(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-18
(45)【発行日】2024-11-26
(54)【発明の名称】コイル部品及びコイル部品の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01F 27/29 20060101AFI20241119BHJP
【FI】
H01F27/29 123
(21)【出願番号】P 2021146985
(22)【出願日】2021-09-09
【審査請求日】2024-04-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【氏名又は名称】三上 敬史
(72)【発明者】
【氏名】永井 雄介
(72)【発明者】
【氏名】海老名 和広
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 高弘
(72)【発明者】
【氏名】川崎 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 真一
(72)【発明者】
【氏名】中川 誠一
(72)【発明者】
【氏名】角田 晃一
(72)【発明者】
【氏名】石間 雄也
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 満
【審査官】秋山 直人
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-098540(JP,A)
【文献】特開2016-031992(JP,A)
【文献】特開平08-335529(JP,A)
【文献】特開2013-069713(JP,A)
【文献】特開2015-109410(JP,A)
【文献】特開2018-195760(JP,A)
【文献】特開2020-113673(JP,A)
【文献】国際公開第2018/116665(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 27/29
H01F 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
素体と、
前記素体内に配置されているコイルと、
前記素体の表面に配置されている外部電極と、を備え、
前記外部電極は、前記素体の表面に配置されている第一電極層と、前記第一電極層上に配置されているめっき層と、を有し、
前記めっき層は、前記第一電極層の縁上において、複数箇所に点在するように配置されている、コイル部品。
【請求項2】
前記外部電極は、前記第一電極層上に配置されている第二電極層を有し、
前記第二電極層は、樹脂を含有しており、前記第一電極層の前記縁に配置されておらず、
前記めっき層は、前記第一電極層及び前記第二電極層上に配置されている、請求項1に記載のコイル部品。
【請求項3】
前記外部電極は、前記第一電極層上に配置されている第二電極層を有し、
前記第二電極層は、前記第一電極層に比べて表面にガラス成分が存在していないと共に、前記第一電極層の前記縁に配置されておらず、
前記めっき層は、前記第一電極層及び前記第二電極層上に配置されている、請求項1に記載のコイル部品。
【請求項4】
前記素体は、軟磁性材料の金属磁性粒子を複数含む磁性体層を積層することによって構成されている、請求項1~3のいずれか一項に記載のコイル部品。
【請求項5】
素体と、前記素体内に配置されているコイルと、前記素体の表面に配置されている外部電極と、を備えるコイル部品の製造方法であって、
前記素体の表面に配置されている電極層と、前記電極層上に配置されているめっき層と、を有しており、
前記電極層の縁上には、前記めっき層が複数箇所に点在するように前記めっき層を形成する、コイル部品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コイル部品及びコイル部品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、セラミック積層体と、セラミック積層体内に配置されている内部電極層と、セラミック積層体の表面に配置されている外部電極と、を備える電子部品が開示されている。特許文献1に記載の電子部品では、外部電極は、セラミック積層体の表面に配置されている外部電極層と、外部電極層上に配置されているめっき層と、を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
