の主な特徴>
図3A及び
図3Bに示すように、本実施形態に係る沸騰水型原子炉11は、燃料集合体20の側面を囲むように配置された四角筒状のチャンネルボックス22と、チャンネルボックス22の側面上部を支持する円板状の格子板17と、を備えている。チャンネルボックス22は、上部(第2部材32)の横幅が下部(第1部材31)の横幅よりもチャンネルスペーサ24の板厚相当に厚くなっているとともに、その厚い部分に板ばね41(ファスナスプリング)を追設した構造になっている。
【0031】
本実施形態では、格子板17は、従来の格子板よりも板厚が薄くなっている(他の実施形態も同様)。また、沸騰水型原子炉11は、新設BWR型原子炉で自立型制御棒を適用するために格子板17の位置を従来の格子板よりも下げた構成になっている(他の実施形態も同様)。このような構成において、格子板17は、従来の格子板よりも板厚が薄く、位置が低いことから、炉心外周部分においてチャンネルボックス22を支持する性能が低下している。
【0032】
そこで、本実施形態では、チャンネルボックス22の上部(第2部材32)の横幅をチャンネルボックス22の下部(第1部材31)の横幅よりもチャンネルスペーサ24の板厚相当に厚く(大きく)するとともに、その厚い部分に板ばね41を追設したことで、チャンネルファスナ23の板ばね41を格子板17に確実に当接させるようにしている。このような本実施形態に係る沸騰水型原子炉11は、チャンネルボックス22を格子板17に係合(支持)させることができ、チャンネルボックス22(燃料集合体20)の支持性能(サポート性能)を向上させることができる。
【0033】
[実施形態2]
以下、
図4を参照して、本実施形態2に係るチャンネルボックス22Aの構成について説明する。
図4は、本実施形態2に係るチャンネルボックス22Aの側面図である。
【0034】
図4に示すように、本実施形態2に係るチャンネルボックス22Aは、実施形態1に係るチャンネルボックス22(
図3A参照)と比較すると、本体部122Aが単一の部材で構成されている点、及び、本体部122Aの横幅が全体的に均一になっている(つまり、上部と下部で同じ大きさになっている)点で相違している。
【0035】
図4に示すように、チャンネルボックス22Aの上部には、チャンネルファスナ23と、チャンネルスペーサ24と、が取り付けられている。チャンネルファスナ23とチャンネルスペーサ24は、それぞれ、上部が格子板17よりも上に位置し、下部が格子板17の内部に入り込むように、配置される。
【0036】
チャンネルファスナ23は、地震時に隣接する燃料集合体との水ギャップを確保するのに必要な厚さを有するファスナガード40を有している。ファスナガード40は、上部が格子板17よりも上に位置し、下部が格子板17の内部に入り込むように、配置される。チャンネルボックス22Aの本体部122Aにおいて、チャンネルファスナ23の取付部は、溝状の平坦な機械加工面36として形成されている。これにより、チャンネルファスナ23の取付部は、ファスナガード40の下端の少なくとも一部がチャンネルボックス22A側に設けられた凹部(溝状の平坦な機械加工面36)の深さ内に収まるような取り合いとする構造になっている。ここで、チャンネルファスナやチャンネルボックスの製造誤差やチャンネルファスナのチャンネルボックスへの取り付け誤差により、チャンネルボックス22Aの本体部122Aからチャンネルファスナ23のファスナガード40の下端が浮き上がった状態で取り付けられる場合がある。この浮き上がりはファスナガード40が長手方向に長いほど大きくなる可能性があり、浮き上がりが過大な状態になると、燃料集合体の取扱い時(炉心への装荷時など)に、ファスナガード40の下端が格子板17の上面等に引っ掛かる可能性がある。機械加工面36は、チャンネルファスナ23の下端が浮き上がった場合の格子板17の上面等への引っ掛かり対策として、形成されている。機械加工面36には、加工されたチャンネルボックス22Aの深さ方向の範囲内に、ファスナガード40の下端が厚さ方向に埋め込まれるように取り付けられている。ファスナガード40の下端には傾斜面が設けられ、ファスナガード40の下端に浮き上がりがある場合にも、炉心への燃料集合体の装荷中に格子板17の上面とこの傾斜面が接触する取り合いにする。チャンネルスペーサ24は、格子板17よりも上方の、チャンネルスペーサ24の上端付近の位置で、リベット54によりチャンネルボックス22Aに固定されている。リベット54は、燃料体43に当たらないように、好ましくは、チャンネルスペーサ24の上端付近の位置でチャンネルボックス22Aに留められるようにするとよく、さらに好ましくは、チャンネルファスナ23から離間した位置で留められるようにするとよい。
