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特許7590335膜ろ過システムの洗浄方法及び膜ろ過システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-18
(45)【発行日】2024-11-26
(54)【発明の名称】膜ろ過システムの洗浄方法及び膜ろ過システム
(51)【国際特許分類】
   B01D 65/02 20060101AFI20241119BHJP
【FI】
B01D65/02
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021551671
(86)(22)【出願日】2020-10-06
(86)【国際出願番号】 JP2020037910
(87)【国際公開番号】W WO2021070832
(87)【国際公開日】2021-04-15
【審査請求日】2023-04-11
(31)【優先権主張番号】P 2019187789
(32)【優先日】2019-10-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】507214083
【氏名又は名称】メタウォーター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100174001
【弁理士】
【氏名又は名称】結城 仁美
(72)【発明者】
【氏名】小園 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】松重 伸尚
【審査官】片山 真紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-048251(JP,A)
【文献】特開平08-024598(JP,A)
【文献】国際公開第2011/122289(WO,A1)
【文献】特開2019-093353(JP,A)
【文献】実開昭54-109919(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D61/00-71/82
C02F1/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ろ過膜によって隔てられた一次側領域及び二次側領域を含む複数のモジュールが、前記一次側領域において、共通するブローヘッダー管により並列に接続されてなる膜ろ過システムの洗浄方法であって、
前記複数のモジュールに対して、逆洗水を流す逆洗工程と、
前記逆洗工程の開始後に、前記ブローヘッダー管を通じて前記複数のモジュール内に圧縮気体を導入するブロー工程と、を含み、さらに、
前記ブロー工程の開始前に、前記ブローヘッダー管内に、前記複数のモジュールの接続方向全体にわたる気体層を形成することを含み、
前記気体層の形成にあたり、下記(1)又は(2)の何れかの方途に従い、気体層を形成する、膜ろ過システムの洗浄方法。
(1)前記ブローヘッダー管内に保持されていた被処理水を排水することにより、前記気体層を形成する方途。
(2)前記逆洗工程よりも前にろ過工程をさらに含む場合において、前記ろ過工程を開始する際に、前記複数のモジュールに対する水張り操作を実施するにあたり、前記ブローヘッダー管内が満水となる前に前記水張り操作を停止することにより、前記気体層を形成する方途。
【請求項2】
前記逆洗工程の開始前に、前記気体層を形成する、請求項1に記載の膜ろ過システムの洗浄方法。
【請求項3】
前記膜ろ過システムは、前記一次側領域から被処理水を供給する被処理水供給ヘッダー管と、前記複数のモジュール内に備えられた前記ろ過膜を通過して得られたろ過水を系外に排出するろ過水ヘッダー管とを備える、
請求項1又は2に記載の膜ろ過システムの洗浄方法。
【請求項4】
ろ過膜によって隔てられた一次側領域及び二次側領域を含む複数のモジュールが、一次側領域において、共通するブローヘッダー管により並列に接続されてなる膜ろ過システムであって、
前記ブローヘッダー管が、レデューサーを介して排水管に接続されており、
