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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-18
(45)【発行日】2024-11-26
(54)【発明の名称】高調波抑制システム
(51)【国際特許分類】
   H02J 3/01 20060101AFI20241119BHJP
   H02J 3/18 20060101ALI20241119BHJP
【FI】
H02J3/01
H02J3/18 135
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2022008719
(22)【出願日】2022-01-24
(65)【公開番号】P2023107489
(43)【公開日】2023-08-03
【審査請求日】2024-01-16
(73)【特許権者】
【識別番号】501137636
【氏名又は名称】株式会社TMEIC
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】谷内田 貴行
(72)【発明者】
【氏名】森島 直樹
【審査官】高野 誠治
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-182198(JP,A)
【文献】特開平10-257676(JP,A)
【文献】特開2014-204522(JP,A)
【文献】特開2008-199853(JP,A)
【文献】特開2018-011405(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 3/00- 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流電力を直流電力に変換する他励式整流器が接続された配電線に現れる高調波電圧を抑制する高調波抑制システムであって、
前記他励式整流器で発生する高調波電流を検出する高調波検出部と、
前記高調波検出部によって検出される前記高調波電流と逆極性の補償電流を前記配電線に供給する無効電力補償装置とを備える、高調波抑制システム。
【請求項2】
前記高調波検出部は、
前記配電線と前記他励式整流器の間に流れる電流を検出する電流検出器と、
前記電流検出器によって検出される電流から予め定められた周波数帯域の前記高調波電流を抽出する帯域通過型フィルタ回路とを含む、請求項1に記載の高調波抑制システム。
【請求項3】
前記高調波検出部は、
前記配電線の交流電圧を検出する電圧検出器と、
前記電圧検出器によって検出される交流電圧から予め定められた周波数帯域の前記高調波電圧を抽出する帯域通過型フィルタ回路と、
前記帯域通過型フィルタ回路によって抽出される前記高調波電圧に基づいて前記高調波電流を求める演算部とを含む、請求項1に記載の高調波抑制システム。
【請求項4】
前記無効電力補償装置は、
前記高調波検出部によって検出される前記高調波電流のレベルがしきい値電流よりも大きい場合には、前記高調波検出部によって検出される前記高調波電流と逆極性の補償電流を前記配電線に供給し、
前記高調波検出部によって検出される前記高調波電流のレベルが前記しきい値電流よりも小さい場合には、前記配電線の交流電圧の電圧値が参照電圧値になるように、前記配電線に無効電流を供給する、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の高調波抑制システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は高調波抑制システムに関し、特に、他励式整流器が接続された配電線に現れる高調波電圧を抑制する高調波抑制システムに関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば特開2014-204522号公報(特許文献1)には、配電線から負荷に流れる電流を検出する電流検出器と、配電線の電圧を検出する電圧検出器と、それらの検出結果に基づいて、負荷に流れる無効電力の変動成分を補償する電流を配電線に供給する無効電力補償装置とを備え、電圧フリッカを抑制する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-204522号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1では、他励式整流器が接続された配電線に現れる高調波電圧と、それを抑制する技術については、何ら開示されていない。
【0005】
それゆえに、この発明の主たる目的は、他励式整流器が接続された配電線に現れる高調波電圧を抑制することが可能な高調波抑制システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る高調波抑制システムは、交流電力を直流電力に変換する他励式整流器が接続された配電線に現れる高調波電圧を抑制する高調波抑制システムであって、他励式整流器で発生する高調波電流を検出する高調波検出部と、高調波検出部によって検出される高調波電流と逆極性の補償電流を配電線に供給する無効電力補償装置とを備えたものである。
