(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-18
(45)【発行日】2024-11-26
(54)【発明の名称】ゆるみを減少させる特徴を有する用量設定組立品
(51)【国際特許分類】
A61M 5/315 20060101AFI20241119BHJP
A61M 5/24 20060101ALI20241119BHJP
【FI】
A61M5/315 550R
A61M5/315 550X
A61M5/24
(21)【出願番号】P 2022533126
(86)(22)【出願日】2020-12-03
(86)【国際出願番号】 EP2020084444
(87)【国際公開番号】W WO2021110825
(87)【国際公開日】2021-06-10
【審査請求日】2023-11-17
(32)【優先日】2019-12-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】596113096
【氏名又は名称】ノボ・ノルデイスク・エー/エス
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ベントスン, ヘンリク
(72)【発明者】
【氏名】ユール, ビョルン
(72)【発明者】
【氏名】プロイトゥーン, ヤン ハラルド
(72)【発明者】
【氏名】マハムディ, ゼイナブ
(72)【発明者】
【氏名】オルセン, ローリッツ ヘイゴー
【審査官】山田 裕介
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/057911(WO,A1)
【文献】特表2014-520583(JP,A)
【文献】特開2019-051388(JP,A)
【文献】特開2004-341466(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/315
A61M 5/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬剤送達装置(100、400)上に解放可能に取り付けられるように適合されたアドオン装置(600、700)であって、前記薬剤送達装置が、
-基準軸を画定するハウジング(410)と、
-薬剤貯蔵部または薬剤貯蔵部を受容するための手段と、
-薬剤排出手段と、を備え、前記薬剤排出手段が、
-第1の方向に回転させて用量を段階的に設定し、反対の第2の方向に回転させて、設定された用量を段階的に減少させるように適合された用量設定部材(480)であって、前記ハウジングの近位端に配設されている、用量設定部材(480)と、
-近位位置と遠位位置との間で作動可能な解放部材(490)と、を備え、前記近位位置により、投与量を設定することができ、前記遠位位置により、前記薬剤排出手段が、設定された用量を排出することを可能にし、
前記アドオン装置が、
-軸方向および回転方向に移動不可能な位置において前記薬剤送達装置ハウジングに解放可能に付着されるように適合されたアドオンハウジング(610、710)と、
-前記用量設定部材(480)上に回転方向に係止して取り付けられるように適合された駆動部材(650、750)と、
-自由に回転可能であるが、軸方向に係止して前記アドオンハウジングに連結され、前記第1の方向に回転させて用量を設定し、前記反対の第2の方向に回転させて、設定された用量を減少させるように適合されたアドオン用量設定部材(680、780)と、
-(i)近位用量設定位置と(ii)遠位用量排出位置との間で前記アドオン用量設定部材に対して軸方向に回転可能である作動可能なアドオン解放部材(690、760、769)であって、
前記近位用量設定位置では、前記アドオン用量設定部材(680、780)が、前記駆動部材(650、750)を回転させ、それによって、前記用量設定部材(480)上に取り付けられているときに、用量を設定するように動作することができ、かつ
前記遠位用量排出位置では、前記解放部材(490)が、前記アドオン装置が前記薬剤送達装置上に取り付けられているときに、前記解放部材(490)の遠位位置に移動して、設定された用量を解放する、作動可能なアドオン解放部材(690、760、769)と、
-前記アドオン解放部材が前記近位位置から前記遠位位置に向かって移動するときに、前記アドオン解放部材の軸方向移動を前記駆動部材(650、750)の、前記第1の方向への回転移動に変換するように適合された直動-回転変換器機構と、を備え、
それによって、前記アドオン装置(600、700)が前記薬剤送達装置(100、400)上に取り付けられているときに、
-前記用量設定部材(480)は、前記アドオン解放部材が前記近位位置から前記遠位位置に向かって移動する際に、前記駆動部材(650、750)によって前記第1の方向に付勢される、アドオン装置(600、700)。
【請求項2】
-トルクリミッターをさらに備え、前記トルクリミッターは、前記アドオン装置(600、700)が前記薬剤送達装置(100、400)上に取り付けられているときに、予め設定されたレベルを上回るトルクが、前記アドオン解放部材を前記近位位置から前記遠位位置に向かって移動させる際に前記駆動部材に伝えられ得ることを防止する、請求項1に記載のアドオン装置。
【請求項3】
前記トルクリミッターが、
-前記予め設定されたレベルを上回るトルクが前記駆動部材に伝えられたときに変形するように適合された可撓性要素を備えるか、または
-ラチェットトルクリミッターの形態である、請求項2に記載のアドオン装置。
【請求項4】
回転移動が、カム-フォロア機構によって発生する、請求項1~3のいずれか一項に記載のアドオン装置。
【請求項5】
前記カム-フォロア機構が、
軌道(652、762)および前記軌道内に配設されたフォロア(662、752)を備え、前記軌道が、放射状の構成要素を有し、前記フォロアおよび軌道は、前記アドオン解放部材が前記近位位置から前記遠位位置に向かって移動する際に、互いの部材に対して軸方向に移動する、請求項4に記載のアドオン装置。
【請求項6】
前記フォロアは、予め設定されたレベルを上回るトルクが前記駆動部材に伝えられたときに屈曲するように適合された可撓性アーム(661)を備える、請求項5に記載のアドオン装置。
【請求項7】
前記薬剤排出手段(400)が、
-投与量の排出中に回転するように適合されたインジケータ(460)を備え、回転の量が、前記排出された投与量のサイズを示し、
前記アドオン装置が、
-投与量の排出中に前記インジケータの前記回転の量を検出するように動作可能であるセンサー手段(670、770)を備え、
-前記センサー手段が動作する前に、回転移動が前記駆動部材に適用され、
それによって、
-前記アドオン装置が前記薬剤送達装置上に取り付けられているときに、前記薬剤排出手段の回転のゆるみが、前記用量設定部材の、前記第1の方向への回転によって除去されていることが保証される、請求項1~6のいずれか一項に記載のアドオン装置。
【請求項8】
前記アドオン解放部材が作動されたときに、軸方向に移動し、前記解放部材(490)と係合するように適合されたアクチュエータ構造をさらに備え、前記センサー手段(670、770)が、前記アクチュエータ構造に連結され、前記アクチュエータ構造とともに軸方向に移動する、請求項7に記載のアドオン装置。
【請求項9】
請求項1に定義される薬剤送達装置、および請求項1~6のいずれか一項に定義されるアドオン装置を備える、組立品。
【請求項10】
請求項7に定義される薬剤送達装置、および請求項7または8に定義されるアドオン装置を備える、組立品。
【請求項11】
-前記インジケータが、複数の双極子磁石を備え、
-前記センサー手段(670、770)が、
-取り付けられた状態で、前記ハウジングに対して非回転方向に配設され、かつ前記複数の双極子磁石から磁場の値を決定するように適合された複数の磁力計と、
-前記複数の磁力計からの測定値に基づいて、前記インジケータの回転位置および/または回転移動を決定するように構成されたプロセッサ手段と、を備える、請求項10に記載の組立品。
【請求項12】
-前記薬剤排出手段(400)が、投与量の排出中に回転するように適合されたインジケータ(460)を備え、回転の量が、前記排出された投与量のサイズを示し、
-前記薬剤送達装置が、投与量の排出中に前記インジケータの前記回転の量を検出するように動作可能なセンサー手段を備える用量ログ付けアドオン装置を取り付けるように適合されている、請求項1に定義される薬剤送達装置、および請求項1~6のいずれか一項に定義されるアドオン装置を備える組立品。
【請求項13】
-前記薬剤排出手段(400)が、投与量の排出中に回転するように適合されたインジケータ(460)を備え、前記回転の量が、前記排出された投与量の前記サイズを示し、
-前記組立品が、前記薬剤送達装置上に取り付けられるように適合された用量ログ付けアドオン装置をさらに備え、前記用量ログ付けアドオン装置が、投与量の排出中に前記インジケータの前記回転の量を検出するように動作可能なセンサー手段を備える、請求項1に定義される薬剤送達装置、および請求項1~6のいずれか一項に定義されるアドオン装置を備える組立品。
【請求項14】
-前記インジケータが、複数の双極子磁石を備え、
-前記センサー手段(670、770)が、
-取り付けられた状態で、前記ハウジングに対して非回転方向に配設され、かつ前記複数の双極子磁石から磁場の値を決定するように適合された複数の磁力計と、
-前記複数の磁力計からの測定値に基づいて、前記インジケータの回転位置および/または回転移動を決定するように構成されたプロセッサ手段と、を備える、請求項13に記載の組立品。
【請求項15】
一体型薬剤送達装置であって、
-基準軸を画定するハウジングと、
-薬剤貯蔵部または薬剤貯蔵部を受容するための手段と、
-薬剤排出手段であって、
-第1の方向に回転させて用量を設定し、反対の第2の方向に回転させて、設定された用量を減少させるように適合された内側用量設定部材、
-近位位置と遠位位置との間で作動可能な内側解放部材であって、前記近位位置により、投与量を設定することができ、前記遠位位置により、前記薬剤排出手段が、設定された用量を排出することを可能にする、内側解放部材、および
-投与量の排出中に回転するように適合されたインジケータを備え、回転の量が、前記排出された投与量のサイズを示す、薬剤排出手段と、
-自由に回転可能であるが、軸方向に係止して前記ハウジングに連結され、前記第1の方向に回転させて用量を設定し、前記反対の第2の方向に回転させて、設定された用量を減少させるように適合されたユーザー用量設定部材と、
-(i)近位用量設定位置と(ii)遠位用量排出位置との間で前記ユーザー用量設定部材に対して軸方向に回転可能である作動可能なユーザー解放部材であって、前記近位用量設定位置では、前記ユーザー用量設定部材が、前記内側用量設定部材を回転させて、用量を設定するように動作することができ、前記遠位用量排出位置では、前記内側解放部材が、前記内側解放部材の遠位位置に移動して、設定された用量を解放する、作動可能なユーザー解放部材と、
