(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-18
(45)【発行日】2024-11-26
(54)【発明の名称】ビタミンB3化合物の皮膚への浸透を改善する方法
(51)【国際特許分類】
A61K 8/67 20060101AFI20241119BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20241119BHJP
A61K 31/455 20060101ALI20241119BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20241119BHJP
【FI】
A61K8/67
A61Q19/00
A61K31/455
A61P17/00
(21)【出願番号】P 2022574094
(86)(22)【出願日】2021-06-01
(86)【国際出願番号】 US2021035140
(87)【国際公開番号】W WO2021247496
(87)【国際公開日】2021-12-09
【審査請求日】2022-12-01
(32)【優先日】2020-06-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】590005058
【氏名又は名称】ザ プロクター アンド ギャンブル カンパニー
【氏名又は名称原語表記】THE PROCTER & GAMBLE COMPANY
【住所又は居所原語表記】One Procter & Gamble Plaza, Cincinnati, OH 45202,United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ルー ジャン
(72)【発明者】
【氏名】ピーター ブレンダン スタイシンスキー
(72)【発明者】
【氏名】スディープ チャクラヴァーティ
(72)【発明者】
【氏名】ジョセフ マイケル ズコウスキー
(72)【発明者】
【氏名】チュイイン リー
【審査官】田中 雅之
(56)【参考文献】
【文献】特表2009-539763(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0147508(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
A61K 31/33-33/44
A61P 1/00-43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビタミンB
3化合物の表皮の浸透を改善する方法であって、
前記方法が、
皮膚の健康又は外観上の利益が望まれる皮膚の標的部分を特定することと、
低pHスキンケア組成物を皮膚の前記標的部分に塗布することであって、前記低pHスキンケア組成物が、第1の濃度のナイアシンアミドであるビタミンB
3化合物を含む、塗布することと、
その後、第2のスキンケア組成物を皮膚の前記標的部分に塗布することであって、前記第2のスキンケア組成物が、第2の濃度の前記ビタミンB
3化合物を含み、前記第2の濃度が、前記第1の濃度よりも高い、塗布することと、を含
み、
前記低pH組成物が、2.0~5.0のpHを有し、
前記低pH組成物が、0.01重量%~3重量%の前記ビタミンB
3
化合物を含み、前記第2のスキンケア組成物が、2重量%~10重量%の前記ビタミンB
3
化合物を含む、方法。
【請求項2】
前記第2のスキンケア組成物が、5.0~8.0のpHを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記低pH組成物が、乳酸、グルコン酸、ラクトビオン酸、及びマルトビオン酸から選択される酸緩衝剤、並びに乳酸ナトリウム、グルコン酸ナトリウム、グルコン酸カルシウム、及びグルコン酸カリウムから選択される塩緩衝剤を更に含む、請求項1
又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記低pH組成物中のビタミンB
3化合物対前記第2のスキンケア組成物中のビタミンB
3化合物の重量%比が、1:10~3:4である、請求項1~
3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記低pH組成物が、
a.酸緩衝剤及び塩緩衝剤を含む0.1%~5%のpH緩衝系と、
b.低pH耐性増粘剤を含む0.1%~5%のポリマー増粘剤と、
c.25℃で100cSt以下の粘度を有する、0.1%~10%の粘着性低減油と、を含む、請求項1~
4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記粘着性低減油が、シリコーン油である、請求項
5に記載の方法。
【請求項7】
前記低pH組成物が、0.01%~1%のシリコーン乳化剤を更に含む、請求項1~
6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記第1及び第2のスキンケア組成物の少なくとも1つが、ビタミン、ミネラル、ペプチド、糖アミン、日焼け止め剤、オイルコントロール剤、フラボノイド化合物、抗酸化剤、プロテアーゼ阻害剤、チロシナーゼ阻害剤、抗炎症剤、保湿剤、角質除去剤、皮膚美白剤、抗ニキビ剤、しわのばし剤、フィトステロール、N-アシルアミノ酸化合物、抗菌剤、抗真菌剤、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、追加のスキンケア活性物質を含む、請求項1~