【発明の効果】
【0007】
本開示に係る高調波抑制システムでは、他励式整流器で発生する高調波電流を検出し、検出した高調波電流と逆極性の補償電流を配電線に供給する。したがって、他励式整流器が接続された配電線に現れる高調波電圧を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本開示が適用される電力系統の要部を示すブロック図である。
図2図1に示す制御装置の構成を示すブロック図である。
図3図1に示す直流電源の問題点を説明するためのフローチャートである。
図4】本開示の原理を説明するためのフローチャートである。
図5】実施の形態1に従う高調波抑制システムの構成を示す回路ブロック図である。
図6図5に示す無効電力補償装置の構成を示すブロック図である。
図7】実施の形態2に従う高調波抑制システムの構成を示す回路ブロック図である。
図8】実施の形態3に従う高調波抑制システムの構成を示す回路ブロック図である。
図9図8に示す無効電力補償装置の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施の形態について説明する前に、まず本開示の原理について説明する。図1は、本開示が適用される電力系統の要部を示すブロック図である。図1において、この電力系統は、商用交流電源1、配電線2、直流電源3、および負荷7を備える。
【0010】
商用交流電源1は、商用周波数の交流電力を配電線2に供給する。直流電源3は、商用交流電源1から配電線2を介して供給される交流電力を直流電力に変換して負荷7に供給する。負荷7は、直流電源3から供給される直流電力によって駆動される。
【0011】
直流電源3は、他励式整流器4、電流検出器5、および制御装置6を含む。他励式整流器4は、制御装置6によって制御されるサイリスタを含む周知のものであり、配電線2と負荷7の間に接続される。他励式整流器4は、商用交流電源1から配電線2を介して供給される交流電力を整流して直流電力を生成する。
【0012】
電流検出器5は、他励式整流器4から負荷7に流れる直流電流IDCを検出し、検出値を示す信号IDCfを制御装置6に出力する。制御装置6は、電流検出器5の出力信号IDCfによって示される直流電流IDCが所定の直流電流指令値IDCaになるように他励式整流器4を制御する。
【0013】
図2は、制御装置6の構成を示すブロック図である。図2において、制御装置6は、直流電流指令部11、減算器12、直流電流制御部13、電圧検出器14、および点弧角制御部15を含む。
【0014】
直流電流指令部11は、所定の直流電流指令値IDCaを出力する。減算器12は、直流電流指令値IDCaと、電流検出器5(図1)の出力信号IDCfによって示される直流電流IDCとの偏差ΔIDC=IDCa-IDCを求める。
【0015】
直流電流制御部13は、減算器12によって求められる偏差ΔIDCがなくなるように直流電流制御値IDCbを生成する。直流電流制御部13は、たとえば、偏差ΔIDCに比例する値と偏差ΔIDCの積分値に比例する値とを加算することにより直流電流制御値IDCbを生成する。
【0016】
電圧検出器14は、配電線2(図1)に現れる交流電圧VACの瞬時値を検出し、その検出値を示す信号VACfを出力する。点弧角制御部15は、電圧検出器14の出力信号VACfによって示される交流電圧VACを基準電圧として、他励式整流器4に含まれるサイリスタの点弧角αを制御する。
【0017】
直流電流IDCが直流電流指令値IDCaよりも小さい場合には、直流電流制御値IDCbが増大し、点弧角αが減少して直流電流IDCが増大する。逆に、直流電流IDCが直流電流指令値IDCaよりも大きい場合には、直流電流制御値IDCbが減少し、点弧角αが増大して直流電流IDCが減少する。したがって、直流電流IDCは、直流電流指令値IDCaに一致するように制御される。
【0018】
図3は、直流電源3の問題点を説明するためのフローチャートである。図3において、たとえば配電線2に接続された他の負荷(図示せず)の運転が開始されて配電線2の交流電圧VACの波形が歪むと(ステップS1)、点弧角制御部15によって使用される基準電圧の波形が歪み、他励式整流器4に含まれるサイリスタの点弧角αが変動する。
【0019】
点弧角αが変動すると、他励式整流器4の直流出力電圧VDCが変動し(ステップS2)、他励式整流器4から負荷7に流れる直流電流IDCが変動し(ステップS3)、直流電流制御値IDCbが変動する(ステップS4)。直流電流制御値IDCbが変動すると、点呼角αが変動し、配電線2から他励式整流器4に流れる交流電流IACの波形が歪み(ステップS5)、配電線2の交流電圧VACの波形が歪む(ステップS1)。
