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特許7590412光学用スチレン系樹脂組成物、導光板及びエッジライト型面光源ユニット
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-18
(45)【発行日】2024-11-26
(54)【発明の名称】光学用スチレン系樹脂組成物、導光板及びエッジライト型面光源ユニット
(51)【国際特許分類】
   C08L 25/14 20060101AFI20241119BHJP
   C08K 5/13 20060101ALI20241119BHJP
   C08K 5/51 20060101ALI20241119BHJP
   G02B 1/04 20060101ALI20241119BHJP
   F21S 2/00 20160101ALI20241119BHJP
【FI】
C08L25/14
C08K5/13
C08K5/51
G02B1/04
F21S2/00 412
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2022511521
(86)(22)【出願日】2020-12-04
(86)【国際出願番号】 JP2020045195
(87)【国際公開番号】W WO2021199501
(87)【国際公開日】2021-10-07
【審査請求日】2023-05-19
(31)【優先権主張番号】P 2020065885
(32)【優先日】2020-04-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003296
【氏名又は名称】デンカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】山口 泰生
【審査官】小森 勇
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/129675(WO,A1)
【文献】特開2006-045368(JP,A)
【文献】国際公開第2017/094748(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/010137(WO,A1)
【文献】特開2013-154546(JP,A)
【文献】国際公開第2010/071152(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 25/00-25/18
C08K 5/13
C08K 5/51
G02B 1/04
F21S 2/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スチレン系単量体単位51~85質量%と(メタ)アクリル酸エステル系単量体単位15~49質量%を含む共重合体であるスチレン系樹脂(A)と、酸化防止剤(B)を含有する光学用スチレン系樹脂組成物であって、
前記酸化防止剤(B)は、リン系酸化防止剤(B-1)、フェノール系酸化防止剤(B-2)、及びリン・フェノール系酸化防止剤(B-3)のうち少なくとも1種を含み、
前記スチレン系樹脂(A)100質量部に対して、
前記リン系酸化防止剤(B-1)と前記リン・フェノール系酸化防止剤(B-3)を合計で0.1~0.5質量部、
前記フェノール系酸化防止剤(B-2)と前記リン・フェノール系酸化防止剤(B-3)を合計で0.01~0.5質量部、
含有する、
光学用スチレン系樹脂組成物(但し、前記スチレン系樹脂(A)が不飽和ジカルボン酸無水物系単量体単位10質量%以上を含むもの、及び、下記一般式(I)で示される単位と下記一般式(II)で示される単位からなり、数平均分子量が1×10 以上5×10 以下であるN-フェニル置換マレイミド・オレフィン共重合体を、前記スチレン系樹脂(A)と前記N-フェニル置換マレイミド・オレフィン共重合体の合計量を100質量部としたときに、30~95質量部含むものを除く)。
【化1】
(ここで、R1はフェニル基、ナフチル基、ハロゲン系元素,カルボン酸,カルボン酸エ
ステル,水酸基,シアノ基,ニトロ基,炭素数1~8の直鎖状アルキル基,炭素数1~8
の分岐状アルキル基により置換されたフェニル基又はナフチル基を示す。)
【化2】
(ここで、R2、R3は各々独立して水素又は炭素数1~6のアルキル基を示す。)
【請求項2】
スチレン系単量体単位51~85質量%と(メタ)アクリル酸エステル系単量体単位15~49質量%を含む共重合体であるスチレン系樹脂(A)と、酸化防止剤(B)を含有する光学用スチレン系樹脂組成物であって、
前記酸化防止剤(B)は、リン系酸化防止剤(B-1)、フェノール系酸化防止剤(B-2)、及びリン・フェノール系酸化防止剤(B-3)のうち少なくとも1種を含み、
前記スチレン系樹脂(A)100質量部に対して、
前記リン系酸化防止剤(B-1)と前記リン・フェノール系酸化防止剤(B-3)を合計で0.1~0.5質量部、
前記フェノール系酸化防止剤(B-2)と前記リン・フェノール系酸化防止剤(B-3)を合計で0.01~0.5質量部、
含有し、
JIS K 7206に従って、昇温速度50℃/hr、試験荷重50Nで測定されるビカット軟化温度が95~104℃である、光学用スチレン系樹脂組成物(但し、前記スチレン系樹脂(A)が不飽和ジカルボン酸無水物系単量体単位10質量%以上を含むものを除く)
【請求項3】
前記リン系酸化防止剤(B-1)は、2,2'-メチレンビス(4,6-ジ-tert-ブチル-1-フェニルオキシ)(2-エチルヘキシルオキシ)ホスホラス、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)フォスファイト、3,9-ビス(2,6-ジ―tert-ブチル―4-メチルフェノキシ)-2,4,8,10-テトラオキサ―3,9-ジホスファスピロ〔5,5〕ウンデカン、テトラキス(2,4-ジ―tert-ブチルフェニル)〔1,1ビフェニル〕―4,4ジイルビスホスホナイト、ビス(2,4-ジ―tert-ブチル―6-メチルフェニル)エチル亜リン酸エステルから選ばれる少なくとも1種である、請求項1又は請求項2に記載の光学用スチレン系樹脂組成物。
【請求項4】
