(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-18
(45)【発行日】2024-11-26
(54)【発明の名称】印字装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/32 20060101AFI20241119BHJP
B41J 25/308 20060101ALI20241119BHJP
B41J 25/304 20060101ALI20241119BHJP
【FI】
B41J2/32 C
B41J25/308
B41J25/304 F
(21)【出願番号】P 2022026198
(22)【出願日】2022-02-22
【審査請求日】2024-03-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000237639
【氏名又は名称】富士通フロンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】花崎 隆太郎
【審査官】牧島 元
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-251837(JP,A)
【文献】特開2005-186520(JP,A)
【文献】特開2003-118153(JP,A)
【文献】特開2000-094785(JP,A)
【文献】特開2009-226757(JP,A)
【文献】特開昭59-140088(JP,A)
【文献】特開2017-035803(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0338911(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/32
B41J 25/308
B41J 25/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート状の印字媒体に印字するサーマルヘッドと、
前記サーマルヘッドとの間に印字媒体を挟んで送るプラテンローラと、
前記サーマルヘッドを支持するヘッド支持板と、
前記プラテンローラに対して前記サーマルヘッドを進退させる方向に前記ヘッド支持板を回動可能に支持する回動軸と、
前記回動軸まわりに前記ヘッド支持板を回動させる作動部を有する作動軸と、
前記プラテンローラを回転自在に支持するローラ軸と、
前記回動軸を支持する第1支持穴と、前記作動軸を支持する第2支持穴と、前記ローラ軸を支持する第3支持穴と、を有する一対の側板と、を備え、
前記ヘッド支持板は、前記サーマルヘッドの印字面に沿って形成されて前記サーマルヘッドに接する平坦なヘッド支持面と、前記回動軸に支持される一対の支持片と、を有し、
各支持片には、前記回動軸が通される軸穴が形成され、
前記軸穴は、前記ヘッド支持面から、前記ヘッド支持面に直交する方向に延びる長孔状に形成され、前記回動軸が前記ヘッド支持面に接して前記軸穴に支持される、印字装置。
【請求項2】
前記サーマルヘッドと前記プラテンローラとの間に前記印字媒体を送るU字状の搬送経路を更に備え、
前記搬送経路は、一方向に向かって進む前記印字媒体の進行方向を前記一方向とは反対方向に進路を変えて前記印字媒体が前記サーマルヘッドと前記プラテンローラとの間を通過するU字状に形成される、
請求項1に記載の印字装置。
【請求項3】
前記ヘッド支持板は、前記作動軸が接する接触部を有し、
前記接触部は、前記ヘッド支持面と連続する平坦状に形成される、
請求項1または2に記載の印字装置。
【請求項4】
前記軸穴は、前記回動軸の軸径に対して前記軸穴の長手方向に延びる遊び量が0.1[mm]以下である、
請求項1ないし3のいずれか1項に記載の印字装置。
【請求項5】
前記ヘッド支持板は、前記ヘッド支持面を貫通する開口部と、前記ヘッド支持面の外周を切り欠いて形成された切欠き部と、の少なくとも一方を有する、
請求項1ないし4のいずれか1項に記載の印字装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印字装置に関する。
【背景技術】
【0002】
シート状の印字媒体に印字するサーマルヘッドと、サーマルヘッドとの間に印字媒体を挟んで送るプラテンローラと、を備える印字装置が知られている。
【0003】
