(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-18
(45)【発行日】2024-11-26
(54)【発明の名称】模様付き容器の製造方法
(51)【国際特許分類】
B29C 43/58 20060101AFI20241119BHJP
B29C 43/36 20060101ALI20241119BHJP
B29C 43/20 20060101ALI20241119BHJP
B29C 45/00 20060101ALN20241119BHJP
【FI】
B29C43/58
B29C43/36
B29C43/20
B29C45/00
(21)【出願番号】P 2022182416
(22)【出願日】2022-11-15
【審査請求日】2023-07-10
(73)【特許権者】
【識別番号】521031589
【氏名又は名称】嘉威生活股▲フン▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】Jia Wei Lifestyle, Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【氏名又は名称】山田 強
(72)【発明者】
【氏名】▲呉▼瑞良
【審査官】岩▲崎▼ 則昌
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-518403(JP,A)
【文献】特許第6097419(JP,B1)
【文献】特開2014-065252(JP,A)
【文献】特開2006-142710(JP,A)
【文献】特許第2787611(JP,B2)
【文献】特開昭54-120673(JP,A)
【文献】特開昭48-034250(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第106218256(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第101524883(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 43/58
B29C 43/36
B29C 43/20
B29C 45/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口があるプラスチック材料製の容器半製品を、該容器半製品の温度を70℃~90℃の範囲内にし且つ前記開口を上向きにして下型に設置するステップと、
一面に転写用の模様がついている転写紙を、前記一面が下になって前記容器半製品に向かいながら、前記容器半製品の前記開口の少なくとも一部を覆うように前記容器半製品上に敷くステップと、
温度が190℃~230℃の範囲内になるよう加熱した上型を用いて、前記容器半製品及び前記転写紙が前記下型との間に挟まれるように前記転写紙を下へ押圧して変形させて、前記容器半製品の内表面に完全に合うように貼り付けることで、前記転写紙の前記一面にある模様を熱転写により前記容器半製品の前記内表面に貼り付けて、模様付き容器を得るステップと、を含み、
前記上型は、型本体と、前記型本体の外面を包んでおり、前記転写紙を下へ押圧する際前記転写紙に接触する弾性シリコーンゴムカバーとを備え、
また、押圧する際、前記上型と前記下型とが対向して加える挟圧力は、30kgf/cm
2~80kgf/cm
2の範囲内にあり、押圧時間は、30秒~60秒の範囲内にあることを特徴とする模様付き容器の製造方法。
【請求項2】
前記弾性シリコーンゴムカバーにおいて、前記転写紙に接触する部分の厚さは、5mm~8mmの範囲にあることを特徴とする請求項1に記載の模様付き容器の製造方法。
【請求項3】
前記転写紙を押圧する期間の前記上型の温度を、該期間において前記転写紙が前記容器半製品と接触する際の温度を150℃~170℃の範囲内に維持することができるように、制御することを特徴とする請求項1に記載の模様付き容器の製造方法。
【請求項4】
プラスチック材料を粉末着色剤と均一に混合して、初期半製品を得るステップと、
オーブンを用いて前記初期半製品を100℃で所定時間の乾燥処理にかけて、乾燥半製品を得るステップと、
射出成形装置を使用して前記乾燥半製品を加熱熔解して流動半製品にし、該流動半製品を成形型に注入して前記容器半製品を固定成形するステップと、を更に含む
ことを特徴とする請求項1~請求項3のいずれかの一項に記載の模様付き容器の製造方法。
【請求項5】
前記成形型で前記容器半製品を固定成形する期間の前記流動半製品の温度は、110℃~130℃の範囲にあり、
前記流動半製品を前記成形型に注入する時の前記流動半製品の温度は、180℃~230℃の範囲にあることを特徴とする請求項4に記載の模様付き容器の製造方法。
【請求項6】
前記容器半製品は、熱可塑性重合体または熱硬化性重合体であることを特徴とする請求項1に記載の模様付き容器の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラスチック製品の製造方法に関し、特に、プラスチック材料により構成された模様付き容器の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
食器の外観を向上させるために、プラスチック食器の表面に模様を付けることが多く、例えば特許文献1には、金メッキアップリケ付きメラミン食器の製造方法が開示されている。メラミン食器を形成した後、模様紙を直接にメラミン食器の表面に貼り付け、そして、貼り付けされたメラミン食器を熱圧して、模様紙をメラミン食器の表面に固着する。この方法は、模様付き食器を製造できるが、先ず模様紙を食器の表面にぴったりと貼り付けないと熱圧できないので、利便性が欠けている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従って、本発明の目的は、従来技術の少なくとも1つの問題点を解消する模様付き容器の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、開口があるプラスチック材料製の容器半製品を、該容器半製品の温度を70℃~90℃の範囲内にし且つ前記開口を上向きにして下型に設置するステップと、
