(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-18
(45)【発行日】2024-11-26
(54)【発明の名称】二次電池、二次電池を含む装置、二次電池の製造方法及び接着剤組成物
(51)【国際特許分類】
H01M 4/62 20060101AFI20241119BHJP
C08F 20/06 20060101ALI20241119BHJP
C09J 123/08 20060101ALI20241119BHJP
C09J 133/00 20060101ALI20241119BHJP
H01M 4/13 20100101ALI20241119BHJP
H01M 50/414 20210101ALI20241119BHJP
H01M 50/42 20210101ALI20241119BHJP
H01M 50/426 20210101ALI20241119BHJP
H01M 50/429 20210101ALI20241119BHJP
【FI】
H01M4/62 Z
C08F20/06
C09J123/08
C09J133/00
H01M4/13
H01M50/414
H01M50/42
H01M50/426
H01M50/429
(21)【出願番号】P 2022513130
(86)(22)【出願日】2019-12-03
(86)【国際出願番号】 CN2019122666
(87)【国際公開番号】W WO2021108984
(87)【国際公開日】2021-06-10
【審査請求日】2022-02-25
【審判番号】
【審判請求日】2024-02-01
(73)【特許権者】
【識別番号】524304976
【氏名又は名称】香港時代新能源科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】CONTEMPORARY AMPEREX TECHNOLOGY (HONG KONG) LIMITED
【住所又は居所原語表記】LEVEL 19, CHINA BUILDING, 29 QUEEN’S ROAD CENTRAL, CENTRAL, CENTRAL AND WESTERN DISTRICT, HONG KONG, CHINA
(74)【代理人】
【識別番号】100167689
【氏名又は名称】松本 征二
(72)【発明者】
【氏名】▲鐘▼▲澤▼
【合議体】
【審判長】岩間 直純
【審判官】畑中 博幸
【審判官】須原 宏光
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第110492092(CN,A)
【文献】特開2019-57487(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M4/04-62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
二次電池であって、
前記二次電池は、正極シート、負極シート及びセパレータを含み、
前記正極シート
および前記負極シート
から選択した1つ又は複数は、第1物質と第2物質とを接着するために用いられる接着剤を含み、
前記接着剤は、接着剤組成物の架橋により得られるポリマーを含み、前記接着剤組成物は、架橋性ポリマー基体及び架橋剤を含み、前記架橋性ポリマー基体は、式(I)で表されるモノマー単位のうちの1種類又は複数種類を含み、前記架橋剤は、式(II)で表される化合物を含み、
ここで、上記R
1、R
2及びR
3は、H、炭素数1~8の直鎖又は分枝鎖アルキル基からそれぞれ別々に選択され、
上記R
4は、
から選択され、
上記R
5は、-(R
2)
b-Yから選択され、上記bは、0又は1であり、上記R
2は、炭素数1~4の直鎖又は分枝鎖アルキレン基から選択され、上記Yは、アミノ基、カルボキシル基、ヒドロキシ基、エポキシ基から選択され、
上記R
6は、H、炭素数1~8の置換又は非置換の炭化水素基から選択され、
上記nは、4以上の偶数であり、2≦m≦nであ
り、
前記架橋性ポリマー基体の重量平均分子量は、20万~80万である、
二次電池。
【請求項2】
m≧3である、
請求項1に記載の二次電池。
【請求項3】
前記ポリマーは、架橋三次元ネットワーク構造を有する、
請求項1又は2に記載の二次電池。
【請求項4】
前記式(I)で表されるモノマー単位は、下記a~dのうちの1種類又は複数種類を含む、
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の二次電池。
【請求項5】
前記架橋性ポリマー基体は、モノマー単位a及びdの共重合体、モノマー単位c及びdの共重合体、モノマー単位b、c及びdの共重合体のうちの1種類又は複数種類を含む、
請求項4に記載の二次電池。
【請求項6】
前記架橋性ポリマー基体は、モノマー単位b、c及びdの共重合体を含む、
請求項5に記載の二次電池。
【請求項7】
前記架橋性ポリマー基体は、さらに下記III-1及びIII-2で表されるモノマー単位のうちの1種類又は複数種類を含む、
請求項1乃至6のいずれか1項に記載の二次電池。
【請求項8】
前記接着剤は、スチレンブタジエンゴム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデン共重合体、ポリテトラフルオロエチレン、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル、ポリイミド
、アルギン酸ナトリウム
、及びカルボキシメチルキトサンのうちの1種類又は複数種類をさらに含む、
請求項1乃至7のいずれか1項に記載の二次電池。
【請求項9】
前記負極シートは、前記接着剤を含む、
請求項1乃至8のいずれか1項に記載の二次電池。
【請求項10】
前記負極シートは、負極集電体と負極集電体の少なくとも1つの表面に設けられる負極フィルムとを含み、前記負極フィルムは、前記ポリマーを含み、前記負極フィルムにおける架橋された前記接着剤組成物の質量占有率は、≧0.5%である、
請求項9に記載の二次電池。
【請求項11】
前記負極フィルムにおける架橋された前記接着剤組成物の質量占有率は、1.0%~3.0%である、
請求項10に記載の二次電池。
【請求項12】
請求項1乃至11のいずれか1項に記載の二次電池を含む装置。
【請求項13】
接着剤組成物であって、
架橋性ポリマー基体及び架橋剤を含み、前記架橋性ポリマー基体は、式(I)で表されるモノマー単位のうちの1種類又は複数種類を含み、前記架橋剤は、式(II)で表される化合物を含み、
ここで、上記R
1、R
2及びR
3は、H、炭素数1~8の直鎖又は分枝鎖アルキル基からそれぞれ別々に選択され、
上記R
4は、
から選択され、
上記R
5は、-(R
2)
b-Yから選択され、上記bは、0又は1であり、上記R
2は、炭素数1~4の直鎖又は分枝鎖アルキレン基から選択され、上記Yは、アミノ基、カルボキシル基、ヒドロキシ基、エポキシ基から選択され、
上記R
6は、H、炭素数1~8の置換又は非置換の炭化水素基から選択され、
上記nは、4以上の偶数であり、2≦m≦nであ
り、
前記架橋性ポリマー基体の重量平均分子量は、20万~80万である、
接着剤組成物。
【請求項14】
m≧3である、
請求項13に記載の接着剤組成物。
【請求項15】
前記架橋性ポリマー基体の重量平均分子量は、40万~60万である、
請求項
13又は14に記載の接着剤組成物。
【請求項16】
前記架橋性ポリマー基体及び架橋剤の総重量を基に、前記架橋性ポリマー基体の重量占有率は、≧70%である、
請求項13乃至
15のいずれか1項に記載の接着剤組成物。
【請求項17】
前記架橋性ポリマー基体及び架橋剤の総重量を基に、前記架橋性ポリマー基体の重量占有率は、75%~95%である、
請求項
16に記載の接着剤組成物。
【請求項18】
前記架橋性ポリマー基体及び架橋剤の総重量を基に、前記架橋性ポリマー基体の重量占有率は、85%~95%である、
請求項
17に記載の接着剤組成物。
【請求項19】
前記接着剤組成物は、さらに、
(1)前記接着剤組成物の10重量%濃度水溶液の粘度は、150mPa・s~20000mPa・sであること、
(2)前記接着剤組成物の10重量%濃度水溶液のpH値は、pH>7であること
のうちの1種類又は複数種類を満たす、
請求項13乃至
18のいずれか1項に記載の接着剤組成物。
【請求項20】
前記接着剤組成物は、さらに、
(1)前記接着剤組成物の10重量%濃度水溶液の粘度は、600mPa・s~4000mPa・sであること、
(2)前記接着剤組成物の10重量%濃度水溶液のpH値は、7.5~10.5であること
のうちの1種類又は複数種類を満たす、
請求項
19に記載の接着剤組成物。
【請求項21】
二次電池の製造方法であって、
接着剤を用いて第1物質と第2物質とを接着する工程を含み、
前記接着剤は、架橋性ポリマー基体及び架橋剤の架橋により得られるポリマーを含み、
前記二次電池は、正極シート、負極シート及びセパレータを含み、前記正極シート
および前記負極シート
から選択した1つ又は複数は、接着剤を含み、
前記架橋性ポリマー基体は、式(I)で表されるモノマー単位のうちの1種類又は複数種類を含み、前記架橋剤は式(II)で表される化合物を含み、
