(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-18
(45)【発行日】2024-11-26
(54)【発明の名称】ペプチド及び/又はその塩を含む飲食品組成物、その製造方法、2型コラーゲン加水分解物の使用、骨吸収抑制用組成物並びにチキンエキスの使用
(51)【国際特許分類】
A23L 33/18 20160101AFI20241119BHJP
A23L 2/52 20060101ALI20241119BHJP
A61K 38/05 20060101ALI20241119BHJP
A61K 38/08 20190101ALI20241119BHJP
A61P 19/10 20060101ALI20241119BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20241119BHJP
C07K 7/00 20060101ALN20241119BHJP
C07K 7/06 20060101ALN20241119BHJP
【FI】
A23L33/18 ZNA
A23L2/00 F
A23L2/52
A61K38/05
A61K38/08
A61P19/10
A61P29/00
C07K7/00
C07K7/06
(21)【出願番号】P 2022538740
(86)(22)【出願日】2020-06-26
(86)【国際出願番号】 JP2020025216
(87)【国際公開番号】W WO2021131105
(87)【国際公開日】2021-07-01
【審査請求日】2023-02-22
(31)【優先権主張番号】10201913621W
(32)【優先日】2019-12-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SG
(73)【特許権者】
【識別番号】309007911
【氏名又は名称】サントリーホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】中尾 嘉宏
(72)【発明者】
【氏名】シャンメイ ヨン
(72)【発明者】
【氏名】シャージャン リン
(72)【発明者】
【氏名】シム エリック キアン-シウン
【審査官】吉岡 沙織
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-048850(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0293427(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第103609935(CN,A)
【文献】特開2003-192610(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0179511(US,A1)
【文献】Journal of Functional Foods,2018年,Vol.51,pp.130-141
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L
A61K
A61P
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/BIOSIS/EMBASE/WPIDS/FSTA/AGRICOLA(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
Gly-Pro-Glu-Gly-Ala-Pro-Gly-Lys-Asp(配列番号1)で表されるアミノ酸配列からなるペプチド及び/又はその塩
を含むトリ軟骨の2型コラーゲン加水分解物、及び、
カルノシン及び/又はアンセリン及び/又はそれらの塩の1つ又は複数を含むチキンエキスを含
み、
前記カルノシン、アンセリン及びそれらの塩のカルノシン及びアンセリン換算の合計重量と、前記ペプチド及び/又はその塩のペプチド換算の重量との重量比(カルノシン及びアンセリンの合計/ペプチド)が、1,000,000/1~1/15,000であり、
炎症を抑制するために使用される飲食品組成物。
【請求項2】
前記カルノシン、アンセリン及びそれらの塩のカルノシン及びアンセリン換算の合計重量と、前記ペプチド及び/又はその塩のペプチド換算の重量との重量比(カルノシン及びアンセリンの合計/ペプチド)が、1,000,000/1~100/1である請求項
1に記載の飲食品組成物。
【請求項3】
マクロファージ炎症タンパク質-1(MIP-1)、単球走化性タンパク質-1(MCP-1)、インターロイキン-6(IL-6)、インターロイキン-7(IL-7)、インターロイキン-8(IL-8)、インターロイキン-9(IL-9)、インターロイキン-12(IL-12)、及びRANTES(regulated on activation, normal T cell expressed and secreted)からなる群から選ばれる少なくとも1種のサイトカインの産生を抑制する請求項1
又は2に記載の飲食品組成物。
【請求項4】
炎症性の状態又は疾患の予防又は改善のために使用される請求項1~
3のいずれか一項に記載の飲食品組成物。
【請求項5】
破骨細胞の骨吸収活性を抑制するために使用される請求項1~
4のいずれか一項に記載の飲食品組成物。
【請求項6】
骨量減少に関連する状態又は疾患の予防又は改善のために使用される請求項1~
5のいずれか一項に記載の飲食品組成物。
【請求項7】
前記骨量減少に関連する状態又は疾患が、骨粗しょう症又は骨減少症である請求項
6に記載の飲食品組成物。
【請求項8】
トリ軟骨の2型コラーゲン加水分解物由来のGly-Pro-Glu-Gly-Ala-Pro-Gly-Lys-Asp(配列番号1)で表されるアミノ酸配列からなるペプチド及び/又はその塩を配合する工程
、及び、
カルノシン及び/又はアンセリン及び/又はそれらの塩の1つ又は複数を含むチキンエキスを配合する工程を含む、
請求項1~7のいずれか一項に記載の飲食品組成物の製造方法。
【請求項9】
抗炎症用組成物を製造するための、Gly-Pro-Glu-Gly-Ala-Pro-Gly-Lys-Asp(配列番号1)で表されるアミノ酸配列からなるペプチド及び/又はその塩を含むトリ軟骨の2型コラーゲン加水分解物の使用
であって、
前記組成物が、カルノシン及び/又はアンセリン及び/又はそれらの塩の1つ又は複数を含むチキンエキスを含み、
前記組成物における前記カルノシン、アンセリン及びそれらの塩のカルノシン及びアンセリン換算の合計重量と、前記ペプチド及び/又はその塩のペプチド換算の重量との重量比(カルノシン及びアンセリンの合計/ペプチド)が、1,000,000/1~1/15,000である、使用。
【請求項10】
骨吸収抑制用組成物を製造するための、Gly-Pro-Glu-Gly-Ala-Pro-Gly-Lys-Asp(配列番号1)で表されるアミノ酸配列からなるペプチド及び/又はその塩の使用
であって、
前記組成物が、カルノシン及び/又はアンセリン及び/又はそれらの塩の1つ又は複数を含むチキンエキスを含み、
前記組成物における前記カルノシン、アンセリン及びそれらの塩のカルノシン及びアンセリン換算の合計重量と、前記ペプチド及び/又はその塩のペプチド換算の重量との重量比(カルノシン及びアンセリンの合計/ペプチド)が、1,000,000/1~1/15,000である、使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペプチド及び/又はその塩を含む飲食品組成物及びその製造方法に関する。本発明は、また、抗炎症用組成物を製造するためのペプチド及び/又はその塩を含む2型コラーゲン加水分解物に関する。本発明は、また、骨吸収抑制用組成物を製造するためのペプチド及び/又はその塩の使用に関する。本発明は、また、骨吸収抑制用組成物に関する。本発明は、また、骨吸収抑制用組成物を製造するためのチキンエキスの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
コラーゲンは、ゼラチンとして、食品分野で従来から広く用いられている。動物性蛋白質であるコラーゲンは、真皮や結合組織などの主成分であることから、近年、医療分野や美容分野の面からも注目を集めている。一般に、高分子量のコラーゲンを経口で摂取しても、摂取したコラーゲンを体内で効率的に利用することが難しいとされる。近年は、体内での摂取に適するよう、高分子のコラーゲンを加水分解して低分子量化したコラーゲンペプチドが開発され、コラーゲンペプチド入りの飲食品も開発されている。
【0003】
炎症は、細胞損傷によりヒスタミン及びキニンなどが放出され、血管拡張、毛細管透過性増大、及び炎症部位へのマクロファージの集結が起こり、それによって、感染部位の血流量増加、浮腫、兔疫細胞及び抗体の移動、痛症、発熱などが起こる現象である。
【0004】
近年、効果的な炎症緩和のために、炎症関連タンパク質の発現を抑制することができる成分に係わる研究が進められている。非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)とステロイド性抗炎症薬(SAID)とを始めとした、多様なメカニズムの炎症抑制用薬物が開発されているが、それらは副作用の懸念がある。そのため、より安全であり、抗炎症作用を有する成分に対する要求が依然として存在する。
【0005】
例えば、特許文献1では、抗炎症活性を有するテロメラーゼ由来のペプチドを活性成分として含む抗炎症組成物が開示されている。
【0006】
骨粗しょう症は低骨量により骨の脆弱性が増加し、骨折の危険性が増大する疾患である。通常、骨では古い骨が破骨細胞により吸収され、骨芽細胞が新しい骨を作り出す骨リモデリングが行われているが、骨粗しょう症はこの骨リモデリングのバランスが崩れることにより発症する。
【0007】
骨粗鬆症の治療には、女性ホルモン薬、ビスホスホネート薬などが使用され、食品素材においては、大豆イソフラボン、ビタミンK、カルシウム等に骨代謝や骨密度改善作用が報告されている。しかし、費用負担や副作用への不安から、1年以内に45%もの患者が処方通り服薬するのをやめてしまうともいわれている。そのため、経口摂取により、安全かつ簡便に骨代謝を改善し、骨密度を高める成分が求められている。
【0008】
例えば、特許文献2では、バチルス属微生物の菌体及び/又は培養物を有効成分とする骨代謝又は骨密度改善剤が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特表2015-525768号公報
【文献】特開2017-226649号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、ペプチドを含む新規な飲食品組成物を提供することを目的とする。
また本発明は、抗炎症作用を有する飲食品組成物を提供することを目的とする。
また本発明は、骨吸収抑制作用を有する飲食品組成物を提供することを目的とする。
また本発明は、新規な骨吸収抑制用組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、配列番号1で表されるアミノ酸配列からなるペプチド及び/又はその塩を含む組成物が、骨吸収抑制作用を有することを見出した。
