(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-18
(45)【発行日】2024-11-26
(54)【発明の名称】車両用灯具システムおよびそのコントローラ
(51)【国際特許分類】
H05B 47/105 20200101AFI20241119BHJP
H05B 47/165 20200101ALI20241119BHJP
B60Q 1/04 20060101ALI20241119BHJP
【FI】
H05B47/105
H05B47/165
B60Q1/04 E
(21)【出願番号】P 2022510669
(86)(22)【出願日】2021-03-25
(86)【国際出願番号】 JP2021012563
(87)【国際公開番号】W WO2021193830
(87)【国際公開日】2021-09-30
【審査請求日】2024-01-04
(31)【優先権主張番号】P 2020056627
(32)【優先日】2020-03-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020056628
(32)【優先日】2020-03-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001133
【氏名又は名称】株式会社小糸製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100109047
【氏名又は名称】村田 雄祐
(74)【代理人】
【識別番号】100109081
【氏名又は名称】三木 友由
(72)【発明者】
【氏名】川端 直樹
【審査官】野木 新治
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2010-0114609(KR,A)
【文献】特開2019-213349(JP,A)
【文献】特開平08-018341(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 47/105
H05B 47/165
B60Q 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配光可変ランプを構成するアレイ状に配置された複数の発光画素をPWM(パルス幅変調)制御するコントローラであって、
前記複数の発光画素に共通に設けられ、ランプ波形を有する共通カウント値を生成する共通カウンタと、
配光指令に応じて、前記複数の発光画素のデューティサイクルを指示する複数のデューティサイクル指令値を生成するともに、前記複数の発光画素に対応する複数のオフセット値を保持しており、各発光画素について、前記共通カウント値に、対応するオフセット値を加算して個別カウント値を生成し、個別カウント値と、対応するデューティサイクル指令値の比較結果に応じた個別PWM信号を生成する信号処理部と、
を備
え、
前記信号処理部は、前記複数のオフセット値を含む位相制御データを複数、保持しており、当該複数の位相制御データから、前記配光指令に応じたひとつを選択することを特徴とするコントローラ。
【請求項2】
前記信号処理部は、前記複数の発光画素に対応する複数の加算器を含み、各加算器は、前記共通カウント値に、対応するオフセット値を加算し、前記個別カウント値を出力することを特徴とする請求項1に記載のコントローラ。
【請求項3】
前記信号処理部は、ソフトウェアプログラムを実行可能なプロセッサを含み、前記ソフトウェアプログラムと前記プロセッサによって実装されることを特徴とする請求項1に記載のコントローラ。
【請求項4】
前記複数の位相制御データのうちのひとつである第1データは、前記複数の発光画素を明るさに応じてランク分けした場合に、同じランクに含まれる複数の発光画素に対する複数の個別PWM信号の位相が実質的に分散するように定められることを特徴とする請求項
1に記載のコントローラ。
【請求項5】
前記複数の位相制御データのうちのひとつである第2データは、前記複数n個の発光画素のうち、中央領域に含まれる複数k個(k<n)の発光画素に対するk個の個別PWM信号の位相が分散し、前記複数n個の発光画素のうち、外周領域に含まれる複数l個(l<n)の発光画素に対するl個の個別PWM信号の位相が分散するように定められることを特徴とする請求項
1から4のいずれかに記載のコントローラ。
【請求項6】
前記複数の位相制御データのうちのひとつである第3データは、前記複数n個の発光画素のうち最中央領域に含まれる複数k個(k<n)の発光画素に対するk個の個別PWM信号の位相が分散し、前記複数n個の発光画素のうち、最外周領域に含まれる複数l個(l<n)の発光画素に対するl個の個別PWM信号の位相が分散し、前記最中央領域と前記最外周領域に挟まれる領域に含まれる複数m個(m<n)の発光画素に対するm個の個別PWM信号の位相が分散するように定められることを特徴とする請求項
1から5のいずれかに記載のコントローラ。
【請求項7】
前記複数の位相制御データのうちのひとつである第4データは、前記複数n個の発光画素を明るさに応じてランク分けした場合に、複数のランクに含まれる発光画素に対する個別PWM信号の位相が巡回的に変化するように定められることを特徴とする請求項
1から6のいずれかに記載のコントローラ。
【請求項8】
前記複数の位相制御データのうちのひとつである第5データは、前記複数の発光画素を、ロービームのカットオフラインより下側の第1領域、前記カットオフラインより上側の第2領域に分割したとき、前記第1領域、前記第2領域に含まれる発光画素に対する個別PWM信号の位相が巡回的に変化するように定められることを特徴とする請求項
1から7のいずれかに記載のコントローラ。
【請求項9】
