(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-18
(45)【発行日】2024-11-26
(54)【発明の名称】繊維強化樹脂発泡体の製造方法
(51)【国際特許分類】
B29C 70/50 20060101AFI20241119BHJP
B29C 48/154 20190101ALI20241119BHJP
B29C 48/34 20190101ALI20241119BHJP
B29C 48/88 20190101ALI20241119BHJP
B29C 70/20 20060101ALI20241119BHJP
B29C 44/00 20060101ALI20241119BHJP
B29C 44/36 20060101ALI20241119BHJP
C08J 9/04 20060101ALI20241119BHJP
C08J 5/04 20060101ALI20241119BHJP
【FI】
B29C70/50
B29C48/154
B29C48/34
B29C48/88
B29C70/20
B29C44/00 E
B29C44/36
C08J9/04 103
C08J9/04 CEZ
C08J5/04 CER
(21)【出願番号】P 2022008014
(22)【出願日】2022-01-21
【審査請求日】2024-03-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000010065
【氏名又は名称】フクビ化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100133916
【氏名又は名称】佐藤 興
(72)【発明者】
【氏名】兼岩 秀和
(72)【発明者】
【氏名】金森 尚哲
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 敬洋
(72)【発明者】
【氏名】畠山 広大
【審査官】田村 佳孝
(56)【参考文献】
【文献】特開2018ー126935(JP,A)
【文献】特開2010-143022(JP,A)
【文献】特開2021-008086(JP,A)
【文献】特開2019-051652(JP,A)
【文献】特開昭51-144466(JP,A)
【文献】特開昭50-054663(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 70/50
B29C 48/154
B29C 48/34
B29C 48/88
B29C 70/20
B29C 44/00
B29C 44/36
C08J 9/04
C08J 5/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発泡樹脂と強化繊維とを含む繊維強化樹脂発泡体を、押出機および当該押出機と連通する金型を用いて製造する方法であって、
強化繊維を前記金型の内部を通過するように所定の第1方向に沿って送り出す送り工程と、
マトリックス樹脂と発泡剤とを前記押出機に投入して当該押出機内で前記マトリックス樹脂と前記発泡剤とを混錬する混錬工程と、
前記押出機によって、前記発泡剤が混入された前記マトリックス樹脂を前記金型に圧送するとともに、当該金型に導入された前記マトリックス樹脂を前記金型の外部に押し出しつつ前記発泡剤を発泡させて前記マトリックス樹脂を膨張させる押出工程とを含み、
前記第1方向と直交する方向を第2方向としたとき、前記押出工程では、前記強化繊維からそれぞれ前記第2方向の両側に離間した位置において前記マトリックス樹脂を前記金型から押し出し、前記強化繊維の前記第2方向の両側で前記マトリックス樹脂を膨張させる、ことを特徴とする繊維強化樹脂発泡体の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の繊維強化樹脂発泡体の製造方法において、
前記第1方向および前記第2方向と直交する方向を第3方向としたとき、前記押出工程では、前記マトリックス樹脂を前記第3方向について互いに離間する複数の位置において前記金型から押し出す、ことを特徴とする繊維強化樹脂発泡体の製造方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の繊維強化樹脂発泡体の製造方法において、
前記強化繊維の束である棒状の強化繊維束を複数準備する準備工程をさらに含み、
前記第1方向および前記第2方向と直交する方向を第3方向としたとき、前記送り工程では、複数の前記強化繊維束が前記第3方向について互いに離間した状態で前記金型を通過するように当該強化繊維束を送り出す、ことを特徴とする繊維強化樹脂発泡体の製造方法。
【請求項4】
請求項3に記載の繊維強化樹脂発泡体の製造方法において、
前記送り工程では、複数の前記強化繊維束が前記第2方向について互いに離間した状態で前記金型を通過するように当該強化繊維束を送り出し、
前記押出工程では、前記第2方向について隣接する前記強化繊維束の間の位置において前記マトリックス樹脂を前記金型から押し出す、ことを特徴とする繊維強化樹脂発泡体の製造方法。
【請求項5】