前記フェノール系酸化防止剤(B-2)は、オクタデシル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、エチレンビス(オキシエチレン)ビス〔3-(5-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-m-トリル)プロピオネート〕、ペンタエリスリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、3,9-ビス[2-〔3-(3-tert-ブチル―4-ヒドロキシ―5-メチルフェニル)プロピオニルオキシ〕-1,1-ジメチルエチル]-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカンから選ばれる少なくとも1種である、請求項1~請求項3の何れか1項に記載の光学用スチレン系樹脂組成物。
【請求項5】
前記リン・フェノール系酸化防止剤(B-3)は、6-[3-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロポキシ]-2,4,8,10-テトラ-tert-ブチルジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピンである、請求項1~請求項4の何れか1項に記載の光学用スチレン系樹脂組成物。
【請求項6】
前記光学用スチレン系樹脂組成物は、6-tert-ブチル―2,4-キシレノールを0.1~20ppm含む、請求項1~請求項5の何れか1項に記載の光学用スチレン系樹脂組成物。
【請求項7】
前記光学用スチレン系樹脂組成物は、硫黄分を0.1~500ppm含む、請求項1~請求項6の何れか1項に記載の光学用スチレン系樹脂組成物。
【請求項8】
前記スチレン系樹脂(A)の重量平均分子量(Mw)は、5万~40万であり、
前記スチレン系樹脂(A)の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)は、1.0~3.0である、
請求項1~請求項7の何れか1項に記載の光学用スチレン系樹脂組成物。
【請求項9】
初期の光路長115mmでの波長380~780nmの平均透過率が85%以上である、請求項1~請求項8の何れか1項に記載の光学用スチレン系樹脂組成物。
【請求項10】
請求項1~請求項9の何れか1項に記載の光学用スチレン系樹脂組成物を成形してなる導光板。
【請求項11】
厚みが1.0~3.0mmである、請求項10に記載の導光板。
【請求項12】
請求項10又は請求項11に記載の導光板と、該導光板の端面に光を供給する光源を有する、エッジライト型面光源ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学用スチレン系樹脂組成物、導光板及びエッジライト型面光源ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置のバックライトには、光源を表示装置の背面に配置する直下型と側面に配置するエッジライト型がある。エッジライト型バックライトには、側面に配置された光源の光を表示装置の全面に導く導光板と呼ばれる部品が使用され、テレビ、デスクトップ型パーソナルコンピューターのモニター、ノート型パーソナルコンピューター、携帯電話機、カーナビゲーション用モニター等幅広い用途で使用されている。また、導光板を用いたバックライトは、照明装置や看板等としても使用される。
【0003】
導光板は、光透過距離が比較的長く、光路長での光損失が大きいため、特に高い光線透過率を有することが求められる。このため、導光板の材料は、ポリメチルメタクリレート(PMMA)に代表されるアクリル系樹脂が使用されている。しかしながら、PMMAは吸水性が高いため、吸水により導光板の反りや寸法変化が生じる場合がある。また、成形時に熱分解しやすいため、高温で成形すると成形体に外観不良が生じやすいという問題がある。これらの問題を改善するため、スチレン-(メタ)アクリル酸メチル共重合体を導光板の材料として用いることが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
一方、スチレン系単量体を原料とするスチレン系樹脂は、低吸水性には優れるが、温度や湿度などの環境変化により成形品が白濁する問題がある。具体的には、高温高湿環境下から室温環境下や室温環境下から低温環境に成形品が曝された場合、成形品内に均一に存在する水分が不安定となって相分離することで、成形品内に微小な欠陥が生じ、その結果、白濁が生じる。この問題を解決するため、スチレン系単量体と少量の(メタ)アクリル酸エステル系単量体を共重合したスチレン系樹脂からなる板状成形品が提案されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2003-075648号公報
【文献】特開2013-170186号広報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、導光板を構成する光学用スチレン系樹脂組成物が、透明性、色相、色相安定性、押出安定性、寸法安定性、耐湿熱白化性及び強度を同時に満たすことは難しかった。
【0006】
本発明はこのような問題に鑑みてなされたものであり、色相、色相安定性、押出安定性、寸法安定性、耐湿熱白化性及び強度を同時に満たす導光板用スチレン系樹脂組成物を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、スチレン系単量体単位51~99質量%と(メタ)アクリル酸エステル系単量体単位1~49質量%を含む共重合体であるスチレン系樹脂(A)と、酸化防止剤(B)を含有する光学用スチレン系樹脂組成物であって、前記酸化防止剤(B)は、リン系酸化防止剤(B-1)、フェノール系酸化防止剤(B-2)、及びリン・フェノール系酸化防止剤(B-3)のうち少なくとも1種を含み、
前記スチレン系樹脂(A)100質量部に対して、前記リン系酸化防止剤(B-1)と前記リン・フェノール系酸化防止剤(B-3)を合計で0.1~0.5質量部、前記フェノール系酸化防止剤(B-2)と前記リン・フェノール系酸化防止剤(B-3)を合計で0.01~0.5質量部、含有する、光学用スチレン系樹脂組成物が提供される。
【0008】