ここで、上記R
1、R
2及びR
3は、H、炭素数1~8の直鎖又は分枝鎖アルキル基からそれぞれ別々に選択され、
上記R
4は、
から選択され、
上記R
5は、-(R
2)
b-Yから選択され、上記bは、0又は1であり、上記R
2は、炭素数1~4の直鎖又は分枝鎖アルキレン基から選択され、上記Yは、アミノ基、カルボキシル基、ヒドロキシ基、エポキシ基から選択され、
上記R
6は、H、炭素数1~8の置換又は非置換の炭化水素基から選択され、
上記nは、4以上の偶数であり、2≦m≦nであ
り、
前記架橋性ポリマー基体の重量平均分子量は、20万~80万である、
製造方法。
【請求項22】
m≧3である、
請求項
21に記載の製造方法。
【請求項23】
前記架橋性ポリマー基体及び架橋剤は、加熱条件下で架橋される、
請求項
21又は
22に記載の製造方法。
【請求項24】
前記加熱の温度は、60℃~160℃である、
請求項
23に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、二次電池の技術分野に属し、具体的に、二次電池、二次電池を含む装置、二次電池の製造方法及び接着剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン二次電池に代表される二次電池は、充放電性能が高く、メモリー効果がなく、環境にやさしいため、電気自動車及び消費類電子製品に広く適用されている。新エネルギー自動車の急速な普及に伴い、動力型の二次電池の需要量が爆発的に増加されている。市場は、二次電池の耐用年数に対してより高い要求を提出している。そのため、二次電池のサイクル寿命をさらに向上させることができる新たな技術の提供が必要となっている。
【発明の概要】
【0003】
本願は、高いサイクル寿命を有する二次電池、当該二次電池を含む装置、二次電池の製造方法、及び二次電池のサイクル寿命の向上が可能な接着剤組成物を提供する。
【0004】
上記目的を達成するために、本願の第1の態様は、二次電池を提供し、当該二次電池は、第1物質と第2物質とを接着するために用いられる接着剤を含み、前記接着剤は、接着剤組成物の架橋により得られるポリマーを含み、前記接着剤組成物は、架橋性ポリマー基体及び架橋剤を含み、前記架橋性ポリマー基体は、式(I)で表されるモノマー単位のうちの1種類又は複数種類を含み、前記架橋剤は、式(II)で表される化合物を含み、
ここで、上記R
1、R
2及びR
3は、H、炭素数1~8の直鎖又は分枝鎖アルキル基からそれぞれ別々に選択され、
上記R
4は、活性水素含有の極性基であり、
上記R
5は、上記R
4に対して反応活性を呈する基であり、
上記R
6は、H、炭素数1~8の置換又は非置換の炭化水素基から選択され、
上記nは、4以上の偶数であり、2≦m≦nであり、好ましくは、m≧3である。
【0005】
本願の第2の態様は、本願の第1の態様に記載の二次電池を含む装置を提供する。
【0006】
本願の第3の態様は、接着剤組成物を提供し、当該接着剤組成物は、架橋性ポリマー基体及び架橋剤を含み、前記架橋性ポリマー基体は、式(I)で表されるモノマー単位のうちの1種類又は複数種類を含み、前記架橋剤は、式(II)で表される化合物を含み、
ここで、上記R
1、R
2及びR
3は、H、炭素数1~8の直鎖又は分枝鎖アルキル基からそれぞれ別々に選択され、
上記R
4は、活性水素含有の極性基であり、
上記R
5は、上記R
4に対して反応活性を呈する基であり、
上記R
6は、H、炭素数1~8の置換又は非置換の炭化水素基から選択され、
上記nは、4以上の偶数であり、2≦m≦nであり、好ましくは、m≧3である。
【0007】
本願の第4の態様は、二次電池の製造方法を提供し、前記方法は、接着剤を用いて第1物質と第2物質とを接着する工程を含み、前記接着剤は、架橋性ポリマー基体及び架橋剤の架橋により得られるポリマーを含み、前記架橋性ポリマー基体は、式(I)で表されるモノマー単位のうちの1種類又は複数種類を含み、前記架橋剤は式(II)で表される化合物を含み、
ここで、上記R
1、R
2及びR
3は、H、炭素数1~8の直鎖又は分枝鎖アルキル基からそれぞれ別々に選択され、
上記R
4は、活性水素含有の極性基であり、
上記R
5は、上記R
4に対して反応活性を呈する基であり、
上記R
6は、H、炭素数1~8の置換又は非置換の炭化水素基から選択され、
上記nは、4以上の偶数であり、2≦m≦nであり、好ましくは、m≧3である。
【0008】
本願に係る二次電池は、接着剤を用いて第1物質と第2物質とを接着する。接着剤は、架橋性ポリマー基体越及び架橋剤を含む接着剤組成物の架橋により得られる。架橋性ポリマー基体は、式(I)で表されるモノマー単位を含み、当該モノマー単位は、活性水素含有の極性基を有し、これにより接着剤と第1物質及び第2物質との間にいずれも高い親和性を有するため、第1物質と第2物質との間に強い相互作用を有する。特に、架橋剤は、式(II)で表される化合物を含み、それは、前記モノマー単位の活性水素含有極性基と反応活性を呈する基を2つ以上有し、これにより、接着剤組成物が架橋された後に良好な架橋構造を形成し、第1物質と第2物質との間の相互作用力を大幅に向上させることができる。したがって、二次電池における第1物質と第2物質との間に強固な接着を形成し、電池の構造安定性及びサイクル寿命をいずれも向上させることができる。
【0009】
特に、第1物質及び第2物質がいずれも負極活性材料である場合、接着剤の接着作用により負極活性材料粒子間に強い相互作用を形成することができ、これにより負極シートの凝集力を大幅に向上させることができる。したがって、負極シートの冷間圧延成形及び二次電池の充放電サイクル過程での膨張問題が効果的に緩和されるため、そのサイクル寿命及び安全性能がいずれも向上されることができる。
【0010】
第1物質が負極活性材料であり、第2物質が負極集電体である場合、接着剤の接着作用により負極活性材料と負極集電体との間に強い接着力を有し、これにより負極活性材料は負極集電体に効果的に接着され、負極シートは高い接着強度を有し、膜剥離、粉落ちのリスクが低い。当該負極シートは、充放電サイクル過程において引き起こされる体積変化が小さく、電池のサイクル膨張を低下させることができる。したがって、電池のサイクル寿命及び安全性能をいずれも向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
以下、本願の実施例の技術的解決手段をより明確に説明するために、本願の実施例に必要な図面を簡単に紹介し、明らかに、以下に説明された図面は本願のいくつかの実施例だけであり、当業者にとって、創造的な労力を要することなく、さらに図面に基づいて他の図面を得ることができる。
【0012】
【
図1】本願の実施例に係る二次電池の概略図である。
【
図2】本願の実施例に係る電池モジュールの概略図である。
【
図3】本願の実施例に係る電池パックの概略図である。
【0013】
ここで、図面符号の説明は、以下の通りである。
1 電池パック
2 上部筐体
3 下部筐体
4 電池モジュール
5 二次電池
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本願の発明目的、技術的解決手段及び有益な技術的効果をより明確にするために、実施例と組み合わせて本願をさらに詳細に説明する。理解すべきことは、本明細書に記載の実施例は、単に本願を解釈するためのものであり、本願を限定するためのものではない。
【0015】
簡単のために、本明細書ではいくつかの数値範囲のみを明確に開示している。ただし、任意の下限は、任意の上限と組み合わせて明確に記載されていない範囲を形成してもよく、任意の下限は、他の下限と組み合わせて明確に記載されていない範囲を形成してもよく、同様に、任意の上限は、任意の他の上限と組み合わせて明確に記載されていない範囲を形成してもよい。また、明確に記載されていないが、範囲の端点間の各点又は単一の数値はその範囲内に含まれる。したがって、各点又は単一の数値は、それ自体の下限又は上限として、任意の他の点又は単一の数値と組み合わせて、又は他の下限又は上限と組み合わせて、明確に記載されていない範囲を形成してもよい。
【0016】
本明細書の記載において、特に説明しない限り、「以上」及び「以下」は、対象となる数字を含み、「1種類又は複数種類」のうち「複数種類」は、2種類又は2種類以上を意味することに留意すべきである。
【0017】
本願の上記発明の概要は、本願に開示の各実施形態又は各実現形態を説明することを意図するものではない。以下の説明は、例示的な実施形態をより具体的に例示して説明する。本願全体を通して、様々な組み合わせの形で使用できる一連の実施例によってガイダンスが提供される。各実施例において、列挙は、代表的なグループとしてのみ使用され、網羅的であると解釈されてはいけない。
【0018】
電気エネルギーは、経済的、実用的、清潔であり且つ制御及び変換しやすいエネルギー形態として、ますます多くの装置に適用されている。二次電池は、高いエネルギー密度を有し、携帯しやすく、メモリ効果がなく、環境にやさしい等の利点を有するため、装置の電源の優先オプションとなる。