また、本発明者らは、配列番号1で表されるアミノ酸配列からなるペプチド及び/又はその塩を含むトリ軟骨の2型コラーゲン加水分解物が、抗炎症活性を有することを見出した。
本発明者らは、また、チキンエキスが骨吸収抑制作用を有することを見出した。
【0012】
すなわち、本発明は、以下の通りである。
〔1〕Gly-Pro-Glu-Gly-Ala-Pro-Gly-Lys-Asp(配列番号1)で表されるアミノ酸配列からなるペプチド及び/又はその塩を含む飲食品組成物。
〔2〕上記ペプチド及び/又はその塩が、トリ軟骨の2型コラーゲン加水分解物由来のペプチド及び/又はその塩である上記〔1〕に記載の飲食品組成物。
〔3〕トリ軟骨の2型コラーゲン加水分解物を含む上記〔1〕又は〔2〕に記載の飲食品組成物。
〔4〕更に動物抽出物及び/又は植物抽出物を含む上記〔1〕~〔3〕のいずれかに記載の飲食品組成物。
〔5〕上記動物抽出物が、チキンエキスである上記〔4〕に記載の飲食品組成物。
〔6〕カルノシン及び/又はアンセリン及び/又はそれらの塩の1つ又は複数を含む上記〔5〕に記載の飲食品組成物。
〔7〕上記カルノシン、アンセリン及びそれらの塩のカルノシン及びアンセリン換算の合計重量と、上記ペプチド及び/又はその塩のペプチド換算の重量との重量比(カルノシン及びアンセリンの合計/ペプチド)が、1,000,000/1~100/1である上記〔6〕に記載の飲食品組成物。
〔8〕炎症を抑制するために使用される上記〔1〕~〔7〕のいずれかに記載の飲食品組成物。
〔9〕マクロファージ炎症タンパク質-1(MIP-1)、単球走化性タンパク質-1(MCP-1)、インターロイキン-6(IL-6)、インターロイキン-7(IL-7)、インターロイキン-8(IL-8)、インターロイキン-9(IL-9)、インターロイキン-12(IL-12)、及びRANTES(regulated on activation, normal T cell expressed and secreted)からなる群から選ばれる少なくとも1種のサイトカインの産生を抑制する上記〔1〕~〔8〕のいずれかに記載の飲食品組成物。
〔10〕炎症性の状態又は疾患の予防又は改善のために使用される上記〔1〕~〔9〕のいずれかに記載の飲食品組成物。
〔11〕破骨細胞の骨吸収活性を抑制するために使用される上記〔1〕~〔10〕のいずれかに記載の飲食品組成物。
〔12〕骨量減少に関連する状態又は疾患の予防又は改善のために使用される上記〔1〕~〔11〕のいずれかに記載の飲食品組成物。
〔13〕上記骨量減少に関連する状態又は疾患が、骨粗しょう症又は骨減少症である上記〔12〕に記載の飲食品組成物。
〔14〕Gly-Pro-Glu-Gly-Ala-Pro-Gly-Lys-Asp(配列番号1)で表されるアミノ酸配列からなるペプチド及び/又はその塩を配合する工程を含む、飲食品組成物の製造方法。
〔15〕上記工程が、上記ペプチド及び/又はその塩を含むトリ軟骨の2型コラーゲン加水分解物を配合する工程である上記〔14〕に記載の製造方法。
〔16〕更に動物抽出物及び/又は植物抽出物を配合する工程を含む上記〔14〕又は〔15〕に記載の製造方法。
〔17〕上記動物抽出物が、チキンエキスである上記〔16〕に記載の製造方法。
〔18〕上記チキンエキスが、カルノシン及び/又はアンセリン及び/又はそれらの塩の1つ又は複数を含む上記〔17〕に記載の製造方法。
〔19〕抗炎症用組成物を製造するための、Gly-Pro-Glu-Gly-Ala-Pro-Gly-Lys-Asp(配列番号1)で表されるアミノ酸配列からなるペプチド及び/又はその塩を含むトリ軟骨の2型コラーゲン加水分解物の使用。
〔20〕骨吸収抑制用組成物を製造するための、Gly-Pro-Glu-Gly-Ala-Pro-Gly-Lys-Asp(配列番号1)で表されるアミノ酸配列からなるペプチド及び/又はその塩の使用。
〔21〕チキンエキスを有効成分として含む骨吸収抑制用組成物。
〔22〕カルノシン及び/又はアンセリン及び/又はそれらの塩の1つ又は複数を含む上記〔21〕に記載の骨吸収抑制用組成物。
〔23〕骨吸収抑制用組成物を製造するための、チキンエキスの使用。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ペプチド及び/又はその塩を含む新規な飲食品組成物を提供することができる。本発明の飲食品組成物は、炎症及び関節痛を抑制するために使用することができる。また、本発明の飲食品組成物は、骨吸収活性を抑制するために使用することができる。また、本発明によれば、チキンエキスを有効成分として含む新規な骨吸収抑制用組成物を提供することができる。配列番号1で表されるアミノ酸配列からなるペプチド及び/又はその塩並びにチキンエキスは、飲食品等として摂取可能であり、安全性が高いという利点も有する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、トリ軟骨の2型コラーゲン加水分解物の調製方法を簡略に説明したフロー図である。
【
図2】
図2は、炎症を誘発した細胞に添加されたトリ軟骨の2型コラーゲン加水分解物(HCII)とチキンエキス(CE)による炎症マーカーMIP-1βの産生抑制効果を示すグラフである。
【
図3】
図3は、炎症マーカーMIP-1βの産生抑制に対するトリ軟骨の2型コラーゲン加水分解物(HCII)とチキンエキス(CE)の組み合わせの相乗効果を示すグラフである。
【
図4】
図4は、トリ軟骨の2型コラーゲン加水分解物(HCII)を分画した7つの画分のうち、画分P1及び画分P2の炎症マーカーMIP-1βの産生抑制効果を示すグラフである。
【
図5】
図5は、炎症を誘発した細胞に添加されたトリ軟骨の2型コラーゲン加水分解物(HCII)による炎症マーカーの産生抑制効果を示すグラフである。
【
図6】
図6は、炎症マーカーMCP-1の産生抑制に対するトリ軟骨の2型コラーゲン加水分解物(HCII)とチキンエキス(CE)の効果、HCIIとCEの組み合わせの相乗効果、及びペプチドGPEGAPGKDとCEの組み合わせの相乗効果を示すグラフである。
【
図7-1】
図7-1(a)、(b)、(c)は、炎症マーカーIL-6、IL-8、IL-9の産生抑制に対するHCIIとCEの組み合わせの相乗効果、及びペプチドGPEGAPGKDとCEの組み合わせの相乗効果を示すグラフである。
【
図7-2】
図7-2(d)、(e)、(f)は、炎症マーカーMCP-1、MIP-1β、RANTESの産生抑制に対するHCIIとCEの組み合わせの相乗効果、及びペプチドGPEGAPGKDとCEの組み合わせの相乗効果を示すグラフである。
【
図8】
図8は、骨吸収活性の抑制に対するトリ軟骨の2型コラーゲン加水分解物(HCII)の効果を示すグラフである。
【
図9】
図9は、骨吸収活性の抑制に対する、トリ軟骨の2型コラーゲン加水分解物(HCII)、及びトリ軟骨の2型コラーゲン加水分解物(HCII)を分画した7つの画分のうち複数の画分とその組み合わせ(具体的にはP1~P5の各画分、画分P6と画分P7の組み合わせ、画分P1と画分P2の組み合わせ、画分P3と画分P4の組み合わせ、及び画分P1~P7の組み合わせ)のそれぞれの効果を示すグラフである。
【
図10】
図10は、骨吸収活性の抑制に対する、トリ軟骨の2型コラーゲン加水分解物(HCII)、HCIIの画分P1及び画分P2の組み合わせ、並びに配列番号1で表されるアミノ酸配列からなるペプチド(GPEGAPGKD)のそれぞれの効果を示すグラフである。
【
図11】
図11は、骨吸収活性の抑制に対するチキンエキス(CE)の用量依存効果を示すグラフである。
【
図12】
図12(a)は、プロトコル準拠集団(n=151)の各処理群において、7日目及び14日目のVAS疼痛スコアに対する、トリ軟骨の2型コラーゲン加水分解物(HCII)の摂取(14日間)による効果を示すグラフである。
図12(b)は、レジスタンストレーニングの実施回数がレジスタンストレーニング全期間の10パーセンタイル未満の被験者(n=8)の各処理群において、7日目及び14日目のVAS疼痛スコアに対する、トリ軟骨の2型コラーゲン加水分解物(HCII)の摂取(14日間)による効果を示すグラフである。
【
図13】
図13は、左股関節の骨量に対する、トリ軟骨の2型コラーゲン加水分解物(HCII)とチキンエキス(CE)の組み合わせの摂取(24週間)による効果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の一態様によれば、本発明の飲食品組成物は、Gly-Pro-Glu-Gly-Ala-Pro-Gly-Lys-Asp(配列番号1)で表されるアミノ酸配列からなるペプチド及び/又はその塩(以下では、「Gly-Pro-Glu-Gly-Ala-Pro-Gly-Lys-Asp(配列番号1)で表されるアミノ酸配列からなるペプチド」を「Pep1」又は「GPEGAPGKD」と記載することがある)を含む。
【0016】
<ペプチド>
Pep1は、動植物のタンパク質等を加水分解して得られるペプチドであってもよいし、人工的に合成したものでもよい。Pep1は、好ましくは2型コラーゲン加水分解物由来のペプチドであり、より好ましくはトリ軟骨の2型コラーゲン加水分解物由来のペプチドである。
Pep1は、精製されたものを使用してもよく、Pep1を含むトリ軟骨の2型コラーゲン加水分解物の形態で組成物に含有させてもよい。好ましい態様においては、本発明の飲食品組成物は、トリ軟骨の2型コラーゲン加水分解物を含む。本発明の飲食品組成物は、トリ軟骨の2型コラーゲン加水分解物を含むと、抗炎症作用、骨吸収抑制作用がより高くなる。
【0017】
Pep1は、無機酸又は有機酸との塩や無機塩基又は有機塩基との塩の形態として、本発明の飲食品組成物に含むことができる。酸や塩基としては、塩の用途に応じて選択できるが、飲食品への用途を考慮すると、以下に挙げる飲食品に許容される塩が好ましい。上記無機酸塩としては、例えば、塩酸塩、硝酸塩、硫酸塩、メタンスルホン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩等を挙げることができる。有機酸塩としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、又はフマル酸等のジカルボン酸との塩、酢酸、プロピオン酸、又は酪酸等のモノカルボン酸との塩等を挙げる事ができる。無機塩基としては、例えば、ナトリウム、リチウム、カルシウム、マグネシウム、アルミニウムの水酸化物、炭酸塩及び重炭酸塩、及びアンモニア等を挙げる事ができる。有機塩基との塩としては、例えば、メチルアミン、ジメチルアミン、トリエチルアミンの様なモノ-、ジ-又はトリ-アルキルアミン塩、モノ-、ジ-又はトリ-ヒドロキシアルキルアミン塩、グアニジン塩、N-メチルグルコサミン塩等を挙げる事ができる。
【0018】
<トリ軟骨の2型コラーゲン加水分解物>
本発明の飲食品組成物は、トリ軟骨の2型コラーゲン加水分解物を含むことが好ましい。
