(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-18
(45)【発行日】2024-11-26
(54)【発明の名称】与信管理装置、与信管理方法および与信管理プログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 40/03 20230101AFI20241119BHJP
G06Q 30/0645 20230101ALI20241119BHJP
【FI】
G06Q40/03
G06Q30/0645
(21)【出願番号】P 2022030944
(22)【出願日】2022-03-01
【審査請求日】2024-06-26
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】398040527
【氏名又は名称】株式会社オービック
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大野 仁資
(72)【発明者】
【氏名】倉橋 伸寿
(72)【発明者】
【氏名】上野 剛光
【審査官】上田 智志
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-135631(JP,A)
【文献】特開2017-182787(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レンタル品の価値を適切に考慮した与信管理を行うことができる、制御部および記憶部を備える与信管理装置であって、
前記記憶部には、
与信限度額を含む限度額管理マスタと、
出庫した前記レンタル品のうち未入庫分に相当する分の債権額であるレンタル貸出残金額を算出するための月数を含む月数管理マスタと、
前記レンタル品の出庫数量と前記レンタル品の入庫数量とを含む出庫データと、
が格納されており、
前記制御部は、
前記出庫データ中の前記出庫数量から前記出庫データ中の前記入庫数量を減じた値と、前記レンタル品の受注単価と、前記月数管理マスタ中の前記月数と、に基づいて前記レンタル貸出残金額を算出する貸出残金額算出手段と、
受注残金額と、前記貸出残金額算出手段で算出した前記レンタル貸出残金額と、売掛残高と、に基づいて債権残高を算出する債権残高算出手段と、
前記限度額管理マスタから、与信限度額を取得する与信限度額取得手段と、
メッセージ表示手
段と、
を備え、
前記メッセージ表示手段は、前記債権残高算出手段で算出した前記債権残高が、前記与信限度額取得手段で取得した前記与信限度額を上回る場合に所定のメッセージを表
示すること、
を特徴とする与信管理装置。
【請求項2】
前記貸出残金額算出手段は、
前記レンタル品が月単位でレンタルするものである場合は、前記出庫データ中の前記出庫数量から前記出庫データ中の前記入庫数量を減じた値に、前記レンタル品を1月レンタルする場合の受注単価と前記月数管理マスタ中の前記月数とを乗じることにより、前記レンタル貸出残金額を算出すること、
を特徴とする請求項1に記載の与信管理装置。
【請求項3】
前記月数管理マスタは、前記レンタル貸出残金額を算出するための日数を更に含み、
前記貸出残金額算出手段は、
前記レンタル品が日単位でレンタルするものである場合は、前記出庫データ中の前記出庫数量から前記出庫データ中の前記入庫数量を減じた値に、前記レンタル品を1日レンタルする場合の受注単価と前記月数管理マスタの前記日数と前記月数管理マスタ中の前記月数とを乗じることにより、前記レンタル貸出残金額を算出すること、
を特徴とする請求項1または2に記載の与信管理装置。
【請求項4】
前記月数管理マスタ中の前記月数が、前記レンタル品の購入原価および前記レンタル品の月額レンタル料に基づいて算出されたものであること、
を特徴とする請求項1から3のいずれか一つに記載の与信管理装置。
【請求項5】
前記メッセージ表示手段は、
前記上回る場合に受注入力を続行するか否かをオペレータに確認するための警告メッセージ、または、前記上回る場合に受注入力を続行できない旨をオペレータに認識させるための入力不可メッセージを表示すること、
を特徴とする請求項1から4のいずれか一つに記載の与信管理装置。
【請求項6】
与信管理集計表生成手段、
を備え、
前記与信管理集計表生成手段は、前記債権残高算出手段で算出した前記債権残高と、前記与信限度額取得手段で取得した前記与信限度額と、を含む与信管理集計表を生成すること、
を特徴とする請求項1から5のいすれか一つに記載の与信管理装置。
【請求項7】
前記与信管理集計表生成手段は、
前記与信限度額取得手段で取得した前記与信限度額から前記債権残高算出手段で算出した前記債権残高を差し引くことで算出された与信枠未消化額と、当該債権残高を当該与信限度額で割ることにより算出された与信枠消化率と、を更に含む前記与信管理集計表を生成すること、
を特徴とする請求項
6に記載の与信管理装置。
【請求項8】
レンタル品の価値を適切に考慮した与信管理を行うことができる、制御部および記憶部を備える与信管理装置であって、
前記記憶部には、
与信限度額を含む限度額管理マスタと、
出庫した前記レンタル品のうち未入庫分に相当する分の債権額であるレンタル貸出残金額を算出するための月数を含む月数管理マスタと、
前記レンタル品の出庫数量と前記レンタル品の入庫数量とを含む出庫データと、
が格納されており、
前記制御部は、
前記出庫データ中の前記出庫数量から前記出庫データ中の前記入庫数量を減じた値と、前記レンタル品の受注単価と、前記月数管理マスタ中の前記月数と、に基づいて前記レンタル貸出残金額を算出する貸出残金額算出手段と、
受注残金額と、前記貸出残金額算出手段で算出した前記レンタル貸出残金額と、売掛残高と、に基づいて債権残高を算出する債権残高算出手段と、
前記限度額管理マスタから、与信限度額を取得する与信限度額取得手段と、
与信管理集計表生成手段、
を備え、
前記与信管理集計表生成手段は、前記債権残高算出手段で算出した前記債権残高と、前記与信限度額取得手段で取得した前記与信限度額と、を含む与信管理集計表を生成すること、
を特徴とする与信管理装置。
【請求項9】
制御部および記憶部を備える情報処理装置で実行される、レンタル品の価値を適切に考慮した与信管理を行うことができる与信管理方法であって、
前記記憶部には、
与信限度額を含む限度額管理マスタと、
出庫した前記レンタル品のうち未入庫分に相当する分の債権額であるレンタル貸出残金額を算出するための月数を含む月数管理マスタと、
前記レンタル品の出庫数量と前記レンタル品の入庫数量とを含む出庫データと、
が格納されており、
前記制御部で実行される、
前記出庫データ中の前記出庫数量から前記出庫データ中の前記入庫数量を減じた値と、前記レンタル品の受注単価と、前記月数管理マスタ中の前記月数と、に基づいて前記レンタル貸出残金額を算出する貸出残金額算出ステップと、
受注残金額と、前記貸出残金額算出ステップで算出した前記レンタル貸出残金額と、売掛残高と、に基づいて債権残高を算出する債権残高算出ステップと、
前記限度額管理マスタから、与信限度額を取得する与信限度額取得ステップと、
メッセージ表示ステッ
プと、
を含み、
前記メッセージ表示ステップにおいては、前記債権残高算出ステップで算出した前記債権残高が、前記与信限度額取得ステップで取得した前記与信限度額を上回る場合に所定のメッセージを表
示すること、
を特徴とする与信管理方法。
【請求項10】
制御部および記憶部を備える情報処理装置に実行させるための、レンタル品の価値を適切に考慮した与信管理を行うことができる与信管理プログラムであって、
