(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-18
(45)【発行日】2024-11-26
(54)【発明の名称】微小電気機械共振器
(51)【国際特許分類】
H03H 9/24 20060101AFI20241119BHJP
B81B 3/00 20060101ALI20241119BHJP
【FI】
H03H9/24 Z
H03H9/24 B
B81B3/00
(21)【出願番号】P 2021559712
(86)(22)【出願日】2020-04-15
(86)【国際出願番号】 FI2020050249
(87)【国際公開番号】W WO2020212648
(87)【国際公開日】2020-10-22
【審査請求日】2023-01-24
(32)【優先日】2019-04-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FI
(73)【特許権者】
【識別番号】520071814
【氏名又は名称】キョーセラ テクノロジーズ オーユー
【住所又は居所原語表記】Tietotie 3 02150 Espoo Finland
(74)【代理人】
【識別番号】100127188
【氏名又は名称】川守田 光紀
(72)【発明者】
【氏名】サーレラ ヴィッレ
(72)【発明者】
【氏名】ヤーッコラ アンッティ
(72)【発明者】
【氏名】オヤ アールネ
【審査官】竹内 亨
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-099269(JP,A)
【文献】特表2018-522461(JP,A)
【文献】国際公開第2012/081457(WO,A1)
【文献】特表2008-545333(JP,A)
【文献】特表2017-537500(JP,A)
【文献】国際公開第2013/005625(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03H 9/00-9/76
H03H 3/007-3/10
B81B 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
MEMS共振器であって、
第1のおもり部分と、第2のおもり部分と、前記第1のおもり部分と前記第2のおもり部分との間の中央ばね部分とを有するばね-質量系と、
前記共振器を駆動するためのピエゾレイヤと、
平均不純物濃度が少なくとも2*10
19cm
-3になるようにドーピングされたシリコンの躯体
と、
を備え、
前記中央ばね部分の物質部分はy軸に垂直なx軸
の方向に配されており、前記共振器は前記y軸
の方向に振動するように構成されており、
前記x軸
の方向はシリコン結晶方向<100>に沿った方向であるか、シリコン結晶方向<100>からの逸脱が5度未満である方向である、
共振器。
【請求項2】
前記第1のおもり部分及び前記第2のおもり部分は対称的なおもり部分である、請求項
1に記載の共振器。
【請求項3】
前記中央ばね部分は対称的な部分である、請求項1
又は2のいずれかに記載の共振器。
【請求項4】
前記中央ばね部分は、その第一端で前記第1のおもり部分に結合し、その反対端で前記第2のおもり部分に結合
する、曲がりくねった構造を有する、請求項1から
3のいずれかに記載の共振器。
【請求項5】
前記第1のおもり部分及び前記第2のおもり部分は前記中央ばね部分にこれらの端部で結合している、請求項
4に記載の共振器。
【請求項6】
前記第1のおもり部分と前記第2のおもり部分とが前記y軸の方向に対称的に振動するアコーディオン共振モード形状をサポートする、請求項1から
5のいずれかに記載の共振器。
【請求項7】
請求項1から
6のいずれかに記載の共振器であって、
前記ばね部分の第1のエッジの中央部と反対側のエッジの中央部であって、前記共振器が振動する方向における中央部に、アンカリング点を有する、共振器。
【請求項8】
前記中央ばね部分又は前記ばね-質量系の質量中心に位置合わせされたアンカリング点を有する、請求項1から
7のいずれかに記載の共振器。
【請求項9】
請求項1から
8のいずれかに記載の共振器であって、
前記中央ばね部分を周囲要素に固定するアンカリング点を有し、
前記共振器の主要な共振モード形状は、前記アンカリング点に節点を有する、
共振器。
【請求項10】
請求項1から9のいずれかに記載の共振器であって、
半導体材料及び/又はシリコン及び/又は縮退ドープシリコンを含み、及び/又は、
前記共振器の50%以上の質量は、縮退ドープされたシリコンにより生じ、及び/又は、
平均不純物濃度が少なくとも
2*10
19
cm
-3
である、ドープされたシリコンの躯体を有する、
共振器。
【請求項11】
圧電駆動されるように構成される、請求項1から
10のいずれかに記載の共振器。
【請求項12】
前記中央ばね部分はトレンチで離間される複数の腕を有し、前記腕は、シリコン結晶方向<100>に沿った方向であるか、シリコン結晶方向<100>からの逸脱が5度未満である方向に配されている、請求項1から
11のいずれかに記載の共振器。
【請求項13】
真空中で動作する、請求項1から
12のいずれかに記載の共振器。
【請求項14】
前記第1のおもり部分及び前記第2のおもり部分の端部のトレンチは、空気減衰効果を低減する幅を有する、請求項1から
13のいずれかに記載の共振器
であって、前記幅は5μmより広い幅である、共振器。
【請求項15】
前記第1のおもり部分及び前記第2のおもり部分はトレンチのグリッドを有する、請求項1から
14のいずれかに記載の共振器。
【請求項16】
SOIウェーハ上に製造される、請求項1から
15のいずれかに記載の共振器。
【請求項17】
例えば周波数32.768kHzのような32kHz周波数帯で動作するように構成される、請求項1から
16のいずれかに記載の共振器。
【請求項18】
前記中央ばね部分は矩形ダイの対角線に沿って配されている、請求項1から
17のいずれかに記載の共振器。
【請求項19】
前記ばね-質量系は、前記第1のおもり部分及び前記第2のおもり部分に結合した追加のサポートばねを有する、請求項1から
18のいずれかに記載の共振器。
【請求項20】
請求項1から
19のいずれかに記載の共振器であって、前記共振器の第1部分は縮退ドープされたシリコンのレイヤに存在し、前記共振器の第2部分は前記縮退ドープシリコンレイヤの上か下か上下に形成されたSiO
2レイヤに存在する、共振器。
【請求項21】
前記第1のおもり部分及び前記第2のおもり部分と、横におもりを有する音叉型に構成された前記中央ばね部分とを有する、請求項1から
20のいずれかに記載の共振器。
【請求項22】
列に配され、共有おもり要素又は接続梁で互いに連結された、複数の双音叉型共振器のセットを備える、請求項1から
21のいずれかに記載の共振器。
【請求項23】
上部電極レイヤと下部電極レイヤとの間に酸化シリコンレイヤを有する物質スタックを備える、請求項1から
22のいずれかに記載の共振器。
【請求項24】
第3のおもり部分及び第4のおもり部分を更に有し、前記中央ばね部分は、中心に機械的アンカーを有する十字形に配される、請求項1から
23のいずれかに記載の共振器。
【請求項25】
互いに反対の極性を有する2つの上部電極と、電気的に浮いている下部電極レイヤとを有する、請求項1から
24のいずれかに記載の共振器。
【請求項26】
面内曲げ振動モード又は面外曲げ振動モードのいずれかの動作をサポートする、請求項1から
25のいずれかに記載の共振器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は概して、微小電気機械システム(MEMS)共振器(resonator)に関する。
【発明の背景】
【0002】
このセクションは、有用な背景情報を説明するが、ここで説明されている技術が技術水準を示していることを認めている訳ではないことに注意されたい。
【0003】
低い周波数の基準クロックは、音叉型水晶共振子(quartz tuning fork resonator)から得られることが一般的である。このような音叉型水晶共振子には、例えば32.768kHz音叉型水晶共振子がある。
【0004】
微小電気機械システム(MEMS)共振器が開発されている。微小電気機械システム(MEMS)共振器は、水晶音叉と同じ機能性を提供しつつ、低コスト、より小さなチップサイズ、優れた耐衝撃性や耐振動性、広い温度範囲に亘る安定性をも提供するように開発されている。
【0005】