トリ軟骨の2型コラーゲン加水分解物(以下では、「トリ軟骨の2型コラーゲン加水分解物」を「HCII」と記載することがある)は、2型コラーゲンを酵素等で加水分解することで得ることができる。2型コラーゲンは、トリ軟骨から公知の方法で抽出することができる。また、本発明で用いられるトリ軟骨の2型コラーゲン加水分解物は、本分野で用いられる通常の技術を用いて軟骨から調製することができる。
例えば、トリ軟骨を酵素処理することにより2型コラーゲン加水分解物を得ることができる。具体的に、(1)トリ軟骨を液体中にて加熱する前処理工程、及び(2)前処理工程後のトリ軟骨を酵素処理する工程により、2型コラーゲン加水分解物を調製することができる。なお、上記工程(2)で用いられる酵素は、本分野で通常用いられる酵素であればよく、特に限定されないが、例えば、コラゲナーゼ、パパイン、ブロメライン、アクチニジン、フィシン、カテプシン、ペプシン、キモシン、トリプシン、プロテアーゼ、スブチリシン、アミノペプチダーゼ、エンドペプチダーゼ、エキソペプチダーゼ、及びこれらの酵素を混合した酵素製剤等を用いることができる。ただし、2型コラーゲン加水分解物の調製方法は酵素処理方法に限定されるものではない。
【0019】
トリ軟骨の2型コラーゲン加水分解物には、トリ軟骨を加水分解して得られる溶液を使用してもよく、その濃縮物若しくは乾燥粉末又はこれらの精製物を使用してもよい。トリ軟骨の2型コラーゲン加水分解物の精製物としては、例えばトリ軟骨を加水分解して得られる溶液を限外ろ過や膜処理、分液操作又は樹脂等による分画処理に供して精製度を上げたものが用いられる。Pep1及び/又はその塩を含むトリ軟骨の2型コラーゲン加水分解物の精製度を上げた後、凍結乾燥や噴霧乾燥等によって粉末化しても良い。
【0020】
トリ軟骨の2型コラーゲン加水分解物は、通常Pep1及び/又はその塩を含むペプチド混合物であり、2型コラーゲン由来のコラーゲンペプチドということもできる。
トリ軟骨の2型コラーゲン加水分解物は、重量平均分子量が100~20,000であることが好ましく、2,000~8,000であることがより好ましく、3,000~7,000であることが更に好ましい。分子量及び重量平均分子量は、ユーロフィンHPAEC-PAD法で測定することができる。
【0021】
一態様において、トリ軟骨の2型コラーゲン加水分解物を、ゲル濾過法等の方法により分子量の大きさに応じて分画し、得られるPep1を含む画分、又はPep1を含む画分とこれ以外の画分の1又は2以上を組み合わせて本発明の飲食品組成物に使用することができる。
本態様の飲食品組成物に用いるトリ軟骨の2型コラーゲン加水分解物を分画した画分としては、分子量が3100未満であって、重量平均分子量が1200~1400の画分(画分1)、及び分子量が2600未満であって、重量平均分子量が950~1150の画分(画分2)が好ましい。本態様の飲食品組成物は、画分1と画分2の組み合わせを含有することが好ましい。Pep1は、通常、トリ軟骨の2型コラーゲン加水分解物由来の画分1及び画分2に含まれる。
【0022】
本発明の飲食品組成物は、更に動物抽出物及び/又は植物抽出物を含むことが好ましい。
動物抽出物としては、例えば、牛、豚、羊、ヤギ等の哺乳類、トリ(鶏)、ウズラ、アヒル、ガチョウ等の鳥類、貝類、昆虫類、魚類、軟体動物類、甲殻類等の抽出物が挙げられる。植物抽出物としては、例えば、茶、果汁の抽出物及びその濃縮物、野菜抽出物及びその濃縮物、大豆及びナッツ抽出物等が挙げられる。
上記動物抽出物及び植物抽出物のうち、動物抽出物が好ましく、鳥類の抽出物がより好ましく、家禽の抽出物が更に好ましく、チキンエキスが特に好ましい。本発明の飲食品組成物は、チキンエキスを含有すると、炎症抑制効果がより高くなる。
【0023】
<チキンエキス>
本発明で用いられるチキンエキス(以下ではCEと記載することがある)としては、トリ肉を原料として用い、液体中で加熱することにより得られる抽出物等を用いることができ、市販品を用いてもよい。原料に骨、軟骨、脚等が含まれていてもよいが、トリ頭部及び内蔵を含まないことが好ましい。
【0024】
上記チキンエキス(CE)の市販品としては、例えば、「BEC Brand’s Essence of Chicken(サントリー食品アジア社製)」や、「ScotchTM Essence of Chicken(Scotch Industrial(タイ)製)」、「Quaker Essence of chicken(Standard Foods Corporation(台湾)製)」、「Chicken stock and broth of SWANSONTM(Campbell Soup Company(NYSE:CPB)製)」、「Drip Chicken Essence(Eu Yan Sang International(シンガポール)製)」、「Boned Chicken Tonic(Eu Yan Sang International(シンガポール)製)」、「Boiled Essence of Chicken(Lao Xie Zhen(台湾)製)」等が挙げられる。いずれの市販品を用いてもよいが、なかでもBEC Brand’s Essence of Chickenを用いることが好ましい。
【0025】
本発明で用いられるチキンエキスを熱水抽出により製造する場合、本分野で用いられている通常の方法により製造することができる。例えば、100℃以上、好ましくは125℃以上の液体を用いた常圧抽出及び/又は加圧抽出を行い、得られた抽出物を膜処理やろ過することにより、チキンエキスを製造することができる。具体的には、(3)トリ肉を液体中にて加熱することにより、含有される水溶性タンパク質を除去する前処理工程、及び(4)上記前処理後に液体を交換し、再度加熱する工程により得られる抽出物が挙げられる。なお、工程(3)及び工程(4)における加熱処理は、原料であるトリ肉の焦げを防止するため、溶媒中で行うのが好ましい。溶媒としては、水、エタノール、又はこれらの混合物等を用いるのが好ましい。
チキンエキスは、上記のような方法で得られる抽出液、その希釈液、濃縮物又は乾燥粉末、及び、これらの精製物を含む。精製物としては、例えばチキンエキスの抽出液を限外ろ過や膜処理、分液操作又は樹脂等による分画処理に供して精製度を上げたものが用いられる。チキンエキスの精製度を上げた後、凍結乾燥や噴霧乾燥等によって粉末化しても良い。
【0026】
本発明で用いられるチキンエキスは、カルノシン及び/又はアンセリン及び/又はそれらの塩の1つ又は複数を含むことが好ましい。カルノシンは、βアラニンとヒスチジンのジペプチドでβアラニル・ヒスチジンとなったものである。アンセリンは、ヒスチジン部分がメチル化されβアラニル・1メチルヒスチジンとなったものである。
カルノシンの塩及びアンセリンの塩としては、例えば、上述したPep1の塩と同じものが挙げられる。
【0027】
本発明の飲食品組成物がカルノシン及び/又はその塩を含む場合、カルノシン及び/又はその塩の含有量は、例えば、該組成物中にカルノシン換算で、0.00001重量%以上が好ましく、0.0001重量%以上がより好ましく、また、10重量%以下が好ましく、1重量%以下がより好ましい。一態様において、カルノシンの含有量は、例えば、該組成物中に0.00001~10重量%が好ましく、0.0001~1重量%がより好ましい。
【0028】
本発明の飲食品組成物がアンセリン及び/又はその塩を含む場合、アンセリン及び/又はその塩の含有量は、例えば、該組成物中にアンセリン換算で、0.00001重量%以上が好ましく、0.0001重量%以上がより好ましく、また、10重量%以下が好ましく、1重量%以下がより好ましい。一態様において、アンセリンの含有量は、例えば、該組成物中に0.00001~10重量%が好ましく、0.0001~1重量%がより好ましい。
【0029】
カルノシン及びアンセリンは、例えばHPLCで定量することができる。本発明の飲食品組成物は、カルノシン及びアンセリンを含むことがより好ましい。
【0030】
上記カルノシン、アンセリン及びそれらの塩のカルノシン及びアンセリン換算の合計重量と、Pep1及び/又はそれらの塩のペプチド換算の重量との重量比(カルノシン及びアンセリンの合計/Pep1)が、1,000,000/1~1/15,000であることが好ましい。上記重量比は、より好ましくは、1,000,000/1~100/1、更に好ましくは100,000/1~1,000/1である。
【0031】
上記トリ軟骨の2型コラーゲン加水分解物(固形分換算)と、上記カルノシン、アンセリン及びそれらの塩のカルノシン及びアンセリン換算の合計との重量比(HCII/カルノシン及びアンセリンの合計)は、20/1~1/5であることが好ましい。上記重量比は、より好ましくは、15/1~1/3である。
【0032】
本発明の飲食品組成物に含まれる各成分の含有量は特に限定されず、該組成物の形態等に応じて設定することができる。
一態様において、本発明の飲食品組成物中のPep1及び/又はその塩の含有量は、Pep1換算で、0.00001重量%以上が好ましく、0.0001重量%以上がより好ましく、また、1重量%以下が好ましく、0.1重量%以下がより好ましい。一態様において、Pep1及び/又はその塩の含有量は、該組成物中に0.00001~1重量%が好ましく、0.0001~0.1重量%がより好ましい。
【0033】
一態様において、本発明の飲食品組成物中のトリ軟骨の2型コラーゲン加水分解物(固形分換算)の含有量は、0.1重量%以上が好ましく、0.5重量%以上がより好ましく、また、99重量%以下が好ましく、90重量%以下がより好ましい。一態様において、トリ軟骨の2型コラーゲン加水分解物(固形分換算)の含有量は、該組成物中に0.1~99重量%が好ましく、0.5~90重量%がより好ましい。
本明細書において、トリ軟骨の2型コラーゲン加水分解物の含有量には、Pep1が含まれる。
【0034】
一態様において、本発明の飲食品組成物中のチキンエキス(固形分換算)の含有量は、0.1重量%以上が好ましく、0.5重量%以上がより好ましく、また、99重量%以下が好ましく、90重量%以下がより好ましい。一態様において、チキンエキス(固形分換算)の含有量は、該組成物中に0.1~99重量%が好ましく、0.5~90重量%がより好ましい。
【0035】
飲食品組成物としては、一般的な飲食品、機能性食品、保健機能食品、特別用途食品、栄養補助食品、健康補助食品、サプリメント等が挙げられる。飲食品の形態としては特に限定されず、例えば、固形状の食品であってもよいし、液状の食品であってもよい。好ましくは飲料である。
【0036】
本発明の飲食品組成物は、飲食品への添加物として許容されている各種の希釈剤、酸味料、酸化防止剤、安定剤、保存料、香料、乳化剤、色素類、調味料、pH調整剤、栄養強化剤等が添加されていてもよい。
【0037】
本発明の飲食品組成物は、非治療的用途に用いることが好ましい。非治療的とは、医療行為、すなわち人間の手術、治療又は診断を含まない概念である。
【0038】
<抗炎症用組成物>
一態様において、本発明の飲食品組成物は、炎症を抑制するために用いることができる。本発明の飲食品組成物は、抗炎症用組成物であってよく、Pep1及び/又はその塩を有効成分として含む抗炎症用組成物であってよい。
【0039】
