(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-18
(45)【発行日】2024-11-26
(54)【発明の名称】オリゴヌクレオチドの送達剤としての糖質コンジュゲート
(51)【国際特許分類】
C07H 15/26 20060101AFI20241119BHJP
C07D 207/16 20060101ALI20241119BHJP
A61K 47/54 20170101ALN20241119BHJP
C12N 15/113 20100101ALN20241119BHJP
【FI】
C07H15/26 CSP
C07D207/16
A61K47/54
C12N15/113 Z ZNA
(21)【出願番号】P 2022186311
(22)【出願日】2022-11-22
(62)【分割の表示】P 2021036082の分割
【原出願日】2008-12-04
【審査請求日】2022-12-19
(32)【優先日】2008-09-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2008-08-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2007-12-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2007-12-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2008-05-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】506336728
【氏名又は名称】アルニラム ファーマスーティカルズ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】ALNYLAM PHARMACEUTICALS, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100139723
【氏名又は名称】樋口 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100116540
【氏名又は名称】河野 香
(72)【発明者】
【氏名】ムシアー マノハラン
(72)【発明者】
【氏名】カランソッタシル ジー ラジーヴ
(72)【発明者】
【氏名】ジャヤプラカシュ ケイ ナラヤナンナイル
(72)【発明者】
【氏名】マルティーン マイエル
【審査官】早川 裕之
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2006/020768(WO,A1)
【文献】国際公開第2006/078278(WO,A1)
【文献】特表2007-527891(JP,A)
【文献】国際公開第2005/116226(WO,A1)
【文献】Nature Biotechnology,2007年,Vol.25,No.10,p.1149-1157
【文献】JOURNAL OF MEDICINAL CHEMISTRY,2004年,Vol.47,No.23,p.5798-5808
【文献】JOURNAL OF MEDICINAL CHEMISTRY,1999年,Vol.42,No.4,p.609-618
【文献】Bioconjugate Chem.,2003年,Vol.14,No.1,p.239-246
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07H 15/26
C07D 207/16
A61K 47/54
C12N 15/113
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
次式(I’)に示す構造を有する化合物:
【化1】
[式中、
AおよびBは、それぞれ存在ごとに独立して、O、N(R
N)、またはSであり;
XおよびYの一方は、H、リン酸基、亜リン酸基、またはホスホロアミダイトであり、かつXおよびYのもう一方は保護基であり;
Rは、L
1であるか、または次式(II)~(V):
【化2】
に示す構造を有し;
q
2A、q
2B、q
3A、q
3B、q
4A、q
4B、q
5A、q
5B、およびq
5Cは、それぞれ存在ごとに独立して、0~20であり、ここで、繰り返し単位は、同一であっても異なっていてもよく;
Qは、存在しないか、-(P
7-Q
7-R
7)
p-T
7-、または-T
7-Q
7-T
7’-B’-T
8’-Q
8-T
8-であり;
P
2A、P
2B、P
3A、P
3B、P
4A、P
4B、P
5A、P
5B、P
5C、P
7、T
2A、T
2B、T
3A、T
3B、T
4A、T
4B、T
5A、T
5B、T
5C、T
7、T
7’、T
8、およびT
8’は、それぞれ存在ごとに独立して、存在しないか、CO、NH、O、S、OC(O)、NHC(O)、CH
2、CH
2NH、またはCH
2Oであり;
B’は、-CH
2-N(B
L)-CH
2-であり;
B
Lは、-T
B-Q
B-T
B’-R
Xであり;
Q
2A、Q
2B、Q
3A、Q
3B、Q
4A、Q
4B、Q
5A、Q
5B、Q
5C、Q
7、Q
8、およびQ
Bは、それぞれ存在ごとに独立して、存在しないか、アルキレン、または置換アルキレンであり、ここで、1つ以上のメチレンは、O、S、S(O)、SO
2、N(R
N)、C(R’)=C(R’’)、C≡C、またはC(O)の1つ以上で中断または終結されてよく;
T
BおよびT
B’は、それぞれ存在ごとに独立して、存在しないか、CO、NH、O、S、OC(O)、OC(O)O、NHC(O)、NHC(O)NH、NHC(O)O、CH
2、CH
2NH、またはCH
2Oであり;
R
Xは、
コレステロール、コール酸、アダマンタン酢酸、1-ピレン酪酸、ジヒドロテストステロン、1,3-ビス-O(ヘキサデシル)グリセロール、ゲラニルオキシヘキシル基、ヘキサデシルグリセロール、ボルネオール、メントール、1,3-プロパンジオール、ヘプタデシル基、パルミチン酸、ミリスチン酸、O3-(オレオイル)リトコール酸、O3-(オレオイル)コレン酸、ジメトキシトリチル、およびフェノキサジンからなる群から選択される親油性物質、または
DOTMA、DOTAP、DOTB、DOGS、DPPES、DC-Chol、DMRIE、DMRIE-HP、およびDOSPAからなる群から選択されるカチオン性脂質であり;
R
2A、R
2B、R
3A、R
3B、R
4A、R
4B、R
5A、R
5B、R
5C、およびR
7は、それぞれ存在ごとに独立して、存在しないか、NH、O、S、CH
2、C(O)O、C(O)NH、NHCH(R
a)C(O)、C(O)-CH(R
a)-NH、CO、CH=N-O、
【化3】
またはヘテロシクリルであり;
L
1、L
2A、L
2B、L
3A、L
3B、L
4A、L
4B、L
5A、L
5B、およびL
5Cは、それぞれ存在ごとに独立して、糖質、またはヒドロキシル保護基を有するその誘導体であり、
前記糖質はガラクトースまたはN-アセチルガラクトサミン(GalNAc)であり;
R’およびR’’は、それぞれ存在ごとに独立して、H、C
1-C
6アルキル、OH、SH、またはN(R
N)
2であり;
R
Nは、それぞれ存在ごとに独立して、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、またはベンジルであり;
R
aは、Hまたはアミノ酸側鎖であり;
pはそれぞれ存在ごとに独立して、0~20を表す]。
【請求項2】
AおよびBはそれぞれOであり;
XおよびYの一方はHであり、かつXおよびYのもう一方は保護基であり;
Rは式(V)に示す構造を有し;
Qは、-P
7-Q
7-T
7-であり;
Q
7はアルキレンであり;
L
5A、L
5B、およびL
5Cは、それぞれ存在ごとに独立して、ヒドロキシル保護基を有する
前記糖質の誘導体である
請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
XはHであり、かつYは保護基であり;
Qは、-P
7-Q
7-T
7-であり、P
7はC(O)であり、Q
7はアルキレンであり、かつT
7はC(O)NHである;
請求項2に記載の化合物。
【請求項4】
前記糖質は、N-アセチルガラクトサミン(GalNAc)である、請求項
1~3のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項5】
【化4】
からなる群から選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項6】
【化5】
である、請求項2に記載の化合物。
【請求項7】
【化6】
である、請求項1に記載の化合物。
【請求項8】
【化7】
である、請求項1に記載の化合物。
【請求項9】
【化8】
である、請求項1に記載の化合物。
【請求項10】
次式により表される化合物。
【化9】
【請求項11】
化合物117を作製する方法であって、
【化10】
ヒドロキシプロリン化合物115:
【化11】
を加水分解して、ヒドロキシプロリン化合物116:
【化12】
を形成するステップ;および
ヒドロキシプロリン化合物116を、リガンド部分化合物110:
【化13】
またはその塩と、化合物117を作製するのに有効な条件下で反応させるステップ
を含む、方法。
【請求項12】
前記加水分解するステップが、THF/DCM/水の中のLiOHの存在下で行われ、次いで酢酸で中和することを含む、請求項
11に記載の方法。
【請求項13】
ヒドロキシプロリン化合物116をリガンド部分化合物110と反応させるステップが、DMF中のHBTU/DIEA、またはDMF中のTBTU/HOBt/DIEAの存在下で行われる、請求項
11に記載の方法。
【請求項14】
GalNAc酸103:
【化14】
を、分岐リンカー化合物108:
【化15】
またはその塩と、リガンド部分化合物109:
【化16】
を形成するのに有効な条件下で反応させるステップ;および
前記リガンド部分化合物109を、リガンド部分化合物110を形成するのに有効な条件下で水素化するステップ
をさらに含む、請求項
11に記載の方法。
【請求項15】
GalNAc酸103を分岐リンカー化合物108と反応させるステップが、DMF中のHBTU/DIEA/HOBtの存在下で行われる、請求項
14に記載の方法。
【請求項16】
リガンド部分化合物109を水素化するステップが、Pd/C、メタノール、および酢酸の存在下でH
2を用いて行われる、請求項
14に記載の方法。
【請求項17】
GalNAc誘導体化合物102:
【化17】
を、GalNAc酸化合物103を形成するのに有効な条件下で水素化するステップをさらに含む、請求項
14に記載の方法。
【請求項18】
GalNAc誘導体化合物102を水素化するステップが、Pd/C、メタノール、および酢酸の存在下でH
2を用いて行われる、請求項
17に記載の方法。
【請求項19】
分岐リンカー化合物106:
【化18】
を、リンカー化合物:
【化19】
と反応させて、分岐リンカー化合物107:
【化20】
を形成するステップ;および
分岐リンカー化合物107のN保護基を、分岐リンカー化合物108を形成するのに有効な条件下で脱保護するステップ
をさらに含む、請求項
14に記載の方法。
【請求項20】
分岐リンカー化合物106を前記リンカー化合物と反応させるステップが、DMF中のHBTU/DIEAの存在下で行われる、請求項
19に記載の方法。
【請求項21】
前記脱保護するステップが、TFA/DCMの存在下で行われる、請求項
19に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本出願は、米国仮特許出願第60/992,309号(2007年12月4日出願);米国仮特許出願第61/013,597号(2007年12月13日出願);米国仮特許出願第61/127,751号(2008年5月14日出願);米国仮特許出願第61/091,093号(2008年8月22日出願);および米国仮特許出願第61/097,261号(2008年9月16日出願)に対する優先権の利益を主張する。
【技術分野】
【0002】
本発明は、糖質コンジュゲートを用いた治療剤送達の分野に関する。特に、本発明は、新規の糖質コンジュゲートおよびiRNA剤のインビボ送達に有利なこれらのコンジュゲートを含むiRNA剤、ならびにインビボでの治療的使用に好適なiRNA組成物を提供する。さらに、本発明は、これらの組成物を作製する方法、および例えば、さまざまな疾患状態の治療のために、これらの組成物を用いてこれらのiRNA剤を細胞に導入する方法を提供する。
【背景技術】
【0003】
オリゴヌクレオチド化合物は、医学において重要な治療用途を有する。特定の疾患の原因となる遺伝子をサイレンシングするためにオリゴヌクレオチドを用いることができる。遺伝子サイレンシングは、翻訳を阻害することによってタンパク質の生成を妨げる。重要なことに、遺伝子サイレンシング剤は、疾患と関連するタンパク質の機能を阻害する従来型の小有機化合物に取って代わるものとして有望視されている。siRNA、アンチセンスRNA、およびマイクロRNAは、遺伝子サイレンシングによってタンパク質の生成を妨げるオリゴヌクレオチドである。
【0004】
RNA干渉、すなわち「RNAi」は、二本鎖RNA(dsRNA)が遺伝子発現を阻止することができるという観察を説明するために、Fireおよび同僚らが最初に作り出した用語である(非特許文献1)。短いdsRNAは、脊椎動物を含む、多くの生物において遺伝子特異的な転写後サイレンシングを導くものであり、遺伝子機能を研究するための新しいツールを提供している。RNAiは、サイレンシングトリガーに相同なメッセンジャーRNAを壊す配列特異的な多成分ヌクレアーゼである、RNA誘導サイレンシング複合体(RISC)によって仲介される。RISCは、二本鎖RNAトリガーに由来する短いRNA(約22ヌクレオチド)を含有することが知られているが、この活性のタンパク質成分はまだ分かっていない。
【0005】
siRNA化合物は、種々の診断目的および治療目的に有望な薬剤である。siRNA化合物は、遺伝子の機能を同定するために用いることができる。さらに、siRNA化合物は、疾患を引き起こす遺伝子をサイレンシングすることによって作用する新しいタイプの医薬品として大きな可能性を提供する。中枢神経学的疾患、炎症性疾患、代謝障害、腫瘍、感染性疾患、および眼疾患を含む多くの疾患を治療するための干渉RNA治療剤を開発する研究が現在進行中である。
【0006】
siRNAは、潜在的な抗ウイルス治療薬として極めて有効であることが示されており、最近多くの例が公表されている。ウイルスゲノム中の標的に向けられるsiRNA分子は、インフルエンザ(非特許文献2~3)、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)(非特許文献4)、B型肝炎ウイルス(HBV)(非特許文献5)、C型肝炎ウイルス(非特許文献6~7)、およびSARSコロナウイルス(非特許文献8)の動物モデルにおいて、ウイルス力価を数桁、飛躍的に低下させる。
【0007】
アンチセンス法とは、mRNAまたはDNAのような細胞内核酸の正常な必須機能(例えば、タンパク質合成)が妨げられるような、比較的短いオリゴヌクレオチドのmRNAまたはDNAへの相補的なハイブリダイゼーションのことである。ハイブリダイゼーションは、ワトソン-クリック塩基対を介したRNAまたは一本鎖DNAに対するオリゴヌクレオチドの配列特異的な水素結合である。このような塩基対を互いに相補的であると言う。
【0008】
Cohen(非特許文献9)によって論じられている、標的配列の発現レベルを変化させる天然に存在する事象には、2つの種類があると考えられる。第一の、ハイブリダイゼーション停止は、オリゴヌクレオチド阻害剤が、標的核酸に結合し、その結果、単なる立体障害によって、必須タンパク質(ほとんどの場合、リボソーム)の核酸への結合が妨げられる終結事象を説明するものである。メチルホスホネートオリゴヌクレオチド(非特許文献10)、およびα-アノマーオリゴヌクレオチドは、2つの最も広く研究されているアンチセンス剤であり、これらは、ハイブリダイゼーション停止によって核酸機能を妨げる考えられている。
【0009】
アンチセンスオリゴヌクレオチドが標的配列の発現レベルを変化させるもう1つの手段は、標的mRNAへのハイブリダイゼーションと、それに続く細胞内RNアーゼHによる標的RNAの酵素的切断によるものである。2'-デオキシリボフラノシルオリゴヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチド類似体が標的RNAとハイブリダイズし、この二重鎖がRNアーゼH酵素を活性化して、RNA鎖を切断し、それによって、このRNAの正常な機能を破壊する。ホスホロチオエートオリゴヌクレオチドは、この種のアンチセンス終結事象によって作用するアンチセンス薬剤の最も著明な例である。
【0010】
これらのおよび他の核酸をベースにした治療を使用する機会は大いに有望であり、現在の伝統的な医学では対処できない医学的問題の解決策を提供する。増々多くの疾患関連遺伝子の場所と配列が同定されつつあり、種々の疾患についての核酸をベースにした治療法の臨床試験が、現在進行中である。
【0011】
オリゴヌクレオチドおよびオリゴヌクレオチド類似体の治療薬としての適用の進歩にも関わらず、改善された薬理学的特性(例えば、血清安定性、適切な臓器または細胞への送達、および膜貫通送達)を有するオリゴヌクレオチドが必要とされている。核酸およびオリゴヌクレオチドの膜貫通送達の改善に向けた努力において、タンパク質担体、抗体担体、リポソーム性送達系、エレクトロポレーション、直接注射、細胞融合、ウイルスベクター、およびリン酸カルシウムを介する形質転換が利用されている。しかしながら、これらの技術の多くは、膜貫通輸送が可能な細胞の種類と、このような輸送を達成するのに必要な条件とによって限定される。
【0012】
インビボでの細胞への効率的な送達には、特異的な標的化と細胞外環境、特に血清タンパク質からの相当な保護とが必要とされる。特異的な標的化を達成する1つの方法は、標的化部分をiRNA剤にコンジュゲートさせることである。標的化部分は、iRNA剤を所要の標的部位に標的化するのに役立つ。標的化部分によって送達が改善され得る1つの方法は、受容体を介するエンドサイトーシス活性によるものである。この取込み機構は、膜構造の陥入を介してまたは送達系と細胞膜との融合によって、膜受容体に結合したiRNA剤が、膜で囲まれた領域の内側に移動することを伴う。このプロセスは、特異的リガンドが受容体に結合した後の、細胞表面受容体または膜受容体の活性化によって開始される。受容体を介する多くのエンドサイトーシス系が知られ、研究されており、これには、糖(例えば、ガラクトース、マンノース、マンノース-6-リン酸)、ペプチド、およびタンパク質(例えば、トランスフェリン、アシアロ糖タンパク質、ビタミンB12、インスリン、および上皮増殖因子(EGF))を認識するものが含まれる。アシアロ糖タンパク質受容体(ASGP-R)は、肝細胞に極めて大量に存在する高容量受容体である。ASGP-Rは、N-アセチル-D-ガラクトサミン(GalNAc)に対してD-Galよりも50倍高い親和性を示す。これまでの研究により、nMの親和性を得るには多価性が必要である一方、糖間で間隔が空いていることも非常に重要であることが示されている。
【0013】
D-マンノースに対して高い親和性を有するマンノース受容体は、糖質をベースにしたもう1つの重要なリガンド-受容体ペアである。マンノース受容体は、マクロファージやおそらくは樹状細胞などの特定の細胞型で高発現している。これらの細胞に薬物分子を標的とするために、マンノースコンジュゲートおよびマンノシル化された薬物担体が首尾よく使用されている。例えば、非特許文献11~14を参照されたい。
【0014】
コレステロールまたは脂肪酸などの親油性部分は、核酸などの親水性の高い分子に結合した場合、血漿タンパク質結合を大幅に向上させ、結果的に循環半減期を向上させることができる。さらに、リポタンパク質などの特定の血漿タンパク質への結合が、対応するリポタンパク質受容体(例えば、LDL受容体、HDL受容体、またはスカベンジャー受容体SR-B1)を発現する特定の組織での取込みを増大させることが示されている。例えば、非特許文献15~16を参照されたい。標的化送達手法の細胞内トラフィッキングを改善するために、親油性コンジュゲートを標的化リガンドと組み合わせて使用することもできる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0015】
【文献】Fireら(1998) Nature 391,806-811;Elbashirら(2001) Genes Dev.15,188-200
【文献】2Geら(2004) Proc.Natl.Acd.Sci.USA,101,8676-8681;Tompkinsら(2004) Proc.Natl.Acd.Sci.USA,101,8682-8686
【文献】Thomasら(2005) Expert Opin.Biol.Ther.5,495-505
【文献】Bitkoら(2005) Nat.Med.11,50-55
【文献】Morrisseyら(2005) Nat.Biotechnol.23,1002-1007
【文献】Kapadia(2003) Proc.Natl.Acad.Sci.USA,100,2014-2018
【文献】Wilsonら(2003) Proc.Natl.Acad.Sci.USA,100,2783-2788
【文献】Liら(2005) Nat.Med.11,944-951
【文献】Oligonucleotides:Antisense Inhibitors of Gene Expression,CRC Press,Inc.,1989,Boca Raton,Fla.
【文献】Millerら(1987) Anti-Cancer Drug Design,2,117-128
【文献】Biessenら(1996) J.Biol.Chem.271,28024-28030
【文献】Kinzelら(2003) J.Peptide Sci.9,375-385
【文献】Barrattら(1986) Biochim.Biophys.Acta 862,153-64
【文献】Dieboldら(2002) Somat.Cell Mol.Genetics 27,65-74
【文献】Bijsterbosch,M.K.,Rump,E.Tら(2000) Nucleic Acids Res.28,2717-25
【文献】Wolfrum,C.,Shi,S.ら(2007) 25,1149-57
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
上記のようなオリゴヌクレオチド治療薬のインビボ送達の欠点に対処する、受容体特異的リガンドにコンジュゲートした新しいiRNA剤およびこれらを調製する方法が明白に必要とされている。本発明は、この極めて重要な目的に関するものである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
一態様では、本発明は、少なくとも1つの糖質リガンド、例えば、単糖、二糖、三糖、四糖、オリゴ糖、多糖とコンジュゲートしているiRNA剤を提供する。糖質がコンジュゲートされたこれらのiRNA剤は、特に、肝臓の実質細胞を標的とする。一実施形態では、iRNA剤は、2つ以上の糖質リガンド、好ましくは2つまたは3つの糖質リガンドを含む。一実施形態では、iRNA剤は、1つ以上のガラクトース部分を含む。別の実施形態では、iRNA剤は、少なくとも1つ(例えば、2つまたは3つまたはそれより多く)のラクトース分子を含む(ラクトースは、ガラクトースに結合したグルコースである)。別の実施形態では、iRNA剤は、少なくとも1つ(例えば、2つまたは3つまたはそれより多く)のN-アセチル-ガラクトサミン(GalNAc)、N-Ac-グルコサミン(GluNAc)またはマンノース(例えば、マンノース-6-リン酸)を含む。一実施形態では、iRNA剤は、少なくとも1つのマンノースリガンドを含み、このiRNA剤はマクロファージを標的とする。
【0018】
一態様では、本発明は、糖質リガンドを含むiRNA剤を特色とし、この糖質リガンドの存在は、iRNA剤の肝臓への送達を増大させることができる。したがって、糖質リガンドを含むiRNA剤は、肝臓での発現が所望されない遺伝子を標的とするのに有用であり得る。例えば、糖質リガンドを含むiRNA剤は、肝炎ウイルス(例えば、C型肝炎、B型肝炎、A型肝炎、D型肝炎、E型肝炎、F型肝炎、G型肝炎、またはH型肝炎)による核酸発現を標的とすることができる。
【0019】
一実施形態では、糖質がコンジュゲートされたiRNA剤は、C型肝炎ウイルスの遺伝子を標的とする。別の実施形態では、C型肝炎ウイルスの遺伝子を標的とするiRNA剤は、肝炎(例えば、急性肝炎もしくは慢性肝炎)、すなわち、肝臓の炎症を有するか、または肝臓の炎症を発症する危険性があるヒトに投与することができる。糖質がコンジュゲートされたiRNA剤、例えば、HCVの遺伝子を標的とするiRNA剤による治療の候補となるヒトは、HCV感染を示す症状、例えば、黄疸、腹痛、肝肥大、および倦怠感を示すことがある。
【0020】
一実施形態では、糖質がコンジュゲートされたiRNA剤は、HCVの5’コア領域を標的とする。この領域は、開始メチオニンにまたがるリボソームの足指紋(toe-print)のすぐ下流にある。別の実施形態では、iRNA剤は、HCVの非構造タンパク質(例えば、NS3、NS4A、NS4B、NS5A、またはNS5B)のいずれか1つを標的とする。別の実施形態では、iRNA剤は、HCVのE1遺伝子、E2遺伝子、またはC遺伝子を標的とする。
【0021】
別の実施形態では、糖質がコンジュゲートされたiRNA剤は、B型肝炎ウイルス(HBV)を標的とし、このiRNA剤は、HBVの遺伝子、例えば、HBVのプロテインX(HBx)遺伝子の配列と実質的に同様の配列を有する。
【0022】
糖質がコンジュゲートされたiRNA剤は、望ましくない細胞増殖を特徴とする障害、血液学的障害、代謝障害、および炎症を特徴とする障害を含む、他の肝障害を治療するために使用することもできる。肝臓の増殖障害は、例えば、良性または悪性の障害、例えば、癌(例えば、肝細胞癌(HCC)、肝転移、または肝芽腫)であり得る。肝臓の血液学的障害または炎症障害は、例えば、凝固因子が関わる障害、補体を介する炎症、または線維化であり得る。肝臓の代謝疾患には、脂質異常症およびグルコース調節の異常が含まれる。一実施形態では、肝障害は、この肝障害に関与する遺伝子中の配列と実質的に同一の配列を有する1つ以上のiRNA剤を投与することによって治療される。
【0023】
一実施形態では、糖質がコンジュゲートされたiRNA剤は、肝臓で発現する核酸、例えば、ApoB RNA、c-jun RNA、β-カテニンRNA、またはグルコース-6-リン酸mRNAを標的とする。
【0024】
例えば、グルコース代謝関連障害、例えば、糖尿病(例えば、2型糖尿病)の治療のために、グルコース-6-リン酸を標的とするiRNAを対象に投与して、肝臓のグルコース産生を阻害することができる。このiRNA剤を、この障害の危険性がある個体に投与して、この障害の発症またはこの障害の症状を遅延させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】核酸への糖(単糖)のコンジュゲーション。二本鎖核酸の3’-末端(I)および5’-末端(II)ならびに一本鎖核酸の3’-末端(III)および5’-末端(IV)へのガラクトース、N-アセチルガラクトサミン、マンノース、グルコース、グルコサミン、フコース、ラクトースなどのコンジュゲーション。二本鎖核酸は、2つの3’-突出を有するか、センスもしくはアンチセンスの3’-末端に1つの突出を有するか、または突出を有さない可能性があり;Qは、OまたはSである。
【
図2】核酸への糖(単糖)のコンジュゲーション。(V)両方の鎖(センスおよびアンチセンスまたはガイド鎖)の3’-末端;(VI)1つの鎖(センスまたはアンチセンス)の3’-末端および第2の相補鎖の5’-末端、ならびに(VII)両方の鎖の5’-末端へのガラクトース、N-アセチルガラクトサミン、マンノース、グルコース、グルコサミン、フコース、ラクトースなどのコンジュゲーション。二本鎖核酸は、2つの3’-突出を有するか、センスもしくはアンチセンスの3’-末端に1つの突出を有するか、または突出を有さない可能性がある。
【
図3】核酸への糖(単糖)のコンジュゲーション。1つの鎖(センスまたはアンチセンス/ガイド鎖)の3’-末端および5’-末端へのガラクトース、N-アセチルガラクトサミン、マンノース、グルコース、グルコサミン、フコース、ラクトースなどのコンジュゲーション。二本鎖核酸は、2つの3’-突出を有するか、センスもしくはアンチセンスの3’-末端に1つの突出を有するか、または突出を有さない可能性がある。
【
図4】核酸への糖(単糖)のコンジュゲーション。センス鎖またはアンチセンス鎖の3’-末端(IX)および5’-末端(X)へのガラクトース、N-アセチルガラクトサミン、マンノース、グルコース、グルコサミン、フコース、ラクトースなどのコンジュゲーション;q=0~10。二本鎖核酸は、2つの3’-突出を有するか、センスもしくはアンチセンスの3’-末端に1つの突出を有するか、または突出を有さない可能性がある。
【
図5】核酸への糖(単糖)のコンジュゲーション。オリゴヌクレオチドの3’-末端と5’-末端(XI);3’-末端(XII)、および5’-末端(XIII)へのガラクトース、N-アセチルガラクトサミン、マンノース、グルコース、グルコサミン、フコース、ラクトースなどのコンジュゲーション;q=0~10。
【
図6】核酸への糖(単糖)のコンジュゲーション。追加のスペーサーで分離されている核酸へのガラクトース、N-アセチルガラクトサミン、マンノース、グルコース、グルコサミン、フコース、ラクトースなどのコンジュゲーション:XIV-アルキルスペーサーおよび/またはPEGスペーサー二本鎖核酸との3’-末端コンジュゲート;XV-アルキルスペーサーおよび/またはPEGスペーサーとの5’-末端コンジュゲート;XVIおよびXVII-一本鎖核酸/オリゴヌクレオチドの対応する3’-末端コンジュゲートおよび5’-末端コンジュゲート。A、Bは、アルキルスペーサーまたはPEGスペーサー、およびその組合せを表し、Q’=CH
2、O、S、S-S、NH、またはNMeである。二本鎖核酸は、2つの3’-突出を有するか、センスもしくはアンチセンスの3’-末端に1つの突出を有するか、または突出を有さない可能性がある。
【
図7】核酸への糖(単糖)のハイブリッドコンジュゲート。二本鎖核酸へのガラクトース、N-アセチルガラクトサミン、マンノース、グルコース、グルコサミン、フコース、ラクトースなどおよび第2選択リガンドのコンジュゲーション:XX-3’-末端の連続的なコンジュゲーション;XXI-センスまたはアンチセンス上の3’-末端リガンドと5’-末端プテロイン酸類似体;XXII-センスまたはアンチセンス上の5’-末端リガンドと3’-末端プテロイン酸類似体;XXIII-センスもしくはアンチセンスの5’-末端上のプテロイン酸類似体およびアンチセンスもしくはセンスの3’-末端上の一般に好まれるリガンドまたはこれと逆のもの;XXIV-二本鎖核酸のセンス鎖またはアンチセンス鎖の5’-末端への選択リガンドとプテロイン酸類似体の連続的なコンジュゲーション。Lは、選択リガンドである。
【
図8】核酸への糖(単糖)のハイブリッドコンジュゲート。一本鎖核酸へのガラクトース、N-アセチルガラクトサミン、マンノース、グルコース、グルコサミン、フコース、ラクトースなどおよび第2選択リガンドのコンジュゲーション:XXV-3’-末端または5’-末端の連続的なコンジュゲーション;XXVI-3’-末端リガンドまたは5’-末端リガンドおよび5’-末端プテロイン酸類似体または3’-プテロイン酸類似体。Lは、一般に好まれるリガンドである。
【
図9】核酸への糖(単糖)のコンジュゲート。スペーサー/テザーを有する脂質または脂質様分子(XIII)およびスペーサー/テザーを有さない脂質または脂質様分子(XIX)へのガラクトース、N-アセチルガラクトサミン、マンノース、グルコース、グルコサミン、フコース、ラクトースなどのコンジュゲーション。
【
図10】核酸への糖の結合。二本鎖核酸の3’-末端(XX)および5’-末端(XXI)ならびに一本鎖核酸の3’-末端(XXII)および5’-末端(XXIII)への3分岐のガラクトース、N-アセチルガラクトサミン、マンノース、グルコース、グルコサミン、フコース、ラクトースなどのコンジュゲーション。二本鎖核酸は、2つの3’-突出を有するか、センスもしくはアンチセンスの3’-末端に1つの突出を有するか、または突出を有さない可能性があり;Qは、OまたはSである。
【
図11】核酸への糖(単糖)の結合。(XXIV)両方の鎖(センスおよびアンチセンスまたはガイド鎖)の3’-末端;(XXV)1つの鎖(センスまたはアンチセンス)の3’-末端および第2の相補鎖の5’-末端、ならびに(XXVI)両方の鎖の5’-末端への3分岐のガラクトース、N-アセチルガラクトサミン、マンノース、グルコース、グルコサミン、フコース、ラクトースなどのコンジュゲーション;R、X、Y、Z、およびQの定義については、
図1を参照されたい。二本鎖核酸は、2つの3’-突出を有するか、センスもしくはアンチセンスの3’-末端に1つの突出を有するか、または突出を有さない可能性がある。同様に、
図3~
図9の単分岐の糖部分(単数または複数)は、
図10と
図11に記載されている3分岐の糖部分(単数または複数)で置換されている。
【
図12】核酸へのオリゴ糖のコンジュゲーション。二本鎖核酸の3’-末端(XXVII)および5’-末端(XXVIII)ならびに一本鎖核酸の3’-末端(XXIX)および5’-末端(XXX)へのガラクトース、N-アセチルガラクトサミン、マンノース、グルコース、グルコサミン、フコース、ラクトースなどの類似体または誘導体のコンジュゲーション。二本鎖核酸は、2つの3’-突出を有するか、センスもしくはアンチセンスの3’-末端に1つの突出を有するか、または突出を有さない可能性があり;Qは、OまたはSである。同様に、
図2~9の糖部分(単数または複数)は、
図12に記載されているオリゴ糖部分で置換されている。
【
図13】切断可能なジスルフィド結合を有する3分岐GalNAc二本鎖オリゴヌクレオチドコンジュゲート。
【
図14】切断可能なジスルフィド結合を有する3分岐GalNAc二本鎖オリゴヌクレオチドコンジュゲート。
【
図15】ガラクトース-siRNAコンジュゲートのインビボでのapoB遺伝子サイレンシング。
【
図16】リン酸結合を介して1つに連結されているコレステロールと(GalNAc)
3の構造。
【
図18】アシアロ糖タンパク質受容体の結合親和性と多価性。
【
図19】単純モノマーからの多分岐コンジュゲートの合成。
【
図20】LDLとHDLの充填および肝臓標的化用の糖脂質-siRNAコンジュゲート。
【
図21】糖脂質-siRNAコンジュゲート:合成。
【
図22】siRNAへの糖質コンジュゲーション用のモノマー。
【
図23】GalNAcビルディングブロックの合成。
【
図24】GalNAcビルディングブロックの合成(II)。
【
図26】siRNAへのコンジュゲーション用の糖質(GalNAc)クラスター。
【
図27】多価GalNAc-siRNAコンジュゲート。
【
図28】5’コンジュゲーション用の糖質ビルディングブロック。
【
図29】マンノースコンジュゲートのビルディングブロックの合成。
【
図30】合成後の糖質コンジュゲートのビルディングブロック。
【
図31】コレステロールがコンジュゲートされたsiRNAとコレステロール-(GalNAc)3がコンジュゲートされたsiRNAによる遺伝子サイレンシングの比較。
【
図32】コレステロールがコンジュゲートされたsiRNAとコレステロール-(GalNAc)3がコンジュゲートされたsiRNAによる血清コレステロールレベルに対する効果の持続期間の比較。
【
図33】コレステロールがコンジュゲートされたsiRNAとコレステロール-(GalNAc)3がコンジュゲートされたsiRNAによるCy3標識siRNAの取込みの比較。
【
図36】2分岐コンジュゲートと3分岐コンジュゲート。
【
図38】コンジュゲートにおけるジスルフィド結合のいくつかの例示的な配置。
【
図39】糖質がコンジュゲートされたsiRNAによるFVIIのインビボサイレンシング。
【
図40】糖質がコンジュゲートされたsiRNAによるFVIIのインビボサイレンシング。
【
図41】糖質がコンジュゲートされたsiRNAによるApoBのインビボサイレンシング。
【
図42】糖質がコンジュゲートされたsiRNAによるApoBのインビボサイレンシング。
【
図43】糖質がコンジュゲートされたsiRNAによるApoBのインビトロサイレンシング。
【
図44】インビトロ取込み中の糖質がコンジュゲートされたsiRNAとASGRリガンドアシアロフェツイン(ASF)との競合。
【
図45】糖質コンジュゲートのインビトロでの受容体結合と取込み。
【
図46】ガラクトースコンジュゲートとインビボ遺伝子サイレンシング。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明は、糖質部分をiRNA剤にコンジュゲートさせることによって、iRNA剤の1つ以上の特性を最適化することができるという発見に基づいている。多くの場合、糖質部分を、iRNA剤の修飾サブユニットに結合させる。例えば、iRNA剤の1つ以上のリボヌクレオチドサブユニットのリボース糖を、別の部分、例えば、糖質リガンドが結合している非糖質(好ましくは環状)担体と置換することができる。サブユニットのリボース糖がそのように置換されているリボヌクレオチドサブユニットを、本明細書ではリボース置換修飾サブユニット(RRMS)と呼ぶ。環状担体は、炭素環系であってもよく(すなわち、環原子が全て炭素原子である)、または複素環系であってもよい(すなわち、1つ以上の環原子がヘテロ原子、例えば、窒素、酸素、硫黄であり得る)。環状担体は、単環系であってもよく、または2つ以上の環(例えば、融合環)を含有してもよい。環状担体は、完全飽和環系であってもよく、または1つ以上の二重結合を含有してもよい。
【0027】
担体にはさらに、(i)少なくとも1つの「骨格結合点」、好ましくは2つの「骨格結合点」、および(ii)少なくとも1つの「テザリング結合点」が含まれる。本明細書で使用される「骨格結合点」とは、リボ核酸の骨格(例えば、リン酸骨格、または修飾リン酸骨格(例えば、硫黄含有骨格))中への担体の組込みに好適である、官能基(例えば、ヒドロキシル基)、または一般に、利用可能な結合を指す。いくつかの実施形態での「テザリング結合点」(TAP)とは、選択された部分を接続する環状担体の構成環原子、例えば、炭素原子またはヘテロ原子(骨格結合点を提供する原子とは異なる)を指す。この部分は、例えば、糖質(例えば、単糖、二糖、三糖、四糖、オリゴ糖、および多糖)であることができる。任意で、選択された部分は、介在テザーによって環状担体に接続されている。したがって、環状担体は、多くの場合、別の化学的実体(例えば、構成環に対するリガンド)の組込みもしくはテザリングに好適な官能基(例えば、アミノ基)を含み、または一般に、別の化学的実体(例えば、構成環に対するリガンド)の組込みもしくはテザリングに好適な結合を提供する。
【0028】
一態様では、本発明は、次式(CI)に示す構造を有する化合物を特色とする。
【化1】
式中、
AおよびBは、それぞれ存在ごとに独立して、水素、保護基、任意で置換された脂肪族、任意で置換されたアリール、任意で置換されたヘテロアリール、ポリエチレングリコール(PEG)、ホスフェート、ジホスフェート、トリホスフェート、ホスホネート、ホスホノチオエート、ホスホノジチオエート、ホスホロチオエート、ホスホロチオレート、ホスホロジチオエート、ホスホロチオロチオネート、ホスホジエステル、ホスホトリエステル、活性化されたリン酸基、活性化された亜リン酸基、ホスホロアミダイト、固体担体、-P(Z
1)(Z
2)-O-ヌクレオシド、または-P(Z
1)(Z
2)-O-オリゴヌクレオチド(式中、Z
1およびZ
2は、それぞれ存在ごとに独立して、O、S、N(アルキル)、または任意で置換されたアルキルである)であり;
J
1およびJ
2は、それぞれ存在ごとに独立して、O、S、NR
N、任意で置換されたアルキル、OC(O)NH、NHC(O)O、C(O)NH、NHC(O)、OC(O)、C(O)O、OC(O)O、NHC(O)NH、NHC(S)NH、OC(S)NH、OP(N(R
P)
2)O、またはOP(N(R
P)
2)であり;かつ
式(CI)中の担体は、環状基または非環状基であり;環状基は、ピロリジニル、ピラゾリニル、ピラゾリジニル、イミダゾリニル、イミダゾリジニル、ピペリジニル、ピペラジニル、[1,3]ジオキソラン、オキサゾリジニル、イソキサゾリジニル、モルホニル、チアゾリジニル、イソチアゾリジニル、キノキサリニル、ピリダジノニル、テトラヒドロフリル、およびデカリンから選択されることが好ましく;非環状基は、セリノール骨格またはジエタノールアミン骨格から選択されることが好ましい。
【0029】
好ましい実施形態では、リガンドは、糖質、例えば、単糖、二糖、三糖、四糖、多糖である。
【0030】
一実施形態では、化合物は、次式(CII)に示すピロリン環系である。
【化2】
式中、
Eは、存在しないか、またはC(O)、C(O)O、C(O)NH、C(S)、C(S)NH、SO、SO
2、もしくはSO
2NHであり;
R
11、R
12、R
13、R
14、R
15、R
16、R
17、およびR
18は、それぞれ存在ごとに独立して、H、-CH
2OR
a、またはOR
bであり、
R
aおよびR
bは、それぞれ存在ごとに独立して、水素、ヒドロキシル保護基、任意で置換されたアルキル、任意で置換されたアリール、任意で置換されたシクロアルキル、任意で置換されたアラルキル、任意で置換されたアルケニル、任意で置換されたヘテロアリール、ポリエチレングリコール(PEG)、ホスフェート、ジホスフェート、トリホスフェート、ホスホネート、ホスホノチオエート、ホスホノジチオエート、ホスホロチオエート、ホスホロチオレート、ホスホロジチオエート、ホスホロチオロチオネート、ホスホジエステル、ホスホトリエステル、活性化されたリン酸基、活性化された亜リン酸基、ホスホロアミダイト、固体担体、-P(Z
1)(Z
2)-O-ヌクレオシド、または-P(Z
1)(Z
2)-O-オリゴヌクレオチド、-P(Z
1)(O-リンカー-R
L)-O-ヌクレオシド、または-P(Z
1)(O-リンカー-R
L)-O-オリゴヌクレオチドであり;
R
30は、それぞれ存在ごとに独立して、-リンカー-R
LまたはR
31であり;
R
Lは、水素またはリガンドであり;
R
31は、C(O)CH(N(R
32)
2)(CH
2)
hN(R
32)
2であり;
R
32は、それぞれ存在ごとに独立して、H、-R
L、-リンカー-R
L、またはR
31であり;
Z
1は、それぞれ存在ごとに独立して、OまたはSであり;
Z
2は、それぞれ存在ごとに独立して、O、S、N(アルキル)、または任意で置換されたアルキルであり;かつ
hは、それぞれ存在ごとに独立して、1~20である。
【0031】
ピロリンをベースにしたクリック担体(click-carrier)については、R11が-CH2ORaでかつR3がORbであるか;またはR11が-CH2ORaでかつR9がORbであるか;またはR11が-CH2ORaでかつR17がORbであるか;またはR13が-CH2ORaでかつR11がORbであるか;またはR13が-CH2ORaでかつR15がORbであるか;またはR13が-CH2ORaでかつR17がORbである。ある実施形態では、CH2ORaおよびORbはジェミナル置換されていてもよい。4-ヒドロキシプロリンをベースにした担体については、R11が-CH2ORaでかつR17がORbである。それゆえに、ピロリンをベースにした化合物と4-ヒドロキシプロリンをベースにした化合物は、結合回転がその特定の結合に関して制限されている(例えば、環が存在することによって生じる制限がある)結合(例えば、炭素-炭素結合)を含有し得る。したがって、CH2ORaおよびORbは、上述の任意の組合せにおいて互いに対してシスであってもまたはトランスであってもよい。したがって、全てのシス/トランス異性体が明示的に含まれる。化合物は、1つ以上の不斉中心を含有する場合もあり、そのため、ラセミ体およびラセミ混合物、単一のエナンチオマー、個々のジアステレオマー、ならびにジアステレオマー混合物として生じる。それらの化合物のすべてのこのような異性体形態が明示的に含まれる(例えば、CH2ORaとORbを担持する中心は両方とも、R立体配置を有することができるか;両方ともS立体配置を有することができるか;または一方の中心がR立体配置を有することができかつ他方の中心がR立体配置を有することができ、また、これと逆のことが言える)。
【0032】
一実施形態では、R11がCH2ORaでかつR9がORbである。
【0033】
一実施形態では、Rbは固体担体である。
【0034】
一実施形態では、式(CII)の担体は、ホスホロアミダイトであり、すなわち、RaまたはRbのうちの1つが、-P(O-アルキル)N(アルキル)2、例えば、-P(OCH2CH2CN)N(i-プロピル)2である。一実施形態では、Rbは、-P(O-アルキル)N(アルキル)2である。
【0035】
実施形態では、化合物は、次式(CIII)に示すようなリボース環系である。
【化3】
式中、
Xは、O、S、NR
N、またはCR
P
2であり;
Bは、それぞれ存在ごとに独立して、水素、任意で置換されたされた天然または非天然のヌクレオ塩基、-リンカー-R
Lと結合した任意で置換されたされた天然ヌクレオ塩基または-リンカー-R
Lと結合した任意で置換されたされた非天然ヌクレオ塩基であり;
R
1、R
2、R
3、R
4、およびR
5は、それぞれ存在ごとに独立して、H、OR
6、F、N(R
N)
2、または-J-リンカー-R
Lであり;
Jは、存在しないか、O、S、NR
N、OC(O)NH、NHC(O)O、C(O)NH、NHC(O)、NHSO、NHSO
2、NHSO
2NH、OC(O)、C(O)O、OC(O)O、NHC(O)NH、NHC(S)NH、OC(S)NH、OP(N(R
P)
2)O、またはOP(N(R
P)
2)であり;
R
6は、それぞれ存在ごとに独立して、水素、ヒドロキシル保護基、任意で置換されたアルキル、任意で置換されたアリール、任意で置換されたシクロアルキル、任意で置換されたアラルキル、任意で置換されたアルケニル、任意で置換されたヘテロアリール、ポリエチレングリコール(PEG)、ホスフェート、ジホスフェート、トリホスフェート、ホスホネート、ホスホノチオエート、ホスホノジチオエート、ホスホロチオエート、ホスホロチオレート、ホスホロジチオエート、ホスホロチオロチオネート、ホスホジエステル、ホスホトリエステル、活性化されたリン酸基、活性化された亜リン酸基、ホスホロアミダイト、固体担体、-P(Z
1)(Z
2)-O-ヌクレオシド、-P(Z
1)(Z
2)-O-オリゴヌクレオチド、-P(Z
1)(Z
2)-式(CIII)、-P(Z
1)(O-リンカー-R
L)-O-ヌクレオシド、-P(Z
1)(O-リンカー-R
L)-O-オリゴヌクレオチド、または-P(Z
1)(O-リンカー-R
L)-O-式(CIII)がであり;
R
Nは、それぞれ存在ごとに独立して、H、任意で置換されたアルキル、任意で置換されたアルケニル、任意で置換されたアルキニル、任意で置換されたアリール、任意で置換されたシクロアルキル、任意で置換されたアラルキル、任意で置換されたヘテロアリール、またはアミノ保護基であり;
R
Pは、それぞれ存在ごとに独立して、H、任意で置換されたアルキル、任意で置換されたアルケニル任意で置換されたアルキニル、任意で置換されたアリール、任意で置換されたシクロアルキル、または任意で置換されたヘテロアリールであり;
R
Lは、水素またはリガンドであり;
Z
1およびZ
2は、それぞれ存在ごとに独立して、O、S、N(アルキル)、または任意で置換されたアルキルであり;
ただし、R
Lは、少なくとも1度は存在し、さらにR
Lは、少なくとも1度はリガンドである。
【0036】
一実施形態では、式(CI)中の担体は、非環状基であり、「非環状担体」と呼ばれる。好ましい非環状担体は、下記の式(CIV)または式(CV)に示す構造を有することができる。
【0037】
一実施形態では、化合物は、次式(CIV)に示す構造を有する非環状担体である。
【化4】
式中、
Wは、存在しないか、O、S、および N(R
N)(式中、R
Nは、それぞれ存在ごとに独立して、H、任意で置換されたアルキル、任意で置換されたアルケニル、任意で置換されたアルキニル、任意で置換されたアリール、任意で置換されたシクロアルキル、任意で置換されたアラルキル、任意で置換されたヘテロアリール、またはアミノ保護基である)であり;
Eは、存在しないか、またはC(O)、C(O)O、C(O)NH、C(S)、C(S)NH、SO、SO
2、もしくはSO
2NHであり;
R
aおよびR
bは、それぞれ存在ごとに独立して、水素、ヒドロキシル保護基、任意で置換されたアルキル、任意で置換されたアリール、任意で置換されたシクロアルキル、任意で置換されたアラルキル、任意で置換されたアルケニル、任意で置換されたヘテロアリール、ポリエチレングリコール(PEG)、ホスフェート、ジホスフェート、トリホスフェート、ホスホネート、ホスホノチオエート、ホスホノジチオエート、ホスホロチオエート、ホスホロチオレート、ホスホロジチオエート、ホスホロチオロチオネート、ホスホジエステル、ホスホトリエステル、活性化されたリン酸基、活性化された亜リン酸基、ホスホロアミダイト、固体担体、-P(Z
1)(Z
2)-O-ヌクレオシド、-P(Z
1)(Z
2)-O-オリゴヌクレオチド、-P(Z
1)(O-リンカー-R
L)-O-ヌクレオシド、または-P(Z
1)(O-リンカー-R
L)-O-オリゴヌクレオチドであり;
R
30は、それぞれ存在ごとに独立して、リンカー-R
LまたはR
31であり;
R
Lは、水素またはリガンドであり;
R
31は、-C(O)CH(N(R
32)
2)(CH
2)
hN(R
32)
2であり;
R
32は、それぞれ存在ごとに独立して、H、-R
L、-リンカー-R
L、またはR
31であり;
Z
1は、それぞれ存在ごとに独立して、OまたはSであり;
Z
2は、それぞれ存在ごとに独立して、O、S、N(アルキル)、または任意で置換されたアルキルであり;
hは、それぞれ存在ごとに独立して、1~20であり;かつ
r、s、およびtは、それぞれ存在ごとに独立して、0、1、2、または3である。
【0038】
rとsが異なる場合、第3炭素は、R配置かまたはS配置のいずれかであることができる。好ましい実施形態では、xとyは1であり、zは0である(例えば、担体はセリノールをベースにしている)。非環状担体は、任意で、例えば、ヒドロキシ、アルコキシ、パーハロアルキルで置換することができる。
【0039】
一実施形態では、化合物は、次式(CV)に示す構造を有する非環状担体である。
【化5】
式中、
Eは、存在しないか、またはC(O)、C(O)O、C(O)NH、C(S)、C(S)NH、SO、SO
2、もしくはSO
2NHであり;
R
aおよびR
bは、それぞれ存在ごとに独立して、水素、ヒドロキシル保護基、任意で置換されたアルキル、任意で置換されたアリール、任意で置換されたシクロアルキル、任意で置換されたアラルキル、任意で置換されたアルケニル、任意で置換されたヘテロアリール、ポリエチレングリコール(PEG)、ホスフェート、ジホスフェート、トリホスフェート、ホスホネート、ホスホノチオエート、ホスホノジチオエート、ホスホロチオエート、ホスホロチオレート、ホスホロジチオエート、ホスホロチオロチオネート、ホスホジエステル、ホスホトリエステル、活性化されたリン酸基、活性化された亜リン酸基、ホスホロアミダイト、固体担体、-P(Z
1)(Z
2)-O-ヌクレオシド、-P(Z
1)(Z
2)-O-オリゴヌクレオチド、-P(Z
1)(Z
2)-式(I)、-P(Z
1)(O-リンカー-R
L)-O-ヌクレオシド、または-P(Z
1)(O-リンカー-R
L)-O-オリゴヌクレオチドであり;
R
30は、それぞれ存在ごとに独立して、リンカー-R
LまたはR
31であり;
R
Lは、水素またはリガンドであり;
R
31は、-C(O)CH(N(R
32)
2)(CH
2)
hN(R
32)
2であり;
R
32は、それぞれ存在ごとに独立して、H、-R
L、-リンカー-R
L、またはR
31であり;
Z
1は、それぞれ存在ごとに独立して、OまたはSであり;
Z
2は、それぞれ存在ごとに独立して、O、S、N(アルキル)、または任意で置換されたアルキルであり;
hは、それぞれ存在ごとに独立して、1~20であり;かつ
rおよびsは、それぞれ存在ごとに独立して、0、1、2、または3である。
【0040】
RRMSは、本明細書に記載される環状担体に加えて、同時係属および同時所有の米国出願第10/916,185号明細書(2004年8月10日出願)、米国出願第10/946,873号明細書(2004年9月21日出願)、および米国出願第10/985,426号明細書(2004年11月9日出願)、米国出願第10/833,934号明細書(2007年8月3日出願)、米国出願第11/115,989号明細書(2005年4月27日出願)、および米国出願第11/119,533号明細書(2005年4月29日出願)に記載されている環状担体および非環状担体を含むことができ、これらの内容は各々、全ての目的のために参照により本明細書に組み入れられる。
【0041】
したがって、一態様では、本発明は、次式(I)に示す構造を有するモノマーを特色とする。
【化6】
式中、
AおよびBは、それぞれ存在ごとに独立して、O、N(R
N)、またはSであり;
R
Nはそれぞれ存在ごとに独立して、HまたはC
1-C
6アルキルであり;
XおよびYは、それぞれ存在ごとに独立して、H、保護基、リン酸基、ホスホジエステル基、活性化されたリン酸基、活性化された亜リン酸基、ホスホロアミダイト、固体担体、-P(Z’)(Z’’)O-ヌクレオシド、-P(Z’)(Z’’)O-オリゴヌクレオチド、脂質、PEG、ステロイド、ポリマー、ヌクレオチド、ヌクレオシド、-P(Z’)(Z’’)O-リンカー-OP(Z’’’)(Z’’’)O-オリゴヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、-P(Z’)(Z’’)-式(I)、-P(Z’)(Z’’)-、または-リンカー-Rであり;
RはL
Gであるかまたは以下に示す構造を有し:
【化7】
L
Gはそれぞれ存在ごとに独立して、リガンド、例えば、糖質、例えば、単糖、二糖、三糖、四糖、多糖であり;
Z’、Z’’、Z’’’、およびZ’’’’は、それぞれ存在ごとに独立して、OまたはSである。
【0042】
「リンカー」という用語は、化合物の2つの部分を接続する有機部分である。リンカーは、典型的には、直接的な結合、または原子、例えば、酸素もしくは窒素、単位、例えば、NR1、C(O)、C(O)NH、SO、SO2、SO2NH、または原子鎖、例えば、置換アルキルもしくは非置換アルキル、置換アルケニルもしくは非置換アルケニル、置換アルキニルもしくは非置換アルキニル、アリールアルキル、アリールアルケニル、アリールアルキニル、ヘテロアリールアルキル、ヘテロアリールアルケニル、ヘテロアリールアルキニル、ヘテロシクリルアルキル、ヘテロシクリルアルケニル、ヘテロシクリルアルキニル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、シクロアルキル、シクロアルケニル、アルキルアリールアルキル、アルキルアリールアルケニル、アルキルアリールアルキニル、アルケニルアリールアルキル、アルケニルアリールアルケニル、アルケニルアリールアルキニル、アルキニルアリールアルキル、アルキニルアリールアルケニル、アルキニルアリールアルキニル、アルキルヘテロアリールアルキル、アルキルヘテロアリールアルケニル、アルキルヘテロアリールアルキニル、アルケニルヘテロアリールアルキル、アルケニルヘテロアリールアルケニル、アルケニルヘテロアリールアルキニル、アルキニルヘテロアリールアルキル、アルキニルヘテロアリールアルケニル、アルキニルヘテロアリールアルキニル、アルキルヘテロシクリルアルキル、アルキルヘテロシクリルアルケニル、アルキルヘテロシクリルアルキニル、アルケニルヘテロシクリルアルキル、アルケニルヘテロシクリルアルケニル、アルケニルヘテロシクリルアルキニル、アルキニルヘテロシクリルアルキル、アルキニルヘテロシクリルアルケニル、アルキニルヘテロシクリルアルキニル、アルキルアリール、アルケニルアリール、アルキニルアリール、アルキルヘテロアリール、アルケニルヘテロアリール、アルキニルヘテロアリール(ここで、1つ以上のメチレンは、O、S、S(O)、SO2、N(R8)、C(O)、置換アリールまたは非置換アリール、置換ヘテロアリールまたは非置換ヘテロアリール、置換複素環または非置換複素環によって中断または終結されることがあり;R8は、水素、アシル、脂肪族、または置換脂肪族である)を含む。一実施形態では、リンカーは、1~24個の原子、好ましくは4~24個の原子、好ましくは6~18個の原子、より好ましくは8~18個の原子、および最も好ましくは8~16個の原子である。