7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記スキンケア組成物が、不透明度試験に従って、15~75の不透明度を有する、請求項1~
8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記低pH組成物が、TRPV1アッセイに従って、10%未満のTRPV1活性化を示す、請求項1~
9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記低pH組成物が、25℃で1cP~30000cPの粘度を有するスキンケアエッセンス製品である、請求項1~
10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
処置期間にわたって前記低pHスキンケア組成物及び前記第2のスキンケア組成物を前記塗布することが、皮膚の前記標的部分に対する皮膚刺激をもたらさない、請求項1~
11のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、ビタミンB3化合物の皮膚への浸透を改善する方法に関する。より具体的には、本発明は、ビタミンB3化合物を含む低pHスキンケア組成物が皮膚に塗布され、続いて、より多量のビタミンB3を含む別のスキンケア組成物が塗布される、スキンケアレジメンに関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚は、本来なら敏感な基礎組織及び器官に損傷を与え得る環境傷害に対する最初の防衛線である。例えば、皮膚は、脱水を防ぐために、生命体とその環境との間に比較的水不透性なバリアを維持する。加えて、皮膚は、人の身体の外見において重要な役割を果たす。概して、ほとんどの人々は、より若く健康に見える皮膚を望んでいる。また、これらの人々のうちの一部にとって、薄い皮膚、しわ、及び加齢によるシミなどの皮膚の老化の明らかな兆候は、若さの消滅を思い出させる望ましくないものである。
【0003】
内因性及び外因性因子の両方が、皮膚の外観及び機能の低下を引き起こし得る。例えば、皮膚が自然に老化すると、典型的には、皮膚を供給する細胞及び血管の低減、並びに真皮表皮接合部の平坦化が存在し、それは皮膚のバリア機能の薄化及び全般的な劣化をもたらす。加えて、生活様式の選択及び環境への曝露(例えば、紫外線、汚染、タバコの煙、煙霧、風、熱、低湿度、強力な界面活性剤、研磨剤)は、加齢によるシミ及び皮膚の色むらの時期尚早な出現をもたらし得る。結果として、若さを意識する社会において、皮膚の老化の兆候を処置することは、急成長事業となっている。処置は、美容クリーム及び保湿剤から多様な美容外科手術形態に至るまでの範囲に及ぶ。
【0004】
天然及び合成両方の多数の薬剤は、様々な皮膚状態、特に老化と関連するものを処置するために市販されているスキンケア組成物での使用が知られている。周知のスキンケア剤の種類の一例は、ナイアシンアミドなどのビタミンB3化合物であり、それは様々な皮膚の健康上の利益を提供するために化粧品業界で使用されている。例えば、米国特許第5,833,998号は、皮膚における油っぽい/てかりのある外観を調節するためのナイアシンアミドの使用について開示しており、米国特許第5,968,528号は、皮膚老化の兆候を調節するためのナイアシンアミドの使用について開示している。より最近の試験は、ナイアシンアミドを含む低pH組成物が、例えば、米国特許第9,833,398号及び米国特許出願公開第2020/0009123号に記載されているように、有効性を改善し得ることを示唆している。しかしながら、低pHナイアシンアミド組成物は、時に、イオン化能力及び組成物中の他の成分と複合体を形成する能力に起因する安定性の問題に悩まされ得る。したがって、低pHでナイアシンアミドを配合することは、配合物の柔軟性を制限し得る。加えて、理論によって限定されるものではないが、ナイアシンアミドのイオン化形態は、脂質マトリックス中の高度にケラチン化された角質細胞から構成される皮膚バリアを通る浸透を阻害することができると考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】米国特許第5,833,998号
【文献】米国特許第5,968,528号
【文献】米国特許第9,833,398号
【文献】米国特許出願公開第2020/0009123号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、ビタミンB3化合物の皮膚浸透を改善する方法を提供することが望ましい。低pH組成物からの安定したビタミンB3化合物の皮膚浸透を改善することも望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0007】
ビタミンB3化合物の皮膚浸透を改善する方法であって、皮膚の健康又は外観上の利益が望まれる皮膚の標的部分を特定することと、低pHスキンケア組成物を皮膚の標的部分に塗布することであって、低pHスキンケア組成物が、第1の濃度のビタミンB3化合物を含む、塗布することと、その後、第2のスキンケア組成物を皮膚の標的部分に塗布することであって、第2のスキンケア組成物が、第2の濃度のビタミンB3化合物を含み、第2の濃度が、第1の濃度よりも高い、塗布することと、を含む、方法。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【発明を実施するための形態】
