(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-18
(45)【発行日】2024-11-26
(54)【発明の名称】気体濃縮装置
(51)【国際特許分類】
B01D 53/18 20060101AFI20241119BHJP
A01G 7/02 20060101ALI20241119BHJP
A01G 9/18 20060101ALI20241119BHJP
F24F 11/70 20180101ALI20241119BHJP
【FI】
B01D53/18 120
A01G7/02
A01G9/18
F24F11/70
(21)【出願番号】P 2022012290
(22)【出願日】2022-01-28
【審査請求日】2023-09-14
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 掲載年月日令和3年1月31日の掲載アドレス(https://www.sgkz.or.jp/project/newtech/106/document_03.html)にて電気通信回線を通じて発表
(73)【特許権者】
【識別番号】390020215
【氏名又は名称】株式会社西部技研
(72)【発明者】
【氏名】吉田 和行
(72)【発明者】
【氏名】井上 宏志
(72)【発明者】
【氏名】松尾 慎
【審査官】安齋 美佐子
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-113254(JP,A)
【文献】特開2010-078304(JP,A)
【文献】特開2020-089891(JP,A)
【文献】特開2006-220385(JP,A)
【文献】特開昭62-071512(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/02-53/18,53/26-53/28,
53/34-53/85,53/92,53/96
A01G 7/02
A01G 9/18
F24F 11/00-11/89
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の原料気体に含まれる二酸化炭素を吸着及び脱着可能とされ、当該二酸化炭素を吸着する吸着ゾーンと当該二酸化炭素を脱着する脱着ゾーンが少なくとも設定されるハニカムロータと、
当該ハニカムロータの吸着ゾーンに導入される前記原料気体を冷却する冷却部と、
前記ハニカムロータの脱着ゾーンに導入される前記原料気体を加熱する加熱部と、
前記ハニカムロータの吸着ゾーンを通過した吸着済み気体を加熱又は冷却する熱交換器と、
前記冷却部をなす蒸発器、及び、前記加熱部をなす凝縮器を有するヒートポンプとを備え
、
前記熱交換器が、前記ヒートポンプの熱媒体を流入出可能とされ、前記ヒートポンプの熱媒体と前記吸着済み気体とを熱交換させ、
前記冷却部における吸熱量より前記加熱部における放熱量が大きい場合には、前記熱交換器を前記ヒートポンプの他の蒸発器として、前記冷却部と並列に接続される状態とし、
前記冷却部における吸熱量より前記加熱部における放熱量が小さい場合には、前記熱交換器を前記ヒートポンプの他の凝縮器として、前記加熱部と並列に接続される状態とするように、前記熱交換器に通じる前記ヒートポンプの熱媒体流路を切り替える、一又は複数の切替手段を備えることを
特徴とする気体濃縮装置。
【請求項2】
前記請求項
1に記載の気体濃縮装置において、
前記ハニカムロータの吸着ゾーンと前記熱交換器との間に配設され、前記吸着済み気体を誘引して熱交換器に送り出す第一の送風機と、
押込送風機として前記原料気体を前記ハニカムロータの脱着ゾーンに向けて送り出す第二の送風機とを備えることを
特徴とする気体濃縮装置。
【請求項3】
前記請求項
2に記載の気体濃縮装置において、
前記第二の送風機が、前記ハニカムロータの脱着ゾーンと前記ヒートポンプの凝縮器との間に配設され、当該凝縮器を通過した前記原料気体を脱着ゾーンに送り出すことを
特徴とする気体濃縮装置。
【請求項4】
前記請求項1ないし
3のいずれかに記載の気体濃縮装置において、
前記熱交換器から前記吸着済み気体を誘引して外部に排出する第三の送風機を備え、
当該第三の送風機が、誘引により前記熱交換器に外部の気体をさらに導入し、熱交換器を通過した前記外部の気体を前記吸着済み気体と共に外部に排出することを
特徴とする気体濃縮装置。
【請求項5】
前記請求項1ないし
4のいずれかに記載の気体濃縮装置において、
前記ハニカムロータの脱着ゾーンを通過した脱着済み気体を前記ヒートポンプの熱媒体との熱交換で
加熱又は冷却する他の熱交換器を備え、
当該他の熱交換器に通じる前記ヒートポンプの熱媒体流路を、前記冷却部と直列若しくは並列、又は前記加熱部と直列若しくは並列に接続されることを
特徴とする気体濃縮装置。
【請求項6】
前記請求項1ないし
5のいずれかに記載の気体濃縮装置において、
前記ハニカムロータのロータ本体部に担持され、二酸化炭素を吸着及び脱着可能とするアミン系吸収剤を備えることを
特徴とする気体濃縮装置。
【請求項7】
前記請求項1ないし
5のいずれかに記載の気体濃縮装置において、
前記ハニカムロータのロータ本体部に担持される湿気吸収体と、
前記湿気吸収体に担持され、二酸化炭素を吸着及び脱着可能とするアミン系吸収剤とを備えることを
特徴とする気体濃縮装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気体を濃縮する気体濃縮装置に関し、特に、各種気体から二酸化炭素を効率的に濃縮可能とする気体濃縮装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、温室効果ガスの排出を全体としてゼロにするというカーボンニュートラルの実現を目指して二酸化炭素(CO2)ガスの削減が叫ばれている一方で、植物の生育にとっては、二酸化炭素の供給が必要である。
【0003】
特に冬季のビニールハウスなどでは、閉め切っている場合が多く、ビニールハウスなどで栽培されるイチゴやトマトなどの栽培植物の生育に必要な二酸化炭素が不足しがちとなる。
【0004】
さらに、ビニールハウスなどで栽培される栽培植物は、日中光合成により、二酸化炭素を吸収しており、葉の周りの二酸化炭素濃度が大気の二酸化炭素濃度(約400ppm)よりも下がってきてしまう。
【0005】
この場合、栽培植物の光合成が抑制されて、栽培植物の収穫量や糖度などが下がってしまうため、二酸化炭素を外部から強制的に供給して栽培植物の収穫量を向上させるという処理が行われている。具体的には、二酸化炭素の供給方法としては、灯油などを燃焼させる方法や液化炭酸ガスボンベによる供給がなされている。