前記記憶部には、
与信限度額を含む限度額管理マスタと、
出庫した前記レンタル品のうち未入庫分に相当する分の債権額であるレンタル貸出残金額を算出するための月数を含む月数管理マスタと、
前記レンタル品の出庫数量と前記レンタル品の入庫数量とを含む出庫データと、
が格納されており、
前記制御部に実行させるための、
前記出庫データ中の前記出庫数量から前記出庫データ中の前記入庫数量を減じた値と、前記レンタル品の受注単価と、前記月数管理マスタ中の前記月数と、に基づいて前記レンタル貸出残金額を算出する貸出残金額算出ステップと、
受注残金額と、前記貸出残金額算出ステップで算出した前記レンタル貸出残金額と、売掛残高と、に基づいて債権残高を算出する債権残高算出ステップと、
前記限度額管理マスタから、与信限度額を取得する与信限度額取得ステップと、
メッセージ表示ステッ
プと、
を含み、
前記メッセージ表示ステップにおいては、前記債権残高算出ステップで算出した前記債権残高が、前記与信限度額取得ステップで取得した前記与信限度額を上回る場合に所定のメッセージを表
示すること、
を特徴とする与信管理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、与信管理装置、与信管理方法および与信管理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、デンタル用機器の導入に付随する事務手続および保守点検に必要な負担を軽減できるデンタル用機器のレンタル方法およびレンタルシステムが開示されている(特許文献1の0006段落等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載のようなレンタル業を営む業界においては、レンタル品も考慮した与信リスクの管理を行うことが必要である。すなわち、ある得意先に対して現在レンタルしている商品が破損・紛失した場合のリスクを債権残高として捉えて考慮した上で、当該ある得意先に対して、商品の販売や商品のレンタルを更に行ってよいかを受注入力の段階で判断する必要がある。
【0005】
しかしながら、従来においては、レンタル品についての債権残高を適切に設定することが難しかった。レンタル料を債権残高とすると低すぎるし、逆に、レンタル品ではなく販売品とした場合の販売価格を債権残高とすると高すぎて、どちらも実態に合っていなかった。
【0006】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであって、月額レンタル料のNヵ月分をレンタル品についての債権残高とすることで、レンタル品の価値を適切に考慮した与信管理を行うことができる与信管理装置、与信管理方法および与信管理プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る与信管理装置においては、レンタル品の価値を適切に考慮した与信管理を行うことができる、制御部および記憶部を備える与信管理装置であって、前記記憶部には、与信限度額を含む限度額管理マスタと、出庫した前記レンタル品のうち未入庫分に相当する分の債権額であるレンタル貸出残金額を算出するための月数を含む月数管理マスタと、前記レンタル品の出庫数量と前記レンタル品の入庫数量とを含む出庫データと、が格納されており、前記制御部は、前記出庫データ中の前記出庫数量から前記出庫データ中の前記入庫数量を減じた値と、前記レンタル品の受注単価と、前記月数管理マスタ中の前記月数と、に基づいて前記レンタル貸出残金額を算出する貸出残金額算出手段と、受注残金額と、前記貸出残金額算出手段で算出した前記レンタル貸出残金額と、売掛残高と、に基づいて債権残高を算出する債権残高算出手段と、前記限度額管理マスタから、与信限度額を取得する与信限度額取得手段と、メッセージ表示手段または与信管理集計表生成手段と、を備え、前記メッセージ表示手段は、前記債権残高算出手段で算出した前記債権残高が、前記与信限度額取得手段で取得した前記与信限度額を上回る場合に所定のメッセージを表示し、前記与信管理集計表生成手段は、前記債権残高算出手段で算出した前記債権残高と、前記与信限度額取得手段で取得した前記与信限度額と、を含む与信管理集計表を生成すること、を特徴とする。
【0008】
また、本発明に係る与信管理装置においては、前記貸出残金額算出手段は、前記レンタル品が月単位でレンタルするものである場合は、前記出庫データ中の前記出庫数量から前記出庫データ中の前記入庫数量を減じた値に、前記レンタル品を1月レンタルする場合の受注単価と前記月数管理マスタ中の前記月数とを乗じることにより、前記レンタル貸出残金額を算出すること、を特徴とする。
【0009】
また、本発明に係る与信管理装置においては、前記月数管理マスタは、前記レンタル貸出残金額を算出するための日数を更に含み、前記貸出残金額算出手段は、前記レンタル品が日単位でレンタルするものである場合は、前記出庫データ中の前記出庫数量から前記出庫データ中の前記入庫数量を減じた値に、前記レンタル品を1日レンタルする場合の受注単価と前記月数管理マスタの前記日数と前記月数管理マスタ中の前記月数とを乗じることにより、前記レンタル貸出残金額を算出すること、を特徴とする。
【0010】
また、本発明に係る与信管理装置においては、前記月数管理マスタ中の前記月数が、前記レンタル品の購入原価および前記レンタル品の月額レンタル料に基づいて算出されたものであること、を特徴とする。
【0011】
また、本発明に係る与信管理装置においては、前記メッセージ表示手段は、前記上回る場合に受注入力を続行するか否かをオペレータに確認するための警告メッセージ、または、前記上回る場合に受注入力を続行できない旨をオペレータに認識させるための入力不可メッセージを表示すること、を特徴とする。
【0012】
また、本発明に係る与信管理装置においては、前記与信管理集計表生成手段は、前記与信限度額取得手段で取得した前記与信限度額から前記債権残高算出手段で算出した前記債権残高を差し引くことで算出された与信枠未消化額と、当該債権残高を当該与信限度額で割ることにより算出された与信枠消化率と、を更に含む前記与信管理集計表を生成すること、を特徴とする。
【0013】
また、本発明に係る与信管理方法においては、制御部および記憶部を備える情報処理装置で実行される、レンタル品の価値を適切に考慮した与信管理を行うことができる与信管理方法であって、前記記憶部には、与信限度額を含む限度額管理マスタと、出庫した前記レンタル品のうち未入庫分に相当する分の債権額であるレンタル貸出残金額を算出するための月数を含む月数管理マスタと、前記レンタル品の出庫数量と前記レンタル品の入庫数量とを含む出庫データと、が格納されており、前記制御部で実行される、前記出庫データ中の前記出庫数量から前記出庫データ中の前記入庫数量を減じた値と、前記レンタル品の受注単価と、前記月数管理マスタ中の前記月数と、に基づいて前記レンタル貸出残金額を算出する貸出残金額算出ステップと、受注残金額と、前記貸出残金額算出ステップで算出した前記レンタル貸出残金額と、売掛残高と、に基づいて債権残高を算出する債権残高算出ステップと、前記限度額管理マスタから、与信限度額を取得する与信限度額取得ステップと、メッセージ表示ステップまたは与信管理集計表生成ステップと、を含み、前記メッセージ表示ステップにおいては、前記債権残高算出ステップで算出した前記債権残高が、前記与信限度額取得ステップで取得した前記与信限度額を上回る場合に所定のメッセージを表示し、前記与信管理集計表生成ステップにおいては、前記債権残高算出ステップで算出した前記債権残高と、前記与信限度額取得ステップで取得した前記与信限度額と、を含む与信管理集計表を生成すること、を特徴とする。