-前記ユーザー解放部材が前記近位位置から前記遠位位置に向かって移動するときに、前記ユーザー解放部材の軸方向移動を前記内側用量設定部材の、前記第1の方向への回転移動に変換するように適合された直動-回転変換器機構と、を備える、一体型薬剤送達装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、排出された投与量の効率的で信頼できる検出に関する医療用装置に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明の開示では、主に、例えば、インスリンの皮下送達による糖尿病の治療に使用される薬剤送達装置を参照するが、これは、本発明の例示的な使用にすぎない。
【0003】
皮下注射のための薬剤送達装置は、薬剤および生物学的製剤を自己投与する必要がある患者の生活を大幅に改善した。こうした薬剤送達装置は多くの形態を取る場合があり、注射手段を有するアンプルにすぎない単純な使い捨て装置を含み、または予め充填されたカートリッジとともに使用するように適合された耐久性のある装置であってもよい。かかる薬剤注射装置は、それらの形態およびタイプにかかわらず、注射可能な薬剤および生物学的製剤を患者が自己投与するのを支援するのに大きな助けになることが証明されている。また、それらは、介護者が自己注射を実施することができない者に注射可能な医薬品を投与するのを大いに支援する。一般的なタイプの薬剤送達装置は、送達される薬剤の望ましい用量サイズをユーザーが設定することを可能にする。典型的な機械的装置の場合、用量設定手段は、回転可能な用量設定またはダイヤル部材の形態であり、その後引き続いて装置から排出される望ましい用量サイズを、ユーザーが設定する(または「ダイヤルを回す」)ことを可能にする。
【0004】
必要量のインスリン注射を適切な時点に適切なサイズで実施することは、糖尿病を管理するために必要不可欠であり、すなわち指定されたインスリンレジメンを遵守することが重要である。医療従事者が、処方された用量パターンの有効性を決定することを可能にするために、糖尿病患者は各注射のサイズおよび時間のログを保持することを推奨される。しかしながら、こうしたログは通常手書きのノートに記録され、そしてログ付けされた情報はデータ処理のためにコンピュータに簡単にはアップロードされない場合がある。さらに、患者によって記載されるイベントのみがログ付けされるため、ノートシステムは、ログ付けされた情報が患者の疾患の治療において何らかの価値を持つとすれば、患者は各注射をログ付けすることを覚えておく必要がある。ログ中の欠如した記録または誤った記録は、注射履歴の実態が誤ったものとなり、ひいては、将来の薬剤治療に関する医療従事者の意思決定の土台が誤ったものとなる。したがって、医薬品送達システムからの注射情報のログ付けを自動化することが望ましい場合がある。
【0005】
一部の注射装置は、例えば、特許文献1および特許文献2に開示されているように、このモニタリング/取得機構を装置自体に統合するが、今日のほとんどの装置はそれがない。最も広く使用されている装置は、耐久性があるかまたは予め充填されたかのいずれかである、単なる機械的な装置である。後者の装置は、空になった後に廃棄されるため、安価であり、装置自体内に内蔵電子データ取得機能を構築することはコスト的に見合わない。この問題に対処するため、所与の医療用装置の使用を表すデータをユーザーが生成、収集、および分散するのに役立つであろう多くの解決策が提案されてきた。
【0006】
例えば、特許文献3は、ペンタイプの薬剤送達装置に解放可能に取り付けられるように適合された電子補助装置(「アドオンモジュール」または「アドオン装置」とも称される)を第1の実施形態で説明している。装置は、カメラを含み、薬剤送達装置の投薬ウィンドウを通して見える回転スケールドラムから捕捉された画像の光学文字認識(OCR)を実施し、それによって、薬剤送達装置にダイヤルが回された医薬の用量を決定するように構成されている。特許文献4は、ペンタイプの薬剤送達装置に解放可能に付着されるように適合された電子補助装置を開示する。装置は、カメラを含み、OCRに基づいてスケールドラム値を決定するように構成されている。排出された用量のサイズを適正に決定するために、補助装置は、用量サイズが設定、修正、または送達されているかどうかを決定するための追加的な電気機械的センサー手段をさらに備える。ペン式装置用のさらなる外部装置が、特許文献5に示されている。
【0007】
特許文献6は、ペン型の薬剤送達装置のためのアドオン用量ログ付け装置であって、薬剤送達装置内に配設された磁気部材の、ある量の回転を捕捉するように適合されたセンサー手段を備え、磁気部材の回転の量は、薬剤送達装置によって貯蔵部から排出された薬剤の量に対応する、アドオン用量ログ付け装置を開示している。
【0008】
センサー手段の特定の性質に関わらず、用量ログ付け回路は、概して、薬剤送達装置内の所与の構成要素の、ある量の回転を決定することに依存し、回転の量は、所与の薬剤送達装置に対する薬剤の排出された用量のサイズに対応する。
【0009】
上記を考慮して、本発明の目的は、所与のインジケータ構成要素または構造に対する回転の量を決定することに基づいて、排出された投与量の効率的で信頼できる正確な捕捉を可能にする、装置、組立品、および方法を提供することである。装置、組立品、および方法は、薬剤送達装置上に解放可能に取り付けられるように適合されたアドオン装置、ならびに所与の薬剤送達装置と統合して形成されるセンサー配置に関連し得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】米国特許出願公開第2009/0318865号
【文献】国際公開第2010/052275号
【文献】国際公開第2014/037331号
【文献】国際公開第2014/020008号
【文献】国際公開第2014/161952号
【文献】国際公開第2019/057911号
【発明の概要】
【0011】
本発明の開示では、上記の目的のうちの1つ以上に対処する、または例示的な実施形態の説明と同様に下記の開示から明らかな目的に対処する、実施形態および態様が説明される。
【0012】
本発明は、外部投薬された薬剤の量、例えば、インスリンユニット(IU)を測定することは、直接的な方法および(多かれ少なかれ)間接的な方法の本質的に異なる2つの方法で行うことができるという認識に基づく。
【0013】
外部投薬に直接関与する構成要素で測定されるユニットは、非常に小さな移動または体積の変化のいずれかを非常に正確かつ非常に信頼できるように測定することができるようにするだけでなく、例えば、所与の薬剤送達装置上のアドオン測定ユニットの位置付けの変動に対して非常に許容誤差があるようにするか、または補償することができるようにもする必要がある。外部投薬に直接関与する構成要素は、カートリッジピストンの移動またはピストンロッドの軸方向移動であってもよい。
【0014】
例えば、ねじ付きピストンロッドの回転、リセットチューブ、ならびに用量設定および外部投薬機構の他の部品などの、間接的にのみ関与する構成要素で測定されるユニットは、通常、動作のより大きな移動および公知のレジームを測定する必要があるという利点を有する。例えば、いくつかのペン型の薬剤送達装置では、ピストンロッドは、外部投薬中、X回15°旋回することが公知であり(Xは整数である)、これは、40°~50°の任意の測定が、3IUの用量サイズを示すことになることを意味する。
【0015】
しかしながら、生産許容誤差による、ゆるみおよび小さな変動は、典型的には、機構を通して徐々に増え、測定の不正確性を増加させる。さらに、これらのユニットはまた、アドオンユニットが、測定される構成要素に対する位置のわずかではあるがなんらかの変動を伴って、各注射装置に嵌められるという課題にも直面する。いくつかの事例では、測定された開始位置が、所与の終了位置の測定値と同様に、大きく変化する場合があるため、この問題は2倍となる。
【0016】
注射用の既存の薬剤送達装置にアドオン測定装置を嵌める際の主要な問題点は、かかるアドオンシステムが、運動の直前から運動が停止した直後に構成要素の位置の変化を測定する必要があることである。これは、システムが、しばしば、用量設定調節機構に関与する構成要素の移動を測定するように設計されることになることを意味する。用量設定調節機構は、しばしば、ユーザーが用量サイズを0から所望の用量サイズにダイヤルを上に回すことができるように設計され、その場合、構成要素は、ラチェット機構で、いくつかの「クリック」の刻みで旋回される。
【0017】
各「クリック」の刻みは、所与の体積の外部投薬、例えば、1IUまたは0.5IUに対応し、構成要素が特定の度数で回転されるたびに生じる。かかるラチェット機構では、妨害を防止するために、相互作用する構成要素間のいくらかの遊びまたはゆるみが必要である。
【0018】
これは、各々が相互作用する構成要素の対である状態では、生産許容誤差の変動の最悪の場合の組み合わせであっても、わずかなゆるみを確保しなければならないことを意味し、そのため、厳格な生産許容誤差の組み合わせであっても、相互作用する部品間にはわずかな遊びがもたらされることになる。これはさらに、反対の最悪の場合の組み合わせが著しくより多くの遊びを有することになることを意味する。しばしば、ダイヤル機構は、一連の機械部品を形成する4~6つの部品間の相互作用を伴い、各々が相互作用する構成要素の対間のゆるみにより、ダイヤル機構の合計のゆるみまたは遊びが徐々に増える。さらなる5~10個の相互作用する構成要素が、実際の外部投薬に関与し、不正確性およびゆるみの連鎖が加えられる場合がある。かかる装置は、ある体積を所与の許容誤差で排出することができることが必要とされるため、合計のゆるみは、ユニットの約3分の1よりも低く保つ必要がある。生産コストは、生産許容誤差が減少すると大きく増加し、それゆえ、装置は主に、最大の許容可能なゆるみで設計され、性能要件が満たされることを確保する。したがって、かかる装置の場合、ユニットのプラス/マイナス約4分の1までの合計のゆるみは、かなり正常である。
【0019】
しかしながら、今日の市場にあるほとんどの薬剤送達装置では、ユーザーは、いくつかの刻み、例えば、0~80IUで、設定された用量を調節することができる。したがって、かかる用量設定機構は、ユーザーが誤ってダイヤルを回しすぎた場合、またはより低い用量を取るように再決定した場合に、既にダイヤルが回された用量サイズ、すなわち、ラチェット機構で既にダイヤルが回された「クリック」の数を、より低い用量設定にダイヤルを逆に回すことができるように設計される必要がある。
【0020】
これは、ダイヤルを上に回し、それによって、すべてのゆるみを「片側」に吸収させた後に、機構が実際に、ラチェットでダイヤルを逆に回す前に、すべての相互作用する部品が「片側」の係合から反対側に移動することを意味する。
【0021】
これは、入力ダイヤル、すなわち、ユーザーが実際につかんだ構成要素が、通常、我々の間では問題点にならない(プラス/マイナス)2倍のゆるみを持ち上げる必要がある場合があることを意味する。なぜなら、ユーザーは、ほとんどの場合、ダイヤルを回す方向が逆転したときの「隠れた」ゆるみに気付かないためである。さらに、いくつかの機構は、通常の動作中に、ラチェット機構を係脱するか、または緩めて、逆向きにダイヤルを回すことを可能にするために、追加のゆるみが内蔵機構によって導入されるように設計されている。