周波数基準アプリケーション(frequency reference application)に用いられるシリコンMEMS共振器のようなMEMS共振器にとって、キーとなる性能パラメータは、等価直列抵抗(ESR)である。ESRは共振器のQ値に反比例する。従って、このパラメータを最大化することは、しばしば望ましいことである。
【発明の概要】
【0006】
本発明のある実施形態の 目的は、望ましい特性のMEMS共振器を提供することである。
【0007】
本発明の第1の例示的態様によれば、次のようなMEMS共振器が提供される。このMEMS共振器は、
第1のおもり部分と、
第2のおもり部分と、
前記第1のおもり部分と前記第2のおもり部分との間の中央ばね部分と、
を有するばね-質量系を備える。
【0008】
実施形態によっては、前記共振器は、平均不純物濃度が少なくとも2*1019cm-3になるようにドーピングされたシリコンの躯体を備え、前記中央ばね部分の物質部分はy軸に垂直なx軸方向に配されており、前記共振器は前記y軸方向に振動するように構成されており、前記x軸はシリコン結晶方向<100>に沿った方向であるか、シリコン結晶方向<100>からの逸脱が5度未満である方向である。
【0009】
実施形態によっては、前記中央ばね部分はトレンチで離間される複数の腕を有し、前記腕は、シリコン結晶方向<100>に沿った方向であるか、シリコン結晶方向<100>からの逸脱が5度未満である方向に配されている。
【0010】
実施形態によっては、前記第1のおもり部分及び前記第2のおもり部分は対称的なおもり部分である。
【0011】
実施形態によっては、前記中央ばね部分は対称的な部分である。
【0012】
実施形態によっては、前記中央ばね部分は、その第一端で前記第1のおもり部分に結合し、その反対端で前記第2のおもり部分に結合する、曲がりくねった構造を有する。
【0013】
実施形態によっては、前記第1のおもり部分及び前記第2のおもり部分は前記中央ばね部分にこれらの端部で結合している。
【0014】
実施形態によっては、前記第1のおもり部分及び前記第2のおもり部分はそれぞれ前端部、後端部、右端部、左端部を有する。これらの端部のうち、前記中央ばね部分に面する端部は前端部である。
【0015】
実施形態によっては、前記第1のおもり部分は、前記前端部と前記左端部の角部と、前記前端部と前記右端部の角部とで、前記中央ばね部分に結合される。同様に前記第2のおもり部分も、前記前端部と前記左端部の角部と、前記前端部と前記右端部の角部とで、前記中央ばね部分に結合される。
【0016】
実施形態によっては、前記第1のおもり部分及び前記第2のおもり部分は前記中央ばね部分に前記前端部の中央部で結合される。
【0017】
実施形態によっては、前記共振器は、アコーディオンモード形状をサポートする。
【0018】
実施形態によっては、前記共振器は面内曲げ(in-plane flexural)モードで動作する。しかし実施形態によっては、前記共振器は面外(out-of-plane)モードで動作する。従って実施形態によっては、前記共振器は、面内曲げ振動モード又は面外曲げ振動モードのいずれかの動作をサポートする。
【0019】
実施形態によっては、前記中央ばね部分は、対称的に配された折り畳みばね(Folded spring,「圧縮ばね」や「フォールディングスプリング」と呼ばれる場合もある)を備える。またはそのようなばねから形成される。
【0020】
実施形態によっては、前記中央ばね部分は、互いに連続して結合した複数の折り畳まれていないばね、又は、互いに並行に結合した複数の折り畳まれていないばねを有する。または、そのようなばねから形成される。
【0021】
実施形態によっては、前記第1のおもり部分及び前記第2のおもり部分は対称的に振動するように構成される。
【0022】
実施形態によっては、前記共振器は、対称的に位置する複数のアンカリング点を有する。
【0023】
実施形態によっては、前記共振器はアンカリング点を、ばね部分の第1のエッジの中央部と反対側のエッジの中央部であって、該共振器が振動する方向における中央部に有する。この方向は、おもり部分の形態に応じて、前記共振器の長さ方向であってもよいし、幅方向であってもよい。後述の実施例では、この方向はy方向と定義されている。上記のエッジは共振器の側部を形成してもよい。
【0024】
実施形態によっては、ばね部分の中でアンカリング点の数は2つである。
【0025】
実施形態によっては、前記アンカリング点は前記共振器を周囲の要素(又は周囲の基板)に固定する。
【0026】
実施形態によっては、前記中央ばね部分はアンカリング点につながる接続梁を有する。
【0027】
実施形態によっては、前記接続梁は、前記中央ばね部分又は前記ばね-質量系の質量中心に位置合わせされている。
【0028】
実施形態によっては、前記接続梁は前記中央ばね部分の蛇行形状からアンカリング点へと延在する。
【0029】
実施形態によっては、前記共振器は、前記中央ばね部分又は前記ばね-質量系の質量中心に位置合わせされたアンカリング点を有する。
【0030】
実施形態によっては、前記共振器は前記中央ばね部分を周囲要素に固定するアンカリング点を有する。前記共振器の主要な共振モード形状は、前記アンカリング点に節点を有する。
【0031】
実施形態によっては、前記共振器は半導体材料を含む。
【0032】
実施形態によっては、前記共振器はシリコンを含む。
【0033】
実施形態によっては、前記共振器は縮退ドープされたシリコン(degenerately doped silicon)を含む。
【0034】
実施形態によっては、前記共振器の50%以上の質量は、縮退ドープされたシリコンにより生じる。
【0035】
実施形態によっては、前記共振器は、平均不純物濃度が少なくとも2*1019cm-3であり、例えば1020cm-3である、ドープされたシリコンの躯体を有する。
【0036】
実施形態によっては、前記共振器は(単結晶)シリコンMEMS共振器である。
【0037】
実施形態によっては、前記共振器は圧電駆動型である。
【0038】
実施形態によっては、前記中央ばね部分の個々のばね要素の長手方向軸は、シリコンの結晶方向[100]に沿った方向を向いている。従って、実施形態によっては、前記中央ばね部分の細長い物質部分はy軸に垂直なx軸方向に配されており、前記共振器は前記y軸方向に振動するように構成されており、前記x軸はシリコン結晶方向<100>に沿った方向であるか、シリコン結晶方向<100>からの逸脱が5度未満である方向である。
【0039】
実施形態によっては、前記物質部分は、トレンチによって互いに(y方向に)隔てられた、複数の直線部分又は複数の個別ばね要素を有する。
【0040】
実施形態によっては、前記共振器の長手方向軸は、前記共振器が振動する方向であると定義される。
【0041】
実施形態によっては、前記共振器は真空中で動作する。
【0042】
実施形態によっては、前記おもり部分の末端部(又は後端部)におけるトレンチは、空気減衰効果を低減する幅を有する。この幅は実施形態によって異なる。
【0043】
実施形態によっては、5μmより広い幅が適用される。
【0044】
実施形態によっては、前記おもり部分の後端部は前記共振器の外端部である。
【0045】
実施形態によっては、前記第1のおもり部分及び前記第2のおもり部分はトレンチのグリッドを有する。
【0046】
実施形態によっては、前記共振器はSOI(Silicon on Insulator)ウェーハ(又はSOI型のウェーハ)に製造される。
【0047】
実施形態によっては、前記共振器はキャビティSOI(C-SOI)上に製造される。
【0048】
実施形態によっては、前記共振器は32kHz周波数帯(例えば周波数32.768kHz)で動作するように構成される。
【0049】
実施形態によっては、前記中央ばね部分は矩形ダイの対角線に沿って配されている。
【0050】
実施形態によっては、前記ばね-質量系は、前記第1のおもり部分及び前記第2のおもり部分に結合した追加のサポートばねを有する。
【0051】
実施形態によっては、前記サポートばねは、前記中央ばね部分のばねの他に追加されるものである。従って前記サポートばねは、前記中央ばね部分から離間している。
【0052】
実施形態によっては、前記サポートばねは、前記第1のおもり部分及び前記第2のおもり部分の後端部(すなわち前記中央ばね部分に面する端部とは反対側の端部)に結合している。
【0053】