前記レデューサーの前記ブローヘッダー管側端部の断面積が、前記レデューサーの排水管側端部の断面積よりも、大きく、且つ、前記レデューサーの前記ブローヘッダー管側端部の上端位置が、前記レデューサーの排水管側端部の上端位置よりも、前記膜ろ過システムの鉛直方向において、上側に位置する、
膜ろ過システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、膜ろ過システムの洗浄方法及び膜ろ過システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、上水処理システム、下水処理システム、工業用水処理システム、排水処理システム、海水淡水化システムなどの各種水処理システムにおいて被処理水中の汚濁物質を分離除去する方法として、膜ろ過を用いた水処理方法が知られている。
【0003】
ここで、膜ろ過を用いた水処理方法では、ろ過の継続に伴い、被処理水中の汚濁物質等がろ過膜に付着してろ過膜の目詰まりが生じ、ろ過性能が低下するため、定期的にろ過膜を逆流洗浄(以下「逆洗」という。)して目詰まりを解消する必要がある。
【0004】
そのため、従来、ろ過膜を用いて被処理水をろ過する膜ろ過システムでは、定期的にろ過膜の二次側(ろ過水側)から一次側(被処理水側)へと逆洗水を通水することにより、ろ過膜の逆洗を行っていた。さらに、従来の膜ろ過システムでは、逆洗水に併せて、圧縮気体等のフラッシング用流体を一次側領域内にて一方から他方に流通させることにより、膜の一次側領域側表面に堆積した汚濁物質等を除去して洗浄効果を高める操作(フラッシング操作)が行われていた。ここで、膜ろ過システムでは、複数のモジュールを並列接続する構成が、一般的に採用されてきた(例えば、特許文献1参照)。かかる構成の膜ろ過システムでは、並列接続された複数のモジュール間において、フラッシング用流体の流れやすさに偏りが生じ、結果的に、複数のモジュール間にて、得られる洗浄効果にばらつきが生じていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第6362748号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、複数の並列接続されたモジュールを備える膜ろ過システムにおいて、複数のモジュールについて、十分に均等な洗浄効果を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
膜ろ過システムの洗浄方法の一側面は、ろ過膜によって隔てられた一次側領域及び二次側領域を含む複数のモジュールが、前記一次側領域において、共通するブローヘッダー管により並列に接続されてなる膜ろ過システムの洗浄方法であって、前記複数のモジュールに対して、逆洗水を流す逆洗工程と、前記逆洗工程の開始後に、前記ブローヘッダー管を通じて前記複数のモジュール内に気体を導入するブロー工程と、を含み、さらに、前記ブロー工程の開始前に、前記ブローヘッダー管内に、前記複数のモジュールの接続方向全体にわたる気体層を形成することを含む、ことを特徴とする。
【0008】
膜ろ過システムの一側面は、ろ過膜によって隔てられた一次側領域及び二次側領域を含む複数のモジュールが、一次側領域において、共通するブローヘッダー管により並列に接続されてなる膜ろ過システムであって、前記ブローヘッダー管が、レデューサーを介して排水管に接続されており、前記レデューサーの前記ブローヘッダー管側端部の断面積が、前記レデューサーの排水管側端部の断面積よりも、大きく、且つ、前記レデューサーの前記ブローヘッダー管側端部の上端位置が、前記レデューサーの排水管側端部の上端位置よりも、前記膜ろ過システムの鉛直方向において、上側に位置する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、複数の並列接続されたモジュールを備える膜ろ過システムにおいて、複数のモジュールについて、十分に均等な洗浄効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】(a)~(d)は、本発明に従う膜ろ過システムの洗浄方法の一例を説明する図である。
図2】(a)~(e)は、図1に後続して、本発明に従う膜ろ過システムの洗浄方法の一例を説明する図である。
