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特許7590451蛍光体粉末、発光装置、画像表示装置および照明装置
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  • 特許-蛍光体粉末、発光装置、画像表示装置および照明装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-18
(45)【発行日】2024-11-26
(54)【発明の名称】蛍光体粉末、発光装置、画像表示装置および照明装置
(51)【国際特許分類】
   C09K 11/64 20060101AFI20241119BHJP
   H01L 33/50 20100101ALI20241119BHJP
   F21V 9/30 20180101ALI20241119BHJP
   F21Y 115/10 20160101ALN20241119BHJP
【FI】
C09K11/64
H01L33/50
F21V9/30
F21Y115:10
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2022561862
(86)(22)【出願日】2021-11-04
(86)【国際出願番号】 JP2021040623
(87)【国際公開番号】W WO2022102512
(87)【国際公開日】2022-05-19
【審査請求日】2023-05-26
(31)【優先権主張番号】P 2020189204
(32)【優先日】2020-11-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003296
【氏名又は名称】デンカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】江本 秀幸
【審査官】井上 恵理
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2012/067130(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/203488(WO,A1)
【文献】国際公開第2010/110457(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/077132(WO,A1)
【文献】LI, Y.Q. et al.,Yellow-Orange-Emitting CaAlSiN3:Ce3+ Phosphor: Structure, Photoluminescence, and Application in White LEDs,Chemistry of Materials,(2008), vol.20, no.21,pp.6704-6714,DOI:10.1021/cm801669x
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K11/00-11/89
H01L33/50
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式M(Si,Al)(N,O)3±y(ただし、MはLi及び一種以上のアルカリ土類金属元素であり、0.52≦x≦0.9、0.06≦y≦0.36)で示され、Mの一部がCe元素で置換されている蛍光体であって、Si/Al原子比が1.5以上6以下であり、かつO/N原子比が0以上0.1以下であり、Mの5~50mol%がLiであり、Mの0.5~10mol%がCeである蛍光体粒子を含む蛍光体粉末であって、
当該蛍光体粉末をレーザ回折散乱法で測定した体積基準累積10%径、体積基準累積50%径および体積基準累積90%径をそれぞれD10、D50およびD90としたとき、(D90-D10)/D50が0.7以上0.95以下である蛍光体粉末。
【請求項2】
請求項1に記載の蛍光体粉末であって、
10が5μm以上12μm以下である蛍光体粉末。
【請求項3】
請求項1または2に記載の蛍光体粉末であって、
90が18μm以上38μm以下である蛍光体粉末。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の蛍光体粉末であって、
50が8μm以上25μm以下である蛍光体粉末。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の蛍光体粉末と、発光光源とを備える発光装置。
【請求項6】
請求項5に記載の発光装置であって、
発光光源が紫外線又は可視光を発光する発光装置。
【請求項7】
請求項5または6に記載の発光装置を備える画像表示装置。
【請求項8】
請求項5または6に記載の発光装置を備える照明装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蛍光体粉末、発光装置、画像表示装置および照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
