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特許7590381車両用表示装置の調整方法、および車両用表示装置の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-18
(45)【発行日】2024-11-26
(54)【発明の名称】車両用表示装置の調整方法、および車両用表示装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   G09G 5/00 20060101AFI20241119BHJP
   G09G 3/20 20060101ALI20241119BHJP
   G02B 27/01 20060101ALI20241119BHJP
   B60K 35/23 20240101ALI20241119BHJP
   G09G 5/38 20060101ALI20241119BHJP
【FI】
G09G5/00 510A
G09G5/00 550X
G09G5/00 555T
G09G3/20 680B
G02B27/01
B60K35/23
G09G5/38
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2022133745
(22)【出願日】2022-08-25
(65)【公開番号】P2024030694
(43)【公開日】2024-03-07
【審査請求日】2024-01-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】弁理士法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】志白 純
【審査官】塚本 丈二
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-015166(JP,A)
【文献】特開2005-053397(JP,A)
【文献】特開2012-163883(JP,A)
【文献】特開2016-124543(JP,A)
【文献】特開2019-138963(JP,A)
【文献】特開2015-075381(JP,A)
【文献】特表2012-507426(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0169612(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第114253637(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09G 5/00-5/42
G09G 3/20
G02B 27/01
B60K 35/23
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウインドシールドへの画像の投影位置を上下方向に変更可能な車両用表示装置に対して、前記車両用表示装置が車両に搭載される前に第一の検査を行なって第一補正値を算出し、前記第一補正値を前記車両用表示装置の不揮発性メモリに書き込む工程と、
前記車両用表示装置に対して第二の検査を行なって第二補正値を算出し、前記第二補正値を前記車両用表示装置の不揮発性メモリに書き込む工程と、
を含み、
前記第一補正値および前記第二補正値は、正規の位置に対する画像横方向の位置ずれを低減させるように、前記車両用表示装置の表示デバイスに対して画像横方向の表示位置を補正させる値であり、
前記第一の検査では、前記車両用表示装置は検査台に設置されて検査用のウインドシールドに対して画像を投影し、前記第一補正値は、前記検査用のウインドシールドへの画像の投影位置を上下方向に変化させたときの画像横方向の位置ずれに基づいて算出され、
前記第二の検査では、前記車両用表示装置は車両に設置されて前記車両のウインドシールドに対して画像を投影し、前記第二補正値は、前記車両のウインドシールドへの画像の投影位置を上下方向に変化させたときの画像横方向の位置ずれに基づいて算出され、
前記第二の検査において、前記表示デバイスは、前記第一補正値による表示位置の補正がなされた画像を表示する
ことを特徴とする車両用表示装置の調整方法。
【請求項2】
前記車両において前記車両用表示装置の交換がなされる場合、前記車両から取り外される前記車両用表示装置の前記第二補正値が前記車両に取り付けられる新たな前記車両用表示装置の前記不揮発性メモリに移行され、
新たな前記車両用表示装置の前記表示デバイスは、前記第二の検査において、移行された前記第二補正値による表示位置の補正がなされた画像を表示する
請求項1に記載の車両用表示装置の調整方法。
【請求項3】
車両用表示装置の製造方法であって、
前記車両用表示装置の不揮発性メモリに第一補正値を書き込む工程と、
前記車両用表示装置の不揮発性メモリに第二補正値を書き込む工程と、
を含み、
前記車両用表示装置は、車両に搭載され、かつウインドシールドへの画像の投影位置を上下方向に変更可能な画像表示ユニットを備え、
前記画像表示ユニットは、
画像を表示する表示デバイスと、
前記画像の表示光をウインドシールドに向けて反射するミラーと、
前記第一補正値および前記第二補正値を記憶する不揮発性メモリと、
前記表示デバイスを制御する制御部と、
を有し、
前記制御部は、ウインドシールドに対する画像の上下方向の投影位置に応じて、前記第一補正値および前記第二補正値に基づいて前記表示デバイスにおける画像横方向の表示位置を補正し、
前記第一補正値は、前記車両に搭載されていない単体の前記画像表示ユニットに対する検査結果に基づく補正値であり、
前記第二補正値は、前記車両に搭載された前記画像表示ユニットに対する検査結果に基づく補正値であって、かつ前記第一補正値による表示位置の補正がなされた前記画像表示ユニットに対する検査結果に基づく
ことを特徴とする車両用表示装置の製造方法
【請求項4】
ウインドシールドへの画像の投影位置を上下方向に変更可能な車両用表示装置に対して第一の検査を行なって第一補正値を算出し、前記第一補正値を前記車両用表示装置の不揮発性メモリに書き込む工程と、
前記車両用表示装置に対して第二の検査を行なって第二補正値を算出し、前記第二補正値を前記車両用表示装置の不揮発性メモリに書き込む工程と、
を含み、
前記第一補正値および前記第二補正値は、正規の位置に対する画像横方向の位置ずれを低減させるように、前記車両用表示装置の表示デバイスに対して画像横方向の表示位置を補正させる値であり、
前記第一の検査では、前記車両用表示装置は検査台に設置されて検査用のウインドシールドに対して画像を投影し、前記第一補正値は、前記検査用のウインドシールドへの画像の投影位置を上下方向に変化させたときの画像横方向の位置ずれに基づいて算出され、