この種の印字装置としては、供給ロールから引き出された印字媒体を巻取りロールまで、印字媒体の搬送経路に沿って掛け渡す際、供給ロールから引き出された印字媒体の前端を、U字状の搬送経路の一端側から進入させて、プラテンローラの回転によって印字媒体を送るものがある。この印字装置では、プラテンローラの回転によって、搬送経路に沿って曲げられた印字媒体の前端が、サーマルヘッドとプラテンローラとの間の微少な隙間を通過するように引き込まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した印字装置では、例えば、サーマルヘッドを支持するヘッド支持板の回動構造等の寸法公差のバラツキによって、サーマルヘッドとプラテンローラとの間の隙間寸法が大きくなる場合がある。このような場合には、印字媒体がプラテンローラの周面に接触し難くなることでプラテンローラが印字媒体を引き込む際に空回りし、プラテンローラによって印字媒体をプラテンローラとサーマルヘッドとの間にスムーズに引き込むことができない。その結果、印字装置は、搬送経路に沿って印字媒体を掛け渡すことが困難になる問題がある。
【0006】
開示の技術は、上記に鑑みてなされたものであって、サーマルヘッドとプラテンローラとの隙間の寸法精度を向上し、サーマルヘッドとプラテンローラの隙間に対する印字媒体の引込み動作の信頼性を高めることができる印字装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願の開示する印字装置の一態様は、シート状の印字媒体に印字するサーマルヘッドと、前記サーマルヘッドとの間に印字媒体を挟んで送るプラテンローラと、前記サーマルヘッドを支持するヘッド支持板と、前記プラテンローラに対して前記サーマルヘッドを進退させる方向に前記ヘッド支持板を回動可能に支持する回動軸と、前記回動軸まわりに前記ヘッド支持板を回動させる作動部を有する作動軸と、前記プラテンローラを回転自在に支持するローラ軸と、前記回動軸を支持する第1支持穴と、前記作動軸を支持する第2支持穴と、前記ローラ軸を支持する第3支持穴と、を有する一対の側板と、を備え、前記ヘッド支持板は、前記サーマルヘッドの印字面に沿って形成されて前記サーマルヘッドに接する平坦なヘッド支持面と、前記回動軸に支持される一対の支持片と、を有し、各支持片には、前記回動軸が通される軸穴が形成され、前記軸穴は、前記ヘッド支持面から、前記ヘッド支持面に直交する方向に延びる長孔状に形成され、前記回動軸が前記ヘッド支持面に接して前記軸穴に支持される。
【発明の効果】
【0008】
本願の開示する印字装置の一態様によれば、サーマルヘッドとプラテンローラとの隙間の寸法精度を向上し、サーマルヘッドとプラテンローラの隙間に対する印字媒体の引込み動作の信頼性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、実施例の印字装置の概略を示す模式図である。
【
図2】
図2は、実施例の印字装置の印字部を示す斜視図である。
【
図3】
図3は、実施例の印字装置の印字部を他の方向から示す斜視図である。
【
図4】
図4は、実施例における印字部の要部を透視して示す斜視図である。
【
図5】
図5は、実施例におけるヘッド支持板を示す斜視図である。
【
図6】
図6は、実施例におけるヘッド支持板の軸穴を示す側面図である。
【
図7】
図7は、実施例における側板を説明するための側面図である。
【
図8】
図8は、実施例におけるサーマルヘッドとプラテンローラとの隙間を説明するための拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本願の開示する印字装置の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施例によって、本願の開示する印字装置が限定されるものではない。
【実施例】
【0011】
図1は、実施例の印字装置の概略を示す模式図である。
図1に示すように、実施例の印字装置1は、シート状の印字媒体3に印字するための印字部5と、印字部5に対して印字媒体3を搬送する搬送部6と、を備える。印字媒体3は、例えば、感熱紙や感熱フィルム等であり、厚みが0.07[mm]程度~0,06[mm]程度のものが用いられる。
【0012】
