(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-18
(45)【発行日】2024-11-26
(54)【発明の名称】配索構造
(51)【国際特許分類】
H02G 3/16 20060101AFI20241119BHJP
H02G 15/10 20060101ALI20241119BHJP
H01R 4/38 20060101ALI20241119BHJP
H01R 4/58 20060101ALI20241119BHJP
H05K 7/02 20060101ALI20241119BHJP
H02G 15/02 20060101ALI20241119BHJP
【FI】
H02G3/16
H02G15/10
H01R4/38 C
H01R4/58 C
H05K7/02 R
H02G15/02
(21)【出願番号】P 2022146334
(22)【出願日】2022-09-14
【審査請求日】2024-01-17
(31)【優先権主張番号】P 2021213418
(32)【優先日】2021-12-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】牧野 匡宏
(72)【発明者】
【氏名】下津佐 潤
【審査官】北嶋 賢二
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-63819(JP,A)
【文献】特開2005-93658(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 15/02
H02G 15/10
H02G 3/16
H01R 4/38
H01R 4/58
H05K 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気接続箱に接続される配索部材の配索構造であって、
前記配索部材は、
電線と、
少なくとも一部がケースに覆われた板状のバスバと、
を備え、
前記バスバは、
前記電気接続箱に接続される接続部と、
前記電線と隣接されて環状のフェライトへ挿通される並列配索部と、
を有し、
前記接続部と前記並列配索部との間で、前記電線との配列方向に沿って少なくとも一か所で屈曲されている、
配索構造。
【請求項2】
前記バスバは、前記電気接続箱との接続部と反対側の端部に、端子金具が締結具によって締結され、
前記ケースは、前記バスバと前記端子金具との接続箇所が収容される収容空間を有する収容部を備え、
前記収容部は、
前記収容空間の周囲を囲む周壁部と、
前記周壁部の上部に組付けられて前記収容空間を開閉する蓋部と、
を備える、
請求項1に記載の配索構造。
【請求項3】
前記蓋部は、前記周壁部に対して回動可能に設けられるとともに、前記収容空間を閉じた状態で、前記締結具の対向位置に隙間なく配置される係合壁を有する、
請求項2に記載の配索構造。
【請求項4】
前記蓋部は、前記周壁部に対して着脱可能とされているとともに、前記収容空間を閉じた状態で、前記締結具の対向位置に隙間なく配置される係合壁を有する、
請求項2に記載の配索構造。
【請求項5】
前記バスバの前記並列配索部は、幅方向が前記電線との配列方向に沿わされている、
請求項1から4のいずれか一項に記載の配索構造。
【請求項6】
前記バスバの前記並列配索部は、幅方向が前記電線との配列方向と直交されている、
請求項1から4のいずれか一項に記載の配索構造。
【請求項7】
前記収容部は、
前記周壁部から前記電線の延伸方向に突出した電線引出ガイドが設けられており、
前記電線引出ガイドは、前記電線とともに結束バンドのバンド部により結束される曲面部と、前記曲面部の両端に形成され前記結束バンドのヘッド部の移動を規制する両端部と、を有している、
請求項2に記載の配索構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配索構造に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、自動車等の車両に搭載されるジャンクションブロックなどの電気接続箱は、その内部配線にバスバが用いられることがある(例えば、特許文献1参照)。また、電気接続箱は、端子を備えており、この端子に外部からの配索材が接続される。この端子に接続される配索材としては、接続の容易性などから電線が用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、電気自動車やハイブリッド自動車等の電動モータを駆動源とする車両では、大電流・高電圧の電流を流すために大径の電線が電気接続箱へ配索される。また、大電流・高電圧の電流を電線へ流す場合、正極及び負極の電線を環状のフェライトに通してノイズを抑える必要がある。