前記第二の検査では、前記車両用表示装置は車両に設置されて前記車両のウインドシールドに対して画像を投影し、前記第二補正値は、前記車両のウインドシールドへの画像の投影位置を上下方向に変化させたときの画像横方向の位置ずれに基づいて算出され、
前記第二の検査において、前記表示デバイスは、前記第一補正値による表示位置の補正がなされた画像を表示し、
前記車両において前記車両用表示装置の交換がなされる場合、前記車両から取り外される前記車両用表示装置の前記第二補正値が前記車両に取り付けられる新たな前記車両用表示装置の前記不揮発性メモリに移行され、
新たな前記車両用表示装置の前記表示デバイスは、前記第二の検査において、移行された前記第二補正値による表示位置の補正がなされた画像を表示する
ことを特徴とする車両用表示装置の調整方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用表示装置の調整方法、および車両用表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、虚像の表示状態の調整を行なう技術がある。特許文献1には、画像出力器の画面に沿ったX方向およびY方向のそれぞれに画像出力器の位置を変更して、当該画像出力器と光学系との相対位置を調整することにより、位置ずれを補正するヘッドアップディスプレイ装置の製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-218346号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
車両用表示装置において、画像横方向の位置ずれを効率よく調整できることが望ましい。例えば、部品位置や筐体の据え付け状態を調整する等の機械的な手段によって位置ずれを調整する場合、調整工程における作業手順が複雑となりやすい。車両用表示装置において、画像横方向の位置ずれを効率よく調整できることが望まれている。
【0005】
本発明の目的は、画像横方向の位置ずれを効率よく調整できる車両用表示装置の調整方法、および車両用表示装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の車両用表示装置の調整方法は、ウインドシールドへの画像の投影位置を上下方向に変更可能な車両用表示装置に対して第一の検査を行なって第一補正値を算出し、前記第一補正値を前記車両用表示装置の不揮発性メモリに書き込む工程と、前記車両用表示装置に対して第二の検査を行なって第二補正値を算出し、前記第二補正値を前記車両用表示装置の不揮発性メモリに書き込む工程と、を含み、前記第一補正値および前記第二補正値は、正規の位置に対する画像横方向の位置ずれを低減させるように、前記車両用表示装置の表示デバイスに対して画像横方向の表示位置を補正させる値であり、前記第一の検査では、前記車両用表示装置は検査台に設置されて検査用のウインドシールドに対して画像を投影し、前記第一補正値は、前記検査用のウインドシールドへの画像の投影位置を上下方向に変化させたときの画像横方向の位置ずれに基づいて算出され、前記第二の検査では、前記車両用表示装置は車両に設置されて前記車両のウインドシールドに対して画像を投影し、前記第二補正値は、前記車両のウインドシールドへの画像の投影位置を上下方向に変化させたときの画像横方向の位置ずれに基づいて算出され、前記第二の検査において、前記表示デバイスは、前記第一補正値による表示位置の補正がなされた画像を表示することを特徴とする。
【0007】
本発明の車両用表示装置は、車両に搭載され、かつウインドシールドへの画像の投影位置を上下方向に変更可能な画像表示ユニットを備え、前記画像表示ユニットは、画像を表示する表示デバイスと、前記画像の表示光をウインドシールドに向けて反射するミラーと、第一補正値および第二補正値を記憶する不揮発性メモリと、前記表示デバイスを制御する制御部と、を有し、前記制御部は、ウインドシールドに対する画像の上下方向の投影位置に応じて、前記第一補正値および前記第二補正値に基づいて前記表示デバイスにおける画像横方向の表示位置を補正し、前記第一補正値は、前記車両に搭載されていない単体の前記画像表示ユニットに対する検査結果に基づく補正値であり、前記第二補正値は、前記車両に搭載された前記画像表示ユニットに対する検査結果に基づく補正値であって、かつ前記第一補正値による表示位置の補正がなされた前記画像表示ユニットに対する検査結果に基づくことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る車両用表示装置の調整方法は、検査台で第一の検査を行なって第一補正値を算出し、不揮発性メモリに書き込む工程と、車両で第二の検査を行なって第二補正値を算出し、不揮発性メモリに書き込む工程と、を含む。本発明に係る車両用表示装置は、車両に搭載されていない単体の画像表示ユニットに対する検査結果に基づく第一補正値、および車両に搭載された画像表示ユニットに対する検査結果に基づく第二補正値が不揮発性メモリに記憶されている。本発明に係る車両用表示装置の調整方法および車両用表示装置によれば、画像横方向の位置ずれを効率よく調整できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、実施形態に係る車両用表示装置を示す図である。
図2図2は、画像横方向の位置ずれについての説明図である。
図3図3は、実施形態の第一調整工程の説明図である。
図4図4は、実施形態の調整工程に係るフローチャートである。
図5図5は、実施形態の第一調整工程の説明図である。
図6図6は、実施形態の第二調整工程の説明図である。
図7図7は、実施形態の第一補正値および第二補正値の説明図である。
図8図8は、実施形態の表示領域を示す図である。
図9図9は、実施形態の表示領域を示す図である。
図10図10は、実施形態の表示領域を示す図である。
図11図11は、表示位置の調整についての説明図である。
図12図12は、表示位置の調整についての説明図である。
図13図13は、画像表示ユニットの交換についての説明図である。
図14図14は、実施形態の第1変形例に係る表示デバイスを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明の実施形態に係る車両用表示装置の調整方法、および車両用表示装置につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記の実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるものあるいは実質的に同一のものが含まれる。
【0011】
[実施形態]