図1に示すように、印字装置1の奥行方向(後述する供給ロール22及び巻取りロール23が並ぶ水平方向)をX方向とし、印字装置1の幅方向(後述するプラテンローラ12の軸方向)をY方向として、印字装置1の高さ方向をZ方向とする。
図1と同様に各図面においてもX、Y、Z方向を示す。
【0013】
図2は、実施例の印字装置1の印字部5を示す斜視図である。
図3は、実施例の印字装置1の印字部5を他の方向から示す斜視図である。
図4は、実施例における印字部5の要部を透視して示す斜視図である。
【0014】
図2、
図3及び
図4に示すように、印字装置1の印字部5は、印字媒体3に印字するサーマルヘッド11と、サーマルヘッド11との間に印字媒体3を挟んで送るプラテンローラ12と、サーマルヘッド11を支持するヘッド支持板13と、を備える。また、印字部5は、ヘッド支持板13に支持されたサーマルヘッド11をプラテンローラ12側に押圧する一組の圧縮コイルばね15と、ヘッド支持板13との間に各圧縮コイルばね15を挟み込むブラケット部材16と、を備える。
【0015】
また、印字部5は、プラテンローラ12に対してサーマルヘッド11を進退させる方向にヘッド支持板13を回動可能に支持する回動軸17と、回動軸17まわりにヘッド支持板13を回動させる作動部18aを有する作動軸18と、プラテンローラ12を回転自在に支持するローラ軸19と、を備える。また、印字部5は、回動軸17、作動軸18及びローラ軸19を各々支持する一対の側板20と、プラテンローラ12のローラ軸19を回転駆動するローラ駆動機構(図示せず)と、を備える。
【0016】
図1に示すように、印字装置1の搬送部6は、印字媒体3を供給する供給ロール22と、供給ロール22から供給されてサーマルヘッド11とプラテンローラ12との間を通過した印字媒体3が巻き取られる巻取りロール23と、供給ロール22から引き出された印字媒体3をサーマルヘッド11とプラテンローラ12との間に送るU字状の搬送経路24aを形成するガイド部材24と、巻取りロール23を回転駆動する巻取り機構(図示せず)と、を備える。
【0017】
ガイド部材24の搬送経路24aは、
図1に示すように、プラテンローラ12のローラ軸19の軸方向(Y方向)から見たときに、供給ロール22から印字部5側へ進む一方向に向かって進む印字媒体3の進行方向を、一方向とは反対方向、すなわち、印字部5から巻取りロール23側へ進む他方向に進路を変えて、印字媒体3がサーマルヘッド11とプラテンローラ12との間の隙間を通過する略U字状に形成されている(
図8参照)。
【0018】
このように本実施例における搬送経路24aは、略U字状に形成されているので、搬送経路24aに沿って湾曲された印字媒体3を、サーマルヘッド11とプラテンローラ12との間の微少な隙間を通過させるために、この隙間に高い寸法精度が求められる。
【0019】
また、搬送経路24aは、供給ロール22から引き出された印字媒体3が進入する一端側に、印字媒体3が搬送経路24aへ直線状に差し込まれる平坦部分Fを有する。これにより、印字媒体3を搬送経路24aに沿って掛け渡す際、供給ロール22から引き出された印字媒体3の前端を搬送経路24aの平坦部分Fに沿って差し込むことで、印字媒体3を搬送経路24aに沿ってスムーズに挿入させることが可能とされている。
【0020】
また、搬送経路24aには、供給ロール22から引き出されて搬送経路24aの下側の一端から挿入された印字媒体3の前端を検知するための検知部25が設けられている、検知部25は、図示しないが、例えば、検知光を発する発光部と、発光部からの検知光を受光する受光部と、を有しており、搬送経路24aに沿って送られる印字媒体3の幅方向(Y方向)の両側に発光部と受光部が設けられている。検知部25は、制御部(図示せず)と接続されており、印字媒体3の前端を検出した検出信号を制御部へ送る。制御部は、検知部25からの検知信号に基づいてローラ駆動機構を駆動するように制御し、プラテンローラ12を回転させて印字媒体3を搬送する。
【0021】
(印字装置の要部)
図5は、実施例におけるヘッド支持板13を示す斜視図である。
図6は、実施例におけるヘッド支持板13の軸穴を示す側面図である。
【0022】
図5に示すように、印字部5のヘッド支持板13は、サーマルヘッド11に接する平坦なヘッド支持面13aと、回動軸17に支持される一対の支持片13bと、を有する。ヘッド支持面13aは、サーマルヘッド11の印字面11aに沿って印字面11aとほぼ平行に形成されている。