【0014】
また、本発明に係る与信管理プログラムにおいては、制御部および記憶部を備える情報処理装置に実行させるための、レンタル品の価値を適切に考慮した与信管理を行うことができる与信管理プログラムであって、前記記憶部には、与信限度額を含む限度額管理マスタと、出庫した前記レンタル品のうち未入庫分に相当する分の債権額であるレンタル貸出残金額を算出するための月数を含む月数管理マスタと、前記レンタル品の出庫数量と前記レンタル品の入庫数量とを含む出庫データと、が格納されており、前記制御部に実行させるための、前記出庫データ中の前記出庫数量から前記出庫データ中の前記入庫数量を減じた値と、前記レンタル品の受注単価と、前記月数管理マスタ中の前記月数と、に基づいて前記レンタル貸出残金額を算出する貸出残金額算出ステップと、受注残金額と、前記貸出残金額算出ステップで算出した前記レンタル貸出残金額と、売掛残高と、に基づいて債権残高を算出する債権残高算出ステップと、前記限度額管理マスタから、与信限度額を取得する与信限度額取得ステップと、メッセージ表示ステップまたは与信管理集計表生成ステップと、を含み、前記メッセージ表示ステップにおいては、前記債権残高算出ステップで算出した前記債権残高が、前記与信限度額取得ステップで取得した前記与信限度額を上回る場合に所定のメッセージを表示し、前記与信管理集計表生成ステップにおいては、前記債権残高算出ステップで算出した前記債権残高と、前記与信限度額取得ステップで取得した前記与信限度額と、を含む与信管理集計表を生成すること、を特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、月額レンタル料のNヵ月分をレンタル品についての債権残高とすることで、レンタル品の価値を適切に考慮した与信管理を行うことができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、与信管理装置の構成の一例を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、従来例の与信管理および本実施形態の与信管理の一例を示す図である。
【
図3】
図3は、本実施形態で用いるマスタおよびデータ中の項目の一例を示す図である。
【
図4】
図4は、本実施形態に係る処理フローの一例を示す図である。
【
図5】
図5は、請求先マスタ、契約区分マスタおよび基本情報マスタの一例を示す図である。
【
図7】
図7は、出庫データおよび入庫データの一例を示す図である。
【
図9】
図9は、入金データおよび売掛残高データの一例を示す図である。
【
図11】
図11は、レンタル貸出残金額の算出の一例を示す図である。
【
図15】
図15は、入力不可メッセージの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明に係る与信管理装置、与信管理方法および与信管理プログラムの実施形態を、図面に基づいて詳細に説明する。なお、本実施形態により本発明が限定されるものではない。
【0018】
[1.概要]
レンタル契約については、初期取引期間での受注を受けるため、この期間の受注残をレンタル債権残として加算して与信リスクに加える。しかしながら、実際には、建設現場の進捗に応じて契約延長をすることがあり、受注金額での判断では実態の契約期間と合わないことが多い。
【0019】
また、レンタル資材は換金可能であり、レンタル料の数十倍の価値があるため、破損・紛失した場合のリスクを受注金額で判断しきることはできない。だからと言って、買取金額をリスクとすると金額が高すぎるため、実務運用には合わない。
【0020】
そこで、本実施形態においては、例えば、与信管理を行う際、発生した債権のみではなく今後発生予定の受注残も含んで債権残高として与信リスク管理を行う場合に、レンタル契約については、受注(契約)金額を受注残とした与信管理をするのではなく、貸出中のレンタル資材の価値に合った債権残高を設定する与信管理を可能とした。
【0021】
具体的には、レンタル契約については、貸出資材の価値を簡易的に計算したレンタル料のNヵ月分をレンタル債権として取り扱いできる仕組みを構築した。なお、「Nヵ月」は、導入会社毎のレンタル料の取り決めから設定可能とした。
【0022】
また、本実施形態においては、例えば、以下の1~3の金額をリアルタイムで計算可能とすることで、債権残高を迅速に算出できるようにした。
1.受注入力における販売受注残金額
2.レンタル出庫入力およびレンタル入庫入力における貸出残金額
3.売上入力およびレンタル売上計上における売掛残金額
なお、リアルタイムで計算した状況は、与信管理集計表と各入力にて確認可能とし、請求先マスタの設定により入力チェックを行うことを可能とした。
【0023】
このように、貸出中のレンタル資材の価値に合った金額の計算をする仕組みにより、貸出延長が多く発生するレンタルの債権に対して、将来における与信リスクを低減させることに成功した。つまり、本実施形態においては、通常の物販と異なり、長期間のリスク管理が必要となるレンタル品について、リスク管理を適切に行えるようにした。
【0024】
そして、本実施形態においては、例えば、レンタル計算を行わないと把握できないレンタル債権に対して、与信枠消化率をリアルタイムに計算し、状況を確認可能とした。更に、本実施形態においては、例えば、見積時および受注時のレンタル貸出可能量を瞬時に確認可能とした。
【0025】
参考までに、従来例の与信管理および本実施形態の与信管理のイメージを、
図2に示す。従来例においては、レンタル品の与信リスクを「受注金額」で捉えていたため、レンタル品の貸出期間が延長された場合に、与信リスクを検知できない部分(
図2においてドット状のハッチングで示す部分)が存在した。これに対して、本実施形態においては、
図2の「+貸出残(設定によりNヵ月分のレンタル料を貸出残と判断する)」の行に示すように、レンタル品の与信リスクを「受注金額」ではなく「貸出残」で捉えるため、与信リスクを、レンタル品の入庫まで間なく検知することができる。以下、具体的な構成および動作について説明する。
【0026】
[2.構成]
本実施形態に係る与信管理装置100の構成の一例について、
図1を参照して説明する。
図1は、与信管理装置100の構成の一例を示すブロック図である。
【0027】
与信管理装置100は、市販のデスクトップ型パーソナルコンピュータである。なお、与信管理装置100は、デスクトップ型パーソナルコンピュータのような据置型情報処理装置に限らず、市販されているノート型パーソナルコンピュータ、PDA(Personal Digital Assistants)、スマートフォン、タブレット型パーソナルコンピュータなどの携帯型情報処理装置であってもよい。
【0028】
与信管理装置100は、制御部102と通信インターフェース部104と記憶部106と入出力インターフェース部108と、を備えている。与信管理装置100が備えている各部は、任意の通信路を介して通信可能に接続されている。
【0029】
通信インターフェース部104は、ルータ等の通信装置および専用線等の有線または無線の通信回線を介して、与信管理装置100をネットワーク300に通信可能に接続する。通信インターフェース部104は、他の装置と通信回線を介してデータを通信する機能を有する。ここで、ネットワーク300は、与信管理装置100とサーバ200とを相互に通信可能に接続する機能を有し、例えばインターネットやLAN(Local Area Network)等である。なお、後述する各種マスタ等のデータは、例えばサーバ200に格納されてもよい。