白色LED(Light Emitting Diode)を製造するために、通常、蛍光体が用いられる。すなわち、青色LEDから発せられる青色光から白色光を得るための波長変換材料として、蛍光体が用いられる。
照明用途での白色LEDの普及や、画像表示装置への白色LEDの適用検討などに伴い、青色光をより長波長の光に変換可能な蛍光体の開発が継続されている。
【0003】
蛍光体の改良の観点の1つとして、蛍光体の化学組成を改変することが挙げられる。
例えば、特許文献1には、一般式M(Si,Al)(N,O)3±y(ただし、MはLi及び一種以上のアルカリ土類金属元素であり、0.52≦x≦0.9、0.06≦y≦0.23)で示され、Mの一部がCe元素で置換されている蛍光体であって、Si/Al原子比が1.5以上6以下であり、かつO/N原子比が0以上0.1以下であり、Mの5~50mol%がLiであり、Mの0.5~10mol%がCeである蛍光体が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第5969391号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明書の知見として、特許文献1に記載の蛍光体には、青色光の変換効率の点、具体的には、蛍光体に青色光を照射したときの蛍光ピーク強度、内部量子効率および外部量子効率の点で改善の余地があった。
【0006】
本発明者は、蛍光体に青色光を照射したときの蛍光ピーク強度が大きく、かつ、内部量子効率および外部量子効率が良好な蛍光体粉末を提供することを目的の1つとして、今回、検討を行った。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、検討の結果、以下に提供される発明を完成させた。
【0008】
本発明によれば、
一般式M(Si,Al)(N,O)3±y(ただし、MはLi及び一種以上のアルカリ土類金属元素であり、0.52≦x≦0.9、0.06≦y≦0.36)で示され、Mの一部がCe元素で置換されている蛍光体であって、Si/Al原子比が1.5以上6以下であり、かつO/N原子比が0以上0.1以下であり、Mの5~50mol%がLiであり、Mの0.5~10mol%がCeである蛍光体粒子を含む蛍光体粉末であって、
当該蛍光体粉末をレーザ回折散乱法で測定した体積基準累積10%径、体積基準累積50%径および体積基準累積90%径をそれぞれD10、D50およびD90としたとき、(D90-D10)/D50が0.7以上1.1以下である蛍光体粉末
が提供される。
【0009】
また、本発明によれば、
上記の蛍光体粉末と、発光光源とを備える発光装置
が提供される。
【0010】
また、本発明によれば、
上記の発光装置を備える画像表示装置
が提供される。
【0011】
また、本発明によれば、
上記の発光装置を備える照明装置
が提供される。
【発明の効果】
【0012】
本発明の蛍光体粉末は、高い内部量子効率を有し、そして良好な青色光の変換効率を有する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】発光装置の構造の一例を示す概略断面図である。
図2】実施例1の蛍光体を粉末X線回折(XRD)測定することで得られたXRDパターンである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ、詳細に説明する。
図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
図面はあくまで説明用のものである。図面中の各部材の形状や寸法比などは、必ずしも現実の物品と対応しない。
【0015】
本明細書中、数値範囲の説明における「X~Y」との表記は、特に断らない限り、X以上Y以下のことを表す。例えば、「1~5質量%」とは「1質量%以上5質量%以下」を意味する。
【0016】
<蛍光体粉末>
本実施形態の蛍光体粉末は、一般式M(Si,Al)(N,O)3±yで表される蛍光体粒子を含む。この一般式において、MはLi及び一種以上のアルカリ土類金属元素、0.52≦x≦0.9、0.06≦y≦0.36である。また、Mの一部はCe元素で置換されており、Si/Al原子比は1.5以上6以下であり、O/N原子比は0以上0.1以下であり、Mの5~50mol%はLiであり、Mの0.5~10mol%はCeである。
また、本実施形態の蛍光体粉末レーザ回折散乱法で測定した体積基準累積10%径、体積基準累積50%径および体積基準累積90%径をそれぞれD10、D50およびD90としたとき、(D90-D10)/D50は0.7以上1.1以下である。
【0017】
本実施形態の蛍光体粉末は、少なくとも、(D90-D10)/D50が0.7以上1.1以下である点において、特許文献1に記載された蛍光体と相違する。本実施形態の蛍光体粉末は、特許文献1に記載された蛍光体に比べて、良好な青色光の変換効率を有する。
【0018】
(D90-D10)/D50という指標は、D50で規格化された、蛍光体粉末の粒径分布の「シャープさ」を意味すると解釈可能である。