【0009】
皮膚の健康及び/又は外観上の利益を提供するビタミンB3化合物の能力は周知である。しかしながら、所望の利益を提供するために、ビタミンB3化合物は、皮膚に浸透することが必要であり、それは全般的にフィックの拡散の法則によって支配される。フィックの拡散の法則は、皮膚を通るビタミンB3化合物の流束が、ビタミンB3化合物の濃度差に正比例することを示す。フィックの法則は、以下の方程式を使用して適用することができ、
J=KD(ΔC/h)、式中、
Jは、材料の流束であり、
Kは、配合物からの分配係数であり、
Dは、皮膚への拡散係数であり、
ΔCは、濃度差であり、
Hは、到達距離(例えば、角質層の厚さ)である。
したがって、異なる濃度のビタミンB3化合物を含む組成物の組み合わせが、例えば、レジメンとして(すなわち、逐次的に)、皮膚に塗布されると、より低い濃度の組成物は、より高い濃度の組成物を効果的に希釈し、それは、より高い濃度の組成物のみと比較して、皮膚を通るナイアシンアミドの全体的により低い流束をもたらすこととなる。しかしながら、驚くべきことに、最初にビタミンB3化合物を含む低pH組成物を皮膚に塗布し、続いて、より高い濃度のナイアシンアミドを含む第2のスキンケア組成物を塗布することによって、皮膚を通るビタミンB3化合物の流束が、予想されるよりもはるかに高く、更には、いくつかの例では、より高い濃度の組成物の個々の流束を超えることがここで発見された。低pH配合物はビタミンB3のより大きなイオン化を促進するため、この発見は特に予想外であり、したがって、その予想される透過性を低減する。皮膚を通るビタミンB3の流束のこの相乗的増加は、例えば、配合の柔軟性並びにスキンケア組成物及び/又はレジメンの改善された有効性などの多数の潜在的な利益を提供する。
【0010】
本明細書中での「実施形態」等への言及は、その実施形態と関連付けて説明される、特定の材料、特徴、構造、及び/又は特性が、少なくとも1つの実施形態、任意選択的に多数の実施形態に含まれていることを意味するが、全ての実施形態に、説明された材料、特徴、構造、及び/又は特性が組み入れられることを意味するものではない。更に、材料、特徴、構造、及び/又は特性は、異なる実施形態にわたって、任意の好適な様式で組み合わされてもよく、材料、特徴、構造、及び/又は特性は、説明されるものから除外されてもよく、又は代用されてもよい。したがって、本明細書に記載されている実施形態及び態様は、別段明記しない限り又は不適合性が明示されない限り、組み合わせて明示的に例示されていなくても、他の実施態様及び/又は態様の要素又は構成成分を含むか又はこれらと組み合わせ可能であり得る。
【0011】
全ての実施形態において、特に記載のない限り、百分率は全て化粧品組成物の重量を基準としている。特に記載のない限り、全ての比率は重量比である。全ての範囲は、端点を含み、組み合わせ可能である。有効桁数は、表示された量に対する限定を表すものでも、測定値の精度に対する限定を表すものでもない。特に別途記載のない限り、全ての数量は、単語「約」によって修飾されるものと理解される。別途記載のない限り、全ての測定は、およそ25℃の周囲条件でなされたと理解され、「周囲条件」とは、約1気圧及び相対湿度約50%の条件を意味する。全ての数値範囲は、より狭い範囲を含み、区切られた上下の範囲制限は、明示的に区切られていない更なる範囲を作るうえで互換性がある。
【0012】
本発明の組成物は、本明細書に記載の必須構成成分及び任意選択的成分を含む、それらから本質的になる、又はそれらからなることができる。本明細書で使用するとき、「~から本質的になる」とは、組成物又は構成成分が、追加成分を含み得るが、追加成分が、特許請求される組成物又は方法の基本的及び新規な特性を実質的に変えない場合に限ることを意味する。本明細書及び添付の特許請求の範囲において使用される単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈が明らかに他の意味を示さない限り、複数形も含むことが意図される。
【0013】
定義
組成物に関連して使用される「塗布する」又は「塗布」は、本発明の組成物を表皮などのヒトの皮膚表面上に塗布又は拡げることを意味する。
【0014】
「化粧剤」とは、美容効果をもたらすために哺乳動物の身体又はその任意の部分に擦り込まれる、注がれる、振りかけられる、噴霧される、導入される、又は他の方法で塗布されることを目的とした任意の物質、更にはその任意の構成成分を意味する。化粧剤としては、米国食品医薬品局によって全般的に安全と認められた(Generally Recognized as Safe、GRAS)物質、食品添加物、及び市販薬などの非化粧用消費者製品で使用される材料を挙げることができる。
【0015】
「有効量」とは、処置期間の過程にわたってケラチン性組織に対してプラスの利益を誘導するのに十分な化合物及び組成物の量を意味する。プラスの利益は、本明細書に開示される利益を独立して又は組み合わせて含む、健康、外観、及び/又は感触の利益であり得る。有効量の化合物又は組成物は、エクスビボ及び/又はインビトロ法を使用して実証され得る。
【0016】
「~の外観を改善する」とは、皮膚の外観において測定可能な望ましい変化又は利益を提供することを意味し、例えば、発赤、炎症、及び/又は斑の鱗屑の減少によって、定量化することができる。
【0017】
「低pH」は、5.0未満(例えば、1.5~4.9、2.0~4.5、2.5~4.0又は3.5~4.0)のpHを意味する。組成物のpHを決定する好適な方法は、以下により詳細に記載される。
