(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-18
(45)【発行日】2024-11-26
(54)【発明の名称】オビヌツズマブ耐性CD20陽性癌の細胞の増殖を抑制する剤、ならびにそれに関連する医薬組成物、医薬、製造、細胞の増殖を抑制する方法、治療方法、II型抗CD20抗体、化合物、およびそれらの組み合わせ、増強剤および誘導剤
(51)【国際特許分類】
A61K 39/395 20060101AFI20241119BHJP
A61K 31/573 20060101ALI20241119BHJP
A61K 31/704 20060101ALI20241119BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20241119BHJP
C12N 15/13 20060101ALN20241119BHJP
C07K 16/28 20060101ALN20241119BHJP
【FI】
A61K39/395 T ZNA
A61K39/395 N
A61K31/573
A61K31/704
A61P35/00
C12N15/13
C07K16/28
(21)【出願番号】P 2021550624
(86)(22)【出願日】2020-09-18
(86)【国際出願番号】 JP2020035457
(87)【国際公開番号】W WO2021065568
(87)【国際公開日】2021-04-08
【審査請求日】2023-07-10
(31)【優先権主張番号】P 2019184149
(32)【優先日】2019-10-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 掲載アドレス:http://www.jshem.or.jp/81/index.html http://www.jshem.or.jp/81/download.html http://www.jshem.or.jp/81/member/all.pdf http://www.jshem.or.jp/81/member/14.pdf 掲載内容:第81回日本血液学会学術集会 抄録 第S277頁(PS1-15-7) ウェブサイトの掲載日:令和1年9月19日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 掲載アドレス:http://www.jshem.or.jp/81/index.html https://confit.atlas.jp/guide/event/jshem81/top https://confit.atlas.jp/guide/event/jshem81/session/PS1-15/category https://confit.atlas.jp/guide/print/jshem81/subject/PS1-15-7/detail 掲載内容:第81回日本血液学会学術集会 セッション情報 2019年10月11日(金)ポスター1-15 B細胞リンパ腫:基礎 17:40~18:15(PS1-15-7) ウェブサイトの掲載日:令和1年9月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003311
【氏名又は名称】中外製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】藤村 多嘉朗
(72)【発明者】
【氏名】加島 依子
(72)【発明者】
【氏名】岡 夏実
【審査官】中野 あい
(56)【参考文献】
【文献】特表2011-515428(JP,A)
【文献】国際公開第2019/017499(WO,A2)
【文献】FUJIMURA T.et al.,The effectiveness of obinutuzumab retreatment in obinutuzumab direct cell death resistant models,第81回日本血液学会学術集会 抄録,2019年09月,第S277頁(PS1-15-7) ,http://www.jshem.or.jp/81/index.html http://www.jshp://www.jshem.or.jp/81/member/all.pdf http://www.jshem.or.jp/81/member/14.
【文献】藤村多嘉朗 他,Obinutuzumab直接細胞死耐性株に対するobinutuzumab再投与の有用性の検討,第81回日本血液学会学術集会 セッション情報,2019年09月,2019年10月11日(金)ポスター1-,B細胞リンパ腫:基礎17:40~18:1,http://www.jshem.or.jp/81/index.html https://confit.atlas.jp/guide/event/jshem81/top https://confit.atlas.jp/guide/event/jshe
【文献】FUJIMURA T.et al.,The efficacy of obinutuzumab retreatment in obinutuzumab-induced direct cell death resistant CD20-po,Hemasphere,2020年06月,Vol.4 supp.1,pp.62 Abs No.EP1329
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 39/
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
オビヌツズマブを含有し、かつプレドニゾロン
およびドキソルビシン
ならびにそれらの塩およびプロドラッグからなる群から選択される少なくとも一化合物の投与を含む化学療法と併用される、オビヌツズマブ耐性CD20陽性癌の細胞の増殖を抑制するための剤。
【請求項2】
プレドニゾロン
およびドキソルビシン
ならびにそれらの塩およびプロドラッグからなる群から選択される少なくとも一化合物を含有し、かつ
オビヌツズマブによる治療と併用される、オビヌツズマブ耐性CD20陽性癌の細胞の増殖を抑制するための剤。
【請求項3】
前記CD20陽性癌がB細胞性非ホジキンリンパ腫である、請求項1または請求項2に記載の剤。
【請求項4】
前記オビヌツズマブ耐性CD20陽性癌が、オビヌツズマブ治療経験があるCD20陽性癌である、請求項1~
3のいずれか一項に記載の剤。
【請求項5】
前記オビヌツズマブ耐性CD20陽性癌が、オビヌツズマブを用いた導入療法後のオビヌツズマブ単独投与による維持療法の開始後に再発した癌である、請求項1~
4のいずれか一項に記載の剤。
【請求項6】
オビヌツズマブを含有し、かつプレドニゾロン
およびドキソルビシン
ならびにそれらの塩およびプロドラッグからなる群から選択される少なくとも一化合物の投与を含む化学療法と併用される、オビヌツズマブ耐性CD20陽性癌を治療するための医薬組成物。
【請求項7】
プレドニゾロン
およびドキソルビシン
ならびにそれらの塩およびプロドラッグからなる群から選択される少なくとも一化合物を含有し、かつ
オビヌツズマブによる治療と併用される、オビヌツズマブ耐性CD20陽性癌を治療するための医薬組成物。
【請求項8】
前記CD20陽性癌がB細胞性非ホジキンリンパ腫である、請求項
6または7に記載の医薬組成物。
【請求項9】
前記オビヌツズマブ耐性CD20陽性癌が、オビヌツズマブ治療経験があるCD20陽性癌である、請求項
6~8のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項10】
前記オビヌツズマブ耐性CD20陽性癌が、オビヌツズマブを用いた導入療法後のオビヌツズマブ単独投与による維持療法の開始後に再発した癌である、請求項
6~9のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オビヌツズマブ耐性CD20陽性癌の細胞の増殖を抑制する剤、ならびにそれに関連する医薬組成物、医薬、製造、細胞の増殖を抑制する方法、治療方法、II型抗CD20抗体、化合物、およびそれらの組み合わせ、増強剤および誘導剤に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、CD20陽性癌の治療において、増加した抗体依存性細胞障害活性(ADCC)を有するII型抗CD20抗体と、シクロホスファミド、ビンクリスチン及びドキソルビシンから成る群より選ばれる1以上の化学療法剤が併用されることが記載されている。
【0003】
【発明の概要】
【0004】
CD20陽性癌においては、オビヌツズマブに耐性を有する場合またはオビヌツズマブを含む治療を行った後に再発する場合がある。
本発明者らにより、オビヌツズマブに耐性を有するCD20陽性癌またはオビヌツズマブを含む治療を行った後に再発したCD20陽性癌に対して、II型抗CD20抗体、特にオビヌツズマブを用いた治療による効果を高める手段が検討された。
【0005】
本発明者らは、オビヌツズマブに耐性を有するCD20陽性癌またはオビヌツズマブを含む治療を行った後に再発したCD20陽性癌に対して、プレドニゾロン、ドキソルビシンおよびビンクリスチン、ならびにそれらの塩およびプロドラッグからなる群から選択される少なくとも一化合物を併用することにより、II型抗CD20抗体、特にオビヌツズマブを用いた治療による効果が高められることを見いだした。該化合物の中でも、プレドニゾロンおよびドキソルビシン、ならびにそれらの塩およびプロドラッグが選択され得る。さらに、該化合物の中でも、プレドニゾロンまたはそれらの塩若しくはプロドラッグが選択され得る。
これらの知見に基づき、以下の発明が提供される。
【0006】
[1]II型抗CD20抗体を含有し、かつプレドニゾロン、ドキソルビシンおよびビンクリスチンならびにそれらの塩およびプロドラッグからなる群から選択される少なくとも一化合物の投与を含む化学療法と併用される、オビヌツズマブ耐性CD20陽性癌の細胞の増殖を抑制するための剤。
[2]II型抗CD20抗体を含有する、プレドニゾロン、ドキソルビシンおよびビンクリスチンならびにそれらの塩およびプロドラッグからなる群から選択される少なくとも一化合物の投与を含む化学療法との併用によってオビヌツズマブ耐性CD20陽性癌の細胞の増殖を抑制するための剤。
[3]プレドニゾロン、ドキソルビシンおよびビンクリスチンならびにそれらの塩およびプロドラッグからなる群から選択される少なくとも一化合物を含有し、かつII型抗CD20抗体による治療と併用される、オビヌツズマブ耐性CD20陽性癌の細胞の増殖を抑制するための剤。
[4]プレドニゾロン、ドキソルビシンおよびビンクリスチンならびにそれらの塩およびプロドラッグからなる群から選択される少なくとも一化合物を含有する、II型抗CD20抗体による治療との併用によってオビヌツズマブ耐性CD20陽性癌の細胞の増殖を抑制するための剤。
[5]II型抗CD20抗体と、プレドニゾロン、ドキソルビシンおよびビンクリスチンならびにそれらの塩およびプロドラッグからなる群から選択される少なくとも一化合物とが組み合わされて、同時に、別々に、または連続して投与される、オビヌツズマブ耐性CD20陽性癌の細胞の増殖を抑制するための医薬。
[6]前記CD20陽性癌がB細胞性非ホジキンリンパ腫である、[1]~[4]のいずれかの剤。
[7]前記CD20陽性癌がB細胞性非ホジキンリンパ腫である、[5]の医薬。
[8]前記II型抗CD20抗体がオビヌツズマブである、[1]~[4]、および[6]のいずれかの剤。
[9]前記II型抗CD20抗体がオビヌツズマブである、[5]または[7]の医薬。
[10]前記一化合物が、プレドニゾロンおよびドキソルビシンならびにそれらの塩およびプロドラッグからなる群から選択される、[1]~[4]、[6]、および[8]のいずれかの剤。
[11]前記一化合物が、プレドニゾロンおよびドキソルビシンならびにそれらの塩およびプロドラッグからなる群から選択される、[5]、[7]、および[9]のいずれかの医薬。
[12]前記オビヌツズマブ耐性CD20陽性癌が、オビヌツズマブ治療経験があるCD20陽性癌である、[1]~[4]、[6]、[8]、および[10]のいずれかの剤。
[13]前記オビヌツズマブ耐性CD20陽性癌が、オビヌツズマブ治療経験があるCD20陽性癌である、[5]、[7]、[9]、および[11]のいずれかの医薬。
[14]前記オビヌツズマブ耐性CD20陽性癌が、オビヌツズマブを用いた導入療法後のオビヌツズマブ単独投与による維持療法の開始後に再発した癌である、[1]~[4]、[6]、[8]、[10]、および[12]のいずれかの剤。
[15]前記オビヌツズマブ耐性CD20陽性癌が、オビヌツズマブを用いた導入療法後のオビヌツズマブ単独投与による維持療法の開始後に再発した癌である、[5]、[7]、[9]、[11]、および[13]のいずれかの医薬。
【0007】
[16]II型抗CD20抗体を含有し、かつプレドニゾロン、ドキソルビシンおよびビンクリスチンならびにそれらの塩およびプロドラッグからなる群から選択される少なくとも一化合物の投与を含む化学療法と併用される、オビヌツズマブ耐性CD20陽性癌を治療するための医薬組成物。
[17]II型抗CD20抗体を含有する、プレドニゾロン、ドキソルビシンおよびビンクリスチンならびにそれらの塩およびプロドラッグからなる群から選択される少なくとも一化合物の投与を含む化学療法との併用によってオビヌツズマブ耐性CD20陽性癌を治療するための医薬組成物。
[18]プレドニゾロン、ドキソルビシンおよびビンクリスチンならびにそれらの塩およびプロドラッグからなる群から選択される少なくとも一化合物を含有し、かつII型抗CD20抗体による治療と併用される、オビヌツズマブ耐性CD20陽性癌を治療するための医薬組成物。
[19]プレドニゾロン、ドキソルビシンおよびビンクリスチンならびにそれらの塩およびプロドラッグからなる群から選択される少なくとも一化合物を含有する、II型抗CD20抗体による治療との併用によってオビヌツズマブ耐性CD20陽性癌を治療するための医薬組成物。
[20]II型抗CD20抗体と、プレドニゾロン、ドキソルビシンおよびビンクリスチンならびにそれらの塩およびプロドラッグからなる群から選択される少なくとも一化合物とが組み合わされて、同時に、別々に、または連続して投与される、オビヌツズマブ耐性CD20陽性癌を治療するための医薬組成物。
[21]前記CD20陽性癌がB細胞性非ホジキンリンパ腫である、[16]~[20]のいずれかの医薬組成物。
[22]前記II型抗CD20抗体がオビヌツズマブである、[16]~[21]のいずれかの医薬組成物。
[23]前記一化合物が、プレドニゾロンおよびドキソルビシンならびにそれらの塩およびプロドラッグからなる群から選択される、[16]~[22]のいずれかの医薬組成物。
[24]前記オビヌツズマブ耐性CD20陽性癌が、オビヌツズマブ治療経験があるCD20陽性癌である、[16]~[23]のいずれかの医薬組成物。
[25]前記オビヌツズマブ耐性CD20陽性癌が、オビヌツズマブを用いた導入療法後のオビヌツズマブ単独投与による維持療法の開始後に再発した癌である、[16]~[24]のいずれかの医薬組成物。
【0008】
[26]プレドニゾロン、ドキソルビシンおよびビンクリスチンならびにそれらの塩およびプロドラッグからなる群から選択される少なくとも一化合物の投与を含む化学療法との併用によりオビヌツズマブ耐性CD20陽性癌の細胞の増殖を抑制するための剤の製造における、II型抗CD20抗体の使用。