本発明において目的とする抗炎症効果を得るためには、上述の飲食品組成物と同様に、Pep1及び/又はその塩を含むトリ軟骨の2型コラーゲン加水分解物及び任意で含有するチキンエキスを、飲食品組成物に配合する。Pep1及び/又はその塩を含むトリ軟骨の2型コラーゲン加水分解物及びチキンエキスは、そのまま使用してもよく、また本発明の効果を損なわない限り、上述したようにその濃縮物、乾燥粉末又は精製度を高めたものを配合してもよい。添加物等は、上述したものと同様のものを用いることができる。
【0040】
本発明の飲食品組成物の摂取量は特に限定されない。一態様として、抗炎症効果を得ることを目的として本発明の飲食品組成物を摂取する場合、摂取量は、炎症の抑制効果が得られるような量であればよく、対象の体重等に応じて適宜設定すればよい。
【0041】
一態様において、本発明の飲食品組成物を、ヒト(成人)を対象に摂取させる場合、Pep1及び/又はその塩の摂取量は、Pep1換算で、1日当たり体重60kgあたり、好ましくは0.001mg以上、より好ましくは0.01mg以上、また、好ましくは200mg以下、より好ましくは100mg以下である。一態様において、Pep1及び/又はその塩の摂取量は、ヒト(成人)であれば、Pep1換算で、1日当たり体重60kgあたり、好ましくは0.001~200mg、より好ましくは0.01~100mgである。
【0042】
一態様において、本発明の飲食品組成物を、ヒト(成人)を対象に摂取させる場合、トリ軟骨の2型コラーゲン加水分解物(固形分換算)の摂取量は、1日当たり体重60kgあたり、好ましくは0.01mg以上、より好ましくは0.1mg以上、また、好ましくは4000mg以下、より好ましくは3000mg以下である。一態様において、トリ軟骨の2型コラーゲン加水分解物の摂取量は、ヒト(成人)であれば、1日当たり体重60kgあたり、好ましくは0.01~4000mg、より好ましくは0.1~3000mgである。
本明細書において、トリ軟骨の2型コラーゲン加水分解物の摂取量には、Pep1及び/又はその塩が含まれる。
【0043】
一態様において、本発明の飲食品組成物を、ヒト(成人)を対象に摂取させる場合、チキンエキス(固形分換算)の摂取量は、1日当たり体重60kgあたり、好ましくは0.1mg以上、より好ましくは1mg以上、また、好ましくは15000mg以下、より好ましくは13000mg以下である。一態様において、チキンエキス(固形分換算)の摂取量は、ヒト(成人)であれば、1日当たり体重60kgあたり、好ましくは0.1~15000mg、より好ましくは1~13000mgである。チキンエキスの摂取量には、カルノシン、アンセリン及びそれらの塩が含まれる。
【0044】
一態様において、本発明の飲食品組成物をヒト(成人)に摂取させる場合、カルノシン、アンセリン及びそれらの塩の総摂取量は、カルノシン及びアンセリン換算で、1日当たり体重60kgあたり、好ましくは0.001mg以上、より好ましくは0.01mg以上、また、好ましくは500mg以下、より好ましくは400mg以下である。一態様において、カルノシン及びアンセリンをヒト(成人)に摂取させる場合、カルノシン、アンセリン及びそれらの塩の総摂取量は、カルノシン及びアンセリン換算で、1日当たり体重60kgあたり、好ましくは0.001~500mg、より好ましくは0.01~400mgである。
【0045】
一態様において、Pep1及び/又はその塩を含むトリ軟骨の2型コラーゲン加水分解物及びチキンエキスの上記量を、1日1回以上、例えば、1日1回又は数回(例えば2~3回)に分けて、摂取させることが好ましい。一態様においては、上記量のPep1及び/又はその塩を含むトリ軟骨の2型コラーゲン加水分解物及び上記量のチキンエキスを、ヒトに摂取させることが好ましい。一態様において、本発明の組成物は、ヒトに、1日当たり体重60kgあたり、上記量のPep1及び/又はその塩を含むトリ軟骨の2型コラーゲン加水分解物及び上記量のチキンエキスを摂取させるために使用することができる。
【0046】
一態様において、抗炎症効果を得ることを目的として、本発明の飲食品組成物を摂取させる場合、上記量のPep1及び/又はその塩を含むトリ軟骨の2型コラーゲン加水分解物及び上記量のチキンエキスを摂取させることが好ましい。
【0047】
本発明の飲食品組成物は、マクロファージ炎症タンパク質-1(MIP-1)、単球走化性タンパク質-1(MCP-1)、インターロイキン-6(IL-6)、インターロイキン-7(IL-7)、インターロイキン-8(IL-8)、インターロイキン-9(IL-9)、インターロイキン-12(IL-12)、及びRANTES(regulated on activation, normal T cell expressed and secreted)等のサイトカイン産生を抑制する。本発明の飲食品組成物は、中でも、MIP-1β、MCP-1、IL-6、IL-7、IL-8、IL-9、IL-12、及びRANTESの産生を抑制する作用が高い。
上記のサイトカイン産生を抑制することで、生体の炎症を抑制することができる。
【0048】
本発明の飲食品組成物は、炎症性の状態又は疾患の予防又は改善のために使用することができる。炎症性の状態又は疾患とは、炎症に起因する状態又は疾患、又は炎症を伴う状態又は疾患が挙げられる。このような状態又は疾患としては、関節炎、関節リウマチ等の膠原病、炎症性大腸炎、変形性関節症、腱炎、坐骨神経痛、椎間板ヘルニア、狭窄症、脊髄症、腰痛、椎間関節痛、手根管症候群、足根管症候群、腰椎術後疼痛症候群、エイズ、動脈硬化、喘息、関節炎、糖尿病、肝炎、脳卒中、認知症、筋消耗、ウイルス感染、光老化を含めた皮膚老化、がん、老化、アレルギー疾患、パーキンソン病、脳梗塞、白内障、てんかん、脊髄損傷、未熟児網膜症、腎障害、消化性潰瘍、膵炎、潰瘍性大腸炎、心筋梗塞、成人呼吸窮迫症候群、肺気腫、血管炎、浮腫、糖尿病合併症、紫外線障害、高山病、ポルフィリン血症、熱傷、凍傷、接触性皮膚炎、ショック、多臓器不全、DIC、疲労、サルコぺニア(筋力低下)、ミトコンドリア機能障害、アルツハイマー病、乾癬性関節炎、強直性脊椎炎、若年性特発性関節炎、及び全身性エリテマトーデス(lupus)等が挙げられる。本発明の飲食品組成物は、これらの疾患の予防又は改善のために、好ましく使用される。中でも変形性関節症、関節リウマチ、及び乾癬性関節炎等の予防又は改善のために、好ましく使用される。
本明細書において、状態又は疾患の予防は、発症を防止すること、発症を遅延させること、発症率を低下させること、発症のリスクを軽減すること等を包含する。状態又は疾患の改善は、対象を状態又は疾患から回復させること、状態又は疾患の症状を軽減すること、状態又は疾患の症状を好転させること、状態又は疾患の進行を遅延させること、防止すること等を包含する。
【0049】
本発明の飲食品組成物を摂取させる対象(投与対象ということもできる)は、特に限定されない。好ましくはヒト又は非ヒト哺乳動物であり、より好ましくはヒトである。
一態様において、投与対象として、炎症の抑制を必要とする又は希望する対象等が挙げられる。このような対象として、例えば、炎症の予防又は改善を必要とする又は希望する対象、上記の炎症性の状態又は疾患の予防又は改善を必要とする又は希望する対象が挙げられる。一態様において、本発明における投与対象として、中高年者が挙げられる。本発明の飲食品組成物は、例えば、炎症の抑制により予防又は改善が期待できる状態の予防等を目的として、健常者に対して使用することもできる。
【0050】
本発明の飲食品組成物には、炎症を抑制することにより発揮される機能の表示が付されていてもよい。このような表示は機能性表示ともいい、その表示内容は特に限定されない。このような表示として、例えば、「関節の痛みを緩和する」、「関節の痛みを軽減する」、「膝の調子を整える」、「膝を健康に保つ」、「関節の健康を改善する」、「関節の動きを改善する」等、又は、これらと同視できる表示又は機能性表示が挙げられる。
本発明の一態様において、本発明の飲食品組成物は、上記の表示が付された飲食品であることが好ましく、飲料であることがより好ましい。また上記の表示は、上記の機能を得るために本発明の飲食品組成物を用いる旨の表示であってもよい。当該表示は、飲食品組成物自体に付されてもよいし、飲食品組成物の容器又は包装に付されていてもよい。
【0051】
<骨吸収抑制用組成物>
別の一態様において、本発明の飲食品組成物は、破骨細胞の骨吸収活性を抑制するために用いることができる。本発明の飲食品組成物は、骨吸収抑制用組成物として使用することができる。本発明は、Pep1及び/又はその塩を有効成分として含む骨吸収抑制用組成物も含包する。
【0052】
本発明において目的とする骨吸収抑制効果を得るためには、上述の抗炎症用組成物と同様に、Pep1及び/又はその塩を含むトリ軟骨の2型コラーゲン加水分解物を、飲食品組成物に配合する。Pep1及び/又はその塩を含むトリ軟骨の2型コラーゲン加水分解物は、そのまま使用してもよく、また本発明の効果を損なわない限り、上述したようにその濃縮物、乾燥粉末又は精製度を高めたものを配合してもよい。添加物等は、上述したものと同様のものを用いることができる。
【0053】
本発明の飲食品組成物を、骨吸収活性を抑制するために用いる場合、摂取量は特に限定されない。本発明の飲食品組成物の摂取量は、骨吸収活性の抑制効果が得られるような量であればよく、対象の体重等に応じて適宜設定すればよい。
【0054】
本発明の飲食品組成物を、骨吸収活性の抑制を目的としてヒト(成人)を対象に摂取させる場合、Pep1及び/又はその塩、並びにトリ軟骨の2型コラーゲン加水分解物の摂取量や摂取回数は、上述の抗炎症用組成物と同じ量、回数を設定することができる。一態様においては、上記量のPep1及び/又はその塩を含むトリ軟骨の2型コラーゲン加水分解物を、ヒトに摂取させることが好ましい。一態様において、本発明の飲食品組成物は、ヒト(体重60kg)に、1日当たり上記量のPep1を含むトリ軟骨の2型コラーゲン加水分解物を摂取させるために使用することができる。
【0055】
一態様において、骨吸収抑制効果を得ることを目的として、本発明の飲食品組成物を摂取させる場合、上記量のPep1及び/又はその塩を含むトリ軟骨の2型コラーゲン加水分解物を摂取させることが好ましい。
【0056】
本発明の飲食品組成物は、破骨細胞の骨吸収活性を抑制する。破骨細胞の骨吸収活性を抑制することで、骨量減少を抑制又は改善することができる。骨量減少の抑制は、骨量を維持すること、骨量減少の進行を遅延又は停止することを含む。骨量減少の改善は、骨量を回復させること、骨量を増やすこと、骨量減少の程度を軽減すること等を含む。
【0057】
本発明の飲食品組成物は、骨量減少に関連する状態又は疾患の予防又は改善のために使用することができる。このような状態又は疾患としては、骨粗しょう症、骨減少症等が挙げられる。本発明の飲食品組成物は、これらの疾患の予防又は改善のために、好ましく使用される。
【0058】
一態様において、投与対象として、骨吸収活性の抑制を必要とする又は希望する対象等が挙げられる。このような対象として、例えば、骨量減少に関連する状態又は疾患の予防又は改善を必要とする又は希望する対象が挙げられる。一態様において、本発明における投与対象として、中高年者が挙げられる。本発明の組成物は、例えば、骨吸収活性の抑制により予防又は改善が期待できる、骨量減少に関連する状態の予防等を目的として、健常者に対して使用することもできる。