【0022】
ダイヤルを下に回す動作に関連する上述の追加のゆるみは主として、入力ダイヤル構成要素に影響を及ぼす。これは、一連の相互作用する構成要素をさらに下げれば下げるほど、影響が及ぼされる構成要素が少なくなるためである。排出される実際の用量は、全く影響を受けない場合がある。しかしながら、アドオン測定装置に関連して、実際のダイヤル入力構成要素に近い構成要素の開始位置および終了位置を測定することは、この構成要素の開始位置が、用量解放時に、設定された用量に到達するようにユーザーがダイヤルを上下に回したことに依存して、最大でほぼ完全な1ユニットだけ異なる場合があるため、問題を提示する場合がある。非常に高い測定精度であっても、実際に設定された用量が何であったか、かつ結果として、プラス/マイナス1ユニットよりも優れた精度で何が外部投薬されたかを決定することは困難な場合があり、いくつかの事例では、かかる装置に対する当局の要件を満たすことができない場合がある。
【0023】
したがって、「ダイヤル入力部材に近い」構成要素の回転移動の決定に依存して、用量ログ付け配置の精度が潜在的に欠如している根本的な経過を識別することにより、解決されるべき識別された問題は、ユーザーによるダイヤルを上に回す行いとダイヤルを下に回す行いとの間で測定が行われる構成要素によって経験されるゆるみに対する測定システムの感度を減少させるか、または排除する、アドオン装置の解決策を提供することである。実際に、かかる解決策を、同じインジケータ構成要素を利用する統合された用量ログ付け配置のために実装することもできる。
【0024】
したがって、本発明の第1の全般的な態様では、組立品であって、内蔵機構により、ダイヤルを上に回す方向のトルクが、用量解放前にシステムにより測定されるダイヤル入力構成要素に適用されることを確保し、これにより、ユーザーが最後にダイヤルを回した方向に関係なく、開始位置の測定中に、ゆるみが常に同じ方向に持ち上げられることを確保する、組立品が提供される。
【0025】
本発明の第1の特定の態様では、薬剤送達装置上に解放可能に取り付けられるように適合されたアドオン装置が提供される。薬剤送達装置は、基準軸を画定するハウジングと、薬剤貯蔵部または薬剤貯蔵部を受容するための手段と、薬剤排出手段と、を備え、薬剤排出手段は、第1の方向に回転させて用量を段階的に設定し、反対の第2の方向に回転させて、設定された用量を段階的に減少させるように適合された用量設定部材であって、ハウジングの近位端に配設されている、用量設定部材と、近位位置と遠位位置との間で作動可能な解放部材と、を備え、近位位置により、投与量を設定することができ、遠位位置により、薬剤排出手段が、設定された用量を排出することを可能にする。 アドオン装置は、軸方向および回転方向に移動不可能な位置において薬剤送達装置ハウジングに解放可能に付着されるように適合されたアドオンハウジングと、用量設定部材上に回転方向に係止して取り付けられるように適合された駆動部材と、自由に回転可能であるが、軸方向に係止してアドオンハウジングに連結され、第1の方向に回転させて用量を設定し、反対の第2の方向に回転させて、設定された用量を減少させるように適合されたアドオン用量設定部材と、作動可能なアドオン解放部材と、を備える。作動可能なアドオン解放部材は、(i)近位用量設定位置と(ii)遠位用量排出位置との間でアドオン用量設定部材に対して軸方向に回転可能であり、近位用量設定位置では、アドオン用量設定部材は、駆動部材を回転させ、それによって、用量設定部材上に取り付けられているときに、用量を設定するように動作することができ、遠位用量排出位置では、解放部材は、アドオン装置が薬剤送達装置上に取り付けられているときに、解放部材の遠位位置に移動して、設定された用量を解放する。アドオン装置は、アドオン解放部材が近位位置から遠位位置に向かって移動するときに、アドオン解放部材の軸方向移動を駆動部材の、第1の方向への回転移動に変換するように適合された直動-回転変換器機構をさらに備え、それによって、アドオン装置が薬剤送達装置上に取り付けられているときに、用量設定部材は、アドオン解放部材が近位位置から遠位位置に向かって移動する際に、駆動部材によって第1の方向に付勢される。
【0026】
この配置によって、ユーザーが最後にダイヤルを回した方向に関係なく、開始位置の測定中に、薬剤送達装置用量設定機構のゆるみが同じ方向に持ち上げられ得ることを確保することができる。
【0027】
駆動部材の回転移動により、用量設定部材が、ある刻み分だけ移動し、ひいては、設定された用量が変更される結果となることを防止するために、駆動部材の最大回転移動は、上にアドオン装置が取り付けられるように適合された薬剤送達装置で、ある刻み分だけ、設定された用量を変更するのに必要な回転移動よりも少なくなるように設計されるべきである。
【0028】
しかしながら、上記の目的を達成するために、アドオン装置は、用量設定機構の最大ゆるみ(マージンによる)が、ある刻み分だけ用量設定部材をシフトするために必要な回転の量よりも少なくなり得ることを保証する必要があることになるときだけ、厳密な許容誤差で製造される必要があることになる。
【0029】
この問題点に対処するため、例示的な実施形態のアドオン装置は、トルクリミッターを備え、トルクリミッターは、予め設定されたレベルを上回るトルクが、アドオン解放部材を近位位置から遠位位置に向かって移動させる際に駆動部材に伝えられ得ることを防止する。
【0030】
このようにして、アドオン装置であって、高い確実性で、薬剤排出手段の最大予想されるゆるみに対応する、駆動部材の、ある量の回転を提供することになり、かつ同時に、設定された用量が変更されるリスクを減少させる、アドオン装置が提供され得る。
【0031】
当業者にはよく知られているように、トルクリミッターは、機械過負荷による損傷から、または上記に開示されるような望ましくない移動から機械設備を保護する自動装置/機構である。機械設計に関する教本から、数多くのタイプのトルクリミッターが公知である。例えば、例示的な実施形態では、トルクリミッターは、予め設定されたレベルを上回るトルクが駆動部材に伝えられたときに変形するように適合された可撓性要素を備え得る。実際には、(非常に)少量の変形が、予め設定されたレベルに到達する前に起こることになる。代替的に、トルクリミッターは、ラチェットトルクリミッターの形態であってもよい。
【0032】
例示的な実施形態では、回転移動は、カム-フォロア機構によって発生する。本発明の文脈において、「カム-フォロア機構」という用語は、カム(またはスロットもしくは軌道)部材が能動的に移動し、フォロアが受動的に移動する部材である「従来の」実施形態、ならびに「フォロア」が能動的に移動し、カム部材が受動的に移動する部材である「逆の」実施形態の両方を網羅することに留意されたい。代替的に、直動-回転変換器機構は、互いに対して移動する「自由」傾斜面を備え得る。
【0033】
特定の実施形態では、カム-フォロア機構は、軌道および軌道内に配設されたフォロアを備え、軌道は、放射状の構成要素を有し、フォロアおよび軌道は、アドオン解放部材が近位位置から遠位位置に向かって移動する際に、互いに対して軸方向に移動する。
【0034】
特定の実施形態では、フォロアは、予め設定されたレベルを上回るトルクが駆動部材に伝えられたときに屈曲するように適合された可撓性アームを備え、これにより、統合されたトルクリミッターを有するカム-フォロア機構を提供する。
【0035】
代替的に、所定のレベルを上回る回転力が駆動部材を介して用量設定部材に適用されることを防止するトルクリミッターは、ラチェットトルクリミッター、すなわち、所望の量のトルクが適用されたときにスリップまたは「ジャンプ」することになるクラッチである。
【0036】
直動-回転変換器機構、およびトルクリミッターの特定の設計に関わらず、薬剤排出手段は、投与量の排出中に回転するように適合されたインジケータを備えることができ、回転の量は、排出された投与量のサイズを示す。それに応じて、アドオン装置は、投与量の排出中にインジケータの回転の量を検出するように動作可能なセンサー手段を備える。センサー手段が動作する前に、直動-回転変換器機構が作動されたときに、薬剤排出手段の回転のゆるみが、用量設定部材の、第1のダイヤルを上に回す方向への回転によって除去されていることが保証され得る。
【0037】
例示的な実施形態では、アドオン装置は、アドオン解放部材が作動されたときに、軸方向に移動し、解放部材と係合するように適合されたアクチュエータ構造を備え、電子センサー回路は、アクチュエータ構造に連結され、アクチュエータ構造とともに軸方向に移動する。アクチュエータ構造は、電子組立品、例えば、センサー構成要素、プロセッサ、メモリ、無線通信手段、および電池の形態の、例えば、電子センサー回路を備える、ユニットまたはモジュールの形態であってもよい。
【0038】
代替的に、薬剤送達装置は、例えば、スケールドラム上の数字の形態で、投与量の排出中にインジケータの回転の量を検出するように動作可能なセンサー手段を備える用量ログ付けアドオン装置を取り付けるように適合され得る。
【0039】
特定の実施形態では、インジケータは、複数の双極子磁石を備え、センサー手段は、取り付けられた状態で、ハウジングに対して非回転方向に配設され、かつ複数の双極子磁石から磁場の値を決定するように適合された複数の磁力計と、複数の磁力計からの測定値に基づいて、インジケータの回転位置および/または回転移動を決定するように構成されたプロセッサ手段と、を備える。かかるセンサー手段は、耐ゆるみ性のアドオン装置または別個の追加のセンサーアドオン装置内に組み込まれ得る。
【0040】
本発明のさらなる態様では、組立品であって、薬剤送達装置および上記に開示される対応するアドオン装置を備える、組立品が提供される。
【0041】
本発明のさらにさらなる態様では、上記に開示される、統合されたゆるみ止め手段を有する一体型薬剤送達装置が提供され、かかる装置は、基準軸を画定するハウジングと、薬剤貯蔵部または薬剤貯蔵部を受容するための手段と、薬剤排出手段と、を備える。薬剤排出手段は、第1の方向に回転させて用量を設定し、反対の第2の方向に回転させて、設定された用量を減少させるように適合された内側用量設定部材と、近位位置と遠位位置との間で作動可能な内側解放部材であって、近位位置により、投与量を設定することができ、遠位位置により、薬剤排出手段が、設定された用量を排出することを可能にする、内側解放部材と、投与量の排出中に回転するように適合されたインジケータと、を備え、回転の量は、排出された投与量のサイズを示す。装置は、自由に回転可能であるが、軸方向に係止してハウジングに連結され、第1の方向に回転させて用量を設定し、反対の第2の方向に回転させて、設定された用量を減少させるように適合されたユーザー用量設定部材、(i)近位用量設定位置と(ii)遠位用量排出位置との間でユーザー用量設定部材に対して軸方向に回転可能である作動可能なユーザー解放部材であって、近位用量設定位置では、ユーザー用量設定部材が、内側用量設定部材を回転させて、用量を設定するように動作することができ、遠位用量排出位置では、内側解放部材が、内側解放部材の遠位位置に移動して、設定された用量を解放する、作動可能なユーザー解放部材、ならびにユーザー解放部材が近位位置から遠位位置に向かって移動するときに、ユーザー解放部材の軸方向移動を内側用量設定部材の、第1の方向への回転移動に変換するように適合された直動-回転変換器機構をさらに備える。これによって、内側用量設定部材は、薬剤排出手段が解放されるときに第1の方向に付勢される。内側用量設定部材に適用される付勢力は、トルクリミッターによって、設定された用量が変更されないことを保証する最大レベルまで制御され得る。