【0005】
しかし、大径の電線は容易に屈曲させることが難しく、このため、正極及び負極の電線を環状のフェライトへ通して電気接続箱へ配索するのが困難であった。
【0006】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、複数の配索材を環状のフェライトへ通して電気接続箱へ容易に配索することが可能な配索構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の上記目的は、下記構成により達成される。
電気接続箱に接続される配索部材の配索構造であって、
前記配索部材は、
電線と、
少なくとも一部がケースに覆われた板状のバスバと、
を備え、
前記バスバは、
前記電気接続箱に接続される接続部と、
前記電線と隣接されて環状のフェライトへ挿通される並列配索部と、
を有し、
前記接続部と前記並列配索部との間で、前記電線との配列方向に沿って少なくとも一か所で屈曲されている、配索構造。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、複数の配索材を環状のフェライトへ通して電気接続箱へ容易に配索することが可能な配索構造を提供できる。
【0009】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という。)を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本実施形態に係る配索構造が適用された電気接続箱における配索部材の接続箇所の斜視図である。
【
図3】
図3は、配索部材のフェライトケースを外した状態の斜視図である。
【
図4】
図4は、配索部材を構成するバスバの斜視図である。
【
図5】
図5は、電線に接続されてケースに覆われたバスバの斜視図である。
【
図6】
図6は、電線に接続されてケースに覆われたバスバにおける収容部の蓋部を開いた状態の斜視図である。
【
図7】
図7は、蓋部を開いた状態の収容部の斜視図である。
【
図8】
図8は、蓋部を閉じた状態の配索方向に沿う収容部の縦断面図である。
【
図9】
図9は、第1変形例に係る収容部における蓋部を開いた状態の斜視図である。
【
図10】
図10は、第1変形例に係る収容部における蓋部を閉じた状態の配索方向に沿う収容部の縦断面図である。
【
図14】
図14は、フェライトへの電線及びバスバの挿通状態を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明に関する具体的な実施形態について、各図を参照しながら以下に説明する。
【0012】
図1は、本実施形態に係る配索構造が適用された電気接続箱における配索部材の接続箇所の斜視図である。
図1に示すように、本実施形態における配索構造は、配索部材100をジャンクションブロック等の電気接続箱1に配索する構造である。電気接続箱1は、2つの端子部2,3を備えている。配索部材100は、配索材として、バスバ10と、電線60とを備えており、これらのバスバ10及び電線60の端部が電気接続箱1の端子部2,3に締結されて接続されている。これにより、電気接続箱1に配索部材100が配索されている。配索部材100のバスバ10と電線60は、電気接続箱1からバッテリ等に接続される配索材であり、一方が正極、他方が負極とされている。
【0013】
図2は、配索部材の斜視図である。
図3は、配索部材のフェライトケースを外した状態の斜視図である。
【0014】
図2及び
図3に示すように、バスバ10及び電線60を備えた配索部材100は、フェライト部70を有している。フェライト部70には、フェライト71が設けられており、このフェライト71は、絶縁樹脂製のフェライトケース72によって覆われている。フェライト71は、一対の分割フェライト71a,71bから構成されおり、これらの分割フェライト71a,71bが互いに組み合わされて楕円形の環状に形成されている。
【0015】
バスバ10及び電線60は、環状のフェライト71に通され、その外周がフェライト71によって周方向にわたって覆われている。これにより、バスバ10及び電線60に高電圧・大電流の電流が流された際にも、フェライト71によってノイズの発生が抑えられる。フェライト71において、バスバ10及び電線60は、互いに近接されて並列に配索された並列配索部10A,60Aとされている。
【0016】
