(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-18
(45)【発行日】2024-11-26
(54)【発明の名称】線条体支持構造及びロボット
(51)【国際特許分類】
B25J 19/00 20060101AFI20241119BHJP
【FI】
B25J19/00 F
(21)【出願番号】P 2022547632
(86)(22)【出願日】2021-09-08
(86)【国際出願番号】 JP2021033043
(87)【国際公開番号】W WO2022054844
(87)【国際公開日】2022-03-17
【審査請求日】2023-04-05
(31)【優先権主張番号】P 2020153918
(32)【優先日】2020-09-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390008235
【氏名又は名称】ファナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100112357
【氏名又は名称】廣瀬 繁樹
(72)【発明者】
【氏名】▲濱▼野 一生
【審査官】杉山 悟史
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-021636(JP,A)
【文献】特開2006-007409(JP,A)
【文献】特開平01-306193(JP,A)
【文献】特開2014-030893(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 1/00 ~ 21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の軸線回りに回動可能に連結された2つのリンクと、
前記2つのリンクに掛け渡して敷設された線条体と、
前記軸線から離れた位置で前記2つのリンクの少なくとも一方に直接的又は間接的に固定されていて前記線条体を直接的又は間接的に支持する弾性体と、
を備え、
前記弾性体は、前記リンクに直接的又は間接的に固定される固定端と、前記固定端よりも前記軸線に近い位置で前記線条体を直接的又は間接的に支持する自由端と、を有する、線条体支持構造。
【請求項2】
前記弾性体は前記固定端と前記自由端との間にくびれ部分を備える、請求項1に記載の線条体支持構造。
【請求項3】
前記自由端は
、前記自由端に取付けられた支持部材を介して前記線条体を間接的に支持する、請求項1又は2に記載の線条体支持構造。
【請求項4】
前記支持部材及び前記弾性体の少なくとも一方は、前記線条体を拘束する、又は前記線条体の動作範囲を制限しつつ摺動可能に支持する、請求項3に記載の線条体支持構造。
【請求項5】
前記弾性体は、エラストマー、コイルばね、又は板ばねである、請求項1から4のいずれか一項に記載の線条体支持構造。
【請求項6】
前記弾性体はコイルばねであり、前記線条体が前記コイルばねの中に挿通されている、請求項1に記載の線条体支持構造。
【請求項7】
前記線条体は前記2つのリンクの各々に所定の位置で固定され、2つの固定位置の間に前記弾性体を配置した、請求項1から6のいずれか一項に記載の線条体支持構造。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項に記載の線条体支持構造を備えたロボット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、線条体支持構造及びロボットに関し、特に線条体の捻じれを緩和する線条体支持構造及びロボットに関する。
【背景技術】
【0002】
産業用ロボット等では、信号線や動力線を収納したケーブルやエアチューブ等の長尺の線条体が敷設されている。従来のロボット関節部における線条体フォーミングでは、回転に伴う線条体の捻じれや、線条体と周辺部材との間の擦れによる摩耗等により長期寿命を確保することが困難になることがあった。また、昨今求められているロボット動作の高速化に伴い、線条体内の線材の配置方法、材質、及び線条体のクランプ間距離等の検討に工数やコストが掛かっている。本願に関連する技術としては、後述の文献が公知である。
