(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-18
(45)【発行日】2024-11-26
(54)【発明の名称】エネルギー変換装置
(51)【国際特許分類】
H02K 7/08 20060101AFI20241119BHJP
H02K 21/24 20060101ALI20241119BHJP
【FI】
H02K7/08 A
H02K21/24 M
(21)【出願番号】P 2021204746
(22)【出願日】2021-12-17
【審査請求日】2024-01-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】306020818
【氏名又は名称】トヨタテクニカルディベロップメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002516
【氏名又は名称】弁理士法人白坂
(72)【発明者】
【氏名】毛木 飛鳥
(72)【発明者】
【氏名】森永 洋史
(72)【発明者】
【氏名】大神 憲一郎
(72)【発明者】
【氏名】榎本 勇介
(72)【発明者】
【氏名】法輪 洋
(72)【発明者】
【氏名】横山 翔大
(72)【発明者】
【氏名】竹端 純一
(72)【発明者】
【氏名】田中 真司
【審査官】三澤 哲也
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-156666(JP,A)
【文献】特開2008-014400(JP,A)
【文献】特開平05-292700(JP,A)
【文献】特開平10-281900(JP,A)
【文献】国際公開第2017/203354(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 7/08
H02K 21/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
永久磁石を備え、回転軸を回転中心として回転する回転子と、
前記永久磁石に空隙を介して対向配置されたコイルを備える固定子と、
前記回転子に固定され、前記回転軸の軸方向に対して直角に設けられた軸受用ガイド面部と、
前記回転軸を回転自在に支持するジャーナル静圧軸受部と、
前記回転軸の先端部をスラスト方向に支持し、前記回転子の軸方向の第一方向への移動を規制する第1スラスト静圧軸受部と、
前記軸受用ガイド面部に対して前記回転軸を中心とする同一円周上に均等配置され、前記軸受用ガイド面部をスラスト方向に支持し、前記回転子の軸方向の前記第一方向と逆側の第二方向への移動を規制する複数の第2スラスト静圧軸受部と、
前記回転軸を静止するエアクランプと、
を備えるエネルギー変換装置。
【請求項2】
前記第1スラスト静圧軸受部と前記第2スラスト静圧軸受部とは、共通の圧力源を備えることを特徴とする請求項1に記載のエネルギー変換装置。
【請求項3】
前記第1スラスト静圧軸受部と前記第2スラスト静圧軸受部とに供給する流体は気体であることを特徴とする請求項1又は2に記載のエネルギー変換装置。
【請求項4】
前記第1スラスト静圧軸受部と前記第2スラスト静圧軸受部とは、前記軸受用ガイド面部に対向する軸受面に通気性を有する多孔質材料を用いることを特徴とする請求項3に記載のエネルギー変換装置。
【請求項5】
前記ジャーナル静圧軸受部に供給する流体は気体であることを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載のエネルギー変換装置。
【請求項6】
前記ジャーナル静圧軸受部、前記第1スラスト静圧軸受部、及び前記第2スラスト静圧軸受部は、同一の圧力源を持つことを特徴とする請求項5に記載のエネルギー変換装置。
【請求項7】
前記エネルギー変換装置は非接触式トルクメータを備えることを特徴とする請求項1乃至
6の何れか1項に記載のエネルギー変換装置。
【請求項8】
前記エネルギー変換装置はモータであることを特徴とする請求項1乃至
