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特許7590383部材装着装置、電線加工装置、及び部材装着方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-18
(45)【発行日】2024-11-26
(54)【発明の名称】部材装着装置、電線加工装置、及び部材装着方法
(51)【国際特許分類】
   H02G 1/14 20060101AFI20241119BHJP
【FI】
H02G1/14
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2022144779
(22)【出願日】2022-09-12
(65)【公開番号】P2024039992
(43)【公開日】2024-03-25
【審査請求日】2024-01-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】築地 信人
(72)【発明者】
【氏名】増田 浩輔
(72)【発明者】
【氏名】野沢 勇介
【審査官】遠藤 尊志
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-182448(JP,A)
【文献】特開2013-106465(JP,A)
【文献】特開2000-350326(JP,A)
【文献】特開2001-357960(JP,A)
【文献】特開2016-178058(JP,A)
【文献】特開平8-162250(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 1/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電線に対して先端から環状部材を装着させる部材装着装置であって、
前記電線を把持する電線チャック部と、
前記環状部材を保持し、前記電線チャック部によって把持された前記電線の先端から前記環状部材を挿入させて前記電線の所定位置まで前記電線の長手方向へ移動する環状部材挿入部と、
前記環状部材挿入部によって移動される前記環状部材の移動方向前方側における前記電線を、前記環状部材挿入部と同調して移動しながら摺動可能に保持してガイドする電線ガイド部と、
を有
前記電線ガイド部は、前記電線の長手方向に沿って移動可能、且つ、昇降可能であり、
前記電線ガイド部は、前記環状部材挿入部による前記電線の前記所定位置へ向けた前記環状部材の挿入途中において、前記環状部材の移動方向前方側における前記電線の保持を解除するとともに上方へ移動して、前記環状部材の移動方向前方側から退避する、
部材装着装置。
【請求項2】
請求項1に記載の部材装着装置と、
前記所定位置に前記環状部材が装着された前記電線を搬送する電線搬送装置と、
を備え、
前記電線搬送装置は、前記電線に装着された前記環状部材を収容する環状部材収容凹部を備える、
電線加工装置。
【請求項3】
電線に対して先端から環状部材を装着させる部材装着方法であって、
電線チャック部によって前記電線を把持する電線把持工程と、
前記環状部材を保持した環状部材挿入部を前記電線の先端から前記電線の長手方向へ移動させて、前記先端から前記電線の所定位置まで前記環状部材を挿入させる環状部材装着工程と、
を含み、
前記環状部材装着工程において、前記電線を摺動可能に保持する電線ガイド部を前記環状部材挿入部と同調して移動させることにより、前記環状部材挿入部によって移動される前記環状部材の移動方向前方側における前記電線をガイド前記電線の前記所定位置へ向けた前記環状部材の挿入途中において、前記電線ガイド部による前記環状部材の移動方向前方側における前記電線の保持を解除するとともに前記電線ガイド部を上方へ移動して、前記電線ガイド部を前記環状部材の移動方向前方側から退避させる、
部材装着方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、部材装着装置、電線加工装置、及び部材装着方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1、2には、シールド電線の端末加工を自動で行わせる電線加工装置が開示されている。これらの電線加工装置では、シールド接触子を電線の外皮に外挿した後に、外皮を環状に切断して抜き取り、外皮の内側の編組を所要長さに剪断して折り返す。そして、これらの電線加工装置は、シールド接触子とシールドパイプとの間に編組を挟み込ませてシールドパイプを加締め、編組の内側の内皮を皮剥きして心線を露出させ、この心線に端子を加締める。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2002-238125号公報