外部電極が電極層とめっき層とを有するコイル部品を製造する場合、素体上に電極層を形成した後に、電極層上にめっき層を形成する。めっき層が形成される際、めっき層形成時に発生する応力によって、素体の表面に形成された電極層の縁が剥離し得る。
【0005】
本発明の一側面は、外部電極の剥離を抑制できるコイル部品及びコイル部品の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面に係るコイル部品は、素体と、素体内に配置されているコイルと、素体の表面に配置されている外部電極と、を備え、外部電極は、素体の表面に配置されている第一電極層と、第一電極層上に配置されているめっき層と、を有し、めっき層は、第一電極層の縁上において、複数箇所に点在するように配置されている。
【0007】
本発明の一側面に係るコイル部品では、めっき層は、第一電極層の縁上において、複数箇所に点在するように配置されている。このように、コイル部品では、第一電極層の縁の全体ではなく、第一電極層の縁上において複数箇所に点在するようにめっき層を配置するため、めっき層を形成する際に発生する応力を分散できる。そのため、コイル部品では、第一電極層が素体から剥離することを抑制することができる。したがって、コイル部品では、外部電極の剥離を抑制できる。
【0008】
一実施形態においては、外部電極は、第一電極層上に配置されている第二電極層を有し、第二電極層は、樹脂を含有しており、第一電極層の縁に配置されておらず、めっき層は、第一電極層及び第二電極層上に配置されていてもよい。この構成では、第一電極層の縁が第二電極層に覆われないため、第一電極層の縁上において、めっき層が複数箇所に点在するように配置される。したがって、第一電極層が素体から剥離することを抑制することができる。また、第二電極層は樹脂を含有している。これにより、第二電極層では、めっき層形成時の応力を緩和できる。したがって、めっき層形成時の応力によって、第二電極層が第一電極層から剥離することを抑制できる。
【0009】
一実施形態においては、外部電極は、第一電極層上に配置されている第二電極層を有し、第二電極層は、第一電極層に比べて表面にガラス成分が存在していないと共に、第一電極層の縁に配置されておらず、めっき層は、第一電極層及び第二電極層上に配置されていてもよい。この構成では第一電極層の縁が第二電極層に覆われないため、第一電極層の縁上において、めっき層が複数箇所に点在するように配置される。したがって、第一電極層が素体から剥離することを抑制することができる。また、第二電極層は、第一電極層に比べて表面にガラス成分が存在していない。そのため、第二電極層上に、めっき層を連続的に一様に形成することができる。
【0010】
一実施形態においては、素体は、軟磁性材料の金属磁性粒子を複数含む磁性体層を積層することによって構成されていてもよい。
【0011】
本発明の一側面に係るコイル部品の製造方法は、素体と、素体内に配置されているコイルと、素体の表面に配置されている外部電極と、を備えるコイル部品の製造方法であって、素体の表面に配置されている電極層と、電極層上に配置されているめっき層と、を有しており、電極層の縁上には、めっき層が複数箇所に点在するようにめっき層を形成する。
【0012】
本発明の一側面に係るコイル部品の製造方法では、電極層の縁上には、めっき層が複数箇所に点在するようにめっき層を形成する。このように、コイル部品の製造方法では、電極層の縁の全体ではなく、第一電極層の縁上において複数箇所に点在するようにめっき層を形成するため、めっき層を形成する際に発生する応力を分散できる。そのため、コイル部品の製造方法では、電極層が素体から剥離することを抑制することができる。したがって、コイル部品の製造方法では、コイル部品において、外部電極の剥離を抑制できる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の一側面によれば、外部電極の剥離を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、一実施形態に係る積層コイル部品を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1に示す積層コイル部品の分解斜視図である。
【
図3】
図3は、第一外部電極の一部を拡大して示す断面図である。
【
図4】
図4は、第一外部電極の第一電極層の縁に配置されためっき層を模式的に示す図である。
【
図5】
図5は、第一外部電極の第二電極層の縁に配置されためっき層を模式的に示す図である。
【
図6】
図6は、第二外部電極の一部を拡大して示す断面図である。
【
図7】
