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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-18
(45)【発行日】2024-11-26
(54)【発明の名称】異常分類装置
(51)【国際特許分類】
   G05B 23/02 20060101AFI20241119BHJP
【FI】
G05B23/02 302Y
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2022571592
(86)(22)【出願日】2021-12-22
(86)【国際出願番号】 JP2021047724
(87)【国際公開番号】W WO2022138775
(87)【国際公開日】2022-06-30
【審査請求日】2023-07-11
(31)【優先権主張番号】P 2020216098
(32)【優先日】2020-12-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390008235
【氏名又は名称】ファナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001151
【氏名又は名称】あいわ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 和宏
(72)【発明者】
【氏名】飯島 一憲
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 元紀
【審査官】牧 初
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-185422(JP,A)
【文献】特開2017-207904(JP,A)
【文献】国際公開第2012/073289(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0346066(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第108199795(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 23/00-23/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
産業用機械に生じた異常の分類を行う異常分類装置であって、
産業用機械に異常が発生した際に検出された物理量に係るデータを異常データとして取得する異常データ取得部と、
前記異常データを記憶する異常データ記憶部と、
前記異常データ記憶部に記憶された異常データを用いて、既知の異常原因に基づく異常データであるか否かを判定するための第1のモデルと、いずれの異常原因に属する異常データであるのかを分類するための前記第1のモデルとは異なる第2のモデルとをそれぞれ個別に作成する学習部と、
前記学習部が作成した前記第1のモデルを用いて、異常データが既知の異常原因に基づくものであるか否かを判定する既知異常判定部と、
前記学習部が作成した前記第2のモデルを用いて、異常データがいずれの異常原因に基づくものであるのかを分類する異常データ分類部と、
を備えた異常分類装置。
【請求項2】
さらに、
前記産業用機械において検出された物理量に係るデータを取得するデータ取得部と、
前記データ取得部が取得したデータに基づいて前記産業用機械の動作が正常であるか異常であるかを判定する異常判定部とを備え、
前記異常データ取得部は、前記異常判定部が異常であると判定したデータを異常データとして取得する、
請求項1に記載の異常分類装置。
【請求項3】
前記既知異常判定部が既知の異常原因に基づくものでは無いと判定した異常データに対して、異常原因に係るラベルを付与するラベル生成部を更に備える、
請求項1に記載の異常分類装置。
【請求項4】
前記異常データ分類部による分類結果に対して、前記ラベル生成部で付加したラベルを組み合わせて出力する分類結果出力部を更に備える、
請求項に記載の異常分類装置。
【請求項5】
前記ラベル生成部は、ユーザインタフェースを介して異常データに付与するラベルを取得する、
請求項に記載の異常分類装置。
【請求項6】
前記ラベル生成部は、診断対象の機械に関する情報、その他の機械に関する情報、環境条件に関する情報のいずれかに基づいて異常データに付与するラベルを生成する、
請求項に記載の異常分類装置。
【請求項7】
前記学習部は、前記ラベル生成部が異常原因に係るラベルを付与した異常データを用いて前記第1のモデル及び前記第2のモデルを再学習する、
請求項に記載の異常分類装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、産業用機械に生じた異常の分類を行う異常分類装置に関する。