[二次電池]
【0019】
したがって、本願の第1の態様は、二次電池を提供する。
【0020】
二次電池は、正極シート、負極シート、セパレータ及び電解質を含む。電池の充放電過程において、活性イオンは、正極シートと負極シートとの間で往復して挿入及び脱離を行う。セパレータは、正極シートと負極シートとの間に設けられて、隔離の作用を果たす。電解質は、正極シートと負極シートとの間でイオン輸送の作用を果たす。
【0021】
実際の製造及び適用において、一般的に接着剤を使用して二次電池における第1物質と第2物質との接着を実現する必要がある。第1物質と第2物質との間の接着性能は、二次電池の性能(例えば、サイクル寿命等)に重要な影響を及ぼし、さらに装置の作業性能及び作業効率に影響を与える。本願は、接着剤を含む二次電池を提供し、前記接着剤は、第1物質と第2物質を接着するために用いられ、第1物質と第2物質との間に高い接着効果を有することを確保することができる。
【0022】
本願に係る二次電池において、前記接着剤は、接着剤組成物の架橋により得られるポリマーを含み、前記接着剤組成物は、架橋性ポリマー基体及び架橋剤を含み、前記架橋性ポリマー基体は、式(I)で表されるモノマー単位を含み、前記架橋剤は式(II)で表される化合物を含み、
ここで、上記R
1、R
2及びR
3は、H、炭素数1~8の直鎖又は分枝鎖アルキル基からそれぞれ別々に選択され、
前記R
4は、活性水素含有の極性基であり、
上記R
5は、上記R
4に対して反応活性を呈する基であり、
上記R
6は、H、炭素数1~8の置換又は非置換の炭化水素基から選択され、
上記nは、4以上の偶数であり、2≦m≦nであり、好ましくは、m≧3である。
【0023】
本願の二次電池において、式(I)で表されるモノマー単位は、架橋性ポリマー基体の基本構造単位である。いくつかの実施例において、R1は、H、炭素数1~8の直鎖又は分枝鎖アルキル基から選択され、好ましくは、H、炭素数が1~4の直鎖又は分枝鎖アルキル基から選択される。例えば、R1は、H、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基等から選択される。R1は、好ましくは、H、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基から選択され、R1は、さらに好ましくは、H、メチル基、エチル基から選択され、特に好ましくは、Hである。
【0024】
R1が炭素数1~8の直鎖又は分枝鎖アルキル基から選択される場合、前記アルキル基は、1個又は複数個の水素が他の元素又は他の基で置換されてもよい。他の元素は、F、Cl、O等であってもよいが、これらに限定されない。他の基は、ヒドロキシル基、アミン基、フェニル基、メトキシ基等であってもよいが、これらに限定されない。
【0025】
いくつかの実施例において、R2は、H、炭素数1~8の直鎖又は分枝鎖アルキル基から選択され、好ましくは、H、炭素数1~4の直鎖又は分枝鎖アルキル基から選択される。例えば、R2は、H、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基等から選択される。R2は、好ましくは、H、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基から選択され、R2は、より好ましくは、H、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基から選択される。
【0026】
R2が炭素数1~8の直鎖又は分枝鎖アルキル基から選択される場合、前記アルキル基は、1個又は複数個の水素が他の元素又は他の基で置換されてもよい。他の元素は、F、Cl、O等であってもよいが、これらに限定されない。他の基は、ヒドロキシル基、アミン基、フェニル基、メトキシ基等であってもよいが、これらに限定されない。
【0027】
いくつかの実施例において、R3は、H、炭素数1~8の直鎖又は分枝鎖アルキル基から選択され、好ましくは、H、炭素数1~4の直鎖又は分枝鎖アルキル基から選択される。例えば、R3は、H、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基等から選択される。R3は、好ましくは、H、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基から選択され、R3は、さらに好ましくは、H、メチル基、エチル基から選択され、特に好ましくは、H又はメチル基である。
【0028】
R3が炭素数1~8の直鎖又は分枝鎖アルキル基から選択される場合、前記アルキル基は、1個又は複数個の水素が他の元素又は他の基で置換されてもよい。他の元素は、F、Cl、O等であってもよいが、これらに限定されない。他の基は、ヒドロキシル基、アミン基、フェニル基、メトキシ基等であってもよいが、これらに限定されない。
【0029】
いくつかの実施例において、R
4は、
から選択される。
【0030】
上記R7は、H、炭素数1~6の置換又は非置換のアルキル基から選択され、好ましくは、H、炭素数1~4の置換又は非置換のアルキル基から選択される。例えば、R7は、H、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、n-ヘキシル基等から選択されてもよい。R7は、好ましくは、H、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基から選択される。
【0031】
R7が炭素数1~6の置換のアルキル基から選択される場合、前記アルキル基は、1個又は複数個の水素が他の元素又は他の基で置換されてもよい。他の元素は、F、Cl、O等であってもよいが、これらに限定されない。他の基は、ヒドロキシル基、フェニル基、アミン基であってもよいが、これらに限定されない。
【0032】
上記aは、0又は1であり、上記R1は、フェニレン基、炭素数1~6の置換又は非置換のアルキレン基から選択され、上記Xは、-COOH、-SO3H、-SO2H、ヒドロキシル基、メルカプト基、アミノ基から選択される。好ましくは、R1は、フェニレン基、炭素数1~4の置換又は非置換のアルキレン基から選択され、Xは、-COOH、ヒドロキシ基から選択される。
【0033】
いくつかの実施例において、aが1である場合、R1は、フェニレン基、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、イソプロピレン基、ブチレン基、イソブチレン基、sec-ブチレン基、tert-ブチレン基、ペンチレン基、イソペンチレン基、ヘキシレン基から選択される。好ましくは、R1は、フェニレン基、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、イソプロピレン基、ブチレン基、イソブチレン基、sec-ブチレン基、tert-ブチレン基から選択され、さらに好ましくは、R1は、フェニレン基、メチレン基、エチレン基から選択される。
【0034】
R1において、1個又は複数個の水素が他の元素又は他の基で置換されてもよい。前記元素は、F、Cl、O等であってもよいが、これらに限定されない。前記基は、ヒドロキシル基、フェニル基、アミン基等であってもよいが、これらに限定されない。
【0035】
これらの基は、高い反応活性及び強い極性を有し、第1物質と第2物質との間の相互作用をさらに強化させ、その接着強度を向上させることができる。
【0036】
いくつかの好ましい実施例において、R
4は、
から選択される。
【0037】
いくつかの好ましい実施例において、式(I)で表されるモノマー単位は、下記a~dのモノマー単位のうちの1種類又は複数種類から選択することができる。
【0038】
いくつかの実施例において、架橋性ポリマー基体は、ホモポリマー又は共重合体であってもよく、共重合体はランダム共重合体、ブロック共重合体、交互共重合体、グラフト共重合体であってもよい。
【0039】
いくつかの好ましい実施例において、架橋性ポリマー基体は、異なる酸塩基性を有するモノマー単位の共重合体であってもよい。これにより、第1物質と第2物質との間の相互作用を強化させるだけでなく、電池のサイクル過程での接着剤の安定性を向上させることができるため、第1物質と第2物質との間に強い相互作用を長時間保持させることができる。
【0040】
いくつかの好ましい実施例において、架橋性ポリマー基体は、モノマー単位a及びdの共重合体、モノマー単位c及びdの共重合体、モノマー単位b、c及びdの共重合体のうちの1種類又は複数種類を含み、さらに好ましくは、前記架橋可能な重合体基体は、モノマー単位b、c及びdの共重合体を含む。
【0041】
さらに、前記架橋性ポリマー基体は、下記III-1及びIII-2で表されるモノマー単位のうちの1種類又は複数種類をさらに選択的に含んでもよい。
【0042】
本発明者は、架橋性ポリマー基体がモノマー単位III-1をさらに含む場合、粒子状物質材料に優れた分散性能を提供することができるため、スラリーをさらに安定させ、膜層の加工性能を向上させることができる。架橋性ポリマー基体がモノマー単位III-2をさらに含む場合、接着剤と第1物質及び第2物質との間の親和性をさらに向上させることができるため、第1物質と第2物質との間の相互作用をさらに向上させることができる。
