(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-18
(45)【発行日】2024-11-26
(54)【発明の名称】仮想化インフラストラクチャシステム、仮想化インフラストラクチャシステムの制御プログラム、および、仮想化インフラストラクチャシステムの制御方法
(51)【国際特許分類】
G06F 11/34 20060101AFI20241119BHJP
G06F 9/455 20180101ALI20241119BHJP
G06F 9/50 20060101ALI20241119BHJP
G06F 11/30 20060101ALI20241119BHJP
H04L 41/0833 20220101ALI20241119BHJP
【FI】
G06F11/34 142
G06F9/455 150
G06F9/50 120A
G06F11/30 162
G06F11/30 140A
H04L41/0833
(21)【出願番号】P 2021156804
(22)【出願日】2021-09-27
【審査請求日】2023-08-01
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)2020年度、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構ポスト5G情報通信システム基盤強化研究開発事業/先導研究(委託)委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】000208891
【氏名又は名称】KDDI株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】毛利 元一
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 力
(72)【発明者】
【氏名】田上 敦士
(72)【発明者】
【氏名】黒木 圭介
【審査官】児玉 崇晶
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-137017(JP,A)
【文献】特開2020-102888(JP,A)
【文献】国際公開第2012/124125(WO,A1)
【文献】特表2019-525285(JP,A)
【文献】特開2016-143365(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 11/34
G06F 9/455
G06F 9/50
G06F 11/30
H04L 41/0833
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信機能ソフトウェアを仮想化インフラストラクチャに展開する仮想化インフラストラクチャシステムであって、
前記仮想化インフラストラクチャを構成する商用サーバの計算機リソースの余剰を把握するサーバ性能監視部と、
CPUおよび1以上のハードウェアアクセラレータを含む試験用サーバの計算デバイスごとに前記通信機能ソフトウェアを展開し、前記通信機能ソフトウェアの計算機リソースの消費量、消費電力量、および、遅延時間について、前記計算デバイスごとに分析した結果
に基づいて、展開要求された前記通信機能ソフトウェアの展開条件のうち、少なくとも消費電力が小さくなるように、
前記展開要求された前記通信機能ソフトウェアを割り当てる前記商用サーバの計算デバイスを定め
、前記把握した計算機リソースの余剰に基づいて、前記展開要求された前記通信機能ソフトウェアを前記定めた計算デバイスに展開可能であるか確認することで、前記展開要求された前記通信機能ソフトウェアを割り当てる前記計算デバイスを決定する割当制御部と、
前記
決定した前記計算デバイスに、
前記展開要求された前記通信機能ソフトウェアを展開する通信機能展開部と、
を備えることを特徴とする仮想化インフラストラクチャシステム。
【請求項2】
前記割当制御部は、要求された期間において通信機能を提供できるように、
前記展開要求された前記通信機能ソフトウェアを割り当てる前記計算デバイスを定めることを特徴とする請求項
1に記載の仮想化インフラストラクチャシステム。
【請求項3】
前記通信機能ソフトウェアは、複数のモジュールを含み、
前記割当制御部は、前記
複数のモジュールの各モジュールに対して、割り当てる前記計算デバイスを定めることを特徴とする請求項
1又は2に記載の仮想化インフラストラクチャシステム。
【請求項4】
前記割当制御部は、
前記展開要求された前記通信機能ソフトウェアを割り当て可能な前記商用サーバを定めるときに、前記通信機能ソフトウェアを実行中の前記商用サーバを優先することを特徴とする請求項