【0023】
各支持片13bには、回動軸17が通される軸穴13cが形成されている。軸穴13cは、
図6に示すように、ヘッド支持面13aから、ヘッド支持面13aに直交する方向に延びる長穴状に形成されており、回動軸17がヘッド支持面13aに接して軸穴13c内に支持される。また、回動軸17は、軸穴13cの短径方向の両側にそれぞれ接して軸穴13c内に支持される。
【0024】
ヘッド支持面13aは、軸穴13cの加工基準となる基準平面としても機能する。
図6に示すように、回動軸17の軸方向に直交する平面(X-Z平面)において、ヘッド支持板13の軸穴13cは、ヘッド支持面13aを加工基準として、ヘッド支持面13aと、ヘッド支持面13aに接する回動軸17の中心Oとの間が寸法Aとなり、軸穴13cの長手方向に微少な遊び量を有する長穴状に形成されている。
【0025】
本開示における長穴状の軸穴13cは、軸穴13cの寸法公差の影響を抑えるために微少な遊びが確保された長穴であり、回動軸17を長径方向に移動可能に支持するための広義での長穴とは技術思想が異なる。例えば、回動軸17の軸径を3.0[mm]としたとき、回動軸17の軸径に対して軸穴13cの長手方向(ヘッド支持面13aに直交する方向)に延びる軸穴13cの遊び量は、0.1[mm]以下に設定されている。すなわち、軸穴13cの遊び量は、回動軸17の軸径の1/30以下に設定されている。言い換えると、軸穴13cは、円形状の軸穴を形成する際の寸法公差と同程度の遊び量だけ、ヘッド支持面13aに直交する方向に延びる長穴状に形成されている。
【0026】
このように軸穴13cは、ヘッド支持面13aから延びる長穴状に形成されることで、ヘッド支持面13aを基準面として形成することが可能になる。軸穴13cにおいて回動軸17がヘッド支持面13aに接して支持されることにより、軸穴13cの寸法公差のばらつきに伴って回動軸17を介した支持状態が変化することが避けられる。つまり、回動軸17がヘッド支持面13aに接して軸穴13cに支持されるので、軸穴13cの寸法公差のばらつきを、長穴状の軸穴13cにおける長径方向の遊びで吸収することが可能になり、軸穴13cによる回動軸17の支持状態が、軸穴13cの寸法公差の影響を受けることを避けられる。
【0027】
言い換えると、支持片13bの軸穴13cを正円状、いわゆる丸穴として形成した場合、軸穴13cの加工精度に伴い、軸穴13cの寸法公差に応じたバラツキが生じるため、一対の支持片13bの各軸穴13cの位置が、ヘッド支持面13aに直交する方向に対してずれ易い。一対の支持片13bの各軸穴13cの位置が互いにずれた場合には、回動軸17の軸方向の両側において回動軸17によるヘッド支持板13の支持状態が不均等になり、ヘッド支持面13aに傾きが生じて、サーマルヘッド11とプラテンローラ12との間の隙間の寸法精度が低下する。これに対して本実施例における軸穴13cは、ヘッド支持面13aから延びる長穴状に形成されることで、サーマルヘッド11とプラテンローラ12との間の隙間の寸法精を高めることができる。
【0028】
作動軸18の作動部18aによってヘッド支持板13が回動軸17まわりに回動されて、サーマルヘッド11がプラテンローラ12側へ近づくように移動されたときに、サーマルヘッド11とプラテンローラ12との間の隙間が所定寸法になる。この隙間は、プラテンローラ12の径方向に対する隙間である。実施例における隙間(
図8に示す隙間G参照)の所定寸法は、0~0.4以下の範囲に設定されており、使用する印字媒体3の厚み(0.06[mm]程度~0.07[mm]程度)の6倍程度以下に設定されている。
【0029】
また、ヘッド支持板13は、作動軸18が接する接触部13dを有しており、接触部13dが、ヘッド支持面13aと連続する平坦状に形成されている。このようにヘッド支持板13の接触部13dは、例えば、接触部13dが折り曲げ加工等の加工が施されることなく平坦状に形成されることで、接触部13dの加工に伴う加工寸法のバラツキが抑えられ、作動軸18の作動部18aの接触に伴うヘッド支持板13の進退動作の精度を高めることができる。その結果、サーマルヘッド11とプラテンローラ12との間の隙間の寸法精度が更に高められる。
【0030】