[27]II型抗CD20抗体による治療との併用によりオビヌツズマブ耐性CD20陽性癌の細胞の増殖を抑制するための剤の製造における、プレドニゾロン、ドキソルビシンおよびビンクリスチンならびにそれらの塩およびプロドラッグからなる群から選択される少なくとも一化合物の使用。
[28]プレドニゾロン、ドキソルビシンおよびビンクリスチンならびにそれらの塩およびプロドラッグからなる群から選択される少なくとも一化合物の投与を含む化学療法との併用によりオビヌツズマブ耐性CD20陽性癌を治療するための医薬組成物の製造における、II型抗CD20抗体の使用。
[29]II型抗CD20抗体による治療との併用によりオビヌツズマブ耐性CD20陽性癌を治療するための医薬組成物の製造における、プレドニゾロン、ドキソルビシンおよびビンクリスチンならびにそれらの塩およびプロドラッグからなる群から選択される少なくとも一化合物の使用。
[30]オビヌツズマブ耐性CD20陽性癌を治療するための医薬組成物の製造における、II型抗CD20抗体、およびプレドニゾロン、ドキソルビシンおよびビンクリスチンならびにそれらの塩およびプロドラッグからなる群から選択される少なくとも一化合物の使用。
[31]前記CD20陽性癌がB細胞性非ホジキンリンパ腫である、[26]~[30]のいずれかの使用。
[32]前記II型抗CD20抗体がオビヌツズマブである、[26]~[31]のいずれかの使用。
[33]前記一化合物が、プレドニゾロンおよびドキソルビシンならびにそれらの塩およびプロドラッグからなる群から選択される、[26]~[32]のいずれかの使用。
[34]前記オビヌツズマブ耐性CD20陽性癌が、オビヌツズマブ治療経験があるCD20陽性癌である、[26]~[33]のいずれかの使用。
[35]前記オビヌツズマブ耐性CD20陽性癌が、オビヌツズマブを用いた導入療法後のオビヌツズマブ単独投与による維持療法の開始後に再発した癌である、[26]~[34]のいずれかの使用。
[36]プレドニゾロン、ドキソルビシンおよびビンクリスチンならびにそれらの塩およびプロドラッグからなる群から選択される少なくとも一化合物の投与を含む化学療法との併用により、オビヌツズマブ耐性CD20陽性癌の細胞の増殖の抑制において使用するためのII型抗CD20抗体。
[37]II型抗CD20抗体による治療との併用により、オビヌツズマブ耐性CD20陽性癌の細胞の増殖の抑制において使用するための、プレドニゾロン、ドキソルビシンおよびビンクリスチンならびにそれらの塩およびプロドラッグからなる群から選択される少なくとも一化合物。
[38]オビヌツズマブ耐性CD20陽性癌の細胞の増殖の抑制において使用するための、II型抗CD20抗体、およびプレドニゾロン、ドキソルビシンおよびビンクリスチンならびにそれらの塩およびプロドラッグからなる群から選択される少なくとも一化合物の組み合わせ。
[39]プレドニゾロン、ドキソルビシンおよびビンクリスチンならびにそれらの塩およびプロドラッグからなる群から選択される少なくとも一化合物の投与を含む化学療法との併用により、オビヌツズマブ耐性CD20陽性癌の治療において使用するための、II型抗CD20抗体。
[40]II型抗CD20抗体による治療との併用によりオビヌツズマブ耐性CD20陽性癌の治療において使用するための、プレドニゾロン、ドキソルビシンおよびビンクリスチンならびにそれらの塩およびプロドラッグからなる群から選択される少なくとも一化合物。
[41]オビヌツズマブ耐性CD20陽性癌の治療において使用するための、II型抗CD20抗体、およびプレドニゾロン、ドキソルビシンおよびビンクリスチンならびにそれらの塩およびプロドラッグからなる群から選択される少なくとも一化合物の組み合わせ。
[42]前記CD20陽性癌がB細胞性非ホジキンリンパ腫である、[36]または[39]のII型抗CD20抗体。
[43]前記CD20陽性癌がB細胞性非ホジキンリンパ腫である、[37]または[40]の一化合物。
[44]前記CD20陽性癌がB細胞性非ホジキンリンパ腫である、[38]または[41]の組み合わせ。
[45]オビヌツズマブである、[36]、[39]、および[42]のいずれかのII型抗CD20抗体。
[46]前記II型抗CD20抗体がオビヌツズマブである、[37]、[40]、および[43]のいずれかの一化合物。
[47]前記II型抗CD20抗体がオビヌツズマブである、[38]、[41]、および[44]のいずれかの組み合わせ。
[48]前記一化合物が、プレドニゾロンおよびドキソルビシンならびにそれらの塩およびプロドラッグからなる群から選択される、[36]、[39]、[42]、および[45]のいずれかのII型抗CD20抗体。
[49]プレドニゾロンおよびドキソルビシンならびにそれらの塩およびプロドラッグからなる群から選択される、[37]、[40]、「43」、および[46]のいずれかの一化合物。
[50]前記一化合物が、プレドニゾロンおよびドキソルビシンならびにそれらの塩およびプロドラッグからなる群から選択される、[38]、[41]、[44]、および[47]のいずれかの組み合わせ。
[51]前記オビヌツズマブ耐性CD20陽性癌が、オビヌツズマブ治療経験があるCD20陽性癌である、[36]、[39]、[42]、[45]、および[48]のいずれかII型抗CD20抗体。
[52]前記オビヌツズマブ耐性CD20陽性癌が、オビヌツズマブ治療経験があるCD20陽性癌である、[37]、[40]、「43」、[46]、および[49]のいずれかの一化合物。
[53]前記オビヌツズマブ耐性CD20陽性癌が、オビヌツズマブ治療経験があるCD20陽性癌である、[38]、[41]、[44]、[47]、および[50]のいずれかの組み合わせ。
[54]前記オビヌツズマブ耐性CD20陽性癌が、オビヌツズマブを用いた導入療法後のオビヌツズマブ単独投与による維持療法の開始後に再発した癌である、[36]、[39]、[42]、[45]、[48]、および[51]のいずれかのII型抗CD20抗体。
[55]前記オビヌツズマブ耐性CD20陽性癌が、オビヌツズマブを用いた導入療法後のオビヌツズマブ単独投与による維持療法の開始後に再発した癌である[37]、[40]、「43」、[46]、[49]、および[52]のいずれかの一化合物。
【0009】
[56]オビヌツズマブ耐性CD20陽性癌の細胞に、
i) II型抗CD20抗体を投与すること、
ii) プレドニゾロン、ドキソルビシンおよびビンクリスチンならびにそれらの塩およびプロドラッグからなる群から選択される少なくとも一化合物を投与することを含む、オビヌツズマブ耐性CD20陽性癌の細胞の増殖を抑制する方法。
[57]前記CD20陽性癌がB細胞性非ホジキンリンパ腫である、[56]の方法。
[58]前記II型抗CD20抗体がオビヌツズマブである、[56]または[57]の方法。
[59]前記一化合物が、プレドニゾロンおよびドキソルビシンならびにそれらの塩およびプロドラッグからなる群から選択される、[56]~[58]のいずれかの方法。
[60]前記オビヌツズマブ耐性CD20陽性癌が、オビヌツズマブ治療経験があるCD20陽性癌である、[56]~[59]のいずれかの方法。
[61]前記オビヌツズマブ耐性CD20陽性癌が、オビヌツズマブを用いた導入療法後のオビヌツズマブ単独投与による維持療法の開始後に再発した癌である、[56]~[60]のいずれかの方法。
[62]in vitroおよびヒト以外におけるin vivoの方法である、[56]~[61]のいずれかの方法。
【0010】
[63]オビヌツズマブ耐性CD20陽性癌を有する生体に、
i) II型抗CD20抗体を投与すること、
ii) プレドニゾロン、ドキソルビシンおよびビンクリスチンならびにそれらの塩およびプロドラッグからなる群から選択される少なくとも一化合物を投与することを含む、オビヌツズマブ耐性CD20陽性癌の治療方法。
[64]前記CD20陽性癌がB細胞性非ホジキンリンパ腫である、[63]の治療方法。
[65]前記II型抗CD20抗体がオビヌツズマブである、[63]または[64]の治療方法。
[66]前記一化合物が、プレドニゾロンおよびドキソルビシンならびにそれらの塩およびプロドラッグからなる群から選択される、[63]~[65]のいずれかの治療方法。
[67]前記オビヌツズマブ耐性CD20陽性癌が、オビヌツズマブ治療経験があるCD20陽性癌である、[63]~[66]のいずれかの治療方法。
[68]前記オビヌツズマブ耐性CD20陽性癌が、オビヌツズマブを用いた導入療法後のオビヌツズマブ単独投与による維持療法の開始後に再発した癌である、[63]~[67]のいずれかの治療方法。
【0011】
[69]プレドニゾロンまたはそれらの塩もしくはプロドラッグを含有する、II型抗CD20抗体によるオビヌツズマブ耐性CD20陽性癌の細胞の細胞周期停止または細胞死の増強剤。
[70]プレドニゾロンまたはそれらの塩もしくはプロドラッグを含有し、II型抗CD20抗体との併用により投与され、前記併用によってオビヌツズマブ耐性CD20陽性癌の細胞に対する細胞周期停止または細胞死を増強するための、増強剤。
[71]プレドニゾロンまたはそれらの塩もしくはプロドラッグを含有し、かつII型抗CD20抗体と併用される、オビヌツズマブ耐性CD20陽性癌の細胞に対する細胞周期停止または細胞死の誘導を増強するための、増強剤。
[72]II型抗CD20抗体を含有し、プレドニゾロンまたはそれらの塩もしくはプロドラッグの投与を含む化学療法との併用により投与され、前記併用によってオビヌツズマブ耐性CD20陽性癌の細胞に対する細胞周期停止または細胞死の誘導を増強するための、オビヌツズマブ耐性CD20陽性癌の細胞の細胞周期停止または細胞死の誘導剤。
[73]II型抗CD20抗体を含有し、プレドニゾロンまたはそれらの塩もしくはプロドラッグの投与を含む化学療法と併用される、オビヌツズマブ耐性CD20陽性癌の細胞に対する細胞周期停止または細胞死の誘導を増強するための、誘導剤。
[74]II型抗CD20抗体と、プレドニゾロンまたはそれらの塩もしくはプロドラッグとが組み合わされて、同時に、別々に、または連続して投与される、オビヌツズマブ耐性CD20陽性癌の細胞に対する細胞周期停止または細胞死の誘導を増強するための薬剤。
[75]前記プロドラッグがプレドニゾンであり、前記II型抗CD20抗体および前記プレドニゾンが、生体に投与される、[69]~[74]のいずれかの剤。
[76]前記細胞周期停止がG0/G1期における停止である、[69]~[75]のいずれかの剤。
[77]前記CD20陽性癌がB細胞性非ホジキンリンパ腫である、[69]~[76]のいずれかの剤。
[78]前記II型抗CD20抗体がオビヌツズマブである、[69]~[77]のいずれかの剤。
[79]前記オビヌツズマブ耐性CD20陽性癌が、オビヌツズマブ治療経験があるCD20陽性癌である、[69]~[78]のいずれかの剤。
[80]前記オビヌツズマブ耐性CD20陽性癌が、オビヌツズマブを用いた導入療法後のオビヌツズマブ単独投与による維持療法の開始後に再発した癌である、[69]~[79]のいずれかの剤。
【0012】
[81]II型抗CD20抗体によるオビヌツズマブ耐性CD20陽性癌の細胞の細胞周期停止または細胞死の増強剤の製造における、プレドニゾロンまたはそれらの塩もしくはプロドラッグの使用。
[82]プレドニゾロンまたはそれらの塩もしくはプロドラッグの投与を含む化学療法との併用により投与され、前記併用によってオビヌツズマブ耐性CD20陽性癌の細胞に対する細胞周期停止または細胞死の誘導を増強するための、オビヌツズマブ耐性CD20陽性癌の細胞の細胞周期停止または細胞死の誘導剤の製造における、II型抗CD20抗体の使用。
[83]オビヌツズマブ耐性CD20陽性癌の細胞の細胞周期停止または細胞死の誘導を増強するための薬剤の製造における、II型抗CD20抗体、およびプレドニゾロンまたはそれらの塩もしくはプロドラッグの使用。
[84]前記プロドラッグがプレドニゾンであり、前記II型抗CD20抗体および前記プレドニゾンは生体に投与される、[81]~[83]のいずれかの使用。
[85]前記細胞周期停止がG0/G1期における停止である、[81]~[84]のいずれかの使用。
[86]前記CD20陽性癌がB細胞性非ホジキンリンパ腫である、[81]~[85]のいずれかの使用。
[87]前記II型抗CD20抗体がオビヌツズマブである、[81]~[86]のいずれかの使用。
[88]前記オビヌツズマブ耐性CD20陽性癌が、オビヌツズマブ治療経験があるCD20陽性癌である、[81]~[87]のいずれかの使用。
[89]前記オビヌツズマブ耐性CD20陽性癌が、オビヌツズマブを用いた導入療法後のオビヌツズマブ単独投与による維持療法の開始後に再発した癌である、[81]~[88]のいずれかの使用。
[90]II型抗CD20抗体によるオビヌツズマブ耐性CD20陽性癌の細胞の細胞周期停止または細胞死の増強において使用するための、プレドニゾロンまたはそれらの塩もしくはプロドラッグ。
[91]プレドニゾロンまたはそれらの塩もしくはプロドラッグの投与を含む化学療法との併用により、オビヌツズマブ耐性CD20陽性癌の細胞に対する細胞周期停止または細胞死の誘導の増強において使用するための、II型抗CD20抗体。
[92]オビヌツズマブ耐性CD20陽性癌の細胞に対する細胞周期停止または細胞死の誘導の増強において使用するための、II型抗CD20抗体、およびプレドニゾロンまたはそれらの塩もしくはプロドラッグの組み合わせ。
[93]前記プロドラッグがプレドニゾンであり、前記II型抗CD20抗体および前記プレドニゾンは生体に投与される、[90]のプレドニゾロンまたはそれらの塩もしくはプロドラッグ。
[94]前記プロドラッグがプレドニゾンであり、前記II型抗CD20抗体および前記プレドニゾンは生体に投与される、[91]のII型抗CD20抗体。
[95]前記プロドラッグがプレドニゾンであり、前記II型抗CD20抗体および前記プレドニゾンは生体に投与される、[92]の組み合わせ。
[96]前記細胞周期停止がG0/G1期における停止である、[90]または[93]のプレドニゾロンまたはそれらの塩もしくはプロドラッグ。
[97]前記細胞周期停止がG0/G1期における停止である、[91]または[94]のII型抗CD20抗体。
[98]前記細胞周期停止がG0/G1期における停止である、[92]または[95]の組み合わせ。
[99]前記CD20陽性癌がB細胞性非ホジキンリンパ腫である、[90]、[93]、および[96]のいずれかのプレドニゾロンまたはそれらの塩もしくはプロドラッグ。
[100]前記CD20陽性癌がB細胞性非ホジキンリンパ腫である、[91]、[94]、および[97]のいずれかのII型抗CD20抗体。
[101]前記CD20陽性癌がB細胞性非ホジキンリンパ腫である、[92]、[95]、および[98]のいずれかの組み合わせ。
[102]前記II型抗CD20抗体がオビヌツズマブである、[90]、[93]、[96]、および[99]のいずれかのプレドニゾロンまたはそれらの塩もしくはプロドラッグ。
[103]前記II型抗CD20抗体がオビヌツズマブである、[91]、[94]、[97]、および[100]のいずれかのII型抗CD20抗体。
[104]前記II型抗CD20抗体がオビヌツズマブである、[92]、[95]、[98]、および[101]のいずれかの組み合わせ。
[105]前記オビヌツズマブ耐性CD20陽性癌が、オビヌツズマブ治療経験があるCD20陽性癌である、[90]、[93]、[96]、[99]、および[102]のいずれかのプレドニゾロンまたはそれらの塩もしくはプロドラッグ。