(D90-D10)/D50が1.1以下である、つまり、蛍光体粉末の粒径分布が十分にシャープであるということは、例えば、蛍光体粉末中の、微細すぎて発光効率が悪い粒子(微粉)が比較的少ないことに対応する。このため、本実施形態の蛍光体粉末の青色光の変換効率は良好となっていると考えられる。
ちなみに、(D90-D10)/D50は小さければ小さいほど微粉は少なくなる傾向がある。しかし、製造の手間やコストなどを鑑み、本実施形態においては下限を0.7としている。
【0019】
本実施形態の蛍光体粉末は、適切な素材を用いることに加え、適切な製造方法・製造条件を選択することにより製造することができる。「適切な製造方法・製造条件」としては、例えば、(i)蛍光体粉末に適切な分級処理(好ましくは沈降分級)を施すこと、(ii)蛍光体粉末の粉砕方法を工夫すること、などのうち1または2以上である。製造方法・製造条件の詳細については追って詳述する。
【0020】
本実施形態の蛍光体粉末に関する説明を続ける。
【0021】
(結晶構造、化学組成など)
蛍光体結晶の骨格構造は、(Si,Al)-(N,O)正四面体が結合することにより構成されており、その間隙にM元素が位置するものである。上記一般式の組成は、M元素の価数と量、Si/Al比、N/O比のパラメータの全体により電気的中性が保たれる幅広い範囲で成立する。上記一般式で示される代表的な蛍光体として、M元素がCaでx=1、更にSi/Al=1、O/N=0となるCaAlSiNがある。CaAlSiNのCaの一部がEuで置換された場合には赤色蛍光体に、Ceで置換された場合には黄~橙色蛍光体になる。
【0022】
本実施形態の蛍光体粉末が含む蛍光体粒子の結晶構造は、通常、CaAlSiN結晶をベースとしたものである。この蛍光体粒子の特徴の1つは、Ce付活でも非常に高い発光効率が得られるように構成元素、組成を大きく変えた点にある。
上記一般式において、M元素はLi元素とアルカリ土類金属元素の組み合わせであり、その一部が発光中心となるCe元素で置換されている。Li元素を用いることにより、二価のアルカリ土類元素及び三価のCe元素との組み合わせにより、M元素の平均価数を幅広く制御できる。また、Liのイオン半径は非常に小さく、その量により結晶サイズを大きく変化させることができ、多様な蛍光発光が得られる。
上記一般式におけるM元素の係数xは、0.52以上0.9以下、好ましくは0.6以上0.9以下、より好ましくは0.7以上0.9以下である。係数xが0.9を越える、つまりCaAlSiN結晶に近づくと蛍光強度が低下する傾向にあり、係数xが0.52よりも小さいと、目的とする結晶相以外の異相が多量に生成するために蛍光強度が著しく低下する傾向がある。
【0023】
本実施形態においては、M元素の平均価数や量、Si/Al比およびO/N比により電気的中性が保たれ、単一結晶で欠陥等がない場合には、y=0となる。しかしながら、蛍光体全体の組成を考えた場合、第二結晶相や非晶質相が存在したり、結晶自体を考えた場合にも結晶欠陥により電荷バランスが崩れたりする。本実施形態においては、蛍光強度を高める観点から、yは0.06以上0.36以下が好ましく、0.1以上0.35以下がより好ましく、0.06以上0.23以下がさらに好ましい。
【0024】
本実施形態において、O/N原子比(モル比)は、0以上0.1以下、好ましくは0.01以上0.08以下、さらに好ましくは0.02以上0.07以下である。O/N原子比があまりに大きいと異相生成量が増大し、発光効率が低下するとともに、結晶の共有結合性が低下し、温度特性の悪化(高温での輝度低下)を引き起こす傾向にある。
【0025】
Si/Al原子比(モル比)に関しては、通常、M元素の平均価数や量、および、O/N原子比を所定の範囲とすると必然的に決められる。Si/Al原子比は1.5以上6以下、好ましくは2以上4以下、より好ましくは2.5以上4以下である。
【0026】
蛍光体粒子中のLi含有量は、M元素の5~50mol%、好ましくは15~45mol%、さらに好ましくは25~45mol%である。Liの効果は5mol%以上で発揮されやすいが、50mol%を越えると目的とする蛍光体の結晶構造が維持できず異相を生成してしまい、発光効率が低下しやすい。
念のため述べておくと、「Li含有量」とは、最終的に得られる蛍光体粉末中のLi含有量であり、原料配合ベースの量ではない。原料に使用するLi化合物は蒸気圧が高く揮発しやすく、高温で窒化物・酸窒化物を合成しようとした場合、相当量が揮発する。つまり、原料配合ベースのLi量は最終生成物中の含有量とは大きく乖離しているので、蛍光体中のLi含有量を意味しない。
【0027】
蛍光体粒子の発光中心であるCeの含有量は、あまりに少ないと発光への寄与が小さくなる傾向にあり、あまりに多いとCe3+間のエネルギー伝達による蛍光体の濃度消光が起こる傾向にある。よって、Ceの含有量は、M元素の0.5~10mol%、好ましくは0.5~5mol%である。
【0028】