7の何れか1項に記載のエネルギー変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気エネルギーと機械エネルギーとの間の変換を行うことができるエネルギー変換装置に関し、特に永久磁石を利用して当該変換を行うエネルギー変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、エネルギー変換装置として電気エネルギーを機械エネルギーに変換する場合にはモータが用いられる。一方で、機械エネルギーを電気エネルギーに変換する場合には発電機が用いられる。
【0003】
これらモータ及び発電機の回転軸は、ボールベアリングによって支持されてきた(特許文献1参照)。ボールベアリングは、回転軸を回転可能に支持するとともに、回転軸の軸方向への移動を規制することができた。
【0004】
しかし、ボールベアリングは、回転軸に接触して支持するため、外部からの振動がボールベアリングを介して回転軸に伝達され、回転軸の挙動にノイズとして重畳するおそれがあった。
【0005】
また、ボールベアリングと回転軸との間には転がり摩擦が生じる。この転がり摩擦は、回転軸を駆動するうえでエネルギー損失となり、回転軸のリニアな制御を阻害するおそれがあった。
【0006】
さらに、転がり摩擦は、回転軸の起動トルクの要因となり、この起動トルクを越えない回転軸の微小な挙動は、起動トルクに埋没されて回転軸に生じているはずの挙動が観察できないというおそれがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本開示は、回転軸に生じる外部から侵入するノイズの重畳と、回転軸の起動トルクの発生とを抑制することができるエネルギー変換装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
すなわち、第1の態様に係るエネルギー変換装置は、永久磁石を備え、回転軸を回転中心として回転する回転子と、永久磁石に空隙を介して対向配置されたコイルを備える固定子と、回転子に固定され、回転軸の軸方向に対して直角に設けられた軸受用ガイド面部と、回転軸を回転自在に支持するジャーナル静圧軸受部と、回転軸の先端部をスラスト方向に支持し、回転子の軸方向の第一方向への移動を規制する第1スラスト静圧軸受部と、軸受用ガイド面部に対して回転軸を中心とする同一円周上に均等配置され、軸受用ガイド面部をスラスト方向に支持し、回転子の軸方向の第一方向と逆側の第二方向への移動を規制する複数の第2スラスト静圧軸受部と、を備える。
【0010】
第2の態様は、第1の態様に係るエネルギー変換装置において、第1スラスト静圧軸受部と第2スラスト静圧軸受部とは、共通の圧力源を備えることとしてもよい。
【0011】
第3の態様は、第1または第2の態様に係るエネルギー変換装置において、第1スラスト静圧軸受部と第2スラスト静圧軸受部とに供給する流体は気体であることとしてもよい。
【0012】
第4の態様は、第3の態様に係るエネルギー変換装置において、第1スラスト静圧軸受部と第2スラスト静圧軸受部とは、軸受用ガイド面部に対向する軸受面に通気性を有する多孔質材料を用いることとしてもよい。
【0013】
第5の態様は、第1乃至第4の態様の何れか1の態様に係るエネルギー変換装置において、ジャーナル静圧軸受部に供給する流体は気体であることとしてもよい。
【0014】
第6の態様は、第5の態様に係るエネルギー変換装置において、ジャーナル静圧軸受部、第1スラスト静圧軸受部、及び第2スラスト静圧軸受部は、同一の圧力源を持つこととしてもよい。
【0015】
第7の態様は、第1乃至第6の何れか1の態様に係るエネルギー変換装置において、回転軸を静止するエアクランプを備えることとしてもよい。
【0016】
第8の態様は、第1乃至第7の何れか1の態様に係るエネルギー変換装置において、エネルギー変換装置は非接触式トルクメータを備えることとしてもよい。
【0017】
第9の態様は、第1乃至第8の何れか1の態様に係るエネルギー変換装置において、エネルギー変換装置はモータであることとしてもよい。
【発明の効果】
【0018】