【0003】
特許文献1には、産業用ロボットにおける2つの相対旋回部材内に配線されるケーブルを保護、保持するケーブル処理装置が開示されている。ケーブル処理装置は、2つの相対旋回部材の少なくとも一方の内部に相対旋回部材の長さ方向に対して交差する横向きに取付けられた摺動軸と、ケーブルを把持すると共に摺動軸上を摺動するクランプ部材と、を備えており、摺動軸は相対旋回部材の旋回中心を中心とした略円周上でクランプ部材を摺動自在に保持するため、相対旋回部材の旋回作用に伴うケーブルの捻じれが解消される。
【0004】
特許文献2には、関節軸回りに旋回可能に連結された第1フレーム及び第2フレームを有するロボットアームと、第1フレーム及び第2フレームの側面に沿って配置されたケーブルと、ケーブルを第1フレームの側面に固定する第1固定部材と、ケーブルを第2フレームの側面に固定する第2固定部材と、ケーブルの第1固定部材と第2固定部材との間の部分を保持する保持部材と、保持部材が関節軸の軸方向へ移動するのを規制し、且つ保持部材がケーブルの屈曲動作に追従して関節軸の軸方向と直交する方向へ移動可能に保持部材を支持する支持機構と、を備えるロボットが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平01-306193号公報
【文献】特開2014-030893号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、従来の問題点に鑑み、回転軸部における線条体の捻じれを緩和することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様は、所定の軸線回りに回動可能に連結された2つのリンクと、2つのリンクに掛け渡して敷設された線条体と、軸線から離れた位置で2つのリンクの少なくとも一方に直接的又は間接的に取付けられていて線条体を直接的又は間接的に支持する弾性体と、を備え、弾性体は、リンクに直接的又は間接的に固定される固定端と、固定端よりも軸線に近い位置で線条体を直接的又は間接的に支持する自由端と、を有する、線条体支持構造を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本開示の一態様によれば、弾性体が、リンクの回動に応じて線条体の逃げたい方向に受動的に変形し、線条体の捻じれる距離を確保して線条体が急激に捻じれるのを抑制する又は線条体の捻じれ量を低減する。これにより、線条体の捻じれを緩和できる。一方、弾性体は、線条体の動作範囲をある程度制限するため、線条体と周辺物体との接触による線条体の摩耗も防止できる。ひいては線条体の寿命が向上する。線条体の寿命の向上によって今まで採用できなかった廉価な線条体の採用も可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】一実施形態の線条体支持構造を備えたロボットの斜視図である。
【
図5A】弾性体の動作例を示す第二リンクのV-V断面図である。
【
図5B】弾性体の動作例を示す第二リンクのV-V断面図である。
【
図6】他の形態のロボットに適用した線条体支持構造の斜視図である。
【
図11】弾性体のさらに別の変形例を示す斜視図である。
【
図12】弾性体のさらに別の変形例を示す斜視図である。
【
図13】弾性体のさらに別の変形例を示す斜視図である。
【
図14】線条体支持構造の別の変形例を示す部分縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して本開示の実施形態を詳細に説明する。各図面において、同一又は類似の構成要素には同一又は類似の符号が付与されている。また、以下に記載する実施形態は特許請求の範囲に記載される発明の技術的範囲及び用語の意義を限定するものではない。なお、本書において用語「直接的」とは直接接触した状態を意味し、用語「間接的」とは他の構成要素を介して間接接触した状態を意味することに留意されたい。