本発明者らは、鋭意検討を行ったところ、スチレン系樹脂におけるスチレン系単量体単位と(メタ)アクリル酸エステル系単量体単位の含有量、及び酸化防止剤の含有量が所定の範囲内である場合に、光学用スチレン系樹脂組成物が色相、色相安定性、押出安定性、寸法安定性、耐湿熱白化性及び強度を同時に満たすであることを見出し、本発明の完成に至った。
【0009】
以下、本発明の種々の実施形態を例示する。以下に示す実施形態は互いに組み合わせ可能である。
好ましくは、前記リン系酸化防止剤(B-1)は、2,2'-メチレンビス(4,6-ジ-tert-ブチル-1-フェニルオキシ)(2-エチルヘキシルオキシ)ホスホラス、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)フォスファイト、3,9-ビス(2,6-ジ―tert-ブチル―4-メチルフェノキシ)-2,4,8,10-テトラオキサ―3,9-ジホスファスピロ〔5,5〕ウンデカン、テトラキス(2,4-ジ―tert-ブチルフェニル)〔1,1ビフェニル〕―4,4ジイルビスホスホナイト、ビス(2,4-ジ―tert-ブチル―6-メチルフェニル)エチル亜リン酸エステルから選ばれる少なくとも1種である、光学用スチレン系樹脂組成物である。
好ましくは、前記フェノール系酸化防止剤(B-2)は、オクタデシル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、エチレンビス(オキシエチレン)ビス〔3-(5-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-m-トリル)プロピオネート〕、ペンタエリスリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、3,9-ビス[2-〔3-(3-tert-ブチル―4-ヒドロキシ―5-メチルフェニル)プロピオニルオキシ〕-1,1-ジメチルエチル]-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカンから選ばれる少なくとも1種である、光学用スチレン系樹脂組成物である。
好ましくは、前記リン・フェノール系酸化防止剤(B-3)は、6-[3-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロポキシ]-2,4,8,10-テトラ-tert-ブチルジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピンである、光学用スチレン系樹脂組成物である。
好ましくは、前記光学用スチレン系樹脂組成物は、6-tert-ブチル―2,4-キシレノールを0.1~20ppm含む、光学用スチレン系樹脂組成物である。
好ましくは、前記光学用スチレン系樹脂組成物は、硫黄分を0.1~500ppm含む、光学用スチレン系樹脂組成物である。
好ましくは、前記スチレン系樹脂(A)の重量平均分子量(Mw)は、5万~40万であり、前記スチレン系樹脂(A)の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)は、1.0~3.0である、光学用スチレン系樹脂組成物である。
好ましくは、初期の光路長115mmでの波長380~780nmの平均透過率が85%以上である、光学用スチレン系樹脂組成物である。
本発明の別の側面によれば、上記光学用スチレン系樹脂組成物を成形してなる導光板が提供される。
好ましくは、厚みが1.0~3.0mmである、導光板である。
本発明の別の側面によれば、上記導光板と、該導光板の端面に光を供給する光源を有する、エッジライト型面光源ユニットが提供される。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について説明する。以下に示す実施形態中で示した各種特徴事項は、互いに組み合わせ可能である。また、各特徴事項について独立して発明が成立する。
【0011】
1.スチレン系樹脂組成物
本発明の一実施形態に係るスチレン系樹脂組成物は、スチレン系樹脂(A)と、酸化防止剤(B)を含有する光学用スチレン系樹脂組成物である。
【0012】
<スチレン系樹脂(A)>
スチレン系樹脂(A)は、スチレン系単量体と(メタ)アクリル酸エステル系単量体を含む単量体を共重合して得られる樹脂である。スチレン系樹脂(A)は、スチレン系単量体単位51~99質量%と(メタ)アクリル酸エステル系単量体単位1~49質量%を含む共重合体であり、好ましくはスチレン系単量体単位51~85質量%と(メタ)アクリル酸エステル系単量体単位15~49質量%を含む共重合体であり、より好ましくはスチレン系単量体単位80~85質量%と(メタ)アクリル酸エステル系単量体単位15~20質量%を含む共重合体である。このような範囲とすることで、透明性、色相、色相安定性、押出安定性、寸法安定性、耐湿熱白化性及び強度を同時に満たすことができる。特に、スチレン系単量体を99質量%以下とすることで、湿熱白化の少ない導光板が得られ、スチレン系単量体を51%以上とすることで、寸法安定性に優れる導光板を得ることができる。スチレン系樹脂(A)の(メタ)アクリル酸エステル系単量体単位の含有量は、具体的には例えば、1,5,10,15,16,17,18,19,20,25,30,35,40,45,50質量%であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0013】
スチレン系単量体は、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、o-メチルスチレン、p-メチルスチレン、m-メチルスチレン、エチルスチレン、p-t-ブチルスチレン等が挙げられる。これらは1種を単独又は2種以上を組み合わせて使用することができる。スチレン系単量体は、好ましくはスチレンである。
【0014】