前記複数の位相制御データのうちのひとつである第6データは、前記複数の個別PWM信号の位相が等しくなるように定められることを特徴とする請求項
1から8のいずれかに記載のコントローラ。
【請求項10】
前記配光可変ランプは、イメージセンサとともにアクティブセンサを構成し、
前記第6データは、前記イメージセンサの撮影サイクルにおいて選択されることを特徴とする請求項
9に記載のコントローラ。
【請求項11】
前記複数の位相制御データのうちのひとつである第7データは、前記複数の発光画素に対する複数の個別PWM信号の位相が等差となるように定められることを特徴とする請求項
1から10のいずれかに記載のコントローラ。
【請求項12】
複数の発光画素を含む発光デバイスと、
前記複数の発光画素をPWM制御する請求項1から
11のいずれかに記載のコントローラと、
を備えることを特徴とする灯具システム。
【請求項13】
配光可変ランプを構成するアレイ状に配置された複数の発光画素をPWM(パルス幅変調)制御するコントローラであって、
配光指令に応じて、前記複数の発光画素に対する複数の個別PWM信号を生成する信号処理部を備え、
前記信号処理部は、前記複数の個別PWM信号の位相の組み合わせが、配光に応じて適応的に変更可能に構成され
、
前記信号処理部は、前記複数の個別PWM信号の位相の組み合わせを規定する位相制御データを複数、保持しており、複数の前記位相制御データから、前記配光指令に応じたひとつを選択することを特徴とするコントローラ。
【請求項14】
前記複数の位相制御データのうちのひとつである第1データは、前記複数の発光画素を明るさに応じてランク分けした場合に、同じランクに含まれる複数の発光画素に対する複数の個別PWM信号の位相が実質的に分散するように定められることを特徴とする請求項
13に記載のコントローラ。
【請求項15】
前記複数の位相制御データのうちのひとつである第2データは、前記複数n個の発光画素のうち、中央領域に含まれる複数k個(k<n)の発光画素に対するk個の個別PWM信号の位相が分散し、前記複数n個の発光画素のうち、外周領域に含まれる複数l個(l<n)の発光画素に対するl個の個別PWM信号の位相が分散するように定められることを特徴とする請求項
13または14に記載のコントローラ。
【請求項16】
前記複数の位相制御データのうちのひとつである第3データは、前記複数n個の発光画素のうち最中央領域に含まれる複数k個(k<n)の発光画素に対するk個の個別PWM信号の位相が分散し、前記複数n個の発光画素のうち、最外周領域に含まれる複数l個(l<n)の発光画素に対するl個の個別PWM信号の位相が分散し、前記最中央領域と前記最外周領域に挟まれる領域に含まれる複数m個(m<n)の発光画素に対するm個の個別PWM信号の位相が分散するように定められることを特徴とする請求項
13から15のいずれかに記載のコントローラ。
【請求項17】
前記複数の位相制御データのうちのひとつである第4データは、前記複数n個の発光画素を明るさに応じてランク分けした場合に、複数のランクに含まれる発光画素に対する個別PWM信号の位相が巡回的に変化するように定められることを特徴とする請求項
13から16のいずれかに記載のコントローラ。
【請求項18】
前記複数の位相制御データのうちのひとつである第5データは、前記複数の発光画素を、ロービームのカットオフラインより下側の第1領域、前記カットオフラインより上側の第2領域に分割したとき、前記第1領域、前記第2領域に含まれる発光画素に対する個別PWM信号の位相が巡回的に変化するように定められることを特徴とする請求項13から
17のいずれかに記載のコントローラ。
【請求項19】
前記複数の位相制御データのうちのひとつである第6データは、前記複数の個別PWM信号の位相が等しくなるように定められることを特徴とする請求項
13から18のいずれかに記載のコントローラ。
【請求項20】
前記配光可変ランプは、イメージセンサとともにアクティブセンサを構成し、
前記第6データは、前記イメージセンサの撮影サイクルにおいて選択されることを特徴とする請求項
19に記載のコントローラ。
【請求項21】
前記複数の位相制御データのうちのひとつである第7データは、前記複数の発光画素に対する複数の個別PWM信号の位相が等差となるように定められることを特徴とする請求項
13から20のいずれかに記載のコントローラ。
【請求項22】
前記信号処理部は、前記複数の個別PWM信号の位相の組み合わせを、配光に応じてリアルタイムで演算することを特徴とする請求項
13に記載のコントローラ。
【請求項23】
複数の発光画素を含む発光デバイスと、
前記複数の発光画素をPWM制御する請求項
13から22のいずれかに記載のコントローラと、
を備えることを特徴とする灯具システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両用灯具に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用灯具は、一般にロービームとハイビームとを切りかえることが可能である。ロービームは、近方を所定の照度で照明するものであって、対向車や先行車にグレアを与えないよう配光規定が定められており、主に市街地を走行する場合に用いられる。一方、ハイビームは、前方の広範囲および遠方を比較的高い照度で照明するものであり、主に対向車や先行車が少ない道路を高速走行する場合に用いられる。したがって、ハイビームはロービームと比較してより運転者による視認性に優れているが、車両前方に存在する車両の運転者や歩行者にグレアを与えてしまうという問題がある。
【0003】
近年、車両の周囲の状態にもとづいて、ハイビームの配光パターンを動的、適応的に制御するADB(Adaptive Driving Beam)が提案されている。ADB技術は、車両の前方の先行車、対向車や歩行者の有無を検出し、車両あるいは歩行者に対応する領域を減光あるいは消灯するなどして、車両あるいは歩行者に与えるグレアを低減するものである。