1から3のいずれか1項に記載の仮想化インフラストラクチャシステム。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の仮想化インフラストラクチャシステム
としてコンピュータを機能させることを特徴とする制御プログラム。
【請求項6】
通信機能ソフトウェアを仮想化インフラストラクチャに展開する仮想化インフラストラクチャシステムの制御方法であって、
前記仮想化インフラストラクチャを構成する商用サーバの計算機リソースの余剰を把握するステップと、
CPUおよび1以上のハードウェアアクセラレータを含む試験用サーバの計算デバイスごとに前記通信機能ソフトウェアを展開し、前記通信機能ソフトウェアの計算機リソースの消費量、消費電力量、および、遅延時間について、前記計算デバイスごとに分析した結果に基づいて、
展開要求された前記通信機能ソフトウェアの展開条件のうち、少なくとも消費電力が小さくなるように、
前記展開要求された前記通信機能ソフトウェアを割り当てる前記商用サーバの計算デバイスを定め
、前記把握した計算機リソースの余剰に基づいて、前記展開要求された前記通信機能ソフトウェアを前記定めた計算デバイスに展開可能であるか確認することで前記展開要求された前記通信機能ソフトウェアを割り当てる前記計算デバイスを決定するステップと、
前記
決定した前記計算デバイスに、
前記展開要求された前記通信機能ソフトウェアを展開するステップと、
を少なくとも含むことを特徴とする仮想化インフラストラクチャシステムの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信機能ソフトウェアを仮想化インフラストラクチャに展開する仮想化インフラストラクチャシステム、仮想化インフラストラクチャシステムの制御プログラム、および、仮想化インフラストラクチャシステムの制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ネットワークを利用したICT(Information and Communication Technology)システムは人々の生活やビジネスに欠かせないものになっていることから、通信の需要がますます高まっている。また、近年では、NFV(Network Functions Virtualization)などのような通信機能の仮想化が進んでおり、仮想ネットワーク機能を汎用サーバ上で動作させるICTシステムを提供する頻度が増えつつある。この旺盛なICTシステムの需要と通信機能の仮想化により、通信事業者における計算リソース、計算機設置場所、計算機向け電力が不足しつつある。
【0003】
仮想化技術は専用に作られたハードウェアではなく、汎用のサーバ上で動作させることが多い。そのため、これまでASIC(Application Specific Integrated Circuit)などで処理されてきた通信機器の機能を汎用CPU(Central Processing Unit)上で処理されることにより、処理速度の低下などの問題が顕在化している。
【0004】
以上のことから、計算機リソースおよび処理速度の低下を解消するために、従来CPUで処理していた演算をFPGA(Field-Programmable Gate Array)、GPU(Graphics Processing Unit)などのハードウェアアクセラレータにオフロードする手法が期待されている。
【0005】
特許文献1に記載の発明では、仮想ネットワーク機能を汎用サーバ上に展開させる際に、FPGAに対応しているサーバと対応していないサーバを峻別し、FPGAを用いる仮想ネットワーク機能の展開先としてFPGAに対応しているサーバを選択する。
【0006】
特許文献2に記載の発明では、データ処理タスクにおいて、タスク処理命令を解釈し、負荷を判定するタスク負荷判定部と、データ処理性能を判定するリソース性能判定部とを備え、CPUもしくはハードウェアアクセラレータから適切な計算デバイスを選択する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特許第6687106号公報
【文献】特許第6753999号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、上述した通り、昨今の旺盛な通信需要により、計算機リソースだけでなく、計算機向け電力についても不足しつつある。そのため、消費電力についても考慮して、仮想ネットワーク機能を効率的に仮想化インフラストラクチャ上に展開する技術の需要が高まっている。また、計算機リソースや消費電力だけでなく、サービスレベルの保持についても考慮する必要がある。