(メタ)アクリル酸エステル系単量体は、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t-ブチル、(メタ)アクリル酸イソアミル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル;(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ベンジル等の(メタ)アクリル酸アリールエステル;(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸4-t-ブチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸トリシクロデカニル、(メタ)アクリル酸アダマンチル等の(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステル;(メタ)アクリル酸グリシジル;(メタ)アクリル酸ジシクロペンタジエニル等が挙げられる。これらは1種を単独又は2種以上を組み合わせて使用することができる。(メタ)アクリル酸エステル系単量体は、好ましくは(メタ)アクリル酸アルキルエステルであり、より好ましくはメタクリル酸メチルである。
【0015】
また、スチレン系樹脂(A)は、スチレン系単量体及び(メタ)アクリル酸エステル系単量体と共重合可能な単量体と共重合して得られる共重合体であってもよい。共重合可能な単量体としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸等の(メタ)アクリル酸;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアン化ビニル;無水マレイン酸、フマル酸等のα,β-エチレン不飽和カルボン酸類;フェニルマレイミド、シクロヘキシルマレイミド等のイミド類が挙げられる。これらは1種を単独又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0016】
スチレン系樹脂(A)の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは5万~40万であり、より好ましくは10万~14万である。また、スチレン系樹脂(A)の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)は、好ましくは1.0~3.0であり、より好ましくは1.5~2.5である。このような範囲にすることにより成形性と導光板の強度を両立することができる。重量平均分子量(Mw)が5万未満では成形品の強度が不十分となる場合があり、40万を超えると成形性が低下する場合がある。また、数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)が1.0未満では成形性が低下する場合があり、3.0を超えると成形品の強度が低下する場合がある。
【0017】
<酸化防止剤(B)>
酸化防止剤(B)は、リン系酸化防止剤(B-1)、フェノール系酸化防止剤(B-2)、及びリン・フェノール系酸化防止剤(B-3)のうち少なくとも1種を含む。
【0018】
光学用スチレン系樹脂組成物は、スチレン系樹脂(A)100質量部に対して、リン系酸化防止剤(B-1)とリン・フェノール系酸化防止剤(B-3)を合計で0.1~0.5質量部含有する。このような範囲とすることで、透明性、色相、色相安定性、押出安定性、寸法安定性、耐湿熱白化性及び強度を同時に満たすことができる。リン系酸化防止剤(B-1)とリン・フェノール系酸化防止剤(B-3)の合計含有量は、スチレン系樹脂(A)100質量部に対して、具体的には例えば、0.1,0.2,0.3,0.4,0.5質量部であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0019】
また、光学用スチレン系樹脂組成物は、スチレン系樹脂(A)100質量部に対して、フェノール系酸化防止剤(B-2)とリン・フェノール系酸化防止剤(B-3)を合計で0.01~0.5質量部、好ましくは0.05~0.3質量部含有する。このような範囲とすることで、透明性、色相、色相安定性、押出安定性、寸法安定性、耐湿熱白化性及び強度を同時に満たすことができる。フェノール系酸化防止剤(B-2)とリン・フェノール系酸化防止剤(B-3)の合計含有量は、スチレン系樹脂(A)100質量部に対して、具体的には例えば、0.01,0.02,0.03,0.04,0.05,0.06,0.07,0.08,0.09,0.1,0.2,0.3,0.4,0.5質量部であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0020】
リン系酸化防止剤(B-1)とは、基本骨格にフェノール性水酸基を有しない(亜)リン酸エステル類であり、好ましくは三価のリン化合物である亜リン酸エステル類である。リン系酸化防止剤(B-1)は、例えば、2,2'-メチレンビス(4,6-ジ-tert-ブチル-1-フェニルオキシ)(2-エチルヘキシルオキシ)ホスホラス、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)フォスファイト、3,9-ビス(2,6-ジ―tert-ブチル―4-メチルフェノキシ)-2,4,8,10-テトラオキサ―3,9-ジホスファスピロ〔5,5〕ウンデカン、テトラキス(2,4-ジ―tert-ブチルフェニル)〔1,1ビフェニル〕―4,4ジイルビスホスホナイト、ビス(2,4-ジ―tert-ブチル―6-メチルフェニル)エチル亜リン酸エステル等から選ばれる少なくとも1種である。これらは1種を単独又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0021】
フェノール系酸化防止剤(B-2)とは、基本骨格にフェノール性水酸基を持ち(亜)リン酸エステル類でない酸化防止剤である。フェノール系酸化防止剤(B-2)は、例えば、オクタデシル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、エチレンビス(オキシエチレン)ビス〔3-(5-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-m-トリル)プロピオネート〕、ペンタエリスリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、3,9-ビス[2-〔3-(3-tert-ブチル―4-ヒドロキシ―5-メチルフェニル)プロピオニルオキシ〕-1,1-ジメチルエチル]-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン等から選ばれる少なくとも1種である。これらは1種を単独又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0022】