[106]前記オビヌツズマブ耐性CD20陽性癌が、オビヌツズマブ治療経験があるCD20陽性癌である、[91]、[94]、[97]、[100]、および[103]のいずれかのII型抗CD20抗体。
[107]前記オビヌツズマブ耐性CD20陽性癌が、オビヌツズマブ治療経験があるCD20陽性癌である、[92]、[95]、[98]、[101]、および[104]のいずれかの組み合わせ。
[108]前記オビヌツズマブ耐性CD20陽性癌が、オビヌツズマブを用いた導入療法後のオビヌツズマブ単独投与による維持療法の開始後に再発した癌である、[90]、[93]、[96]、[99]、[102]、および[105]のいずれかのプレドニゾロンまたはそれらの塩もしくはプロドラッグ。
[109]前記オビヌツズマブ耐性CD20陽性癌が、オビヌツズマブを用いた導入療法後のオビヌツズマブ単独投与による維持療法の開始後に再発した癌である、[91]、[94]、[97]、[100]、[103]、および[106]のいずれかのII型抗CD20抗体。
[110]前記オビヌツズマブ耐性CD20陽性癌が、オビヌツズマブを用いた導入療法後のオビヌツズマブ単独投与による維持療法の開始後に再発した癌である、[92]、[95]、[98]、[101]、[104]、および[107]のいずれかの組み合わせ。
【0013】
[111]プレドニゾロンまたはそれらの塩もしくはプロドラッグを投与することを含む、II型抗CD20抗体によるオビヌツズマブ耐性CD20陽性癌の細胞の細胞周期停止または細胞死を増強する方法。
[112]プレドニゾロンまたはそれらの塩もしくはプロドラッグの投与を含む化学療法との併用によりII型抗CD20抗体を投与することを含み、前記併用によってオビヌツズマブ耐性CD20陽性癌の細胞に対する細胞周期停止または細胞死が増強される、オビヌツズマブ耐性CD20陽性癌の細胞の細胞周期停止または細胞死を誘導する方法。
[113]前記プロドラッグがプレドニゾンであり、前記II型抗CD20抗体および前記プレドニゾンは生体に投与される、[111]または[112]の方法。
[114]前記細胞周期停止がG0/G1期における停止である、[111]~[113]のいずれかの方法。
[115]前記CD20陽性癌がB細胞性非ホジキンリンパ腫である、[111]~[114]のいずれかの方法。
[116]前記II型抗CD20抗体がオビヌツズマブである、[111]~[115]のいずれかの方法。
[117]前記オビヌツズマブ耐性CD20陽性癌が、オビヌツズマブ治療経験があるCD20陽性癌である、[111]~[116]のいずれかの方法。
[118]前記オビヌツズマブ耐性CD20陽性癌が、オビヌツズマブを用いた導入療法後のオビヌツズマブ単独投与による維持療法の開始後に再発した癌である、[111]~[117]のいずれかの方法。
[119]in vitroおよびヒト以外におけるin vivoの方法である、[111]~[118]のいずれかの方法。
【0014】
[120]II型抗CD20抗体を含有し、かつカスパーゼ活性化剤の投与を含む化学療法と併用される、オビヌツズマブ耐性CD20陽性癌の細胞の増殖を抑制するための剤。
[121]II型抗CD20抗体を含有する、カスパーゼ活性化剤の投与を含む化学療法との併用によってオビヌツズマブ耐性CD20陽性癌の細胞の増殖を抑制するための剤。
[122]カスパーゼ活性化剤を含有し、かつII型抗CD20抗体による治療と併用される、オビヌツズマブ耐性CD20陽性癌の細胞の増殖を抑制するための剤。
[123]カスパーゼ活性化剤を含有する、II型抗CD20抗体による治療との併用によってオビヌツズマブ耐性CD20陽性癌の細胞の増殖を抑制するための剤。
[124]II型抗CD20抗体と、カスパーゼ活性化剤とが組み合わされて、同時に、別々に、または連続して投与される、オビヌツズマブ耐性CD20陽性癌の細胞の増殖を抑制するための医薬。
[125]前記CD20陽性癌がB細胞性非ホジキンリンパ腫である、[120]~[123]のいずれかの剤。
[126]前記CD20陽性癌がB細胞性非ホジキンリンパ腫である、[124]の医薬。
[127]前記II型抗CD20抗体がオビヌツズマブである、[120]~[123]、および[125]のいずれかの剤。
[128]前記II型抗CD20抗体がオビヌツズマブである、[124]または[126]の医薬。
[129]前記カスパーゼ活性化剤が、ドキソルビシンまたはその塩である、[120]~[123]、[125]、および[127]のいずれかの剤。
[130]前記カスパーゼ活性化剤が、ドキソルビシンまたはその塩である、[124]、[126]、および[128]のいずれかの医薬。
[131]前記オビヌツズマブ耐性CD20陽性癌が、オビヌツズマブ治療経験があるCD20陽性癌である、[120]~[123]、[125]、[127]、および[129]のいずれかの剤。
[132]前記オビヌツズマブ耐性CD20陽性癌が、オビヌツズマブ治療経験があるCD20陽性癌である、[124]、[126]、[128]、および[130]のいずれかの医薬。
[133]前記オビヌツズマブ耐性CD20陽性癌が、オビヌツズマブを用いた導入療法後のオビヌツズマブ単独投与による維持療法の開始後に再発した癌である、[120]~[123]、[125]、[127]、[129]、および[131]のいずれかの剤。
[134]前記オビヌツズマブ耐性CD20陽性癌が、オビヌツズマブを用いた導入療法後のオビヌツズマブ単独投与による維持療法の開始後に再発した癌である、[124]、[126]、[128]、[130]、および[132]のいずれかの医薬。
【0015】
[135]II型抗CD20抗体を含有し、かつカスパーゼ活性化剤の投与を含む化学療法と併用される、オビヌツズマブ耐性CD20陽性癌を治療するための医薬組成物。
[136]II型抗CD20抗体を含有する、カスパーゼ活性化剤の投与を含む化学療法との併用によってオビヌツズマブ耐性CD20陽性癌を治療するための医薬組成物。
[137]カスパーゼ活性化剤を含有し、かつII型抗CD20抗体による治療と併用される、オビヌツズマブ耐性CD20陽性癌を治療するための医薬組成物。
[138]カスパーゼ活性化剤を含有する、II型抗CD20抗体による治療との併用によってオビヌツズマブ耐性CD20陽性癌を治療するための医薬組成物。
[139]II型抗CD20抗体と、カスパーゼ活性化剤とが組み合わされて、同時に、別々に、または連続して投与される、オビヌツズマブ耐性CD20陽性癌を治療するための医薬組成物。
[140]前記CD20陽性癌がB細胞性非ホジキンリンパ腫である、[135]~[139]のいずれかの医薬組成物。
[141]前記II型抗CD20抗体がオビヌツズマブである、[135]~[140]のいずれかの医薬組成物。
[142]前記カスパーゼ活性化剤が、ドキソルビシンまたはその塩である、[135]~[141]のいずれかの医薬組成物。
[143]前記オビヌツズマブ耐性CD20陽性癌が、オビヌツズマブ治療経験があるCD20陽性癌である、[135]~[142]のいずれかの医薬組成物。
[144]前記オビヌツズマブ耐性CD20陽性癌が、オビヌツズマブを用いた導入療法後のオビヌツズマブ単独投与による維持療法の開始後に再発した癌である、[135]~[143]のいずれかの医薬組成物。
【0016】
[145]カスパーゼ活性化剤の投与を含む化学療法との併用によりオビヌツズマブ耐性CD20陽性癌の細胞の増殖を抑制するための剤の製造における、II型抗CD20抗体の使用。
[146]II型抗CD20抗体による治療との併用によりオビヌツズマブ耐性CD20陽性癌の細胞の増殖を抑制するための剤の製造における、カスパーゼ活性化剤の使用。
[147]カスパーゼ活性化剤の投与を含む化学療法との併用によりオビヌツズマブ耐性CD20陽性癌を治療するための医薬組成物の製造における、II型抗CD20抗体の使用。
[148]II型抗CD20抗体による治療との併用によりオビヌツズマブ耐性CD20陽性癌を治療するための医薬組成物の製造における、カスパーゼ活性化剤の使用。
[149]オビヌツズマブ耐性CD20陽性癌を治療するための医薬組成物の製造における、II型抗CD20抗体、およびカスパーゼ活性化剤の使用。
[150]前記CD20陽性癌がB細胞性非ホジキンリンパ腫である、[145]~[149]のいずれかの使用。
[151]前記II型抗CD20抗体がオビヌツズマブである、[145]~[150]のいずれかの使用。
[152]前記カスパーゼ活性化剤が、ドキソルビシンまたはその塩である、[145]~[151]のいずれかの使用。
[153]前記オビヌツズマブ耐性CD20陽性癌が、オビヌツズマブ治療経験があるCD20陽性癌である、[145]~[152]のいずれかの使用。
[154]前記オビヌツズマブ耐性CD20陽性癌が、オビヌツズマブを用いた導入療法後のオビヌツズマブ単独投与による維持療法の開始後に再発した癌である、[145]~[153]のいずれかの使用。
[155]カスパーゼ活性化剤の投与を含む化学療法との併用により、オビヌツズマブ耐性CD20陽性癌の細胞の増殖の抑制において使用するためのII型抗CD20抗体。
[156]II型抗CD20抗体による治療との併用により、オビヌツズマブ耐性CD20陽性癌の細胞の増殖の抑制において使用するためのカスパーゼ活性化剤。
[157]カスパーゼ活性化剤の投与を含む化学療法との併用により、オビヌツズマブ耐性CD20陽性癌の治療において使用するための、II型抗CD20抗体。
[158]II型抗CD20抗体による治療との併用により、オビヌツズマブ耐性CD20陽性癌の治療において使用するための、カスパーゼ活性化剤。
[159]オビヌツズマブ耐性CD20陽性癌の治療において使用するための、II型抗CD20抗体、およびカスパーゼ活性化剤の組み合わせ。
[160]前記CD20陽性癌がB細胞性非ホジキンリンパ腫である、[155]または[157]のII型抗CD20抗体。
[161]前記CD20陽性癌がB細胞性非ホジキンリンパ腫である、[156]または[158]のカスパーゼ活性化剤。
[162]前記CD20陽性癌がB細胞性非ホジキンリンパ腫である、[159]の組み合わせ。
[163]前記II型抗CD20抗体がオビヌツズマブである、[155]、[157]、および[160]のいずれかのII型抗CD20抗体。
[164]前記II型抗CD20抗体がオビヌツズマブである、[156]、[158]、および[161]のいずれかのカスパーゼ活性化剤。
[165]前記II型抗CD20抗体がオビヌツズマブである、[159]または[162]の組み合わせ。
[166]前記カスパーゼ活性化剤が、ドキソルビシンまたはその塩である、[155]、[157]、[160]、および[163]のいずれかのII型抗CD20抗体。
[167]前記カスパーゼ活性化剤が、ドキソルビシンまたはその塩である、[156]、[158]、[161]、および[164]のいずれかのカスパーゼ活性化剤。
[168]前記カスパーゼ活性化剤が、ドキソルビシンまたはその塩である、[159]、[162]、および[165]のいずれかの組み合わせ。
[169]前記オビヌツズマブ耐性CD20陽性癌が、オビヌツズマブ治療経験があるCD20陽性癌である、[155]、[157]、[160]、[163]、および[166]のいずれかのII型抗CD20抗体。
[170]前記オビヌツズマブ耐性CD20陽性癌が、オビヌツズマブ治療経験があるCD20陽性癌である、[156]、[158]、[161]、[164]、および[167]のいずれかのカスパーゼ活性化剤。
[171]前記オビヌツズマブ耐性CD20陽性癌が、オビヌツズマブ治療経験があるCD20陽性癌である、[159]、[162]、[165]、および[168]のいずれかの組み合わせ。
[172]前記オビヌツズマブ耐性CD20陽性癌が、オビヌツズマブを用いた導入療法後のオビヌツズマブ単独投与による維持療法の開始後に再発した癌である、[155]、[157]、[160]、[163]、[166]、および[169]のいずれかのII型抗CD20抗体。
[173]前記オビヌツズマブ耐性CD20陽性癌が、オビヌツズマブを用いた導入療法後のオビヌツズマブ単独投与による維持療法の開始後に再発した癌である、[156]、[158]、[161]、[164]、[167]、および[170]のいずれかのカスパーゼ活性化剤。
[174]前記オビヌツズマブ耐性CD20陽性癌が、オビヌツズマブを用いた導入療法後のオビヌツズマブ単独投与による維持療法の開始後に再発した癌である、[159]、[162]、[165]、[168]、および[171]のいずれかの組み合わせ。
【0017】
[175]オビヌツズマブ耐性CD20陽性癌の細胞に、
i) II型抗CD20抗体を投与すること、
ii) カスパーゼ活性化剤を投与することを含む、オビヌツズマブ耐性CD20陽性癌の細胞の増殖を抑制する方法。
[176]前記CD20陽性癌がB細胞性非ホジキンリンパ腫である、[175]の方法。
[177]前記II型抗CD20抗体がオビヌツズマブである、[175]または[176]の方法。
[178]前記カスパーゼ活性化剤が、ドキソルビシンまたはその塩である、[175]~[177]のいずれかの方法。
[179]前記オビヌツズマブ耐性CD20陽性癌が、オビヌツズマブ治療経験があるCD20陽性癌である、[175]~[178]のいずれかの方法。
[180]前記オビヌツズマブ耐性CD20陽性癌が、オビヌツズマブを用いた導入療法後のオビヌツズマブ単独投与による維持療法の開始後に再発した癌である、[175]~[179]のいずれかの方法。
[181]in vitroおよびヒト以外におけるin vivoの方法である、[175]~[180]のいずれかの方法。
【0018】
[182]オビヌツズマブ耐性CD20陽性癌を有する生体に、
i) II型抗CD20抗体を投与すること、
ii) カスパーゼ活性化剤を投与することを含む、オビヌツズマブ耐性CD20陽性癌の治療方法。
[183]前記CD20陽性癌がB細胞性非ホジキンリンパ腫である、[182]の治療方法。
[184]前記II型抗CD20抗体がオビヌツズマブである、[182]または[183]の治療方法。
[185]前記カスパーゼ活性化剤が、ドキソルビシンまたはその塩である、[182]~[184]のいずれかの治療方法。
[186]前記オビヌツズマブ耐性CD20陽性癌が、オビヌツズマブ治療経験があるCD20陽性癌である、[182]~[185]のいずれかの治療方法。
[187]前記オビヌツズマブ耐性CD20陽性癌が、オビヌツズマブを用いた導入療法後のオビヌツズマブ単独投与による維持療法の開始後に再発した癌である、[182]~[186]のいずれかの治療方法。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、オビヌツズマブに耐性を有するCD20陽性癌またはオビヌツズマブを含む治療を行った後に再発したCD20陽性癌に対して、プレドニゾロン、ドキソルビシンおよびビンクリスチン、ならびにそれらの塩およびプロドラッグからなる群から選択される少なくとも一化合物を併用することにより、II型抗CD20抗体、特にオビヌツズマブを用いた治療による効果が高められる。該化合物の中でも、プレドニゾロンおよびドキソルビシン、ならびにそれらの塩およびプロドラッグが選択され得る。さらに、該化合物の中でも、プレドニゾロンまたはそれらの塩若しくはプロドラッグが選択され得る。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】
図1は、オビヌツズマブ直接細胞死耐性クローン1A2に対してオビヌツズマブのみを作用させた場合、またはオビヌツズマブとプレドニゾロンを併用して作用させた場合における、各濃度のプレドニゾロン添加時におけるオビヌツズマブ非添加に比べた細胞増殖率を示している。