【背景技術】
【0002】
工場などの製造現場では、工作機械やロボットなどの産業用機械を設置して製造ラインを構成し、それぞれの産業用機械を制御することで製品の製造を行っている。それぞれの産業用機械には、動作状態に係る物理量(各部に係る電流値、電圧値、温度、振動、音など)を計測するセンサが備え付けられており、これらのセンサで検出された物理量に基づいて、それら産業用機械が正常な範囲で動作しているのか、異常な動作をしているのかを検知することができる。
【0003】
産業用機械の異常な動作を検知するためには、産業用機械が動作している際に検出された物理量に係るデータに基づいて正常乃至異常な状態を検知するためのモデルを作成した上で、そのモデルに基づいて産業用機械の動作を判定する。ここで、産業用機械は正常な動作をしていることが多く、一方で異常な動作をする頻度は少ない。そのため、産業用機械が異常な動作をしている際に検出される物理量に係るデータを収集することは困難である。そのため、産業用機械の異常動作を検知するために、産業用機械が正常な範囲で動作している時に検出されたデータを用いた教師なし学習を行い、その結果として作成されたモデルを用いて産業用機械の正常な動作からかけ離れた状態を異常動作として検知することが行われている(特許文献1など)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-033470号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
異常を検知した際、ユーザは異常が検知された時に取得したデータに基づいて、異常の原因を特定し、異常を解消するために何をするべきかを判断する。これは、異常の原因となる故障個所や故障の種類によって、その異常の深刻度やユーザが取るべき行動が変わるからである。
【0006】
一方で、産業用機械が異常な動作をした際に検出された物理量に係るデータを収集するためには多くの時間とコストを必要とする。そのため、産業用機械に発生し得るあらゆる異常について、その異常原因に分類するモデルを最初から用意することは困難である。
そのため、検知した異常が既知の異常であるか否かを判定し、既知の異常のみならず未知の異常である場合の対応をユーザに提示できることが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様による異常分類装置は、過去に発生した異常事例をもとに、異常時のデータを分類し、分類結果をユーザに提示することで、上記課題を解決する。
【0008】
そして、本発明の一態様は、産業用機械に生じた異常の分類を行う異常分類装置であって、産業用機械に異常が発生した際に検出された物理量に係るデータを異常データとして取得する異常データ取得部と、前記異常データを記憶する異常データ記憶部と、前記異常データ記憶部に記憶された異常データを用いて、既知の異常原因に基づく異常データであるか否かを判定するための第1のモデルと、いずれの異常原因に属する異常データであるのかを分類するための前記第1のモデルとは異なる第2のモデルとをそれぞれ個別に作成する学習部と、前記学習部が作成した第1のモデルを用いて、異常データが既知の異常原因に基づくものであるか否かを判定する既知異常判定部と、前記学習部が作成した第2のモデルを用いて、異常データがいずれの異常原因に基づくものであるのかを分類する異常データ分類部と、を備えた異常分類装置である。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一態様により、異常パターン分類の為の事前知識なく、異常時のデータをもとに異常パターンの分類が可能になり、また、異常データが既知の異常原因に基づくものであるか否かの判定を異常パターンの分類とは別に行うことで、未知の異常を高精度に判定可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】一実施形態による異常分類装置の概略的なハードウェア構成図である。
図2】第1実施形態による異常分類装置の概略的な機能ブロック図である。
図3】異常原因の分類結果の表示例である。
図4】未知の異常原因の表示例である。
図5】異常原因の分類結果の他の表示例である。
図6】第2実施形態による異常分類装置の概略的な機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を図面と共に説明する。
図1は本発明の一実施形態による異常分類装置の要部を示す概略的なハードウェア構成図である。