【0037】
チャンネルファスナ23とチャンネルスペーサ24は、
図4のハッチングを付した部分で格子板17に当接する。チャンネルボックス22Aは、チャンネルボックス22A(燃料集合体20)の支持性能(サポート性能)を向上させるために、チャンネルボックス22Aを格子板17に係合(支持)させ易くするとよい。そのためには、チャンネルボックス22Aは、
図4のハッチングを付した部分の面積をできるだけ大きくするとよい。
【0038】
そこで、本実施形態では、チャンネルボックス22Aの側面上部が格子板17に支持されている状態において、チャンネルファスナ23の下端とチャンネルスペーサ24の下端は、格子板17の厚さの1/2よりも下に配置される(格子板17の厚さの1/2よりも下に伸ばした)。具体的には、格子板17の上面からチャンネルファスナ23の下端までの長さT23は、格子板17の厚さT17の半分(すなわち、厚さT17/2)よりも長い(大きい)とよい。また、格子板17の上面からチャンネルスペーサ24の下端までの長さT24は、格子板17の厚さT17の半分(すなわち、厚さT17/2)よりも長い(大きい)とよい。
【0039】
本実施形態では、格子板17は、従来の格子板よりも板厚が薄い薄型格子板として構成されている。また、沸騰水型原子炉11は、新設BWR型原子炉で自立型制御棒を適用するために格子板17の位置を従来の格子板よりも下げた構成になっている。このような構成において、格子板17は、従来の格子板よりも板厚が薄く、位置が低いことから、炉心外周部分においてチャンネルボックス22を支持する性能が低下している。
【0040】
そこで、本実施形態に係るチャンネルボックス22Aは、チャンネルファスナ23の下端とチャンネルスペーサ24の下端が格子板17の厚さの1/2よりも下に配置される構成になっている。また、原子炉運転中における中性子の照射により燃料集合体に寸法変化が生じ、燃料集合体の全長は増加することが知られているが、このような本実施形態に係るチャンネルボックス22Aは、上述した構成とともに、原子炉における燃料集合体の使用期間中を通して、チャンネルファスナ23及びチャンネルスペーサ24と格子板17との当接部41a、24aの当接が維持される構成とする。また、好ましくはチャンネルファスナ23とチャンネルスペーサ24の格子板17との当接面積をできるだけ大きくして、チャンネルファスナ23の板ばね41やチャンネルスペーサ24を格子板17により確実に当接させる構成とする。沸騰水型原子炉11は、このような本実施形態に係るチャンネルボックス22Aを用いることで、チャンネルボックス22A(燃料集合体20)の支持性能(サポート性能)を向上させることができる。
【0041】
[実施形態3]
以下、
図5A乃至
図5Cを参照して、本実施形態3に係るチャンネルボックス22Bの構成について説明する。
図5Aは、本実施形態3に係るチャンネルボックス22Bの側面図である。
図5Bは、チャンネルボックス22Bの部分断面図である。
図5Cは、チャンネルボックス22Bの背面図である。
【0042】
図5Aに示すように、本実施形態3に係るチャンネルボックス22Bは、実施形態2に係るチャンネルボックス22A(
図4参照)と比較すると、以下の点で相違している。
(1)本体部122Bに機械加工面36(
図4参照)が形成されていない点。
(2)ファスナガード40(
図4参照)の代わりにファスナガード140を有するチャンネルファスナ23が取り付けられている点。
(3)チャンネルスペーサ24(
図4参照)の代わりに、チャンネルスペーサ124が取り付けられている点。
【0043】
本実施形態では、チャンネルファスナ23は、ファスナガード40(
図4参照)の代わりにファスナガード140を有している。ファスナガード140は、ファスナガード40(
図4参照)よりも縦幅が短くなっており、格子板17の内部に配置される。ファスナガード140は、板ばね41の左右における片方の端部(チャンネルスペーサ124に近い方の端部)の一部分と、板ばね41の下端部とを保護する形状になっている。チャンネルファスナ23は、リベット150でチャンネルボックス22Bの本体部122Bに固定されている。本体部122Bは、四角筒状の形状を呈しており、その横幅が全体的に均一になっている(つまり、上部と下部で同じ大きさになっている)。リベット150は、板ばね41の下端よりも下の位置で、チャンネルファスナ23のファスナガード140をチャンネルボックス22Bに留めている。