【0004】
ADBランプとして、LED(発光ダイオード)アレイ方式のものが提案されている。
図1は、LEDアレイ方式のADBランプのブロック図である。ADBランプ1は、LEDアレイ10と、配光コントローラ20、電源回路30を備える。LEDアレイ10は、アレイ状に配置される複数のLED12と、複数のLED12を駆動するLEDドライバ14を備える。各LED12は画素に対応する。LEDドライバ14は、各画素に対応する電流源(スイッチ)を含み、電流源のオンオフを制御することで、各画素のオン、オフを切り替える。
【0005】
電源回路30は、LEDアレイ10に電源電圧VDDを供給する。配光コントローラ20は、複数の画素のオン、オフを指定する制御信号を生成し、LEDアレイ10に送信する。LEDアレイ10の出射ビームは、図示しない光学系を経て、仮想鉛直スクリーン40上に照射される。仮想鉛直スクリーン40には、複数の発光素子12のオン、オフに対応した配光パターン42が形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者は、
図1のADBランプ1について検討した結果、以下の課題を認識するに至った。
図2は、
図1のADBランプ1のPWM動作を説明する図である。
図2は、複数の画素のオン、オフが示される。
【0008】
配光コントローラ20は、各LED12について、PWM周期Tpの中のオン、オフの比率(デューティサイクル)を制御する。
図2には、すべてのLEDを同相でPWM制御する様子が示される。この場合、PWM周期Tpの先頭において、複数の電流源が同時にオンとなり、複数のLEDが同時に点灯する。
【0009】
つまり、PWM周期Tpの先頭において、電源回路30の負荷が急激に重くなる。言い換えると電源回路30は、PWM周期Tpの先頭における急峻な負荷電流IOUTの増加に対応できるように設計する必要がある。具体的には電源回路30は、大きな電流供給能力と、良好なロードレギュレーション特性が必要とされる。
【0010】
本開示は係る課題に鑑みてなされたものであり、そのある態様の例示的な目的のひとつは、複数の発光素子に電力を供給する電源回路に要求される設計仕様を緩和することが可能なコントローラの提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
ある態様に係るコントローラは、配光可変ランプを構成するアレイ状に配置された複数の発光画素をPWM(パルス幅変調)制御する。コントローラは、複数の発光画素に共通に設けられ、ランプ波形を有する共通カウント値を生成する共通カウンタと、配光指令に応じて、複数の発光画素のデューティサイクルを指示する複数のデューティサイクル指令値を生成するともに、複数の発光画素に対応する複数のオフセット値を保持しており、各発光画素について、共通カウント値に、対応するオフセット値を加算して個別カウント値を生成し、個別カウント値と、対応するデューティサイクル指令値の比較結果に応じた個別PWM信号を生成する信号処理部と、備える。
【0012】
ある態様に係るコントローラは、配光可変ランプを構成するアレイ状に配置された複数の発光画素をPWM(パルス幅変調)制御するコントローラであって、配光指令に応じて、複数の発光画素に対する複数の個別PWM信号を生成する信号処理部を備える。信号処理部は、複数の個別PWM信号の位相の組み合わせが、配光に応じて適応的に変更可能に構成される。
【0013】
なお、以上の構成要素の任意の組み合わせや、本開示の構成要素や表現を、方法、装置、システムなどの間で相互に置換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0014】
本開示のある態様によれば、電源回路に要求される能力を下げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】LEDアレイ方式のADBランプのブロック図である。
【
図2】
図1のADBランプのPWM動作を説明する図である。
【
図3】実施形態に係る灯具システムのブロック図である。
【
図4】
図4(a)、(b)は、コントローラのi番目の発光画素の動作を説明する図である。
【
図5】実施形態に係る灯具システムの動作の一例を示す図である。
【
図6】
図6(a)、(b)は、配光に応じた位相制御データの設計手法を説明する図である。
【
図7】コントローラの構成例を示すブロック図である。
【
図8】位相制御データを切り替え可能なコントローラのブロック図である。
【
図10】
図10(a)は、
図9の配光に対応する位相制御データの一例を示す図であり、
図10(b)は、
図9の配光を、別の位相制御データで制御したときの比較例である。
【
図12】
図11の配光に対応する位相制御データの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(実施形態の概要)
本開示のいくつかの例示的な実施形態の概要を説明する。この概要は、後述する詳細な説明の前置きとして、実施形態の基本的な理解を目的として、1つまたは複数の実施形態のいくつかの概念を簡略化して説明するものであり、発明あるいは開示の広さを限定するものではない。またこの概要は、考えられるすべての実施形態の包括的な概要ではなく、実施形態の欠くべからざる構成要素を限定するものではない。便宜上、「一実施形態」は、本明細書に開示するひとつの実施形態(実施例や変形例)または複数の実施形態(実施例や変形例)を指すものとして用いる場合がある。
【0017】