請求項1または2に記載の繊維強化樹脂発泡体の製造方法において、
前記強化繊維がシート状に集合した強化繊維シートを準備する準備工程をさらに含み、
前記送り工程では、前記強化繊維シートをその厚さ方向が前記第2方向と一致する姿勢で前記金型を通過するように送り出す、ことを特徴とする、繊維強化樹脂発泡体の製造方法。
【請求項6】
請求項5に記載の繊維強化樹脂発泡体の製造方法において、
前記準備工程では、前記強化繊維シートを複数準備し、
前記送り工程では、複数の前記強化繊維シートが前記第2方向について互いに離間した状態で前記金型を通過するように当該強化繊維シートを送り出し、
前記押出工程では、隣接する前記強化繊維シートの間の位置において前記マトリックス樹脂を前記金型から押し出す、ことを特徴とする繊維強化樹脂発泡体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡樹脂と強化繊維とを含む繊維強化樹脂発泡体を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1に示される繊維強化樹脂発泡体が公知である。この繊維強化樹脂発泡体は、熱可塑性樹脂発泡体からなる芯材層と、芯材層の外周面を覆うように当該芯材層の表面に融着された繊維強化熱可塑性樹脂からなる表皮層とを有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載の繊維強化樹脂発泡体では、表皮層(成形品の外周面)に強化繊維が配置されている。そのため、芯材層を強化繊維に十分に密着できず強化繊維による補強効果が不十分になるおそれ、あるいは、芯材層の発泡が強化繊維によって阻害されて芯材層の空隙率が小さくなり断熱性能が不十分になるおそれがある。このように、上記特許文献1では、断熱性能と機械的強度とを両立する点において改善の余地があった。
【0005】
本発明は、上記のような事情に鑑みてなされたものであり、断熱性能および機械的強度の双方を高めることが可能な繊維強化樹脂発泡体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するためのものとして、本発明は、発泡樹脂と強化繊維とを含む繊維強化樹脂発泡体を、押出機および当該押出機と連通する金型を用いて製造する方法であって、強化繊維を前記金型の内部を通過するように所定の第1方向に沿って送り出す送り工程と、マトリックス樹脂と発泡剤とを前記押出機に投入して当該押出機内で前記マトリックス樹脂と前記発泡剤とを混錬する混錬工程と、前記押出機によって、前記発泡剤が混入された前記マトリックス樹脂を前記金型に圧送するとともに、当該金型に導入された前記マトリックス樹脂を前記金型の外部に押し出しつつ前記発泡剤を発泡させて前記マトリックス樹脂を膨張させる押出工程とを含み、前記第1方向と直交する方向を第2方向としたとき、前記押出工程では、前記強化繊維からそれぞれ前記第2方向の両側に離間した位置において前記マトリックス樹脂を前記金型から押し出し、前記強化繊維の前記第2方向の両側で前記マトリックス樹脂を膨張させる(請求項1)。
【0007】
本発明では、マトリックス樹脂に発泡剤が混入されて、マトリックス樹脂が金型から押し出されるときに発泡剤の発泡によってマトリックス樹脂が膨張する。具体的には、発泡剤が混入されたマトリックス樹脂が押出機によって金型に圧送された後に外部に押し出されることで、マトリックス樹脂にかかる圧力は低下する。この圧力低下により、マトリックス樹脂に含まれる発泡剤が発泡して気泡が生成される、あるいは、金型内部で既に生成された気泡が成長して、当該気泡に押されてマトリックス樹脂は膨張する。そして、本発明では、金型の内部を通過する強化繊維の第2方向の両側においてマトリックス樹脂が金型から押し出されて強化繊維の第2方向の両側においてマトリックス樹脂が膨張する。これより、本発明によれば、強化繊維を覆うようにマトリックス樹脂を膨張させることができ、マトリックス樹脂と強化繊維とを確実に密着させることができる。しかも、発泡剤を含有するマトリックス樹脂が強化繊維から離間した位置において金型から押し出されるので、強化繊維によってマトリックス樹脂の膨張が阻害されるのを抑制でき、マトリックス樹脂を高倍率で膨張させることができる。従って、機械的強度が高く、且つ、空隙率が高いつまり断熱性能が高い繊維強化樹脂発泡体を製造できる。
【0008】
前記構成において、好ましくは、前記第1方向および前記第2方向と直交する方向を第3方向としたとき、前記押出工程では、前記マトリックス樹脂を前記第3方向について互いに離間する複数の位置において前記金型から押し出す(請求項2)。
【0009】
この構成では、第3方向について金型の互いに異なる位置から押し出された各マトリックス樹脂を互いの隙間を埋めるようにそれぞれ膨張させることができる。これより、マトリックス樹脂を十分な倍率で膨張させて繊維強化樹脂発泡体の空隙率を高めることができる。
【0010】
前記構成において、好ましくは、前記強化繊維の束である棒状の強化繊維束を複数準備する準備工程をさらに含み、前記第1方向および前記第2方向と直交する方向を第3方向としたとき、前記送り工程では、複数の前記強化繊維束が前記第3方向について互いに離間した状態で前記金型を通過するように当該強化繊維束を送り出す(請求項3)。