本開示に係るエネルギー変換装置は、永久磁石を備え、回転軸を回転中心として回転する回転子と、永久磁石に空隙を介して対向配置されたコイルを備える固定子と、回転子に固定され、回転軸の軸方向に対して直角に設けられた軸受用ガイド面部と、回転軸を回転自在に支持するジャーナル静圧軸受部と、回転軸の先端部をスラスト方向に支持し、回転子の軸方向の第一方向への移動を規制する第1スラスト静圧軸受部と、軸受用ガイド面部に対して回転軸を中心とする同一円周上に均等配置され、軸受用ガイド面部をスラスト方向に支持し、回転子の軸方向の第一方向と逆側の第二方向への移動を規制する複数の第2スラスト静圧軸受部と、を備えるので、回転軸に生じる外部から侵入するノイズの重畳と、回転軸の起動トルクの発生とを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】第1実施形態のエネルギー変換装置の外観斜視図である。
【
図2】第1実施形態のエネルギー変換装置の上方から見た断面図である。
【
図3】第1実施形態のエネルギー変換装置の回転子の斜視図である。
【
図4】第1実施形態のエネルギー変換装置の回転子の斜視図である。
【
図5】第1実施形態のエネルギー変換装置の第2スラスト静圧軸受部の配置を説明する模式図である。
【
図6】第1実施形態のエネルギー変換装置の第1スラスト静圧軸受部及び第2スラスト静圧軸受部の構成を説明するための模式図である。
【
図7】第1実施形態のエネルギー変換装置と従来のサーボモータとのトルク-角度のリサージュ波形を比較した図である。
【
図8】第1実施形態のエネルギー変換装置と従来のサーボモータとの入力波形とその応答波形とを比較した図である。
【
図9】第2実施形態のエネルギー変換装置の第2スラスト静圧軸受部の配置を説明する模式図である。
【
図10】第3実施形態のエネルギー変換装置の第2スラスト静圧軸受部の配置を説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(エネルギー変換装置の概要)
図1乃至
図8を参照して第1実施形態のエネルギー変換装置10について説明する。
【0021】
図1乃至
図4を参照して、エネルギー変換装置10の構成について説明する。
図1はエネルギー変換装置10の外観斜視図であり、
図2はエネルギー変換装置10の上方から見た断面図である。
図3及び
図4はエネルギー変換装置10の回転子12の斜視図である。
【0022】
なお、以下の説明の中で、軸方向とは回転軸13に沿った方向を指し、周方向とは回転子12の回転方向に沿った方向を指し、径方向とは回転子12の回転軸13を中心としたときの半径方向を指す。内周方向とは径方向内側を指し、外周方向とは径方向外側を指す。
【0023】
エネルギー変換装置10は、動力を発生するアクチュエータとして用いることができ、又は、運動エネルギーを電気エネルギーに変換するセンサ、若しくは発電機として用いることができる。
【0024】
エネルギー変換装置10は、回転軸13と、永久磁石16を備える回転子12、コイル17を備える固定子11とを備える。回転子12は、回転軸13を回転中心として回転する。エネルギー変換装置10をセンサ若しくは発電機として用いる場合、回転子12に加えられた運動エネルギーは、電気エネルギーに変換されてコイル17から取り出される。エネルギー変換装置10をモータとして用いる場合、コイル17に加えられた電気エネルギーは、運動エネルギーに変換されて回転軸13から取り出される。
【0025】
(エネルギー変換装置の全体構成)
(第1ハウジング)
固定子11は、定盤18の上に組み立てられる。固定子11を構成する第1ハウジング14及び第2ハウジング15は、定盤18の上に固定される。第1ハウジング14は、円柱状の外形を有し、第1ジャーナル静圧軸受部21とコイル17とを内部に備える。第1ハウジング14は、永久磁石16及び第2軸受用ガイド面部23を回転する状態を保持したまま内部に収容する。
【0026】
第1ハウジング14は、
図2左側の底面と対向する位置に第1スラスト静圧軸受部24を備え、
図2右側の底面と対向する位置に第2スラスト静圧軸受部25を複数個備える。第1実施形態に係るエネルギー変換装置10は2個の第2スラスト静圧軸受部25を備える。