【0009】
特許文献1に記載の発明は、演算内容や通信需要に応じて、仮想ネットワーク機能をCPUとFPGAサーバのどちらに処理させれば、計算機リソースおよび消費電力の観点から適切かどうか判断する仕組みを有していない。そのため、無駄な計算機リソースおよび電力を消費してしまうという問題がある。
【0010】
また、特許文献2に記載の発明は、分散データベースシステムの発明であり、システム全体としてデータ処理時間を短縮することを目的としているが、仮想ネットワーク機能の展開に応用した際に、サービスレベルを保持する仕組みがないため、処理品質が劣化するおそれがある。
【0011】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、サービスレベルの保持、計算機リソースおよび消費電力を考慮して、最適な計算デバイスを割り当て可能な仮想化インフラストラクチャシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一態様によると、通信機能ソフトウェアを仮想化インフラストラクチャに展開する仮想化インフラストラクチャシステムは、前記仮想化インフラストラクチャを構成する商用サーバの計算機リソースの余剰を把握するサーバ性能監視部と、CPUおよび1以上のハードウェアアクセラレータを含む試験用サーバの計算デバイスごとに前記通信機能ソフトウェアを展開し、前記通信機能ソフトウェアの計算機リソースの消費量、消費電力量、および、遅延時間について、前記計算デバイスごとに分析した結果に基づいて、展開要求された前記通信機能ソフトウェアの展開条件のうち、少なくとも消費電力が小さくなるように、前記展開要求された前記通信機能ソフトウェアを割り当てる前記商用サーバの計算デバイスを定め、前記把握した計算機リソースの余剰に基づいて、前記展開要求された前記通信機能ソフトウェアを前記定めた計算デバイスに展開可能であるか確認することで、前記展開要求された前記通信機能ソフトウェアを割り当てる前記計算デバイスを決定する割当制御部と、前記決定した前記計算デバイスに、前記展開要求された前記通信機能ソフトウェアを展開する通信機能展開部と、を備えることを特徴とする。
【0025】
これにより、通信機能ソフトウェアの展開条件を満たすことと、消費電力について、優先的に考慮できる。また、定められた計算デバイスに通信機能ソフトウェアを展開可能であるか確認することで、通信機能ソフトウェアを割り当てる計算デバイスを確定させるから、通信機能ソフトウェアを計算デバイスに展開する際に、計算機リソース不足となることを抑制できる。
【発明の効果】
【0036】
本発明によれば、サービスレベルの保持、計算機リソースおよび消費電力を考慮して、最適な計算デバイスを割り当てることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【
図1】本実施形態に係る仮想化インフラストラクチャシステムの概要を示す模式図である。
【
図2】本実施形態に係る通信機能ソフトウェア格納部から送信されるデータの一例を示す図である。
【
図3】本実施形態に係る分析結果の一例を示す図である。
【
図4】運用者が、割当制御部に対して通信機能ソフトウェアの展開要求する様子を示す模式図である。
【
図5】演算特性に応じた計算機リソースの余剰の確認を要求する様子を示す模式図である。
【
図6】対象となった商用サーバにおいて、計算機リソースの余剰を確認する一例を示す模式図である。
【
図7】本実施形態に係る仮想化インフラストラクチャシステムの処理手順を示すシーケンス図であって、通信機能ソフトウェアの格納から通信機能ソフトウェア利用可能通知までの処理の手順を示す図である。
【
図8】本実施形態に係る仮想化インフラストラクチャシステムの処理手順を示すシーケンス図であって、通信機能構築の要求から構築完了通知までの処理の手順を示す図である。
【
図9】本実施形態に係る仮想化インフラストラクチャシステムの処理手順を示すシーケンス図であって、通信機能構築の要求から計算機リソース不足の通知までの処理の手順を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
本発明者らは、通信機能ソフトウェアを商用サーバに展開する前に、試験用サーバを用いて計算デバイスごとに展開した際の計算機リソースの消費量、消費電力、および遅延時間について予め分析し、その分析結果に基づいて、通信機能ソフトウェアを割り当てる計算デバイスを選択することによって、計算機リソースや計算機向け電力を効率的に利用できることを見出し、本発明をするに至った。
【0039】