【0043】
一実施形態では、リンカーは、-[(P-Q’’-R)
q-X-(P’-Q’’’-R’)
q’]
q”-T-であり、
式中、
P、R、T、P’、R’、およびTは、それぞれ存在ごとに独立して、存在しないか、CO、NH、O、S、OC(O)、NHC(O)、CH
2、CH
2NH、CH
2O;NHCH(R
a)C(O)、-C(O)-CH(R
a)-NH-、CH=N-O、
【化8】
またはヘテロシクリルであり;
Q’’およびQ’’’は、それぞれ存在ごとに独立して、存在しないか、-(CH
2)
n-、-C(R
1)(R
2)(CH
2)
n-、-(CH
2)
nC(R
1)(R
2)-、-(CH
2CH
2O)
mCH
2CH
2-、または-(CH
2CH
2O)
mCH
2CH
2NH-であり;
Xは、存在しないかまたは切断可能な結合基であり;
R
aは、Hまたはアミノ酸側鎖であり;
R
1およびR
2は、それぞれ存在ごとに独立して、H、CH
3、OH、SH、またはN(R
N)
2であり;
R
Nは、それぞれ存在ごとに独立して、H、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、またはベンジルであり;
q、q’、およびq’’は、それぞれ存在ごとに独立して、0~20であり、ここで、繰り返し単位は同一であっても異なっていてもよく;
nは、それぞれ存在ごとに独立して、1~20であり;かつ
mは、それぞれ存在ごとに独立して、0~50である。
【0044】
一実施形態では、リンカーは、少なくとも1つの切断可能な結合基を含む。
【0045】
ある実施形態では、リンカーは、分岐状リンカーである。分岐状リンカーの分岐点は、少なくとも三価であり得るが、四価、五価、もしくは六価の原子、またはこのような複数の原子価を示す基であってもよい。ある実施形態では、分岐点は、-C、-CH、-C(CH2-)(CH2-)CH2-、-C(H)(CH2-)CH2-、-N、-N(Q)-C、-O-C、-S-C、-SS-C、-C(O)N(Q)-C、-OC(O)N(Q)-C、-N(Q)C(O)-C、または-N(Q)C(O)O-Cであり、式中、Qはそれぞれ存在ごとに独立して、Hまたは任意で置換アルキルである。他の実施形態では、分岐点は、グリセロールまたはグリセロール誘導体である。
【0046】
切断可能な結合基
切断可能な結合基とは、細胞外では十分に安定であるが、標的細胞内に入ると切断され、リンカーが結び付いている2つの部分を放出する基のことである。好ましい実施形態では、切断可能な結合基は、対象の血液中または(例えば、血液中もしくは血清中で見られる条件を模倣もしくは代表するように選択することができる)第2の参照条件下よりも少なくとも10倍以上、好ましくは少なくとも100倍以上速く、標的細胞内または(例えば、細胞内条件を模倣もしくは代表するように選択することができる)第1の参照条件下で分解される。
【0047】
切断可能な結合基は、切断因子(例えば、pH、レドックス電位、または分解分子の存在)の影響を受けやすい。一般に、切断因子は、血清中または血液中よりも細胞内により高いレベルまたは活性で広まるかまたは多く見られる。このような分解因子の例としては、例えば、酸化酵素もしくは還元酵素または還元剤(例えば、細胞内に存在する、レドックス切断可能な結合基を還元によって分解することができるメルカプタン)を含む、特定の基質のために選択されるかまたは基質特異性がないレドックス剤;エステラーゼ;エンドソームまたは酸性環境を作り出すことができる薬剤(例えば、5以下のpHを生じさせる薬剤);一般酸として作用することによって、酸切断可能な結合基を加水分解または分解することができる酵素、ペプチダーゼ(基質特異的である可能性がある)、およびホスファターゼが挙げられる。
【0048】
切断可能な結合基(例えば、ジスルフィド結合)は、pHによる影響を受けやすい可能性がある。ヒト血清のpHは7.4であるが、平均の細胞内pHは、わずかにより低く、約7.1~7.3の範囲である。エンドソームのpHは、より酸性で、5.5~6.0の範囲であり、リソソームのpHは、さらにより酸性で、5.0前後である。いくつかのリンカーは、好ましいpHで切断される切断可能な結合基を有しており、その結果、カチオン性脂質を細胞内のリガンドから放出するか、または所望の細胞区画中に放出する。
【0049】
リンカーは、特定の酵素によって切断され得る切断可能な結合基を含むことができる。リンカーに組み込まれる切断可能な結合基の種類は、標的される細胞によって決まり得る。例えば、肝臓標的化リガンドは、エステル基を含むリンカーを介してカチオン性脂質に結合させることができる。肝臓細胞はエステラーゼが豊富であり、それゆえに、リンカーはエステラーゼが豊富でない細胞型よりも効果的に肝臓細胞で切断される。エステラーゼが豊富な他の細胞型としては、肺、腎皮質、および精巣が挙げられる。
【0050】
ペプチド結合を含有するリンカーは、ペプチダーゼが豊富な細胞型(例えば、肝臓細胞および滑膜細胞)を標的とする場合に使用することができる。
【0051】
一般に、候補となる切断可能な結合基の好適性は、候補となる結合基を切断する分解因子(または条件)の能力を試験することによって評価することができる。また、候補となる切断可能な結合基を、血液中でのまたは標的以外の他の組織と接触させたときの切断に抵抗する能力について試験することも望ましい。したがって、第1の条件と第2の条件の間の切断に対する相対的感受性を決定することができ、この場合、第1の条件は、標的細胞内での切断を示すように選択され、第2の条件は他の組織または生体液(例えば、血液もしくは血清)での切断を示すように選択される。評価は、無細胞系で、細胞で、細胞培養で、器官培養もしくは組織培養で、または動物全体で行なうことができる。無細胞条件または培養条件で最初の評価を行ない、さらなる評価によって動物全体で確認することが有用であり得る。好ましい実施形態では、有用な候補化合物は、血液または血清(または細胞外条件を模倣するように選択されたインビトロ条件下)と比較して、少なくとも2倍、4倍、10倍、または100倍速く細胞内で(または細胞内条件を模倣するように選択されたインビトロ条件下で)切断される。
【0052】
レドックス切断可能な結合基
切断可能な結合基の1つのクラスは、還元または酸化によって切断されるレドックス切断可能な結合基である。還元切断可能な結合基の例は、ジスルフィド結合基(-S-S-)である。候補となる切断可能な結合基が、好適で「還元切断可能な結合基」であるかどうか、または例えば、特定のiRNA部分および特定の標的化剤とともに使用するのに好適であるかどうかを決定するために、本明細書に記載される方法に注目することができる。例えば、候補は、ジチオスレイトール(DTT)、または細胞(例えば、標的細胞)で観察される切断の速度を模倣する、当技術分野で公知の試薬を用いる他の還元剤とともにインキュベートすることによって評価することができる。候補は、血液条件または血清条件を模倣するように選択される条件下で評価することもできる。好ましい実施形態では、候補化合物は、血液中で最大限で10%切断される。好ましい実施形態では、有用な候補化合物は、血液(または細胞外条件を模倣するように選択されたインビトロ条件下)と比較して、少なくとも2倍、4倍、10倍、または100倍速く、細胞内で(または細胞内条件を模倣するように選択されたインビトロ条件下)分解される。候補化合物の切断の速度を、細胞内媒体を模倣するように選択された条件下で、標準的な酵素動力学アッセイを用いて測定し、細胞外媒体を模倣するように選択された条件と比較することができる。
【0053】
リン酸ベースの切断可能な結合基
リン酸ベースの切断可能な結合基は、リン酸基を分解または加水分解する薬剤によって切断される。細胞内のリン酸基を切断する薬剤の例は、細胞内のホスファターゼなどの酵素である。リン酸ベースの結合基の例は、-O-P(O)(ORk)-O-、-O-P(S)(ORk)-O-、-O-P(S)(SRk)-O-、-S-P(O)(ORk)-O-、-O-P(O)(ORk)-S-、-S-P(O)(ORk)-S-、-O-P(S)(ORk)-S-、-S-P(S)(ORk)-O-、-O-P(O)(Rk)-O-、-O-P(S)(Rk)-O-、-S-P(O)(Rk)-O-、-S-P(S)(Rk)-O-、-S-P(O)(Rk)-S-、-O-P(S)(Rk)-S-である。好ましい実施形態は、-O-P(O)(OH)-O-、-O-P(S)(OH)-O-、-O-P(S)(SH)-O-、-S-P(O)(OH)-O-、-O-P(O)(OH)-S-、-S-P(O)(OH)-S-、-O-P(S)(OH)-S-、-S-P(S)(OH)-O-、-O-P(O)(H)-O-、-O-P(S)(H)-O-、-S-P(O)(H)-O-、-S-P(S)(H)-O-、-S-P(O)(H)-S-、-O-P(S)(H)-S-である。好ましい実施形態は、-O-P(O)(OH)-O-である。これらの候補は、上記の方法と類似の方法を用いて評価することができる。
【0054】
酸切断可能な結合基
酸切断可能な結合基とは、酸性条件下で切断される結合基のことである。好ましい実施形態では、酸切断可能な結合基は、pH約6.5以下(例えば、約6.0、5.5、5.0、またはそれ未満)の酸性環境において、または一般酸として作用することができる酵素などの薬剤によって切断される。細胞において、特定の低pHのオルガネラ(例えば、エンドソームおよびリソソーム)は、酸切断可能な結合基に対する切断環境を提供することができる。酸切断可能な結合基の例としては、ヒドラゾン、エステル、およびアミノ酸のエステルが挙げられるが、これらに限定されない。酸切断可能な基は、一般式-C=NN-,、C(O)O、または-OC(O)を有し得る。好ましい実施形態は、エステル(アルコキシ基)の酸素に結合した炭素が、アリール基、置換アルキル基、または三級アルキル基(例えば、ジメチル、ペンチル、もしくはt-ブチル)である場合である。これらの候補は、上記の方法と類似の方法を用いて評価することができる。
【0055】
エステルベースの結合基
エステルベースの切断可能な結合基は、細胞内のエステラーゼおよびアミダーゼなどの酵素によって切断される。エステルベースの切断可能な結合基の例としては、アルキレン基、アルケニルレン基、およびアルキニレン基が挙げられるが、これらに限定されない。エステル切断可能な結合基は、一般式-C(O)O-または-OC(O)-を有する、これらの候補は、上記の方法と類似の方法を用いて評価することができる。
【0056】
ペプチドベースの結合基
ペプチドベースの切断可能な結合基は、細胞内のペプチダーゼおよびプロテアーゼなどの酵素によって切断される。ペプチドベースの切断可能な結合基とは、アミノ酸の間で形成されてオリゴペプチド(例えば、ジペプチド、トリペプチドなど)およびポリペプチドを生じさせるペプチド結合のことである。ペプチドベースの切断可能基には、アミド基(-C(O)NH-)は含まれない。アミド基は、任意のアルキレン、アルケニレン、またはアルキニレンの間で形成され得る。ペプチド結合は、アミノ酸の間で形成されて、ペプチドおよびタンパク質を生じさせる特殊なタイプのアミド結合である。ペプチドベースの切断可能基は、通常、アミノ酸の間で形成されて、ペプチドおよびタンパク質を生じさせるペプチド結合(すなわち、アミド結合)に限定され、アミド官能基全体を含むものではない。ペプチドベースの切断可能な結合基は一般式-NHCHRAC(O)NHCHRBC(O)-(式中、RAおよびRBは、2つの隣接するアミノ酸のR基である)を有する。これらの候補は、上記の方法と類似の方法を用いて評価することができる。本明細書で使用される場合、「糖質」とは、少なくとも6個の炭素原子を有する1つ以上の単糖単位(線状、分岐状、もしくは環状であり得る)から構成され、各々の炭素原子に酸素原子、窒素原子、もしくは硫黄原子が結合しているそれ自体が糖質である化合物か、または各々が少なくとも6個の炭素原子を有する1つ以上の単糖単位(線状、分岐状、もしくは環状であり得る)から構成され、各々の炭素原子に酸素原子、窒素原子、もしくは硫黄原子が結合している糖質部分をその一部として有する化合物のいずれかを指す。代表的な糖質には、糖類(単糖、二糖、三糖、および約4~9個の単糖単位を含有するオリゴ糖)、ならびに多糖類(例えば、デンプン、グリコーゲン、セルロース、および多糖ゴム)が含まれる。具体的な単糖には、C5以上(好ましくはC5~C8)の糖;二糖および三糖には、2つまたは3つの単糖単位(好ましくはC5~C8)を有する糖が含まれる。
【0057】
「単糖」という用語は、アロース、アルトース、アラビノース、クラジノース、エリトロース、エリスルロース、フルクトース、D-フシトール、L-フシトール、フコサミン、フコース、フクロース、ガラクトサミン、D-ガラクトサミニトール、N-アセチル-ガラクトサミン、ガラクトース、グルコサミン、N-アセチル-グルコサミン、グルコサミニトール、グルコース、グルコース-6-リン酸、グロース、グリセルアルデヒド、L-グリセロ-D-マンノス-ヘプトース、グリセロール、グリセロン、グロース、イドース、リキソース、マンノサミン、マンノース、マンノース-6-リン酸、プシコース、キノボース、キノボサミン、ラムニトール、ラムノサミン、ラムノース、リボース、リブロース、セドヘプツロース、ソルボース、タガトース、タロース、酒石酸、トレオース、キシロース、およびキシルロースの基を含む。単糖は、D体またはL体であることができる。単糖はさらに、デオキシ糖(アルコールヒドロキシ基を水素に置換したもの)、アミノ糖(アルコールヒドロキシ基をアミノ基に置換したもの)、チオ糖(アルコールヒドロキシ基をチオールに置換したもの、またはC=OをC=Sに置換したもの、または環状形態の環酸素を硫黄に置換したもの)、セレノ糖、テルロ糖、アザ糖(環炭素を窒素に置換したもの)、イミノ糖(環酸素を窒素に置換したもの)、ホスファノ糖(環酸素をリンに置換したもの)、ホスファ糖(環炭素をリンに置換したもの)、C-置換単糖(非末端炭素原子における水素を炭素で置換したもの)、不飽和単糖、アルジトール(カルボニル基をCHOH基で置換したもの)、アルドン酸(アルデヒド基をカルボキシ基に置換したもの)、ケトアルドン酸、ウロン酸、アルダル酸などであってもよい。アミノ糖としては、アミノ単糖、好ましくは、ガラクトサミン、グルコサミン、マンノサミン、フコサミン、キノボサミン、ノイラミン酸、ムラミン酸、ラクトースジアミン、アコサミン、バシロサミン、ダウノサミン、デソサミン、フォロサミン、ガロサミン、カノサミン、カンソサミン(kansosamine)、ミカミノース、ミコサミン、ペロサミン、プノイモサミン、プルプロサミン(purpurosamine)、ロドサミンが挙げられる。単糖などは、さらに置換することができるということが理解される。
【0058】
「二糖」、「三糖」、および「多糖」という用語は、アベクオース、アクラボース、アミセトース、アミロペクチン、アミロース、アピオース、アルカノース、アスカリロース、アスコルビン酸、ボイビノース、セロビオース、セロトリオース、セルロース、カコトリオース、カルコース、キチン、コリトース、シクロデキストリン、シマロース、デキストリン、2-デオキシリボース、2-デオキシグルコース、ジギノース、ジギタロース、ジギトキソース、エバロース、エベミトロース(evemitrose)、フルクトオリゴ糖、ガルトオリゴ糖(galto-oligosaccharide)、ゲンチアノース、ゲンチオビオース、グルカン、グルコーゲン、グリコーゲン、ハマメロース、ヘパリン、イヌリン、イソレボグルコセノン、イソマルトース、イソマルトトリオース、イソパノース、コジビオース、ラクトース、ラクトサミン、ラクトースジアミン、ラミナラビオース、レボグルコサン、レボグルコセノン、β-マルトース、マルトリオース、マンナン-オリゴ糖、マンニノトリオース、メレチトース、メリビオース、ムラミン酸、ミカロース、ミシノース、ノイラミン酸、ニゲロース、ノジリミシン、ノビオース、オレアンドロース、パノース、パラトース、プランテオース、プリメベロース、ラフィノース、ロジノース、ルチノース、サルメントース、セドヘプツロース、セドヘプツロサン、ソラトリオース、ソホロース、スタキオース、ストレプトース、スクロース、α,α-トレハロース、トラハロサミン、ツラノース、チベロース、キシロビオース、ウンベリフェロースなどの基を含む。さらに、「二糖」、「三糖」、および「多糖」などは、さらに置換することができるということが理解される。二糖には、アミノ糖およびその誘導体、特に、C-4'位で誘導体化されたミカミノースまたはC-6'位で誘導体化された4デオキシ-3-アミノグルコースも含まれる。
【0059】
一実施形態では、化合物は、次式(I’)に示す構造を有する。
【化9】
式中、
AおよびBは、それぞれ存在ごとに独立して、O、N(R
N)、またはSであり;
XおよびYは、それぞれ存在ごとに独立して、H、保護基、リン酸基、ホスホジエステル基、活性化されたリン酸基、活性化された亜リン酸基、ホスホロアミダイト、固体担体、-P(Z’)(Z’’)O-ヌクレオシド、-P(Z’)(Z’’)O-オリゴヌクレオチド、脂質、PEG、ステロイド、ポリマー、ヌクレオチド、ヌクレオシド、-P(Z’)(Z’’)O-R
1-Q’-R
2-OP(Z’’’)(Z’’’’)O-オリゴヌクレオチド、またはオリゴヌクレオチド、-P(Z’)(Z’’)-式(I)、-P(Z’)(Z’’)-、または-Q-Rであり;
Rは、L
1であるか、または次式(II)~(V)に示す構造を有し:
【化10】
q
2A、q
2B、q
3A、q
3B、q4
A、q
4B、q
5A、q
5B、およびq
5Cは、それぞれ存在ごとに独立して、0~20を表し、ここで、繰り返し単位は、同一であっても異なっていてもよく;
QおよびQ’は、それぞれ存在ごとに独立して、存在しないか、-(P
7-Q
7-R
7)
p-T
7-、または-T
7-Q
7-T
7’-B-T
8’-Q
8-T
8であり;
P
2A、P
2B、P
3A、P
3B、P
4A、P
4B、P
5A、P
5B、P
5C、P
7、T
2A、T
2B、T
3A、T
3B、T
4A、T
4B、T
4A、T
5B、T
5C、T
7、T
7’、T
8、およびT
8’は、それぞれ存在ごとに独立して、存在しないか、CO、NH、O、S、OC(O)、NHC(O)、CH
2、CH
2NH、またはCH
2Oであり;
Bは-CH
2-N(B
L)-CH
2-であり;
B
Lは-T
B-Q
B-T
B’-R
xであり;
Q
2A、Q
2B、Q
3A、Q
3B、Q
4A、Q
4B、Q
5A、Q
5B、Q
5C、Q
7、Q
8、およびQ
Bは、それぞれ存在ごとに独立して、存在しないか、アルキレン、置換アルキレンであり、ここで、1つ以上のメチレンは、O、S、S(O)、SO
2、N(R
N)、C(R’)=C(R’)、C≡C、またはC(O)の1つ以上で中断または終結されることがあり;
T
BおよびT
B’は、それぞれ存在ごとに独立して、存在しないか、CO、NH、O、S、OC(O)、OC(O)O、NHC(O)、NHC(O)NH、NHC(O)O、CH
2、CH
2NH、またはCH
2Oであり;
R
xは、親油性物質(例えば、コレステロール、コール酸、アダマンタン酢酸、1-ピレン酪酸、ジヒドロテストステロン、1,3-ビス-O(ヘキサデシル)グリセロール、ゲラニルオキシヘキシル基、ヘキサデシルグリセロール、ボルネオール、メントール、1,3-プロパンジオール、ヘプタデシル基、パルミチン酸、ミリスチン酸、O3-(オレオイル)リトコール酸、O3-(オレオイル)コレン酸、ジメトキシトリチル、もしくはフェノキサジン)、ビタミン(例えば、葉酸、ビタミンA、ビタミンE、ビオチン、ピリドキサール)、ペプチド、糖質(例えば、単糖、二糖、三糖、四糖、オリゴ糖、多糖)、エンドソーム溶解成分、ステロイド(例えば、ウバオール、ヘシゲニン、ジオスゲニン)、テルペン(例えば、トリテルペン、例えば、サルササポゲニン、フリーデリン、エピフリーデラノール誘導体化リトコール酸)、またはカチオン性脂質であり;
R
1、R
2、R
2A、R
2B、R
3A、R
3B、R
4A、R
4B、R
5A、R
5B、R
5C、R
7は、それぞれ存在ごとに独立して、存在しないか、NH、O、S、CH
2、C(O)O、C(O)NH、NHCH(R
a)C(O)、-C(O)-CH(R
a)-NH-、CO、CH=N-O、
【化11】
またはヘテロシクリルであり;
L
1、L
2A、L
2B、L
3A、L
3B、L
4A、L
4B、L
5A、L
5B、およびL
5Cは、それぞれ存在ごとに独立して、糖質、例えば、単糖、二糖、三糖、四糖、オリゴ糖、および多糖であり;
R’およびR’’は、それぞれ存在ごとに独立して、H、C
1-C
6アルキル、OH、SH、またはN(R
N)
2であり;
R
Nは、それぞれ存在ごとに独立して、H、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、またはベンジルであり;
R
aは、Hまたはアミノ酸側鎖であり;
Z’、Z’’、Z’’’、およびZ’’’’は、それぞれ存在ごとに独立して、OまたはSであり;
pは、それぞれ存在ごとに独立して、0~20である。
【0060】
いくつかの実施形態では、式(I’)は、下記構造を有する。
【化12】
【0061】
いくつかの実施形態では、式(I’)は、下記構造を有する。
【化13】
【0062】
いくつかの実施形態では、式(I’)は、下記構造を有する。
【化14】
【0063】
いくつかの実施形態では、式(I’)は、下記構造を有する。
【化15】
【0064】
いくつかの実施形態では、式(I’)は、下記構造を有する。
【化16】
【0065】
いくつかの実施形態では、Rは下記のものである。
【化17】
【0066】
いくつかの実施形態では、Rは下記のものである。
【化18】
【0067】
いくつかの実施形態では、Rは下記のものである。
【化19】
【0068】
いくつかの実施形態では、Rは下記のものである。
【化20】
【0069】
いくつかの実施形態では、Rは下記のものである。
【化21】
【0070】
いくつかの実施形態では、Rは下記のものである。
【化22】
【0071】
いくつかの実施形態では、Rは下記のものである。
【化23】
【0072】
いくつかの実施形態では、Rは下記のものである。
【化24】
【0073】
いくつかの実施形態では、Rは下記のものである。
【化25】
【0074】
いくつかの好ましい実施形態では、Rは下記のものである。
【化26】
【0075】
いくつかの好ましい実施形態では、Rは下記のものである。
【化27】
【0076】
いくつかの好ましい実施形態では、式(I)は、下記構造を有する。
【化28】
【0077】
いくつかの実施形態では、Rは下記のものである。
【化29】
【0078】
いくつかの実施形態では、式(I)のモノマーは、下記構造を有する。
【化30】
【0079】
いくつかの実施形態では、式(I)のモノマーは、下記構造を有する。
【化31】
【0080】
いくつかの実施形態では、式(I)のモノマーは、下記構造を有する。
【化32】
【0081】
いくつかの実施形態では、式(I)のモノマーは、下記構造を有する。
【化33】
【0082】
いくつかの実施形態では、式(I)のモノマーは、下記構造を有する。
【化34】
【0083】
いくつかの実施形態では、式(I)のモノマーは、下記構造を有する。
【化35】
【0084】
いくつかの実施形態では、Rは下記のものである。
【化36】
【0085】
いくつかの実施形態では、Rは下記のものである。
【化37】
【0086】
いくつかの実施形態では、Rは下記のものである。
【化38】
【0087】
いくつかの実施形態では、Rは下記のものである。
【化39】
【0088】
いくつかの実施形態では、Rは下記のものである。
【化40】
【0089】
いくつかの実施形態では、Rは下記のものである。
【化41】
【0090】
いくつかの実施形態では、Rは下記のものである。
【化42】
【0091】
いくつかの実施形態では、Rは下記のものである。
【化43】
【0092】
いくつかの実施形態では、Rは下記のものである。
【化44】
【0093】
いくつかの好ましい実施形態では、式(I)は、下記構造を有する。
【化45】
【0094】
いくつかの好ましい実施形態では、式(I)は、下記構造を有する。
【化46】
【0095】
いくつかの好ましい実施形態では、式(I)は、下記構造を有する。
【化47】
【0096】
いくつかの好ましい実施形態では、式(I)は、下記構造を有する。
【化48】
【0097】
いくつかの好ましい実施形態では、式(I)は、下記構造を有する。
【化49】
【0098】
いくつかの好ましい実施形態では、式(I)は、下記構造を有する。
【化50】
【0099】
いくつかの好ましい実施形態では、L2AとL2Bは両方とも同じである。
【0100】
いくつかの実施形態では、L2AとL2Bは両方とも異なっている。
【0101】
いくつかの好ましい実施形態では、L3AとL3Bは両方とも同じである。
【0102】
いくつかの実施形態では、L3AとL3Bは両方とも異なっている。
【0103】
いくつかの好ましい実施形態では、L4AとL4Bは両方とも同じである。
【0104】
いくつかの実施形態では、L4AとL4Bは両方とも異なっている。
【0105】
いくつかの好ましい実施形態では、L5AとL5BとL5Cは全て同じである。
【0106】
いくつかの実施形態では、L5AとL5BとL5Cのうちの2つが同じである。
【0107】
いくつかの実施形態では、L5AとL5Bが同じである。
【0108】
いくつかの実施形態では、L5AとL5Cが同じである。
【0109】
いくつかの実施形態では、L5BとL5Cが同じである。
【0110】
別の態様では、本発明は、少なくとも1つの式(I)のモノマーを含むiRNA剤を特色とする。
【0111】
いくつかの実施形態では、iRNA剤は、1つ、2つ、3つ、4つ、または5つの式(I)のモノマー、より好ましくは1つ、2つ、または3つの式(I)のモノマー、より好ましくは1つまたは2つの式(I)のモノマー、一層より好ましくはわずか1つの式(I)のモノマーを含む。
【0112】
いくつかの実施形態では、式(I)のモノマーは全て、二本鎖iRNA剤の同じ鎖上にある。
【0113】
いくつかの実施形態では、式(I)のモノマーは、二本鎖iRNA剤の別々の鎖上にある。
【0114】
いくつかの実施形態では、iRNA剤中の式(I)のモノマーは全て同じである。
【0115】
いくつかの実施形態では、iRNA剤中の式(I)のモノマーは全て異なっている。
【0116】
いくつかの実施形態では、iRNA剤中の式(I)の一部のモノマーだけが同じである。
【0117】
いくつかの実施形態では、式(I)のモノマーは、iRNA剤中で互いに隣接している。
【0118】
いくつかの実施形態では、式(I)のモノマーは、iRNA剤中で互いに隣接していない。
【0119】
いくつかの実施形態では、式(I)のモノマーは、iRNA剤の5’末端、3’末端、内部位置、3’末端と5’末端の両方、5’末端と内部位置の両方、3’末端と内部位置の両方、および3つの位置の全て(5’末端と3’末端と内部位置)にある。
【0120】
いくつかの好ましい実施形態では、Rxはコレステロールである。
【0121】
いくつかの好ましい実施形態では、Rxはリトコール酸である。
【0122】
いくつかの好ましい実施形態では、Rxはオレイルリトコール酸である。
【0123】
いくつかの好ましい実施形態では、R
xは、下記構造を有する。
【化51】
【0124】
いくつかの好ましい実施形態では、B
Lは、下記構造を有する。
【化52】
【0125】
いくつかの好ましい実施形態では、式(I)は、下記構造を有する。
【化53】
【0126】
いくつかの好ましい実施形態では、式(I)は、下記構造を有する。
【化54】
【0127】
いくつかの好ましい実施形態では、式(I)は、下記構造を有する。
【化55】
【0128】
いくつかの好ましい実施形態では、式(I)は、下記構造を有する。
【化56】
(式中、YはOまたはSであり、nは3~6である)。
【0129】
いくつかの好ましい実施形態では、式(I)は、下記構造を有する。
【化57】
(式中、YはOまたはSであり、nは3~6である)。
【0130】
いくつかの好ましい実施形態では、式(I)は、下記構造を有する。
【化58】
【0131】
いくつかの好ましい実施形態では、式(I)は、下記構造を有する。
【化59】
(式中、XはOまたはSである)。
【0132】
いくつかの好ましい実施形態では、式(I)は、下記構造を有する。
【化60】
(式中、Rは、OHまたはNHCOOHである)。
【0133】
いくつかの好ましい実施形態では、式(I)は、下記構造を有する。
【化61】
(式中、Rは、OHまたはNHCOOHである)。
【0134】
いくつかの好ましい実施形態では、式(I)のモノマーは、下記式(VII)(式中、RはOまたはSである)のリンカーを介してiRNA剤に結合している。
【化62】
【0135】
いくつかの好ましい実施形態では、式(I)は、下記構造を有する。
【化63】
(式中、Rは、OHまたはNHCOOHである)。
【0136】
いくつかの好ましい実施形態では、式(I)は、下記構造を有する。
【化64】
【0137】
いくつかの好ましい実施形態では、式(I)は、下記構造を有する。
【化65】
(式中、Rは、OHまたはNHCOOHである)。
【0138】
いくつかの好ましい実施形態では、式(I)は、下記構造を有する。
【化66】
(式中、Rは、OHまたはNHCOOHである)。
【0139】
いくつかの好ましい実施形態では、式(I)は、下記構造を有する。
【化67】
(式中、Rは、OHまたはNHCOOHである)。
【0140】
いくつかの好ましい実施形態では、式(I)は、下記構造を有する。
【化68】
(式中、Rは、OHまたはNHCOOHである)。
【0141】
いくつかの実施形態では、iRNA剤は式(I)のモノマーに加えて、次式(VI)に示す構造を有するモノマーを有する。
【化69】
式中
X
6およびY
6は、それぞれ存在ごとに独立して、H、OH、ヒドロキシル保護基、リン酸基、ホスホジエステル基、活性化されたリン酸基、活性化された亜リン酸基、ホスホロアミダイト、固体担体、-P(Z’)(Z’’)O-ヌクレオシド、-P(Z’)(Z’’)O-オリゴヌクレオチド、脂質、PEG、ステロイド、ポリマー、-P(Z’)(Z’’)O-R
1-Q’-R
2-OP(Z’’’)(Z’’’’)O-オリゴヌクレオチド、ヌクレオチド、またはオリゴヌクレオチド、-P(Z’)(Z’’)-式(I)もしくは-P(Z’)(Z’’)-であり;
Q
6は、存在しないか、または-(P
6-Q
6-R
6)
v-T
6-であり;
P
6およびT
6は、それぞれ存在ごとに独立して、存在しないか、CO、NH、O、S、OC(O)、NHC(O)、CH
2、CH
2NH、またはCH
2Oであり;
Q
6はそれぞれ存在ごとに独立して、存在しないか、置換アルキレンであり、ここで、1つ以上のメチレンは、O、S、S(O)、SO
2、N(R
N)、C(R’)=C(R’)、C≡C、またはC(O)の1つ以上で中断または終結されることがあり;
R
6はそれぞれ存在ごとに独立して、存在しないか、NH、O、S、CH
2、C(O)O、C(O)NH、NHCH(R
a)C(O)、-C(O)-CH(R
a)-NH-、CO、CH=N-O、
【化70】
またはヘテロシクリルであり;
R’およびR’’は、それぞれ存在ごとに独立して、H、C
1-C
6アルキル、OH、SH、またはN(R
N)
2であり;
R
Nは、それぞれ存在ごとに独立して、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、またはベンジルであり;
R
aは、Hまたはアミノ酸側鎖であり;
Z’、Z’’、Z’’’、およびZ’’’’は、それぞれ存在ごとに独立して、OまたはSであり;
vは、それぞれ存在ごとに独立して、0~20を表し;
R
Lは、親油性物質(例えば、コレステロール、コール酸、アダマンタン酢酸、1-ピレン酪酸、ジヒドロテストステロン、1,3-ビス-O(ヘキサデシル)グリセロール、ゲラニルオキシヘキシル基、ヘキサデシルグリセロール、ボルネオール、メントール、1,3-プロパンジオール、ヘプタデシル基、パルミチン酸、ミリスチン酸、O3-(オレオイル)リトコール酸、O3-(オレオイル)コレン酸、ジメトキシトリチル、もしくはフェノキサジン)、ビタミン(例えば、葉酸、ビタミンA、ビオチン、ピリドキサール)、ペプチド、糖質(例えば、単糖、二糖、三糖、四糖、オリゴ糖、多糖)、エンドソーム溶解成分、ステロイド(例えば、ウバオール、ヘシゲニン、ジオスゲニン)、テルペン(例えば、トリテルペン、例えば、サルササポゲニン、フリーデリン、エピフリーデラノール誘導体化リトコール酸)、またはカチオン性脂質である。
【0142】
いくつかの実施形態では、1つ以上(例えば、1つ、2つ、3つ、4つ、または5つ)の式(I)のモノマーに加えて、1つ以上(例えば、1つ、2つ、3つ、4つ、または5つ)の式(VI)のモノマーがiRNA剤中に存在する。
【0143】
いくつかの好ましい実施形態では、式(I)のモノマー1つと式(VI)のモノマー1つだけがiRNA剤中に存在する。
【0144】
いくつかの実施形態では、RLはコレステロールである。
【0145】
いくつかの実施形態では、RLはリトコール酸である。
【0146】
いくつかの実施形態では、RLはオレイルリトコール酸である。
【0147】
いくつかの実施形態では、式(I)のモノマーは、式(VI)のモノマーと共有結合している。
【0148】
いくつかの好ましい実施形態では、式(I)のモノマーは、リン酸結合、例えば、ホスホジエステル結合、ホスホロチオエート結合、ホスホロジチオエート結合を介して、式(VI)のモノマーと結合している。
【0149】
いくつかの好ましい実施形態では、式(I)のモノマーは、式(VI)のモノマーを介してiRNA剤に結合している。
【0150】
いくつかの実施形態では、式(I)のモノマーは、iRNA剤と式(VI)のモノマーの間に介在している。
【0151】
いくつかの実施形態では、式(I)のモノマーと式(II)のモノマーは、互いに直接結合している。
【0152】
いくつかの実施形態では、式(I)のモノマーと式(II)のモノマーは、互いに直接結合していない。
【0153】
いくつかの実施形態では、式(I)のモノマーと式(IV)のモノマーは、二本鎖iRNA剤の別々の鎖上にある。
【0154】
いくつかの実施形態では、式(I)のモノマーと式(IV)のモノマーは、iRNA剤の反対の末端にある。
【0155】
いくつかの実施形態では、式(I)のモノマーと式(IV)のモノマーは、iRNA剤の同じ末端にある。
【0156】
いくつかの実施形態では、式(I)のモノマーまたは式(IV)のモノマーの一方がiRNA剤の内部位置にあると同時に、もう一方がiRNA剤の末端位置にある。
【0157】
いくつかの実施形態では、式(I)のモノマーと式(IV)のモノマーは両方とも、iRNA剤の内部位置にある。
【0158】
いくつかの好ましい実施形態では、式(IV)のモノマーは、下記構造を有する。
【化71】
【0159】
いくつかの実施形態では、本発明のiRNA剤は、
【化72-1】
【化72-2】
【化72-3】
【化72-4】
からなる群から選択され、
式中、リガンドはPK調節物質であり、X=OまたはSであり、Y=OまたはSであり、PEGは、分子量(MW)200~100,000の、w-OH PEG、w-アミノPEG、ω-メトキシPEG、ω-SH PEG、ω-プロパルギルPEG、ω-アジドPEG、およびω-リガンドPEGである。
【0160】
エンドソーム溶解成分
二重層膜を容易には横断することができない、巨大分子薬物および親水性薬物分子については、細胞のエンドソーム/リソソーム区画に閉じ込められることが、これらの薬物および薬物分子の作用部位に効果的に送達する上での最大の障害であると考えられる。近年、この問題に対処するために、多くの手法や戦略が工夫されてきた。リポソーム製剤については、融合性脂質を製剤中に使用することが最も一般的な手法となっている(Singh,R.S.,Goncalves,C.ら(2004). On the Gene Delivery Efficacies of pH-Sensitive Cationic Lipids via Endosomal Protonation. A Chemical Biology Investigation. Chem.Biol.11,713-723.)。プロトン化および/またはpH誘導性の立体構造変化を通じてpH感受性のエンドソーム溶解活性を示す他の成分には、荷電したポリマーおよびペプチドが含まれる。Hoffman,A.S.,Stayton,P.S.ら(2002). Design of "smart" polymers that can direct intracellular drug delivery. Polymers Adv.Technol.13,992-999;Kakudo,Chaki,T.,S.ら(2004). Transferrin-Modified Liposomes Equipped with a pH-Sensitive Fusogenic Peptide:An Artificial Viral-like Delivery System. Biochemistry 436,5618-5628;Yessine,M.A.およびLeroux,J.C.(2004). Membrane-destabilizing polyanions:interaction with lipid bilayers and endosomal escape of biomacromolecules. Adv. Drug Deliv.Rev.56,999-1021;Oliveira,S.,van Rooy,I.ら(2007). Fusogenic peptides enhance endosomal escape improving siRNA-induced silencing of oncogenes. Int.J.Pharm.331,211-4に例を見出すことができる。これらは、リポソームまたはリポプレックス(lipoplex)などの、薬物送達系との関連で一般に使用されている。リポソーム製剤を用いる、葉酸受容体を介する送達については、例えば、pH感受性の融合性ペプチドがリポソームに組み入れられ、取込みの過程での薬物の放出を改善することによって活性を増強することが示されている(Turk,M.J.,Reddy,J.A.ら(2002). Characterization of a novel pH-sensitive peptide that enhances drug release from folate-targeted liposomes at endosomal pHs. Biochim.Biophys.Acta 1559,56-68)。
【0161】
ある実施形態では、本発明のエンドソーム溶解成分は、pH依存的な膜活性および/または融合性を示すポリカチオン性のペプチドまたはペプチド模倣体であってもよい。ペプチド模倣体は、ペプチドを模倣するよう設計された、タンパク質様の小さい鎖であり得る。ペプチド模倣体は、分子の特性を変化させるために既存のペプチドを修飾すること、または通常とは異なるアミノ酸もしくはその類似体を用いてペプチド様の分子を合成することによって生じ得る。ある実施形態では、これらは、ペプチドと比較して、安定性および/または生物学的活性が向上している。ある実施形態では、エンドソーム溶解成分は、エンドソームpH(例えばpH5~6)で活性のある立体構造をとる。「活性のある」立体構造とは、エンドソーム溶解成分が、エンドソームの溶解および/または本発明のモジュラー組成物、もしくはその成分のエンドソームから細胞の細胞質への輸送を促進する立体構造のことである。
【0162】
化合物のライブラリーについては、溶血アッセイを用いて、中性pHと比べたエンドソームpHでのそれらの示差的な膜活性についてスクリーニングしてもよい。この方法で単離される見込みのある候補は、本発明のモジュラー組成物の成分として使用し得る。本発明の組成物および方法で使用されるエンドソーム溶解成分を同定するための方法は、化合物のライブラリーを提供する工程;血液細胞をライブラリーのメンバーと接触させる工程、ここで、接触が起こる培地のpHは制御される;これらの化合物が中性pH(例えば、約pH7~8)と比べて低いpH(例えば、約pH5~6)で血液細胞の示差溶解を誘導するかどうかを決定する工程を含み得る。
【0163】
例示的なエンドソーム溶解成分としては、GALAペプチド(Subbaraoら,Biochemistry,1987,26:2964-2972)、EALAペプチド(Vogelら,J.Am.Chem.Soc.,1996,118:1581-1586)、およびこれらの誘導体(Turkら,Biochem.Biophys.Acta,2002,1559:56-68)が挙げられる。ある実施形態では、エンドソーム溶解成分は、pHの変化に応答して電荷またはプロトン化が変化する化学基(例えば、アミノ酸)を含有してもよい。エンドソーム溶解成分は、線状または分岐状であってもよい。エンドソーム溶解成分の例示的な一次配列としては、H2N-(AALEALAEALEALAEALEALAEAAAAGGC)-CO2H;H2N-(AALAEALAEALAEALAEALAEALAAAAGGC)-CO2H;およびH2N-(ALEALAEALEALAEA)-CONH2が挙げられる。
【0164】
ある実施形態では、2つ以上のエンドソーム溶解成分を本発明のiRNA剤に組み入れてもよい。いくつかの実施形態では、これは、式(I)のモノマーに加えて、2つ以上の同じエンドソーム溶解成分をiRNA剤に組み入れることを伴う。他の実施形態では、これは、式(I)のモノマーに加えて、2つ以上の異なるエンドソーム溶解成分をiRNA剤に組み入れることを伴う。
【0165】
これらのエンドソーム溶解成分は、例えば、エンドソームpHで立体構造を変化させることによって、エンドソームからの脱出を仲介し得る。ある実施形態では、エンドソーム溶解成分は、中性pHでランダムコイル立体構造をとって存在し、エンドソームpHで両親媒性ヘリックスへと再編成し得る。この立体構造転移の結果として、これらのペプチドがエンドソームの脂質膜に挿入し、エンドソームの内容物を細胞質へと漏れ出させ得る。立体構造転移はpH依存的であるので、エンドソーム溶解成分は、血液中(pH約7.4)を循環する間、ほとんどまたは全く融合活性を示すことができない。融合活性は、エンドソーム溶解成分による脂質膜の破壊を引き起こす活性と定義される。融合活性の一例は、エンドソーム溶解成分によるエンドソーム膜の破壊であり、これは、エンドソームの溶解、または本発明のモジュラー組成物(例えば核酸)の1つ以上の成分のエンドソームから細胞質への漏出および輸送をもたらす。
【0166】
本明細書に記載される溶血アッセイに加えて、好適なエンドソーム溶解成分は、当業者により、他の方法を用いて試験および同定することができる。例えば、pH環境に応答する(例えば、pH環境によって電荷を変化させる)化合物の能力を、常法によって(例えば、細胞アッセイで)試験することができる。ある実施形態では、試験化合物を、細胞と混合するかまたは細胞と接触させ、例えば、エンドサイトーシスによって、細胞に試験化合物を取り込ませる。その後、接触させた細胞からエンドソーム調製物を作製し、このエンドソーム調製物を対照細胞からのエンドソーム調製物と比較することができる。対照細胞と比べた、接触させた細胞由来のエンドソーム画分の変化(例えば、減少)は、試験化合物が融合剤として機能することができることを示す。あるいは、接触させた細胞と対照細胞を、例えば、顕微鏡法(例えば、光学顕微鏡法または電子顕微鏡法)で評価して、細胞内のエンドソーム集団の違いを決定することができる。試験化合物および/またはエンドソームを標識して、例えば、エンドソームの漏出を定量化することができる。
【0167】
別のタイプのアッセイでは、本明細書に記載されるiRNA剤を、1つ以上の試験融合剤または推定融合剤を用いて構築する。iRNA剤は、可視化しやすいように標識することができる。ひとたびiRNA剤が細胞に取り込まれた際の、エンドソームからの脱出を促進するエンドソーム溶解成分の能力を、エンドソーム調製物の調製によって、または細胞の細胞質中の標識iRNA剤を可視化することができる顕微鏡技術によって評価することできる。ある他の実施形態では、遺伝子発現の阻害、または任意の他の生理的パラメータを、エンドソーム脱出の代用マーカーとして使用してもよい。
【0168】
他の実施形態では、円偏光二色性分光法を用いて、pH依存的な構造転移を示す化合物を同定することができる。
【0169】
2ステップアッセイを実施することもできる。この2ステップアッセイにおいては、第1のアッセイで、試験化合物だけでpHの変化に応答する能力を評価し、第2のアッセイで、試験化合物を含むモジュラー組成物がpHの変化に応答する能力を評価する。
【0170】
ペプチド
本発明とともに使用するのに好適なペプチドは、天然ペプチド(例えば、tatペプチドまたはアンテナペディアペプチド)、合成ペプチド、またはペプチド模倣体であることができる。さらに、ペプチドは、修飾ペプチドであることができ、例えば、ペプチドは、非ペプチド結合または偽ペプチド結合、およびD-アミノ酸を含むこともできる。ペプチド模倣体(本明細書ではオリゴペプチド模倣体とも呼ばれる)は、天然ペプチドと同様の明確な3次元構造に折り畳むことができる分子である。ペプチドおよびペプチド模倣体のオリゴヌクレオチドへの結合は、例えば、細胞による認識および吸収を高めることによって、オリゴヌクレオチドの薬物動態学的分布に影響を及ぼし得る。ペプチド部分またはペプチド模倣体部分の長さは、約5~50アミノ酸、例えば、約5、10、15、20、25、30、35、40、45、または50アミノ酸であることができる(例えば、表1参照)。
【表1】
【0171】
ペプチドまたはペプチド模倣体は、例えば、細胞透過ペプチド、カチオン性ペプチド、両親媒性ペプチド、または(例えば、主にTyr、Trp、もしくはPheからなる)疎水性ペプチドであることができる。ペプチド部分は、デンドリマーペプチド、拘束されたペプチド、または架橋されたペプチドであることができる。別の代替において、ペプチド部分は、疎水性の膜転位配列(MTS)を含むことができる。例示的な疎水性MTS含有ペプチドは、アミノ酸配列AAVALLPAVLLALLAPを有するRFGFである。疎水性MTSを含有するRFGF類似体(例えば、アミノ酸配列AALLPVLLAAP)をも標的化部分であることができる。ペプチド部分は、細胞膜を横断して、ペプチド、オリゴヌクレオチド、およびタンパク質を含む大きな極性分子を運ぶことができる、「送達」ペプチドであることができる。例えば、HIV Tatタンパク質由来の配列(GRKKRRQRRRPPQ)およびショウジョウバエのアンテナペディアタンパク質(RQIKIWFQNRRMKWKK)由来の配列は、送達ペプチドとして機能することができることが分かっている。ペプチドまたはペプチド模倣体は、ファージディスプレイライブラリー、または1ビーズ1化合物(OBOC)コンビナトリアルライブラリーから同定されたペプチドなどの、DNAのランダムな配列によってコードされることができる(Lamら,Nature,354:82-84,1991)。脂質に連結されたペプチドまたはペプチド模倣体は、アルギニン-グリシン-アスパラギン酸(RGD)ペプチド、またはRGD模倣体などの細胞標的化ペプチドであることが好ましい。ペプチド部分の長さは、約5アミノ酸~約30アミノ酸の範囲であることができる。ペプチド部分は、例えば、安定性または直接的な立体構造特性を増大させるための、構造的修飾を有することができる。下記のうちの任意の構造的修飾を利用することができる。
【0172】
RGDペプチド部分は、内皮腫瘍細胞または乳癌腫瘍細胞などの腫瘍細胞を標的とするために使用することができる(Zitzmannら,Cancer Res.,62:5139-43,2002)。RGDペプチドは、肺、腎臓、脾臓、または肝臓を含む、種々の組織の腫瘍への標的化を促進することができる(Aokiら,Cancer Gene Therapy 8:783-787,2001)。RGDペプチドは、脂質粒子の腎臓への標的化を促進することが好ましい。RGDペプチドは、線状または環状であることができ、かつ修飾する(例えば、特定の組織への標的化を促進するためにグリコシル化またはメチル化する)ことができる。例えば、グリコシル化されたRGDペプチドは、αvβ3を発現する腫瘍細胞を標的とすることができる(Haubnerら,Jour.Nucl.Med.,42:326-336,2001)。
【0173】
増殖細胞に濃縮されているマーカーを標的とするペプチドを使用することができる。例えば、RGDを含有するペプチドおよびペプチド模倣体は、癌細胞、特に、Ivν3インテグリンを提示する細胞を標的とすることができる。このように、RGDペプチド、RGDを含有する環状ペプチド、D-アミノ酸を含むRGDペプチド、および合成RGD模倣体を使用することができる。RGDに加えて、Iv-ν3インテグリンリガンドを標的とする他の部分を使用することができる。一般に、このようなリガンドは、増殖細胞および血管新生を制御するために使用することができる。
【0174】
「細胞透過ペプチド」は、細胞、例えば、微生物細胞(例えば、細菌細胞または真菌細胞)、または哺乳類細胞(例えば、ヒト細胞)を透過することができる。微生物細胞透過性ペプチドは、例えば、α-ヘリックス線状ペプチド(例えば、LL-37もしくはセロピンP1)、ジスルフィド結合含有ペプチド(例えば、α-ディフェンシン、β-ディフェンシン、もしくはバクテネシン)、またはわずか1種または2種のアミノ酸を主に含有するペプチド(例えば、PR-39もしくはインドリシジン)であることができる。細胞透過ペプチドは、核局在化シグナル(NLS)を含むこともできる。例えば、細胞透過ペプチドは、HIV-1 gp41の融合ペプチドドメインとSV40ラージT抗原のNLSとに由来するMPGなどの、2つの部分からなる両親媒性ペプチドであることができる(Simeoniら,Nucl.Acids Res.31:2717-2724,2003))。
【0175】
iRNA剤
iRNA剤は、標的遺伝子と十分に相同な領域を含み、かつヌクレオチドに関して、iRNA剤またはその断片が標的遺伝子の下方調節を仲介することができるほどの十分な長さであるべきである。(説明しやすくするために、本明細書では、ヌクレオチドまたはリボヌクレオチドという用語を、RNA剤の1つ以上のモノマーサブユニットに関して使用する場合がある。本明細書での「リボヌクレオチド」または「ヌクレオチド」という用語の用法は、修飾RNAまたはヌクレオチド代用物の場合、修飾ヌクレオチド、または1つ以上の位置での代用物置換部分も示すことができるということが理解されよう。)したがって、iRNA剤は、標的RNAに対して少なくとも部分的に、およびいくつかの実施形態では、完全に、相補的な領域であるか、またはこのような領域を含む。iRNA剤と標的の間に完全な相補性がある必要はないが、対応性は、iRNA剤、またはその切断産物が、例えば、標的RNA(例えば、mRNA)のRNAi切断によって、配列特異的なサイレンシングを導くことが可能となる程度に十分でなければならない。相補性、すなわち、標的鎖との相同性の程度は、アンチセンス鎖において最も重要である。多くの場合、特にアンチセンス鎖における完全な相補性が所望されるものの、いくつかの実施形態は、特にアンチセンス鎖において、(標的RNAに対して)1つ以上の、または例えば、6つ、5つ、4つ、3つ、2つ、もしくはそれより少ないミスマッチを含むことができる。特にアンチセンス鎖におけるミスマッチは、末端領域で最も許容され、かつ、存在する場合は、末端領域(単数または複数)において、例えば、5’末端および/または3’末端から6、5、4、または3ヌクレオチド以内であり得る。センス鎖に要求されるのは、分子の全体的な二本鎖の性質を維持するためにアンチセンス鎖と十分に相補的であることのみである。
【0176】
本明細書の他の箇所で論じられるように、およびその全体が参照により組み入れられる文献において、iRNA剤は、多くの場合、修飾されているか、またはヌクレオシド代用物を含む。iRNA剤の一本鎖領域は、多くの場合、修飾されているか、またはヌクレオシド代用物を含み、例えば、不対領域またはヘアピン構造の領域(例えば、2つの相補的な領域を繋ぐ領域)は、修飾またはヌクレオシド代用物を有することができる。例えば、エキソヌクレアーゼに対して、iRNA剤の1つ以上の3'末端または5'末端を安定化する修飾またはアンチセンスsiRNA剤がRISCに入るように有利に働く修飾も想定される。修飾は、C3(またはC6、C7、C12)アミノリンカー、チオールリンカー、カルボキシルリンカー、非ヌクレオチドスペーサー(C3、C6、C7、C12、無塩基、トリエチレングリコール、ヘキサエチレングリコール)、特別なビオチン試薬またはフルオレセイン試薬(これらは、ホスホロアミダイトとして生じ、RNA合成の間に複数のカップリングが行なえるように、DMT保護ヒドロキシル基を別に有する)を含むことができる。
【0177】
iRNA剤としては次のようなものが挙げられる:インターフェロン応答を誘発するのに十分な長さの分子(これらは、Dicer(Bernsteinら,2001.Nature,409:363-366)によって切断され、RISC(RNA誘導サイレンシング複合体)内に入ることができる);およびインターフェロン応答を誘発しない程度に十分に短い分子(これらの分子もDicerによって切断され、かつ/またはRISC内に入ることができる)、例えば、RISC内に入ることができる大きさの分子(例えば、Dicer切断産物に類似した分子)。インターフェロン応答を誘発しない程度に十分に短い分子を、本明細書では、「siRNA剤またはより短いiRNA剤」と呼ぶ。本明細書で使用される「siRNA剤またはより短いiRNA剤」とは、例えば、ヒト細胞内で有害なインターフェロン応答を誘導しないぐらい十分に短い、例えば、60、50、40、または30ヌクレオチド対未満の二重鎖領域を有するRNA剤(例えば、二本鎖RNA剤または一本鎖剤)を指す。siRNA剤、またはその切断産物は、例えば、標的RNAに対してRNAiを誘導することによって、標的遺伝子を下方調節することができ、この場合、標的は内在性の標的RNAまたは病原体の標的RNAを含み得る。
【0178】
siRNA剤の各鎖の長さは、30、25、24、23、22、21、または20ヌクレオチド以下であることができる。鎖の長さは、少なくとも19であってもよい。例えば、各鎖の長さは、21~25ヌクレオチドであることができる。siRNA剤は、17、18、19、20、21、22、23、24、または25ヌクレオチド対の二重鎖領域、および1つ以上の突出、または1つもしくは2つの、2~3ヌクレオチドの3'突出を有してもよい。
【0179】
標的RNAに対する相同性および標的遺伝子を下方調節する能力に加え、iRNA剤は、以下の特性のうちの1つ以上を有してもよい:
(1)iRNA剤は、下記のRNA剤の項で示される式VII、VIII、IX、またはXのものであり得る;
(2)一本鎖の場合、iRNA剤は、1つ以上のリン酸基または1つ以上のリン酸基の類似体を含む5’修飾を有し得る;
(3)極めて多くの数の、または全ての、ヌクレオシドに対してさえ修飾がなされているにもかかわらず、iRNA剤は、正確な塩基対の形成、および例えば、標的RNAの切断によって、標的の下方調節を可能にするのに十分な、相同な標的RNAとの二重鎖構造の形成が可能であるように適切な3次元構造で塩基(または修飾塩基)を提示することができるアンチセンス鎖を有し得る;