【0006】
しかし、このような従来の二酸化炭素の供給方法は、環境中の二酸化炭素を増大させるという、上述のカーボンニュートラル等の二酸化炭素ガスの削減とは相反する方向性であり、よりクリーンな二酸化炭素の供給方法が求められている。
【0007】
ビニールハウスの空調を調整するという点では、従来から、デシカントロータを用いて温度や湿度を調整する空調機や空調方法が知られている(例えば、特許文献1~5)。これらをビニールハウスに適用することで、ビニールハウスの空調を調整し、栽培植物の育成をある程度補助することも可能ではあるが、二酸化炭素を供給するものではない。
【0008】
また、従来のデシカントロータにヒートポンプを組み合わせた技術(例えば、上記特許文献1)では、デシカントロータの吸着出口側のガスを供給先へ供給する際に、ヒートポンプの熱量バランスを取るために、例えばデシカントロータの再生出口側に熱交換器を設置するもしくは室外機を設置することが必要となり、室外機を用いる場合には装置サイズが嵩むという問題がある。
【0009】
そのため、出願人は、環境にやさしく、交換などの手間がない、クリーンなガスを供給することを目的として、従来からハニカムロータを用いた二酸化炭素供給装置としての気体濃縮装置を開発してきた。
【0010】
例えば、従来の気体濃縮装置としては、室内からの還気をヒートポンプサイクルのエバポレータを通して冷却し、冷却された空気を、湿気と二酸化炭素の吸着機能を持つイオン交換樹脂などを吸着剤に用いた、二酸化炭素の吸着作用を有するハニカムロータの吸着ゾーンを通過させ、前記ハニカムロータの脱着ゾーンに前記ヒートポンプサイクルのコンデンサを通して温度の上昇した外気を通すようにしたことを特徴とする空気調和装置が知られている(例えば、特許文献6参照)。
【0011】
また、例えば、従来の気体濃縮装置としては、二酸化炭素吸収機能を持つアミン系吸収剤などを保持した二酸化炭素除去ロータを有し、前記二酸化炭素除去ロータを少なくとも吸着ゾーンと脱着ゾーンとに分け、前記吸着ゾーンに処理対象空気を通風することで、前記処理対象空気に含まれる二酸化炭素を前記二酸化炭素除去ロータ部分の保持吸収剤に吸収させて分離除去して供給先に給気し、前記脱着ゾーンでは、全熱交換器で前記脱着ゾーンからの再生排気の潜熱と顕熱を回収した再生用空気を通風することで、前記保持吸収剤が前記吸着ゾーンで吸収した二酸化炭素を脱離させることによって、前記保持吸収剤を再生するようにした吸収式除去・濃縮装置が知られている(例えば、特許文献7参照)。
【0012】
さらに、例えば、従来の気体濃縮装置としては、アミン系吸収剤に二酸化炭素を含有する処理対象空気を接触させて前記吸収剤に二酸化炭素を吸収させ、前記吸収剤に再生用空気を接触させて前記吸収剤から二酸化炭素を脱離させる事によって処理対象空気中の二酸化炭素を除去するものであって、前記処理対象空気のエンタルピーを下げる手段(例えばヒートポンプのエバポレータ)か前記再生用空気のエンタルピーを大きくする手段(例えばヒートポンプのコンデンサ)の何れか一方或いは両方によって、前記処理対象空気のエンタルピーよりも前記再生用空気のエンタルピーを大きくする事によって、前記吸収剤から二酸化炭素を脱離させるようにした吸収式除去・濃縮装置が知られている(例えば、特許文献8参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【文献】特開2010-276317号公報
【文献】特開2011-92163号公報
【文献】特開2012-172880号公報
【文献】特開2014-206376号公報
【文献】特開2019-66155号公報
【文献】特開2011-94821号公報
【文献】特開2020-89891号公報
【文献】特開2017-154063号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかし、特許文献7および8のような気体濃縮装置をもってしても、アミン系吸収剤が低温条件下(例えば20℃未満)で二酸化炭素の吸着が進行することから、夏場は外気温度が高いためにハニカムロータを介した二酸化炭素の吸脱着が起こり難くなり、ヒートポンプを用いたとしても、二酸化炭素濃度の高いガス供給が出来なくなる。
【0015】
また、特許文献7および8で用いられるようなアミン系吸収剤では、その再生温度が40℃程度であることから、アミン系吸収剤に吸着された二酸化炭素を夏場に栽培されるトマトなどに供給しようとする場合、アミン系吸収剤の再生温度と外気温度との温度差が僅少となり二酸化炭素の吸脱着が起こりにくくなり、供給する二酸化炭素の濃度が上がらないという課題もある。
【0016】
このように夏場は外気温度が高いのに対して、冬場は外気温度が低いことから、通年を通してヒートポンプの外気温度との熱量バランスが取れないことで、ヒートポンプを適切に作動させて二酸化炭素の吸脱着を行わせることが難しく、1年を通じて安定した二酸化炭素濃度の高いガス供給が出来ないという課題がある。
【0017】
本発明は、如上の課題を解決し、夏場にも濃度の高い二酸化炭素を供給して通年で安定的に高濃度の二酸化炭素を供給できると共に、ランニングコストも抑制できる気体濃縮装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明者らは、鋭意研究の結果、ヒートポンプの構造に工夫を凝らし、通年で二酸化炭素の濃縮及び供給が可能となる新たな気体濃縮装置を見出し、本発明を完成するに至った。
【0019】
本願に開示する気体濃縮装置は、所定の原料気体に含まれる二酸化炭素を吸着及び脱着可能とされ、当該二酸化炭素を吸着する吸着ゾーンと当該二酸化炭素を脱着する脱着ゾーンが少なくとも設定されるハニカムロータと、当該ハニカムロータの吸着ゾーンに導入される前記原料気体を冷却する冷却部と、前記ハニカムロータの脱着ゾーンに導入される前記原料気体を加熱する加熱部と、前記ハニカムロータの吸着ゾーンを通過した吸着済み気体を加熱又は冷却する熱交換器と、前記冷却部をなす蒸発器、及び、前記加熱部をなす凝縮器を有するヒートポンプとを備えるものである。
【0020】