すなわち、本発明の仮想化インフラストラクチャシステムは、通信機能ソフトウェアを仮想化インフラストラクチャに展開する通信事業向け仮想化インフラストラクチャシステムであって、計算デバイスとして、CPUおよび1以上のハードウェアアクセラレータを有する試験用サーバに対して前記通信機能ソフトウェアを展開し、前記通信機能ソフトウェアの計算機リソースの消費量、消費電力量、および、遅延時間について、前記計算デバイスごとに分析する通信機能ソフトウェア分析部と、を備えることを特徴としている。
【0040】
これにより、本発明者らは、サービスレベルの保持、計算機リソースおよび消費電力を考慮して、最適な計算デバイスに通信機能ソフトウェアの割り当てを行なうことを可能にした。以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。
【0041】
[仮想化インフラストラクチャシステムの構成]
図1は、本実施形態に係る仮想化インフラストラクチャシステムの概略構成の一例を示すブロック図である。仮想化インフラストラクチャシステム100は、2以上の商用サーバを含む計算機リソースプール200に通信機能ソフトウェア111を展開する前に、通信機能ソフトウェア111の演算特性を予め分析する。また、仮想化インフラストラクチャシステム100は、通信機能ソフトウェア111の分析結果に基づき、サービスレベルの保持、計算機リソースおよび消費電力を考慮して最適な計算デバイス1への割り当てを定めたうえで通信機能ソフトウェア111を展開する。
【0042】
計算デバイス1には、CPU5および1以上のハードウェアアクセラレータが含まれる。ハードウェアアクセラレータは、CPU5の処理を代替して処理の効率を向上させる装置であり、例えば、GPU6、FPGA7である。
【0043】
仮想化インフラストラクチャシステム100は、通信機能ソフトウェア格納部110、通信機能ソフトウェア分析部120、試験用サーバ130、サーバ性能監視部140、分析結果蓄積部150、割当制御部160、残リソース管理部170、通信機能展開部180から構成されている。
【0044】
また、仮想化インフラストラクチャシステム100は、図示されていない入出力インタフェースを有しており、運用者10は入出力インタフェースを介して情報の入出力を行なうことが可能である。
【0045】
通信機能ソフトウェア格納部110は、運用者10によって、通信機能ソフトウェア111を格納される。通信機能ソフトウェア格納部110は、例えば、メモリやストレージといった記憶装置である。通信機能ソフトウェア111は、通信機能を実現するソフトウェアであり、例えば、ソースコードやバイナリなどのプログラムを含む。
【0046】
通信機能ソフトウェア分析部120は、通信機能ソフトウェア格納部110に格納された各通信機能ソフトウェア111の演算特性を分析し、商用サーバ230に展開可能な状態にする。
【0047】
通信機能ソフトウェア分析部120は、通信機能ソフトウェア111を分析するために、通信機能ソフトウェアを試験用サーバ130に展開し、試験用サーバ130が有する各計算デバイス1において、通信機能ソフトウェア111をモジュールごとに展開した結果をサーバ性能監視部140から取得する。通信機能ソフトウェア分析部120は、サーバ性能監視部140から取得したデータについて分析し、通信機能ソフトウェア111の演算特性として、少なくとも、想定される計算機リソースの消費量や消費電力量、遅延時間について算出する。
【0048】
なお、通信機能ソフトウェア分析部120は、負荷パターンを変えて通信機能ソフトウェア111の演算特性を分析してもよく、例えば、呼量を負荷としてパターンを変えた際の演算特性を分析してもよい。
【0049】
また、通信機能ソフトウェア分析部120は、突発的に負荷が上昇することを考慮して、例えば、通信機能ソフトウェア111を試験用サーバ130に展開している間における計算機リソースの最大消費量や、最大消費電力量、最大遅延時間を記録してもよい。
【0050】
また、通信機能ソフトウェア分析部120は、サーバ性能監視部140にて取得される各商用サーバ230に関するデータを用いて、展開可能となった通信機能ソフトウェア111の演算特性を再度分析してもよい。さらに、通信機能ソフトウェア111展開時の商用サーバ230の性能に関する複数のデータと、データ取得時における通信機能ソフトウェア111の割り当てに関する情報とに基づいて、機械学習を行なってもよい。これにより、通信機能ソフトウェア111を割り当てる計算デバイス1をより適切に選択することができる。
【0051】