実施形態によっては、前記共振器の第1部分は縮退ドープされたシリコンのレイヤに存在し、前記共振器の第2部分は前記縮退ドープシリコンレイヤの上か下か上下に形成されたSiO2レイヤに存在する。
【0054】
実施形態によっては、前記酸化シリコンSiO2レイヤは前記縮退ドープシリコンレイヤに隣接して位置する。実施形態によっては、前記SiO2レイヤは前記縮退ドープシリコンレイヤの中央部に位置し、前記縮退ドープシリコンレイヤを2つの部分に分断する。
【0055】
実施形態によっては、前記共振器はy軸方向に振動する。前記中央ばね部分によって結合している前記第1のおもり部分及び前記第2のおもり部分は周期的な運動を経験する。そこでは前記第1のおもり部分と前記第2のおもり部分とが互いに近づいたり互いに遠ざかったりする。
【0056】
実施形態によっては、前記運動は往復運動である。
【0057】
実施形態によっては、前記共振器の長手方向にy軸、y軸に垂直な方向にx軸を取る座標系が選択されている。しかし、実施形態によっては、前記共振器はy方向よりx方向に長くてもよい。または、x方向にy方向と同じくらい長くてもよい。前記第1のおもり部分は前記第2のおもり部分からy方向に離間している。
【0058】
実施形態によっては、y方向は、前記第1のおもり部分の質量中心を通り、前記第2のおもり部分の質量中心を通る方向であると定義される。
【0059】
実施形態によっては、y方向は、前記中央ばね部分が(前記共振器の面内で)振動することが可能な方向であると定義される。
【0060】
実施形態によっては、前記共振器は単一の面内でのみ振動する。
【0061】
実施形態によっては、前記共振器は1つの次元内でのみ振動する。(すなわち+y及び-y方向にのみ振動する。)しかし実施形態によっては、前記共振器は面外(out-of-plane)モードで振動する。すなわち+z及び-z方向に振動する。)
【0062】
実施形態によっては、前述の折り畳まれたばねと折り畳まれていないばねの寸法の小さい方(y方向における幅)は等しい。
【0063】
実施形態によっては、折り畳まれたばね又は折り畳まれていないばねは、前記中央ばね部分において繰り返し構造を形成する。
【0064】
実施形態によっては、前記共振器構造は線対称である。
【0065】
実施形態によっては、前記共振器構造は鏡面対称である。
【0066】
実施形態によっては、前記鏡面対称であることは、x軸に対して鏡面対称であるか、y軸に対して鏡面対称であるか、x軸及びy軸に対して鏡面対称であるか、のいずれかを意味する。
【0067】
実施形態によっては、x軸とy軸の交点は、共振器構造の質量中心である。
【0068】
実施形態によっては、前記共振器構造は回転対称である。
【0069】
実施形態によっては、前記共振器は、前記第1のおもり部分及び前記第2のおもり部分と、横におもりを有する音叉型に構成された中央ばね部分とを有する。
【0070】
実施形態によっては、前記共振器は、列に配され、共有おもり要素又は接続梁で互いに連結された、複数の双音叉型共振器のセットを備える。
【0071】
実施形態によっては、前記共振器は、上部電極レイヤと下部電極レイヤとの間に酸化シリコンレイヤを有する物質スタックを備える。
【0072】
実施形態によっては、前記共振器は更に、第3のおもり部分及び第4のおもり部分を有し、前記中央ばね部分は、中心に機械的アンカーを有する十字形に配される。
【0073】
実施形態によっては、前記共振器は、互いに反対の極性を有する2つの上部電極と、電気的に浮いている下部電極レイヤ(又はデバイスレイヤ)を有する。
【0074】
実施形態によっては、「アコーディオン」型のシリコンMEMS共振器が開示される。対称的な第1及び第2のおもり部分が、中央ばね部分(又はばね-質量系)のばね定数に制御されるように(又は定められたように)振動する。
【0075】
実施形態によっては、前記共振器のエネルギー変換は、圧電薄膜を用いることに基づく。
【0076】
実施形態によっては、音響損失が少なく、すなわち高いQ値を有し、低いESRを有する共振器構造が開示される。リンが高濃度にドープされたシリコン上に、シリコン結晶構造に対して正しいアライメントで共振器が製造されると、広い温度範囲に亘る良好な周波数安定性を得ることができる。
【0077】
様々な捉え方や実施形態を紹介してきたが、これらは発明の範囲を限定するために提示されたものではない。これらの実施形態や後述の実施形態は、本発明の実施にあたり使用され得る特定の態様やステップを説明するために用いられるにすぎない。いくつかの実施形態は他の実施形態にも適用可能であることが理解されるべきである。紹介する実施形態は適宜組み合わせ可能でありうる。
【図面の簡単な説明】
【0078】
本発明を、単なる例示を用いて、かつ添付図面を参照して、以下に説明する。
【
図1A】ある実施形態に従う微小電気機械システム(MEMS)共振器を示す。
【
図1B】ある実施形態に従い変形されたMEMS共振器を示す。
【
図2】ある実施形態に従う別のMEMS共振器を示す。
【
図4】
図1Aに示されるタイプのMEMS共振器に関する実験結果を示す。
【
図5】ある実施形態に従う別のMEMS共振器を示す。
【
図6】ある実施形態に従う、ダイアゴナルデザインを有するMEMS共振器を示す。
【
図7】ある実施形態に従う、追加の支持バネを有するMEMS共振器を示す。
【
図8】ある実施形態に従う圧電駆動型MEMS共振器の断面図を示す。
【
図10】ある実施形態に従うMEMS共振器の代替的な断面図を示す。
【
図12】
図12A-Cはそれぞれ、更に別の実施形態に従うMEMS共振器の断面図を示す。
【
図13】ある実施形態に従う、重量低減レイヤを有するMEMS共振器を示す。
【
図14】ある実施形態に従う音叉型MEMS共振器を示す。
【
図15】ある実施形態に従う、ダイアゴナルデザインを有する別のMEMS共振器を示す。
【
図16】
図16A-Cはそれぞれ、ある実施形態に従う更に別の音叉型MEMS共振器を示す。
【
図17-21】
図17-21はそれぞれ、ある実施形態に従う双音叉型(double-ended tuning fork type,DETF、複合音叉型ともいう)MEMS共振器を示す。
【
図22】ある実施形態に従う回転MEMS共振器を示す。
【詳細説明】
【0079】
以下の説明において、類似の番号は類似の要素を示す。
【0080】
図1Aは、ある実施形態に従う微小電気機械システム(MEMS)共振器を示す。より正確には、
図1Aは、共振器構造を上から見た図である。共振器の長手方向にy軸、y軸に垂直な方向にx軸を取る座標系が選択されている。共振器はy軸方向に振動する。
【0081】
図1Aの中で黒色の部分はトレンチ(溝)を表す。すなわち、製造過程で(典型的にはエッチングによって)除去されたレイヤ部分を表す。レイヤは、典型的にはSOIウェーハのシリコンレイヤである。
図1A以外の図の中でも、黒色の部分はトレンチを表す。描かれている構造の中で白く描かれている部分は物質の部分を表す。典型的には、シリコンや、縮退ドープされたシリコン(degeneratively doped silicon)の領域である。共振器のジオメトリーはこのように定められる。圧電駆動のための電極のジオメトリーは
図1Aには描かれていない。
【0082】
符号A1及びA2は、周囲の要素に固定するためのポイントを示している。MEMS共振器は、対称なおもり部分M1及びM2を有するばね-質量系であると考えることができる。ここでM1=M2=Mである。おもり部分は中央のばね部分SPに接続されている。
【0083】
中央のばね部分SPは折り畳まれたばねを有する。(又は等価的に、直列又は並列に互いに接続された複数の折り畳まれていないばねを有する。小さなフットプリントで低周波数の共振モードをサポートするために、複合ばね定数(compound spring constant)は、低くすることができる。
【0084】
共振器の周波数fは、f = 1/(2π) x sqrt(K/M)である。
【0085】
この式において、中央ばね部分のばね定数がKで表されている。
【0086】
共振器のモード形状は"アコーディオンモード"である。すなわち、おもり部分M1及びM2が、+y方向及び-y方向に対称的に振動する。
【0087】
共振器のアライメントのために、x軸及びy軸はシリコン結晶方位<100>に沿っていることが好ましい。(又は、これらの方位からのずれが5度未満であることが好ましい。)実施形態によっては、折り畳みばね(folded spring)の長手方向(すなわちx軸方向)は、結晶方位[100]に向いていることが好ましい。又は、これらの方位からのずれが5度未満であることが好ましい。