【文献】特許第3803013号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の電線加工装置は、電気自動車等に使用される比較的大径なシールド電線を効率的に端末加工できるが、細径の電線等の柔軟性がある電線では、撓みが生じてしまい、電線の適正な位置へのシールド接触子の装着が困難となるおそれがある。
【0005】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、電線に対して適正な位置に環状部材を円滑に装着させることが可能な部材装着装置、電線加工装置、及び部材装着方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前述した目的を達成するために、本発明に係る部材装着装置は、下記を特徴としている。
電線に対して先端から環状部材を装着させる部材装着装置であって、
前記電線を把持する電線チャック部と、
前記環状部材を保持し、前記電線チャック部によって把持された前記電線の先端から前記環状部材を挿入させて前記電線の所定位置まで前記電線の長手方向へ移動する環状部材挿入部と、
前記環状部材挿入部によって移動される前記環状部材の移動方向前方側における前記電線を、前記環状部材挿入部と同調して移動しながら摺動可能に保持してガイドする電線ガイド部と、
を有
前記電線ガイド部は、前記電線の長手方向に沿って移動可能、且つ、昇降可能であり、
前記電線ガイド部は、前記環状部材挿入部による前記電線の前記所定位置へ向けた前記環状部材の挿入途中において、前記環状部材の移動方向前方側における前記電線の保持を解除するとともに上方へ移動して、前記環状部材の移動方向前方側から退避する、
部材装着装置。
【0007】
また、前述した目的を達成するために、本発明に係る電線加工装置は、下記を特徴としている。
上記部材装着装置と、
前記所定位置に前記環状部材が装着された前記電線を搬送する電線搬送装置と、
を備え、
前記電線搬送装置は、前記電線に装着された前記環状部材を収容する環状部材収容凹部を備える、
電線加工装置。
【0008】
また、前述した目的を達成するために、本発明に係る部材装着方法は、下記を特徴としている。
電線に対して先端から環状部材を装着させる部材装着方法であって、
電線チャック部によって前記電線を把持する電線把持工程と、
前記環状部材を保持した環状部材挿入部を前記電線の先端から前記電線の長手方向へ移動させて、前記先端から前記電線の所定位置まで前記環状部材を挿入させる環状部材装着工程と、
を含み、
前記環状部材装着工程において、前記電線を摺動可能に保持する電線ガイド部を前記環状部材挿入部と同調して移動させることにより、前記環状部材挿入部によって移動される前記環状部材の移動方向前方側における前記電線をガイド前記電線の前記所定位置へ向けた前記環状部材の挿入途中において、前記電線ガイド部による前記環状部材の移動方向前方側における前記電線の保持を解除するとともに前記電線ガイド部を上方へ移動して、前記電線ガイド部を前記環状部材の移動方向前方側から退避させる、
部材装着方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、電線に対して適正な位置に環状部材を円滑に装着させることが可能な部材装着装置、電線加工装置、部材装着方法及び電線加工方法を提供できる。
【0010】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という。)を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、本実施形態に係る電線加工装置の概略斜視図である。
図2A図2Aは、電線加工装置による電線の加工手順を示す説明図である。
図2B図2Bは、電線加工装置による電線の加工手順を示す説明図である。
図3図3は、電線搬送装置を示す斜視図である。
図4図4は、部材装着装置の構成を説明する概略構成図である。
図5A図5Aは、部材装着装置におけるアウタースリーブの電線への装着手順を説明する概略構成図である。