【
図2】
図2は、DAPI染色により、オビヌツズマブ直接細胞死耐性クローン1A2に対してオビヌツズマブのみ、プレドニゾロンのみ、またはオビヌツズマブとプレドニゾロンの併用を作用させたことによる細胞周期の割合を観察した結果を示している。「併用」は、オビヌツズマブとプレドニゾロンの併用を意味する。
【
図3】
図3は、ウエスタンブロッティングにより、オビヌツズマブ直接細胞死耐性クローン1A2に対してオビヌツズマブのみ、プレドニゾロンのみ、またはオビヌツズマブとプレドニゾロンの併用を作用させたことによる細胞内タンパク質Rb、Skp2およびp27の発現量ならびにRbのリン酸化を観察した結果を示している。
【
図4】
図4は、TUNEL法を用いたFACS解析により、オビヌツズマブ直接細胞死耐性クローン1A2に対してオビヌツズマブのみ、プレドニゾロンのみ、またはオビヌツズマブとプレドニゾロンの併用を作用させたことによるDNA断片化を観察した結果を示している。「併用」は、オビヌツズマブとプレドニゾロンの併用を意味する。
【
図5】
図5は、オビヌツズマブ直接細胞死耐性クローン1A2に対してオビヌツズマブのみを作用させた場合、またはオビヌツズマブとドキソルビシンを併用して作用させた場合における、各濃度のドキソルビシン添加時におけるオビヌツズマブ非添加に比べた細胞増殖率を示している。
【
図6】
図6は、オビヌツズマブ直接細胞死耐性クローン1A2に対してオビヌツズマブのみを作用させた場合、ドキソルビシンのみを作用させた場合、またはオビヌツズマブとドキソルビシンを併用して作用させた場合における、両薬剤非添加に比べたカスパーゼ3/7活性を観察した結果を示している。
【
図7】
図7は、TUNEL法を用いたFACS解析により、オビヌツズマブ直接細胞死耐性クローン1A2に対してオビヌツズマブのみ、ドキソルビシンのみ、またはオビヌツズマブとドキソルビシンの併用を作用させたことによるDNA断片化を、全カスパーゼ阻害剤を添加した場合と添加しない場合に分けて観察した結果を示している。「併用」は、オビヌツズマブとドキソルビシンの併用を意味する。
【
図8】
図8は、オビヌツズマブ直接細胞死耐性クローン1A2に対して、全カスパーゼ阻害剤の存在下または非存在下で、オビヌツズマブのみを作用させた場合、またはオビヌツズマブとドキソルビシンを併用して作用させた場合における、オビヌツズマブ非添加に比べた細胞増殖率を示している。
【
図9】
図9は、RL親株およびADCC耐性株RL-E300-1、RL-E300-2、RL-E300-8、RL-E300-22に対してオビヌツズマブを作用させた場合のADCC感受性を示す。
【
図10】
図10は、RL親株およびADCC耐性株RL-E300-1、RL-E300-2、RL-E300-8、RL-E300-22のプレドニゾロン処理群およびプレドニゾロン非処理群におけるCD20発現を示す。
【
図11】
図11は、RL親株およびADCC耐性株RL-E300-1、RL-E300-2に対して、プレドニゾロン処理後にオビヌツズマブを作用させた場合、およびプレドニゾロン非処理でオビヌツズマブを作用させた場合の、ADCC感受性を示す。
【
図12】
図12は、ADCC耐性株RL-E300-1移植マウスに対し、IgG(30mg/kg)+vehicle(IgG+Dw群)、オビヌツズマブ(30mg/kg)+vehicle(OBI+Dw群)、IgG(30mg/kg)+プレドニゾロン(4mg/kg)(IgG+PSL群)、およびオビヌツズマブ(30mg/kg)+プレドニゾロン(4mg/kg)(OBI+PSL群)を投与した場合の腫瘍体積を示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
A.細胞の増殖を抑制する剤または医薬
(a1)第1の態様
一態様において、本発明は、オビヌツズマブ耐性CD20陽性癌の細胞の増殖を抑制するための剤または医薬を提供する。
該態様における第1の例において、該剤は、II型抗CD20抗体を含有する。該剤は、プレドニゾロン、ドキソルビシンおよびビンクリスチン、ならびにそれらの塩およびプロドラッグからなる群から選択される少なくとも一化合物の投与を含む化学療法と併用される。
該態様における第2の例において、該剤は、プレドニゾロン、ドキソルビシンおよびビンクリスチン、ならびにそれらの塩およびプロドラッグからなる群から選択される少なくとも一化合物を含有する。該剤は、II型抗CD20抗体による治療と併用される。
該態様における第3の例において、該医薬は、II型抗CD20抗体と、プレドニゾロン、ドキソルビシンおよびビンクリスチンならびにそれらの塩およびプロドラッグからなる群から選択される少なくとも一化合物とが組み合わせで、同時に、別々に、または連続して投与される、医薬である。
【0022】
該態様において、B細胞性のリンパ腫が該CD20陽性癌として例示される。該態様において、B細胞性非ホジキンリンパ腫が該B細胞性のリンパ腫として例示される。該態様において、CD20陽性癌は、好ましくはB細胞性非ホジキンリンパ腫である。
B細胞性非ホジキンリンパ腫としては、WHO分類に従えば、前駆B細胞腫瘍を起源細胞とする、前駆Bリンパ芽球性白血病/リンパ腫、ならびに、成熟B細胞腫瘍を起源細胞とする、B細胞慢性リンパ性白血病/小リンパ球性リンパ腫、B細胞前リンパ球性白血病、リンパ形質細胞性リンパ腫、脾B細胞辺縁帯リンパ腫(±有毛リンパ球)、有毛細胞白血病、形質細胞骨髄腫/形質細胞腫、MALT型の節外性辺縁帯B細胞リンパ腫、節性辺縁帯B細胞リンパ腫(± 単球様B細胞)、濾胞性リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(縦隔大細胞型B細胞リンパ腫,および原発性滲出液リンパ腫を含む)、およびバーキットリンパ腫が例示される。該態様においては、これらの中でも、B細胞性非ホジキンリンパ腫は、好ましくは濾胞性リンパ腫である
非ホジキンリンパ腫は、その悪性度に基づき、低悪性度リンパ腫、中悪性度リンパ腫および高悪性度リンパ腫に分類される。B細胞性非ホジキンリンパ腫をより詳細に分類する場合、Grade 1、2の濾胞性リンパ腫およびMALTリンパ腫が低悪性度リンパ腫として、Grade 3の濾胞性リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、および、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫が中悪性度リンパ腫として、バーキットリンパ腫が高悪性度リンパ腫として、例示される。悪性度に基づいた場合、B細胞性非ホジキンリンパ腫は、濾胞性リンパ腫を含むことから、好ましくは低悪性および中悪性度リンパ腫である。
【0023】
該態様において、オビヌツズマブ治療経験があるCD20陽性癌が、オビヌツズマブ耐性CD20陽性癌として例示される。該「オビヌツズマブ耐性」は「オビヌツズマブ抵抗性」に置き換え得る。オビヌツズマブを含む治療を行った後に再発したCD20陽性癌が、該オビヌツズマブ治療経験があるCD20陽性癌に包含される。該態様において、オビヌツズマブ耐性CD20陽性癌は、好ましくは、オビヌツズマブ治療経験があるCD20陽性癌である。オビヌツズマブ耐性CD20陽性癌は、より好ましくは、オビヌツズマブ治療経験があるB細胞性非ホジキンリンパ腫である。
ここで、本明細書において、「耐性」は、細胞や個体が、疾患の処置や治療に対し応答性(感受性ともいう)がなく、かつ/または有意な応答(たとえば、部分奏功および/または完全奏功)を生み出す能力が低下している状態であれば限定されない。例えば、オビヌツズマブ耐性がある癌とは、オビヌツズマブを使用した処置に対して応答性が全くないか、または部分奏功または完全奏功といった有意な応答を示さない癌である。薬剤に対して「耐性」を有する癌に対してその薬剤を投与しても、望ましい効果が得られないばかりでなく、さらに進行したり、悪性度の高い癌へ変貌したりする場合さえある。なお、「耐性」は、「生来の耐性」であっても、「獲得耐性」であってもよい。特に、本発明の剤、医薬等における獲得耐性は、従来のオビヌツズマブによる処置後に生じた耐性であってもよい。たとえば、治療初期には有効であっても繰り返し治療を続けると、やがて当該治療に対し、がんが耐性を獲得することがあり、オビヌツズマブの存在下でもはや退縮しないか、または進行さえする場合がある。なお、「オビヌツズマブ耐性」は、Gで説明されるとおり、「抗CD20抗体耐性」で置き換えられ得るものである。後述のとおり、オビヌツズマブは、医薬品一般的名称(JAN)における「オビヌツズマブ(遺伝子組換え)(Obinutuzumab(Genetical Recombination))」で特定されるもののほか、そのバイオシミラーやバイオベター、ならびにオビニツズマブのアミノ酸配列に対し、少なくとも80%、85%、90%、98%、99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有する抗体、またはその抗原結合断片であるII型抗CD20抗体も包含し得る。よって、「オビヌツズマブ耐性」は、「オビヌツズマブ(遺伝子組換え)(Obinutuzumab(Genetical Recombination))」、そのバイオシミラーやバイオベター、ならびに上記II型抗CD20抗体に対する耐性も包含し得る。
オビヌツズマブ耐性CD20陽性癌の他の例示として、オビヌツズマブを用いた導入療法後のオビヌツズマブ単独投与による維持療法の開始後に再発した癌が挙げられる。該導入療法は、オビヌツズマブと他の化学療法の併用による強力な治療によって部分奏功以上の奏功が得られること、または病勢進行が認められなくなることを目標とした療法である。該部分奏功または該病勢進行を含む抗腫瘍効果は国際ワーキンググループ(IWG:International Working Group)の「悪性リンパ腫効果判定規準(改訂版)」に基づき評価される。該導入療法は、通常24週間継続される。オビヌツズマブとCHOP療法またはCVP療法との併用による導入療法では、オビヌツズマブの投与は3週間を1サイクルとし、8サイクルで行われる。ベンダムスチンとの併用による導入療法では、オビヌツズマブの投与は4週間を1サイクルとし、6サイクルで行われる。該導入療法の1サイクル目では、オビヌツズマブは1、8、15日目に投与され、2サイクル目以降では1日目に投与される。導入療法中に他の化学療法を毒性等の原因により中止した場合には、オビヌツズマブの単独投与が継続され得る。一方、該維持療法は、該導入療法において部分奏功以上の奏功が得られた患者において、該導入療法後にオビヌツズマブ単剤により最長で2年間継続される治療である。該維持療法において、オビヌツズマブは2か月に1回投与される。該導入療法および該維持療法においては、1日1回、1回あたり1000mgのオビヌツズマブが投与される。投与方法は特に限定されないが、好ましくは静注である。
上述したオビヌツズマブを用いた導入療法後のオビヌツズマブ単独投与による維持療法の開始後に再発した癌に加えて、上述の導入療法中に該他の化学療法が中止され、そしてオビヌツズマブの単独投与が継続された場合において、オビヌツズマブに抵抗性となったCD20陽性癌が、オビヌツズマブ耐性CD20陽性癌のさらなる他の例示として挙げられる。
これらすべての態様において、オビヌツズマブ耐性CD20陽性癌の癌腫は、好ましくは濾胞性リンパ腫である。
【0024】
該態様において、II型抗CD20抗体は、該剤の製造時に公知のものから適宜選択される。該態様において、オビヌツズマブがII型抗CD20抗体として例示される。該態様において、好ましくは、II型抗CD20抗体はオビヌツズマブである。
【0025】
本明細書で使用される用語「抗CD20抗体」は、CD20に特異的に結合する抗体である。CD20抗原に対する抗CD20抗体の結合性及び生物学的活性に依拠して、抗CD20抗体の2つのタイプ(I型及びII型の抗CD20抗体)は、Cragg, M. S.他, Blood 103 (2004) 2738-2743及びCragg, M. S.他, Blood 101 (2003) 1045-1052に従って区別される。表1参照。
【0026】
【0027】
I型及びII型の抗CD20抗体の1つの必須の特性は、その結合形式である。従って、I型及びII型の抗CD20抗体は、リツキシマブに対する抗体の抗CD20のラジ細胞(ATCC番号CCL-86)へのCD20の結合能力の比によって分類される。
【0028】
II型の抗CD20抗体は、0.3~0.6、好ましくは0.35~0.55、より好ましくは0.4~0.5である、リツキシマブに対する抗CD20抗体のラジ細胞(ATCC番号CCL-86)へのCD20の結合能力の比を有する。かかるII型の抗CD20抗体の例は、例えば、トシツモマブ(B1IgG2a)、ヒト化B-Ly1抗体IgG1(国際公開第2005/044859号に開示されているキメラヒト化IgG1抗体)、11B8IgG1(国際公開第2004/035607号に開示されている)、及びAT80I g G1を含む。好ましくは、前記II型の抗CD20抗体は、ヒト化B-Ly1抗体と同一のエピトープに結合するモノクローナル抗体である(国際公開第2005/044859号に開示されている)。
【0029】
II型抗CD20抗体に対してI型抗CD20抗体は、0.8~1.2、好ましくは0.9~1.1である、リツキシマブに対する抗CD20抗体のラジ細胞(ATCC番号CCL-86)へのCD20の結合能力の比を有する。かかるI型抗CD20抗体の例は、例えば、リツキシマブ、1F5IgG2a(ECACC, ハイブリドーマ; Press, O. W. 他, Blood 69/2 (1987) 584-591)、HI47IgG3(ECACC, ハイブリドーマ)、2C6IgG1(国際公開第2005/103081号に開示されている)、2F2IgG1(国際公開第2004/035607号及び国際公開第2005/103081号に開示されている)及び2H7IgG1(国際公開第2004/056312号に開示されている)を含む。
【0030】
「リツキシマブに対する抗CD20抗体のラジ細胞(ATCC番号CCL-86)へのCD20の結合能力の比」は、実施例2に記載したラジ細胞(ATCC番号CCL-86)によるFACS Array(Becton Dickinson)にて、Cy5と複合された前記抗CD20抗体及びCy5と複合されたリツキシマブを用いて、直接的な免疫蛍光測定によって測定され(平均蛍光強度(MFI)が測定される)、以下のように計算される。
【0031】
【0032】
MFIは平均蛍光強度である。本明細書で使用される「Cy5標識率」は、抗体分子当たりCy5標識分子の数を意味する。典型的には、前記II型抗CD20抗体は、0.3~0. 6、好ましくは0.35~0.55、より好ましくは0.4~0.5である、リツキシマブに対するII型抗CD20抗体のラジ細胞(ATCC番号CCL-86)へのCD20の結合能力の比を有する。本明細書におけるII型抗CD20抗体は、増加した抗体依存性細胞障害活性(ADCC)を有する。「増加した抗体依存性細胞障害活性(ADCC)を有する抗体」又は「増加した抗体依存性細胞障害活性(ADCC)を持つ抗体」は、本明細書で定義される限り、当業者に公知の任意の好適な方法によって決定される増加したADCCを有する。1つの認められたインビトロでのADCCアッセイは以下のとおりである:
1) 上記アッセイは、該抗体の抗原結合領域によって認識される標的抗原を発現することが知られている標的細胞を使用する;