このように、本願に開示する気体濃縮装置は、所定の原料気体に含まれる二酸化炭素を吸着及び脱着可能とされ、当該二酸化炭素を吸着する吸着ゾーンと当該二酸化炭素を脱着する脱着ゾーンが少なくとも設定されるハニカムロータと、当該ハニカムロータの吸着ゾーンに導入される前記原料気体を冷却する冷却部と、前記ハニカムロータの脱着ゾーンに導入される前記原料気体を加熱する加熱部と、前記ハニカムロータの吸着ゾーンを通過した吸着済み気体を加熱又は冷却する熱交換器と、前記冷却部をなす蒸発器、及び、前記加熱部をなす凝縮器を有するヒートポンプとを備えることから、前記冷却部における吸熱量と、前記加熱部における放熱量との差異に相当する熱を、前記熱交換器の吸着済み気体に対する加熱を通じて放出する、又は、熱交換器の吸着済み気体に対する冷却を通じて吸収することとなり、夏場でも前記吸着ゾーン入口温度を下げて濃度の高い二酸化炭素を供給できると共に、冬場でも前記脱着ゾーン入口温度を上げて濃度の高い二酸化炭素を供給でき、通年で安定的に高濃度の二酸化炭素を供給できると共に、ヒータに代替してヒートポンプを用いることからヒータ使用時よりも省エネルギーでの稼働が可能となり、ランニングコストを抑制することができる。
【0021】
また、本願に開示する気体濃縮装置は、必要に応じて、前記熱交換器が、前記ヒートポンプの熱媒体を流入出可能とされ、ヒートポンプの熱媒体と前記吸着済み気体とを熱交換させて、前記吸着済み気体を加熱又は冷却するものである。このように、本願に開示する気体濃縮装置は、前記熱交換器が、前記ヒートポンプの熱媒体を流入出可能とされ、ヒートポンプの熱媒体と前記吸着済み気体とを熱交換させて、前記吸着済み気体を加熱又は冷却することから、前記ヒートポンプの吸熱側と放熱側との熱的平衡が系内の前記吸着済み気体を流用することで維持されることとなり、季節変化等による原料気体(外気)の温度の差異で、冷却部における吸熱量と加熱部における放熱量との違いが生じても、ヒートポンプの吸熱側と放熱側との熱的平衡が簡易に維持されて、ヒートポンプの作動並びにロータにおける吸着及び脱着を安定したものにできる。
【0022】
また、本願に開示する気体濃縮装置は、必要に応じて、前記冷却部における吸熱量より前記加熱部における放熱量が大きい場合には、前記熱交換器を前記ヒートポンプの他の蒸発器として、前記冷却部と並列に接続される状態とし、前記冷却部における吸熱量より前記加熱部における放熱量が小さい場合には、前記熱交換器をヒートポンプの他の凝縮器として、前記加熱部と並列に接続される状態とするように、前記熱交換器に通じるヒートポンプの熱媒体流路を切り替える、一又は複数の切替手段を備えるものである。
【0023】
このように、本願に開示する気体濃縮装置は、前記冷却部における吸熱量より前記加熱部における放熱量が大きい場合には、前記熱交換器を前記ヒートポンプの他の蒸発器として、前記冷却部と並列に接続される状態とし、前記冷却部における吸熱量より前記加熱部における放熱量が小さい場合には、前記熱交換器をヒートポンプの他の凝縮器として、前記加熱部と並列に接続される状態とするように、前記熱交換器に通じるヒートポンプの熱媒体流路を切り替える、一又は複数の切替手段を備えることから、前記切替手段による切替で前記熱交換器で適切に熱交換を行わせて、前記ヒートポンプの吸熱側と放熱側との熱的平衡が維持されることとなり、季節変化等による原料気体(外気)の温度の差異により、冷却部における吸熱量と加熱部における放熱量との違いが生じた場合であっても、前記ヒートポンプの吸熱側と放熱側との熱的平衡が前記切替手段により最適に維持されて、前記ヒートポンプの作動並びにハニカムロータにおける吸着及び脱着を安定したものにできる。
【0024】
また、本願に開示する気体濃縮装置は、必要に応じて、前記ハニカムロータの吸着ゾーンと前記熱交換器との間に配設され、前記吸着済み気体を誘引して熱交換器に送り出す第一の送風機と、押込送風機として前記原料気体を前記ハニカムロータの脱着ゾーンに向けて送り出す第二の送風機とを備えるものである。このように、本願に開示する気体濃縮装置は、前記ハニカムロータの吸着ゾーンと前記熱交換器との間に配設され、前記吸着済み気体を誘引して熱交換器に送り出す第一の送風機と、押込送風機として前記原料気体を前記ハニカムロータの脱着ゾーンに向けて送り出す第二の送風機とを備えることから、ロータの脱着ゾーン側の圧力が吸着ゾーン側の圧力よりも高圧化されることとなり、ロータの吸着ゾーンに向かう原料気体が(隙間等を通って)ロータの脱着ゾーンを通過した脱着済み気体に混入せず、脱着済み気体における二酸化炭素の濃度を維持することができる。
【0025】
また、本願に開示する気体濃縮装置は、必要に応じて、前記第二の送風機が、前記ハニカムロータの脱着ゾーンと前記ヒートポンプの凝縮器との間に配設され、この凝縮器を通過した前記原料気体を脱着ゾーンに送り出すものである。このように、本願に開示する気体濃縮装置は、前記第二の送風機が、前記ハニカムロータの脱着ゾーンと前記ヒートポンプの凝縮器との間に配設され、この凝縮器を通過した前記原料気体を脱着ゾーンに送り出すことから、前記第一及び第二の送風機がハニカムロータ近傍に配設されることとなり、ハニカムロータ、前記第一ならびに第二の送風機、及びヒートポンプが個別ユニット化可能となると共に、ハニカムロータと送風機と脱着用ヒータのみから構成される従来の濃縮装置に対してヒートポンプを簡易に追加して構成することも可能となり、装置の簡素化及び運搬やメンテナンスの容易化を図ることが可能となる。
【0026】
また、本願に開示する気体濃縮装置は、必要に応じて、前記熱交換器から前記吸着済み気体を誘引して外部に排出する第三の送風機を備え、当該第三の送風機が、誘引により前記熱交換器に外部の気体をさらに導入し、熱交換器を通過した前記外部の気体を前記吸着済み気体と共に外部に排出するものである。このように、本願に開示する気体濃縮装置は、前記熱交換器から前記吸着済み気体を誘引して外部に排出する第三の送風機を備え、当該第三の送風機が、誘引により前記熱交換器に外部の気体をさらに導入し、熱交換器を通過した前記外部の気体を前記吸着済み気体と共に外部に排出することから、ヒートポンプの熱媒体と熱交換する対象を、ハニカムロータの吸着ゾーンを出た吸着済み気体の他にも用意することとなり、特に外気温度が高い夏場において熱交換器での放熱を確実に行うことができ、放熱の増大分を熱交換器側で余裕をもって対処することができ、ヒートポンプにおける加熱部での加熱を一定に維持して、ロータにおける脱着を安定したものにできる。
【0027】
また、本願に開示する気体濃縮装置は、必要に応じて、前記ハニカムロータの脱着ゾーンを通過した脱着済み気体を前記ヒートポンプの熱媒体との熱交換で冷却する他の熱交換器を備え、当該他の熱交換器に通じる前記ヒートポンプの熱媒体流路を、前記冷却部と直列若しくは並列、又は前記加熱部と直列若しくは並列に接続されるものである。
【0028】