【0011】
図1は本実施形態の線条体支持構造を備えたロボット1の斜視図である。ロボット1は、例えば水平多関節ロボット(スカラロボット)であり、第一リンク11と、第二リンク12と、第三リンク13と、先端軸14と、を備えている。第一リンク11は例えば中空のベースであり、第二リンク12及び第三リンク13は例えば中空のアーム部材であり、先端軸14は例えば中空のボールねじスプラインである。第一リンク11と第二リンク12はJ1軸線回りに回動可能に連結され、第二リンク12と第三リンク13はJ2軸線回りに回動可能に連結される。第三リンク13と先端軸14はJ3軸線に沿って上下運動可能に連結されると共にJ4軸線回りに回動可能に連結される。J1~J4軸線は互いに平行である。J1~J4軸線には例えば電動機や減速機等のアクチュエータ(図示せず)が夫々配設され、アクチュエータには信号線や動力線等のケーブルが接続される。先端軸14には例えば吸着ハンド、ドライバ等のツール(図示せず)が着脱可能に取付けられ、ツールにはケーブルやエアチューブ等が接続される。これらケーブルやエアチューブ等の線条体(
図2参照)は、周囲物体や人との接触を回避するため、例えば第一リンク11、第二リンク12、第三リンク13、先端軸14、ツール等の内部に掛け渡して敷設されるとよい。また、線条体はロボット1やツールを制御する制御装置(図示せず)に接続される。本書では、第一リンク11、第二リンク12、第三リンク13、先端軸14、ツール等の回転軸部を構成する部材を「リンク」と称する。
【0012】
図2は第二リンク12のII-II断面図である。線条体支持構造2は2つのリンク間の回転軸部に適用される。例えば線条体支持構造2は、J1軸線回りに回動可能に連結された第一リンク11(
図1参照)及び第二リンク12と、第一リンク11と第二リンク12に掛け渡して敷設された線条体20と、J1軸線から離れた位置で第二リンク12に間接的に固定されていて線条体20を間接的に支持する弾性体21と、を備えている。
【0013】
線条体20は、例えばケーブル20a、エアチューブ20b等を備えている。線条体20は、周辺部材との接触による摩耗を防止するため、例えば結束バンド等の留め具23によって第一リンク11及び第二リンク12の各々に所定の位置で固定されるとよい。これら2つの固定位置の間に、線条体20を直接的又は間接的に支持する弾性体21を配置することにより、線条体20の捻じれる箇所を分散できる。
【0014】
弾性体21は、例えばゴム等のエラストマーで形成される。弾性体21は、第二リンク12に間接的に固定される固定端21aと、固定端21aよりもJ1軸線に近い位置で線条体20を間接的に支持する自由端21bと、を備えているとよい。弾性体21の固定端21aは、例えば板金等の固定部材22にねじ等で固定されて固定部材22を介して第二リンク12に固定されているが、第二リンク12に直接的に固定されてもよい。弾性体21の自由端21bは、例えば線条体20を支持する支持部材24がねじ等で取付けられているが、弾性体21が線条体20を直接的に支持してもよい。支持部材24は、線条体20の動作範囲をある程度制限しつつ線条体20を摺動可能に支持することが好ましいが、線条体20が動作しないように線条体20を拘束してもよい。
【0015】
図3は弾性体21の一例を示す斜視図である。例えば弾性体21は板状に形成される。弾性体21の固定端21aは弾性体21を第二リンク12又は固定部材22にねじ等で固定する固定孔21cを備えている。弾性体21の自由端21bは支持部材24を弾性体21にねじ等で固定する固定孔21dを備えている。また、弾性体21は固定端21aと自由端21bとの間にくびれ部分21eを備えているとよい。くびれ部分21eは弾性体21の変形方向に形成されているとよい。くびれ部分21eはXYZ軸回りの弾性体21の変形を容易にする。弾性体21は、線条体20の逃げたい方向に受動的に変形し、線条体20の捻じれる距離をある程度確保して線条体20が急激に捻じれるのを抑制する又は線条体20の捻じれ量を低減する。