図5B図5Bは、部材装着装置におけるアウタースリーブの電線への装着手順を説明する概略構成図である。
図5C図5Cは、部材装着装置におけるアウタースリーブの電線への装着手順を説明する概略構成図である。
図5D図5Dは、部材装着装置におけるアウタースリーブの電線への装着手順を説明する概略構成図である。
図5E図5Eは、部材装着装置におけるアウタースリーブの電線への装着手順を説明する概略構成図である。
図5F図5Fは、部材装着装置におけるアウタースリーブの電線への装着手順を説明する概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係る実施の形態の例を、図面を参照して説明する。
【0013】
図1は、本実施形態に係る電線加工装置1の概略斜視図である。
図1に示すように、電線加工装置1は右側から順に、品番の切替えや自動手動切替え等を行う操作卓2と、電線セット装置3と、部材装着装置4と、シース切込装置5と、シース抜取装置6と、編組切断装置7と、編組折返し装置8と、シールドパイプ挿入装置9と、シールドパイプ加締装置10と、皮剥き装置11と、端子加締装置12と、製品取出装置13と、電線搬送装置14とを備えている。図1では便宜上、編組折返し装置8とシールドパイプ挿入装置9とをー体的に描いている。電線の部品移動装置(図示せず)は、編組切断装置7と編組折返し装置8との間に配置されている。各装置3~13はほぼ等ピッチで並列に配置されている。電線搬送装置14は、各装置3~13の配置方向に沿ってシールド電線15を各装置3~13に順に移動させる。
【0014】
図1で、符号16はアウタースリーブ供給用のホッパ、17はシールドパイプ供給用のホッパを示す。シールド電線(以下、電線という)15としては、細径の電線が適用可能であり、U字状に折り返された状態で電線搬送装置14の右端にセットされる。なお、上記電線セット装置3を電線セット部あるいは電線セット工程と呼称することも可能であり、他の装置についても同様である。
【0015】
以下に電線加工装置1を用いた電線加工方法及び作用の一例を説明する。
図2A及び図2Bは、それぞれ電線加工装置1による電線15の加工手順を示す説明図である。
【0016】
先ず、図2Aに示すように予め所要長さに切断した電線15を作業者が図1の電線セット装置3にセットする。作業者が行う作業は唯一この電線セットのみである。電線15がセットされると、センサ(図示せず)がそれを感知して、電線搬送装置14(図1参照)が1ピッチ左に移動し、電線15を隣の部材装着装置4に送る。送りピッチの設定によって電線15の片側の端部を加工したり両側の端部を加工したりすることができる。例えば1ピッチ送りとしてU字状の電線15の両端を順に加工し、2ピッチ送りとして電線15の片端のみを加工する。
【0017】
部材装着装置4で図2Bに示すように電線15に導電金属製の環状のアウタースリーブ(環状部材)19が挿入(外挿)される。アウタースリーブ19が挿入された電線15は電線搬送装置14で次のシース切込装置5に送られ、アウタースリーブ19よりも電線先端側の所要位置において、電線15の絶縁性のシース(外皮)20に環状に切り込みが入れられる。次に電線15は、シース抜取装置6に送られて、外皮20が抜き取られ、編組切断装置7に送られて、露出した編組が所要長さに切断され、絶縁性の内皮が露出する。
【0018】
続いて電線15は、編組折返し装置8に送られて、編組22がアウタースリーブ19上に折り返される。さらに、シールドパイプ挿入装置9で電線15の先端側から導電金属製の環状のシールドパイプが挿入される。そして、電線15の長手方向の所定位置でアウタースリーブ19の外周面とシールドパイプの内周面との間に編組22が挟まれて接触する。編組22の折返し角度は90°程度ないしは90°~180°の範囲である。
【0019】
シールドパイプの挿入後に、電線15はシールドパイプ加締装置10に送られて、シールドパイプが六角形状に加締められてアウタースリーブ19に固定される。アウタースリーブ19とシールドパイプとの間に編組22が挟み込まれているから、アウタースリーブ19とシールドパイプは電線15に強固に固定される。
【0020】