リン・フェノール系酸化防止剤(B-3)は、基本骨格にフェノール性水酸基を持つ(亜)リン酸エステル類であり、好ましくは基本骨格にフェノール性水酸基を持つ三価のリン化合物である亜リン酸エステル類である。リン・フェノール系酸化防止剤(B-3)は、例えば、6-[3-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロポキシ]-2,4,8,10-テトラ-tert-ブチルジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピン等である。
【0023】
<その他の成分>
光学用スチレン系樹脂組成物は、6-tert-ブチル―2,4-キシレノール(TBX)を好ましくは0.1~20ppm含み、より好ましくは1~5ppm含む。このような範囲とすることで、色相と透過率に優れる導光板が得られる。TBXの含有量は、具体的には例えば、0.1,0.2,0.3,0.4,0.5,0.6,0.7,0.8,0.9,1,2,3,4,5,6,7,8,9,10,11,12,13,14,15,16,17,18,19,20ppmであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0024】
光学用スチレン系樹脂組成物は、t-ブチルカテコール(TBC)を好ましくは0.1~100ppm含み、より好ましくは1~20ppm含む。このような範囲とすることで、色相と透過率に優れる導光板が得られる。TBCの含有量は、具体的には例えば、0.1,0.2,0.3,0.4,0.5,0.6,0.7,0.8,0.9,1,2,3,4,5,6,7,8,9,10,11,12,13,14,15,16,17,18,19,20,30,40,50,60,70,80,90,100ppmであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0025】
光学用スチレン系樹脂組成物は、硫黄分を好ましくは0.1~500ppm含み、より好ましくは1~400ppm含み、さらに好ましくは5~350ppm含む。このような範囲とすることで、特に色相に優れた導光板を得ることができる。硫黄分は、具体的には例えば、0.1,0.5,1,2,3,4,5,6,7,8,9,10,100,200,300,400,500ppmであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0026】
光学用スチレン系樹脂組成物には、本発明の特性を損なわない範囲で、イオウ系酸化防止剤、ラクトン系酸化防止剤、紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系安定剤、帯電防止剤、親水性添加剤、流動パラフィン(ミネラルオイル)、ポリエチレンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ブルーイング剤、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸等の高級脂肪酸、ステアリン酸アミド、エルカ酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド等の高級脂肪酸アミド、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール等の高級アルコール等の離型剤を含んでいてもよい。
【0027】
<光学特性>
【0028】
スチレン系樹脂組成物は、初期の光路長115mmでの波長380~780nmの平均透過率が、好ましくは85%以上であり、より好ましくは86%以上である。
【0029】
スチレン系樹脂組成物は、長期耐久試験後の光路長115mmでの波長380~780nmの平均透過率が、好ましくは80%以上、より好ましくは83%以上であり、さらに好ましくは85%以上である。
【0030】
スチレン系樹脂組成物は、初期の光路長115mmでのYI値が、好ましくは6.0以下であり、より好ましくは4.0以下である。
【0031】
スチレン系樹脂組成物は、長期耐久試験後の光路長115mmでのYI値が、好ましくは7.0以下であり、より好ましくは5.0以下である。
【0032】
スチレン系樹脂組成物は、初期の光路長115mmでのYI値と、長期耐久試験後の光路長115mmでのYI値とのYI値の差(ΔYI)が、好ましくは3.0以下であり、より好ましくは1.5以下であり、さらに好ましくは1.0以下である。
【0033】
<その他>
スチレン系樹脂組成物のビカット軟化温度は、好ましくは95~104℃であり、より好ましくは100~104℃である。ビカット軟化温度が95℃未満では耐熱性が不足し、使用環境によっては導光板が変形する可能性がある。
【0034】
<スチレン系樹脂組成物の製造方法>
スチレン系樹脂(A)の重合方法としては、塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法等公知のスチレン重合方法が挙げられる。品質面や生産性の面では、塊状重合法、溶液重合法が好ましく、連続重合であることが好ましい。溶媒として例えばベンゼン、トルエン、エチルベンゼン及びキシレン等のアルキルベンゼン類やアセトンやメチルエチルケトン等のケトン類、ヘキサンやシクロヘキサン等の脂肪族炭化水素等が使用できる。
【0035】