図7は、第二外部電極の第一電極層の縁に配置されためっき層を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面の説明において同一又は相当要素には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0016】
図1に示されるように、積層コイル部品1は、素体2と、素体2の両端部にそれぞれ配置された第一外部電極4及び第二外部電極5と、を備えている。
【0017】
素体2は、直方体形状を呈している。直方体形状には、角部及び稜線部が面取りされている直方体の形状、及び、角部及び稜線部が丸められている直方体の形状が含まれる。素体2は、その外表面として、互いに対向している一対の端面2a,2bと、互いに対向している一対の主面2c,2dと、互いに対向している一対の側面2e、2fと、を有している。一対の主面2c,2dが対向している対向方向が第一方向D1である。一対の端面2a,2bが対向している対向方向が第二方向D2である。一対の側面2e,2fが対向している対向方向が第三方向D3である。本実施形態では、第一方向D1は、素体2の高さ方向である。第二方向D2は、素体2の長手方向であり、第一方向D1と直交している。第三方向D3は、素体2の幅方向であり、第一方向D1と第二方向D2とに直交している。
【0018】
一対の端面2a,2bは、一対の主面2c,2dの間を連結するように第一方向D1に延びている。一対の端面2a,2bは、第三方向D3(一対の主面2c,2dの短辺方向)にも延びている。一対の側面2e,2fは、一対の主面2c,2dの間を連結するように第一方向D1に延びている。一対の側面2e,2fは、第二方向D2(一対の端面2a,2bの長辺方向)にも延びている。主面2dは、積層コイル部品1を他の電子機器(たとえば、回路基板、又は、電子部品など)に実装する際、他の電子機器と対向する実装面として規定され得る。
【0019】
図3に示されるように、素体2は、複数の磁性体層6が積層されることによって構成されている。各磁性体層6は、第一方向D1に積層されている。すなわち、第一方向D1が積層方向である。素体2は、積層されている複数の磁性体層6を有している。実際の素体2では、複数の磁性体層6は、その層間の境界が視認できない程度に一体化されている。
【0020】
各磁性体層6は、複数の金属磁性粒子を含んでいる。金属磁性粒子は、軟磁性合金(軟磁性材料)から構成される。軟磁性合金は、たとえば、Fe-Si系合金である。軟磁性合金がFe-Si系合金である場合、軟磁性合金は、Pを含んでいてもよい。軟磁性合金は、たとえば、Fe-Ni-Si-M系合金であってもよい。「M」はCo、Cr、Mn、P、Ti、Zr、Hf、Nb、Ta、Mo、Mg、Ca、Sr、Ba、Zn、B、Al、及び希土類元素から選択される一種以上の元素を含む。
【0021】
磁性体層6では、金属磁性粒子同士が結合している。金属磁性粒子同士の結合は、たとえば、金属磁性粒子の表面に形成される酸化膜同士の結合で実現される。磁性体層6では、酸化膜同士の結合により、金属磁性粒子同士が電気的に絶縁されている。酸化膜の厚さは、たとえば、5~60nm以下である。酸化膜は、一又は複数の層によって構成されていてもよい。
【0022】
素体2は、樹脂を含んでいる。樹脂は、複数の金属磁性粒子間に存在している。樹脂は、電気絶縁性を有する樹脂(絶縁性樹脂)である。絶縁性樹脂は、たとえば、シリコーン樹脂、フェノール樹脂、アクリル樹脂、又はエポキシ樹脂を含む。
【0023】
図1に示されるように、第一外部電極4は、素体2の端面2a側に配置されており、第二外部電極5は、素体2の端面2b側に配置されている。すなわち、第一外部電極4及び第二外部電極5は、一対の端面2a,2bの対向方向に互いに離間して位置している。
【0024】
第一外部電極4は、一方の端面2a側に配置されている。第一外部電極4は、端面2a上に位置する第一電極部分4aと、主面2c上に位置する第二電極部分4bと、主面2d上に位置する第三電極部分4cと、側面2e上に位置する第四電極部分4dと、側面2f上に位置する第五電極部分4eと、の五つの電極部分を含んでいる。第一電極部分4aと第二電極部分4b、第三電極部分4c、第四電極部分4d及び第五電極部分4eとは、素体2の稜線部において接続されており、互いに電気的に接続されている。第一外部電極4は、1つの端面2a、一対の主面2c,2d、及び一対の側面2e,2fの五面に形成されている。第一電極部分4a、第二電極部分4b、第三電極部分4c、第四電極部分4d及び第五電極部分4eは、一体的に形成されている。
【0025】