【0030】
入出力インターフェース部108には、入力装置112および出力装置114が接続されている。出力装置114には、モニタ(家庭用テレビを含む)の他、スピーカやプリンタを用いることができる。入力装置112には、キーボード、マウス、及びマイクの他、マウスと協働してポインティングデバイス機能を実現するモニタを用いることができる。なお、以下では、出力装置114をモニタ114とし、入力装置112をキーボード112またはマウス112として記載する場合がある。
【0031】
記憶部106には、各種のデータベース、テーブルおよびファイルなどが格納される。記憶部106には、OS(Operating System)と協働してCPU(Central Processing Unit)に命令を与えて各種処理を行うためのコンピュータプログラムが記録される。記憶部106として、例えば、RAM(Random Access Memory)・ROM(Read Only Memory)等のメモリ装置、ハードディスクのような固定ディスク装置、フレキシブルディスク、および光ディスク等を用いることができる。
【0032】
記憶部106は、例えば、限度額管理マスタとしての請求先マスタ106aと、契約区分マスタ106bと、月数管理マスタとしての基本情報マスタ106cと、受注データ106dと、出庫データ106eと、入庫データ106fと、売上データ106gと、入金データ106hと、売掛残高データ106iと、を備えている。
【0033】
請求先マスタ106aは、
図3および
図5に示すように、例えば、請求先コードと、請求先名と、与信限度額管理区分と、与信限度額と、等を含む。
【0034】
前記与信限度額管理区分は、算出した債権残高が前記与信限度額を上回る場合にメッセージを表示しない旨を示す区分(0:無し)、当該上回る場合に警告メッセージを表示する旨を示す区分(1:警告のみ)、または、当該上回る場合に入力不可メッセージを表示する旨を示す区分(2:入力不可)である。
【0035】
契約区分マスタ106bは、
図3および
図5に示すように、例えば、契約区分と、契約区分名と、レンタルフラグと、等を含む。
【0036】
前記レンタルフラグは、商品がレンタル品であることを示す区分(1:レンタル契約区分)、または、商品が販売品であることを示す区分(0:通常契約区分)である。前記契約区分は、日極を示す区分(K01)、月極を示す区分(K02)、または、販売を示す区分(K10)である。つまり、商品として、前記レンタル品と前記販売品とが存在し、前記レンタル品については、レンタルの態様として、日極と月極が存在する。
【0037】
基本情報マスタ106cは、
図3および
図5に示すように、例えば、会計年月と、出庫した前記レンタル品のうち未入庫分に相当する分の債権額であるレンタル貸出残金額を算出するための月数(レンタル貸出残計算月数)と、当該レンタル貸出残金額を算出するための日数(月極日割日数)と、等を含む。
【0038】
ここで、前記月数(レンタル貸出残計算月数)の設定の仕方について説明する。前記月数(レンタル貸出残計算月数)は、例えば、前記レンタル品の購入原価および前記レンタル品の月額レンタル料に基づいて算出ことができる。例えば、ある商品の購入原価が80,000円であり、月額レンタル料が4,000円であるとすると、前記月数(レンタル貸出残計算月数)は、80,000円÷4,000円という計算により、20月と算出することができる。
【0039】
前記月数(レンタル貸出残計算月数)は、会社により考え方が異なるが、各社主軸レンタル商品の月極レンタル金額の算出において、レンタル資材の購入原価に対して、何か月分とするかにより決定しておりその月数を設定してもよい。例えば、販売価格160,000円、購入原価80,000円の商品を、月極レンタル金額4,000円として購入原価の20か月で計算している場合、20か月を設定可能である。
【0040】
受注データ106dは、
図3および
図6に示すように、例えば、受注番号と、受注行番号と、受注日と、前記請求先コードと、前記請求先名と、品名と、前記契約区分と、受注数量と、レンタル日数(日数)と、受注単価(受注本体単価)と、受注金額(受注本体金額)と、受注消費税と、受注税込金額と、売上数量と、売上完了フラグと、等を含む。
【0041】
後述する売上データ106g中の受注番号と受注行番号をキーとして、受注データ106d中の売上数量を加算更新することができる。そして、受注データ106dにおいて、受注数量=当該加算更新後の売上数量となった場合には、受注データ106d中の前記売上完了フラグが、「0:未完了」から「1:完了」に更新される。なお、前記売上完了フラグの更新処理は、受注データ106dにおいて、前記契約区分と紐付く契約区分マスタ106b中の前記レンタルフラグが「0:通常契約区分」となっている受注明細のみを対象として行う。
【0042】
出庫データ106eは、
図3および
図7に示すように、例えば、出庫番号と、出庫行番号と、出庫日と、前記請求先コードと、前記請求先名と、前記品名と、前記契約区分と、前記レンタル品の出庫数量と、前記レンタル品の入庫数量と、入庫完了フラグと、前記受注番号と、前記受注行番号と、等を含む。
【0043】
出庫データ106eを生成するための出庫入力においては、受注データ106dにおいて、前記契約区分と紐付く契約区分マスタ106b中の前記レンタルフラグが「1:レンタル契約区分」となっている受注明細のみを対象として、出庫数量の入力を行う。
【0044】
また、後述する入庫データ106f中の出庫番号と出庫行番号をキーとして、出庫データ106e中の入庫数量を加算更新することができる。そして、出庫データ106eにおいて、出庫数量=当該加算更新後の入庫数量となった場合には、出庫データ106e中の前記入庫完了フラグが、「0:未完了」から「1:完了」に更新される。
【0045】
入庫データ106fは、
図3および
図7に示すように、例えば、入庫番号と、入庫行番号と、入庫日と、前記請求先コードと、前記請求先名と、前記品名と、前記契約区分と、前記レンタル品の前記入庫数量と、前記出庫番号と、前記出庫行番号と、等を含む。
【0046】
売上データ106gは、
図3および
図8に示すように、例えば、売上番号と、売上行番号と、売上日と、会計年月と、前記請求先コードと、前記請求先名と、前記品名と、前記契約区分と、前記売上数量と、売上日数(日数)と、売上単価(売上本体単価)と、売上金額(売上本体金額)と、売上消費税と、売上税込金額と、前記受注番号と、前記受注行番号と、前記出庫番号と、前記出庫行番号と、等を含む。
【0047】
前記販売品についての売上データ106gを生成するための売上入力においては、受注データ106dにおいて、前記契約区分と紐付く契約区分マスタ106b中の前記レンタルフラグが「0:通常契約区分」となっている受注明細のみを対象として、売上数量の入力を行う。
【0048】
前記レンタル品についての売上データ106gを生成するためのレンタル売上計上処理においては、受注データ106dにおいて、前記契約区分と紐付く契約区分マスタ106b中の前記レンタルフラグが「1:レンタル契約区分」となっている受注明細のみを対象として、売上数量の入力を行う。
【0049】
入金データ106hは、
図3および
図9に示すように、例えば、入金番号と、前記請求先コードと、前記請求先名と、会計年月と、入金日と、入金金額と、等を含む。