【0059】
本発明の飲食品組成物には、骨吸収活性を抑制することにより発揮される効果を示す機能性表示が付されていてもよい。このような表示として、例えば、「骨密度を高める」、「骨量を補う」、「骨の健康を維持する」、「骨量減少を防止する」等、又は、これらと同視できる表示又は機能性表示が挙げられる。
本発明の一態様において、本発明の飲食品組成物は、上記の表示が付された飲食品であることが好ましく、飲料であることがより好ましい。また上記の表示は、上記の機能を得るために本発明の飲食品組成物を用いる旨の表示であってもよい。当該表示は、飲食品組成物自体に付されてもよいし、飲食品組成物の容器又は包装に付されていてもよい。
【0060】
<製造方法>
本発明はまた、Gly-Pro-Glu-Gly-Ala-Pro-Gly-Lys-Asp(配列番号1)で表されるアミノ酸配列からなるペプチド(Pep1)及び/又はその塩を配合する工程を含む、飲食品組成物の製造方法に関する。
上記配合する工程において、Pep1及び/又はその塩は、それ単独で飲食品組成物に配合することができるが、Pep1及び/又はその塩を含むトリ軟骨の2型コラーゲン加水分解物を配合して飲食品組成物を製造することが好ましい。この場合、例えば、トリ軟骨の2型コラーゲンを酵素等で加水分解して得られた加水分解物をそのまま飲食品組成物に配合することができる。また、本発明の効果を損なわない限り、上述したようにその濃縮物、乾燥粉末又は精製度を高めたものを配合してもよい。
【0061】
本発明の製造方法において、更に動物抽出物及び/又は植物抽出物を配合する工程を含むことが好ましい。
本発明の製造方法では、原料の配合順は特に限定されない。例えば、Pep1及び/又はその塩、又はPep1及び/又はその塩を含むトリ軟骨の2型コラーゲン加水分解物を先に容器等に投入して、次いで動物抽出物及び/又は植物抽出物を加えてもよい。また、動物抽出物及び/又は植物抽出物を先に容器等に投入しておき、その後Pep1及び/又はその塩、又はPep1及び/又はその塩を含むトリ軟骨の2型コラーゲン加水分解物を加えてもよい。
上記動物抽出物及び植物抽出物のうち、抽出物は動物抽出物が好ましく、鳥類の抽出物がより好ましく、家禽の抽出物が更に好ましく、チキンエキスであることが特に好ましい。
本発明の製造方法において、トリ軟骨の2型コラーゲン加水分解物の好ましい態様は、上記と同じである。またチキンエキスの好ましい態様は、上記と同じである。
本発明の製造方法において、チキンエキスがカルノシン及び/又はアンセリン及び/又はそれらの塩の1つ又は複数を含むことが好ましい。
【0062】
本発明の製造方法では、チキンエキスは、市販品や熱水抽出して製造したものをそのままPep1及び/又はその塩、又は、Pep1及び/又はその塩を含むトリ軟骨の2型コラーゲン加水分解物に配合することができる。チキンエキスが濃縮物、乾燥粉末又はこれらの精製物の形態である場合は、水、エタノール又はその混合物等の液体で希釈、溶解等してからPep1及び/又はその塩、トリ軟骨の2型コラーゲン加水分解物等に配合してもよい。Pep1及び/又はその塩を含むトリ軟骨の2型コラーゲン加水分解物が濃縮物、乾燥粉末又はこれらの精製物の形態である場合も同様に、上記の液体で希釈、溶解等してから配合に用いることができる。または、予め希釈、溶解等せずに原料を配合し、その後、液体を添加して希釈、溶解等してもよい。
【0063】
本発明の製造方法で製造する飲食品組成物には、Pep1及び/又はその塩、トリ軟骨の2型コラーゲン加水分解物及びチキンエキスの他に、上述したものと同じ添加物を配合することができる。
【0064】
本発明はまた、抗炎症用組成物を製造するための、Gly-Pro-Glu-Gly-Ala-Pro-Gly-Lys-Asp(配列番号1)で表されるアミノ酸配列からなるペプチド(Pep1)及び/又はその塩を含む2型コラーゲン加水分解物の使用に関する。
上記抗炎症用組成物としては、上述したPep1及び/又はその塩を含むトリ軟骨の2型コラーゲン加水分解物を含む飲食品組成物と同様の組成物が挙げられる。チキンエキスやその他の添加物は、上述したものと同じものを使用することができる。
【0065】
本発明はまた、骨吸収抑制用組成物を製造するための、Gly-Pro-Glu-Gly-Ala-Pro-Gly-Lys-Asp(配列番号1)で表されるアミノ酸配列からなるペプチド(Pep1)及び/又はその塩の使用に関する。
上記骨吸収抑制用組成物としては、上述したPep1及び/又はその塩を含む飲食品組成物と同様の組成物が挙げられる。Pep1及び/又はその塩は、Pep1及び/又はその塩を含むトリ軟骨の2型コラーゲン加水分解物の形態で使用することができる。その他の添加物は、上述したものと同じものを使用することができる。
【0066】
本発明はまた、チキンエキスを有効成分として含む骨吸収抑制用組成物に関する。
本発明の骨吸収抑制用組成物は、破骨細胞の骨吸収を抑制する効果を有する。
本発明の組成物は、チキンエキスを有効成分として含むことにより、骨吸収抑制効果を発揮することができる。
【0067】
チキンエキス及びその好ましい態様は、上記と同じである。組成物には、所望により上述した添加物を使用してもよい。本発明の骨吸収抑制用組成物には、上述のトリ軟骨の2型コラーゲン加水分解物が更に含まれていてもよい。
【0068】
一態様において、本発明の骨吸収抑制用組成物中のチキンエキス(固形分換算)の含有量は、例えば、0.1重量%以上が好ましく、0.5重量%以上がより好ましく、また、99重量%以下が好ましく、90重量%以下がより好ましい。一態様において、チキンエキス(固形分換算)の含有量は、例えば、該組成物中に0.1~99重量%が好ましく、0.5~90重量%がより好ましい。
【0069】
本発明の骨吸収抑制用組成物は、カルノシン及び/又はアンセリン及び/又はそれらの塩の1つ又は複数を含むことが好ましい。一態様において、本発明の組成物中のカルノシン及び/又はアンセリン及び/又はそれらの塩の含有量は、カルノシン換算で、例えば、0.00001重量%以上が好ましく、0.0001重量%以上がより好ましく、また、10重量%以下が好ましく、1重量%以下がより好ましい。一態様において、カルノシンの含有量は、例えば、該組成物中に0.00001~10重量%が好ましく、0.0001~1重量%がより好ましい。
【0070】
一態様において、本発明の骨吸収抑制用組成物中のアンセリン及び/又はその塩の含有量は、アンセリン換算で、例えば、0.00001重量%以上が好ましく、0.0001重量%以上がより好ましく、また、10重量%以下が好ましく、1重量%以下がより好ましい。一態様において、アンセリンの含有量は、例えば、該組成物中に0.00001~10重量%が好ましく、0.0001~1重量%がより好ましい。
【0071】
本発明の骨吸収抑制用組成物の摂取量は特に限定されない。本発明の組成物の摂取量は、成熟した破骨細胞の骨吸収抑制効果が得られるような量であればよく、対象の体重等に応じて適宜設定すればよい。
【0072】
一態様において、本発明の骨吸収抑制用組成物を、ヒト(成人)を対象に摂取させる場合、チキンエキス(固形分換算)の摂取量は、1日当たり体重60kgあたり、好ましくは0.1mg以上、より好ましくは1mg以上、また、好ましくは15000mg以下、より好ましくは13000mg以下である。一態様において、チキンエキス(固形分換算)の摂取量は、ヒト(成人)であれば、1日当たり体重60kgあたり、好ましくは0.1~15000mg、より好ましくは1~13000mgである。チキンエキスの摂取量には、カルノシン及びアンセリンが含まれる。
【0073】
一態様において、本発明の骨吸収抑制用組成物を、ヒト(成人)を対象に摂取させる場合、カルノシン、アンセリン及びそれらの塩の総摂取量は、カルノシン及びアンセリン換算で、1日当たり体重60kgあたり、好ましくは0.001mg以上、より好ましくは0.01mg以上、また、好ましくは500mg以下、より好ましくは400mg以下である。一態様において、カルノシン、アンセリン及びそれらの塩の総摂取量は、カルノシン及びアンセリン換算で、ヒト(成人)であれば、1日当たり体重60kgあたり、好ましくは0.001~500mg、より好ましくは0.01~400mgである。
【0074】
一態様において、上記量のチキンエキスを、1日1回以上、例えば、1日1回又は数回(例えば2~3回)に分けて、摂取させることが好ましい。一態様においては、上記量のチキンエキスを、ヒトに摂取させることが好ましい。一態様において、本発明の組成物は、ヒト(体重60kg)に、1日当たり上記量のチキンエキスを摂取させるために使用することができる。骨吸収抑制用組成物の好ましい投与対象は、上記と同じである。
【0075】
本発明はまた、骨吸収抑制用組成物を製造するための、チキンエキスの使用に関する。
上記骨吸収抑制用組成物としては、上述したチキンエキスを含む飲食品組成物と同様の組成物が挙げられる。また、チキンエキスやその他の添加物は、上述したものと同じものを使用することができる。
【実施例】
【0076】
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。なお、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0077】
1.炎症抑制効果
下記の実施例及び比較例で使用した原料、試薬等を以下に示す。
<トリ軟骨の2型コラーゲン加水分解物の調製>
図1に、HCII調製方法を簡略に説明したフローを示す。先ず、凍結トリ軟骨を40℃の水で解凍し、40℃の水で洗浄を行った(1時間)。次に、洗浄水を廃棄し、新たな水をトリ軟骨の3倍量となるように1200Lポットに入れた。水を酵素処理に最適な温度まで昇温し、ここに洗浄後のトリ軟骨を浸漬させ、数時間酵素処理を行った。酵素処理を行った後に、トリ軟骨の入ったポットを90℃以上まで昇温し、30分間90℃以上で保持し、先の酵素処理で用いた酵素を不活化させた。得られた混合物(液体及び酵素処理後のトリ軟骨)をろ過した。得られた液体を濃縮した。最後に、得られた濃縮液を200℃で噴霧乾燥させ、HCII粉末を調製した。
【0078】
<HCII粉末の分子量の測定>
得られたHCIIの分子量分布をユーロフィンHPAEC-PAD法により測定した。得られたHCIIの分子量分布を下記表1に示す。本分野で用いられている通常の方法で算出されたHCIIの重量平均分子量は、4582であった。
【0079】
【0080】
<HCIIの画分の分画とペプチドの同定>
(HCII分画及び生物活性同定のための材料及び方法)
(材料)
ギ酸は東京化成工業株式会社から購入した。超純水はMerck Milli-Q浄水システムから入手した。合成ペプチドGPEGAPGKDは、GenScript社から入手した。
【0081】
(分取ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC))