2) 上記アッセイは、エフェクタ細胞としての、無作為に選択された健常ドナーの血液から単離されたヒト末梢血単核細胞(PBMC)を使用する;
3) 上記アッセイは、以下のプロトコールに従って実行される:
i) PBMCは、標準的な濃度遠心法を用いて単離し、RPMI細胞培養培地中で5 x 106細胞/mLで懸濁する;
ii) 標的細胞は標準的な組織培養法によって増殖し、90%超の生存性で指数成長相から採取し、RPMI細胞培養培地で洗浄し、100 μCiの51Cr標識し、細胞培養培地で2回洗浄し、105細胞/mLの濃度の細胞培養培地に再懸濁する;
iii) 100 μLの上記の最終標的細胞懸濁液を96-ウェルマイクロタイタープレートの各ウェルに移す;
iv) 抗体は、細胞培養培地中4000ng/mL~0.04ng/mLに段階的希釈し、50 μLの得られた抗体溶液を96-ウェルマイクロタイタープレートの標的細胞に加え、上記の濃度範囲全体をカバーする3点での様々な抗体濃度を試験する;
v) 最大放出(MR)対照について、抗体溶液(上記のiv)の代わりに、標識した標的細胞を含むプレート中の3個の追加のウェルを50 μLの2%(VN)非イオン界面活性剤水溶液(Nonidet, Sigma, St. Louis)を加える;
vi) 自発的放出(SR)対照について、抗体溶液(上記のiv)の代わりに、標識した標的細胞を含むプレート中の3個の追加のウェルを50 μLのRPMI細胞培養培地を加える;
vii) 96-ウェルマイクロタイタープレートは次いで、1分間50xgで遠心し、4℃で1時間インキュベートする;
viii) 50 μLのPBMC懸濁液(上記のI)を各ウェルに加え、エフェクタ:標的細胞を25:1の割合で得、プレートを37℃4時間、5%CO2雰囲気下でインキュベータ中に置く;
ix) 各ウェルからの細胞無しの上清を採取し、実験的に放出された放射活性(ER)をガンマカウンタを用いて定量する;
x) 特定の溶解物のパーセンテージは、式(ER-MR)/(MR-SR) x 100(E Rは、抗体濃度について定量された平均的放射活性(上記のix参照)であり、MRは、MR対照(上記のv参照)について定量された平均放射活性(上記のix参照)であり、SRは、SR対照(上記のvi参照)について定量された平均放射活性(上記のix参照)である)に従う各抗体濃度について計算する;
4) 「増加したADCC」は、上記の試験された抗体濃度範囲内で観察された特定の溶解物の最大パーセンテージの増加か、及び/又は上記の試験された抗体濃度内で観察された特定の溶解物の最大パーセンテージの半分を達成するために必要とされる抗体濃度の減少と定義される。ADCCの増加は、当業者に公知の同一の標準的な産生、精製、形成及び保存法を用いて同種の宿主細胞によって産生された同一の抗体が介在する上記アッセイを用いて測定されたADCCに対するものであって、GnTIIIを過剰発現するように作製された宿主細胞によって産生されたのではないADCCに対するものである。
【0033】
前記「増加したADCC」は、前記抗体の糖鎖工学的手法によって得られる。それは、Umana P. 他, Nature Biotechnol. 17 (1999) 176-180、及び米国特許第6,602,684号明細書に記載されたそのオリゴ糖成分を作製することによってモノクローナル抗体の、天然の、細胞-介在エフェクタ機能を意味する。
【0034】
用語「補体-依存的細胞傷害性(CDC)」は、補体の存在下での本発明に従う抗体によるヒト腫瘍標的細胞の溶解を言う。CDCは、好ましくは、補体の存在下に本発明に従う抗CD20抗体による、CD20発現細胞の調製物の処理によって測定される。該抗体が、100nMの濃度で、4時間後に腫瘍細胞の20%以上の溶解(細胞死)を誘導する場合に、CDCが見られる。このアッセイは、好ましくは、51Cr又はEu標識腫瘍細胞、及び放出された51Cr又はEuの測定を用いるのが好ましい。対照は、該抗体でなく、補体による、腫瘍標的細胞のインキュベーションを含む。
【0035】
典型的には、IgG1アイソタイプのII型抗CD20抗体は、特徴的なCDCを示す。II型抗CD20抗体は、IgG1アイソタイプのI型抗CD20抗体に比べて減少したCDC(IgG1アイソタイプである場合には)を有する。好ましくは、II型抗CD20抗体は、IgG1アイソタイプ抗体である。
【0036】
「リツキシマブ」抗体(参照抗体;I型抗CD20抗体の例)は、遺伝子組み換えにより作製された、ヒトガンマ1定常ドメインを含む、ヒトCD20抗原に対するキメラマウスモノクローナル抗体である。このキメラ抗体は、1998年4月17日に発行されたIDEC Pharmaceuticals Corporationによる米国特許第5,736,137号明細書(Anderson, K. C. 他)において、「C2B8」との名称によって同定される。リツキシマブは、再発性、難治性が低度の、濾胞性の、CD20陽性のB細胞非-ホジキンリンパ腫を有する患者の治療のために承認されている。作用研究のインビトロメカニズムは、リツキシマブがヒト補体依存性細胞傷害性(CDC)を示すことを明らかにしている(Reff, M. E. 他, Blood 83(2) (1994) 435-445)。更に、それは、抗体依存性細胞障害活性(ADCC)を測定するアッセイにおいて顕著な活性を示す。
【0037】
上記オリゴ糖成分は、物理的安定性、プロテアーゼ攻撃に対する耐性、免疫系との相互作用、薬物動力学、及び特定の生物学的活性を含む治療的糖タンパク質の効力に関連する特性を顕著に影響する。かかる特性は、オリゴ糖の存在又は非存在だけでなく、その特定の構造に依拠することがある。オリゴ糖構造と糖タンパク質機能との間でいくらか一般化をすることができる。例えば、あるオリゴ糖構造は、特定の糖質結合タンパク質との相互作用によって血流から糖タンパク質の急速なクリアランスを介在するが、他のオリゴ糖構造は、抗体によって結合され、望ましくない免疫反応を誘起する(Jenkins, N. 他, Nature Biotechnol. 14 (1996) 975 -81)。
【0038】
哺乳動物細胞は、ヒト適用のための最も適合性形態でのタンパク質をグリコシル化するその能力に因って、治療的糖タンパク質の産生のための好ましい宿主である(Cumming, D. A. 他, Glycobiology 1 (1991) 115-30; Jenkins, N. 他, Nature Biotechnol. 14 (1996) 975-81)。細菌はほとんどタンパク質をグリコシル化せず、酵母、糸状菌、昆虫及び植物細胞のような一般的な宿主の他の種類のように、血流からの急速なクリアランス、望ましくない免疫相互作用、場合によっては減少した生物学的活性に関連したグリコシル化パターンを与える。哺乳動物細胞の中で、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞は、ここ2 0年間、最も一般的に使用されてきた。所定の好適なグリコシル化パターンに加えて、これらの細胞は、遺伝子的に安定で高い生産性のクロール細胞株の一貫した生成を可能にする。それらは、血清無しの媒体を用いて単一バイオリアクタ中で高濃度で培養され、安全かつ再生可能なバイオプロセスの開発を可能にする。他の一般的に使用されている動物細胞は、ベビーハムスター腎臓(BHK)細胞、NSO-及びSP2/0 -マウスミエローマ細胞を含む。ごく最近では、トランスジェニック動物からの産生も試験されている(Jenkins, N. 他, Nature Biotechnol. 14 (1996) 975-981)。
【0039】
すべての抗体は、重鎖定常領域中の保存的位置に糖鎖構造を含み、各アイソトープは、タンパク質アセンブリ、分泌又は機能的活性に可変的に影響を与える、N連結糖鎖構造の異なったアレイを有する(Wright, A.及びMonison, S. L., Trends Biotech. 15 (1997) 26-32)。結合されたN-連結糖鎖の構造は、プロセシングの程度によって相当に変動し、高-マンノース型、複数分岐型及び二分岐型の複雑なオリゴ糖を含み得る(Wright, A.及びMorrison, S. L., Trends Biotech. 15 (1997) 26-32)。典型的には、モノクローナル抗体さえ複数のグリコフォームとして存在するように、特定のグリコシル化部位に結合されたコアのオリゴ糖構造の不均一なプロセシングがある。同様に、抗体のグリコシル化の主な差異は細胞株間で起こり、異なった培養条件下で成長した所定の細胞数については僅かな差も見られることが分かっている(Lifely, M. R. 他, Glycobiology 5(8) (1995) 813-22)。
【0040】
能力の格段な増加を得、同時に、単一の産生プロセスを維持し、顕著で望ましくない副作用を潜在的に避ける1つの方法は、Umana, P. 他, Nature Biotechnol. 17 (1999) 176-180及び米国特許第6,602,684号明細書に記載のオリゴ糖成分を作製することによって、モノクローナル抗体の天燃の、細胞-介在エフェクタ機能を亢進することである。IgG1型抗体は、癌免疫療法で最も一般的に使用される抗体であり、各CH2ドメインのAsn297に保存的N連結グリコシル化部位を有する糖タンパク質である。Asn297に結合された2つの複合体の2つに枝分かれしたオリゴ糖は、CH2ドメインの間に埋没され、ポリペプチド骨格と幅広く接触し、その存在は、該抗体が、抗体依存性細胞傷害性(ADCC)のようなエフェクタ機能を介在するために必須である(Lifely, M. R. 他, Glycobiology 5 (1995) 813-822; Jefferis, R. 他, Immunol. Rev. 163 (1998) 59-76; Wright, A. and Morrison, S. L., Trends Biotechnol. 15 (1997) 26-32)。
【0041】
β(1, 4)-N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼIII ("GnTIII7y)、すなわち二等分されたオリゴ糖の形成を触媒するグルコシルトランスフェラーゼ、のチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞における過剰発現が、作製されたCHO細胞によって産生された抗神経芽腫キメラモノクローナル抗体(chCE7)のインビトロADCC活性を顕著に増加させることがこれまで明らかになっている(Umana, P. 他, Nature Biotechnol. 17 (1999) 176-180及び国際公開第99/154342号、その全体的な内容は本明細書に参照として組み込まれている)。上記抗体chCE7は、高い腫瘍親和性及び特異性を有する、多数の非複合化モノクローナル抗体に属するが、GnTIII酵素を欠く標準的な工業的細胞株において産生される時に臨床的に有利である可能性はほとんどない(Umana, P., 他, Nature Biotechnol. 17 (1999) 176-180)。その研究は、ADCC活性の大きな増大が、GnTIIIを発現するための抗体産生細胞を作製することによって得られ、これが、二つに分岐した非フコシル化オリゴ糖を含む定常領域(Fc)関連の二つに分岐したオリゴ糖の割合の増加ももたらし、それは、天然の抗体において見られるレベルであることを示す最初のものであった。
【0042】
オビヌツズマブは、一般に、糖鎖改変型の遺伝子組換えヒト化抗CD20モノクローナル抗体であり、II型抗CD20抗体の特性を示し、449個のアミノ酸残基からなるH鎖2本及び219個のアミノ酸残基からなるL鎖2本で構成される糖タンパク質であり、分子量が約148,000~150,000である。該H鎖において、CDR(complementarity-determining region(相補性決定領域)の省略形。以下同様。)1は配列番号:1からなるアミノ酸配列、CDR2は配列番号:2からなるアミノ酸配列、そしてCDR3は配列番号:3からなるアミノ酸配列で表される。該L鎖において、CDR1は配列番号:4からなるアミノ酸配列、CDR2は配列番号:5からなるアミノ酸配列、そしてCDR3は配列番号:6からなるアミノ酸配列で表される。該H鎖の可変領域(HV領域)は、配列番号:7で表される。該L鎖の可変領域(LV領域)は、配列番号:8で表される。該H鎖は配列番号:9からなるアミノ酸配列を有するポリペプチドであり、該L鎖は配列番号:10からなるアミノ酸配列を有するポリペプチドである。
一実施態様では、II型抗CD20抗体は、オビニツズマブのアミノ酸配列に対し、少なくとも80%、85%、90%、98%、99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有する抗体、またはその抗原結合断片であってもよい。一実施態様では、II型抗CD20抗体は、オビニツズマブの重鎖および軽鎖における各CDRのアミノ酸配列に対し、少なくとも80%、85%、90%、95%、98%、99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む各CDRを含む抗体またはその抗原結合断片であってもよい。一実施態様では、II型抗CD20抗体は、オビニツズマブのHV領域およびLV領域それぞれのアミノ酸配列に対し、少なくとも80%、85%、90%、95%、98%、99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むHV領域およびLV領域を含む抗体またはその抗原結合断片であってもよい。
本明細書においては、オビヌツズマブは、医薬品一般的名称(JAN)における「オビヌツズマブ(遺伝子組換え)(Obinutuzumab(Genetical Recombination))」で特定されるもののほか、そのバイオシミラーやバイオベターを包含する。オビヌツズマブは、好ましくは該「オビヌツズマブ(遺伝子組換え)(Obinutuzumab(Genetical Recombination))」およびそのバイオシミラーである。
本明細書において、バイオシミラーは、上記のH鎖およびL鎖と同じアミノ酸配列を有し、場合により「オビヌツズマブ(遺伝子組換え)(Obinutuzumab(Genetical Recombination))」とは異なる糖鎖を有し、ならびに「オビヌツズマブ(遺伝子組換え)(Obinutuzumab(Genetical Recombination))」と同等以上の生物学的活性を有する抗体を意味する。
本明細書において、バイオベターは、上記のH鎖およびL鎖と90%以上かつ100%未満のアミノ酸配列の相同性を有し、場合により「オビヌツズマブ(遺伝子組換え)(Obinutuzumab(Genetical Recombination))」とは異なる糖鎖を有し、ならびに「オビヌツズマブ(遺伝子組換え)(Obinutuzumab(Genetical Recombination))」と同等以上の生物学的活性を有する抗体を意味する。
II型抗CD20抗体は、CD20抗原に対する結合性および生物学的活性に依拠してI型と区別して分類され、その詳細は国際公開第2009/118142号に記載されているとおりである。
【0043】
該II型抗CD20抗体は、製造時の公知技術を用いて製剤化された後に対象の生体に投与される。II型抗CD20抗体の投与方法は、後述の「E.治療方法」で述べる態様と同じである 。
【0044】