【0043】
本願の二次電池において、式(II)で表される化合物は、架橋剤である。いくつかの実施例において、式(II)で表される化合物において、nは、4以上18以下の偶数であり、好ましくは、8以上12以下の偶数である。また、好ましくは、m≧3であり、又はm≧5であり、又はm=nである。これにより、架橋性ポリマー基体と架橋剤との間に高い架橋反応効率を有し、架橋構造を改善させるため、第1物質と第2物質との間の作用力をさらに向上させることができる。
【0044】
いくつかの実施例において、式(II)で表される化合物において、R5は、-(R2)b-Yから選択されてもよく、上記bは、0又は1であり、上記R2は、炭素数1~12の直鎖又は分枝鎖アルキレン基から選択され、上記Yは、ハロゲン、アルケニル基、アジド基、アミノ基、カルボキシル基、アルデヒド基、ヒドロキシル基、スルホン酸基、スルフィン酸基、フェノール性ヒドロキシ基、エポキシ基から選択される。
【0045】
いくつかの実施例において、bが1である場合、上記R2は、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、イソプロピレン基、ブチレン基、イソブチレン基、sec-ブチレン基、tert-ブチレン基、ペンチレン基、イソペンチレン基、ヘキシレン基、ヘプチレン基、オクチレン基から選択される。好ましくは、R2は、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、イソプロピレン基、ブチレン基、イソブチレン基、sec-ブチレン基、tert-ブチレン基から選択される。
【0046】
R2において、1個又は複数個の水素が他の元素又は他の基で置換されてもよい。他の元素は、F、Cl、O等であってもよいが、これらに限定されない。他の基は、ヒドロキシル基、フェニル基、アミン基等であってもよいが、これらに限定されない。
【0047】
好ましくは、R2は、炭素数1~8の直鎖又は分枝鎖アルキレン基から選択され、さらに好ましくは、R2は、炭素数1~4の直鎖又は分枝鎖アルキレン基から選択される。
【0048】
好ましくは、Yは、アミノ基、カルボキシル基、ヒドロキシ基、エポキシ基から選択される。
【0049】
いくつかの好ましい実施例において、R5は、ハロゲン、アルケニル基、アジド基、アミノ基、カルボキシル基、アルデヒド基、ヒドロキシル基、スルホン酸基、スルフィン酸基、フェノール性ヒドロキシル基、エポキシ基から選択され、さらに好ましくは、R5は、アミノ基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、エポキシ基から選択される。
【0050】
R5基は、高い反応活性及び強い極性を有し、第1物質と第2物質との間の相互作用をさらに強化させ、その接着強度を向上させることができる。
【0051】
いくつかの実施例において、式(II)で表される化合物において、上記R6は、H、炭素数1~8の置換又は非置換の炭化水素基から選択され、好ましくは、R6は、H、炭素数1~4の置換又は非置換の炭化水素基から選択される。例えば、R6は、H、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基等から選択され、好ましくは、R6は、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基から選択され、さらに好ましくは、R6は、H、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基から選択される。
【0052】
R6において、1個又は複数個の水素が他の元素又は他の基で置換されてもよい。前記元素は、F、Cl、O等であってもよいが、これらに限定されない。前記基は、ヒドロキシル基、アミン基等であってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0053】
本願の二次電池は、接着剤を用いて第1物質と第2物質とを接着させる。接着剤は、上記接着剤組成物の架橋により得られるポリマーを含む。接着剤組成物は、架橋性ポリマー基体及び架橋剤を含む。架橋性ポリマー基体は、式(I)で表されるモノマー単位を含み、当該モノマー単位は、活性水素含有の極性基を有し、これにより接着剤と第1物質及び第2物質との間にいずれも良好な親和性を有するため、第1物質と第2物質との間に強い相互作用を有する。特に、架橋剤は、式(II)で表される化合物を含み、前記モノマー単位の活性水素含有極性基と反応活性を呈する基を2つ以上有し、接着剤組成物の架橋により良好な架橋構造を形成し、これにより第1物質と第2物質との間の相互作用力を大幅に向上させることができる。したがって、二次電池における第1物質と第2物質との間に強固な接着を形成することができ、電池の構造安定性及びサイクル寿命をいずれも向上させることができる。
【0054】
いくつかの実施例において、接着剤組成物の架橋により得られるポリマーは、三次元架橋ネットワーク構造を有する。これにより、第1物質と第2物質との間の接着作用が顕著に強化される。
【0055】
いくつかの実施例において、前記接着剤は、他の接着材料をさらに含む。一例として、前記接着剤は、スチレンブタジエンゴム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデン共重合体、ポリテトラフルオロエチレン、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル、ポリイミド、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリビニルアルコール、アルギン酸ナトリウム、ポリメタクリル酸、及びカルボキシメチルキトサンのうちの1種類又は複数種類をさらに含んでもよい。別の例として、前記接着剤は、スチレンブタジエンゴム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリビニルアルコール、アルギン酸ナトリウム、ポリメタクリル酸、及びカルボキシメチルキトサンのうちの1種類又は複数種類をさらに含んでもよい。
【0056】
本願の二次電池によれば、前記二次電池の正極シート、負極シート及びセパレータのうちの1つ又は複数は、本願に記載の前記接着剤組成物の架橋により得られるポリマーを含む。
【0057】
いくつかの実施例において、前記正極シート、負極シート及びセパレータのうちの1つ又は複数が本願に記載の接着剤組成物の架橋により得られるポリマーを含む場合、他の接着材料をさらに含んでもよい。他の接着材料は、前述の通りであってもよい。
【0058】
いくつかの好ましい実施例において、前記負極シートは、本願に記載の接着剤組成物の架橋により得られるポリマーを含む。
【0059】
いくつかの好ましい実施例において、前記負極シートの負極フィルムは、本願に記載の接着剤組成物の架橋により得られるポリマーを含む。負極フィルムに前記ポリマーが含まれる場合、負極活性材料粒子間の作用力を顕著に向上させることができるため、負極シートのリバウンドを顕著に低減させることができる。
【0060】
いくつかの実施例において、負極フィルムは、他の接着材料をさらに含んでもよい。他の接着材料は、前述の通りであってもよい。例えば、負極フィルムは、スチレンブタジエンゴム及びカルボキシメチルセルロースナトリウムのうちの1種類又は複数種類をさらに含んでもよい。
【0061】
好ましくは、前記負極フィルムにおける架橋された接着剤組成物の質量占有率は、≧0.5%、≧0.6%、又は≧1.0%であってもよく、さらに、≦4.0%、≦3.0%、≦2.0%であってもよい。前記負極フィルムにおける架橋された接着剤組成物の質量占有率が適切な範囲内にある場合、接着剤の上記効果を効果的に発揮すると同時に、二次電池が高いエネルギー密度を有するようにすることができる。さらに好ましくは、前記負極フィルムにおける架橋された接着剤組成物の質量占有率は、1.0%~3.0%である。
[負極シート]
【0062】
本願の二次電池の負極シートは、負極集電体と負極集電体の少なくとも1つの表面に設けられる負極フィルムとを含む。例として、負極集電体は、その厚さ方向において対向する2つの表面を有し、負極フィルムは、負極集電体における対向する2つの表面のうちのいずれか一面又は両面に積層される。
【0063】
負極集電体は、良好な導電性及び機械的強度を有する材質を使用することができる。いくつかの実施例において、負極集電体は銅箔を使用することができる。
【0064】
負極フィルムは、負極活性材料を含む。本願は、負極活性材料の種類を特に限定せず、実際の需要に応じて選択することができる。いくつかの実施例において、負極活性材料は、ケイ素系材料(例えば、単体ケイ素、ケイ素酸素化合物、ケイ素炭素複合体、ケイ素窒素化合物、ケイ素合金等)、黒鉛材料(例えば、人造黒鉛、天然黒鉛)、スズ系材料(例えば、単体スズ、スズ酸素化合物、スズ合金等)、メソカーボンマイクロビーズ(MCMBと略称)、ハードカーボン、ソフトカーボン、チタン酸リチウム、及び活性イオンと合金を形成することができる他の金属のうちの1種類又は複数種類を含んでもよい。