【0020】
したがって、他の負荷(図示せず)の運転が安定した後でも、配電線2の交流電圧VACの波形が歪み続け、他励式整流器4の制御が不安定になるという問題がある。本願発明者らによる実験では、波形の歪んだ交流電流IACには、所定周波数帯域の非整数次の高調波電流IHが含まれていた。
【0021】
図4は、本開示の原理を説明するためのフローチャートであって、図3と対比される図である。図4図3と異なる点は、ステップS6~S12が追加されている点である。ステップS6において、交流電流IACから高調波電流IHを検出する。この高調波電流IHは、他励式整流器4から配電線2に流れ、配電線2の交流電圧VACの波形を歪ませる。波形の歪んだ交流電圧VACは、高調波電圧VHを含んでいる。
【0022】
そこで、ステップS7において、高調波電流IHと逆極性の補償電流IOを配電線2に供給する。これにより、配電線2の交流電圧VACに含まれる高調波電圧VHが抑制され、交流電圧VACの波形が改善される(ステップS8)。交流電圧VACの波形が改善されると、点弧角制御部15によって使用される基準電圧の波形が改善され、他励式整流器4に含まれるサイリスタの点弧角αが安定する。
【0023】
点弧角αが安定すると、他励式整流器4の直流出力電圧VDCが安定し(ステップS9)、他励式整流器4から負荷7に流れる直流電流IDCが安定し(ステップS10)、直流電流制御値IDCbが安定する(ステップS11)。直流電流制御値IDCbが安定すると、点呼角αが安定し、配電線2から他励式整流器4に流れる交流電流IACの波形が改善される(ステップS12)。ステップS6~S12を繰り返すことにより、他励式整流器4の制御を安定化させる。
【0024】
[実施の形態1]
図5は、本開示の実施の形態1に従う高調波抑制システム21の構成を示す回路ブロック図であって、図1と対比される図である。図5において、この高調波抑制システム21は、電流検出器22、帯域通過型フィルタ回路(BPF:Band-pass filter)23、および無効電力補償装置24を含む。
【0025】
電流検出器22は、配電線2と他励式整流器4の間に流れる交流電流IACの瞬時値を検出し、その検出値を示す信号IACfを出力する。帯域通過型フィルタ回路23は、電流検出器22の出力信号IACfによって示される交流電流IACから所定周波数帯域の高調波電流IHを抽出し、抽出した高調波電流IHを示す信号IHfを出力する。電流検出器22および帯域通過型フィルタ回路23は、他励式整流器4で発生する高調波電流IHを検出する「高調波検出部」を構成する。
【0026】
本願発明者らによる実験では、波形の歪んだ交流電流IACには、主に3.5次の高調波電流IHが含まれていた。そこで、帯域通過型フィルタ回路23の通過帯域は、3.5次の高調波電流IHを通過させるように、第3次高調波電流から第4次高調波電流までの高調波電流を通過させるように設定されている。ただし、高調波電流IHの周波数は、他励式整流器4の構成、負荷7の消費電力などによって異なる値となる。
【0027】
無効電力補償装置24は、帯域通過型フィルタ回路23の出力信号IHfによって示される高調波電流IHと逆極性の補償電流IO=-IHを配電線2に供給する。
【0028】
図6は、無効電力補償装置24の構成を示すブロック図である。図6において、無効電力補償装置24は、電流指令部30、減算器31、電流制御部32、PWM(Pulse Width Modulation)制御部33、自励式変換器34、電流検出器35を含む。電流指令部30は、帯域通過型フィルタ回路23の出力信号IHfによって示される高調波電流IHと逆極性の電流指令値IOa=-IHを出力する。電流検出器35は、自励式変換器34から配電線2に流れる補償電流IOを検出し、その検出値を示す信号IOfを出力する。
【0029】
減算器31は、電流指令値IOaと、電流検出器35の出力信号IOfによって示される補償電流IOとの偏差ΔIO=IOa-IOを求める。電流制御部32は、減算器31によって求められる偏差ΔIOがなくなるように電流制御値IObを生成する。電流制御部32は、たとえば、偏差ΔIOに比例する値と偏差ΔIOの積分値に比例する値とを加算することにより電流制御値IObを生成する。
【0030】
自励式変換器34は、複数の自己消弧型スイッチング素子、リアクトル、コンデンサ等を含む周知のものである。自己消弧型スイッチング素子は、たとえば、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)、IEGT(Injection Enhanced Gate Transistor)などである。
【0031】
自励式変換器34は、PWM制御部33によって制御され、補償電流IOを配電線2に供給する。PWM制御部33は、電流制御値IObに応じた値の補償電流IOが自励式変換器34から配電線2に流れるように、自励式変換器34をPWM制御する。