この概要は、考えられるすべての実施形態の広範な概要ではなく、すべての実施形態の重要な要素または重要な要素を特定することも、一部またはすべての態様の範囲を線引きすることも意図していない。その唯一の目的は、後で提示するより詳細な説明の前置きとして、1つまたは複数の実施形態のいくつかの概念を簡略化した形で提示することである。
【0018】
1. 一実施形態に係るコントローラは、配光可変ランプを構成するアレイ状に配置された複数の発光画素をPWM(パルス幅変調)制御する。コントローラは、共通カウンタと信号処理部とを備える。共通カウンタは、複数の発光画素に共通に設けられ、ランプ波形を有する共通カウント値を生成する。信号処理部は、配光指令に応じて、複数の発光画素のデューティサイクルを指示する複数のデューティサイクル指令値を生成する。信号処理部は、複数の発光画素に対応する複数のオフセット値を保持しており、各発光画素について、共通カウント値に、対応するオフセット値を加算して個別カウント値を生成し、個別カウント値と、対応するデューティサイクル指令値の比較結果に応じた個別PWM信号を生成する。
【0019】
この構成によると、個別PWM信号の位相を、オフセット値に応じてシフトさせることができるため、複数の発光画素が点灯するタイミングを任意に設定することができる。これにより、複数の発光画素に流れる電流を平滑化し、電流のピークを抑制することができ、電源回路に要求される能力を下げることができる。これは、電源回路の設計の容易化、電源回路のコストの削減、小型化などの効果をもたらしうる。
【0020】
一実施形態において、信号処理部は、複数の発光画素に対応する複数の加算器を含んでもよい。各加算器は、カウンタの共通カウント値に、対応するオフセット値を加算し、個別カウント値を出力してもよい。なお本明細書でいう「加算」は減算も含みうる。
【0021】
一実施形態において、信号処理部は、ソフトウェアプログラムを実行可能なプロセッサを含み、ソフトウェアプログラムとプロセッサの組み合わせによって実装されてもよい。
【0022】
一実施形態において、信号処理部は、複数のオフセット値を含む位相制御データを複数、保持しており、複数の位相制御データから、配光指令に応じたひとつを選択してもよい。これにより、さまざまな配光において、複数の発光画素の点灯タイミング、すなわち点灯期間を最適化でき、電流のピークをより効果的に抑制することができる。
【0023】
一実施形態において、複数の位相制御データのうちのひとつである第1データは、複数の発光画素を明るさに応じてランク分けした場合に、同じランクに含まれる複数の発光画素に対する複数の個別PWM信号の位相が分散するように定められてもよい。これにより、電流をより平滑化できる。
【0024】
一実施形態において、複数の位相制御データのうちのひとつである第2データは、複数n個の発光画素のうち、中央領域に含まれる複数k個(k<n)の発光画素に対するk個の個別PWM信号の位相が分散し、複数n個の発光画素のうち、外周領域に含まれる複数l個(l<n)の発光画素に対するl個の個別PWM信号の位相が分散するように定められてもよい。この第2データは、ハイビームの配光において有用である。
【0025】
一実施形態において、複数の位相制御データのうちのひとつである第3データは、複数n個の発光画素のうち最中央領域に含まれる複数k個(k<n)の発光画素に対するk個の個別PWM信号の位相が分散し、複数n個の発光画素のうち、最外周領域に含まれる複数l個(l<n)の発光画素に対するl個の個別PWM信号の位相が分散し、最中央領域と最外周領域に挟まれる領域に含まれる複数m個(m<n)の発光画素に対するm個の個別PWM信号の位相が分散するように定められてもよい。この第3データは、ハイビームの配光において有用である。
【0026】
一実施形態において、複数の位相制御データのうちのひとつである第4データは、複数n個の発光画素を明るさに応じてランク分けした場合に、複数のランクに含まれる発光画素に対する個別PWM信号の位相が巡回的に変化するように定められてもよい。
【0027】
一実施形態において、複数の位相制御データのうちのひとつである第5データは、複数の発光画素を、ロービームのカットオフラインより下側の第1領域と、カットオフラインより上側の第2領域に分割したとき、第1領域と第2領域に含まれる発光画素に対する個別PWM信号の位相が巡回的に変化するように定められてもよい。この第5データは、ロービームの配光において有用である。
【0028】
一実施形態において、複数の位相制御データのうちのひとつである第6データは、複数の個別PWM信号の位相が等しくなるように定められてもよい。
【0029】
一実施形態において、配光可変ランプは、イメージセンサとともにアクティブセンサを構成し、第6データは、イメージセンサの撮影サイクルにおいて選択されてもよい。これにより、イメージセンサで撮影した画像に縞が写るのを防止できる。
【0030】
一実施形態において、複数の位相制御データのうちのひとつである第7データは、複数の発光画素に対する複数の個別PWM信号の位相が等差となるように定められてもよい。
【0031】
一実施形態に係るコントローラは、配光可変ランプを構成するアレイ状に配置された複数の発光画素をPWM(パルス幅変調)制御する。コントローラは、配光指令に応じて、複数の発光画素に対する複数の個別PWM信号を生成する信号処理部を備える。信号処理部は、複数の個別PWM信号の位相の組み合わせが、配光に応じて適応的に変更可能に構成される。
【0032】
これにより、さまざまな配光において、複数の発光画素の点灯タイミング、すなわち点灯期間を最適化でき、電流のピークをより効果的に抑制することができる。
【0033】
一実施形態において、信号処理部は、複数の個別PWM信号の位相の組み合わせを規定する位相制御データを複数、保持しており、複数の位相制御データから、配光指令に応じたひとつを選択してもよい。車両用灯具では、使用する配光が、予め数パターン、定められている場合が多い。そこで配光(言い換えれば各画素のデューティサイクルの組み合わせ)ごとに、位相制御データを用意し、配光に応じて、使用する位相制御データを切り替えるようにしてもよい。