本発明による異常分類装置1は、例えば、制御用プログラムに基づいて工作機械やロボットなどを含む産業用機械を制御する制御装置として実装することができ、また、制御用プログラムに基づいて工作機械やロボットなどを含む産業用機械を制御する制御装置に併設されたパソコンや、有線/無線のネットワークを介して制御装置と接続されたパソコン、セルコンピュータ、フォグコンピュータ6、クラウドサーバ7などのコンピュータ上に実装することもできる。本実施形態では、異常分類装置1を、ネットワーク介して制御装置と接続されたパソコンの上に実装した例を示す。
【0012】
本実施形態による異常分類装置1が備えるCPU11は、異常分類装置1を全体的に制御するプロセッサである。CPU11は、バス22を介してROM12に格納されたシステム・プログラムを読み出し、該システム・プログラムに従って異常分類装置1全体を制御する。RAM13には一時的な計算データや表示データ、及び外部から入力された各種データなどが一時的に格納される。
【0013】
不揮発性メモリ14は、例えばバッテリ(図示せず)でバックアップされたメモリやSSD(Solid State Drive)などで構成され、異常分類装置1の電源がオフされても記憶状態が保持される。不揮発性メモリ14には、インタフェース15を介して外部機器72から読み込まれたデータ、入力装置71を介して入力されたデータ、ネットワーク5を介して産業用機械3から取得されたセンサ4により検出されたデータなどが記憶される。不揮発性メモリ14に記憶されたデータは、実行時/利用時にはRAM13に展開されても良い。また、ROM12には、公知の解析プログラムなどの各種システム・プログラムがあらかじめ書き込まれている。
【0014】
産業用機械3には、産業用機械3の動作時において各部の電流、電圧、温度、振動、音などの物理量を検出するセンサ4が取り付けられている。産業用機械3としては、工作機械やロボットなどが例示される。
【0015】
インタフェース15は、異常分類装置1のCPU11とUSB装置などの外部機器72と接続するためのインタフェースである。外部機器72側からは、例えば各産業用機械の動作に係るデータなどを読み込むことができる。また、異常分類装置1内で編集したプログラムや設定データなどは、外部機器72を介して外部記憶手段に記憶させることができる。
【0016】
インタフェース20は、異常分類装置1のCPUと有線乃至無線のネットワーク5とを接続するためのインタフェースである。ネットワーク5には、産業用機械3やフォグコンピュータ6、クラウドサーバ7などが接続され、異常分類装置1との間で相互にデータのやり取りを行っている。
【0017】
表示装置70には、メモリ上に読み込まれた各データ、プログラムなどが実行された結果として得られたデータ、後述する機械学習器100から出力されたデータなどがインタフェース17を介して出力されて表示される。また、キーボードやポインティングデバイスなどから構成される入力装置71は、作業者による操作に基づく指令,データなどをインタフェース18を介してCPU11に渡す。
【0018】
インタフェース21は、CPU11と機械学習器100とを接続するためのインタフェースである。機械学習器100は、機械学習器100全体を統御するプロセッサ101と、システム・プログラムなどを記憶したROM102、機械学習に係る各処理における一時的な記憶を行うためのRAM103、及びモデルなどの記憶に用いられる不揮発性メモリ104を備える。機械学習器100は、異常分類装置1で取得可能な各情報(例えば、産業用機械3の動作状態を示すデータ)をインタフェース21を介して観測することができる。また、異常分類装置1は、機械学習器100からインタフェース21を介して出力される処理結果を取得し、取得した結果を記憶したり、表示したり、他の装置に対してネットワーク5などを介して送信する。
【0019】
図2は、本発明の第1実施形態による異常分類装置1が備える機能を概略的なブロック図として示したものである。
本実施形態による異常分類装置1が備える各機能は、図1に示した異常分類装置1が備えるCPU11と、機械学習器100が備えるプロセッサ101とがシステム・プログラムを実行し、異常分類装置1及び機械学習器100の各部の動作を制御することにより実現される。
【0020】
本実施形態の異常分類装置1は、データ取得部110、異常判定部120、異常データ取得部130、ラベル生成部140、分類結果出力部150を備える。また、異常分類装置1が備える機械学習器100は、学習部106、既知異常判定部107、異常データ分類部108を備える。更に、異常分類装置1のRAM13乃至不揮発性メモリ14には、データ取得部110が産業用機械3等から取得したデータを記憶するための領域として取得データ記憶部210、異常判定部120が異常な状態を示しているデータであると判定したデータを異常データとして記憶する異常データ記憶部220が予め用意されており、機械学習器100のRAM103乃至不揮発性メモリ104上には、学習部106による機械学習により作成されたモデルが記憶されている領域としてモデル記憶部109が予め用意されている。