図1から図13を参照して、実施形態について説明する。本実施形態は、車両用表示装置の調整方法、および車両用表示装置に関する。図1は、実施形態に係る車両用表示装置を示す図、図2は、画像横方向の位置ずれについての説明図、図3および図5は、実施形態の第一調整工程の説明図、図4は、実施形態の調整工程に係るフローチャート、図6は、実施形態の第二調整工程の説明図、図7は、実施形態の第一補正値および第二補正値の説明図、図8から図10は、実施形態の表示領域を示す図である。図11および図12は、表示位置の調整についての説明図、図13は、画像表示ユニットの交換についての説明図である。
【0012】
図1に示すように、本実施形態に係る車両用表示装置1は、自動車等の車両100に搭載されるヘッドアップディスプレイ装置である。車両用表示装置1は、画像の表示光Ltをウインドシールド110に向けて投影する。ウインドシールド110は、車両100のアイポイントEPに対して車両前方に位置しており、かつ車両前後方向XにおいてアイポイントEPと対向している。表示光Ltは、ウインドシールド110の反射面110aによってアイポイントEPに向けて反射される。車両100のドライバは、表示光Ltによって虚像Viを視認することができる。
【0013】
本実施形態の車両用表示装置1は、ウインドシールド110への画像の投影位置を上下方向に変更可能である。車両用表示装置1は、アイポイントEPの位置に応じてウインドシールド110に対する画像の投影位置を上下させる。アイポイントEPは、ドライバの目の位置であり、例えば、車両用表示装置1のカメラ11を用いて検出される。例示されたカメラ11は、運転席に対して車両前方に配置されており、ドライバを撮像できるように設置されている。アイポイントEPは、カメラ11によって生成された画像に対する画像認識によって検出される。
【0014】
車両用表示装置1は、車両100に搭載される画像表示ユニット10を有する。画像表示ユニット10は、筐体2、表示デバイス3、ミラー4、制御部5、不揮発性メモリ6、およびモータ7を有する。筐体2は、例えば、インストルメントパネルの内部に配置される。筐体2は、ウインドシールド110に対向する開口を有している。表示デバイス3、ミラー4、制御部5、不揮発性メモリ6、およびモータ7は、筐体2の内部に収容される。
【0015】
表示デバイス3は、画像を表示する装置であり、例えば、液晶表示装置である。表示デバイス3は、TFT-LCD(Thin Film Transistor-Liquid Crystal Display)であってもよい。表示デバイス3は、例えば、バックライトユニットの光によって表示光Ltを出力する。
【0016】
ミラー4は、画像の表示光Ltをウインドシールド110に向けて反射する。ミラー4によって反射された表示光Ltは、筐体2の開口を通過してウインドシールド110の反射面110aに投影される。ミラー4は、凹状の反射面4aを有しており、画像を拡大することができる。反射面4aの形状は、例えば、自由曲面である。反射面4aの形状は、画像の歪みや収差を補正する形状であってもよい。
【0017】
本実施形態の画像表示ユニット10は、ミラー4を回動させるモータ7を有する。ミラー4は、回動可能に支持されている。ミラー4の回転方向は、図1に矢印AR1で示すように、車両上下方向Zに対する反射面4aの傾斜角度θを変化させる方向である。ミラー4の傾斜角度θが大きくなると、ウインドシールド110への画像の投影位置が下方に移動する。一方、ミラー4の傾斜角度θが小さくなると、ウインドシールド110への画像の投影位置が上方に移動する。
【0018】
モータ7は、ミラー4を回動させることにより、反射面4aの傾斜角度θを所望の角度に調整する。モータ7は、例えば、ステッピングモータである。モータ7は、制御部5によって出力される指令値によって駆動される。指令値は、モータ7の回転方向およびステップ数を含む。
【0019】
制御部5は、表示デバイス3およびモータ7を制御する。制御部5は、例えば、演算部、メモリ、通信インターフェース等を含むコンピュータである。制御部5は、例えば、予め記憶しているプログラムに従ってモータ7を制御する。また、制御部5は、予め記憶しているプログラム、および不揮発性メモリ6から読み込んだ第一補正値および第二補正値に基づいて表示デバイス3を制御する。
【0020】
本実施形態の制御部5は、アイポイントEPの位置に基づいて、自動的に画像の投影位置を調節する。カメラ11の撮像結果に基づくアイポイントEPの検出は、制御部5によって実行されてもよく、他の処理部によって実行されてもよい。なお、制御部5は、外部からの指令によって画像の投影位置を変更することもできる。例えば、制御部5は、ドライバの操作入力に応じて投影位置を変更することや、検査装置からの指令に応じて投影位置を変更することができる。
【0021】
制御部5は、車両上下方向ZにおけるアイポイントEPの位置に応じて、ミラー4の傾斜角度θの目標値を決定する。図1には、アイポイントEPの上端位置EPu、中央位置EPm、および下端位置EPdが示されている。上端位置EPu、中央位置EPm、および下端位置EPdは、例えば、アイボックスやアイリプスにおける車両上下方向Zの上端位置、中央位置、および下端位置である。
【0022】
制御部5は、アイポイントEPの位置が中央位置EPmである場合、ミラー4の傾斜角度θの目標値を可動範囲の中央値とする。この場合、画像は、ウインドシールド110の位置110mに投影される。位置110mは、画像の投影範囲における上下方向の中央位置である。
【0023】
制御部5は、アイポイントEPの位置が上端位置EPuである場合、ミラー4の傾斜角度θの目標値を最小値とする。この場合、画像は、ウインドシールド110の位置110uに投影される。位置110uは、画像の投影範囲における上端の位置である。また、制御部5は、アイポイントEPの位置が下端位置EPdである場合、ミラー4の傾斜角度θの目標値を最大値とする。この場合、画像は、ウインドシールド110の位置110dに投影される。位置110dは、画像の投影範囲における下端の位置である。
【0024】
ここで、ウインドシールド110に対する画像の投影位置を上下に変化させる場合、画像の位置が画像横方向GHにずれることがある。図2には、画像横方向GHにおける表示位置のずれが示されている。図2において、正規位置Hrは、画像横方向GHにおける正規の表示位置である。言い換えると、正規位置Hrは、投影される画像における画像中心の目標位置である。
【0025】
図2には、画像G1,G2,G3が示されている。画像G1は、位置110uに投影され、かつ上端位置EPuから視認される画像である。画像G2は、位置110mに投影され、かつ中央位置EPmから視認される画像である。画像G3は、位置110dに投影され、かつ下端位置EPdから視認される画像である。