(4)極めて多くの数の、または全ての、ヌクレオシドに対してさえ修飾がなされているにもかかわらず、iRNA剤は、「RNA様」特性をなお有し得る。すなわち、iRNA剤は、リボヌクレオチドベースの内容物だけに限られないか、またはリボヌクレオチドベースの内容物が一部ですらあるとしても、RNA分子の全体的な構造的特性、化学的特性、および物理的特性を有し得る。例えば、iRNA剤は、例えば、全てのヌクレオチド糖が、例えば、2’ヒドロキシルの代わりに2’フルオロを含有するセンス鎖および/またはアンチセンス鎖を含有することができる。このデオキシリボヌクレオチド含有剤はなおRNA様特性を示すことが期待され得る。理論に束縛されることを望まないが、電気陰性のフッ素は、リボースのC2’位に結合する場合、軸配向を好む。フッ素のこの空間的優先傾向は、糖にC3’エンドパッカー(endo pucker)を取ることを強制することできる。これは、RNA分子に観察されるのと同じパッカリング様式であり、RNAに特徴的なAファミリー型ヘリックスを生じる。さらに、フッ素は、良好な水素結合受容体であるため、RNA構造を安定化することが知られている水分子と同じ水素結合相互作用に参与することができる。2’糖位置の修飾部分は、デオキシリボヌクレオチドのH部分よりもリボヌクレオチドのOH部分に特徴的であるH結合に入ることが可能である。特定のiRNA剤は、糖の全部、または少なくとも50、75、80、85、90、もしくは95%にC3’エンドパッカーを示すか、RNAに特徴的なAファミリー型ヘリックスを生じることができるくらい十分な量の糖にC3’エンドパッカーを示すか、C3’エンドパッカー構造でない糖を約20個、10個、5個、4個、3個、2個、または1個しか持たない。修飾の性質にかかわらず、およびRNA剤が、特に、突出または他の一本鎖領域にデオキシヌクレオチドまたは修飾デオキシヌクレオチドを含有し得るが、DNA分子、または分子中のヌクレオチドの50、60、もしくは70%よりも多く、もしくは二重鎖領域中のヌクレオチドの50、60、もしくは70%よりも多くがデオキシリボヌクレオチドである任意の分子、または2’位がデオキシである修飾デオキシリボヌクレオチドは、RNA剤の定義から除外されることは確実である。
【0180】
本明細書で使用される「一本鎖iRNA剤」とは、単一分子から構成されたiRNA剤のことである。一本鎖iRNA剤は、鎖内対形成によって形成される二重鎖領域を含んでもよく、例えば、一本鎖iRNA剤は、ヘアピン構造もしくはパンハンドル(pan handle)構造であるか、またはヘアピン構造もしくはパンハンドル構造を含み得る。一本鎖iRNA剤は、標的分子に関してアンチセンスであってもよい。ある実施形態では、一本鎖iRNA剤は、5’リン酸化されているか、または5’プライム末端にホスホリル類似体を含む。5’-リン酸修飾には、RISCを介した遺伝子サイレンシングと適合可能なものが含まれる。好適な修飾としては、5’モノホスフェート((HO)2(O)P-O-5’);5’ジホスフェート((HO)2(O)P-O-P(HO)(O)-O-5’);5’トリホスフェート((HO)2(O)P-O-(HO)(O)P-O-P(HO)(O)-O-5’);5’-グアノシンキャップ(7-メチル化または非メチル化)(7m-G-O-5’-(HO)(O)P-O-(HO)(O)P-O-P(HO)(O)-O-5’);5’-アデノシンキャップ(Appp)、および任意の修飾または非修飾ヌクレオチドキャップ構造(N-O-5’-(HO)(O)P-O-(HO)(O)P-O-P(HO)(O)-O-5’);5’モノチオホスフェート(ホスホロチオエート;(HO)2(S)P-O-5’);5’モノジチオホスフェート(ホスホロジチオエート;(HO)(HS)(S)P-O-5’)、5’-ホスホロチオレート((HO)2(O)P-S-5’);酸素/硫黄置換モノホスフェート、ジホスフェート、およびトリホスフェートの任意のさらなる組合せ(例えば、5’-α-チオトリホスフェート、5’-γ-チオトリホスフェートなど)、5’-ホスホロアミデート((HO)2(O)P-NH-5’、(HO)(NH2)(O)P-O-5’)、5’-アルキルホスホネート(R=アルキル=メチル、エチル、イソプロピル、プロピルなど、例えば、RP(OH)(O)-O-5’、(OH)2(O)P-5’-CH2)、5’-アルキルエーテルホスホネート(R=アルキルエーテル=メトキシメチル(MeOCH2-)、エトキシメチルなど、例えば、RP(OH)(O)-O-5’)が挙げられる(これらの修飾は、二本鎖iRNAのアンチセンス鎖に関しても使用することができる)。
【0181】
一本鎖iRNA剤は、RISC複合体に入り、RISCを介した標的mRNAの切断に関与することができるぐらい十分に長くてもよい。一本鎖iRNA剤の長さは、少なくとも14ヌクレオチド、および他の実施形態では、少なくとも15、20、25、29、35、40、または50ヌクレオチドである。ある実施形態では、一本鎖iRNA剤の長さは、200、100、または60ヌクレオチド未満である。
【0182】
ヘアピンiRNA剤は、17、18、19、29、20、21、22、23、24、もしくは25ヌクレオチド対に等しいか、または少なくとも17、18、19、29、20、21、22、23、24、もしくは25ヌクレオチド対の二重鎖領域を有する。二重鎖領域の長さは、200、100、または50以下である。ある実施形態では、二重鎖領域の範囲の長さは、15~30、17~23、19~23、および19~21ヌクレオチド対である。ヘアピンは、いくつかの実施形態では、3’に、また、ある実施形態では、ヘアピンのアンチセンス側に、一本鎖突出または末端不対領域を有してもよい。いくつかの実施形態では、突出の長さは、2~3ヌクレオチドである。
【0183】
本明細書で使用される「二本鎖(ds)iRNA剤」とは、鎖間ハイブリダイゼーションによって二重鎖構造の領域が形成され得る、2つ以上の、場合によっては2つの、鎖を含むiRNA剤である。
【0184】
二本鎖iRNA剤のアンチセンス鎖の長さは、14、15、16、17、18、19、25、29、40、もしくは60ヌクレオチドに等しくてもよく、または少なくとも14、15、16、17、18、19、25、29、40、もしくは60ヌクレオチドであってもよい。二本鎖iRNA剤のアンチセンス鎖の長さは、200、100、または50ヌクレオチド以下であってもよい。範囲の長さは、17~25、19~23、および19~21ヌクレオチドであってもよい。
【0185】
二本鎖iRNA剤のセンス鎖の長さは、14、15、16、17、18、19、25、29、40、もしくは60ヌクレオチドに等しくてもよく、または少なくとも14、15、16、17、18、19、25、29、40、もしくは60ヌクレオチドであってもよい。二本鎖iRNA剤のセンス鎖の長さは、200、100、または50ヌクレオチド以下であってもよい。範囲の長さは、17~25、19~23、および19~21ヌクレオチドであってもよい。
【0186】
二本鎖iRNA剤の二本鎖部分の長さは、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、29、40、もしくは60ヌクレオチド対に等しくてもよく、または少なくとも14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、29、40、もしくは60ヌクレオチド対であってもよい。二本鎖iRNA剤の二本鎖部分の長さは、200、100、または50ヌクレオチド対以下であってもよい。範囲の長さは、15~30、17~23、19~23、および19~21ヌクレオチド対であってもよい。
【0187】
多くの実施形態では、ds iRNA剤は、内在性分子によって(例えば、Dicerによって)切断されて、より小さいds iRNA剤(例えば、siRNA剤)を産生することができるくらいに十分大きい。
【0188】
二本鎖iRNA剤のアンチセンス鎖とセンス鎖の一方または両方を修飾することが望ましい場合がある。センス鎖とアンチセンス鎖は、同じ修飾または同じ部類の修飾を有することもあれば、異なる修飾を有することもあり、例えば、場合によっては、センス鎖のみを修飾することが望ましい場合がある。例えば、センス鎖を不活性化するために、センス鎖のみを修飾することが望ましい場合があり、例えば、センス鎖を不活性化して、活性のあるsiRNA/タンパク質またはRISCの形成を妨げるために、センス鎖を修飾することができる。これは、センス鎖の5’-リン酸化を妨げる修飾によって(例えば、5’-O-メチルリボヌクレオチドを用いる修飾によって)遂行することができる(Nykanenら(2001) ATP requirements and small interfering RNA structure in the RNA interference pathway.Cell 107,309-321参照)。例えば、単に5'-OHをO-MeではなくHによって置換することなどの、リン酸化を妨げる他の修飾も使用することもできる。あるいは、大きな嵩高い基を5’-ホスフェートに付加して、ホスホジエステル結合に変えてもよいが、ホスホジエステラーゼがこのような結合を切断して、機能的なsiRNAの5’-末端を放出し得るので、これはあまり望ましくない可能性がある。アンチセンス鎖修飾には、5’リン酸化、および本明細書で論じられる任意の他の5’修飾、特に、一本鎖iRNA分子に関する節において上で論じられた5’修飾が含まれる。
【0189】
ds iRNA剤が、分子の一方または両方の末端で一本鎖領域または不対領域を含むように、センス鎖とアンチセンス鎖を選択し得る。したがって、ds iRNA剤は、突出、例えば、1つもしくは2つの5’突出もしくは3’突出、または2~3ヌクレオチドの3’突出を含有するように対形成した、センス鎖とアンチセンス鎖を含有し得る。多くの実施形態は、3’突出を有する。あるsiRNA剤は、一本鎖突出を有し、いくつかの実施形態では、各末端に1ヌクレオチドまたは2ヌクレオチドまたは3ヌクレオチドの長さの3’突出を有する。突出は、一方の鎖が他方の鎖よりも長いこと、または同じ長さの2つの鎖がジグザグ状なっていることの結果として生じ得る。5’末端はリン酸化されていてもよい。
【0190】
いくつかの実施形態では、二重鎖領域の長さは、例えば、上で論じられたsiRNA剤の範囲において、15~30ヌクレオチド長、または18、19、20、21、22、および23ヌクレオチド長である。siRNA剤は、天然のDicerによって長いds iRNAからプロセッシングされた産物と長さおよび構造が類似していることがあり得る。siRNA剤の2つの鎖が結合(例えば、共有結合)している実施形態も含まれる。ヘアピン、または所要の二本鎖領域、および3’突出を与える他の一本鎖構造も本発明の範囲内にある。
【0191】
ds iRNA剤およびsiRNA剤を含む、本明細書に記載される単離されたiRNA剤は、標的RNA、例えば、mRNA(例えば、タンパク質をコードする遺伝子の転写物)のサイレンシングを仲介することができる。便宜上、このようなmRNAを、本明細書では、サイレンシングされるmRNAとも呼ぶ。このような遺伝子を標的遺伝子とも呼ぶ。一般に、サイレンシングされるRNAは、内在性遺伝子または病原体遺伝子である。さらに、mRNA以外のRNA(例えば、tRNA)、およびウイルスRNAを標的とすることもできる。
【0192】
本明細書で使用される場合、「RNAiを仲介する」という語句は、配列特異的な様式で、標的RNAをサイレンシングする能力を指す。理論に束縛されることを望まないが、サイレンシングでは、RNAiの機構またはプロセスおよびガイドRNA(例えば、21~23ヌクレオチドのsiRNA剤)が使用されると考えられている。
【0193】
本明細書で使用される場合、「特異的にハイブリダイズ可能な」または「相補的な」は、本発明の化合物と標的RNA分子の間で安定かつ特異的な結合が生じるような十分な程度の相補性を示すために使用される用語である。特異的結合には、特異的結合が所望される条件下で、すなわち、インビボアッセイもしくは治療的処置の場合には、生理的条件下で、またはインビトロアッセイの場合には、そのアッセイが行なわれる条件下で、非標的配列に対するオリゴマー化合物の非特異的結合を回避するために十分な程度の相補性が必要とされる。非標的配列は、典型的には、少なくとも5ヌクレオチド異なっている。
【0194】
一実施形態では、iRNA剤は、iRNA剤が標的mRNAによってコードされるタンパク質の産生をサイレンシングするように、標的RNA、例えば、標的mRNAに「十分に相補的」である。別の実施形態では、iRNA剤は、標的RNAに「厳密に相補的」であり、例えば、標的RNAとiRNA剤は、例えば、厳密に相補的な領域でワトソン-クリック塩基対のみからできたハイブリッドを形成するようにアニールする。「十分に相補的な」標的RNAは、標的RNAに厳密に相補的な(例えば、少なくとも10ヌクレオチドの)内部領域を含むことができる。さらに、いくつかの実施形態では、iRNA剤は、単一ヌクレオチドの相違を特異的に区別することができる。この場合、iRNA剤は、厳密な相補性が、単一ヌクレオチドの違いがある(例えば、7ヌクレオチド以内の)領域に見られる場合のみにRNAiを仲介する。
【0195】
本明細書で使用される場合、「オリゴヌクレオチド」という用語は、例えば、100、200、300、または400ヌクレオチド未満の長さの核酸分子(RNAまたはDNA)を指す。
【0196】
本明細書で論じられるRNA剤は、未修飾のRNA、ならびに、例えば、効力を改善するために修飾されたRNA、およびヌクレオシド代用物のポリマーを含む。未修飾のRNAとは、核酸の成分、すなわち、糖、塩基、およびリン酸の部分が、天然に存在する、例えば、ヒトの体内に天然に存在するのと同じかまたは本質的に同じである分子を指す。当技術分野では、稀であるかまたは通常とは異なるが、天然に存在するRNAを修飾RNAと呼ぶことが多く、例えば、Limbachら (1994) Summary:the modified nucleosides of RNA,Nucleic Acids Res.22:2183-2196を参照されたい。(典型的には転写後修飾の結果であることが明白なので)修飾RNAと呼ばれることが多い、このような稀であるかまたは通常とは異なるRNAは、本明細書で使用される「未修飾のRNA」という用語の範囲内にある。修飾RNAは、1つ以上の核酸の成分、すなわち、糖、塩基、およびリン酸の部分が、天然に存在するものと異なる、例えば、ヒトの体内に存在するものと異なる分子を指す。これらは修飾「RNA」と呼ばれるが、当然、修飾されているのでRNAではない分子を含むことになる。ヌクレオシド代用物とは、リボリン酸骨格が非リボリン酸構築物で置換されている分子のことであり、この非リボリン酸構築物は、ハイブリダイゼーションが、リボリン酸骨格の場合に見られるのと実質的に同様(例えば、リボリン酸骨格の非荷電模倣物)であるように、塩基が正しい空間的関係性で提示されることを可能にする。上記の全ての例が本明細書で論じられる。
【0197】
以下の考察の大部分は、一本鎖分子について言及するものである。本発明の多くの実施形態では、二本鎖iRNA剤(例えば、部分的二本鎖iRNA剤)が想定されている。したがって、以下に記載される一本鎖構造からできた二本鎖構造(例えば、2つの別々の分子が接触して二本鎖領域を形成している場合、または分子内対形成によって二本鎖領域が形成されている場合(例えば、ヘアピン構造))は、本発明の範囲内にある。長さについては、本明細書の他の箇所で記載されている。
【0198】
核酸はサブユニットのポリマーであるので、以下に記載される修飾の多く(例えば、塩基、またはリン酸部分、またはリン酸部分の非結合Oの修飾)は、核酸内で繰り返される位置で生じる。修飾が核酸中のこれらの位置全てで生じる場合もあるが、多くの場合、そうではない。例として、修飾は、3’末端位置または5’末端位置でのみで生じ得、末端領域で、例えば、末端ヌクレオチド上の位置でまたは鎖の最後の2、3、4、5、もしくは10ヌクレオチドでのみ生じ得る。修飾は、二本鎖領域、一本鎖領域、またはその両方で生じ得る。修飾は、RNAの二本鎖領域でのみ生じ得るか、またはRNAの一本鎖領域でのみ生じ得る。例えば、非結合O位置でのホスホロチオエート修飾は、一方もしくは両方の末端で生じ得るか、末端領域で、例えば、末端ヌクレオチド上の位置でもしくは鎖の最後の2、3、4、5、もしくは10ヌクレオチドでのみ生じ得るか、または二本鎖領域と一本鎖領域において、特に末端で生じ得る。5’末端(単数または複数)をリン酸化することができる。
【0199】
いくつかの実施形態では、例えば、安定性を高めるために、突出に特定の塩基を含めるか、または一本鎖突出(例えば、5’突出もしくは3’突出、もしくはその両方)に修飾ヌクレオチドもしくはヌクレオチド代用物を含めることが可能である。例えば、突出にプリンヌクレオチドを含めることが望ましいことがある。いくつかの実施形態では、3’突出または5’突出中の塩基の全てまたはいくつかを、例えば、本明細書に記載される修飾を用いて、修飾する。修飾には、例えば、リボース糖の2’OH基での修飾の使用、例えば、リボヌクレオチドの代わりとしてのデオキシリボヌクレオチド(例えば、デオキシチミジン)の使用、およびリン酸基での修飾(例えば、ホスホロチオエート修飾)が含まれることができる。突出が標的配列と相同である必要はない。
【0200】
修飾およびヌクレオチド代用物を以下で論じる。
【化73】
【0201】
上記の式VIIに示すスキャフォールドは、リボ核酸の一部を表す。塩基性成分は、リボース糖、塩基、末端リン酸、およびリン酸ヌクレオチド間リンカーである。塩基が、天然の塩基、例えば、アデニン、ウラシル、グアニン、またはシトシンである場合、糖は、(図示したように)未修飾の2’ヒドロキシルリボース糖であり、W、X、Y、およびZは全てOであり、式VIIは、天然の未修飾オリゴリボヌクレオチドを表す。
【0202】
未修飾のオリゴリボヌクレオチドは、いくつかの用途では最適とは言えない場合があり、例えば、未修飾のオリゴリボヌクレオチドが、例えば、細胞ヌクレアーゼによる分解を受けやすい可能性がある。ヌクレアーゼは、核酸のホスホジエステル結合を加水分解することができる。しかしながら、上記RNA成分の1つ以上に対する化学修飾は、改善された特性を付与することができ、例えば、ヌクレアーゼに対してオリゴリボヌクレオチドをより安定にすることができる。
【0203】
修飾核酸およびヌクレオチド代用物は、以下のうちの1つ以上を含むことができる:
(i)非結合(XおよびY)リン酸酸素の一方もしくは両方、ならびに/または結合(WおよびZ)リン酸酸素の1つ以上の改変(例えば、置換)(リン酸が末端位置にある場合、位置WまたはZのうちの1つは、天然に存在するリボ核酸中ではさらなる元素にリン酸を結合しない。しかしながら、用語を単純化するために、別途注記される場合を除き、核酸の5’末端のW位と核酸の3’末端の末端Z位とは、本明細書で使用される「結合リン酸酸素」という用語の範囲内にある);
(ii)リボース糖の構成成分(例えば、リボース糖の2’ヒドロキシル)の改変(例えば、置換);
(iii)リン酸部分(括弧I)の、「デホスホ(dephospho)」リンカーによる大規模な置換;
(iv)天然に存在する塩基の修飾または置換;
(v)リボース-リン酸骨格(括弧II)の置換または修飾;
(vi)RNAの3’末端または5’末端の修飾(例えば、末端リン酸基の除去、修飾、もしくは置換、またはRNAの3’末端もしくは5’末端のいずれかへの、部分(例えば、蛍光標識部分)のコンジュゲーション)。
【0204】
この文脈で使用される、置換、修飾、改変などの用語は、プロセス限定を意味するものではなく、例えば、修飾とは、参照リボ核酸または天然に存在するリボ核酸から始めて、それを、修飾リボ核酸を産生するように修飾しなければならないことを意味ものではなく、修飾とは、単に、天然に存在する分子との違いを意味するものである。
【0205】
いくつかの化学的実体の実際の電子構造は、ただ1つの標準的な型(すなわち、ルイス構造)によって十分に表すことはできないことが理解される。理論に束縛されることを望まないが、その代わりに、実際の構造は、集合的に共鳴型または共鳴構造として知られている、2つ以上の標準的な型のあるハイブリッドまたは加重平均であることができる。共鳴構造は、個別的な化学的実体ではなく、紙の上でのみ存在する。共鳴構造は、特定の化学的実体に対する結合電子および非結合電子の配置または「局在」という点においてのみ相互に異なる。1つの共鳴構造が他のものよりも高い程度でハイブリッドに寄与することが可能である。したがって、本発明の実施形態についての記載および図示される説明は、特定の種に対する主要な共鳴型として当技術分野で認識されているものに関してなされる。例えば、任意のホスホロアミデート(非結合酸素の窒素による置換)は、上記の図においてX=OおよびY=Nによって表されよう。
【0206】
具体的な修飾を以下に詳細に論じる。
【0207】
リン酸基
リン酸基は、負に荷電した種である。電荷は、2つの非結合酸素原子(すなわち、上記式1中のXおよびY)に均等に分布している。しかしながら、リン酸基は、酸素原子の1つを異なる置換基で置換することによって修飾することができる。RNAリン酸骨格に対するこの修飾の1つの結果は、ヌクレアーゼ分解に対するオリゴリボヌクレオチドの耐性の増大であり得る。したがって、理論に束縛されることを望まないが、いくつかの実施形態では、非荷電リンカーかまたは非対称の電荷分布を有する荷電リンカーのいずれかを生じさせる改変を導入することが望ましい可能性がある。
【0208】
修飾リン酸基の例としては、ホスホロチオエート、ホスホロセレネート、ボラノホスフェート、ボラノホスフェートエステル、水素ホスホネート、ホスホロアミデート、アルキルホスホネートまたはアリールホスホネート、およびホスホトリエステルが挙げられる。ホスホロジチオエートは、両方の非結合酸素が硫黄に置換されている。XまたはYのうちの1つだけが改変される状況とは異なり、ホスホロジチオエートにおけるリン中心はアキラルであり、アキラルはオリゴリボヌクレオチドのジアステレオマーの形成を妨害する。ジアステレオマー形成により、個々のジアステレオマーがヌクレアーゼに対するさまざまな耐性を示す調製物を生じさせることが可能である。さらに、キラルリン酸基を含有するRNAのハイブリダイゼーション親和性は、対応する未修飾のRNA種と比べてより低い可能性がある。したがって、理論に束縛されることを望まないが、ジアステレオマー混合物を産生することができないという点で、キラル中心を排除するXとYの両方に対する修飾(例えば、ホスホロジチオエート形成)が望ましい可能性がある。したがって、Xは、S、Se、B、C、H、N、またはOR(Rはアルキルもしくはアリールである)のいずれか1つであることができる。したがって、Yは、S、Se、B、C、H、N、またはOR(Rはアルキルもしくはアリールである)のいずれか1つであることができる。Xおよび/またはYを硫黄で置換することが可能である。
【0209】
リン酸リンカーは、結合酸素(すなわち、上記式1中のWまたはZ)を、窒素(架橋ホスホロアミデート)、硫黄(架橋ホスホロチオエート)、および炭素(架橋メチレンホスホネート)で置換することによって修飾することもできる。置換は、末端の酸素(位置W(3’)または位置Z(5’))で生じることができる。Wを炭素で置換すること、またはZを窒素で置換することが可能である。
【0210】
候補となる薬剤を下記のような好適性について評価することができる。
【0211】
糖基
修飾RNAは、リボ核酸の糖基の全てまたはいくつかの修飾を含むことができる。例えば、2’ヒドロキシル基(OH)は、多数の異なる「オキシ」または「デオキシ」置換基で修飾または置換することができる。理論によって束縛されるものではないが、ヒドロキシルが、2’アルコキシドイオンを形成するように脱プロトン化されることがもはやできないので、安定性の増強が予測される。2’アルコキシドは、リンカーのリン原子への分子内求核攻撃による分解を触媒することができる。再び、理論によって束縛されることを望まないが、2’位でのアルコキシド形成が可能でない改変を導入することが、いくつかの実施形態に対して望ましい可能性がある。
【0212】
「オキシ」-2’ヒドロキシル基修飾の例としては、アルコキシまたはアリールオキシ(OR、例えば、R=H、アルキル、シクロアルキル、アリール、アラルキル、ヘテロアリール、または糖);ポリエチレングリコール(PEG)、O(CH2CH2O)nCH2CH2OR;2’ヒドロキシルが、例えば、メチレン架橋によって同じリボース糖の4’炭素に接続されている「ロックされた」核酸(LNA);O-AMINE(AMINE=NH2;アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、ヘテロシクリル、アリールアミノ、ジアリールアミノ、ヘテロアリールアミノ、またはジヘテロアリールアミノ、エチレンジアミン、ポリアミノ)およびアミノアルコキシ、O(CH2)nAMINE(例えば、AMINE=NH2;アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、ヘテロシクリル、アリールアミノ、ジアリールアミノ、ヘテロアリールアミノ、またはジヘテロアリールアミノ、エチレンジアミン、ポリアミノ)が挙げられる。メトキシエチル基(MOE)(PEG誘導体である、OCH2CH2OCH3)のみを含有するオリゴヌクレオチドが堅固なホスホロチオエート修飾で修飾されたものに匹敵するヌクレアーゼ安定性を示すことは注目すべきことである。
【0213】
「デオキシ」修飾としては、水素(すなわち、デオキシリボース糖、これは、部分的にdsのRNAの突出部に特に関連する);ハロ(例えば、フルオロ);アミノ(例えば、NH2;アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、ヘテロシクリル、アリールアミノ、ジアリールアミノ、ヘテロアリールアミノ、ジヘテロアリールアミノ、またはアミノ酸);NH(CH2CH2NH)nCH2CH2-AMINE(AMINE=NH2;アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、ヘテロシクリル、アリールアミノ、ジアリールアミノ、ヘテロアリールアミノ、またはジヘテロアリールアミノ)、NHC(O)R(R=アルキル、シクロアルキル、アリール、アラルキル、ヘテロアリール、または糖)、シアノ;メルカプト;アルキル-チオ-アルキル;チオアルコキシ;ならびにアルキル、シクロアルキル、アリール、アルケニル、およびアルキニル(これらは任意で、例えば、アミノ官能基で置換されていてもよい)が挙げられる。ある実施形態の他の置換基としては、2’-メトキシエチル、2’-OCH3、2’-O-アリル、2’-C-アリル、および2’-フルオロが挙げられる。
【0214】
糖基は、リボース中の対応する炭素の立体化学的配置とは反対の立体化学的配置を有する1つ以上の炭素を含有することもできる。したがって、修飾RNAは、例えば、糖としてアラビノースを含有するヌクレオチドを含むことができる。
【0215】
修飾RNAは、C-1’にヌクレオ塩基を欠く「無塩基」糖を含むこともできる。これらの無塩基糖は、1つ以上の構成成分の糖原子におけるさらなる修飾を含有することもできる。
【0216】
ヌクレアーゼ耐性を最大化するために、2’修飾を、1つ以上のリン酸リンカー修飾(例えば、ホスホロチオエート)と組み合わせて使用することができる。いわゆる「キメラ」オリゴヌクレオチドは、2つ以上の異なる修飾を含有するオリゴヌクレオチドである。
【0217】
候補となる修飾を下記のように評価することができる。
【0218】
リン酸基の置換
リン酸基は、リン以外のものを含有する接続部(式1中の括弧I参照)に置換することができる。理論によって束縛されることを望まないが、荷電したホスホジエステル基はヌクレアーゼ分解における反応中心なので、これを中性の構造模倣物で置換することは、ヌクレアーゼ安定性の増強を付与するはずであると考えられている。再び、理論によって束縛されることを望まないが、ある態様では、荷電したリン酸基が中性部分に置換される改変を導入することが望ましい可能性がある。
【0219】
リン酸基を置換することができる部分の例としては、シロキサン、カルボネート、カルボキシメチル、カルバメート、アミド、チオエーテル、エチレンオキシドリンカー、スルホネート、スルホンアミド、チオホルムアセタール、ホルムアセタール、オキシム、メチレンイミノ、メチレンメチルイミノ、メチレンヒドラゾ、メチレンジメチルヒドラゾ、およびメチレンオキシメチルイミノが挙げられる。ある実施形態では、置換には、メチレンカルボニルアミノ基およびメチレンメチルイミノ基が含まれてもよい。
【0220】
候補となる修飾を下記のように評価することができる。
【0221】
リン酸骨格の置換
リン酸リンカーおよびリボース糖が、ヌクレアーゼ耐性のヌクレオシドまたはヌクレオチドの代用物(式1中の括弧II参照)に置換されているオリゴヌクレオチド模倣スキャフォールドを構築することもできる。理論によって束縛されることを望まないが、繰り返し荷電した骨格が存在しなければ、ポリアニオンを認識するタンパク質(例えば、ヌクレアーゼ)への結合が減少すると考えられている。再び、理論によって束縛されることを望まないが、ある態様では、塩基が中性の代用骨格によって連結される改変を導入することが望ましい可能性がある。
【0222】
例としては、モルホリノ、シクロブチル、ピロリジン、およびペプチド核酸(PNA)というヌクレオシド代用物が挙げられる。ある実施形態では、PNA代用物を使用してもよい。
【0223】
候補となる修飾を下記のように評価することができる。
【0224】
末端修飾
オリゴヌクレオチドの3’末端および5’末端を修飾することができる。このような修飾は、分子の3’末端、5’末端、または両方の末端においてなされ得る。これらの修飾は、末端のリン酸全体または末端リン酸基の1つ以上の原子の修飾または置換を含むことができる。例えば、オリゴヌクレオチドの3’末端および5’末端を、他の機能的分子実体、例えば、標識部分、例えば、フルオロフォア(例えば、ピレン、TAMRA、フルオレセイン、Cy3色素もしくはCy5色素)または保護基(例えば、硫黄、ケイ素、ホウ素、もしくはエステルをベースにしたもの)にコンジュゲートすることができる。機能的分子実体は、リン酸基および/またはスペーサーを介して糖に付着させることが可能である。スペーサーの末端原子は、リン酸基の結合原子または糖のC-3’もしくはC-5’のO基、N基、S基、もしくはC基に接続するかまたはこれらに置き換わることできる。あるいは、スペーサーは、ヌクレオチド代用物(例えば、PNA)の末端原子に接続するかまたはこれに置き換わることができる。これらのスペーサーまたはリンカーとしては、例えば、-(CH2)n-、-(CH2)nN-、-(CH2)nO-、-(CH2)nS-、O(CH2CH2O)nCH2CH2OH(例えば、n=3または6)、無塩基糖、アミド、カルボキシ、アミン、オキシアミン、オキシイミン、チオエーテル、ジスルフィド、チオ尿素、スルホンアミド、もしくはモルホリノ、またはビオチン試薬およびフルオレセイン試薬を挙げることができる。「スペーサー/リン酸-機能的分子実体-スペーサーリン酸」という配列が、iRNA剤の2つの鎖の間に介在するとき、この配列は、ヘアピン型RNA剤中のヘアピンRNAループの代わりになることが可能である。3’末端は-OH基とすることができる。理論に束縛されることを望まないが、特定の部分のコンジュゲーションは、輸送特性、ハイブリダイゼーション特性、および特異性特性を改善することができると考えられている。再び、理論に束縛されることを望まないが、ヌクレアーゼ耐性を改善する末端の改変を導入することが望ましい可能性がある。末端修飾の他の例としては、色素、インターカレート剤(例えば、アクリジン)、架橋剤(例えば、プソラレン、マイトマイシンC)、ポルフィリン(TPPC4、テキサフィリン、サッフィリン)、多環芳香族炭化水素(例えば、フェナジン、ジヒドロフェナジン)、人工エンドヌクレアーゼ(例えば、EDTA)、親油性担体(例えば、コレステロール、コール酸、アダマンタン酢酸、1-ピレン酪酸、ジヒドロテストステロン、1,3-ビス-O(ヘキサデシル)グリセロール、ゲラニルオキシヘキシル基、ヘキサデシルグリセロール、ボルネオール、メントール、1,3-プロパンジオール、ヘプタデシル基、パルミチン酸、ミリスチン酸、O3-(オレオイル)リトコール酸、O3-(オレオイル)コレン酸、ジメトキシトリチル、またはフェノキサジン)、およびペプチドコンジュゲート(例えば、アンテナペディアペプチド、Tatペプチド)、アルキル化剤、ホスフェート、アミノ、メルカプト、PEG(例えば、PEG-40K)、MPEG、[MPEG]2、ポリアミノ、アルキル、置換アルキル、放射性標識マーカー、酵素、ハプテン(例えば、ビオチン)、輸送/吸収促進物質(例えば、アスピリン、ビタミンE、葉酸)、合成リボヌクレアーゼ(例えば、イミダゾール、ビスイミダゾール、ヒスタミン、イミダゾールクラスター、アクリジン-イミダゾールコンジュゲート、テトラアザマクロ環のEu3+錯体)が挙げられる。
【0225】
末端修飾は、本明細書の他の箇所で論じられるような理由を含む多くの理由のために、活性を調節するために、または分解に対する耐性を調節するために加えることができる。活性を調節するために有用な末端修飾には、リン酸またはリン酸類似体による5’末端の修飾が含まれる。例えば、ある実施形態では、iRNA剤、とりわけアンチセンス鎖は、5’リン酸化されているか、または5’プライム末端にホスホリル類似体を含む。5’リン酸修飾には、RISCを介した遺伝子サイレンシングと適合可能なものが含まれる。好適な修飾には、5’モノホスフェート((HO)2(O)P-O-5’);5’ジホスフェート((HO)2(O)P-O-P(HO)(O)-O-5’);5’トリホスフェート((HO)2(O)P-O-(HO)(O)P-O-P(HO)(O)-O-5’);5’-グアノシンキャップ(7-メチル化または非メチル化)(7m-G-O-5’-(HO)(O)P-O-(HO)(O)P-O-P(HO)(O)-O-5’);5’-アデノシンキャップ(Appp)、および任意の修飾または非修飾ヌクレオチドキャップ構造(N-O-5’-(HO)(O)P-O-(HO)(O)P-O-P(HO)(O)-O-5’);5’モノチオホスフェート(ホスホロチオエート;(HO)2(S)P-O-5’);5’モノジチオホスフェート(ホスホロジチオエート;(HO)(HS)(S)P-O-5’)、5’-ホスホロチオレート((HO)2(O)P-S-5’);酸素/硫黄置換モノホスフェート、ジホスフェート、およびトリホスフェートの任意のさらなる組合せ(例えば、5’-α-チオトリホスフェート、5’-γ-チオトリホスフェートなど)、5’-ホスホロアミデート((HO)2(O)P-NH-5’、(HO)(NH2)(O)P-O-5’)、5’-アルキルホスホネート(R=アルキル=メチル、エチル、イソプロピル、プロピルなど、例えば、RP(OH)(O)-O-5’、(OH)2(O)P-5’-CH2)、5’-アルキルエーテルホスホネート(R=アルキルエーテル=メトキシメチル(MeOCH2-)、エトキシメチルなど、例えば、RP(OH)(O)-O-5’)が含まれる。
【0226】
末端修飾は、分解に対する耐性を増大させるのに有用であることもできる。
【0227】
末端修飾は、分布をモニターするためにも有用であり得るが、このような場合、付加される基には、フルオロフォア(例えば、フルオレセイン)またはAlexa色素(例えば、Alexa 488)が含まれ得る。末端修飾は、取込みを増強するためにも有用であり得るが、このために有用な修飾にはコレステロールが含まれる。末端修飾は、RNA剤を別の部分に架橋するためにも有用であり得るが、このための有用な修飾にはマイトマイシンCが含まれる。
【0228】
候補となる修飾を下記のように評価することができる。
【0229】
塩基
アデニン、グアニン、シトシン、およびウラシルはRNAに見られる最も一般的な塩基である。これらの塩基は、改善された特性を有するRNAを提供するために修飾または置換することができる。例えば、ヌクレアーゼ耐性オリゴヌクレオチドは、これらの塩基を用いて、または合成もしくは天然のヌクレオ塩基(例えば、イノシン、チミン、キサンチン、ヒポキサンチン、ヌブラリン(nubularine)、イソグアニシン(isoguanisine)、またはツベルシジン)および上記の修飾のいずれか1つを用いて調製することができる。あるいは、上記の塩基および「汎用的な塩基」のいずれかの置換類似体または修飾類似体を利用することができる。例としては、2-アミノアデニン、アデニンおよびグアニンの6-メチルおよび他のアルキル誘導体、アデニンおよびグアニンの2-プロピルおよび他のアルキル誘導体、5-ハロウラシルおよび5-ハロシトシン、5-プロピニルウラシルおよび5-プロピニルシトシン、6-アゾウラシル、6-アゾシトシン、および6-アゾチミン、5-ウラシル(シュードウラシル)、4-チオウラシル、5-ハロウラシル、5-(2-アミノプロピル)ウラシル、5-アミノアリルウラシル、8-ハロ、8-アミノ、8-チオール、8-チオアルキル、8-ヒドロキシル、および他の8-置換アデニンならびに8-ハロ、8-アミノ、8-チオール、8-チオアルキル、8-ヒドロキシル、および他の8-置換グアニン、5-トリフルオロメチルおよび他の5-置換ウラシルおよびシトシン、7-メチルグアニン、5-置換ピリミジン、6-アザピリミジン、およびN-2置換プリン、N-6置換プリン、およびO-6置換プリン(2-アミノプロピルアデニンを含む)、5-プロピニルウラシルおよび5-プロピニルシトシン、ジヒドロウラシル、3-デアザ-5-アザシトシン、2-アミノプリン、5-アルキルウラシル、7-アルキルグアニン、5-アルキルシトシン、7-デアザアデニン、N6,N6-ジメチルアデニン、2,6-ジアミノプリン、5-アミノ-アリル-ウラシル、N3-メチルウラシル、置換1,2,4-トリアゾール、2-ピリジノン、5-ニトロインドール、3-ニトロピロール、5-メトキシウラシル、ウラシル-5-オキシ酢酸、5-メトキシカルボニルメチルウラシル、5-メチル-2-チオウラシル、5-メトキシカルボニルメチル-2-チオウラシル、5-メチルアミノメチル-2-チオウラシル、3-(3-アミノ-3-カルボキシプロピル)ウラシル、3-メチルシトシン、5-メチルシトシン、N4-アセチルシトシン、2-チオシトシン、N6-メチルアデニン、N6-イソペンチルアデニン、2-メチルチオ-N6-イソペンテニルアデニン、N-メチルグアニン、またはO-アルキル化塩基が挙げられる。さらなるプリンおよびピリミジンとしては、米国特許第3,687,808号明細書に開示されているもの、「Concise Encyclopedia Of Polymer Science And Engineering」,858-859頁,Kroschwitz J.I.編,John Wiley & Sons,1990に開示されているもの、およびEnglischら,Angewandte Chemie,International Edition,1991,30,613によって開示されているものが挙げられる。
【0230】
一般に、塩基の変化は、安定性を促進するためには使用されないが、他の理由のために有用である可能性があり、例えば、いくつかのもの(例えば、2,6-ジアミノプリンおよび2アミノプリン)は蛍光性である。修飾塩基は、標的特異性を低下させることがあり得る。このことは、iRNA剤の設計において考慮されてもよい。
【0231】
候補となる修飾を下記のように評価することができる。
【0232】
候補RNAの評価
候補RNA剤(例えば、修飾RNA)を、そのRNA剤または修飾分子および対照分子を適当な条件に曝露すること、ならびに選択された特性の存在について評価することによって、選択された特性について評価することができる。例えば、分解物質に対する耐性は、以下のように評価することができる。候補となる修飾RNA(および対照分子、通常は未修飾形態)を、分解的な条件、例えば、分解作用物質(例えば、ヌクレアーゼ)を含む環境に曝露することができる。例えば、生物学的試料、例えば、治療的使用において直面し得る環境、例えば、血液または細胞画分(例えば、無細胞ホモジネートまたは破砕された細胞)と類似の生物学的試料を使用することができる。その後、候補および対照を、多数の手法のいずれかによって、分解に対する耐性について評価することができる。例えば、候補および対照を、例えば、放射性標識もしくは酵素標識、または蛍光標識(例えば、Cy3もしくはCy5)を用いて、曝露の前に標識することができる。対照RNAおよび修飾RNAを、分解作用物質、および任意で、対照(例えば、不活化された(例えば、熱不活化された)分解作用物質)とともにインキュベートすることができる。その後、物理学的パラメータ(例えば、修飾分子および対照分子のサイズ)を決定する。これらのパラメータを、物理学的方法によって(例えば、ポリアクリルアミドゲル電気泳動またはサイズ分画カラムによって)、その分子がそのもとの長さを維持していたかどうかを評価するために決定するか、または機能的に評価することができる。あるいは、ノーザンブロット分析を用いて、未標識の修飾分子の長さをアッセイすることができる。
【0233】
機能的アッセイを用いて、候補薬剤を評価することもできる。機能的アッセイは、修飾によって、遺伝子発現をサイレンシングする分子の能力が変化するかどうかを決定するために、最初に、または前の非機能的アッセイ(例えば、分解に対する耐性についてのアッセイ)の後で適用することができる。例えば、細胞(例えば、マウスまたはヒトの細胞などの哺乳類細胞)に、蛍光タンパク質(例えば、GFP)を発現するプラスミドと、その蛍光タンパク質をコードする転写物に相同な候補RNA剤を共トランスフェクトすることができる(例えば、国際公開第00/44914号パンフレット参照)。例えば、GFP mRNAに相同な修飾dsiRNAは、トランスフェクションに候補dsiRNAを含めなかった対照細胞(例えば、RNA剤が添加されなかった対照、および/または未修飾RNAが添加された対照)と比較して、細胞の蛍光の減少についてモニターすることによって、GFP発現を阻害する能力についてアッセイすることができる。遺伝子発現に対する候補薬剤の効力は、修飾ds iRNA剤および未修飾ds iRNA剤の存在下での細胞の蛍光を比較することによって評価することができる。
【0234】
代替的な機能的アッセイにおいて、内在性マウス遺伝子(例えば、c-mosなどの母性発現遺伝子)に相同な候補ds iRNA剤を未成熟のマウス卵母細胞に注入し、インビボで遺伝子発現を阻害するiRNA剤の能力を評価することができる(例えば、国際公開第01/36646号パンフレット参照)。卵母細胞の表現型(例えば、第II中期での停止を維持する能力)を、RNA剤が発現を阻害する指標としてモニターすることができる。例えば、ds iRNA剤によるc-mos mRNAの切断は、卵母細胞に中期での停止を抜け出させ、単為生殖的発生を開始させるであろう(Colledgeら Nature 370:65-68,1994;Hashimotoら Nature,370:68-71,1994)。標的RNAレベルに対する修飾RNA剤の効果は、陰性対照と比較して、標的mRNAのレベルの減少についてアッセイするためのノーザンブロットによって、または標的タンパク質のレベルの減少についてアッセイするためのウエスタンブロットによって確認することができる。対照は、RNA剤が添加されない細胞、および/または未修飾RNAが添加される細胞を含むことができる。
【0235】
RNA構造に関する参考文献
本明細書で列挙した刊行物、特許、および公開特許出願は全て、参照により本明細書に組み入れられる。
【0236】
本発明に従って使用されるオリゴリボヌクレオチドおよびオリゴリボヌクレオシドは、固相合成によるものであってもよく、例えば、「Oligonucleotides synthesis,a practical approach」,M.J.Gait編,IRL Press,1984;「Oligonucleotides and Analogues,A Practical Approach」エフ エックスタイン(F.Eckstein)編、IRL Press、1991(とりわけ、第1章「Modern machine-aided methods of oligodeoxyribonucleotide synthesis」、第2章「Oligoribonucleotide synthesis」、第3章「2’-O-Methyloligoribonucleotide-s:synthesis and applications」、第4章「Phosphorothioate oligonucleotides」、第5章「Synthesis of oligonucleotide phosphorodithioates」、第6章「Synthesis of oligo-2’-deoxyribonucleoside methylphosphonates」、および第7章「Oligodeoxynucleotides containing modified bases」)を参照されたい。他の特に有用な合成手順、試薬、ブロッキング基、および反応条件は、Martin,P.,Helv.Chim.Acta,1995,78,486-504;Beaucage,S.L.およびIyer,R.P.,Tetrahedron,1992,48,2223-2311、ならびにBeaucage,S.L.およびIyer,R.P.,Tetrahedron,1993,49,6123-6194、またはこれらの文献中で参照されている参考文献に記載されている。国際公開第00/44895号パンフレット、国際公開第01/75164号パンフレット、または国際公開第02/44321号パンフレットに記載の修飾を本明細書で使用することができる。
【0237】
リン酸基の参考文献
ホスフィン酸オリゴリボヌクレオチドの調製は、米国特許第5,508,270号明細書に記載されている。アルキルホスホン酸オリゴリボヌクレオチドの調製は、米国特許第4,469,863号明細書に記載されている。ホスホルアミダイトオリゴリボヌクレオチドの調製は、米国特許第5,256,775号明細書または米国特許第5,366,878号明細書に記載されている。ホスホトリエステルオリゴリボヌクレオチドの調製は、米国特許第5,023,243号明細書に記載されている。ボラノリン酸オリゴリボヌクレオチドの調製は、米国特許第5,130,302号明細書および米国特許第5,177,198号明細書に記載されている。3’-デオキシ-3’-アミノホスホルアミデートリボオリゴヌクレオチドの調製は、米国特許第5,476,925号明細書に記載されている。3’-デオキシ3’-メチレンホスホン酸オリゴリボヌクレオチドは、An,Hら,J.Org.Chem.2001,66,2789-2801に記載されている。硫黄架橋ヌクレオチドの調製は、Sproatら,Nucleosides Nucleotides 1988,7,651、およびCrosstickら,Tetrahedron Lett.1989,30,4693に記載されている。
【0238】
糖基の参考文献
2’修飾に対する修飾は、Verma,S.ら,Annu.Rev.Biochem.1998,67,99~134および同文献中の全ての参考文献に見出すことができる。リボースに対する特異的修飾は、以下の参考文献に見出すことができる:2’-フルオロ(Kawasakiら,J.Med.Chem.,1993,36,831~841,2’-MOE(Martin,P. Helv.Chim.Acta 1996,79,1930~1938)、「LNA」(Wengel,J.Acc Chem.Res.1999,32,301~310)。
【0239】
リン酸基の置換に関する参考文献
メチレンメチルイミノ結合オリゴリボヌクレオシド(本明細書では、MMI結合オリゴリボヌクレオシドとしても識別される)、メチレンジメチルヒドラゾ結合オリゴリボヌクレオシド(本明細書では、MDH結合オリゴリボヌクレオシドとしても識別される)、およびメチレンカルボニルアミノ結合オリゴヌクレオシド(本明細書では、アミド-3結合オリゴリボヌクレオシドとしても識別される)、およびメチレンアミノカルボニル結合オリゴヌクレオシド(本明細書では、アミド-4結合オリゴリボヌクレオシドとしても識別される)、ならびに例えば、MMIとPO結合またはPS結合を交互に有する混合骨格化合物は、米国特許第5,378,825号、同第5,386,023号、同第5,489,677号の各明細書、ならびに公開された国際出願第PCT/US92/04294号およびPCT/US92/04305号(それぞれ、国際公開第92/20822号および国際公開第92/20823号として公開されている)の各パンフレットに記載されているように調製することができる。ホルムアセタールおよびチオホルムアセタール結合オリゴリボヌクレオシドは、米国特許第5,264,562号明細書および同第5,264,564号明細書に記載されているように調製することができる。エチレンオキシド結合オリゴリボヌクレオシドは、米国特許第5,223,618号明細書に記載されているように調製することができる。シロキサン置換は、Cormier,J.F.ら,Nucleic Acids Res.1988,16,4583に記載されている。カルボネート置換は、Tittensor,J.R.,J.Chem.Soc.C1971,1933に記載されている。カルボキシメチル置換は、Edge,M.D.,J.Chem.Soc.Perkin Trans.1 1972,1991に記載されている。カルバメート置換は、Stirchak,E.P.,Nucleic Acids Res.1989,17,6129に記載されている。
【0240】
リン酸-リボース骨格の置換に関する参考文献
シクロブチル糖代用物の化合物は、米国特許第5,359,044号明細書に記載されているように調製することができる。ピロリジン糖代用物は、米国特許第5,519,134号明細書に記載されているように調製することができる。モルホリノ糖代用物は、米国特許第5,142,047号明細書および同第5,235,033号明細書、ならびに他の関連する特許の開示に記載されているように調製することができる。ペプチド核酸(PNA)はそれ自体公知であり、「Peptide Nucleic Acids(PNA):Synthesis,Properties and Potential Applications」,Bioorganic & Medicinal Chemistry,1996,4,5-23で参照されているさまざまな手順のいずれかに従って調製することができる。これらは、米国特許第5,539,083号明細書に従って調製してもよい。
【0241】
末端修飾の参考文献
末端修飾は、Manoharan,Mら,Antisense and Nucleic Acid Drug Development 12,103-128(2002)および同文献中の参考文献に記載されている。
【0242】
塩基の参考文献
N-2置換プリンヌクレオシドアミダイトは、米国特許第5,459,255号明細書に記載されているように調製することができる。3-デアザプリンヌクレオシドアミダイトは、米国特許第5,457,191号明細書に記載されているように調製することができる。5,6-置換ピリミジンヌクレオシドアミダイトは、米国特許第5,614,617号明細書に記載されているように調製することができる。5-プロピニルピリミジンヌクレオシドアミダイトは、米国特許第5,484,908号明細書に記載されているように調製することができる。さらなる参考文献は、塩基修飾についての上記の節に開示することができる。
【0243】
さらなるRNA剤
特定のRNA剤は、以下の構造(式VIII)を有する。
【化74】
式中、
R
1、R
2、およびR
3は、独立してH(すなわち、無塩基ヌクレオチド)、アデニン、グアニン、シトシン、およびウラシル、イノシン、チミン、キサンチン、ヒポキサンチン、ヌブラリン、ツベルシジン、イソグアニシン、2-アミノアデニン、アデニンおよびグアニンの6-メチルおよび他のアルキル誘導体、アデニンおよびグアニンの2-プロピルおよび他のアルキル誘導体、5-ハロウラシルおよび5-ハロシトシン、5-プロピニルウラシルおよび5-プロピニルシトシン、6-アゾウラシル、6-アゾシトシン、および6-アゾチミン、5-ウラシル(シュードウラシル)、4-チオウラシル、5-ハロウラシル、5-(2-アミノプロピル)ウラシル、5-アミノアリルウラシル、8-ハロ、8-アミノ、8-チオール、8-チオアルキル、8-ヒドロキシル、および他の8-置換アデニンならびに8-ハロ、8-アミノ、8-チオール、8-チオアルキル、8-ヒドロキシル、および他の8-置換グアニン、5-トリフルオロメチルおよび他の5-置換ウラシルおよびシトシン、7-メチルグアニン、5-置換ピリミジン、6-アザピリミジン、ならびにN-2置換プリン、N-6置換プリン、およびO-6置換プリン(2-アミノプロピルアデニンを含む)、5-プロピニルウラシルおよび5-プロピニルシトシン、ジヒドロウラシル、3-デアザ-5-アザシトシン、2-アミノプリン、5-アルキルウラシル、7-アルキルグアニン、5-アルキルシトシン、7-デアザアデニン、7-デアザグアニン、N6,N6-ジメチルアデニン、2,6-ジアミノプリン、5-アミノ-アリル-ウラシル、N3-メチルウラシル、置換1,2,4-トリアゾール、2-ピリジノン、5-ニトロインドール、3-ニトロピロール、5-メトキシウラシル、ウラシル-5-オキシ酢酸、5-メトキシカルボニルメチルウラシル、5-メチル-2-チオウラシル、5-メトキシカルボニルメチル-2-チオウラシル、5-メチルアミノメチル-2-チオウラシル、3-(3-アミノ-3-カルボキシプロピル)ウラシル、3-メチルシトシン、5-メチルシトシン、N
4-アセチルシトシン、2-チオシトシン、N6-メチルアデニン、N6-イソペンチルアデニン、2-メチルチオ-N6-イソペンテニルアデニン、N-メチルグアニン、またはO-アルキル化塩基であり;
R
4、R
5、およびR
6は、独立してOR
8、O(CH
2CH
2O)
mCH
2CH
2OR
8;O(CH
2)
nR
9;O(CH
2)
nOR
9、H;ハロ;NH
2;NHR
8;N(R
8)
2;NH(CH
2CH
2NH)
mCH
2CH
2NHR
9;NHC(O)R
8;シアノ;メルカプト、SR
8;アルキル-チオ-アルキル;アルキル、アラルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、アルケニル、アルキニル(これらは各々、任意でハロ、ヒドロキシ、オキソ、ニトロ、ハロアルキル、アルキル、アルカリル、アリール、アラルキル、アルコキシ、アリールオキシ、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、ヘテロシクリル、アリールアミノ、ジアリールアミノ、ヘテロアリールアミノ、ジヘテロアリールアミノ、アシルアミノ、アルキルカルバモイル、アリールカルバモイル、アミノアルキル、アルコキシカルボニル、カルボキシ、ヒドロキシアルキル、アルカンスルホニル、アルカンスルホンアミド、アレンスルホンアミド、アラルキルスルホンアミド、アルキルカルボニル、アシルオキシ、シアノ、もしくはウレイドで置換されていてもよい)であるか;またはR
4、R
5、もしくはR
6は、R
7と一緒に組み合わさって、糖の2’炭素と4’炭素の間の[-O-CH
2-]共有結合架橋を形成し;
A
1は、
【化75】
;H;OH、OCH
3、W
1;無塩基ヌクレオチドであるか、または存在せず;
(いくつかの実施形態では、A1は、特にアンチセンスに関して、5’モノホスフェート((HO)
2(O)P-O-5’)、5’ジホスフェート((HO)
2(O)P-O-P(HO)(O)-O-5’)、5’トリホスフェート((HO)
2(O)P-O-(HO)(O)P-O-P(HO)(O)-O-5’)、5’-グアノシンキャップ(7-メチル化または非メチル化)(7m-G-O-5’-(HO)(O)P-O-(HO)(O)P-O-P(HO)(O)-O-5’)、5’-アデノシンキャップ(Appp)、および任意の修飾または非修飾ヌクレオチドキャップ構造(N-O-5’-(HO)(O)P-O-(HO)(O)P-O-P(HO)(O)-O-5’)、5’モノチオホスフェート(ホスホロチオエート;(HO)
2(S)P-O-5’)、5’一ジチオホスフェート(ホスホロジチオエート;(HO)(HS)(S)P-O-5’)、5’-ホスホロチオレート((HO)
2(O)P-S-5’);酸素/硫黄置換モノホスフェート、ジホスフェート、およびトリホスフェートの任意のさらなる組合せ(例えば、5’-α-チオトリホスフェート、5’-γ-チオトリホスフェートなど)、5’-ホスホロアミデート((HO)
2(O)P-NH-5’、(HO)(NH
2)(O)P-O-5’)、5’-アルキルホスホネート(R=アルキル=メチル、エチル、イソプロピル、プロピルなど、例えば、RP(OH)(O)-O-5’、(OH)
2(O)P-5’-CH
2)、5’-アルキルエーテルホスホネート(R=アルキルエーテル=メトキシメチル(MeOCH
2-)、エトキシメチルなど、例えば、RP(OH)(O)-O-5’)から選択される);
A
2は下記のものであり:
【化76】
A
3は下記のものであり:
【化77】
A
4は、
【化78】
;H;Z
4;反転ヌクレオチドであるか;または存在せず;
W
1は、OH、(CH
2)
nR
10、(CH
2)
nNHR
10、(CH
2)
nOR
10、(CH
2)
nSR
10;O(CH
2)
nR
10;O(CH
2)
nOR
10、O(CH
2)
nNR
10、O(CH
2)
nSR
10;O(CH
2)
nSS(CH
2)