【0021】
データ取得部110は、図1に示した異常分類装置1が備えるCPU11がROM12から読み出したシステム・プログラムを実行し、主としてCPU11によるRAM13、不揮発性メモリ14を用いた演算処理と、インタフェース15、18又は20による入力制御処理とが行われることで実現される。データ取得部110は、産業用機械3の動作時にセンサ4により検出された物理量に係るデータを取得する。データ取得部110は、例えば産業用機械3に取り付けられたセンサ4により検出された、産業用機械3の動作時に各部に流れる電流や電圧の値、温度(熱量)、振動、音などの物理量に係るデータを取得する。データ取得部110が取得するデータは、所定のタイミングに取得された瞬間値であってよいし、所定時間にわたって取得された時系列データであってもよい。また、データ取得部110は、ネットワーク5を介して産業用機械3から直接データを取得してもよいし、外部機器72や、フォグコンピュータ6、クラウドサーバ7等が取得して記憶しているデータを取得してもよい。データ取得部110が取得したデータは取得データ記憶部210に記憶される。
【0022】
異常判定部120は、図1に示した異常分類装置1が備えるCPU11がROM12から読み出したシステム・プログラムを実行し、主としてCPU11によるRAM13、不揮発性メモリ14を用いた演算処理が行われることで実現される。異常判定部120は、データ取得部110が取得した産業用機械3の動作時に検出された物理量に係るデータに基づいて、該産業用機械3の動作状態を判定する。異常判定部120による産業用機械3の動作状態の判定については、例えば所定の物理量に係るデータに基づいて算出される値が、予め定めた所定の閾値を超えた場合に異常が発生していると判定するものであってよいし、また、物理量に係るデータに対して統計的な処理を施した結果を所定のモデルに基づいて産業用機械3の動作の正常状態/異常状態を判定するものであってよいし、更には、公知の教師なし学習、教師あり学習などの機械学習の手法を用いて産業用機械3の動作の正常状態/異常状態を判定するものであってよい。機械学習の手法を用いる場合には、例えばOne Class SVM、MT法、局所外れ値因子法、Auto Encoder、Variational Auto Encoderなどの1クラス分類の手法を用いると好適である。機械学習の手法を用いる場合には、異常判定部120は機械学習器100の上に構築するようにしてもよい。異常判定部120は、産業用機械3の動作が異常であるときに取得されたものであると判定した物理量に係るデータを、機械学習器100に出力する。
【0023】
異常データ取得部130は、図1に示した異常分類装置1が備えるCPU11がROM12から読み出したシステム・プログラムを実行し、主としてCPU11によるRAM13、不揮発性メモリ14を用いた演算処理が行われることで実現される。異常データ取得部130は、産業用機械3の動作が異常であるときに取得されたものであると異常判定部120により判定された物理量に係るデータを異常データとして取得し、異常データ記憶部220に記憶する。
【0024】
機械学習器100が備える学習部106は、図1に示した機械学習器100が備えるプロセッサ101がROM102から読み出したシステム・プログラムを実行し、主としてプロセッサ101によるRAM103、不揮発性メモリ104を用いた演算処理が行われることにより実現される。学習部106は、異常データ記憶部220に記憶された異常データに基づいて、異常データに係る判定処理に用いるモデルを作成してモデル記憶部109に記憶する。学習部106は、モデルを作成する際に異常データ記憶部220に記憶される異常データの内で異常の原因についてラベルが付与されているものを用いる。学習部106が作成するモデルは、少なくとも異常データを入力として、既知の異常原因であるか否かを判定するために用いることができるモデルと、既知の異常原因である場合にはいずれの異常原因に基づく異常データであるのかを分類するために用いることができるモデルとを含む。既知の異常原因であるか否かを判定するためのモデルと、異常原因を分類するためのモデルとは、それぞれ個別に作成する場合には、例えば既知の異常原因であるか否かを判定するためのモデルとしては、One Class SVMやMT法、局所外れ値因子法、Auto Encoder、Variational Auto Encoderなどを用いることができる。また、異常原因に分類するためのモデルとしては、k-近傍法、線形判別分析、ニューラルネットワークなどを用いることができる。各モデルのパラメータ(ハイパーパラメータ、閾値など)については、ユーザが設定できるようにしてもよい。