【0042】
薬剤送達装置は、投与量の排出中にインジケータの回転の量を検出するように動作可能な統合されたセンサー手段を備え得る。代替的に、薬剤送達装置は、投与量の排出中にインジケータの回転の量を検出するように動作可能なセンサー手段を備える用量ログ付けアドオン装置を取り付けるように適合され得る。
【0043】
特定の実施形態では、インジケータは、複数の双極子磁石を備え、センサー手段は、取り付けられた状態で、ハウジングに対して非回転方向に配設され、かつ複数の双極子磁石から磁場の値を決定するように適合された複数の磁力計と、複数の磁力計からの測定値に基づいて、インジケータの回転位置および/または回転移動を決定するように構成されたプロセッサ手段と、を備える。
【0044】
付勢配置の特定の設計に関わらず、薬剤排出手段は、投与量の排出中に回転するように適合されたインジケータを備えることができ、回転の量は、排出された投与量のサイズを示す。それに応じて、アドオン装置は、投与量の排出中にインジケータの回転の量を検出するように動作可能なセンサー手段を備える。センサー手段が動作する前に、直動-回転変換器機構が作動されたときに、薬剤排出手段の回転のゆるみが、用量設定部材の、第1のダイヤルを上に回す方向への回転によって除去されていることが保証され得る。
【0045】
本明細書で使用される場合、「インスリン」という用語は、液体、溶液、ゲル、または微細懸濁液などの、制御された様式でカニューレまたは中空針などの送達手段を通過することができ、血糖コントロール効果を有する任意の薬剤含有流動性医薬品、例えば、ヒトインスリンおよびその類似物、ならびにGLP-1およびその類似物のような非インスリンを包含することを意味する。例示的な実施形態の説明では、インスリンの使用に対して参照がなされるが、しかし説明されるモジュールは、その他のタイプの薬剤(例えば成長ホルモン)のログを作り出すためにも使用することが可能である。
【0046】
以下では、本発明の実施形態を、図面を参照しながら説明する。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【
図4A-4B】
図4Aおよび
図4Bは、アドオン装置および薬剤送達装置の概略的な表現を示す。
【
図5A-5B】
図5Aおよび
図5Bはそれぞれ、
図4Bに示される例示的な薬剤送達装置およびその上に取り付けられるように適合された対応するアドオン装置を示す。
【
図6A】
図6Aは、部分透視図において、ゆるみ止め機構を備えるアドオン用量ログ付け装置の第1の実施形態を示す。
【
図8A-8H】
図8A~
図8Hは、部分的に切り取られた表現において、
図5Aの薬剤送達装置上に取り付けられたときの異なる動作状態にある、
図6Aのアドオン装置を示す。
【
図9A】
図9Aは、ゆるみ止め機構を備えるアドオン用量ログ付け装置の第2の実施形態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0048】
図において、同様の構造は、主として同様の参照番号で識別される。
【0049】
以下の用語、「上」および「下」、「右」および「左」、「水平」および「垂直」、または類似の相対表現などが使用されているとき、これらは単に添付の図のみを参照し、そして必ずしも実際の使用状況を示すわけではない。示された図は、概略表現であり、そのため、異なる構造の構成だけでなくそれらの相対的寸法は、図示的な目的を果たすことのみが意図されている。部材または要素という用語が所与の構成要素に対して使用されるとき、これは一般的に、説明される実施形態においてこの構成要素が一体型の構成要素であることを表すが、代替的に、説明される構成要素のうちの2つ以上が一体型の構成要素として提供される可能性があるように、例えば、統合射出成形部品として製造される可能性があるように、同一の部材または要素がいくつかの下位構成要素を含んでいてもよい。「組立品」という用語は、説明された構成要素が所与の組立手順の間に一体型の、または機能的組立品を提供するために組み立てられる必要があることを暗示しておらず、機能的により密接に関連するものとしてともに分類される構成要素を説明するために使用されるにすぎない。
【0050】
本発明それ自体の実施形態へ戻る前に、予め充填された薬剤送達の一実施例が説明され、このような装置は本発明の例示的な実施形態の基盤を提供する。
図1~
図3に示されるペン型の薬剤送達装置100は、「一般的な」薬剤送達装置を表す場合があり、実際に示される装置は、Novo Nordisk A/S,Bagsvaerd,Denmarkによって製造および販売される、FlexTouch(登録商標)の予め充填された薬剤送達ペンである。
【0051】
ペン式装置100は、キャップ部品107と、薬剤排出機構がその中に配設または統合されているハウジング101を有する近位本体または駆動組立品部分を有する主要部分と、遠位の針貫通可能な隔壁を有する薬剤充填透明カートリッジ113が、近位部分に付着された取り外し不可能なカートリッジホルダーによって定位置に配設され保持される遠位カートリッジホルダー部分とを備え、カートリッジホルダーは、カートリッジの一部分が検査されるのを可能にする開口部、ならびに針組立品が解放可能に取り付けられるのを可能にする遠位連結手段115を有する。カートリッジには、排出機構の一部を形成するピストンロッドによって駆動されるピストンが提供されており、例えば、インスリン、GLP-1または成長ホルモン製剤を含んでもよい。多数の軸方向に向き付けされた溝188を有する最も近位の回転可能な用量設定部材180は、表示ウィンドウ102内に示され、かつ次いで、ボタン190が作動したときに排出され得る望ましい用量の薬剤を手動で設定するように機能する。下記の説明から明らかとなるように、示される軸方向に向き付けされた溝188は、「駆動溝」と称されてもよい。用量設定部材180は、概して円筒状の外表面181を有し(すなわち、用量設定部材はわずかにテーパー状であってもよい)、示された実施形態では、外表面は、用量設定中の指のつかみを改善するために、複数の軸方向に向き付けされた微細溝を備えることによって質感が与えられている。ウィンドウは、面取りされた縁部分109および用量ポインタ109Pによって囲まれたハウジング内の開口部の形態であり、ウィンドウは、螺旋状に回転可能なインジケータ部材170(スケールドラム)の一部分を観察することを可能にする。薬剤送達装置内に具体化される排出機構のタイプに応じて、排出機構は、実施形態に示されるように、用量設定中に変形され、その後、解放ボタンが作動したときに解放されてピストンロッドを駆動するばねを備えてもよい。別の方法として、排出機構は完全に手動であってもよく、その場合、例えば、Novo Nordisk A/Sによって製造および販売されるFlexPen(登録商標)のように、設定された用量サイズに対応する用量設定中に、用量部材および作動ボタンを近位に移動し、次に、設定用量を排出するためにユーザーによって遠位に移動する。
【0052】
図1は、予め充填されたタイプの薬剤送達装置を示し、すなわち、これは予め取り付けられたカートリッジを有して供給され、カートリッジが空になったとき廃棄されるが、代替的な実施形態では、薬剤送達装置は、充填されたカートリッジと交換することが可能であるように、例えば、カートリッジホルダーが装置主要部分から取り外されるように適合された「後方装填式」薬剤送達装置の形態で、または別の方法として、カートリッジが遠位開口部を通して装置の主要部分に取り外し不可能に付着されたカートリッジホルダー内に挿入される、「前方充填式」装置の形態で設計されてもよい。
【0053】
本発明は、薬剤送達装置と相互作用するように適合された電子回路に関するため、このような装置の例示的な実施形態を、本発明をより良好に理解するために説明する。
【0054】
図2は、
図1に示すペン型の薬剤送達装置100の分解組立図を示す。より具体的には、ペンは、ウィンドウ開口部102を有する管状ハウジング101を備え、そしてその上にカートリッジホルダー110が固定的に取り付けられ、薬剤充填済みカートリッジ113がカートリッジホルダー内に配設される。カートリッジホルダーには、針組立品116が解放可能に取り付けられることを可能にする遠位連結手段115と、キャップ107が、カートリッジホルダーおよび取り付けられた針組立品を覆って、解放可能に取り付けられることを可能にする2つの対向する突出部111の形態の近位連結手段と、例えばテーブルの上面上でペンが転がるのを防止する突出部112と、が提供される。ハウジング遠位端には、ナット要素125が固定的に取り付けられ、ナット要素は中央ねじ穴126を備え、またハウジング近位端には中央の開口部を有するばね基部部材108が固定的に取り付けられる。駆動システムは、2つの対向する長軸方向の溝を有し、ナット要素のねじ穴内に受容されるねじピストンロッド120と、ハウジング内に回転方向に配設されたリング形態のピストンロッド駆動要素130と、駆動要素(下記参照)と回転係合し、その係合がクラッチ要素の軸方向移動を可能にするリング形態のクラッチ要素140とを含む。クラッチ要素には、ハウジング内表面上の対応するスプライン104(
図3Bを参照)と係合するように適合された外側スプライン要素141が提供され、これは、スプラインが係合している回転方向に係止された近位位置とスプラインが係合から外れている回転方向に自由な遠位位置との間でクラッチ要素が移動することを可能にする。今まさに述べたように、両方の位置では、クラッチ要素は駆動要素に対して回転方向に係止される。駆動要素は、ピストンロッドの溝と係合している2つの対向する突出部131を有する中央の穴を備え、それによって駆動要素の回転は、ピストンロッドとナット要素との間のねじ係合のために、ピストンロッドの回転をもたらし、それによって遠位の軸方向移動をもたらす。駆動要素は、ハウジング内表面上に配設された対応するラチェット歯105に係合するように適合された、一対の対向する円周方向に延びる可撓性のラチェットアーム135をさらに含む。駆動要素およびクラッチ要素は、それらを一緒に回転方向に係止するが、クラッチ要素が軸方向に移動することを可能にする協働する連結構造を備え、これはクラッチ要素が、回転することができるその遠位位置へと軸方向に移動することを可能にし、それによってダイヤルシステム(下記参照)から駆動システムへと回転移動を伝達する。クラッチ要素、駆動要素、およびハウジング間の相互作用は、
図3Aおよび
図3Bを参照しながらより詳細に示され、かつ説明される。
【0055】