スチレン系樹脂(A)の重合時に、必要に応じて重合開始剤、連鎖移動剤、架橋剤などの重合助剤、その他の重合助剤を使用することができる。重合開始剤としては、ラジカル重合開始剤が好ましく、公知慣用の例えば、1,1-ジ(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2-ジ(t-ブチルパーオキシ)ブタン、2,2-ジ(4,4-ジ-t-ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、1,1-ジ(t-アミルパーオキシ)シクロヘキサン等のパーオキシケタール類、クメンハイドロパーオキサイド、t-ブチルハイドロパーオキサイド等のハイドロパーオキサイド類、t-ブチルパーオキシアセテート、t-アミルパーオキシイソノナノエート等のアルキルパーオキサイド類、t-ブチルクミルパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ジ-t-ヘキシルパーオキサイド等のジアルキルパーオキサイド類、t-ブチルパーオキシアセテート、t-ブチルパーオキシベンゾエート、t-ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート等のパーオキシエステル類、t-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、ポリエーテルテトラキス(t-ブチルパーオキシカーボネート)等のパーオキシカーボネート類、N,N'-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)、N,N'-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、N,N'-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、N,N'-アゾビス[2-(ヒドロキシメチル)プロピオニトリル]等が挙げられ、これらの1種あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。連鎖移動剤としては、n-ドデシルメルカプタン、tert―ドデシルメルカプタン等の脂肪族メルカプタン、芳香族メルカプタン、チオグリコール酸、メルカプトプロピオン酸等のチオカルボン酸類、エチレングリコール、テトラエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、ソルビトール等の多価アルコール水酸基をチオグリコール酸、またはメルカプトプロピオン酸でエステル化した多官能メルカプタン、ペンタフェニルエタン、α-メチルスチレンダイマー及びテルピノーレン等が挙げられる。中でも、硫黄分の含有量を調整できる観点から、脂肪族メルカプタン、芳香族メルカプタン、チオカルボン酸類、多官能メルカプタンが好ましい。
【0036】
連続重合の場合、スチレン系樹脂(A)は、重合工程と、脱揮工程、造粒工程を備える方法によって製造可能である。
【0037】
まず重合工程にて公知の完全混合槽型攪拌槽や塔型反応器等を用い、目標の分子量、分子量分布、反応転化率となるよう、重合温度調整等により重合反応が制御される。
【0038】
重合工程を出た重合体を含む重合溶液は、脱揮工程に移送され、未反応の単量体及び重合溶媒が除去される。脱揮工程は加熱器付きの真空脱揮槽やベント付き脱揮押出機などで構成される。脱揮工程を出た溶融状態の重合体は造粒工程へ移送される。造粒工程では、多孔ダイよりストランド状に溶融樹脂を押出し、コールドカット方式や空中ホットカット方式、水中ホットカット方式にてペレット形状に加工される。
【0039】
スチレン系樹脂組成物は、スチレン系樹脂(A)に酸化防止剤(B)を添加することにより製造可能である。酸化防止剤(B)はスチレン系樹脂(A)の重合時に添加してもよいし、スチレン系樹脂(A)を重合後、酸化防止剤(B)をドライブレンドし、溶融混練して製造してもよい。また、酸化防止剤(B)を予め少量のスチレン系樹脂と共に溶融混練して得たペレット形状のマスターバッチを作成し、スチレン系樹脂(A)と該マスターバッチをドライブレンド後、溶融混練し、調整してもよい。
【0040】
スチレン系樹脂組成物中のt-ブチルカテコール又は6-tert-ブチル―2,4-キシレノールの含有量及び硫黄分は、スチレン系樹脂(A)の重合開始時における含有量の調整及びその後の脱揮工程等における含有量の調整が可能である。また、任意のタイミングで添加して調整してもよい。
【0041】
2.導光板
本発明の一実施形態に係る導光板は、上記光学用スチレン系樹脂組成物を成形してなる成形品である。導光板は、エッジライト型面光源ユニットに用いることが可能な導光板である。
【0042】
<導光板の形状>
導光板は、導光板の表面に凹凸形状を有していてよい。より詳細には、導光板の表面に複数のレンチキュラー形状及び/又はプリズム形状の凸部を有していてよい。凸部は、導光板の少なくとも一つの面に設けられていることが好ましく、特に導光板の前面(発光面)である一つの面に設けられる。他の面についても必要であれば設けてもよいが、導光板の前面(発光面)にのみ設けられていることがより好ましい。
【0043】
ここで、レンチキュラー形状の凸部とは、円弧状の凸部であり、断面の縁形状が円弧状の突条体である。また、プリズム形状とは、円弧状の凸部であり、断面の縁形状が三角山形の突条体である。また、凸部は複数条、互いに平行関係となるように形成されうる。また、凸部は導光板に一体的に形成されうる。
【0044】
導光板の厚みは、1.0~3.0mmであり、好ましくは1.5~2.5mmであり、より好ましくは1.6~2.4mmである。このような範囲内であると、酸化防止剤を添加したスチレン系樹脂組成物の成形において、優れた押出安定性等の成形性や強度に優れる導光板を製造することが容易である。
【0045】
<導光板の製造方法>
本発明の一実施形態に係る導光板は、上記のスチレン系樹脂組成物を成形して得られ、成形方法としては、シート押出成形や、射出成形、圧縮成形等の公知の方法を用いることができるが、生産性、成形品の大型化が容易という点で、表面形状転写型を備えた連続シート押出成形であることが好ましい。該シート押出成形の例としては、樹脂を加熱溶融状態でフィードブロックに供給し、ダイから連続的に押し出しシートを作成する押出工程と、前記樹脂シートを、圧着ロールと冷却ロールで挟み込む押圧工程、押圧工程後、樹脂シートを冷却ロールに密着させながら搬送する搬送工程を有し、冷却ロールの表面に転写型を備える連続シート押出成形法が挙げられ、該転写型の形状を変更することで、シート表面に任意の凹凸形状を転写することができる。
【0046】
また、導光板は、前面(発光面)に凹凸形状を有していてよく、背面には光を乱反射させる反射加工が施されうる。反射加工としては、例えば、シルク印刷やインクジェット印刷のほか、レーザー照射によりドット形状の凹凸を付与する方法が挙げられ、ドットパターンの印刷には、光を拡散させる微粒子を有するインクを使用することができる。