プレドニゾンは、プレドニゾロンのプロドラッグとして例示される。
プレドニゾロン、ドキソルビシンおよびビンクリスチンの塩は、医薬に用いられる公知のものから適宜選択され得る。塩酸塩がドキソルビシンの塩として例示される。硫酸塩がビンクリスチンの塩として例示される。
【0045】
プレドニゾロン、ドキソルビシンおよびビンクリスチン、ならびにそれらの塩は、製造時の公知技術を用いて製剤化された後に対象の生体に投与される。それらの投与方法は、後述の「E.治療方法」で述べる態様と同じである 。
【0046】
該態様において、プレドニゾロン、ドキソルビシンおよびビンクリスチン、ならびにそれらの塩およびプロドラッグからなる群から選択される少なくとも一化合物は、好ましくは、プレドニゾロンおよびドキソルビシン、ならびにそれらの塩およびプロドラッグからなる群から選択される。さらには、プレドニゾロンまたはそれらの塩若しくはプロドラッグであることが好ましい。最も好ましくは、プレドニゾロンまたはプレドニゾンである。
【0047】
(a2)第2の態様
別の態様において、上述の第1の態様における「プレドニゾロン、ドキソルビシンおよびビンクリスチン、ならびにそれらの塩およびプロドラッグからなる群から選択される少なくとも一化合物」は、カスパーゼ活性化剤に置き換えられ得る。カスパーゼ活性化剤の例は、国際公開第2004/002428号、および国際公開第2003/097806号に記載されている。
該別の態様において、カスパーゼ3/7の活性化剤が、カスパーゼ活性化剤として例示される。ドキソルビシンまたはその塩が該カスパーゼ3/7の活性化剤として例示される。ドキソルビシンまたはその塩に加えて、公知のカスパーゼ3/7の活性化剤が選択され得る。公知のカスパーゼ3/7の活性化剤の例は、国際公開第2006/128173号、国際公開第2006/074187号、特開2008-308455号公報、特開2008-189649号公報、および国際公開第2004/053144号に記載されている。カスパーゼ活性化剤は、好ましくはドキソルビシンまたはその塩である。該態様の他の具体的な構成は、上述の第1の態様と同じである。
【0048】
(a3)第3の態様
別の態様において、上述の第1の態様における「オビヌツズマブ耐性CD20陽性癌の細胞の増殖を抑制する剤」は、II型抗CD20抗体によるオビヌツズマブ耐性CD20陽性癌の細胞の細胞周期停止または細胞死の増強剤に置き換えられ得る。該態様において、該剤はプレドニゾロンまたはそれらの塩もしくはプロドラッグを含有する。
【0049】
さらに別の態様において、上述の第1の態様における「オビヌツズマブ耐性CD20陽性癌の細胞の増殖を抑制する剤」は、オビヌツズマブ耐性CD20陽性癌の細胞の細胞周期停止または細胞死の誘導を増強するための、誘導剤に置き換えられ得る。該態様において、該剤はII型抗CD20抗体を含有する。
また別の態様において、上述の第1の態様における「オビヌツズマブ耐性CD20陽性癌の細胞の増殖を抑制する医薬」は、II型抗CD20抗体と、プレドニゾロンまたはそれらの塩もしくはプロドラッグとが組み合わされて、同時に、別々に、または連続して投与される、オビヌツズマブ耐性CD20陽性癌の細胞に対する細胞周期停止または細胞死の誘導を増強するための薬剤に置き換えられ得る。
【0050】
第3の態様において、細胞周期停止は、特に限定されず、G0/G1期、S期、G2期およびM期のいずれかの期の停止から選択される。これらの中で、細胞周期停止は、好ましくは、G0/G1期である。
【0051】
第3の態様において、プレドニゾロンのプロドラッグとしてプレドニゾンが使われる場合、II型抗CD20抗体およびプレドニゾンは生体に投与される。この場合、該生体おいて、プレドニゾンがプレドニゾロンに変換されてII型抗CD20抗体と共に、オビヌツズマブ耐性CD20陽性癌に作用する。
第3の態様において、プレドニゾロンまたはそれらの塩若しくはプロドラッグは、好ましくはプレドニゾロンまたはプレドニゾンである。
【0052】
第3の態様のいずれにおける他の具体的な構成は、上述の第1の態様と同じである。
【0053】
(a4)第1~第3の態様における他の構成
上述の第1~第3の態様において、該剤を製剤化する場合には、所望の純度を有する抗体を、1つまたは複数の任意の薬学的に許容される担体 (Remington's Pharmaceutical Sciences 16th edition, Osol, A. Ed. (1980)) と混合することによって、凍結乾燥製剤または水溶液の形態で、調製される。薬学的に許容される担体は、概して、用いられる際の用量および濃度ではレシピエントに対して非毒性であり、これらに限定されるものではないが、以下のものを含む:リン酸塩、クエン酸塩、および他の有機酸などの緩衝液;アスコルビン酸およびメチオニンを含む、抗酸化剤;保存料(オクタデシルジメチルベンジル塩化アンモニウム;塩化ヘキサメトニウム;塩化ベンザルコニウム;塩化ベンゼトニウム;フェノール、ブチル、またはベンジルアルコール;メチルまたはプロピルパラベンなどのアルキルパラベン;カテコール;レソルシノール;シクロヘキサノール;3-ペンタノール;およびm-クレゾールなど);低分子(約10残基未満)ポリペプチド;血清アルブミン、ゼラチン、または免疫グロブリンなどのタンパク質;ポリビニルピロリドンなどの親水性ポリマー;グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン、またはリジンなどのアミノ酸;グルコース、マンノース、またはデキストリンを含む、単糖、二糖、および他の炭水化物;EDTAなどのキレート剤;スクロース、マンニトール、トレハロース、ソルビトールなどの、砂糖類;ナトリウムなどの塩形成対イオン類;金属錯体(例えば、Zn-タンパク質錯体);および/またはポリエチレングリコール (PEG) などの非イオン系表面活性剤。本明細書の例示的な薬学的に許容される担体は、さらに、可溶性中性活性型ヒアルロニダーゼ糖タンパク質 (sHASEGP)(例えば、rHuPH20 (HYLENEX(登録商標)、Baxter International, Inc.) などのヒト可溶性PH-20ヒアルロニダーゼ糖タンパク質)などの間質性薬剤分散剤を含む。特定の例示的sHASEGPおよびその使用方法は(rHuPH20を含む)、米国特許出願公開第2005/0260186号および第2006/0104968号に記載されている。一局面において、sHASEGPは、コンドロイチナーゼなどの1つまたは複数の追加的なグリコサミノグリカナーゼと組み合わせられる。
【0054】
例示的な凍結乾燥抗体製剤は、米国特許第6,267,958号に記載されている。水溶液抗体製剤は、米国特許第6,171,586号および国際公開第2006/044908号に記載のものを含み、後者の製剤はヒスチジン-アセテート緩衝液を含んでいる。
【0055】
有効成分は、例えば液滴形成(コアセルベーション)手法によってまたは界面重合によって調製されたマイクロカプセル(それぞれ、例えば、ヒドロキシメチルセルロースまたはゼラチンマイクロカプセル、およびポリ(メタクリル酸メチル)マイクロカプセル)に取り込まれてもよいし、コロイド状薬剤送達システム(例えば、リポソーム、アルブミン小球体、マイクロエマルション、ナノ粒子、およびナノカプセル)に取り込まれてもよいし、マクロエマルションに取り込まれてもよい。このような手法は、Remington's Pharmaceutical Sciences 16th edition, Osol, A. Ed. (1980) に開示されている。
【0056】
徐放性製剤を調製してもよい。徐放性製剤の好適な例は、抗体を含んだ固体疎水性ポリマーの半透過性マトリクスを含み、当該マトリクスは例えばフィルムまたはマイクロカプセルなどの造形品の形態である。
【0057】
生体内 (in vivo) 投与のために使用される製剤は、通常無菌である。無菌状態は、例えば滅菌ろ過膜を通して濾過することなどにより、容易に達成される。
【0058】
有効成分をこれらの有効成分を別々に製剤化して2種以上の製剤とした場合には、個々の製剤を同時、または一定の時間間隔を空けて、別々に、あるいは連続して投与することが可能である。当該2種以上の製剤は、1日にそれぞれ異なる回数で投与することもできる。本発明に係る剤、医薬、医薬組成物は、全身的または局所的に、経口投与または非経口投与することができる。これらの有効成分を別々に製剤化して2種以上の製剤とした場合には、個々の製剤を異なる経路で投与することもできる。
【0059】
B.医薬組成物
一態様において、本発明は、オビヌツズマブ耐性CD20陽性癌を治療するための医薬組成物を提供する。
該態様における第1の例において、該医薬組成物は、II型抗CD20抗体を含有する。該医薬組成物において、プレドニゾロン、ドキソルビシンおよびビンクリスチン、ならびにそれらの塩およびプロドラッグからなる群から選択される少なくとも一化合物の投与を含む化学療法が併用される。
該態様における第2の例において、該医薬組成物は、プレドニゾロン、ドキソルビシンおよびビンクリスチン、ならびにそれらの塩およびプロドラッグからなる群から選択される少なくとも一化合物を含有する。該医薬組成物において、II型抗CD20抗体による治療が併用される。
該態様における第2の例において、該医薬組成物は、II型抗CD20抗体と、プレドニゾロン、ドキソルビシンおよびビンクリスチン、ならびにそれらの塩およびプロドラッグからなる群から選択される少なくとも一化合物と組み合わされて、同時に、別々に、または連続して投与される、医薬組成物である。
【0060】
該態様において、「II型抗CD20抗体」、「プレドニゾロン、ドキソルビシンおよびビンクリスチン、ならびにそれらの塩およびプロドラッグからなる群から選択される少なくとも一化合物」、「オビヌツズマブ耐性CD20陽性癌」、および「製剤化」の一般的な例示および好ましい例示は、上述の「細胞の増殖を抑制する剤または医薬」で述べたものと同じである。
上述の「細胞の増殖を抑制する剤または医薬」の第2の態様で述べた、「プレドニゾロン、ドキソルビシンおよびビンクリスチン、ならびにそれらの塩およびプロドラッグからなる群から選択される少なくとも一化合物」の「カスパーゼ活性化剤」への置き換えとその具体的な構成は、該態様にも適用され得る。
該態様において、上述の「第1~第3の態様における他の構成」も組成物における他の構成として適用され得る。
【0061】
C.製造方法
一態様において、本発明は、細胞の増殖を抑制する剤または医薬の製造を提供する。該態様において、該細胞はオビヌツズマブ耐性CD20陽性癌の細胞である。
該態様における第1の例において、II型抗CD20抗体が該製造に使用される。該剤は、プレドニゾロン、ドキソルビシンおよびビンクリスチン、ならびにそれらの塩およびプロドラッグからなる群から選択される少なくとも一化合物の投与を含む化学療法と併用される。
該態様における第2の例において、プレドニゾロン、ドキソルビシンおよびビンクリスチン、ならびにそれらの塩およびプロドラッグからなる群から選択される少なくとも一化合物が該製造に使用される。該剤は、II型抗CD20抗体による治療と併用される。
該態様における第3の例において、II型抗CD20抗体、およびプレドニゾロン、ドキソルビシンおよびビンクリスチン、ならびにそれらの塩およびプロドラッグからなる群から選択される少なくとも一化合物が該医薬の製造に使用される。
【0062】
別の態様において、本発明は、癌を治療するための医薬組成物の製造を提供する。該態様において、該癌はオビヌツズマブ耐性CD20陽性癌である。
該他の態様における第1の例において、II型抗CD20抗体が該製造に使用される。該医薬組成物は、プレドニゾロン、ドキソルビシンおよびビンクリスチン、ならびにそれらの塩およびプロドラッグからなる群から選択される少なくとも一化合物の投与を含む化学療法と併用される。
該他の態様における第2の例において、プレドニゾロン、ドキソルビシンおよびビンクリスチン、ならびにそれらの塩およびプロドラッグからなる群から選択される少なくとも一化合物が該製造に使用される。該医薬組成物は、II型抗CD20抗体による治療と併用される。
該他の態様における第3の例において、II型抗CD20抗体、およびプレドニゾロン、ドキソルビシンおよびビンクリスチン、ならびにそれらの塩およびプロドラッグからなる群から選択される少なくとも一化合物が該製造に使用される。II型抗CD20抗体と、プレドニゾロン、ドキソルビシンおよびビンクリスチン、ならびにそれらの塩およびプロドラッグからなる群から選択される少なくとも一化合物とは、組み合わせされて、同時に、別々に、または連続して投与される。
【0063】
これらの態様において、オビヌツズマブは、国際公開第2005/044859号で示される公知の方法に従って、当業者により製造され得る。該剤および該医薬組成物は、通常の技術により、オビヌツズマブを他の原料と混合することによって製造され得る。
【0064】
これらの態様において、「II型抗CD20抗体」、「プレドニゾロン、ドキソルビシンおよびビンクリスチン、ならびにそれらの塩およびプロドラッグからなる群から選択される少なくとも一化合物」、および「オビヌツズマブ耐性CD20陽性癌」の一般的な例示および好ましい例示は、上述の「細胞の増殖を抑制する剤または医薬」で述べたものと同じである。
上述の「細胞の増殖を抑制する剤または医薬」の第2の態様で述べた、「プレドニゾロン、ドキソルビシンおよびビンクリスチン、ならびにそれらの塩およびプロドラッグからなる群から選択される少なくとも一化合物」の「カスパーゼ活性化剤」への置き換えとその具体的な構成は、これらの態様にも適用され得る。
【0065】
上述の「細胞の増殖を抑制する剤または医薬」の第3の態様と同様に、上述の「細胞の増殖を抑制する剤の製造」の態様における第1の例として、該剤はII型抗CD20抗体によるオビヌツズマブ耐性CD20陽性癌の細胞の細胞周期停止または細胞死の増強剤に置き換えられ得る。置き換えられた後の該態様の製造において、プレドニゾロンまたはそれらの塩もしくはプロドラッグが使用される。
さらに、第2の例として、該剤はオビヌツズマブ耐性CD20陽性癌の細胞の細胞周期停止または細胞死の誘導剤に置き換えられ得る。置き換えられた後の該態様の製造において、II型抗CD20抗体が使用される。該剤は、プレドニゾロンまたはそれらの塩もしくはプロドラッグの投与を含む化学療法との併用により投与される。この併用によって、オビヌツズマブ耐性CD20陽性癌の細胞に対する細胞周期停止または細胞死は増強される。
これらの例において、細胞周期停止は、特に限定されず、G0/G1期、S期、G2期およびM期のいずれかの期の停止から選択される。これらの中で、細胞周期停止は、好ましくは、G0/G1期である。
さらに、プレドニゾロンのプロドラッグとしてプレドニゾンが使われる場合、II型抗CD20抗体およびプレドニゾンは生体に投与される。この場合、該生体おいて、プレドニゾンがプレドニゾロンに変換されてII型抗CD20抗体と共に、オビヌツズマブ耐性CD20陽性癌に作用する。
これらの例のいずれにおける他の具体的な構成は、上述の「細胞の増殖を抑制する剤の製造」の態様、および上述の「細胞の増殖を抑制する剤または医薬」の第3の態様と同じである。
【0066】
D.細胞増殖の抑制方法
一態様において、本発明は、細胞の増殖を抑制する方法を提供する。該態様において、該細胞はオビヌツズマブ耐性CD20陽性癌の細胞である。