【0016】
図4は支持部材24の一例を示す斜視図である。例えば支持部材24は平板として形成される。支持部材24は支持部材24を弾性体21にねじ等で固定する固定孔24aを備えている。また、支持部材24は線条体20を支持する1つ又は複数の支持孔24bを備えている。線条体20を支持孔24bに挿通し易くため、支持部材24は支持孔24bの位置で分離可能な2つ以上の支持片24cを備えていてもよい。支持部材24が複数の支持孔24bを備える場合、複数の支持孔24bを一つの分離線に沿って配列するとよい。
【0017】
支持孔24bは線条体20の外径よりも若干大きい内径を有しているとよい。これにより、支持部材24は線条体20の動作範囲をある程度制限しつつ線条体20を摺動可能に支持できる。また、支持孔24bの内径は、支持孔24bの軸方向の途中位置で最も小さく、軸方向両端に向かって次第に増大する内周面を有していてもよい。これにより、線条体20と支持孔24bの内周面との接触面積を低減できる。さらに、支持孔24bの摩擦係数を低減するため、支持部材24自体を、低摩擦係数の素材、例えば4フッ化エチレン(ポリテトラフルオロエチレン:PTFE)等のフッ素樹脂やポリオレフィン系樹脂等で形成してもよいし、又は支持孔24bの内周面を低摩擦係数の素材でコーティングしてもよい。
【0018】
支持部材24が線条体20の動作範囲をある程度制限することにより、リンクの回動に応じた線条体20の暴れを抑制して線条体20が周辺物体に接触して摩耗するのを防止できる。また、支持部材24が線条体20を摺動可能に支持することにより、リンクの回動に応じて線条体20に作用する負荷を低減できる。さらに、支持孔24bの摩擦係数を低減することにより、線条体20と支持部材24との間の擦れによる線条体20の摩耗も抑制できる。
【0019】
線条体支持構造2の上記構成は、一例であり、他の形態も採用できることに留意されたい。例えば線条体支持構造2は、第一リンク11と第二リンク12との間の回転軸部ではなく、第二リンク12と第三リンク13との間の回転軸部に適用してもよい。また、線条体支持構造2は、ロボット1の内部に敷設するのではなく、ロボット1の外部に敷設してもよい。さらに、線条体支持構造2は、他の形態のロボット、例えば後述の垂直多関節ロボットやヒューマノイド等の回転軸部に適用してもよい。或いは、線条体支持構造2は、他の機械、例えば車両、航空機等の回転軸部に適用してもよい。また、弾性体21は2つのリンクの双方に一つずつ固定してもよいし又は一つのリンクにのみ固定してもよい。さらに、弾性体21は支持部材24を介して線条体20を間接的に支持するのではなく、弾性体21が線条体20を支持する支持孔を備え、弾性体21自体が線条体20を直接的に支持してもよい。
【0020】
図5A及び
図5Bは弾性体21の動作例を示す第二リンク12のV-V断面図である。弾性体21の動作を容易に把握できるように、これら図では線条体20を描画していないことに留意されたい。
図5Aは弾性体21が変形していない様子を示しており、
図5Bは第二リンク12の回動に応じて弾性体21が変形した様子を示している。例えば第二リンク12が正転方向Pに回転した場合は、弾性体21が線条体20の逃げたい方向P’(例えばJ1軸線回り)に受動的に変形し、第二リンク12が逆転方向Nに回転した場合は、弾性体21が線条体20の逃げたい方向N’(例えばJ1軸線回り)に受動的に変形する。
【0021】
このように弾性体21は、第二リンク12の回動に応じて線条体20の逃げたい方向に受動的に変形し、線条体20の捻じれる距離を確保して線条体20が急激に捻じれるのを抑制する又は線条体20の捻じれ量を低減する。また、留め具23(
図2参照)による2つの固定位置の間に弾性体21を配置することにより、線条体20の捻じれる箇所を分散できる。これにより、線条体20の捻じれを緩和できる。一方、弾性体21は、線条体20の動作範囲をある程度制限するため、線条体20と周辺物体との接触による線条体20の摩耗も防止できる。ひいては線条体20の寿命が向上する。線条体20の寿命の向上によって今まで採用できなかった廉価な線条体の採用も可能になる。対照的に、弾性体21を設けない場合は、線条体20が留め具23による2つの固定位置の近傍で集中的に過大に捻じれてしまう。また、線条体20の暴れによって線条体20が周辺物体と接触して線条体20が摩耗してしまう。