【0047】
3.エッジライト型面光源ユニット
本発明の一実施形態に係るエッジライト型面光源ユニットは、上記導光板と、該導光板の端面に光を供給する光源を有する、エッジライト型面光源ユニットである。エッジライト型面光源ユニットは、液晶表示装置用の面光源装置として好適に用いられる。
【実施例
【0048】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。また、これらは何れも例示的なものであって、本発明の内容を限定するものではない。
【0049】
1.スチレン系樹脂A-1~A-11の製造
完全混合型撹拌槽である第1反応器と静的混合器付プラグフロー型反応器である第2反応器を直列に接続して重合工程を構成し、表1に示す条件によりスチレン系樹脂の製造を実施した。各反応器の容量は、第1反応器を30リットル、第2反応器を12リットルとした。表1に記載の原料組成にて、原料溶液を作成し、第1反応器に原料溶液を表1に記載の流量にて連続的に供給した。重合開始剤は、第1反応器の入口で表1に記載の添加濃度(原料スチレンに対する質量基準の濃度)となるように原料溶液に添加し、均一混合した。表1に記載の原料は次の通りである。
重合開始剤:t-ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート(日油株式会社製:パーブチルI)
連鎖移動剤:n-ドデシルメルカプタン(アルケマ株式会社製)
なお、第2反応器では、反応液の流れ方向に沿って温度勾配をつけ、中間部分、出口部分で表1の温度となるよう調整した。
続いて、第2反応器より連続的に取り出した重合体を含む溶液を直列に2段より構成される予熱器付き真空脱揮槽に導入し、表1に記載の樹脂温度となるよう予熱器の温度を調整し、表1に記載の圧力に調整することで、未反応スチレン及びエチルベンゼンを分離した後、多孔ダイよりストランド状に押出して、コールドカット方式にて、ストランドを冷却及び切断しペレット化した。
【0050】
<メルトマスフローレート(MFR)>
メルトマスフローレートは、JIS K 7210に従って、温度200℃、49N荷重の条件で測定した。
【0051】
<ビカット軟化温度>
ビカット軟化温度は、JIS K 7206に従って、昇温速度50℃/hr、試験荷重50Nで測定した。
【0052】
<硫黄分>
イオンクロマトグラフ(DIONEX社製DX-120)を用い、燃焼クロマトグラフ法により、下記記載の測定条件にて測定した。
燃焼用前処理装置:AQF-100、WS100、GA-100(三菱ケミカル株式会社製)
試料量:100mg
燃焼管温度:入口900℃、出口1000℃
吸収液:600mg/L H+10mg/L PO 3-(内部標準)
吸収液量:5mL
検出器:電気伝導度検出器
カラム:AS12A
流量:1.5mL/min
移動相:2.7mM NaCO+0.3mM NaHCO
試料導入量:20μL
【0053】
<スチレン系樹脂中TBC及びTBXの含有量>
スチレン系樹脂0.2gを少量のTHFに溶解した後、BSTFA(M,O-ビス(トリメチルシリル)トリフルオロアセトアミド)200μLを添加し、トリメチルシリル誘導体化処理を実施し、THFにて10mL定容した後、遠心分離によって分離した上澄み液について、ガスクロマトグラフ質量分析(GC/MS)にて、以下の条件で測定した。なお、濃度の決定には、予め作成した検量線を用いた。
GC装置 :Agilent社製 7890A
カラム :Agilent社製 DB-5ms(0.25mm i.d.×30m)液相膜厚0.25μm
カラム温度:50℃(1min)→(20℃/min昇温)→320℃(6.5min)計20min
注入口 :300℃、1.5mL/min、(スプリット比1:5)
注入量 :1μL
MS装置 :Agilent社製 5975C
インターフェイス温度:320℃
MS検出条件:SIM測定 TBC(定量用m/z 295、確認用m/z 310)
【0054】
<分子量>
重量平均分子量(Mw)及びZ平均分子量(Mz)、数平均分子量(Mn)は、ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)を用いて、次の条件で測定した。
GPC機種:昭和電工株式会社製Shodex GPC-101
カラム:ポリマーラボラトリーズ社製 PLgel 10μm MIXED-B
移動相:テトラヒドロフラン
試料濃度:0.2質量%
温度:オーブン40℃、注入口35℃、検出器35℃
検出器:示差屈折計
分子量は単分散ポリスチレンの溶出曲線より各溶出時間における分子量を算出し、ポリスチレン換算の分子量として算出したものである。
【表1】

【0055】
2.スチレン系樹脂組成物の製造
[実施例1]
ペレット化したスチレン系樹脂(A-1)100質量部に対し、リン系酸化防止剤(HP-10)0.2質量部と、リン・フェノール系酸化防止剤(GP)0.1質量部をブレンダーで混合し、スクリュー径40mmの単軸押出機を用いて、シリンダー温度230℃、スクリュー回転数100rpmで混合し、スチレン系樹脂組成物を得た。
【0056】
[実施例2~18及び比較例1~8]
配合を表2~表4のように変更した以外は実施例1と同様にスチレン系樹脂組成物及び導光板を製造した。各種測定及び評価結果を表2~表4に示す。
【0057】
なお、表2~表4中のリン系酸化防止剤(B-1)、フェノール系酸化防止剤(B-2)、及びリン・フェノール系酸化防止剤(B-3)についてはそれぞれ下記の通りである。
【0058】
(リン系酸化防止剤(B-1))
HP-10:2,2'-メチレンビス(4,6-ジ-tert-ブチル-1-フェニルオキシ)(2-エチルヘキシルオキシ)ホスホラス(株式会社ADEKA製 アデカスタブHP-10)
168:トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)フォスファイト(BASFジャパン株式会社製 Irgafos 168)
PEP-36:3,9-ビス(2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノキシ)-2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジホスファスピロ〔5.5〕ウンデカン(株式会社ADEKA製 アデカスタブ PEP-36)