その後、電線15は、皮剥き装置11に送られて、電線15の内皮の先端側が所要長さに皮剥きされ、心線(導体部)が露出する。続いて電線15は、端子加締装置12に送られて、露出した心線に端子が加締接続されて、製品とされる。最後に製品取出装置13によって、製品が電線加工装置1から外部のパレット(図示せず)に入れられる。製品取出装置13はチャックで製品27を把持して持ち上げ、水平移動させてパレット内に降下してチャックを解除する機構のものである。なお、端子加締装置12は別工程としてもよい。
【0021】
以上、電線加工装置1を用いた電線加工方法の一例を説明したが、例えば電線15が高速通信用の電線等であっても、部材装着装置4によって環状部材を取り付けることができる。高速通信用の電線の場合、シールドパイプの取付は不要であり、電線加工装置1は、心線にインナー端子を圧着した後、絶縁樹脂製のインナーハウジングを取り付け、編組加締め部を有するアウター端子を圧着して、製品としてもよい。
【0022】
図3は、電線搬送装置14を示す斜視図である。
図3に示すように、電線搬送装置14は、一対のチャック29を備えている。電線搬送装置14は、送り方向に伸縮する水平なエアシリンダ35のロッド36に、垂直な基板37が連結され、基板37は、エアシリンダ35によってスライド自在に駆動される。基板37には、一対のチャック29が固定され、基板37がエアシリンダ35側の固定基板38に対してレール39を介してスライド自在に組み付けられる。
【0023】
エアシリンダ35の圧縮動作でチャック29が電線送り方向に1ピッチ移動し、部材装着装置4に電線15を受け渡し、その後、エアシリンダ35の伸長動作でチャック29が原位置に復帰する。チャック29の進退機構は他の装置5~13(他の工程)(図1参照)においても同様である。部品である環状で段付きのアウタースリーブ19は、ホッパ16から供給路を経て部品受渡し部(図示せず)に供給され、部材装着装置4によって電線15の中間位置に挿入(外挿)される。電線15の中間位置は、電線15の所定位置の一例であり、電線15の先端から離間した位置を意味する。電線搬送装置14は、アウタースリーブ19の挿入後に部材装着装置4から電線15が受け渡される。これにより、アウタースリーブ19が装着された電線15がチャック29によって把持される。
【0024】
電線搬送装置14は、基板37とチャック29との間に、端子収容凹部30を有している。この端子収容凹部30には、部材装着装置4から受け渡された電線15のアウタースリーブ19が収容される。これにより、電線搬送装置14は、装着されたアウタースリーブ19を脱落させることなく、電線15を次工程のシース切込装置5に搬送する。
【0025】
図4は、部材装着装置4の構成を説明する概略構成図である。
図4に示すように、部材装着装置4は、電線チャック部41と、端子挿入部43と、電線ガイド部45と、を有している。これらの電線チャック部41、端子挿入部43及び電線ガイド部45は、電線搬送装置14のチャック29に把持されて搬送される電線15の長手方向に沿って配置されている。
【0026】
電線チャック部41は、電線搬送装置14のチャック29の上方に配置されており、下方位置と上方位置との間で昇降可能とされている。電線チャック部41は、下方位置に配置された状態で、チャック29に把持された電線15に対する把持及び把持解除を行う。
【0027】
電線チャック部41は、第1チャック51と、第2チャック53とを有している。第1チャック51は、支持ブロック55と、この支持ブロック55に設けられた一対の把持板57とを有している(図4では手前の把持板57のみを図示)。把持板57は、支持ブロック55の下部に設けられている。一対の把持板57は、互いに近接及び離間方向に平行移動される。第1チャック51は、把持板57が互いに近接する方向へ移動することにより、電線15におけるチャック29よりも長手方向後方側を把持板57によって挟んで把持する。
【0028】
第2チャック53は、支持ブロック61と、この支持ブロック61に設けられた一対の把持アーム63とを有している(図4では手前の把持アーム63のみを図示)。把持アーム63は、支持ブロック61の両側部に回動可能に支持されている。これらの把持アーム63は、互いに近接及び離間方向に回動される。把持アーム63は、その端部に把持爪65を有している。第2チャック53は、把持アーム63が互いに近接する方向へ回動することにより、電線15におけるチャック29よりも長手方向前方側を把持爪65によって挟んで把持する。
【0029】