【0026】
図2では、画像G2の画像中心C2は正規位置Hrに位置している。画像G1の画像中心C1は、正規位置Hrに対してアイポイントEPから見て左側にずれている。一方、画像G3の画像中心C3は、正規位置Hrに対してアイポイントEPから見て右側にずれている。このような位置ずれは、画像表示ユニット10における各部の公差による位置ずれや、車両100の側の公差による位置ずれを含む。
【0027】
本実施形態の制御部5は、後述する第一補正値および第二補正値に基づいて表示デバイス3における画像横方向GHの表示位置を補正する。第一補正値は、車両100に搭載されていない単体の画像表示ユニット10に対する検査結果に基づく補正値である。第一補正値による表示位置の補正により、画像表示ユニット10に起因する画像横方向GHの位置ずれがキャンセルされる。第二補正値は、車両100に搭載された画像表示ユニット10に対する検査結果に基づく補正値である。第二補正値による表示位置の補正により、車両100に起因する画像横方向GHの位置ずれがキャンセルされる。
【0028】
本実施形態の車両用表示装置1は、第一補正値および第二補正値を別な補正値として不揮発性メモリ6にそれぞれ独立して記憶している。これにより、以下に説明するように、車両用表示装置1に対する画像横方向GHの位置ずれが効率よく調整可能である。例えば、車両100に画像表示ユニット10を設置するときの調整作業が容易となる。また、画像表示ユニット10が交換されるときの調整作業が容易となる。
【0029】
まず、第一補正値を算出する工程について説明する。以下の説明では、第一補正値を算出して不揮発性メモリ6に書き込む工程を第一調整工程と称する。第一調整工程では、以下に説明する第一の検査によって第一補正値が算出される。
【0030】
図3に示すように、第一調整工程は、検査用のウインドシールド200、ターゲットボード210、検査台220、カメラ230、および制御装置240を含む検査装置を用いて行なわれる。第一調整工程は、例えば、画像表示ユニット10を製造する工場において行なわれる。検査台220は、車両100における画像表示ユニット10の搭載位置を模した台である。ウインドシールド200は、車両100のウインドシールド110と同様に形成された反射面200aを有している。検査台220とウインドシールド200との位置関係は、車両100に搭載された画像表示ユニット10とウインドシールド110との位置関係を再現できるように設定されている。
【0031】
カメラ230は、アイポイントEPから見た画像を撮像する。カメラ230は、三つのカメラ230u,230m,230dを有する。カメラ230uは、車両100の上端位置EPuから見た場合と同様の画像を撮像できるように配置される。同様に、カメラ230m,230dは、車両100の中央位置EPmおよび下端位置EPdから見た場合と同様の画像を撮像できるように配置される。
【0032】
ターゲットボード210は、正規位置Hrに対する画像のずれを検出するために参照される。ターゲットボード210は、ウインドシールド200に対してカメラ230の側とは反対側に配置されている。ターゲットボード210の位置は、例えば、カメラ230から見て画像の背景となる位置である。
【0033】
制御装置240は、画像表示ユニット10およびカメラ230を制御する。制御装置240は、画像表示ユニット10の制御部5に対して指令を送り、ミラー4の傾斜角度θおよび表示デバイス3による画像表示を制御する。また、制御装置240は、カメラ230を制御し、カメラ230によって撮像された検査画像を取得する。
【0034】
図4を参照して、第一調整工程の動作について説明する。ステップS10において、制御装置240は、虚像の上下移動を制御部5に指令する。制御装置240は、例えば、ミラー4の傾斜角度θを上端位置EPuに応じた角度、中央位置EPmに応じた角度、または下端位置EPdに応じた角度とするように制御部5に指令する。
【0035】
図3には、ミラー4の傾斜角度θが中央位置EPmに応じた角度とされた状態が示されている。この状態で、中央位置EPmから見る画像G2の位置ずれが検査される。画像の表示光Ltは、ウインドシールド200の位置200mに投影される。位置200mは、ウインドシールド110の位置110mに対応する位置である。
【0036】
次のステップS20において、制御装置240は、ずれ量の測定を行なう。制御装置240は、位置200mに投影された画像をカメラ230mに撮像させる。画像の背景となるターゲットボード210は、目印210rおよび枠210mを有する。目印210rは、正規位置Hrに対応する印である。例示された目印210rは、画像縦方向GVに沿って延在する直線である。枠210mは、画像G2の正規の表示位置を示す枠状の印である。
【0037】
カメラ230mは、画像G2およびターゲットボード210を撮像する。撮像された検査画像に基づいて、画像横方向GHにおける目印210rおよび枠210mに対する画像G2の位置ずれの有無が検出される。位置ずれの有無および位置ずれの量は、例えば、制御装置240によって判定される。この場合、制御装置240は、カメラ230mから取得した検査画像に対する画像認識により、画像G2の画像中心C2、目印210r、および枠210mをそれぞれ検出する。制御装置240は、画像横方向GHにおける目印210rおよび枠210mに対する画像G2の位置ずれの量を算出する。
【0038】
次のステップS30において、制御装置240は、横ずれの量が規格内であるかを判定する。画像の横ずれには、一定の許容範囲が定められている。ステップS30の判定の結果、ステップS20で検出されたずれ量が規格内の値である場合、肯定判定されてステップS40に進む。一方、ステップS30で否定判定された場合、ステップS50に進む。
【0039】
ステップS40において、制御装置240は、虚像の位置を規定の位置に移動させる。規定の位置は、例えば、中央位置EPmに対応する位置である。ステップS40が実行されると、本フローチャートは一旦終了する。図4のフローチャートは、検査すべき全ての投影位置に対する横ずれの検査が終了するまで繰り返し実行される。
【0040】
ステップS50において、制御装置240は、補正量を演算する。制御装置240は、ステップS20で測定された画像横方向GHのずれ量に基づいて、第一補正値を演算する。第一補正値は、表示デバイス3において第一補正値による表示位置の補正がなされることにより、画像横方向GHにおける位置ずれを減少させるように定められる。第一補正値の大きさは、例えば、検出された位置ずれの大きさに応じて予め定められている。例えば、検出された位置ずれが大きいほど第一補正値が大きくなる。ステップS50が実行されると、ステップS60に進む。