一面に転写用の模様がついている転写紙を、前記一面が下になって前記容器半製品に向かいながら、前記容器半製品の前記開口の少なくとも一部を覆うように前記容器半製品上に敷くステップと、
温度が190℃~230℃の範囲内になるよう加熱した上型を用いて、前記容器半製品及び前記転写紙が前記下型との間に挟まれるように前記転写紙を下へ押圧して変形させて、前記容器半製品の内表面に完全に合うように貼り付けることで、前記転写紙の前記一面にある模様を熱転写により前記容器半製品の前記内表面に貼り付けて、模様付き容器を得るステップと、を含み、
前記上型は、型本体と、前記型本体の外面を包んでおり、前記転写紙を下へ押圧する際前記転写紙に接触する弾性シリコーンゴムカバーとを備え、
また、押圧する際、前記上型と前記下型とが対向して加える挟圧力は、30kgf/cm2~80kgf/cm2の範囲内にあり、押圧時間は、30秒~60秒の範囲内にあることを特徴とする模様付き容器の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0006】
本発明の模様付き容器の製造方法は、弾性シリコーンゴムカバーを備える上型で転写紙及び容器半製品を下へ押圧する方法を設計することにより、転写紙を容器半製品の内表面に完全に合うように貼り付けることができ、更に転写紙にある模様の容器半製品への熱転写の完全性を大幅に上げることができ、模様付き容器の製造品質及び歩留まりを上げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の模様付き容器の製造方法の実施形態を説明するフロー図である。
【
図2】該実施形態の転写紙を熱圧設備に設置するステップを示す断面図である。
【
図3】該実施形態の転写紙の構造を示す平面図である。
【
図4】該実施形態の熱転写ステップを示す断面図である。
【
図5】該実施形態の完成品取出しステップを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図1に示されるように、本発明の模様付き容器の製造方法の実施形態は、模様付き容器800の製造に適し、且つ、以下の初期半製品製造ステップ901、乾燥半製品製造ステップ902、容器半製品製造ステップ903、容器半製品を熱圧設備に設置するステップ904、転写紙を熱圧設備に設置するステップ905、熱転写ステップ906、完成品取出しステップ907を含む。
【0009】
初期半製品製造ステップ901は、これから製造する模様付き容器800の色に応じて、プラスチック材料を粉末着色剤(color agent)と均一に混合して、初期半製品を得る。
【0010】
前記プラスチック材料は、熱硬化性重合体、例えば樹脂であり得るがそれに限らなく、または、熱可塑性重合体例えばPE(polyethylene、ポリエチレン)、PVC(polyvinyl chloride、ポリ塩化ビニル)、PP(polypropylene、ポリプロピレン)、PS(polystyrene、ポリスチレン)、ABS(acrylonitrile butadiene styrene、アクリロニトリル、ブタジエン、スチレンの共重合体)などであり得るがそれらに限らない。
【0011】
乾燥半製品製造ステップ902は、オーブンを用いて前記初期半製品を所定時間の乾燥処理にかけて、吸着した水分を取り除いて、乾燥半製品を得る。該乾燥処理は、例えば100℃で30分の乾燥が挙げられるがそれに限らない。
【0012】
容器半製品製造ステップ903は、前記乾燥半製品を射出成形装置に投入して、射出成形装置を使用して前記乾燥半製品を加熱熔解して流動半製品にし、そして、該流動半製品を成形型に注入して開口があるプラスチック製の容器半製品600を固定成形する。
【0013】
該流動半製品を成形型に注入する時の該流動半製品の温度は、180℃~230℃の範囲内にある。該成形型で容器半製品600に固定成形する期間の該流動半製品の温度は、110℃~130℃の範囲内にある。
【0014】
上記の容器半製品600を製造するためのステップは既有の技術であってその製造方法も多様であるので、実施する際上記の実施形態に限らない。
【0015】
図1~
図3に示されるように、容器半製品を熱圧設備に設置するステップ904は、開口があるプラスチック製の容器半製品600を、容器半製品600の温度を70℃~90℃の範囲内に維持しながら該開口を上向きにして熱圧設備3の下型31に設置する。この実施形態において、前記成形型から脱型して取り出したばかりの容器半製品600を直接に下型31に設置し、この際、容器半製品600は余熱で70℃~90℃の範囲内の温度に維持する。ただし、実施する際、下型31に設置された容器半製品600を更に加熱することにより70℃~90℃の範囲内の温度に維持することもできる。
【0016】
転写紙を熱圧設備に設置するステップ905は、紙の性質を有する紙本体701と紙本体701の一面についていて熱転写により他の物体に転写できる転写用の模様702とを有する転写紙700を、前記一面が下になって容器半製品600に向かいながら、容器半製品600の開口の少なくとも一部を覆うように水平に容器半製品600の頂縁に敷く。
【0017】
図1、
図4、