図3】(a)~(b)は、本発明に従う膜ろ過システムの洗浄方法の他の一例において、気体層を形成するための操作を説明する図である。
図4】(a)~(e)は、本発明に従う膜ろ過システムの洗浄方法のさらに他の一例において、気体層を形成するための操作を説明する図である。
図5】(a)~(e)は、本発明に従う膜ろ過システムの概略構造の一例を示すとともに、かかる膜ろ過システムを用いた場合の、本発明の洗浄方法の一例を説明する図である。
図6】異形レデューサーの形状の一例を説明する概略図である。
図7】本発明に従う洗浄方法を実施可能な膜ろ過システムの概略構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を、図面に基づき詳細に説明する。なお、各図において同一の符号を付したものは、同一の構成要素を示すものとする。
【0012】
本発明の膜ろ過システムの洗浄方法を適用可能な膜ろ過システムは、特に限定されることなく、上水処理、下水処理、工業用水処理、排水処理、海水淡水化などの各種水処理において被処理水中の汚濁物質を分離除去する際に用いることができる。
【0013】
本発明者らは、複数の並列接続されたモジュールを備える膜ろ過システムにおいて、複数のモジュールについて、十分に均等な洗浄効果を得ることを目的として鋭意検討を行った。そして、本発明者らは、ろ過膜によって隔てられた一次側領域及び二次側領域を含む複数のモジュールが、並列に接続されてなる膜ろ過システムを逆洗して、さらに、空気などの気体を一次側領域に対して送気するにあたり、ブローヘッダー管内に存在する原水が送気の抵抗となって、送気の効率を低下させることに着目した。より詳細には、本発明者らは、ブローヘッダー管内に存在する原水が送気の抵抗となることに起因して、比較的抵抗が少ないモジュール(例えば、送気口付近に存在するモジュール)に流れる気体量がその他のモジュールに流れる気体量よりも多くなり、得られるブロー効果にモジュール間でばらつきが生じることに着目した。そこで、本発明者らは、気体を一次側領域に対して送気する前に、ブローヘッダー管内に気体層を形成することで、複数のモジュールのそれぞれに流入する気体量の均一性を高め得ることを見出し、本例示に係る膜ろ過システムを完成させた。
【0014】
(膜ろ過システムの概略構成)
まず、本例示に係る膜ろ過システムの洗浄方法の説明に先立ち、本例示に係る洗浄方法を実施可能な膜ろ過システムの概略構成について、図7を参照して説明する。図7に示す膜ろ過システム100は、ろ過膜(図示しない)によって隔てられた一次側領域及び二次側領域を含む複数のモジュール10と、かかる複数のモジュール10の一次側領域にて、複数のモジュール10を並列接続する共通するブローヘッダー管20と、を備えている。さらに、図7に示す膜ろ過システム100では、複数のモジュール10に対して、一次側領域から被処理水を供給する被処理水供給ヘッダー管30と、複数のモジュール10内に備えられたろ過膜を通過して得られたろ過水を系外に排出するろ過水ヘッダー管40とを備えている。
【0015】
さらに、図7に示す膜ろ過システム100において、複数のモジュール10は、それぞれ、膜キャップ11を備えていてもよい。また、複数のモジュール10の本数は、図示例(図7では、6本)に限定されない。さらに、複数のモジュール10に共通するブローヘッダー管20は、それぞれのモジュール10(図7では、各モジュール10に備えられた膜キャップ11)に対して接続されたブローヘッダー管接続部21、及びブローバルブ22を備えている。なお、図示しないが、ブローバルブ22は、ブローヘッダー管20内に対して気体を送気する送気管及びブローヘッダー管20内に流入してきた被処理水を排水するための排水管として機能し得る、配管に設けられ得る。さらにまた、被処理水供給ヘッダー管30は、それぞれのモジュール10に対して接続された被処理水供給ヘッダー管接続部31、及び被処理水バルブ32を備えている。そして、ろ過水ヘッダー管40は、それぞれのモジュール10に対して接続されるとともに、ろ過水バルブ41を備えている。なお、ろ過水ヘッダー管40の各モジュール10に対する接続は、各モジュール10の鉛直方向上部に接続された、図示しないろ過水ポートなどにより構成され得る。
【0016】