nOR
10、O(CH
2)
nC(O)OR
10、NH(CH
2)
nR
10;NH(CH
2)
nNR
10;NH(CH
2)
nOR
10、NH(CH
2)
nSR
10;S(CH
2)
nR
10、S(CH
2)
nNR
10、S(CH
2)
nOR
10、S(CH
2)
nSR
10、O(CH
2CH
2O)
mCH
2CH
2OR
10;O(CH
2CH
2O)
mCH
2CH
2NHR
10、NH(CH
2CH
2NH)
mCH
2CH
2NHR
10;Q-R
10、O-Q-R
10、N-Q-R
10、S-Q-R
10、または-O-であり;
W
4は、O、CH
2、NH、またはSであり;
X
1、X
2、X
3、およびX
4は、それぞれ存在ごとに独立して、OまたはSであり;
Y
1、Y
2、Y
3、およびY
4は、それぞれ存在ごとに独立して、OH、O
-、OR
8、S、Se、BH
3
-、H、NHR
9、N(R
9)
2、アルキル、シクロアルキル、アラルキル、アリール、またはヘテロアリール(これらは各々、任意で置換されていてもよい)であり;
Z
1、Z
2、およびZ
3は、それぞれ存在ごとに独立して、O、CH
2、NH、またはSであり;
Z
4は、OH、(CH
2)
nR
10、(CH
2)
nNHR
10、(CH
2)
nOR
10、(CH
2)
nSR
10;O(CH
2)
nR
10;O(CH
2)
nOR
10、O(CH
2)
nNR
10、O(CH
2)
nSR
10、O(CH
2)
nSS(CH
2)
nOR
10、O(CH
2)
nC(O)OR
10;NH(CH
2)
nR
10;NH(CH
2)
nNR
10;NH(CH
2)
nOR
10、NH(CH
2)
nSR
10;S(CH
2)
nR
10、S(CH
2)
nNR
10、S(CH
2)
nOR
10、S(CH
2)
nSR
10、O(CH
2CH
2O)
mCH
2CH
2OR
10、O(CH
2CH
2O)
mCH
2CH
2NHR
10、NH(CH
2CH
2NH)
mCH
2CH
2NHR
10;Q-R
10、O-Q-R
10、N-Q-R
10、S-Q-R
10であり;
xは、5~100であり、本明細書に記載されるRNA剤の長さに適合するように選択され;
R
7は、Hであるか;またはR
4、R
5、もしくはR
6と一緒に組み合わさって、糖の2’炭素と4’炭素の間の[-O-CH
2-]共有結合架橋を形成し;
R
8は、アルキル、シクロアルキル、アリール、アラルキル、ヘテロシクリル、ヘテロアリール、アミノ酸、または糖であり;
R
9は、NH
2、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、ヘテロシクリル、アリールアミノ、ジアリールアミノ、ヘテロアリールアミノ、ジヘテロアリールアミノ、またはアミノ酸であり;
R
10は、H;フルオロフォア(ピレン、TAMRA、フルオレセイン、Cy3色素もしくはCy5色素);硫黄保護基、ケイ素保護基、ホウ素保護基、もしくはエステル保護基;インターカレート剤(例えば、アクリジン)、架橋剤(例えば、プソラレン、マイトマイシンC)、ポルフィリン(TPPC4、テキサフィリン、サッフィリン)、多環芳香族炭化水素(例えば、フェナジン、ジヒドロフェナジン)、人工エンドヌクレアーゼ(例えば、EDTA)、親油性担体(例えば、コレステロール、コール酸、アダマンタン酢酸、1-ピレン酪酸、ジヒドロテストステロン、1,3-ビス-O(ヘキサデシル)グリセロール、ゲラニルオキシヘキシル基、ヘキサデシルグリセロール、ボルネオール、メントール、1,3-プロパンジオール、ヘプタデシル基、パルミチン酸、ミリスチン酸、O3-(オレオイル)リトコール酸、O3-(オレオイル)コレン酸、ジメトキシトリチル、またはフェノキサジン)、およびペプチドコンジュゲート(例えば、アンテナペディアペプチド、Tatペプチド)、アルキル化剤、ホスフェート、アミノ、メルカプト、PEG(例えば、PEG-40K)、MPEG、[MPEG]
2、ポリアミノ、アルキル、シクロアルキル、アリール、アラルキル、ヘテロアリール;放射性標識マーカー、酵素、ハプテン(例えば、ビオチン)、輸送/吸収促進物質(例えば、アスピリン、ビタミンE、葉酸)、合成リボヌクレアーゼ(例えば、イミダゾール、ビスイミダゾール、ヒスタミン、イミダゾールクラスター、アクリジン-イミダゾールコンジュゲート、テトラアザマクロ環のEu3+錯体);またはRNA剤であり;
mは、0~1,000,000であり;
nは、0~20である。
【0244】
Qは、無塩基糖、アミド、カルボキシ、オキシアミン、オキシイミン、チオエーテル、ジスルフィド、チオ尿素、スルホンアミド、もしくはモルホリノ、またはビオチン試薬もしくはフルオレセイン試薬からなる群から選択されるスペーサーである。
【0245】
リン酸基全体が置換されている特定のRNA剤は、以下の構造(式IX)を有する:
【化79】
式中、
A
10~A
40はL-G-Lであり;A
10および/またはA
40は存在しなくてもよく(式中、Lはリンカーであり、一方または両方のLは、存在してもまたは存在しなくてもよく、CH
2(CH
2)
g;N(CH
2)
g;O(CH
2)
g;S(CH
2)
gからなる群から選択される)
Gは、シロキサン、カルボネート、カルボキシメチル、カルバメート、アミド、チオエーテル、エチレンオキシドリンカー、スルホネート、スルホンアミド、チオホルムアセタール、ホルムアセタール、オキシム、メチレンイミノ、メチレンメチルイミノ、メチレンヒドラゾ、メチレンジメチルヒドラゾ、およびメチレンオキシメチルイミノからなる群から選択される官能基であり;
R
10、R
20、およびR
30は、それぞれ存在ごとに独立して、H(すなわち、無塩基ヌクレオチド)、アデニン、グアニン、シトシン、およびウラシル、イノシン、チミン、キサンチン、ヒポキサンチン、ヌブラリン、ツベルシジン、イソグアニシン、2-アミノアデニン、アデニンおよびグアニンの6-メチルおよび他のアルキル誘導体、アデニンおよびグアニンの2-プロピルおよび他のアルキル誘導体、5-ハロウラシルおよび5-ハロシトシン、5-プロピニルウラシルおよび5-プロピニルシトシン、6-アゾウラシル、6-アゾシトシン、および6-アゾチミン、5-ウラシル(シュードウラシル)、4-チオウラシル、5-ハロウラシル、5-(2-アミノプロピル)ウラシル、5-アミノアリルウラシル、8-ハロ、8-アミノ、8-チオール、8-チオアルキル、8-ヒドロキシル、および他の8-置換アデニンならびに8-ハロ、8-アミノ、8-チオール、8-チオアルキル、8-ヒドロキシル、および他の8-置換グアニン、5-トリフルオロメチルおよび他の5-置換ウラシルおよびシトシン、7-メチルグアニン、5-置換ピリミジン、6-アザピリミジン、ならびにN-2置換プリン、N-6置換プリン、およびO-6置換プリン(2-アミノプロピルアデニンを含む)、5-プロピニルウラシルおよび5-プロピニルシトシン、ジヒドロウラシル、3-デアザ-5-アザシトシン、2-アミノプリン、5-アルキルウラシル、7-アルキルグアニン、5-アルキルシトシン、7-デアザアデニン、N6,N6-ジメチルアデニン、2,6-ジアミノプリン、5-アミノ-アリル-ウラシル、N3-メチルウラシル、置換1,2,4-トリアゾール、2-ピリジノン、5-ニトロインドール、3-ニトロピロール、5-メトキシウラシル、ウラシル-5-オキシ酢酸、5-メトキシカルボニルメチルウラシル、5-メチル-2-チオウラシル、5-メトキシカルボニルメチル-2-チオウラシル、5-メチルアミノメチル-2-チオウラシル、3-(3-アミノ-3-カルボキシプロピル)ウラシル、3-メチルシトシン、5-メチルシトシン、N
4-アセチルシトシン、2-チオシトシン、N6-メチルアデニン、N6-イソペンチルアデニン、2-メチルチオ-N6-イソペンテニルアデニン、N-メチルグアニン、またはO-アルキル化塩基であり;
R
40、R
50、およびR
60は、それぞれ存在ごとに独立して、OR
8、O(CH
2CH
2O)
mCH
2CH
2OR
8;O(CH
2)
nR
9;O(CH
2)
nOR
9、H;ハロ;NH
2;NHR
8;N(R
8)
2;NH(CH
2CH
2NH)
mCH
2CH
2NHR
9;NHC(O)R
8;シアノ;メルカプト、SR
8;アルキル-チオ-アルキル;アルキル、アラルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、アルケニル、アルキニル(これらは各々、任意でハロ基、ヒドロキシ基、オキソ基、ニトロ基、ハロアルキル基、アルキル基、アルカリル基、アリール基、アラルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アミノ基、アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、ヘテロシクリル基、アリールアミノ基、ジアリールアミノ基、ヘテロアリールアミノ基、ジヘテロアリールアミノ基、アシルアミノ基、アルキルカルバモイル基、アリールカルバモイル基、アミノアルキル基、アルコキシカルボニル基、カルボキシ基、ヒドロキシアルキル基、アルカンスルホニル基、アルカンスルホンアミド基、アレンスルホンアミド基、アラルキルスルホンアミド基、アルキルカルボニル基、アシルオキシ基、シアノ基、もしくはウレイド基で置換されてもよい)であるか;またはR
4、R
5、もしくはR
6は、R7と一緒に組み合わさって、糖の2’炭素と4’炭素の間の[-O-CH
2-]共有結合架橋を形成し;
xは、5~100であるか、または本明細書に記載されるRNA剤の長さに適合するように選択され;
R
70は、Hであるか;またはR
40、R
50、もしくはR
60と一緒に組み合わさって、糖の2’炭素と4’炭素の間の[-O-CH
2-]共有結合架橋を形成し;
R
8は、アルキル、シクロアルキル、アリール、アラルキル、ヘテロシクリル、ヘテロアリール、アミノ酸、または糖であり;
R
9は、NH
2、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、ヘテロシクリル、アリールアミノ、ジアリールアミノ、ヘテロアリールアミノ、ジヘテロアリールアミノ、またはアミノ酸であり
mは、0~1,000,000であり;
nは、0~20であり;
gは、0~2である。
【0246】
特定のヌクレオシド代用物は、以下の構造(式X)を有する:
【化80】
式中、
Sは、モフィリノ、シクロブチル、ピロリジン、およびペプチド核酸からなる群から選択されるヌクレオシド代用物であり;
Lはリンカーで、かつCH
2(CH
2)
g;N(CH
2)
g;O(CH
2)
g;S(CH
2)
g;-C(O)(CH
2)
n-からなる群から選択されるか、または存在しなくてもよく;
Mは、アミド結合;スルホンアミド;スルフィネート;リン酸基;本明細書に記載される修飾リン酸基であるか、または存在しなくてもよく;
R
100、R
200、およびR
300は、それぞれ存在ごとに独立して、H(すなわち、無塩基ヌクレオチド)、アデニン、グアニン、シトシン、およびウラシル、イノシン、チミン、キサンチン、ヒポキサンチン、ヌブラリン、ツベルシジン、イソグアニシン、2-アミノアデニン、アデニンおよびグアニンの6-メチルおよび他のアルキル誘導体、アデニンおよびグアニンの2-プロピルおよび他のアルキル誘導体、5-ハロウラシルおよび5-ハロシトシン、5-プロピニルウラシルおよび5-プロピニルシトシン、6-アゾウラシル、6-アゾシトシン、および6-アゾチミン、5-ウラシル(シュードウラシル)、4-チオウラシル、5-ハロウラシル、5-(2-アミノプロピル)ウラシル、5-アミノアリルウラシル、8-ハロ、8-アミノ、8-チオール、8-チオアルキル、8-ヒドロキシル、および他の8-置換アデニンならびに8-ハロ、8-アミノ、8-チオール、8-チオアルキル、8-ヒドロキシル、および他の8-置換グアニン、5-トリフルオロメチルおよび他の5-置換ウラシルおよびシトシン、7-メチルグアニン、5-置換ピリミジン、6-アザピリミジン、ならびにN-2置換プリン、N-6置換プリン、およびO-6置換プリン(2-アミノプロピルアデニンを含む)、5-プロピニルウラシルおよび5-プロピニルシトシン、ジヒドロウラシル、3-デアザ-5-アザシトシン、2-アミノプリン、5-アルキルウラシル、7-アルキルグアニン、5-アルキルシトシン、7-デアザアデニン、N6,N6-ジメチルアデニン、2,6-ジアミノプリン、5-アミノ-アリル-ウラシル、N3-メチルウラシル、置換1,2,4-トリアゾール、2-ピリジノン、5-ニトロインドール、3-ニトロピロール、5-メトキシウラシル、ウラシル-5-オキシ酢酸、5-メトキシカルボニルメチルウラシル、5-メチル-2-チオウラシル、5-メトキシカルボニルメチル-2-チオウラシル、5-メチルアミノメチル-2-チオウラシル、3-(3-アミノ-3-カルボキシプロピル)ウラシル、3-メチルシトシン、5-メチルシトシン、N
4-アセチルシトシン、2-チオシトシン、N6-メチルアデニン、N6-イソペンチルアデニン、2-メチルチオ-N6-イソペンテニルアデニン、N-メチルグアニン、またはO-アルキル化塩基であり;
xは、5~100であるか、または本明細書に記載されるRNA剤の長さに適合するように選択され;
gは、0~2である。
【0247】
定義
「ハロ」という用語は、フッ素、塩素、臭素、またはヨウ素のうちの任意の基を指す。「アルキル」という用語は、指定された数の炭素原子を含み、任意でN、O、またはSが挿入され得る、直鎖または分岐鎖であり得る飽和非芳香族炭化水素鎖および不飽和非芳香族炭化水素鎖(これらは、プロピル、アリル、またはプロパルジルを含むが、これらに限定されない)を指す。例えば、C1-C10は、この基がその中に1~10個(10個を含む)の炭素原子を有し得ることを意味する。「アルコキシ」という用語は、-O-アルキル基を指す。「アルキレン」という用語は、二価アルキル(すなわち、-R-)を指す。「アルキレンジオキソ」という用語は、-O-R-O-(式中、Rはアルキレンを表す)という構造の二価種を指す。「アミノアルキル」という用語は、アミノで置換されたアルキルを指す。「メルカプト」という用語は、-SH基を指す。「チオアルコキシ」という用語は、-S-アルキル基を指す。
【0248】
「アリール基」という用語は、各環の0個、1個、2個、3個、または4個の原子が、置換基によって置換され得る、6炭素の単環式芳香環系または10炭素の二環式芳香環系を指す。アリール基の例としては、フェニル、ナフチルなどが挙げられる。「アリールアルキル」という用語または「アラルキル」という用語は、アリールで置換されたアルキルを指す。「アリールアルコキシ」という用語は、アリールで置換されたアルコキシを指す。
【0249】
本明細書で利用される「シクロアルキル」という用語は、3~12個の炭素、例えば、3~8個の炭素、および例えば、3~6個の炭素を有する、飽和環式炭化水素基および部分不飽和環式炭化水素基を含み、シクロアルキル基はさらに、任意で置換されていてもよい。シクロアルキル基としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロペンテニル、シクロヘキシル、シクロヘキセニル、シクロヘプチル、およびシクロオクチルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0250】
「ヘテロアリール」という用語は、単環式の場合には1~3個のヘテロ原子を、二環式の場合には1~6個のヘテロ原子を、または三環式の場合には1~9個のヘテロ原子を有する、5~8員の芳香族単環式環系、8~12員の芳香族二環式環系、または11~14員の芳香族三環式環系を指し、該ヘテロ原子は、O、N、またはSから選択され(例えば、単環、二環、または三環の場合、炭素原子と、それぞれ、1~3個、1~6個、または1~9個のN、O、またはSのヘテロ原子)、そこで、各環の0個、1個、2個、3個、または4個の原子は、置換基によって置換されていてもよい。ヘテロアリール基の例としては、ピリジル、フリルまたはフラニル、イミダゾリル、ベンズイミダゾリル、ピリミジニル、チオフェニルまたはチエニル、キノリニル、インドリル、チアゾリルなどが挙げられる。「ヘテロアリールアルキル」という用語または「ヘテロアラルキル」という用語は、ヘテロアリールで置換されたアルキルを指す。「ヘテロアリールアルコキシ」という用語は、ヘテロアリールで置換されたアルコキシを指す。
【0251】
「ヘテロシクリル」という用語は、単環式の場合には1~3個のヘテロ原子を、二環式の場合には1~6個のヘテロ原子を、または三環式の場合には1~9個のヘテロ原子を有する、5~8員の非芳香族単環式環系、8~12員の非芳香族二環式環系、または11~14員の非芳香族三環式環系を指し、該ヘテロ原子は、O、N、またはSから選択され(例えば、単環、二環、または三環の場合、炭素原子と、それぞれ、1~3個、1~6個、または1~9個のN、O、またはSのヘテロ原子)、そこで、各環の0個、1個、2個、または3個の原子は、置換基により置換されていてもよい。ヘテロシクリル基の例としては、トリゾリル、テトラゾリル、ピペラジニル、ピロリジニル、ジオキサニル、モルホニル、テトラヒドロフラニルなどが挙げられる。
【0252】
「オキソ」という用語は、炭素に結合した場合にはカルボニルを、窒素に結合した場合にはN-オキシドを、および硫黄に結合した場合にはスルホキシドまたはスルホンを形成する酸素原子を指す。
【0253】
「アシル」という用語は、アルキルカルボニル置換基、シクロアルキカルボニル置換基、アリールカルボニル置換基、ヘテロシクリルカルボニル置換基、またはヘテロアリールカルボニル置換基を指し、これらはいずれも、置換基によってさらに置換されていてもよい。
【0254】
「置換された」という用語は、所与の構造中の1つ以上の水素基と、ハロ、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロシクリル、チオール、アルキルチオ、アリールチオ、アルキルチオアルキル、アリールチオアルキル、アルキルスルフォニル、アルキルスルフォニルアルキル、アリールスルフォニルアルキル、アルコキシ、アリールオキシ、アラルコキシ、アミノカルボニル、アルキルアミノカルボニル、アリールアミノカルボニル、アルコキシカルボニル、アリールオキシカルボニル、ハロアルキル、アミノ、トリフルオロメチル、シアノ、ニトロ、アルキルアミノ、アリールアミノ、アルキルアミノアルキル、アリールアミノアルキル、アミノアルキルアミノ、ヒドロキシ、アルコキシアルキル、カルボキシアルキル、アルコキシカルボニルアルキル、アミノカルボニルアルキル、アシル、アラルコキシカルボニル、カルボン酸、スルホン酸、スルホニル、ホスホン酸、アリール、ヘテロアリール、ヘテロサイクリック、および脂肪族を含むが、これらに限定されない、特定の置換基の基との置換を指す。置換基をさらに置換することができることが理解される。
【0255】
パリンドローム
本発明のiRNA剤は、2つ以上のRNA領域を標的とすることができる。例えば、iRNA剤は、ハイブリダイズするのに互いに十分に相補的な第1の配列と第2の配列を含むことができる。第1の配列は第1の標的RNA領域に相補的であることができ、第2の配列は第2の標的RNA領域に相補的であることができる。iRNA剤の第1の配列と第2の配列が異なるRNA鎖上にあることができ、かつ第1の配列と第2の配列の間のミスマッチが、50%未満、40%未満、30%未満、20%未満、10%未満、5%未満、または1%未満であることができる。iRNA剤の第1の配列と第2の配列が同じRNA鎖上にあることができ、かつ関連する実施形態では、iRNA剤の50%よりも多く、60%よりも多く、70%よりも多く、80%よりも多く、90%よりも多く、95%よりも多く、または1%よりも多くが、2分子の形態であることができる。iRNA剤の第1の配列と第2の配列は、互いに完全に相補的であることができる。
【0256】
第1の標的RNA領域が第1の遺伝子によってコードされることができ、かつ第2の標的RNA領域が第2の遺伝子によってコードされることができるし、または第1の標的RNA領域と第2の標的RNA領域が単一遺伝子由来のRNAの異なる領域であることができる。第1の配列と第2の配列は、少なくとも1ヌクレオチド異なり得る。
【0257】
第1の標的RNA領域と第2の標的RNA領域は、遺伝子の第1の配列変異体と第2の配列変異体(例えば、第1の対立遺伝子と第2の対立遺伝子)によってコードされる転写物上にあることができる。配列変異体は、例えば、突然変異、または多型であることができる。第1の標的RNA領域は、第2の標的RNA領域と比べて、ヌクレオチドの置換、挿入、もしくは欠失を含むことができるし、または第2の標的RNA領域は、第1の標的領域の突然変異体または変異体であることができる。
【0258】
第1の標的RNA領域と第2の標的RNA領域は、ウイルスRNA領域またはヒトRNA領域を含むことができる。第1の標的RNA領域と第2の標的RNA領域は、オンコジーンの変異転写物上にあることもできるし、または腫瘍抑制遺伝子転写物の異なる突然変異を含むこともできる。さらに、第1の標的RNA領域と第2の標的RNA領域は、遺伝子変異のホットスポットに対応することができる。
【0259】
本発明の組成物は、iRNA剤分子の混合物を含むことができる。例えば、1つのiRNA剤が、ハイブリダイズするのに互いに十分に相補的な第1の配列と第2の配列を含有することができ、さらに、第1の配列が第1の標的RNA領域に相補的であることができ、かつ第2の配列が第2の標的RNA領域に相補的であることができる。混合物は、ハイブリダイズするのに互いに十分に相補的な第3の配列と第4の配列を含む少なくとも1つの追加のiRNA剤種を含むこともでき、この場合、第3の配列が第3の標的RNA領域に相補的であることができ、かつ第4の配列が第4の標的RNA領域に相補的であることができる。さらに、第1の配列または第2の配列が、第3の配列または第4の配列に対して、互いにハイブリダイズできるのに十分に相補的であることができる。第1の配列と第2の配列は同じまたは異なるRNA鎖上にあることができ、第3の配列と第4の配列は同じまたは異なるRNA鎖上にあることができる。
【0260】
標的RNA領域は、ウイルスRNAまたはヒトRNAの変異体配列であることができ、ある実施形態では、少なくとも2つの標的RNA領域が、オンコジーンまたは腫瘍抑制遺伝子の変異体転写物であることができる。標的RNA領域は、遺伝子変異のホットスポットに対応することができる。
【0261】
iRNA剤組成物を作製する方法は、(例えば、ヒトにおける)高度の変動性または突然変異頻度を有する、標的遺伝子(例えば、ウイルス遺伝子もしくはヒト遺伝子、またはオンコジーンもしくは腫瘍抑制遺伝子、例えば、p53)のRNAの領域に関する情報を入手または提供することを含むことができる。さらに、その領域内の複数のRNA標的に関する情報を入手または提供することを含むことができ、その場合、各々のRNA標的が、遺伝子の異なる変異体または突然変異体(例えば、p53 248Qおよび/またはp53 249Sをコードするコドンを含む領域)に対応する。第1の配列が(例えば、249Qをコードする)複数の変異体RNA標的のうちの第1の標的と相補的であり、第2の配列が(例えば、249Sをコードする)複数の変異体RNA標的のうちの第2の標的と相補的であり、かつ第1の配列と第2の配列がハイブリダイズするのに十分に相補的であり得るように、iRNA剤を構築することができる。
【0262】
例えば、標的遺伝子中の共通の突然変異体を同定するために、配列分析を使用して、高度の変動性または突然変異頻度を有する標的遺伝子の領域を同定することができる。高度の変動性または突然変異頻度を有する標的遺伝子の領域は、個体群由来の標的遺伝子についての遺伝子型情報を入手または提供することによって同定することができる。
【0263】
互いにハイブリダイズするのに十分に相補的な第1の配列と第2の配列を有するiRNA剤を提供することによって、標的遺伝子の発現を調節する(例えば、下方調節またはサイレンシング)することができる。さらに、第1の配列が第1の標的RNA領域に相補的であることができ、かつ第2の配列が第2の標的RNA領域に相補的であることができる。
【0264】
iRNA剤は、第1の変異体RNA標的領域に相補的な第1の配列と第2の変異体RNA標的領域に相補的な第2の配列とを含むことができる。この第1の変異体RNA標的領域と第2の変異体RNA標的領域は、標的遺伝子(例えば、ウイルス遺伝子、腫瘍抑制遺伝子、またはオンコジーン)の第1の変異体と第2の変異体または第1の突然変異体と第2の突然変異体に対応することができる。第1の変異体標的RNA領域と第2の変異体標的RNA領域は、標的遺伝子の対立遺伝子変異体、突然変異(例えば、点突然変異)、または多型を含むことができる。第1の変異体RNA標的領域と第2の変異体RNA標的領域は、遺伝子のホットスポットに対応することができる。
【0265】
複数のiRNA剤(例えば、パネルまたはバンク)を提供することができる。
【0266】
他の実施形態
また別の実施形態では、iRNA剤は、例えば、細胞に送達される外来のDNA鋳型から、インビボで細胞において産生される。例えば、DNA鋳型をベクターに挿入し、遺伝子治療ベクターとして使用することができる。遺伝子治療ベクターは、例えば、静脈内注射、局所投与(米国特許第5,328,470号明細書)によって、または定位注射(例えば、Chenら(1994) Proc.Natl.Acad.Sci.USA 91:3054-3057参照)によって、対象に送達することができる。遺伝子治療ベクターの薬学的調製物は、許容される希釈剤中に遺伝子治療ベクターを含むことができるし、または遺伝子送達ビヒクルが包埋される徐放性マトリックスを含むことができる。例えば、DNA鋳型は、2つの転写ユニット、すなわち、iRNA剤の上部の鎖を含む転写物を産生するものと、iRNA剤の下部の鎖を含む転写物を産生するものとを含むことができる。鋳型が転写されると、iRNA剤が産生され、プロセシングを受けて遺伝子サイレンシングを仲介するsiRNA剤断片となる。
【0267】
アンタゴmir
アンタゴmirは、RNアーゼからの保護および薬理学的特性(例えば、組織および細胞への取込みの増強)のためのさまざまな修飾を有するRNA様オリゴヌクレオチドである。アンタゴmirは、例えば、糖の完全な2’-メチル化、ホスホロチオエート骨格、および例えば、3’-末端のコレステロール部分によって、普通のRNAとは異なる。アンタゴmirは、内在性miRNAを効率的にサイレンシングし、それによってmiRNA誘導性の遺伝子サイレンシングを妨害するために使用し得る。アンタゴmir介在性のmiRNAサイレンシングの例は、Krutzfeldtら,Nature,2005,438:685-689(これは、その全体が参照により本明細書に明示的に組み入れられる)に記載されているmiR-122のサイレンシングである。
【0268】
デコイオリゴヌクレオチド
転写因子は、周囲のゲノムDNAがない場合でも、それらの比較的短い結合配列を認識することができるので、特定の転写因子のコンセンサス結合配列を持つ短いオリゴヌクレオチドを、生きた細胞での遺伝子発現を操作するための道具として使用することができる。この戦略では、このような「デコイオリゴヌクレオチド」が細胞内に送達され、その後、標的因子によって認識および結合される。デコイによって転写因子のDNA結合部位が占められると、転写因子が後に標的遺伝子のプロモーター領域に結合することができなくなる。デコイは、転写因子によって活性化される遺伝子の発現を阻害するために、または転写因子の結合によって抑制される遺伝子を上方調節するために、治療剤として使用することができる。デコイオリゴヌクレオチドの利用例は、Mannら,J.Clin.Invest.,2000,106:1071-1075に見出すことができ、これは、その全体が参照により本明細書に明示的に組み入れられる。
【0269】
アンチセンスオリゴヌクレオチド
アンチセンスオリゴヌクレオチドは、選択された配列に少なくとも部分的に相補的な一本鎖のDNAまたはRNAである。アンチセンスRNAの場合は、それらが相補的RNA鎖に結合することによって相補的RNA鎖の翻訳を妨げる。アンチセンスDNAは、特異的で、相補的な(コードまたは非コード)RNAを標的とするために使用することもできる。結合が生じた場合、このDNA/RNAハイブリッドは、RNアーゼHという酵素によって分解されることができる。アンチセンスオリゴヌクレオチドの利用例は、Diasら,Mol.Cancer Ther.,2002,1:347-355に見出すことができ、これは、その全体が参照により本明細書に明示的に組み入れられる。
【0270】
アプタマー
アプタマーは、特異的な標的分子(単数または複数)に結合する核酸分子である。アプタマーは、RNAベースまたはDNAベースであってもよく、かつリボスイッチを含んでもよい。リボスイッチとは、小さい標的分子に直接結合することができ、標的に結合することによって遺伝子活性に影響を及ぼすmRNAの一部のことである。したがって、リボスイッチを含有するmRNAは、その標的分子の有無によって、それ自体の活性の調節に直接関与する。
【0271】
生理学的効果
本明細書に記載されるiRNA剤は、治療上の毒性の決定が、iRNA剤と、ヒト配列および非ヒト動物配列の両方との相補性によってより容易になされるように設計することができる。これらの方法により、iRNA剤は、ヒト由来の核酸配列および少なくとも1種類の非ヒト動物、例えば、非ヒト哺乳類(例えば、齧歯類、反芻類、または霊長類)由来の核酸配列に完全に相補的である配列からなることができる。例えば、非ヒト哺乳類は、マウス、ラット、イヌ、ブタ、ヤギ、ヒツジ、ウシ、サル、ピグミーチンパンジー(Pan paniscus)、ナミチンパンジー(Pan troglodytes)、アカゲザル(Macaca mulatto)、またはカニクイザル(Cynomolgus monkey)であることができる。iRNA剤の配列は、非ヒト哺乳類およびヒトの相同遺伝子(例えば、オンコジーンまたは腫瘍抑制遺伝子)内の配列に相補的であることができる。非ヒト哺乳類におけるiRNA剤の毒性を決定することによって、ヒトにおけるiRNA剤の毒性を推定することができる。より厳しい毒性試験のためには、iRNA剤を、ヒトおよび2種類以上(例えば、2種類または3種類またはそれより多く)の非ヒト動物に対して相補的とすることができる。
【0272】
本明細書に記載される方法は、ヒトに対するiRNA剤の任意の生理学的効果、例えば、任意の望ましくない効果(例えば、毒性効果)、または任意の有益な、もしくは所望の効果と相関させるために使用することができる。
【0273】
ds iRNAの細胞取込みの増大
iRNA剤とiRNA剤の細胞内への取込みに影響を及ぼす薬物とを投与する工程を含む本発明の方法。薬物は、iRNA剤が投与される前か、iRNA剤が投与された後か、またはiRNA剤が投与されるのと同時に、投与することができる。薬物は、iRNA剤と共有結合させることができる。薬物は、例えば、リポ多糖、p38 MAPキナーゼの活性化因子、またはNF-κBの活性化因子であることができる。薬物は、細胞に対する一過性の効果を有することができる。
【0274】
薬物は、例えば、細胞の細胞骨格を破壊することによって(例えば、細胞の微小管、微小フィラメント、および/または中間径フィラメントを破壊することによって)、iRNA剤の細胞内への取込みを増大させることができる。薬物は、例えば、タキソン、ビンクリスチン、ビンブラスチン、サイトカラシン、ノコダゾール、ジャプラキノリド(japlakinolide)、ラトランクリンA、ファロイジン、スウィンホリドA、インダノシン、またはミオセルビンであることができる。
【0275】
薬物は、例えば、炎症性応答を活性化することによって、iRNA剤の細胞内への取込みを増大させることもできる。このような効果を有すると考えられる例示的な薬物としては、腫瘍壊死因子α(TNFα)、インターロイキン-1β、またはγインターフェロンが挙げられる。
【0276】
iRNAコンジュゲート
iRNA剤は、第2の薬剤に結合(例えば、共有結合)させることができる。例えば、特定の障害を治療するために使用されるiRNA剤は、第2の治療剤(例えば、iRNA剤以外の薬剤)に結合させることができる。第2の治療剤は、同じ障害の治療に対する治療剤であることができる。例えば、望ましくない細胞増殖を特徴とする障害(例えば、癌)を治療するために使用されるiRNAの場合、iRNA剤は、抗癌作用がある第2の薬剤に結合させることができる。例えば、iRNA剤は、免疫系を刺激する薬剤(例えば、CpGモチーフ)、またはより一般的にはtoll様受容体を活性化し、かつ/またはγインターフェロンの産生を増大させる薬剤に結合させることができる。
【0277】
iRNA産生
iRNAは、例えば、種々の方法によって、大量に産生することができる。例示的な方法としては、有機合成およびRNA切断(例えば、インビトロでの切断)が挙げられる。
【0278】
有機合成
iRNAは、二本鎖のRNA分子の各々のそれぞれの鎖を別々に合成することによって作製することができる。その後、構成成分の鎖をアニーリングさせることができる。
【0279】
大きなバイオリアクター(例えば、Pharmacia Biotec AB(Uppsala Sweden)製のOligoPilot II)を用いて、所与のiRNA用の特定のRNA鎖を大量に産生することができる。OligoPilot IIリアクターは、1.5モル過剰のホスホロアミダイトヌクレオチドのみを使用して、効率的にヌクレオチドを結合させることができる。RNA鎖を作製するためには、リボヌクレオチドアミダイトが使用される。標準的なモノマー添加サイクルを使用して、iRNA用の21~23ヌクレオチド鎖を合成することができる。典型的には、2つの相補的な鎖を別々に産生し、その後、例えば、固体担体からの放出および脱保護の後にアニーリングさせる。
【0280】
有機合成を使用して、別個のiRNA種を産生することができる。特定の標的遺伝子に対するiRNA種の相補性を、正確に特定することができる。例えば、iRNA種は、多型(例えば、単一ヌクレオチド多型)を含む領域に相補的であり得る。さらに、多型の位置は、正確に規定することができる。いくつかの実施形態では、多型は、内部領域、例えば、末端の一方または両方から少なくとも4、5、7、または9ヌクレオチドの位置にある。
【0281】
ds iRNA切断
iRNAは、より大きなds iRNAを切断することによって作製することもできる。切断は、インビトロまたはインビボで仲介され得る。例えば、インビトロでの切断によってiRNAを産生するために、以下の方法を使用することができる。
【0282】
インビトロ転写。ds iRNAは、両方向に核酸(DNA)セグメントを転写することによって産生される。例えば、HiScribe(商標)RNAi転写キット(New England Biolabs)は、ベクターと、両側にT7プロモーターが隣接する位置でこのベクターにクローニングされた核酸セグメントについてのds iRNAを産生する方法とを提供する。別々の鋳型が、ds iRNA用の2つの相補鎖のT7転写用に生成される。これらの鋳型は、T7 RNAポリメラーゼの添加によってインビトロで転写され、ds iRNAが産生される。PCRおよび/または他のRNAポリメラーゼ(例えば、T3ポリメラーゼまたはSP6ポリメラーゼ)を用いた同様の方法を使用することもできる。一実施形態では、この方法によって生成されるRNAは、組換え酵素の調製物に混入し得るエンドトキシンを除去するように慎重に精製される。
【0283】
インビトロでの切断。ds iRNAは、例えば、Dicerまたは匹敵するRNアーゼIIIベースの活性を用いて、インビトロで切断されてiRNAとなる。例えば、ds iRNAは、ショウジョウバエ由来のインビトロ抽出物中で、または精製された成分(例えば、精製RNアーゼもしくはRISC複合体(RNA誘導サイレンシング複合体))を用いてインキュベートすることができる。例えば、Kettingら Genes Dev 2001 Oct 15;15(20):2654-9:およびHammond Science 2001 Aug 10;293(5532):1146-50を参照されたい。
ds iRNAの切断によって、通常、複数のiRNA種が産生され、それぞれがもとのds iRNA分子の特定の21~23nt断片である。例えば、もとのds iRNA分子の重複領域および隣接領域に相補的な配列を含むiRNAが存在し得る。
【0284】
合成方法を問わず、iRNA調製物は、製剤化に適した溶液(例えば、水溶液および/または有機溶液)中で調製することができる。例えば、iRNA調製物は、純粋な再蒸留水中で沈殿および再溶解させ、凍結乾燥させることができる。その後、乾燥させたiRNAは、意図される製剤化プロセスに適した溶液中に再懸濁させることができる。
【0285】
製剤化
本明細書に記載されるiRNA剤は、対象への投与用に製剤化することができる。
【0286】
説明しやすくするために、本項での製剤、組成物、および方法は、主として未修飾のiRNA剤に関して論じる。しかしながら、これらの製剤、組成物、および方法は、他のiRNA剤、例えば、修飾iRNA剤で実施することができ、かつそのような実施は本発明の範囲内にあることが理解され得る。
【0287】
製剤化されたiRNA組成物は、種々の状態をとることができる。いくつかの例では、組成物は、少なくとも部分的に結晶性、均一に結晶性、および/または無水(例えば、水分が80%未満、50%未満、30%未満、20%未満、もしくは10%未満)である。別の例では、iRNAは、水相中に、例えば、水を含む溶液中にある。
【0288】
水相組成物または結晶性組成物は、例えば、送達ビヒクル、例えば、リポソーム(特に水相について)または粒子(例えば、結晶性組成物について適切であり得るような微粒子)に組み込むことができる。通常、iRNA組成物は、意図される投与方法と適合する様式で製剤化される(以下を参照)。
【0289】
特定の実施形態では、組成物は、以下の方法、すなわち、噴霧乾燥、凍結乾燥、真空乾燥、蒸発、流動床乾燥、もしくはこれらの手法の組合せ、または脂質を用いた超音波処理、フリーズドライ、凝縮、および他の自己集合のうちの少なくとも1つによって調製される。
【0290】
iRNA調製物は、別の薬剤、例えば、別の治療剤またはiRNAを安定化する薬剤(例えば、iRNAと複合体形成してiRNPを形成するタンパク質)と組み合わせて製剤化することができる。さらに別の薬剤としては、キレート剤、例えば、EDTA(例えば、Mg2+のような二価カチオンを除去するため)、塩、RNアーゼ阻害剤(例えば、RNAsinのような幅広い特異性のRNアーゼ阻害剤)などが挙げられる。
【0291】
一実施形態では、iRNA調製物は、別のiRNA剤、例えば、第2の遺伝子に関して、または同じ遺伝子に関して、RNAiを仲介することができる第2のiRNAを含む。さらに他の調製物は、少なくとも3個、5個、10個、20個、50個、もしくは100個、またはそれより多くの異なるiRNA種を含むことができる。このようなiRNAは、同様の数の異なる遺伝子に関してRNAiを仲介することができる。
【0292】
一実施形態では、iRNA調製物は、少なくとも第2の治療剤(例えば、RNAまたはDNA以外の薬剤)を含む。例えば、ウイルス疾患(例えば、HIV)の治療用のiRNA組成物は、既知の抗ウイルス剤(例えば、プロテアーゼ阻害剤または逆転写酵素阻害剤)を含んでもよい。別の例では、癌の治療用のiRNA組成物は、化学療法剤をさらに含んでもよい。
【0293】
例示的な製剤を以下に論じる。
【0294】
リポソーム
説明しやすくするために、本項での製剤、組成物、および方法は、主として未修飾のiRNA剤に関して論じる。しかしながら、これらの製剤、組成物、および方法は、他のiRNA剤、例えば、修飾iRNA剤で実施することができ、かつそのような実施は本発明の範囲内にあることが理解され得る。iRNA剤、例えば、二本鎖iRNA剤、またはsiRNA剤(例えば、前駆体、例えば、siRNA剤へプロセシングされ得るより大きなiRNA剤、またはiRNA剤、例えば、二本鎖iRNA剤、もしくはsiRNA剤、もしくはそれらの前駆体をコードするDNA)の調製物は、膜状分子集合体(例えば、リポソームまたはミセル)中で送達されるように製剤化することができる。本明細書で使用される場合、「リポソーム」という用語は、少なくとも1つの二重層(例えば、1つの二重層または複数の二重層)中に配置された両親媒性脂質から構成される小胞を指す。リポソームには、親油性材料と水性内部とから形成される膜を有する単層小胞および多重層小胞が含まれる。水性部分は、iRNA組成物を含有する。親油性材料は、水性外部から水性内部を分離し、通常iRNA組成物を含まないが、いくつかの例では、iRNA組成物を含んでもよい。リポソームは、作用部位への活性成分の移動および送達に有用である。リポソーム膜は、構造的に生体膜に類似しているため、リポソームが組織に適用されると、リポソーム二重層は、細胞膜の二重層と融合する。リポソームと細胞の融合が進行するにつれて、iRNAを含む内部の水性内容物が細胞内に送達され、細胞内ではiRNAが、標的RNAに特異的に結合することができ、RNAiを仲介することができる。場合によっては、リポソームはまた、例えば、iRNAを特定の細胞型に導くように、特異的に標的される。
【0295】
iRNAを含有するリポソームは、種々の方法によって調製することができる。
【0296】
一例では、リポソームの脂質成分を界面活性剤に溶解させて、脂質成分でミセルを形成させる。例えば、脂質成分は、両親媒性カチオン性脂質または脂質コンジュゲートであることができる。界面活性剤は、高い臨界ミセル濃度を有することができ、非イオン性であり得る。例示的な界面活性剤としては、コール酸塩、CHAPS、オクチルグルコシド、デオキシコール酸塩、およびラウロイルサルコシンが挙げられる。iRNA調製物を、次に、脂質成分を含むミセルに添加する。脂質上のカチオン基は、iRNAと相互作用し、iRNAの周囲で凝縮して、リポソームを形成する。凝縮後、界面活性剤を、例えば、透析によって除去して、iRNAのリポソーム調製物を得る。
【0297】
必要であれば、凝縮を助長する担体化合物を、例えば、制御された添加によって、凝縮反応中に添加することができる。例えば、担体化合物は、核酸以外のポリマー(例えば、スペルミンまたはスペルミジン)であることができる。凝縮に有利に働くようにpHを調整することもできる。
【0298】
送達ビヒクルの構造的成分としてポリヌクレオチド/カチオン性脂質複合体を組み入れる安定なポリヌクレオチド送達ビヒクルを産生する方法のさらなる説明は、例えば、国際公開第96/37194号パンフレットに記載されている。リポソーム形成はまた、Felgner,P.L.ら,Proc.Natl.Acad.Sci.,USA 8:7413-7417,1987;米国特許第4,897,355号明細書;米国特許第5,171,678号明細書;Banghamら M.Mol.Biol.23:238,1965;Olsonら Biochim.Biophys.Acta 557:9,1979;Szokaら Proc.Natl.Acad.Sci.75:4194,1978;Mayhewら Biochim.Biophys.Acta 775:169,1984;Kimら Biochim.Biophys.Acta 728:339,1983;およびFukunagaら Endocrinol.115:757,1984に記載されている例示的な方法の1つ以上の態様を含むことができる。送達ビヒクルとして使用されるのに適当なサイズの脂質凝集体を調製するための、一般的に使用される手法としては、超音波処理および凍結融解と押出し成形が挙げられる(例えば、Mayerら Biochim.Biophys.Acta 858:161,1986参照)。微小流動化は、一貫して小さく(50~200nm)かつ比較的均一な凝集体が望ましい場合に使用することができる(Mayhewら Biochim.Biophys.Acta 775:169,1984)。これらの方法は、iRNA調製物をリポソームにパッケージングするように容易に適合される。
【0299】
pH感受性であるかまたは負に荷電しているリポソームは、核酸分子と複合体形成するのではなく、核酸分子を閉じ込める。核酸分子と脂質の両方が同様に荷電しているため、複合体形成ではなく反発が起きる。それにもかからず、いくつかの核酸分子は、これらのリポソームの水性内部に閉じ込められる。pH感受性のリポソームは、培養中の細胞単層にチミジンキナーゼ遺伝子をコードするDNAを送達するのに使用されている。外来遺伝子の発現が標的細胞で検出された(Zhouら Journal of Conrolled Release,19,(1992) 269-274)。
【0300】
リポソーム組成物の1つの主要なタイプとして、天然に由来するホスファチジルコリン以外のリン脂質が挙げられる。例えば、中性のリポソーム組成物は、ジミリストイルホスファチジルコリン(DMPC)またはジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)から形成させることができる。アニオン性リポソーム組成物は、通常、ジミリストイルホスファチジルグリセロールから形成されるのに対して、アニオン性融合性リポソームは、主としてジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)から形成される。別のタイプのリポソーム組成物は、例えば、大豆PCおよび卵PCのようなホスファチジルコリン(PC)から形成される。別のタイプは、リン脂質および/またはホスファチジルコリンおよび/またはコレステロールの混合物から形成される。
【0301】
リポソームをインビトロおよびインビボで細胞に導入する他の方法の例としては、米国特許第5,283,185号明細書;米国特許第5,171,678号明細書;国際公開第94/00569号パンフレット;国際公開第93/24640号パンフレット;国際公開第91/16024号パンフレット; Felgner,J.Biol.Chem.269:2550,1994;Nabel,Proc.Natl.Acad.Sci.90:11307,1993;Nabel,Human Gene Ther.3:649,1992;Gershon,Biochem.32:7143,1993;およびStrauss EMBO J.11:417,1992が挙げられる。
【0302】
一実施形態では、カチオン性リポソームが使用される。カチオン性リポソームは、細胞膜に融合することができるという利点を有する。非カチオン性リポソームは、形質膜とは効率的に融合することはできないが、インビボでマクロファージにより取り込まれ、iRNAをマクロファージに送達するのに使用することができる。
【0303】
リポソームのさらなる利点としては、天然リン脂質から得られるリポソームが、生体適合性かつ生体分解性であること、リポソームが広範囲の水溶性および脂溶性薬物を取り込むことができること、リポソームが、リポソーム内部のコンパートメント中に封入されたiRNAを代謝および分解から保護することが挙げられる(Rosoff,「Pharmaceutical Dosage Forms」、Lieberman、Rieger、およびBanker(編),1988,第1巻,p245)。リポソーム製剤の調製における重要な考慮事項は、リポソームの脂質表面電荷、小胞サイズ、および水性容量である。
【0304】
正に荷電した合成カチオン性脂質であるN-[1-(2,3-ジオレイルオキシ)プロピル]-N,N,N-トリメチルアンモニウムクロリド(DOTMA)は、核酸と自発的に相互作用して、組織培養細胞の細胞膜の負に荷電した脂質と融合し、その結果iRNAの送達をもたらすことができる脂質-核酸複合体を形成する小さいリポソームを形成するのに使用することができる(例えば、DOTMAおよびDNAとのその使用の説明に関して、Felgner,P.L.ら,Proc.Natl.Acad.Sci.,USA 8:7413-7417,1987および米国特許第4,897,355号明細書参照)。
【0305】
DOTMA類似体である1,2-ビス(オレオイルオキシ)-3-(トリメチルアンモニア)プロパン(DOTAP)は、リン脂質と組み合わせて使用して、DNAと複合体形成する小胞を形成することができる。リポフェクチン(商標)(Bethesda Research Laboratories,Gaithersburg,Md.)は、負に荷電したポリヌクレオチドと自発的に相互作用して複合体を形成する、正に荷電したDOTMAリポソームを含む、高度にアニオン性の核酸を、生きた組織培養細胞内に送達するための有効な作用物質である。十分に正に荷電したリポソームが使用されると、得られた複合体上の正味の電荷もまた正である。このようにして調製される正に荷電した複合体は、負に荷電した細胞表面に自発的に結合して、形質膜と融合し、例えば、組織培養細胞内に機能的核酸を効率的に送達する。別の市販のカチオン性脂質である、1,2-ビス(オレオイルオキシ)-3,3-(トリメチルアンモニア)プロパン(「DOTAP」)(Boehringer Mannheim,Indianapolis,Indiana)は、オレオイル部分がエーテル結合ではなくエステルによって結合されているという点でDOTMAと異なる。
【0306】
他の報告されているカチオン性脂質化合物としては、例えば、2種類の脂質のうちの1つにコンジュゲートされており、5-カルボキシスペルミルグリシンジオクタオレオイルアミド(「DOGS」)(トランスフェクタム(商標)、Promega,Madison,Wisconsin)およびジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン5-カルボキシスペルミルアミド(「DPPES」)のような化合物を含むカルボキシスペルミンを含む種々の部分にコンジュゲートされているものが挙げられる(例えば、米国特許第5,171,678号明細書参照)。
【0307】
別のカチオン性脂質コンジュゲートとしては、DOPEと組み合わせてリポソーム内に製剤化されているコレステロール(「DC-Chol」)による脂質の誘導体化が挙げられる(Gao,X.およびHuang,L.,Biochim.Biophys.Res.Commun.179:280,1991参照)。DOPEにポリリジンをコンジュゲートさせることによって作製されるリポポリリジンは、血清の存在下でのトランスフェクションに有効であることが報告されている(Zhouら,Biochim.Biophys.Acta 1065:8,1991)。特定の細胞株に関して、コンジュゲートされたカチオン性脂質を含有するこれらのリポソームは、DOTMA含有組成物よりも低い毒性を示し、かつより効率的なトランスフェクションを提供すると言われている。他の市販のカチオン性脂質製品としては、DMRIEおよびDMRIE-HP(Vical,La Jolla,California)およびリポフェクトアミン(DOSPA)(Life Technology,Inc.,Gaithersburg,Maryland)が挙げられる。オリゴヌクレオチドの送達に好適な他のカチオン性脂質は、国際公開第98/39359号パンフレットおよび国際公開第96/37194号パンフレットに記載されている。
【0308】
リポソーム製剤は、局所投与に特に適しており、リポソームは、他の製剤に優るいくつかの利点を提示する。このような利点としては、投与された薬物の高い全身吸収に関連した副作用の低下、所望の標的における投与された薬物の蓄積の増大、および皮膚にiRNAを投与する能力が挙げられる。いくつかの実施では、リポソームは、上皮細胞にiRNAを送達するために、また真皮組織(例えば、皮膚)へのiRNAの浸透を増強するためにも使用される。例えば、リポソームは、局所に適用することができる。リポソームとして製剤化された薬物の皮膚への局所送達については、実証されている(例えば、Weinerら,Journal of Drug Targeting,1992,第2巻,405-410およびdu Plessisら,Antiviral Research,18, 1992,259-265;Mannino,R.J.およびFould-Fogerite,S.,Biotechniques 6:682-690,1988;Itani,T.ら Gene 56:267-276.1987;Nicolau,C.ら,Meth.Enz.149:157-176,1987;Straubinger,R.M.およびPapahadjopoulos,D.Meth.Enz.101:512-527,1983; Wang,C.Y.およびHuang,L.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 84:7851-7855,1987参照)。
【0309】
非イオン性リポソーム系もまた、特に非イオン性サーファクタントおよびコレステロールを含む系において、薬物の皮膚への送達におけるこれらのリポソーム系の有用性を決定するために検討されている。ノバソーム(登録商標)I(グリセリルジラウレート/コレステロール/ポリオキシエチレン-10-ステアリルエーテル)およびノバソーム(登録商標)II(グリセリルジステアレート/コレステロール/ポリオオキシエチレン-10-ステアリルエーテル)を含む非イオン性リポソーム製剤は、マウス皮膚の真皮に薬物を送達するのに使用された。iRNAを含むこのような製剤は、皮膚の障害を治療するのに有用である。
【0310】
iRNAを含むリポソームは、高度に変形可能とすることができる。このような変形能は、リポソームが、リポソームの平均半径よりも小さな孔を通って浸透することを可能とすることができる。例えば、トランスファーソームは、変形可能なリポソームの一種である。トランスファーソームは、表面縁活性化因子(通常、サーファクタント)を標準的なリポソーム組成物に添加することによって作製することができる。iRNAを含むトランスファーソームは、例えば、皮膚内のケラチノサイトにiRNAを送達するために皮下注射によって送達することができる。無傷の哺乳類皮膚を横断するためには、脂質小胞は、好適な経皮勾配の影響下で、各々直径50nm未満の一連の微細孔を通って通過しなければならない。さらに、脂質の特性のために、これらのトランスファーソームは、自己最適化性(例えば、皮膚内で、孔の形状に適応すること)、自己修復性であり得るとともに、多くの場合断片化することなく標的に到達することができ、自己装填性であり得ることが多い。
【0311】
サーファクタント
説明しやすくするために、本項での製剤、組成物、および方法を、主として未修飾のiRNA剤に関して論じる。しかしながら、これらの製剤、組成物、および方法は、他のiRNA剤、例えば、修飾iRNA剤で実施することができ、かつこのような実施は本発明の範囲内にあることが理解され得る。サーファクタントは、エマルジョン(マイクロエマルジョンを含む)およびリポソーム(上記を参照)のような製剤において幅広い用途を見出す。iRNA(または前駆体、例えば、iRNAへプロセシングされ得るより大きなds iRNA、もしくはiRNAもしくは前駆体をコードするDNA)の組成物が、サーファクタントを含むことができる。一実施形態では、iRNAは、サーファクタントを含むエマルジョンとして製剤化される。多くの異なるタイプのサーファクタント(天然および合成の両方)の特性を分類およびランク付けする最も一般的な方法は、親水性/親油性バランス(HLB)の使用によるものである。親水性基の性質は、製剤中で使用される異なるサーファクタントを類別するための最も有用な手段を提供する(Rieger,「Pharmaceutical Dosage Forms」,Marcel Dekker,Inc.,New York,NY,1988,p.285)。
【0312】
サーファクタント分子がイオン化されない場合は、非イオン性サーファクタントとして分類される。非イオン性サーファクタントは、薬学的製品において幅広い用途を見出しており、広範囲のpH値にわたって使用可能である。一般に、それらのHLB値は、それらの構造に応じて、2~約18の範囲である。非イオン性サーファクタントとしては、エチレングリコールエステル、プロピレングリコールエステル、グリセリルエステル、ポリグリセリルエステル、ソルビタンエステル、スクロースエステル、およびエトキシル化エステルなどの非イオン性エステルが挙げられる。非イオン性アルカノールアミドおよびエーテル(例えば、脂肪アルコールエトキシレート、プロポキシル化アルコール、およびエトキシル化/プロポキシル化ブロックポリマー)もまた、この部類に含まれる。ポリオキシエチレンサーファクタントは、非イオン性サーファクタント類のうち最も一般的なものである。
【0313】