このように、本願に開示する気体濃縮装置は、前記ハニカムロータの脱着ゾーンを通過した脱着済み気体を前記ヒートポンプの熱媒体との熱交換で冷却する他の熱交換器を備え、当該他の熱交換器に通じる前記ヒートポンプの熱媒体流路を、前記冷却部と直列若しくは並列、又は前記加熱部と直列若しくは並列に接続されることから、前記他の熱交換器が脱着済み気体を加熱又は冷却するといういわゆるアフタークーラ又はアフターヒータとして機能することとなり、夏場には高温化した脱着済み気体が外部の植物ハウス(ビニールハウス)に高温のまま供給されることによる植物等の高温障害を防止できると共に、冬場には低温化した脱着済み気体が外部の植物ハウス(ビニールハウス)に低温のまま供給されることによる植物等の低温障害を防止できることとなり、通年で栽培に適した温度で脱着済み気体を外部に提供することが可能となる。
【0029】
また、本願に開示する気体濃縮装置は、必要に応じて、前記ハニカムロータのロータ本体部に担持され、二酸化炭素を吸着及び脱着可能とするアミン系吸収剤を備えるものである。このように、前記ハニカムロータのロータ本体部に担持され、二酸化炭素を吸着及び脱着可能とするアミン系吸収剤を備えることから、アミン系吸収剤の二酸化炭素に対する吸着及び脱着が可能となる温度領域とヒートポンプの作動温度領域が合致して最適に作用することとなり、外部からの熱量制御を要することなく、前記ヒートポンプの動作のみにより最適な二酸化炭素の脱着が可能となり、ハニカムロータにおける吸着及び脱着を安定したものにできる。
【0030】
また、本願に開示する気体濃縮装置は、必要に応じて、前記ハニカムロータのロータ本体部に担持される湿気吸収体と、前記湿気吸収体に担持され、二酸化炭素を吸着及び脱着可能とするアミン系吸収剤とを備えるものである。このように、本願に開示する気体濃縮装置は、前記ハニカムロータのロータ本体部に担持される湿気吸収体と、前記湿気吸収体に担持され、二酸化炭素を吸着及び脱着可能とするアミン系吸収剤とを備えることから、前記湿気吸収体自体が水分を吸着することから、アミン系吸収剤による二酸化炭素の吸着及び脱着に際して余分な湿分を適切に除去可能となり、より品質の高い吸着済み気体又は脱着済み気体を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】本発明に係る第1の実施形態に係る気体濃縮装置の構成図(夏季)を示す。
【
図2】本発明に係る第1の実施形態に係る気体濃縮装置の構成図(冬季)を示す。
【
図3】本発明に係る第1の実施形態に係る気体濃縮装置のハニカム構造の種々の態様を示す。
【
図4】本発明に係る第1の実施形態に係る気体濃縮装置のハニカムロータの動作の説明図を示す。
【
図5】本発明に係る第2の実施形態に係る気体濃縮装置の構成図(夏季)を示す。
【
図6】本発明に係る第2の実施形態に係る気体濃縮装置の構成図(冬季)を示す。
【
図7】本発明に係る第2の実施形態に係る気体濃縮装置の第三の送風機の説明図を示す。
【
図8】本発明に係る第3の実施形態に係る気体濃縮装置の構成図(夏季)を示す。
【
図9】本発明に係る第3の実施形態に係る気体濃縮装置の構成図(冬季)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0032】
(第1の実施形態)
第1の実施形態に係る気体濃縮装置は、
図1及び
図2に示すように、所定の原料気体に含まれる二酸化炭素を吸着及び脱着可能とされ、この二酸化炭素を吸着する吸着ゾーンAとこの二酸化炭素を脱着する脱着ゾーンBが少なくとも設定されるハニカムロータ1と、このハニカムロータ1の吸着ゾーンAに導入されるこの原料気体を冷却する冷却部2aと、このハニカムロータ1の脱着ゾーンBに導入されるこの原料気体を加熱する加熱部2bと、このハニカムロータ1の吸着ゾーンAを通過した吸着済み気体100aを加熱又は冷却する熱交換器2cと、この冷却部2aをなす蒸発器、及び、この加熱部2bをなす凝縮器を有するヒートポンプ2とを備える構成である。
【0033】
この脱着ゾーンBを通過した吸着済み気体100bは、二酸化炭素リッチとなっていることから、二酸化炭素の供給を必要とする各種用途に適用可能であり、例えば、
図1に示すように、植物ハウス200(ビニールハウス)に供給することができる。
【0034】
所定の原料気体とは、二酸化炭素を含む気体であれば特に限定されず、例えば、工場や自動車等から排出される排気ガス等でも二酸化炭素を含むことから適用可能であるが、大気100を用いることが好適である。大気100を用いる場合には安価でクリーンな気体を用いることとなり、環境負荷にやさしく且つ低コストで原料の調達が可能となる。
【0035】
ハニカムロータ1とは、断面が円形状のドラム状に成形されたハニカム構造のロータである。このハニカムロータ1の断面を一の断面1aと他の断面1bに二分割して各々吸着ゾーンA及び脱着ゾーンBが形成される。より好適には、このハニカムロータ1の円形断面を円の直径で二等分割した2つの半円形状断面の各々として吸着ゾーンA及び脱着ゾーンBが形成される。なお、ハニカムロータ1の断面のゾーン分割は半円形状断面に限るものではなく、必要に応じて適宜変えるようにしても良い。
【0036】
このハニカム構造としては、
図3に示すように、狭義のハニカム構造(honeycomb structure)としてハチの巣形状のような中空の正六角柱を隙間なく並べた構造を含むが、この形状に限定されず、広義のハニカム構造として、中空の正六角柱に限定されない中空の任意の立体図形を隙間なく並べた構造も含まれ、例えば、不燃性無機繊維紙等を段ボール形状(波型形状)に加工して積層してロータ状に形成した構造もハニカム構造として含まれる。
【0037】
このハニカム構造によりハニカムロータ1のロータ本体部の処理部分の表面積が増大することとなり、効果的に二酸化炭素を吸着及び脱着することができる。
【0038】
このハニカムロータ1のロータ本体部には、二酸化炭素を吸着及び脱着可能な吸収剤が含まれており、この吸収剤については、二酸化炭素を吸収できるものであれば、化学的吸収剤であっても、物理的吸収剤であっても適用可能である。
【0039】
このうち二酸化炭素の吸着効率の良さから、化学的吸収剤を用いることが好適であり、アミン系吸収剤を挙げることができる。例えば、このハニカムロータ1のロータ本体部に、二酸化炭素を吸着及び脱着可能とするアミン系吸収剤を担持して構成することが可能である。
【0040】
アミン系吸収剤は、アミン基を官能基として有している化合物からなる吸収剤であれば特に限定されず、例えば、メタノールアミン、2-アミノアルコール、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N-メチルエタノールアミン、N,N-ジメチルエタノールアミン、プロパノールアミン、ヘプタミノール、イソエタリン、メチルジエタノールアミン等のアルカノールアミンや、アミノ酸及びアミノ酸塩及びそれらの誘導体が含まれる。
【0041】