【0027】
第1スラスト静圧軸受部24は、第1ハウジング14の底面から延設された第1L字ブラケット14aに固定される。第1スラスト静圧軸受部24は、円盤形状を有し、その中心部が回転軸13の中心部と一致するように位置決めされる。第1スラスト静圧軸受部24は、ガイド面22aの中心に配置されるので、第1軸受用ガイド面部22の中心を回転軸13に平行な力でもって付勢することができ回転子12の回転中心がずれるのを抑制することが出来る。
【0028】
第2スラスト静圧軸受部25は、第1ハウジング14の側面から延設された第2L字ブラケット14bに固定される。
図5に示す様に、2つの第2スラスト静圧軸受部25は円盤形状を有し、その中心部は、それぞれ第2軸受用ガイド面部23のガイド面23aにおいて、同一円周上に均等配置される。すなわち、ガイド面23aの中心と2つの第2スラスト静圧軸受部25の中心とのなす角は180度である。
図5は、第1実施形態のエネルギー変換装置10の第2スラスト静圧軸受部25の配置を説明する模式図である。
【0029】
2つの第2スラスト静圧軸受部25は、ガイド面23aの中心に対して対称に配置されるので、第2軸受用ガイド面部23の中心を回転軸13に平行な力でもって付勢することができ回転子12の回転中心がずれるのを抑制することが出来る。
【0030】
回転子12は、第1スラスト静圧軸受部24によって回転軸13の軸方向の
図2右方向に付勢され、第2スラスト静圧軸受部25によって回転軸13の軸方向の
図2左方向に付勢される。回転子12は、回転軸13の軸方向において、第1スラスト静圧軸受部24の付勢力と第2スラスト静圧軸受部25の付勢力とが釣り合う位置に静止し、当該位置に居続けるように第1スラスト静圧軸受部24の付勢力と第2スラスト静圧軸受部25の付勢力とに挟持され規制される。
【0031】
第1スラスト静圧軸受部24及び第2スラスト静圧軸受部25は、第1軸受用ガイド面部22及び第2軸受用ガイド面部23に対向する軸受面24c、25cに通気性を有する多孔質材料部24b、25bを備える。多孔質材料部24b、25bは、例えば、銅、鉄などの焼結金属、若しくは多孔性セラミックス材が用いられる。
【0032】
図6を参照して、第1スラスト静圧軸受部24及び第2スラスト静圧軸受部25の構成について説明する。
図6は、第1実施形態のエネルギー変換装置10の第1スラスト静圧軸受部24及び第2スラスト静圧軸受部25の構成を説明するための模式図である。
【0033】
第1スラスト静圧軸受部24と第2スラスト静圧軸受部25とはその構成を共通にするので、代表して第1スラスト静圧軸受部24について説明をする。第2スラスト静圧軸受部25については、第1スラスト静圧軸受部24の構成部位に対応する符号を付してその説明を省略する。第2スラスト静圧軸受部25のテーブル部25a、多孔質材料部25b、軸受面25c、及び給気口25dは、第1スラスト静圧軸受部24のテーブル部24a、多孔質材料部24b、軸受面24c、及び給気口24dに対応する。
【0034】
第1スラスト静圧軸受部24は、テーブル部24a及び多孔質材料部24bを備える。テーブル部24aと多孔質材料部24bとは固着されている。テーブル部24aはステンレスなどの金属でできている。テーブル部24aは中央部を貫通する給気口24dが設けられている。第1スラスト静圧軸受部24は、外部の図示しないコンプレッサにより潤滑流体が給気口24dを介して供給される。第1スラスト静圧軸受部24の軸受面24cと第1軸受用ガイド面部22のガイド面22aとの間には、潤滑流体による加圧空気層が形成されて軸受すきまhが生じる。
【0035】
第1スラスト静圧軸受部24及び第2スラスト静圧軸受部25は、軸受面24c、25cに多孔質材料部24b、25bを備えるので、軸受面24c、25c全面から加圧空気が出て、圧力分布の均一な加圧空気層を軸受面24c、25cの全面に作り出すことができる。従って、ガイド面22a、23a及び軸受面24c、25cに傷、凹み、穴などがある場合、ガイド面22a、23aに傾きが有る場合、若しくは軸受面24c、25cの一部がガイド面22a、23aから外れる場合でも、当該加圧空気層が喪失することが無いので、軸受すきまhを保持することができる。