上記一般式におけるM元素として用いられるアルカリ土類金属元素は、いずれの元素でも構わないが、Caを用いた場合に、高い蛍光強度が得られ、幅広い組成範囲で結晶構造が安定化する。よって、M元素はCaを含むことが好ましい。M元素は複数のアルカリ土類金属元素の組み合わせであってもよく、例えばCa元素の一部がSr元素に置き換わってもよい。
【0029】
蛍光体粒子の結晶構造は、斜方晶系であり、前述したCaAlSiN結晶と同一の構造であってよい。CaAlSiN結晶の格子定数は、一例として、a=0.98007nm、b=0.56497nm、c=0.50627nmである。本実施形態において、格子定数は、通常、a=0.935~0.965nm、b=0.550~0.570nm、c=0.480~0.500nmであり、CaAlSiN結晶に比べ、いずれも小さい値となる。この格子定数の範囲は、前述した構成元素及び組成を反映したものである。
【0030】
蛍光体粒子中に存在する結晶相は、上記の結晶単相が好ましい。ただし、蛍光特性に大きい影響がない限り、蛍光体粒子は異相を含んでいても構わない。青色光励起の場合に蛍光特性への影響が低い異相としては、αサイアロン、AlN、LiSi、LiAlSiなどが挙げられる。異相の量は、粉末X線回折法で評価した際の上記結晶相の最強回折線強度に対する他の結晶相の回折線強度が40%以下であるような量であることが好ましい。
【0031】
本実施形態の蛍光体粉末は、紫外~可視光の幅広い波長域の光で励起される。例えば波長455nmの青色光が照射された場合に、ピーク波長が570~610nmの橙色で、蛍光スペクトルの半値幅が125nm以上のブロードな蛍光発光を示すことがある。このような蛍光体粉末は、幅広い発光装置用蛍光体として好適である。また、本実施形態の蛍光体粉末は、CaAlSiNを代表とする従来の窒化物・酸窒化物系蛍光体と同様に、耐熱性、耐化学的安定性に優れ、また温度上昇による輝度低下が小さい特性を有する。このような特性は、特に耐久性が要求される用途に好適である。
【0032】
(粒径分布)
前述のように、本実施形態の蛍光体粉末において、(D90-D10)/D50は0.7以上1.1以下である。この値は、好ましくは0.75以上1.05以下、より好ましくは0.75以上1以下、さらに好ましくは0.75以上0.95以下である。
【0033】
本実施形態においては、(D90-D10)/D50以外の粒径分布に関する指標を適切に設計することでも、青色光の変換効率をより高めたり、諸性能のバランスを高めたりすることができる場合がある。具体的には以下の通りである。
【0034】
本実施形態の蛍光体粉末の、レーザ回折散乱法で測定される体積基準累積10%径D10は、好ましくは5μm以上12μm以下、より好ましくは7μm以上11μm以下である。D10が比較的大きな値であることは、蛍光体粉末中の微粉(青色光の変換効率を下げる傾向がある、微細すぎる蛍光体粒子)の量が比較的少ないことを、(D90-D10)/D50とは別の指標で表したものであるといえる。D10がある程度大きな値であることにより、青色光の変換効率がより高まる傾向がある。
【0035】
本実施形態の蛍光体粉末の、レーザ回折散乱法で測定される体積基準累積50%径D50(いわゆるメジアン径)は、好ましくは8μm以上25μm以下、より好ましくは12μm以上22μm以下である。D50が大きすぎず小さすぎない蛍光体粉末は、種々の用途への適用性や工業的ハンドリング性の点で好ましい。
【0036】
本実施形態の蛍光体粉末の、レーザ回折散乱法で測定される体積基準累積90%径D90は、好ましくは18μm以上38μm以下、より好ましくは18μm以上30μm以下である。D90が大きすぎないということは、蛍光体粉末中の粗大粒子の量が少ないことに対応する。D90が大きすぎない蛍光体粉末は、発光装置の色度バラツキの低減に有効である。
【0037】
(製造方法)
本実施形態の蛍光体粉末は、好ましくは、以下の(1)~(4)を含む一連の工程、(1)~(3)および(5)を含む一連の工程、または(1)~(5)を含む一連の工程により製造される。(D90-D10)/D50を適切に調整する観点で、蛍光体粉末の製造工程は、(5)分級工程(好ましくは沈降分級)を含むことが好ましい。
(1)原料混合粉の調製工程
(2)焼成工程
(3)焼成物の粉砕工程
(4)酸処理工程
(5)分級工程(好ましくは沈降分級)
【0038】
以下、(1)~(5)について具体的に説明する。
【0039】
(1)原料混合粉の調製工程
原料混合粉の調製工程においては、通常、適当な原料粉末を混合して、原料混合粉を得る。
原料粉末としては、構成元素の窒化物、即ち窒化ケイ素、窒化アルミニウム、窒化リチウム、窒化セリウム、アルカリ土類元素の窒化物(例えば窒化カルシウム)などが好適に使用される。一般的に、窒化物粉末は空気中では不安定であり、粒子表面が酸化物層で覆われており、窒化物原料を使用した場合でも、結果的に、ある程度の酸化物が原料に含まれている。蛍光体のO/N比を制御する場合、これらを考慮するとともに、酸素が不足する場合は、窒化物の一部を酸化物(加熱処理により酸化物になる化合物を含む)としてもよい。酸化物の例としては、酸化セリウムなどを上げることができる。
【0040】