【0050】
売掛残高データ106iは、
図3および
図9に示すように、例えば、前記請求先コードと、会計年月と、前月売掛残高と、当月入金金額と、当月売上金額と、売掛残高(当月売掛残高)と、等を含む。
【0051】
制御部102は、与信管理装置100を統括的に制御するCPU等である。制御部102は、OS等の制御プログラム・各種の処理手順等を規定したプログラム・所要データなどを格納するための内部メモリを有し、格納されているこれらのプログラムに基づいて種々の情報処理を実行する。
【0052】
制御部102は、機能概念的に、例えば、(1)受注残金額算出手段としての受注残金額算出部102aと、(2)前記出庫データ中の前記出庫数量から前記出庫データ中の前記入庫数量を減じた値と、前記レンタル品の受注単価と、前記月数管理マスタ中の前記月数と、に基づいて前記レンタル貸出残金額を算出する貸出残金額算出手段としての貸出残金額算出部102bと、(3)売掛残高抽出手段としての売掛残高抽出部102cと、(4)受注残金額と、前記貸出残金額算出手段で算出した前記レンタル貸出残金額と、売掛残高と、に基づいて債権残高を算出する債権残高算出手段としての債権残高算出部102dと、(5)前記限度額管理マスタから、与信限度額を取得する与信限度額取得手段としての与信限度額取得部102eと、(6)前記債権残高算出手段で算出した前記債権残高が、前記与信限度額取得手段で取得した前記与信限度額を上回る場合に所定のメッセージを表示するメッセージ表示手段としてのメッセージ表示部102fと、(7)前記与信管理集計表生成手段は、前記債権残高算出手段で算出した前記債権残高と、前記与信限度額取得手段で取得した前記与信限度額と、を含む与信管理集計表を生成する与信管理集計表生成手段としての与信管理集計表生成部102gと、を備えている。
【0053】
受注残金額算出部102aは、受注データ106d中の前記受注数量から受注データ106d中の前記売上数量を減じた値と、前記販売品の前記受注単価(受注本体単価)と、に基づいて前記受注残金額を算出する。
【0054】
貸出残金額算出部102bは、出庫データ106e中の前記出庫数量から出庫データ106e中の前記入庫数量を減じた値と、前記レンタル品の前記受注単価(受注本体単価)と、基本情報マスタ106c中の前記月数(レンタル貸出残計算月数)と、に基づいて前記レンタル貸出残金額を算出する。
【0055】
具体的には、前記レンタル品が月単位でレンタルするものである(月極である)場合は、貸出残金額算出部102bは、出庫データ106e中の前記出庫数量から出庫データ106e中の前記入庫数量を減じた値に、前記レンタル品を1月レンタルする場合の前記受注単価(受注本体単価)と基本情報マスタ106c中の前記月数(レンタル貸出残計算月数)とを乗じることにより、前記レンタル貸出残金額を算出する。
【0056】
一方で、前記レンタル品が日単位でレンタルするものである(日極である)場合は、貸出残金額算出部102bは、出庫データ106e中の前記出庫数量から出庫データ106e中の前記入庫数量を減じた値に、前記レンタル品を1日レンタルする場合の前記受注単価(受注本体単価)と基本情報マスタ106c中の前記日数(月極日割日数)と基本情報マスタ106c中の前記月数(レンタル貸出残計算月数)とを乗じることにより、前記レンタル貸出残金額を算出する。
【0057】
売掛残高抽出部102cは、売掛残高データ106iから、前記売掛残高(当月売掛残高)を抽出する。
【0058】
債権残高算出部102dは、前記受注残金額(例えば、受注残金額算出部102aで算出した前記受注残金額)と、貸出残金額算出部102bで算出した前記レンタル貸出残金額と、前記売掛残高(例えば、売掛残高抽出部102cで抽出した前記売掛残高)と、に基づいて前記債権残高を算出する。
【0059】
与信限度額取得部102eは、請求先マスタ106aから、前記与信限度額を取得する。
【0060】
メッセージ表示部102fは、債権残高算出部102dで算出した前記債権残高が、与信限度額取得部102eで取得した前記与信限度額を上回る場合に所定のメッセージを表示する。
【0061】
具体的には、メッセージ表示部102fは、前記上回る場合に受注入力を続行するか否かをオペレータに確認するための警告メッセージ、または、前記上回る場合に受注入力を続行できない旨をオペレータに認識させるための入力不可メッセージを表示する。
【0062】
与信管理集計表生成部102gは、債権残高算出部102dで算出した前記債権残高と、与信限度額取得部102eで取得した前記与信限度額と、を含む与信管理集計表を生成する。
【0063】
与信管理集計表生成部102gは、与信限度額取得部102eで取得した前記与信限度額から債権残高算出部102dで算出した前記債権残高を差し引くことで算出された与信枠未消化額と、当該債権残高を当該与信限度額で割ることにより算出された与信枠消化率と、を更に含む前記与信管理集計表を生成してもよい。
【0064】
[3.処理の具体例]
本項目では、本実施形態に係る処理の具体例について、
図4のフローに沿って、
図5~
図16を参照しつつ説明する。本具体例では、建設資材の販売およびレンタルを行う会社(以下、単に「レンタル会社」という。)が、A社、B社およびC社の3社から受注を受けるという場面を想定している。
【0065】
[3-1.各マスタおよび各データの登録]
(1)各マスタの登録
まず、
図4のフローに示すように、請求先マスタメンテにより請求先マスタ106aが登録され、契約区分マスタメンテにより契約区分マスタ106bが登録され、基本情報マスタメンテにより基本情報マスタ106cが登録される。登録された内容は、
図5に示すとおりである。
【0066】
(2)受注データの登録
次に、
図4のフローに示す受注入力により、受注データ106dが登録される。登録された受注データ106dは、
図6に示すとおりである。
【0067】
図6に示す受注データ106dは、レンタル会社が、A社、B社およびC社の3社すべてから、レンタル商品A、レンタル商品Bおよび販売商品Cを受注したという内容のデータである。レンタル商品Aは日極のレンタルであり、レンタル商品Bは月極のレンタルである。
【0068】
(3)出庫データの登録
次に、
図4のフローに示す出庫入力により、出庫データ106eが登録される。具体的には、まず、受注データ106d中の前記契約区分と紐付く契約区分マスタ106b中の前記レンタルフラグが「1:レンタル契約区分」となっている受注明細が呼び出される。そして、当該呼び出された受注明細に基づいて、出庫データ106eが登録される。登録された出庫データ106eは、
図7に示すとおりである。
【0069】
図7に示す出庫データ106eは、レンタル会社が、B社およびC社に対して、レンタル商品Aおよびレンタル商品Bを出庫したという内容のデータである。
【0070】
(4)入庫データの登録
次に、
図4のフローに示す入庫入力により、入庫データ106fが登録される。具体的には、まず、出庫データ106eが呼び出される。そして、当該呼び出された出庫データ106eに基づいて、入庫データ106fが登録される。登録された入庫データ106fは、
図7に示すとおりである。
【0071】
図7に示す入庫データ106fは、レンタル会社がC社に対して出庫したレンタル商品Aおよびレンタル商品Bが、レンタル会社に入庫した(返却された)という内容のデータである。
【0072】
このように入庫が完了すると、