試験用サーバ130は、通信機能ソフトウェア格納部110に格納された通信機能ソフトウェア111の演算特性を分析するために、通信機能ソフトウェア111を展開するサーバである。試験用サーバ130は、少なくともCPU5および1以上のハードウェアアクセラレータを有しており、好ましくは、通信機能ソフトウェア111の割り当て先となり得る計算デバイス1のすべてを備えることである。
【0052】
通信機能ソフトウェア111は複数のモジュールから構成されており、通信機能ソフトウェア格納部110から送信されるデータについても、
図2に示すように、複数のモジュールバイナリから構成される。通信機能ソフトウェア格納部110から送信されるデータは、例えば、逆フーリエ変換処理(Inverse Fast Fourier Transform)に関わるバイナリデータである「IFFTモジュールバイナリ」、MIMO(Multiple-input and multiple-output)処理に関するバイナリデータである「MIMOモジュールバイナリ」、データ無線ベアラ(Data Radio Bearers(DRBs))の確立に関わるバイナリデータである「DRBモジュールバイナリ」、および、IP forwardingに関するバイナリデータである「IP forwardingモジュールバイナリ」から構成されている。各通信機能ソフトウェア111を構成するモジュールは、実現する通信機能に合わせて構成される。
【0053】
サーバ性能監視部140は、仮想化インフラストラクチャシステムを構成する試験用サーバ130および商用サーバ230の性能を監視する。サーバ性能監視部140は、試験用サーバ130に関するデータを通信機能ソフトウェア分析部120に送信し、商用サーバ230に関するデータを残リソース管理部170に送信する。
【0054】
分析結果蓄積部150は、通信機能ソフトウェア分析部120から送信された通信機能ソフトウェア111の分析結果を蓄積する。
図3は、通信機能Aを実現する通信機能ソフトウェア111の分析結果を示す図である。
図3に示すように、通信機能ソフトウェア111の分析結果には、各モジュールにおいて想定される計算機リソースの消費量や消費電力量、遅延時間について、計算デバイス1ごとに分析した結果を示す情報が少なくとも含まれている。
【0055】
割当制御部160は、展開要求された通信機能ソフトウェア111を割り当てる計算デバイス1を定める。割当制御部160は、
図4に示すように、運用者10から通信機能ソフトウェア111の展開要求を受ける。割当制御部160は、通信機能ソフトウェア111の分析結果に基づいて、通信機能ソフトウェア111の展開条件を満たすうえで、消費電力量が小さくなるように、各モジュールを割り当てる計算デバイス1を定める。通信機能ソフトウェア111の展開条件としては、要求タイプ、展開日時、呼量予測、遅延時間等を含む。
【0056】
割当制御部160は、
図5に示すように、割り当てた通りに各モジュールを計算デバイス1に展開可能であるか、商用サーバ230における計算機リソースの余剰を確認する。割当制御部160は、通信機能ソフトウェア111を展開可能である場合、通信機能ソフトウェア111を展開する商用サーバ230を決定する。このとき、各モジュールの計算機リソースの最大消費量を考慮して、商用サーバ230における計算機リソースの余剰が、計算機リソースの最大消費量よりも多い場合に展開可能と判断させてもよい。
【0057】
また、割当制御部160は、消費電力を抑えるために、通信機能ソフトウェア111を実行中の商用サーバ230に優先的に通信機能ソフトウェア111を割り当ててもよい。計算機リソースプール200を構成する商用サーバ230のうち、既に通信機能ソフトウェア111を実行中の商用サーバ230に優先的に割り当てることで、通信機能ソフトウェア111を実行する商用サーバ230の数を抑えられる。通信機能ソフトウェア111を実行していない商用サーバ230についてはコールドスタンバイさせることが可能であり、消費電力を抑えることに繋がる。
【0058】
なお、割当制御部160は、通信機能ソフトウェア111の分析結果と各商用サーバ230における計算機リソースの余剰とに基づいて、通信機能ソフトウェア111を割り当てる計算デバイス1を定めてもよい。また、各商用サーバ230における計算機リソースの余剰に基づいて、割り当て可能な計算デバイス1の組み合わせを算出した後に、割り当て可能な計算デバイス1のなかから、通信機能ソフトウェア111の展開条件を満たすうえで、消費電力量が小さくなるように、各モジュールを割り当てる計算デバイス1を定めてもよい。
【0059】
残リソース管理部170は、サーバ性能監視部にて取得された、仮想化インフラストラクチャを構成する各商用サーバ230の計算機リソースの余剰に関するデータを蓄積する。計算機リソースの余剰は、例えば、
図6に示すような順番で調査が行なわれる。