【0088】
図1Aに開示される構造は、構造の質量中心を通るx軸及びy軸に対して鏡面対称である。対称性を有することにより、構造の両側部の中央に位置するアンカリング位置A1及びA2を有する、(主要な)共振モード形状の良好な節点(nodal point)が得られる。これは、(真空中で)高いQ値を実現することに繋がる。符号T1は、重り部分M1及びM2におけるy軸に平行でない端部におけるトレンチを表している。(y軸は、重要な共振モードにおける振動方向である。)実施形態によっては、トレンチT1は5μmより大きくされる。これは、空気減衰効果(air damping effect)を少なくして、Q値の圧力依存性を減少させるためである。また、大気圧下で十分なQ値を提供し、大気圧下であってもデバイスが測定可能であるようにするためである。なお共振器の最終的な動作条件は、典型的には、共振器を真空パッケージングすることにより得られる真空である。
【0089】
図1Aに描かれる実施形態の変形においては、個々のばねの寸法が調整可能である。更に、質量(おもり部分)の寸法も様々なバリエーションがある。更に、中央ばね部分に含まれる場合の数も様々なバリエーションがある。全ての実施形態についても同様である。
【0090】
第1のおもり部分M1は、中央ばね部分Kに接する前端部、右側に右端部、左側に左端部、共振器の端となる後端部を有する。第2のおもり部分M2も同様である。
【0091】
図1Aに示される実施形態において、おもり部分M1及びM2は、前端部の中央領域で中央ばね部分SPに接続されている(又は機械的に取り付けられている)。
図1Bに示される代替的実施形態においては、中央ばね部分SPへの機械的取り付け部が、前端部の角部(前端部の右端と左端)に存在する。
図1Bに示される取り付け形態には、両方のおもり部分とも、中央ばね部分に2点で固定されていることが示されている。従って、安定性が向上している。
【0092】
図1A及び1Bには接続梁(connection beam)CBも描かれている。接続梁は、構造の質量中心からアンカリング点A1,A2へとx軸方向に延びている。従って、中央ばね部分は周囲の基板へ2点で取り付けられており、各おもり部分に1点又は2点で取り付けられている。
【0093】
図2は
図1Aと同様の設計であるが、おもり部分が小さなトレンチのグリッドを含んでいるところが異なる。これらのグリッドは、デバイスがSOI(Silicon on Insulator)ウェーハ上に作成された場合に、埋込酸化膜(buried oxide layer)を除去することを可能にする。更に
図2は、少し異なる中央部分を有している。この中央部分においては、共振器を周囲の基板により強固に固定するために、接続梁(CB)の長さが短くなっている。中央ばね部分の中心部には、構造を強固にするために、物質エキスパンド領域が設けられる。エキスパンド領域には(曲がりくねった)ばねは存在しない。複数のトレンチはエキスパンド領域に存在してもよい。これらのトレンチは対称的に設けられてもよい。
【0094】
図3は、
図1Aに描かれた共振器の寸法を示している。これらは例示的な寸法であり、例えば、周波数およそ32kHzで動作する共振子を作成するために使用することができる。共振器の幅は405μmであり、共振器の長さは628μmである。また、各ばね要素の幅は9μmである。共振器が位置するレイヤの厚さ、すなわちデバイスレイヤの厚さは、例えば4μmから20μmの範囲であることができる。
【0095】
図4は実験結果を示す。これは、44kHzで動作する試作デザインの応答である。実験はp<0.1mbarである真空下において行われた。得られたQ値は17000であり、ESRは133kΩであった。
【0096】
図5に示す共振器は、
図2の共振器に似ているが、おもり部分M1とM2の寸法が異なる。また、中央部の折り畳みばねの構造が異なり、接続梁要素CBを短くすることが可能になっている。それによって、共振器に基板への強固な支持部を設けることができる。接続梁CBは、ジグザグ型のばね要素の外側の転回点からアンカリング点A2(A1)まで延在する。
【0097】
図6は、ダイアゴナル(対角)共振器構造に沿ったばねを示す。ばねをダイの対角方向に向けることで、中央部の折り畳みばね構造の有効長が、所与の矩形ダイ領域の中で最大化される。このため、例えば共振周波数が32kHzの共振器を実現するために必要な面積が最小化される。
【0098】
図7は、
図2に示された共振器構造と一般的に同様の構造を有するMEMS共振器を示している。しかしこの共振器は、おもり部分M1とM2に結合される追加のサポートばねSSを有する。この追加のサポートばねはまた、例えばその側部で、周囲の基板にも結合されている。
【0099】
y軸に沿った動きに関するサポートばねのばね定数は、共振器の主ばね定数Kの10分の1未満である。おもり部分M1やM2に、複数のサポートばねSSが取り付けられてもよい。サポートばねSSは、おもり部分M1, M2のどの側面に取り付けられてもよい。(すなわち、x軸方向に取り付けられてもよいし、y軸方向に取り付けられてもよい。)
【0100】
サポートばねSSの目的は、寄生共振モードを抑制し、z方向(すなわちx方向及びy方向の両方に垂直な方向)の変位に対する剛性を共振器構造に加えることである。これは、構成要素の製造のしやすさやデバイスの動作中の信頼性に有益で有り得る。(信頼性を損なう原因の1つは、構造と、下部の(シリコン)支持ウェーハ(handle wafer)との間の、ギャップを跨る摩擦(stiction)でありうる。
【0101】
図8は、SOIウェーハ150上に製造されているときの共振器デバイスの断面の例を示したものである。図にはレイヤL1からL6が描かれているが、これらはそれぞれ次のようなものである。
【0102】
L2はピエゾレイヤである。エネルギー変換(transduction)は、ピエゾレイヤに基づいている。ピエゾレイヤの構成物質の例は、AlN、ScAlN、ZnOである。L2の厚さは、例えば1μmであることができる。
【0103】
L1は上部電極レイヤである。ピエゾレイヤの上側が、上部電極レイヤである。このレイヤの構成物質は、AlやMo、Au、ポリシリコンなど、導電性を有する適切な物質であることができる。L1の厚さは、例えば1μmであることができる。
【0104】
L3は下部電極レイヤである。ピエゾレイヤの下側が、下部電極レイヤである。このレイヤの構成物質も、AlやMo、Au、ポリシリコンなど、導電性を有する適切な物質であることができる。L3の厚さは、例えば1μmであることができる。
【0105】
L4はドープシリコンのレイヤであり、(共振器の躯体、及び下部電橋である。リンがドープされた単結晶シリコンは、共振器(または中央ばね部分)の質量の50%以上を占める。実施形態によっては、リンのドープ密度は1*1019 cm-3より大きい。ドープシリコンのレイヤは、下部電極レイヤとしての役割を果たすことができる。すなわち、レイヤL3とレイヤL4とは単一のシリコンレイヤにまとめることができる。L4の厚さは、例えば2μmから20μmの範囲であることができる。
【0106】
L5は埋め込み酸化層(buried oxide layer)である。このレイヤは、共振器(符号100で示された共振器領域)を解放してその共振モードで振動させるために、共振器構造の底面からエッチングされる。
【0107】
L6はシリコン支持レイヤ(silicon handle layer)である。
【0108】
実施形態によっては、この他の物質層も存在することがある。
【0109】
符号201は、下部電極レイヤへの電気的接続を示し、符号202は上部電極レイヤへの電気的接続を示す。レイヤL2の開口部が符号120で示されている。
【0110】
図9は、上部電極の形状の例を示す。
図8も併せて参照されたい。この電極パターンは、"アコーディオン"共振モードの電気機械的エネルギー変換を達成するために使用することができうる。図中、符号TEは、上部電極(Top Electrode)を表している。
【0111】
図10は、共振器デバイスの代替的断面を示している。
図8の断面との相違点は、上部電極に、203[X
in]及び204[X
out]の2つの極性(polarity)が存在する点と、下部電極が浮いている(floating)点である。2つの極性を有する上部電極ジオメトリーが、電気的接続のない交差する電極パターンを必要とするため(
図11参照)、追加の物質レイヤが必要になる。L7はブリッジ導体レイヤであり、L8はブリッジ誘電体レイヤである。