【0041】
ステップS60において、制御装置240は、補正量の書き込みを行なう。制御装置240は、ステップS50で算出された第一補正値を画像表示ユニット10の不揮発性メモリ6に書き込む。なお、制御部5は、第一補正値が確定するまで、第一補正値を内部メモリに一時的に記憶してもよい。ステップS60が実行されると、ステップS10に移行する。
【0042】
図4のフローチャートでは、横ずれの量が規格内の値となるまで、第一補正値の算出および書き込みが繰り返される。例えば、画像G2に対する第一補正値の調整過程では、ステップS60からステップS10に移行すると、画像の投影位置が再び位置110mとされる。ステップS20においてカメラ230mの撮像結果に基づいてずれ量が測定され、ステップS30においてずれ量が規格内の値であるかが確認される。
【0043】
測定された横ずれの量が規格内の値ではない場合、ステップS50において第一補正値が演算される。この場合、現在の第一補正値に対して、横ずれの量を低減させるための調整がなされる。ステップS60では調整後の第一補正値が不揮発性メモリ6に書き込まれる。最終的にずれ量が規格内の値となると、ステップS40に進んで画像G2に対する第一補正値の設定が完了する。
【0044】
図5には、上端位置EPuから見る画像G1のずれを検出する検査が示されている。このときのミラー4の傾斜角度θは、上端位置EPuに対応する角度である。従って、画像の表示光Ltは、ウインドシールド200の位置200uに投影される。位置200uは、ウインドシールド110の位置110uに対応する位置である。ターゲットボード210は、画像G1の正規の表示位置を示す枠210uを有する。カメラ230uは、位置200uに投影された画像を撮像する。つまり、カメラ230uは、画像G1およびターゲットボード210を撮像する。
【0045】
撮像された検査画像に基づいて、画像横方向GHにおける目印210rおよび枠210uに対する画像G1の位置ずれの有無が検出される。制御装置240は、検査画像に対する画像認識により、画像G1の画像中心C1、目印210r、および枠210uをそれぞれ検出する。制御装置240は、画像横方向GHにおける目印210rおよび枠210uに対する画像G1の位置ずれの量を算出する。制御装置240は、このずれ量が規格外の値である場合、上端位置EPuに対する第一補正値を算出して不揮発性メモリ6に書き込む。
【0046】
画像G3の位置ずれの有無および位置ずれの量も同様にして検出される。この場合、ミラー4の傾斜角度θは、下端位置EPdに対応する角度とされる。ターゲットボード210は、画像G3の正規の表示位置を示す枠状の印を有している。制御装置240は、画像横方向GHにおける目印210rおよび枠状の印に対する画像G3の位置ずれの量を算出する。制御装置240は、このずれ量が規格外の値である場合、下端位置EPdに対する第一補正値を算出して不揮発性メモリ6に書き込む。
【0047】
なお、位置ずれの有無および位置ずれの量は、作業者の目視によって確認されてもよい。この場合、表示デバイス3が投影する画像は、画像中心を作業者が目視で確認できるような画像であることが好ましい。作業者は、位置ずれの有無および位置ずれの量を制御装置240に入力する。制御装置240は、入力された位置ずれの量から第一補正値を算出し、第一補正値を不揮発性メモリ6に書き込む。
【0048】
本実施形態では、少なくとも上端位置EPu、中央位置EPm、および下端位置EPdのそれぞれに対して第一補正値が算出される。横ずれの量が規格内であるアイポイントEPに対しては、第一補正値の値が0とされてもよい。
【0049】
制御部5は、不揮発性メモリ6に第一補正値が記憶されている場合、第一補正値に基づいて表示デバイス3における画像横方向GHの表示位置を補正する。これにより、画像表示ユニット10がウインドシールド200に画像を投影する場合、その画像はウインドシールド200の正規位置Hrに投影される。つまり、第一補正値により、画像表示ユニット10に起因する画像横方向GHの位置ずれがキャンセルされる。
【0050】
次に、第二補正値を算出する工程について説明する。以下の説明では、第二補正値を算出して不揮発性メモリ6に書き込む工程を第二調整工程と称する。第二調整工程では、以下に説明する第二の検査によって第二補正値が算出される。第二調整工程は、第一調整工程の後で実行される。
【0051】
図6に示すように、第二調整工程は、画像表示ユニット10を車両100に設置して行なわれる。第二調整工程は、例えば、画像表示ユニット10を車両100に搭載する工場で行なわれる。図6に示す画像表示ユニット10は、車両100に対して組み付けられ、車両100に対して固定されている。第二の検査では、車両100に対してカメラ130が設置される。カメラ130は、例えば、車両100の運転席に設置される。
【0052】
カメラ130は、三つのカメラ130u,130m,130dを有する。カメラ130uは、車両100の上端位置EPuから見た場合と同様の画像を撮像できるように配置される。同様に、カメラ130m,130dは、車両100の中央位置EPmおよび下端位置EPdから見た場合と同様の画像を撮像できるように配置される。
【0053】
第二の検査では、例えば、第一の検査と同様にターゲットボード210および制御装置240が用いられる。ターゲットボード210は、ウインドシールド110に対してカメラ130の側とは反対側に配置されている。ターゲットボード210の位置は、例えば、カメラ130から見て画像の背景となる位置である。
【0054】
制御装置240は、画像表示ユニット10およびカメラ130に対して通信可能なように接続される。制御装置240は、図4のフローチャートに従って処理を実行する。なお、第二調整工程のステップS50では、第二補正値が演算され、ステップS60では第二補正値が不揮発性メモリ6に書き込まれる。
【0055】
図6には、中央位置EPmから見る画像G2のずれを検出する検査が示されている。このときのミラー4の傾斜角度θは、中央位置EPmに対応する角度である。従って、画像の表示光Ltは、ウインドシールド110の位置110mに投影される。制御部5は、第一補正値による位置補正がなされた画像を表示デバイス3に表示させる。つまり、第二の検査における表示デバイス3の画像表示位置は、画像表示ユニット10に起因する画像横方向GHの誤差が修正された位置である。カメラ130mは、位置110mに投影された画像を撮像する。
【0056】