【0034】
一実施形態において、複数の位相制御データのうちのひとつである第1データは、複数の発光画素を明るさに応じてランク分けした場合に、同じランクに含まれる複数の発光画素に対する複数の個別PWM信号の位相が分散するように定められてもよい。これにより、電流をより平滑化できる。
【0035】
一実施形態において、複数の位相制御データのうちのひとつである第2データは、複数n個の発光画素のうち、中央領域に含まれる複数k個(k<n)の発光画素に対するk個の個別PWM信号の位相が分散し、複数n個の発光画素のうち、外周領域に含まれる複数l個(l<n)の発光画素に対するl個の個別PWM信号の位相が分散するように定められてもよい。この第2データは、ハイビームの配光において有用である。
【0036】
一実施形態において、複数の位相制御データのうちのひとつである第3データは、複数n個の発光画素のうち最中央領域に含まれる複数k個(k<n)の発光画素に対するk個の個別PWM信号の位相が分散し、複数n個の発光画素のうち、最外周領域に含まれる複数l個(l<n)の発光画素に対するl個の個別PWM信号の位相が分散し、最中央領域と最外周領域に挟まれる領域に含まれる複数m個(m<n)の発光画素に対するm個の個別PWM信号の位相が分散するように定められてもよい。この第3データは、ハイビームの配光において有用である。
【0037】
一実施形態において、複数の位相制御データのうちのひとつである第4データは、複数n個の発光画素を明るさに応じてランク分けした場合に、複数のランクに含まれる発光画素に対する個別PWM信号の位相が巡回的に変化するように定められてもよい。
【0038】
一実施形態において、複数の位相制御データのうちのひとつである第5データは、複数の発光画素を、ロービームのカットオフラインより下側の第1領域と、カットオフラインより上側の第2領域に分割したとき、第1領域と第2領域に含まれる発光画素に対する個別PWM信号の位相が巡回的に変化するように定められてもよい。この第5データは、ロービームの配光において有用である。
【0039】
一実施形態において、複数の位相制御データのうちのひとつである第6データは、複数の個別PWM信号の位相が等しくなるように定められてもよい。
【0040】
一実施形態において、配光可変ランプは、イメージセンサとともにアクティブセンサを構成し、第6データは、イメージセンサの撮影サイクルにおいて選択されてもよい。これにより、イメージセンサで撮影した画像に縞が写るのを防止できる。
【0041】
一実施形態において、複数の位相制御データのうちのひとつである第7データは、複数の発光画素に対する複数の個別PWM信号の位相が等差となるように定められてもよい。
【0042】
一実施形態において、コントローラは、共通カウンタと信号処理部とを備えてもよい。共通カウンタは、複数の発光画素に共通に設けられ、ランプ波形を有する共通カウント値を生成する。信号処理部は、配光指令に応じて、複数の発光画素のデューティサイクルを指示する複数のデューティサイクル指令値を生成する。信号処理部は、複数の発光画素に対応する複数のオフセット値を保持しており、各発光画素について、共通カウント値に、対応するオフセット値を加算して個別カウント値を生成し、個別カウント値と、対応するデューティサイクル指令値の比較結果に応じた個別PWM信号を生成する。
【0043】
この構成によると、個別PWM信号の位相を、オフセット値に応じてシフトさせることができるため、複数の発光画素が点灯するタイミングを任意に設定することができる。これにより、複数の発光画素に流れる電流を平滑化し、電流のピークを抑制することができ、電源回路に要求される能力を下げることができる。これは、電源回路の設計の容易化、電源回路のコストの削減、小型化などの効果をもたらしうる。
【0044】
一実施形態において、信号処理部は、複数の発光画素に対応する複数の加算器を含んでもよい。各加算器は、カウンタの共通カウント値に、対応するオフセット値を加算し、個別カウント値を出力してもよい。なお本明細書でいう「加算」は減算も含みうる。
【0045】
一実施形態において、信号処理部は、ソフトウェアプログラムを実行可能なプロセッサを含み、ソフトウェアプログラムとプロセッサの組み合わせによって実装されてもよい。
【0046】
一実施形態において、信号処理部は、複数のオフセット値のセットを複数、保持しており、複数のセットから、配光指令に応じたひとつを選択してもよい。これにより、さまざまな配光において、複数の発光画素の点灯タイミング、すなわち点灯期間を最適化でき、電流のピークをより効果的に抑制することができる。
【0047】
(実施形態)
以下、好適な実施形態について図面を参照しながら説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、実施形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0048】
本明細書において、「部材Aが、部材Bと接続された状態」とは、部材Aと部材Bが物理的に直接的に接続される場合のほか、部材Aと部材Bが、それらの電気的な接続状態に実質的な影響を及ぼさない、あるいはそれらの結合により奏される機能や効果を損なわせない、その他の部材を介して間接的に接続される場合も含む。
【0049】
同様に、「部材Cが、部材Aと部材Bの間に設けられた状態」とは、部材Aと部材C、あるいは部材Bと部材Cが直接的に接続される場合のほか、それらの電気的な接続状態に実質的な影響を及ぼさない、あるいはそれらの結合により奏される機能や効果を損なわせない、その他の部材を介して間接的に接続される場合も含む。