ピストンロッド上には、内容量終了(EOC)部材128が螺着されており、また遠位端上にはワッシャー127が回転方向に取り付けられている。EOC部材は、リセットチューブと係合するための一対の対向する半径方向の突起129を含む(下記参照)。
【0056】
ダイヤルシステムは、ラチェットチューブ150と、リセットチューブ160と、外側に螺旋状に配設された用量を示す列を形成するパターンを有するスケールドラム170と、排出される薬剤の用量を設定するためにユーザー操作されるダイヤル部材180と、解放ボタン190と、トルクばね155とを含む(
図3参照)。ダイヤル部材には、リセットチューブ上に配設された多数の対応する外側歯161に係合する円周の内側歯構造181が提供され、これは、リセットチューブが用量設定中に近位位置にあるときに係合状態にあり、リセットチューブが用量排出中に遠位側に移動するときに係脱状態にあるダイヤル連結を提供する。リセットチューブはラチェットチューブの内側に軸方向に係止されて取り付けられるが、数度回転することができる(下記参照)。リセットチューブは、その内表面上に、EOC部材の半径方向の突起129と係合するように適合された2つの対向する長軸方向の溝169を含み、それによってEOCはリセットチューブによって回転することができるが、軸方向に移動することが可能である。クラッチ要素は、ラチェットチューブ150の外側遠位端部分上に軸方向に係止されて取り付けられており、これにより、ラチェットチューブは、クラッチ要素を介してハウジングと回転係合に入り、かつ回転係合から外れるように、軸方向に移動することができる。ダイヤル部材180は軸方向に係止されて取り付けられるが、ハウジング近位端上で回転方向に自由であり、ダイヤルリングは,通常動作の下では、リセットチューブに回転方向に係止され(下記参照)、それによってダイヤルリングの回転はリセットチューブ160の、かつこれによってラチェットチューブの対応する回転をもたらす。解放ボタン190は、リセットチューブに対して軸方向に係止されているが、自由に回転することができる。戻りばね195は、ボタン上およびそこに取り付けられたリセットチューブに対して近位に方向付けられた力を提供する。スケールドラム170は、ラチェットチューブとハウジングとの間の円周方向の空間内に配設され、ドラムは協働する長軸方向スプライン151、171を介してラチェットチューブに回転方向に係止され、かつ協働するねじ構造103、173を介してハウジングの内表面と回転ねじ係合となっており、それによってドラムがラチェットチューブによってハウジングに対して回転するときに数字の列がハウジング内のウィンドウ開口部102を通る。トルクばねは、ラチェットチューブとリセットチューブとの間の円周方向の空間内に配設され、その近位端において、ばね基部部材108に固定され、かつその遠位端において、ラチェットチューブに固定され、それによってラチェットチューブがダイヤル部材の回転によってハウジングに対して回転されたときにばねは変形される。ラチェットチューブとクラッチ要素との間に可撓性のラチェットアーム152を有するラチェット機構が提供され、クラッチ要素には円周方向の内側歯構造142が提供され、各歯は、用量が設定されたときにリセットチューブを介してユーザーによって回転された位置にラチェットチューブが保持されるように、ラチェット停止部を提供する。設定用量の減少を可能にするため、ラチェット解放機構162がリセットチューブ上に提供され、かつラチェットチューブに作用し、これによって、ダイヤル部材を反対方向に旋回させることにより、1つ以上のラチェットの刻みだけ設定用量を減少させることが可能になり、リセットチューブがラチェットチューブに対して上述の数度だけ回転されるとき、解放機構が作動される。
【0057】
排出機構の異なる構成要素およびそれらの機能的関係について説明してきたが、次に機構の動作について、主として
図3Aおよび
図3Bを参照しながら説明する。
【0058】
ペン式機構は、上述のとおり、用量システムおよびダイヤルシステムの2つの相互作用システムとみなすことができる。用量設定中、ダイヤル機構は回転し、ねじりばねに負荷がかけられる。用量機構はハウジングに係止され、移動することができない。押しボタンが押下されたとき、用量機構はハウジングから解放され、かつダイヤルシステムへの係合に起因して、ねじりばねはここでダイヤルシステムを開始点に戻すように回転させ、また用量システムをそれとともに回転させる。
【0059】
用量機構の中央部は、ピストンロッド120であり、プランジャーの実際の変位はピストンロッドによって実行される。用量送達中、ピストンロッドは、駆動要素130によって回転し、かつハウジングに固定されたナット要素125とのねじの相互作用によって、ピストンロッドが遠位方向で前方に移動する。ゴムピストンとピストンロッドとの間に、ピストンワッシャー127が定置され、これは回転ピストンロッドの軸方向軸受として機能し、かつゴムピストン上の圧力を均一にする。ピストンロッドは、ピストンロッド駆動要素がピストンロッドと係合する非円形断面を有するため、駆動要素はピストンロッドに対して回転方向に係止されているが、ピストンロッド軸に沿って自由に移動する。結果として、駆動要素の回転は、ピストンの直線的に前方に移動をもたらす。駆動要素には、駆動要素が(押しボタンの端から見て)時計回りに回転することを防止する小さいラチェットアーム134が提供される。したがって、駆動要素との係合に起因して、ピストンロッドは前方にのみ移動することができる。用量送達中、駆動要素は反時計回りに回転し、ラチェットアーム135は、ラチェット歯105と係合することによってユーザーに小さなクリック音、例えば、排出されたインスリン一単位当たり1クリック音も与える。
【0060】
ダイヤルシステムに目を移すと、ダイヤル部材180を旋回させることによって用量が設定され、かつリセットされる。ダイヤルを旋回させると、リセットチューブ160、EOC部材128、ラチェットチューブ150、およびスケールドラム170は、ダイヤル連結が係合状態にあることに起因して、すべてダイヤルとともに旋回する。ラチェットチューブはトルクばね155の遠位端に接続されているため、ばねに負荷がかかる。用量設定中に、ラチェットのアーム152は、クラッチ要素の内側歯構造142との相互作用に起因して、ダイヤルが回されるユニットごとにダイヤルクリックを実施する。示された実施形態では、クラッチ要素には、ハウジングに対して360度の完全な回転に対して24回のクリック(刻み)を提供する24個のラチェット停止部が提供される。ばねは組立中に予め負荷がかけられており、これによって機構は小用量および大用量の両方を許容可能な速度間隔内で送達することが可能になる。スケールドラムはラチェットチューブと回転方向に係合しているが、軸方向に移動可能であり、かつスケールドラムはハウジングとねじ係合しているため、ダイヤルシステムが旋回すると、スケールドラムは螺旋状パターンで移動し、設定用量に対応する数字がハウジングウィンドウ102に示される。
【0061】
ラチェットチューブとクラッチ要素140との間のラチェット152、142は、ばねが部品の旋回を戻すことを防止する。リセット中、リセットチューブはラチェットアーム152を移動させ、これによってクリックごとにラチェットを解放し、1つのクリックは、説明した実施形態では1IUに対応する。より具体的には、ダイヤル部材が時計回りに旋回すると、リセットチューブは単にラチェットチューブを回転させ、ラチェットのアームがクラッチ要素の歯構造142と自由に相互作用することを可能にする。ダイヤル部材を反時計回りに旋回すると、リセットチューブはラチェットクリックアームと直接相互作用し、クラッチ内の歯から離れてペンの中心に向かってクリックアームを押し、それゆえにラチェット上のクリックアームが、負荷がかけられたばねによって生じるトルクに起因して「1クリック」後方に移動することを可能にする。
【0062】
設定用量を送達するために、
図3Bに示すように、押しボタン190はユーザーによって遠位方向に押される。ダイヤル連結161、181は係脱され、またリセットチューブ160はダイヤル部材から連結が外され、その後クラッチ要素140はハウジングスプライン104と係脱される。ここで、ダイヤル機構は、駆動要素130とともに「ゼロ」に戻り、これが排出される薬剤の用量につながる。薬剤送達中いつでも押しボタンを解放または押すことにより、いつでも用量を停止し開始することが可能である。ゴムピストンが非常に迅速に圧縮されるとゴムピストンの圧縮につながり、その後、ピストンが元の寸法に戻るときにインスリンの送達が行われるため、通常、5IU未満の用量は一時停止することができない。
【0063】
EOC機能は、ユーザーがカートリッジ内に残されているより大きい用量を設定することを防止する。EOC部材128は、リセットチューブに対して回転方向に係止され、これは用量設定中、リセット中、および用量送達中にEOC部材を回転させ、その間、ピストンロッドのスレッドのねじに従い、軸方向に前後に移動することができる。ピストンロッドの近位端に達すると、停止が提供され、これはダイヤル部材を含むすべての接続された部品が用量設定方向にさらに回転するのを防止する。すなわち、ここで設定用量はカートリッジ内の残りの薬剤含有量に対応する。
【0064】
スケールドラム170には、ハウジング内表面上の対応する停止表面と係合するように適合された遠位停止表面174が提供され、これは、スケールドラムに対する最大用量での停止を提供し、ダイヤル部材を含むすべての接続された部品が用量設定方向にさらに回転されることを防止する。示された実施形態では、最大用量は80IUに設定される。これに応じて、スケールドラムには、ばね基部部材上の対応する停止表面と係合するように適合された近位停止表面が提供され、これは、ダイヤル部材を含むすべての接続された部品が、用量排出方向にさらに回転されることを防止し、これによって排出機構全体に「ゼロ」停止を提供する。
【0065】
ダイヤル機構に何か障害があり、スケールドラムがゼロ位置を越えて移動することを可能にする場合、偶発的な過剰投薬を防止するために、EOC部材はセキュリティシステムを提供するように機能する。より具体的には、満杯のカートリッジを有する初期状態では、EOC部材は、駆動要素と接触する軸方向で最遠位側の位置に位置付けられる。所与の用量が排出された後、EOC部材は再び駆動要素と接触するように位置付けられる。これに応じて、機構がゼロ位置を超えて用量を送達しようとする場合には、EOC部材は駆動要素に対して係止する。機構の様々な部品の許容誤差および可撓性に起因して、EOCが短距離を進むことにより、薬剤の少量の「過剰用量」(例えば、3~5IUのインスリン)が排出されることがある。
【0066】
排出機構は、排出用量の終了時に明確なフィードバックを提供して、薬剤の全量が排出されたことをユーザーに知らせる用量終了(EOD)クリック機能をさらに含む。より具体的には、EOD機能は、ばね基部とスケールドラムとの間の相互作用によってなされる。スケールドラムがゼロに戻ると、ばね基部上の小さいクリックアーム106は、前進するスケールドラムによって後向きに強制される。「ゼロ」の直前に、アームが解放され、アームはスケールドラム上の皿穴面を打つ。
【0067】