なお、既知の異常原因に基づく異常データであるか否かを判定するために用いるモデルと、いずれの異常原因に基づく異常データであるのかを分類するために用いるモデルとは、共通の分類モデルとして作成してもよい。この場合、分類モデルは異常データを入力として、該異常データがいずれのクラスに属するのかを示す確信度をスコアとして出力する分類モデルを用いるとよい。例えば、ニューラルネットワークの出力層のSoftmax関数の値を、クラス分類結果に対する確信度として出力するようにすればよい。このようなモデルを用いる際には、モデルから出力される確信度がどのクラス(異常原因のラベル)に対しても予め定めた所定の閾値以下の場合には既知の異常原因に基づくものでは無いと判定できる。また、モデルから出力される確信度が一定値以上となるクラスがある場合に、そのクラスに分類される異常データであると判定することができる。
学習部106は、作成したモデルをモデル記憶部109に記憶する。
【0025】
機械学習器100が備える既知異常判定部107は、図1に示した機械学習器100が備えるプロセッサ101がROM102から読み出したシステム・プログラムを実行し、主としてプロセッサ101によるRAM103、不揮発性メモリ104を用いた演算処理が行われることにより実現される。既知異常判定部107は、異常判定部120が産業用機械3の動作が異常であるときに取得されたものであると判定した物理量に係るデータに基づいて、産業用機械3に発生した異常が既知の異常原因に基づくものであるか否かを判定する。既知異常判定部107は、モデル記憶部109に記憶されているモデルを用いて、異常判定部120が異常であると判定したデータが、既知の異常原因に基づくものであるか否かを判定する。既知異常判定部107は、産業用機械3に発生した異常が既知の異常原因に基づくものであると判定した場合、異常データ分類部108に対して異常原因の分類をするように指令する。また、既知異常判定部107は、既知の異常原因に基づくものでは無いと判定した場合、即ち未知の異常原因が発生したと判定した場合は、ラベル生成部140に対してラベルを付与するように指令する。
【0026】
機械学習器100が備える異常データ分類部108は、図1に示した機械学習器100が備えるプロセッサ101がROM102から読み出したシステム・プログラムを実行し、主としてプロセッサ101によるRAM103、不揮発性メモリ104を用いた演算処理が行われることにより実現される。異常データ分類部108は、既知異常判定部107が産業用機械3に発生した異常が既知の異常原因に基づくものであると判定した異常データについて、その異常の原因を分類して出力する。異常データ分類部108は、例えばモデル記憶部109に記憶されているモデルがk-近傍法などである場合には、異常データがいずれのクラスタの近傍にあるのか基づいて異常原因の分類を行う。また、例えばモデル記憶部109に記憶されているモデルが異常原因のスコアを出力するニューラルネットワークなどである場合には、異常データに基づいて算出されたスコアに基づいて異常原因の分類を行う。異常データ分類部108は、異常原因の分類の結果を分類結果出力部150に対して出力する。
【0027】
ラベル生成部140は、図1に示した異常分類装置1が備えるCPU11がROM12から読み出したシステム・プログラムを実行し、主としてCPU11によるRAM13、不揮発性メモリ14を用いた演算処理と、インタフェース17,18などを用いた入出力処理が行われることで実現される。ラベル生成部140は、既知異常判定部107により既知の異常原因に基づくものではないと判定された異常データについて、その異常原因に係るラベル(機械の稼働、保全に関する意味づけするラベル)を生成する。ラベル生成部140は、例えば、産業用機械3に発生した異常が既知の異常原因に基づくものでは無いと判定された異常データを表示装置70に表示し、表示した異常データに対してユーザが入力装置71を介して入力した異常原因に係る情報に基づいて異常原因に係るラベルの生成をしてもよいし、また、産業用機械3から、異常データが取得された後に発生したアラーム情報を取得し、取得したアラーム情報に基づいて異常原因に係るラベルを生成してもよいし、更には、他の機械から取得した情報や、フォグコンピュータ6、クラウドサーバ7などの上位コンピュータから取得した情報、環境に係る情報(環境温度や湿度、外部センサから取得された視覚的情報や音声情報など)などに基づいて、総合的に異常原因を特定してラベルを生成してもよい。ラベル生成部140は、生成したラベルを異常データに付与した上で、異常データ記憶部220に記憶する。
【0028】