【0050】
また本明細書において、電圧信号、電流信号などの電気信号、あるいは抵抗、キャパシタなどの回路素子に付された符号は、必要に応じてそれぞれの電圧値、電流値、あるいは抵抗値、容量値を表すものとする。
【0051】
図3は、実施形態に係る灯具システム100のブロック図である。
【0052】
灯具システム100は、バッテリ102、車両ECU(Electronic Control Unit)104、配光可変ランプ200およびコントローラ300を備える。
【0053】
配光可変ランプ200は、LEDアレイデバイス210および電源回路220を備える。LEDアレイデバイス210は、複数(n個)の発光画素PIX1~PIXn、インタフェース回路216を備え、ひとつのパッケージに収容される。発光画素PIXの個数nは、配光可変ランプ200の解像度に応じており、nは、数百~数千であり得る。
【0054】
複数の発光画素PIX1~PIXnはそれぞれ、発光素子212および電流源214を含む。複数の発光素子212_1~212_nは、LEDやLD(半導体レーザ)、有機EL素子などの半導体発光素子であり、空間的にアレイ状(マトリクス状)に配置されている。
【0055】
複数の電流源214_1~214_nはそれぞれ、対応する複数の発光素子212_1~212_nと直列に接続される。複数の電流源214_1~214_nは個別にオン、オフが制御可能となっており、i番目の電流源214_iがオンのとき、対応する発光素子212_iが発光し、その発光画素PIXiが点灯状態となる。
【0056】
インタフェース回路216は、コントローラ300からの制御信号S2に応じて、電流源214_1~214_nのオン、オフを制御する。インタフェース回路216および後述のインタフェース回路330は、高速シリアルインタフェースでありうる。
【0057】
電源回路220は、LEDアレイデバイス210に電力を供給する。電源回路220の構成は特に限定されないが、バッテリ102からの電源電圧(バッテリ電圧)VBATを降圧するDC/DCコンバータ222と、コンバータコントローラ224を含んでもよい。コンバータコントローラ224は、LEDアレイデバイス210に対して、発光素子212_1~212_nが点灯しうる電力が供給されるように、DC/DCコンバータ222を制御する。
【0058】
コンバータコントローラ224は、全ての発光素子212と電流源214の接続ノードの電圧(発光素子212のカソード電圧)のうちの最も低い電圧をフィードバック信号VFBとし、フィードバック信号VFBが目標値VREFに近づくように、DC/DCコンバータ222を制御してもよい。
【0059】
あるいはコンバータコントローラ224は、電源回路220の出力電圧VOUTをフィードバック信号VFBとして、フィードバック信号VFBが目標値VREFに近づくように、DC/DCコンバータ222を制御してもよい。
【0060】
コントローラ300は、車両ECU104からの配光指令S1を受け、配光指令S1に応じた制御信号S2を生成し、LEDアレイデバイス210のインタフェース回路216に対して送信する。コントローラ300は、配光可変ランプ200を備えるヘッドランプの筐体内に内蔵してもよいが、筐体の外側に配置してもよい。配光可変ランプ200は発熱体であるため、コントローラ300を車室内に配置した方が、熱設計の観点からは有利である。
【0061】
具体的には、コントローラ300は、複数の発光画素PIX1~PIXnをPWM制御し、配光を制御する。PWM周波数は、数百Hz(たとえば100~400Hz)であり、したがってPWM周期は、数ミリ秒~数十ミリ秒(ms)である。
【0062】
コントローラ300は、共通カウンタ310、信号処理部320、インタフェース回路330を備える。共通カウンタ310は、複数の発光画素PIX1~PIXnに対して共通に設けられ、PWM周期Tpを有するランプ波形の共通カウント値cvを生成する。たとえばPWM制御の階調数mが256である場合、共通カウンタ310は8ビットで構成することができる。共通カウント値cvは、0から255までカウントアップし、255に達した後に0に戻るランプアップ信号であってもよい。あるいは共通カウント値cvは、255から0までカウントダウンし、0に達した後に255に戻るランプダウン信号であってもよい。
【0063】
信号処理部320は、車両ECU104からの配光指令S1に応じて、複数の発光画素PIX1~PIXnのデューティサイクルを指示する複数のデューティサイクル指令値dc1~dcnを生成する。デューティサイクル指令値dc1~dcnはそれぞれ共通カウント値cvと同じビット数(8ビット)を有し、最大値(255)のときにデューティサイクルは100%となり、最小値(0)のときにデューティサイクルは0%となる。
【0064】
信号処理部320は、複数の発光画素PIX1~PIXnに対応する複数のオフセット値ofs1~ofsn(以下、位相制御データと総称する)を保持している。信号処理部320は、各発光画素PIXi(i=1~n)について、共通カウンタ310の共通カウント値cvに、対応するオフセット値ofsiを加算して個別カウント値cviを生成する。個別カウント値cviのビット数は、共通カウント値cvと同じ(8ビット)であり、cviが最大値max(255)を超えた場合には、その値はcvi-maxとして処理される。信号処理部320は、個別カウント値cviと対応するデューティサイクル指令値dciを比較し、比較結果に応じたレベル(1/0)を有する個別PWM信号pwmiを生成する。
【0065】
インタフェース回路330は、複数の個別PWM信号pwm1~pwmnの情報を含む制御信号S2をインタフェース回路216に送信する。
【0066】
制御信号S2のフォーマットや信号形式は特に限定されない。たとえば、制御信号S2は、画像データとして伝送してもよい。