【0044】
チャンネルスペーサ124は、チャンネルスペーサ24(
図4参照)よりも縦幅が短くなっており、格子板17の内部に配置される。チャンネルスペーサ124は、従来の格子板(図示せず)よりも下げられた格子板17の位置に合わせて、従来のチャンネルスペーサ(図示せず)の取付位置よりも低い位置に、リベット154でチャンネルボックス22Bの本体部122Bに留められている。リベット154は、格子板17と重なる位置(格子板17の上面から下面までの間の位置)で、チャンネルスペーサ124をチャンネルボックス22Bに留めている。
【0045】
図5Bは、チャンネルボックス22Bのチャンネルスペーサ124の取付部を
図5Aに示すY1-Y1線に沿って切断して得られる断面を、側面方向(矢印方向)から見たレイアウトを示している。
図5Bに示すように、チャンネルスペーサ124の取付部において、チャンネルボックス22Bは、外側に凸加工(ディンプル加工)された凸加工部201として形成されている。凸加工部201では、チャンネルスペーサ124は、チャンネルボックス22Bの内側からリベット154が挿入されて外側で溶接部202により溶接固定されている。なお、リベット154をはじめ、リベットの固定は溶接には限られない(以下同じ)。
【0046】
チャンネルボックス22Bは、内部に燃料体43が入るため、燃料体43がリベット154に当たらないように、チャンネルボックス22Bのリベット154が挿入される部分を外側に凸加工(ディンプル加工)している。つまり、チャンネルボックス22Bは、チャンネルスペーサ124を取り付ける部分を凸加工(ディンプル加工)することで、固定用のリベット154がチャンネルボックス22Bの内径側にならず、燃料体43と干渉しない構造になっている。
【0047】
図5Cは、チャンネルボックス22Bのチャンネルスペーサ124の取付部に形成された凸加工部201を内側(燃料体43側(
図5A参照))から見た構成を示している。
図5Cに示すように、凸加工部201は、四角形の形状を呈しており、チャンネルスペーサ124の回り止めを行う構成になっている。
【0048】
なお、図示していないが、チャンネルファスナ23の取付部も、チャンネルスペーサ124の取付部と同様の構成になっている。すなわち、チャンネルファスナ23の取付部において、チャンネルボックス22Bは、外側に凸加工(ディンプル加工)された凸加工部として形成されている。その凸加工部では、チャンネルファスナ23は、チャンネルボックス22Bの内側からリベット150が挿入されて外側で溶接固定されている。つまり、チャンネルボックス22Bは、チャンネルファスナ23を取り付ける部分を凸加工(ディンプル加工)することで、固定用のリベット150がチャンネルボックス22Bの内径側にならず、燃料体43と干渉しない構造になっている。リベット150は、板ばね41の下端よりも下の位置で、チャンネルファスナ23をチャンネルボックス22Bに留めている。
【0049】
本実施形態に係るチャンネルボックス22Bは、チャンネルファスナ23のファスナガード140と、チャンネルスペーサ124をそれぞれリベット150,154でチャンネルボックス22Bの本体部122Bに固定している。そして、チャンネルボックス22Bのチャンネルファスナ23の取付部とチャンネルスペーサ124の取付部は、外側に凸加工(ディンプル加工)されている。このようなチャンネルボックス22Bは、チャンネルファスナ23の板ばね41やファスナガード140、チャンネルスペーサ124が格子板17に確実に当接させる構成になっている。沸騰水型原子炉11は、このような本実施形態に係るチャンネルボックス22Bを用いることで、チャンネルボックス22Bを格子板17に係合(支持)させることができ、チャンネルボックス22B(燃料集合体20)の支持性能(サポート性能)を向上させることができる。
【0050】
[実施形態4]
以下、
図6A及び
図6Bを参照して、本実施形態4に係るチャンネルボックス22Cの構成について説明する。
図6Aは、本実施形態4に係るチャンネルボックス22Cの側面図である。
図6Bは、チャンネルボックス22Cの部分断面図である。
【0051】
図6Aに示すように、本実施形態4に係るチャンネルボックス22Cは、実施形態3に係るチャンネルボックス22B(
図5A参照)と比較すると、ファスナガード140(
図5A参照)の代わりにファスナガード240を有するチャンネルファスナ23が取り付けられている点で相違している。