【0018】
「中性pH」とは、5.0~8.0のpHを意味する。
【0019】
「スキンケア」とは、皮膚状態の調節及び/又は改善を意味する。いくつかの非限定的な例としては、より滑らかで、より均一な外観及び/若しくは感触を提供することによって皮膚の外観及び/若しくは感触を改善することと、皮膚の1つ以上の層の厚さを増加させることと、皮膚の弾性又は弾力性を改善することと、皮膚のハリを改善することと、並びに皮膚の脂っぽい、てかてかした、及び/若しくはくすんだ外観を低減し、皮膚の水分量の状態若しくは保湿を改善し、小じわ及び/若しくはしわの外観を改善し、皮膚角質除去若しくは落屑を改善し、皮膚を膨化させ、皮膚バリア特性を改善し、皮膚の色合いを改善し、発赤若しくは皮膚のシミの外観を低減させ、及び/又は皮膚の明るさ、つや、若しくは透明感を改善することと、が挙げられる。
【0020】
「スキンケア活性物質」は、皮膚に塗布すると、皮膚又は皮膚の中に通常見られる細胞の一種に急性利益及び/又は長期的利益をもたらす、化合物又は化合物の組み合わせを意味する。スキンケア活性物質は、皮膚又はそれに関連する細胞を調節及び/又は改善する(例えば、皮膚の弾力性、肌水分量、皮膚のバリア機能、及び/又は細胞代謝を改善する)ことができる。
【0021】
「スキンケア組成物」は、スキンケア活性物質を含み、皮膚の状態を調節及び/又は改善する組成物を意味する。
【0022】
「相乗効果」及びその変形は、2つ以上の化合物、材料、及び/又は組成物の組み合わせによって提供される効果が、個別にそれらの各々に対する予想される効果よりも大きいことを意味する。例えば、相乗効果は、異なる濃度のビタミンB3化合物を有する2つの組成物からのビタミンB3化合物の予想を超える皮膚浸透によって実証され得る。
【0023】
本明細書で使用される「処置期間」は、材料又は組成物が標的皮膚表面に塗布される時間の長さ及び/又は頻度を意味する。
【0024】
「ビヒクル対照」は、対象とする特定の活性物質を含む(例えば、ビタミンB3化合物を含有しない)ことを除いて、試験組成物と同一である陰性対照を意味する。
【0025】
レジメン
本明細書の方法は、処置が望まれる皮膚の標的部分に少なくとも2つのスキンケア組成物を逐次的に塗布することを含む。第1のスキンケア組成物は、ナイアシンアミド、及び任意選択的に、化粧品スキンケア組成物で一般的に使用される他の成分を含む低pH組成物である。低pH組成物は、良好な感覚特性及び皮膚刺激が低いという能力を提供しながら、皮膚の健康又は外観上の利益を提供するように配合される。第2のスキンケア組成物は、低pH組成物の後に塗布される(例えば、30秒~5分後)。第2のスキンケア組成物は、低pH組成物よりも高い濃度のビタミンB3化合物を含み、任意選択的に、スキンケア組成物で一般的に使用される他の任意選択的成分を含む。第1及び第2の組成物について、以下でより詳細に記載する。本レジメンは、2つのスキンケア組成物を順番に塗布する文脈で説明されているが、方法は、低pH組成物の塗布後に、任意の数のスキンケア組成物を順番に塗布することを企図することを理解されたい。
【0026】
本方法は、処置を必要とする人の、又は処置が望まれる皮膚の標的部分(例えば、小じわ、しわ、乾燥肌、皮膚の色むら、色素沈着過度のシミなどの皮膚の老化の兆候を示す皮膚の部分)を特定することと、処置期間の過程にわたって皮膚の標的部分に有効量の第1及び第2のスキンケア組成物を塗布することと、を伴う。組成物の有効量は、使用者によって望まれる皮膚の利益、処置領域のサイズ、及び/又はスキンケア活性物質(例えば、ビタミンB3化合物)の濃度に基づいて変化し得る。場合によっては、有効量は、0.1g~5g(例えば、0.2g~4g、0.3g~2g、又は更には0.5g~1g)の範囲であってもよい。皮膚の標的部分は、額、口周囲、顎、眼窩周囲、鼻、及び/若しくは頬)などの顔の皮膚表面上、又は身体の別の部分(例えば、手、腕、脚部、背部、胸)にあってもよい。場合によっては、色素沈着過度のシミ又は皮膚の色むらなどの皮膚の老化の兆候を現在は示していないが、加齢と共にそのような特徴を一般に示す皮膚領域である皮膚の標的部分が選択されてもよい。これらの場合に、低pH組成物を使用して、このような望ましくない皮膚特徴の発生を防止するのを助けることができる。
【0027】
組成物は、処置期間中、処置を必要としている皮膚の標的部分に、必要に応じて周囲の皮膚に、少なくとも1日1回、1日2回、又は毎日それ超の頻度で局所的に塗布することができる。1日2回塗布する場合、1回目と2回目の塗布の間には、少なくとも1~12時間の間隔を空ける。組成物は典型的に、朝及び/又は夜就寝前に塗布される。本明細書の方法に従って使用される場合、本組成物は、例えば、皮膚のきめを改善することによって、皮膚の外観及び/又は機能を改善することができる。皮膚のきめの改善が、例えば、毛穴の大きさを減少させること、肌荒れを低減すること、しわの存在及び/又は大きさを低減すること、これらの組み合わせなどによってなされてもよい。
【0028】
処置期間は、理想的には、低pH組成物が皮膚の標的部分の外観及び/又は機能を改善するのに十分な時間である。処置期間は、典型的には、少なくとも1週間(例えば、約2週間、4週間、8週間、又は更には12週間)にわたって持続する。場合によっては、処置期間は、複数月(すなわち、3~12ヶ月)に及ぶ場合もある。場合によっては、少なくとも2週間、4週間、8週間、又は12週間の処置期間中に、週の大半の日(例えば、少なくとも週に4日、5日又は6日)に、少なくとも1日に1回又は更には1日に2回組成物を塗布する。