【0112】
図11は、上部電極の形状の例を示す。
図10も併せて参照されたい。この電極パターンは、上部電極レイヤが極性(X
in, X
out)を有する領域を持つ場合に、"アコーディオン"共振モードの電気機械的エネルギー変換を達成するために使用することができうる。異なる極性を有する配線部の交差は、ブリッジ導体レイヤL7及びブリッジ誘電体レイヤL8を用いて達成される(
図11にはL8は示されていない)。
【0113】
図12Aは、更に別の実施形態に従うMEMS共振器の断面図を示す。これらの実施形態においては、熱酸化物層(thermal oxide layer)L4'が設けられる。熱酸化物層、例えば酸化シリコン(SiO
2)層が、(変性した)ドープシリコンレイヤL4の上側か下側か、または上下に設けられる。更に別の実施形態では、酸化シリコン(SiO
2)層は層L4の中央部に設けられ、SiO
2層がL4を2つの部分に分断する。熱酸化物層L4'は、共振器の熱特性を改善する。実施形態によっては、共振器の(周波数の)線形温度係数(linear temperature coefficient)TCF1 は、熱酸化物層を加えることによって変更される(例えば増加させられる)。例えば、熱酸化物層を有さない共振器は、わずかに負のTCF1を有するだろう(例えば-5ppm/℃)。適切な厚さを有する熱酸化物層を加えることにより、実施形態によっては、TCF1は増加する。望ましい値であるTCF1=0を達成することができる。
【0114】
図12B及び12Cはそれぞれ、更に別の実施形態に従うMEMS共振器の断面図を示す。これらの実施形態においては、酸化シリコン(SiO
2)層L4'が、
図12BのようにピエゾレイヤL2の上(すなわちL1とL2の間)に形成されるか、
図12CのようにピエゾレイヤL2の下(即ちL2と下部電極レイヤL3との間)に形成される。他の物質レイヤについては、
図8及び
図10についての説明を参照されたい。実施形態によっては、
図8に関連して説明したように、ドープシリコンレイヤL4は、下部電極レイヤとしての役割を果たすことができる。すなわち、レイヤL3とレイヤL4とは単一のシリコンレイヤにまとめることができる。
【0115】
これらのソリューションの利点は、次の事項を考慮することによって、理解されうるだろう。共振器のESRを小さくすることを実現するためには、膜厚を薄くすることによって共振器の質量を縮小することが有利である。ただし、物質層全体のTCF1はゼロに保つ必要がある。酸化シリコンは、比較的高い、正の温度係数を有する。その温度係数は、高濃度にリンがドープされたシリコンの温度係数よりも高い。従って、ドープシリコンの部分を酸化シリコンに置き換えることにより、共振器全体のTCF1をゼロに保ったまま、共振器の物質層全体の厚さ(及び質量)を減らすことができる。厚さを薄くすることは、ESRを小さくする結果となり、同時に、ピエゾレイヤを跨ぐキャパシタンスが大きくなる結果となる。キャパシタンスが大きくなりすぎることを防ぐため、
図12B及び12Cに示されるように、下部電極と頂部電極との間に酸化シリコン層L4'を配することは、有用である。
【0116】
酸化シリコン層を成長させる方法はいくつか知られている。例えばシリコンの熱酸化や、プラズマ化学気相体積法(plasma-enhanced chemical vapor deposition, PECVD)、低温酸化(low temperature oxide, LTO)法が知られている。
図12Bや12Cの物質スタックに従う共振器のためにSiO
2層を成長させる方法として、例えばPECVDやLTO法を使用することができる。
【0117】
実施形態によっては、下部電極レイヤL3とドープシリコンレイヤL4とは単一のドープシリコンレイヤL4にまとめられる。このような場合、熱酸化法によって熱酸化層をレイヤL4から形成することが便利である。それによって、L4の上部にL4'を形成することができる。
【0118】
図13は、
図5に似たデザインを示している。しかし、レイヤL9を有する点が異なる。レイヤL9はおもり部分M1及びM2の上に設けられる、重量軽減レイヤであり、斜線で示されている。この斜線領域は灰色領域として見えるかもしれない。レイヤL9の目的は、共振周波数の微調整を可能にすることである。これは、L9(又はL9の一部)の厚さを薄くすることで可能となる。厚さを薄くすることは、例えば、イオンビームトリミングやレーザー切断によって行うことができる。L9の材質は、例えばMoやAuであることができる。例として、
図3の寸法と同様の寸法でSiデバイスレイヤが10μmの場合、Moを100nm除去する毎に、共振周波数がおよそ40000ppm変化する。
【0119】
図14は、ある実施形態に従う別の(単結晶)シリコンMEMS共振器1400を示す。共振器1400の材質や一般的な構造及び機能については、これまで紹介してきた実施例を参照されたい。座標系が図示されるように定義されている。従って、共振器構造における共振器又はレイヤ、例えばピエゾレイヤは、基本的にxy面に位置すると考えることができる。
【0120】
共振器1400は、振動アームの端部に追加のおもりを有する音叉型共振器としてみることができる。この追加のおもりは、ばね-質量系の共振周波数を所望の値まで低下させるためのものである。従って、実施形態によっては、共振器1400は全体的にM字型である。共振器1400は、第1のおもり部分1401と、第2のおもり部分1402と、これらのおもり部分の間にある中央ばね部分とを有するばね-質量系を含む。実施形態によっては、中央ばね部分は、音叉の第1腕(左腕)1403と、音叉の第2腕(右腕)1404とを有する。腕1403及び1404はx方向に配されている。左腕1403は右腕1404からギャップによって隔てられている。しかし、その端部において、右腕1404の対応する端部と機械的に結合している。音叉は更に、2つの腕が結合している端部と同じ端部において、機械的アンカー1409によって固定されている。部分1403は部分1401と反対側の端部で結合している。同様に部分1404は部分1402と反対側の端部で結合している。実施形態によっては、部分1403と部分1401の間に第1のギャップがあり、部分1404と1402との間に第2のギャップがある。
【0121】
好ましい振動モードは面内振動(in-plane motion)である。このモードでは、共振器1400の2つの腕が、互いに対して逆位相で振動する。従って振動腕1403,1404は、図でy方向の両矢印で示されるように、互いに近づいたり遠ざかったりするように対称的に動く。
【0122】
温度変化による周波数の変動を最小限に抑えるため、共振器の単結晶シリコンレイヤは、リンのようなn型のドーパントで縮退ドープ(degenerately doped)されていることが有利である。実施形態によっては、ドーピング密度は1*1019 cm-3より大きい。実施形態によっては、トッピングされたシリコンは、共振器の振動腕1403,1404の質量の少なくとも50%を占める。これは、高い熱安定性を達成するために有利である。実施形態によっては、2本の腕1403,1404は、結晶軸<100>方向に配されている。例えばシリコンの結晶軸[100]の方向に配されている。または、これらの方向からの逸脱が5度未満である。これもまた、高い熱安定性を達成するために役に立つ。
【0123】
実施形態によっては、共振器1400は、圧電カップリング(ピエゾカップリング)の手段によって振動を始める。実施形態によっては、共振器構造の単結晶シリコンレイヤの上に、圧電膜(例えばAINの薄膜)が形成される。圧電薄膜の上には上部電極が堆積されそのパターンが作られる。実施形態によっては、上部電極の第1部分1405は振動腕1403の上に位置し、第2部分1406は振動腕1404の上に位置する。電極の材質は、例えばMo、Al、Au、Pt、Ag、多結晶シリコンであってもよく、またその他の導電性物質であってもよい。
【0124】
実施形態によっては、ドープシリコンレイヤL4(例えば
図8,10,12A-Cを参照)は、下部電極レイヤとしての役割を果たす。代替的な実施形態では、単結晶シリコンの上に追加の薄層又は又は薄層のスタックが存在し、これが下部電極としての役割を果たす(
図8,10,12A-CのL3を参照)。このような実施形態における共振器1400の物資スタックは、
図8を参照して以前に紹介し、またオプションとして
図12A-Cで紹介したL4'の特徴で補足したものに対応する。
【0125】
実施形態によっては、