【0052】
本実施形態では、チャンネルファスナ23は、ファスナガード140(
図5A参照)の代わりにファスナガード240を有している。ファスナガード240は、ファスナガード140(
図5A参照)よりも縦幅が長くなっており、上部が格子板17よりも上に位置し、下部が格子板17の内部に入り込むように、配置される。ファスナガード240は、板ばね41の左右における片方の端部(チャンネルスペーサ124に近い方の端部)の全域と、板ばね41の下端部とを保護する形状になっている。チャンネルファスナ23は、リベット250でチャンネルボックス22Bの本体部122Cに固定されている。本体部122Cは、四角筒状の形状を呈しており、その横幅が全体的に均一になっている(つまり、上部と下部で同じ大きさになっている)。リベット250は、格子板17の上面よりも上の位置で、チャンネルファスナ23のファスナガード240と板ばね41を共にチャンネルボックス22Cに留めている。
【0053】
図6Bに示すように、チャンネルファスナ23は、板ばね41を保護するファスナガード240を有している。ファスナガード240の内面側には、板ばね41の上部が挿入される溝部241が形成されている。チャンネルファスナ23は、板ばね41の上部が溝部241に挿入された状態で、チャンネルボックス22Cの内側からリベット250が挿入されて外側で溶接部203により溶接固定されている。チャンネルスペーサ124は、チャンネルボックス22Cの内側からリベット154が挿入されて外側で溶接部202(
図5B参照)により溶接固定されている。
【0054】
本実施形態に係るチャンネルボックス22Cは、実施形態5に係るチャンネルボックス22B(
図5A参照)と同様に、チャンネルファスナ23の板ばね41やファスナガード140、チャンネルスペーサ124が格子板17に確実に当接させる構成になっている。沸騰水型原子炉11は、このような本実施形態に係るチャンネルボックス22Cを用いることで、チャンネルボックス22Cを格子板17に係合(支持)させることができ、チャンネルボックス22C(燃料集合体20)の支持性能(サポート性能)を向上させることができる。
【0055】
しかも、本実施形態に係るチャンネルボックス22Cは、実施形態5に係るチャンネルボックス22B(
図5A参照)と異なり、リベット250により、格子板17の上面よりも上の位置で、板ばね41をチャンネルボックス22Cに留めている。本実施形態では、リベット250を留める位置が燃料体43よりも上にすることができるため、リベット250を留める場所に凸加工(ディンプル加工)を行わなくてもよい。そのため、本実施形態に係るチャンネルボックス22Cは、実施形態5に係るチャンネルボックス22B(
図5A参照)よりも製造コストを低減することができる。また、板ばね41の長さを押さえることができ、ばね力の低下を防ぐことができる。
【0056】
[実施形態5]
以下、
図7A及び
図7Bを参照して、本実施形態5に係るチャンネルボックス22Dの構成について説明する。
図7Aは、本実施形態5に係るチャンネルボックス22Dの側面図である。
図7Bは、チャンネルボックス22Dに取り付けられる一体型部品300の上面図である。
【0057】
図7Aに示すように、本実施形態5に係るチャンネルボックス22Dは、本体部122Dの上部に、一体型部品300が取り付けられた構成になっている。一体型部品300は、チャンネルファスナとして機能するファスナ部301とチャンネルスペーサとして機能するスペーサ部302とが一体化された部品である。一体型部品300は、好ましくは、ステンレス鋼製であるとよい。
【0058】
一体型部品300は、従来の格子板(図示せず)よりも下げられた格子板17の位置に合わせて、従来のチャンネルスペーサ(図示せず)の取付位置よりも低い位置に、リベット303でチャンネルボックス22Dの本体部122Dに留められている。本体部122Dは、四角筒状の形状を呈しており、その横幅が全体的に均一になっている(つまり、上部と下部で同じ大きさになっている)。リベット303は、格子板17と重なる位置(格子板17の上面から下面までの間の位置)で、一体型部品300のスペーサ部302をチャンネルボックス22Dに留めている。一体型部品300は、チャンネルボックス22Dの取付部において、チャンネルボックス22Dの内側からリベット303が挿入されて外側で溶接固定されている。チャンネルボックス22Dと一体型部品300の熱延び対策のため、リベット303を留める位置は、好ましくは、できるだけL字の角寄りの位置にするとよい。