水に溶解または分散させたときに、負電荷を持つ場合、サーファクタント分子はアニオン性として分類される。アニオン性サーファクタントとしては、カルボキシレート(例えば、石鹸)、アシルラクチレート、アミノ酸のアシルアミド、硫酸のエステル(例えば、アルキルサルフェートおよびエトキシル化アルキルサルフェート)、スルホネート(例えば、アルキルベンゼンスルホネート)、アシルイセチオネート、アシルタウレート、およびスルホスクシネート、ならびにホスフェートが挙げられる。アニオン性サーファクタント類のうち最も重要なものは、アルキルサルフェートおよび石鹸である。
【0314】
水に溶解または分散させたときに、正電荷を持つ場合、サーファクタント分子はカチオン性として分類される。カチオン性サーファクタントとしては、第四級アンモニウム塩およびエトキシル化アミンが挙げられる。第四級アンモニウム塩は、この部類のうちで最もよく使用されるものである。
【0315】
サーファクタント分子が正または負のいずれかの電荷を持つ能力を有する場合、このサーファクタントは両性として分類される。両性サーファクタントとしては、アクリル酸誘導体、置換アルキルアミド、N-アルキルベタイン、およびホスファチドが挙げられる。
【0316】
薬物製品、製剤、およびエマルジョン中でのサーファクタントの使用が概説されている(Rieger,「Pharmaceutical Dosage Forms」,Marcel Dekker,Inc.,New York,NY,1988,p.285)。
【0317】
ミセルおよび他の膜状製剤
説明しやすくするために、本項でのミセルならびに他の製剤、組成物、および方法は、主として未修飾のiRNA剤に関して論じる。しかしながら、これらのミセルおよび他の製剤、組成物、および方法は、他のiRNA剤、例えば、修飾iRNA剤で実施することができ、かつこのような実施は本発明の範囲内にあることが理解され得る。iRNA剤、例えば、二本鎖iRNA剤、またはsiRNA剤(例えば、前駆体、例えば、siRNA剤へプロセシングされ得るより大きなiRNA剤、またはiRNA剤、例えば、二本鎖iRNA剤、もしくはsiRNA剤、もしくはそれらの前駆体をコードするDNA)の組成物は、ミセル製剤として提供され得る。「ミセル」は、本明細書では、両親媒性分子の疎水性部分の全てが内側に向き、親水性部分が周囲の水相と接触するように両親媒性分子が球状構造に配置される、特定の種類の分子集合体として定義される。反対の配置は、環境が疎水性である場合に存在する。
【0318】
経皮膜を通した送達に好適な混合ミセル製剤は、iRNA組成物の水溶液と、アルカリ金属C8~C22アルキルサルフェートと、ミセル形成化合物とを混合することにより調製され得る。例示的なミセル形成化合物としては、レシチン、ヒアルロン酸、ヒアルロン酸の薬学的に許容可能な塩、グリコール酸、乳酸、カモミール抽出物、キュウリ抽出物、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、モノオレイン、モノオレエート、モノラウレート、ルリヂサ油、月見草油、メントール、トリヒドロキシオキソコラニルグリシンおよびそれらの薬学的に許容される塩、グリセリン、ポリグリセリン、リジン、ポリリジン、トリオレイン、ポリオキシエチレンエーテルおよびそれらの類似体、ポリドカノールアルキルエーテルおよびその類似体、ケノデオキシコレート、デオキシコレート、ならびにそれらの混合物が挙げられる。ミセル形成化合物は、アルカリ金属アルキルサルフェートの添加と同時か、または添加後に添加され得る。混合ミセルは、成分の実質的に全ての種類の混合によって形成するが、より小さなサイズのミセルを提供するためには激しい混合によって形成する。
【0319】
一方法では、iRNA組成物および少なくともアルカリ金属アルキルサルフェートを含有する第1のミセル組成物を調製する。次に、この第1のミセル組成物を、少なくとも3つのミセル形成化合物と混合して、混合ミセル組成物を形成させる。別の方法では、ミセル混合物を、iRNA組成物とアルカリ金属アルキルサルフェートと少なくとも1つのミセル形成化合物とを混合し、次いで激しく混合しながら、残りのミセル形成化合物を添加することによって調製する。
【0320】
フェノールおよび/またはm-クレゾールを混合ミセル組成物に添加して、製剤を安定化し、かつ細菌増殖に対して保護してもよい。あるいは、フェノールおよび/またはm-クレゾールをミセル形成成分とともに添加してもよい。グリセリンのような等張剤も、混合ミセル組成物の形成後に添加してもよい。
ミセル製剤を噴霧剤として送達するために、製剤をエアロゾルディスペンサーに入れることができ、ディスペンサーに噴射剤を充填する。加圧下にある噴射剤は、ディスペンサー中では液体形態である。水相と噴射剤相が1つになるように、すなわち、1つの相が存在するように、成分の比を合わせる。2つの相が存在する場合、例えば、定量弁を通して内容物の一部を投薬する前に、ディスペンサーを振盪させる必要がある。投薬用量の医薬品は、微細噴霧剤となって定量弁から噴射される。
【0321】
噴射剤としては、水素含有クロロフルオロカーボン、水素含有フルオロカーボン、ジメチルエーテル、およびジエチルエーテルを挙げることができる。ある実施形態では、HFA 134a(1,1,1,2-テトラフルオロエタン)が使用され得る。
【0322】
必須成分の特定濃度は、比較的直接的な実験により決定することができる。口腔からの吸収のためには、投薬量を、注射による投与または消化管を介した投与についての投薬量の、例えば、少なくとも2倍または3倍に増大させることが望ましい場合が多い。
【0323】
粒子
説明しやすくするために、本項での粒子、製剤、組成物、および方法は、主として未修飾のiRNA剤に関して論じる。しかしながら、これらの粒子、製剤、組成物および方法は、他のiRNA剤、例えば、修飾iRNA剤で実施することができ、かつこのような実施は本発明の範囲内にあることが理解され得る。別の実施形態では、iRNA剤、例えば、二本鎖iRNA剤、またはsiRNA剤(例えば、前駆体、例えば、siRNA剤へプロセシングされ得るより大きなiRNA剤、またはiRNA剤、例えば、二本鎖iRNA剤、もしくはsiRNA剤、もしくはそれらの前駆体をコードするDNA)の調製物は、粒子(例えば、微粒子)に組み込まれ得る。微粒子は、噴霧乾燥によって産生することができるが、凍結乾燥、蒸発、流動床乾燥、真空乾燥、またはこれらの技法の組合せを含む他の方法によって産生してもよい。さらなる説明については、以下を参照されたい。
【0324】
持続放出性製剤。本明細書に記載されるiRNA剤、例えば、二本鎖iRNA剤、またはsiRNA剤(例えば、前駆体、例えば、siRNA剤へプロセシングされ得るより大きなiRNA剤、またはiRNA剤、例えば、二本鎖iRNA剤、もしくはsiRNA剤、もしくはそれらの前駆体をコードするDNA)は、制御放出(例えば、徐放)用に製剤化することができる。制御放出は、その放出を遅らせる構造または物質内にiRNAを配置することによって達成することができる。例えば、iRNAは、多孔質マトリックス内に、または浸食性マトリックス中に配置することができ、これらのいずれも長期間にわたるiRNAの放出を可能にする。
【0325】
ポリマー粒子(例えば、ポリマー微粒子)は、生分解によって微粒子から放出されたときのみ細胞によって取り込まれる、iRNAの持続放出性リザーバとして使用することができる。したがって、この実施形態におけるポリマー粒子は、食作用を防止するほど十分大きく(例えば、10μmより大きく、または20μmより大きく)あるべきである。このような粒子は、より小さな粒子を作製するのと同じ方法であるが、第1のエマルジョンと第2のエマルジョンをあまり激しく混合しない方法によって産生することができる。すなわち、ホモジナイゼーション速度、ボルテックス混合速度、または超音波処理設定をより低く用いて、10μmではなく直径およそ100μmの粒子を得ることができる。混合の時間を変更することもできる。
【0326】
より大きな微粒子は、筋肉内、皮下、皮内、静脈内、もしくは腹腔内注射によって、吸入(鼻内または肺内)によって、経口的に、または移植によって送達されるように、懸濁液、粉末、または植え込み可能な固体として製剤化することができる。これらの粒子は、比較的長期間にわたる徐放が望ましい場合に、任意のiRNAの送達に有用である。分解速度、したがって放出速度は、ポリマー製剤によって異なる。
【0327】
微粒子は、液体懸濁媒体が微粒子境界を自由に浸透または灌流するのを可能にする孔、空隙、くぼみ、欠損部、または他の隙間空間を含み得る。例えば、有孔の微細構造を用いて、くぼみのある多孔質噴霧乾燥ミクロスフェアを形成することができる。
【0328】
iRNA(例えば、siRNA)を含有するポリマー粒子は、例えば、二重エマルジョン技法を用いて作製することができる。まず、ポリマーを有機溶媒に溶解させる。ポリマーは、乳酸/グリコール酸の重量比が65:35、50:50または75:25の乳酸/グリコール酸コポリマー(PLGA)であってもよい。次に、水溶液に懸濁させた核酸の試料をこのポリマー溶液に添加して2つの溶液を混合し、第1のエマルジョンを形成させる。これらの溶液は、ボルテックスまたは振盪によって混合することができ、混合物を超音波処理することができる。核酸が受けるニック形成、剪断、または分解という形態の損傷が最少量である一方、依然として適切なエマルジョンの形成を可能にする、任意の方法が可能である。例えば、許容される結果は、1/8インチのマイクロチッププローブを備えたVibra-cellモデルVC-250ソニケーターにより、設定#3で得ることができる。
【0329】
噴霧乾燥
iRNA剤、例えば、二本鎖iRNA剤、またはsiRNA剤(例えば、前駆体、例えば、siRNA剤へプロセシングされ得るより大きなiRNA剤、またはiRNA剤、例えば、二本鎖iRNA剤、もしくはsiRNA剤、もしくはそれらの前駆体をコードするDNA)は、噴霧乾燥によって調製することができる。噴霧乾燥したiRNAを、対象に投与するか、またはさらなる製剤化に供することができる。iRNAの薬学的組成物は、分散可能な粉末状組成物(例えば、薬学的組成物)を提供するのに十分な条件下で、iRNAを含む均質な水性混合物を噴霧乾燥することによって調製することができる。噴霧乾燥用の材料は、1つ以上の薬学的に許容される賦形剤または分散性を増強する量の生理学的に許容される水溶性タンパク質を含むこともできる。噴霧乾燥した製品は、iRNAを含む分散可能な粉末であることができる。
【0330】
噴霧乾燥とは、液体材料またはスラリー材料を乾燥した微粒子形態に変換するプロセスのことである。噴霧乾燥は、吸入を含むさまざまな投与経路用の粉末材料を提供するのに使用することができる。例えば、M.SacchettiおよびM.M.Van Oort:Inhalation Aerosols:Physical and Biological Basis for Therapy,A.J.Hickey編 Marcel Dekkar,New York,1996を参照されたい。
【0331】
噴霧乾燥は、液滴の微細ミストを形成するために溶液、エマルジョン、または懸濁液を噴霧化することと、液滴を乾燥させることとを含むことができる。ミストを乾燥用チャンバ(例えば、容器、タンク、チューブまたはコイル)内へ発射することができ、このチャンバ内でミストが乾燥用ガスに接触する。ミストは、固体または液体の細孔形成剤を含むことができる。溶媒および細孔形成剤は、液滴から蒸発して乾燥用ガスになり、液滴を固化させ、同時に固体全体に細孔を形成させる。その後、この固体(典型的には粉末状粒子形態)を乾燥用ガスから分離し、回収する。
【0332】
噴霧乾燥は、高度に分散された液体および十分な容量の空気(例えば、熱空気)を一緒にして、液体小滴の蒸発と乾燥をもたらすことを含む。噴霧乾燥されるべき調製物は、任意の溶液、当然、懸濁液、スラリー、コロイド分散液、または選択した噴霧乾燥装置を用いて噴霧化され得るペーストであることができる。典型的には、供給物は、溶媒を蒸発させて乾燥産物を回収器に運搬する温かい濾過気流中に噴霧される。次に、使用済み空気は溶媒とともに排出される。いくつかの異なるタイプの装置を用いて、所望の産物を提供することができる。例えば、Buchi社またはNipro社により製造される市販の噴霧乾燥機は、所望のサイズの粒子を効率的に産生することができる。
【0333】
噴霧乾燥した粉末状粒子は、形状がほぼ球状であり、サイズがほぼ均一であり、多くの場合くぼみがあり得る。組み込まれる医薬品および噴霧乾燥条件に応じて、ある程度の不規則性が存在し得る。多くの場合、噴霧乾燥したミクロスフェアの分散安定性は、これらのミクロスフェアの産生において膨張剤(または発泡剤)を使用するとより有効であるようである。ある実施形態は、分散相または連続相(他方の相は、水性の性質である)として膨張剤を有するエマルジョンを含み得る。膨張剤は、サーファクタント溶液を用いて、例えば、約5,000~15,000psiの圧力で市販の微小流動化装置を用いて分散させる。このプロセスによってエマルジョンが形成されるが、このエマルジョンは、典型的には、水性連続相に分散した水不混和性発泡剤のサブミクロンの液滴を含む、組み込まれたサーファクタントによって安定化され得る。この技法および他の技法を用いたこのような分散液の形成は一般的であり、当業者に周知である。発泡剤は、噴霧乾燥プロセスの間に気化して、通常くぼみのある多孔質の空気力学的に軽いミクロスフェアが残る、フッ素化化合物(例えば、パーフルオロヘキサン、パーフルオロオクチルブロミド、パーフルオロデカリン、パーフルオロブチルエタン)であり得る。以下により詳細に論じるように、他の好適な発泡剤としては、クロロホルム、フレオン、および炭化水素が挙げられる。窒素ガスおよび二酸化炭素もまた、好適な発泡剤として企図される。
【0334】
有孔の微細構造は、上記のように発泡剤を用いて形成され得るが、場合によっては、発泡剤を必要とせず、医薬品およびサーファクタントの水性分散液が直接噴霧乾燥されることが理解されよう。このような場合、製剤は、くぼみのある比較的多孔質の微粒子の形成を概して導くようなプロセス条件(例えば、温度の上昇)を受け入れる余地がある。さらに、医薬品は、このような技法で使用されるのに特に好適な特殊な物理化学的特性(例えば、高い結晶性、高い融解温度、界面活性等)を保有し得る。
【0335】
有孔の微細構造は、任意で、1つ以上のサーファクタントと関連してもよいし、または1つ以上のサーファクタントを含んでもよい。さらに、混和性サーファクタントを、任意で懸濁媒体の液体相と組み合わせてもよい。サーファクタントの使用は、さらに分散安定性を増大させ得るか、製剤化の手順を簡素化し得るか、または投与時の生体利用性を増大させ得ることが当業者に理解されよう。当然、サーファクタントの組合せは、液体相中の1つ以上のサーファクタントと、有孔の微細構造と関連した1つ以上のサーファクタントの使用を含めて、本発明の範囲内であることが企図される。「~と関連する、または~を含む」とは、構造マトリックスまたは有孔の微細構造が、サーファクタントを組み込み得るか、サーファクタントを吸着し得るか、サーファクタントを吸収し得るか、サーファクタントでコーティングされ得るか、またはサーファクタントによって形成され得ることを意味する。
【0336】
使用に好適なサーファクタントとしては、構造マトリックスと懸濁媒体との間の界面で層を形成することにより、安定化された呼吸用分散液の形成と維持を助長する任意の化合物または組成物が挙げられる。サーファクタントは、単一の化合物または(例えば、コサーファクタントの場合のように)化合物の任意の組合せを含んでもよい。特に、ある種のサーファクタントは、噴射剤中で実質的に不溶性であり、フッ素化されておらず、飽和脂質および不飽和脂質、非イオン性界面活性剤、非イオン性ブロックコポリマー、イオン性サーファクタント、ならびにこのような作用物質の組合せからなる群より選択される。上述のサーファクタントに加えて、好適な(すなわち、生体適合性の)フッ素化サーファクタントが、本明細書中の教示と適合し、所望の安定化された調製物を提供するのに使用され得ることが強調されてもよい。
【0337】
天然と合成の両方の供給源に由来するリン脂質を含む脂質は、さまざまな濃度で使用されて、構造的マトリックスを形成し得る。通常、適合性の脂質は、ゲルから液晶への相転移が約40℃より高いものを含む。ある実施形態では、組み込まれる脂質は、比較的長い鎖(すなわち、C6-C22)の飽和脂質であり、リン脂質を含み得る。開示される安定化された調製物において有用な例示的なリン脂質は、卵ホスファチジルコリン、ジラウロイルホスファチジルコリン、ジオレイルホスファチジルコリン、ジパルミトイルホスファチジルコリン、ジステロイルホスファチジルコリン、短鎖ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ジオレイルホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルイノシトール、糖脂質、ガングリオシドGM1、スフィンゴミエリン、ホスファチジン酸、カルジオリピン、ポリマー鎖(例えば、ポリエチレングリコール、キチン、ヒアルロン酸、またはポリビニルピロリドン)を持つ脂質、スルホン化された単糖、二糖、および多糖を持つ脂質、脂肪酸(例えば、パルミチン酸、ステアリン酸、およびオレイン酸)、コレステロール、コレステロールエステル、ならびにコレステロールヘミスクシネートを含む。それらの優れた生体適合性のために、リン脂質、およびリン脂質とポロキサマーの組合せは、本明細書に開示される安定化された分散液での使用に特に好適である。
【0338】
適合性の非イオン性界面活性剤は、ソルビタントリオレエート(Spans(商標)85)、ソルビタンセスキオレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレート、およびポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノオレエートを含むソルビタンエステル、オレイルポリオキシエチレン(2)エーテル、ステアリルポリオキシエチレン(2)エーテル、ラウリルポリオキシエチレン(4)エーテル、グリセロールエステル、ならびにスクロースエステルを含む。他の好適な非イオン性界面活性剤は、McCutcheon’s Emulsifiers and Detergents(McPublishing Co.,Glen Rock,N.J)を用いて容易に特定することができる。特定のブロックコポリマーとしては、ポリオキシエチレンおよびポリオキシプロピレンのジブロックコポリマーおよびトリブロックコポリマー(ポロキサマー188(プルロニック(登録商標)F68)、ポロキサマー407(プルロニック(登録商標)F-127)、およびポロキサマー338を含む)が挙げられる。イオン性サーファクタント(例えば、スルホコハク酸ナトリウム)および脂肪酸石鹸も利用し得る。ある実施形態では、微細構造は、オレイン酸またはそのアルカリ塩を含んでもよい。
【0339】
上述のサーファクタントに加えて、カチオン性のサーファクタントまたは脂質は、iRNA剤、例えば、二本鎖iRNA剤、またはsiRNA剤(例えば、前駆体、例えば、siRNA剤へプロセシングされ得るより大きなiRNA剤、またはiRNA剤、例えば、二本鎖iRNA剤、もしくはsiRNA剤、もしくはそれらの前駆体をコードするDNA)の送達の場合に特に使用され得る。好適なカチオン性脂質の例としては、DOTMA、すなわちN-[-(2,3-ジオレイルオキシ)プロピル]-N,N,N-トリメチルアンモニウムクロリド、DOTAP、すなわち1,2-ジオレイルオキシ-3-(トリメチルアンモニオ)プロパン、およびDOTB(1,2-ジオレイル-3-(4’-トリメチルアンモニオ)ブタノイル-sn-グリセロール)が挙げられる。ポリカチオン性アミノ酸(例えば、ポリリジン)、およびポリアルギニンも企図される。
【0340】
噴霧プロセスに関して、回転噴霧化、圧力噴霧化、および二液噴霧化のような噴霧方法を使用することができる。これらのプロセスで使用される装置の例としては、Yamato Chemical社製の「Parubis[音声レンダリング]ミニスプレー GA-32」および「Parubisスプレードライヤー DL-41」が挙げられ、またはOkawara Kakoki社製の「スプレードライヤー CL-8」、「スプレードライヤー L-8」、「スプレードライヤー FL-12」、「スプレードライヤー FL-16」または「スプレードライヤー FL-20」を、回転円板噴霧器を用いた噴霧方法に使用することができる。
【0341】
噴霧された材料を乾燥させるのに使用するガスに関して、特に制限は課せられないが、空気、窒素ガスまたは不活性ガスを使用することが推奨される。噴霧された材料を乾燥させるのに使用するガスの入口の温度は、噴霧された材料の熱失活を引き起こさないような温度である。温度範囲は、約50℃~約200℃、例えば、約50℃~100℃で変動し得る。噴霧された材料を乾燥させるのに使用されるガスの出口の温度は、約0℃~約150℃、例えば、0℃~90℃、例えば、0℃~60℃で変動し得る。
【0342】
噴霧乾燥は、呼吸に適した粒子サイズ、低水分含有量、およびすぐにエアロゾル化可能な流体特性を有する、均質な構成の実質的に非晶質の粉末を生じる条件下でなされる。場合によっては、得られる粉末の粒子サイズは、約98%を上回る塊が約10μm以下の直径を有する粒子となり、約90%の塊が、5μm未満の直径を有する粒子となる。あるいは、約95%の塊が直径10μm未満の粒子を有し、約80%の粒子塊が5μm未満の直径を有する。
【0343】
iRNA調製物を含む医薬品ベースの分散性乾燥粉末は、呼吸器投与および肺投与に好適な薬学的担体または賦形剤と任意に組み合わせてもよい。このような担体は、患者に送達される粉末中のiRNA濃度を低下させることが望ましい場合には単に増量剤としての役割を果たし得るが、iRNAのより効率的かつ再現性のある送達を提供し、かつ製造および粉末充填を容易にするための流動性および粘稠度のようなiRNAの取扱い上の特性を改善するために、iRNA組成物の安定性を増強し、かつ粉末分散装置内の粉末の分散性を改善する役割も果たし得る。
【0344】
このような担体材料は、噴霧乾燥前に、すなわち、精製バルク溶液に担体材料を添加することによって、薬物と組み合わせてもよい。そのようにして、担体粒子が薬物粒子とともに同時に形成されて、均質な粉末を生じる。あるいは、担体を別個に乾燥粉末形態に調製して、ブレンドすることにより乾燥粉末薬物と組み合わせてもよい。粉末担体は、通常結晶であるが(水吸収を回避するため)、場合によっては、非晶質または結晶と非晶質の混合物であってよい。担体粒子のサイズは、薬物粉末の流動性を改善するように選択してもよく、典型的には、25μm~100μmの範囲である。担体材料は、上述の範囲のサイズを有する結晶性ラクトースであってもよい。
【0345】
上述の方法のいずれかにより調製された粉末は、その後の使用のために従来の様式で噴霧乾燥機から回収される。医薬品および他の目的として使用するために、多くの場合、ふるい分けまたは他の従来の技法によって形成された全ての凝集物を崩壊させることが望ましい。薬学的用途に関しては、乾燥粉末製剤は、通常測り取って単回用量とされ、この単回用量がパッケージに密封される。このようなパッケージは、以下に詳述するように、乾燥粉末吸入器中での分散に特に有用である。あるいは、粉末は、多数回用量用の容器中にパッケージングされてもよい。
【0346】
疎水性の薬物および成分ならびに他の薬物および成分を噴霧乾燥させる方法は、米国特許第5,000,888号明細書、同第5,026,550号明細書、同第4,670,419号明細書、同第4,540,602号明細書および同第4,486,435号明細書に記載されている。BlochおよびSpeison(1983)Pharm.Acta.Helv 58:14-22は、ジオキサン-水および2-エトキシエタノール-水の共沸溶媒中でのヒドロクロロチアジドとクロルタリドン(親油性薬物)と親水性アジュバント(ペンタエリスリトール)の噴霧乾燥を教示している。JP第806766号、特開平7-242568号、特開平7-101884号、特開平7-101883号、特開平7-1018982号、特開平7-101881号、および特開平4-036233号の各明細書を含む多数の日本国特許出願抄録は、親水性-疎水性産物の組合せの噴霧乾燥に関するものである。親水性-疎水性産物の組合せを噴霧乾燥させることに関連した他の外国特許出願としては、仏国特許出願公開第2594693号明細書、独国特許出願公開第2209477号明細書および国際公開第88/07870号パンフレットが挙げられる。
【0347】
凍結乾燥
iRNA剤、例えば、二本鎖iRNA剤、またはsiRNA剤(例えば、前駆体、例えば、siRNA剤へプロセシングされ得るより大きなiRNA剤、またはiRNA剤、例えば、二本鎖iRNA剤、もしくはsiRNA剤、もしくはそれらの前駆体をコードするDNA)の調製物は、凍結乾燥によって作製することができる。凍結乾燥とは、組成物を凍結させた後に組成物から水を昇華させるフリーズドライプロセスのことである。凍結乾燥プロセスに関連した特定の利点は、水溶液中で比較的不安定な生物製剤および医薬品を、温度上昇を伴わずに乾燥させ(それにより、有害な熱的影響を排除する)、その後、安定性の問題があまり見られない乾燥状態で保管することができることである。本発明に関して、このような技法は、生理活性を弱めることなく核酸を有孔の微細構造に組み込むことと特に適合する。凍結乾燥した微粒子を提供する方法は当技術分野で公知であり、本明細書中の教示に従って分散適合性の微細構造を提供するために過度の実験を必要としないことは明らかであろう。したがって、所望の多孔性およびサイズを有する微細構造を提供するように凍結乾燥プロセスが使用され得る限りは、凍結乾燥プロセスは本明細書中の教示と適合するものであり、本発明の範囲内であることが明示的に企図される。
【0348】
遺伝子
一態様では、本発明は、本発明のiRNA剤の投与の恩恵を受ける可能性がある疾患の危険性があるか、またはこのような疾患に罹患した対象を治療する方法を特色とする。本方法は、本発明のiRNA剤を、それを必要とする対象に投与し、それによって、対象を治療する工程を含む。投与されるiRNA剤は、治療される疾患によって決まる。
【0349】
ある実施形態では、iRNA剤は、増殖因子遺伝子または増殖因子受容体遺伝子、キナーゼ(例えば、タンパク質チロシンキナーゼ、タンパク質セリンキナーゼ、またはタンパク質スレオニンキナーゼ)遺伝子、アダプタータンパク質遺伝子、Gタンパク質スーパーファミリー分子をコードする遺伝子、または転写因子をコードする遺伝子をサイレンシングする。
【0350】
いくつかの実施形態では、iRNA剤は、PDGFβ遺伝子をサイレンシングし、したがって、望ましくないPDGFβ発現を特徴とする障害(例えば、精巣癌および肺癌)を有するか、またはその危険性がある対象を治療するのに使用することができる。
【0351】
いくつかの実施形態では、iRNA剤は、Erb-B遺伝子をサイレンシングし、したがって、望ましくないErb-B発現を特徴とする障害(例えば、乳癌)を有するか、またはその危険性がある対象を治療するのに使用することができる。
【0352】
いくつかの実施形態では、iRNA剤は、Src遺伝子をサイレンシングし、したがって、望ましくないSrc発現を特徴とする障害(例えば、大腸癌)を有するか、またはその危険性がある対象を治療するのに使用することができる。
【0353】
いくつかの実施形態では、iRNA剤は、CRK遺伝子をサイレンシングし、したがって、望ましくないCRK発現を特徴とする障害(例えば、大腸癌および肺癌)を有するか、またはその危険性がある対象を治療するのに使用することができる。
【0354】
いくつかの実施形態では、iRNA剤は、GRB2遺伝子をサイレンシングし、したがって、望ましくないGRB2発現を特徴とする障害(例えば、偏平上皮細胞癌)を有するか、またはその危険性がある対象を治療するのに使用することができる。
【0355】
別の実施形態では、iRNA剤は、RAS遺伝子をサイレンシングし、したがって、望ましくないRAS発現を特徴とする障害(例えば、膵癌、大腸癌、および肺癌、ならびに慢性白血病)を有するか、またはその危険性がある対象を治療するのに使用することができる。
【0356】
別の実施形態では、iRNA剤は、MEKK遺伝子をサイレンシングし、したがって、望ましくないMEKK発現を特徴とする障害(例えば、偏平上皮細胞癌、黒色腫、または白血病)を有するか、またはその危険性がある対象を治療するのに使用することができる。
【0357】
別の実施形態では、iRNA剤は、JNK遺伝子をサイレンシングし、したがって、望ましくないJNK発現を特徴とする障害(例えば、膵癌または乳癌)を有するか、またはその危険性がある対象を治療するのに使用することができる。
【0358】
いくつかの実施形態では、iRNA剤は、RAF遺伝子をサイレンシングし、したがって、望ましくないRAF発現を特徴とする障害(例えば、肺癌または白血病)を有するか、またはその危険性がある対象を治療するのに使用することができる。
【0359】
いくつかの実施形態では、iRNA剤は、Erk1/2遺伝子をサイレンシングし、したがって、望ましくないErk1/2発現を特徴とする障害(例えば、肺癌)を有するか、またはその危険性がある対象を治療するのに使用することができる。
【0360】
別の実施形態では、iRNA剤は、PCNA(p21)遺伝子をサイレンシングし、したがって、望ましくないPCNA発現を特徴とする障害(例えば、肺癌)を有するか、またはその危険性がある対象を治療するのに使用することができる。
【0361】
いくつかの実施形態では、iRNA剤は、MYB遺伝子をサイレンシングし、したがって、望ましくないMYB発現を特徴とする障害(例えば、大腸癌または慢性骨髄性白血病)を有するか、またはその危険性がある対象を治療するのに使用することができる。
【0362】
いくつかの実施形態では、iRNA剤は、c-MYC遺伝子をサイレンシングし、したがって、望ましくないc-MYC発現を特徴とする障害(例えば、バーキットリンパ腫または神経芽細胞腫)を有するか、またはその危険性がある対象を治療するのに使用することができる。
【0363】
別の実施形態では、iRNA剤は、JUN遺伝子をサイレンシングし、したがって、望ましくないJUN発現を特徴とする障害(例えば、卵巣癌、前立腺癌、または乳癌)を有するか、またはその危険性がある対象を治療するのに使用することができる。
【0364】
別の実施形態では、iRNA剤は、FOS遺伝子をサイレンシングし、したがって、望ましくないFOS発現を特徴とする障害(例えば、皮膚癌または前立腺癌)を有するか、またはその危険性がある対象を治療するのに使用することができる。
【0365】
いくつかの実施形態では、iRNA剤は、BCL-2遺伝子をサイレンシングし、したがって、望ましくないBCL-2発現を特徴とする障害(例えば、肺癌、前立腺癌、または非ホジキンリンパ腫)を有するか、またはその危険性がある対象を治療するのに使用することができる。
【0366】
いくつかの実施形態では、iRNA剤は、サイクリンD遺伝子をサイレンシングし、したがって、望ましくないサイクリンD発現を特徴とする障害(例えば、食道癌および大腸癌)を有するか、またはその危険性がある対象を治療するのに使用することができる。
【0367】
いくつかの実施形態では、iRNA剤は、VEGF遺伝子をサイレンシングし、したがって、望ましくないVEGF発現を特徴とする障害(例えば、食道癌および大腸癌)を有するか、またはその危険性がある対象を治療するのに使用することができる。
【0368】
いくつかの実施形態では、iRNA剤は、EGFR遺伝子をサイレンシングし、したがって、望ましくないEGFR発現を特徴とする障害(例えば、乳癌)を有するか、またはその危険性がある対象を治療するのに使用することができる。
【0369】
別の実施形態では、iRNA剤は、サイクリンA遺伝子をサイレンシングし、したがって、望ましくないサイクリンA発現を特徴とする障害(例えば、肺癌および子宮頸癌)を有するか、またはその危険性がある対象を治療するのに使用することができる。
【0370】
別の実施形態では、iRNA剤は、サイクリンE遺伝子をサイレンシングし、したがって、望ましくないサイクリンE発現を特徴とする障害(例えば、肺癌および乳癌)を有するか、またはその危険性がある対象を治療するのに使用することができる。
【0371】
別の実施形態では、iRNA剤は、WNT-1遺伝子をサイレンシングし、したがって、望ましくないWNT-1発現を特徴とする障害(例えば、基底細胞癌)を有するか、またはその危険性がある対象を治療するのに使用することができる。
【0372】
別の実施形態では、iRNA剤は、β-カテニン遺伝子をサイレンシングし、したがって、望ましくないβ-カテニン発現を特徴とする障害(例えば、腺癌または肝細胞癌)を有するか、またはその危険性がある対象を治療するのに使用することができる。
【0373】
別の実施形態では、iRNA剤は、c-MET遺伝子をサイレンシングし、したがって、望ましくないc-MET発現を特徴とする障害(例えば、肝細胞癌)を有するか、またはその危険性がある対象を治療するのに使用することができる。
【0374】
別の実施形態では、iRNA剤は、PKC遺伝子をサイレンシングし、したがって、望ましくないPKC発現を特徴とする障害(例えば、乳癌)を有するか、またはその危険性がある対象を治療するのに使用することができる。
【0375】
いくつかの実施形態では、iRNA剤は、NFKB遺伝子をサイレンシングし、したがって、望ましくないNFKB発現を特徴とする障害(例えば、乳癌)を有するか、またはその危険性がある対象を治療するのに使用することができる。
【0376】
いくつかの実施形態では、iRNA剤は、STAT3遺伝子をサイレンシングし、したがって、望ましくないSTAT3発現を特徴とする障害(例えば、前立腺癌)を有するか、またはその危険性がある対象を治療するのに使用することができる。
【0377】
別の実施形態では、iRNA剤は、サバイビン遺伝子をサイレンシングし、したがって、望ましくないサバイビン発現を特徴とする障害(例えば、子宮頸癌または膵癌)を有するか、またはその危険性がある対象を治療するのに使用することができる。
【0378】
別の実施形態では、iRNA剤は、Her2/Neu遺伝子をサイレンシングし、したがって、望ましくないHer2/Neu発現を特徴とする障害(例えば、乳癌)を有するか、またはその危険性がある対象を治療するのに使用することができる。
【0379】
別の実施形態では、iRNA剤は、トポイソメラーゼI遺伝子をサイレンシングし、したがって、望ましくないトポイソメラーゼI発現を特徴とする障害(例えば、卵巣癌および大腸癌)を有するか、またはその危険性がある対象を治療するのに使用することができる。
【0380】
いくつかの実施形態では、iRNA剤は、トポイソメラーゼIIα遺伝子をサイレンシングし、したがって、望ましくないトポイソメラーゼIIα発現を特徴とする障害(例えば、乳癌および大腸癌)を有するか、またはその危険性がある対象を治療するのに使用することができる。
【0381】
いくつかの実施形態では、iRNA剤は、p73遺伝子の突然変異をサイレンシングし、したがって、望ましくないp73発現を特徴とする障害(例えば、結腸直腸腺癌)を有するか、またはその危険性がある対象を治療するのに使用することができる。
【0382】
いくつかの実施形態では、iRNA剤は、p21(WAF1/CIP1)遺伝子における突然変異をサイレンシングし、したがって、望ましくないp21(WAF1/CIP1)発現を特徴とする障害(例えば、肝癌)を有するか、またはその危険性がある対象を治療するのに使用することができる。
【0383】
いくつかの実施形態では、iRNA剤は、p27(KIP1)遺伝子における突然変異をサイレンシングし、したがって、望ましくないp27(KIP1)発現を特徴とする障害(例えば、肝癌)を有するか、またはその危険性がある対象を治療するのに使用することができる。
【0384】
いくつかの実施形態では、iRNA剤は、PPMID遺伝子における突然変異をサイレンシングし、したがって、望ましくないPPMID発現を特徴とする障害(例えば、乳癌)を有するか、またはその危険性がある対象を治療するのに使用することができる。
【0385】
いくつかの実施形態では、iRNA剤は、RAS遺伝子における突然変異をサイレンシングし、したがって、望ましくないRAS発現を特徴とする障害(例えば、乳癌)を有するか、またはその危険性がある対象を治療するのに使用することができる。
【0386】
別の実施形態では、iRNA剤は、カベオリンI遺伝子における突然変異をサイレンシングし、したがって、望ましくないカベオリンI発現を特徴とする障害(例えば、食道偏平上皮細胞癌)を有するか、またはその危険性がある対象を治療するのに使用することができる。
【0387】
別の実施形態では、iRNA剤は、MIB I遺伝子における突然変異をサイレンシングし、したがって、望ましくないMIB I発現を特徴とする障害(例えば、男性の乳癌(MBC))を有するか、またはその危険性がある対象を治療するのに使用することができる。
【0388】
別の実施形態では、iRNA剤は、MTAI遺伝子における突然変異をサイレンシングし、したがって、望ましくないMTAI発現を特徴とする障害(例えば、卵巣癌)を有するか、またはその危険性がある対象を治療するのに使用することができる。
【0389】
別の実施形態では、iRNA剤は、M68遺伝子における突然変異をサイレンシングし、したがって、望ましくないM68発現を特徴とする障害(例えば、食道、胃、大腸および直腸のヒト腺癌)を有するか、またはその危険性がある対象を治療するのに使用することができる。
【0390】
ある実施形態では、iRNA剤は、腫瘍抑制遺伝子における突然変異をサイレンシングし、したがって、化学療法薬と組み合わせて、アポトーシス活性を促進する方法として使用することができる。
【0391】
いくつかの実施形態では、iRNA剤は、p53腫瘍抑制遺伝子における突然変異をサイレンシングし、したがって、望ましくないp53発現を特徴とする障害(例えば、胆嚢癌、膵癌、および肺癌)を有するか、またはその危険性がある対象を治療するのに使用することができる。
【0392】
いくつかの実施形態では、iRNA剤は、p53ファミリーの一員であるDN-p63における突然変異をサイレンシングし、したがって、望ましくないDN-p63発現を特徴とする障害(例えば、偏平上皮細胞癌)を有するか、またはその危険性がある対象を治療するのに使用することができる。
【0393】
いくつかの実施形態では、iRNA剤は、pRb腫瘍抑制遺伝子における突然変異をサイレンシングし、したがって、望ましくないpRb発現を特徴とする障害(例えば、口腔偏平上皮細胞癌)を有するか、またはその危険性がある対象を治療するのに使用することができる。
【0394】
いくつかの実施形態では、iRNA剤は、APC1腫瘍抑制遺伝子における突然変異をサイレンシングし、したがって、望ましくないAPC1発現を特徴とする障害(例えば、大腸癌)を有するか、またはその危険性がある対象を治療するのに使用することができる。
【0395】
いくつかの実施形態では、iRNA剤は、BRCA1腫瘍抑制遺伝子における突然変異をサイレンシングし、したがって、望ましくないBRCA1発現を特徴とする障害(例えば、乳癌)を有するか、またはその危険性がある対象を治療するのに使用することができる。
【0396】
いくつかの実施形態では、iRNA剤は、PTEN腫瘍抑制遺伝子における突然変異をサイレンシングし、したがって、望ましくないPTEN発現を特徴とする障害(例えば、過誤腫、神経膠腫、前立腺癌、および子宮内膜癌)を有するか、またはその危険性がある対象を治療するのに使用することができる。
【0397】
いくつかの実施形態では、iRNA剤は、MLL融合遺伝子(例えば、MLL-AF9)をサイレンシングし、したがって、望ましくないMLL融合遺伝子発現を特徴とする障害(例えば、急性白血病)を有するか、またはその危険性がある対象を治療するのに使用することができる。
【0398】
別の実施形態では、iRNA剤は、BCR/ABL融合遺伝子をサイレンシングし、したがって、望ましくないBCR/ABL融合遺伝子発現を特徴とする障害(例えば、急性白血病および慢性白血病)を有するか、またはその危険性がある対象を治療するのに使用することができる。
【0399】
別の実施形態では、iRNA剤は、TEL/AML1融合遺伝子をサイレンシングし、したがって、望ましくないTEL/AML1融合遺伝子発現を特徴とする障害(例えば、小児期急性白血病)を有するか、またはその危険性がある対象を治療するのに使用することができる。
【0400】
別の実施形態では、iRNA剤は、EWS/FLI1融合遺伝子をサイレンシングし、したがって、望ましくないEWS/FLI1融合遺伝子発現を特徴とする障害(例えば、ユーイング肉腫)を有するか、またはその危険性がある対象を治療するのに使用することができる。
【0401】
別の実施形態では、iRNA剤は、TLS/FUS1融合遺伝子をサイレンシングし、したがって、望ましくないTLS/FUS1融合遺伝子発現を特徴とする障害(例えば、粘液脂肪肉腫)を有するか、またはその危険性がある対象を治療するのに使用することができる。
【0402】
別の実施形態では、iRNA剤は、PAX3/FKHR融合遺伝子をサイレンシングし、したがって、望ましくないPAX3/FKHR融合遺伝子発現を特徴とする障害(例えば、粘液脂肪肉腫)を有するか、またはその危険性がある対象を治療するのに使用することができる。
【0403】
別の実施形態では、iRNA剤は、AML1/ETO融合遺伝子をサイレンシングし、したがって、望ましくないAML1/ETO融合遺伝子発現を特徴とする障害(例えば、急性白血病)を有するか、またはその危険性がある対象を治療するのに使用することができる。
【0404】
疾患
血管新生
別の態様では、本発明は、血管新生阻害によって恩恵を受ける可能性がある疾患もしくは障害(例えば、癌)の危険性があるか、またはこのような疾患もしくは障害に罹患した対象(例えば、ヒト)を治療する方法を特色とする。本方法は、本発明のiRNA剤を、それを必要とする対象に投与し、それによって、対象を治療する工程を含む。投与されるiRNA剤は、治療される血管新生関連遺伝子の種類によって決まることとなる。
【0405】
いくつかの実施形態では、iRNA剤は、αv-インテグリン遺伝子をサイレンシングし、したがって、望ましくないαv-インテグリン発現を特徴とする障害(例えば、脳腫瘍または上皮を起源とする腫瘍)を有するか、またはその危険性がある対象を治療するのに使用することができる。
【0406】
いくつかの実施形態では、iRNA剤は、Flt-1受容体遺伝子をサイレンシングし、したがって、望ましくないFlt-1受容体発現を特徴とする障害(例えば、癌および関節リウマチ)を有するか、またはその危険性がある対象を治療するのに使用することができる。
【0407】
いくつかの実施形態では、iRNA剤は、チューブリン遺伝子をサイレンシングし、したがって、望ましくないチューブリン発現を特徴とする障害(例えば、癌および網膜新血管形成)を有するか、またはその危険性がある対象を治療するのに使用することができる。
【0408】
いくつかの実施形態では、iRNA剤は、チューブリン遺伝子をサイレンシングし、したがって、望ましくないチューブリン発現を特徴とする障害(例えば、癌および網膜新血管形成)を有するか、またはその危険性がある対象を治療するのに使用することができる。
【0409】
ウイルス疾患
また別の態様では、本発明は、ウイルスに感染した対象、またはウイルス感染に関連した障害もしくは疾患の危険性があるか、もしくはこのような障害もしくは疾患に罹患した対象を治療する方法を特色とする。本方法は、本発明のiRNA剤を、それを必要とする対象に投与し、それによって、対象を治療する工程を含む。投与されるiRNA剤は、治療されるウイルス疾患の種類によって決まる。いくつかの実施形態では、核酸は、ウイルス遺伝子を標的とし得る。他の実施形態では、核酸は、宿主遺伝子を標的とし得る。
【0410】
したがって、本発明は、ヒトパピローマウイルス(HPV)に感染した患者、またはHPVによって媒介される障害(例えば、子宮頸癌)の危険性があるか、もしくはこのような障害に罹患した患者を治療する方法を提供する。HPVは、子宮頸癌の95%に関係し、したがって抗ウイルス療法は、これらの癌およびウイルス感染の他の症状を治療するための魅力的な方法である。いくつかの実施形態では、HPV遺伝子の発現を低下させる。別の実施形態では、HPV遺伝子は、E2、E6またはE7の群のうちの1つである。いくつかの実施形態では、HPV複製に必要とされるヒト遺伝子の発現を低下させる。
【0411】
本発明はまた、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)に感染した患者、またはHIVによって媒介される障害(例えば、後天性免疫不全症候群(AIDS))の危険性があるか、もしくはこの障害に罹患した患者を治療する方法を提供する。いくつかの実施形態では、HIV遺伝子の発現を低下させる。別の実施形態では、HIV遺伝子は、CCR5、GagまたはRevである。いくつかの実施形態では、HIV複製に必要とされるヒト遺伝子の発現を低下させる。別の実施形態では、遺伝子はCD4またはTsg101である。
【0412】
本発明はまた、B型肝炎ウイルス(HBV)に感染した患者、またはHBVによって媒介される障害(例えば、肝硬変および肝細胞癌)の危険性があるか、もしくはこのような障害に罹患した患者を治療する方法を提供する。いくつかの実施形態では、HBV遺伝子の発現を低下させる。別の実施形態では、標的とされるHBV遺伝子は、HBVコアタンパク質の尾部領域、プレ-cregious(プレ-c)領域、またはcregious(c)領域の群のうちの1つをコードする。別の実施形態では、標的とされるHBV-RNA配列は、ポリ(A)尾部から構成される。ある実施形態では、HBV複製に必要とされるヒト遺伝子の発現を低下させる。
【0413】
本発明はまた、A型肝炎ウイルス(HAV)に感染した患者、またはHAVによって媒介される障害の危険性があるか、もしくはこのような障害に罹患した患者を治療する方法を提供する。いくつかの実施形態では、HAV複製に必要とされるヒト遺伝子の発現を低下させる。
【0414】
本発明はまた、C型肝炎ウイルス(HCV)に感染した患者、またはHCVによって媒介される障害(例えば、肝硬変)の危険性があるか、もしくはこのような障害に罹患した患者を治療する方法を提供する。いくつかの実施形態では、HCV遺伝子の発現を低下させる。別の実施形態では、HCV複製に必要とされるヒト遺伝子の発現を低下させる。
【0415】
本発明はまた、D型肝炎、E型肝炎、F型肝炎、G型肝炎、もしくはH型肝炎を含む肝炎ウイルス株の群のいずれかに感染した患者、またはこれらの肝炎株のいずれかによって媒介される障害の危険性があるか、もしくはこのような障害に罹患した患者を治療する方法を提供する。いくつかの実施形態では、D型肝炎遺伝子、E型肝炎遺伝子、F型肝炎遺伝子、G型肝炎遺伝子、もしくはH型肝炎遺伝子の発現を低下させる。別の実施形態では、D型肝炎、E型肝炎、F型肝炎、G型肝炎、もしくはH型肝炎の複製に必要とされるヒト遺伝子の発現を低下させる。
【0416】
本発明の方法はまた、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)に感染した患者、またはRSVによって媒介される障害(例えば、乳児の下気道感染および小児喘息、例えば、高齢者の肺炎および他の合併症)の危険性があるか、もしくはこのような障害に罹患した患者を治療することを提供する。いくつかの実施形態では、RSV遺伝子の発現を低下させる。別の実施形態では、標的とされるHBV遺伝子は、遺伝子N、LまたはPの群のうちの1つをコードする。いくつかの実施形態では、RSV複製に必要とされるヒト遺伝子の発現を低下させる。
【0417】
本発明の方法は、単純ヘルペスウイルス(HSV)に感染した患者、またはHSVによって媒介される障害(例えば、陰部ヘルペスおよび単純疱疹ならびに主として免疫低下状態の患者における生命に関わる疾患もしくは視覚障害をもたらす疾患)の危険性があるか、もしくはこのような障害に罹患した患者を治療することを提供する。いくつかの実施形態では、HSV遺伝子の発現を低下させる。別の実施形態では、標的とされるHSV遺伝子は、DNAポリメラーゼまたはヘリカーゼ-プライマーゼをコードする。いくつかの実施形態では、HSV複製に必要とされるヒト遺伝子の発現を低下させる。
【0418】
本発明はまた、ヘルペスサイトメガロウイルス(CMV)に感染した患者、またはCMVによって媒介される障害(例えば、先天性ウイルス感染および免疫不全状態の患者にの病的状態)の危険性があるか、もしくはこのような障害に罹患した患者を治療する方法を提供する。いくつかの実施形態では、CMV遺伝子の発現を低下させる。いくつかの実施形態では、CMV複製に必要とされるヒト遺伝子の発現を低下させる。
【0419】
本発明の方法はまた、ヘルペスエプスタイン・バーウイルス(EBV)に感染した患者、またはEBVによって媒介される障害(例えば、NK/T-細胞リンパ腫、非ホジキンリンパ腫、およびホジキン病)の危険性があるか、もしくはこのような障害に罹患した患者を治療する方法を提供する。いくつかの実施形態では、EBV遺伝子の発現を低下させる。いくつかの実施形態では、EBV複製に必要とされるヒト遺伝子の発現を低下させる。
【0420】
本発明の方法はまた、カポジ肉腫関連ヘルペスウイルス(KSHV)(ヒトヘルペスウイルス8型とも呼ばれる)に感染した患者、またはKSHVによって媒介される障害(例えば、カポジ肉腫、多中心性キャッスルマン病、およびAIDS関連原発性滲出液リンパ腫)の危険性があるか、もしくはこのような障害に罹患した患者を治療することを提供する。いくつかの実施形態では、KSHV遺伝子の発現を低下させる。いくつかの実施形態では、KSHV複製に必要とされるヒト遺伝子の発現を低下させる。
【0421】
本発明はまた、JCウイルス(JCV)に感染した患者、またはこのウイルスに関連した疾患または障害(例えば、進行性多病巣性白質脳症(PML))を治療する方法を含む。いくつかの実施形態では、JCV遺伝子の発現を低下させる。ある実施形態では、JCV複製に必要とされるヒト遺伝子の発現を低下させる。
【0422】
本発明の方法はまた、ミクソウイルスに感染した患者、またはミクソウイルスによって媒介される障害(例えば、インフルエンザ)の危険性があるか、もしくはこのような障害に罹患した患者を治療することを提供する。いくつかの実施形態では、ミクソウイルス遺伝子の発現を低下させる。いくつかの実施形態では、ミクソウイルス複製に必要とされるヒト遺伝子の発現を低下させる。
【0423】
本発明の方法はまた、ライノウイルスに感染した患者、またはライノウイルスによって媒介される障害(例えば、風邪)の危険性があるか、もしくはこのような障害に罹患した患者を治療することを提供する。いくつかの実施形態では、ライノウイルス遺伝子の発現を低下させる。ある実施形態では、ライノウイルス複製に必要とされるヒト遺伝子の発現を低下させる。
【0424】
本発明の方法はまた、コロナウイルスに感染した患者、またはコロナウイルスによって媒介される障害(例えば、風邪)の危険性があるか、もしくはこのような障害に罹患した患者を治療することを提供する。いくつかの実施形態では、コロナウイルス遺伝子の発現を低下させる。ある実施形態では、コロナウイルス複製に必要とされるヒト遺伝子の発現を低下させる。
【0425】
本発明の方法はまた、フラビウイルスである西ナイルウイルスに感染した患者、または西ナイルウイルスによって媒介される障害の危険性があるか、もしくはこのような障害に罹患した患者を治療することを提供する。いくつかの実施形態では、西ナイルウイルス遺伝子の発現を低下させる。別の実施形態では、西ナイルウイルス遺伝子は、E、NS3、またはNS5を含む群のうちの1つである。いくつかの実施形態では、西ナイルウイルスの複製に必要とされるヒト遺伝子の発現が低減される。
【0426】
本発明の方法はまた、セントルイス脳炎フラビウイルスに感染した患者、またはこのウイルスに関連した障害もしくは疾患(例えば、ウイルス性出血熱または神経学的疾患)の危険性があるか、もしくはこのような障害もしくは疾患に罹患した患者を治療することを提供する。いくつかの実施形態では、セントルイス脳炎遺伝子の発現を低下させる。いくつかの実施形態では、セントルイス脳炎ウイルスの複製に必要とされるヒト遺伝子の発現を低下させる。
【0427】
本発明の方法はまた、ダニ媒介性脳炎フラビウイルスにより感染した患者、またはダニ媒介性脳炎ウイルスによって媒介される障害(例えば、ウイルス性出血熱および神経学的疾患)の危険性があるか、もしくはこのような障害に罹患した患者を治療することを提供する。いくつかの実施形態では、ダニ媒介性脳炎ウイルス遺伝子の発現を低下させる。いくつかの実施形態では、ダニ媒介性脳炎ウイルスの複製に必要とされるヒト遺伝子の発現を低下させる。
【0428】
本発明の方法はまた、ウイルス性出血熱および神経学的疾患を一般に引き起こすマレー渓谷脳炎フラビウイルスに感染した患者を治療する方法を提供する。いくつかの実施形態では、マレー渓谷脳炎ウイルス遺伝子の発現を低下させる。いくつかの実施形態では、マレー渓谷脳炎ウイルス複製に必要とされるヒト遺伝子の発現を低下させる。
【0429】
本発明はまた、デング熱フラビウイルスに感染した患者、またはこのウイルスに関連した疾患もしくは障害(例えば、デング出血熱)を治療する方法を含む。いくつかの実施形態では、デング熱ウイルス遺伝子の発現を低下させる。いくつかの実施形態では、デング熱ウイルスの複製に必要とされるヒト遺伝子の発現を低下させる。
【0430】
本発明の方法はまた、シミアンウイルス40(SV40)に感染した患者、またはSV40によって媒介される障害(例えば、腫瘍形成)の危険性があるか、もしくはこのような障害に罹患した患者を治療することを提供する。いくつかの実施形態では、SV40遺伝子の発現を低下させる。いくつかの実施形態では、SV40複製に必要とされるヒト遺伝子の発現を低下させる。
【0431】
本発明はまた、ヒトT細胞白血球ウイルス(HTLV)に感染した患者、またはこのウイルスに関連した疾患または障害(例えば、白血病およびミエロパシー)を治療する方法を含む。いくつかの実施形態では、HTLV遺伝子の発現を低下させる。別の実施形態では、HTVL1遺伝子は、Tax転写活性化因子である。いくつかの実施形態では、HTLV複製に必要とされるヒト遺伝子の発現を低下させる。
【0432】
本発明の方法はまた、モロニーマウス白血病ウイルス(Mo-MuLV)に感染した患者、またはMo-MuLVによって媒介される障害(例えば、T細胞白血病)の危険性があるか、もしくはこのような障害に罹患した患者を治療することを提供する。いくつかの実施形態では、Mo-MuLV遺伝子の発現を低下させる。いくつかの実施形態では、Mo-MuLV複製に必要とされるヒト遺伝子の発現を低下させる。
【0433】
本発明の方法はまた、脳心筋炎ウイルス(EMCV)に感染した患者、またはEMCVによって媒介される障害(例えば、心筋炎)の危険性があるか、もしくはこのような障害に罹患した患者を治療することを提供する。EMCVは、マウスおよびブタにおいて心筋炎を引き起こし、ヒト心筋細胞に感染することができる。したがって、このウイルスは、異種移植を受けた患者に関する心配事である。いくつかの実施形態では、EMCV遺伝子の発現を低下させる。いくつかの実施形態では、EMCV複製に必要とされるヒト遺伝子の発現を低下させる。
【0434】
本発明はまた、麻疹ウイルス(MV)に感染した患者、MVによって媒介される障害(例えば、麻疹)の危険性があるか、もしくはこのような障害に罹患した患者を治療する方法を含む。いくつかの実施形態では、MV遺伝子の発現を低下させる。いくつかの実施形態では、MV複製に必要とされるヒト遺伝子の発現を低下させる。
【0435】
本発明はまた、水痘帯状疱疹ウイルス(VZV)に感染した患者、またはVZVによって媒介される障害(例えば、水疱瘡または帯状ヘルペス(帯状疱疹とも呼ばれる))の危険性があるか、もしくはこのような障害に罹患した患者を治療する方法を含む。いくつかの実施形態では、VZV遺伝子の発現を低下させる。いくつかの実施形態では、VZV複製に必要とされるヒト遺伝子の発現を低下させる。
【0436】
本発明はまた、アデノウイルスに感染した患者、またはアデノウイルスによって媒介される障害(例えば、気道感染)の危険性があるか、もしくはこのような障害に罹患した患者を治療する方法を含む。いくつかの実施形態では、アデノウイルス遺伝子の発現を低下させる。いくつかの実施形態では、アデノウイルス複製に必要とされるヒト遺伝子の発現を低下させる。
【0437】
本発明はまた、黄熱病ウイルス(YFV)に感染した患者、またはYFVによって媒介される障害(例えば、気道感染)の危険性があるか、もしくはこのような障害に罹患した患者を治療する方法を含む。いくつかの実施形態では、YFV遺伝子の発現を低下させる。別の実施形態では、遺伝子は、E、NS2A、またはNS3遺伝子を含む群のうちの1つであってもよい。いくつかの実施形態では、YFV複製に必要とされるヒト遺伝子の発現を低下させる。