【0067】
PWM周期をTp、PWM制御の階調をmとするとき、コントローラ300は、Tp/mの制御周期Tcごとに、画像データである制御信号S2を送信し、発光画素PIX1~PIXnの状態を更新してもよい。
【0068】
以上が灯具システム100の構成である。続いてその動作を説明する。
図4(a)、(b)は、コントローラ300のi番目の発光画素の動作を説明する図である。
図4(a)は、オフセット値ofsiがゼロの場合を示す。このとき、個別カウント値cviは、共通カウント値cvと一致し、個別PWM信号pwmiは、PWM周期Tpの先頭においてオンレベルに遷移する。
【0069】
図4(b)は、オフセット値ofsiが非ゼロの場合を示す。このとき、個別カウント値cviの位相は、共通カウント値cvの位相よりも、(ofsi/256)×Tpだけ進むこととなる。位相がシフトした個別カウント値cviを、デューティサイクル指令値dciと比較することにより、オフセット値ofsiが0の場合と同じデューティサイクルを有し、位相がシフトした個別PWM信号pwmiを生成できる。
【0070】
なお、オフセット値ofsiを負とした場合(あるいは、オフセット値を正として、減算処理を行った場合)、位相を遅らせることもできる。
【0071】
図5は、実施形態に係る灯具システム100の動作の一例を示す図である。各画素のデューティサイクル(オンデューティ)にもとづいて、適切な位相シフトを与えることで、同時にオンとなる発光画素PIXの個数を減らすことができる。これにより電源回路220の出力電流I
OUTのピークを抑制することができる。これにより、電源回路220の電流供給能力を下げることができ、あるいは負荷変動に対する応答特性(ロードレギュレーション)を遅く設計することができる。これは、電源回路220の設計の容易化や、電源回路220のコストの削減、小型化などの効果をもたらしうる。
【0072】
図6(a)、(b)は、配光に応じた位相制御データの設計手法を説明する図である。理解の容易化と説明の簡潔化のために、n=4とし、すべての画素のデューティサイクルが等しく、40%であるとする。
図6(a)は第1の設計例の動作を示し、
図6(b)は、第2の設計例の動作を示す。
【0073】
この例の配光では、第1設計例よりも、第2設計例の方が、出力電流IOUTのピークを抑制できる。つまり、配光ごとに、同時点灯する発光画素の個数が減るように、オフセット値を設計するとよい。
【0074】
各画素の位相シフト量、すなわちオフセット値ofs1~ofsnは、ピーク電流が小さくなるように、配光パターンに応じて動的に計算してもよい。
【0075】
続いて信号処理部320の構成例を説明する。
図7は、コントローラ300の構成例を示すブロック図である。信号処理部320は、デューティサイクル生成部321、メモリ323A、メモリ323B、n個の発光画素PIX1~PIXnに対応するn個の回路ブロック322を備える。
【0076】
デューティサイクル生成部321は、配光指令S1にもとづいて、複数の発光画素のデューティサイクルを指示する複数のデューティサイクル指令値dc1~dcnを生成し、メモリ323Aに格納する。
【0077】
メモリ323Bは、複数の発光画素に対するオフセット値ofs1~ofsn、すなわち位相制御データを格納するテーブルである。
【0078】
各画素ごとの回路ブロック322_iは、加算器324と、比較器326を含む。加算器324は、共通カウント値cvに、オフセット値ofsiを加算し、個別オフセット値cviを生成する。比較器326は、個別オフセット値cviとデューティサイクル指令値dciを比較し、個別PWM信号pwmiを出力する。別の観点から見ると、信号処理部320は、n個の加算器324と、n個の比較器326を含む。各チャンネルのオフセット値ofs1~ofsnは、不揮発性メモリ(不図示)に保持され、ロードされる。
【0079】
信号処理部320は、ハードウェアで実装してもよい。たとえば信号処理部320は、プログラマブルロジック(PL)で構成してもよいし、IC(Integrated Circuit)で構成してもよい。あるいは、デューティサイクル生成部321の部分を、ソフトウェアを実行するプロセッサで実装し、回路ブロック322_1~322_nを、ハードウェアで実装してもよい。
【0080】
あるいは、信号処理部320全体を、ソフトウェアプログラムを実行可能なプロセッサを含み、ソフトウェアプログラムとプロセッサの組み合わせによって実装してもよい。
【0081】
車両用灯具では、使用する配光が、予め数パターン、定められている場合が多いため、配光(言い換えれば各画素のデューティサイクルの組み合わせ)ごとに、複数のオフセット値を含む位相制御データを用意し、配光に応じて、使用する位相制御データを切り替えるようにしてもよい。
【0082】
図8は、位相制御データを切り替え可能なコントローラ300Aのブロック図である。
【0083】
コントローラ300Aは、位相制御データを複数個、格納するメモリ323Cを備える。セレクタ325は、メモリ323Cから、配光指令S1に応じたひとつを選択し、メモリ323Bにロードする。あるいは、メモリ323Bを省略して、回路ブロック322_1~322_nが、メモリ323Cを直接参照できるように構成してもよい。
【0084】
続いて、配光ごとの、複数の発光画素PIXの位相制御の具体例を説明する。
【0085】
(ハイビーム)
図9は、ハイビームの配光の一例を示す図である。ハイビームの配光は、中央が最も明るく、外周ほど暗い。つまり、中央領域の発光画素のデューティサイクルが大きく、外側領域の発光画素のデューティサイクルが小さい。
【0086】