カメラ130mは、画像G2およびターゲットボード210を撮像する。撮像された検査画像に基づいて、画像横方向GHにおける目印210rおよび枠210mに対する画像G2の位置ずれの有無が検出される。位置ずれの有無および位置ずれの量は、制御装置240によって判定される。制御装置240は、検査画像に対する画像認識により、画像G2の画像中心C2、目印210r、および枠210mをそれぞれ検出する。制御装置240は、画像横方向GHにおける目印210rおよび枠210mに対する画像G2の位置ずれの量を算出する。ここで検出される位置ずれは、主として車両100に起因している。
【0057】
制御装置240は、位置ずれの量が規格外の値である場合、第二補正値を演算し、画像表示ユニット10の不揮発性メモリ6に第二補正値を書き込む。第二補正値は、例えば、検出された位置ずれの大きさに応じて、予め定められている。第二補正値は、車両100に起因する画像横方向GHの位置ずれを低減させる補正値である。
【0058】
第二調整工程では、検出される横ずれの量が規格内の値となるまで、第二補正値の算出が繰り返される。例えば、画像G2に対する第二補正値の調整過程では、ステップS60からステップS10に移行すると、画像の投影位置が再び位置110mとされる。第二補正値による表示位置の調整がなされた画像G2が位置110mに投影され、ステップS20で目印210rおよび枠210mに対する画像横方向GHの位置ずれが検出される。ステップS30においてずれ量が規格内の値ではないと判定されると、ステップS50で第二補正値が演算される。この場合、現在の第二補正値に対して、横ずれの量を低減させるための調整がなされる。ステップS60では調整後の第二補正値が不揮発性メモリ6に書き込まれる。最終的にずれ量が規格内の値となると、ステップS40に進んで画像G2に対する第二補正値の設定が完了する。
【0059】
上端位置EPuから見る画像G1のずれ、および下端位置EPdから見る画像G3のずれについても、同様の検査および第二補正値の算出がなされる。制御装置240は、画像横方向GHにおける目印210rおよび枠210uに対する画像G1の位置ずれの量を算出する。同様に、制御装置240は、画像横方向GHにおける画像G3の正規位置からのずれ量を算出する。制御装置240は、検出された位置ずれの量に基づいて、第二補正値を算出し、不揮発性メモリ6に書き込む。
【0060】
なお、位置ずれの有無および位置ずれの量は、作業者の目視によって確認されてもよい。この場合、表示デバイス3が投影する画像は、画像中心を作業者が目視で確認できるような画像であることが好ましい。作業者は、位置ずれの有無および位置ずれの量を制御装置240に入力する。制御装置240は、入力された位置ずれの量から第二補正値を算出し、第二補正値を不揮発性メモリ6に書き込む。
【0061】
図7および図8を参照して、画像の表示位置の補正について説明する。不揮発性メモリ6は、例えば、図7に示すように制御部5の外部に設けられる。不揮発性メモリ6は、例えば、EEPROMである。不揮発性メモリ6には、第一補正値V1および第二補正値V2が書き込まれている。不揮発性メモリ6には、第一補正値V1のための記憶領域、および第二補正値V2のための専用の記憶領域が設けられていてもよい。
【0062】
本実施形態の第一補正値V1および第二補正値V2は、それぞれ表示デバイス3における画像横方向GHのピクセル数である。第一補正値V1は、上端位置EPuに対応する補正値V1u、中央位置EPmに対応する補正値V1m、および下端位置EPdに対応する補正値V1dを有する。第二補正値V2は、上端位置EPuに対応する補正値V2u、中央位置EPmに対応する補正値V2m、および下端位置EPdに対応する補正値V2dを有する。
【0063】
制御部5は、第一補正値V1および第二補正値V2から総補正値VTを算出する。総補正値VTは、例えば、第一補正値V1と第二補正値V2とを加算した合計値である。総補正値VTは、上端位置EPuに対応する補正値VTu、中央位置EPmに対応する補正値VTm、および下端位置EPdに対応する補正値VTdを有する。
【0064】
表示デバイス3における表示位置の補正について説明する。図8には、表示デバイス3の表示面3aが示されている。表示面3aには、アイポイントEPの位置に応じて表示領域31が設定される。表示領域31の形状は、表示面3aからアイポイントEPまでの光学系において発生する歪みに基づいて定められている。表示領域31の形状は、例えば、ウインドシールド110によってアイポイントEPに向けて反射される画像領域が矩形となるように設定される。表示領域31は、中心点31cを有する。
【0065】
図8に示された表示領域31uは、上端位置EPuに対応する表示領域31である。つまり、表示デバイス3は、アイポイントEPの位置が上端位置EPuである場合、表示領域31uに画像を表示する。
【0066】
表示面3aには、画像横方向GHの基準位置Hcが定められている。画像表示ユニット10は、基準位置Hcが画像表示の正規位置Hrに対応するように設計されている。言い換えると、画像表示ユニット10は、個体差が存在しない場合に基準位置Hcのピクセルが正規位置Hrに表示されるように設計される。
【0067】
制御部5は、第一補正値V1および第二補正値V2に基づいて、表示面3aにおける表示領域31uの位置を決定する。より詳しくは、制御部5は、上端位置EPuに対する総補正値VTuに応じて表示領域31uの中心点31cを矢印AR2で示すように画像横方向GHに移動させる。移動後の中心点31cと基準位置Hcとの間のピクセル数は、総補正値VTuの値と等しい。
【0068】
図9に示された表示領域31mは、中央位置EPmに対応する表示領域31である。つまり、表示デバイス3は、アイポイントEPの位置が中央位置EPmである場合、表示領域31mに画像を表示する。総補正値VTの値が0である場合、表示領域31の位置は初期位置とされる。図9には、中央位置EPmに対する総補正値VTmが0である場合の表示領域31mが示されている。この場合、画像横方向GHにおける中心点31cの位置は、基準位置Hcである。
【0069】
図10に示された表示領域31dは、下端位置EPdに対応する表示領域31である。つまり、表示デバイス3は、アイポイントEPの位置が下端位置EPdである場合、表示領域31dに画像を表示する。
【0070】
制御部5は、第一補正値V1および第二補正値V2に基づいて、表示面3aにおける表示領域31dの位置を決定する。より詳しくは、制御部5は、下端位置EPdに対応する総補正値VTdに応じて表示領域31dの中心点31cを矢印AR3で示すように画像横方向GHに移動させる。移動後の中心点31cと基準位置Hcとの間のピクセル数は、総補正値VTdの値と等しい。
【0071】