【0438】
本発明の方法はまた、ポリオウイルスに感染した患者、またはポリオウイルスによって媒介される障害(例えば、ポリオ)の危険性があるか、もしくはこのような障害に罹患した患者を治療することを提供する。いくつかの実施形態では、ポリオウイルス遺伝子の発現を低下させる。いくつかの実施形態では、ポリオウイルス複製に必要とされるヒト遺伝子の発現を低下させる。
【0439】
本発明の方法はまた、ポックスウイルスに感染した患者、またはポックスウイルスによって媒介される障害(例えば、天然痘)の危険性があるか、もしくはこのような障害に罹患した患者を治療することを提供する。いくつかの実施形態では、ポックスウイルス遺伝子の発現を低下させる。いくつかの実施形態では、ポックスウイルス複製に必要とされるヒト遺伝子の発現を低下させる。
【0440】
他の病原体
別の態様では、本発明は、病原体(例えば、細菌性、アメーバ性、寄生性、または真菌性の病原体)に感染した対象を治療する方法を特色とする。本方法は、本発明のiRNA剤を、それを必要とする対象に投与し、それによって、対象を治療する工程を含む。投与されるiRNA剤は、治療される病原体の種類によって決まる。いくつかの実施形態では、核酸は、病原体遺伝子を標的とし得る。他の実施形態では、核酸は、宿主遺伝子を標的とし得る。
【0441】
標的遺伝子は、増殖、細胞壁合成、タンパク質合成、転写、エネルギー代謝(例えば、クレブス回路)、または毒素産生に関与するものであることができる。
【0442】
したがって、本発明は、マラリアを引き起こすマラリア原虫に感染した患者を治療する方法を提供する。いくつかの実施形態では、マラリア原虫遺伝子の発現を低下させる。別の実施形態では、遺伝子は、頂端膜抗原1(AMA1)である。いくつかの実施形態では、マラリア原虫の複製に必要とされるヒト遺伝子の発現を低下させる。
【0443】
本発明はまた、マイコバクテリウム・ウルセランス(Mycobacterium ulcerans)に感染した患者、またはこの病原体に関連した疾患もしくは障害(例えば、ブルーリ潰瘍)を治療する方法を含む。いくつかの実施形態では、マイコバクテリウム・ウルセランス遺伝子の発現を低下させる。いくつかの実施形態では、マイコバクテリウム・ウルセランスの複製に必要とされるヒト遺伝子の発現を低下させる。
【0444】
本発明はまた、ヒト結核菌(Mycobacterium tuberculosis)に感染した患者、またはこの病原体に関連した疾患もしくは障害(例えば、結核)を治療する方法を含む。いくつかの実施形態では、ヒト結核菌遺伝子の発現を低下させる。いくつかの実施形態では、ヒト結核菌の複製に必要とされるヒト遺伝子の発現を低下させる。
【0445】
本発明はまた、癩菌(Mycobacterium leprae)に感染した患者、またはこの病原体に関連した疾患もしくは障害(例えば、癩病)を治療する方法を含む。いくつかの実施形態では、癩菌遺伝子の発現を低下させる。いくつかの実施形態では、癩菌の複製に必要とされるヒト遺伝子の発現を低下させる。
【0446】
本発明はまた、細菌である黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)に感染した患者、またはこの病原体に関連した疾患もしくは障害(例えば、皮膚および粘膜の感染)を治療する方法を含む。いくつかの実施形態では、黄色ブドウ球菌遺伝子の発現を低下させる。いくつかの実施形態では、黄色ブドウ球菌の複製に必要とされるヒト遺伝子の発現を低下させる。
【0447】
本発明はまた、細菌である肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)に感染した患者、またはこの病原体に関連した疾患もしくは障害(例えば、肺炎または小児期下気道感染)を治療する方法を含む。いくつかの実施形態では、肺炎連鎖球菌遺伝子の発現を低下させる。いくつかの実施形態では、肺炎連鎖球菌の複製に必要とされるヒト遺伝子の発現を低下させる。
【0448】
本発明はまた、細菌である化膿連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)に感染した患者、またはこの病原体に関連した疾患もしくは障害(例えば、連鎖球菌性咽頭炎または猩紅熱)を治療する方法を含む。いくつかの実施形態では、化膿連鎖球菌遺伝子の発現を低下させる。いくつかの実施形態では、化膿連鎖球菌の複製に必要とされるヒト遺伝子の発現を低下させる。
【0449】
本発明はまた、細菌である肺炎クラミジア(Chlamydia pneumoniae)に感染した患者、またはこの病原体に関連した疾患もしくは障害(例えば、肺炎または小児期下気道感染)を治療する方法を含む。いくつかの実施形態では、肺炎クラミジア遺伝子の発現を低下させる。いくつかの実施形態では、肺炎クラミジアの複製に必要とされるヒト遺伝子の発現を低下させる。
【0450】
本発明はまた、細菌である肺炎マイコプラズマ(Mycoplasma pneumoniae)に感染した患者、またはこの病原体に関連した疾患もしくは障害(例えば、肺炎または小児期下気道感染)を治療する方法を含む。いくつかの実施形態では、肺炎マイコプラズマ遺伝子の発現を低下させる。いくつかの実施形態では、肺炎マイコプラズマの複製に必要とされるヒト遺伝子の発現を低下させる。
【0451】
免疫障害
一態様では、本発明は、望ましくない免疫応答を特徴とする疾患もしくは障害(例えば、炎症性の疾患もしくは障害、もしくは自己免疫性の疾患もしくは障害)の危険性があるか、またはこのような疾患もしくは障害に罹患した対象(例えば、ヒト)を治療する方法を特色とする。本方法は、本発明のiRNA剤を、それを必要とする対象に投与し、それによって、対象を治療する工程を含む。投与されるiRNA剤は、治療される免疫障害の種類によって決まる。
【0452】
いくつかの実施形態では、疾患または障害は、虚血または再灌流傷害、例えば、急性心筋梗塞、不安定狭心症、心肺バイパス、外科的介入(例えば、血管形成術(例えば、経皮的経管的冠状動脈形成術))、移植された臓器もしくは組織(例えば、移植された心臓組織または血管組織)に対する応答、または血栓溶解に伴う虚血または再灌流傷害である。
【0453】
いくつかの実施形態では、疾患または障害は、再狭窄、例えば、外科的介入(例えば、血管形成術(例えば、経皮的経管的冠状動脈形成術))に伴う再狭窄である。
【0454】
ある実施形態では、疾患または障害は、炎症性腸疾患、例えば、クローン病または潰瘍性大腸炎である。
【0455】
ある実施形態では、疾患または障害は、感染または傷害に伴う炎症である。
【0456】
ある実施形態では、疾患または障害は、喘息、狼瘡、多発性硬化症、糖尿病(例えば、2型糖尿病)、関節炎(例えば、関節リウマチまたは乾癬性関節炎)である。
【0457】
ある他の実施形態では、iRNA剤は、インテグリンまたはその共リガンド、例えば、VLA4、VCAM、ICAMをサイレンシングする。
【0458】
ある他の実施形態では、iRNA剤は、セレクチンまたはその共リガンド、例えば、P-セレクチン、E-セレクチン(ELAM)、I-セレクチン、P-セレクチン糖タンパク質-1(PSGL-1)をサイレンシングする。
【0459】
ある他の実施形態では、iRNA剤は、補体系の構成成分、例えば、C3、C5、C3aR、C5aR、C3コンバターゼ、C5コンバターゼをサイレンシングする。
【0460】
ある他の実施形態では、iRNA剤は、ケモカインまたはその受容体、例えば、TNFI、TNFJ、IL-1I、IL-1J、IL-2、IL-2R、IL-4、IL-4R、IL-5、IL-6、IL-8、TNFRI、TNFRII、IgE、SCYA11、CCR3をサイレンシングする。
【0461】
他の実施形態では、iRNA剤は、GCSF、Gro1、Gro2、Gro3、PF4、MIG、プロ血小板塩基性タンパク質(PPBP)、MIP-1I、MIP-1J、RANTES、MCP-1、MCP-2、MCP-3、CMBKR1、CMBKR2、CMBKR3、CMBKR5、AIF-1、I-309をサイレンシングする。
【0462】
疼痛
一態様では、本発明は、急性疼痛もしくは慢性疼痛の危険性があるか、または急性疼痛または慢性疼痛に罹患した対象(例えば、ヒト)を治療する方法を特色とする。本方法は、本発明のiRNA剤を、それを必要とする対象に投与し、それによって、対象を治療する工程を含む。投与されるiRNA剤は、治療される疼痛の種類によって決まる。
【0463】
ある他の実施形態では、iRNA剤は、イオンチャネルの構成成分をサイレンシングする。
【0464】
ある他の実施形態では、iRNA剤は、神経伝達物質の受容体またはリガンドをサイレンシングする。
【0465】
一態様では、本発明は、神経学的な疾患もしくは障害の危険性があるか、または神経学的な疾患もしくは障害に罹患した対象(例えば、ヒト)を治療する方法を特色とする。本方法は、iRNAが神経学的な疾患または障害を媒介する遺伝子に相同であり、かつこの遺伝子を、例えば、切断によってサイレンシングすることができるiRNA剤を提供する工程と、それを対象に投与し、それによって対象を治療する工程とを含む。
【0466】
神経学的障害
ある実施形態では、疾患または障害は、アルツハイマー病またはパーキンソン病を含む、神経学的障害である。本方法は、本発明のiRNA剤を、それを必要とする対象に投与し、それによって、対象を治療する工程を含む。投与されるiRNA剤は、治療される神経学的障害の種類によって決まる。
【0467】
ある他の実施形態では、iRNA剤は、アミロイドファミリー遺伝子(例えば、APP)、プレセニリン遺伝子(例えば、PSEN1およびPSEN2)、またはI-シヌクレインをサイレンシングする。
【0468】
いくつかの実施形態では、疾患または障害は、神経変性トリヌクレオチドリピート障害(例えば、ハンチントン病、歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症、または脊髄小脳失調(例えば、SCA1、SCA2、SCA3(マシャド・ジョセフ病)、SCA7、もしくはSCA8))である。
【0469】
ある他の実施形態では、iRNA剤は、HD、DRPLA、SCA1、SCA2、MJD1、CACNL1A4、SCA7、SCA8をサイレンシングする。
【0470】
ヘテロ接合性の喪失
ヘテロ接合性の喪失(LOH)は、LOH領域における配列(例えば、遺伝子)にヘミ接合性をもたらし得る。これは、正常細胞と疾患状態の細胞(例えば、癌細胞)との間に重大な遺伝的差異をもたらすことができ、正常細胞と疾患状態の細胞(例えば、癌細胞)との間の有用な差異を提供する。この差異は、遺伝子または他の配列が正倍数体細胞ではヘテロ接合体であるが、LOHを有する細胞ではヘミ接合体であるために生じ得る。LOHの領域は、多くの場合、喪失すると望ましくない増殖を促進する遺伝子、例えば、腫瘍抑制遺伝子、および例えば、他の遺伝子(場合によっては、正常に機能(例えば、増殖)するのに必須の遺伝子)を含む他の配列を含む。本発明の方法は、一部には、必須遺伝子の1つの対立遺伝子を本発明のiRNA剤で特異的に切断またはサイレンシングすることによる。iRNA剤は、LOHを有する細胞に見出される必須遺伝子の単一の対立遺伝子を標的にするが、LOHを示さない細胞に存在する他の対立遺伝子はサイレンシングしないように選択される。実質的に、iRNA剤は2つの対立遺伝子を区別し、選択された対立遺伝子を優先的にサイレンシングする。実質的には、多型(例えば、LOHによって影響を受ける必須遺伝子のSNP)は、LOHを有する細胞(例えば、LOHを有する癌細胞)を特徴とする障害の標的として使用される。
【0471】
当業者は、腫瘍抑制遺伝子に近接し、かつ腫瘍抑制遺伝子を含むLOH領域内にある必須遺伝子を同定することができる。腫瘍抑制遺伝子p53に近接して位置する遺伝子である、ヒトRNAポリメラーゼII(POLR2A)の大サブユニットをコードする遺伝子は、このような遺伝子である。このような遺伝子は、癌細胞でLOHの領域内に存在することが多い。LOH領域内に存在し、かつ多くの癌細胞種では失われている他の遺伝子としては、複製タンパク質A70kDaサブユニット、複製タンパク質A32-kDa、リボヌクレオチドレダクターゼ、チミジル酸合成酵素、TATA関連因子2H、リボソームタンパク質S14、真核生物の開始因子5A、アラニルtRNAシンセターゼ、システイニルtRNAシンセターゼ、NaK ATPアーゼ、α-1サブユニットおよびトランスフェリン受容体を含む群が挙げられる。
【0472】
したがって、本発明は、LOHを特徴とする障害(例えば、癌)を治療する方法を特色とする。本方法は、任意で、LOH領域の遺伝子の対立遺伝子の遺伝子型を決定する工程、正常細胞におけるこの遺伝子の両対立遺伝子の遺伝子型を決定する工程、LOH細胞に見出される対立遺伝子を優先的に切断またはサイレンシングするiRNA剤を提供する工程、および対象にiRNAを投与し、それによって、障害を治療する工程を含む。
【0473】
本発明はまた、本明細書に開示されるiRNA剤、例えば、多型遺伝子の1つの対立遺伝子を優先的にサイレンシング(例えば、切断)することができるiRNA剤を含む。
【0474】
別の態様では、本発明は、2つ以上の遺伝子をiRNA剤で切断またはサイレンシングする方法を提供する。これらの実施形態では、iRNA剤は、2つ以上の遺伝子に見出される配列に十分な相同性を有するように選択される。例えば、配列AAGCTGGCCCTGGACATGGAGATは、マウスのラミンB1、ラミンB2、ケラチン複合体2-遺伝子1、およびラミンA/C間で保存されている。したがって、この配列を標的とするiRNA剤は、これらの遺伝子集団全体を効率的にサイレンシングするであろう。
【0475】
本発明はまた、2つ以上の遺伝子をサイレンシングすることができる、本明細書に開示されるiRNA剤を含む。
【0476】
送達経路
説明しやすくするために、本項の製剤、組成物、および方法を、主として未修飾のiRNA剤に関して論じる。しかしながら、これらの製剤、組成物、および方法は、他のiRNA剤、例えば、修飾iRNA剤に関して実施することができ、かつこのような実施は本発明の範囲内にあることが理解され得る。iRNAを含む組成物は種々の経路で対象に送達され得る。例示的な経路としては、静脈内経路、局所経路、経直腸経路、経肛門経路、経膣経路、経鼻経路、経肺経路、および経眼経路が挙げられる。
【0477】
本発明のiRNA分子は、投与に好適な薬学的組成物中に組み込むことができる。このような組成物は、典型的には、1つ以上のiRNAと薬学的に許容される担体とを包む。本明細書で使用される場合、「薬学的に許容される担体」という用語は、医薬品の投与と適合する任意かつ全ての溶媒、分散媒、コーティング剤、抗菌剤および抗真菌剤、等張な吸収遅延剤などを包むことを意図する。薬学的活性のある物質としてこのような媒体および薬剤を使用することは、当技術分野で周知である。従来の媒体および薬剤がいずれも活性化合物と適合しない場合を除き、組成物に従来の媒体および薬剤を使用することが企図される。また、補助的な活性化合物を組成物に組み込むこともできる
【0478】
本発明の薬学的組成物は、局所治療または全身治療のどちらが所望されるかによって、かつ治療されるべき領域によって、多くの方法で投与され得る。投与は、局所(経眼、経膣、経直腸、経鼻、経皮を含む)、経口、または非経口であってよい。非経口投与としては、静脈内点滴、皮下注射、腹腔内注射、もしくは筋肉内注射、または髄腔内投与もしくは脳室内投与が挙げられる。
【0479】
投与の経路および部位は標的化を増大させるように選択してもよい。例えば、筋細胞を標的とする場合、対象となる筋肉に筋肉内注射することは、論理的な選択であろう。肺細胞は、エアロゾル形態のiRNAを投与することによって標的とし得る。血管内皮細胞は、バルーン・カテーテルをiRNAでコーティングすること、および機械的にDNAを導入することによって標的とすることができる。
【0480】
局所投与用の製剤としては、経皮パッチ、軟膏、ローション、クリーム、ジェル、点滴剤、坐剤、噴霧剤、液剤、および粉末剤を挙げることができる。従来の薬学的担体、水溶性基剤、粉末基剤、または油状基剤、増粘剤などが、必要または望ましいものであり得る。コーティングされたコンドーム、グローブなどもまた有用であり得る。
【0481】
経口投与用の組成物としては、粉末剤または顆粒剤、水中懸濁液または水中溶液、シロップ、エリキシルもしくは非水溶性媒体、錠剤、カプセル、薬用キャンディ、またはトローチが挙げられる。錠剤の場合、使用可能な担体としては、ラクトース、クエン酸ナトリム、およびリン酸塩が挙げられる。さまざまな崩壊剤(例えば、デンプン)ならびに潤滑剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム、ラウリル硫酸ナトリウム、およびタルク)が、一般に錠剤に使用される。カプセル形態での経口投与については、有用な希釈剤は、ラクトースおよび高分子量ポリエチレングリコールである。水溶性懸濁液が経口使用に必要とされる場合、核酸組成物を乳化剤および懸濁剤と組み合わせることができる。所望される場合、ある種の甘味剤および/または香味剤を添加することができる。
【0482】
髄腔内投与または脳室内投与のための組成物は、緩衝剤、希釈剤、および他の好適な添加剤も含有し得る滅菌水溶液を含み得る。
【0483】
非経口投与のための製剤は、緩衝剤、希釈剤、および他の好適な添加剤も含有し得る滅菌水溶液を含み得る。脳室内注射は、例えば、リザーバに取り付けられた脳室内カテーテルによって容易にされ得る。静脈内使用のために、溶質の総濃度を、調製物が等張となるように制御し得る。
【0484】
経眼投与については、軟膏または滴下可能な液剤を、アプリケータまたは目薬用容器などの当業者に公知の眼球送達系によって送達してもよい。このような組成物は、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、またはポリ(ビニルアルコール)などのムコミメティックス(mucomimetics)、ソルビン酸、EDTA、または塩化ベンジルクロニウムなどの防腐剤、ならびに通常の分量の希釈剤および/または担体を含むことができる。
【0485】
局所送達
説明しやすくするために、本項の製剤、組成物、および方法を、主として未修飾のiRNA剤に関して論じる。しかしながら、これらの製剤、組成物および方法は、他のiRNA剤、例えば、修飾iRNA剤に関して実施可能であり、かつこのような実施は本発明の範囲内にあることが理解され得る。いくつかの実施形態では、iRNA剤、例えば、二本鎖iRNA剤、またはsiRNA剤(例えば、前駆体、例えば、siRNA剤へプロセシングされ得るより大きなiRNA剤、またはiRNA剤、例えば、二本鎖iRNA剤、もしくはsiRNA剤、もしくはそれらの前駆体をコードするDNA)は、局所投与を介して対象に送達される。「局所投与」とは、対象の表面に直接製剤を接触させることによって、対象に送達することを指す。局所送達の最も一般的な形態は皮膚に対するものであるが、本明細書に開示される組成物は、体の他の表面(例えば、目、粘膜、体腔の表面、または内部の表面)に対して、直接適用することもできる。
【0486】
上述のように、最も一般的な局所送達は皮膚に対するものである。この用語は、局所および経皮を含むいくつかの投与経路を包含するが、これらに限定されない。これらの投与の様式は、典型的には、皮膚の透過障壁への浸透および標的組織または標的層への効率的な送達を含む。局所投与は、組成物が表皮および真皮に浸透し、最終的に全身への送達を達成する手段として使用することができる。局所投与は、対象の表皮もしくは真皮に、またはその特定の層に、または下層の組織に、オリゴヌクレオチドを選択的に送達する手段として使用することもできる。
【0487】
本明細書で使用される場合、「皮膚」という用語は、動物の表皮および/または真皮を指す。哺乳類の皮膚は、2つの主な別個の層からなる。皮膚の外側の層は、表皮と呼ばれる。表皮は、角質層、顆粒層、有棘層、および基底層から構成され、角質層は皮膚の表面にあり、基底層は表皮の最も深い部分にある。表皮は、体の場所に応じて50μm~0.2mmの厚さである。
【0488】
表皮の下に真皮があり、真皮は表皮よりも著しく厚い。真皮は、主として繊維束形態のコラーゲンから構成されている。このコラーゲン束は、とりわけ、血管、毛細リンパ管、腺、神経終末、および免疫学的に活性のある細胞に対する支えを提供する。
【0489】
器官としての皮膚の主な機能の1つは、体内への物質の侵入を調節することである。皮膚の主たる透過障壁は、さまざまな分化状態の細胞の多くの層から形成される角質層によって提供される。角質層での細胞間の隙間は、皮膚透過障壁をさらに増強するための密閉を提供する、格子状に配置されたさまざまな脂質で満たされている。
【0490】
皮膚によって提供される透過障壁は、約750Daよりも大きい分子量を有する分子に対しては主として非透過性である。大きい分子が皮膚の透過障壁を通過するためには、通常の浸透以外の機構が使用されなければならない。
【0491】
いくつかの要因が、投与される薬剤に対する皮膚の透過性を決定付ける。これらの要因としては、治療を受けた皮膚の特性、送達剤の特性、薬物と送達剤および薬物と皮膚の両方の間の相互作用、適用された薬物の投薬量、治療の形態、治療後の投与計画が挙げられる。選択的に表皮および真皮を標的とするために、薬物があらかじめ選択された層へと浸透することを可能にする、1つ以上の浸透促進剤を含む組成物を処方することが可能なこともある。
【0492】
経皮送達は、脂溶性治療薬の投与に有用な経路である。真皮は、表皮よりも透過性が高く、それゆえに、擦過した皮膚、火傷した皮膚、または剥離した皮膚からの吸収は遥かにより速やかになる。皮膚への血流を増大させる炎症および他の生理条件も、経皮吸収を増強する。この経路からの吸収は、油状ビヒクル(塗油)の使用によって、または1つ以上の浸透促進剤の使用によって増強し得る。経皮経路を介して本明細書に開示される組成物を送達する他の効率的な方法としては、皮膚の水分補給および制御放出型の局所パッチの使用が挙げられる。経皮経路は、全身治療および/または局所治療のための、本明細書中に開示される組成物を送達する潜在的に効率的な手段を提供する。
【0493】
さらに、イオントフォレーシス(電場の影響下で生体膜を通してイオン性溶質を移動させること)(Leeら,Critical Reviews in Therapeutic Drug Carrier Systems,1991,p.163)、フォノフォレーシス、またはソノフォレーシス(さまざまな治療剤が、生体膜、特に、皮膚および角膜を越えて吸収されるのを増強するために超音波を使用すること)(Leeら,Critical Reviews in Therapeutic Drug Carrier Systems,1991,p.166)、ならびに投薬位置および投与部位での保持に対してビヒクル特性を最適化すること(Leeら,Critical Reviews in Therapeutic Drug Carrier Systems,1991,p.168)は、局所投与される組成物が皮膚および粘膜部位を越えて輸送されるのを増強するための有用な方法であり得る。
【0494】
提供された組成物および方法は、さまざまなタンパク質および遺伝子の機能を、培養または保存された真皮組織においてインビトロで、および動物において調べるために使用し得る。したがって、本発明は、任意の遺伝子の機能を調べるために適用することができる。本発明の方法は、治療的にまたは予防的に使用することもできる。例えば、乾癬、扁平苔癬、中毒性表皮壊死症、多形性紅斑、基底細胞癌、扁平上皮細胞癌、悪性黒色腫、パジェット病、カポジ肉腫、肺線維症、ライム病、ならびにウイルス、真菌、および細菌の皮膚感染などの疾患に罹患していることが分かっている動物またはこのような疾患への罹患が疑われる動物の治療のために。
【0495】
肺送達
説明しやすくするために、本項の製剤、組成物、および方法を、主として未修飾のiRNA剤に関して論じる。しかしながら、これらの製剤、組成物および方法は、他のiRNA剤、例えば、修飾iRNA剤に関して実施することができ、かつこのような実施は本発明の範囲内にあることが理解され得る。iRNA剤、例えば、二本鎖iRNA剤、またはsiRNA剤(例えば、前駆体、例えば、siRNA剤へプロセシングされ得るより大きなiRNA剤、またはiRNA剤、例えば、二本鎖iRNA剤、もしくはsiRNA剤、もしくはそれらの前駆体をコードするDNA)を含む組成物は、肺送達によって対象に投与することができる。肺送達組成物は、患者が分散剤を吸入することによって、分散剤中の組成物(例えば、iRNA)が肺に到達し、肺で肺胞領域を通して直接血液循環に容易に吸収され得るように、送達することができる。肺送達は、肺の疾患を治療するために、全身送達と局所送達の両方に効果的であり得る。
【0496】
肺送達は、噴霧製剤、エアロゾル製剤、ミセル製剤、および乾燥粉末ベースの製剤の使用を含む、さまざまな手法で達成することができる。送達は、液体ネブライザー、エアロゾルベースの吸入器、および乾燥粉末分散装置を用いて達成することができる。定量式の装置を使用してもよい。噴霧器または吸入器を使用する利点の1つは、これらの装置が内蔵型であるために汚染の可能性が最小限となることである。乾燥粉末分散装置は、例えば、容易に乾燥粉末として製剤化され得る薬物を送達する。iRNA組成物は、凍結乾燥粉末または噴霧乾燥粉末として、単独でまたは好適な粉末担体と組み合わせて安定に保存し得る。吸入用の組成物の送達は、装置内に組み込まれた場合に、エアロゾル医薬品の投与中の、服用量の追跡、服用順守の監視、および/または患者に対する服用の喚起を可能にする、タイマー、用量計測器、時間測定器、または時間表示器などの服用時間計測要素によって仲介されてもよい。
【0497】
「粉末」という用語は、自由に流動し、かつ吸入装置内で容易に分散することができるとともに、後に対象によって吸入されて肺に到達し、肺胞内に浸透することが可能となる微細分散固体粒子からなる組成物を意味する。したがって、この粉末は、「呼吸用に適して」いると言える。例えば、平均粒子サイズは、直径約10μm未満で、比較的均一な球状の形に分布している。いくつかの実施形態では、直径約7.5μm未満であり、いくつかの実施形態では、約5.0μm未満である。通常、粒子サイズ分布は、直径約0.1μm~約5μmであり、約0.3μm~約5μmである場合もある。
【0498】
「乾燥」という用語は、組成物が、約10重量%(%w)未満の水分含有量、通常は、約5%w未満、場合によっては、約3%w未満の水分含有量を有することを意味する。乾燥組成物は、エアロゾルを形成するように、粒子が吸入装置内で容易に分散可能なものであり得る。
【0499】
「治療的有効量」という用語は、期待される生理学的応答を得るために治療すべき対象に所望のレベルの薬物を提供するのに必要とされる、組成物中に存在する量である。
【0500】
「生理学的に有効な量」という用語は、所望の症状緩和効果または治療効果を得るために対象に送達される量である。
【0501】
「薬学的に許容される担体」という用語は、肺に対する重大で有害な毒物学的効果を伴わずに、担体を肺に摂取させることを意味する。
【0502】
担体として有用な薬学的賦形剤の種類としては、安定剤(例えば、ヒト血清アルブミン(HSA))、充填剤(例えば、糖質、アミノ酸、およびポリペプチド)、pH調整剤またはpH緩衝剤、塩(例えば、塩化ナトリウム)が挙げられる。これらの担体は、結晶形態でも非晶質形態でもよく、またはこの2つの形態の混合物であってもよい。
【0503】
特に有用な充填剤としては、適合性の糖質、ポリペプチド、アミノ酸、またはそれらの組み合わせが挙げられる。好適な糖質としては、単糖(例えば、ガラクトース、D-マンノース、ソルボース)、二糖(例えば、ラクトース、トレハロース)、シクロデキストリン(例えば、2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン)、および多糖(例えば、ラフィノース、マルトデキストリン、デキストラン)、アルジトール(例えば、マンニトール、キシリトール)などが挙げられる。糖質の群としては、ラクトース、トレハロース、ラフィノース、マルトデキストリン、およびマンニトールが挙げられる。好適なポリペプチドとしては、アスパルテームが挙げられる。アミノ酸としては、アラニンおよびグリシンが挙げられ、いくつかの実施形態では、グリシンが使用される。
【0504】
本発明の組成物の微量成分である添加剤は、噴霧乾燥中の立体構造の安定性および粉末の分散性の向上のために含めてもよい。これらの添加剤としては、トリプトファン、チロシン、ロイシン、およびフェニルアラニンなどの疎水性アミノ酸が挙げられる。
【0505】
好適なpH調整剤またはpH緩衝剤としては、クエン酸ナトリウム、アスコルビン酸ナトリウムなどの、有機酸および有機塩基から調製される有機塩が挙げられ、いくつかの実施形態では、クエン酸ナトリウムが使用される。
【0506】
ミセルiRNA製剤の経肺投与は、テトラフルオロエタン、ヘプタフルオロエタン、ジメチルフルオロプロパン、テトラフルオロプロパン、ブタン、イソブタン、ジメチルエーテル、ならびに他の非CFC噴射剤およびCFC噴射剤などの噴射剤を用いて、定量噴霧装置で達成し得る。
【0507】
経口または経鼻送達
説明しやすくするために、本項の製剤、組成物、および方法を、主として未修飾のiRNA剤に関して論じる。しかしながら、これらの製剤、組成物、および方法は、他のiRNA剤、例えば、修飾iRNA剤に関して実施することができ、かつこのような実施は本発明の範囲内にあることが理解され得る。口腔および鼻腔の膜は両方とも、他の投与経路に優る利点を与える。例えば、これらの膜を通して投与された薬物は、速やかに作用を開始し、治療的血漿レベルを提供し、肝代謝の初回通過効果を回避し、厳しい胃腸(GI)環境への薬物の曝露を回避する。さらなる利点としては、これらの膜部位に容易に接近することができるので、薬物を簡単に適用し、局在させ、かつ除去することができることが挙げられる。
【0508】
経口送達では、組成物を、口腔の表面に、例えば、舌下粘膜(舌の腹側表面の膜および口腔底部を含む)または頬の内膜を構成する頬粘膜に対して標的とすることができる。舌下粘膜は比較的透過性が高いため、多くの薬物の速やかな吸収と許容可能な生体利用性を与える。さらに、舌下粘膜は、便利で、許容可能で、かつ容易に接近可能である。
【0509】
分子が口腔粘膜を通して透過する能力は、分子サイズ、脂溶性、およびペプチドタンパク質のイオン化に関連すると思われる。1,000ダルトン未満の小さい分子は、速やかに粘膜を横断すると思われる。分子サイズが増加するのにつれて、透過性は急速に減少する。脂溶性の化合物は、脂溶性でない分子よりも透過性が高い。分子がイオン化されていない、または電荷において中性である場合に、最大吸収が生じる。したがって、荷電分子は、口腔粘膜からの吸収にとって最も大きな課題となる。
【0510】
また、iRNAの薬学的組成物は、上記のような混合ミセルの薬学的製剤および噴射剤を、吸入ではなく、定量噴霧ディスペンサーからヒトの口腔内に噴霧することによって、口腔に投与し得る。一実施形態では、薬学的製剤および噴射剤を口腔内に噴霧する前に、ディスペンサーをまず振盪する。
【0511】
装置
説明しやすくするために、本項の装置、製剤、組成物、および方法は、主として未修飾のiRNA剤に関して論じる。しかしながら、これらの装置、製剤、組成物、および方法は、他のiRNA剤、例えば、修飾iRNA剤に関して実施可能であり、かつこのような実施は本発明の範囲内にあることが理解され得る。iRNA剤、例えば、二本鎖iRNA剤、またはsiRNA剤(例えば、前駆体、例えば、siRNA剤へプロセシングされ得るより大きなiRNA剤、またはiRNA剤、例えば、二本鎖iRNA剤、もしくはsiRNA剤、もしくはそれらの前駆体をコードするDNA)は、例えば、対象に植え込むかまたは別の方法で対象に設置される装置などの装置上または装置内に配置することができる。例示的な装置としては、血管系に導入される装置(例えば、血管組織の内腔に挿入される装置)、またはステント、カテーテル、心臓弁、および他の血管用装置を含む、装置自体が血管の一部を形成する装置が挙げられる。これらの装置(例えば、カテーテルまたはステント)は、肺、心臓、または足の血管に配置することができる。
【0512】
他の装置としては、血管用装置以外の装置、例えば、腹膜、または臓器もしくは腺組織に植え込まれる装置(例えば、人工臓器)が挙げられる。この装置は、iRNAに加えて治療物質を放出することができ、例えば、装置は、インスリンを放出することができる。
【0513】
他の装置としては、人工関節(例えば、股関節)および他の整形外科用移植片が挙げられる。
【0514】
一実施形態では、iRNAを含む組成物の単位用量または一定用量は、移植装置によって分配される。この装置は、対象内のパラメータをモニターするセンサーを含むことができる。例えば、この装置は、ポンプおよび任意で関連電子機器を含んでもよい。
【0515】
組織(例えば、細胞または器官)は、iRNA剤、例えば、二本鎖iRNA剤、またはsiRNA剤(例えば、前駆体、例えば、siRNA剤へプロセシングされ得るより大きなiRNA剤、またはiRNA剤、例えば、二本鎖iRNA剤、もしくはsiRNA剤、もしくはそれらの前駆体をコードするDNA)を用いてエクスビボで処理し、その後、対象に投与または植え込むことができる。
【0516】
組織は、自己、同種、または異種の組織であり得る。例えば、組織は、移植片対宿主病を低下させるように処理することができる。他の実施形態では、組織は同種組織であり、その組織における望ましくない遺伝子発現を特徴とする障害を治療するために処理される。例えば、組織、例えば、造血細胞(例えば、骨髄造血細胞)は、望ましくない細胞増殖を阻害するように処理することができる。
【0517】
自己組織であれ移植組織であれ、処理された組織の導入は、他の治療と組み合わせることができる。
【0518】
いくつかの実施では、iRNAで処理された細胞は、例えば、この細胞が移植片から離れるのを阻止するが、体内の分子がこの細胞に到達するのを可能にし、かつこの細胞によって産生された分子が体内に侵入するのを可能にする半透過性多孔質障壁により、他の細胞から隔離される。一実施形態では、多孔質障壁は、アルギン酸から形成される。
【0519】
一実施形態では、避妊用具が、iRNA剤、例えば、二本鎖iRNA剤、またはsiRNA剤(例えば、前駆体、例えば、siRNA剤へプロセシングされ得るより大きなiRNA剤、またはiRNA剤、例えば、二本鎖iRNA剤、もしくはsiRNA剤、もしくはそれらの前駆体をコードするDNA)でコーティングされるか、またはこれらを含有する。例示的な用具としては、コンドーム、ペッサリー、IUD(移植可能な子宮内用具)、スポンジ、膣コンドーム、および産児制限用具が挙げられる。一実施形態では、iRNAは、精子または卵を不活性化するように選択される。別の実施形態では、iRNAは、ウイルスまたは病原体のRNA(例えば、STD)のRNAに相補的であるように選択される。いくつかの例では、iRNA組成物は、殺精子剤を含むことができる。
【0520】
投薬量
一態様では、本発明は、対象(例えばヒト対象)に、iRNA剤、例えば、二本鎖iRNA剤、またはsiRNA剤を投与する方法を特色とする。本方法は、単位用量のiRNA剤、例えば、siRNA剤、例えば、二本鎖siRNA剤であって、(a)二本鎖部分が19~25ヌクレオチド(nt)長、例えば、21~23ntであり、(b)標的RNA(例えば、内在性標的RNAまたは病原体標的RNA)に相補的であり、かつ任意で(c)少なくとも1つの1~5ヌクレオチド長の3’突出を含むものを投与することを含む。一実施形態では、単位用量は、体重1kg当たり1.4mg未満、または体重1kg当たり10、5、2、1、0.5、0.1、0.05、0.01、0.005、0.001、0.0005、0.0001、0.00005、もしくは0.00001mg未満、および体重1kg当たり200nmol未満のRNA剤(例えば約4.4×1016コピー)、または体重1kg当たり1,500、750、300、150、75、15、7.5、1.5、0.75、0.15、0.075、0.015、0.0075、0.0015、0.00075、0.00015nmol未満のRNA剤である。
【0521】
規定量は、疾患または障害、例えば、標的RNAに関連する疾患または障害を、治療または予防するのに有効な量であり得る。単位用量は、例えば、注射(例えば、静脈内または筋肉内)、吸入投与、または局所適用によって投与することができる。いくつかの実施形態では、投薬量は、体重1kgあたり2、1、または0.1mg未満であってもよい。
【0522】
いくつかの実施形態では、単位用量は、1日に1回未満の頻度、例えば、2,4,8または30日毎よりも低い頻度で投与される。別の実施形態では、単位用量は、頻繁には投与されない(例えば、規則正しい頻度では投与されない)。例えば、単位用量は、単回で投与されてもよい。
【0523】
一実施形態では、有効用量が他の従来の治療モダリティで投与される。一実施形態では、対象はウイルス感染症であり、モダリティは、iRNA剤(例えば、二本鎖iRNA剤またはsiRNA剤)以外の抗ウイルス剤である。別の実施形態では、対象はアテローム性動脈硬化症であり、有効用量のiRNA剤(例えば、二本鎖iRNA剤またはsiRNA剤)が、組み合わせて、例えば、外科的介入(例えば、血管形成術)の後に投与される。
【0524】
一実施形態では、対象に、初回用量および1回以上の維持用量のiRNA剤、例えば、二本鎖iRNA剤、またはsiRNA剤(例えば、前駆体、例えば、siRNA剤へプロセシングされ得るより大きなiRNA剤、またはiRNA剤、例えば、二本鎖iRNA剤、もしくはsiRNA剤、もしくはそれらの前駆体をコードするDNA)を投与する。維持用量は、通常、初回用量よりも少ない(例えば、初回用量より1/2少ない)。維持投与計画は、対象を、1日に体重1kg当たり0.01μg~1.4mgの範囲、例えば、1日に体重1kg当たり10、1、0.1、0.01、0.001、または0.00001mgの用量で治療することを含む。維持用量は、例えば、5、10、または30日毎に1回しか投与されない。さらに、治療投与計画は、しばらく持続されるが、特定の疾患の性質、その重症度、および患者の全体的な状態によって変わる。ある実施形態では、投薬は、1日に1回、例えば、24、36、48時間、またはそれを上回る時間に1回、例えば、5または8日毎に1回しか送達されなくてもよい。治療後、患者の状態の変化および疾患状態の症状の緩和について、患者をモニターすることができる。患者が現在の投薬量レベルに対してそれほど応答しない場合、化合物の投薬量を増大させてもよいし、または疾患状態の症状の緩和が認められる場合、疾患状態が除去されている場合、もしくは望ましくない副作用が認められる場合には、用量を減らしてもよい。
【0525】
有効用量は、特定の状況の下で所望されるか、または適切と考えられるように、単回投与でまたは2回以上の投与で投与することができる。繰り返しの注入または頻繁な注入を容易にすることが望ましい場合には、送達装置(例えば、ポンプ、半永久ステント(例えば、静脈内、腹腔内、嚢内、もしくは関節内))またはリザーバを植え込むことが望ましいことがある。
【0526】
一実施形態では、iRNA剤の薬学的組成物は、複数のiRNA剤種を含む。別の実施形態では、iRNA剤種が、天然に存在する標的配列に関して別のiRNA剤種と重複せずかつ隣接しない配列を有する。別の実施形態では、複数のiRNA剤種は、天然に存在する異なる標的遺伝子に特異的である。別の実施形態では、iRNA剤は対立遺伝子特異的である。
【0527】
場合によっては、患者は、iRNA剤を用いて、別の治療モダリティと併せて治療される。例えば、ウイルス疾患、例えば、HIV関連疾患(例えば、AIDS)の治療を受けている患者に、ウイルスにとって必須の標的遺伝子に特異的なiRNA剤を、公知のウイルス剤(例えば、プロテアーゼ阻害剤または逆転写酵素阻害剤)と併せて投与し得る。別の例では、他の実施形態では、癌の治療を受けている患者に、腫瘍細胞の増殖に必須の標的に特異的なiRNA剤を、化学療法と併せて投与し得る。
【0528】
治療が成功した後、疾患状態の再発を予防するための維持療法を患者に施すことが望ましく、その場合、本発明の化合物は、体重1kg当たり0.01μg~100gの維持用量で投与される(米国特許第6,107,094号参照)。
【0529】
iRNA剤組成物の濃度は、障害を治療もしくは予防するのに、またはヒトにおける生理学的状態を調節するのに十分効果的な量である。投与されるiRNA剤の濃度または量は、このiRNA剤および投与方法(例えば、経鼻、口腔内、経肺)に対して決定されたパラメータによって決まる。例えば、経鼻製剤は、鼻腔の刺激または灼熱感を回避するために、いくつかの成分を遥かに低い濃度にする必要がある傾向にある。好適な経鼻製剤を提供するために、経口製剤を最大10~100倍まで希釈することが望ましい場合もある。
【0530】
疾患または障害の重症度、過去の治療、対象の全般的な健康状態および/または年齢、ならびに他の疾患の存在を含むが、これらに限定されない、ある種の要因が、対象を効果的に治療するのに必要とされる投薬量に影響を及ぼす場合がある。さらに、治療的有効量のiRNA剤、例えば、二本鎖iRNA剤、またはsiRNA剤(例えば、前駆体、例えば、siRNA剤へプロセシングされ得るより大きなiRNA剤、またはiRNA剤、例えば、二本鎖iRNA剤、もしくはsiRNA剤、もしくはそれらの前駆体をコードするDNA)を用いた対象の治療は、単回治療を包含することができるし、または例えば、一連の治療を含むことができる。また、治療に使用されるiRNA剤(例えば、siRNA剤)の有効投薬量を、特定の治療の間に増大させても減少させてもよいことが理解されよう。投薬量の変更は可能であり、本明細書に記載されるような診断アッセイの結果から明らかになり得る。例えば、iRNA剤組成物の投与後に、対象をモニタリングすることができる。モニタリングからの情報に基づいて、追加量iRNA剤組成物を投与することができる。
【0531】
投薬は、治療されるべき疾患状態の重症度および応答性によって決まり、治療コースは、数日間~数ヶ月間、または治癒がもたらされるかもしくは疾患状態の減少が達成されるまで続けられる。最適な投与スケジュールは、患者の体内における薬物蓄積量の測定から算出することができる。当業者は、最適な投薬量、投与の方法、および反復頻度を容易に決定することができる。最適の投薬量は、個々の化合物の相対的な効能によって変化し得るものであり、通常、インビトロおよびインビボの動物モデルで有効であることが分かっているEC50を基に推定することができる。いくつかの実施形態では、動物モデルとして、ヒト遺伝子(例えば、標的RNAを産生する遺伝子)を発現するトランスジェニック動物が挙げられる。トランスジェニック動物は、対応する内在性RNAを欠損しているものであることができる。別の実施形態では、試験用の組成物は、少なくとも内部領域においては、動物モデルの標的RNAとヒトの標的RNAとの間で保存されている配列と相補的であるiRNA剤を含む。
【0532】
本明細書に記載されるiRNA剤を、多くの方法で、哺乳類、特に大型哺乳類(例えば、ヒト以外の霊長類またはヒト)に投与することができることを、本発明者らは発見している。
【0533】
一実施形態では、iRNA剤(例えば、二本鎖iRNA剤、またはsiRNA剤)組成物の投与は、非経口、例えば、静脈内(例えば、ボーラスとしてまたは拡散注入として)、皮内、腹腔内、筋肉内、髄腔内、脳室内、頭蓋内、皮下、経粘膜、口腔内、舌下、経内視鏡、経直腸、経口、経膣、局所、経肺、鼻腔内、尿道、または経眼で行われる。投与は、対象者によって、または別の人(例えば、医療提供者)によって行われ得る。医薬品は、一定用量で、または定量を送達するディスペンサー中に提供され得る。選択される送達様式については、以下により詳細に論じる。
【0534】
本発明は、本明細書に記載されるiRNA剤を直腸投与または直腸送達するための方法、組成物およびキットを提供する。
【0535】
したがって、本明細書に記載されるiRNA剤、例えば、二本鎖iRNA剤、またはsiRNA剤(例えば、前駆体、例えば、siRNA剤へプロセシングされ得るより大きなiRNA剤、またはiRNA剤、例えば、二本鎖iRNA剤、もしくはsiRNA剤、もしくはそれらの前駆体をコードするDNA)、例えば、本明細書に記載される治療的有効量のiRNA剤、例えば、40ヌクレオチド未満、例えば、ヌクレオチド30未満の二本鎖領域を有し、1つまたは2つの1~3ヌクレオチドの一本鎖3’突出を有するiRNA剤は、直腸投与(例えば、直腸から下部大腸または上部大腸に導入)することができる。この手法は、炎症性障害、望ましくない細胞増殖を特徴とする障害、例えば、ポリープまたは大腸癌を治療する際に、特に有用である。
【0536】
医薬品は、分配装置、例えば、大腸の検査またはポリープの除去に使用される装置と類似した、柔軟性のある、カメラガイド付き装置であって、薬剤を送達する手段を含む装置を導入することによって、大腸内の部位に送達することができる。
【0537】
iRNA剤の直腸投与には、浣腸剤を用いる。浣腸剤のiRNA剤は、食塩水または緩衝溶液に溶解することができる。また、直腸投与には坐剤を用いることもでき、坐剤は、他の成分、例えば、賦形剤(例えば、ココアバターまたはヒドロプロピルメチルセルロース)を含むことができる。
【0538】
本明細書に記載されるiRNA剤はいずれも、例えば、錠剤、カプセル、ジェルカプセル、薬用キャンディ、トローチ、または液状シロップの形態で経口投与することができる。さらに、組成物は、口腔の表面に局所適用することができる。
【0539】
本明細書に記載されるiRNA剤はいずれも、口腔内に投与することができる。例えば、医薬品は口腔内に噴霧するか、または例えば、液体、固体、もしくはゲルの形態で、口腔内の表面に直接適用することができる。こうした投与は、口腔内(例えば、歯茎または舌)の炎症の治療に特に望ましく、例えば、一実施形態では、口腔内投与は、例えば、吸入を伴わずに、ディスペンサー、例えば、薬学的組成物および噴射剤を分配する定量噴霧ディスペンサーから口腔内に噴霧することによって行われる。
【0540】
本明細書に記載されるiRNA剤はいずれも、眼球組織に投与することができる。例えば、医薬品は、眼または隣接する組織(例えば、瞼の内側)に適用することができる。医薬品は、例えば、噴霧することによって、滴剤として、洗眼液として、または軟膏として局所適用することができる。投与は、対象者によって、または別の人(例えば、医療提供者)によって行われ得る。医薬品は、一定用量で、または定量を送達するディスペンサー中で提供され得る。医薬品は、眼の内側に投与することもでき、選択された領域または構造に対してこの医薬品を導入することができる針または他の送達装置によって導入することができる。眼球治療は、眼または隣接する組織の炎症を治療するのに特に望ましい。
【0541】
本明細書に記載されるiRNA剤はいずれも、皮膚に直接投与することができる。例えば、医薬品は、例えば、皮膚に貫通するが、例えば、その下にある筋組織には貫通しない極微針または一連の極微針を使用することによって、皮膚層に局所適用または送達することができる。iRNA剤組成物の投与は、局所的であることができる。局所適用は、組成物を、例えば、対象の真皮または表皮に送達することができる。局所投与は、経皮パッチ、軟膏、ローション、クリーム、ゲル、点滴剤、坐剤、噴霧剤、液剤、および粉末剤の形態であることができる。局所投与用の組成物は、リポソーム、ミセル、エマルジョン、または他の脂溶性分子集合体として製剤化することができる。経皮投与は、イオントフォレーシス、フォノフォレーシスまたはソノフォレーシスなどの少なくとも1つの浸透促進法を用いて適用することができる。
【0542】
本明細書に記載されるiRNA剤はいずれも、肺系統に投与することができる。経肺投与は、吸入によって、または肺系統内に送達装置を導入することによって、例えば、医薬品を分配することができる送達装置を導入することによって達成することができる。ある実施形態は、吸入による肺送達の方法を使用し得る。医薬品は、この医薬品(例えば、吸入できるぐらい十分に小さい形態の湿ったまたは乾燥した医薬品)を送達するディスペンサー中で提供することができる。この装置は、定量の医薬品を送達することができる。対象、または別の人が、医薬品を投与することができる。
【0543】
肺送達は、肺組織に直接影響を及ぼす障害だけでなく、他の組織に影響を及ぼす障害にも有効である。
【0544】
iRNA剤は、液体または液体以外のもの(例えば、粉末、結晶)、または肺送達用のエアロゾルとして製剤化することができる。
【0545】
本明細書に記載されるiRNA剤はいずれも、経鼻投与することができる。経鼻投与は、送達装置を鼻内に導入することによって、例えば、医薬品を分配することができる送達装置を導入することによって達成することができる。経鼻送達の方法は、噴霧剤、エアロゾル、液体(例えば、点鼻による)、または鼻腔の表面への局所投与によるものを含む。医薬品は、例えば、吸入できるぐらい十分に小さい形態の湿ったまたは乾燥した医薬品を送達するディスペンサー中で提供することができる。この装置は、定量の医薬品を送達することができる。対象、または別の人が、医薬品を投与することができる。
【0546】
経鼻送達は、鼻組織に直接影響を及ぼす障害だけでなく、他の組織に影響を及ぼす障害にも有効である。
【0547】
iRNA剤は、液体または液体以外のもの(例えば、粉末、結晶)として、または経鼻送達用に製剤化することができる。
【0548】
iRNA剤は、天然のウイルスキャプシド中に、化学的もしくは酵素的に産生された人工キャプシドもしくはそれに由来する構造体中にパッケージングすることができる。
【0549】
iRNA剤を含む薬学的組成物の投薬量は、疾患状態(例えば癌、または心血管疾患)の症状を緩和するために投与することができる。対象は、上述の方法のいずれかによって、薬学的組成物を用いて治療することができる。
【0550】
対象における遺伝子発現は、iRNA剤を含む薬学的組成物を投与することによって調節することができる。
【0551】
対象は、粉末形態、例えば、結晶性粒子などの微粒子の集合体である規定量のiRNA剤、例えば、二本鎖iRNA剤、またはsiRNA剤(例えば、前駆体、例えば、siRNA剤へとプロセシングされ得るより大きなiRNA剤)の組成物を投与することによって治療することができる。組成物は、例えば、1つ以上の異なる内在性標的RNAに特異的な、複数のiRNA剤を含むことができる。本方法は、本明細書に記載される他の特色を含むことができる。
【0552】
対象は、噴霧乾燥を含む方法(すなわち、液体溶液、エマルジョン、または懸濁液を噴霧化し、その液滴をすぐに乾燥ガスに曝露させ、得られた多孔質粉末粒子を回収すること)によって調製された規定量のiRNA剤組成物を投与することによって治療することができる。組成物は、例えば、1つ以上の異なる内在性標的RNAに特異的な、複数のiRNA剤を含むことができる。本方法は、本明細書に記載される他の特色を含むことができる。
【0553】
iRNA剤、例えば、二本鎖iRNA剤、またはsiRNA剤(例えば、前駆体、例えば、siRNA剤へプロセシングされ得るより大きなiRNA剤、またはiRNA剤、例えば、二本鎖iRNA剤、もしくはsiRNA剤、もしくはそれらの前駆体をコードするDNA)は、粉末形態、結晶形態、または他の微細分割形態で、担体(例えば、吸入または他の経肺送達に好適なマイクロ粒子もしくはナノ粒子)とともに、または担体を伴わずに、提供することができる。このことは、エアロゾル調製物、例えば、エアロゾル化した噴霧乾燥組成物を提供することを含み得る。エアロゾル組成物は、定量送達装置中に提供されるか、または定量送達装置装置によって分配されることができる。
【0554】
吸引によって、例えば、噴霧乾燥したiRNA剤、例えば、二本鎖iRNA剤、またはsiRNA剤(例えば、前駆体、例えば、siRNA剤へプロセシングされ得るより大きなiRNA剤、またはiRNA剤、例えば、二本鎖iRNA剤、もしくはsiRNA剤、もしくはそれらの前駆体をコードするDNA)の組成物を、エアロゾル化し、このエアロゾル化組成物を吸引することによって、治療可能な状態について、対象を治療することができる。iRNA剤は、siRNAであることができる。組成物は、例えば、1つ以上の異なる内在性標的RNAに特異的な、複数のiRNA剤を含むことができる。本方法は、本明細書に記載される他の特色を含むことができる。
【0555】
対象は、有効量/規定量のiRNA剤、例えば、二本鎖iRNA剤、またはsiRNA剤(例えば、前駆体、例えば、siRNA剤へプロセシングされ得るより大きなiRNA剤、またはiRNA剤、例えば、二本鎖iRNA剤、もしくはsiRNA剤、もしくはそれらの前駆体をコードするDNA)を含む組成物を投与することによって治療することができ、組成物は、噴霧乾燥、凍結乾燥、真空乾燥、蒸発、流動床乾燥、またはこれらの技法の組合せを含む方法によって調製される。
【0556】
別の態様では、本発明は、対象の細胞における転写物の存在量に関連したパラメータを評価する工程、参照値に対して評価されたパラメータを比較する工程、および評価されたパラメータが参照値に対してあらかじめ選択された関係性を有する(例えば、値が大きい)場合に、iRNA剤(または、前駆体、例えば、siRNA剤へプロセシングされ得るより大きなiRNA剤、もしくはiRNA剤もしくはその前駆体をコードするDNA)を対象に投与する工程を含む方法を特色とする。一実施形態では、iRNA剤は、評価される転写物に相補的な配列を含む。例えば、パラメータは、転写レベルの直接的な測定、タンパク質レベルの測定、疾患または障害の症状または特徴(例えば、細胞増殖速度および/または腫瘍質量、ウイルス量)の測定であり得る。
【0557】
別の態様では、本発明は、iRNA剤、例えば、二本鎖iRNA剤、またはsiRNA剤(例えば、前駆体、例えば、siRNA剤へプロセシングされ得るより大きなiRNA剤、またはiRNA剤、例えば、二本鎖iRNA剤、もしくはsiRNA剤、もしくはそれらの前駆体をコードするDNA)を含む第1の量の組成物であって、iRNA剤が標的核酸と実質的に相補的である鎖を含む組成物を対象に投与する工程、および標的核酸によりコードされるタンパク質と関連する活性を評価し、この評価を、第2の量を投与し得るかどうかを決定するために使用する工程を含む方法を特色とする。いくつかの実施形態では、本方法は、第2の量の組成物を投与する工程を含み、第2の量についての投与時機または投薬量は、評価の関数である。本方法は、本明細書に記載される他の特色を含むことができる。
【0558】
別の態様では、本発明は、二本鎖iRNA剤(ds iRNA剤)の供給源を対象に投与する方法を特色とする。本方法は、(a)19~25ヌクレオチド長、例えば、21~23ヌクレオチドの二本鎖領域を含み、(b)標的RNA(例えば、内在性RNAまたは病原体RNA)に相補的であり、かつ任意で(c)少なくとも1つの1~5nt長の3’突出を含むds iRNA剤、例えば、siRNA剤の供給源を投与または植え込む工程を含む。一実施形態では、供給源は、長期にわたりds iRNA剤を放出し、例えば、供給源は、制御放出または遅延放出型の供給源(例えば、ds iRNA剤を徐々に放出する微粒子)である。他の実施形態では、供給源は、ポンプ、例えば、センサーを含むポンプ、または1つ以上の単位用量を放出することができるポンプである。
【0559】
一態様では、本発明は、標的RNAに相補的な(例えば、実質的および/または正確に相補的な)ヌクレオチド配列を含むiRNA剤、例えば、二本鎖iRNA剤、またはsiRNA剤(例えば、前駆体、例えば、siRNA剤へプロセシングされ得るより大きなiRNA剤、またはiRNA剤、例えば、二本鎖iRNA剤、もしくはsiRNA剤、もしくはそれらの前駆体をコードするDNA)を含む薬学的組成物を特色とする。標的RNAは、内在性のヒト遺伝子の転写物であることができる。一実施形態では、iRNA剤は、(a)19~25ヌクレオチド長、例えば、21~23ヌクレオチドであり、(b)内在性標的RNAに相補的であり、かつ任意で(c)少なくとも1つの1~5nt長の3’突出を含む。一実施形態では、薬学的組成物は、エマルジョン、マイクロエマルジョン、クリーム、ゼリー、またはリポソームであることができる。
【0560】
一例では、薬学的組成物は、局所送達剤と混合されたiRNA剤を含む。局所送達剤は、複数の微視的小胞であることができる。微視的小胞は、リポソームであることができる。いくつかの実施形態では、リポソームはカチオン性リポソームである。
【0561】