【0036】
第1スラスト静圧軸受部24及び第2スラスト静圧軸受部25は、潤滑流体として気体(空気)を用いる。第1スラスト静圧軸受部24と第2スラスト静圧軸受部25とは、共に共通する1つの図示しないコンプレッサによって潤滑流体となる気体(空気)が供給される。コンプレッサから供給される気体(空気)は、当該コンプレッサから間欠的に吐出されるため周期的な流量変動を伴い、この流量変動による圧力脈動を伴う。
【0037】
第1スラスト静圧軸受部24と第2スラスト静圧軸受部25とは共通する1つのコンプレッサから潤滑流体の供給を受けるため、第1スラスト静圧軸受部24と第2スラスト静圧軸受部25とにおける圧力脈動の周期は同じである。第1スラスト静圧軸受部24と第2スラスト静圧軸受部25とは、回転子12を互いに反対方向に付勢するため、第1スラスト静圧軸受部24と第2スラスト静圧軸受部25との圧力脈動は回転子12において相殺される。従って、回転子12は、第1スラスト静圧軸受部24と第2スラスト静圧軸受部25との圧力脈動に起因する外乱を受けることを抑制することができる。
【0038】
なお、第1スラスト静圧軸受部24と第2スラスト静圧軸受部25とに供給される気体(空気)の圧力は軸受用圧力計32に表示される。軸受用圧力計32は、エアクランプ用圧力計31とともに、第1ハウジング14の底面から延設された第3L字ブラケット14cに固定される。
【0039】
(非接触式トルクメータ)
第2ハウジング15は、第2ジャーナル静圧軸受部21を内部に備える。定盤18の上であって第1ハウジング14と第2ハウジング15との間に、台座19が固定される。
【0040】
台座19の上に非接触式トルクメータ27が固定される。非接触式トルクメータ27のロータアンテナ27aは、回転軸13に取り付けられて回転軸13とともに回転する。非接触式トルクメータ27に設けられた図示しないステータアンテナとロータアンテナ27aとの間で信号の送受信を行い回転軸13が発生するトルクを非接触で測定する。非接触式トルクメータ27は、トルクを計測する際に接触の影響を受けないので微小トルクを測定するときに適している。
【0041】
(ジャーナル静圧軸受部)
回転軸13は、第1ジャーナル静圧軸受部20及び第2ジャーナル静圧軸受部21によって回転可能に支持される。第1ジャーナル静圧軸受部20及び第2ジャーナル静圧軸受部21は、回転軸13と軸受面との間に生じる軸受すきまに予め加圧された流体を送り込み流体膜を生じさせて、この加圧された流体膜によって回転軸13を支持するものである。回転軸13と、第1ジャーナル静圧軸受部20及び第2ジャーナル静圧軸受部21との間は非接触となるため転がり摩擦は生じず、回転軸13は潤滑流体との間に極めて小さい摩擦を伴いながら回転する。
【0042】
第1ジャーナル静圧軸受部20及び第2ジャーナル静圧軸受部21に用いられる潤滑流体は、液体又は気体(空気)のいずれでもよい。第1実施形態に係るエネルギー変換装置10では、第1ジャーナル静圧軸受部20及び第2ジャーナル静圧軸受部21に用いられる潤滑流体に気体(空気)を用いた。
【0043】
回転軸13をより低摩擦で駆動したい場合は、液体よりも気体(空気)による潤滑流体を用いるほうが望ましい。一方で、気体(空気)の圧縮性のため第1ジャーナル静圧軸受部20及び第2ジャーナル静圧軸受部21の負荷容量及び剛性は低くなるため、第1ジャーナル静圧軸受部20及び第2ジャーナル静圧軸受部21に大きな負荷が作用するような場合は、液体による潤滑流体を用いることが望ましい。
【0044】
第1ジャーナル静圧軸受部20及び第2ジャーナル静圧軸受部21は、第1スラスト静圧軸受部24及び第2スラスト静圧軸受部25に用いられる外部の図示しないコンプレッサにより潤滑流体となる気体(空気)が供給される。このようにすることで、一台のコンプレッサにより、第1ジャーナル静圧軸受部20、第2ジャーナル静圧軸受部21、第1スラスト静圧軸受部24、及び第2スラスト静圧軸受部25に潤滑流体となる気体(空気)を供給することができる。