一態様において、該方法は、オビヌツズマブ耐性CD20陽性癌の細胞に、i) II型抗CD20抗体を投与すること、ii) プレドニゾロン、ドキソルビシンおよびビンクリスチンならびにそれらの塩およびプロドラッグからなる群から選択される少なくとも一化合物を投与することを含む。
該態様における方法は、in vitroまたはin vivoの方法である。該態様における方法は、好ましくは、in vitroまたはヒト以外におけるin vivoの方法である。
【0067】
該態様において、「II型抗CD20抗体」、「プレドニゾロン、ドキソルビシンおよびビンクリスチン、ならびにそれらの塩およびプロドラッグからなる群から選択される少なくとも一化合物」、および「オビヌツズマブ耐性CD20陽性癌」の一般的な例示および好ましい例示は、上述の「細胞の増殖を抑制する剤または医薬」で述べたものと同じである。
該態様において、上述の「細胞の増殖を抑制する剤または医薬」で述べた別の態様である、「プレドニゾロン、ドキソルビシンおよびビンクリスチン、ならびにそれらの塩およびプロドラッグからなる群から選択される少なくとも一化合物」の「カスパーゼ活性化剤」への置き換えも適用され得る。
【0068】
上述の「細胞の増殖を抑制する剤または医薬」の第3の態様と同様に、上述の「細胞の増殖を抑制する方法」の態様における第1の例として、該方法はII型抗CD20抗体によるオビヌツズマブ耐性CD20陽性癌の細胞の細胞周期停止または細胞死を増強する方法に置き換えられ得る。置き換えられた後の該態様の方法は、プレドニゾロンまたはそれらの塩もしくはプロドラッグを投与することを含む。
さらに、第2の例として、該方法はオビヌツズマブ耐性CD20陽性癌の細胞の細胞周期停止または細胞死を誘導する方法に置き換えられ得る。置き換えられた後の該態様の方法は、II型抗CD20抗体を投与することを含む。この投与は、プレドニゾロンまたはそれらの塩もしくはプロドラッグの投与を含む化学療法と併用される。この併用によって、オビヌツズマブ耐性CD20陽性癌の細胞に対する細胞周期停止または細胞死は増強される。
これらの例において、細胞周期停止は、特に限定されず、G0/G1期、S期、G2期およびM期のいずれかの期の停止から選択される。これらの中で、細胞周期停止は、好ましくは、G0/G1期である。
さらに、プレドニゾロンのプロドラッグとしてプレドニゾンが使われる場合、II型抗CD20抗体およびプレドニゾンは生体に投与される。この場合、該生体おいて、プレドニゾンがプレドニゾロンに変換されてII型抗CD20抗体と共に、オビヌツズマブ耐性CD20陽性癌に作用する。
これらの例のいずれにおける他の具体的な構成は、上述の「細胞の増殖を抑制する方法」の態様、および上述の「細胞の増殖を抑制する剤または医薬」の第3の態様と同じである。
【0069】
E.治療方法
一態様において、本発明は、CD20陽性癌の治療方法を提供する。該態様において、該CD20陽性癌はオビヌツズマブ耐性CD20陽性癌である。該治療方法は、該CD20陽性癌を有する生体に、i) II型抗CD20抗体を投与すること、ii) プレドニゾロン、ドキソルビシンおよびビンクリスチン、ならびにそれらの塩およびプロドラッグからなる群から選択される少なくとも一化合物を投与すること、を含む。
【0070】
該態様において、II型抗CD20抗体の投与は、その治療上有効量が、当業者公知の投与方法により投与され得る。静脈内投与および皮下投与が、該投与方法として例示される。
該態様において、プレドニゾロン、ドキソルビシンおよびビンクリスチン、ならびにそれらの塩およびプロドラッグからなる群から選択される少なくとも一化合物の投与は、その治療上有効量が、当業者公知の投与方法により投与され得る。静脈内投与、皮下投与および経口投与が、該投与方法として例示される。
【0071】
「治療的有効量」は、少なくとも、特定の障害の測定可能な改善または予防に効果を及ぼすために要求される最小濃度である。本明細書における治療的有効量は、因子、例えば患者の疾患状態、年齢、性別、および体重、ならびに抗体が個人において所望の応答を誘発する能力などに従って変動しうる。治療的有効量は、また、抗体の任意の毒性または有害効果よりも治療的に有益な効果が勝るものである。
【0072】
本発明の治療方法において、II型抗CD20抗体、およびプレドニゾロン、ドキソルビシンおよびビンクリスチン、ならびにそれらの塩およびプロドラッグからなる群から選択される少なくとも一化合物は、組み合わせで投与されることが好ましく、同時に、別々に、または連続して投与されてもよい。
【0073】
II型抗CD20抗体、およびプレドニゾロン、ドキソルビシンおよびビンクリスチン、ならびにそれらの塩およびプロドラッグは、本明細書に記載の剤、医薬、医薬組成物等として、個々に製剤として、同時、または一定の時間間隔を空けて、別々に、あるいは連続して投与することが可能である。当該2種以上の製剤は、1日にそれぞれ異なる回数で投与してもよいし、一定日数をおいてそれぞれ異なる回数投与することもできる。各製剤を、以下に例示するような別々の投与スケジュールで、一対象に投与してもよい。
【0074】
II型抗CD20抗体は、例えば点滴静注で、成人ヒト対象に対し、1投与あたり約1mg~約10gを投与することができ、1投与あたり約10mg~約10gを投与することが好ましく、1投与あたり約100mg~約10gを投与することが好ましく、1投与あたり約1000mgを投与することが最も好ましい。II型抗CD20抗体の投与は、投与日1日あたり1回であることが好ましいが、患者の状態、治療効果等を考慮して、1日あたりの投与量を1日2回以上に分けて投与することもできる。
【0075】
II型抗CD20抗体の投与計画は、所望の効果が得られる範囲で限定されず、患者の状態、治療履歴、治療の工程(導入療法または維持療法)により、当業者が適宜決定することができる。
II型抗CD20抗体を用いた治療期間は、患者の状態、治療効果に基づき、最長約2年間継続することができる。
【0076】
II型抗CD20抗体の投与は、約1~約8週間を1サイクルとしてもよく、約2~約4週間を1サイクルとすることが好ましく、約3~約4週間を1サイクルとすることが最も好ましい。治療のためのサイクル回数は、所望の効果が得られる範囲で限定されないが、約1~約20サイクル行ってもよく、約3~10サイクル行うことが好ましく、約5~約8サイクル行うことが最も好ましい。なお、II型抗CD20抗体を、プレドニゾロン、ドキソルビシンおよびビンクリスチン、ならびにそれらの塩およびプロドラッグのいずれかと組み合わせて投与する期間においては、II型抗CD20抗体の投与は、約3週間を1サイクルとし、8サイクル行うことが好ましい。
【0077】
治療を構成する各投与サイクルにおいて、II型抗CD20抗体は同一の間隔で投与されても、異なる間隔で投与されてもよい。例えば、治療の1サイクル目では、治療開始1、8、15日目に1日1回投与され、2サイクル目以降では、各サイクルの1日目に1日1回投与されてもよい。
【0078】
また、II型抗CD20抗体は、導入療法と、維持療法において、治療のための1サイクルの長さ、およびサイクル数が異なってもよい。例えば、導入療法では、約3~約4週間を1サイクルとし、約6~約8サイクル行い、維持療法では、約8週間(約2か月)を1サイクルとし、約2年間(約12サイクル)行ってもよい。
【0079】
II型抗CD20抗体は、例えば、導入療法において、約3~約4週間を1サイクルとし、1サイクル目では治療開始1、8、15日目に投与され、2サイクル目以降では、各サイクルの1日目に投与され得る。その後、維持療法において、約8週間(2か月)を1サイクルとし、最長2年間治療が継続され得る。
【0080】
プレドニゾンまたはその塩、あるいはそのプロドラッグは、例えば、患者の状態、治療効果に基づき、成人ヒト対象に対し、1日あたり約1~約200mgを経口投与することができるが、1日あたり約5~約60mgを経口投与することが好ましい。なお、当該投与量を1日1回投与することも、または1日2回以上に分割投与することもできるが、当該投与量を1日1回で投与するか、または1日2~4回で分割投与することが好ましい。
【0081】
ドキソルビシンまたはその塩、あるいはそのプロドラッグは、患者の状態、治療効果に基づき、例えば点滴静注で、成人ヒト対象に対し、1日あたり約5~約100mgを投与することができるが、1日あたり約20(0.4mg/kg体重)~約30mg(0.6mg/kg体重)を投与することが好ましい。なお、1投与あたりの投与量、および1日あたりの投与量は、投与計画により適宜変更でき、例えば1日1回、2~3日間静脈内にワンショット投与し、その後7~約10日間休薬する場合、約20mgを1日1回投与し、本サイクルを2~3サイクル繰り返すことが好ましい。あるいは、例えば1日1回3日連日静脈内にワンショット投与し、その後18日間休薬する場合、約20~約30mgを1日1回投与し、本サイクルを2~3サイクル繰り返すことが好ましい。なお、ドキソルビシンまたはその塩、あるいはそのプロドラッグは、特に他の抗腫瘍剤と併用する場合に、約25~約50mg/m2(体表面積)を1日1回静脈内投与してもよく(繰り返しの場合、2週間以上の間隔で次回投与を開始)、あるいは、1日目に約40mg/m2(体表面積)、8日目に約30mg/m2(体表面積)を静脈内投与し、その後20日間休薬し、本サイクルを繰り返してもよい。
【0082】
ビンクリスチンまたはその塩、あるいはそのプロドラッグは、患者の状態、治療効果に基づき、例えば点滴静注で、成人ヒト対象に対し、1投与あたり約0.01~約0.1mg/kg体重を投与することができるが、1投与あたり約0.02~約0.05mg/kg体重を投与することが好ましい。副作用を考慮して、投与1回あたり2mgを超えないことが好ましい。なお、ビンクリスチンまたはその塩、あるいはそのプロドラッグは、約1~約14日に1回の投与間隔で投与することができるが、約1週間に1回投与することが好ましい。
【0083】
該態様において、治療の対象は、CD20陽性癌を有する生体である。該対象は、CD20陽性癌を有する生体である限り、特に限定されない。該態様において、ヒトを包含する哺乳動物が該生体として例示される。該態様において、該生体は、好ましくはヒトを包含する哺乳動物である。該態様において、齧歯類およびヒトを包含する霊長類が、該哺乳動物として例示される。該態様において、マウスおよびラットが齧歯類として例示される。該態様において、ヒトおよびカニクイザルが、ヒトを包含する霊長類として例示される。該態様において、該哺乳動物は、好ましくはヒトを包含する霊長類である。該態様において、ヒトを包含する霊長類は、好ましくはヒトおよびカニクイザルであり、より好ましくはヒトである。
【0084】
該態様において、「II型抗CD20抗体」、「プレドニゾロン、ドキソルビシンおよびビンクリスチン、ならびにそれらの塩およびプロドラッグからなる群から選択される少なくとも一化合物」、および「オビヌツズマブ耐性CD20陽性癌」の一般的な例示および好ましい例示は、上述の「細胞の増殖を抑制する剤または医薬」で述べたものと同じである。
該態様において、上述の「細胞の増殖を抑制する剤または医薬」で述べた別の態様である、「プレドニゾロン、ドキソルビシンおよびビンクリスチン、ならびにそれらの塩およびプロドラッグからなる群から選択される少なくとも一化合物」の「カスパーゼ活性化剤」への置き換えも適用され得る。
【0085】
F.II型抗CD20抗体、化合物、および組み合わせ
一態様において、本発明は、オビヌツズマブ耐性CD20陽性癌の細胞の増殖の抑制、オビヌツズマブ耐性CD20陽性癌の治療、オビヌツズマブ耐性CD20陽性癌の細胞に対する細胞周期停止または細胞死の誘導の増強、または、オビヌツズマブ耐性CD20陽性癌の細胞の細胞周期停止または細胞死の増強において使用するための、II型抗CD20抗体、化合物、およびこれらの組み合わせを提供する。
該態様における第1の例において、本発明のII型抗CD20抗体は、プレドニゾロン、ドキソルビシンおよびビンクリスチンならびにそれらの塩およびプロドラッグからなる群から選択される少なくとも一化合物の投与を含む化学療法との併用により使用するための、II型抗CD20抗体である。
該態様における第2の例において、本発明のII型抗CD20抗体は、カスパーゼ活性化剤の投与を含む化学療法との併用により使用するための、II型抗CD20抗体である。
該態様における第3の例において、本発明の化合物は、II型抗CD20抗体による治療との併用により使用するためのプレドニゾロン、ドキソルビシンおよびビンクリスチンならびにそれらの塩およびプロドラッグからなる群から選択される少なくとも一化合物である。
該態様における第4の例において、化合物は、II型抗CD20抗体による治療との併用により使用するためのカスパーゼ活性化剤である。
該態様における第5の例において、組み合わせは、II型抗CD20抗体、およびプレドニゾロン、ドキソルビシンおよびビンクリスチンならびにそれらの塩およびプロドラッグからなる群から選択される少なくとも一化合物の組み合わせである。
該態様における第6の例において、組み合わせは、II型抗CD20抗体、およびカスパーゼ活性化剤の組み合わせである。
【0086】
一態様において、本発明は、オビヌツズマブ耐性CD20陽性癌の細胞の細胞周期停止または細胞死の増強において使用するための、プレドニゾロンまたはそれらの塩もしくはプロドラッグを提供する。
一態様において、本発明は、オビヌツズマブ耐性CD20陽性癌の細胞に対する細胞周期停止または細胞死の誘導の増強において使用するための、II型抗CD20抗体、および、II型抗CD20抗体とプレドニゾロンまたはそれらの塩もしくはプロドラッグとの組み合わせを提供する。
ここで、細胞周期停止は、細胞死が誘導される範囲で限定されず、G0/G1期における停止であってもよい。
【0087】
本発明のII型抗CD20抗体、化合物、および組み合わせについて、CD20陽性癌がB細胞性非ホジキンリンパ腫であってもよく、II型抗CD20抗体がオビヌツズマブであってもよく、化合物が、プレドニゾロンおよびドキソルビシンならびにそれらの塩およびプロドラッグからなる群から選択されでもよい。また、オビヌツズマブ耐性CD20陽性癌が、オビヌツズマブ治療経験があるCD20陽性癌であっても、あるいはオビヌツズマブを用いた導入療法後のオビヌツズマブ単独投与による維持療法の開始後に再発した癌であってもよい。
【0088】
本発明のII型抗CD20抗体、化合物、および組み合わせについて、「II型抗CD20抗体」、「プレドニゾロン、ドキソルビシンおよびビンクリスチン、ならびにそれらの塩およびプロドラッグからなる群から選択される少なくとも一化合物」、「プレドニゾロンまたはそれらの塩もしくはプロドラッグ」および「オビヌツズマブ耐性CD20陽性癌」の一般的な例示および好ましい例示は、上述の「細胞の増殖を抑制する剤または医薬」で述べたものと同じである。
該態様において、上述の「細胞の増殖を抑制する剤または医薬」で述べた別の態様である、「プレドニゾロン、ドキソルビシンおよびビンクリスチン、ならびにそれらの塩およびプロドラッグからなる群から選択される少なくとも一化合物」の「カスパーゼ活性化剤」への置き換えも適用され得る。
【0089】
G.抗CD20抗体耐性CD20陽性癌
一態様において、上述のAからFの態様において、「オビヌツズマブ耐性CD20陽性癌」は「抗CD20抗体耐性CD20陽性癌」に置き換えられ得る。
該「抗CD20抗体耐性CD20陽性癌」における該抗CD20抗体は、上述のAで定義したCD20に特異的に結合する抗体が包含される。該抗CD20抗体は、表1で定義されるI型及びII型の抗CD20抗体を包含する。該抗CD20抗体は、好ましくはII型の抗CD20抗体である。II型の抗CD20抗体の中でも、オビヌツズマブが好ましい。