原料粉末のうち、リチウム化合物は加熱による揮発が顕著であり、焼成条件によってはほとんどが揮発してしまうことがある。そこで、リチウム化合物の配合量は、焼成条件に応じて、焼成過程の揮発量を考慮して決めることが好ましい。
【0041】
窒化物原料粉末のうち、窒化リチウム、窒化セリウム、アルカリ土類元素の窒化物は、空気中の水分と激しく反応する。よって、これらの取り扱いは不活性雰囲気で置換されたグローブボックス内で行うことが好ましい。
作業の効率性の観点から、(i)まず、空気中で取り扱い可能な窒化ケイ素、窒化アルミニウム及び各種酸化物原料粉末を所定量秤量し、予め空気中で十分に混合して予備混合粉を調製し、(ii)その後、グローブボックス内で、予備混合粉と、窒化リチウム等の水分と反応しやすい物質とを混合して、原料混合粉を調製することが好ましい。
【0042】
(2)焼成工程
焼成工程では、(1)原料混合粉の調製工程で調製した原料混合粉を、適当な容器に充填して、焼成炉などを用いて加熱する。
【0043】
焼成の温度は、反応を十分に進める観点と、リチウムの揮発を抑える観点から、1600~2000℃が好ましく、1700~1900℃がより好ましい。
焼成時間は、反応を十分に進める観点と、リチウムの揮発を抑える観点から、2~24時間が好ましく、4~16時間がより好ましい。
【0044】
焼成工程は、窒素雰囲気下で行われることが好ましい。また、焼成雰囲気の圧力を適切に調整することが好ましい。具体的には、焼成雰囲気の圧力は、0.5MPa・G以上が好ましい。焼成温度が特に1800℃以上である場合、蛍光体が分解しやすい傾向があるが、焼成雰囲気の圧力が高いことで、蛍光体の分解を抑制することができる。
ちなみに、工業的生産性を考慮すると、焼成雰囲気の圧力は1MPa・G未満が好ましい。
【0045】
原料混合粉を充填する容器は、高温の窒素雰囲気下において安定で、原料混合粉やその反応生成物と反応しない材質で構成されることが好ましい。容器の材質は、好ましくは窒化ホウ素である。
【0046】
(3)焼成物の粉砕工程
(2)で得られる焼成物は、通常、塊状であるため、機械的に力を加えることである程度小さいサイズに粉砕することが好ましい。
粉砕には、クラッシャー、乳鉢、ボールミル、振動ミル、ジェットミル、スタンプミル等の各種装置を用いることができる。これら装置のうち2つ以上を組み合わせて粉砕してもよい。後掲の実施例においては、まずスタンプミルを用いて焼成物の粗粉砕物を得、その後、その粗粉砕物を、ジェットミルを用いてより細かく粉砕している。粉砕条件を適切に制御することにより、D10、D50、D90および(D90-D10)/D50のうち1または2以上を調整することもできる。
【0047】
(4)酸処理工程
酸処理工程では、例えば、酸性水溶液中に、上記(3)で得られた粉砕物を浸漬する。詳細は不明であるが、酸処理により、蛍光体の、発光に寄与しないまたは発光効率を下げる「異相」が除去または低減されると考えらえる。
【0048】
酸性水溶液としては、フッ酸、硝酸、塩酸などの酸から選ばれる1種の酸を含む酸性水溶液、または上記の酸から2種以上を混合して得られる混酸水溶液が挙げられる。酸としては、硝酸または塩酸が好ましく、塩酸がより好ましい。
酸性水溶液の濃度は、用いる酸の強さによって適宜設定されるが、例えば0.5~50質量%、好ましくは1~30質量%、より好ましくは1~10質量%である。
酸処理を実施する際の温度は、25℃以上90℃以下が好ましく、60℃以上90℃以下がより好ましい。比較的高温で処理することにより、異相を除去しやすい。
酸処理の時間(浸漬時間)は、15分以上80分以下が好ましく、15分以上60分以下が好ましい。
酸処理の後には、蛍光体粉末を十分に水洗し、乾燥させることが好ましい。
【0049】
(5)分級工程
粉末中の微粉(青色光の変換効率を下げる傾向がある、微細すぎる蛍光体粒子)の量を低減するため、適切な分級処理を行うことが好ましい。効果的に微粉を除去するため、分級の方法は、以下に説明するような沈降分級であることが好ましい。
【0050】
まず、(3)焼成物の粉砕工程で得られた粉末、または、(4)酸処理工程を経た粉末を、容器内で、適当な液体、例えばヘキサメタリン酸ナトリウム水溶液に分散させて分散液とする。
次に、その分散液を一定時間静置して、分散液中の粉末のうち、粒径が比較的大きいものを沈殿させる。
その後、上澄み液を排出する。
さらにその後、沈殿物が残った容器内に、新たにヘキサメタリン酸ナトリウム水溶液を入れ、粉末を分散させ、静置し、上澄み液を排出する操作を複数回繰り返す。「複数回」とは、好ましくは5回以上である。回数の上限は特にないが、コスト等の観点から、例えば15回以下、具体的には10回以下である。
【0051】
分級の具体的条件は、最終的に(D90-D10)/D50が0.7以上1.1以下である蛍光体粉末を得られる限り特に限定されない。あくまで目安であるが、粒径10μm以下の微粉が除かれるように分級の条件を設定することが好ましく、粒径7.5μm以下の微粉が除かれるように分級の条件を設定することがより好ましい。沈降分級の場合、条件設定については、粒子の沈降速度に関するストークスの式を参照することができる。