なお、ラベル生成部140が、新たに異常原因に係るラベルを付与した異常データを異常データ記憶部220に記憶したことを契機として、学習部106は再学習処理を実行するようにしてよい。例えば前回学習処理を実行してモデルを作成してから、異常原因に係るラベルが付与された異常データが予め定めた所定の個数だけ異常データ記憶部220に追加された場合に、学習部106は再学習処理を実行するようにしてもよい。また、同一の異常原因に係るラベルが付与された異常データが予め定めた所定の個数だけ異常データ記憶部220に追加された場合に、学習部106は再学習処理を実行するようにしてもよい。このような構成とすることで、異常分類装置1は、設置当初に未知の異常原因に基づいて発生した異常データについても、いずれ異常原因の分類ができるようになる。そのため、異常分類装置1を活用し続けることでより好適にユーザの故障対応に係る支援を行えるようになる。
【0029】
分類結果出力部150は、図1に示した異常分類装置1が備えるCPU11がROM12から読み出したシステム・プログラムを実行し、主としてCPU11によるRAM13、不揮発性メモリ14を用いた演算処理と、インタフェース17,20などを用いた出力処理が行われることで実現される。分類結果出力部150は、異常データ分類部108による異常データの分類結果を表示装置70やネットワーク5に接続された機械や装置に対して出力する。また、分類結果出力部150は、既知異常判定部107により未知の異常であると判定された異常データに係る情報を表示装置70やネットワーク5に接続された機械や装置に対して出力する。
【0030】
図3は、分類結果出力部150による異常データの分類結果の表示例である。図3の例では、日時を横軸として産業用機械の動作時に検出された異常データが示す異常度をグラフで表示している。この例では、特定の異常データを選択した時に、選択したデータの分類結果が表示される。分類結果の表示は、最も確信度が高い1つのクラスのみ表示(図3の301)、各クラスに対する確信度のリスト表示(図3の302)、確信度のグラフ表示(棒グラフ、円グラフ、レーダーチャート)などが考えられる。
【0031】
図4は、既知異常判定部107により既知の異常原因に基づくものではないと判定された異常データを選択した時の表示例である。この場合においても、最も確信度が高い未知の異常のみを表示(図4の303)したり、併せて各クラスに対する確信度をリスト表示(図4の304)したりしてもよい。

【0032】
図5は、分類結果出力部150による異常データの分類結果の他の表示例である。図5に例示するように、分類結果出力部150は、複数の産業用機械3において発生した異常に係る異常原因の履歴を一覧表示するようにしてもよい。
【0033】
上記構成を備えた異常分類装置1は、異常が発生した際のパターンに基づく異常原因の分類の為の事前知識がなくとも、異常が発生した時のデータをもとに異常パターンの分類が可能になり、また、産業機械3に発生した異常が既知の異常原因に基づくものであるか否かの判定(既知異常判定)を異常パターンの分類とは別に行うことで、未知の異常を高精度に判定可能となる。
【0034】
図6は、本発明の第2実施形態による異常分類装置1が備える機能を概略的なブロック図として示したものである。
本実施形態による異常分類装置1が備える各機能は、図1に示した異常分類装置1が備えるCPU11と、機械学習器100が備えるプロセッサ101とがシステム・プログラムを実行し、異常分類装置1及び機械学習器100の各部の動作を制御することにより実現される。
【0035】
本実施形態による異常分類装置1は、産業用機械3において異常が発生したことを検出した際に取得された異常データを異常データ取得部130が取得する点を除いて、第1実施形態による異常分類装置1が備える各機能と同様の機能を備える。このように、異常が発生したことを外部で判定し、異常が発生した際に検出された異常データを分類するために異常分類装置1を活用することができる。異常分類装置1は、既知の異常については異常の原因を分類し、未知の異常であると判定された場合にはラベルを作成して学習する機能を備えることで、本願発明の効果を十分に提供することができる。
【0036】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上述した実施の形態の例のみに限定されることなく、適宜の変更を加えることにより様々な態様で実施することができる。
【符号の説明】
【0037】
1 異常分類装置
3 産業用機械
4 センサ
5 ネットワーク
6 フォグコンピュータ
7 クラウドサーバ
11 CPU
12 ROM
13 RAM
14 不揮発性メモリ
15,17,18,20,21 インタフェース
22 バス
70 表示装置
71 入力装置
72 外部機器
110 データ取得部
120 異常判定部
130 異常データ取得部
140 ラベル生成部
150 分類結果出力部
210 取得データ記憶部
220 異常データ記憶部
100 機械学習器
101 プロセッサ
102 ROM
103 RAM
104 不揮発性メモリ
106 学習部
107 既知異常判定部
108 異常データ分類部
109 モデル記憶部
図1
図2
図3
図4
図5
図6