なお、図10に矢印AR3で示す移動方向は、図8に矢印AR2で示す移動方向とは逆の方向である。つまり、第一補正値V1および第二補正値V2は、ピクセル数および移動方向を有する値である。例えば、矢印AR2の方向の補正値は正の値であり、矢印AR3の方向の補正値は負の値である。
【0072】
本実施形態の制御部5は、アイポイントEPの位置が上端位置EPu、中央位置EPm、および下端位置EPdの何れとも異なる位置である場合、線形補間により総補正値VTを算出する。図11には検出されたアイポイントEPの位置EPbが示されている。位置EPbは、中央位置EPmと上端位置EPuとの間の位置である。ウインドシールド110の位置110bは、アイポイントEPの位置EPbに対応する投影位置である。
【0073】
図12は、アイポイントEPの位置がEPbである場合の線形補間を説明する図である。図12の中央に示す表示領域31bは、アイポイントEPの位置EPbに対応する表示領域31である。
【0074】
図12の下部に示す表示領域31mは、アイポイントEPの中央位置EPmに対応する表示領域31である。図12の上部に示す表示領域31uは、アイポイントEPの上端位置EPuに対応する表示領域31である。図12に示す例では、表示領域31mの総補正値VTmは0であり、表示領域31uには0ではない総補正値VTuが設定されている。
【0075】
図12の左側には、モータ7のステップ数STu,STbが示されている。ステップ数STuは、ウインドシールド110の位置110mから位置110uまで投影位置を移動させるときのモータ7のステップ数である。ステップ数STbは、ウインドシールド110の位置110mから位置110bまで投影位置を移動させるときのモータ7のステップ数である。
【0076】
この場合、位置EPbに対応する表示領域31bの総補正値VTbは、下記式(1)で算出される。
VTb=VTu×STb/STu (1)
【0077】
アイポイントEPの位置EPbが中央位置EPmと下端位置EPdとの間にある場合、総補正値VTbは下記式(2)で算出される。なお、ステップ数STdは、ウインドシールド110の位置110mから位置110dまで投影位置を移動させるときのモータ7のステップ数である。
VTb=VTd×STb/STd (2)
【0078】
本実施形態に係る車両用表示装置の調整方法によれば、第一調整工程において画像表示ユニット10の固有の誤差を補正する第一補正値V1が算出される。また、第二調整工程において車両100の固有の誤差を補正する第二補正値V2が算出される。このように二つの補正値V1,V2が別々に算出されることで、画像横方向GHの位置ずれが効率よく調整可能となる。
【0079】
本実施形態に対する比較例として、画像表示ユニット10が車両100に搭載された後に全ての誤差を調整する調整方法を検討する。この場合、画像表示ユニット10の誤差と、車両100の誤差とが累積されて大きな位置ずれが生じることがある。その結果、位置ずれの調整回数が多くなり、効率の低下を招きやすい。
【0080】
これに対して、本実施形態に係る車両用表示装置の調整方法によれば、第一調整工程および第二調整工程における調整回数が少なくなり、各調整工程の効率が向上する。また、本実施形態に係る車両用表示装置の調整方法では、表示デバイス3における表示位置の調整によって画像の位置ずれが補正される。これにより、部品の位置や角度を変更したり、筐体2の据え付け方を変更したりする機械的な調整によって画像の位置ずれを低減させる方法と比較して効率が向上する。
【0081】
また、本実施形態の車両用表示装置1によれば、以下に説明するように、画像表示ユニット10が交換される際の調整作業が効率化される。図13は、画像表示ユニット10の交換時におけるデータ移行を示す図である。図13において、車両用表示装置1xは、故障等により車両100から取り外される車両用表示装置1であり、画像表示ユニット10xは、取り外される車両用表示装置1xの画像表示ユニット10である。車両用表示装置1iは、新たに車両100に取り付けられる車両用表示装置1であり、画像表示ユニット10iは、新たな車両用表示装置1iの画像表示ユニット10である。画像表示ユニット10iには、第一調整工程が実行されており、不揮発性メモリ6に第一補正値V1が書き込まれている。
【0082】
取り外される画像表示ユニット10xの第二補正値V2は、取り付けられる新たな画像表示ユニット10iに移行される。第二補正値V2の移行作業は、例えば、サービスツールを用いて実行される。この場合、サービスツールは、取り外す画像表示ユニット10xから第二補正値V2を読み出し、新たな画像表示ユニット10iの不揮発性メモリ6に書き込む。画像表示ユニット10iの制御部5は、この画像表示ユニット10iに固有の第一補正値V1と、移行された第二補正値V2とを加算して総補正値VTを算出する。
【0083】
車両100に設置された画像表示ユニット10iに対して第二調整工程が実行される。第二調整工程では、第二の検査によって画像G1,G2,G3の位置ずれが検出される。このときの表示デバイス3における画像の表示位置は、移行された第二補正値V2に基づいて補正されている。言い換えると、新たな画像表示ユニット10の表示デバイス3は、移行された第二補正値V2による表示位置の補正がなされた画像を表示する。
【0084】
よって、第二の検査において画像の位置ずれが生じるとしても、大幅なずれとなりにくい。検出された位置ずれの量が規格外の値であった場合、第二補正値V2u,V2m,V2dの値が変更される。例えば、上端位置EPuの画像G1において許容範囲外の位置ずれが発生した場合、この位置ずれを低減させるように第二補正値V2uが調整され、調整後の第二補正値V2uが不揮発性メモリ6に書き込まれる。
【0085】
上記のような第二調整工程によれば、車両用表示装置1に対する調整作業が効率化される。例えば、第二調整工程において最初に表示される画像G1,G2,G3の表示位置は、移行された第二補正値V2によって補正されている。よって、第二補正値V2が初期値のままである画像表示ユニット10を調整する場合と比較して、第二補正値V2を適切な値に調節するまでの作業時間が短縮される。
【0086】
以上説明したように、本実施形態に係る車両用表示装置の調整方法は、第一調整工程と、第二調整工程と、を含む。車両用表示装置1は、ウインドシールド110,200への画像の投影位置を上下方向に変更可能である。第一調整工程は、車両用表示装置1に対して第一の検査を行なって第一補正値V1を算出し、第一補正値V1を車両用表示装置1の不揮発性メモリ6に書き込む工程である。第二調整工程は、車両用表示装置1に対して第二の検査を行なって第二補正値V2を算出し、第二補正値V2を車両用表示装置1の不揮発性メモリ6に対して書き込む工程である。第一の検査および第二の検査は、例えば、フローチャートのステップS10からステップS50に対応する。第一補正値V1および第二補正値V2を不揮発性メモリ6に書き込む手順は、例えば、ステップS60に対応する。