【0065】
負極フィルムは、接着剤をさらに含む。いくつかの好ましい実施例において、前記接着剤は、前述の接着剤組成物の架橋により得られるポリマーを含んでもよい。上記ポリマーの接着作用により、負極フィルムにおける固体粒子材料(例えば、負極活性材料、導電剤等)間に強い相互作用を形成することができ、これにより負極フィルムの凝集力を向上させることができる。同時に、負極フィルムと負極集電体との間に強い接着力を有する。これにより、負極フィルムは負極集電体に効果的に接着されて、負極シートが高い強度を有するようにし、膜剥離、粉落ちが発生しにくい。したがって、負極シートの冷間圧延成形及び二次電池の充放電サイクル過程でのリバウンド問題が効果的に緩和され、電池のサイクル過程での負極シートの膨張を明らかに減少させる。電池の体積変化が明らかに低下されるため、そのエネルギー密度、サイクル寿命及び安全性能をいずれも向上させることができる。
【0066】
いくつかの実施例において、前記接着剤は、負極フィルム用の他の接着材料をさらに含んでもよい。例として、接着剤は、スチレンブタジエンゴム(SBR)、カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC-Na)、ポリアクリル酸(PAA)、ポリアクリル酸ナトリウム(PAAS)、ポリビニルアルコール(PVA)、アルギン酸ナトリウム(SA)、ポリメタクリル酸(PMAA)、カルボキシメチルキトサン(CMCS)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、ポリビニルアルコール(PVA)及びポリビニルブチラール(PVB)のうちの1種類又は複数種類をさらに含み、例えば、スチレンブタジエンゴム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリビニルアルコール、アルギン酸ナトリウム、ポリメタクリル酸、及びカルボキシメチルキトサンのうちの1種類又は複数種類を含む。好ましくは、前記接着剤は、スチレンブタジエンゴム及びカルボキシメチルセルロースナトリウムをさらに含んでもよい。
【0067】
本願の接着剤組成物及び他の接着材料を使用することにより、高い接着効果を得ると同時に、負極フィルム及び負極シートに適切な強度及び柔軟性を両立させることができるため、高い加工性能を有することができる。
【0068】
いくつかの実施例において、負極フィルムは、導電剤をさらに選択的に含んでもよい。例として、負極フィルムに用いられる導電剤は、黒鉛、超伝導カーボン、アセチレンブラック、カーボンブラック、ケッチェンブラック、カーボンドット、カーボンナノチューブ、グラフェン及びカーボンナノファイバーのうちの1種類又は複数種類を含んでもよい。
【0069】
いくつかの実施例において、選択的に、負極集電体と負極フィルムとの間、又は、負極フィルムにおける負極集電体から離れる表面に、機能塗布層がさらに設けられてもよい。機能塗布層は、本願に記載の接着剤組成物の架橋により得られるポリマーを含んでもよい。選択的に、機能塗布層は、他の機能材料(例えば、導電剤、セラミック粒子等)をさらに含んでもよい。本願は、機能材料の具体的な種類を限定せず、実際の機能需要に応じて選択することができる。本願に記載の接着剤組成物は、架橋後に強い接着作用を有するため、機能塗布層における各成分間又は機能塗布層と負極集電体及び/又は負極フィルムとの間に強い接着力を有することができる。これにより、機能塗布層層は、その性能をより良好に発揮することができる。
【0070】
本明細書における接着剤又は接着剤組成物の好ましい解決手段は、同じくここでの負極シートに適用されて、負極シートの各具体的な実施形態を構成する。明細書の簡単のために、ここでは説明を省略する。
[正極シート]
【0071】
本願の二次電池の正極シートは、正極集電体と、正極集電体の少なくとも1つの表面に設けられ且つ正極活性材料を含む正極フィルムと、を含む。例として、正極集電体は、その自身の厚さ方向において対向する2つの表面を有し、正極フィルムは、正極集電体における対向する2つの表面のうちのいずれか一面又は両面に積層される。
【0072】
正極集電体は、良好な導電性及び機械的強度を有する材質を使用することができる。いくつかの実施例において、正極集電体は、アルミニウム箔を使用することができる。
【0073】
本願は、正極活性材料の具体的な種類を特に限定せず、本分野の既知の二次電池正極用材料を使用することができ、当業者であれば実際の需要に応じて選択することができる。
【0074】
いくつかの実施例において、二次電池は、リチウムイオン二次電池であってもよい。正極活性材料は、リチウム遷移金属酸化物及びその改質材料から選択され、改質材料は、リチウム遷移金属酸化物に対してドーピング改質及び/又は被覆改質を行って得られるものであってもよい。例えば、リチウム遷移金属酸化物は、リチウムコバルト酸化物、リチウムニッケル酸化物、リチウムマンガン酸化物、リチウムニッケルマンガン酸化物、リチウムニッケルコバルトマンガン酸化物、リチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物及びオリビン構造のリチウム含有リン酸塩のうちの1種類又は複数種類である。
【0075】
例として、二次電池の正極活性材料は、LiCoO2、LiNiO2、LiMnO2、LiMn2O4、LiNi1/3Co1/3Mn1/3O2(NCM111)、LiNi0.5Co0.2Mn0.3O2(NCM523)、LiNi0.6Co0.2Mn0.2O2(NCM622)、LiNi0.8Co0.1Mn0.1O2(NCM811)、LiNi0.85Co0.15Al0.05O2、LiFePO4(LFP)及びLiMnPO4のうちの1種類又は複数種類から選択される。
【0076】
正極フィルムは、接着剤をさらに含む。いくつかの好ましい実施例において、前記接着剤は、前述の接着剤組成物の架橋により得られるポリマーを含んでもよい。上記ポリマーの接着作用により正極フィルムにおける固体粒子材料(例えば、正極活性材料、導電剤等)間に強い相互作用を形成することができ、これにより正極フィルムの凝集力を向上させることができる。同時に、正極フィルムと正極集電体との間に強い接着力を有するようにすることができる。これにより、正極フィルムは、正極集電体に効果的に接着され、それにより正極シートは高い強度を有し、膜剥離、粉落ちが発生しにくい。
【0077】
いくつかの実施例において、前記接着剤は、に正極フィルム用の他の接着材料をさら含んでもよい。例として、接着剤は、スチレンブタジエンゴム(SBR)、カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC-Na)、ポリアクリル酸(PAA)、ポリアクリル酸ナトリウム(PAAS)、ポリビニルアルコール(PVA)、アルギン酸ナトリウム(SA)、ポリメタクリル酸(PMAA)、カルボキシメチルキトサン(CMCS)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、ポリビニルアルコール(PVA)及びポリビニルブチラール(PVB)のうちの1種類又は複数種類をさらに含み、例えば、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、ポリビニルアルコール及びポリビニルブチラールのうちの1種類又は複数種類を含む。
【0078】
いくつかの実施例において、正極フィルムは、導電剤をさらに含んでもよい。導電剤な種類は特に限定されず、当業者であれば実際の機能需要に応じて選択することができる。例として、正極フィルムに用いられる導電剤は、黒鉛、超伝導カーボン、アセチレンブラック、カーボンブラック、ケッチェンブラック、カーボンドット、カーボンナノチューブ、グラフェン及びカーボンナノファイバーのうちの1種類又は複数種類を含んでもよい。
【0079】
いくつかの実施例において、選択的に、正極集電体と正極フィルムとの間、又は、正極フィルムにおける正極集電体に背向する表面に、機能塗布層がさらに設けられてもよい。機能塗布層は、本願に記載の接着剤組成物の架橋により得られるポリマーを含んでもよい。選択的に、機能塗布層は、他の機能材料(例えば、導電剤、セラミック粒子等)をさらに含んでもよい。本願は、機能材料の具体的な種類を限定せず、実際の機能需要に応じて選択することができる。本願に記載の接着剤組成物は、架橋後に強い接着作用を有するため、機能塗布層における各成分間又は機能塗布層と正極集電体及び/又は正極フィルムとの間に高い接着力を有することができる。これにより、機能塗布層層は、その性能をより良好に発揮することができる。
【0080】
本明細書における接着剤又は接着剤組成物の好ましい解決手段は、同じくここでの正極シートに適用されて、正極シートの各具体的な実施形態を構成する。明細書の簡単のために、ここでは説明を省略する。
[電解質]
【0081】