図7の出庫データ106eにハッチングで示すように、出庫データ106e中の入庫数量が、0から入庫データ106f中の入庫数量(10)に更新され、また、出庫データ106e中の入庫完了フラグが、「0:未完了」から「1:完了」に更新される。
【0073】
(5)レンタル商品についての売上データ106gの登録
次に、
図4のフローに示すレンタル売上計上処理により、レンタル商品についての売上データ106gが登録される。具体的には、まず、受注データ106d中の前記契約区分と紐付く契約区分マスタ106b中の前記レンタルフラグが「1:レンタル契約区分」となっている受注明細が呼び出される。そして、当該呼び出された受注明細、(3)で登録された出庫データ106eおよび(4)で登録された入庫データ106fに基づいて、レンタル商品についての売上データ106gが登録される。レンタル売上計上処理は、請求先の請求締日毎に行われる。登録されたレンタル商品についての売上データ106gは、
図8において、売上番号U00005の2明細および売上番号U00006の2明細である。
【0074】
ここで、売上番号U00005の2明細中の日数31および売上番号U00006の2明細中の日数10の算出の仕方について説明する。
【0075】
売上番号U00005の2明細中のレンタル商品については、2021/12/01に出庫したが、売上日2021/12/31時点で、対応する入庫データ106fが存在しないため、まだ返却されていないこととなる。このため、日数は、出庫日2021/12/01から売上日2021/12/31までの31日となる。
【0076】
これに対して、売上番号U00006の2明細中のレンタル商品については、2021/12/01に出庫し、売上日2021/12/31時点で、対応する入庫データ106f(入庫日2021/12/10)が存在しているため、既に返却されたこととなる。このため、日数は、出庫日2021/12/01から入庫日2021/12/10までの10日となる。
【0077】
(6)販売商品についての売上データ106gの登録
次に、(2)の受注データの登録から続けて、
図4のフローに示す売上入力により、販売商品についての売上データ106gが登録される。具体的には、まず、受注データ106d中の前記契約区分と紐付く契約区分マスタ106b中の前記レンタルフラグが「0:通常契約区分」となっている受注明細が呼び出される。そして、当該呼び出された受注明細に基づいて、販売商品についての売上データ106gが登録される。登録された販売商品についての売上データ106gは、
図8において、売上番号U00002の明細および売上番号U00003の明細である。
【0078】
このように、販売商品についての売上が完了すると、
図6の受注データ106dにハッチングで示すように、受注データ106d中の売上数量が、売上データ106g中の売上数量(10)に更新され、また、受注データ106d中の売上完了フラグが、「0:未完了」から「1:完了」に更新される。
【0079】
(7)入金データの登録
次に、
図4のフローに示す入金入力により、入金データ106hが登録される。登録された入金データ106hは、
図9に示すとおりである。
【0080】
(8)売掛残高データの登録
最後に、
図4のフローに示すレンタル売上計上処理、売上入力および入金入力により、売掛残高データ106iが登録される。
【0081】
売掛残高データ106i中の当月入金金額は、入金データ106h中の入金金額を請求先および会計年月単位で集計した値である。売掛残高データ106i中の当月売上金額は、売上データ106g中の売上税込金額を請求先および会計年月単位で集計した値である。売掛残高データ106i中の当月売掛残高は、「売掛残高データ106i中の前月売掛残高-売掛残高データ106i中の当月入金金額+売掛残高データ106i中の当月売上金額」という計算式により算出された値である。
【0082】
[3-2.債権残高の算出]
次に、債権残高の算出が行われる。債権残高の算出は、受注入力画面において請求先コード等を入力して登録前チェックを行うタイミング、および、与信管理集計表を印刷するタイミング等で行われる。
【0083】
債権残高を算出する前提として、販売受注残金額、レンタル貸出残金額および売掛残高を取得する必要がある。このため、まずはこの3つの金額の取得についてこの順で説明し、最後に、債権残高の算出について説明する。なお、本項目[3-2]で参照するマスタおよびデータは、[3-1]で説明した内容で登録されているものとする。
【0084】
(1)販売受注残金額の取得
図4のフローに「1.受注データの内、受注残(レンタル以外の未売上)の受注残金額を抽出」に示すように、販売受注残金額が算出されて取得される。
【0085】
受注残金額算出部102aは、受注データ106d中の前記契約区分と紐付く契約区分マスタ106b中の前記レンタルフラグが「0:通常契約区分」となっている受注明細のうち、前記売上完了フラグが「0:未完了」となっているものを対象として、販売受注残金額を算出する。
【0086】
具体的には、前段落で述べた条件に該当する受注明細は、
図6の受注データ106dにおいては、受注番号=J00001かつ受注行番号=3の受注明細のみであるため、受注残金額算出部102aは、当該受注明細を対象として、以下の計算を行う。
【0087】
すなわち、受注残金額算出部102aは、「(受注データ106d中の受注数量-受注データ106d中の売上数量)×(受注本体単価)」という計算式により、受注本体金額を算出する。具体的には、受注残金額算出部102aは、
図10に示すように、「(受注数量10-売上数量0)×(受注本体単価100,000円)」という計算式により、受注本体金額1,000,000円を算出する。そして、受注残金額算出部102aは、当該受注本体金額1,000,000円に受注残消費税100,000円を加算することにより、受注残税込金額1,100,000円を算出する。
【0088】
受注残税込金額の対象とした受注明細は、A社についての受注明細であるため、本項目(1)で説明した処理により、A社についての販売受注残金額1,100,000円を取得できたこととなる。
【0089】
(2)レンタル貸出残金額の取得
図4のフローに「2.出庫データの内、貸出残(未入庫の出庫残)から貸出残金額を計算」に示すように、レンタル貸出残金額が算出されて取得される。
【0090】
貸出残金額算出部102bは、出庫データ106e中の出庫明細のうち、前記入庫完了フラグが「0:未完了」となっているものを対象として、レンタル貸出残金額を算出する。
【0091】
具体的には、前段落で述べた条件に該当する出庫明細は、
図7の出庫データ106eにおいては、受注番号=J00002かつ受注行番号=1の出庫明細および受注番号=J00002かつ受注行番号=2の出庫明細であるため、貸出残金額算出部102bは、当該2つの出庫明細を対象として、以下の計算を行う。
【0092】
すなわち、貸出残金額算出部102bは、「(出庫データ106e中の出庫数量-出庫データ106eの入庫数量)×(受注データ106d中の受注本体単価)×(日極の場合には基本情報マスタ106c中の月極日割日数)×(基本情報マスタ106c中のレンタル貸出残計算月数)」という計算式により、レンタル貸出残金額を算出する。月極日割日数を乗じることで、日単位の受注本体単価を1か月単位の受注本体単価に変換することができる。
【0093】
具体的に、受注番号=J00002かつ受注行番号=1の出庫明細(出庫番号=S00002かつ出庫行番号=1の出庫明細)を対象とした計算について説明する。貸出残金額算出部102bは、