なお、電線チャック部41の第1チャック51としては、第2チャック53と同様に、支持ブロック55に対して、一対の把持板57が互いに近接及び離間方向に回動して電線15の把持及び把持解除を行うものでもよい。
【0030】
端子挿入部43は、電線搬送装置14のチャック29によって把持された電線15の先端側に配置されている。この端子挿入部43は、電線15に装着させるアウタースリーブ(環状部材)19を保持し、電線15に対して先端からアウタースリーブ19を挿入(外挿)させる。端子挿入部43は、支持ブロック71と、この支持ブロック71に設けられた一対の保持板73とを有している(図4では手前の保持板73のみを図示)。保持板73は、支持ブロック71における電線チャック部41側に設けられている。一対の保持板73は、互いに近接及び離間方向に平行移動される。保持板73における電線チャック部41側には、互いの対向面に、円弧状に凹む保持凹部73aが形成されている。端子挿入部43は、保持板73が互いに近接する方向へ移動することにより、ホッパ16から供給路を経て供給される環状のアウタースリーブ19を、保持凹部73aに収容させた状態で挟んで保持する。端子挿入部43は、支持ブロック71が、電線15の長手方向に沿って往復移動可能とされている。これにより、端子挿入部43は、電線チャック部41に対して近接及び離間方向へ移動される。
【0031】
電線ガイド部45は、端子挿入部43に対して、電線チャック部41側に隣接した位置に配置されている。電線ガイド部45は、電線15を摺動可能に保持し、端子挿入部43が電線15にアウタースリーブ19を装着させる際に、電線15を長手方向に沿ってガイドする。
【0032】
電線ガイド部45は、支持ブロック77と、この支持ブロック77に設けられた一対のガイド板79とを有している(図4では手前のガイド板79のみを図示)。ガイド板79は、支持ブロック77の下部に設けられている。一対のガイド板79は、互いに近接及び離間方向に平行移動される。ガイド板79は、互いの対向面に、電線15の長手方向に沿ったガイド溝79aを有している。電線ガイド部45は、ガイド板79が互いに近接する方向へ移動することにより、電線15を、ガイド溝79aに収容させた状態で摺動可能に保持する。電線ガイド部45は、支持ブロック77が、電線15の長手方向に沿って往復移動可能とされ、かつ昇降可能とされている。これにより、電線ガイド部45は、端子挿入部43とともに電線チャック部41に対して近接及び離間方向へ移動されるとともに、昇降される。
【0033】
次に、部材装着装置4における電線15へのアウタースリーブ(環状部材)19の装着手順について、各工程毎に説明する。
図5A図5Fは、それぞれ部材装着装置4におけるアウタースリーブ19の電線15への装着手順を説明する概略構成図である。
【0034】
図5Aに示すように、電線チャック部41が下降(図5Aに示す矢印A1方向に移動)して下方位置に配置される。この状態において、第1チャック51の把持板57が近接する方向へ移動するとともに、第2チャック53の把持アーム63が近接する方向へ回動する。これにより、電線搬送装置14のチャック29に把持された電線15は、チャック29よりも長手方向後方側が第1チャック51の把持板57によって把持される。また、電線搬送装置14のチャック29に把持された電線15は、チャック29よりも長手方向前方側が第2チャック53の把持アーム63の把持爪65によって把持される。
【0035】
図5Bに示すように、電線搬送装置14のチャック29による電線15の把持が解除されるとともに、電線チャック部41が上昇(図5Bに示す矢印A2方向に移動)して上方位置に配置される。これにより、電線チャック部41に把持された電線15が上方位置に配置される。
【0036】
電線15が上方位置に配置されると、電線ガイド部45のガイド板79が互いに近接する方向へ移動する。これにより、ガイド板79のガイド溝79aに電線15が収容されて保持される。
【0037】
図5Cに示すように、保持板73の保持凹部73aにアウタースリーブ19を保持した端子挿入部43が電線チャック部41に対して近接する方向(図5Cに示す矢印A3方向)へ移動する。これにより、端子挿入部43の保持板73に保持されたアウタースリーブ19が、電線15の先端から長手方向の後方側へ向かって挿入(外挿)される。
【0038】