本開示の二次電池は、電解質をさらに含む。電解質は、正極シートと負極シートとの間でイオン輸送の作用を果たす。本願の電解質の種類は特に限定されず、実際の需要に応じて選択することができる。例えば、電解質は、固体電解質及び液体電解質(即ち電解液)から選択される少なくとも1種類であってもよい。
【0082】
いくつかの実施例において、電解質は、電解液を使用する。電解液は、電解質塩及び溶媒を含む。電解液は、コア内に浸潤されてイオンを輸送する。例えば、コアは、正極シート、セパレータ及び負極シートが順次に積層されて形成される積層構造のコアであってもよく、又は、正極シート、セパレータ及び負極シートが順次に積層され且つ巻回されて形成される巻回構造のコアであってもよい。
【0083】
いくつかの実施例において、電解質塩は、LiPF6(ヘキサフルオロリン酸リチウム)、LiBF4(テトラフルオロホウ酸リチウム)、LiClO4(過塩素酸リチウム)、LiAsF6(ヘキサフルオロヒ酸リチウム)、LiFSI(ジフルオロスルホニルイミドリチウム)、LiTFSI(ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウム)、LiTFS(トリフルオロメタンスルホン酸リチウム)、LiDFOB(ジフルオロシュウ酸ホウ酸リチウム)、LiBOB(ジシュウ酸ホウ酸リチウム)、LiPO2F2(ジフルオロリン酸リチウム)、LiDFOP(ジフルオロジシュウ酸リン酸リチウム)及びLiTFOP(テトラフルオロシュウ酸リン酸リチウム)から選択される1種類又は複数種類であってもよい。
【0084】
いくつかの実施例において、溶媒は、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジプロピルカーボネート(DPC)、メチルプロピルカーボネート(MPC)、エチルプロピルカーボネート(EPC)、ブチレンカーボネート(BC)、フルオロエチレンカーボネート(FEC)、ギ酸メチル(MF)、酢酸メチル(MA)、酢酸エチル(EA)、酢酸プロピル(PA)、プロピオン酸メチル(MP)、プロピオン酸エチル(EP)、プロピオン酸プロピル(PP)、酪酸メチル(MB)、酪酸エチル(EB)、1,4-ブチロラクトン(GBL)、スルホラン(SF)、ジメチルスルホン(MSM)、メチルエチルスルホン(EMS)及びジエチルスルホン(ESE)のうちの1種類又は複数種類であってもよい。
【0085】
いくつかの実施例において、電解液には、添加剤がさらに選択的に含まれてもよい。例えば、添加剤は、負極成膜用添加剤を含んでもよいし、正極成膜用添加剤を含んでもよいし、電池の特定の性能を改善できる添加剤を含んでもよいし、例えば、電池の過充電性能を改善する添加剤、電池の高温性能を改善する添加剤、電池の低温性能を改善する添加剤等を含んでもよい。
【0086】
いくつかの実施例において、電解質は、固体電解質、例えばポリマー電解質等を使用してもよい。
[セパレータ]
【0087】
電解液を用いる二次電池及び固体電解質を用いるいくつかの二次電池において、セパレータをさらに含む。セパレータは、正極シートと負極シートとの間で隔離の作用を果たす。前記セパレータは、基材を含み、前記基材の少なくとも1つの表面に設けられる機能塗布層をさらに選択的に含む。前記機能塗布層は、セパレータの耐熱性能、機械的強度等を改善するために用いることができる。選択的に、機能塗布層は、他の機能材料(例えば、セラミック粒子、他のポリマー等)をさらに含んでもよい。本願は、セパレータの基材の種類を特に限定せず、任意の周知の良好な化学的安定性及び機械的安定性を有する多孔質構造セパレータの基材であってもよい。いくつかの実施例において、セパレータの基材の材質は、ガラス繊維、不織布、ポリエチレン、ポリプロピレンから選択される1種類又は複数種類であってもよい。セパレータは、単層フィルム又は多層複合フィルムであってもよい。セパレータが多層複合フィルムである場合、各層の材料は同じであってもよく、異なってもよい。
【0088】
いくつかの好ましい実施例において、セパレータの機能塗布層には、本願の前述の接着剤組成物の架橋により得られるポリマーが含まれてもよい。前記ポリマーが強い接着作用を有するため、機能塗布層における各成分間、又は機能塗布層と基材との間に強い接着力を有する。これにより、機能塗布層は、セパレータの性能を改善する効果をよりよく発揮することができる。
【0089】
本明細書において接着剤又は接着剤組成物に関する好ましい解決手段は、同じくここでのセパレータに適用されて、セパレータの各具体的な実施形態を構成する。明細書の簡単のために、ここでは説明を省略する。
【0090】
いくつかの実施例において、二次電池は、外装及び外装内に封止されるコアを含んでもよい。二次電池に含まれるコアの個数は、1個又は複数個であってもよく、需要に応じて調節することができる。
【0091】
いくつかの実施例において、二次電池の外装は、ソフトパック(例えば、袋状のソフトパックであり、その材質は、プラスチックであってもよく、例えば、ポリプロピレンPP、ポリブチレンテレフタレートPBT、ポリブチレンサクシネートPBS等のうちの1種類又は複数種類である)であってもよく、ハードケース(例えば、アルミニウムケース等)であってもよい。
【0092】
本願は、二次電池の形状を特に限定せず、円筒形、四角形、又は他の任意の形状であってもよい。
図1は、一例としての四角形構造の二次電池5である。
【0093】
いくつかの実施例において、二次電池は、組み立てられて、電池モジュールを形成することができ、電池モジュールに含まれる二次電池の個数は複数であってもよく、具体的な個数は、電池モジュールの用途及び容量に応じて調整することができる。
【0094】
図2は、一例としての電池モジュール4である。
図2を参照すると、電池モジュール4において、複数の二次電池5は、電池モジュール4の長さ方向に沿って順次に配列されてもよい。当然のことながら、他の任意の方式により配列することも可能である。さらに、この複数の二次電池5を締結具によって固定してもよい。
【0095】
選択的に、電池モジュール4はさらに収容空間を有するケースを含んでもよく、複数の二次電池5は当該収容空間に収容される。
【0096】
いくつかの実施例において、上記電池モジュールはさらに組み立てられて電池パックを形成することができ、電池パックに含まれる電池モジュールの個数は、電池パックの用途及び容量に応じて調整することができる。
【0097】
図3及び
図4は、一例としての電池パック1である。
図3及び
図4を参照すると、電池パック1には、電池ボックスと、電池ボックス内に配置された複数の電池モジュール4とが含まれてもよい。電池ボックスは、上部筐体2及び下部筐体3を備え、上部筐体2は、下部筐体3を覆うように配置され、電池モジュール4を収容する密閉空間を形成することができる。複数の電池モジュール4は、任意の方式により電池ボックス内に配置されてもよい。
[製造方法]
【0098】
本願はさらに二次電池の製造方法を提供し、前記方法は、正極シート、負極シート及びセパレータのうちの1つ又は複数に接着剤組成物を使用することと、前記接着剤組成物が熱処理により架橋反応を起こすことと、を含み、前記接着剤組成物は、架橋性ポリマー基体及び架橋剤を含み、架橋性ポリマー基体は、式(I)で表されるモノマー単位を含み、前記架橋剤は、式(II)で表される化合物を含み、
ここで、上記R
1、R
2及びR
3は、H、炭素数1~8の直鎖又は分枝鎖アルキル基からそれぞれ別々に選択され、
上記R
4は、活性水素含有の極性基であり、
上記R
5は、上記R
4に対して反応活性を呈する基であり、
上記R
6は、H、炭素数1~8の置換又は非置換の炭化水素基から選択され、
上記nは、4以上の偶数であり、2≦m≦nであり、好ましくは、m≧3である。
【0099】
いくつかの実施例において、前述の接着剤組成物を熱処理してそれを架橋させる温度は、60℃~160℃であってもよく、好ましくは、60℃~140℃であり、さらに好ましくは、80℃~120℃である。例えば、架橋性ポリマー基体と架橋剤とは、60℃~160℃、60℃~140℃、又は80℃~120℃の加熱温度で架橋して、三次元架橋ネットワーク構造を有するポリマーを形成する。
【0100】
いくつかの実施例において、二次電池の製造は、さらに、負極シート、正極シート、セパレータ及び電解質を組み立てて二次電池を形成する工程を含む。
【0101】
いくつかの実施例において、正極シート、セパレータ、負極シートを順次に巻回又は積層することにより、セパレータが正極シートと負極シートとの間で隔離の作用を果すようにして、コアを取得し、コアを外装内に配置し、電解液を注入して封止し、これにより、二次電池が得られる。
【0102】
いくつかの好ましい実施例において、前記二次電池の製造方法は、負極シートに本願の接着剤組成物を使用する工程を含む。
【0103】
いくつかのさらに好ましい実施例において、本願の接着剤組成物を用いて負極シートを製造する工程は、以下の通りである。
【0104】
S10において、負極スラリーを提供し、前記負極スラリーは、負極活性材料、本願に記載の接着剤組成物、及び選択可能な導電剤を含む。