【0090】
CD20陽性癌の中でもオビヌツズマブに耐性を有するCD20陽性癌またはオビヌツズマブを含む治療を行った後に再発したCD20陽性癌に対して、どのようにオビヌツズマブ等のII型抗CD20抗体を使用し続けるかは、臨床の場で悩ましい。
本発明においては、そのような状況下における一態様として、オビヌツズマブに耐性を有するCD20陽性癌またはオビヌツズマブを含む治療を行った後に再発したCD20陽性癌に対して、プレドニゾロン、ドキソルビシンおよびビンクリスチン、ならびにそれらの塩およびプロドラッグからなる群から選択される少なくとも一化合物を併用することにより、II型抗CD20抗体、特にオビヌツズマブを用いた治療による効果を高める手段が見出された。中でも、プレドニゾロンおよびドキソルビシン、ならびにそれらの塩およびプロドラッグがその効果を発揮しやすく、そして、特にプレドニゾロンまたはそれらの塩若しくはプロドラッグがその効果を発揮しやすい。そのメカニズムとしてオビヌツズマブおよびプレドニゾロンの併用によるG0/G1期における細胞周期停止がその効果に関与していると考えられる。
【0091】
出典明示による援用
ここに述べた全ての刊行物、特許、及び特許出願は、あたかも各個々の刊行物、特許又は特許出願が出典明示により特にかつ個々に援用されるべきことが示されるように、出典明示によりその全体がここに援用される。矛盾する場合、ここでの定義を含む本出願が優先する。
【実施例】
【0092】
(実施例1)
ヒト胚中心B細胞様びまん性大細胞型B細胞性リンパ腫細胞株SU-DHL-4を100μg/mLのN-ethyl-N-nitrosoureaで24時間処理し、遺伝子変異を無作為に導入した。その後、オビヌツズマブを200μg/mLとなるように添加し、5%CO2存在下、37℃で3週間培養した。増殖した細胞を顕微鏡目視下でピコピペットを用いてクローニングし、単一細胞由来のオビヌツズマブ直接細胞死耐性クローンとしてクローン1A2、クローン1D2、クローン3A4を樹立した。4日間の細胞増殖試験の結果、オビヌツズマブの50%細胞増殖阻害濃度はSU-DHL-4では0.037μg/mLであったのに対し、オビヌツズマブ直接細胞死耐性クローンでは3クローン全て200μg/mL以上であり、オビヌツズマブ直接細胞死耐性クローンはin vitroにおけるオビヌツズマブへの感受性が低下していることが明らかとなった。
【0093】
オビヌツズマブ直接細胞死耐性クローンを1×104細胞ずつ96穴プレートに播種し、オビヌツズマブ(1μg/mL)をアルキル化剤シクロホスファミドの活性代謝物4-ヒドロペルオキシシクロホスファミド(100nM)、アントラサイクリン系抗がん性抗生物質ドキソルビシン(10nM)、ビンカアルカロイド系抗がん剤ビンクリスチン(1nM)、合成糖質副腎皮質ホルモンプレドニゾロン(1μM)から選択される抗がん剤と併用した。5%CO2存在下、37℃で培養し、4日後の生細胞数をCellTiter-Glo 3D Cell Viability Assay(プロメガ)で測定した。薬剤非添加の細胞に対する各薬剤単剤添加及び二剤添加の細胞増殖割合から、Bliss independence modelを参考に併用効果を数値化し、その結果を表2に示した。併用効果は、log10(二剤添加時の細胞増殖割合)-log10(オビヌツズマブ単剤添加時の細胞増殖割合)-log10(抗がん剤単剤添加時の細胞増殖割合)で求められる数値により評価した。ここで、併用効果の数値が0未満は相加以上の効果を、0は相加効果を、0より高い場合は相加以下の効果を意味する(J Biopharm Stat. 2012;22(3):535-543)。
【0094】
【0095】
その結果、全てのオビヌツズマブ直接細胞死耐性クローンにおいてオビヌツズマブとドキソルビシン、プレドニゾロンあるいはビンクリスチン併用時に相加以上の併用効果を示した。一方で、オビヌツズマブと4-ヒドロペルオキシシクロホスファミドの併用は全てのオビヌツズマブ直接細胞死耐性クローンで相加効果程度の併用効果を示した。
【0096】
(実施例2)
オビヌツズマブ直接細胞死耐性クローン1A2を1×10
4細胞ずつ96穴プレートに播種し、オビヌツズマブ(0.00015~10μg/mL)とプレドニゾロン(0.2、1μM)を添加した。5%CO
2存在下、37℃で培養し、4日後の生細胞数をCellTiter-Glo 3D Cell Viability Assay(プロメガ)で測定した。各濃度のプレドニゾロン添加時におけるオビヌツズマブ非添加の細胞数に対する細胞増殖率(平均値+標準偏差)を
図1に示した。
【0097】
その結果、オビヌツズマブ直接細胞死耐性クローンにおいてプレドニゾロンの併用によりオビヌツズマブの細胞増殖抑制効果は増強された。
【0098】
(実施例3)
オビヌツズマブ直接細胞死耐性クローン1A2を2×10
5細胞ずつ6穴プレートに播種し、オビヌツズマブ(1μg/mL)とプレドニゾロン(1μM)を添加した。5%CO
2存在下、37℃で培養し、48時間後細胞をメーカー推奨プロトコルに従ってDAPIで染色し、蛍光をNC-3000(chemometec)で観察した。細胞周期をFlow Jo.バージョン7.6.5で解析した。3回の独立した試験の結果(平均値+標準偏差)を
図2に示した。なお、
図2において併用はオビヌツズマブとプレドニゾロン両薬剤添加を示している。
【0099】
その結果、オビヌツズマブとプレドニゾロンの両剤添加時は各単剤添加時と比較して統計学的に有意にG0/G1期の細胞割合が増加した。
【0100】
オビヌツズマブ直接細胞死耐性クローン1A2を3×10
6細胞ずつ25cm
2細胞培養フラスコに播種し、オビヌツズマブ(1μg/mL)とプレドニゾロン(1μM)を添加した。5%CO
2存在下、37℃で培養し、48時間後タンパク質を抽出した。タンパク質の発現量をウエスタンブロッティングにより観察した結果を
図3に示した。なお、図中-は薬剤非添加を、+は薬剤添加を示す。
【0101】
その結果、オビヌツズマブとプレドニゾロン併用時にp27のユビキチンリガーゼであるSkp2のタンパク質量が減少し、サイクリン依存キナーゼ阻害タンパク質であるp27のタンパク質量が増加し、リン酸化Rb量が減少した。従って、
図2で見られたオビヌツズマブとプレドニゾロン両薬剤添加時のG0/G1期の細胞の増加は、Skp2の減少に起因するp27の増加およびリン酸化Rbの減少によるものと考えられた。以上から、オビヌツズマブとプレドニゾロン併用時に各単剤と比較してより強くG1期停止が誘導されることが示された。
【0102】
オビヌツズマブ直接細胞死耐性クローン1A2を1×10
6細胞ずつ6穴プレートに播種し、オビヌツズマブ(1μg/mL)とプレドニゾロン(1μM)を添加した。5%CO
2存在下、37℃で培養し72時間後APO-BrdU TUNEL Assay Kit (Thermo Fisher)で細胞を染色した。FACS Fortessa(Becton Dickinson)で蛍光を観察し、Flow Jo.バージョン10で解析した結果を
図4に示した。なお、
図4において、併用はオビヌツズマブとプレドニゾロン両薬剤添加を示している。
【0103】
その結果、オビヌツズマブとプレドニゾロンの併用は各単剤と比較してDNAの断片化を亢進させた。従って、本併用は各単剤と比較してより強く細胞死誘導を増強させることを示している。
以上の結果から、G1期停止と細胞死誘導が増強されることによりオビヌツズマブとプレドニゾロンはより強い併用効果を示すと考えられる。
【0104】
(実施例4)
オビヌツズマブ直接細胞死耐性クローン1A2を1×10
4細胞ずつ96穴プレートに播種し、オビヌツズマブ(0.00015~10μg/mL)とドキソルビシン(2.5~10nM)を添加した。5%CO
2存在下、37℃で培養し、4日後の生細胞数をCellTiter-Glo 3D Cell Viability Assay(プロメガ)で測定した。各濃度のドキソルビシン添加時におけるオビヌツズマブ非添加の細胞増殖率を100%とし、オビヌツズマブ添加時の細胞増殖率(平均値+標準偏差)を
図5に示した。
【0105】
その結果、オビヌツズマブ直接細胞死耐性クローンにおいてドキソルビシンとの併用によりオビヌツズマブの細胞増殖抑制効果は増強された。
【0106】
(実施例5)
オビヌツズマブ直接細胞死耐性クローン1A2を1×10
4細胞ずつ96穴プレートに播種し、オビヌツズマブ(1μg/mL)とドキソルビシン(10nM)を添加した。5%CO
2存在下、37℃で培養し48時間後のカスパーゼ3/7活性をCaspaseGlo 3/7 assay(プロメガ)で測定した。両薬剤非添加の細胞に対するカスパーゼ3/7活性(平均値+標準偏差)を
図6に示した。
その結果、オビヌツズマブとドキソルビシンの併用は各単剤と比較して統計学的に有意に高いカスパーゼ3/7活性を示した(P<0.05)。
【0107】
オビヌツズマブ直接細胞死耐性クローン1A2を1×10
6細胞ずつ6穴プレートに播種し、オビヌツズマブ(1μg/mL)とドキソルビシン(10nM)、全カスパーゼ阻害剤Z-VAD-FMK(40μM)を添加した。5%CO
2存在下、37℃で培養し72時間後APO-BrdU TUNEL Assay Kit (Thermo Fisher)で細胞を染色した。FACS Fortessa(Becton Dickinson)で蛍光を観察し、Flow Jo.バージョン10で解析した結果を
図7に示した。なお、
図7において、併用はオビヌツズマブとドキソルビシン両薬剤添加を示し、上段はZ-VAD-FMK非添加時の結果を下段はZ-VAD-FMK添加時の結果を示している。
【0108】
その結果、オビヌツズマブとドキソルビシンの併用は各単剤と比較してDNAの断片化を亢進させた。従って、本併用は各単剤と比較してより強く細胞死誘導を増強させることを示している。さらに、このDNAの断片化はZ-VAD-FMKの添加により抑制された。従って、オビヌツズマブとドキソルビシンの併用により増強された細胞死はカスパーゼ依存的に誘導されることを示唆している。
【0109】
オビヌツズマブ直接細胞死耐性クローン1A2を1×10
4細胞ずつ96穴プレートに播種し、オビヌツズマブ(0.1、1μg/mL)とドキソルビシン(10nM)、全カスパーゼ阻害剤Z-VAD-FMK(40μM)を添加した。5%CO
2存在下、37℃で培養し4日後の生細胞数をCellTiter-Glo 3D Cell Viability Assay(プロメガ)で測定した。各薬剤添加時のオビヌツズマブ非添加の細胞数に対する細胞増殖率(平均値+標準偏差)を
図8に示した。
その結果、ドキソルビシンにより増強されたオビヌツズマブの細胞増殖阻害活性はZ-VAD-FMKの添加により抑制された。
【0110】
以上の結果から、カスパーゼ依存的な細胞死が増強されることによりオビヌツズマブとドキソルビシンはより強い併用効果を誘導することが示された。
【0111】
(実施例6)
ヒト非ホジキンリンパ腫細胞株RLを300μg/mLのN-ethyl-N-nitrosoureaで24時間処理し、遺伝子変異を無作為に導入した。Effector細胞としてCD16(158V)/NK-92細胞をエフェクタ:標的(ET) ratio 20:1となるように添加し、オビヌツズマブ0.1μg/mLとともに37℃で一晩ADCC反応をおこなった。増殖した細胞について、MACSで抗CD56抗体(Biolegend)を用いたネガティブセレクションと、抗CD20抗体(BD Biosciences)を用いたポジティブセレクションをおこなった。
【0112】
上記のADCC反応とMACSによるセレクションを計3回繰り返したのちに、増殖してきた細胞をクローニングし、オビヌツズマブ誘導性ADCC耐性株としてRL-E300-1、RL-E300-2、RL-E300-8、RL-E300-22を樹立した。
【0113】
RL親株および各耐性株について、カルセイン-AM(FUJIFILM Wako Pure Chemical Corporation)で生細胞を染色後1x104 cells/wellずつ96穴プレートに播種しオビヌツズマブを0.0001~100ng/mLの濃度で添加した。Effector細胞としてCD16(158V)/NK-92細胞をET ratio 1:1で加えて37℃で4時間インキュベートした。またMaximum Lysisとして1% Triton X-100を添加した。プレートを遠心、上清を回収後、カルセインの蛍光をプレートリーダーで測定した。ADCC感受性は(測定値-バックグラウンド)/(Maximum Lysis-バックグラウンド)x100(%)で評価した。
【0114】
その結果すべてのADCC耐性株において、親株と比較して有意なADCC感受性の低下を確認した。(
図9)
【0115】
(実施例7)
RL親株および各耐性株について、4x105細胞ずつプレートに播種しプレドニゾロン(10μM)を添加し、37℃で72時間培養した。細胞を回収しコントロールIgG抗体または抗CD20抗体(BD Biosciences)で染色しCD20発現をFACS Fortessa(Becton Dickinson)で解析した。
【0116】
その結果、親株および耐性株においてプレドニゾロン前処理によりCD20の発現が亢進することが明らかとなった(
図10)。
【0117】
(実施例8)
RL親株および各耐性株について、プレドニゾロン(10μM)を添加し、37℃で72時間前培養した。細胞を回収しカルセイン-AM(FUJIFILM Wako Pure Chemical Corporation)で生細胞を染色後、1x104cells/wellずつ96穴プレートに播種しオビヌツズマブを1ng/mLの濃度で添加した。これらにEffector細胞としてCD16(158V)/NK-92細胞をET ratio 1:1で加えて37℃で4時間インキュベートした。またMaximum Lysisとして、1%Triton X-100を添加した。プレートを遠心、上清を回収後、カルセインの蛍光をプレートリーダーで測定した。ADCC感受性は(測定値-バックグラウンド)/(Maximum Lysis-バックグラウンド)x100(%)で評価した。
【0118】
その結果、親株および耐性株においてプレドニゾロン前処理によりADCC感受性が亢進することが明らかとなった(
図11)。
【0119】
(実施例9)
RL-E300-1耐性株を5x106細胞/匹ずつマウス C.B-17/Icr-scid/scidJcl(日本クレア)に皮下移植し、腫瘍生着後、以下の通り群分けした(各n=6)。
1.IgG(30mg/kg)+vehicle投与群(IgG+Dw群)
2.オビヌツズマブ(30mg/kg)+vehicle投与群(OBI+Dw群)
3.IgG(30mg/kg)+プレドニゾロン(4mg/kg)投与群(IgG+PSL群)
4.オビヌツズマブ(30mg/kg)+プレドニゾロン(4mg/kg)投与群(OBI+PSL群)
これらについて投与(オビヌツズマブまたはIgG(ヒトIgG、CAPPEL、Cat#55908):day1、8、15(週1回(q.w.)、静注(i.v.)、プレドニゾロンまたはvehicle(Dw):day1-5、経口投与(p.o.))および腫瘍径計測を実施した。
【0120】
その結果Day18で比較したところ、各コントロール群(IgG+Dw、OBI+Dw、IgG+PSL群)と比較して、併用群(OBI+PSL群)において有意な抗腫瘍効果が認められた(
図12)。
【配列表】