図6に示される商用サーバ230は、CPU5、GPU6、FPGA7、NIC(Network Interface Card)8およびメモリ9から構成される。
【0060】
通信機能展開部180は、割当制御部160で割り当てられた通りに、通信機能ソフトウェア111を商用サーバ230に展開する。
【0061】
商用サーバ230は、運用者10の展開要求に応じて、通信機能ソフトウェア111を展開するサーバであり、それぞれの商用サーバ230は少なくともCPU5、メモリ9を有する。計算機リソースプール200に含まれる2以上の商用サーバ230は、計算デバイス1が同じ構成だと管理がしやすいが、異なる構成であってもよい。また、複数の商用サーバ230のうち、少なくとも1つの商用サーバ230がハードウェアアクセラレータを有する。
【0062】
上記では、仮想化インフラストラクチャシステム100が、後述する通信機能ソフトウェアの格納から構築完了通知までの処理を実行可能な形態について説明したが、仮想化インフラストラクチャシステム100は、通信機能ソフトウェアの格納から通信機能ソフトウェア利用可能通知までの処理を実行可能な形態であってもよいし、通信機能構築の要求から構築完了通知までの処理を実行可能な形態であってもよい。
【0063】
通信機能ソフトウェアの格納から通信機能ソフトウェア利用可能通知までを処理可能な形態の場合、仮想化インフラストラクチャシステム100は、少なくとも通信機能ソフトウェア格納部110、通信機能ソフトウェア分析部120、試験用サーバ130、サーバ性能監視部140、分析結果蓄積部150を含む。
【0064】
通信機能構築の要求から構築完了通知までを処理可能な形態の場合、仮想化インフラストラクチャシステム100は、少なくともサーバ性能監視部140、分析結果蓄積部150、割当制御部160、残リソース管理部170、通信機能展開部180を含む。
【0065】
[仮想化インフラストラクチャの制御方法]
<通信機能ソフトウェアの格納から通信機能ソフトウェア利用可能通知まで>
図7を参照して、通信機能ソフトウェアの格納から通信機能ソフトウェア利用可能通知までにおいて、仮想化インフラストラクチャシステムが行なう処理の手順について説明する。
【0066】
図7に示すように、まず、運用者10が通信機能ソフトウェア格納部110に通信機能ソフトウェア111を格納する(ステップS1)。次に、通信機能ソフトウェア格納部110が、通信機能ソフトウェア分析部120に対して、格納された通信機能ソフトウェア111の演算特性の分析を依頼する(ステップS2)。このとき、通信機能ソフトウェア格納部110は、
図2に示すバイナリデータを通信機能ソフトウェア分析部120に送信する。
【0067】
分析依頼を受けた通信機能ソフトウェア分析部120は、受信したバイナリデータを試験用サーバ130に展開する(ステップS3)。次に、通信機能ソフトウェア分析部120は、試験用サーバ130に負荷パターンを印加し(ステップS4)、サーバ性能監視部140から試験用サーバ130の状態を示すデータを受信する(ステップS5)。通信機能ソフトウェア格納部110は、通信機能ソフトウェア111の演算特性の分析に十分なデータをサーバ性能監視部140から受信した後に、試験用サーバ130の負荷パターンを解除する(ステップS6)。
【0068】
通信機能ソフトウェア分析部120は、すべての負荷パターンが終わるまで、S4からS6までの処理を繰り返す。
図3に示すように、負荷パターンとして呼量を10、100、500と変動させた分析結果を取得したい場合には、呼量を変動させて負荷パターンの印加(ステップS4)から負荷パターンの解除(ステップS6)までを3回繰り返す。
【0069】
通信機能ソフトウェア分析部120は、すべての負荷パターンにおける分析結果を取得した後に、サーバ性能監視部140から受信したデータを分析した結果について、分析結果蓄積部150に送信する。分析結果蓄積部150は、通信機能ソフトウェア分析部120から受信した分析結果を格納する(ステップS7)。
【0070】
通信機能ソフトウェア分析部120は、分析結果蓄積部150へ分析結果を格納した後に、通信機能ソフトウェア格納部110へ分析終了通知を送信する(ステップS8)。分析終了通知を受信した通信機能ソフトウェア格納部110は、運用者10へ通信機能ソフトウェア利用可能通知を送信する(ステップS9)。
【0071】
<通信機能構築の要求から構築完了通知まで>
図8を参照して、通信機能ソフトウェアの格納から通信機能ソフトウェア利用可能通知までにおいて、仮想化インフラストラクチャシステムが行なう処理の手順について説明する。
【0072】