いくつかの実施例において、工程S10において、負極活性材料、本願に記載の接着剤組成物、及び選択可能な導電剤を溶媒により分散させて、均一な負極スラリーを形成することができ、溶媒は、脱イオン水であってもよい。これらの添加順序は、特に限定されない。例えば、まず接着剤組成物の溶液を取得し、その後、負極活性材料及び他の添加材料を溶液に添加することができる。さらに、接着剤の各成分、負極活性材料及び他の添加剤をそれぞれ溶媒に添加して、負極スラリーを得ることができる。
【0105】
S20において、負極スラリーを負極集電体の少なくとも1つの表面に塗布して、負極フィルムを取得する。
【0106】
S30において、加熱の条件で前記負極塗布層を乾燥することにより、溶媒を除去し、且つ前記架橋性ポリマー基体と架橋剤とを架橋反応させる。
いくつかの実施例において、工程S30において、乾燥の温度は、60℃~140℃、60℃~140℃、又は80℃~120℃、又は95℃~120℃であってもよい。加熱条件下で、架橋性ポリマー基体のR4基と架橋剤のR5基とが架橋反応して架橋構造を形成する。
【0107】
S40において、乾燥後の負極塗布層に対して冷間圧延等の工程を経た後、負極シートが得られる。
【0108】
本明細書において接着剤又は接着剤組成物に関する好ましい解決手段は、同じくここでの製造方法に適用されて、製造方法の各具体的な実施形態を構成する。明細書の簡単のために、ここでは説明を省略する。
[装置]
【0109】
本願の第2の態様は、本願の第1の態様の二次電池を含む装置を提供し、前記二次電池は、前記装置に電源を供給する。前記装置は、モバイル機器(例えば、携帯電話、ノートパソコン等)、電気自動車(例えば、純電気自動車、ハイブリッド電気自動車、プラグインハイブリッド電気自動車、電動自転車、電動スクーター、電動ゴルフカート、電動トラック等)、電気列車、船舶及び衛星、エネルギー貯蔵システム等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0110】
前記装置は、その使用の必要に応じて、二次電池、電池モジュール又は電池パックを選択することができる。
【0111】
図5は、一例としての装置である。当該装置は、純電気自動車、ハイブリッド電気自動車、又はプラグインハイブリッド電気自動車等である。二次電池の高電力及び高エネルギー密度に対する当該装置の要求を満たすために、電池パック又は電池モジュールを使用してもよい。
【0112】
他の例としての装置は、携帯電話、タブレット、ノートパソコン等であってもよい。当該装置は、一般的に軽量化及び薄型化を必要とし、電源として二次電池を用いることができる。
[接着剤組成物]
【0113】
本発明は、接着剤組成物を提供する。前記接着剤組成物は、架橋性ポリマー基体及び架橋剤を含み、架橋性ポリマー基体は、式(I)で表されるモノマー単位のうちの1種類又は複数種類を含み、架橋剤は、式(II)で表される化合物を含み、
ここで、上記R
1、R
2及びR
3は、H、炭素数1~8の直鎖又は分枝鎖アルキル基からそれぞれ別々に選択され、
上記R
4は、活性水素含有の極性基であり、
上記R
5は、上記R
4に対して反応活性を呈する基であり、
上記R
6は、H、炭素数1~8の置換又は非置換の炭化水素基から選択され、
上記nは、4以上の偶数であり、2≦m≦nであり、好ましくは、m≧3である。
【0114】
本明細書において接着剤組成物の具体的な解決手段及び好ましい解決手段は、前述したように、同じくここで適用される。明細書の簡単のために、ここでは説明を省略する。
【0115】
いくつかの実施例において、前記接着剤組成物において、前記架橋性ポリマー基体及び架橋剤の総重量を基に、前記架橋性ポリマー基体の重量占有率は、≧70%、≧75%、≧80%、≧85%、又は≧90%であり、さらに、≦99%、≦98%、≦97%、≦96%、又は≦95%である。好ましくは、架橋性ポリマー基体及び架橋剤の総重量を基に、架橋性ポリマー基体の重量占有率は、75%~95%であり、さらに好ましくは、85%~95%である。これにより、接着剤は、良好な架橋三次元ネットワークを形成することができるため、接着剤の効果を効果的に発揮することができる。
【0116】
いくつかの実施例において、前記架橋性ポリマー基体の重量平均分子量は、20万~80万であってもよく、好ましくは、40万~60万である。高分子接着材料は、適切な分子量を有し、極性溶媒(例えば水)において良好な溶解性を有すると同時に、得られる溶液が適切な粘度を有するようにすることができ、固相材料(例えば、負極活性材料、導電剤等)を溶液に均一に分散させるのに有利である。
【0117】
架橋性ポリマー基体の分子量は、本分野の一般的な方法を利用して測定することができる。例えば、レーザ光散乱技術を利用して測定することができ、当該技術は、当業者にとって周知である。
【0118】
いくつかの実施例において、前記接着剤組成物を含有する10重量%濃度の水溶液の粘度は、150mPa・s~20000mPa・sであり、好ましくは、600mPa・s~5000mPa・sであり、さらに好ましくは、600mPa・s~4000mPa・sである。これにより、当該接着剤組成物を用いてフィルム又は塗布層のスラリー(例えば負極スラリー)を調製する場合、固相材料(例えば、負極活性材料、導電剤等)は、スラリー中でより均一に分散させることができる。
【0119】
前記接着剤組成物を含有する10重量%濃度の水溶液の粘度は、本分野の一般的な方法を利用して測定することができる。例えば、粘度計(例えばアメリカブルックフィールド(Brookfield)社のDV2T型粘度計)を利用して測定することができ、当該技術は、当業者にとって周知である。例として、前記接着剤組成物1gを脱イオン水9gに溶解させ、得られる溶液の粘度を測定して、前記接着剤組成物を含有する10重量%濃度の水溶液の粘度と記す。
【0120】
いくつかの実施例において、前記接着剤組成物を含有する10重量%濃度の水溶液のpHは、pH>7であり、好ましくは、7.5~10.5であり、さらに好ましくは、8.0~10.0である。発明者は、当該架橋性ポリマー基体が適切な含有量の活性水素を有することで、架橋構造を改善すると同時に、接着剤が高い安定性を有することを見出した。
【0121】
いくつかの実施例において、異なる酸塩基性を有するモノマー単位を導入することにより、架橋性ポリマー基体のpHを調整することができる。
【0122】
架橋性ポリマー基体のpHは、本分野の一般的な方法を利用して測定することができる。例として、前記接着剤組成物1gを脱イオン水9gに溶解させ、得られる溶液のpHを測定して、前記接着剤組成物を含有する10重量%濃度の水溶液のpHと記す。
【0123】
いくつかの実施例において、架橋性ポリマー基体及び架橋剤はいずれも、本分野の既知の方法で調製されるか又は市販のものを購入することができる。
【0124】
いくつかの実施例において、開始剤が存在する条件下で、式(I)で表されるモノマー単位に対応するモノマーのうちの1種類又は複数種類を重合反応させて、架橋性ポリマー基体を得ることができる。前記開始剤の種類は特に限定されず、本分野の一般的な選択であってもよい。例えば、前記開始剤は、アゾ系開始剤(例えばアゾビスイソブチロニトリル、アゾビスイソブチルアミジン塩酸塩、アゾビスイソブチルイミダゾリン塩酸塩、アゾビスシアノ吉草酸、アゾビスイソプロピルイミダゾリン等)から選択される少なくとも1種類であってもよい。前記重合条件及び開始剤の使用量は、特に限定されず、モノマー及び開始剤の具体的な種類に応じて選択することができる。
実施例
【0125】
以下の実施例は本願の開示する内容をより具体的に説明し、これらの実施例は単に説明するために用いられ、本願の開示する内容の範囲内で様々な修正及び変更を行うことは当業者にとって明らかである。特に断らない限り、以下の実施例に報告された全ての部、百分率、及び比はいずれも重量に基づいて計算し、且つ実施例で使用された全ての試薬が購入して取得する又は従来の方法に従って合成して取得することができ、且つ直接使用することができさらに処理する必要がなく、且つ実施例で使用された装置はいずれも購入して取得することができる。
一.架橋性ポリマー基体及び架橋剤:
【0126】
1.以下の各実施例に用いられる架橋性ポリマー基体Aは、A1~A6から選択される。
【0127】
(1)A1は、モノマー単位cのホモポリマーであり、分子量が45万である。TCI社から購入することができる。
【0128】
(2)A2は、モノマー単位b、モノマー単位c及びモノマー単位dの共重合体である。
調製方法:CH2=C(CH3)COOH、CH2=CHCONH2、CH2=CHOHをモル比 20:65:15で投入して、開始剤 アゾジイソブチルアミジン塩酸塩の存在下で重合反応させ、100重量部の上記3種類のモノマーに対して、開始剤の使用量は、0.5重量部である。重合温度は、25℃~35℃であり、重合圧力は、101kPaであり、重合時間は、2~4時間であり、調製により架橋性ポリマーマトリックスA2が得られ、A2の重量平均分子量は、45万である。
【0129】
(3)A3は、モノマー単位c及びモノマー単位dの共重合体である。