図3に示されるように、第一外部電極4は、第一電極層40と、第二電極層41と、第一めっき層42と、第二めっき層43と、を有している。
【0026】
第一電極層40は、1つの端面2a、一対の主面2c,2d、及び一対の側面2e,2fの五面に形成されている。第一電極層40は、導電材(たとえば、Ag又はPdなど)を含んでいる。第一電極層40は、導電性金属粉末(たとえば、Ag粉末又はPd粉末など)及びガラスフリットを含む導電性ペーストの焼結体として構成される。
【0027】
第二電極層41は、第一電極層40上に形成されている。第二電極層41は、1つの端面2a、一対の主面2c,2d、及び一対の側面2e,2fの五面に形成されている第一電極層40上に配置されている。第二電極層41は、導電性樹脂層である。導電性樹脂には、熱硬化性樹脂に導電性材料及び有機溶媒等を混合したものが用いられる。導電性材料としては、例えば、導電性フィラーが用いられる。導電性フィラーは、金属粉末である。金属粉末は、例えば、Ag粉末が用いられる。熱硬化性樹脂としては、例えば、フェノール樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、又はポリイミド樹脂が用いられる。
【0028】
第一めっき層42は、第一電極層40の一部、及び、第二電極層41を覆って配置されている。第一めっき層42は、1つの端面2a、一対の主面2c,2d、及び一対の側面2e,2fの五面に形成されている。第一めっき層42は、Niめっきにより形成されたNiめっき層である。
【0029】
第二めっき層43は、第一めっき層42を覆って配置されている。第二めっき層43は、1つの端面2a、一対の主面2c,2d、及び一対の側面2e,2fの五面に形成されている。第二めっき層43は、Snめっきにより形成されたSnめっき層である。
【0030】
第一外部電極4では、第一電極層40の縁40E上には、第二電極層41が配置されていない。すなわち、第一電極層40の縁40Eは、第二電極層41に覆われていない。第一電極層40の縁40Eは、第二電極層41よりも、第二方向D2において、素体2の中央側(内側)に位置している。第一電極層40の縁40Eは、第二方向D2において第二電極層41よりも素体2の端面2b側に突出している。言い換えれば、第二電極層41の縁41Eは、第二方向D2において第一電極層40の縁40Eよりも素体2の端面2a側に後退している。第一電極層40の縁40Eとは、素体2の端面2b側の先端を含み、第二電極層41に覆われずに露出している部分であり、たとえば、素体2の主面2c上に配置されている第一電極層40の第二方向D2の長さの1/4程度の長さの部分をいう。なお、
図3では、素体2の主面2c上の第一電極層40及び第二電極層41を示しているが、主面2d、側面2e,2fにおいても同様の構成となっている。
【0031】
第一電極層40の縁40Eの一部上には、第一めっき層42及び第二めっき層43が配置されている。言い換えれば、第一電極層40の縁40Eの一部上には、第一めっき層42及び第二めっき層43が配置されていない。
図4に示されるように、第二めっき層43(第一めっき層42)は、複数箇所に点在するように配置されている。第二めっき層43(第一めっき層42)は、互いに独立して点在している。互いに独立しているとは、電気的に独立していることを意味するのではなく、外観として、互いに境界をもって形成されていることを意味する。第二めっき層43(第一めっき層42)は、第一電極層40の縁40Eにおいて、不連続に配置されているとも言える。第二めっき層43(第一めっき層42)は、島状に点在しているとも言える。第一電極層40の縁40Eにおいて、第二めっき層43(第一めっき層42)が配置されていない領域には、その表面にガラス層40Gが設けられている(ガラス成分が存在している)。すなわち、ガラス層40G上には、第二めっき層43(第一めっき層42)が配置されていない。
【0032】
第二電極層41上には、第一めっき層42及び第二めっき層43が配置されている。
図5に示されるように、第二電極層41上には、第二めっき層43(第一めっき層42)が連続的に一様に形成されている。第二電極層41においても、その表面に樹脂が析出し得るが、その樹脂の領域(面積)がガラス層40Gよりも小さく、第二電極層41の表面において略均一に存在しているため、樹脂と樹脂との間の距離が短い。そのため、第二電極層41上では、樹脂が析出していたとしても、樹脂が析出していない部分に掛け渡されるように(ブリッジして)、樹脂を覆うように第二電極層41が形成される。これにより、第二電極層41上には、第一めっき層42及び第二めっき層43が連続的に一様に形成されている。