図11に示すように、「(出庫数量10-入庫数量0)×(受注本体単価1,000円)×(月極日割日数30日)×(レンタル貸出残計算月数20月)」という計算式により、レンタル貸出残金額6,000,000円を算出する。
【0094】
受注番号=J00002かつ受注行番号=2の出庫明細(出庫番号=S00002かつ出庫行番号=2の出庫明細)を対象とした計算について説明する。貸出残金額算出部102bは、
図11に示すように、「(出庫数量10-入庫数量0)×(受注本体単価20,000円)×(レンタル貸出残計算月数20月)」という計算式により、レンタル貸出残金額4,000,000円を算出する。
【0095】
レンタル貸出残金額の対象とした2つの出庫明細は、ともに、B社についての出庫明細であるため、本項目(2)で説明した処理により、B社についてのレンタル貸出残金額として、6,000,000円+4,000,000円=10,000,000円を取得できたこととなる。
【0096】
(3)売掛残高の取得
図4のフローに「3.売掛残高データの当月債権残を抽出」に示すように、売掛残高が抽出されて取得される。
【0097】
売掛残高抽出部102cは、基本情報マスタ106c中の会計年月をキーとして、売掛残高データ106i中の当月売掛残高を抽出する。
【0098】
具体的には、
図5の基本情報マスタ106cを参照すると、会計年月は202112であるため、売掛残高抽出部102cは、
図9の売掛残高データ106iから、会計年月202112を有する3明細中の当月売掛残高を抽出する。
【0099】
本項目(3)で説明した処理により、
図12に示すように、A社についての当月売掛残高0円、B社についての当月売掛残高1,661,000円およびC社についての当月売掛残高1,430,000円を抽出できたこととなる。
【0100】
(4)債権残高の算出
(1)~(3)の処理の後、請求先別に債権残高が算出される。
【0101】
ここで、(1)~(3)で算出および抽出した値をまとめると、以下のとおりとなる。A社については、販売受注残金額が1,100,000円、レンタル貸出残金額が0円および当月売掛残高が0円である。B社については、販売受注残金額が0円、レンタル貸出残金額が10,000,000円および当月売掛残高が1,661,000円である。C社については、販売受注残金額が0円、レンタル貸出残金額が0円および当月売掛残高が1,430,000円である。
【0102】
この場合、債権残高算出部102dは、A社についての債権残高を1,100,000円+0円+0円=1,100,000円と算出し、B社についての債権残高を0円+10,000,000円+1,661,000円=11,661,000円と算出し、C社についての債権残高を0円+0円+1,430,000円=1,430,000円と算出する。
【0103】
[3-3.与信限度額の取得]
次に、各請求先についての与信限度額が取得される。
【0104】
与信限度額取得部102eは、請求先マスタ106aから、各請求先についての与信限度額をそれぞれ取得する。具体的には、与信限度額取得部102eは、
図5の請求先マスタ106aから、A社についての与信限度額として0円を取得し、B社およびC社についての与信限度額として10,000,000円を取得する。
【0105】
[3-2]で説明した債権残高の算出および[3-3]で説明した与信限度額の取得は、以下の[3-4]で説明する受注入力画面でのチェックおよび以下の[3-5]で説明する与信管理集計表の生成に先立って行うべき共通の処理であるため、[3-2]と[3-3]の処理を併せて、「与信管理共通処理」と言うことができる。
【0106】
[3-2]で説明した債権残高の算出および[3-3]で説明した与信限度額の取得は、どちらが先に行われてもよいし、また、同時並列的に行われてもよい。
【0107】
[3-4.受注入力画面でのチェック]
次に、受注入力画面でのチェックが行われる。
【0108】
まず、オペレータによって、
図13に示すように受注入力画面のヘッダ部分に、受注番号「J00002」、受注日「2021/11/30」および請求先コード「S02:B社」が入力される。
【0109】
当該入力がなされると、
図6の受注データ106dから、受注番号「J00002」、受注日「2021/11/30」および請求先コード「S02:B社」を有する3つの受注明細が取得される。そして、
図13に示すように、当該3つの受注明細が有する情報が、受注入力画面の明細部に表示される。
【0110】
この際、
図13に示すように、受注入力画面の右下に、合計受注本体金額、合計受注消費税および合計受注税込金額も併せて表示される。また、
図13に示すように、受注入力画面の左下に、[3-2]の(4)で算出したB社についての債権残高11,661,000円および[3-3]で取得したB社についての与信限度額10,000,000円も併せて表示される。
【0111】
そして、
図13に示す受注入力画面の表示と併せて、メッセージ表示部102fは、債権残高が与信限度額を上回る場合には、警告メッセージまたは入力不可メッセージを表示する。
図13に示す例では、B社についての債権残高11,661,000円は、B社についての与信限度額10,000,000円を上回っているため、以下で説明するメッセージが表示されることとなる。
【0112】
図5の請求先マスタ106aを参照すると、B社については、前記与信限度額管理区分として「1:警告のみ」が設定されているため、メッセージ表示部102fは、
図14に示すように、警告メッセージ(与信限度額を上回っています。入力を続行しますか?)を表示する。警告メッセージが表示された場合、オペレータは、
図14の警告メッセージの画面における「YES」を選択すれば、受注入力を続行することができる。
【0113】
一方で、
図5の請求先マスタ106aの設定とは異なるが、仮に、B社について、前記与信限度額管理区分として「2:入力不可」が設定されているとすると、メッセージ表示部102fは、
図15に示すように、入力不可メッセージ(与信限度額を上回っています。入力できません。)を表示する。入力不可メッセージが表示された場合、オペレータは、受注入力を続行できない。
【0114】
[3-5.与信管理集計表の生成]
最後に、与信管理集計表の生成が行われる。
【0115】
与信管理集計表生成部102gは、
図16に示すように、請求先コードと、請求先名と、[3-3]で取得した与信限度額と、[3-2]の(1)で算出した販売受注残金額と、[3-2]の(2)で算出したレンタル貸出残金額と、[3-2]の(3)で算出した売掛残高と、[3-2]の(4)で算出した債権残高と、当該与信限度額から当該債権残高を差し引いて算出される与信枠未消化額と、当該債権残高を当該与信限度額で割ることで算出される与信枠消化率と、を含む与信管理集計表を生成する。
【0116】
オペレータは、生成された与信管理集計表を参照することで、各請求先について、販売受注残金額、レンタル貸出残金額および売掛残高の内訳を確認できると共に、与信枠未消化額および与信枠消化率も併せて確認することができる。
【0117】
なお、[3-4]で説明した受注入力画面でのチェックおよび[3-5]で説明した与信管理集計表の生成は、どちらが先に行われてもよいし、また、同時並列的に行われてもよい。
【0118】
[4.本実施形態のまとめ]
以上説明してきたように、本実施形態に係る与信管理装置100によれば、月額レンタル料のNヵ月分をレンタル品についての債権残高とすることで、レンタル品の価値を適切に考慮した与信管理を行うことができる。
【0119】