沈降分級の具体的条件の一例は、後掲の実施例を参照されたい。
【0052】
<発光装置、画像表示装置および照明装置>
本実施形態の蛍光体粉末と、発光光源とを組み合わせることで、発光装置を得ることができる。
発光光源は、典型的には紫外線又は可視光を発光する。例えば、発光光源が青色LEDである場合、発光光源から発せられる青色光が蛍光体粉末に当たり、そして青色光はより長波長の光に変換される。すなわち、本実施形態の蛍光体粉末は、青色光をより長波長の光に変換する波長変換材料として使用可能である。
【0053】
発光装置の具体的構成の一例を、図1を参照しつつ説明する。
図1は、発光装置の構造の一例を示す概略断面図である。図1に示されるように、発光装置100は、発光素子120、ヒートシンク130、ケース140、第1リードフレーム150、第2リードフレーム160、ボンディングワイヤ170、ボンディングワイヤ172および複合体40を備える。
【0054】
発光素子120はヒートシンク130上面の所定領域に実装されている。ヒートシンク130上に発光素子120を実装することにより、発光素子120の放熱性を高めることができる。なお、ヒートシンク130に代えて、パッケージ用基板を用いてもよい。
【0055】
発光素子120は、励起光を発する半導体素子である。発光素子120としては、たとえば、近紫外から青色光に相当する300nm以上500nm以下の波長の光を発生するLEDチップを使用することができる。発光素子120の上面側に配設された一方の電極(図示せず)が、金線などのボンディングワイヤ170を介して第1リードフレーム150の表面と接続されている。また、発光素子120の上面に形成されている他方の電極(図示せず)は、金線などのボンディングワイヤ172を介して第2リードフレーム160の表面と接続されている。
【0056】
ケース140には、底面から上方に向かって孔径が徐々に拡大する略漏斗形状の凹部が形成されている。発光素子120は、上記凹部の底面に設けられている。発光素子120を取り囲む凹部の壁面は反射板の役目を担う。
【0057】
複合体40は、ケース140によって壁面が形成される上記凹部に充填されている。複合体40は、発光素子120から発せられる励起光をより長波長の光に変換する波長変換部材である。
複合体40は、樹脂などの封止材30中に、少なくとも本実施形態の蛍光体粉末が分散したものである。より品質の高い白色光を得るため、封止材30は、本実施形態の蛍光体粉末だけでなく、その他の蛍光体粉末を含んでもよい。
発光装置100は、発光素子120の光と、発光素子120から発せられる光を吸収して励起される蛍光体粒子1から発せられる光との混合色を発する。発光装置100は、発光素子120の光と蛍光体粒子1から発生する光との混色により白色を発光することが好ましい。
【0058】
ちなみに、図1では、表面実装型の発光装置が例示されているが、発光装置は表面実装型に限定されず、砲弾型やCOB(チップオンボード)型、CSP(チップスケールパッケージ)型であってもよい。
【0059】
発光装置の使い道としては、ディスプレイなどの画像表示装置や、照明装置が挙げられる。例えば、発光装置100をバックライトとして用いて、液晶ディスプレイを製造することができる。また、発光装置100を1つまたは複数個用いて、適切な配線を施すなどすることで、照明装置を製造することもできる。
【0060】
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することができる。また、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれる。
以下、参考形態の例を付記する。
1.
一般式M (Si,Al) (N,O) 3±y (ただし、MはLi及び一種以上のアルカリ土類金属元素であり、0.52≦x≦0.9、0.06≦y≦0.36)で示され、Mの一部がCe元素で置換されている蛍光体であって、Si/Al原子比が1.5以上6以下であり、かつO/N原子比が0以上0.1以下であり、Mの5~50mol%がLiであり、Mの0.5~10mol%がCeである蛍光体粒子を含む蛍光体粉末であって、
当該蛍光体粉末をレーザ回折散乱法で測定した体積基準累積10%径、体積基準累積50%径および体積基準累積90%径をそれぞれD 10 、D 50 およびD 90 としたとき、(D 90 -D 10 )/D 50 が0.7以上1.1以下である蛍光体粉末。
2.
1.に記載の蛍光体粉末であって、
10 が5μm以上12μm以下である蛍光体粉末。
3.
1.または2.に記載の蛍光体粉末であって、
90 が18μm以上38μm以下である蛍光体粉末。
4.
1.~3.のいずれか1つに記載の蛍光体粉末であって、
50 が8μm以上25μm以下である蛍光体粉末。
5.
1.~4.のいずれか1つに記載の蛍光体粉末と、発光光源とを備える発光装置。
6.
5.に記載の発光装置であって、
発光光源が紫外線又は可視光を発光する発光装置。
7.
5.または6.に記載の発光装置を備える画像表示装置。
8.