【0029】
本明細書における組成物を塗布するステップは、局所的塗布により行うことができる。組成物の塗布に関して、「局所的な」、「局所的」、又は「局所的に」という用語は、処置が望まれてない皮膚表面への送達を最小限にしつつ、組成物が標的領域(例えば、乾癬斑)に送達されることを意味する。本組成物は、ある皮膚領域に塗布し、軽く揉み込むことができる。組成物又は皮膚科学的に許容される担体の形態は、局所的塗布が容易となるように選択されるべきである。本明細書におけるある特定の実施形態は、組成物をある領域に局所的に塗布することを想到しているが、本明細書における組成物は、1つ以上の皮膚表面に更に全身的に又は広範に塗布され得ることが理解されよう。ある特定の実施形態において、本明細書における組成物は、多段階式美容レジメンの一部として使用してもよく、この多段階式美容レジメンでは、本組成物を1つ以上の他の組成物の前及び/又は後に塗布してもよい。
【0030】
低pH組成物
本明細書のスキンケア組成物は、皮膚の外観及び/又は機能を改善するためにヒトの皮膚に局所塗布することを目的とする低pH組成物である。場合によっては、本低pH組成物は、色素沈着過剰(例えば、加齢によるシミ)、皮膚の色むら、血色が悪い皮膚、皮膚のくすみ、紅斑、乾燥肌、皮脂分泌、きめの粗さ、小じわ、しわ、角化症、これらの組み合わせなどの様々な皮膚状態の化粧品(すなわち、非治療的)処置に使用され得る。場合によっては、低pH組成物は、色素沈着過度のシミ、皮膚の色むら、及び/又は血色が悪い皮膚の外観を改善するのに特に好適であり得る。
【0031】
低pH組成物は、有効量のビタミンB3化合物、低pH環境に耐えることができるポリマー増粘剤、塩/酸pH緩衝系(例えば、乳酸/乳酸ナトリウム及び/又はグリコール酸/グルコン酸ナトリウム)、及び任意選択的に、低分子量シリコーン油を含む。組成物は、任意選択的に、シリコーン乳化剤と、局所スキンケア組成物に一般的に見られる他の成分とを含んでもよい。理論に制限されるものではないが、この成分の組み合わせは、良好な感触特性を有し、皮膚に優しい有効なスキンケア組成物を提供すると考えられる。
【0032】
本明細書の低pH組成物は、当業者に既知の従来の方法を使用して、成分を皮膚科学的に許容可能な担体と混合することによって作製され得る。低pH組成物は、例えば、溶液、懸濁液、ローション、クリーム、ゲル、トナー、スティック、スプレー、エアロゾル、軟膏、クレンジングリキッド洗浄液及び固形バー、ペースト、フォーム、ムース、シェービングクリーム、拭き取り用品、ストリップ、パッチ、電動式パッチ、ヒドロゲル、フィルム形成製品、フェイシャル及びスキンマスク(不溶性シートを有するもの、及び有していないもの)などの様々な製品形態で提供され得る。組成物の形態は、選択された皮膚科学的に許容可能な特定の担体から得ることができる。場合によっては、本明細書の低pH組成物は、エッセンスの形態であってもよい。エッセンスは、典型的には従来のクリーム又はローションタイプのスキンケア組成物よりも粘度が低い、比較的濃縮された配合率の局所スキンケア組成物の形態である。場合によっては、エッセンスは、特定の皮膚状態を特に標的にするために販売されている、及び/又はスキンケアレジメンの最初のステップで使用される、低粘度の流体の形態で提供されてもよい。本明細書のエッセンス製品は、25℃で1センチポアズ(centipoise、cP)~30,000cP(例えば、50cP~10,000cP又は100cP~7,500cP、200cP~5,000cP、又は300cP~2,500cP)の絶対粘度を有し得る。本明細書の低pH組成物の粘度は、以下の方法のセクションに提供されるレオロジ法に従って決定することができる。
【0033】
少なくとも一部の消費者は、透明性と不透明性とのある特定のバランスを有するスキンケアエッセンスを望むことが見出されている。エッセンスが透明すぎると、水に似すぎてしまい、消費者が製品の効能に疑いを抱く可能性がある。しかし、エッセンスが不透明すぎると、消費者は、エッセンスに期待される軽く清潔な感触を製品が提供しないと考える可能性がある。したがって、本明細書の低pHエッセンス製品は、以下により詳細に記載される不透明度試験に従って、15~75(例えば、20~60、又は25~50)の不透明度を有する。場合によっては、低pHエッセンス中に存在する脂肪族アルコール及び鉱油などの炭化水素油については、これらの成分の量によりエッセンスの不透明度を不必要に増加させることがあるため、制限することが望ましい場合がある。したがって、炭化水素油を含まないか、又は実質的に含まない(例えば、3%、2%、1%、0.5%未満又は更には0%)低pHエッセンスを提供することが望ましい場合がある。好適な低pH組成物のいくつかの非限定的な例は、同時係属中の米国特許出願第16/891,491号に記載されている。
【0034】
ビタミンB3化合物
本組成物は、例えば、米国特許第5,939,082号に記載されているように、様々な皮膚状態を調節するための、安全かつ有効な量のビタミンB3化合物を含む。本明細書の組成物は、組成物の重量又は体積に基づいて、0.1重量%~10重量%(例えば、0.5重量%~5重量%又は1重量%~4重量%)のビタミンB3化合物を含み得る。
【0035】
本明細書で使用するとき、「ビタミンB3化合物」とは、以下の式を有する、
【0036】
【化1】
式中、
Rが、CONH