示された機構には、ダイヤル部材を介してユーザーによって加えられる過負荷から機構を保護するために、トルクリミッターがさらに提供される。この機能は、ダイヤル部材とリセットチューブとの間の境界面によって提供され、これは上述のように、相互に回転方向に係止される。より具体的には、ダイヤル部材にはいくつかの対応する外側歯161と係合する円周の内側歯構造181が提供され、この内側歯構造は、リセットチューブの可撓性の担体部分上に配設される。リセットチューブ歯は、所与の指定された最大サイズのトルク(例えば、150~300Nmm)を伝達し、それを上回ると、可撓性の担体部分および歯が内向きに曲がり、ダイヤル機構の残りの部分を回転させることなく、ダイヤル部材を旋回させるように設計されている。したがって、ペンの内側の機構は、トルクリミッターが歯を介して伝達するよりも高い負荷でストレスを受けることはない。
【0068】
機械式薬剤送達装置の運転原理を説明したので、本発明の実施形態について説明する。
【0069】
図4Aおよび4Bは、予め充填されたペン形状の薬剤送達装置200の第1の組立品、およびそのために適合されたアドオン用量ログ付け装置300の概略図を示す。アドオン装置は、ペン式装置ハウジングの近位端部分上に取り付けられるように適合され、
図4Bに示す取り付けられた状態でのペン式装置上の対応する手段を覆う用量設定および用量解放手段380が提供される。示される実施形態で、アドオン装置は、薬剤送達ハウジング上に軸方向に取り付けられ回転方向に係止されるように適合された連結部分385を含む。アドオン装置は、回転可能な用量設定部材380を備え、これは、用量設定中に、アドオン用量設定部材の回転移動がいずれの方向でもペン式用量設定部材に伝えられるように、ペン式用量設定部材280に直接的または間接的に連結される。用量排出中および用量サイズ決定中に外部からの影響を減少させるために、外側アドオン用量設定部材380は、用量の解放および排出中に、ペン式用量設定部材280から回転方向に連結を外すことができる。アドオン装置は、遠位側に移動し、これによってペン式解放部材290を作動させることができる用量解放部材390をさらに含む。
【0070】
図5Aおよび
図5Bを参照すると、ペン型の薬剤送達装置400の上に取り付けられるように適合されたアドオン用量ログ付け装置500の第1の例示的な特定の実施形態が示されており、ペン式装置は、本質的にFlexTouch(登録商標)の予め充填された薬剤送達ペンに対応し、示されるアドオン用量ログ付け装置は、「Dialoq(登録商標)」としてブランド化されている。アドオン装置500は、本質的に上述のアドオン用量ログ付け装置300に対応し、それゆえ、解放可能な連結手段586を介して薬剤送達ハウジング上に軸方向に取り付けられ、回転方向に係止されるよう適合されたハウジング部分585を備え、ハウジングは、用量設定中にペン型のスケールドラム470を観察することを可能にするウィンドウ587を備える。アドオン装置は、用量設定中にペン式用量設定部材480に連結される回転可能な用量設定部材580を備え、そのため、アドオン用量設定部材の回転移動はいずれの方向でもペン式用量設定部材に伝えられる。アドオン装置は、遠位側に移動し、これによってペン式解放部材490を作動させることができる用量解放部材590をさらに備える。
【0071】
排出された薬剤の投与量のサイズを決定するために、ペン式装置は、用量排出中に回転するように適合された磁気識別子を備えることができ、それに応じて、アドオン装置は、回転の量を捕捉し、それによって、排出された用量サイズを決定することができるセンサー回路を備えることができる。この概念に基づくいくつかの実施形態は、参照により本明細書に組み込まれる国際公開第2019/162235号に開示され、詳細に記載されている。
【0072】
要約すると、国際公開第2019/162235号に開示されるアドオン装置は、薬剤送達装置ハウジングに解放可能に付着可能な外側組立品、および内側組立品を備える。外側組立品は、アドオン用量設定部材580と、用量設定状態と用量排出状態との間をアドオン用量設定部材に対して軸方向に移動可能なアドオン解放部材590とを備える。内側組立品は、用量設定部材480と係合するように適合された内側用量設定部材と、投与量の排出中にインジケータの回転の量を検出するように適合されたセンサー手段と、アドオン解放部材に連結され、近位位置と遠位位置との間で内側用量設定部材に対して軸方向に移動可能なアクチュエータと、を備え、アクチュエータは、遠位側に移動したとき、ペン式装置解放部材490と係合して作動させるように適合されている。例えば、電子モジュールの形態のセンサー回路は、アクチュエータの一部を形成する(ひいては、アクチュエータとともに軸方向に移動する)ことができ、内側用量設定部材に非回転方向に連結して、用量排出中の回転を防止することができる。センサー回路は、典型的には、ユーザーがアドオン解放部材590を作動させて軸方向に移動させると、スリープ状態から稼働されることになる。
【0073】
上記で考察されるように、「ダイヤル入力部材に近い」構成要素の回転移動の決定に依存して、用量ログ付け配置の精度が潜在的に欠如している根本的な経過を識別することにより、解決されるべき識別された問題は、ユーザーによるダイヤルを上に回す行いとダイヤルを下に回す行いとの間で測定が行われる構成要素(例えば、磁石を備えるインジケータ部材)によって経験されるゆるみに対する測定システムの感度を減少させるか、または排除する、アドオン装置の解決策を提供することである。
【0074】
それに応じて、以下の例示的な実施形態では、組立品であって、内蔵機構により、ダイヤルを上に回す方向のトルクが、用量解放前にシステムにより測定されるダイヤル入力構成要素に適用されることを確保し、これにより、ユーザーが最後にダイヤルを回した方向に関係なく、開始位置の測定中に、ゆるみが常に同じ方向に持ち上げられることを確保する、組立品が提供される。
【0075】
図6Aおよび
図6Bを参照して、
図5Bに開示される全般的なタイプのアドオン用量ログ付け装置に組み込むのに適したゆるみ止め機構の第1の例示的な実施形態を説明する。
【0076】
図6Aは、部分「透視」図において、外側組立品(「透視」により示される)およびそれに連結された内側組立品を備える、アドオン用量ログ付け装置600を示す。外側組立品は、ペンハウジングに連結されるように適合されたハウジング部材610、ハウジング部材610に回転方向に連結されたアドオンダイヤル部材680、ならびにアドオン用量排出部材(ボタン)690を備える。内側組立品は、ペン式装置ダイヤル部材と非回転方向に係合するように適合された駆動部材650、用量設定中にダイヤル部材680から駆動部材650に回転移動を伝え、用量解放中にゆるみ止めの回転を提供するように配設されたローター部材660、ならびにローター部材660の中空内部に配設された電子センサー組立品(ESA)670(
図6B参照)を備える。
図6Bでは、ESA670は、ローター部材の内側に配設されて示されており、後者は、固設用のピン675がアドオン解放部材690をESA670に接続することを可能にする、近位端にある開口部を有し、そのため、すべての部品は、互いに対して回転し、軸方向にわずかに移動することができる。
【0077】
アドオン装置600の運転原理を説明する前に、個々の協働する部材について、より詳細に説明する。
【0078】
図7Aでは、概して管状の構成を有するハウジング部材610が示される。遠位端は、ペン本体上の対応する連結手段と固定的に、但し、解放可能に係合するように適合された連結手段(図示せず)を備える。近位部分は、円周方向の溝611と、ダイヤル部材680を上にスナップで取り付けることができるいくつかの軸方向に向き付けされたスロットと、を備える。ハウジング部材の内表面は、動作中に、ローター部材上の対応する突出部に係合するように適合された突出部615の円周方向のアレイ、ならびに用量設定中に駆動部材650を回転方向にサポートするための円周方向のフランジ613(
図8A参照)を備える。
【0079】
図7Bに示される概して円筒状のダイヤル部材680は、ハウジング部材の溝611内で軸方向に固設される一方で、中心軸の周りで両方の方向に回転させることができるように適合された遠位内側円周方向のフリッジ681(
図8A参照)を備える。近位端近くのダイヤル部材の内側にある円周方向に配設された突出部686は、ローター部材660に係合し、かつ用量解放部材690が完全に解放されたときに、ダイヤル部材からローター部材に回転移動を伝達するように適合されている。ダイヤル部材は、中に用量解放押しボタン690を固設し、(示されていない連結手段によって)軸方向にガイドすることができ、かつ中に用量解放部材のためのコイル戻りばね640(
図6B参照)を収容することができる、円周方向のくぼみ682をさらに備える。
【0080】
図7Cに示される概してカップ形状のローター部材660は、近位の円板型の部分、および遠位側に延びる概して円筒状のスカート部分を備える。スカート部分は、駆動部材650内の対応するスロット/軌道構造652と係合するように適合された内向きに突出する概して円筒状のフォロア構造662を各々が遠位端に有する、いくつか(本明細書では3つ)の遠位側に延びる可撓性アーム661を備え、アームは、最初に回転移動を伝え、その後、過剰な回転移動を吸収するように作用し、それによって、以下でより詳細に記載されるように、制御された量のトルクを提供して、ゆるみを吸収する。ローター部材660は、動作中にダイヤル部材の突出部686に係合し、突出部686から係脱するように適合された、近位側に配設された円周方向の歯付きパターン666を備える。遠位端において、ローター部材は、ハウジング部材の突出部615に係合し、突出部615から係脱するように配設され、それによって、動作中にローター部材を軸方向ではなく、回転方向に係止する、突出部665の円周方向のアレイを備える。円板型の部分は、固設用のピン675を介して、ESAを軸方向中心に保つように機能する中央開口部667を備える。両側の上にある開口部を取り囲む摩擦面668により、用量解放部材およびESAは、ブレーキパッドとして作用し、かつ用量解放部材690およびESAが各側から摩擦面に押し付けられたときに、ローター部材およびESAを互いに回転方向に係止することができる。
【0081】
図7Dに示される駆動部材650は、近位の概して円筒状の部分651を備え、近位の概して円筒状の部分651から、いくつかの軸方向に向き付けされた駆動指658が遠位方向に延び、駆動指は、ペンダイヤル溝488(
図5A参照)と係合し、それによって、駆動部材をペンダイヤル部材480に回転方向に係止するように適合されている。近位部分は、ローターの可撓性アームフォロア662を受容し、軸方向にガイドするように適合された、いくつか(本明細書では3つ)の近位側に開いた非線形のスロット/軌道652を備える。近位部分は、ハウジングの内壁面ならびに円周方向のフランジ613の近位側に向き付けされたサポート面と摺動式に係合するように適合された、いくつかの円周方向に配設されたガイド構造653をさらに備え、これにより、駆動部材の回転移動中にハウジング内のセンタリングを確保する。