【0011】
この構成では、開繊前の強化繊維束を用いて容易に機械的強度および断熱性能の高い繊維強化樹脂発泡体を製造できる。また、強化繊維束どうしの間の隙間を埋めるようにマトリック樹脂を膨張させることができ、空隙率が確実に高められた、つまり、断熱性能が確実に高められた繊維強化樹脂発泡体を製造できる。
【0012】
前記構成において、好ましくは、前記送り工程では、複数の前記強化繊維束が前記第2方向について互いに離間した状態で前記金型を通過するように当該強化繊維束を送り出し、前記押出工程では、前記第2方向について隣接する前記強化繊維束の間の位置において前記マトリックス樹脂を前記金型から押し出す(請求項4)。
【0013】
この構成によれば第2方向についても強化繊維束同士の間の隙間を埋めるようにマトリックス樹脂を膨張させることができる。従って、内部に十分な量の強化繊維が配置され且つ空隙率の高い繊維強化樹脂発泡体を連続的に製造できる。
【0014】
前記構成において、好ましくは、前記強化繊維がシート状に集合した強化繊維シートを準備する準備工程をさらに含み、前記送り工程では、前記強化繊維シートをその厚さ方向が前記第2方向と一致する姿勢で前記金型を通過するように送り出す(請求項5)。
【0015】
この構成によれば、シート状の強化繊維がマトリックス樹脂に含有された繊維強化樹脂発泡体を連続的に製造できる。
【0016】
前記構成において、好ましくは、前記準備工程では、前記強化繊維シートを複数準備し、前記送り工程では、複数の前記強化繊維シートが前記第2方向について互いに離間した状態で前記金型を通過するように当該強化繊維シートを送り出し、前記押出工程では、隣接する前記強化繊維シートの間の位置において前記マトリックス樹脂を前記金型から押し出す(請求項6)。
【0017】
この構成によれば、複数のシート状の強化繊維がマトリックス樹脂に含有されて機械的強度が高められた繊維強化樹脂発泡体を連続的に製造できる。また、強化繊維シート同士の間の隙間を埋めるようにマトリックス樹脂を膨張させることができるので、繊維強化樹脂発泡体の空隙率も高めることができる。
【発明の効果】
【0018】
以上説明したように、本発明の製造方法によれば、断熱性能および機械的強度の双方が高められた繊維強化樹脂発泡体を製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る複合成形品(繊維強化樹脂発泡体)を製造する装置を一部断面で示した概略側面図である。
【
図2】本発明の第1実施形態に係る複合成形品を製造する装置を一部断面で示した概略平面図である。
【
図3】
図1に示す金型を搬送方向の下流側から見た概略側面図である。
【
図5】本発明の第1実施形態に係る製造方法の概略手順を示すフローチャートである。
【
図6】
図1に示す金型から発泡剤入りマトリックス樹脂が押し出される様子を示した図である。
【
図7】本発明の第1実施形態に係る複合成形品の断面構造を示す図である。
【
図8】本発明の第2実施形態に係る複合成形品の製造方法を説明するための図であって、(a)は金型を搬送方向の下流側から見た概略側面図であり、(b)は複合成形品の断面構造を示す図である。
【
図9】本発明の第3実施形態に係る複合成形品の製造方法を説明するための図であって、(a)は金型を搬送方向の下流側から見た概略側面図であり、(b)は複合成形品の断面構造を示す図である。
【
図10】本発明の第4実施形態に係る複合成形品の製造方法を説明するための図であって、(a)は金型を搬送方向の下流側から見た概略側面図であり、(b)は複合成形品の断面構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1は、本発明の第1実施形態に係る複合成形品(繊維強化樹脂発泡体)の製造方法に用いられる装置つまり複合成形品を製造するための装置の概略側面図である。
図2は、複合成形品を製造するための装置の概略平面図である。以下では、この装置を単に製造装置という。第1実施形態において製造される複合成形品10は、後述する
図7に示すように、発泡樹脂からなる基材11と当該基材11内に配置された強化繊維12とを含む複合成形品10である。第1実施形態では、複合成形品10は、強化繊維12として、強化繊維の束である棒状の強化繊維束1を4本含む。
【0021】
図1および
図2に示すように、製造装置100は、押出機20と、押出機20と連通する金型30と、冷却機40と、引取機50と、切断機60とを有する。
【0022】
第1実施形態では、強化繊維12(強化繊維束1)は略水平に搬送される(送り出される)ようになっており、以下では、水平面に沿う強化繊維12の搬送方向であって
図2および
図3における左右方向を単に搬送方向という。また、搬送方向および上下方向に直交する方向であって
図2の紙面と直交する方向を幅方向という。ここで、上記の搬送方向は請求項の「第1方向」であり、第1実施形態では、上下方向が請求項の「第2方向」に相当し、幅方向が「第3方向」に相当する。