【0022】
図6は他の形態のロボット1に適用した線条体支持構造2の斜視図である。ロボット1は、例えば垂直多関節ロボットであり、第一リンク11と、第二リンク12と、第三リンク13と、を少なくとも備えている。第一リンク11は例えば中空のベースであり、第二リンク12及び第三リンク13は例えば中空のアーム部材である。第一リンク11と第二リンク12はJ1軸線回りに回動可能に連結され、第二リンク12と第三リンク13はJ2軸線回りに回動可能に連結される。J1軸線とJ2軸線は互いに垂直である。J1軸線とJ2軸線には例えば電動機や減速機等のアクチュエータが夫々設けられ、アクチュエータには信号線や動力線等のケーブルが接続される。また、ロボット先端には例えば吸着ハンド、ドライバ等のツール(図示せず)が着脱可能に取付けられ、ツールにはケーブルやエアチューブ等が接続される。これらケーブルやエアチューブ等の線条体20は、例えば第一リンク11の内部から第二リンク12と第三リンク13の外部を通って第三リンク13の内部に掛け渡して敷設される。また、線条体20はロボット1やツールを制御する制御装置(図示せず)に接続される。
【0023】
本例の線条体支持構造2は第二リンク12と第三リンク13との間の回転軸部に適用される。例えば線条体支持構造2は、J2軸線回りに回動可能に連結された第二リンク12及び第三リンク13と、第二リンク12と第三リンク13に掛け渡して敷設された線条体20と、J2軸線から離れた位置で第三リンク13に直接的に固定されていて線条体20を直接的に支持する弾性体21と、を備えている。
【0024】
線条体20は、例えばケーブル、エアチューブ等を備えている。線条体20は、周辺物体との接触による摩耗を防止するため、例えば結束バンド等の留め具23(図示せず)によって第二リンク12及び第三リンク13の各々に所定の位置で固定されるとよい。これら2つの固定位置の間に、線条体20を直接的又は間接的に支持する弾性体21を配置することにより、線条体20の捻じれる箇所を分散できる。
【0025】
弾性体21は、例えばゴム等のエラストマーで形成される。弾性体21は、第三リンク13に直接的に固定される固定端21aと、固定端21aよりもJ2軸線に近い位置で線条体20を直接的に支持する自由端21bと、を備えているとよい。弾性体21の固定端21aは、例えば第三リンク13にねじ等で直接的に固定されている。弾性体21の自由端21bは、例えば線条体20を支持する支持部材24がねじ等で取付けられている。
【0026】
支持部材24は、例えばコの字形状又はU字形状の留め具である。支持部材24は支持部材24を弾性体21にねじ等で固定する固定孔24aを備えている。支持部材24は、線条体20が動作しないように線条体20を拘束するが、線条体20を摺動可能に支持してもよい。
【0027】
図7は弾性体21の一例を示す斜視図である。例えば弾性体21は板状に形成される。弾性体21の固定端21aは弾性体21を第三リンク13にねじ等で固定する固定孔21cを備えている。弾性体21の自由端21bは支持部材24を弾性体21にねじ等で固定する固定孔21dを備えている。また、弾性体21は固定端21aと自由端21bとの間にくびれ部分21eを備えているとよい。くびれ部分21eは弾性体21の変形方向に形成されているとよい。くびれ部分21eはXYZ軸回りの弾性体21の変形を容易にする。弾性体21は、線条体20の逃げたい方向に受動的に変形し、線条体20の捻じれる距離をある程度確保して線条体20が急激に捻じれるのを抑制する又は線条体20の捻じれ量を低減する。
【0028】
図6を再び参照すると、例えば第三リンク13が正転方向Pに回転した場合や逆転方向Nに回転した場合は、弾性体21が線条体20の逃げたい方向(例えばJ2軸線回りや