バスバ10に並設される電線60は、芯線の外周を絶縁性樹脂からなる外被で覆った絶縁電線からなるもので、一方の端部に、孔部61aを有する端子金具61が接続されている。この電線60は、一方の端部に設けられた端子金具61が電気接続箱の端子部3に接続され、他方の端部が、例えば、バッテリの端子に接続される。
【0017】
図4は、配索部材を構成するバスバの斜視図である。
図4に示すように、バスバ10は、板状に形成されている。このバスバ10は、例えば、銅、銅合金、アルミニウムまたはアルミニウム合金等の導電性金属材料からなる板材から形成されている。このバスバ10は、一方の端部が、孔部21aを有する端子接続部(接続部)21とされ、他方の端部が、孔部22aを有する電線接続部22とされている。バスバ10は、端子接続部21が電気接続箱1の端子部2に接続され、電線接続部22に電線23が接続される。
【0018】
バスバ10は、電線接続部22を有する他方の端部側が並列配索部10Aとされている。バスバ10は、この並列配索部10Aにおいて、その幅方向が、バスバ10と電線60との配列方向に沿うように、フェライト71に通されている。
【0019】
バスバ10は、並列配索部10Aにおける電線接続部22と反対側の端部において、水平方向へ略直角に屈曲する水平屈曲部10Bを有している。そして、バスバ10は、水平屈曲部10Bで屈曲され、並列配索部10Aに対して側方へ延在する水平延在部10Cを有している。この水平延在部10Cにおける並列配索部10Aと反対側の端部は、垂直に屈曲された垂直屈曲部10Dを有している。垂直屈曲部10Dの端子接続部21側は、電線接続部22と反対側へ延在する垂直延在部10Eとされている。この垂直延在部10Eにおける端子接続部21側の端部は、垂直に屈曲された垂直屈曲部10Fを有しており、この垂直屈曲部10Fにおける垂直延在部10Eと反対側が端子接続部21とされている。このように、バスバ10は、水平屈曲部10B、垂直屈曲部10D,10Fにおいて屈曲されて延在方向が変更されている。
【0020】
図5は、電線に接続されてケースに覆われたバスバの斜視図である。
図6は、電線に接続されてケースに覆われたバスバにおける収容部の蓋部を開いた状態の斜視図である。
【0021】
図5及び
図6に示すように、バスバ10は、端子接続部21及び垂直延在部10Eの一部を除く部分がケース30によって覆われている。ケース30は、第1ケース31と、第2ケース32とから構成されている。
【0022】
第1ケース31は、バスバ10の下方側に装着されており、バスバ10は、その下方側が第1ケース31によって覆われる。第2ケース32は、バスバ10の上方側に装着されており、バスバ10は、その上方側が第2ケース32によって覆われている。第2ケース32は、バスバ10に装着された第1ケース31に対して、その上方側から組付けられる。これにより、バスバ10に第1ケース31及び第2ケース32が装着され、これらの第1ケース31及び第2ケース32からなるケース30によってバスバ10が覆われる。
【0023】
第1ケース31及び第2ケース32からなるケース30は、複数のロック部37を有している。ロック部37は、第1ケース31に形成された係止爪38と、第2ケース32に形成された係止孔39とから構成されている。このロック部37は、バスバ10に装着された第1ケース31に対して第2ケース32を組付けることにより、係止爪38が係止孔39に入り込んで係止する。これにより、第1ケース31と第2ケース32とが組付けられた状態でロックされる。
【0024】
図7は、蓋部を開いた状態の収容部の斜視図である。
図8は、蓋部を閉じた状態の配索方向に沿う収容部の縦断面図である。
図7及び
図8に示すように、ケース30は、収容空間Sを有する収容部40を備えており、この収容部40の収容空間Sには、バスバ10の電線接続部22と電線23との接続箇所が収容されている。電線23は、芯線の外周を絶縁性樹脂からなる外被で覆った絶縁電線からなるもので、例えば、バッテリの端子に接続される。電線23は、その端部に孔部24aを有する端子金具24が接続されており、この端子金具24が接続された端部が収容部40の収容空間Sに収容されている。
【0025】
収容部40は、底壁部41と、周壁部42と、蓋部43とを有しており、これらの底壁部41、周壁部42及び蓋部43によって収容空間Sが形成される。底壁部41は、第1ケース31に形成されており、周壁部42及び蓋部43は、第2ケース32に形成されている。
【0026】