複数のモジュール10は、さらに、それぞれ複数のサブモジュール12を有し得る。かかるサブモジュール12の本数は、図示例に限定されず、例えば、10本でありうる。そして、サブモジュール12は、図示しないろ過膜を含む構成要素である、膜エレメントを有し得る。かかる膜エレメントは、流体流路となる直径数mm(例えば、2.5mm)のセルを内部に有し得る。かかる膜エレメントとしては、特に限定されることなく、モノリス型モジュール、チューブ型モジュール、及び中空糸型モジュール等を採用することができる。以下、膜エレメントがモノリス型のセラミックろ過膜を含むものとして説明する。
【0017】
なお、図7に示す膜ろ過システム100は、ろ過処理を行っている最中の状態(即ち、ろ過工程実施中の状態)では、ろ過処理に関連する全ての構造部に被処理水又はろ過水が満たされている状態となりうる。より具体的には、膜ろ過システム100の一次側領域は、被処理水で満たされており、二次側領域はろ過水で満たされている。被処理水供給ヘッダー管30から複数のモジュール10の一次側領域に送水された被処理水は、ろ過膜(図示しない)を経て二次側領域に染み出してろ過水となり、該二次側領域にて集水され、その後、ろ過水ヘッダー管40に搬送されて集水され、次いで系外に排出される。なお、図7に示した状態では、膜ろ過システム100において、ブローバルブ22は閉じた状態となっているので、ブローヘッダー管20からは被処理水は流出しない。
【0018】
なお、図7では、被処理水供給ヘッダー管30とろ過水ヘッダー管40とは、ブローヘッダー管20と同様に、複数のモジュール10にて共通している態様を例示的に図示した。しかし、以下に例示する幾つかの洗浄方法を実施可能な膜ろ過システムは、図7に示す態様に限定されることなく、被処理水供給ヘッダー管30とろ過水ヘッダー管40とが、図示のようにすべての複数のモジュール10に接続していなくてもよいし、各モジュール10に対して、それぞれ別個の被処理水供給管及びろ過水管、並びにこれらの配管に取り付けられ得る各種のバルブが接続されていてもよい。
【0019】
また、図7では、ブローヘッダー管20の一端にブローバルブ22が設けられ、かかる一端が送気口として機能し得る構成を例示した。しかし、ブローバルブ22の位置、即ち、ブローヘッダー管20の送気口の位置は、特に限定されることなく、あらゆる位置でありうる。例えば、ブローヘッダー管20の長手方向端部はなく、中央部又はその他の中間領域にブローバルブ22を伴う送気管(図示しない)が接続されていてもよい。
同様に、被処理水供給ヘッダー管30についても、長手方向端部はなく、中央部又はその他の中間領域に被処理水バルブ32を伴う被処理水送水管(図示しない)が接続されていてもよい。
さらに、ブローヘッダー管20の送気口の位置、及び、被処理水供給ヘッダー管30に対する被処理水送水管の接続位置との相対的な位置関係は、特に限定されることなく、あらゆる位置関係であり得る。
【0020】
以下に、図7に示した概略構成を有する膜ろ過システムにて実施し得る、膜ろ過システムの洗浄方法を、図1~4を参照して種々説明する。
なお、明瞭のために、図7に示した参照符号のうち、一部の参照符号は、図1~4では示さないことがある。
【0021】
(膜ろ過システムの洗浄方法)
ここで、図1(a)~(d)、及び図2(a)~(e)に、本発明に従う膜ろ過システムの洗浄方法の一例を説明する図である。図1(a)~(d)、及び図2(a)~(e)では、ろ過工程の終盤時点(図1(a))から、ブロー工程の終了時点(図2(e))までの様子を、段階的に示す。なお、明瞭のために、図1及び図2のそれぞれにおいて、図1(a)及び図2(a)のみを参照符号を伴って示し、図1(b)~(d)、及び図2(b)~(e)では参照符号を省略した。
【0022】