このとき、端子挿入部43と同調して、ガイド板79によって電線15を保持した電線ガイド部45が電線チャック部41に対して近接する方向へ移動する。これにより、アウタースリーブ19が挿入される電線15は、アウタースリーブ19挿入方向の前方部分が電線ガイド部45によってガイドされて撓みなどの変形が抑えられる。したがって、電線15に対してアウタースリーブ19が円滑に挿入される。
【0039】
なお、端子挿入部43及び電線ガイド部45が電線チャック部41に対して近接する方向へ移動する際に、電線チャック部41の第2チャック53の把持アーム63が互いに離間する方向へ回動し、第2チャック53による電線15の把持が解除される。これにより、第2チャック53の把持アーム63が、電線ガイド部45及び端子挿入部43と干渉しない退避位置に配置される。
【0040】
図5Dに示すように、端子挿入部43が電線チャック部41の近傍位置まで移動すると、端子挿入部43の保持板73によって保持されていたアウタースリーブ19が、電線15におけるアウタースリーブ19の装着位置である中間位置に配置される。なお、電線ガイド部45は、端子挿入部43による電線15へのアウタースリーブ19の挿入途中において、ガイド板79が互いに離間する方向へ移動して電線15の保持を解除するとともに上方へ移動する。この結果、ガイド板79は、電線チャック部41へ向かって移動する端子挿入部43の移動方向前方側から退避する。
【0041】
図5Eに示すように、電線チャック部41の第2チャック53の把持アーム63が近接する方向へ回動する。これにより、アウタースリーブ19の装着位置よりも長手方向後方側が第1チャック51によって把持された電線15は、アウタースリーブ19の装着位置よりも長手方向前方側が第2チャック53によって把持される。
【0042】
端子挿入部43の保持板73が互いに離間する方向へ移動することにより、保持板73によるアウタースリーブ19の保持が解除される。この状態において、図5Fに示すように、電線チャック部41が下降(図5Fに示す矢印A1方向に移動)して下方位置に配置される。これにより、電線チャック部41に把持された電線15が下方位置に配置される。この状態において、アウタースリーブ19が装着された電線15が、電線搬送装置14のチャック29に把持されるとともに、電線チャック部41の第1チャック51及び第2チャック53による把持が解除される。したがって、アウタースリーブ19が装着された電線15が電線チャック部41から電線搬送装置14に受け渡される。なお、電線15が電線搬送装置14に受け渡される際に、この電線15に装着されたアウタースリーブ19は、電線搬送装置14の基板37とチャック29との間の端子収容凹部30(図3参照)に収容される。これにより、電線15は、アウタースリーブ19が脱落することなく次工程のシース切込装置5へ搬送される。
【0043】
以上、説明したように、本実施形態に係る部材装着装置4及び部材装着方法によれば、電線15の中間位置へアウタースリーブ(環状部材)19を装着させる際に、端子挿入部43と電線ガイド部45とが同調して移動する。詳細には、端子挿入部43によって移動されるアウタースリーブ19の移動方向前方側における電線15を、電線ガイド部45が端子挿入部43と同調して移動しながらガイドする。したがって、細径の電線等の柔軟性がある電線15に対しても、撓みを抑えつつ電線15の中間位置へアウタースリーブ19を円滑に装着させることができる。
【0044】
そして、この部材装着装置4を備えた電線加工装置1によれば、細径の電線等の柔軟性があるシールド電線からなる電線15の端末加工を円滑に行うことができる。
【0045】
また、電線搬送装置14が、電線15に装着されたアウタースリーブ19を収容する端子収容凹部30を備える。したがって、電線搬送装置14による電線15の搬送時におけるアウタースリーブ19のずれや脱落を抑えることができ、電線15を円滑に加工できる。
【0046】
尚、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。例えば、上述した実施形態では、電線15に、環状のアウタースリーブ19を挿入(外挿)させる場合を例示したが、電線15の先端から挿入(外挿)させる環状部材であれば、環状のアウタースリーブ19に限らない。環状部材は、導電性の端子に限らず、例えば、ゴム栓や、ハウジングカバー等の樹脂部材であってもよく、部材装着装置4は、これらの環状部材を電線に装着可能である。さらに、電線の一端側だけでなく他端側に取り付ける環状部材を、電線15の一端側から外挿してもよい。また、本発明は、シールド電線に限らず、同軸電線や、種々の通信規格に対応した電線等、アウタースリーブ構造を採用した電線に環状部材を挿入する際に適用できる。また、電線加工装置1は、各装置3~13が各工程をそれぞれ実施したが、例えば編組切断工程と編組折返し工程を編組切断折返し装置で実施する等、いずれか複数の工程を1の装置で実施してもよい。さらに、電線加工装置1は、部材装着装置4を備えればよく、例えばシールドパイプ挿入装置9及びシールドパイプ加締装置10を備えず、インナー端子圧着装置を備える等、製品仕様に応じて、構成を変更してもよい。