【0059】
チャンネルボックス22Dは、内部に燃料体43が入るため、燃料体43がリベット303に当たらないように、チャンネルボックス22Dのリベット303が挿入される部分を外側に凸加工(ディンプル加工)している。
【0060】
図7Bに示すように、一体型部品300は、上面視でL字の形状を呈している。ファスナ部301は、溝部が形成されていて、その溝部に板ばね41が取り付けられている。
【0061】
本実施形態に係るチャンネルボックス22Dは、チャンネルファスナ(ファスナ部301)の板ばね41とチャンネルスペーサ(スペーサ部302)が格子板17に確実に当接させる構成になっている。沸騰水型原子炉11は、このような本実施形態に係るチャンネルボックス22Dを用いることで、チャンネルボックス22Dを格子板17に係合(支持)させることができ、チャンネルボックス22D(燃料集合体20)の支持性能(サポート性能)を向上させることができる。
【0062】
しかも、本実施形態に係るチャンネルボックス22Dは、チャンネルファスナ(ファスナ部301)とチャンネルスペーサ(スペーサ部302)とが一体型部品300として一体化されているため、チャンネルファスナとチャンネルスペーサを容易に本体部122Dに取り付けることができる。そのため、本実施形態に係るチャンネルボックス22Dは、チャンネルスペーサを有する他の実施形態のチャンネルボックス22A,22B,22Cよりも製造コストを低減することができる。
【0063】
本発明は、前記した実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、前記した実施形態は、本発明を分かり易く説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、実施形態の構成の一部を他の構成に置き換えることが可能であり、また、実施形態の構成に他の構成を加えることも可能である。また、各構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【0064】
前記した実施形態1から実施形態5の構成は、燃料集合体のシャフリング計画を基に、格子板17の必要となる領域でのみ適用されるようにしてもよい。燃料集合体のシャフリング計画とは、核燃料の燃焼度の均一化と有効利用を図るため、使用されている燃料の位置を入れ替えることを意味する。格子板17の必要となる領域とは、例えば、1バンドルセルと2バンドルセルである。1バンドルセルとは、一体のチャンネルボックス22の上部が挿入される領域を意味する。また、2バンドルセルとは、二体のチャンネルボックス22の上部が挿入される領域を意味する。この点について、詳述すると、格子板17の内部には、チャンネルボックス22の上部が挿入される複数の孔が形成されている。各孔は、通常、四体のチャンネルボックス22の上部が挿入される。しかしながら、孔が設けられている最外周部分において、一体のチャンネルボックス22の上部が挿入される領域(1バンドルセル)や二体のチャンネルボックス22の上部が挿入される領域(2バンドルセル)が生じる。前記した実施形態1から実施形態5の構成は、これら1バンドルセルと2バンドルセルでのみ適用するようにしてもよい。
【0065】
また、例えば、前記した実施形態2において、チャンネルファスナ23の取付部が溝状の平坦な機械加工面36として形成されていることを説明したが、この構成は実施形態1以外の他の実施形態の構成にも適用することができる。
【符号の説明】
【0066】
11 沸騰水型原子炉
12 原子炉圧力容器
13 炉心
14 炉心シュラウド
15 制御棒案内管
16 制御棒駆動機構ハウジング
17 格子板
18 炉心支持板
19 燃料支持金具
19a 貫通孔
20 燃料集合体
21 燃料棒
22,22A,22B,22C,22D チャンネルボックス
23 チャンネルファスナ
24,124 チャンネルスペーサ
24a 当接部
25 制御棒
31 第1部材
32 第2部材
32a 肉薄部
32b 肉厚部
33,202,203 溶接部
34 取付部
35,36 機械加工面
40,140,240 ファスナガード
40a 当接部
41 板ばね
41a 当接部
42 ボルト
43 燃料体
54,150,154,250,303 リベット
122,122A,122B,122C,122D 本体部
201 凸加工部
241 溝部
300 一体型部品
301 ファスナ部
302 スペーサ部
T17 厚さ
T23,T24 長さ