アミン系吸収剤の種類は、NH結合を有することで低温条件においても十分に二酸化炭素の吸収脱離が可能となることから、第一級アミン(R-NH2)、又は第二級アミン(R1R2-NH)を用いることが好適である。
【0042】
アミン系吸収剤の二酸化炭素の吸収脱離温度については、特に限定されないが、酸化分解による臭いや熱劣化を低減するために再生温度を低くすることが好ましく、例えば、温度10℃~50℃の範囲で吸着及び脱着を行うことができ、例えば、吸着温度15℃、脱着温度45℃といった低温条件で吸着及び脱着を行うことができる。
【0043】
アミン系吸収剤と二酸化炭素の反応は下記化学反応式の反応が進行する。以下の矢印方向は、右向きの矢印(→)が吸着反応を示し、左向きの矢印(←)が脱着反応を示す。
【0044】
(化1)
第一級アミン(R-NH2)
[1] 2R-NH2 + CO2 ⇔ R-NH3
+ + R-NH-COO-
[2a] R-NH2 + CO2 + H2O ⇔ R-NH3
+ + HCO3
-
[2b] R-NH-COO- + H2O ⇔ R-NH2 + HCO3
-
第二級アミン(R1R2-NH)
[3] 2R1R2-NH + CO2 ⇔R1R2-NH+ + R1R2-N-COO-
[4a] R1R2-NH + CO2 + H2O ⇔ R1R2-NH2
+ + HCO3
-
[4b] R1R2-N-COO- + H2O ⇔ R1R2-NH + HCO3
-
【0045】
上記化学式に示されたように、このアミン系吸収剤自体は、湿分(水分)を介して、湿分も含めて二酸化炭素も吸着することができる。例えば、吸着温度15℃、脱着温度45℃とする低温条件では、水分(湿分)共存した状態では、二酸化炭素吸収液が上記経路[2a][2b][4a][4b]の平衡反応により二酸化炭素吸収を行えることとなり、上記経路[1]又は[3]で示される反応よりも反応熱が小さくなり、二酸化炭素の吸着及び脱着エネルギーを少なくできて処理効率を高めることができる。
【0046】
また、上記のように、ハニカムロータ1のロータ本体部11にアミン系吸収剤12を担持して構成する構成の他にも、アミン系吸収剤12をハニカムロータ1に備える構成としては様々な態様が可能であり、例えば、このハニカムロータ1のロータ本体部に担持される湿気吸収体と、この湿気吸収体担持され、二酸化炭素を吸着及び脱着可能とするアミン系吸収剤とを備える構成も可能である。
【0047】
この湿気吸収体としては、水分保持可能な材料であれば特に限定されないが、例えば、シリカゲル、ゼオライト、または活性アルミナを用いることができる。
【0048】
このハニカムロータ1の吸着ゾーンAに導入される原料気体を冷却する冷却部2aとしては、蒸発器を用いることができる。また、このハニカムロータ1の脱着ゾーンBに導入される原料気体を加熱する加熱部2bとしては、凝縮器を用いることができる。
【0049】
このヒートポンプ2は、この冷却部2aをなす蒸発器、及び、この加熱部2bをなす凝縮器を有する。
図1に示すように、気体の膨張を制御する膨張弁21a及び21b、並びに気体の圧縮を行う圧縮機22を備えることで、気体の膨張・圧縮と熱交換を行い、低温部分から高温部分へ熱を移動させるものである。
【0050】
この熱交換器2cは、このヒートポンプ2の熱媒体との接続構成については、特に限定されないが、
図1に示すように、このヒートポンプ2の熱媒体と接続可能とすることが好適である。
【0051】
また、本実施形態に係る気体濃縮装置は、
図1に示すように、この冷却部2aにおける吸熱量よりこの加熱部2bにおける放熱量が大きい場合には、この熱交換器2cをこのヒートポンプ2の他の蒸発器として、冷却部2aと並列に接続される状態とし、冷却部2aにおける吸熱量より加熱部2bにおける放熱量が小さい場合には、この熱交換器2cをヒートポンプ2の他の凝縮器として、加熱部2bと並列に接続される状態とするように、熱交換器2cに通じるヒートポンプ2の熱媒体流路を切り替える、一又は複数の切替手段3を備える構成が可能である。
【0052】
この切替手段3としては、
図1に示すように、バルブ3a、3b、3c、3dを用いることができる。このバルブの切替によって、外気温度に応じて(例えば夏場、冬場に応じて)、ヒートポンプ2の熱媒体流路の流路方向を可変とすることができる。
【0053】
この熱交換器2cは、その配置位置は特に限定されず、このヒートポンプ2の内部に配設しても外部に配設することも可能であるが、
図1に示すように、この熱交換器2cをヒートポンプ2内に配設することで、ヒートポンプ2内の凝縮器と蒸発器とを簡易に直接接続でき、装置規模も小さく設計できて簡易な装置構成となり好適である。
【0054】
この熱交換器2cは、このヒートポンプ2の熱媒体との接続については、特に限定されないが、
図1に示すように、このヒートポンプ2の熱媒体と接続可能とすることが好適である。この場合、この熱交換器2cが、このヒートポンプ2の熱媒体を流入出可能とされ、ヒートポンプ2の熱媒体とこの吸着済み気体100aとを熱交換させて、この吸着済み気体100aを加熱又は冷却することができる。
【0055】
また、気体濃縮の品質を高めるという点から、原料気体から得られた吸着済み気体100aを熱交換器2cに確実に送り出すことや、吸着済み気体100aを脱着済み気体100bに混入させないことが重要である。この点から、原料気体に対して自然対流のみの場合よりも外部から駆動される強制対流を行うことが好適であり、例えば、原料気体に対して送風機を適宜備えることが好適である。
【0056】
このような送風機の配置位置は、特に限定されないが、
図1に示すように、このハニカムロータ1の吸着ゾーンAとこの熱交換器2cとの間に配設され、この吸着済み気体100aを誘引して熱交換器2cに送り出す第一の送風機4と、押込送風機としてこの原料気体をこのハニカムロータ1の脱着ゾーンBに向けて送り出す第二の送風機5とを備える構成とすることができる。
【0057】
この第二の送風機5は、その配設位置は特に限定されないが、このハニカムロータ1の脱着ゾーンBとこのヒートポンプ2の凝縮器との間に配設されることが好適であり、この凝縮器を通過したこの原料気体を効率よく脱着ゾーンBに送り出すことができる。
【0058】
上記構成のもとで、本実施形態に係る気体濃縮装置の気体濃縮動作を
図1に基づいて以下説明する。
【0059】
(1)夏場の動作
(1ー1)吸着
夏場の動作として、
図1に示すように、二酸化炭素を含む原料気体として例えば大気100(二酸化炭素濃度400ppm程度)を用いることができる。夏場では、気温が高いことから、原料気体の大気100は、例えば35℃まで上昇している。冷却部2aとしてのヒートポンプ2の蒸発器が、この35℃の大気100を約10℃程度まで冷却する。
【0060】