図1(a)は、ろ過工程を実施している状態の、膜ろ過システム100を説明する図である。図1(a)に示す状態の膜ろ過システム100が、まもなくろ過工程を終了するものとする。そして、図1(b)に示すように、被処理水バルブ32及びろ過水バルブ41を閉じ、ブローバルブ22を開いて、ブローヘッダー管20から被処理水を抜いて、ブローヘッダー管20内に気体層を形成する(排水による気体層形成ステップ)。このように、後述するブロー工程の開始前に、ブローヘッダー管20内に複数のモジュール10の接続方向全体にわたる気体層を形成することで、互いに並列接続された複数のモジュール10に対して均等に気体を導入することが可能となり、これら複数のモジュール10について、逆洗により得られる洗浄効果を十分に均等化することができる。さらに、図1(b)に示したように、ろ過工程を終了した後、逆洗工程の開始前のタイミングで、ブローヘッダー管20内に気体層を形成することで、その後のタイミングで気体層を形成する場合と比較して、一層確実に、複数のモジュールの接続方向全体にわたる気体層を形成することができ、結果的に、一層確実に、逆洗により得られる洗浄効果を十分に均等化することができる。
【0023】
なお、図1(b)では、ブローヘッダー管20が空となっており、複数のモジュール10の接続方向全体にわたる気体層が、実質的に、ブローヘッダー管20全域にわたって延在する様子を示している。しかし、本例に従う洗浄方法は、図示の態様に限定されない。具体的には、気体層は、複数のモジュール10の接続方向全体にわたって延在していれば良く、例えば、ブローヘッダー管20内の膜ろ過システム100の鉛直方向下側の領域に被処理水層が残され、その上に延在していてもよい。ブローヘッダー管20内における被処理水層の水位は、例えば、マニュアル又はタイマーを用いた自動制御により、ブローバルブ22を開いた状態とする時間を調節することにより、確実に制御することができる。その結果、所望の体積の気体層を、確実にブローヘッダー管20内に形成することが可能となる。
【0024】
図1(c)に、逆洗工程を開始した直後の膜ろ過システム100の様子を示す。逆洗工程では、ろ過水バルブ41を開くとともに、図示しない逆洗加圧機構により加圧した逆洗水をろ過方向とは逆の方向に流す。なお、逆洗水は、図示しない逆洗水タンク等に貯留され得る、ろ過工程で得られたろ過水の一部でありうる。また、図示しない逆洗加圧機構は、特に限定されることなく、例えば、逆洗ポンプ等により実装され得る。
【0025】
ここで、逆洗工程では、開始直後に、まず、モジュール10内のろ過膜の一次側領域に面した表面に付着した汚濁物質を剥離させる目的で二次側領域から一次側領域に向かう方向の圧力をかけるために、ブローバルブ22及び被処理水バルブ32は閉じた状態としつつ、加圧した逆洗水を、ろ過水ヘッダー管40を逆流させて複数のモジュール10内に流入させる。そのため、図1(c)に示した状態では、膜ろ過システム100内の圧力が高まることにより、図1(b)に示した段階でブローヘッダー管20内に形成された気体層が一旦圧縮されて体積が減少する。なお、図1(c)に示すような、逆洗工程における一時的な状況、即ち、逆洗工程において、ろ過水バルブ41は開いているが、ブローバルブ22及び被処理水バルブ32は閉じており、加圧された逆洗水の流入によって膜ろ過システム100内が高圧となっている状態を、逆洗加圧ステップとも称し得る。
【0026】
図1(d)に、図1(c)に示した逆洗加圧ステップの後に、被処理水バルブ32を開いて、一次側領域へと逆洗水を流出させて、逆洗加圧ステップで剥離された汚濁物質等を含む逆洗排水を得るステップ(逆洗排水流出ステップ)を示す。逆洗排水流出ステップでは、ろ過膜から剥離された汚濁物質等が洗い流され、除去される。また、逆洗排水流出ステップでは、膜ろ過システム100内の圧力が低下するため、ブローヘッダー管20内に流入してきた被処理水が再度ブローヘッダー管20から流出し、ブローヘッダー管20が再度空の状態となりうる。
【0027】
図2(a)に、ブロー工程を開始した直後における膜ろ過システム100の状態を示す。ブロー工程を開始するにあたり、ブローバルブ22が開かれ、図示しないブロー機構により加圧された状態となった圧縮気体(例えば、圧縮空気)がブローヘッダー管20内に流入する。ここで、ブローヘッダー管20内には、上述の通り、複数のモジュール10の接続方向全体にわたる気体層が存在している(図示例では、空の状態)。よって、圧縮気体がブローヘッダー管20内を流れるにあたり、ブローヘッダー管20内に被処理水が満ちている従来法に従う洗浄方法に含まれるブロー工程における状態と比較して、格段に抵抗が少ない。よって、複数のモジュール10間に、略同じタイミングで圧縮気体が流入し始め、ブロー工程を通じて略均等に圧縮気体が各モジュール10に配分され、各モジュール10を流通する。このため、複数のモジュール10間で、逆洗工程の結果として得られる洗浄効果にばらつきが生じることを効果的に抑制することができる。