【0023】
(製造装置の構成)
押出機20は、内側に流体を収容可能な収容室22が形成されたシリンダ21と、収容室22に収容されたスクリュー26とを有する。スクリュー26は、シリンダ21の中心軸に沿って延びる軸体27と、軸体27の外周面に螺旋状に配置されたスクリュー羽根28とを有する。スクリュー26は、駆動装置29によって軸体27がその中心軸回りに回転駆動されることで、収容室22内の流体を軸体27の中心軸に沿って圧送する。以下では、適宜、スクリュー26の軸体27の中心軸およびシリンダ21の中心軸に沿う方向をシリンダ軸方向といい、スクリュー26による流体の搬送方向の下流側を先端側、反対側を基端側という。
【0024】
シリンダ21は、マトリックス樹脂2が投入される第1投入部24と、発泡剤3が投入される第2投入部25とを有する。シリンダ軸方向について第1投入部24は第2投入部25よりも基端側に位置している。シリンダ21の先端(シリンダ軸方向についての先端側の端部)には、収容室22と連通してシリンダ21の外部に開口する導入部23が設けられている。
【0025】
図3は、金型30を、搬送方向の下流側から見た概略側面図である。
図4は、
図3のIV-IV線断面図である。
【0026】
金型30は、略直方体の外形を有する。金型30には、これを搬送方向に貫通する貫通部36が形成されている。第1実施形態では、4つの貫通部36が幅方向に互いに離間した状態で並設されている。各貫通部36は互いに同一の構成を有している。具体的に、各貫通部36は、搬送方向に延びる略円柱状を有している。後述するように、これら貫通部36にはそれぞれ1つの強化繊維束1が挿通される。これより、各貫通部36の孔径は強化繊維束1の外径以上の寸法に設定されている。
【0027】
金型30には、シリンダ21の導入部23と連通し、且つ、金型30の搬送方向の下流側の面(以下、適宜、開口面30aという)に開口するキャビティ30cが形成されている。キャビティ30cは、開口面30aのうち各貫通部36の開口端36aからそれぞれ上下方向の両側に離間した部分に開口している。
【0028】
具体的に、キャビティ30cは、入口部31と、入口部31から上下に分岐して幅方向に延びる2本の主通路32と、各主通路32の幅方向の互いに異なる位置から搬送方向の下流側にそれぞれ延びて開口面30aに開口する複数の枝通路34とを有する。各主通路32からはそれぞれ5つの枝通路34が延びている。入口部31は、金型30の幅方向の一側面に開口しており、この開口部分を介してシリンダ21の導入部23と連通している。上側の主通路32は4つの貫通部36の上方を通っており、下側の主通路32は4つの貫通部36の下方を通っている。
【0029】
10個の枝通路34は、互いに同じ構成を有している。これら枝通路34は搬送方向に延びる略円柱状を有している。同じ主通路32から延びる5つの枝通路34は、幅方向に互いに平行に並んでおり、幅方向について互いに隙間を空けた状態で開口面30aに開口している。上側の主通路32から延びる5つの枝通路34は、各貫通部36の開口端36aから上方に離間した位置において開口面30aに開口しており、下側の主通路32から延びる5つの枝通路34は、各貫通部36の開口端36aから下方に離間した位置において開口面30aに開口している。上側の枝通路34の開口端34aと貫通部36の開口端36aの上下方向の離間距離と、下側の枝通路34の開口端34aと貫通部36の開口端36aの上下方向の離間距離とは同じに設定されており、貫通部36は、上側の枝通路34と下側の枝通路34の上下方向の略中央に位置している。また、幅方向の両側の枝通路34の開口端34aは、幅方向の両側の貫通部36の開口端36aよりも、幅方向の両外側に位置している。各枝通路34の開口端34aの径は貫通部36の開口端36aの径よりも大きく、各枝通路34の開口面積は貫通部36の開口面積よりも大きい面積に設定されている。
【0030】
後述するように、各枝通路34の開口端34aからは発泡剤入りマトリックス樹脂4が押し出され、当該発泡剤入りマトリックス樹脂4が貫通部36の開口端36aを通過した強化繊維束1を内包することで複合成形品10は形成される。
【0031】
冷却機40は、金型30の搬送方向の下流側に設けられている。冷却機40は、金型30から送り出された複合成形品10を冷却しつつ成形する。冷却機40には、これを搬送方向に貫通するキャビティ(以下、適宜、成形用キャビティ41という)が形成されている。成形用キャビティ41は、複合成形品10(完成品)の断面とほぼ同じ断面を有する。冷却機40は、成形用キャビティ41を複合成形品10が通過することでこれを冷却するとともに成形する。
【0032】
引取機50は、冷却機40の搬送方向の下流側に設けられている。引取機50は、複数対のローラ51と、上下方向に対応配置され且つローラ51に掛け回された一対の無端ベルト52とを有する。引取機50は、冷却機40から送り出された成形後の複合成形品10が無端ベルト52によって上下から挟み込まれた状態でローラ51が回転することにより複合成形品10を搬送方向の下流側に送り出す。ここで、後述するように、複合成形品10には強化繊維束1が含まれており、引取機50は、複合成形品10を送り出すことで同時に強化繊維束1を搬送方向の下流側に送り出す。