原料気体の大気100は、このハニカムロータ1の吸着ゾーンAとこの熱交換器2cとの間に配設された第一の送風機4の強制対流(例えば300m3/h)によって、このハニカムロータ1の吸着ゾーンAに誘引される。
【0061】
この吸着ゾーンAでは、このハニカムロータ1のロータ本体部に担持され、二酸化炭素を吸着及び脱着可能とするアミン系吸収剤を備える構成によって、二酸化炭素を低温(例えば10℃)で吸着可能な特性を有するアミン系吸収剤がヒートポンプ2の作動温度領域(例えば大気100を10℃に冷却可能なこと)と合致して最適に作用し、大気100から効率よく二酸化炭素が吸着される。
【0062】
また、この吸着ゾーンAでの他のアミン系吸収剤の構成としては、このハニカムロータ1のロータ本体部に担持される湿気吸収体と、この湿気吸収体に担持され、二酸化炭素を吸着及び脱着可能とするアミン系吸収剤とを備えることも可能である。この場合には、この湿気吸収体自体が水分を吸着することから、アミン系吸収剤による二酸化炭素の吸着に際して余分な湿分を適切に除去可能となり、より品質の高い吸着済み気体100aを提供することが可能となる。
【0063】
このハニカムロータ1の動作としては、この冷却された大気100が、このハニカムロータ1の吸着ゾーンAに送り込まれることで、
図4(a)に示すように、大気100中の二酸化炭素が、ハニカムロータ1の一の断面1a側にある吸着ゾーンAにあるアミン系吸収剤に吸着され、吸着済み気体100aが排出される。この場合、ハニカムロータ1の一の断面1a側では、アミン系吸収剤に二酸化炭素が吸着された状態となる。この後、
図4(b)に示すように、このハニカムロータ1の一の断面1a側がロータ回転によって脱着ゾーンBに位置することとなり、脱着ゾーンBに二酸化炭素が吸着された状態が形成される。
【0064】
この熱交換器2cは、上記の切替手段3によって、夏場には凝縮器として約20℃の吸着済み気体100aを約40℃まで加熱する。この熱交換による加熱によって、原料気体として例えば夏場の35℃の大気100を、ハニカムロータ1の吸着ゾーンAに送り込むために吸着温度の約10℃まで大幅に冷却するのに必要なヒートポンプ2の蒸発器の冷却機能との熱量バランスを維持することが可能となる。この結果として再生出口の濃度の高いCO2ガスを植物に供給可能である。また室外機を置くよりも装置サイズを小さくできる。また外気温度に応じて凝縮器または蒸発器のいずれかに入れ替えることで、通年使用が可能になる。
【0065】
このように、この熱交換器2cが、このヒートポンプ2の熱媒体を流入出可能とされ、ヒートポンプ2の熱媒体とこの吸着済み気体100aとを熱交換させて、この吸着済み気体100aを加熱することから、このヒートポンプ2の吸熱側と放熱側との熱的平衡が系内のこの吸着済み気体100aを流用することで維持されることとなり、季節変化等による原料気体(外気)の温度の差異で、冷却部2aにおける吸熱量と加熱部2bにおける放熱量との違いが生じても、ヒートポンプ2の吸熱側と放熱側との熱的平衡が簡易に維持されて、ヒートポンプ2の作動並びにロータにおける吸着及び脱着を安定したものにできる。
【0066】
(1ー2)脱着
次に、ヒートポンプ2のうちの上記加熱部2bとしての凝縮器が、原料気体を加熱する。この原料気体としても、例えば大気100を用いることができる。夏場では、気温が高いことから、原料気体の大気100は、例えば35℃まで上昇している。この凝縮器は、この夏場の35℃の大気100を約40℃まで加熱する。
【0067】
また、第二の送風機5が、押込送風機として強制対流(例えば300m3/h)によってこの約40℃まで加熱された原料気体をこのハニカムロータ1の脱着ゾーンBに向けて送り出す。
【0068】
第二の送風機5は、その配置位置は、特に限定されないが、
図1に示すように、このハニカムロータ1の脱着ゾーンBとこのヒートポンプ2の凝縮器との間に配設され、凝縮器を通過したこの原料気体を脱着ゾーンBに送り出すことができる。この場合には、この第一及び第二の送風機5がロータ近傍に配設されることとなり、ロータ、この第一ならびに第二の送風機5、及びヒートポンプ2が個別ユニット化可能となると共に、ロータと送風機と脱着用ヒータのみから構成される従来の濃縮装置に対してヒートポンプ2を簡易に追加して構成することも可能となり、装置の簡素化及びメンテナンスの容易化を図ることが可能となる。
【0069】
ここで、上述の
図4(b)に示したように、二酸化炭素が吸着された状態を維持しているハニカムロータ1の一の断面1a側が、ロータ回転によって脱着ゾーンBを形成している。このロータの吸着ゾーンAに向かう原料気体が、ロータの脱着ゾーンBを通過することで、脱着ゾーンBでアミン系吸収剤から二酸化炭素が脱着されて、二酸化炭素リッチな脱着済み気体100b(例えば二酸化炭素濃度800~1000ppm)が得られ、この脱着済み気体100bが第二の送風機5による強制対流によってスムーズに植物ハウス200(ビニールハウス)に供給される。
【0070】
この吸着ゾーンAでの二酸化炭素の脱着については、このハニカムロータ1のロータ本体部に担持され、二酸化炭素を吸着及び脱着可能とするアミン系吸収剤を備える構成によって、二酸化炭素を比較的低温(例えば40℃)で脱着可能な特性を有するアミン系吸収剤がヒートポンプ2の作動温度領域(例えば大気100を40℃に加熱可能なこと)と合致して最適に作用し、最適な二酸化炭素の脱着が容易に可能となる。
【0071】
この脱着ゾーンBでの二酸化炭素の脱着について、この他のアミン系吸収剤の構成としては、このハニカムロータ1のロータ本体部に担持される湿気吸収体と、この湿気吸収体に担持され、二酸化炭素を吸着及び脱着可能とするアミン系吸収剤とを備える構成も可能である。この場合には、この湿気吸収体自体が水分を脱着することから、アミン系吸収剤による二酸化炭素の脱着を促進し、より品質の高い脱着済み気体100bを提供することが可能となる。
【0072】
また、この脱着済み気体100bについて、上記の第一の送風機4と第二の送風機5とを備えることから、ロータの脱着ゾーンB側の圧力が吸着ゾーンA側の圧力よりも高圧化されることとなり、ロータの吸着ゾーンAに向かう原料気体が(隙間等を通って)ロータの脱着ゾーンBを通過した脱着済み気体100bに混入せず、脱着済み気体100bにおける二酸化炭素の濃度を維持することができる。
【0073】
(2)冬場の動作
(2ー1)吸着
冬場の動作として、
図2に示すように、原料気体として例えば大気100(二酸化炭素濃度400ppm程度)を用いることができる。冬場では、気温が低いことから、原料気体の大気100は、例えば15℃まで下がっている。冷却部2aとしてのヒートポンプ2の蒸発器が、この15℃の大気100を約10℃程度まで冷却する。