【0033】
第一電極層40と第二電極層41とは、互いの境界の凹凸によるアンカー効果により、所定の強度を有して接合されている。
【0034】
図1に示されるように、第二外部電極5は、他方の端面2b側に配置されている。第二外部電極5は、端面2b上に位置する第一電極部分5aと、主面2c上に位置する第二電極部分5bと、主面2d上に位置する第三電極部分5cと、側面2e上に位置する第四電極部分5dと、側面2f上に位置する第五電極部分5eと、の五つの電極部分を含んでいる。第一電極部分5aと第二電極部分5b、第三電極部分5c、第四電極部分5d及び第五電極部分5eとは、素体2の稜線部において接続されており、互いに電気的に接続されている。第二外部電極5は、1つの端面2b、一対の主面2c,2d、及び一対の側面2e,2fの五面に形成されている。第一電極部分5a、第二電極部分5b、第三電極部分5c、第四電極部分5d及び第五電極部分5eは、一体的に形成されている。
【0035】
図6に示されるように、第二外部電極5は、第一電極層50と、第二電極層51と、第一めっき層52と、第二めっき層53と、を有している。
【0036】
第一電極層50は、1つの端面2b、一対の主面2c,2d、及び一対の側面2e,2fの五面に形成されている。第一電極層50は、導電材(たとえば、Ag又はPdなど)を含んでいる。第一電極層50は、導電性金属粉末(たとえば、Ag粉末又はPd粉末など)及びガラスフリットを含む導電性ペーストの焼結体として構成される。
【0037】
第二電極層51は、第一電極層50上に形成されている。第二電極層51は、1つの端面2b、一対の主面2c,2d、及び一対の側面2e,2fの五面に形成されている第一電極層50上に配置されている。第二電極層51は、導電性樹脂層である。導電性樹脂には、熱硬化性樹脂に導電性材料及び有機溶媒等を混合したものが用いられる。導電性材料としては、例えば、導電性フィラーが用いられる。導電性フィラーは、金属粉末である。金属粉末は、例えば、Ag粉末が用いられる。熱硬化性樹脂としては、例えば、フェノール樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、又はポリイミド樹脂が用いられる。
【0038】
第一めっき層52は、第一電極層50の一部、及び、第二電極層51を覆って配置されている。第一めっき層52は、1つの端面2b、一対の主面2c,2d、及び一対の側面2e,2fの五面に形成されている。第一めっき層52は、Niめっきにより形成されたNiめっき層である。
【0039】
第二めっき層53は、第一めっき層52を覆って配置されている。第二めっき層53は、1つの端面2b、一対の主面2c,2d、及び一対の側面2e,2fの五面に形成されている。第二めっき層53は、Snめっきにより形成されたSnめっき層である。
【0040】
第二外部電極5では、第一電極層50の縁50E上には、第二電極層51が配置されていない。すなわち、第一電極層50の縁50Eは、第二電極層51に覆われていない。第一電極層50の縁50Eは、第二電極層51よりも、第二方向D2において、素体2の中央側(内側)に位置している。第一電極層50の縁50Eは、第二方向D2において第二電極層51よりも素体2の端面2a側に突出している。言い換えれば、第二電極層51の縁51Eは、第二方向D2において第一電極層50の縁50Eよりも素体2の端面2b側に後退している。第一電極層50の縁50Eとは、素体2の端面2a側の先端を含み、第二電極層51に覆われずに露出している部分であり、たとえば、素体2の主面2c上に配置されている第一電極層50の第二方向D2の長さの1/4程度の長さの部分をいう。なお、
図6では、素体2の主面2c上の第一電極層50及び第二電極層51を示しているが、主面2d、側面2e,2fにおいても同様の構成となっている。
【0041】
第一電極層50の縁50Eの一部上には、第一めっき層52及び第二めっき層53が配置されている。言い換えれば、第一電極層50の縁50Eの一部上には、第一めっき層52及び第二めっき層53が配置されていない。
図7に示されるように、第二めっき層53(第一めっき層52)は、第一電極層50の縁50E上において、複数箇所に点在するように配置されている。第二めっき層53(第一めっき層52)は、互いに独立して点在している。互いに独立しているとは、電気的に独立していることを意味するのではなく、外観として、互いに境界をもって形成されていることを意味する。第二めっき層53(第一めっき層52)は、第一電極層50の縁50Eにおいて、不連続に配置されているとも言える。第二めっき層53(第一めっき層52)は、島状に点在しているとも言える。第一電極層50の縁50Eにおいて、第二めっき層53(第一めっき層52)が配置されていない領域には、その表面にガラス層50Gが設けられている。すなわち、ガラス層50G上には、第二めっき層53(第一めっき層52)が配置されていない。