【0028】
そして、図2(b)に示すように、例えば、膜ろ過システム100の鉛直方向に対して長手方向が一致するモノリス型のセラミックろ過膜では、鉛直方向上側から鉛直方向下側に向かう方向にて、圧縮気体が流され、モジュール10内の一次側領域にて、水(被処理水及び/又は逆洗水)と混合されて気液混合状態となりながら流下し得る。この際にも、圧縮気体の流路において、複数のモジュール10間にて抵抗のばらつきが非常に少ないため、全てのモジュールにて同様の洗浄効果が得られる。
【0029】
そして、図2(c)に示すように、複数のモジュール10から、気体と水(被処理水及び/又は逆洗水)とが気液混合状態となりながら、被処理水供給ヘッダー管30内に流入する。次いで、図2(d)に示すように、逆洗排水が被処理水供給ヘッダー管30から排出されていく。さらに、図2(e)に示すように、ろ過水バルブ41が閉じ、全ての逆洗排水が被処理水供給ヘッダー管30から排出された後に、数秒間にわたり、ブローヘッダー管20から圧縮気体が送気され、被処理水供給ヘッダー管30から排気される。かかる数秒間の送気を経て、ブロー工程が完了する。
【0030】
以上、図1図2を参照した一例に係る洗浄方法によれば、並列接続された複数のモジュール間で、逆洗により得られる洗浄効果を十分に均等化することができる。以下、他の幾つかの例に係る洗浄方法を、図3~4を参照して説明する。
【0031】
図3(a)~(b)は、本発明に従う膜ろ過システムの洗浄方法の他の一例において、気体層を形成するための操作を説明する図である。本例に従う洗浄方法は、ブローヘッダー管20内に気体層を形成するにあたり、ブローバルブ22を開いて、ブローヘッダー管20から直接排水せずに、被処理水供給ヘッダー管30の被処理水バルブ32を開いて被処理水供給ヘッダー管30からモジュール10の一次側領域に含まれる被処理水を排水することにより、ブローヘッダー管20内の水位を低下させて気体層を形成する点で、図1~2を参照して説明した洗浄方法とは異なる。なお、明瞭のために、図3(a)のみを参照符号を伴って示し、図3(b)では参照符号を省略した。
【0032】
図3(a)に示すように、ろ過工程を終了した後に、ブローバルブ22及び被処理水バルブ32を開いて、被処理水供給ヘッダー管30から被処理水を抜く操作(排水による気体層形成ステップ)を実施する。かかる操作により、図3(b)に示すように、ブローヘッダー管20内の水位が低下し(図示例では水位ゼロ)、複数のモジュール10の接続方向全体にわたる気体層が形成される。このとき、ブローヘッダー管20内の水位は、ブローバルブ22及び被処理水バルブ32を開放状態とする時間を調節することで、所望の水位に制御することができる。制御は、手動で行っても、タイマー等を用いた自動制御で行ってもよい。気体層を、ブローヘッダー管20内に保持されていた被処理水を排水することにより形成すれば、一層確実に、複数のモジュール10の接続方向全体にわたる気体層を形成することができ、結果的に、一層確実に、逆洗により得られる洗浄効果を均等化することができる。
【0033】
そして、気体層を形成した後の逆洗工程は、図1(c)~図2(e)を参照して説明した態様と同様にして、実施することができる。
【0034】
図4(a)~(e)は、本発明に従う膜ろ過システムの洗浄方法のさらに他の一例において、気体層を形成するための操作を説明する図である。本例に従う洗浄方法は、気体層を形成するための操作を、ろ過工程において行うという点において、図1~3を参照して説明した各種の洗浄方法とは異なる。なお、明瞭のために、図4(a)のみを参照符号を伴って示し、図4(b)~(e)では参照符号を省略した。
【0035】