図6の手前側又は奥行側)に受動的に変形する。このように弾性体21は、第三リンク13の回動に応じて線条体20の逃げたい方向に受動的に変形し、線条体20の捻じれる距離を確保して線条体20が急激に捻じれるのを抑制する又は線条体20の捻じれ量を低減する。また、留め具23による2つの固定位置の間に弾性体21を配置することにより、線条体20の捻じれる箇所を分散できる。これにより、線条体20の捻じれを緩和できる。一方、弾性体21は、線条体20の動作範囲をある程度制限するため、線条体20と周辺物体との接触による線条体20の摩耗も防止できる。ひいては線条体20の寿命が向上する。線条体20の寿命の向上によって今まで採用できなかった廉価な線条体の採用も可能になる。
【0029】
図8は弾性体21の変形例を示す斜視図である。本例の弾性体21は角棒体である点で、前述のものとは異なる。弾性体21の横断面は、正方形であるとよく、この場合、XYZ軸回りの弾性体21の変形を容易にする。さらに弾性体21の変形を容易にするため、角棒体の一つの面21fが2つのリンク間の回転軸線と平行になるように弾性体21を配置するとよい。弾性体21の自由端は線条体20を支持する支持部材24が取付けられる。支持部材24は例えば結束バンド等の留め具である。支持部材24は、線条体20を拘束してもよいが、線条体20を摺動可能に支持するとよい。線条体20の摩擦係数を低減するため、線条体20に低摩擦係数の素材、例えば4フッ化エチレン(ポリテトラフルオロエチレン:PTFE)等のフッ素樹脂やポリオレフィン系樹脂等の低摩擦テープを貼付するとよい。
【0030】
図9は弾性体21の他の変形例を示す斜視図である。本例の弾性体21は丸棒体である。弾性体21の横断面は、正円形であるとよく、弾性体21のXYZ軸回りの変形を可能にする。弾性体21の自由端は線条体20を支持する支持部材24が取付けられる。支持部材24は例えば結束バンド等の留め具である。支持部材24は、線条体20を拘束してもよいが、線条体20を摺動可能に支持するとよい。線条体20の摩擦係数を低減するため、線条体20に低摩擦係数の素材、例えば4フッ化エチレン(ポリテトラフルオロエチレン:PTFE)等のフッ素樹脂やポリオレフィン系樹脂等の低摩擦テープを貼付するとよい。
【0031】
図10は弾性体21の別の変形例を示す斜視図である。本例の弾性体21は、角棒体であり、且つ固定端21aと自由端21bとの間にくびれ部分21eを備えている。くびれ部分21eは弾性体21の変形方向に形成されているとよい。この例では、くびれ部分21eが角棒体の四面の各々に形成されている。くびれ部分21eはXYZ軸回りの弾性体21の変形を容易にする。弾性体21の自由端21bは線条体20を支持する支持部材24が取付けられる。支持部材24は例えば結束バンド等の留め具である。支持部材24は、線条体20を拘束してもよいが、線条体20を摺動可能に支持するとよい。線条体20の摩擦係数を低減するため、線条体20に低摩擦係数の素材、例えば4フッ化エチレン(ポリテトラフルオロエチレン:PTFE)等のフッ素樹脂やポリオレフィン系樹脂等の低摩擦テープを貼付するとよい。
【0032】
図11は弾性体21のさらに別の変形例を示す斜視図である。本例の弾性体21はコイルばねである点で、前述のものとは異なる。コイルばねは例えば金属等で形成される。弾性体21を金属で形成することで弾性体21の劣化を抑制できる。コイルばねはXYZ軸回りの弾性体21の変形を可能にする。弾性体21の自由端は線条体20を支持する支持部材24が取付けられる。支持部材24は例えば結束バンド等の留め具である。支持部材24は、線条体20を拘束してもよいが、線条体20を摺動可能に支持するとよい。線条体20の摩擦係数を低減するため、線条体20に低摩擦係数の素材、例えば4フッ化エチレン(ポリテトラフルオロエチレン:PTFE)等のフッ素樹脂やポリオレフィン系樹脂等の低摩擦テープを貼付するとよい。
【0033】