【0033】
切断機60は、引取機50の搬送方向の下流側に配置されている。切断機60は、引取機50から送出された複合成形品10を受け入れる搬送部62と、搬送部62の上に配置されたカッター61とを有する。切断機60は、搬送部62上の複合成形品10をカッター61によって切断する。
【0034】
(複合成形品の製造方法)
図5は、製造装置100を用いた複合成形品10(繊維強化樹脂発泡体)の製造方法の概略手順を示すフローチャートである。複合成形品10の製造方法は、準備工程S1、送り工程S2、混錬工程S3、押出工程S4、冷却・成形工程S5および切断工程S6を含む。
【0035】
[準備工程]
準備工程S1では、複合成形品10に含有させる強化繊維12を準備する。第1実施形態では、準備工程S1にて4本の強化繊維束1を準備する。具体的に、強化繊維束1が巻き付けられた4つの強化繊維束ロール1Rを準備する。
【0036】
[送り工程]
送り工程S2では、強化繊維束1を搬送方向の下流側に送り出す。第1実施形態では、4本の強化繊維束1を、幅方向について互いに離間した状態で、且つ、それぞれが金型30の各貫通部36を通過する状態で送り出す。具体的に、強化繊維束ロール1Rはガイドローラ55にそれぞれ支持されている。各強化繊維束1は、ガイドローラ55からそれぞれ引き出されて、各貫通部36を通って引取機50の無端ベルト52間に導入されている。各強化繊維束1は、引取機50が強化繊維束1を含む複合成形品10を搬送方向の下流側に送り出すことで、複合成形品10と一体に、ガイドローラ55から金型30に向かう方向および金型30から引取機50に向かう方向に送り出される。
【0037】
[混錬工程]
混錬工程S3では、発泡剤3およびマトリックス樹脂2を押出機20に投入して発泡剤3とマトリックス樹脂2とを押出機20内で混錬する。
【0038】
第1実施形態では、発泡剤3とマトリックス樹脂2とがそれぞれ個別に押出機20に投入されて、これらが押出機20内で混錬される。具体的に、シリンダ21の第1投入部24から押出機20の収容室22内にマトリックス樹脂2が投入され、第2投入部25から収容室22内に発泡剤3が投入され、押出機20のスクリュー26の回転によって収容室22内にてマトリックス樹脂2と発泡剤3とは混錬される。以下では、発泡剤3が混入され且つ当該発泡剤3が未発泡の状態のマトリックス樹脂2を発泡剤入りマトリックス樹脂4という。なお、押出機20のスクリュー26は、少なくとも複合成形品10の製造開始から終了までの期間、連続して回転駆動される。
【0039】
第1実施形態では、マトリックス樹脂2として熱可塑性樹脂が用いられる。第1投入部24は、マトリックス樹脂2を貯蔵するホッパー81と連通しており、当該ホッパー81から第1投入部24を介して収容室22内にマトリックス樹脂2が導入される。マトリックス樹脂2には、例えば、ポリアミド(特にPA6,PA9T,PA12)、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリフェニレンサルファイド、ポリエステル、ポリアセタール、ポリカーボネート、アクリル樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS)、ポリアミドイミド、ポリスルホン、ポリフェニルスルホン、ポリエーテルイミド、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトンケトン、ポリイミド、ポリアリレート、フッ素樹脂、液晶ポリマー、熱可塑性エポキシ樹脂のいずれかを用いることができる。あるいは、これらの熱可塑性樹脂を2種類以上混合したポリマーアロイをマトリックス樹脂2として用いてもよい。
【0040】
第1実施形態では、発泡剤3として液化二酸化炭素が用いられる。第2投入部25は、液化二酸化炭素を貯蔵するボンベ82に接続されており、当該ボンベ82から第2投入部25を介して収容室22内に発泡剤3としての二酸化炭素が導入される。
【0041】
[押出工程]
押出工程S4では、押出機20によって、発泡剤入りマトリックス樹脂4を金型30に圧送するとともに、発泡剤入りマトリックス樹脂4を金型30の外部に押し出しつつ発泡剤3を発泡させてマトリックス樹脂2を膨張させる。
【0042】
具体的に、発泡剤入りマトリックス樹脂4は、スクリュー26の回転によって加圧されつつ導入部23を通って金型30の入口部31に導入される。発泡剤入りマトリックス樹脂4は、入口部31から各主通路32にそれぞれ分岐した後、各枝通路34に押し込まれ、各枝通路34の開口端34aから金型30の外部に押し出される。
【0043】