図4(a)に示す状態は、ろ過工程を開始する時点の状態を示す。かかる状態の膜ろ過システム100では、被処理水バルブ32及びブローバルブ22は開いた状態としており、図4(b)~図4(c)に示すように、被処理水バルブ32及び被処理水供給ヘッダー管30を介して一次側領域から複数のモジュール10内へと被処理水を流入させる水張り操作を実施する。そして、図4(c)に示すように、ブローヘッダー管20内に被処理水が達する直前、あるいは、ブローヘッダー管20内に被処理水が達しても、複数のモジュール10の接続方向全体にわたる気体層がブローヘッダー管20内に保持された状態となるタイミングで、水張り操作を停止する。水張り操作を停止する際には、ブローバルブ22を閉じた状態とする。なお、水張り操作を停止する際に、ブローバルブ22を閉じる前に、被処理水の送水を停止してから、ブローバルブ22を閉じても構わない。この場合、ろ過処理を開始するにあたり、再度、被処理水の送水を開始することが必要である。ろ過工程での水張り操作の停止タイミングを調節することによりブローヘッダー管20内に気体層を形成すれば、気体層を形成するための追加の操作を行う必要がないため、本発明のろ過システムの洗浄方法を効率化することができる。
【0036】
その後、ろ過水バルブ41を開いて、ろ過水ヘッダー管40からろ過水を流出させるろ過操作を実施する。この際、図4(d)に示すように、ブローヘッダー管20内の気体層は、圧縮されて体積が減少し得る。しかし、図4(e)に示すように逆洗工程の逆洗排水流出ステップを開始すれば、膜ろ過システム100内の圧力が低下し、ブローヘッダー管20は再度空の状態となりうる。以降の逆洗工程における操作は、図2(a)~(e)に示す通りである。
【0037】
以上、図1~4、及び図7を参照して、図7に概略的に示したような構成を有する膜ろ過システム100により実施可能な各種の洗浄方法について説明してきた。以下、図5(a)~(e)を参照して、本発明の膜ろ過システムの概略構造の一例、及びかかる膜ろ過システムを用いた場合の、本発明の洗浄方法の一例を説明する。
【0038】
図5(a)に示す膜ろ過システム101では、所定の形状のレデューサーとしての、異形レデューサー23を介して、ブローヘッダー管20が排水管及び送気管として機能し得る配管50に対して接続されている点で、図7を参照して説明した膜ろ過システム100とは異なる。異形レデューサー23は、ブローヘッダー管20側の端部の断面積が、異形レデューサー23の配管50側の端部の断面積よりも、大きいことを必要とする。さらに、異形レデューサー23は、ブローヘッダー管20側の端部の上端位置が、異形レデューサー23の配管50側の端部の上端位置よりも、膜ろ過システム101の鉛直方向において、上側に位置することを必要とする。このような特殊な形状の異形レデューサー23とブローヘッダー管20が連通していれば、配管50に備えられたブローバルブ22が開放状態にある限りにおいて、ブローヘッダー管20内の、異形レデューサー23の配管50側の上端位置よりも鉛直方向で高い部分(領域)には、水がとどまることが無く、良好に気体層を形成することができる。このため、ブローヘッダー管20にて、より確実に、複数のモジュール10の接続方向全体にわたる気体層を形成することが可能となる。従って、並列接続された複数のモジュール間で、十分に均等な逆洗効果を得ることができる。なお、異形レデューサー23の形状については、図6を参照して後述する。
【0039】
かかる構成を有する膜ろ過システム101を用いてろ過工程を実施してから、逆洗工程を開始するまでの様子を、図5(b)~(e)を参照して概略的に説明する。なお、明瞭のために、図5(b)~(e)では、参照符号を省略する。
【0040】
図5(b)に示す状態は、ろ過工程を開始する時点の状態を示す。かかる状態の膜ろ過システム101では、被処理水バルブ32及びブローバルブ22は開いた状態としており、図5(b)~図5(c)に示すように、被処理水バルブ32及び被処理水供給ヘッダー管30を介して一次側領域から複数のモジュール10内へと被処理水を流入させる水張り操作を実施する。そして、図5(c)に示すように、ブローヘッダー管20内に被処理水が到達しても、複数のモジュール10の接続方向全体にわたる気体層がブローヘッダー管20内に保持された状態となっている。これは、ブローバルブ22が開いた状態となっている限りにおいて、異形レデューサー23の配管50側の上端位置よりも鉛直方向で高い部分(領域)には、被処理水がとどまることが無いからである。このように、膜ろ過システム101によれば、ブローヘッダー管20内に被処理水が充満することを構造的に回避することができる。