【0045】
(永久磁石)
回転軸13の外周には円環形状の永久磁石16が備えられる。永久磁石16においてN極片16aとS極片16bとが、交互に隣接して周方向に沿って並ぶ。永久磁石16は回転軸13とともに回転する。永久磁石16は、固定子11に固定されたコイル17に対して対向配置される。エネルギー変換装置10をモータとして用いる場合、永久磁石16の磁場の影響を受けてコイル17に流れる電流に対してローレンツ力が作用する。エネルギー変換装置10をセンサ若しくは発電機として用いる場合、永久磁石16の磁場の影響を受けてコイル17に誘導起電力が生じる。
【0046】
(第1軸受用ガイド面部)
第1軸受用ガイド面部22は、平面形状のガイド面22aを備え、回転軸13の先端部に固定されて回転軸13とともに回転する。第1軸受用ガイド面部22は、第1スラスト静圧軸受部24の軸受面24cを受けるガイド面22aを、回転軸13の軸方向の外側(
図2の左方向)に向けて回転軸13に対して垂直になるように備える。
【0047】
(第2軸受用ガイド面部)
第2軸受用ガイド面部23は、平面形状のガイド面23aを備え、回転軸13の外周に備えられ回転軸13とともに回転する。ガイド面23aは、その中心部に回転軸13が貫通する円形の穴23bが設けられている。第2軸受用ガイド面部23は、第2スラスト静圧軸受部25の軸受面25cを受けるガイド面23aを、回転軸13の軸方向の外側(
図2の右方向)に向けて回転軸13に対して垂直になるように備える。
【0048】
回転軸13の先端部には、エアクランプ26及び非接触式エンコーダ30を備える。エアクランプ26は、空気圧を用いて回転軸13の回転を減速、あるいは停止する装置である。エアクランプ26に供給された空気の圧力は、エアクランプ用圧力計31に表示される。非接触式エンコーダ30は、回転軸13の回転速度、回転加速度、回転位置、及び回転変位などを測定する。
【0049】
次に
図7及び
図8を参照して、第1実施形態に係るエネルギー変換装置10と従来のボールベアリングを用いたサーボモータとの特性について比較をする。
図7は第1実施形態のエネルギー変換装置10と従来のサーボモータとのトルク-角度のリサージュ波形を比較した図であり、
図8は第1実施形態のエネルギー変換装置10と従来のサーボモータとの入力波形とその応答波形とを比較した図である。
【0050】
図7は、横軸を角度(deg)とし縦軸をトルク(N・m)としたリサージュ波形である。ボールベアリングを用いたい従来のサーボモータのリサージュ波形はヒステリシス曲線を示す。ヒステリシス曲線によって囲まれる範囲の面積は摩擦によるエネルギー損失の大きさを示している。このエネルギー損失は、ボールベアリングの転がり摩擦によるところが大きく、転がり出しに必要なトルクは起動トルクとなって現れる。
【0051】
第1実施形態のエネルギー変換装置10のリサージュ波形は細長い楕円形を示す。この楕円形の面積が、エネルギー変換装置10のエネルギー損失を示す。従来のサーボモータとエネルギー変換装置10とのエネルギー損失を比較すると、エネルギー変換装置10のエネルギー損失のほうが少ないことが分かる。これは、エネルギー変換装置10の回転軸13は、第1ジャーナル静圧軸受部20、第2ジャーナル静圧軸受部21、第1スラスト静圧軸受部24、及び第2スラスト静圧軸受部25によって非接触で支持されているからである。
【0052】
エネルギー変換装置10のリサージュ波形は細長い楕円形を描くことから、エネルギー変換装置10のエネルギー損失はゼロではない。これは、回転軸13と、軸受に用いられる潤滑流体との間の摩擦、及びコイル17に電力を供給する際の損失が起因している。当該損失とは、コイル17に電流を流す際のジュール熱損、及び渦電流損などのことである。
【0053】
エネルギー変換装置10は、従来のサーボモータに生じる転がり摩擦は生じ無いので起動トルクは極めて小さいものとなり、従来のサーボモータでは起動トルクによって埋もれていた微小な挙動を顕在化することができた(
図7参照)。
【0054】