スクリュー26の作用によって枝通路34を含む金型30のキャビティ30c内の圧力は高められている。そのため、金型30から外部に押し出されると、発泡剤入りマトリックス樹脂4にかかる圧力は低下する。これより、金型30の外部に押し出されることで、発泡剤入りマトリックス樹脂4内の発泡剤3は発泡する。第1実施形態では、上記のように発泡剤3として二酸化炭素が用いられており、この二酸化炭素が発泡する。発泡剤(二酸化炭素)3が発泡するとマトリックス樹脂2内に気泡3aが生成され、当該気泡3aがマトリックス樹脂2内で成長する。これにより、マトリックス樹脂2は膨張する。なお、金型30のキャビティ30cの下流側(開口面30a側)の部分の圧力は上流側(スクリュー26側)の部分の圧力よりも低いので、発泡剤入りマトリックス樹脂4にかかる圧力は金型30の通過途中にも低下する。そのため、一部の発泡剤が金型30の通過途中に発泡する場合はあるが、生成された気泡3aは主として金型30の外部で成長する。
【0044】
図6は、
図4に対応する図であって発泡剤入りマトリックス樹脂4が金型30から押し出される様子を模式的に示した図である。この
図6および
図2において、マトリックス樹脂2の幅寸法が金型30の開口面30aから搬送方向の下流側に向かって徐々に増大するのは、マトリックス樹脂2の膨張を表している。同様に、
図1において、マトリックス樹脂2の上下方向の寸法が金型30の開口面30aから搬送方向の下流側に向かって徐々に増大するのは、マトリックス樹脂2の膨張を表している。
【0045】
図1および
図6に示すように、金型30から押し出されたマトリックス樹脂2は、幅方向および上下方向について隣接する枝通路34の開口端34aから押し出されたマトリックス樹脂2どうしが接触して一体化するまで膨張する。
【0046】
ここで、上記のように、各枝通路34の開口端34aは、貫通部36の開口端36aの上方および下方において開口している。これより、上下方向について隣接する枝通路34の開口端34aから押し出されたマトリックス樹脂2どうしが互いに一体化するまで膨張することで、
図1に示すように、貫通部36を通過した強化繊維束1はこれらマトリックス樹脂2の内側に取り込まれ、強化繊維束1を内包する複合成形品10が成形される。第1実施形態では、上記のように、各貫通部36の開口端36aが上下の枝通路34の開口端34aの上下方向のほぼ中央に位置している。また、各貫通部36の開口端36aが幅方向に略等間隔に配置されている。これより、複合成形品10として、マトリックス樹脂2の上下方向の中央において強化繊維束1が幅方向に等間隔に並ぶ複合成形品10が成形される。
【0047】
[冷却・成形工程]
冷却・成形工程S5では、冷却機40によって複合成形品10を冷却するとともに成形する。具体的に、複合成形品10は引取機50によって冷却機40の成形用キャビティ41内に送り出され、これを通過することで冷却される。冷却機40は、膨張完了後のマトリックス樹脂2の温度がその材料(熱可塑性樹脂)の軟化温度未満に低下するまで複合成形品10を冷却する。これによりマトリックス樹脂2は硬化する。また、成形用キャビティ41を通過することで、複合成形品10はその断面が成形用キャビティ41の断面に対応した形に成形される。
【0048】
[切断工程]
切断工程S6では、切断機60によって複合成形品10を所定長さに切断する。具体的に、複合成形品10は、引取機50によって切断機60の搬送部62に送り出され、その搬送途中で切断機60のカッター61によって所定の長さに切断される。これにより、所定の長さを有する複合成形品10が完成する。なお、切断された複合成形品10は、搬送部62によって搬送方向のさらに下流側に搬出される。
【0049】
図7は、成形後の複合成形品10の断面を示した図である。
図7に示すように、複合成形品10は、断面略矩形を有し、マトリックス樹脂2からなる基材11と、当該基材11に内包された複数の強化繊維束1とを有する。基材11には、発泡剤3の発泡により生じた多数の気泡(空洞)3aが形成されている。強化繊維束1は、基材11の内部において長手方向に連続し且つ幅方向に分散した状態で基材11に内包されている。第1実施形態では、上記のように、4本の強化繊維12が基材11の上下方向の略中央において幅方向に等間隔に配置されている。
【0050】
(作用等)
以上説明したように、本発明の第1実施形態では、強化繊維束1が金型30の内部に設けられた貫通部36を通過するように送り出される。そして、発泡剤入りマトリックス樹脂4が金型30に圧送され且つ貫通部36の上下方向の両側の位置で金型30の外部に押し出されることで、発泡剤3が発泡して金型30の外部にてマトリックス樹脂2が膨張するように構成されている。そのため、マトリックス樹脂2を強化繊維束1を覆うように膨張させて強化繊維束1をマトリックス樹脂2に内包させることができ、マトリックス樹脂2と強化繊維束1とを十分に密着させることができる。従って、機械的強度が高められ且つ気泡3aを含むことで断熱性能が確保された複合成形品10(繊維強化樹脂発泡体)を連続して製造できる。
【0051】
しかも、発泡剤入りマトリックス樹脂4が押し出される枝通路34の開口端34aが、貫通部36の開口端36aに対して上下方向に離間した位置に設けられており、発泡剤入りマトリックス樹脂4が強化繊維束1の通過位置から上下方向に離間した位置にて金型30から押し出されるようになっている。そのため、強化繊維束1がマトリックス樹脂2の上下方向の膨張を阻害するのを抑制でき、マトリックス樹脂2を高倍率で膨張させることができる。従って、複合成形品10(繊維強化樹脂発泡体)の空隙率を高めることができ、断熱性能の高い繊維強化樹脂発泡体を製造することができる。