複数の位相制御データのうちのひとつは、複数の発光画素を明るさに応じてランク分けした場合に、同じランクに含まれる複数の発光画素に対する複数の個別PWM信号の位相が、PWM周期内で分散するように、つまり同じ明るさの発光画素の発光期間が集中しないように定められてもよい。これにより、電流をより平滑化できる。
【0087】
図9の例では、明るさが3個のランクに分けられ、したがって3つの最中央のHi領域、最外周のLo領域、その他のMid領域に分割される。この場合、位相制御データは、複数n個の発光画素のうちHi領域に含まれる複数k個(k<n)の発光画素に対するk個の個別PWM信号の位相が、PWM周期内で分散するように定められる。同様に、複数n個の発光画素のうち、Lo領域に含まれる複数l個(l<n)の発光画素に対するl個の個別PWM信号の位相が分散するように定められる。さらに、Hi領域とLo領域に挟まれるMid領域に含まれる複数m個(m<n)の発光画素に対するm個の個別PWM信号の位相が、PWM周期内で分散するように定められる。
【0088】
図10(a)は、
図9の配光に対応する位相制御データの一例を示す図である。
図10(b)は、
図9の配光を、別の位相制御データで制御したときの比較例である。
図10(b)のように、同じ明るさのランク、言い換えると同じ領域に含まれる発光画素の位相を近づけると(オフセット値を近くすると)、ピーク電力(ピーク電流)が大きくなる。
【0089】
これに対して
図10(b)のように、同じ明るさのランク、言い換えると同じ領域に含まれる発光画素の位相を分散させることにより、ピーク電力(ピーク電流)を抑制できる。
【0090】
ここでは3つのランク(領域)に分けたが、2つのランク(領域)に分けてもよい。あるいは4個以上のランク(領域)に分けてもよい。
【0091】
(ロービーム)
図11は、ロービームの配光の一例を示す図である。ロービームの配光は、カットオフラインより下側の第1領域と、カットオフラインより上側の第2領域を含む。第1領域の中でも、その中央部は特に輝度が高くなっている。第2領域は、オーバーヘッドサインのために、極めて暗く点灯させている。
【0092】
このような配光に使用される位相制御データは、複数n個の発光画素を明るさに応じてランク分けした場合に、複数のランクに含まれる発光画素に対する個別PWM信号の位相が巡回的に変化するように定めることができる。
【0093】
図12は、
図11の配光に対応する位相制御データの一例を示す図である。第1領域(高、中)、第2領域(極低)に含まれる発光画素に対する個別PWM信号の位相が巡回的に変化するように定められる。
図11では、第1領域(高、中)に、PIX1,PIX3、PIX5、PIX7…が含まれ、第2領域(極低)に、PIX2,PIX4,PIX6…が含まれている。
【0094】
第1領域の中は、2つの領域(高、中)に区分されており、それらに含まれる発光画素の個別PWM信号の位相は巡回的に変化するように定めてもよい。
【0095】
(均一配光)
全画素の輝度が均一となるような配光の場合には、複数の個別PWM信号の位相が均等となるように、つまりオフセット値ofs1~ofsnが等差となるように定めてもよい。
【0096】
(撮影用の配光)
配光可変ランプが、イメージセンサとともにアクティブセンサを構成する場合がある。この場合に、配光ランプの複数の発光画素が、ばらばらのタイミングで発光すると、イメージセンサに縞が写り込んでしまう。そこで、複数の個別PWM信号の位相が揃うような、つまりオフセット値ofs1~ofsnがすべて実質的に等しい位相制御データを用意しておき、イメージセンサの撮影サイクルにおいて利用するとよい。これにより、イメージセンサで撮影した画像に縞が写るのを防止できる。
【0097】
実施形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組み合わせにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。以下、こうした変形例について説明する。
【0098】
(変形例1)
コントローラ300が生成する制御信号のフォーマットにはさまざまな変形例が存在する。たとえばコントローラ300は、各チャンネルについて、個別PWM信号pwm1~pwmnが遷移するタイミングを示す制御信号S2を、配光可変ランプ200に送信してもよい。
【0099】
(変形例2)
あるいは、発光画素数PIXの個数nが少ない場合には、インタフェース回路216とインタフェース回路330の間を、n本の配線で接続し、n本の配線を利用して、n個の個別PWM信号PWM1~PMWnを伝送してもよい。
【0100】
(変形例3)
実施形態では、コントローラ300において、1個の共通カウンタを用いたが、本発明はそれに限定されない。位相が制御可能な複数n個の個別カウンタを設け、各個別カウンタの位相を、オフセット値ofsに応じてシフトできるように構成する。そして、発光画素ごとに、個別カウンタのカウント値と、デューティサイクル指令値を比較して、個別PWM信号を生成するようにしてもよい。
【0101】
(変形例4)
信号処理部320は、複数の個別PWM信号の位相の組み合わせを規定する位相制御データ(すなわちオフセット値ofs1~ofsn)を、配光に応じてリアルタイムで演算してもよい。
【0102】
実施形態は、本発明の原理、応用を示しているにすぎず、実施形態には、請求の範囲に規定された本発明の思想を逸脱しない範囲において、多くの変形例や配置の変更が認められる。
【産業上の利用可能性】
【0103】
本開示は、車両用灯具に関する。
【符号の説明】
【0104】
100 灯具システム
102 バッテリ
104 車両ECU
200 配光可変ランプ
220 電源回路
210 LEDアレイデバイス
212 発光素子
214 電流源
216 インタフェース回路
300 コントローラ
310 カウンタ
320 信号処理部
330 インタフェース回路