図14に示すように、上部電極と下部電極との間に交流信号が接続されると、共振器1400の2本の腕が、逆位相の共振をサポートする力を受けることができるように、上部電極のパターンが形成される。これは、例えば、
図14に描かれるように上部電極のパターンを形成することにより、達成することができる。すなわち、ピエゾレイヤ上の腕1403,1404を隔てているギャップに隣接する腕1403,1404の領域(図中の領域1405,1406)が電極部分に覆われるようにし、一方、おもり部分に近い腕1403,1404の領域は、電極部分に覆われないようにすることにより、達成することができる。
【0126】
ある代替的な実施形態によっては、おもり部分に近い腕1403,1404の領域が電極部分に覆われ、され、腕1403,1404を隔てているギャップに隣接する腕1403,1404の領域は電極部分に覆われないように、上部電極のパターンが形成される。
【0127】
実施形態によっては、パターンが形成された上部電極への配線は、機械的アンカー1409上に位置する導体パッド1408から設けられる。なお導体パッド1408は、
図8の物質スタックにおいては、符号202で示されている。下部電極のための導体パッド1407(これは
図8においては符号201で示されている)も、同じアンカー1409に位置してもよい。
図8に描かれていたピエゾレイヤL2の開口部120は、
図14では描かれていない。
【0128】
図15は、ある実施形態に従う更に別の音叉型共振器を示す。音叉腕1403,1404の長さをとるために、チップ(又はダイ)の対角方向の長さを利用することができる。一方、質量要素(おもり部分)1401,1402は、ダイの角部に位置している。実施形態によっては、2本の腕1403,1404は、結晶軸<100>方向に配されている。例えばシリコンの結晶軸[100]の方向に配されている。または、これらの方向からの逸脱が5度未満である。これは熱係数を最小に抑えるためである。
【0129】
好ましい振動モードは面内(xy面内)振動である。このモードでは、共振器の2つの腕が、互いに対して逆位相で振動する。従って、(x方向に配される)振動腕1403,1404は、図でy方向の両矢印で示されるように、互いに近づいたり遠ざかったりするように対称的に動く。
図15に示される共振器の物質スタックは、共振器1400の物質スタックに相当している。
【0130】
図16Aは、音叉型共振器の更なる実施形態を示している。
図16Aに示される共振器1600は、第1のおもり部分1601と、第2のおもり部分1602と、これらのおもり部分の間にある中央ばね部分とを有するばね-質量系を含む。実施形態によっては、中央ばね部分は、音叉の第1腕(左腕)1603と、音叉の第2腕(右腕)1604とを有する。音叉はx方向に配されている。左腕1603は右腕1604からギャップによって隔てられている。しかし、その端部において、右腕1604の対応する端部と機械的に結合している。音叉は更に、2つの腕が結合している端部と同じ端部において、機械的アンカー1609によって固定されている。部分1603は部分1601と反対側の端部で結合している。同様に部分1604は部分1602と反対側の端部で結合している。実施形態によっては、部分1603と部分1601の間に第1のギャップがあり、部分1604と1602との間に第2のギャップがある。
【0131】
好ましい振動モードは面内振動である。このモードでは、共振器1600の2つの腕が、互いに対して逆位相にy方向に振動する。従って振動腕1603,1604は、図の両矢印で示されるように、互いに近づいたり遠ざかったりするように対称的に動く。
【0132】
従って、共振器1600は共振器1400に基本的に合致している。共振器1400との相違点は、作動方法の実現方法にある。上部電極と下部電極の代わりに、この共振器構造は、互いに反対の極性を有する2つの上部電極と、電気的に浮いている下部電極レイヤL3とを有する。共振器1600の物質スタックは、
図10や
図12A-Cを参照して説明してきた物質スタックと合致している。実施形態によっては、上部電極のパターン作成は
図16Aに描かれるようなものである。すなわち、第1の上部電極の第1部1605は振動腕1603上にあり、第2部分1606は振動腕1604上にある。また、第2の上部電極の第1部1615は振動腕1603上にあり、第2部分1616は振動腕1604上にある。腕1603,1604の領域1605,1606(腕1603,1604を隔てているギャップに隣接している領域)は、第1の上部電極により覆われており、腕1603,1604の領域1615,1616(おもり部分1601,1602に近い領域)は、第2の上部電極により覆われている。
【0133】
実施形態によっては、第1の上部電極への配線は、機械的アンカー1609に位置する導体パッド1608から延びてきている。第2の上部電極のための導体パッド1618も、同じアンカー1609上にあってもよい。
【0134】
図16Bは、音叉型共振器の更に別の実施形態を示している。
図16Bに示される共振器1600'は、第1のおもり部分1601と、第2のおもり部分1602と、これらのおもり部分の間にある中央ばね部分とを有するばね-質量系を含む。実施形態によっては、中央ばね部分は、音叉の第1腕(左腕)1603'と、音叉の第2腕(右腕)1604'とを有する。左腕1603'は右腕1604'からギャップによって隔てられている。しかし、その端部において、右腕1604'の対応する端部と機械的に結合している。音叉は更に、2つの腕が結合している端部と同じ端部において、機械的アンカー1609'によって固定されている。部分1603'は部分1601と反対側の端部で結合している。同様に部分1604'は部分1602と反対側の端部で結合している。実施形態によっては、部分1603'と部分1601の間に第1のギャップがあり、部分1604'と1602との間に第2のギャップがある。
【0135】
この実施形態における振動モードは面外振動(out-plane motion)である。このモードでは、共振器1600'の2つの腕が、互いに対して逆位相で振動する。従って振動腕1603'、1604'は、左腕1603'がz軸の正方向に動くとき、右腕1604'はz軸の負方向に動く。(又はその逆である。)
【0136】
このような共振器1600'の電気機械的作動の好ましい実現形態が
図16Bに描かれている。ここには2つの上部電極がある。電極1605'は左腕の電極であり、電極1606'は右腕の電極である。電極1605'と1606'は反対の極性を有する。この実施形態は更に、電気的に浮いている下部電極レイヤL3も有する。導体パッド1618',1608'にはそれぞれ電極1605',1606'が接続される。そして電気信号(X
in, X
out)が導体パッド1618',1608'に接続される。これらの導体パッドは機械的アンカー領域1609'上に形成される。共振器1600'の物質スタックは、
図10や
図12A-Cを参照して上に説明してきた物質スタックに一致している。
【0137】
図16Cは、音叉型共振器の更に別の実施形態を示している。共振器1600'と同様に、
図16Cに示される共振器1600"は、第1のおもり部分1601と、第2のおもり部分1602と、これらのおもり部分の間にある中央ばね部分とを有するばね-質量系を含む。実施形態によっては、中央ばね部分は、音叉の第1腕(左腕)1603"と、音叉の第2腕(右腕)1604"とを有する。左腕1603"は右腕1604"からギャップによって隔てられている。しかし、その端部において、右腕1604"の対応する端部と機械的に結合している。音叉は更に、2つの腕が結合している端部と同じ端部において、機械的アンカー1609"によって固定されている。部分1603"は部分1601と反対側の端部で結合している。同様に部分1604"は部分1602と反対側の端部で結合している。実施形態によっては、部分1603"と部分1601の間に第1のギャップがあり、部分1604"と1602との間に第2のギャップがある。
【0138】
実施形態によっては、上部電極は
図16Cに描かれるようにパターンが形成される。すなわち、上部電極と下部電極との間に交流信号が接続されるとき、共振器1600"の2つの腕は、面外振動(out-of-plane motion)をサポートする力を経験する。この面外振動において、共振器1600"の2つの腕は互いに同位相で振動する。すなわち、左腕1603"及び右腕1604"は共にz軸の正方向に動き、続いて共にz軸の負方向に動き、これを繰り返す。このような振動モードをサポートするために、上部電極は、それぞれ左腕及び右腕に配される2つの部分1605"及び1606"を有する。これら2つの部分は、機械的アンカー領域1609"上に配される導体パッド1608"に接続される。下部電極のための導体パッド1607"も、同じアンカー1609"上にあってもよい。このような実施形態における共振器1600"の物資スタックは、