【0052】
さらに、第1実施形態では、貫通部36の開口端36aの上側および下側において枝通路34の開口端34aが幅方向に互いに離間しており、発泡剤入りマトリックス樹脂4が幅方向についても互いに離間した状態で金型30から押し出される。そのため、幅方向に隣接する枝通路34の開口端34aから押し出されたマトリックス樹脂2どうしを、互いの隙間を埋めるようにそれぞれ膨張させることができ、マトリックス樹脂2を幅方向についても十分な倍率で膨張させることができる。従って、複合成形品10(繊維強化樹脂発泡体)の空隙率および断熱性能をより高めることができる。
【0053】
(第2実施形態)
次に、
図8(a)、(b)を用いて第2実施形態に係る複合成形品(強化繊維樹脂発泡体)の製造方法を説明する。
図8(a)は、
図3に対応する図であって金型230を搬送方向の下流側から見た概略側面図である。
図8(b)は複合成形品210の断面構造を示す図である。なお、
図8(a)には、強化繊維束1を合わせて示している。
【0054】
第2実施形態では、第1実施形態と同様に複数の強化繊維束1をマトリックス樹脂2(基材11)に内包させる。一方、第2実施形態では、複数の強化繊維束1が上下方向および幅方向について並ぶようにマトリックス樹脂2に内包させる。
【0055】
具体的に、第2実施形態では、
図8(a)に示すように、金型230として、複数の貫通部236が幅方向に互いに離間した状態で列状に設けられ、且つ、当該列が上下方向の互いに離間した位置に複数設けられたものを用いる。また、金型230として、上記の貫通部236の列どうしの間、および、貫通部236が設けられた領域から上方および下方に離間した位置に、それぞれ幅方向に互いに離間した状態で複数の枝通路234が設けられたものを用いる。そして、準備工程において、貫通部236の数と同数の強化繊維束1を準備して、送り工程において、これら強化繊維束1を各貫通部236を通るように送り出す。上記のように、貫通部236は幅方向および上下方向について格子状に設けられている。従って、強化繊維束1は、これら貫通部236を通るように送り出されることで、幅方向および上下方向について互いに離間した状態で金型230を通過するように送り出される。
【0056】
また、第1実施形態と同様に、押出機20にてマトリックス樹脂2と発泡剤3とを混錬して、発泡剤入りマトリックス樹脂4を各枝通路234から押し出し、発泡剤3の発泡によってマトリックス樹脂2を膨張させる。ただし、第2実施形態では、上記のように、幅方向に並ぶ貫通部236の列どうしの間、つまり、上下方向について隣接する貫通部236どうしの間にそれぞれ枝通路234が設けられている。これより、発泡剤入りマトリックス樹脂4は、上下方向について隣接する強化繊維束1の間の位置において金型230から押し出される。
【0057】
第2実施形態においても、貫通部236から上方および下方に離間した位置で発泡剤入りマトリックス樹脂4が金型230の外部に押し出されることで、マトリックス樹脂2は高倍率で膨張する。従って、第2実施形態においても、発泡樹脂からなる基材11であって空隙率の高い基材11と当該基材11に強化繊維束1が内包された複合成形品210、つまり、断熱性能が確保され且つ機械的強度が高められた繊維強化樹脂発泡体を製造することができる。特に、第2実施形態では、
図8(b)に示すように、複数の強化繊維束1が、基材11の内部において幅方向に加えて上下方向の異なる位置に配置されることになる。そのため、機械的強度がより高められた繊維強化樹脂発泡体を製造することができる。
【0058】
(第3実施形態)
次に、
図9(a)、(b)を用いて第3実施形態に係る複合成形品(強化繊維樹脂発泡体)の製造方法を説明する。
図9(a)は、
図3に対応する図であって金型330を搬送方向の下流側から見た概略側面図である。
図9(b)は複合成形品310の断面構造を示す図である。なお、
図9(a)には、後述する強化繊維シート301を合わせて示している。
【0059】
第3実施形態では、第1、第2実施形態と異なり、強化繊維12をシート状でマトリックス樹脂2(基材11)に内包させる。
【0060】
具体的に、第3実施形態では、
図9(a)に示すように、金型330として、幅方向に延びる貫通部336と、当該貫通部336から上方および下方に離間した位置において幅方向に並ぶ複数の枝通路334とを有するものを用いる。また、第3実施形態では、準備工程において、強化繊維12として、強化繊維がシート状に集合した強化繊維シート301を準備する。例えば、強化繊維を開繊させてシート状に形成したものを強化繊維シート301として準備する。そして、送り工程において、強化繊維シート301が上記の貫通部336を通るように送り出す。上記のように、貫通部336は幅方向に延びている。従って、強化繊維シート301は、この貫通部336を通るように送り出されることで、幅方向に延びる姿勢、つまり、強化繊維シート301の厚さ方向が上下方向と一致する姿勢で金型330を通過するように送り出される。
【0061】