HCIIの分画は、分取VERITY271HPLCシステム(Gilson社製)を使用して実施した。HCIIを超純水に溶解し、10mg/mL(w/v)溶液を調製した。14000rpmで5分間遠心分離した後、ガードカラム(SecurityGuard PREP Cartridge C12 15×21.2mm ID(Phenomenex社製))に取り付けられた分取GPCカラム(BioSep 5μm SEC-s2000 145Å LCカラム300×21.2mm(Phenomenex社製))にアリコート(1000μL)を注入し、5mL/minの速度で30分間、溶離液A(超純水:ギ酸=100:0.1(v/v))でイソクラティック溶離した。クロマトグラムは214nmで観察した。
GXシリーズのフラクションコレクター(Gilson社製)を使用して、8分から28分の間、0.5分ごとに画分を収集し、結果として得られた40の個々の画分は、その後、P1からP7の7つの画分にプールされた(P1:8.5-12.0分、P2:12.0-13.5分、P3:13.5-14.5分、P4:14.5-16.0分、P5:16.0-17.5分、P6:17.5-19.0分、P7:19.0-27.5分)。プールした画分を凍結乾燥機(ScanVac社製)で蒸発乾固し、乾燥したサンプルをさらに使用するまで-20℃で保存した。
【0082】
上記で得られた各画分の分子量を表2に示す。表2において、「Mw」及び「Mp」は、それぞれ、重量平均分子量及びピーク分子量を示す。表2に示すように、画分1(P1)及び画分2(P2)は、それぞれ、平均分子量が1359(P1)及び1092(P2)の分子で構成されていた。
HCII画分の分子量は、下記の条件でHPLCゲル濾過法により測定した。
装置:Agilent1100シリーズ
検出:UV214nm
流速:1mL/分
移動相:pH6.8のアイソクラティック0.1mMリン酸ナトリウムバッファー
実行時間:20分
カラム:BiosepTM 5μm SEC-s2000 145Å LCカラム300×7.8mm
【0083】
【0084】
(GPEGAPGKDを含むペプチドのin-silico検索)
画分P1~P7を、Duo Spray Turbo Vイオンソース及びガス発生器(Peak Scientific社)を用いて、Agilent社のHPLC1290シリーズと連結したTripleTOF5600(AB Sciex社)でLC-MS分析した。そして、主要成分をUHPLC Guard Zorbax EclipsePlusC18 2.1×5mm 1.8μm(Agilent社製)で分離し、溶離液A(超純水:ギ酸=100:0.1(v/v))及び溶離液B(アセトニトリル:ギ酸=100:0.1(v/v))を用いて、下記のリニアグラジエントで溶出した:0-0.5分:溶離液A100%;0.5-7.5分:溶離液A100-65%;7.5-10.0分:溶離液A65-0%;10.0-13.0分:溶離液A0%;13.0-13.1分:溶離液A0-100%;13.1-15.0分:溶離液A100%。実験は、Independent Data Acquisition(IDA)法のポジションモードで行い、MSの衝突エネルギー(CE)及びクラスター解除ポテンシャル(DP)は、それぞれ10.0V及び80Vとして最適化した。PeakView(AB Sciex社製)で分析を行った。続いて、質量分析データを分析し、Uniprot KBfastaファイルに添付されたProteinPilot(AB Sciex社製)を使用して、gallus gallusをキーワードとして検索した。更に、対象の候補リストでデータを処理し、Genscript社から購入したペプチドで確認した。
【0085】
(LC-MS分析によるペプチドマーカーの検出及び定量)
ペプチドGPEGAPGKDの検出及び定量は、LC-MSで行った。LC-MS分析は、Duo Spray Turbo Vイオンソース及びガス発生器(Peak Scientific社)を用いて、Agilent社のHPLC1290シリーズと連結したTripleTOF5600(AB Sciex社製)で行った。質量分析計では、エレクトロスプレーイオン化と多重反応モニタリング(MRM)を、単位質量分解能における陽イオンモードで使用する。パラメータは下記の通りである。衝突エネルギー拡散(CES):10;イオン放出遅延(IRD):67;イオン放出幅(IRW):25;イオン源ガス:40;カーテンガス(CUR):30;温度:500.0;イオンスプレー電圧フローティング(ISVF):5500)。クラスター解除ポテンシャル(DP)及び衝突エネルギー(CE)等のMS化合物依存パラメータ設定は、各ペプチドに合わせて最適化した。Analyst1.5.2(AB Sciex社製)を用いて、機器制御、データ取得、及びデータ処理を行った。
【0086】
GPEGAPGKDを超純水で再構成し、SeQuant ZIR-HILIC Guard Fitting PEEK被覆14×1mmカラム(Merck社)を含むZIC-HILIC 3.5μm 100Å 2.1×50mmカラム(Merck)に注入し、下記のリニアグラジエントを用いて溶離液A(超純水:ギ酸=100:0.1(v/v))及び溶離液B(アセトニトリル:ギ酸=100:0.1(v/v))で溶出した:0-0.5分:溶離液A10%;0.5-5.5分:溶離液A10-45%;5.5-10分:溶離液A45-70%;10-12分:溶離液A70-80%;12-13.5分:溶離液A80-10%;13.5-15分:溶離液A10%。注入量は10μL、流量は300μL/min、溶離液のUV吸光度は214nmでモニターした。MSの衝突エネルギー(CE)及びクラスター解除ポテンシャル(DP)は、それぞれ20V及び85Vとして最適化した。GPEGAPGKDは、m/z414.2/641.3ThでQ1/Q3イオン遷移を使用して、定量イオン及び確認イオンとして保持時間7.1分で検出した。15.25、31.5、62.5、125、及び250ng/mLの標準GPEGAPGKDにより、検量線を作成した。作業溶液として、HCIIの500μg/mL溶液を再構成した。MultiQuant(AB Sciex社製)により、HCII及びそのGPC分画中のGPEGAPGKDの定量を行った。
Pep1は、HCIIの画分P1及び画分P2含まれ、Pep1の含有量は、HCII(1g)に対して53.7±0.007μg/gであった。
【0087】
<カルノシン及びアンセリンの定量>
チキンエキス中のカルノシン及びアンセリンの定量は下記の条件でHPLCにより行った。
カルノシンの標準原液は、カルノシン粉末を脱イオン水に添加して溶解し、カルノシン濃度2.50mg/mlで調製した。アンセリンの標準原液は、L-アンセリン硝酸塩粉末を脱イオン水に添加して溶解し、Lーアンセリン濃度3.96mg/mlで調製した。
L-アンセリンの重量は、下記の式を用いて計算した。
L-アンセリン(g)=0.792×L-アンセリン硝酸塩(g)
<HPLC分析条件>
装置:紫外検出器付き高速液体クロマトグラフシステム(Agilent1100(Agilent社製))
カラム:Zorbax 300-SCX 4.6mmID×250mm(Agilent社製)
移動相:50mMリン酸二水素カリウム
流速:1.0mL/分
フローチャネル:チャネルA(50mMリン酸二水素カリウム)、チャネルB(アセトニトリル)、チャネルD(脱イオン水)
UV検出波長:210nm
サンプル注入量:10μL
【0088】
<抗炎症活性の評価方法>
実施例1~3では、下記の方法で炎症マーカーの産生抑制効果を評価した。
(原料及び試薬)
チキンエキス(CE):Brand’s Essence of Chicken(サントリー食品アジア社、1ml中のカルノシンの含有量:0.94mg/ml、1ml中のアンセリンの含有量:1.9mg/ml)
軟骨細胞培地(CM)、ウシ胎児血清(FBS)、軟骨細胞増殖サプリメント(CGS)及びペニシリン/ストレプトマイシン(P/S):ScienCell Research Laboratories製
IL-1β:R&D Systems社製
ポリ-L-リジン(PLL)被覆96ウェルプレート(Corning社製)
【0089】
<細胞培養及び前処理>
ヒト軟骨細胞(HC-a、ScienCell Research Laboratories社製)は、ヒト関節軟骨から分離され、5%FBS、1%CGS、1%P/Sを添加したCMで保存した。PLL被覆96ウェルプレートに細胞を細胞密度4000細胞/ウェルで播種し、5%CO2を含む加湿ガスチャンバー内で、37℃で一晩培養した。軟骨細胞をPBSで1回洗浄し、様々な濃度のHCII、チキンエキス(CE)、HCIIとCEの組み合わせ、HCIIから分画した画分、又はGPEGAPGKDで24時間前処理し、さらに25ng/mLのIL-1βを添加して24時間処理を行った。細胞を1100gで5分間遠心分離し、上清をサイトカイン分析に使用した。対比のため、HCII、CE、HCIIから分画した画分及びGPEGAPGKDで前処理せずに、IL-1βで処理した細胞(IL-1β処理細胞)を調整した。
【0090】
<多重サイトカイン分析>
Pro-Human Cytokine Multiplex Assays(Bio-Rad社製)を使用して、培地中のサイトカインを分析した。多重分析は以下の27個である:IL-1β、IL-2、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-8(CXCL8)、IL-9、IL-10、IL-12、IL-13、IL-15、IL-17、エオタキシン(CCL11)、マクロファージコロニー刺激因子(M-CSF)、インターフェロン(IFN)-γ、単球走化性タンパク質1(MCP-1;CCL2)、マクロファージ炎症性タンパク質-1α(MIP-1α;CCL3)、MIP-1β(CCL4)、RANTES(regulated on activation, normal T cell expressed and secreted)(CCL5)、TNF-α及び血管内皮増殖因子(VEGF)。製造元の指示に従って多重分析を実行し、Luminex xPONENT for MAGPIXプラットフォームで実行した。データ処理にはBio-Plex Managerバージョン6.0を使用した。サイトカインとケモカインの濃度は、標準曲線を参照して計算された。マルチプレックスキットの感度は5pg/mL未満であった。
【0091】
<統計分析>
GraphPad Prismバージョン5.0(GraphPad社)を使用して、統計分析を実施した。すべての結果は、平均±標準偏差として表される。統計分析は、分散分析(ANOVA)とそれに続く事後テューキーの多重比較検定によって実行された。P値がp<0.05の場合、データは有意であると見なされる。
【0092】
<実施例1及び比較例1、2>
ヒト軟骨細胞によって生成される炎症マーカーMIP-1βに対するHCIIとチキンエキス(CE)の効果を評価するために、4つの異なる条件を比較した:処理前の細胞(未処理コントロール)、IL-1β処理細胞(比較例1)、IL-1β+HCII処理細胞(実施例1)及びIL-1β+CE処理細胞(比較例2)。HCII処理細胞、CE処理細胞は、前処理にHCII又はCEを使用したものである。前処理において、HCIIの濃度は0.5mg/ml又は2.5mg/ml、CEの濃度は1.25mg/ml又は6.25mg/mlとした。