5.または6.に記載の発光装置を備える照明装置。
【実施例
【0061】
本発明の実施態様を、実施例および比較例に基づき詳細に説明する。念のため述べておくと、本発明は実施例のみに限定されない。
【0062】
<蛍光体粉末の製造>
(実施例1)
(1)原料混合粉の調製
まず、予備混合を行った。具体的には、表1に記載の原料のうち、Si,AlNおよびCeOを、小型V型混合機を用いて30分間混合(ドライブレンド)し、その後、目開き150μmのナイロン製の篩で通篩した。これにより予備混合粉を得た。
次に、窒素雰囲気のグローブボックス内で、予備混合粉に、表1に記載の原料の残り(CaおよびLiN)を加え、十分にドライブレンドし、その後、目開き500μmの篩で通篩した。これにより原料混合粉を得た。
【0063】
(2)焼成
原料混合粉を窒化ホウ素製の容器に充填した。この容器を炉に入れ、原料混合粉を、0.72MPa・GのN雰囲気下、1800℃で8時間焼成した。
【0064】
(3)焼成物の粉砕
(2)で得られた焼成物を、スタンプミルを用いて粉砕した。スタンプミルによる粉砕は、目開き250μmの振動篩の通過率が90%を超えるまで繰り返した。
スタンプミルによる粉砕を経た焼成物を、さらに、ジェットミル(日本ニューマチック工業製、PJM-80SP)を用いて粉砕した。粉砕条件は、試料供給速度:50g/min、粉砕エア圧:0.3MPaとした。
【0065】
(4)酸処理
粉砕された焼成物を、塩酸中に投入して酸処理した。
具体的には、まず、35~37質量%塩酸と、蒸留水とを、体積比で50mL:300mLで混合し、80℃に熱した塩酸水溶液を準備した。この塩酸水溶液に、(3)で粉砕された焼成物を投入し、0.5時間攪拌して酸処理した。
酸処理された焼成物を、蒸留水で十分に洗浄し、その後、110℃で3h乾燥させた。そして、目開き45μmの篩を通過させて、粗大/凝集粒子を除いた。
【0066】
(5)沈降分級による微粉の除去
まず、0.05質量%ヘキサメタリン酸ナトリウム水溶液を調製した。そして、この水溶液を内径70mm、高さ120mmの容器に高さ110mmまで入れた。
次に、上記の水溶液を入れた容器内に、酸処理された焼成物を投入し、十分に攪拌し分散させ、その後22分間静置した。静置後、上澄み液を上から90mm分排出した。その後、ヘキサメタリン酸ナトリウム水溶液を高さ110mmまで入れ、再び粉末を攪拌により分散させて同様の処理を行った。この操作を7回繰り返し、酸処理粉末に含まれる微粉を除いた(ちなみに、ストークスの式に基づけば、分級点は7.5μmである。)
その後、容器底部のスラリーを水洗しながら濾過を行い、固形分を回収し、それを110℃、3時間の条件で乾燥し、目開き45μmの篩を通過させて、凝集粒子を解砕した。
以上により、蛍光体粉末を得た。
【0067】
(比較例1)
沈降分級を行わなかった以外は、実施例1と同様にして、蛍光体粉末を得た。
【0068】
(実施例2)
(a)原料として表1に記載のものを用いたこと(b)酸処理を行わなかったこと(ジェットミルで粉砕された焼成物を、酸処理を経ずに、沈降分級に供したこと)、および、(c)ジェットミル粉砕における粉砕エア圧を0.6MPaとしたこと以外は、実施例1と同様にして、蛍光体粉末を得た。
【0069】
(実施例3)
(a)原料として表1に記載のものを用いたこと、および、(b)酸処理を行わなかったこと(ジェットミルで粉砕された焼成物を、酸処理を経ずに、沈降分級に供したこと)以外は、実施例1と同様にして、蛍光体粉末を得た。
【0070】
(比較例2)
沈降分級を行わなかった以外は、実施例3と同様にして、蛍光体粉末を得た。
【0071】
(実施例4)
(a)原料として表1に記載のものを用いたこと、(b)酸処理を行わなかったこと(ジェットミルで粉砕された焼成物を、酸処理を経ずに、沈降分級に供したこと)、(c)ジェットミル粉砕における粉砕エア圧を0.4MPaとしたこと、および、(d)ジェットミルで粉砕された焼成物を、目開き45μmの篩を通過させて、粗大/凝集粒子を除去したうえで、沈降分級に供したこと以外は、実施例1と同様にして、蛍光体粉末を得た。
【0072】
(比較例3)
沈降分級を行わなかった以外は、実施例4と同様にして、蛍光体粉末を得た。
【0073】
<化学組成/結晶構造の確認>
一部の蛍光体粉末ついて、以下のように組成を分析した。
Ca、Li、Ce、SiおよびAlの量:アルカリ融解法により蛍光体粉末を溶解させ、その後、ICP発光分光分析装置(株式会社リガク製CIROS-120)により測定した。
OおよびNの量:酸素窒素分析装置(HORIBA社製、EMGA-920)により測定した。
測定結果に基づき、一般式M(Si,Al)(N,O)3±yにおけるx、y、Si/Al原子比、O/N原子比、MのLi比率、および、MのCe比率を求めた。
また、不純物であるCr元素とFe元素については、フッ化水素酸と硝酸の混酸で加圧酸分解法により蛍光体粉末を溶解させ、その後、ICP発光分光分析装置により測定した。
【0074】