その他の構成については第1実施形態と同様であり、押出機20にてマトリックス樹脂2と発泡剤3とを混錬して、発泡剤入りマトリックス樹脂4を各枝通路334から押し出し、発泡剤3の発泡によってマトリックス樹脂2を膨張させる。
【0062】
これにより、第3実施形態では、
図9(b)に示すように、発泡樹脂からなる基材11と当該基材11に強化繊維シート301が内包された複合成形品310が成形される。
【0063】
第3実施形態においても、貫通部336から上方および下方に離間した位置で発泡剤入りマトリックス樹脂4が金型330の外部に押し出されることで、マトリックス樹脂2は高倍率で膨張する。従って、第3実施形態においても、発泡樹脂からなる基材11であって空隙率の高い基材11と当該基材11に強化繊維12が内包された複合成形品310、つまり、断熱性能が確保され且つ機械的強度が高められた繊維強化樹脂発泡体を製造することができる。
【0064】
(第4実施形態)
次に、
図10(a)、(b)を用いて第4実施形態に係る複合成形品(強化繊維樹脂発泡体)の製造方法を説明する。
図10(a)は、
図3に対応する図であって金型430を搬送方向の下流側から見た概略側面図である。
図10(b)は複合成形品410の断面構造を示す図である。なお、
図10(a)には、強化繊維シート301を合わせて示している。
【0065】
第4実施形態では、第3実施形態と異なり、複数の強化繊維シート301を上下方向に互いに離間する状態でマトリックス樹脂2(基材11)に内包させる。
【0066】
具体的に、第4実施形態では、
図10(a)に示すように、金型430として、幅方向にそれぞれ延びる複数の貫通部436が上下方向の互いに離間した位置に設けられたものを用いる。
図10(a)の例では、各貫通部436は、上下方向に等間隔に並んでいる。また、金型430として、貫通部436どうしの間、および、貫通部436が設けられた領域から上方および下方に離間した位置に、それぞれ幅方向に互いに離間した状態で複数の枝通路434が設けられたものを用いる。そして、準備工程において、貫通部436の数と同数の強化繊維シート301を準備して、送り工程において、これら強化繊維シート301を各貫通部436を通るように送り出す。上記のように、各貫通部436は上下方向に互いに離間した位置に配置されている。従って、強化繊維シート301は、上下方向について互いに離間した状態で金型430を通過するように送りされる。
【0067】
また、第1実施形態と同様に、押出機20にてマトリックス樹脂2と発泡剤3とを混錬して、発泡剤入りマトリックス樹脂4を各枝通路434から押し出し、発泡剤3の発泡によってマトリックス樹脂2を膨張させる。ただし、第4実施形態では、上記のように、貫通部436どうしの間にそれぞれ枝通路434が設けられている。これより、発泡剤入りマトリックス樹脂4は、強化繊維シート301どうしの間の位置において金型430から押し出される。
【0068】
第4実施形態においても、貫通部436から上方および下方に離間した位置で発泡剤入りマトリックス樹脂4が金型430の外部に押し出されることで、マトリックス樹脂2は高倍率で膨張する。従って、第4実施形態においても、発泡樹脂からなる基材11であって空隙率の高い基材11と当該基材11に強化繊維12が内包された複合成形品410、つまり、断熱性能が確保され且つ機械的強度が高められた繊維強化樹脂発泡体を製造することができる。特に、第4実施形態では、
図10(b)に示すように、複数の強化繊維シート301が、基材11の内部において上下方向の異なる位置に配置されることになる。そのため、機械的強度がより高められた繊維強化樹脂発泡体を製造することができる。
【0069】
(その他の変形例)
上記実施形態では、発泡剤として液化二酸化炭素を用いた場合を説明したが、発泡剤の種類はこれに限られない。例えば、発泡剤として水を用いてもよい。また、発泡剤としてその他の物理発泡剤や化学発泡剤、あるいは超臨界流体を用いてもよい。なお、加熱されることで発泡を開始する化学発泡剤を用いる場合は、金型をヒータ等により加熱すればよい。
【0070】
上記実施形態では、発泡剤とマトリックス樹脂とが個別に押出機20に投入される場合を説明したが、これらの混合物を押出機20に導入してもよい。例えば、発泡剤として化学発泡剤が用いられる場合において、化学発泡剤とマトリックス樹脂とを予め混合しておき、これら化学発泡剤とマトリックス樹脂の混合物を押出機20に導入してもよい。
【0071】
上記実施形態では、マトリックス樹脂として、熱可塑性樹脂を用いた場合を説明したが、マトリックス樹脂はこれに限られない。例えば、熱硬化性樹脂がマトリックス樹脂として用いられてもよい。
【符号の説明】
【0072】
1 強化繊維束
2 マトリックス樹脂
3 発泡剤
10 複合成形品(繊維強化樹脂発泡体、第1実施形態)
12 強化繊維
20 押出機
30 金型
210 複合成形品(繊維強化樹脂発泡体、第2実施形態)
310 複合成形品(繊維強化樹脂発泡体、第3実施形態)
410 複合成形品(繊維強化樹脂発泡体、第4実施形態)
S1 準備工程
S2 送り工程
S3 混錬工程
S4 押出工程