【0042】
第二電極層51上には、第一めっき層52及び第二めっき層53が配置されている。第二電極層51上には、第一めっき層52及び第二めっき層53が連続的に一様に形成されている。第二電極層51においても、その表面に樹脂が析出し得るが、その樹脂の領域(面積)がガラス層50Gよりも小さく、第二電極層51の表面において略均一に存在しているため、樹脂と樹脂との間の距離が短い。そのため、第二電極層51上では、樹脂が析出していたとしても、樹脂が析出していない部分に掛け渡されるように(ブリッジして)、樹脂を覆うように第二電極層51が形成される。これにより、第二電極層51上には、第一めっき層52及び第二めっき層53が連続的に一様に形成されている。
【0043】
第一電極層50と第二電極層51とは、互いの境界の凹凸によるアンカー効果により、所定の強度を有して接合されている。
【0044】
積層コイル部品1は、
図2に示されるように、素体2内にコイル8が配置されている。コイル8は、複数のコイル導体10,11,12,13,14,15と、第一接続導体16及び第二接続導体17とが電気的に接続されて螺旋状に構成されている。隣接するコイル導体10,11,12,13,14,15は、スルーホール導体(図示省略)で電気的に接続されている。コイル導体15と第二接続導体17とは、スルーホール導体(図示省略)で電気的に接続されている。第一接続導体16は、コイル8の一端部を構成している。第一接続導体16は、素体2の端面2aに露出して、第一外部電極4(第一電極部分4a)に接続されている。第二接続導体17は、コイル8の他端部を構成している。第二接続導体17は、素体2の端面2bに露出して、第二外部電極5(第一電極部分5a)に接続されている。
【0045】
コイル導体10,11,12,13,14,15、第一接続導体16及び第二接続導体17は、コイルの導体として通常用いられる導電性材料(たとえば、Ni又はCuなど)からなる。コイル導体10,11,12,13,14,15、第一接続導体16及び第二接続導体17は、上記導電性材料を含む導電性ペーストの焼結体として構成される。
【0046】
続いて、積層コイル部品1の製造方法について説明する。
【0047】
金属磁性粒子、絶縁性樹脂及び溶剤などを混合して、スラリーを用意する。用意したスラリーを、ドクターブレード法によって基材(たとえば、PETフィルムなど)上に塗布して、磁性体層6となるグリーンシートを形成する。次に、グリーンシートにおけるスルーホール導体の形成予定位置に、レーザー加工によって貫通孔を形成する。
【0048】
続いて、第一の導電性ペーストをグリーンシートの貫通孔内に充填する。第一の導電性ペーストは、導電性金属粉末及びバインダ樹脂などを混合して作製される。続いて、グリーンシートの上に、コイル導体10,11,12,13,14,15、第一接続導体16及び第二接続導体17となる導体を設ける。このとき、導体は、貫通孔内の導電性ペーストと接続される。
【0049】
続いて、グリーンシートを積層する。ここでは、導体が設けられた複数のグリーンシートを基材から剥がして積層し、積層方向に加圧して積層体を形成する。このとき、コイル導体10,11,12,13,14,15、第一接続導体16及び第二接続導体17となる導体が積層方向に重なるように、各グリーンシートを積層する。
【0050】
続いて、グリーンシートの積層体を切断機で所定の大きさのチップに切断しグリーンチップを得る。続いて、グリーンチップから、各部に含まれるバインダ樹脂を除去した後、このグリーンチップを焼成する。これにより、素体2が得られる。
【0051】
続いて、素体2の一対の端面2a,2b側のそれぞれに対して第二の導電性ペーストを設ける。第二の導電性ペーストは、導電性金属粉末、ガラスフリット及びバインダ樹脂等を混合して作製される。続いて、熱処理を施すことにより、第二の導電性ペーストを焼き付けて、第一電極層40,50を形成する。熱処理により、第一電極層40,50の表面の一部には、ガラス層40G,50Gが析出する。
【0052】