図8を参照して以前に紹介し、またオプションとして
図12A-Cで紹介したL4'の特徴で補足したものに対応する。
【0139】
図17Aは、ある実施形態に従う別のMEMS共振器を示す。共振器1700の材質や一般的な構造及び機能については、これまで紹介してきた実施例、特に共振器1400を参照されたい。
【0140】
共振器1700は双音叉型共振器(double-ended tuning fork resonator)と見ることができる。なぜなら、その一般的構造は、2つの音叉型共振器をそれぞれの振動腕の端部で接続して形成したものと考えることができるからである。共振器1700は、第1のおもり部分1701と、第2のおもり部分1702と、これらのおもり部分の間にある中央ばね部分とを有するばね-質量系を含む。実施形態によっては、中央ばね部分は、音叉の第1腕(左腕)1703と、音叉の第2腕(右腕)1704とを有する。これらの腕はx方向に配されている。左腕1703は右腕1704から(閉鎖された)ギャップ17によって隔てられている。しかし、その端部において、右腕1704の対応する端部と機械的に結合している。共振器の振動数を所望の値に調整するために、2つのおもり部分が2本の振動腕1703,1704の中央部に結合している。実施形態によっては、これら2つのおもり部分の重さは同一である。実施形態によっては、部分1701と部分1703の間にギャップがあり、部分1702と1704との間にもギャップがある。共振器1700は更に、一端で機械的アンカー1709に固定され、他端で機械的アンカー1719に固定される。
【0141】
好ましい振動モードは面内振動(in-plane motion)である。このモードでは、圧電変換によって、共振器1700の2つの腕が互いに対してy方向に逆位相で振動する。従って、2本の(曲げした)振動腕1703,1704は、図の両矢印で示されるように、互いに近づいたり遠ざかったりするように対称的に動く。上部電極のパターンは、このような動きをサポートするように形成される。実施形態によっては、上部電極は、腕の長手方向で互い違いのパターンを呈するように形成される。実施形態によっては、ピエゾレイヤ上の腕1703,1704の長手方向中央領域は、おもり部分に隣接する部分が上部電極(すなわち上部電極の部分1705及び1706)によって覆われ、ギャップ17に近い領域は上部電極で覆われないままで残される。一方、腕1703,1704の長手方向の端に近い領域は、その反対となるように構成される。すなわち、ギャップ17に近い領域が上部電極(すなわち上部電極の部分1715,1725,1716,1726)によって覆われ、おもり部分に隣接する部分は覆われないされないままで残される。
【0142】
実施形態によっては、パターンが形成された上部電極への配線は、機械的アンカー1709に位置する導体パッド1708から延びてきている。更に、上部電極のある部分から上部電極の他の部分への配線も設けられてもよい。更に、反対側のアンカー1719への配線も設けられてもよい。下部電極のための導体パッド1707"も、例えばアンカー1709,1719のいずれかにあってもよい。
【0143】
図17Bは、双音叉型共振器の別の実施形態を示したものである。好ましい振動モードは面外振動(out-plane motion)である。このモードでは、圧電変換によって、共振器1730の2つの腕が互いに対してz方向に同位相で振動する。(ギャップ17内のシンボルは、隣接する曲げ振動腕の、正のz方向又は負のz方向の相対的な運動方向を示している。)2本の(曲げ)振動腕1703,1704は従って、両方の腕1703,1704が正のz方向と負のz方向に交互に動くように振動する。上部電極のパターンは、このような動きをサポートするように形成される。この共振器構造は、互いに反対の極性を有する2つの上部電極と、電気的に浮いている下部電極レイヤL3とを有する。共振器1730'の物質スタックは、
図10や
図12A-Cを参照して上に説明してきた物質スタックに一致している。実施形態によっては、ピエゾレイヤ上の腕1703,1704の長手方向中央領域の大部分は、第1の上部電極(すなわち上部電極の部分1732及び1742)によって覆われるされると共に、(第1の)導体パッド1708に接続される。一方、1703,1704の長手方向の端に近い領域の大部分は、第2の上部電極(すなわち上部電極の部分1731,1733,1741,1743)によって覆われると共に、(第2の)導体パッド1718に接続される。
図17Bの実施例では、導体パッド1708はアンカー1709に配され、導体パッド1718は反対側のアンカー1719に配される。
【0144】
図17Cは、双音叉型共振器の別の実施形態を示したものである。共振器1750の好ましい振動モードは面外振動(out-plane motion)である。このモードでは、圧電変換によって、共振器1750の2つの腕が互いに対してz方向に逆位相で振動する。従って、2本の(曲げ)振動腕1703,1704は、腕1703がz軸の正方向に動くとき、腕1704はz軸の負方向に動く。(又はその逆である。)上部電極のパターンは、このような動きをサポートするように形成される。この共振器構造は、互いに反対の極性を有する2つの上部電極と、電気的に浮いている下部電極レイヤL3とを有する。共振器1750'の物質スタックは、
図10や
図12A-Cを参照して上に説明してきた物質スタックに一致している。実施形態によっては、ピエゾレイヤ上の腕1703の長手方向中央領域(すなわち上部電極部分1752)と、ピエゾレイヤ上の腕1704の長手方向端部領域(すなわち上部電極部分1761及び1763)の大部分は、第1の上部電極構造によって覆われると共に、導体パッド1708に接続される。一方、ピエゾレイヤ上の腕1704の長手方向中央領域(すなわち上部電極部分1762)と、ピエゾレイヤ上の腕1703の長手方向端部領域(すなわち上部電極部分1751及び1753)の大部分は、第2の上部電極構造によって覆われると共に、導体パッド1718に接続される。
【0145】
図17B及び17Cに描かれた実施形態においては、2つの上部電極は互いに交差する必要はない。従って、
図10や
図12A-Cに描かれた物質スタックのレイヤL7及びL8は必要ない。
【0146】
これまで紹介してきた音叉型共振器と同様に、
図17A-Cの双音叉型共振器の腕1703,1704も、結晶軸<100>の方向に配されている。例えばシリコンの結晶軸[100]の方向に配されている。(又は、当該方向からの逸脱が5度未満である。)これは、高い熱安定性を達成するためである。
【0147】
複数の双音叉型共振器を結合してより大きな共振器構造を形成することができる。そのようなアセンブリを形成するには、当該アセンブリを単一の集団振動モード(collective vibration mode)で共振させるような相互連結要素を用いる。このような双音叉型共振器アセンブリの例が
図18A及び18Bに示されている。(
図17A-Cに示されたタイプの)5つの双音叉型共振器1800が1列に置かれている。各双音叉型共振器1800は、ギャップ18で隔てられた振動腕1803,1804を有する。共有されるおもり要素1802が、隣接する中央ばね部分の間に位置している。また、アセンブリの末端部には、末端おもり要素1801が位置している。このアセンブリは機械的アンカー1809,1819を有する。機械的アンカー1809,1819はそれぞれ、中央ばね部分(双音叉型共振器)の端部に結合している。実施形態によっては、これらのアンカーは、互いに結合していたり、ひとまとまりにされていたりしてもよい。また、中央部のアンカーにより近接した形態であってもよい。
【0148】
図18Aの実施例においては、各双音叉型共振器1800は全て面内逆位相モード(xy面)で振動する。しかし、隣接する共振器1800の共振モードは互いに180°シフトしている。この結果、ある双音叉型共振器の振動腕1804と隣接する双音叉型共振器の振動腕1803とを相互接続するおもり要素1802(
図18Aにはそのようなおもり要素が4つ描かれている)は、これらの腕と共に同期して振動する。