【0032】
補償電流IOが電流指令値IOaよりも小さい場合には、電流制御値IObが増大し、補償電流IOが増大する。逆に、補償電流IOが電流指令値IOaよりも大きい場合には、電流制御値IObが減少し、補償電流IOが減少する。したがって、補償電流IOは、電流指令値IOaすなわち高調波電流IHの逆極性の電流に一致するように制御される。
【0033】
このため、他励式整流器4から配電線2に流れる高調波電流IHと、無効電力補償装置24から配電線2に流れる補償電流IO=-IHとの和が0となり、配電線2に現れる高調波電圧VHが抑制される。
【0034】
以上のように、この実施の形態1では、他励式整流器4が接続された配電線2に現れる高調波電圧VHを抑制して、配電線2の交流電圧VACの波形歪を抑制し、他励式整流器4の制御の安定化を図ることができる。
【0035】
[実施の形態2]
図7は、本開示の実施の形態2に従う高調波抑制システム40の構成を示すブロック図であって、図5と対比される図である。図7において、高調波抑制システム40が高調波抑制システム21と異なる点は、電流検出器22および帯域通過型フィルタ回路23が電圧検出器41、帯域通過型フィルタ回路42、記憶部43、および演算部44で置換されている点である。
【0036】
電圧検出器41は、配電線2に現れる交流電流VACの瞬時値を検出し、その検出値を示す信号VACfを出力する。帯域通過型フィルタ回路(BPF)42は、電圧検出器41の出力信号VACfによって示される交流電圧VACから所定周波数帯域の高調波電圧VHを抽出し、抽出した高調波電圧VHの瞬時値を示す信号VHfを出力する。
【0037】
本願発明者らによる実験では、波形の歪んだ交流電圧VACには、主に3.5次の高調波電圧VHが含まれていた。そこで、帯域通過型フィルタ回路42の通過帯域は、3.5次の高調波電圧VHを通過させるように、第3次高調波電圧から第4次高調波電圧までの高調波電圧を通過させるように設定されている。ただし、高調波電圧VHの周波数は、他励式整流器4の構成、負荷7の消費電力などによって異なる値となる。
【0038】
記憶部43には、高調波電圧VHと実施の形態1で説明した高調波電流IHとの関係を示すテーブル、数式等が格納されている。高調波電圧VHと高調波電流IHの関係は、予め実験により求められている。
【0039】
演算部44は、記憶部43のテーブル、数式等を参照して、帯域通過型フィルタ回路42の出力信号VHfによって示される高調波電圧VHを高調波電流IHに換算し、その高調波電流IHの瞬時値を示す信号IHfを出力する。電圧検出器41、帯域通過型フィルタ回路42、記憶部43、および演算部44は、他励式整流器4で発生する高調波電流IHを検出する「高調波検出部」を構成する。
【0040】
無効電力補償装置24は、演算部22の出力信号IHfによって示される高調波電流IHと逆極性の補償電流IO=-IHを配電線2に供給する。
【0041】
この実施の形態2では、実施の形態1と同じ効果が得られる他、種々の事情により、配電線2と他励式整流器4の間のスペースに電流検出器22(図5)を設けることができない場合にも、高調波電圧VHを抑制することができる。
【0042】
[実施の形態3]
図8は、本開示の実施の形態3に従う高調波抑制システム51の構成を示す回路ブロック図であって、図5と対比される図である。図8では、配電線2に分散型電源50が接続されている場合が示されている。分散型電源50は、太陽光のような自然エネルギーを直流電力に変換し、その直流電力を交流電力に変換し、その交流電力を配電線2の交流電圧VACに同期して配電線2に供給する。
【0043】
分散型電源50の発電量が増大すると、逆潮流によって配電線2の交流電圧VACの実効値Veが上昇する。交流電圧VACの実効値Veが過度に高くなると、配電線2に接続された負荷に悪影響が発生する。本実施の形態3では、この問題の解決が図られる。
【0044】
図8において、高調波抑制システム51は、高調波抑制システム21(図5)の無効電力補償装置24を無効電力補償装置52で置換したものである。無効電力補償装置52は、高調波電流IHのレベルがしきい値電流Ithよりも大きい場合には、高調波電流IHと逆極性の補償電流IOを配電線2に供給し、高調波電流IHのレベルがしきい値電流Ithよりも小さい場合には、配電線2の交流電圧VACの実効値Ve(電圧値)が参照電圧値Vrになるように、配電線2に無効電流IOを供給する。
【0045】
図9は、無効電力補償装置52の構成を示すブロック図であって、図6と対比される図である。図9を参照して、無効電力補償装置52が無効電力補償装置24と異なる点は、電流判定部60、電圧検出器61、無効電流指令部62、および加算器63が追加され、電流指令部30が電流指令部30Aで置換されている点である。
【0046】