図12は弾性体21のさらに別の変形例を示す斜視図である。本例の弾性体21はコイルばねであり、線条体20がコイルばねの中に挿通される点で、前述のものとは異なる。弾性体21は、線条体20を拘束してもよいが、線条体20を摺動可能に支持するとよい。例えばコイルばねは線条体20の外径よりも若干大きい内径を有しているとよい。また、線条体20の摩擦係数を低減するため、線条体20に低摩擦係数の素材、例えば4フッ化エチレン(ポリテトラフルオロエチレン:PTFE)等のフッ素樹脂やポリオレフィン系樹脂等の低摩擦テープを貼付するとよい。
【0034】
図13は弾性体21のさらに別の変形例を示す斜視図である。本例の弾性体21は板ばねである点で、前述のものとは異なる。板ばねはXYZ軸のうちの一軸回り(例えばZ軸回り)の弾性体21の変形を容易にする。弾性体21の変形を容易にするため、板ばねの面が2つのリンク間の回転軸線と平行になるように弾性体21を配置するとよい。弾性体21の自由端は線条体20を支持する支持部材24が取付けられる。支持部材24は例えば結束バンド等の留め具である。支持部材24は、線条体20を拘束してもよいが、線条体20を摺動可能に支持するとよい。線条体20の摩擦係数を低減するため、線条体20又は弾性体21に低摩擦係数の素材、例えば4フッ化エチレン(ポリテトラフルオロエチレン:PTFE)等のフッ素樹脂やポリオレフィン系樹脂等の低摩擦テープを貼付するとよい。或いは、
図4を参照して説明した平板の支持部材24を板ばねの両側に取付けて線条体20を支持してもよい。
【0035】
図14は線条体支持構造2の別の変形例を示す部分縦断面図である。本例の線条体支持構造2では、弾性体21が例えばゴム等のエラストマーであり、弾性体21の固定端21aは関節窩を備えた固定部材22に固定され、弾性体21の自由端21bは関節頭を備えた支持部材24が取付けられる点で、前述のものとは異なる。固定部材22及び支持部材24は例えば金属、樹脂等で形成される。支持部材24の関節頭が固定部材22の関節窩の中で回動すると、弾性体21の復元力によって支持部材24が基準位置(
図14の位置)に復帰する。支持部材24は、例えば関節頭を備えた支持片24dと、支持片24dに取付けられていて線条体20を支持する支持片24eと、を備えているとよい。支持片24eは、例えば結束バンド等の留め具でよいが、
図4を参照して説明した支持孔24bを備えた支持部材でもよい。支持部材24は、線条体20を拘束してもよいが、線条体20を摺動可能に支持するとよい。なお、固定部材22が関節窩ではなく関節頭を備え、支持部材24が関節頭ではなく関節窩を備えていてもよい。或いは、支持片24dがエラストマー等の弾性体21であり、固定部材22と支持部材24がジョイスティック状の連結構造を備えていてもよい。
【0036】
以上の実施形態によれば、弾性体21は、リンクの回動に応じて線条体20の逃げたい方向に受動的に変形し、線条体20の捻じれる距離を確保して線条体20が急激に捻じれるのを抑制する又は線条体20の捻じれ量を低減する。これにより、線条体20の捻じれを緩和できる。一方、弾性体21は、線条体20の動作範囲をある程度制限するため、線条体20と周辺物体との接触による線条体20の摩耗も防止できる。ひいては線条体20の寿命が向上する。線条体20の寿命の向上によって今まで採用できなかった廉価な線条体の採用も可能になる。
【0037】
本明細書において種々の実施形態について説明したが、本発明は、前述の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された範囲内において種々の変更を行えることを認識されたい。
【符号の説明】
【0038】
1 ロボット
2 線条体支持構造
11 第一リンク
12 第二リンク
13 第三リンク
14 先端軸
20 線条体
20a ケーブル
20b エアチューブ
21 弾性体
21a 固定端
21b 自由端
21c~21d 固定孔
21e くびれ部分
21f 面
22 固定部材
23 留め具
24 支持部材
24a 固定孔
24b 支持孔
24c~24e 支持片
J1~J4 軸線
P 正転方向
N 逆転方向
P’、N’ 線条体の逃げたい方向