2(すなわち、ナイアシンアミド)、COOH(すなわち、ニコチン酸)、又はCH
2OH(すなわち、ニコチニルアルコール)である、化合物、それらの誘導体、及び上記のいずれかの塩を意味する。ビタミンB
3化合物の例示的な誘導体としては、ニコチン酸の非血管拡張性エステルを含む、ニコチン酸エステル(例えば、トコフェリルニコチネート、ミリスチルニコチネート)、ニコチンアミドリボシド、ニコチニルアミノ酸、カルボン酸のニコチニルアルコールエステル、ニコチン酸N-オキシド、及びナイアシンアミドN-オキシドが挙げられる。いくつかの例では、ナイアシンアミドなどのビタミンB
3化合物は、例えば、米国特許出願公開第2020/0009123号に記載されているように、比較的低いpHで改善された有効性を有し得る。
【0037】
場合によっては、ビタミンB3化合物の環窒素は、組成物中では、及び/又は標的皮膚表面への塗布前には、「複合体を形成していない」(例えば、化学的に結合していない、及び/又は非ヒンダードである)ことが望ましい場合がある。例えば、本明細書の組成物は、ビタミンB3化合物の塩又は複合体を含まないか、又は実質的に含まなくてもよい(すなわち、3%、2%、1%未満、又は更には0.5%未満)。望ましくない塩及び/又は複合体の形成を最小限に抑えるか又は防止する例示的なアプローチとしては、実質的に不可逆的な、又は他の望ましくない複合体を組成物中のビタミンB3化合物と形成する材料の除去、pH調節、イオン強度調節、界面活性剤の使用、並びに、ビタミンB3化合物及びこれと複合体を形成する材料が異なる相にある配合プロセスの実行が挙げられる。
【0038】
低pH緩衝系
皮膚への局所塗布用の低pH組成物を提供する場合、皮膚への塗布後に組成物のpHを維持するのを助ける緩衝系を含むことが重要である。平均して、ヒトの皮膚のpHは、典型的には約5.0~6.0の範囲である。このpHを維持するために、ヒトの皮膚は、pHの変化に抵抗する天然の緩衝系を進化させてきた。したがって、低pH組成物が皮膚に塗布されると、皮膚の天然の緩衝系は、組成物のpHを調整して皮膚の自然なpHと一致させようとする。低pH組成物は、緩衝系の添加なしでは所望のスキンケア利益を提供することができない場合がある。
【0039】
本明細書の低pH緩衝系は、酸緩衝剤を含む。スキンケア組成物に使用するための様々な酸が知られている。例えば、アルファヒドロキシ酸(例えば、クエン酸、グリコール酸、リンゴ酸、及び乳酸)、β-ヒドロキシ酸(例えば、サリチル酸及びプロパン酸)、並びにポリヒドロキシ酸(例えば、グルコン酸)は、角質除去剤として一般に使用される。しかしながら、一部の酸は他よりも強く、及び/又は、一部の人々は、ある特定の濃度の酸に対して他の人々よりも敏感である場合がある。これらの要因は両方とも、酸を含む低pH組成物によって引き起こされる皮膚刺激のリスクを高め得る。本明細書の酸緩衝剤としての使用に好適であり得る酸のいくつかの非限定的な例は、乳酸、グルコン酸、ラクトビオン酸、及び/又はマルトビオン酸である。乳酸及びグルコン酸は、他の酸と比較して、皮膚に比較的優しい傾向があるため(すなわち、皮膚刺激を引き起こす可能性が低いため)、特に好適であり得る。しかしながら、乳酸及びグルコン酸は、依然として、本組成物において所望の低pHを提供するのに十分に強い。加えて、乳酸及び/又はグルコン酸を含む組成物は、皮膚の利益を提供し得、皮膚の天然の水分係数を改善すること、及び/又はコラーゲン再生を刺激して皮膚の老化の目に見える兆候を改善するのを助けることなどの、追加の皮膚の利益を提供し得る。本明細書の低pH組成物は、0.5%~5%の好適な酸緩衝剤を含み得る。場合によっては、低pH組成物は、0.75%~4%、1%~3%、又は1.5%~2.5%の酸緩衝剤を含み得る。酸緩衝剤は、所望の酸に容易に変換する形態で添加され得ることが理解されるべきである。例えば、本組成物中のグルコン酸に容易に変換するグルコノデルタラクトン及び他のグルコン酸前駆体は、本発明の目的のためにグルコン酸とみなされる。
【0040】
本明細書の低pH緩衝系は、選択された酸緩衝剤に依存し得る好適な塩緩衝剤を含む。例えば、酸緩衝剤が乳酸である場合、乳酸ナトリウム、及び/又は酸緩衝剤がグルコン酸である場合、グルコン酸ナトリウムを使用することが望ましい場合がある。本明細書での使用に好適であり得る塩の他の非限定的な例としては、グルコン酸乳酸カルシウム、乳酸カリウム、乳酸亜鉛、及びグルコン酸カリウムから選択される追加の塩緩衝剤が挙げられる。塩緩衝剤は、組成物中の活性成分が皮膚に浸透するのに十分な時間を提供するために、組成物の所望の低pHを、皮膚への塗布時に、及びその後少なくとも1分間(例えば、塗布後5、10、15、30、60、又は更には120分間以上)にわたって維持するための緩衝剤の能力を提供するのに好適な任意の量で存在し得る。場合によっては、塩緩衝剤は、0.25%~4%(例えば、0.5%~3%、0.75%~2%、又は1%~1.75%)で低pH組成物中に存在し得る。場合によっては、塩緩衝剤は、酸対塩の重量比1:10~10:1で存在し得る。体内で自然に生じる形態であるため、L-エナンチオマー形態の酸及び/又は塩緩衝剤を使用することが望ましい場合がある。乳酸ナトリウムは、皮膚を保湿するのを助けるために保湿剤としても作用し得るため、塩緩衝剤としての使用に特に好適であり得る。当然ながら、本組成物は、スキンケア組成物での使用が知られている他のpH緩衝液を任意選択的に含んでもよいことが理解されるべきである。
【0041】
増粘剤