周壁部42は、互いに対向する2つの側壁部44と、これらの側壁部44の端部に連設されて互いに対向する2つの端壁部45とから構成されている。周壁部42は、底壁部41の周縁から立設するように設けられている。周壁部42を構成する一方の端壁部45には、引出凹部45aが形成されており、この引出凹部45aに電線23が通されている。
【0027】
蓋部43は、周壁部42を構成する一方の側壁部44にヒンジ部46を介して一体に成形されている。蓋部43は、ヒンジ部46によって側壁部44に対して回動可能に連結されている。周壁部42を構成する他方の側壁部44には、係止部44aが形成されており、これらの係止部44aは、蓋部43におけるヒンジ部46の形成側と反対側の縁部に形成された係止孔43aに係止可能とされている。
【0028】
収容部40を構成する底壁部41には、スタッドボルト48が立設されている。バスバ10の電線接続部22は、その孔部22aにスタッドボルト48が挿し込まれた状態で、収容空間Sに収容されている。この電線接続部22には、孔部24aにスタッドボルト48が挿し込まれた電線23の端子金具24が重ね合わされている。そして、このスタッドボルト48にナット(締結具)49が螺合されて締め付けられ、これにより、バスバ10の電線接続部22と電線23の端子金具24とが締結されている。
【0029】
バスバ10と電線23との接続箇所を収容する収容部40は、蓋部43を回動させて周壁部42の上部に被せることにより、収容空間Sが塞がれる。このとき、蓋部43の係止孔43aが側壁部44の係止部44aに係止される。これにより、蓋部43の回動が規制されて収容空間Sが塞がれた状態に維持される。
【0030】
また、蓋部43には、収容空間Sを塞いだ状態において、スタッドボルト48の先端が挿し込まれる凹部51が形成されている。この凹部51には、その周縁部に、係合壁52が形成されている。収容空間Sを蓋部43が塞いだ状態において、係合壁52は、その端面が、スタッドボルト48に締め付けられたナット49の対向位置に、略隙間なく配置される突出寸法とされている。したがって、スタッドボルト48へのナット49の締め付けが不十分であると、ナット49が浮き上がるため、蓋部43の係合壁52の端面がナット49に突き当たる。このため、蓋部43によって収容空間Sを完全に閉めることができず、蓋部43の係止孔43aに側壁部44の係止部44aが係止されなくなる。このことから、バスバ10の電線接続部22と電線23の端子金具24との接続不良を検知することができる。
【0031】
以上、説明したように、本実施形態に係る配索構造によれば、環状のフェライト71にバスバ10及び電線60が通されているので、バスバ10及び電線60に電流が流された際のノイズの発生をフェライト71によって抑えることができる。
【0032】
また、バスバ10は、電気接続箱1に接続される端子接続部21と、フェライト71へ挿通される並列配索部10Aとの間で、電線60との配列方向に沿って屈曲されている。したがって、電気接続箱1に接続される接続箇所から電線60に隣接されるフェライト71へバスバ10を無理なく導いて配索することができる。したがって、電線60及びバスバ10からなる複数の配索材を環状のフェライト71へ通して電気接続箱1へ容易に配索することができる。
【0033】
また、バスバ10を覆うケース30は、バスバ10と端子金具24との接続箇所が収容される収容空間Sを有する収容部40を備えているので、バスバ10と端子金具24との接続箇所を収容部40の収容空間Sに収容させて保護することができる。また、蓋部43を開くことにより、収容空間S内におけるバスバ10と端子金具24との接続箇所を目視してナット49の有無や接続状態を確認することができる。
【0034】
しかも、蓋部43は、収容空間Sを閉じた状態で、ナット49の対向位置に隙間なく配置される係合壁52を有している。したがって、ナット49が緩んで浮き上がっていると、係合壁52がナット49に突き当たり、蓋部43を閉じることができず、このことから、バスバ10と端子金具24との接続不良を検知できる。また、蓋部43が周壁部42に回動可能に設けられているので、部品点数を削減できる。
【0035】
また、バスバ10の並列配索部10Aは、幅方向が電線60との配列方向に沿わされてフェライト71に通されている。したがって、バスバ10と電線60との配列方向が水平方向となるように配索部材100を車両に配索することにより、高さの嵩張りを抑えることができ、高さに制限がある車両の狭隘な配索スペースへ無理なく配索させることができる。
【0036】
次に、収容部の変形例について説明する。
図9は、第1変形例に係る収容部における蓋部を開いた状態の斜視図である。
図10は、第1変形例に係る収容部における蓋部を閉じた状態の配索方向に沿う収容部の縦断面図である。