【0087】
第一補正値V1および第二補正値V2は、正規位置Hrに対する画像横方向GHの位置ずれを低減させるように、車両用表示装置1の表示デバイス3に対して画像横方向GHの表示位置を補正させる値である。第一の検査では、車両用表示装置1は検査台220に設置されて検査用のウインドシールド200に対して画像を投影する。第一補正値V1は、検査用のウインドシールド200への画像の投影位置を上下方向に変化させたときの画像横方向GHの位置ずれに基づいて算出される。
【0088】
第二の検査では、車両用表示装置1は車両100に設置されて車両100のウインドシールド110に対して画像を投影する。第二補正値V2は、車両100のウインドシールド110への画像の投影位置を上下方向に変化させたときの画像横方向GHの位置ずれに基づいて算出される。第二の検査において、表示デバイス3は、第一補正値V1による表示位置の補正がなされた画像を表示する。本実施形態に係る車両用表示装置の調整方法では、第一調整工程で車両用表示装置1に起因する位置ずれを補正する第一補正値V1が決定される。第二調整工程では、車両100に起因する位置ずれを補正する第二補正値V2が決定される。本実施形態に係る車両用表示装置の調整方法は、二つの位置ずれに対する補正値の決定を別々に行なうことで、画像横方向の位置ずれを効率よく調整できる。例えば、車両100に搭載されたときの位置ずれの調整が効率化される。また、第二の検査では、第一補正値V1による表示位置の補正がなされた画像が表示される。よって、本実施形態に係る車両用表示装置の調整方法は、第二調整工程の作業効率を向上させることができる。
【0089】
本実施形態に係る車両用表示装置の調整方法では、車両100において車両用表示装置1の交換がなされる場合、車両100から取り外される車両用表示装置1の第二補正値V2が車両100に取り付けられる新たな車両用表示装置1の不揮発性メモリ6に移行される。新たな車両用表示装置1の表示デバイス3は、第二の検査において、移行された第二補正値V2による表示位置の補正がなされた画像を表示する。よって、新たな車両用表示装置1に対する第二調整工程が効率化される。
【0090】
本実施形態に係る車両用表示装置1は、車両100に搭載され、かつウインドシールド110への画像の投影位置を上下方向に変更可能な画像表示ユニット10を有する。画像表示ユニット10は、画像を表示する表示デバイス3と、画像の表示光Ltをウインドシールド110に向けて反射するミラー4と、第一補正値V1および第二補正値V2を記憶する不揮発性メモリ6と、表示デバイス3を制御する制御部5と、を有する。制御部5は、ウインドシールド110に対する画像の上下方向の投影位置に応じて、第一補正値V1および第二補正値V2に基づいて表示デバイス3における画像横方向GHの表示位置を補正する。
【0091】
第一補正値V1は、車両100に搭載されていない単体の画像表示ユニット10に対する検査結果に基づく補正値である。第二補正値V2は、車両100に搭載された画像表示ユニット10に対する検査結果に基づく補正値であって、かつ第一補正値V1による表示位置の補正がなされた画像表示ユニット10に対する検査結果に基づく。本実施形態に係る車両用表示装置1は、第一補正値V1のための検査および第二補正値V2の検査を別々に行なうことで、画像横方向の位置ずれを効率よく調整できる。例えば、車両100に搭載されたときの位置ずれの調整が効率化される。また、第二補正値V2は、第一補正値V1による表示位置の補正がなされた画像表示ユニット10に対する検査結果に基づく。よって、第二補正値V2を決定する工程の効率が向上する。
【0092】
なお、不揮発性メモリ6は、制御部5の内部に設けられたメモリであってもよい。不揮発性メモリ6は、EEPROMには限定されず、例えば、Flashメモリであってもよい。第二補正値V2が書き込まれる不揮発性メモリ6は、画像表示ユニット10に対する着脱が可能な記憶媒体のメモリであってもよい。
【0093】
[実施形態の第1変形例]
実施形態の第1変形例について説明する。図14は、実施形態の第1変形例に係る表示デバイスを示す図である。実施形態の第1変形例において、上記実施形態と異なる点は、例えば、表示デバイス3における画像の表示位置を画像縦方向GVに変化させる点である。
【0094】
図14には、アイポイントEPの中央位置EPmに対応する表示領域31mが示されている。表示デバイス3は、車両上下方向ZにおけるアイポイントEPの位置に応じて、画像縦方向GVにおける表示領域31を変化させる。表示デバイス3は、アイポイントEPの位置が中央位置EPmよりも上側にある場合、矢印AR4で示すように、表示領域31の中心点31cを画像上側に変化させる。これにより、ウインドシールド110への画像投影位置は、位置110mよりも上側の位置となる。
【0095】
一方、表示デバイス3は、アイポイントEPの位置が中央位置EPmよりも下側にある場合、矢印AR5で示すように、表示領域31の中心点31cを画像下側に変化させる。これにより、ウインドシールド110への画像投影位置は、位置110mよりも下側の位置となる。
【0096】
画像縦方向GVにおける表示領域31の位置は、例えば、制御部5によって指定される。制御部5は、更に、第一補正値V1および第二補正値V2に基づいて、画像横方向GHにおける表示領域31の位置を補正する。
【0097】
なお、ウインドシールド110に対する上下方向の画像投影位置は、ミラー4の傾斜角度θおよび表示デバイス3の表示位置の両方によって調節されてもよい。
【0098】
上記の実施形態および変形例に開示された内容は、適宜組み合わせて実行することができる。
【符号の説明】
【0099】
1 車両用表示装置
2:筐体、 3:表示デバイス、 4:ミラー、 5:制御部、 6:不揮発性メモリ
7:モータ、 10:画像表示ユニット、 11:カメラ
100:車両、 110:ウインドシールド、 110a:反射面
110u,110m,110d:位置
200:ウインドシールド、 210:ターゲットボード、 210r:目印
210u,210m:枠
C1,C2,C3:画像中心
EP:アイポイント、 EPu:上端位置、 EPm:中央位置、 EPd:下端位置
G1,G2,G3:画像
GH:画像横方向、 GV:画像縦方向
Hr:正規位置
Lt:表示光
V1,V1u,V1m,V1d:第一補正値
V2,V2u,V2m,V2d:第二補正値
X:車両前後方向、 Z:車両上下方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14