本明細書の低pH組成物は、低pHの電解環境に耐えることができるポリマー増粘剤を含む。すなわち、増粘剤は、酸塩緩衝系の存在下で、組成物を低pHで増粘又は安定化させる能力を失うことはない。いくつかの従来の中和された増粘剤は、より低いpHで、及び/又は酸塩緩衝剤(例えば、乳酸/乳酸ナトリウム及びグルコン酸/グルコン酸ナトリウム)の存在下では、劣化すること、及び/又は組成物を好適に増粘させる能力を失うことが知られている。例えば、一部の中和された増粘剤は低pH環境で劣化する。一方、セチルアルコール及びステアリルアルコールなどの脂肪族アルコール増粘剤は、一般に低pHで安定であるが、エッセンス、美容液などの形態である場合、組成物に望ましくない濁り又は不透明度を付与する傾向がある。ある特定のアニオン性ポリマー増粘剤は、低pH環境への好適な耐性を提供することができるが、酸と塩との組み合わせのために緩衝系に耐えることができないことも判明している。したがって、場合によっては、本明細書に記載の低pH組成物は、中和された増粘剤、脂肪族アルコール増粘剤、及びアニオン性増粘剤を含まないか又は実質的に含まなくてもよい。増粘剤は、組成物の0.0001重量%~25重量%(例えば、0.001重量%~20重量%、0.01重量%~10重量%、0.5重量%~7重量%、又は1重量%若しくは5重量%)で存在し得る。
【0042】
本明細書で、単独で又は組み合わせて使用され得る増粘剤又は水構造化剤の他の非限定的な例としては、天然ゴム又は合成ゴム、多糖類、カルボン酸ポリマー、ポリアクリルアミドポリマー、スルホン化ポリマー、及びこれらのコポリマーが挙げられる。更なる例としては、改質ガム、セルロース、及び超吸収性ポリマーが挙げられる。用語「超吸収性ポリマー」は、乾燥状態において、自重の少なくとも20倍の水性流体、具体的には水、特に蒸留水を自発的に吸収することができるポリマーを意味すると理解される。好適な多糖類としては、ヒドロキシプロピルメチルセルロースステアロキシエーテルなどのアルキルヒドロキシアルキルセルロースエーテルが挙げられる。この材料は、Daido Chemical Corp.からSANGELOSE 60L及び90Lの商標名で販売されている。別の好適な多糖類としては、ジャガイモ加工デンプンなどの疎水性改質デンプンが挙げられる。この材料は、NouryonからSTRUCTURE SOLANACEの商標名で販売されている。別のポリマーとしては、モノマーが、例えば、Clariantから商標名ARISTOFLEX SILKで販売されている、ポリアクリロイルジメチルタウリンナトリウムなどのアクリロイルジメチルタウレートモノマーから少なくとも部分的に構成される架橋ポリマーが挙げられる。
【0043】
ある特定のアニオン性ポリマー増粘剤は、低pH環境への好適な耐性、並びに望まれる感触及び不透明度を組成物に付与することができることがここで判明した。したがって、アニオン性増粘剤の特に好適な例は、Seppic,FranceからSEPIMAX ZENとして市販されているポリアクリレートクロスポリマー-6である。
【0044】
粘着性低減油
場合によっては、低pH組成物が皮膚の標的部分に塗布されるときに、アニオン性ポリマー増粘剤が望ましくない粘着感を与え得る。ある特定の油(例えば、低分子量の炭化水素又はシリコーン油)を添加すると、この粘着感を低減又は防止することができることが見出された。低分子量のシリコーン油は、消費者が炭化水素油よりも好む、滑らかで柔らかい感触を提供する傾向があるため、特に望ましい場合があり、これは時にはべたつきを感じ得る。シリコーン油の分子量は、シリコーン油の粘度にも正比例する、そのシリコーンポリマー鎖の長さに依存する。したがって、本低pH組成物での使用に好適な低分子量シリコーン油は、25℃で100cSt以下(例えば、1cSt~90cSt、5cSt~50cSt、又は更には10cSt~30cSt)の動粘度を有する。動粘度は、シリコーン油を分類する一般的な方法であり、材料の供給元から入手することができる。低分子量シリコーン油の特に好適な例は、5cStのジメチコン流体である。本明細書で使用される場合、「ジメチコン」とは、以下の式を有するポリジメチルシロキサン化合物を意味する。
【0045】
【0046】
第2のスキンケア組成物
本レジメンで使用するための第2のスキンケア組成物は特に限定されず、ビタミンB3 化合物を含む多種多様なスキンケア組成物を含むことができ、皮膚への局所適用に適している。第2のスキンケア組成物は、溶液、懸濁液、ローション、クリーム、ゲル、トナー、スティック、ペンシル、スプレー、エアロゾル、軟膏、クレンジングリキッド洗浄液(リンスオフ又はリーブオン)及び固形バー、フォーム、粉末、ムース、シェービングクリーム、拭き取り用品、ストリップ、パッチ、ヒドロゲル、フィルム形成製品、フェイシャル及びスキンマスク(不溶性シートを有するもの、及び有していないもの)、ファンデーション、アイライナー、及びアイシャドウなどのメークアップなどが挙げられるがこれらに限定されない、様々な製品形態で提供され得る。組成物の形態は、組成物中に存在する場合、選択される具体的な皮膚科学的に許容可能な担体から得ることができる。
【0047】
皮膚科学的に許容される担体
本明細書の低pH及び第2のスキンケア組成物は、皮膚科学的に許容される担体(「担体」)を含み得る。「皮膚科学的に許容される担体」なる語句は、担体がケラチン性組織への局所塗布に好適であり、良好な審美特性を有し、組成物中の活性物質と適合性を有し、安全性又は毒性について不当な懸念をいっさい生じさせないことを意味する。一実施形態において、担体は、組成物の約50重量%~約99重量%、約60重量%~約98重量%、約70重量%~約98重量%、又は代替的に約80重量%~約95重量%の濃度で存在する。