図9及び
図10に示すように、第1変形例に係る収容部40Aは、周壁部42と別体の蓋部43を備えている。
【0037】
周壁部42は、一方の側壁部44に1つの係止部44aを有し、他方の側壁部44に2つの係止部44aを有している。また、蓋部43は、一方の縁部に1つの係止孔43aを有し、他方の縁部に2つの係止孔43aを有している。
【0038】
この変形例に係る収容部40Aでは、周壁部42の上部に蓋部43を被せることにより、蓋部43の係止孔43aに、周壁部42の係止部44aがそれぞれ係止する。これにより、周壁部42の上部に蓋部43が組付けられ、蓋部43によって収容空間Sが塞がれる。
【0039】
この収容部40Aの場合、スタッドボルト48へのナット49の締め付けが不十分であり、ナット49が浮き上がっていると、蓋部43の係合壁52の端面がナット49に突き当たる。このため、周壁部42へ蓋部43を組付けることができず、このことから、バスバ10の電線接続部22と電線23の端子金具24との接続不良を検知することができる。特に、この収容部40Aでは、蓋部43の係合壁52の端面がナット49に突き当たることにより、蓋部43が周壁部42から外れるので、バスバ10の電線接続部22と電線23の端子金具24との接続不良をより精度よく検知できる。
【0040】
図11は、第2変形例に係る収容部の斜視図である。
図12は、第2変形例に係る収容部の側面図である。
図13は、第2変形例に係る収容部の側面図である。
図11及び
図12に示すように、第2変形例に係るケース30では、端壁部45から電線23の延伸方向に突出した電線引出ガイド84が設けられており、結束バンド80を用いて電線23を電線引出ガイド84に固定できるようになっている。
【0041】
結束バンド80は、バンド部82と、バンド部82が挿通され、戻り方向の移動を阻止する図示しない係合爪が設けられているヘッド部81を有している。引出ガイド84は、電線23とともに結束バンド80のバンド部82により結束される曲面部86と、曲面部86の両端に形成された端部87,88を有している。端部87,88には、バンド部82を電線側に貫通させるとともに、結束バンド80のヘッド部81よりも小さい貫通孔が形成されている。したがって、結束バンド80が電線23の外周方向に回転した場合、ヘッド部81は、端部87の側面87a又は端部88の側面88aに当接し、回転方向の移動が規制される。
【0042】
結束バンド80は、車両の振動などに起因して電線23の外周に沿って移動する可能性がある。そのため、
図13に示すように、電線引出ガイド84の近傍に他部品90が設置されている場合、ヘッド部81の移動を規制しなければヘッド部81が他部品90と干渉する可能性が生じるが、第2変形例に係るケース30では、ヘッド部81が、端部88の側面88aに当接してそれ以上移動しないため、ヘッド部81と他部品90とが干渉することを防止できる。
【0043】
なお、上記実施形態では、幅方向を電線60との配列方向に沿うようにバスバ10を電線60とともにフェライト71へ通したが、
図14に示すように、バスバ10は、電線60との配列方向に対して幅方向を直交させるようにフェライト71へ通してもよい。この場合、バスバ10と電線60との配列方向が水平方向に沿うように車両に搭載した状態において、車両の上下方向の振動が付与された際にも、振動によるバスバ10の変位を抑え、バスバ10を安定した状態に配置させることができる。
【0044】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【0045】
ここで、上述した本発明に係る配索構造の実施形態の特徴をそれぞれ以下[1]~[7]に簡潔に纏めて列記する。
[1] 電気接続箱(1)に接続される配索部材(100)の配索構造であって、
前記配索部材(100)は、
電線(60)と、
少なくとも一部がケース(30)に覆われた板状のバスバ(10)と、
前記電線(60)と前記バスバ(10)とが隣接されて挿通される環状のフェライト(71)と、
を備え、
前記バスバ(10)は、
前記電気接続箱(1)に接続される接続部(端子接続部21)と、
前記フェライト(71)へ挿通される並列配索部(10A)と、
を有し、
前記接続部(端子接続部21)と前記並列配索部(10A)との間で、前記電線(60)との配列方向に沿って少なくとも一か所で屈曲されている、配索構造。
【0046】
上記[1]の構成の配索構造によれば、環状のフェライトにバスバ及び電線が通されているので、バスバ及び電線に電流が流された際のノイズの発生をフェライトによって抑えることができる。