実施例1の蛍光体に対しては、X線回折装置(株式会社リガク社製UltimaIV-N)を用い、Cu-Kα線による粉末X線回折(XRD)測定も行った。得られたXRDパターンを図2に示す。得られたXRDパターンの解析から、斜方晶系で格子定数a=0.9486nm、b=0.5586nm、c=0.4933nmの結晶を主相として、異相として少量のLiAlSiの存在が確認された。
【0075】
ちなみに、実施例4および比較例3の蛍光体粉末の化学組成は未測定である。しかし、原料混合粉の組成は、各実施例・比較例で大きくは異ならず、また、各実施例・比較例の製造工程の相違は、最終的に得られる蛍光体粉末の化学組成に大きな影響を及ぼすとは考え難い。よって、実施例4および比較例3の蛍光体粉末の組成は、他の実施例および比較例と同様、一般式M(Si,Al)(N,O)3±yに当てはまると考えられる。
【0076】
<粒径分布の測定>
粒径分布は、LS13 320(ベックマン・コールター株式会社製)を用い、JIS R 1629:1997に準拠したレーザ回折散乱法により測定した。測定溶媒には水を使用した。
具体的な手順として、まず、分散剤としてヘキサメタリン酸ナトリウムを0.05質量%加えた水溶液に少量の蛍光体粉末を投入した。次に、ホーン式の超音波ホモジナイザー(出力300W、ホーン径26mm)で分散処理を行って分散液を作製した。この分散液を用いて粒径分布を測定した。得られた累積体積頻度分布曲線から、10%体積径(D10)、50%体積径(D50)および90%体積径(D90)を求めた。そして、(D90-D10)/D50を算出した。
【0077】
<評価>
(蛍光ピーク強度)
ローダミンBと副標準光源で補正を行った分光蛍光光度計(日立ハイテクサイエンス社製、F-7000)を用いて、蛍光体粉末の蛍光スペクトルを測定した。具体的には、波長455nmの単色光で蛍光体粉末を励起させることにより発せられる蛍光のスペクトルを測定し、蛍光ピーク強度および蛍光ピーク波長を求めた。
蛍光ピーク強度は測定装置や条件によって変化する。後掲の表に記載の蛍光ピーク強度は、標準試料(YAG、より具体的には三菱ケミカル社製P46Y3)の蛍光ピーク強度を100としたときの値である。
【0078】
(内部量子効率および外部量子効率)
分光光度計(大塚電子株式会社製MCPD-7000)を用い、各蛍光体粉末の内部量子効率および外部量子効率を、以下の手順で求めた。
(1)蛍光体粉末を、凹型セルの窪み部分に、表面が平滑になるように充填した。この凹型セルを、積分球内の所定の位置(試料部)に取り付けた。この積分球に、発光光源(Xeランプ)から455nmの波長に分光した単色光を、光ファイバーを用いて導入した。この単色光(励起光)を、凹型セルの窪み部分に充填された蛍光体粉末に照射し、蛍光スペクトルを測定した。得られたスペクトルデータから、ピーク波長を求め、また、励起反射光フォトン数(Qref)及び蛍光フォトン数(Qem)を算出した。励起反射光フォトン数は450nm以上465nm以下の波長範囲で蛍光フォトン数は、465nm以上800nm以下の範囲で算出した。
(2)また、試料部に、凹型セルの代わりに、反射率が99%の標準反射板(Labsphere社製スペクトラロン)を取り付けて、波長455nmの励起光のスペクトルを測定した。そして、450nm以上465nm以下の波長範囲のスペクトルから励起光フォトン数(Qex)を算出した。
(3)上記(1)および(2)で求めたQref、QemおよびQexから、以下式に基づき内部量子効率および外部量子効率を算出した。
内部量子効率=(Qem/(Qex-Qref))×100
外部量子効率=(Qem/Qex)×100
【0079】
各種情報をまとめて表1に示す。
表1中、「N.D.」はNot Detectedの略である。
【0080】
また、表1中、「使用原料」の欄に記載の各原料は、以下である。
【0081】
Ca-1:太平洋セメント社製のCa
Ca-2:CERAC社(現:Materion社)製のCa
【0082】
LiN-1:Materion社製のLi
LiN-2:CERAC社(現:Materion社)製のLi
LiN-3:高純度化学研究所製のLi
【0083】
CeO-1:信越化学工業社製のCeO、Cグレード
【0084】
Si-1:宇部興産社製のSi、E10グレード
【0085】
AlN-1:トクヤマ社製のAlN、Eグレード
【0086】
【表1】
【0087】
実施例1と比較例1との対比、実施例2および3と比較例2との対比、実施例4と比較例3との対比より、蛍光体の化学組成がほとんど同じでも、(D90-D10)/D50が0.7以上1.1以下である蛍光体粉末ほうが、(D90-D10)/D50が1.1超である蛍光体粉末よりも、良好な蛍光ピーク強度、内部量子効率および外部量子効率を示すことが理解される。
【0088】
この出願は、2020年11月13日に出願された日本出願特願2020-189204号を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。
【符号の説明】
【0089】
1 蛍光体粒子
30 封止材
40 複合体
100 発光装置
120 発光素子
130 ヒートシンク
140 ケース
150 第1リードフレーム
160 第2リードフレーム
170 ボンディングワイヤ
172 ボンディングワイヤ
図1
図2