【0082】
図8A~
図8Hを参照して、アドオン装置600の動作について説明する。
【0083】
概して、
図8A~
図8Hのすべては、部分的に切り取られた図において、
図5Aのペン型の薬剤送達装置400の上に取り付けられた、
図6Aのアドオン装置600を示しており、アドオンハウジング部材610は、ペンハウジング410上に取り付けられており、アドオンドライバ650は、遠位側に延びるアーム658を介してペンダイヤル部材480に回転方向に連結されている。
【0084】
より具体的には、アドオン装置の動作中の内部構成要素の動作を開示するために、ハウジング部材610、アドオンダイヤル部材680、アドオン解放部材690、ならびにペン式装置ダイヤル部材480は部分的に切り取られているが、ハウジング部材の突起615およびダイヤル部材の突起686は切り取られていないことに留意されたい。
【0085】
図8Aを参照すると、アドオン装置600およびペン式装置400は、ユーザーによって11IUの用量にダイヤルが回されており、それによって、ペンダイヤル機構のすべての回転のゆるみが時計回り方向に吸収され、かつすべてのゆるみが反時計回り方向に残されている状態で示されており、ペンダイヤル部材480は、関与するペン構成要素の列の第1のペン構成要素である。示される用量設定状態では、アドオンダイヤル部材680は、歯付きパターン666と係合するダイヤル部材の突起686を介して、ローター部材660に回転方向に連結され、ローター部材660は、駆動部材650内の軌道構造652の近位部分と係合する可撓性アームフォロア構造662を介して、駆動部材650に回転方向に連結され、これにより、アドオンダイヤル部材680の回転移動をペンダイヤル部材480に伝えて、用量を設定することができる。外見上、「フォロア」は、能動的な部材であり、軌道部材は、移動される受動的な部材である。回転力は、可撓性アーム661を介して伝達されることになるが、導入された可撓性は、用量を設定する際にユーザーによってほとんど気付かれることはないことに留意されたい。
【0086】
最大11IUまでダイヤルが回されるペン式装置では、ペンダイヤル機構のすべてのゆるみは、反時計回りに残されることになる。これが必要な用量であり、かつこの時点で注射が実施される場合、すべてのゆるみは、ダイヤルを上に回す間に既に排除または吸収され、ペン式装置ダイヤル部材480および駆動部材650を、時計回りにさらに旋回させることはできないことになる。したがって、ローター部材の可撓性要素は、トルクを誘発するだけで、ペン入力ダイヤル480を旋回させることはなく、旋回は、トルクリミッターとして機能する可撓性アームによって吸収される。可撓性アーム661の張力は、ペン式装置ダイヤルがペンリセットチューブ160から係脱されると、用量解放時に解放されることになり、ペン式装置ダイヤル480および駆動部材650は、可撓性アームのすべての張力が解放されるまで、いかなる他の部品にも影響を与えずに時計回りに旋回することになる。
【0087】
代わりに、ダイヤルが回された11IUの用量を9IUまでダイヤルを下に回す必要がある場合(
図8B参照)、ゆるみは、ここで、反時計回り方向に持ち上げられ、ダイヤル機構のすべてのゆるみは、ここで、時計回り方向に残される。ダイヤルを上下両方に回す間、ローター部材660は、アドオンダイヤル部材680に回転方向に係止される。
【0088】
修正された9IUの用量にダイヤルが回された場合、ユーザーは、アドオン用量解放ボタン690を遠位方向に移動させ始める。ローター部材660が用量解放ボタンとともに軸方向に移動すると、歯付き部666は、ダイヤル部材内の突出部686との係合から外れて摺動し始め、ローターの遠位部品上の突出部665は、ハウジング部材の内側上の突出部615との係合へと摺動し始める。
図8Cを参照されたい。したがって、ローター部材660は、ハウジング部材610およびダイヤル部材680の両方に一時的に回転方向に接続され、ローター部材は、用量設定時に残されていた位置に回転方向に係止される。ゆるみは、時計回り方向に残されたままである。
【0089】
解放ボタン690がさらに遠位側に移動すると、ローター部材660は、ダイヤル部材680から係脱されるが、依然として、ハウジング部材610に回転方向に係止されている。ローターフォロア構造662が、駆動部材650内の軌道構造652の湾曲した部分へと遠位側に移動することにより、ここで、トルクが誘発され、駆動部材は、ペンダイヤル部材480を旋回させ、ゆるみを時計回り方向に持ち上げ始める。
【0090】
解放ボタン690がなおもさらに遠位側に移動すると、ローター部材660およびESAは、前方に移動し続け、誘発されたトルクは、ペン式装置内の用量設定機構のすべてのゆるみが持ち上げられるまで、駆動部材650およびペン式用量ダイヤル480を旋回させ続ける。すべてのゆるみが時計回り方向に持ち上げられ、反時計回り方向に残された場合、ペン式装置ダイヤル480のさらなる回転には、ペン式ラチェット機構を移動させ、調節された用量を1ユニットだけ増加させる必要がある。しかしながら、これは、ローター部材の可撓性アーム661が提供し得るよりも著しく大きいトルクを必要とする。これに応じて、駆動部材650およびペン式装置ダイヤル部材480の回転が停止し、その結果、可撓性アーム661が屈曲し始め、それゆえ、ローター部材660によって誘発されるさらなる回転移動を取り除く。ローター可撓性アーム661が屈曲し、それによって、トルクリミッターとして機能している
図8Dおよび
図8Eを参照されたい。
【0091】
ESAがペン式装置用量解放ボタン490と係合すると、ローター部材660は、ハウジング部材から係脱する。すなわち、ローターの突出部665は、ハウジングの突出部615から係脱する。ここで、ESAおよびローター部材660の回転は、アドオン用量解放部材690と、ローター部材660と、ESAとの間の摩擦によって防止される。
図8Fを参照されたい。
【0092】
代替的に、ローター部材の下部部品の上にある突出部665は、ローター部材660がハウジングの突出部615から係脱せず、かつアドオン用量解放部材690が解放され、ローター部材が、アドオンダイヤル部材680に係合している開始位置に戻る前に回転させることができないように、より長くすることができる。
【0093】
ESAがペン式装置用量解放ボタン480と係合し、ペン式装置用量解放戻りばね495を圧縮し始めると、ESA上の作動スイッチが稼働し、ESAが測定を実施し始める。次いで、ペン式装置リセットチューブの最初の位置が、外部投薬前に確立される。
【0094】
ペン式装置用量解放ボタン490が、ESAによって遠位方向に十分に移動されると、ペンリセットチューブ460がペン式装置ダイヤル部材480から係脱し、次いで、ペン式装置ダイヤル部材480は、自由に回転することができる。これにより、駆動部材650および係脱したペン式装置ダイヤル部材480を時計回り方向に回転させることによって、ローター部材の可撓性アーム661に蓄積された張力を解放することができる。
図8Gを参照されたい。
【0095】
リセットチューブ460が、ペン式装置ハウジングとの連結から係脱したときに、リセットチューブは、外部投薬が開始されると、反時計回りに旋回し始める。ESAは、外部投薬中のリセットチューブの完全な一回転の数を確立するために、外部投薬中のリセットチューブの角度位置の多重測定を実施し続ける。外部投薬が完了すると(
図8H参照)、リセットチューブは、そのゼロ位置(または、アドオン用量解放ボタン690が解放され、外部投薬が停止された位置)で停止し、ESAスイッチが稼働停止したときにリセットチューブの最後に測定された回転位置が得られ、かつ終了位置として使用され、それによって、上述のように、外部投薬された体積を計算することができる。
【0096】
図9A~
図9Cを参照して、
図5Bに開示される全般的なタイプのアドオン用量ログ付け装置に組み込むのに適したゆるみ止め機構の第2の例示的な実施形態を説明する。
【0097】
図9Aは、外側組立品および外側組立品に連結された内側組立品を備える、アドオン用量ログ付け装置700を示す。外側組立品は、ペンハウジングに連結されるように適合されたハウジング部材710、およびハウジング部材710に回転方向に連結されたアドオンダイヤル部材780を備える。ハウジングは、例示のみを目的として、ウィンドウ719とともに示されている。
図9Bは、ペン式装置ダイヤル部材と非回転方向に係合するように適合された駆動部材750、用量設定中にダイヤル部材780から駆動部材750に回転移動を伝え、用量解放中にゆるみ止めの回転を提供するように配設されている組み合わされたローター/ボタン部材760、ならびにローター/ボタン部材760の中空内部に配設された電子センサー組立品(ESA)770(
図9C参照)を備える、内側組立品を示している。
図9Cでは、ESA770は、ローター/ボタン部材の内側に配設されて示されており、付勢ばね740がESAと駆動部材750との間に配設されて、後者がユーザーによって遠位側に移動されたときに、ローター/ボタン部材への戻り力を提供する。
【0098】
アドオン装置700の運転原理を説明する前に、個々の協働する部材について、より詳細に説明する。
【0099】
図10Aでは、概して管状の構成を有するハウジング部材710が示される。遠位端は、ペン本体上の対応する連結手段と固定的に、但し、解放可能に係合するように適合された連結手段(図示せず)を備える。近位部分は、円周方向の溝711と、ダイヤル部材780を上にスナップで取り付けることができるいくつかの軸方向に向き付けされたスロットと、を備える。ハウジング部材の内表面は、動作中に、ローター/ボタン部材760上の対応する突出部に係合するように適合された突出部715の近位側に配設された円周方向のアレイ、ならびに用量設定中に駆動部材750を回転方向にサポートするための円周方向の近位側に面する縁713を備える。ハウジングは、例示のみを目的として、ウィンドウ719とともに示されている。
【0100】
図10Bに示される概して円筒状のダイヤル部材780は、ハウジング部材の溝711内で軸方向に固設される一方で、中心軸の周りで両方の方向に回転させることができるように適合された内側円周方向の隆起部781を備える。近位部分は、ローター/ボタン部材760の近位部分を受容するように適合された円形開口部783を取り囲む円周方向の壁部分782を備える。円周方向の壁部分の遠位表面上には、ローター/ボタン部材760上の対応する突起と係合し、用量設定中にダイヤル部材780からローター/ボタン部材に回転移動を伝達するように適合された歯付き部786が提供されている。
【0101】
図10Cに示される概して円筒状のローター/ボタン部材760は、ダイヤル部材の開口部783に対応する直径を有する近位ボタン部分769と、より大きな直径を有する、遠位側に延びる概して円筒状のローター/スカート部分と、を備える。スカート部分は、各々が、円周方向のハウジングの歯付き部715と係合し、それによって、以下でより詳細に記載されるトルクリミッターを提供するように適合された外向きに向き付けされた突出部765を自由端に有する、いくつか(ここでは、3つ)の円周方向に延びる可撓性の指761を備える。ローター/ボタン部材760は、動作中にダイヤル部材の歯付き部786に係合し、歯付き部786から係脱するように適合されている、いくつか(ここでは、3つ)の円周方向に配設された近位側に延びる突起766を備える。遠位端において、ローター部分は、駆動部材フォロア752を受容して、軸方向にガイドするように適合されている、いくつか(ここでは、3つ)の湾曲した/非線形のスロット/軌道762を備える。