また、ヘッド支持板13は、ヘッド支持面13aを貫通する開口部13eと、ヘッド支持面13aの外周を切り欠いて形成された切欠き部13fと、を有する。開口部13eは、ヘッド支持面13aの中央に設けられており、サーマルヘッド11の長手方向(Y方向)の中央に位置している。切欠き部13fは、ヘッド支持面13aにおける開口部13eを挟んだ両側に形成されており、サーマルヘッド11の長手方向(Y方向)の両側に位置している。また、ヘッド支持板13には、ヘッド支持面13aに接したサーマルヘッド11を位置決めするための位置決め片13gが設けられている。
【0031】
これにより、ヘッド支持板13のヘッド支持面13a部分の剛性が適切に下げられ、サーマルヘッド11の外周面に沿ってヘッド支持面13aが撓み易くできる。このため、ヘッド支持面13aは、サーマルヘッド11にならってヘッド支持面13a全域がサーマルヘッド11の外周面に接することが可能になる。したがって、ヘッド支持板13は、ヘッド支持面13aとサーマルヘッド11の外周面との間に空隙が生じることが抑えられるので、圧縮コイルばね15によって押圧されるヘッド支持面13aで、サーマルヘッド11をサーマルヘッド11の長手方向にわたってプラテンローラ12に押圧することが可能になる。その結果、印字媒体3とサーマルヘッド11との接触状態の不均一に伴う印字かすれ等の発生を抑えることができる。
【0032】
なお、ヘッド支持板13は、開口部13eと切欠き部13fの両方を有する構造に限定されず、ヘッド支持面13a部分の剛性が適切に下げられる構造であれば、開口部13eと切欠き部13fのいずれか一方のみを有する構造であってもよい。
【0033】
作動軸18の作動部18aは、例えば、作動軸18の軸方向に直交する断面形状が長方形状に形成されており、作動軸18の回転に伴って作動軸18の径方向に対する大きさが変化するように形成されている。作動軸18は、作動部18aがヘッド支持板13に接するように設けられており、作動部18aの回転に伴ってヘッド支持板13が回動軸17まわりに回動することで、ヘッド支持板13に支持されたサーマルヘッド11がプラテンローラ12に対して近づいたり離れたりするように進退する。すなわち、作動部18aは、作動軸18の径方向に対して偏心された形状、いわゆるカム形状に形成されている。
【0034】
ブラケット部材16は、
図4に示すように、回動軸17に支持される一対の支持片16aを有しており、各支持片16aが、ヘッド支持板13の各支持片13bに対して、回動軸17の軸方向における外側に配置されている。
【0035】
図7は、実施例における側板20を説明するための側面図である。各側板20は、印字装置1において印字部5及び搬送部6を支持するフレーム部材を構成しており、
図7に示すように、回動軸17を支持する第1支持穴26と、作動軸18を支持する第2支持穴27と、ローラ軸19を支持する第3支持穴28と、を有する。
【0036】
このように、1つの側板20に、第1支持穴26、第2支持穴27及び第3支持穴28である3つの支持穴が形成されることで、例えば、3つの支持穴が1つの側板20に形成されず、支持穴が形成された複数のフレーム部材を組み付ける構造と比較して、3つの支持穴の各相対距離D1、D2、D3、D4の寸法精度を高めることができる。これにより、サーマルヘッド11とプラテンローラ12との間の隙間の寸法精度を高める上で、軸穴13cによる回動軸17の支持状態のバラツキを低減する効果との相乗効果が得られる。
【0037】
ローラ軸19は、例えば、ローラ軸19の軸方向の両側に設けられた軸受部材が第3支持穴28に嵌め込まれることで、軸受部材を介して第3支持穴28に支持されている。
【0038】
(印字媒体の引込み動作)
以上のように構成された印字装置1において、搬送経路24aに沿って印字媒体3を引き込む動作を説明する。
図8は、実施例におけるサーマルヘッド11とプラテンローラ12との隙間を説明するための拡大断面図である。
【0039】
図1及び
図8に示すように、供給ロール22から巻取りロール23にわたって印字媒体3を掛け渡す際、供給ロール22から引き出された印字媒体3の前端を、搬送経路24aの平坦部分Fに沿って利用者が手動で差し込む。続いて、印字装置1は、搬送経路24aに差し込まれた印字媒体3の前端を検知部25によって検知し、検知部25の検知信号に基づいて制御部がプラテンローラ12を駆動する。プラテンローラ12が回転することで、搬送経路24aに差し込まれた印字媒体3は、プラテンローラ12によって搬送経路24aに沿ってサーマルヘッド11側へ送られる。