【0041】
そして、図5(d)に示すように、ろ過工程を開始するにあたり、ブローバルブ22を閉めてろ過水バルブ41を開いて、ろ過水を系外に流出させる。なお、この際に、ブローヘッダー管20内の気体層は膜ろ過システム101の内圧が上昇することにより圧迫されて縮小し得る。しかし、図5(e)に示すように、ろ過工程を終了して逆洗工程を開始することで、膜ろ過システム101の内圧が低下して、これに伴いブローヘッダー管20内の圧力が低下し、ブローヘッダー管20内の水位が減少し、さらには、ブローヘッダー管20内が空の状態となりうる。
【0042】
なお、膜ろ過システム101を用いた洗浄方法において、さらに、図1(b)又は図3(a)を参照して説明した気体層を形成するための操作、即ち、ブローヘッダー管20又は被処理水供給ヘッダー管30を介した「排水による気体層形成ステップ」を実施してもよい。しかし、上述のように、膜ろ過システム101では、構造的に、ブローヘッダー管20内に被処理水が充満することを回避することができる。よって、上記したような排水による気体層形成ステップを実施すること、及び、ブローヘッダー管20内が満水となる前に水張り操作を停止することを、必要とせずに、「複数のモジュール10の接続方向全体にわたる気体層がブローヘッダー管20内に保持された状態」を創出することが可能となる。このように、所定の形状を有するレデューサーを備える膜ろ過システムによれば、特殊な制御を必要とすることなく、簡易に気体層を形成することができる。
【0043】
ここで、図6を参照して、異形レデューサー23の形状の一例を説明する。図6に概略図を示すように、異形レデューサー23は、管径が一定の小径部23aと、偏心テーパー部23bとを有している。そして、偏心テーパー部23bの開放端における管径(内径)D2は、小径部23aにおける管径(内径)D1との比率は、D1:D2=1:2~1:4であり、好ましくは、D1:D2=1:3程度である。さらに、小径部23aの軸線方向の長さL1と、偏心テーパー部23bの長さL2との比率は、L1:L2=1:2~2:1程度であり、好ましくは、L1:L2=4:3程度である。なお、偏心テーパー部23bの長さL2は、偏心テーパー部23bの偏心軸線方向の長さではなく、小径部23aの軸線方向で測った際の、偏心テーパー部23bの長さである。また、小径部23aの軸線方向の長さL1は、特に限定されることなく、例えば、10cm以下であり得る。また、図示しないが、異形レデューサー23は、他の構成要素との接続部となりうるフランジ等を有し得る。
【0044】
そして、異形レデューサー23は、膜ろ過システム101に対して実装されるにあたり、膜ろ過システム101の鉛直方向において、小径部23aの上端位置よりも、偏心テーパー部23bの上端位置が、高い位置に位置するような態様で、配置される。その結果、小径部23aの上端位置よりも、高い位置にあるブローヘッダー管20内の領域では、ブローバルブ22が開いた状態となっている限りにおいて、満水となることが無い。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明によれば、複数の並列接続されたモジュールを備える膜ろ過システムの洗浄方法であって、複数のモジュールについて、十分に均等な洗浄効果を得ることができる、膜ろ過システムの洗浄方法を提供することができる。
また、本発明によれば、複数の並列接続されたモジュールを備える膜ろ過システムであって、逆洗した場合に、複数のモジュール間で、十分に均等な洗浄効果を得ることができる、膜ろ過システムを提供することができる。
【符号の説明】
【0046】
10 モジュール
11 膜キャップ
12 サブモジュール
20 ブローヘッダー管
21 ブローヘッダー管接続部
22 ブローバルブ
23 異形レデューサー
23a 小径部
23b 偏心テーパー部
30 被処理水供給ヘッダー管
31 被処理水供給ヘッダー管接続部
32 被処理水バルブ
40 ろ過水ヘッダー管
41 ろ過水バルブ
50 配管
100,101 膜ろ過システム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7