図8に示すように、まず、運用者10が、割当制御部160に対して、通信機能の構築を要求する(ステップT1)。通信機能の構築の要求を受けた割当制御部160は、分析結果蓄積部150に対して、構築を要求された通信機能ソフトウェア111の分析結果を要求する。割当制御部160は、分析結果蓄積部150から通信機能ソフトウェア111の分析結果を受信することで、通信機能ソフトウェア111の演算特性を確認する(ステップT2)。演算特性を確認した割当制御部160は、モジュールごとに通信機能ソフトウェア111を割り当てる計算デバイス1を定める。
【0073】
次に、割当制御部160は、残リソース管理部170に各商用サーバ230における計算機リソースの余剰を示すデータを要求する。割当制御部160は、残リソース管理部170から各商用サーバ230における計算機リソースの余剰を示すデータを受信し、定めた通りに各モジュールを計算デバイス1に割り当て可能であるか、を確認する(ステップT3)。確認した結果、割り当て通りに展開可能な商用サーバ230が見つかった場合、通信機能ソフトウェア111を展開する商用サーバ230が決定する。
【0074】
このとき、既に通信機能ソフトウェア111を実行中の商用サーバ230を優先して、通信機能ソフトウェア111を展開する商用サーバ230を決定することによって、通信機能ソフトウェア111を実行する商用サーバ230の数を抑えられる。
【0075】
次に、割当制御部160は、割り当てが可能な商用サーバ230に対し、通信機能ソフトウェア111を展開するように、通信機能展開部180に要求する(ステップT4)。要求を受けた通信機能展開部180は、各モジュールが割り当てられた計算デバイス1で展開するように、通信機能ソフトウェア111を商用サーバ230に展開する(ステップT5)。
【0076】
展開を終えた通信機能展開部180は、展開完了通知を割当制御部160に送信する(ステップT6)。展開完了通知を受信した割当制御部160は、入出力インタフェースを介して、運用者10へ構築完了通知を送信する(ステップT7)。
【0077】
<通信機能構築の要求からリソース不足の通知まで>
次に、
図9を参照して、ステップT3にて、各商用サーバ230における計算機リソースの余剰を確認した結果、計算機リソースが不足していた場合の処理手順について説明する。なお、ステップT1~T3までは同様の処理となるため、説明を省略する。
【0078】
割当制御部160は、各商用サーバ230の計算機リソースの余剰を確認した結果、各商用サーバ230におけるリソースの余剰が不十分であり、定めた通りに各モジュールを計算デバイス1に割り当てができない場合、計算機リソースの不足により通信機能ソフトウェア111を展開ができない旨を運用者10へ通知する(ステップT8)。このとき、割当制御部160は、現在の計算機リソースの余剰によって、通信機能ソフトウェア111の展開条件を満たすように展開可能か否かという情報を含めて通知してもよい。
【0079】
現在の計算機リソースの余剰によって、通信機能ソフトウェア111の展開条件を満たすように展開可能である場合、運用者10は、再度割り当てることができる。このとき、運用者10は、例えば、各商用サーバ230における計算機リソースの余剰に基づいて、割り当て可能な計算デバイス1の組み合わせを算出した後に、割り当て可能な計算デバイス1のなかから、通信機能ソフトウェア111の展開条件を満たすうえで、消費電力量が小さくなるように、各モジュールを割り当てる計算デバイス1を定めるように、割当制御部160に再度割り当てを指示することができる。
【0080】
現在の計算機リソースの余剰によって、通信機能ソフトウェア111の展開条件を満たすように展開できない場合、運用者10は、通信機能ソフトウェア111の展開条件を満たさなくてよいので、通信機能ソフトウェア111を展開するよう指示したり、通信機能ソフトウェア111の展開のキャンセルを指示したりする。
【0081】
このように、本発明の仮想化インフラストラクチャシステム、仮想化インフラストラクチャシステムの制御プログラム、および、仮想化インフラストラクチャシステムの制御方法は、サービスレベルの保持、計算機リソースおよび消費電力を考慮して、最適な計算デバイスを割り当てることができる。
【符号の説明】
【0082】
1 計算デバイス
5 CPU
6 GPU
7 FPGA
8 NIC
9 メモリ
10 運用者
100 仮想化インフラストラクチャシステム
110 通信機能ソフトウェア格納部
111 通信機能ソフトウェア
120 通信機能ソフトウェア分析部
130 試験用サーバ
140 サーバ性能監視部
150 分析結果蓄積部
160 割当制御部
170 残リソース管理部
180 通信機能展開部
200 計算機リソースプール
230 商用サーバ