【0047】
ここで、上述した本発明の実施形態に係る部材装着装置、電線加工装置、及び部材装着方法の特徴をそれぞれ以下[1]~[5]に簡潔に纏めて列記する。
【0048】
[1] 電線(15)に対して先端から環状部材(アウタースリーブ19)を装着させる部材装着装置(4)であって、
前記電線(15)を把持する電線チャック部(41)と、
前記環状部材(アウタースリーブ19)を保持し、前記電線チャック部(41)によって把持された前記電線(15)の先端から前記環状部材(アウタースリーブ19)を挿入させて前記電線(15)の所定位置まで前記電線(15)の長手方向へ移動する環状部材挿入部(端子挿入部43)と、
前記環状部材挿入部(端子挿入部43)によって移動される前記環状部材(アウタースリーブ19)の移動方向前方側における前記電線(15)を、前記環状部材挿入部(端子挿入部43)と同調して移動しながらガイドする電線ガイド部(45)と、
を有する、部材装着装置(4)。
【0049】
上記[1]の構成の部材装着装置によれば、電線の所定位置へ環状部材を装着させる際に、環状部材挿入部によって移動される環状部材の移動方向前方側における電線を、電線ガイド部が環状部材挿入部と同調して移動しながらガイドする。したがって、細径の電線等の柔軟性がある電線に対しても、撓みを抑えつつ電線の所定位置へ環状部材を円滑に装着させることができる。
【0050】
[2] 上記[1]に記載の部材装着装置(4)と、
前記所定位置に前記環状部材(アウタースリーブ19)が装着された前記電線(15)を搬送する電線搬送装置(14)と、
を備え、
前記電線搬送装置(14)は、前記電線(15)に装着された前記環状部材(アウタースリーブ19)を収容する環状部材収容凹部(端子収容凹部30)を備える、電線加工装置。
【0051】
上記[2]の構成の電線加工装置によれば、電線搬送時における環状部材のずれや脱落を抑えることができ、電線を円滑に加工できる。
【0052】
[3] 電線(15)に対して先端から環状部材(アウタースリーブ19)を装着させる部材装着方法であって、
電線チャック部(41)によって前記電線(15)を把持する電線把持工程と、
前記環状部材(アウタースリーブ19)を保持した環状部材挿入部(端子挿入部43)を前記電線(15)の先端から前記電線(15)の長手方向へ移動させて、前記先端から前記電線(15)の所定位置まで前記環状部材(アウタースリーブ19)を挿入させる環状部材装着工程と、
を含み、
前記環状部材装着工程において、前記電線(15)を摺動可能に保持する電線ガイド部(45)を前記環状部材挿入部(端子挿入部43)と同調して移動させることにより、前記環状部材挿入部(端子挿入部43)によって移動される前記環状部材(アウタースリーブ19)の移動方向前方側における前記電線(15)をガイドする、部材装着方法。
【0053】
上記[3]の構成の部材装着方法によれば、電線の中間位置へ環状部材を装着させる際に、環状部材挿入部によって移動される環状部材の移動方向前方側における電線を、環状部材挿入部と同調して移動する電線ガイド部によってガイドする。したがって、細径の電線等の柔軟性がある電線に対しても、撓みを抑えつつ電線の中間位置へ環状部材を円滑に装着させることができる。
【符号の説明】
【0054】
1:電線加工装置
4:部材装着装置
5:シース切込装置
6:シース抜取装置
7:編組切断装置
8:編組折返し装置
9:シールドパイプ挿入装置
10:シールドパイプ加締装置
11:皮剥き装置
14:電線搬送装置
15:電線
19:アウタースリーブ(環状部材)
20:外皮
22:編組
30:端子収容凹部
41:電線チャック部
43:端子挿入部
45:電線ガイド部
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図5D
図5E
図5F