【0074】
この約10℃程度に冷却された大気100は、このハニカムロータ1の吸着ゾーンAとこの熱交換器2cとの間に配設された第一の送風機4の強制対流(例えば300m3/h)によって、このハニカムロータ1の吸着ゾーンAに誘引される。上記夏場と同様に、冷却された大気100が含有する二酸化炭素がこの吸着ゾーンAで吸着される。
【0075】
この冷却された大気100が、このハニカムロータ1の吸着ゾーンAに送り込まれることで、大気100に含まれる二酸化炭素がハニカムロータ1の吸着ゾーンAにあるアミン系吸収剤に吸着され、吸着済み気体100aが排出される。
【0076】
このハニカムロータ1の吸着ゾーンAとこの熱交換器2cとの間に配設された第一の送風機4が、強制対流(例えば300m3/h)によって、この吸着済み気体100aを誘引して熱交換器2cに送り出す。
【0077】
この熱交換器2cは、上記の切替手段3によって、冬場には蒸発器として吸着済み気体100aを冷却する。この熱交換による冷却によって、原料気体として例えば冬場の15℃の大気100を、ハニカムロータ1の脱着ゾーンBに送り込むために脱着温度の約40℃まで加熱するのに必要なヒートポンプ2の凝縮器の加熱機能との熱量バランスを維持することが可能となり、外気温度が低い場合(例えば15℃)でも、省エネ運転が可能となる。
【0078】
このように、この切替手段3を備える構成から、この切替手段3による切替で熱交換器2cで適切に熱交換を行わせて、このヒートポンプ2の吸熱側と放熱側との熱的平衡が維持されることとなり、季節変化等による原料気体(外気)の温度の差異で、冷却部2aにおける吸熱量と加熱部2bにおける放熱量との違いが生じても、ヒートポンプ2の吸熱側と放熱側との熱的平衡がこの切替手段により最適に維持されて、ヒートポンプ2の作動並びにロータにおける吸着及び脱着を安定したものにできる。
【0079】
このように、この熱交換器2cが、このヒートポンプ2の熱媒体を流入出可能とされ、ヒートポンプ2の熱媒体とこの吸着済み気体100aとを熱交換させて、この吸着済み気体100aを冷却することから、このヒートポンプ2の吸熱側と放熱側との熱的平衡が系内のこの吸着済み気体100aを流用することで維持されることとなり、季節変化等による原料気体(外気)の温度の差異で、冷却部2aにおける吸熱量と加熱部2bにおける放熱量との違いが生じても、ヒートポンプ2の吸熱側と放熱側との熱的平衡が簡易に維持されて、ヒートポンプ2の作動並びにロータにおける吸着及び脱着を安定したものにできる。
【0080】
(2ー2)脱着
次に、ヒートポンプ2のうちの上記加熱部2bとしての凝縮器が、原料気体を加熱する。この原料気体としても、例えば大気100を用いることができる。冬場では、気温が低いことから、原料気体の大気100は、例えば15℃まで低温化している。この凝縮器は、この冬場の15℃の大気100を約40℃まで加熱する。
【0081】
また、第二の送風機5が、押込送風機として強制対流(例えば300m3/h)によってこの原料気体をこのハニカムロータ1の脱着ゾーンBに向けて送り出す。
【0082】
ロータの吸着ゾーンAに向かう約40℃まで加熱された原料気体が、ロータの脱着ゾーンBを通過することで、上記夏場と同様に、脱着ゾーンBでアミン系吸収剤から二酸化炭素が脱着されて、二酸化炭素リッチな脱着済み気体100b(例えば二酸化炭素濃度800~1000ppm)が得られ、この脱着済み気体100bが第二の送風機5による強制対流によってスムーズに植物ハウス200(ビニールハウス)に供給される。
【0083】
また、この脱着済み気体100bについて、上記の第一の送風機4と第二の送風機5とを併せて備えることから、ロータの脱着ゾーンB側の圧力が吸着ゾーンA側の圧力よりも高圧化されることとなり、ロータの吸着ゾーンAに向かう原料気体が(隙間等を通って)ロータの脱着ゾーンBを通過した脱着済み気体100bに混入せず、脱着済み気体100bにおける二酸化炭素の濃度を維持することができる。
【0084】
このように、本実施形態に係る気体濃縮装置は、所定の原料気体に含まれる二酸化炭素を吸着及び脱着可能とされ、この二酸化炭素を吸着する吸着ゾーンAとこの二酸化炭素を脱着する脱着ゾーンBが少なくとも設定されるハニカムロータ1と、このハニカムロータ1の吸着ゾーンAに導入されるこの原料気体を冷却する冷却部2aと、このハニカムロータ1の脱着ゾーンBに導入されるこの原料気体を加熱する加熱部2bと、このハニカムロータ1の吸着ゾーンAを通過した吸着済み気体100aを加熱又は冷却する熱交換器2cと、この冷却部2aをなす蒸発器、及び、この加熱部2bをなす凝縮器を有するヒートポンプ2とを備えることから、この冷却部2aにおける吸熱量と、この加熱部2bにおける放熱量との差異に相当する熱を、この熱交換器2cの吸着済み気体100aに対する加熱を通じて放出する、又は、熱交換器2cの吸着済み気体100aに対する冷却を通じて吸収することとなり、夏場でもこの吸着ゾーンA入口温度を下げて濃度の高い二酸化炭素を供給できると共に、冬場でもこの脱着ゾーンB入口温度を上げて濃度の高い二酸化炭素を供給でき、通年で安定的に高濃度の二酸化炭素を供給できると共に、ヒータに代替してヒートポンプ2を用いることからヒータ使用時よりも省エネルギーでの稼働が可能となり、ランニングコストを抑制することができる。
【0085】
従来のヒートポンプ2と組み合わせたデシカントロータを用いたシステムではロータの吸着出口のガスを供給するため、再生出口に熱量バランスを取るための蒸発器または凝縮器を設置するのに対して、本実施形態に係る気体濃縮装置は、ロータの再生出口のガスを外部の栽培植物等に供給するため、吸着出口に熱量バランスを取るための熱交換器2cが設置されているという構成の違いがあり、この構成の違いによって、従来のヒートポンプ2と組み合わせたデシカントロータを用いたシステムよりも装置をコンパクト化することが可能となる。
【0086】
(第2の実施形態)
第2の実施形態に係る気体濃縮装置は、上記第1の実施形態と同様に、前記ハニカムロータ1と、前記冷却部2aと、前記加熱部2bと、前記熱交換器2cと、前記ヒートポンプ2と、前記第一の送風機4と、前記第二の送風機5とを備え、さらに、
図5及び
図6に示すように、前記熱交換器2cから前記吸着済み気体100aを誘引して外部に排出する第三の送風機6を備え、この第三の送風機6が、誘引により前記熱交換器2cに外部の気体(例えば大気100)をさらに導入し、前記熱交換器2cを通過したこの外部の気体(例えば大気100)を前記吸着済み気体100aと共に外部に排出する構成である。
【0087】
第三の送風機6は、強制対流(例えば300m