図8を参照して、第1実施形態に係るエネルギー変換装置10と従来のボールベアリングを用いたサーボモータとの入力波形とその応答波形について比較をする。
【0055】
図8の上段は入力波形であり、下段はその応答波形である。エネルギー変換装置10と従来のサーボモータとの入力には同じ正弦波信号を入力する(
図8上段参照)。
図8の下段に示す応答波形は、回転軸13の接線加速度とトルクとを示す。従来のサーボモータの応答波形には、ノイズが重畳している。一方で、エネルギー変換装置10の応答波形は、ノイズの重畳が抑制されている。これは、エネルギー変換装置10の回転軸13が、第1ジャーナル静圧軸受部20、第2ジャーナル静圧軸受部21、第1スラスト静圧軸受部24、及び第2スラスト静圧軸受部25によって非接触で支持されているので、外部の振動などのノイズが伝達しないことによる。
【0056】
上記した第1実施形態によれば、エネルギー変換装置10は、回転軸13を加圧された流体膜によって支持するので、回転軸13を非接触のまま支持することができる。従って、外部の振動などのノイズが回転軸13に伝達するのを抑制することができる。さらに、回転軸13の回転に伴う転がり摩擦などの摩擦を抑制することができるので、起動トルク及びエネルギー損失を抑制することができる。
【0057】
また、上記した第1実施形態によれば、エネルギー変換装置10は、1つのコンプレッサにより、第1スラスト静圧軸受部24及び第2スラスト静圧軸受部25に潤滑流体となる気体(空気)を供給するので回転軸13における圧力脈動を抑制することができる。
【0058】
本開示は上記した第1実施形態に係るエネルギー変換装置10に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した本開示の要旨を逸脱しない限りにおいて、その他種々の変形例、若しくは応用例により実施可能である。
【0059】
第1実施形態に係るエネルギー変換装置10は、2個の第2スラスト静圧軸受部25を用いたが、これに限らず、3個以上の第2スラスト静圧軸受部25を用いることも出来る。
【0060】
図9及び
図10を参照して、3個の第2スラスト静圧軸受部25を用いた例を第2実施形態とし、4個の第2スラスト静圧軸受部25を用いたい例を第3実施形態として以下に説明する。
図9は第2実施形態のエネルギー変換装置10の第2スラスト静圧軸受部25の配置を説明する模式図であり、
図10は第3実施形態のエネルギー変換装置10の第2スラスト静圧軸受部25の配置を説明する模式図である。
【0061】
第2実施形態に係るエネルギー変換装置10は、
図9に示す様に、3つの第2スラスト静圧軸受部25の中心部が、それぞれ第2軸受用ガイド面部23のガイド面23aにおいて、同一円周上に均等配置される。すなわち、ガイド面23aの中心と3つの第2スラスト静圧軸受部25の中心とのなす角は120度である。
【0062】
第3実施形態に係るエネルギー変換装置10は、
図10に示す様に、4つの第2スラスト静圧軸受部25の中心部が、それぞれ第2軸受用ガイド面部23のガイド面23aにおいて、同一円周上に均等配置される。すなわち、ガイド面23aの中心と4つの第2スラスト静圧軸受部25の中心とのなす角は90度である。
【符号の説明】
【0063】
10 エネルギー変換装置
11 固定子
12 回転子
13 回転軸
14 第1ハウジング
14a 第1L字ブラケット
14b 第2L字ブラケット
14c 第3L字ブラケット
15 第2ハウジング
16 永久磁石
16a N極片
16b S極片
17 コイル
18 定盤
19 台座
20 第1ジャーナル静圧軸受部
21 第2ジャーナル静圧軸受部
22 第1軸受用ガイド面部
22a ガイド面
23 第2軸受用ガイド面部
23a ガイド面
23b 穴
24 第1スラスト静圧軸受部
24a テーブル部
24b 多孔質材料部
24c 軸受面
24d 給気口
25 第2スラスト静圧軸受部
25a テーブル部
25b 多孔質材料部
25c 軸受面
25d 給気口
h 軸受すきま
26 エアクランプ
27 非接触式トルクメータ
27a ロータアンテナ
30 非接触式エンコーダ
31 エアクランプ用圧力計
32 軸受用圧力計