【0040】
サーマルヘッド11側へ送られた印字媒体3の前端は、プラテンローラ12の回転に伴って、サーマルヘッド11とプラテンローラ12との間の隙間Gを通過し、巻取りロール23側へ送られる。最後に、巻取りロール23側へ送られた印字媒体3の前端を、ユーザが手動で巻取りロール23に取り付けることで、供給ロール22から巻取りロール23まで、サーマルヘッド11とプラテンローラ12との間の隙間Gを通過するように印字媒体3が掛け渡される。
【0041】
(実施例の効果)
上述のように実施例の印字装置1は、ヘッド支持板13を回動可能に支持する回動軸17と、回動軸17まわりにヘッド支持板13を回動させる作動軸18と、プラテンローラ12を回転自在に支持するローラ軸19と、回動軸17を支持する第1支持穴26、作動軸18を支持する第2支持穴27、ローラ軸19を支持する第3支持穴28を有する一対の側板20と、を備える。ヘッド支持板13の軸穴13cは、ヘッド支持面13Aから、ヘッド支持面13aに直交する方向に延びる長孔状に形成され、回動軸17がヘッド支持面13aに接して支持される。これにより、ヘッド支持板13の軸穴13cの加工精度に伴ってヘッド支持板13の回動構造の寸法精度が低下することを抑えることと、側板20における第1支持穴26、第2支持穴27、第3支持穴28の各相対位置の寸法精度を向上することとの相乗効果が得られる。この相乗効果により、サーマルヘッド11とプラテンローラ12との隙間Gの寸法精度を向上することができる。その結果、サーマルヘッド11とプラテンローラ12の隙間Gに対する印字媒体3の引込み動作の信頼性を高めることができる。
【0042】
また、実施例の印字装置1は、サーマルヘッド11とプラテンローラ12との間の隙間Gに印字媒体3を送る略U字状の搬送経路24aを備える。搬送経路24aは、一方向に向かって進む印字媒体3の進行方向を一方向とは反対方向に進路を変えて印字媒体3がサーマルヘッド11とプラテンローラ12との間の隙間Gを通過する略U字状に形成されている。このように、特に印字媒体3の搬送経路24aが略U字状に折り返す構造において、搬送経路24aに沿って湾曲された印字媒体3の前端を、サーマルヘッド11とプラテンローラ12との間の隙間Gに通過させ難いので、本実施例のようにサーマルヘッド11とプラテンローラ12との間の隙間Gの寸法精度を高めることにより、印字媒体3の引込み動作の信頼性を向上する効果を大きく得られる。
【0043】
また、実施例の印字装置1におけるヘッド支持板13は、作動軸18が接する接触部13dを有しており、接触部13dが、ヘッド支持面13aと連続する平坦状に形成されている。このように接触部13dが折り曲げ加工等の加工が施されることなく平坦状に形成されることで、接触部13dの加工に伴う加工寸法のバラツキが抑えられ、作動軸18によるヘッド支持板13の進退動作の精度を高めることができる。その結果、サーマルヘッド11とプラテンローラ12との間の隙間Gの寸法精度を更に高めることができる。
【0044】
また、実施例の印字装置1におけるヘッド支持板13は、ヘッド支持面13aを貫通する開口部13eと、ヘッド支持面13aの外周を切り欠いて形成された切欠き部13fと、を有する。これにより、ヘッド支持板13のヘッド支持面13a部分の剛性が適切に下げられ、サーマルヘッド11の外周面に沿ってヘッド支持面13aが撓み易くなり、ヘッド支持面13aとサーマルヘッド11との間に空隙が生じることが抑えられる。よって、圧縮コイルばね15によってサーマルヘッド11をサーマルヘッド11の長手方向にわたってプラテンローラ12に押圧することが可能になり、印字媒体3とサーマルヘッド11との接触状態の不均一に伴う印字かすれ等の発生を抑えることができる。
【符号の説明】
【0045】
1 印字装置
3 印字媒体
5 印字部
11 サーマルヘッド
12 プラテンローラ
13 ヘッド支持板
13a ヘッド支持面
13b 支持片
13c 軸穴
13d 接触部
13e 開口部
13f 切欠き部
17 回動軸
18 作動軸
18a 作動部
19 ローラ軸
20 側板
24 ガイド部材
24a 搬送経路
26 第1支持穴
27 第2支持穴
28 第3支持穴
F 平坦部分
G 隙間