【0149】
複数の双音叉型共振器が結合したアセンブリの別の実施形態が
図18Bに描かれている。この実施形態では、個々の双音叉型共振器1800は全て面外逆位相モードで振動する。しかし、共振器1800の振動モードは互いに180度シフトしている。(この様子が、z軸正方向とz軸負方向の動きを示す記号によって図示されている。)この結果、ある双音叉型共振器の振動腕1804と隣接する双音叉型共振器の振動腕1803とを相互接続するおもり要素1802(
図18Bにはそのようなおもり要素が4つ描かれている)は、これらの腕と共に同期して振動する。
【0150】
実施形態によっては、最も外側のおもり要素1801の体積(例えば幅)は、共振器間に配されるおもり要素1802の体積の50%か約50%である。これは、双音叉型共振器間の振動エネルギーが等しく配分されるようにするためである。これまで紹介してきた実施例と同様に、双音叉型共振器1800の腕1803,1804も、結晶軸<100>の方向に配されている。例えばシリコンの結晶軸[100]の方向に配されている。または結晶軸[100]からの逸脱が5度未満である。
【0151】
図19A及び19Bは、相互接続された双音叉型共振器の別の実施形態を示したものである。実施形態によっては、交流信号が上部電極と下部電極との間に接続されたときに、隣接する双音叉型共振器が相対的に180度の位相シフトを有する動きをサポートする力を経験するように、電極構造のパターンが形成される。実施形態によってはこれは、
図19Aに示されるように上部電極のパターンを形成することにより可能となる。簡単のために、双音叉型共振器1800を3つだけ有するアセンブリを描いた。隣接する共振器1800同士を比較すると、曲げ腕1803(又は1804)の上面側に形成された上部電極1850のパターンが反対になっている。
【0152】
実施形態によっては、パターンが形成された上部電極1850への配線は、統合された機械的アンカー1809に位置する導体パッド1808から延びてきている。下部電極のための導体パッド1807も、同じアンカー1809上にあってもよい。
【0153】
図19Bに例示されるような更に別の実施形態では、
図19Aの共振器1800に対応する共振器1800'は、互いに反対の極性を有する2つの上部電極1860及び1870と、下部電極レイヤL3とを有する。共振器1800'の物質スタックは、
図10や
図12A-Cを参照して上に説明してきた物質スタックに一致している。しかし、
図10や
図12A-Cに描かれた物質スタックのレイヤL7及びL8については異なる。というのも、
図19Bの例ではレイヤL7及びL8は不要であるからである。簡単のために、双音叉型共振器1800を2つだけ有するアセンブリを描いた。
【0154】
左側の双音叉型共振器において、ピエゾレイヤ上の腕1803の長手方向中央領域は、導体パッド1868に接続された第1の上部電極構造1860によって主に覆われている。また、長手方向の端に近い領域は、導体パッド1878に接続された第2の上部電極構造1870によって主に覆われている。一方、腕1804については、長手方向中央領域は第2の上部電極構造1870によって主に覆われており、長手方向の端に近い領域は第1の上部電極構造1860によって主に覆われている。
図19Bの実施例では、導体パッド1868はアンカー1809に配され、導体パッド1878は反対側のアンカー1819に配される。
【0155】
隣接する2つの双音叉型共振器1800'を比較すると、長手方向中央領域及び端部領域は、反対の極性を有する上部電極で覆われている。交流信号が上部電極と下部電極との間に接続されたときに、隣接する双音叉型共振器が相対的に180度の位相シフトを有する動きをサポートする面外力(out-of-plane force)を経験する。この結果、ある双音叉型共振器の振動腕1804と隣接する双音叉型共振器の振動腕1803とを相互接続するおもり要素1802(
図19Bにおける中央部のおもり要素)は、これらの腕と同期して振動する。
【0156】
図20は、
図18A,Bや
図19A,Bに示した実施形態のある変形を示したものである。中央部の双音叉型共振器1800又は1800'のみが、機械的に固定されている。他の双音叉型共振器の上部電極'への配線は、共有のおもり要素1802を経由して隣接する共振器の電極に接続することにより実装される。好ましくは対称的なパターンとして実装される。
【0157】
図21は、
図18-20に示した実施形態の更なる変形例を示している。この変形例では、相互接続されているおもり要素(共有おもり要素)が最小化されている(または省略されている)。これは、隣接する双音叉型共振器を接続する要素が、単に接続梁2145によって実装されているからである。
【0158】
図22は回転共振器2200を描いている。この共振器は中央ばね構造又は中央ばね部分を有し、これはその中央部で機械的アンカー2209に機械的に固定されている。中央ばね部分は4つのばね要素又は腕2203,2204,2213,2214によって、中央ばね部分を包囲するように配されている4つのおもり要素2201,2202,2211,2212に結合されている。ばね要素は交差構造を形成している。またばね要素は、基本的に結晶軸<100>に沿って配されている。(または、当該方向からの逸脱が5度未満である。)
【0159】
上部電極と下部電極との間に交流信号が接続されたとき、腕2203,2204,2213,2214が、z軸の周りの回転(往復)運動をサポートする力を経験するように(その際中央アンカリング領域2209は動かないままである)、上部電極2205,2206,2215,2216のパターンが形成される。これは例えば、上部電極のパターンを
図22に描かれるように形成することで可能となる。
図22では、腕2203,2204,2213,2214の同じ側の表面(例えばアンカー2209から見て右側、すなわち領域2205,2206,2215,2216)が電極部分に覆われているが、その他の部分は覆われていない。この例では、4つのおもり要素が同じ向きに同期して回転する。
【0160】
上部電極への、(好ましくは金属の)配線22は、導体パッド2208から延伸される。下部電極への導通は、導体パッド2207から設けられる。
図8に描かれていたピエゾレイヤL2の開口部120は、
図22では描かれていない。より一般的には、導体パッドは、ウェーハレベルにパッケージ化された共振器の一部であるスルーシリコン相互接続部を表していることができる。
【0161】
実施形態によっては、共振器2200の物資スタックは、
図8を参照と共に以前に紹介し、また
図12A-Cを用いて紹介したL4'にも補足説明したものと同様に実装することができる。
【0162】
更に別の実施形態では、共振器2200に対応する共振器は、互いに反対の極性を有する2つの上部電極(X
in, X
out)と、電気的に浮いている下部電極とを備えて実装される。そのような実施形態においては、2つの電極の間の交差領域に、絶縁層(L8)が、
図10や11に示した実施形態と同様に実装されてもよい。物質スタックの技術的な実装形態は、
図10や
図12A-Cを用いて説明した実施形態と同様であることができる。
【0163】
本件において開示される1つ又は複数の実施例の技術的効果のあるものを以下に示す。ただし、これらの効果は特許請求の範囲および解釈を制限するものではない。技術的効果の一つは、最適化されたシリコンMEMS共振器デザインである。技術的効果の一つは、所望の共振周波数を有するアコーディオンモードMEMS共振器を提供することである。更なる技術的効果の一つは、広い温度範囲に亘る良好な周波数安定性である。更なる技術的効果の一つは、低い等価直列抵抗(ESR)である。更なる技術的効果の一つは、小さなフットプリントの共振器を提供することである。
【0164】
以上の説明により、本発明の特定の実装および実施形態の非限定例を用いて、発明者によって現在考えられている、本発明を実施するための最良の形態の完全かつ有益な説明を提供した。しかしながら、当業者には明らかであるように、上述の実施形態の詳細は本発明を限定するものではなく、本発明の特徴から逸脱することなく同等の手段を用いて、他の実施形態に実装することができる。
【0165】
さらに、以上に開示した本発明の実施形態の特徴は、対応する他の特徴を用いることなく用いられてもよい。然るに、以上の説明は、本発明の原理を説明するための例に過ぎず、それを限定するものではないと捉えるべきである。よって、本発明の範囲は添付の特許請求のみによって制限されるものである。