3/h)によってこの吸着済み気体100aを誘引して外部に排出する。この第三の送風機6は、この吸着済み気体100aを誘引して外部に排出する際に、
図7に示すように、外部の気体(例えば大気100)を吸着済み気体100aに取り込んで熱交換器2cに送り出す。
【0088】
このように、本実施形態に係る気体濃縮装置は、この熱交換器2cからこの吸着済み気体100aを誘引して外部に排出する第三の送風機6を備え、この第三の送風機6が、誘引によりこの熱交換器2cに外部の気体をさらに導入し、熱交換器2cを通過したこの外部の気体をこの吸着済み気体100aと共に外部に排出することから、ヒートポンプ2の熱媒体と熱交換する対象を、ロータの吸着ゾーンAを出た吸着済み気体100aの他にも用意することとなり、特に外気温度が高い夏場において熱交換器2cでの放熱を確実に行うことができ、放熱の増大分を熱交換器2c側で余裕をもって対処することができ、ヒートポンプ2における加熱部2bでの加熱を一定に維持して、ロータにおける脱着を安定したものにできる。
【0089】
(第3の実施形態)
第3の実施形態に係る気体濃縮装置は、第2の実施形態と同様に、前記ハニカムロータ1と、前記冷却部2aと、前記加熱部2bと、前記熱交換器2cと、前記ヒートポンプ2と、前記第一の送風機4と、前記第二の送風機5と、前記第三の送風機6と、を備え、さらに、
図8及び
図9に示すように、前記ハニカムロータ1の脱着ゾーンBを通過した脱着済み気体100bを前記ヒートポンプ2の熱媒体との熱交換で冷却する他の熱交換器7を備え、この他の熱交換器7に通じる前記ヒートポンプ2の熱媒体流路を、前記冷却部2aと直列若しくは並列、又は前記加熱部2bと直列若しくは並列に接続される構成である。
【0090】
この他の熱交換器7は、このヒートポンプ2の冷却部2aと直列又は並列のいずれでも接続することが可能である。また、このヒートポンプ2の加熱部2bと直列又は並列のいずれでも接続することが可能である。
【0091】
この他の熱交換器7が、冷却部2aと接続するか、又は、加熱部2bと接続するかは、
図8及び
図9に示すように、この制御手段3のバルブ3e、バルブ3f、バルブ3g、及びバルブ3hを用いて制御することが可能である。この他の熱交換器7によって、このヒートポンプ2の熱媒体の一部を取り出して、このハニカムロータ1の脱着ゾーンBを通過した脱着済み気体100bに対して、さらなる熱交換(加熱又は冷却)を行うことが可能となる。
【0092】
例えば、
図8に示すように、夏場には外気によって脱着済み気体100bが高温化しているので、この他の熱交換器7は、この制御手段3によって、このヒートポンプ2の冷却部2aと直列又は並列で接続されて、この脱着済み気体100bを冷却するアフタークーラとして機能することができる。この際に、
図8に示すように、この他の熱交換器7をアフタークーラとして最適に機能させる目的で、前記ヒートポンプ2からの熱媒体をこの他の熱交換器7の直前で冷却させるための膨張弁21cを追加する構成としてもよい。
【0093】
また、例えば、
図9に示すように、冬場には外気によって脱着済み気体100bが低温化しているので、この他の熱交換器7は、この制御手段3によって、このヒートポンプ2の加熱部2bと直列又は並列で接続されて、この脱着済み気体100bを加熱するアフターヒータとして機能することができる。
【0094】
このように、本実施形態に係る気体濃縮装置は、この他の熱交換器7が脱着済み気体100bを加熱又は冷却するといういわゆるアフタークーラ又はアフターヒータとして機能することとなり、夏場には高温化した脱着済み気体100bが外部の植物ハウス200(ビニールハウス)に高温のまま供給されることを防止できると共に、冬場には低温化した脱着済み気体100bが外部の植物ハウス200(ビニールハウス)に低温のまま供給されることを防止できることとなり、通年で栽培に適切な温度で脱着済み気体100bを外部に提供することが可能となる。
【0095】
なお、上記各実施形態に係る気体濃縮装置に関して、押込送風機としてこの原料気体をこのハニカムロータ1の脱着ゾーンBに向けて送り出す第二の送風機5について、このハニカムロータ1の脱着ゾーンBに向けて送り出される原料気体を予備的に加熱する加熱装置を設けても良い。これにより、原料気体をより確実に高温状態としてこのハニカムロータ1の脱着ゾーンBに向けて送り出すことが可能となり、脱着ゾーンBでの二酸化炭素の脱着を促進することが可能となる。
【0096】
以下に、本実施形態の特徴をさらに具体的に示すために実施例を記すが、本実施形態は以下の実施例によって制限されるものではない。
【0097】
(実施例)
上記第1の実施形態に従う気体濃縮装置を構成した。以下、主要な構成を示す。
〇ヒートポンプ:吸着出口に熱量バランスを取るためのコイル(熱交換器2c)を設置した。
〇ロータ:アミン系吸収剤担持ハニカムロータ1
〇構成機器:本体(送風機二台+ハニカムロータ1)、ヒートポンプ2(コイル、圧縮機)
〇運転方法:外気温度で冬季、中間期、夏季とモードを変更して運転した。
【0098】
吸着入口に蒸発器を設置して外気を下げ、再生入口(脱着ゾーンB入口)に凝縮器を設置して温度を上げることで二酸化炭素を吸脱着した。通常のデシカントロータとヒートポンプを組み合わせたものと異なり、再生出口(脱着ゾーンB出口)のガスを供給するため、熱量バランスを取るためのコイル(熱交換器)は通常と異なり吸着ゾーンA出口に設置し、蒸発器と凝縮器を切り替えられるようにした。さらに、夏場と冬場ではヒートポンプ2で加熱と冷却に必要なエネルギーが異なる(夏=約6kW、冬=2~3kW)ため、圧縮機をインバータ仕様にすることで、以下の結果に示されるように、冬場でも省エネを実現可能となった。
【0099】
外気温度27℃、CO2濃度445ppmでの試験時に下記のように省エネになった。
ヒートポンプなし:供給CO2濃度=588ppm、電力2.1kW、ランニングコスト=209円/kg(CO2)
ヒートポンプあり:供給CO2濃度=653ppm、電力1.4kW、ランニングコスト=122円/kg(CO2)
夏場では外気温度が上がるため、ヒートポンプなしでは供給CO2濃度がさらに下がると予想される。
【符号の説明】
【0100】
1 ハニカムロータ
1a 一の断面
1b 他の断面
2 ヒートポンプ
21a 膨張弁
21b 膨張弁
21c 膨張弁
22 圧縮機
2a 冷却部
2b 加熱部
2c 熱交換器
3 切替手段
3a バルブ
3b バルブ
3c バルブ
3d バルブ
3e バルブ
3f バルブ
3g バルブ
3h バルブ
4 第一の送風機
5 第二の送風機
6 第三の送風機
7 他の熱交換器
100 大気
100a 吸着済み気体
100b 脱着済み気体
200 植物ハウス
A 吸着ゾーン
B 脱着ゾーン