【0102】
図10Dに示される駆動部材750は、概して円筒状の主要部分755を備え、概して円筒状の主要部分755から、いくつかの軸方向に向き付けされた駆動指758が遠位方向に延び、駆動指は、ペンダイヤル溝488と係合し、それによって、駆動部材をペンダイヤル部材480に回転方向に係止するように適合されている。いくつか(ここでは、3つ)のアーム751が、近位方向に軸方向に延び、各アームは、駆動部材760の対応するスロット/軌道構造762と係合するように適合された外向きに突出した概して円筒状のフォロア構造752を備える。主要部分は、ハウジングの内壁面ならびに円周方向の縁713の近位側に向き付けされたサポート面と摺動式に係合するように適合された、いくつかの円周方向に配設されたガイド構造753をさらに備え、これにより、駆動部材の回転移動中にハウジング内のセンタリングを確保する。ESA(
図9C参照)は、中にアームを受容して、ESAを駆動部材に回転方向に連結するように適合された、軸方向に向き付けされたスロットを備える。
【0103】
【0104】
概して、
図11A~
図11Eのすべては、部分的に切り取られた図において、
図5Aのペン型の薬剤送達装置400の上に取り付けられた、
図9Aのアドオン装置700を示しており、アドオンハウジング部材710は、ペンハウジング410上に取り付けられており、アドオンドライバ750は、遠位側に延びる指758を介してペンダイヤル部材480に回転方向に連結されている。
【0105】
より具体的には、アドオン装置の動作中の内部構成要素の動作を開示するために、ハウジング部材710およびアドオンダイヤル部材780は部分的に切り取られているが、ハウジング部材の突起715は切り取られていないことに留意されたい。
【0106】
第2の実施形態の基本的な運転原理は、第1の実施形態のものと同じであり、アドオン用量解放ボタンが作動すると、反時計回り方向(ダイヤルを上に回す方向)のトルクは常に、ペン式装置の入力ダイヤル部材に適用される。このようにして、特定の装置における実際のゆるみのサイズ、またはユーザーが外部投薬直前にダイヤルを上下に回したかどうかに関係なく、任意のゆるみは常に、同じ側に残されることになる。実際のゆるみが、試みられた補償されたものよりも少ないか、またはユーザーが注射直前にダイヤルを上に回した場合、アドオンハウジングとローター/ボタン部材との間のトルクリミッターが稼働し、スリップすることになる。したがって、1ユニットだけ装置のダイヤルを上に回すのではなく、ローター/ボタン部材は、回転トルクリミッターの1回以上のクリックをスキップし、駆動部材を、さらに時計回りに旋回させる代わりに、反時計回りに回転させる。
【0107】
アドオン用量解放ボタンは、第2の実施形態では、ローターに組み込まれている。用量解放ボタンが押されると、ローター/ボタン部材の軌道が下に移動し、それによって、駆動部材にトルクが誘発されることにより、駆動部材が注射装置の入力ダイヤルを時計回り(ダイヤルを上に回す)方向に旋回させ、任意のゆるみを持ち上げる。
【0108】
ローター/ボタン部材の頂部縁上にある突出部およびダイヤル部材内の歯付き部は、ローター/ボタン部材、ひいては、駆動部材が、用量サイズ設定中にアドオン入力ダイヤル部材780によって操作されることを可能にするためのものである。ローター/ボタン部材上にある可撓性の指761上の突出部765およびハウジング部材710内の突出部715は、用量解放ボタンの軸方向の稼働中、すなわち、所与の量のトルクが生成されるまで、ローター/ボタンをアドオンハウジングに回転方向に係止するように設計されている。この場合、「係止」は、次の突出部にジャンプすることになる。
【0109】
図11Aを参照すると、アドオン装置700およびペン式装置400は、最初にダイヤルが回された、例えば、11IUの用量が、9IUまで下にダイヤルが回された状態で示されている。したがって、最初は、ペンダイヤル機構のすべての回転のゆるみが時計回り方向に吸収されており、すべてのゆるみは、反時計回り方向に残される。しかしながら、ダイヤルを9IUまで下に回すと、ダイヤル機構のすべてのゆるみが時計回りに残される。ダイヤルを上下両方に回す間、アドオンダイヤル部材780は、突起766と係合するダイヤル部材の歯付きパターン786を介して、ローター/ボタン部材760に回転方向に連結され、ローター/ボタン部材760は、ローター/ボタン部材760内の軌道構造762の遠位部分と係合するアームフォロア構造752を介して、駆動部材750に回転方向に連結され、これにより、アドオンダイヤル部材780の回転移動をペンダイヤル部材480に伝えて、用量を設定または調節することができる。
【0110】
修正された9IUの用量にダイヤルが回された場合、ユーザーは、ローター/ボタン部材760を、解放ボタン部分769に押し下げることによって、遠位方向に移動させ始める。
図11Bを参照されたい。ローター/ボタン部材が遠位側に移動し始めると、ローターの突起766は、ダイヤル部材の歯付き部786から係脱し始め、可撓性の指761上の突出部765は、ハウジング部材710の内側上にある円周方向の突出部715との係合へと摺動し始める。したがって、ローター/ボタン部材760は、ハウジング部材およびダイヤル部材の両方に一時的に回転方向に接続され、ひいては、用量設定時に残されていた位置に回転方向に係止される。
【0111】
図11Cに示されるように、ローター/ボタン部材760は、さらに遠位側に移動されると、ダイヤル部材780から係脱するが、依然として、ハウジング部材710に回転方向に係止されている。軸方向に移動するローター/ボタン部材の湾曲した軌道762内に配設された駆動部材フォロア752により、ここで、駆動部材750にトルクが誘発され、駆動部材750は、ペン式装置ダイヤル部材480を旋回させ、ゆるみを時計回り方向に持ち上げ始める。
【0112】
解放ボタン部分769の継続的な作動中、ローター/ボタン部材760およびローター/ボタン部材760に連結されたESAは、
図11Dに示されるように、遠位側に移動し続け、これは、駆動部材フォロア752がローター軌道762の非軸方向の部分で横方向に移動するにつれて、増加するトルクが駆動部材に適用されることをもたらし、駆動部材は、ペン式装置ダイヤル部材480を旋回させ、ゆるみを時計回り方向に持ち上げ続ける。しかしながら、指の突出部765とハウジングの突出部715との間のトルクを伝える限界に到達すると、可撓性の指761が内向きにたわむにつれて、回転係止が係脱され、その結果、ローターの突出部が、ハウジングの歯付き部715上で1刻み分「ジャンプ」する。この限界は、最悪の場合の大きさでも安全なマージン内でゆるみが持ち上げられるように設計する必要がある。
【0113】
最悪の場合よりも小さいゆるみが実際の装置に存在する場合、または装置のダイヤルが下ではなく上に回された場合、ローター/ボタン部材760の稼働直前に、すべてのゆるみは、時計回り方向に持ち上げられ、回転係止が係脱される前に反時計回り方向に残されることになる。この場合、ペン式装置ダイヤル部材480のさらなる回転には、ラチェット機構を移動させ、調節された用量を1ユニットだけ増加させる必要がある。
【0114】
しかしながら、これは、ローター/ボタン部材の可撓性の指761の回転係止がサポートし得るよりも著しく大きなトルクを必要とし、代わりに、ローター/ボタン部材の可撓性要素上の突出部765が内向きにたわむことになる。これにより、ローター/ボタン部材760は、1回以上のクリックを反時計回りに回転させ、ローター/ボタン部材に対する駆動部材750の時計回りの回転を補償することができることになる。これにより、ローター/ボタン部材が整数のクリック数で反時計回りに回転されることになるため、駆動部材のダイヤルがわずかに反時計回りに回され、わずかなゆるみが時計回り方向に再度導入される場合がある。
【0115】
しかしながら、ローター/ボタン部材760は、ローター/ボタン部材の突出部がハウジング内の歯付き部/突出部に係合している間、ローター/ボタン部材の軌道が駆動部材750にトルクを誘発する限り、単にクリックをスキップすることになる。したがって、ローター/ボタン部材760のクリックバックによって引き起こされた駆動部材の任意の小さな反時計回りの回転の直後に、再度導入されたゆるみが持ち上げられる時計回りの回転が再開されることになる。
【0116】
ESAがペン式用量解放ボタン490と係合し、ペン式装置用量解放ボタン戻りばねを圧縮し始めると、ESA上の作動スイッチが稼働し、ESAが、外部投薬前にペンリセットチューブの最初の回転位置を決定するために測定を実施し始める。ペン式装置用量解放ボタン490が、ESAによって遠位方向に十分に移動されると、ペンリセットチューブ460がペン式装置ダイヤル部材480から係脱し、次いで、ペン式装置ダイヤル部材480は、自由に回転することができる。これにより、駆動部材750および係脱したペン式装置ダイヤル部材480を時計回り方向に回転させることによって、トルクリミッターに蓄積された任意の張力を解放することができる。
【0117】
ペン式装置リセットチューブが、ペン式装置ハウジングとの連結から係脱したときに、リセットチューブは、外部投薬が開始されると、反時計回りに旋回し始める。ESAは、外部投薬中のリセットチューブの完全な一回転の数を確立するために、外部投薬中のリセットチューブの角度位置の多重測定を実施し続ける。外部投薬が完了すると(
図11E参照)、リセットチューブは、そのゼロ位置(または、アドオン用量解放ボタン769が解放され、外部投薬が停止された位置)で停止し、ESAスイッチが稼働停止したときにリセットチューブの最後に測定された回転位置が得られ、かつ終了位置として使用され、それによって、上述のように、外部投薬された体積を計算することができる。
【0118】
ユーザーが用量解放ボタン部分769に対する圧力を解放すると、ローター/ボタン部材760およびESAは、
図9Cに示される戻りばね740によって、ローター/ボタン部材760およびESAの最初の近位位置に戻る。
【0119】
図12では、
図11Aのアドオン装置700およびペン式装置400は、ローター/ボタン部材760および駆動部材750が部分的に切り取られており、これにより、ESA770、戻りばね740、ペンダイヤル溝488、およびペン式装置解放部材490をはっきりと示すことができる、異なる図で示されている。
【0120】
例示的実施形態の上記の説明では、異なる構成要素について説明された機能を提供する異なる構造および手段を、本発明の概念が当業者にとって明らかである程度まで、説明してきた。異なる構成要素に対する詳細な構築および仕様は、本明細書に記載されるラインに沿って当業者によって実施される通常の設計手順の対象とみなされる。