続いて、第一電極層40,50上に第三の導電性ペーストを設ける。第三の導電性ペーストは、熱硬化性樹脂に導電性材料及び有機溶媒等を混合して作製される。第三の導電性ペーストは、第一電極層40,50の縁40E,50Eを覆わないように設ける。続いて、熱処理を施すことにより、第三の導電性ペーストを焼き付けて、第二電極層41,51を形成する。最後に、第一電極層40,50及び第二電極層41,51に表面にめっきを施して、第一めっき層42,52及び第二めっき層43,53を形成する。以上の工程により、積層コイル部品1が得られる。
【0053】
以上説明したように、本実施形態に係る積層コイル部品1では、第一めっき層42,52及び第二めっき層43,53は、第一電極層40,50の縁40E,50E上において、複数箇所に点在するように配置されている。このように、積層コイル部品1では、第一電極層40,50の縁40E,50Eの全体ではなく、第一電極層40,50の縁40E,50E上において複数箇所に点在するように第一めっき層42,52及び第二めっき層43,53を配置するため、第一めっき層42,52及び第二めっき層43,53を形成する際に発生する応力を分散できる。そのため、積層コイル部品1では、第一電極層40,50が素体2から剥離することを抑制することができる。したがって、積層コイル部品1では、第一外部電極4及び第二外部電極5の剥離を抑制できる。
【0054】
本実施形態に係る積層コイル部品1では、第一外部電極4は、第一電極層40上に配置されている第二電極層41を有し、第二外部電極5は、第一電極層50上に配置されている第二電極層41を有している。第二電極層41,51は、樹脂を含有しており、第一電極層40,50の縁40E,50Eに配置されていない。第一めっき層42,52及び第二めっき層43,53は、第一電極層40,50及び第二電極層41,51上に配置されている。この構成では、第一電極層40,50の縁40E,50Eが第二電極層41,51に覆われないため、第一電極層40,50の縁40E,50E上において、第一めっき層42,52及び第二めっき層43,53が複数箇所に点在するように配置される。したがって、第一電極層40,50が素体2から剥離することを抑制することができる。また、第二電極層41,51は樹脂を含有している。これにより、第二電極層41,51では、第一めっき層42,52及び第二めっき層43,53形成時の応力を緩和できる。したがって、第一めっき層42,52及び第二めっき層43,53形成時の応力によって、第二電極層41,51が第一電極層40,50から剥離することを抑制できる。
【0055】
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明は必ずしも上述した実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
【0056】
素体2は、必ずしも金属磁性粒子を含んで構成されていなくてもよく、フェライト(例えば、Ni-Cu-Zn系フェライト、Ni-Cu-Zn-Mg系フェライト、Cu-Zn系フェライト)や誘電体材料などによって構成されていてもよい。
【0057】
上記実施形態では、第一外部電極4が、第一電極部分4aと第二電極部分4b、第三電極部分4c、第四電極部分4d及び第五電極部分4eを有する形態を一例に説明した。しかし、第一外部電極4は、第一電極部分4aのみを有していてもよく、第二電極部分4bのみを有していてもよい。第二外部電極5も、第一電極部分5aのみを有していてもよく、第二電極部分5bのみを有していてもよい。第一外部電極4及び第二外部電極5は、様々な形状を採用することができる。
【0058】
上記実施形態では、第一外部電極4が第一電極層40及び第二電極層41を有する形態を一例に説明した。しかし、第一外部電極は、第二電極層を有していなくてもよい。第二外部電極についても同様である。
【0059】
上記実施形態では、第二電極層41,51が導電性樹脂層である形態を一例に説明した。しかし、第二電極層41,51は、導電性樹脂層でなくてもよい。この場合、第二電極層は、第一電極層に比べて表面にガラス成分(ガラス層)が存在していないことが好ましい。この構成では、第二電極層上に、めっき層を連続的に一様に形成することができる。
【0060】
上記実施形態では、めっき層として、第一めっき層42,52及び43,53を有する形態を一例に説明した。しかし、めっき層は一層であってもよいし、三層であってもよい。
【0061】
コイル導体の数は、上述した値に限られない。
【符号の説明】
【0062】
1…積層コイル部品、2…素体、4…第一外部電極、5…第二外部電極、6…磁性体層、8…コイル、40,50…第一電極層、40E,50E…縁、41,51…第二電極層、42,52…第一めっき層、43,53…第二めっき層。