図2に示すように、IL-1β25ng/mLはヒト軟骨細胞に炎症を誘発し、未処理細胞(コントロール)と比較してMIP-1βのレベルを大幅に増加させた。細胞をHCII及びCEで前処理すると、IL-1βによって誘導されるMIP-1βのレベルが低下した。MIP-1βの産生抑制に対するHCII及びCEの用量依存効果もあった。
図2中、データは平均値±SD(n=3)として表される。教示がない限り、*は、p<0.05、**はp<0.01、***はp<0.001のIL-1β(IL-1β処理細胞)に対する有意差を示す。
【0093】
<実施例2>HCIIとCEの組み合わせの相乗効果
炎症マーカーMIP-1βの産生抑制に対するHCIIとCEの組み合わせによる相乗効果を評価するために、HCII単独、CE単独、HCIIとCEとを組み合わせた条件で前処理を行った。前処理の際のHCIIの濃度は0.5mg/ml、CEの濃度は1.25mg/mlとした。
図3に示すように、HCII0.5mg/mLとCE1.25mg/mLの組み合わせは、HCII又はCE単独での処理と比較して、炎症を軽減する相乗効果をもたらした。データは平均値±SD(n=3)として表される。教示がない限り、*は、p<0.05、**はp<0.01、***はp<0.001のIL-1β(IL-1β処理細胞)に対する有意差を示す。
【0094】
<実施例3>炎症マーカーの調節に対するHCIIからの分離画分の効果
HCIIから分離された7つの画分のうち、P1及びP2を使用した。実施例1と同様に、細胞を、IL-1β及びHCII並びにP1又はP2(HCII、P1、及びP2の濃度はそれぞれ5mg/mL)で前処理を行い、効果を比較した。
結果を
図4に示す。データは平均値±SD(n=3)として表される。教示がない限り、*は、p<0.05、**はp<0.01、***はp<0.001のIL-1β(IL-1β処理細胞)に対する有意差を示す。
【0095】
<実施例4及び比較例3>
炎症マーカーであるIL-6、IL-7、IL-9及びIL-12に対するHCIIの影響を評価するために、下記の3つの異なる条件を比較した:処理前の細胞(未処理のコントロール)、IL-1β処理細胞(比較例3)、及びIL-1β+HCII処理細胞(実施例4)。HCII処理細胞はHCIIで前処理を行ったものである。前処理において、HCIIの濃度は0.5mg/ml又は2.5mg/mlであった。
図5に示すように、IL-1β25ng/mLはヒト軟骨細胞に炎症を誘発し、未処理細胞(コントロール)と比較しIL-6、IL-7、IL-9又はIL-12のレベルを大幅に増加させた。細胞をHCIIで前処理すると、IL-1βによって誘導されるIL-6、IL-7、IL-9及びIL-12のレベルが低下した。IL-9及びIL-12の産生抑制に対するHCIIの用量依存効果もあった。
図5中、データは平均値±SD(n=3)として表される。教示がない限り、*は、p<0.05、**はp<0.01、***はp<0.001のIL-1β(IL-1β処理細胞)に対する有意差を示す。
【0096】
<実施例5>炎症マーカーMCP-1の産生抑制に対するGPEGAPGKDとCEの組み合わせの相乗効果
炎症マーカーMCP-1の産生抑制に対するGPEGAPGKDとCEの組み合わせの相乗効果を評価するために、実施例1と同様に、IL-1β及びGPEGAPGKDとCEの組み合わせの条件で前処理を行った。前処理において、GPEGAPGKDの濃度は2.5mg/mlであり、CEの濃度は6.25mg/mlであった。
結果を
図6に示す。データは平均値±SD(n=3)として表される。教示がない限り、*は、p<0.05、**はp<0.01、***はp<0.001のIL-1β(IL-1β処理細胞)に対する有意差を示す。
【0097】
<実施例6>炎症マーカーの産生抑制に対するGPEGAPGKDとCEの組み合わせの相乗効果
炎症マーカーであるIL-6、IL-8、IL-9、MCP-1、MIP-1β及びRANTESの産生抑制に対するGPEGAPGKDとCEの組み合わせの相乗効果を評価するために、実施例1と同様に、IL-1β及びGPEGAPGKDとCEの組み合わせの条件で前処理を行った。前処理において、GPEGAPGKDの濃度は25mg/ml、125mg/ml、又は250mg/mlであり、CEの濃度は6.25mg/mlであった。
図7-1(a)、
図7-1(b)、
図7-1(c)、
図7-2(d)、
図7-2(e)、及び
図7-2(f)に結果を示す。データは平均値±SD(n=3)として表される。教示がない限り、*は、p<0.05、**はp<0.01、***はp<0.001のIL-1β(IL-1β処理細胞)に対する有意差を示す。
【0098】
2.骨吸収抑制効果(トリ軟骨の2型コラーゲン加水分解物)
下記の実施例で使用した原料、試薬等を以下に示す。
トリ軟骨の2型コラーゲン加水分解物は、上記「1.炎症抑制効果」についての実施例等で調製、使用したものと同じものを用いた。
OsteoLyseアッセイキット(ヒトコラーゲン)、破骨細胞前駆体(OCP)、OCP基礎培地を含むOCP Bulletkit、及びOCP増殖培地SingleQuotsキットを、Lonza社から購入した。
OCP増殖培地SingleQuotsキットは、ウシ胎児血清、L-グルタミン、ペニシリン/ストレプトマイシン、マクロファージコロニー刺激因子、及び可溶性RANKリガンドを含み、Lonza社から入手した。
また、OsteoLyseアッセイキット(ヒトコラーゲン)は、96ウェルOsteoLyseプレート、フルオロフォア放出試薬、及び96ウェルアッセイプレート(黒)を含む。
【0099】
下記の実施例において、骨吸収抑制効果は下記の方法で評価した。
<細胞培養及び処理>
ヒト初代破骨細胞前駆体(OCP、Cat.#2T-110)を解凍し、OsteoLyseアッセイキット(Cat.#PA-1500)による96ウェルOsteoLyseプレートに10000細胞/ウェルで播種した。ヒト初代破骨細胞前駆体を、FBS(10%)、L-グルタミン(2mM)、ペニシリン(100units/ml)/ストレプトマイシン(100μg/ml)を含むOCP基礎培地(Cat.#PT-8201)で保存した。ヒト初代破骨細胞前駆体の分化培地を完成させるため、RANKリガンド及びM-CSFをそれぞれ66ng/ml及び33ng/mlの量で増殖培地に添加した。前駆細胞を、5%CO2を含む加湿ガスチャンバー内で、37℃で7日間培養し、機能的に成熟した破骨細胞に完全に分化させた。細胞の形態を顕微鏡で調べ、前駆体が完全に成熟破骨細胞に分化していることを確認した。未分化細胞をポジティブコントロールとして、RANKリガンドが存在しない増殖培地で保存した。7日目に、ペプチドGPEGAPGKD50mg/ml、HCII10mg/ml、及びHCIIから2つの濃度(5mg/ml及び10mg/ml)で分離された異なる画分を新鮮な分化培地に添加した。細胞を、5%CO2を含む加湿ガスチャンバー内で、37℃で更に3日間培養した。
【0100】
<骨吸収抑分析>
製造元の指示に従って骨吸収抑分析を実行した。本分析では、破骨細胞の吸収窩に放出されるマトリックスメタロプロテイナーゼの放出を直接測定した。フルオロフォアで誘導体化されたヒト骨基質(ユウロピウム共役コラーゲン)でOsteoLyse細胞培養プレートを被覆し、Eu標識コラーゲン断片に反映される破骨細胞の吸収活性をマイクロプレートリーダー(Tecan社、Infinite 200 Pro)で測定した。フルオロフォア放出試薬を96ウェルプレートに200uL/ウェルで添加し、10μlの細胞培養上清を移してフルオロフォア放出試薬と混合した。400μ秒の初期遅延の後、400μ秒間に渡り、励起波長340nm及び発光波長615nmで蛍光を測定した。細胞処理から24時間後、48時間後、及び72時間後の上清をサンプリングして、経時変化を調べた。
【0101】
<統計分析>
GraphPad Prismバージョン5.0(GraphPad社)を使用して統計分析を実施した。全ての結果は、平均値±標準偏差値として示す。統計分析は対応のないt検定で実施し、値がp<0.05の場合、データは有意であると見なした。
【0102】
<実施例7>HCIIによる骨吸収活性の抑制
成熟破骨細胞の骨吸収活性に対するHCIIの影響を評価するために、4つの異なる条件を比較した:未分化細胞(ポジティブコントロール)、処理前の分化した破骨細胞(未処理のコントロール)、及びHCII処理破骨細胞(HCII6mg/ml)。
図8に示すように、成熟破骨細胞を、HCII6mg/mlの量で72時間処理した。未処理のコントロールと比較して、HCIIは6mg/mLの使用量で骨吸収を大幅に低下させた。データは平均値±SD(n=3)として表される。教示がない限り、*は、p<0.05、**はp<0.01、***はp<0.001の未処理のコントロールに対する有意差を示す。
【0103】
<実施例8>7つの異なるHCII画分による骨吸収活性の抑制
HCIIを精製し、7つの画分(P1~P7)に分離して、骨吸収活性の減少におけるHCIIの有効性に寄与する生理活性物質を調べた。各画分は、5mg/mL添加した。細胞をHCII5mg/mLで72時間処理すると、骨吸収活性が大幅に減少した(
図9)。HCIIと同等の量で単独で処理した場合、どの画分も効果的ではなかった。しかし、画分1と画分2(P1+P2)を組み合わせて処理した場合、未処理のコントロールと比較して、骨吸収活性の大幅な減少で示されるように、相乗効果があった。
データは平均値±SD(n=3)として表される。教示がない限り、*は、p<0.05、**はp<0.01、***はp<0.001の未処理のコントロールに対する有意差を示す。
【0104】
<実施例9>ペプチドGPEGAPGKDによる骨吸収活性の抑制
画分1と画分2を組み合わせた画分(P1+P2)に、ペプチドGPEGAPGKDが含まれていることを確認し、その有効性を検証した。細胞を5mg/mLのHCII、5mg/mlの画分(P1+P2)又は50mg/mlのペプチドGPEGAPGKDで72時間処理した。実施例4と同様に、未処理のコントロールと比較して、HCIIとP1+P2は、5mg/mLの使用量で破骨細胞の骨吸収活性を妨げた。ペプチドGPEGAPGKDは、HCII又は画分P1+画分P2の量の10倍量で骨吸収における大幅な減少を示した(
図10)。
データは平均値±SD(n=3)として表される。教示がない限り、*は、p<0.05、**はp<0.01、***はp<0.001の未処理のコントロールに対する有意差を示す。
【0105】
HCIIは、用量依存的に成熟破骨細胞の骨吸収活性を抑制した。画分1と画分2の組み合わせは、未処理の細胞と比較した場合、骨吸収活性を大幅に妨げた。画分1及び画分2を組み合わせた画分に見られるペプチドGPEGAPGKDも、骨吸収を低下させた。したがって、ペプチドGPEGAPGKDは、HCIIによる骨吸収活性の阻害に部分的に寄与する生理活性物質の1つである可能性がある。
【0106】
3.骨吸収抑制効果(チキンエキス)
<実施例10>チキンエキスによる骨吸収活性の抑制
HCIIの代わりに、チキンエキスを7.5mg/ml、15mg/ml用いる以外は、実施例7と同様に、成熟破骨細胞の骨吸収活性の抑制について調べた。