別の態様では、薬学的組成物は、局所浸透促進剤と混和されたiRNA剤、例えば、二本鎖iRNA剤、またはsiRNA剤(例えば、前駆体、例えばsiRNA剤へプロセシングされ得るより大きなiRNA剤、あるいは、例えば二本鎖のiRNA剤もしくはsiRNA剤などのiRNA剤またはそれらの前駆体をコードするDNA)を含む。一実施形態では、局所浸透促進剤は、脂肪酸である。脂肪酸は、アラキドン酸、オレイン酸、ラウリン酸、カプリル酸、カプリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、リノール酸、リノレン酸、ジカプリン酸、トリカプリン酸、モノオレイン、ジラウリン、グリセリル1-モノカプリン酸、1-ドデシルアザシクロヘプタン-2-オン、アシルカルニチン、アシルコリン、もしくはC1-10アルキルエステル、モノグリセリド、ジグリセリド、または薬学的に許容されるそれらの塩であることができる。
【0562】
別の実施形態では、局所浸透促進剤は、胆汁酸塩である。胆汁酸塩は、コール酸、デヒドロコール酸、デオキシコール酸、グルコール酸、グリコール酸、グリコデオキシコール酸、タウロコール酸、タウロデオキシコール酸、ケノデオキシコール酸、ウルソデオキシコール酸、タウロ-24,25-ジヒドロ-フシジン酸ナトリウム、グリコジヒドロフシジン酸ナトリウム、ポリオキシエチレン-9-ラウリルエーテル、または薬学的に許容されるそれらの塩であることができる。
【0563】
別の実施形態では、浸透促進剤は、キレート剤である。キレート剤は、EDTA、クエン酸、サリチル酸、コラーゲンのN-アシル誘導体、ラウレス-9、β-ジケトンのN-アミノアシル誘導体、またはそれらの混合物であることができる。
【0564】
別の実施形態では、浸透促進剤は、サーファクタント、例えば、イオン性または非イオン性のサーファクタントである。サーファクタントは、ラウリル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレン-9-ラウリルエーテル、ポリオキシエチレン-20-セチルエーテル、パーフルオロ化合物のエマルジョン、またはそれらの混合物であることができる。
【0565】
別の実施形態では、浸透促進剤は、不飽和環状尿素、1-アルキル-アルコン、1-アルケニルアザシクロ-アラカノン、ステロイド性の抗炎症剤、およびそれらの混合物からなる群から選択されることができる。さらに別の実施形態では、浸透促進剤は、グリコール、ピロール、アゾン、またはテルペンであることができる。
【0566】
一態様では、本発明は、経口送達に好適な形態の、iRNA剤、例えば、二本鎖iRNA剤、またはsiRNA剤(例えば、前駆体、例えば、siRNA剤へプロセシングされ得るより大きなiRNA剤、またはiRNA剤、例えば、二本鎖iRNA剤、もしくはsiRNA剤、もしくはそれらの前駆体をコードするDNA)を含む薬学的組成物を特色とする。一実施形態では、経口送達は、消化管の細胞または領域、例えば、小腸、大腸(例えば、大腸癌を治療するため)などにiRNA剤組成物を送達するのに使用することができる。経口送達の形態は、錠剤、カプセル、またはジェルカプセルであることができる。一実施形態では、薬学的組成物のiRNA剤は、細胞接着タンパク質の発現を調節するか、細胞の増殖速度を調節するか、または真核生物の病原体またはレトロウイルスに対する生物活性を有する。別の実施形態では、薬学的組成物は、哺乳類の胃で、錠剤、カプセル、またはジェルカプセルが溶解するのを実質的に妨げる腸溶性材料を包含する。いくつかの実施形態では、腸溶性材料はコーティング剤である。コーティング剤は、酢酸フタル酸、プロピレングリコール、モノオレイン酸ソルビタン、トリメリト酸酢酸セルロース、フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、または酢酸フタル酸セルロースであることができる。
【0567】
別の実施形態では、経口投薬形態の薬学的組成物は、浸透促進剤を含む。浸透促進剤は、胆汁酸塩または脂肪酸であることができる。胆汁酸塩は、ウルソデオキシコール酸、ケノデオキシコール酸、およびそれらの塩であることができる。脂肪酸は、カプリン酸、ラウリン酸、またはそれらの塩であることができる。
【0568】
別の実施形態では、経口投薬形態の薬学的組成物は、賦形剤を含む。一例では、賦形剤はポリエチレングリコールである。別の例では、賦形剤はプレシロールである。
【0569】
別の実施形態では、経口投薬形態の薬学的組成物は、可塑剤を含む。可塑剤は、ジエチルフタル酸、トリアセチンセバシン酸ジブチル、フタル酸ジブチル、またはクエン酸トリエチルであることができる。
【0570】
一態様では、本発明は、iRNA剤および送達ビヒクルを含む薬学的組成物を特色とする。一実施形態では、iRNA剤は、(a)19~25ヌクレオチド長、例えば、21~23ヌクレオチドであり、(b)内在性標的RNAに相補的であり、かつ任意で(c)少なくとも1つの1~5ヌクレオチド長の3’突出を含む。
【0571】
一実施形態では、送達ビヒクルは、iRNA剤、例えば、二本鎖iRNA剤、またはsiRNA剤(例えば、前駆体、例えば、siRNA剤へプロセシングされ得るより大きなiRNA剤、またはiRNA剤、例えば、二本鎖iRNA剤、もしくはsiRNA剤、もしくはそれらの前駆体をコードするDNA)を、局所の投与経路によって細胞に送達することができる。送達ビヒクルは、微視的小胞であることができる。一例では、微視的小胞はリポソームである。いくつかの実施形態では、リポソームはカチオン性リポソームである。別の例では、微小ビヒクルはミセルである。一態様では、本発明は、注射可能な投薬形態の、iRNA剤、例えば、二本鎖iRNA剤、またはsiRNA剤(例えば、前駆体、例えば、siRNA剤へプロセシングされ得るより大きなiRNA剤、またはiRNA剤、例えば、二本鎖のiRNA剤、もしくはsiRNA剤、もしくはそれらの前駆体をコードするDNA)を含む薬学的組成物を特色とする。一実施形態では、注射可能な投薬形態の薬学的組成物として、滅菌水性溶液または滅菌水性分散液および滅菌粉末が挙げられる。いくつかの実施形態では、滅菌溶液は、水、食塩水、固定油、ポリエチレングリコール、グリセリン、またはプロピレングリコールなどの希釈剤を含むことができる。
【0572】
一態様では、本発明は、経口投薬形態の、iRNA剤、例えば、二本鎖iRNA剤、またはsiRNA剤(例えば、前駆体、例えば、siRNA剤へプロセシングされ得るより大きなiRNA剤、またはiRNA剤、例えば、二本鎖iRNA剤、もしくはsiRNA剤、もしくはそれらの前駆体をコードするDNA)を含む薬学的組成物を特色とする。一実施形態では、経口投薬形態は、錠剤、カプセル、およびジェルカプセルからなる群から選択される。別の実施形態では、薬学的組成物は、哺乳類の胃で、錠剤、カプセル、またはジェルカプセルが溶解するのを実質的に妨げる腸溶性材料を含む。いくつかの実施形態では、腸溶性材料はコーティング剤である。コーティング剤は、酢酸フタル酸、プロピレングリコール、モノオレイン酸ソルビタン、トリメリト酸酢酸セルロース、フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、または酢酸フタル酸セルロースであることができる。一実施形態では、経口投薬形態の薬学的組成物は、浸透促進剤、例えば、本明細書に記載される浸透促進剤を含む。
【0573】
別の実施形態では、薬学的組成物の経口投薬形態は、賦形剤を含む。一例では、賦形剤は、ポリエチレングリコールである。別の例では、賦形剤は、プレシロールである。
【0574】
別の実施形態では、薬学的組成物の経口投薬形態は、可塑剤を含む。可塑剤は、フタル酸ジエチル、セバシン酸トリアセチンジブチル、フタル酸ジブチル、またはクエン酸トリエチルであることができる。
【0575】
一態様では、本発明は、経直腸投薬形態の、iRNA剤、例えば、二本鎖iRNA剤、またはsiRNA剤(例えば、前駆体、例えば、siRNA剤へプロセシングされ得るより大きなiRNA剤、またはiRNA剤、例えば、二本鎖iRNA剤、もしくはsiRNA剤、もしくはそれらの前駆体をコードするDNA)を含む薬学的組成物を特色とする。一実施形態では、経直腸投薬形態は浣腸剤である。別の実施形態では、経直腸投薬形態は坐剤である。
【0576】
一態様では、本発明は、経膣投薬形態の、iRNA剤、例えば、二本鎖iRNA剤、またはsiRNA剤(例えば、前駆体、例えば、siRNA剤へプロセシングされ得るより大きなiRNA剤、またはiRNA剤、例えば、二本鎖iRNA剤、もしくはsiRNA剤、もしくはそれらの前駆体をコードするDNA)を含む薬学的組成物を特色とする。一実施形態では、経膣投薬形態は坐剤である。別の実施形態では、経膣投薬形態は、フォーム、クリーム、またはジェルである。
【0577】
一態様では、本発明は、経肺または経鼻投薬形態の、iRNA剤、例えば、二本鎖iRNA剤、またはsiRNA剤(例えば、前駆体、例えば、siRNA剤へプロセシングされ得るより大きなiRNA剤、またはiRNA剤、例えば、二本鎖iRNA剤、もしくはsiRNA剤、もしくはそれらの前駆体をコードするDNA)を含む薬学的組成物を特色とする。一実施形態では、iRNA剤は、粒子、例えば、マクロ粒子(例えば、ミクロスフェア)に組み込まれている。粒子は、噴霧乾燥、凍結乾燥、蒸発、流動床乾燥、真空乾燥、またはこれらの技法の組合せによって産生することができる。ミクロスフェアは、懸濁液、粉末、または移植可能な固体として製剤化することができる。
【0578】
一態様では、本発明は、対象が吸入するのに好適な、噴霧乾燥されるiRNA剤、例えば、二本鎖iRNA剤、またはsiRNA剤(例えば、前駆体、例えば、siRNA剤へプロセシングされ得るより大きなiRNA剤、またはiRNA剤、例えば、二本鎖iRNA剤、もしくはsiRNA剤、もしくはそれらの前駆体をコードするDNA)の組成物であって、(a)吸入によって対象の状態を治療するのに好適な治療的有効量のiRNA剤、(b)糖質およびアミノ酸からなる群から選択される薬学的に許容される賦形剤、ならびに(c)任意で、分散性を促進する量の生理学的に許容される水溶性ポリペプチドを含む組成物を特色とする。
【0579】
一実施形態では、賦形剤は糖質である。糖質は、単糖、二糖、三糖および多糖からなる群から選択することができる。いくつかの実施形態では、糖質は、デキストロース、ガラクトース、マンニトール、D-マンノース、ソルビトールおよびソルボースからなる群から選択される単糖である。別の実施形態では、糖質は、ラクトース、マルトース、スクロース、およびトレハロースからなる群から選択される二糖である。
【0580】
別の実施形態では、賦形剤はアミノ酸である。一実施形態では、アミノ酸は疎水性アミノ酸である。いくつかの実施形態では、疎水性アミノ酸は、アラニン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、トリプトファン、およびバリンからなる群から選択される。また別の実施形態では、アミノ酸は極性アミノ酸である。いくつかの実施形態では、アミノ酸は、アルギニン、ヒスチジン、リジン、システイン、グリシン、グルタミン、セリン、スレオニン、チロシン、アスパラギン酸、およびグルタミン酸からなる群から選択される。
【0581】
一実施形態では、分散性を促進するポリペプチドは、ヒト血清アルブミン、α-ラクトアルブミン、トリプシノーゲンおよびポリアラニンからなる群から選択される。
【0582】
一実施形態では、噴霧乾燥されるiRNA剤組成物は、10ミクロン未満の質量中央径(MMD)を有する粒子を含む。別の実施形態では、噴霧乾燥されるiRNA剤組成物は、5ミクロン未満の質量中央径を有する粒子を含む。また別の実施形態では、噴霧乾燥されるiRNA剤組成物は、5ミクロン未満の空気力学的質量中央径(MMAD)を有する粒子を含む。
【0583】
ある他の態様では、本発明は、iRNA剤、例えば、二本鎖iRNA剤、またはsiRNA剤(例えば、前駆体、例えば、siRNA剤へプロセシングされ得るより大きなiRNA剤、またはiRNA剤、例えば、二本鎖iRNA剤、もしくはsiRNA剤、もしくはそれらの前駆体をコードするDNA)の薬学的製剤を収納する好適な容器を含むキットを提供する。ある実施形態では、薬学的製剤の個々の成分は、1つの容器内に提供され得る。あるいは、薬学的製剤の成分を別個に2つ以上の容器、例えば、iRNA剤調製物用の1つの容器と担体化合物用の少なくとももう1つの容器を提供するのが望ましい場合がある。キットは、単一の箱の中の1つ以上の容器のような、多くの異なる構成で包装されてもよい。異なる成分は、例えば、キットに付属の取扱説明書に従って組み合わせることができる。これらの成分は、例えば、薬学的組成物を調製して投与するために、本明細書に記載される方法に従って組み合わせることができる。キットは送達装置を含むこともできる。
【0584】
別の態様では、本発明は、装置、例えば、植え込み可能な装置を特色とし、この装置は、iRNA剤、例えば、二本鎖iRNA剤、またはsiRNA剤(例えば、前駆体、例えば、siRNA剤へプロセシングされ得るより大きなiRNA剤、またはiRNA剤、例えば、二本鎖iRNA剤、もしくはsiRNA剤、もしくはそれらの前駆体をコードするDNA)、例えば、内在性転写物をサイレンシングするiRNA剤を含む組成物を分配または投与することができる。一実施形態では、装置は、組成物でコーティングされる。別の実施形態では、iRNA剤が装置内に配置される。別の実施形態では、装置は、単位用量の組成物を分配するための機構を含む。別の実施形態では、装置は、例えば、拡散によって連続的に組成物を放出する。例示的な装置としては、ステント、カテーテル、ポンプ、人工臓器または人工臓器の部品(例えば、人工心臓、心臓弁など)、および縫合糸が挙げられる。
【0585】
本明細書で使用される場合、「結晶性」という用語は、結晶の構造または特性を有する固体、すなわち、一定の角度で平坦な面が交差し、かつ規則的な内部構造を有する三次元構造の粒子を指す。本発明の組成物は、さまざまな結晶形態を有し得る。結晶形態は、例えば、噴霧乾燥を含む種々の方法によって調製することができる。
【0586】
一態様では、本発明は、細胞における標的遺伝子の発現を調節する方法であって、該細胞に本発明のiRNA剤を提供する工程を含む方法を提供する。一実施形態では、標的遺伝子は、第VII因子、Eg5、PCSK9、TPX2、apoB、SAA、TTR、RSV、PDGFβ遺伝子、Erb-B遺伝子、Src遺伝子、CRK遺伝子、GRB2遺伝子、RAS遺伝子、MEKK遺伝子、JNK遺伝子、RAF遺伝子、Erk1/2遺伝子、PCNA(p21)遺伝子、MYB遺伝子、JUN遺伝子、FOS遺伝子、BCL-2遺伝子、サイクリンD遺伝子、VEGF遺伝子、EGFR遺伝子、サイクリンA遺伝子、サイクリンE遺伝子、WNT-1遺伝子、β-カテニン遺伝子、c-MET遺伝子、PKC遺伝子、NFKB遺伝子、STAT3遺伝子、サバイビン遺伝子、Her2/Neu遺伝子、トポイソメラーゼI遺伝子、トポイソメラーゼIIα遺伝子、p73遺伝子の突然変異、p21(WAF1/CIP1)遺伝子の突然変異、p27(KIP1)遺伝子の突然変異、PPM1D遺伝子の突然変異、RAS遺伝子の突然変異、カベオリンI遺伝子の突然変異、MIB I遺伝子の突然変異、MTAI遺伝子の突然変異、M68遺伝子の突然変異、腫瘍抑制因子遺伝子の突然変異、およびp53腫瘍抑制因子遺伝子の突然変異からなる群から選択される。
【0587】
本発明を以下の実施例によってさらに説明するが、これらの実施例はさらに制限するものとみなされるべきではない。本明細書の全体を通じて引用される、参考文献、係属特許出願、および公開特許は全て、参照により本明細書に明示的に組み入れられる。
【実施例】
【0588】
実施例1.糖質コンジュゲートビルディングブロック110および112の合成
【化81】
【0589】
101の調製:
ガラクトサミンペンタアセテート100(52.00g、133.63mmol)を、周囲温度でジクロロエタン(300mL)中に入れた。そこに、TMSOTf(44.55g、200.44mmol)を添加し、混合物を50℃で90分間、水浴で撹拌し、加熱を停止し、混合物を室温で一晩撹拌した。これを、氷冷重炭酸ナトリウム溶液中に入れ、ジクロロメタンで抽出し、水で洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させた。溶媒を除去し、残渣を高真空下で一晩乾燥させて、化合物を暗色の粘性物質(44.50g、定量的)として得た。これを、さらに精製することなく、次の反応に使用した。1H NMRとMALDIで生成物の生成を確認した。MS:C14H19NO8の計算値329.11;実測値352.1(M+Na)。
【0590】
102の調製:
化合物101(43.70g、133.56mmol)とそのベンジルエステル(41.71g、200.34mmol)をジクロロメタン(300mL)に溶解させ、そこに分子ふるい(50g)を添加し、30分間撹拌した。そこにTMSOTf(14.50g、66.78mmol)を添加し、混合物を室温で一晩撹拌した。これを、氷冷重炭酸ナトリウム溶液中に注ぎ入れ、ジクロロメタンで抽出し、水で洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させた。溶媒を除去し、残渣をクロマトグラフィー(勾配溶出:20~100%の酢酸エチル/ヘキサン)で精製して、所要の化合物を淡褐色の粘着性の液体(60.50g、86%)として得た。1H NMR、13C NMR MS:C26H35NO11の計算値537.22;実測値560.21(M+Na)。
【0591】
103の調製:
化合物102(60.00g、111.68mmol)を、メタノール/酢酸エチルの混合物に溶解させ、アルゴンで脱気した。Pd/C(6.00g、10重量%、Degussa、ウェットタイプ)を添加し、バルーン圧下で一晩水素化した。小型のセライトパッドに通して濾過し、メタノールで洗浄し、高真空下で一晩乾燥して、生成物(48.85g、98%)を得た。1H NMR、13C NMR MS:C19H29NO11の計算値447.17;実測値469.9(M+Na)。
【0592】
104の調製:
化合物101(42.30g、128.43mmol)とそのアジドエタノール(26g、192.45mmol)をジクロロエタン(300mL)で溶解させ、そこに分子ふるい(50g)を添加し、30分間撹拌した。そこにTMSOTf(14.29g、64.21mmol)を添加し、混合物を室温で一晩撹拌した。これを、氷冷した重炭酸ナトリウム溶液中に注ぎ入れ、ジクロロメタンで抽出し、水で洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させた。溶媒を除去し、残渣をクロマトグラフィー(勾配溶出:20%-100%の酢酸エチル/ヘキサン、次いで5%-10%のメタノール/酢酸エチル)で精製して、所要の化合物を淡褐色の粘着性の液体(59.23g、91.00%)として得た。1H NMR、13C NMR MS:C20H32N4O11の計算値504.21;実測値527.1(M+Na)。
【0593】
105の調製:
化合物104(9.33g、18.50mmol)をTHF(100mL)に溶解させ、そこにPPh3(5.97g、22.2mmol)を添加し、混合物を48時間撹拌した。出発材料が完全に消失したことをTLCで確認した。水(1mL、55mmol)を添加し、さらに24時間撹拌した。TFA(2.85mL、23.12mmol)とトルエン(40mL)を添加し、溶媒を減圧下で除去した。残渣をトルエンと2回共蒸発させ(2×40mL)、高真空下で乾燥させた。これを同日中に次の反応に使用した。MS:C20H34N2O11の計算値478.22;実測値500.8(M+Na)。
【0594】
【0595】
107の調製:
化合物106(JOC 2002)(6.94g、14.73mmol)とモノbocプロピルアミン(10.26g、58.89mmol)をDMF(100mL)に溶解させ、そこにHBTU(17.26g、45.50mmol)とDIEA(15.36mL、88.14mmol)を添加し、一晩撹拌した。反応混合物を氷と水の混合物中に入れ、ジクロロメタンで抽出し、重炭酸ナトリウム溶液、ブラインで洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させた。溶媒を除去し、残渣をクロマトグラフィー(酢酸エチル、次いで2%-10%のMeOH/DCM)で精製して、生成物を白色の綿毛状の固体(10.49g、76%)として得た。MS:C45H77N7O14の計算値939.55;実測値940.53(M+H)。
【0596】
108の調製:
化合物107(2.40g、2.56mmol)をジクロロメタン(10mL)に溶解させ、そこにTFA/DCM(1:4、10mL)の混合物を添加し、30分間撹拌した。反応を質量スペクトルでモニターした。100mLのトルエンを添加し、溶媒を減圧下で除去した。残渣をトルエンと2回共蒸発させ(2×100mL)、高真空下で乾燥させて、化合物をそのTFA塩(白色の粘着性物質、2.47g、99%)として得た。これを、さらに精製することなく、次の反応に使用した。MS:C30H53N7O8の計算値639.40;実測値640.45(M+H)。
【0597】
109の調製:
GalNAc酸103(4.00g、8.99mmol)をDMF(50mL)に溶解させ、そこにHBTU(3.75g、9.88mmol)、HOBt(1.34g、9.88mmol)、およびDIEA(5mL、3.2当量)を添加し、3~4分間撹拌した。そこに108(2.47g、2.50mmol)のDMF溶液を添加し、反応混合物を一晩撹拌した。TLCで確認し、溶媒を減圧下で除去した。残渣をジクロロメタンに溶解させ、重炭酸ナトリウム溶液(50mL)、水(100mL)で洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させた。溶媒を除去し、残渣をクロマトグラフィー(酢酸エチル、次いで勾配溶出5%-15%のMeOH/DCM)で精製して、生成物109を白色の固体(4.20g、87%)として得た。MS:C87H134N10O38の計算値1926.89;実測値1949.5(M+Na)。
【0598】
110の調製:
GalNAc誘導体109(7.50g、4.18mmol)を、アルゴンで脱気したメタノール(50mL)中に入れた。Pd/C(0.800g、10重量% Degussaタイプ、ウェット)と数滴の酢酸を添加し、混合物をバルーン圧下で一晩水素化した。反応混合物を小型のセライトパッドに通して濾過し、メタノールで洗浄した。TFA(0.465mL、5.22mmol)を添加し、溶媒を減圧下で除去した。残渣をトルエンと共蒸発させ(2回)、高真空下で一晩乾燥させて、化合物をTFA塩(淡黄色の固体、7.30g、99%)として得た。MS:C79H128N10O36の計算値1792.85;実測値1815.9(M+Na)。
【0599】
【0600】
111の調製:
トリカルボン酸106(2.17g、4.625mmol)とアミン(18.50mmol、先の反応からの粗製物)をDMF(100mL)に溶解させた。そこにTBTU(5.34g、16.63mmol)、HOBt(2.24g、16.59mmol)、およびDIEA(5.64mL、32.36mmol)を添加し、反応混合物を24時間撹拌した。24時間撹拌した後、追加量のDIEA(4mL)を添加し、撹拌を続けた。48時間後、溶媒を減圧下で除去し、残渣をジクロロメタンに溶解させ、1Mリン酸溶液、重炭酸ナトリウム溶液、水で洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させた。溶媒を除去し、残渣をクロマトグラフィー(酢酸エチル、次いで3%-15%のMeOH/DCM)で精製して、所要の化合物111を白色の固体(5.80g、68%)として得た。MS:C81H125N7O41の計算値1851.79;実測値1874.20(M+Na)。
【0601】
112の調製:
GalNAc誘導体111(5.75g、3.09mmol)を、アルゴンで脱気したメタノール(100mL)中に入れた。Pd/C(0.600g、10重量% Degussa、含水型)と数滴の酢酸を添加し、混合物をバルーン圧下で36時間水素化した。反応混合物を小型のセライトパッドに通して濾過し、メタノールで洗浄した。TFA(0.354mL、1.25当量)とトルエン(30mL)を添加し、溶媒を減圧下で除去した。残渣をトルエンと共蒸発させ(2回)、高真空下で一晩乾燥させて、化合物をTFA塩(5.70g、粗製物)として得た。MS:C81H125N7O41の計算値1717.75;実測値1740.5(M+Na)。
【0602】
実施例2.糖質コンジュゲート118の合成
【化84】
【0603】
115の調製:
ヒドロキシプロリンアミン(3.00g、7.15mmol)とドデカンジオン酸モノメチルエステル(1.748g、7.15mmol)をDMF(50mL)中に一緒に入れた。そこにHBTU(3.25g、8.56mmol)とDIEA(3.7mL、21.24mmol)を添加し、反応物を一晩撹拌した。反応混合物を氷水混合物中に注ぎ入れ、DCMで抽出した。重炭酸溶液、水、ブラインで洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させた。溶媒を除去し、残渣をクロマトグラフィー(50%酢酸エチル/ヘキサン、酢酸エチル、次いで5%のMeOH/DCMで溶出)で精製して、所要の化合物115を白色の固体(4.30g、93%)として得た。MS:C39H51NO7の計算値645.37;実測値646.35(M+H)。
【0604】
116の調製:
化合物115(4.25g、6.58mmol)をTHF/DCM/水(50mL、2:1:1)の混合物に溶解させた。LiOH(1.90g、45.2mmol)を添加し、混合物を一晩撹拌した。TLCで確認し、酢酸を添加して、反応混合物を中和した。溶媒を除去し、残渣をDCMで抽出した。このDCM溶液にTEA(過剰)を添加し、溶液を小型のシリカゲルパッドに通して濾過して、所要の生成物116をそのTEA塩(4.15g、86%)として得た。MS:C38H49NO7の計算値631.35;実測値630.34(M-H)。
【0605】
117の調製:
化合物116(1.30g、2.06mmol)とHBTU(0.821g、1.05当量)をDMF(30mL)中に一緒に入れた。そこにDIEA(1.07ml、3当量)を添加し、混合物を3~4分間撹拌した。アミン110(3.00g、1.58mmol)の溶液、次いで1当量のDIEAを添加した。反応混合物を室温で一晩撹拌した。溶媒を減圧下で除去した。残渣をDCMに溶解させ、重炭酸と水で洗浄した。DCM層を硫酸ナトリウム上で乾燥させ、溶媒を除去した。残渣をクロマトグラフィー(まず酢酸エチル、次いで5%-20%のMeOH/DCMで溶出)で精製して、生成物117を白色の固体(3.35g、88%)として得た。MS:C117H175N11O42の計算値2406.19;実測値2429.10(M+Na)。
【0606】
固体担体118の調製:
化合物117(3.30g、1.37mol)、コハク酸無水物 (0.274g、2当量)、およびDMAP(0.501g、3当量)をDCMに溶解させ、一晩撹拌した。反応混合物をDCMで希釈し、水と冷えた希釈クエン酸溶液で洗浄した。DCM層を硫酸ナトリウム上で乾燥させ、溶媒を除去した。残渣を小型のシリカゲルパッドに通して濾過して、コハク酸塩を、そのTEA塩としてのオフホワイトの固体(3.81g)として得た。MS:C121H179N11O45の計算値2506.21;実測値2529.20(M+Na)。コハク酸塩(2.20g、0.877mmol)とHBTU(0.334g、0.877mmol)をDMF(100mL)に溶解させた。そこにDIEA(0.457mL、2.62mmol)を添加し、反応物を3~4分間旋回させた。そこにポリスチレン担体(12.30g)を添加し、混合物を24時間振盪させた。フリットに通して濾過し、DCM、10% MeOH/DCM、DCM、およびエーテルで洗浄した。固体担体を真空下で2時間乾燥させた。これを25% Ac2O/Py混合物で30分間キャッピングした。同じ洗浄/乾燥手順を繰り返して、固体担体118(13.10g、50.5μmol/gローディング)を得た。
【0607】
実施例3.糖質コンジュゲート122の合成
【化85】
【0608】
119の調製:
Z-アミノカプロン酸(2.19g、8.25mmol)をDMF(50mL)に溶解させた。そこにHBTU(3.13g、8.25mmol)とDIEA(7.19mL、5.00当量)を添加し、混合物を数分間撹拌した。GalNAcアミン112(10.10g、5.52mmol)を50mLのDMFに溶解させ、前記混合物に添加し、48時間撹拌した。生成物の生成についてTLCとMALDIを確認した。溶媒を除去し、残渣をDCMに溶解させ、NaHCO3溶液と水で洗浄した。硫酸ナトリウム上で乾燥させ、溶媒を減圧下で除去した。残渣をクロマトグラフィー(酢酸エチルによる溶出、次いで5%-15%のMeOH/DCMの勾配溶出)で精製して、所要の化合物113をオフホワイトの固体(6.20g、57%)として得た。MS:C87H136N8O42の計算値1964.88;実測値1987.75(M+Na)。
【0609】
120の調製:
化合物119(6.10g、3.10mmol)をメタノール(50mL)に溶解させ、そこに1mLの酢酸を添加した。反応混合物を脱気し、そこにPd/C(0.700g、10重量% Degussa、含水型)を添加し、バルーン圧下で36時間水素化した。反応混合物を小型のセライトパッドに通して濾過し、MeOHで洗浄した。そこに1.25当量のTFAとトルエン(50mL)を添加し、溶媒を減圧下で除去した。残渣をトルエンと2回共蒸発させ、高真空下で一晩乾燥させて、所要の化合物をオフホワイトの固体(6.10g、定量的)として得た。この化合物を、さらに精製することなく、そのまま次の反応に使用した。MS:C79H130N8O40の計算値1830.84;実測値1853.81(M+Na)。
【0610】
【0611】
121の調製:
化合物116(5.06g、6.90mmol)、GalNAcアミン112(10.55g、5.756mmol)、TBTU(2.44g、1.1当量)、およびHOBt(1.025g、1.1当量)をDMF(100mL)中に一緒に入れた。そこにDIEA(6mL、34.51mmol)を添加し、混合物を48時間撹拌した。反応をTCLとMALDIでモニターした。溶媒を減圧下で除去した。残渣をDCMに溶解させ、重炭酸と水で洗浄した。DCM層を硫酸ナトリウム上で乾燥させ、溶媒を除去した。残渣をクロマトグラフィー(まず酢酸エチル、次いで3%-10%のMeOH/DCMで溶出)で精製して、生成物121をオフホワイトの固体(10.50g、79%)として得た。MS:C111H166N8O45の計算値2331.09;実測値 2354.03(M+Na)。
【0612】
122の調製:
化合物121(2.00g、0.857mmol)、コハク酸無水物(0.186g、2当量)、DMAP(0.314g、3当量)をDCM中に一緒に取り、一晩撹拌する。溶媒を除去し、残渣を小型のシリカゲルパッドに通して濾過して、コハク酸塩をそのTEA塩として得る。コハク酸塩(2.00g、0.857mmol)とHBTU(0.325g、0.857mmol)をDMF(100mL)に溶解させる。そこにDIEA(0.450mL、2.57mmol)を添加し、反応物をを3~4分間旋回させる。そこにポリスチレン担体(10.00g)を添加し、混合物を24時間振盪させる。フリットに通して濾過し、DCM、10% MeOH/DCM、DCM、およびエーテルで洗浄し、これを酢酸無水物でキャッピングして、固体担体122を得る。
【0613】
実施例4.糖質コンジュゲート128の合成
【化87】
【0614】
125の調製:
アミン123(2.75g、4.61mmol)とモノエチルヘキサンジオン酸(0.886g、5.09mmol)をDMF(50mL)に溶解させた。そこにHBTU(2.09g、5.51mmol)とDIEA(2.88mL、16.53mmol)を添加し、反応混合物を一晩撹拌した。反応混合物を氷水混合物中に入れ、DCMで抽出し、重炭酸溶液で洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させた。溶媒を除去し、残渣をクロマトグラフィー(50% EtOAc/ヘキサン、EtOAc、次いで5%-10%のMeOH/DCMで溶出)で精製して、所要の生成物を綿毛状の白色の固体(2.25g、65%)として得た。MS:C40H52N2O8S2の計算値752.32;実測値753.31(M+Na)。
【0615】
126の調製:
化合物125(2.20g、2.97mmol)をTHF/水(20mL、2:1)の混合物に溶解させた。LiOH(0.187g、4.45mmol)を添加し、混合物を4時間撹拌した。反応をTLCでモニターし、4時間後に冷却し、クエン酸を添加して、反応混合物をクエンチした。溶媒を除去し、残渣をDCMで抽出し、水で洗浄した。硫酸ナトリウム上で乾燥させ、溶媒を除去した。残渣をクロマトグラフィー(EtOAc、3%-20%のMeOH/DCM)で精製して、所要の生成物126(0.750g、35%)をそのTEA塩として得た。MS:C38H48N2O8S2の計算値724.29;実測値723.28(M-H)。
【0616】
127の調製:
化合物126(1.008g、1.390mmol)、110(1.904g、1.007mmol)、およびHBTU(0.400g、1.054mmol)をDMF(20mL)に溶解させた。そこにDIEA(0.525mL、3当量)を添加し、反応物を2日間撹拌した。反応混合物をTLCとMALDIでモニターした。溶媒を除去し、残渣をDCMに溶解させ、水と重炭酸溶液で洗浄した。DCM層を硫酸ナトリウム上で乾燥させ、溶媒を除去した。その後、これをクロマトグラフィー(まず酢酸エチル、次いで3%-15%のMeOH/DCM)で精製して、所要の生成物を綿毛状のオフホワイトの固体(1.90g、76%)として得た。MS:C117H174N12O43S2の計算値2499.12;実測値2522.12(M+Na)。
【0617】
固体担体128の調製:
化合物127(2.00g、0.800mmol)、コハク酸無水物(0.160g、2当量)、DMAP(0.300g、3当量)をDCM中に一緒に入れ、一晩撹拌する。溶媒を除去し、残渣を小型のシリカゲルパッドに通して濾過して、コハク酸塩をそのTEA塩として得る。化合物127(2.00g、0.769mmol)とHBTU(0.290g、0.769mmol)をDMF(100mL)に溶解させる。そこにDIEA(0.500mL、3mmol)を添加し、反応物をを3~4分間旋回させる。そこにポリスチレン担体(10.00g)を添加し、混合物を24時間振盪させる。フリットに通して濾過し、DCM、10% MeOH/DCM、DCM、およびエーテルで洗浄し、これを酢酸無水物でキャッピングして、固体担体128を得る。
【0618】
実施例5.糖質コンジュゲート136の合成
【化88】
【0619】
131の調製:
マンノーストリクロロアセトイミデート129(15.00g、20.24mmol)とアジドアルコール(4.25g、1.2当量)をトルエンに溶解させ、2回共沸騰させた。残渣を高真空下で一晩乾燥させた。そこに無水ジエチルエーテル(30mL)と分子ふるい(10g)を添加した。反応混合物を氷水浴で冷却した。そこにTMSOTf(0.5mL、0.1当量)を添加し、混合物を10分間撹拌した。反応をTLCでモニターし、TEAでクエンチした。分子ふるいを濾過し、溶媒を減圧下で除去した。残渣をクロマトグラフィー(20%-50%のEtOAc/ヘキサン)で精製して、化合物を無色の液体(8.36g、55%)として得た。MS:C40H39N3O12の計算値753.25;実測値776.23(M+Na)。
【0620】
132の調製:
化合物131(8.30g、11.01mmol)を無水THF(70mL)に溶解させ、そこにPPh3(3.46g、1.2当量)を添加し、混合物を周囲温度で2日間撹拌した。そこに水(1mL)を添加し、混合物をさらに24時間撹拌した。反応をTLCでモニターした。そこにトリフルロ酢酸(1.06mL、1.25当量)とトルエン(50mL)を添加した。溶媒を減圧下で除去し、残渣をトルエンと2回共蒸発させ、高真空下で乾燥させた。これを、さらに精製することなく、そのまま次の反応に使用した。MS:C40H41NO12の計算値727.26;実測値750.23(M+Na)。
【0621】
133の調製:
トリカルボン酸(11.05g、23.45mmol)とアミン(68.19g、94mmol、先の反応からの粗製物)をDMF(200mL)に溶解させた。そこにTBTU(27.09g、84mmol)、HOBt(11.34g、84mmol)、およびDIEA(28mL、160mmol)を添加し、反応混合物を24時間撹拌した。24時間撹拌した後、追加量のDIEA(28mL)を添加し、撹拌を続けた。48時間後、溶媒を減圧下で除去し、残渣をジクロロメタンに溶解させ、1Mリン酸溶液、重炭酸ナトリウム溶液、および水で洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させた。溶媒を除去し、残渣をクロマトグラフィー(酢酸エチル、次いで3%-15%のMeOH/DCM)で精製して、所要の化合物133を白色の固体(41.95g、67%)として得た。MS:C141H146N4O44の計算値2598.93;実測値2621.89(M+Na)。
【0622】
134の調製:
化合物133(3.05g、1.176mmol)をDCM/MeOHの混合物に溶解させた。そこに50当量のギ酸アンモニウム、次いでの5%Pd/C(1.5g、50wt%)を添加し、周囲温度で8時間撹拌した。これを小型のセライトパッドに通して濾過し、MeOH/DCMで洗浄し、溶媒を除去し、残渣を高真空下で一晩乾燥させて、化合物を白色の固体(2.65g、92%)として得た。MS:C133H140N4O42の計算値2464.89;実測値2487.92(M+Na)。
【0623】
【0624】
135の調製:
マンノースアミン(2.076g、0.842mmol)、116(0.740g、1.00mmol)、およびTBTU(0.0.353g、1.1当量)、およびHOBt(0.149g、1.1当量)をDMF(30mL)に溶解させた。そこにDIEA(0.0.869mL、5当量)を添加し、反応物を2日間撹拌した。反応混合物をTLCとMALDIでモニターした。溶媒を除去し、残渣をDCMに溶解させ、水と重炭酸ナトリウム溶液で洗浄した。DCM層を硫酸ナトリウム上で乾燥させ、溶媒を除去した。その後、これをクロマトグラフィー(まず酢酸エチル、次いで2%-4%のMeOH/DCM)で精製して、所要の生成物を綿毛状のオフホワイトの固体(1.48g、57%).MS:C71H187N5O48の計算値3078.23;実測値3101.25(M+Na)。
【0625】
固体担体136の調製:
化合物117(2.10g、0.681mmol)、コハク酸無水物(0.136g、2当量)、およびDMAP(0.249g、3当量)をDCMに溶解させ、一晩撹拌した。反応混合物をDCMで希釈し、水と冷えた希釈クエン酸溶液で洗浄した。DCM層を硫酸ナトリウム上で乾燥させ、溶媒を除去した。残渣を小型のシリカゲルパッドに通して濾過して、コハク酸塩を、そのTEA塩としてのオフホワイトの固体(1.56g)として得た。MS:C175H191N5O51の計算値2506.21;3178.25;実測値3201.20(M+Na)。コハク酸塩(1.00g、0.305mmol)とHBTU(0.138g、1.2当量)をDMF(100mL)に溶解させた。そこにDIEA(0.50mL、過剰)を添加し、反応物を3~4分間旋回させた。そこにポリスチレン担体(6.05g)を添加し、混合物を24時間振盪させた。フリットに通して濾過し、DCM、10% MeOH/DCM、DCM、およびエーテルで洗浄した。固体担体を真空下で2時間乾燥させた。これを25% Ac2O/Py混合物で30分間キャッピングした。同じ洗浄/乾燥手順を繰り返して、固体担体136(6.70g、42μmol/gローディング)を得た。
【0626】
実施例6.糖質コンジュゲート143の合成
【化90】
【0627】
138の調製:
マンノーストリクロロアセトイミデート129(15.23g、20.55mmol)とA(4.36g、1.02当量)をトルエンに溶解させ、2回共沸騰させた。残渣を高真空下で一晩乾燥させた。そこに無水ジエチルエーテル(30mL)と分子ふるい(10g)を添加した。反応混合物を氷水浴で冷却した。そこにTMSOTf(0.5mL、0.1当量)を添加し、混合物を10分間撹拌した。反応をTLCでモニターし、TEAでクエンチした。分子ふるいを濾過し、溶媒を減圧下で除去した。残渣をクロマトグラフィー(ヘキサン、15%-25%のEtOAc/ヘキサン)で精製して、化合物を無色の液体(14.52g、90%)として得た。MS:C46H42O12の計算値786.27;実測値809.25(M+Na)。
【0628】
139の調製:
マンノースベンジルエステル(14.30g、18.17mmol)を酢酸エチル(100mL)に溶解させ、そこに2滴の酢酸を添加した。脱気し、Pd/C(1.50g、10wt% Degussaウェットタイプ)を添加し、バルーン圧下で24時間水素化した。反応をTLCとMALDIでモニターした。これを小型のセライトパッドに通して濾過し、酢酸エチルで洗浄した。溶媒を除去し、残渣を高真空下で乾燥させて、化合物を無色のオイル(11.20g、90%)として得た。MS:C39H36O12の計算値696.22;実測値719.18(M+Na)。
【0629】
141の調製:
ヒドロキシプロリンアミン140(3.82g、7.18mmol)、141(5.00g、7.18mmol)、およびHBTU(2.65g、7.18mmol)をDMF(50mL)に溶解させた。そこにDIEA(3.65mL、5当量)を添加し、反応物を3時間撹拌した。反応混合物をTLCでモニターした。溶媒を除去し、残渣をDCMに溶解させ、水と重炭酸溶液で洗浄した。DCM層を硫酸ナトリウム上で乾燥させ、溶媒を除去した。その後、これをクロマトグラフィー(まず、酢酸エチル、次いで5%-10%のMeOH/EtOAc)で精製して、所要の生成物を白色の固体(4.08g、46%)として得た。MS:C71H74N2O16の計算値1210.50;実測値1233.40(M+Na)。
【0630】
固体担体143の調製:
化合物141(2.00g、1.652mmol)、コハク酸無水物(0.330g、2当量)、DMAP(0.604g、3当量)をDCM中に一緒に入れ、一晩撹拌する。溶媒を除去し、残渣を小型のシリカゲルパッドに通して濾過して、コハク酸塩をそのTEA塩142として得る。コハク酸塩(2.00g、1.526mmol)とHBTU(0.578g、1.526mmol)をDMF(100mL)に溶解させる。そこにDIEA(1.32mL、5当量)を添加し、反応物を3~4分間旋回させる。そこにポリスチレン担体(10.00g)を添加し、混合物を24時間振盪させる。フリットに通して濾過し、DCM、10% MeOH/DCM、DCM、およびエーテルで洗浄し、これを酢酸無水物でキャッピングして、固体担体143を得る。
【0631】
実施例7.糖質コンジュゲート152の合成
【化91】
【0632】
146の調製:
化合物144(26.55g、64.06mmol)と145(10.00g、53.43mmol)をDMF(150mL)に溶解させた。そこにHBTU(24.12g、64mmol)とDIEA(46mL、5当量)を添加し、反応混合物を一晩撹拌した。TLCで確認し、混合物を氷冷水に添加し、エーテルと酢酸エチルの混合物で抽出し、硫酸ナトリウム上で乾燥させた。溶媒を除去し、粗生成物をクロマトグラフィー(20%-50%の酢酸エチル/ヘキサン)で精製して、所要の生成物をオフホワイトの固体(23.20g、74%)として得た。MS.C32H45N3O7のMW計算値:583.72、実測値584.73(M+H)。
【0633】
147の調製:
化合物146(3.30g、5.65mmol)を酢酸エチル/MeOHの混合物に溶解させ、Pd/C(500mg)を触媒として用いて、バルーン圧下で一晩水素化した。小型のセライトパッドに通して濾過し、溶媒を除去し、この生成物を、さらに精製することなく、次の反応に使用した。MS.C16H33N3O3のMW計算値:315.25、実測値316.26(M+H)。
【0634】
148の調製:
化合物147(5.65mmol)とGalNAc酸103(5.81g、12.99mmol)をDMF(80mL)に溶解させた。そこにHBTU(4.97g、13.10mmol)とDIEA(7.00mL,3当量)を添加し、反応混合物を一晩撹拌した。溶媒を除去し、残渣をDCMに溶解させ、水とブラインで洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させた。溶媒を除去し、粗生成物をクロマトグラフィー(EtOAc、次いで3%-10%のMeOH/DCM)で精製して、所要の生成物をオフホワイトの固体(5.25g、79%)として得た。MS.C54H87N5O23のMW計算値:1173.58、実測値1196.60(M+Na)。
【0635】
149の調製:
二分岐のGalNAc誘導体148(5.15g、4.40mmol)を15mLの無水DCMに溶解させ、そこに3mLのアニソールと30mLのTFAを添加し、この反応混合物を周囲温度で2時間撹拌した。TLCで確認し、反応混合物にトルエンを添加し、溶媒を減圧下で除去した。トルエンと2回共蒸発させ、残渣をDCMに溶解させ、水で洗浄し、無水硫酸ナトリウム上で乾燥させた。粗生成物を濾過カラム(10%のMeOH/DCM)で精製して、所要の生成物を薄茶色の固体(4.40g、91%)として得た。MS.C50H79N5O23のMW計算値:1117.52、実測値1140.62(M+Na)。
【0636】
150の調製:
二分岐のGalNAc酸149(4.30g、3.84mmol)とヒドロキシプロリンアミン153(2.25g、1.1当量)をDMF(50mL)に溶解させた。そこにHBTU(1.46g、3.84mmol)とDIEA(3.3mL)を添加し、反応混合物を3時間撹拌した。溶媒を除去し、残渣をDCMに溶解させ、水と重炭酸で洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させた。溶媒を除去し、粗生成物をクロマトグラフィー(3%-10%のMeOH/DCM)で精製して、所要の生成物を白色の固体(3.25g、52%)として得た。MS.C82H117N7O27のMW計算値:1631.80、実測値1654.45(M+Na)。
【0637】
151の調製:
化合物150(3.30g、2.02mmol)、コハク酸無水物(0.404g、2当量)、DMAP(0.740g、3当量)をDCM(30mL)中に一緒に入れ、一晩撹拌する。溶媒を除去し、残渣を小型のシリカゲルパッドに通して濾過して、コハク酸塩をそのTEA塩151として得る。MS.C86H121N7O30のMW計算値:1731.82、実測値1753.87(M+Na)。
【0638】
固体担体152の調製:
コハク酸塩151(2.02mmol)とHBTU(0.842g、1.1当量)をDMF(100mL)に溶解させた。そこにDIEA(1.50mL、過剰)を添加し、反応物を3~4分間旋回させた。そこにポリスチレン担体(28g)を添加し、混合物を一晩振盪させた。フリットに通して濾過し、DCM、10% MeOH/DCM、DCM、およびエーテルで洗浄した。固体担体を真空下で2時間乾燥させた。これを25% Ac2O/Py混合物で30分間キャッピングした。同じ洗浄/乾燥手順を繰り返して固体担体152(30.10g、30μmol/gローディング)を得た。
【0639】
実施例8.糖質コンジュゲート161の合成
【化92】
【0640】
155の調製:
ヒドロキシプロリンアミン153(10.00g、18.76mmol)と154(4.98g、18.76mmol)をDMF(100mL)に溶解させた。そこにHBTU(7.83g、20.64mmol)とDIEA(9.81mL、56.29mmol)を添加し、反応物を2時間撹拌した。TLCで確認し、混合物を氷冷水に添加し、エーテルと酢酸エチルの混合物で抽出し、硫酸ナトリウム上で乾燥させた。溶媒を除去し、粗生成物をクロマトグラフィー(0%-15%のMeOH/DCM)で精製して、所要の生成物をオフホワイトの固体(13.20g、90%)として得た。MS.C46H57N3O8のMW計算値:779.41、実測値780.42(M+H)。
【0641】
156の調製:
化合物155(13.00g、16.66mmol)を酢酸エチル/MeOHの混合物に溶解させ、少量のトリエチルアミンの存在下、Pd/C(1.50g)を触媒として用いて、バルーン圧下で一晩水素化した。小型のセライトパッドに通して濾過し、溶媒を除去し、この生成物を、さらに精製することなく、次の反応に使用した(9.93g、92%)。MS.C38H51N3O6のMW計算値:645.38、実測値646.40(M+H)。
【0642】
157の調製:
化合物156(9.90g、15.33mmol)とジCbzリジン(6.36g、15.33mmol)をDMF(100mL)に溶解させた。そこにHBTU(6.11g、15.33mmol)とDIEA(8mL、過剰)を添加し、反応物を2時間撹拌した。TLCで確認し、混合物を氷冷水に添加し、エーテルと酢酸エチルの混合物で抽出し、硫酸ナトリウム上で乾燥させた。溶媒を除去し、粗生成物をクロマトグラフィー(0%-10%のMeOH/DCM)で精製して、所要の生成物をオフホワイトの固体(13.10g、83%)として得た。MS.C60H75N5O11のMW計算値:1041.55、実測値1042.57(M+H)。
【0643】
158の調製:
化合物157(12.90g、12.37mmol)を酢酸エチル/MeOHの混合物に溶解させ、Pd/C(1.30g)を触媒として用いて、バルーン圧下で水素化した。3時間後にTLCで確認し、小型のセライトパッドに通して濾過し、溶媒を除去し、この生成物を、さらに精製することなく、次の反応に使用した。MS.C44H63N5O7のMW計算値:773.47、実測値774.50(M+H)。
【0644】
160の調製:
化合物158(2.32g、3mmol)とグルコース酸159(4.50g6.45mmol)をDMF(60mL)に溶解させた。そこにHBTU(2.44g、6.45mmol)とDIEA(3.36mL、3当量)を添加し、反応物を2時間撹拌し、反応混合物を氷冷水中に入れ、EtOAc/DCMで抽出し、硫酸ナトリウム上で乾燥させた。溶媒を除去し、粗生成物をクロマトグラフィー(EtOAc、次いで0%-10%のMeOH/DCM)で精製して、所要の生成物をオフホワイトの固体(5.40g、85%)として得た。MS.C122H131N5O29のMW計算値:2129.89、実測値2152.90(M+Na)。
【0645】
固体担体161の調製:
化合物160(5.20g、2.44mmol)、コハク酸無水物(0.488g、2当量)、およびDMAP(0.894g、3当量)をDCMに溶解させ、一晩撹拌した。反応混合物をDCMで希釈し、水と冷えた希釈クエン酸溶液で洗浄した。DCM層を硫酸ナトリウム上で乾燥させ、溶媒を除去した。残渣を小型のシリカゲルパッドに通して濾過して、コハク酸塩を、そのTEA塩としてのオフホワイトの固体として得た。MS:C126H135N5O32のMW計算値:2229.91、実測値2252.50(M+Na)。コハク酸塩(2.44mmol)とHBTU(0.925g、1.2当量)をDMF(200mL)に溶解させた。そこにDIEA(1.27mL、過剰)を添加し、反応物を3~4分間旋回させた。そこにポリスチレン担体(24g)を添加し、混合物を24時間振盪させた。フリットに通して濾過し、DCM、10% MeOH/DCM、DCM、およびエーテルで洗浄した。固体担体を真空下で2時間乾燥させた。これを25% Ac2O/Py混合物で30分間キャッピングした。同じ洗浄/乾燥手順を繰り返して、固体担体161(27g、31umol/gローディング)を得た。
【0646】
実施例9.糖質コンジュゲート165および166の合成
【化93】
【0647】
163の調製:
化合物158(5.40g、6.97mmol)とマンノース酸139(9.96g 14.30mmol)をDMF(100mL)に溶解させた。そこにHBTU(5.42g、14.30mmol)とDIEA(7.45mL、過剰)を添加し、反応物を2時間撹拌し、反応混合物を氷冷水に注ぎ、EtOAc/DCMで抽出し、硫酸ナトリウム上で乾燥させた。溶媒を除去し、粗生成物をクロマトグラフィー(EtOAc、次いで2%-10%のMeOH/DCM)で精製して、所要の生成物をオフホワイトの固体(9.20g、62%)として得た。MS.C122H131N5O29のMW計算値:2129.89、実測値2152.65(M+Na)。
【0648】
固体担体165の調製:
化合物163(3.20g、1.408mmol)、コハク酸無水物(0.2835g、2当量)、およびDMAP(0.516g、3当量)をDCMに溶解させ、一晩撹拌した。反応混合物をDCMで希釈し、水と冷えた希釈クエン酸溶液で洗浄した。DCM層を硫酸ナトリウム上で乾燥させ、溶媒を除去した。残渣を小型のシリカゲルパッドに通して濾過して、コハク酸塩を、そのTEA塩としてのオフホワイトの固体として得た。MS:C126H135N5O32のMW計算値:2229.91、実測値2252.90(M+Na)。コハク酸塩(1.408mmolとHBTU(0.640g、1.2当量)をDMF(200mL)に溶解させた。そこにDIEA(1.22mL、過剰)を添加し、反応物を3~4分間旋回させた。そこにポリスチレン担体(20g)を添加し、混合物を24時間振盪させた。フリットに通して濾過し、DCM、10% MeOH/DCM、DCM、およびエーテルで洗浄した。固体担体を真空下で2時間乾燥させた。これを25% Ac2O/Py混合物で30分間キャッピングした。同じ洗浄/乾燥手順を繰り返して、固体担体161(23.2g、54.7umol/gローディング)を得た。
【0649】
166の調製:
化合物163(4.01g、1.88mmol)をDCM(50mL)に溶解させ、DIEA(0.65mL、3.75mmol)を添加した。この混合物にアミダイト試薬(0.629mL、2.822mmol)を添加し、反応混合物を15分間撹拌した。TLCで確認し、反応混合物を分液漏斗に移し、水と重炭酸ナトリウム溶液で洗浄した。無水硫酸ナトリウム上で乾燥させ、溶媒を除去した。粗生成物をクロマトグラフィー(30%-80%のアセトン/DCM)で精製して、生成物(4.20g、96%)を得た。31P NMR(CDCl3、400MHz)δ=148.19、147.79、147.33。MS.C131H148N7O30PのMW計算値:2330.00、実測値2353.20(M+Na)。
【0650】
実施例10.糖質コンジュゲートビルディングブロックの合成
171、172、173、および174の合成:
ビルディングブロック171と172は、103の合成手順と同様の手順を用いて合成する。ビルディングブロック173と174は、105の合成手順と同様の手順を用いて合成する。
【化94】
【0651】
180の合成:
ビルディングブロック180は、110の合成手順と同様の手順を用いて合成する。
【化95】
【0652】
【0653】
【0654】
ビルディングブロック180をアミン183、185、および188と共役させ、それぞれ、糖質コンジュゲート189、190、および191を提供する。
【化98】
【0655】
201の調製:
マンノース(10.00g、55.53mmol)とデシノール(100g、溶媒)とCSA(500mg)を110℃で、油浴で一晩撹拌した。デシノールの色は一晩で濃い茶色になった。デシノールの大部分を減圧下で完全蒸留した。残渣をDCMに溶解させ、TEAで中和した。この溶液を水で抽出し、硫酸ナトリウム上で乾燥させた。溶媒を除去し、残渣を小型のシリカゲルパッドによる濾過(初めに酢酸エチル、次に10%-15%のMeOH/DCM)で精製して、生成物(7.52g、42%)を得た。1H NMR(CDCl3、400 MHz)δ=5.90-5.75(m,1H),5.02-4.85(m,2H),4.00-3.30(m,7H),2.10-1.94(m,2H),1.60-1.49(m,2H),1.41-1.20(m,12H)。
【0656】
203の調製:
化合物201(0.172g、0.541mmol)をアルゴン下で無水DCM(10mL)に溶解させた。そこにMSを添加し、反応物を氷浴で冷却した。BF3.Et2O(10μ(102g、0.541mmol)をアルゴン下で無水DCM(10mL)に溶解させた。MSを添加し、5mLのDCM中の138(1.00g.1.35mmol)を15分かけて滴下して添加した。反応をTLCでモニターし、アクセプターがなくなった時点で、反応物をTEAでクエンチし、DCMで希釈し、MSを濾過で除去し、乾燥させた。残渣をクロマトグラフィー(勾配溶出10%-40%のEtOAc/ヘキサン)で精製して、化合物を白色の綿毛状の固体(0.550g、69%)として得た。1H NMR(CDCl3、400MHz)δ=7.95-7.20(m,40H),5.90-5.50(m,7H),5.35(d,J=8.05Hz,1H),5.17(d,J=8.06Hz,1H),4.98-4.81(m,3H),4.65-4.09(m,9H),3.81-3.42(m,5H),3.20(bs,1H),2.79(bs,1H),2.01-1.88(m,2H),1.30-0.92(m,12H)。13C NMR(CDCl3、100MHz)δ=166.28,166.20,165.88,165.76,165.66,165.64,165.40,139.34,134.04,133.82,133.71,133.66,133.42,133.30,130.21,129.99,129.86,129.70,129.59,129.28,129.03,129.00,128.94,128.77,128.73,128.63,128.61,128.54,128.47,128.44,114.37,102.74,102.68,98.81,85.27,72.43,71.96,71.37,71.31,71.01,70.30,70.26,70.05,68.31,68.23,67.41,66.11,62.63,62.08,33.96,29.65,29.58,29.53,29.58,29.08,26.20。MS.C84H82O24について計算された分子量、計算値1474.52、実測値1497.60(M+Na)。
【0657】
204の調製:
化合物203(0.104g、0.07mmol)をDCM/Py(10mL、1:1)とAc2O(0.5mL、過剰)とDMAP(0.050g)の混合物に溶解させ、反応物を一晩撹拌した。反応物をMeOHでクエンチし、溶媒を除去し、残渣をクロマトグラフィー(勾配溶出10%-30%のEtOAc/ヘキサン)で精製して、化合物を白色の綿毛状の固体(0.108g、99%)として得た。1H NMR(CDCl3、400MHz)δ=8.10-7.20(m,40H),5.99(dd,J=3.1,7.8Hz,2H),5.88-5.75(m,2H),5.70(dd,J=7.82,10.43Hz,1H),5.65-5.47(m,2H),5.10-4.07(m,13H),3.90-3.80(m,1H),3.69-3.61(m,1H),3.36-3.28(m,1H),2.98-2.81(m,1H),2.08(s,3H),2.10-2.01(m,4H),1.35(s,3H),1.42-1.20(m,12H)。13C NMR(CDCl3、100MHz)δ=170.12,170.08,166.16,165.67,165.64,165.48,165.46,164.78,139.29,133.80,133.70,133.70,133.54,133.44,133.41,133.35,130.13,130.02,129.92,129.69,129.58,129.49,129.40,129.15,129.10,128.88,128.83,128.79,128.73,128.66,128.47,128.40,114.35,102.32,99.58,96.64,74.51,72.11,71.91,71.46,71.21,69.78,69.72,69.51,69.28,68.19,68.03,67.82,67.12,61.97,61.83,33.94,29.63,29.61,29.55,29.49,29.27,29.20,29.05,26.11,21.06,20.02。MS:C88H86O26について計算された分子量、計算値1558.54、実測値1581.8(M+Na)。
【0658】
205の調製:
化合物205(1.36g、0.873mmol)をジオキサン:水(40mL、3:1)の混合物に溶解させた。反応混合物に、ルチジン(0.203mL、2当量)、次いでOsO4溶液(1mL。0.05Mのtブタノール溶液)を添加した。過ヨウ素酸ナトリウム(0.774g、4当量)を添加し、室温で4時間撹拌した。反応をTLCでモニターし、出発材料が消費された時点で、混合物を水で希釈し、DCM(3回)で抽出し、硫酸ナトリウム上で乾燥させた。溶媒を全て除去し、残渣を次の反応に直接使用した。上記の反応からの残渣をDMF(20mL)に溶解させ、そこにオキソン(0.590g、1.05当量)を添加し、周囲温度で3時間撹拌した。出発材料が消費された時点で、2mLの1M HClを添加し、酢酸エチルで希釈した。水、ブラインで洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させた。溶媒を除去し、残渣をクロマトグラフィー(勾配抽出0%-40%のEtOAc/ヘキサン)で精製して、化合物を白色の固体(1.08g、79%)として得た。1H NMR(DMSO-d6、400MHz)δ=11.96(s,1H),8.00-7.23(m,40H),5.85(d,J=3.41Hz,1H),5.82(d,J=3.17Hz,1H),5.79-5.63(m,2H),5.56(dd,J=8.00,10.01Hz,1H),5.41(dd,J=8.00,10.01Hz,1H),5.25(d,J=7.8Hz,1H),5.15(d,J=7.8Hz,1H),4.90-4.35(m,7H),4.10-3.55(m,4H),3.30-3.20(m,1H),2.96-2.87(m,1H),2.18-2.10(m,2H),1.96(s,3H),2.01-1.95(m,1H),1.51-1.39(m,2H),1.27(s,3H),1.20-1.01(m,12H)。13C NMR(CDCl3、100MHz)δ=178.68,178.48,170.26,170.16,166.25,165.78,165.73,165.70,165.54,165.53,164.83,133.85,133.75,133.60,133.49,130.18,130.08,128.85,129.61,129.52,129.44,129.20,129.13,128.91,128.89,128.81.128.78,128.71,128.51,128.45,102.34,99.67,96.65,74.60,72.17,71.94,71.49,71.21,69.82,69.79,69.59,69.37,68.22,68.11,67.81,67.20,64.55,61.99,61.85,60.59,44.06,33.96,30.79,29.39,29.31,29.24,29.20,29.17,29.08,26.08,24.85,24.79,22.20,21.24,21.11,20.07。MS:C87H84O28について計算された分子量、計算値1576.51、実測値1599.50(M+Na)。
【0659】
206の調製:
化合物205(0.850g、0.539mmol)、ヒドロキシプロリンアミン(0.300g、0.563mmol)、およびHBTU(0.265g、0.698mmol)をアルゴン下でDMFに溶解させた。そこにDIEA(0.281mL、3当量)を添加し、周囲温度で3時間撹拌した。反応ををTLCでモニターし、出発材料が消費された時点で、混合物を氷水混合物中に注ぎ入れ、酢酸エチルで抽出し、水、ブラインで洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させた。溶媒を除去し、残渣をクロマトグラフィー(まず酢酸エチル、次いで勾配溶出3%-10%のMeOH/DCM)で精製して、生成物を淡黄色の固体(1.09g、96%)として得た。1H NMR(CDCl3、400MHz)δ=8.00-7.10(m,53H),6.90-6.80(m,4H),5.85(d,J=3.41Hz,1H),5.82(d,J=3.17Hz,1H),5.79-5.63(m,2H),5.56(dd,J=8.00,10.01Hz,1H),5.41(dd,J=8.00,10.01Hz,1H),5.25(d,J=7.8Hz,1H),5.15(d,J=7.8Hz,1H),4.97(d,J=4.15Hz,1H),4.90-4.80(m,3H),4.70-4.30(m,7H),4.20-4.00(m,2H),3.95-3.85(m,2H),3.70(s,6H),3.69-3.50(m,1H),3.30-3.20(m,2H),2.96-2.87(m,1H),2.18-2.10(m,2H),1.96(s,3H),2.01-1.95(m,1H),1.51-1.39(m,2H),1.27(s,3H),1.20-1.01(m,20H)。13C NMR(CDCl3,100MHz)δ=171.87,170.85,169.46,169.04,165.25,165.21,165.09,164.95,164.48,164.53,162.29,158.09,157.97,145.08,135.87,135.73,134.04,133.74,133.56,129.60,129.18,129.06,128.91,128.84,128.81,128.75,128.67,128.63,128.52,128.41,127.77,127.58,113.19,113.09,102.30,99.60,96.60,85.10,75.68,71.48,70.02,69.81,68.99,68.58,66.55,61.86,6=54.96,45.74,38.27,36.32,35.76,35.46,34.15,30.74,28.69,26.20,25.34,26.20,25.34,24.15,20.48,19.54。MS:C119H122N2O32について計算された分子量、計算値2090.80、実測値2013.90(M+Na)。
【0660】
長いアルキル鎖CPG207の調製:
ヒドロキシ誘導体206(0.550g、0.263mmol)をDCM(10mL)に溶解させ、そこにコハク酸無水物(0.078g、3当量)とDMAP(0.128g、4当量)を添加し、一晩撹拌した。TLCによって反応が完了したことが示された。反応混合物をDCM(20mL)で希釈し、冷えた希釈クエン酸溶液と水で連続的に洗浄し(2回)、硫酸ナトリウム上で乾燥させた。溶媒を除去し、高真空下で乾燥させて、コハク酸塩を得た。PPh3(0.90g、1.3当量)、DMAP(0.048g、1.5当量)、および前工程からのコハク酸塩を、アセトニトリルとDCM(6mL)の混合物に溶解させた。上記の溶液にDTNP(0.086g、1.05当量)のDCM(1mL)溶液を添加した。混合物を3~4分間ゆっくりと振盪させた。長鎖アルキルアミン-CPG(lcaa CPG、1.40g、133mmol/g)を混合物に添加し、2時間穏やかに振盪させた。CPGを濾過し、濾液が無色の状態であるまでDCM、MeOH/DCM(1:9)の混合物、およびDCMで連続的に洗浄し、乾燥させた。乾燥したCPGを別のフラスコに移し、穏やかに振盪させながら、TEA(1mL)の存在下、ピリジン(25%)中のAc2Oで15分間処理した。最後に、CPGを濾過し、DCM、DCM:MeOH(9:1)、次いでDCM、およびエーテルで洗浄した。CPG207を真空下で一晩乾燥させ、報告されている通りにローディングを測定した(1.48g、ローディング36μmol/g)。
【0661】
【0662】
化合物217は、報告されている手順に従って合成した(Martin,C.;Karen,P.;Laurence,V.Chem. Pharm.Bull.2004,52,965-971.)。
【0663】
218の調製:
1-デシノール(0.300g、1.92mmol)とトリクロロアセトイミデート2172.33g、1.2当量)をアルゴン下で無水DCM(10mL)に溶解させた。そこにMSを添加し、反応物を氷浴で冷却した。BF3.Et2O(30μ(30g、1.2当量)をアルゴン下で無水DCM(10mL)に溶解させた。そこにMSを添加し、反応物を氷浴で冷却した。BF130.08,128.85,129.61,129.52,129.44,129.20,129.13,128.91,128.89,128.81.128.78,128.71,128.51,128.45,102.34,99.60%のEtOAc/ヘキサン)、化合物を白色の綿毛状の固体(2.01g、86%)として得た。1H NMR(CDCl3、400MHz)δ=7.80-8.12(m,10H),7.60-7.78(m,4H),7.18-7.60(m,21H),6.20-6.05(m,2H),5.60-5.91(m,5H),5.10-5.43(m,3H),3.80-5.02(m,7H),3.40-3.56(m,1H),1.95-2.10(m,4H),1.00-1.60(m,11H)。13C NMR(CDCl3、100MHz)δ=169.89,166.51,166.40,166.35,166.32,166.24,166.10,166.03,165.99,165.96,165.86,165.61,165.46,166.38,165.34,165.27,165.23,163.68,139.36,133.71,133.67,133.56,133.40,133.27,133.21,130.12,130.05,129.98,129.95,129.92,129.88,129.80,129.77,129.73,129.68,129.62,129.55,129.50,129.47,129.41,129.40,129.29,129.14,129.11,129.03,128.96,128.87,128.84,128.83,128.78,128.76,128.63,128.56,128.54,128.48,128.37,128.26,114.33,114.26,100.92,100.84,97.04,96.52,75.36,75.17,74.84,73.37,72.95,72.90,72.81,72.57,72.507,71.94,71.58,71.05,70.37,70.27,70.19,70.06,69.86,69.24,69.19,69.02,63.71,63.56,63.20,62.93,62.69,33.96,33.91,32.93,29.60,29.53,29.50,29.46,29.42,29.33,29.30,29.22,29.14,29.06,29.00。MS.C71H68O18について計算された分子量、計算値1208.44、実測値1231.4(M+Na)。
【0664】
219の調製:
化合物218(7.26g、6mmol)をジオキサン:水の混合物(100mL、3:1)に溶解させた。反応混合物に、ルチジン(0.7mL、2当量)、次いでOsO4溶液(5mL.0.05Mのtブタノール溶液)を添加した。過ヨウ素酸ナトリウム(5.11g、4当量)を添加し、室温で4時間撹拌した。反応をTLCでモニターし、出発材料が消費された時点で、混合物を水で希釈し、DCMで抽出し(3回)、硫酸ナトリウム上で乾燥させた。溶媒を全て除去し、残渣を次の反応に直接使用した。上記の反応からの残渣をDMF(60mL)に溶解させ、そこにオキソン(3.86g、1.05当量)、そして周囲温度で3時間撹拌した。出発材料が消費された時点で、10mLの1M HClを添加し、酢酸エチルで希釈した。水、ブラインで洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させた。溶媒を除去し、残渣をクロマトグラフィー(勾配溶出20%-40%のEtOAc/ヘキサン)で精製して、化合物150を白色の固体(5.50g、75%)として得た。1H NMR(DMSO-d6、400MHz)δ=12.00(bs,1H),8.42-7.10(m,35H),6.10-4.5(m,13H),4.20-3.30(m,3H),2.20-2.03(m,3H),1.50-0.8(11H)。13C NMR(DMSO-d6、100MHz)δ=174.55,174.51,169.13,165.59,165.52,165.39,165.27,165.24,165.14,164.99,164.88,164.75,164.70,164.66,164.60,164.54,164.50,162.92,165.59,165.51,165.39,165.27,165.24,165.14,164.99,164.88,164.75,164.70,164.60,164.54,164.50,133.80,133.71,133.58,133.42,133.29,133.15,129.88,129.42,129.36,129.29,129.23,129.20,129.12,129.07,129.05,129.03,128.91,128.88,128.72,128.59,128.48,128.38,99.96,99.29,99.22,95.96,95.64,95.22,93.10,75.61,74.86,74.57,74.37,74.15,73.59,73.14,72.58,71.46,71.15,70.48,70.31,70.09,69.97,69.00,68.87,68.22,67.81,63.65,62.49,60.73,59.76,43.01,33.68,33.62,32.54,28.84,28.82,28.61,28.55,28.47,28.40,25.47,25.21,24.52,24.43,20.45。MS.C70H66O20について計算された分子量、計算値1226.41、実測値1249.4(M+Na)。
【0665】
220の調製:
化合物219(1.65g、1.37mmol)、ヒドロキシプロリンアミン(0.945g、1.3当量)、およびHBTU(0.623g、1.64mmol)をアルゴン下でDMFに溶解させた。そこにDIEA(0.71mL、3当量)を添加し、周囲温度で3時間撹拌した。反応をTLCでモニターし、出発材料が消費された時点で、混合物を氷水混合物中に注ぎ入れ、酢酸エチルで抽出し、水、ブラインで洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させた。溶媒を除去し、残渣をクロマトグラフィー(まず酢酸エチル、次いで勾配溶出3%-10%のMeOH/EtOAc)で精製して、生成物220を淡黄色の固体(1.55g、65%)として得た。1H NMR(DMSO-d6、400MHz)δ=8.20-7.32(m,35H),7.32-7.10(m,9H),6.90-6.82(m,4H),6.00-5.63(m,4H),5.41-5.37(m,1H),5.20-5.03(m,2H),4.98(d,J=4.15Hz,1H),4.90(d,J=4.15Hz,1H),4.88-4.05(m,9H),3.70(s,6H),3.65-2.93(m,10H),2.20-0.80(m,22H)。13C NMR(DMSO-d6、100MHz)δ=171.81,170.94,170.90,170.84,165.56,165.53,165.49,165.19,165.12,164.87,164.72,164.63,164.58,164.46,158.09,158.03,157.96,145.08,144.74,135.87,135.73,135.48,135.42,133.80,133.57,133.42,133.29,129.60,129.55,129.26,129.20,129.04,129.00,128.87,128.74,128.69,128.59,128.36,128.34,128.27,128.02,127.86,127.77,127.57,126.74,126.56,113.19,113.09,99.26,95.94,85.77,85.10,74.83,73.58,72.55,71.43,70.44,70.07,69.01,68.87,68.58,68.19,67.45,65.19,63.29,63.48,63.33,62.47,59.75,55.59,54.99,54.96,53.44,44.56,38.21,36.30,35.76,35.41,34.15,32.52,30.74,30.15,29.09,28.84,28.66,28.56,28.52,26.18,25.27,25.22,24.54,24.14.21.22,20.75,20.71,18.59,14.07,13.54。MS.C102H104N2O24について計算された分子量、計算値1740.70、実測値1263.7(M+Na)。
【0666】
長いアルキル鎖CPG221の調製:
ヒドロキシ誘導体220(1.50g、0.862mmol)をDCM(20mL)に溶解させ、そこにコハク酸無水物(0.174g、2当量)とDMAP(0.316g、3当量)を添加し、一晩撹拌した。TLCによって反応が完了したことが示された。反応混合物をDCM(20mL)で希釈し、冷えた希釈クエン酸溶液と水で連続的に洗浄し(2回)、硫酸ナトリウム上で乾燥させた。溶媒を除去し、高真空下で乾燥させて、コハク酸塩を得た。前工程からのコハク酸塩とHBTU(0.392g、1.2当量)をDMF(30mL)に溶解させた。そこにDIEA(0.450mL)を添加し、混合物をアルゴン下で5分間撹拌した。長鎖アルキルアミン-CPG(lcaa CPG、5.30g、133mmol/g)を混合物に添加し、2時間穏やかに振盪させた。CPGを濾過し、DMF、DCM/MeOHの混合物、およびDCMで連続的に洗浄し、乾燥させた。乾燥したCPGを別のフラスコに移し、穏やかに振盪させながら、TEA(1mL)の存在下、ピリジン(25%)中のAc2Oで15分間処理した。最後に、CPGを濾過し、DCM、DCM:MeOH(9:1)、次いでDCM、およびエーテルで洗浄した。CPG221を真空下で一晩乾燥させ、報告されている通りにローディングを測定した(5.62g、ローディング:42μmol/g)。
【0667】
【0668】
ヒドロキシ誘導体220(0.200g、0.115mmol)を無水DCM(5mL)に溶解させ、そこにDIEA(0.80mL)とクロロアミダイト試薬(0.068mL)を添加し、一晩撹拌した。反応をTLCでモニターし、溶媒を減圧下で除去し、(TEAで中和した)シリカゲルカラムに直接充填した。まず2:1(EtOAc/ヘキサン)、次いでEtOAcで溶出して、生成物(0.150g、67%)を得た。1H NMR(CDCl3、400MHz)δ=7.10-8.12(m,48H),6.85-6.75(m,4H)6.10(t,J=10.19Hz,1H),5.80-5.60(m,3H),5.33-5.20(m,2H),5.00-4.06(m,12H),3.77(s,6H),3.90-3.05(m,16H),2.80-1.01(27H)。31P(CDCl3、161MHz)δ=145.83,145.41,144.95。MS.C111H121N4O25について計算された分子量、計算値1940.81、実測値1963.80(M+Na)。
【0669】
実施例12.RNA合成および二重鎖アニーリング
1.オリゴヌクレオチド合成:
オリゴヌクレオチドは全て、AKTAoligopilot合成機またはABI 394合成機で合成された。別途明記されない限り、市販の制御多孔質ガラス固体担体(dT-CPG、500Å、Prime Synthesis社製)と、標準的な保護基を有するRNAホスホロアミダイト、すなわち、5’-O-ジメトキシトリチルN6-ベンゾイル-2’-t-ブチルジメチルシリル-アデノシン-3’-O-N,N’-ジイソプロピル-2-シアノエチルホスホロアミダイト、5’-O-ジメトキシトリチル-N4-アセチル-2’-t-ブチルジメチルシリル-シチジン-3’-O-N,N’-ジイソプロピル-2-シアノエチルホスホロアミダイト、5’-O-ジメトキシトリチル-N2-イソブチリル-2’-t-ブチルジメチルシリル-グアノシン-3’-O-N,N’-ジイソプロピル-2-シアノエチルホスホロアミダイト、および5’-O-ジメトキシトリチル-2’-t-ブチルジメチルシリル-ウリジン-3’-O-N,N’-ジイソプロピル-2-シアノエチルホスホロアミダイト(Pierce Nucleic Acids Technologies社製)を、オリゴヌクレオチド合成に使用した。2’-Fホスホロアミダイト、5’-O-ジメトキシトリチル-N4-アセチル-2’-フルオロ-シチジン-3’-O-N,N’-ジイソプロピル-2-シアノエチル-ホスホロアミダイト、および5’-O-ジメトキシトリチル-2’-フルオロ-ウリジン-3’-O-N,N’-ジイソプロピル-2-シアノエチル-ホスホロアミダイトは、Promega社から購入した。10% THF/ANC(v/v)中、0.2Mの濃度で使用したグアノシンを除いて、ホスホロアミダイトは全て、アセトニトリル(CH3CN)中、0.2Mの濃度で使用した。16分の連結/再利用時間を使用した。活性剤は、5-エチルチオテトラゾール(0.75M、American International Chemicals社製)であり、PO-酸化については、ヨウ素/水/ピリジンを使用し、PS-酸化については、2,6-ルチジン/ACN(1:1 v/v)中のPADS(2%)を使用した。
【0670】
リガンドがコンジュゲートされした鎖を、対応するリガンドを含有する固体担体を用いて合成した。例えば、配列の3’-末端での糖質部分/リガンド(例えば、GalNAcについて)の導入は、対応する糖質固体担体を用いて合成を開始することによって達成した。同様に、3’-末端のコレステロール部分は、コレステロール担体上で合成を開始することによって導入した。一般に、リガンド部分を、先の実施例に記載されたような選択したテザーを介してtrans-4-ヒドロキシプロリノールに連結させて、ヒドロキシプロリノール-リガンド部分を得た。その後、スクシネートリンカーを介してヒドロキシプロリノール-リガンド部分を固体担体と連結させるか、または標準的なホスフィチル化条件によってホスホロアミダイトに変換し、所望の糖質コンジュゲートビルディングブロックを得た。詳細については実施例1~11を参照されたい。フルオロフォア標識siRNAを、対応するホスホロアミダイトまたは固体担体(Biosearch Technologies社から購入)から合成した。オレイルリトコール酸(GalNAc)3ポリマー担体は、38.6μmol/グラムのローディングで自家生産した。マンノース(Man)3ポリマー担体も、42.0μmol/グラムのローディングで自家生産した。
【0671】
所望の位置での、例えば、配列の5’-末端での、選択されたリガンドのコンジュゲーションは、別途明記されない限り、標準的なホスホロアミダイト連結条件下で、対応するホスホロアミダイトを、成長中の鎖に連結させることによって達成した。固体に結合したオリゴヌクレオチドに対する、5-(エチルチオ)-1H-テトラゾール活性剤の存在下でのホスホロアミダイトの0.1M無水CH3CN溶液の延長15分の連結。報告されている通りに(1)標準的なヨウ素水を用いて、またはコンジュゲートオリゴヌクレオチドの10分の酸化待ち時間を伴う、tert-ブチルヒドロペルオキシド/アセトニトリル/水(10:87:3)を用いた処理によって、ヌクレオチド間ホスファイトからホスフェートへの酸化を行なった。ホスホロチオエートは、DDTT(AM Chemicals社から購入)、PADS、およびまたはボーケージ試薬などの硫黄転移試薬を用いて、ホスファイトからホスフェートへの酸化によって導入した。コレステロールホスホロアミダイトは、自家合成し、ジクロロメタン中、0.1Mの濃度で使用した。コレステロールホスホロアミダイトの連結時間は、16分であった。
【0672】
3’-コレステロール-3’-糖質を含有するオリゴヌクレオチドの合成を、コレステロールホスホロアミダイトの、所望の糖質を持つ固体担体への連結と、それに続くヌクレオシドホスホロアミダイトへの連結によって達成した。第2のリガンドを含むまたは含まないPEG化オリゴヌクレオチドを、対応するPEG-NHSエステルのアミノ結合配列への合成後コンジュゲーションによって得た。アミノリンカーを、対応するtrans-4-ヒドロキシプロリノールベースのアミノリンカーまたは市販のアミノリンカーを用いて、配列中の所望の位置に導入した。例えば、3’-PEG-3’-GalNAc含有オリゴヌクレオチドの合成を、trans-4-ヒドロキシプロリノールアミノリンカーホスホロアミダイトの、所望のGalNAcを持つ固体担体への連結と、それに続くヌクレオシドホスホロアミダイトへの連結によって遂行した。こうして得られたオリゴヌクレオチドを、配列の性質に応じて、重炭酸ナトリウム緩衝液中、pH7.5~9での、PEG-NHSエステルとの合成後コンジュゲーションに供した。
【0673】
2.脱保護I(ヌクレオ塩基脱保護)
合成が完了した後、担体を100mlガラスボトル(VWR)に移した。オリゴヌクレオチドを、80mLのエタノールアンモニア[アンモニア:エタノール(3:1)]の混合物を用いて、55℃で6.5時間、塩基とリン酸基を同時に脱保護しながら担体から切断した。ボトルを氷上で短時間冷却し、その後、エタノールアンモニア混合物を濾過して、新しい250mLのボトルに入れた。CPGを2×40mL部のエタノール/水(1:1 v/v)で洗浄した。その後、ロータリーエバポレーター(roto-vap)で混合物の容量を約30mLにまで減らした。その後、混合物をドライアイス上で凍結させ、真空下、スピードバックで乾燥させた。
【0674】
3.脱保護II(2’TBDMS基の除去)
乾燥残渣を26mlのトリエチルアミンとトリエチルアミン三フッ化水素酸塩(TEA.3HF)またはピリジン-HFとDMSO(3:4:6)に再懸濁し、60℃で90分間加熱して、2’位のtert-ブチルジメチルシリル(TBDMS)基を除去した。その後、反応物を50mlの20mM酢酸ナトリウムでクエンチし、pHを6.5に合わせ、精製するまでフリーザーで保存した。
【0675】
4.分析
精製する前に、オリゴヌクレオチドを高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)で分析したが、緩衝液とカラムの選択は、配列とコンジュゲートされるリガンドの性質によって決まる。
【0676】
5.糖がコンジュゲートされたオリゴヌクレオチドのPEG化
アミノリンカーで官能化されたオリゴヌクレオチドを、pH7.5~9.0の重炭酸ナトリウム緩衝液中で、所望の分子量のPEG-NHSエステルで処理した。反応の進行は、HPLCでモニターした。反応が完了した後、PEG化オリゴヌクレオチドをHPLCで精製し、MSで分析した。
【0677】
6.HPLC精製
リガンドがコンジュゲートされたオリゴヌクレオチドを調製的な逆相HPLCで精製した。コンジュゲートされていないオリゴヌクレオチドを、自家で詰めたTSKゲルカラムでの陰イオン交換HPLCで精製した。緩衝液は、10% CH3CN(緩衝液A)中の20mMリン酸ナトリウム(pH8.5)と10% CH3CN、1M NaBr(緩衝液B)中の20mMリン酸ナトリウム(pH8.5)であった。全長のオリゴヌクレオチドを含む画分をプールし、脱塩し、凍結乾燥させた。約0.15 ODの脱塩オリゴヌクレオチドを水で150μlに希釈し、その後、CGEとLC/MS分析用の特殊なバイアルにピペッティングした。化合物は、最終的に、LC-ESMSとCGEで分析した。
【0678】
7.siRNA調製
siRNAの調製のために、等モル量のセンス鎖とアンチセンス鎖を1×PBS中、95℃で5分間加熱し、ゆっくりと室温まで冷却した。二重鎖の完全性は、HPLC分析で確認した。
【0679】
【0680】
【0681】
【0682】
【0683】
実施例13:マウスにおける動物試験
C57/BL6マウス(5匹/群、8~10週齢、Charles River Laboratories社製(米国マサチューセッツ州所在))における製剤化されたsiRNAのボーラス投与を、27G針を用いた少量の尾静脈注射によって行なった。AD-3629、AD-3671、AD-3672、AD-3673、およびAD-3674について、100mg/kgで3日連続投与を行なった。注射しやすくするために、マウスを約3分間赤外線ランプの下に置いた。最後の投与から48時間後に、CO2による窒息によってマウスを屠殺した。0.2mlの血液を後眼窩採血により採取し、肝臓を摘出し、液体窒素中で凍結させた。血清、肝臓、および回腸は、-80℃で保存した。マウス血清中の総血清コレステロールを、製造元の指示書に従って、WakoのコレステロールE酵素比色法(Wako Chemicals USA,Inc.社製(米国バージニア州リッチモンド所在))を用いて測定した。SoftMax Proソフトウェアを用いて、VERSA Max Tunableマイクロプレートリーダー(Molecular Devices,Sunnyvale社製(米国カリフォルニア州所在))で測定した。標的遺伝子ApoBのメッセージレベルは、以下のようなbDNA解析によって測定した。
【0684】
bDNA解析:
6850 Freezer/Mill Cryogenic Grinder(SPEX CentriPrep,Inc社製)を用いて、凍結した肝臓および回腸をすり潰し、解析するまで粉末を-80℃で保存した。プロトコルに従って、分岐DNA技術をベースとしたQuantiGene Reagent System(Panomics社製(米国カリフォルニア州フレモント所在))を用いて、PCSK9のmRNAレベルを検出した。10~20mgの凍結した肝臓の粉末を、600ulの0.3ug/mlプロテイナーゼK(Epicentre社製の#MPRK092)を含む組織/細胞溶解溶液(Epicentre社製の#MTC096H)中、65℃で一晩溶解させた。その後、10ulのライセートを90ulの溶解ワーキング試薬(2容量の水に1容量のストック溶解混合液)に添加し、マウスPCSK9およびマウスGAPDHに特異的なプローブセットを含むPanomics捕捉プレート(Panomics社製(米国所在))上で、55℃で一晩インキュベートした。その後、プロトコルに従って、捕捉プレートにシグナルの増幅と検出のための処理を施し、化学発光を、マイクロプレートルミノメーターVictor2-Light(Perkin Elmer)で相対光単位(RLU)として読み取った。肝臓と回腸のライセートにおけるPCSK9 mRNA対GAPDH mRNAの比を各々の処置群に対して平均化し、PBSで処置した対照群と比較した。
【0685】
結果:
表4に示すように、PBS対照と比較して、化合物AD-3673、およびAD-3674による処置は、マウスの肝臓と回腸におけるPCSK9転写物レベルの顕著な(約50%)および(約76%)の低下(PBS対照群に対して正規化したときに、より小さいPCSK9対GAPDH転写物比で示される)をもたらし、コンジュゲートされたsiRNA分子がインビボで活性があることを示した。表4に示すように、サイレンシング活性は、それらの動物でそれぞれ32%および46%の総コレステロールの低下となって現れた。
【0686】
【0687】
実施例14:コレステロールのみがコンジュゲートされたsiRNAと比べたコレステロール-(GalNAc)3がコンジュゲートされたsiRNAのサイレンシング活性
C57/BL6マウス(3匹/群、8~10週齢、Charles River Laboratories,MA)における製剤化されたsiRNAのボーラス投与を、27G針を用いた少量の尾静脈注射によって行なった。100mg/kgで3日連続投与を行なった。最後の投与から24時間後にマウスを衰弱死させ、臓器を摘出し、液体窒素中で凍結させ、血液は、最後の投与から1、2、5、8、11、および15日目に採取した。採取した血清、肝臓、および回腸は、-80℃で保存した。総血清コレステロールを、製造元の指示書に従って、Stanbio Laboratory社(米国テキサス州ベルネ所在)のModified Trinder Methodology Cholesterol Testを用いて測定した。SoftMax Proソフトウェアを用いて、VERSA Max Tunableマイクロプレートリーダー(Molecular Devices社製(米国カリフォルニア州サニーバレー所在))で測定した。
【0688】
bDNA解析:
6850 Freezer/Mill Cryogenic Grinder(SPEX CentriPrep,Inc社製)を用いて、凍結した肝臓をすり潰し、解析するまで粉末を-80℃で保存した。プロトコルに従って、分岐DNA技術をベースとしたQuantiGene Reagent System(Panomics,Fremont,CA,USA)を用いて、ApoBとGAPDHのmRNAレベルを検出した。10~20mgの凍結した肝臓の粉末を、1000ulの0.3ug/mlプロテイナーゼK(Epicentre,#MPRK092)を含む組織/細胞溶解溶液(Epicentre,#MTC096H)中、65℃で40分間溶解させた。その後、10ulのライセートを90ulの溶解ワーキング試薬(2容量の水に1容量のストック溶解混合液)に添加し、マウスApoBおよびマウスGAPDHに特異的なプローブセットを含むPanomics捕捉プレート(Panomics社製(米国所在))上で、55℃で一晩インキュベートした。その後、プロトコルに従って、捕捉プレートにシグナルの増幅と検出のための処理を施し、化学発光を、マイクロプレートルミノメーターVictor2-Light(Perkin Elmer社製)で相対光単位(RLU)として読み取った。肝臓ライセートにおけるApoB mRNA対GAPDH mRNAの比を各々の処置群に対して平均化し、PBSで処置した対照群と比較した。
【0689】
結果:
図31に示すように、コレステロールがコンジュゲートされたsiRNAと比較して、コレステロール-(GalNAc)3がコンジュゲートされたsiRNAによる処置は、マウスの肝臓と回腸におけるApoB転写物レベルの顕著な低下(PBS対照群に対して正規化したときに、より小さいApoB対GAPDH転写物比で示される、約65%対約10%)をもたらし、コレステロール-(GalNAc)3がコンジュゲートされたsiRNAが、コレステロールがコンジュゲートされただけのsiRNAと比較して、優れたノックダウンを有することを示した。サイレンシング活性は、PBS対照と比較して、コレステロールのみがコンジュゲートされたsiRNAおよびコレステロール-(GalNAc)3がコンジュゲートされたsiRNAについて、それぞれ約50%および約90%の総コレステロールの低下となって現れた。
図32に示すように、コレステロール-(GalNAc)3がコンジュゲートされたsiRNA(AD-3698)は、コレステロールのみがコンジュゲートされたsiRNA(AD-5544)よりも、改善されて、長くなった総コレステロール低下の持続時間(約15日対約10日)を示した。
【0690】
【0691】
実施例15.コレステロールがコンジュゲートされたsiRNAとコレステロール-(GalNAc)3がコンジュゲートされたsiRNAによるCy3標識siRNAの取込みの比較
C57/BL6マウス(3匹/群、16~19グラム体重、Charles River Laboratories社製(米国マサチューセッツ州所在))におけるCy3標識されたsiRNAのボーラス投与を、尾静脈注射によって行なった。注射しやすくするために、マウスを約3分間赤外線ランプの下に置いた。AD-18117、AD-18118、AD-18119、およびPBSの投与を、100mg/kgの1回の単一ボーラス注射によって行なった。投与から15分または3時間後、アベルチン(240mg/kg)でマウスに麻酔をかけ、その後、4%パラホルムアルデヒド/リン酸緩衝食塩水で灌流した。マウスの肝臓を4%パラホルムアルデヒドで一晩、その後、20%スクロース/リン酸緩衝食塩水で一晩固定した。その後、組織をO.C.T.化合物(Tissue-Tek Optimal Cutting Temperature Compound; Sahura(米国カリフォルニア州トーランス所在))に包埋し、切片を、-20℃に保持したクライオスタットを用いて6μmに切った。これらのスライドをCarl Zeiss AxioVisionによる顕微鏡検査を用いて解析した。
図32に示すように、コレステロール-(GalNAc)3がコンジュゲートされたsiRNA(AD-18119)は、コレステロールのみ(AD-18117)または(GalNAc)3のみ(AD-18118)がコンジュゲートされたsiRNAと比べて、優れた細胞への取込みを有していた。
【0692】
実施例16.糖質がコンジュゲートされたsiRNAによるFVIIのインビボサイレンシング
実験デザイン
【0693】
図39および
図40は、糖質がコンジュゲートされたsiRNAを用いたFVIIのインビボサイレンシングの結果を示している。
【0694】
実施例17.糖質がコンジュゲートされたsiRNAによるインビボサイレンシングに対するスペーサー、結合、価数、およびコレステロール位置の効果
実験デザイン
- 1日に1回、3日連続で、100mg/kg(PBS中)、i.v.(ボーラス)
- 最後の投与の24時間後に屠殺
- 肝臓と空腸の試料でApoB(GAPDHに対して正規化)のbDNAアッセイ
- 肝臓における総コレステロールも測定した。
【0695】
結果を
図41に示す。ジスルフィド結合のあるコンジュゲートは、コレステロールコンジュゲートのみを用いた場合と同様のApoBレベルの阻害を示した。これは、ジスルフィド結合のないコンジュゲートで見られた阻害よりも低かった。この効果は、ジスルフィド結合がどこに配置されるかを問わず見られた。コレステロールがセンス鎖の5’末端に配置された場合には、阻害が、コレステロールコンジュゲートのみのレベルに低下するのが見られたので、センス鎖の3’末端にコレステロールを配置させることが明らかに好まれた。二価のコンジュゲートは三価のコンジュゲートと同じぐらい効果的であった。
【0696】
実施例18.インビボでの遺伝子サイレンシングに対するリガンドの役割(GalNAc対グルコース)
二価のGalNAcコンジュゲートおよびグルコースコンジュゲート(以下に図示)を用いて、GalNAcコンジュゲートによる受容体標的化の関与を確認した。
【化101】
【0697】
実験デザイン:
- 1日に1回、3日連続で、100mg/kg(PBS中)、i.v.(ボーラス)
- 最後の投与の24時間後に屠殺
- 肝臓と空腸の試料でApoBのbDNA(GAPDHに対して正規化)
- 肝臓の総コレステロールも測定した。
【0698】
図42に結果を示す。肝臓において、GalNAcコンジュゲートは、グルコースコンジュゲートまたはコレステロールのみのコンジュゲートよりも高いApoBの阻害を示した。しかしながら、空腸では、3つのコンジュゲートは全て、同様の活性を示した。空腸にはASGP-R1がないので、見られた活性は、3つのデザイン全てにコレステロールが存在したからであった可能性がある。
【0699】
実施例19.インビトロでの糖質コンジュゲートのサイレンシング活性
ASGPRを下方調節するために、初代マウス肝細胞を、コラーゲンコーティングした6ウェルディッシュに1日間または6日間播種した。5mM CaCl
2を用いて、ASGRを活性化させた。ApoBまたはLucのsiRNAを無血清培地中に2uMで添加し、24時間取込みを進行させた。細胞を溶解し、ApoB mRNAのノックダウンをbDNAアッセイで評価した。6日目でのASGRの下方調節を確認するために、ウェスタンブロットを行なった。
図43は、3つ全てのコンジュゲート(コレステロールのみ、GalNAcのみ、およびコレステロール-GalNac併用)が、1日目でのApoB mRNAサイレンシングを示したことを示している。培養数日後、GalNAcコンジュゲートのサイレンシング能力が損なわれるが、これは、初代細胞の培養時間の延長に伴って起こることが知られているASGRなどの受容体の下方調節と一致している。コレステロールコンジュゲートについても、6日目でのサイレンシング能力が若干低下することが示された。以下のsiRNAを用いた:
AD-1955(対照、-/-)
AD-6490(対照、-/Cy3)
AD-5546(Chol/Cy3)
AD-3697(GalNAc/Cy3)
AD-3698(GalNAc+Chol/Cy3)。
【0700】
実施例20.インビトロでの取込みの間の、糖質がコンジュゲートされたsiRNAのASGRリガンドアシアロフェツイン(ASF)との競合
初代マウス肝細胞を、コラーゲンコーティングした6ウェルディッシュに1日間播種した。5mM CaCl
2を用いて、ASGRを活性化させた。siRNAとのインキュベーションの前と、siRNAとのインキュベーションの間に、増加量のアシアロフェツインを用いて、GalNAcがコンジュゲートされたsiRNAの結合を競合させた。ApoBまたはLucのsiRNAを無血清培地中に4uMで添加し、24時間取込みを進行させた。細胞を溶解し、ApoB mRNAのノックダウンをbDNAアッセイで評価した。
図44は、アシアロフェツインの存在によって、GalNAcがコンジュゲートされたsiRNAとコレステロール-GalNAcがコンジュゲートされたsiRNAの取込みが競合することを示している。アシアロフェツインがApoBのサイレンシングに打ち勝つ能力は、GalNAcとASGRの相互作用が取込みと活性の仲介に重要であるということを示唆している。以下のsiRNAを用いた:
AD-1955(対照、-/-)
AD-6490(対照、-/Cy3)
AD-3697(GalNAc/Cy3)
AD-3698(GalNAc+Chol/Cy3)。
【0701】
実施例21.糖質コンジュゲートのインビトロでの受容体結合と取込み
ASGPRを下方調節するために、初代マウス肝細胞を、コラーゲンコーティングした6ウェルディッシュに1日間または6日間播種した。5mM CaCl
2を用いて、ASGRを活性化させた。ApoBの二重鎖を無血清培地中に1uMで添加し、6時間取込みを進行させた。取込みが完了した後、細胞を3.7%PFAで固定し、DAPIで対比染色した。
図45に見られるように、コレステロールコンジュゲート(AD-18117)またはコレステロール+GalNAcコンジュゲート(AD-18119)のいずれかを含むCy3標識siRNAは、コンジュゲートのないCy3標識siRNA(AD-18560)またはGalNAcコンジュゲートのみのCy3標識siRNA(AD-18118)よりも遥かに効率的に取り込まれた。
【0702】
実施例22.ガラクトースがコンジュゲートされたsiRNAによるインビボでのApoB遺伝子サイレンシング
マウスに50mg/kgのIVボーラスで注射した。
図46Aに示す、ガラクトースがコンジュゲートされたsiRNAは、化合物207から合成した。
図46Bは、コレステロールとガラクトースの両方のコンジュゲートを含むsiRNAが、ガラクトースコンジュゲートのみを含むsiRNAと比較して、遺伝子サイレンシングを生じさせたことを示している。
【0703】
最後に、本発明の好ましい実施態様を項分け記載する。
[実施態様1]
次式(I)に示す構造を有する化合物を含むiRNA剤:
【化102】
式中、
AおよびBは、それぞれ存在ごとに独立して、O、N(R
N)、またはSであり;
R
Nは、それぞれ存在ごとに独立して、HまたはC
1-C
6アルキルであり;
XおよびYは、それぞれ存在ごとに独立して、H、保護基、リン酸基、ホスホジエステル基、活性化されたリン酸基、活性化された亜リン酸基、ホスホロアミダイト、固体担体、-P(Z’)(Z’’)O-ヌクレオシド、-P(Z’)(Z’’)O-オリゴヌクレオチド、脂質、PEG、ステロイド、ポリマー、ヌクレオチド、ヌクレオシド、-P(Z’)(Z’’)O-リンカー-OP(Z’’’)(Z’’’’)O-オリゴヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、-P(Z’)(Z’’)-式(I)、-P(Z’)(Z’’)-、または-リンカー-Rであり;
Rは、L
Gであるかまたは以下に示す構造:
【化103】
を有し;
L
Gは、それぞれ存在ごとに独立して、リガンドであり;かつ
Z’、Z’’、Z’’’、およびZ’’’’は、それぞれ存在ごとに独立して、OまたはSである。
【0704】
[実施態様2]
次式(I’)に示す構造を有する化合物を含むiRNA剤:
【化104】
式中、
AおよびBは、それぞれ存在ごとに独立して、O、N(R
N)、またはSであり;
XおよびYは、それぞれ存在ごとに独立して、H、保護基、リン酸基、ホスホジエステル基、活性化されたリン酸基、活性化された亜リン酸基、ホスホロアミダイト、固体担体、-P(Z’)(Z’’)O-ヌクレオシド、-P(Z’)(Z’’)O-オリゴヌクレオチド、脂質、PEG、ステロイド、ポリマー、ヌクレオチド、ヌクレオシド、-P(Z’)(Z’’)O-R
1-Q’-R
2-OP(Z’’’)(Z’’’’)O-オリゴヌクレオチド、またはオリゴヌクレオチド、-P(Z’)(Z’’)-式(I)、-P(Z’)(Z’’)-、または-Q-Rであり;
Rは、L
1であるか、または次式(II)~(V):
【化105】
に示す構造を有し;
q
2A、q
2B、q
3A、q
3B、q
4A、q
4B、q
5A、q
5B、およびq
5Cは、それぞれ存在ごとに独立して、0~20であり、ここで、繰り返し単位は、同一であっても異なっていてもよく;
QおよびQ’は、それぞれ存在ごとに独立して、存在しないか、-(P
7-Q
7-R
7)
p-T
7-、または-T
7-Q
7-T
7’-B-T
8’-Q
8-T
8であり;
P
2A、P
2B、P
3A、P
3B、P
4A、P
4B、P
5A、P
5B、P
5C、P
7、T
2A、T
2B、T
3A、T
3B、T
4A、T
4B、T
4A、T
5B、T
5C、T
7、T
7’、T
8、およびT
8’は、それぞれ存在ごとに独立して、存在しないか、CO、NH、O、S、OC(O)、NHC(O)、CH
2、CH
2NH、またはCH
2Oであり;
Bは、-CH
2-N(B
L)-CH
2-であり;
B
Lは、-T
B-Q
B-T
B’-R
Xであり;
Q
2A、Q
2B、Q
3A、Q
3B、Q
4A、Q
4B、Q
5A、Q
5B、Q
5C、Q
7、Q
8、およびQ
Bは、それぞれ存在ごとに独立して、存在しないか、アルキレン、置換アルキレンであり、ここで、1つ以上のメチレンは、O、S、S(O)、SO
2、N(R
N)、C(R’)=C(R’’)、C≡C、またはC(O)の1つ以上で中断または終結されることがあり;
T
BおよびT
B’は、それぞれ存在ごとに独立して、存在しないか、CO、NH、O、S、OC(O)、OC(O)O、NHC(O)、NHC(O)NH、NHC(O)O、CH
2、CH
2NH、またはCH
2Oであり;
R
Xは、親油性物質、ビタミン、ペプチド、糖質、エンドソーム溶解成分、ステロイド、テルペン、またはカチオン性脂質であり;
R
1、R
2、R
2A、R
2B、R
3A、R
3B、R
4A、R
4B、R
5A、R
5B、R
5C、R
7は、それぞれ存在ごとに独立して、存在しないか、NH、O、S、CH
2、C(O)O、C(O)NH、NHCH(R
a)C(O)、-C(O)-CH(R
a)-NH-、CO、CH=N-O、
【化106】
またはヘテロシクリルであり;
L
1、L
2A、L
2B、L
3A、L
3B、L
4A、L
4B、L
5A、L
5B、およびL
5Cは、それぞれ存在ごとに独立して、糖質であり;
R’およびR’’は、それぞれ存在ごとに独立して、H、C
1-C
6アルキル、OH、SH、またはN(R
N)
2であり;
R
Nは、それぞれ存在ごとに独立して、H、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、またはベンジルであり;
R
aは、Hまたはアミノ酸側鎖であり;
Z’、Z’’、Z’’’、およびZ’’’’は、それぞれ存在ごとに独立して、OまたはSであり;
pはそれぞれ存在ごとに独立して、0~20である。
【0705】
[実施態様3]
前記iRNA剤が二本鎖である、実施態様1に記載のiRNA剤。
【0706】
[実施態様4]
前記化合物が前記鎖の1つの3’末端にある、実施態様3に記載のiRNA剤。
【0707】
[実施態様5]
前記化合物がセンス鎖の3’末端にある、実施態様4に記載のiRNA剤。
【0708】
[実施態様6]
前記iRNA剤が、少なくとも1つの次式(VI)の構造をさらに含む、実施態様1に記載のiRNA剤:
【化107】
式中、
X
6およびY
6は、それぞれ存在ごとに独立して、H、ヒドロキシル保護基、リン酸基、ホスホジエステル基、活性化されたリン酸基、活性化された亜リン酸基、ホスホロアミダイト、固体担体、-P(Z’)(Z’’)O-ヌクレオシド、-P(Z’)(Z’’)O-オリゴヌクレオチド、脂質、PEG、ステロイド、ポリマー、-P(Z’)(Z’’)O-R
1-Q’-R
2-OP(Z’’’)(Z’’’’)O-オリゴヌクレオチド、ヌクレオチド、またはオリゴヌクレオチド、-P(Z’)(Z’’)-式(I)もしくは-P(Z’)(Z’’)-であり;
Q
6は、存在しないか、または-(P
6-Q
6-R
6)
v-T
6-であり;
P
6およびT
6は、それぞれ存在ごとに独立して、存在しないか、CO、NH、O、S、OC(O)、NHC(O)、CH
2、CH
2NH、またはCH
2Oであり;
Q
6は、それぞれ存在ごとに独立して、存在しないか、アルキレン、置換アルキレンであり、ここで、1つ以上のメチレンは、O、S、S(O)、SO
2、N(R
N)、C(R’)=C(R’’)、C≡C、またはC(O)の1つ以上で中断または終結されることがあり;
R
6は、それぞれ存在ごとに独立して、存在しないか、NH、O、S、CH
2、C(O)O、C(O)NH、NHCH(R
a)C(O)、-C(O)-CH(R
a)-NH-、CO、CH=N-O、
【化108】
またはヘテロシクリルであり;
R’およびR’’は、それぞれ存在ごとに独立して、H、C
1-C
6アルキル、OH、SH、またはN(R
N)
2であり;
R
Nは、それぞれ存在ごとに独立して、H、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、またはベンジルであり;
R
aは、Hまたはアミノ酸側鎖であり;
Z’、Z’’、Z’’’、およびZ’’’’は、それぞれ存在ごとに独立して、OまたはSであり;
vはそれぞれ存在ごとに独立して、0~20を表し;
R
Lは、親油性物質またはカチオン性脂質である。
【0709】
[実施態様7]
RLが親油性物質である、実施態様6に記載のiRNA剤。
【0710】
[実施態様8]
RLがコレステロールである、実施態様6に記載のiRNA剤。
【0711】
[実施態様9]
R
Lが
【化109】
である、実施態様6に記載のiRNA剤。
【0712】
[実施態様10]
Rが、式(II)、式(III)、式(IV)、または式(V)である、実施態様2に記載のiRNA剤。
【0713】
[実施態様11]
Rが、次式(V):
【化110】
の構造を有する、実施態様10に記載のiRNA剤。
【0714】
[実施態様12]
Rが
【化111】
である、実施態様11に記載のiRNA剤。
【0715】
[実施態様13]
Rが
【化112】
である、実施態様11に記載のiRNA剤。
【0716】
[実施態様14]
前記化合物が、構造
【化113】
を有する、実施態様2に記載のiRNA剤。
【0717】
[実施態様15]
前記化合物が、構造
【化114】
を有する、実施態様2に記載のiRNA剤。
【0718】
[実施態様16]
前記化合物が、構造
【化115】
を有する、実施態様2に記載のiRNA剤。
【0719】
[実施態様17]
細胞における標的遺伝子の発現を調節する方法であって、前記細胞に実施態様1に記載のiRNA剤を提供する工程を含む方法。
【0720】
[実施態様18]
前記標的遺伝子が、第VII因子、Eg5、PCSK9、TPX2、apoB、SAA、TTR、RSV、PDGFβ遺伝子、Erb-B遺伝子、Src遺伝子、CRK遺伝子、GRB2遺伝子、RAS遺伝子、MEKK遺伝子、JNK遺伝子、RAF遺伝子、Erk1/2遺伝子、PCNA(p21)遺伝子、MYB遺伝子、JUN遺伝子、FOS遺伝子、BCL-2遺伝子、サイクリンD遺伝子、VEGF遺伝子、EGFR遺伝子、サイクリンA遺伝子、サイクリンE遺伝子、WNT-1遺伝子、β-カテニン遺伝子、c-MET遺伝子、PKC遺伝子、NFKB遺伝子、STAT3遺伝子、サバイビン遺伝子、Her2/Neu遺伝子、トポイソメラーゼI遺伝子、トポイソメラーゼIIα遺伝子、p73遺伝子の突然変異、p21(WAF1/CIP1)遺伝子の突然変異、p27(KIP1)遺伝子の突然変異、PPM1D遺伝子の突然変異、RAS遺伝子の突然変異、カベオリンI遺伝子の突然変異、MIB I遺伝子の突然変異、MTAI遺伝子の突然変異、M68遺伝子の突然変異、腫瘍抑制因子遺伝子の突然変異、およびp53腫瘍抑制因子遺伝子の突然変異からなる群から選択される、実施態様17に記載の方法。
【0721】
[実施態様19]
単独でまたは薬学的に許容される担体もしくは賦形剤と組み合わせて実施態様1に記載のiRNA剤を含む薬学的組成物。
配列表
【配列表】