また、バスバは、電気接続箱に接続される接続部と、フェライトへ挿通される並列配索部との間で、電線との配列方向に沿って少なくとも一か所で屈曲されている。したがって、電気接続箱に接続される接続箇所から電線に隣接されるフェライトへバスバを無理なく導いて配索することができる。したがって、電線及びバスバからなる複数の配索材を環状のフェライトへ通して電気接続箱へ容易に配索することができる。
【0047】
[2] 前記バスバ(10)は、前記電気接続箱(1)との接続部(端子接続部21)と反対側の端部に、端子金具(24)が締結具(ナット49)によって締結され、
前記ケース(30)は、前記バスバ(10)と前記端子金具(24)との接続箇所が収容される収容空間(S)を有する収容部(40)を備え、
前記収容部(40)は、
前記収容空間(S)の周囲を囲む周壁部(42)と、
前記周壁部(42)の上部に組付けられて前記収容空間(S)を開閉する蓋部(43)と、
を備える、上記[1]に記載の配索構造。
【0048】
上記[2]の構成の配索構造によれば、バスバと端子金具との接続箇所を収容部の収容空間に収容させて保護することができる。また、蓋部を開くことにより、収容空間内におけるバスバと端子金具との接続箇所を目視して締結具の有無や接続状態を確認することができる。
【0049】
[3] 前記蓋部(43)は、前記周壁部(42)に対して回動可能に設けられるとともに、前記収容空間(S)を閉じた状態で、前記締結具(ナット49)の対向位置に隙間なく配置される係合壁(52)を有する、
上記[2]に記載の配索構造。
【0050】
上記[3]の構成の配索構造によれば、蓋部を回動させて収容空間を閉じた状態で、係合壁が締結具の対向位置に隙間なく配置される。したがって、締結具が緩んで浮き上がっていると、係合壁が締結具に突き当たり、蓋部を閉じることができず、このことから、バスバと端子金具との接続不良を検知できる。また、蓋部が周壁部に回動可能に設けられているので、部品点数を削減できる。
【0051】
[4] 前記蓋部(43)は、前記周壁部(42)に対して着脱可能とされているとともに、前記収容空間(S)を閉じた状態で、前記締結具(ナット49)の対向位置に隙間なく配置される係合壁(52)を有する、
上記[2]に記載の配索構造。
【0052】
上記[4]の構成の配索構造によれば、蓋部を周壁部に組付けて収容空間を閉じた状態で、係合壁が締結具の対向位置に隙間なく配置される。したがって、締結具が緩んで浮き上がっていると、係合壁が締結具に突き当たり、蓋部が周壁部から外れるので、バスバと電線の端子金具との接続不良を検知できる。
【0053】
[5] 前記バスバ(10)の前記並列配索部(10A)は、幅方向が前記電線(60)との配列方向に沿わされている、
上記[1]から[4]のいずれかに記載の配索構造。
【0054】
上記[5]の構成の配索構造によれば、バスバと電線との配列方向が水平方向となるように配索部材を車両に配索することにより、高さの嵩張りを抑えることができ、高さに制限がある車両の狭隘な配索スペースへ無理なく配索させることができる。
【0055】
[6] 前記バスバ(10)の前記並列配索部(10A)は、幅方向が前記電線(60)との配列方向と直交されている、
上記[1]から[4]のいずれかに記載の配索構造。
【0056】
上記[6]の構成の配索構造によれば、バスバと電線との配列方向が水平方向となるように配索部材を車両に配索することにより、車両の上下方向の振動が付与された際にも、振動によるバスバの変位を抑え、安定した状態に配置させることができる。
【0057】
[7] 前記収容部(40)は、
前記周壁部(45)から前記電線(23)の延伸方向に突出した電線引出ガイド(84)が設けられており、
前記電線引出ガイド(84)は、前記電線(23)とともに結束バンド(80)のバンド部(82)により結束される曲面部(86)と、前記曲面部(86)の両端に形成され前記結束バンド(80)のヘッド部(81)の移動を規制する両端部(87,88)と、を有している、
上記[2]に記載の配索構造。
【0058】
上記[7]の構成の配索構造によれば、結束バンドのヘッド部が、電線引出ガイドの端部の側面に当接してそれ以上移動しないため、電線引出ガイドの近傍に他部品があったとしても、ヘッド部と他部品との干渉を防止できる。
【符号の説明】
【0059】
1 電気接続箱
10 バスバ
10A 並列配索部
21 端子接続部(接続部)
24 端子金具
30 ケース
40,40A 収容部
42 周壁部
43 蓋部
49 ナット(締結具)
52 係合壁
60 電線
71 フェライト
100 配索部材
S 収容空間