電流判定部60は、帯域通過型フィルタ回路23の出力信号IHfによって示される高調波電流IHの電流値が所定のしきい値電流Ithよりも大きいか否かを判定し、判定結果を示す信号DIを出力する。高調波電流IHの電流値が所定のしきい値電流Ithよりも大きい場合には、信号DIは活性化レベルの「H」レベルにされる。高調波電流IHの電流値が所定のしきい値Ith電流よりも小さい場合には、信号DIは非活性化レベルの「L」レベルにされる。
【0047】
電流指令部30Aは、信号DIが「H」レベルにされた場合に活性化され、高調波電流IHと逆極性の電流指令値IOAを出力する。信号DIが「L」レベルにされた場合には、電流指令部30Aは非活性化され、電流指令値IOAは0に設定される。電圧検出器61は、配電線2に現れる交流電流VACの瞬時値を検出し、その検出値を示す信号VACfを出力する。
【0048】
無効電流指令部62は、信号DIが「L」レベルにされた場合に活性化され、電圧検出器61の出力信号VACfによって示される交流電圧VACの実効値Veを求め、所定の参照電圧値(定格電圧値)Vrと実効値Veとの偏差ΔVe=Vr-Veを求め、その偏差ΔVeがなくなるように無効電流指令値IQを生成する。
【0049】
無効電流指令部62は、たとえば、偏差ΔVeに比例する値と偏差ΔVeの積分値に比例する値とを加算することにより無効電流指令値IQを生成する。信号DIが「H」レベルにされた場合には、無効電流指令部62は非活性化され、無効電流指令値IQは0に設定される。
【0050】
加算器63は、電流指令部30Aからの電流指令値IOAと、無効電流指令部62からの無効電流指令値IQとを加算して電流指令値IOaを生成する。電流指令値IOaは、減算器31に与えられる。電流制御部32、PWM制御部33、自励式変換器34、および電流検出器35の動作については、図4で説明した通りである。
【0051】
次に、この高調波抑制システムの動作について説明する。他励式整流器4で発生する高調波電流IHの電流値がしきい値電流Ithよりも大きい場合には、電流判定部60の出力信号DIが活性化レベルの「H」レベルにされる。
【0052】
信号DIが「H」レベルにされると、電流指令部30Aによって高調波電流IHと逆極性の電流指令値IOAが生成されるとともに、無効電流指令部62によって無効電流指令値IQが0にされる。加算器63によって電流指令値IOAと無効電流指令値IQ=0とが加算されて電流指令値IOa=IOAが生成される。
【0053】
電流指令値IOaと、電流検出器35の出力信号IOfによって示される出力電流IOとの偏差ΔIO=IOa-IOが減算器31によって求められる。電流制御部32およびPWM制御部33によって、その偏差ΔIOがなくなるように自励式変換器34が制御され、無効電力補償装置52から配電線2に高調波電流IHと逆極性の電流IOが供給され、配電線2の高調波電圧VHが抑制される。
【0054】
また、他励式整流器4で発生する高調波電流IHの電流値がしきい値電流Ithよりも小さい場合には、電流判定部60の出力信号DIが非活性化レベルの「L」レベルにされる。
【0055】
信号DIが「L」レベルにされると、無効電流指令部62によって交流電圧VACの実効値Veが参照電圧値Vrになるように無効電流指令値IQが生成されるとともに、電流指令部30Aによって電流指令値IOAが0にされる。加算器63によって無効電流指令値IQと電流指令値IOA=0とが加算されて電流指令値IOa=IQが生成される。
【0056】
電流指令値IOaと、電流検出器35の出力信号IOfによって示される出力電流IOとの偏差ΔIO=IOa-IOが減算器31によって求められる。電流制御部32およびPWM制御部33によって、その偏差ΔIOがなくなるように自励式変換器34が制御され、無効電力補償装置52から配電線2に無効電流IOが供給され、配電線2の交流電圧VACの実効値Veが参照電圧値Vrに調整される。
【0057】
以上のように、この実施の形態3では、実施の形態1と同じ効果が得られる他、配電線2の交流電圧VACの実効値Veを参照電圧値Vrに調整することができる。
【0058】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0059】
1 商用交流電源、2 配電線、3 直流電源、4 他励式整流器、5,22,35 電流検出器、6 制御装置、7 負荷、11 直流電流指令部、12,31 減算器、13 直流電流制御部、14,41,61 電圧検出器、15 点弧角制御部、21,40,51 高調波抑制システム、23,42 帯域通過型フィルタ回路、24,52 無効電力補償装置、30,30A 電流指令部、32 電流制御部、33 PWM制御部、34 自励式変換器、43 記憶部、44 演算部、50 分散型電源、60 電流判定部、62 無効電流指令部、63 加算器。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9