P-EPQ:テトラキス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)[1,1ビフェニル]-4,4ジイルビホスホナイト(クラリアントCo.Ltd.製 Hostanox P-EPQ)
38:ビス(2,4-ジ-tert-ブチル-6-メチルフェニル)エチル亜りん酸エステル、(BASFジャパン株式会社製 Irgafos 38)
【0059】
(フェノール系酸化防止剤(B-2))
1076:オクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート(BASFジャパン株式会社製 Irganox 1076)
245:エチレンビス(オキシエチレン)ビス〔3-(5-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-m-トリル)プロピオネート〕(BASFジャパン株式会社製 Irganox 245)
1010:ペンタエリスリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート](BASFジャパン株式会社製 Irganox 1010)
AO80:3,9-ビス[2-〔3-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオニルオキシ〕-1,1-ジメチルエチル]-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン(株式会社ADEKA製 アデカスタブAO-80)
【0060】
(リン・フェノール系酸化防止剤(B-3))
GP:6-〔3-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロポキシ〕-2,4,8,10-テトラ-tert-ブチルジベンゾ〔d,f〕〔1,3,2〕ジオキサホスフェピン(住友化学株式会社製 スミライザーGP)
【0061】
【表2】
【0062】
【表3】
【0063】
【表4】
【0064】
3.評価
表2~表4中のTBC、TBX及び硫黄分の含有量は、使用したスチレン系樹脂中の含有量に基づき算出した値である。
【0065】
<スチレン系樹脂組成物の平均透過率及びYI値>
平均透過率及びYI値は、次の手順にて測定を行った。スチレン系樹脂組成物のペレットを用い、シリンダー温度230℃、金型温度50℃にて射出成形を行い、127×127×3mm厚みの板状成形品(初期サンプル)を成形した。
ここで長期の耐久性を評価するサンプル(長期耐久試験後のサンプル)は、80℃のオーブン内に1000時間保管した。
次に、初期サンプル及び長期耐久試験後のサンプルの板状成形品から115×85×3mm厚みの試験片を切り出し、端面をバフ研磨によって研磨し、端面に鏡面を有する板状成形品を作成した。研磨後の板状成形品について、日本分光株式会社製の紫外線可視分光光度計V-670を用いて、大きさ20×1.6mm、広がり角度0°の入射光において、光路長115mmでの波長350nm~800nmの分光透過率を測定し、C光源における、視野2°でのYI値をJIS K7105に倣い算出した。平均透過率(全光線透過率)は、波長380~780nmにおける分光透過率の平均として算出した。
【0066】
<導光板の製造>
当該スチレン系樹脂組成物を、スクリュー径90mm、L/D=32の単軸ベント付き押出機に供給し、200~235℃で溶融混練した後、リップ幅1000mm、リップ開度3.0mmのTダイにて、Tダイ温度245~250℃で吐出し、縦型3本冷却ロールで冷却固化後、端面をトリミングし、幅800mm、厚み2.0mmの導光板を得た。
【0067】
<導光板の成形性及び強度評価>
表2~表4における導光板の押出安定性(目ヤニ)、寸法安定性(吸湿変形)、耐湿熱白化性、及び強度について下記のように評価した。
【0068】
(押出安定性(目ヤニ))
ダイの樹脂温度を300℃に調整し、ダイ付近の目ヤニ発生状況を、以下の基準に基づき評価した。
○:シート押出開始後、30分を経過しても、目ヤニが確認されない。
△:シート押出開始後、10~30分で目ヤニが確認される。
×:シート押出開始後、10分以内に目ヤニが確認される。
なお、「目ヤニ」とは、ダイの出口ノズル周辺に発生する、茶色、若しくは黒色の樹脂劣化物であり、通常、押出量とともに増加し、所定の量を超えるとノズルより脱離し、シート表面に付着する。
【0069】
(寸法安定性(吸湿変形))
前記で得られた導光板から、200mm×300mmの試験片を切り出し、試験片を温度60℃、相対湿度90%の条件で500時間保管し、保管前後での長辺の寸法変化を測定し、以下の式により変形率を計算した。
変形率=((保管後の長辺長さ)―(保管前の長辺長さ))÷(保管前の長辺の長さ)×100(%)
変形率が0.10%以下のものを〇、0.10~0.15%のものを△、0.15%以上のものを×として、導光板の寸法安定性(吸湿変化)を評価した。
【0070】
(耐湿熱白化性)
前記で得られた導光板から、200mm×200mmの試験片を切り出し、試験片を60℃、相対湿度90%の環境下で150時間暴露後、温度23℃、相対湿度50%の環境下に試験片を取り出し、急冷し、更に1時間放置後に、試験片内部に発生する白化現象を観察し、以下の基準に基づき、耐湿熱白化性を評価した。
〇:全く白化が発生しない
△:わすかに白化が発生するが、24時間後にはほとんど消失する
×:著しく白化し、24時間後経っても消失しない
【0071】
(強度)
前記で得られた導光板から、200mm×200mmの試験片を切り出し、重量16.6gの球を使用し、JIS K-7211に従って、50%破壊高さを測定した。50%破壊高さが50cm以上のものを○、30~50cmのものを△、30cm以下のものを×として、導光板の強度を測定した。
【0072】
実施例においては、透明性、色相、色相安定性、押出安定性、寸法安定性、耐湿熱白化性及び強度が良好であり、実施例1~12及び実施例15~18においては耐湿熱白化性も含め特に優れていた。
また、硫黄分が0.1~500ppmである実施例1~16及び実施例18においては、色相が特に優れていた。