調製方法:CH2=CHCONH2及びCH2=CHOHをモル比 85:15で投入して、開始剤 アゾジイソブチルアミジン塩酸塩の存在下で重合反応させ、100重量部の上記2種類のモノマーに対して、開始剤の使用量は、0.5重量部である。重合温度は、25℃~35℃であり、重合圧力は、101kPaであり、重合時間は、2~4時間であり、調製により架橋性ポリマー基体A3が得られ、A3の重量平均分子量は、55万である。
【0130】
(4)A4は、モノマー単位a及びモノマー単位dの共重合体である。
調製方法:CH2=CHCOOH及びCH2=CHOHをモル比 85:15で投入して、開始剤 アゾジイソブチルアミジン塩酸塩の存在下で重合反応させ、100重量部の上記2種類のモノマーに対して、開始剤の使用量は、0.5重量部である。重合温度は、25℃~35℃であり、重合圧力は、常圧であり、重合時間は、2~4時間であり、調製により架橋性ポリマー基体A4が得られ、A4の重量平均分子量は、60万である。
【0131】
(5)A5は、モノマー単位b、モノマー単位d及びモノマー単位III-1の共重合体である。
調製方法:CH2=C(CH3)COOH、CH2=CHOH、CH2=CHCOONaをモル比 70:15:15で投入して、開始剤 アゾジイソブチルアミジン塩酸塩の存在下で重合反応させ、100重量部の上記3種類のモノマーに対して、開始剤の使用量は、0.5重量部である。重合温度は、25℃~35℃であり、重合圧力は、常圧であり、重合時間は、2~4時間であり、架橋性ポリマー基体A5が得られ、A5の重量平均分子量は、50万である。
【0132】
(6)A6は、モノマー単位b、モノマー単位d及びモノマー単位III-2の共重合体である。
調製方法:CH2=C(CH3)COOH、CH2=CHOH、CH2=CHCNをモル比 70:15:15で投入して、開始剤 アゾジイソブチルアミジン塩酸塩の存在下で重合反応させ、100重量部の上記3種類のモノマーに対して、開始剤の使用量は、0.5重量部である。重合温度は、25℃~35℃であり、重合圧力は、常圧であり、重合時間は、2~4時間であり、調製により架橋性ポリマー基体A6が得られ、A6の重量平均分子量は、35万である。
【0133】
2.以下の各実施例に用いられる架橋剤Bは、下記B
1~B
3(B
1~B
3からGelest社から購入することができる)から選択される。
二.電池の製造
実施例1
接着剤組成物の調製
【0134】
上記架橋性ポリマー基体A1及び架橋剤B1を取り、質量比 95:5で物理的に混合して、本願の接着剤組成物を取得する。
負極シートの製造
【0135】
負極活性材料 人造黒鉛、導電剤 Super-P、上記調製された接着剤組成物、スチレンブタジエンゴムSBR、カルボキシメチルセルロースナトリウムCMCーNを、96:1:1:1.5:0.5の質量比で、適量の脱イオン水中で十分に撹拌して混合し、それにより均一な負極スラリーを形成し、負極スラリーを負極集電体 銅箔に塗布し、乾燥、冷間圧延を経た後、負極シートが得られる。負極塗布層に対する乾燥の温度は、80℃~150℃である。
正極シートの製造
【0136】
正極活性材料 LiNi0.5Co0.2Mn0.3O2(NCM523)、導電剤 Super P、接着剤 PVDFを、96:2:2の重量比で、適量のNMPで十分に撹拌して混合し、それにより均一な正極スラリーを形成する。正極スラリーを正極集電体 アルミニウム箔の表面に塗布し、乾燥、冷間圧延を経た後、正極シートが得られる。
電解液の調製
【0137】
エチレンカーボネート(EC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジエチルカーボネート(DEC)を、1:1:1の体積比で均一に混合した後、LiPF6を上記溶液に均一に溶解させて電解液を取得し、ここで、LiPF6の濃度は、1mol/Lである。
セパレータ
【0138】
ポリエチレン(PE)フィルムを使用する。
二次電池の製造
【0139】
正極シート、セパレータ、負極シートを順次に積層し、巻回した後にコアが得られ、コアを外装内に入れ、乾燥させて水分を除去し、上記電解液を注入してから封止し、化成、エージング等の工程を経た後、二次電池が得られる。
実施例2~19及び比較例1~3
【0140】
実施例1との相違とは、負極シートにおける接着剤を変更することにより、異なる二次電池を得ることである。詳細は、表1に示す通りである。
試験部分
1.負極シートの凝集力の試験:
【0141】
片面塗布、冷間圧延後の負極シートを取り、切断して、長さ100mm、幅10mmの被検試料を準備する。幅25mmのステンレス鋼板を取り、両面テープ(幅)を貼り付け、被検試料をステンレス鋼板上の両面テープに貼り付け、ここで、負極集電体と両面テープとが接着される。2000gのプレスローラを使用して、試料の表面上で3回(300mm/min)往復圧延する。その後に、負極フィルムの表面に幅10mm、厚さ50μmのテープを貼り付け、2000gのプレスローラを使用して、その表面上で3回(300mm/min)往復圧延する。テープを180度折り曲げ、手動でテープと負極フィルムとを25mm剥離し、当該試料をInstron 336型引張試験機に固定し、剥離面と試験機の力線とを一致させ(即ち、180°剥離を行う)、300mm/minで連続的に剥離して、負極シートの凝集力曲線を取得し、安定部の平均値を剥離力F0とすると、測定される負極シートの凝集力は、F=F0/被検試料の幅であり、Fの計量単位は、N/mである。
2.電池のサイクル性能試験
【0142】
25℃の環境下で、一回目の充電及び放電を行い、上限電圧が4.25Vになるまで、0.5C(即ち、2h内に理論容量を完全に放電する電流値)の充電電流で定電流及び定電圧充電を行う。その後、最終的な電圧が2.8Vになるまで、0.5Cの放電電流で定電流放電を行い、初回放電容量値を記録する。次に、1000回の充電及び放電サイクルを行い、サイクル過程での放電容量値を記録し、サイクル容量保持率を計算する。
1000回目サイクルの容量保持率=(1000回目サイクルの放電容量/初回サイクルの放電容量)×100%。
3.電池のサイクル膨張力試験
【0143】
電池を鋼板治具に装着し、電池の底部及び側面の4面を鋼板治具に密着させ、鋼板の予圧を2000Nに調整し、鋼板治具と電池との間に圧力センサを配置して、コンピュータに接続させ、これにより、電池の1000回サイクル後の膨張力数値を測定する。
【0144】
【0145】
表1において、
重量比A:Bは、接着剤組成物における架橋性ポリマー基体及び架橋剤の重量比を示し、
A+B重量占有率は、負極塗布層における架橋性ポリマー基体及び架橋剤の重量占有率を示し、
SBR重量占有率は、負極塗布層におけるSBRの重量占有率を示し、
CMC-Na重量占有率は、負極塗布層におけるCMC-Naの重量占有率を示す。
【0146】
実施例1~19と比較例1~3との比較から分かるように、本願の接着剤組成物は前記架橋性ポリマー基体及び架橋剤を含み、当該接着剤組成物を用いる負極シートの負極活性材料粒子間に強い相互作用力を有するため、負極シートの凝集力が顕著に向上される。同時に、負極シートはさらに高い接着力を有する。当該負極シートを用いる二次電池は、サイクル寿命が明らかに向上され、サイクル膨張力が明らかに低下される。
【0147】
比較例1は、従来のSBR及びCMC-Naを接着剤として使用し、比較例2は、架橋性ポリマー基体、SBR及びCMC-Naを接着剤として使用し、比較例3は、架橋剤、SBR及びCMC-Naを接着剤として使用し、負極活性材料粒子間の相互作用力が低いため、負極シートの凝集力が低い。当該負極シートを用いる電池は、サイクル寿命が悪く、サイクル膨張力が高い。
【0148】
実施例1~6の結果から分かるように、適切な架橋性ポリマー基体を選択すると、負極シートの凝集力をさらに向上させ、電池のサイクル寿命及び低サイクル膨張性能をさらに改善することができる。
【0149】
実施例2、7及び8の結果から分かるように、適切な架橋剤を選択すると、負極シートの凝集力をさらに向上させ、電池のサイクル寿命及び低サイクル膨張性能をさらに改善することができる。
【0150】
実施例2及び9~14の結果から分かるように、接着剤組成物における架橋性ポリマー基体と架橋剤との重量比が適切である場合、負極シートの凝集力をさらに向上させ、電池のサイクル寿命及び低サイクル膨張性能をさらに改善することができる。
【0151】
実施例2及び15~19の結果から分かるように、架橋性ポリマーマトリックス及び架橋剤とSBR及びCMC-Naとを合理的に組み合わせることにより、負極シートが高い凝集力を有するようにすることができると同時に、電池が高いサイクル寿命と低いサイクル膨張力を有するようにすることができる。
【0152】
以上、本願の具体的な実施形態について説明したが、本願の保護範囲はこれらに限定されるものではなく、当業者であれば、本願に開示の技術的範囲内において、様な等価な修正又は差替えが容易に考えられ、これらの修正又は差替えは、本願の範囲内に含まれるべきである。したがって、本願の保護範囲は、特許請求の範囲の保護範囲に準ずるものとする。