図5に示されるように、熱転写ステップ906は、温度が190℃~230℃の範囲内になるよう加熱した上型32を用いて、容器半製品600及び転写紙700が下型31との間に挟まれるように転写紙700を下へ押圧して湾曲するように変形させて、転写紙700の容器半製品600の前記開口内に押圧された部分を容器半製品600の内表面に完全に合うように貼り付けることで、上型32を上から下へ下型31と共に型締めさせて、転写紙700の前記一面にある模様702を熱転写により完全に容器半製品600の前記内表面に貼り付けて、模様付き容器800を得る。
【0018】
また、押圧する際、上型32と下型31とが対向して転写紙700及び容器半製品600に加えた挟圧力は、30kgf/cm2~80kgf/cm2の範囲内にあり、押圧時間は、30秒~60秒の範囲内にある。
【0019】
上型32は、転写紙700を押圧する前に、予め190℃~230℃に加熱し、且つ、転写紙700及び容器半製品600を押圧し始めた後、転写紙700を押圧する期間の上型32の温度を、該期間において転写紙700が前記容器半製品600と接触する際の温度を150℃~170℃の範囲内に維持することができるように、持続的に制御することで、転写紙700の模様702を熱転写により容器半製品600の前記内表面に貼り付けて模様付き容器800を得る。
【0020】
この実施形態において、
図2に示されるように、上型32は、型本体321と、型本体321の外面を包んでおり、転写紙700を下へ押圧する際前記転写紙700に接触する弾性シリコーンゴム(silicone rubber)カバー322とを備える。
【0021】
弾性シリコーンゴムカバー322において、転写紙700に接触する部分の厚さは、5mm~8mmの範囲にある。上型32が転写紙700を下へ押圧する際、
図4に示されるように、弾性シリコーンゴムカバー322が受圧されて容器半製品600の前記内表面の輪郭に沿って弾性的に変形し、そして転写紙700を容器半製品600の前記内表面に完全に合うように貼り付け、即ち転写紙700の模様702が完全に容器半製品600の前記内表面に貼り付けられるので、転写紙700の熱転写効果を大幅に上げることができる。
【0022】
前記成形型から脱型して取り出したばかりの余熱がある容器半製品600を直接に下型31に設置してから続いて転写紙700を敷き且つ熱転写する方法により、容器半製品600の縮む量が少なく且つ表面が完全に固化していない時に熱転写を行うでき、且つ、模様702と容器半製品600の前記内表面との結合度を更に高めることができる。
【0023】
更に、上型32は、転写紙700を押圧する前に、予め190℃~230℃に加熱することにより、上型32が転写紙700に接触して降温した後の温度がおよそ150℃~170℃になることで、後の押圧期間において素早く温度制御を行うことができるようになり、該押圧期間において転写紙700が容器半製品600と接触する際の温度が150℃~170℃の範囲内に安定に維持されるようになり、安定した転写効果を得られる。
【0024】
図5に示されるように、完成品取出しステップ907は、熱転写ステップ906の後に上型32を上へ移動させて下型31から離脱し、そして、転写紙700が熱転写された後に残った紙本体701及び完成された模様付き容器800を下型31から取り出して、模様702を有する模様付き容器800を得ることができる。
【0025】
上記の内容によれば、本発明の模様付き容器800の製造方法は、弾性シリコーンゴムカバー322を有する上型32で転写紙700及び容器半製品600を下へ押圧する方法の設計により、弾性シリコーンゴムカバー322が受圧されて容器半製品600の前記内表面の輪郭に沿って弾性的に変形する特性を利用して、転写紙700を容器半製品600の前記内表面に完全に合うように貼り付けることができ、更に、脱型して取り出したばかりの余熱がある容器半製品600に対して転写紙700による熱転写を行うことにより、且つ上型32を予め190℃~230℃に加熱してから転写紙700及び容器半製品600を押圧する設計に合わせて、上型32が比較的に低温の転写紙700及び容器半製品600を押圧した後の温度がおよそ150℃~170℃となって、その後に素早く温度制御を行えるようになることで、押圧期間における転写紙700が容器半製品600と接触する際の温度を、優れた熱転写効果を得られる150℃~170℃の範囲内に安定に維持することができて、転写後の模様702と容器半製品600との間の結合度を高めることができるようになる。
【0026】
従って、本発明の模様付き容器800の製造方法は、転写紙700にある模様702の容器半製品600への熱転写の完全性及び結合度を大幅に上げることができて、模様付き容器800の製造品質及び歩留まりが向上することができ、非常に斬新な創作であって、本発明の目的を確実に達成できる。
【0027】
以上、本発明の実施形態及び変化例を説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、最も広い解釈の精神および範囲内に含まれる様々な構成として、全ての修飾および均等な構成を包含するものとする。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明の模様付き容器の製造方法は、模様付き容器の製造に適用できる。
【符号の説明】
【0029】
3 熱圧設備
31 下型
32 上型
321 型本体
322 弾性シリコーンゴムカバー
600 容器半製品
700 転写紙
701 紙本体
702 模様
800 模様付き容器
901 初期半製品製造ステップ
902 乾燥半製品製造ステップ
903 容器半製品製造ステップ
904 容器半製品を熱圧設備に設置するステップ
905 転写紙を熱圧設備に設置するステップ
906 熱転写ステップ
907 完成品取出しステップ