具体的には、従来においては、レンタル品の受注金額をレンタル品についての債権残高とすると低すぎるため、また逆に、レンタル品の買取金額をレンタル品についての債権残高とすると高すぎるため、レンタル品についての債権残高を適切に評価できていないという問題があった。これに対して、本実施形態に係る与信管理装置100においては、[3-2]の(2)で説明したように、レンタル品の月額レンタル料の20ヵ月分をレンタル品についての債権残高(レンタル貸出残金額)とすることで、レンタル品についての債権残高を適切に評価できるようにした。そして、本実施形態に係る与信管理装置100によれば、当該レンタル貸出残金額に基づいて[3-2]の(4)で算出した債権残高を用いて、[3-4]で説明した受注入力画面でのチェックおよび[3-5]で説明した与信管理集計表の生成を行うことができるため、レンタル品についての債権残高を適切に評価した状態で、与信管理を行うことが可能となる。つまり、レンタル品が存在する場合であっても、精度の高い与信管理を行うことが可能となる。
【0120】
[5.国連が主導する持続可能な開発目標(SDGs)への貢献]
本実施形態により、業務効率化や企業の適切な経営判断を推進することに寄与することができるので、SDGsの目標8及び9に貢献することが可能となる。
【0121】
また、本実施形態により、廃棄ロス削減や、ペーパレス・電子化を推進することに寄与することができるので、SDGsの目標12、13及び15に貢献することが可能となる。
【0122】
また、本実施形態により、統制、ガバナンス強化に寄与することができるので、SDGsの目標16に貢献することが可能となる。
【0123】
[6.他の実施形態]
本発明は、上述した実施形態以外にも、特許請求の範囲に記載した技術的思想の範囲内において種々の異なる実施形態にて実施されてよいものである。
【0124】
例えば、実施形態において説明した各処理のうち、自動的に行われるものとして説明した処理の全部または一部を手動的に行うこともでき、あるいは、手動的に行われるものとして説明した処理の全部または一部を公知の方法で自動的に行うこともできる。
【0125】
また、本明細書中や図面中で示した処理手順、制御手順、具体的名称、各処理の登録データや検索条件等のパラメータを含む情報、画面例、データベース構成については、特記する場合を除いて任意に変更することができる。
【0126】
また、与信管理装置100に関して、図示の各構成要素は機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。
【0127】
例えば、与信管理装置100が備える処理機能、特に制御部にて行われる各処理機能については、その全部または任意の一部を、CPUおよび当該CPUにて解釈実行されるプログラムにて実現してもよく、また、ワイヤードロジックによるハードウェアとして実現してもよい。尚、プログラムは、本実施形態で説明した処理を情報処理装置に実行させるためのプログラム化された命令を含む一時的でないコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録されており、必要に応じて与信管理装置100に機械的に読み取られる。すなわち、ROMまたはHDD(Hard Disk Drive)などの記憶部などには、OSと協働してCPUに命令を与え、各種処理を行うためのコンピュータプログラムが記録されている。このコンピュータプログラムは、RAMにロードされることによって実行され、CPUと協働して制御部を構成する。
【0128】
また、このコンピュータプログラムは、与信管理装置100に対して任意のネットワークを介して接続されたアプリケーションプログラムサーバに記憶されていてもよく、必要に応じてその全部または一部をダウンロードすることも可能である。
【0129】
また、本実施形態で説明した処理を実行するためのプログラムを、一時的でないコンピュータ読み取り可能な記録媒体に格納してもよく、また、プログラム製品として構成することもできる。ここで、この「記録媒体」とは、メモリーカード、USB(Universal Serial Bus)メモリ、SD(Secure Digital)カード、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、EPROM(Erasable Programmable Read Only Memory)、EEPROM(登録商標)(Electrically Erasable and Programmable Read Only Memory)、CD-ROM(Compact Disk Read Only Memory)、MO(Magneto-Optical disk)、DVD(Digital Versatile Disk)、および、Blu-ray(登録商標) Disc等の任意の「可搬用の物理媒体」を含むものとする。
【0130】
また、「プログラム」とは、任意の言語または記述方法にて記述されたデータ処理方法であり、ソースコードまたはバイナリコード等の形式を問わない。なお、「プログラム」は必ずしも単一的に構成されるものに限られず、複数のモジュールやライブラリとして分散構成されるものや、OSに代表される別個のプログラムと協働してその機能を達成するものをも含む。なお、実施形態に示した各装置において記録媒体を読み取るための具体的な構成および読み取り手順ならびに読み取り後のインストール手順等については、周知の構成や手順を用いることができる。
【0131】
記憶部に格納される各種のデータベース等は、RAM、ROM等のメモリ装置、ハードディスク等の固定ディスク装置、フレキシブルディスク、および、光ディスク等のストレージ手段であり、各種処理やウェブサイト提供に用いる各種のプログラム、テーブル、データベース、および、ウェブページ用ファイル等を格納する。
【0132】
また、与信管理装置100は、既知のパーソナルコンピュータまたはワークステーション等の情報処理装置として構成してもよく、また、任意の周辺装置が接続された当該情報処理装置として構成してもよい。また、与信管理装置100は、当該装置に本実施形態で説明した処理を実現させるソフトウェア(プログラムまたはデータ等を含む)を実装することにより実現してもよい。
【0133】
更に、装置の分散・統合の具体的形態は図示するものに限られず、その全部または一部を、各種の付加等に応じてまたは機能負荷に応じて、任意の単位で機能的または物理的に分散・統合して構成することができる。すなわち、上述した実施形態を任意に組み合わせて実施してもよく、実施形態を選択的に実施してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0134】
本発明は、レンタル業を営む業界において有用であり、例えば、建設資材をレンタルする業界において有用である。
【符号の説明】
【0135】
100 与信管理装置
102 制御部
102a 受注残金額算出部
102b 貸出残金額算出部
102c 売掛残高抽出部
102d 債権残高算出部
102e 与信限度額取得部
102f メッセージ表示部
102g 与信管理集計表生成部
104 通信インターフェース部
106 記憶部
106a 請求先マスタ
106b 契約区分マスタ
106c 基本情報マスタ
106d 受注データ
106e 出庫データ
106f 入庫データ
106g 売上データ
106h 入金データ
106i 売掛残高データ
108 入出力インターフェース部
112 入力装置
114 出力装置
200 サーバ
300 ネットワーク