細胞をCEで処理した場合、未処理のコントロールと比較して、7.5mg/mlと15mg/mlの両方において骨吸収の大幅な減少が示された(
図11)。教示がない限り、*は、p<0.05、**はp<0.01、***はp<0.001の未処理のコントロール対照に対する有意差を示す。
【0107】
<実施例11>膝痛及び骨量に対するHCII及びCEの効果を調べるためのランダム化二重盲検4アームパイロット試験
本パイロット試験は、単一施設、二重盲検、ランダム化、プラセボ対照試験として実施した。
【0108】
(被験者の登録とランダム化)
表3にまとめる選択基準及び除外基準を用いて、45歳~75歳の合計160人の被験者を選択した。被験者をランダムに下記の4群に分けた:「プラセボ」、「グルコサミン」、「HCII」、及び「HCIIとCE」。各群には40人の被験者が含まれた。
【0109】
【0110】
(試験製品)
「プラセボ」群は、マルトデキストリン6.8g及びキサンタンガム7mgを摂取した。
「グルコサミン」群は、グルコサミン塩酸塩1.5gを摂取した。グルコサミン塩酸塩は陽性対照として用いた。
「HCII」群は、2型コラーゲン加水分解物(HCII)の天然の基質と、低分子量コンドロイチン硫酸と、ヒアルロン酸(HA)とからなるトリ胸肋軟骨加水分解抽出物である、BRANDコラーゲン加水分解物(サントリー食品アジア社製)を摂取した。この製品には、ペプチドGPEGAPGKDを含むHCIIが含まれる。容量68mLの各ボトルに2gのHCIIが含まれ、HCII(66.5%)と、解重合したコンドロイチン硫酸(18%)と、HA(11%)とからなる天然組成物を提供する。残り4.5%は、胸肋軟骨の成分のうち、特性のないものが占める。
「HCIIとCE」群は、ボトル68mLに含まれるBrand’s Essence of Chicken(BEC)70g(乾燥重量:5~6g)及びHCII2gの混合物を摂取した。試験品は、全て、ガラス瓶詰めの液体製品として調製され、等カロリー、同一の外観、及び同等の風味と食感を有した。参加者は、1日1回、午前中、食後に試験製品を摂取した。
試験結果に影響がないと見なされる場合、併用薬又はサプリメントを継続して摂取することが許可された。痛み止め又は鎮痛剤は、処方箋の下で救急薬として許可された。「鎮痛剤の併用」欄の記録に基づいて鎮痛剤による治療日数カバー比率(PDC)を算出し、visit間の総日数に対する鎮痛剤の治療日数カバー率と定義した。試験期間中、ホルモン療法(成長ホルモン、プロゲステロン、エストロゲン、テストステロン)、カルシウム、ビタミンD、又は、アミノ酸、ペプチド、タンパク質、オメガ3、オメガ6、グルコサミン、又はコンドロイチンを豊富に含むサプリメント等、関節、骨、及び筋肉の健康をサポートする治療や栄養補助食品は全て禁止された。
【0111】
(手順)
本試験では、最初にスクリーニングvisit(ベースラインvisitの28日前)を行い、その後、ベースラインvisit(ベースラインvisitは0日目であるが、スクリーニングvisitとベースラインvisitは同日でもよい)、そして3回のフォローアップvisit(8週目、16週目、24週目)を行った。0日目の28日前から0日目にかけて被験者をスクリーニングして、試験への適格性を判断した。ベースラインvisitの翌日から168日間(24週間)連続して被験物質を摂取した。168日間(24週間)連続して、被験者は1日1本、午前中(食後)に摂取した。摂取コンプライアンスを日誌カードに記録した。
膝痛における視覚的アナログスケール(VAS)は、摂取後0日目、7日目、及び14日目にスコア化した。
骨量評価はベースライン時(第0日)と第24週目のみに行った。
試験期間中、被験者はトレーニングスケジュールに従って、自宅で週2回、1回30分のレジスタンストレーニング(強制ではない)を行うことが推奨された。トレーニングは日誌カードに記録し、visit前1週間の食事内容を食事アンケートにより記録した。
【0112】
(処理コンプライアンス)
試験製品の摂取に関するコンプライアンスは、未使用薬の回収と被験者による毎日の摂取記録によって確認した。コンプライアンスは、visit間の日数に対して、割り付けられた用量のうち実際に摂取した用量の割合によって定義した。摂取率が70%であれば、準拠していると見なした。
【0113】
(運動プログラム)
ベースラインvisit時に配布されたトレーニングマニュアルに従って、全被験者に週2回、各30分間の自宅でのレジスタンストレーニングを奨励した。トレーニングプログラムのコンプライアンスを日誌カードに記録し、以下の式で算出した。
【0114】
【0115】
コンプライアンス率が≧50%であれば、準拠していると見なした。
【0116】
(膝痛における視覚的アナログスケール(VAS))
視覚的アナログスケール(VAS)は、0~100mmでスコア化した。0は無痛を示し、100はこれまでで最大の痛みを示す。摂取後0日目、7日目、及び14日目において、対象者は、感じた痛みの程度を特定するよう求められた。痛みの程度は、スケールで直線を引き、実線に沿った位置を示すことで表した。
【0117】
(骨量評価)
ベースライン時(0日目)と24週目に二重エネルギーX線吸収測定法(DXA)を実施し、左股関節の骨量(BM)を評価した。
【0118】
(忍容性と安全性)
試験期間中、自発的に報告された有害事象を記録した。バイタルサインをvisit毎に確認した。治験薬の安全性を評価するため、試験期間中のvisit毎に、全参加者の血清及び尿を測定した。
【0119】
(統計分析)
先験的な統計解析計画に従って、per-protocol統計解析を行った。摂取コンプライアンス率≧70%のランダム化された被験者をper-protocol解析の対象とした。安全性パラメータの解析は、試験製品を28本以上摂取した被験者を対象に実施した。二分変数はパーセンテージで報告し、連続変数は平均値とSDで報告した。カテゴリー変数の比較にはカイ二乗検定を使用し、連続変数の群間差の比較にはクラスカル・ウォリス検定を使用した。
連続的な主要及び副次評価項目に関し、試験群間の変化の平均差の検定で使用する混合効果モデルを用いて、visit毎の摂取の相互作用を固定効果因子として反復測定分散分析(ANOVA)を実施した。結果は全て、対応するp値が0.05未満の場合、統計的に有意であると見なした。visit毎の摂取の相互作用項が有意であった場合、処理群間の事後ペアワイズ比較を行い、調整後のp値を報告した。評価項目に影響を及ぼすと予想される変数は、因子としてモデルに含めた。関節の健康に関する分析では性別とvisit毎の性別の相互作用項を因子として含めた。骨の健康に関する分析では性別とレジスタンストレーニングのコンプライアンスとそれぞれの相互作用項を因子として含めた。
更に、レジスタンストレーニングの実施回数が全トレーニング期間の10パーセンタイル未満の被験者については、サブグループ解析を行った。分析は、独立した統計学者によって、SAS version9.4(米国ノースカロライナ州ケーリー)を使用して行われた。
【0120】
<結果>
(ベースライン特性と処理コンプライアンス)
合計160名の被験者が登録され、151名の被験者が試験を完了し、統計解析の対象となった(PP)。9名の被験者が途中で脱落したが、群間において脱落者数に有意差はなかった。なお、脱落者は試験製品又はプラセボの摂取による副作用とは無関係であった。有害事象は認められなかった。血清生化学マーカーと尿検査で臨床的に有意な変化は認められなかった。
全体的に、4つの全ての群間で、コンプライアンス率における統計的な差はなかった(表4)。データの均一性を評価するために、全てのパラメータを4つのアーム間で比較した。ベースライン時の試験群間に統計的に有意な差はなかった(表4)。
【0121】
【0122】
(VAS膝痛スコアにおける変化)
14日間摂取した後、HCII群とプラセボ群のペアワイズ比較では、VAS疼痛スコアで測定したところ、HCII群はプラセボ群より疼痛が少ない(p=0.021)という統計的有意差が認められた。0日目の疼痛スコアと比較すると、HCII群ではベースラインから7日目で-11.1%、14日目で-25%であった(
図12(a)、表5)。実際、プラセボ群では14日間で痛みが増加する傾向が見られ、0日目からの疼痛スコアは7日目に33.3%、14日目に13.3%増加した。
更に、レジスタンストレーニングの実施回数が全期間のうち10パーセンタイル未満であった被験者のサブグループ解析では、プラセボ群はHCII群に比べ、14日目にベースラインから200%、0日目から8.7%と大幅に疼痛スコアが増加した(
図12(b)、表6)。
表5及び表6において、「P値($)」は群間のp値、「(a)」「(k)」はp値の決定に用いた方法((a)=1元配置分散分析、(k)=クラスカル・ウォリス検定)、「*」は統計的有意性、「95%C.I.」は95%信頼区間を意味する。
後述の
図12(a)、
図12(b)及び
図13において、各データの括弧内の2つの数値は、「平均-標準偏差」「平均+標準偏差」である。
【0123】
【0124】
【0125】
(骨量の変化)
24週間の摂取後、いずれの2群間においても骨量の変化に有意差はなかった。しかし、レジスタンストレーニングの実施回数が全期間のうち10パーセンタイル以下であった被験者のサブグループ解析では、24週目(摂取期間:p=0.009)において、HCII+CE併用摂取群はプラセボ摂取群と比較して、0日目から左股関節の骨量が7.4%と大幅に増加した(p=0.01)(
図13、表7参照)。
表7において、「P値($)」は群間のp値、「(a)」はp値の決定方法((a)=1元配置分散分析)、「*」は統計的有意性、「95%C.I.」は95%信頼区間を意味する。
【0126】
【0127】
(結論)
以上より、HCIIは変形性関節症の疼痛に悩む患者に対して、忍容性が高く、迅速かつ有意な症状緩和をもたらすことがわかった。HCII2gの摂取により、プラセボと比較して、わずか14日間で膝関節痛が大幅に減少した。一方、HCIIとCEの組み合わせは、最小限のレジスタンストレーニングを行った被験者において、左股関節の骨量を大幅に増加させた。In vitro試験では、その作用機序は、基礎疾患の経過の改善、特に骨吸収の抑制と局所的な疼痛感覚をもたらす炎症の抑制であることが示唆される。HCII及びHCIIとCEの組み合わせは、OA症状の管理において、現在の医学的及び食事療法の選択肢を、安全かつ有効に補完し得ると考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0128】
本発明は、ペプチド及び/又はその塩を含む新規な飲食品組成物を提供する。本発明の飲食品組成物は、炎症及び関節痛を抑制するために使用することができる。また、本発明の飲食品組成物は、骨吸収活性を抑制するために使用することができる。また、本発明は、チキンエキスを有効成分として含む新規な骨吸収抑制用組成物を提供する。配列番号1で表されるアミノ酸配列からなるペプチド及び/又はその塩並びにチキンエキスは、飲食品等として摂取可能であり、安全性が高いという利点も有する。
【配列表】