【0048】
担体は、多種多様な形態にあってよい。いくつかの場合には、構成成分(例えば、抽出物、日焼け止め活性物質、追加の構成成分)の溶解性又は分散性によって担体の形態及び特徴が決定され得る。非限定的な例としては、単純な溶液(例えば、水性又は無水)、分散液、エマルジョン、及び固体形態(例えば、ゲル、スティック、流動性固体、又は非晶質材料)が挙げられる。いくつかの場合には、皮膚科学的に許容される担体は、エマルジョンの形態にある。エマルジョンは、連続水相(例えば、水中油型若しくは水中油中水型エマルジョン)又は連続油相(例えば、油中水型若しくは油中水中油型エマルジョン)を有し得る。本発明の油相には、シリコーン油、炭化水素油、エステル、エーテルなどの非シリコーン油、及びこれらの混合物が含まれ得る。水相は、典型的には、水及び水溶性成分(例えば、水溶性保湿剤、コンディショニング剤、抗菌剤、湿潤剤、及び/又は他のスキンケア活性物質)を含む。しかしながら、いくつかの場合には、水相は、水溶性保湿剤、コンディショニング剤、抗菌剤、湿潤剤、及び/又は他の水溶性スキンケア活性物質が挙げられるが、これらに限定されない水以外の構成成分を含んでもよい。いくつかの場合には、組成物の非水構成成分は、グリセリン及び/又は他のポリオールなどの湿潤剤を含む。
【0049】
いくつかの場合には、本明細書における組成物は、軽くてべたつかない感覚的感触を提供する水中油型(「oil-in-water、O/W」)エマルジョンの形態である。本明細書における好適なO/Wエマルジョンは、組成物の50重量%超の連続水相を含み得、残部は分散油相であり得る。水相は、任意の水溶性及び/又は水混和性成分と共に水相の重量に基づいて、1%~99%の水を含み得る。これらの場合では、分散油相は、油性組成物の望ましくない感触効果を幾分か回避するのを助けるために、典型的には、組成物の30重量%未満(例えば、1重量%~20重量%、2重量%~15重量%、3重量%~12重量%、4重量%~10重量%、又は更には5重量%~8重量%)で存在する。油相は、1つ以上の揮発性及び/又は非揮発性油(例えば、植物油、シリコーン油、及び/又は炭化水素油)を含み得る。本組成物に使用するのに好適であり得る油のいくつかの非限定的な油の例は、米国特許第9,446,265号及び米国特許出願公開第2015/0196464号に開示されている。
【0050】
担体は、1つ以上の皮膚科学的に許容される親水性希釈剤を含有してもよい。本明細書で使用するとき、「希釈剤」としては、ビタミンB3化合物を分散、溶解、又は別の方法で組み込むことができる材料が挙げられる。親水性希釈剤としては、水、低級一価アルコール(例えば、C1~C4)、並びに低分子量グリコール及びポリオールなどの有機親水性希釈剤が挙げられ、これらには、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール(例えば、分子量200~600g/モル)、ポリプロピレングリコール(例えば、分子量425~2025g/モル)、グリセロール、ブチレングリコール、1,2,4-ブタントリオール、ソルビトールエステル、1,2,6-ヘキサントリオール、エタノール、イソプロパノール、ソルビトールエステル、ブタンジオール、エーテルプロパノール、エトキシル化エーテル、プロポキシル化エーテル、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0051】
乳化剤
本明細書の組成物がエマルジョン(例えば、水中油型エマルジョン)の形態にある場合、エマルジョンを安定化させる(すなわち、エマルジョンが相分離するのを防ぐ)ために乳化剤を含むことが望ましい場合がある。乳化剤は、組成物中に0.01%~10%(例えば、0.05%~5%、又は0.1%~2%)で存在し得る。乳化剤は、非イオン性であってもよく、アニオン性であってもよく、又はカチオン性であってもよい。場合によっては、乳化剤は、シリコーン乳化剤であってよい。本明細書で使用するのに好適であり得る乳化剤のいくつかの非限定的な例は、米国特許第3,755,560号、同第4,421,769号、及びMcCutcheon’s Detergents and Emulsifiers,North American Edition、317-324頁(1986)に開示されている。
【0052】
本明細書での使用に好適であり得る乳化剤のいくつかの他の非限定的な例としては、ポリグリコールのエーテル及び脂肪族アルコールのエーテル、ポリグリコールのエステル及び脂肪酸のエステル、ポリグリコールのエーテル及びグリコシル化された脂肪族アルコールのエーテル、ポリグリコールのエステル及びグリコシル化された脂肪酸のエステル、C12-30アルコールのエーテル及びグリセロール又はポリグリセロールのエーテル、C12-30脂肪酸のエステル及びグリセロール又はポリグリセロールのエステル、オキシアルキレン変性C12-30アルコールのエーテル及びグリセロール又はポリグリセロールのエーテル、スクロース又はグルコースを含むC1--230脂肪族アルコールのエーテル、スクロースのエーテル又はグルコースのエーテル、スクロースのエステル及びC1230脂肪酸のエステル、ペンタエリスリトールのエステル及びC12-30脂肪酸のエステル、ソルビトールのエステル及び/又はソルビタンのエステル及びC12 30脂肪酸のエステル、ソルビトールのエーテル及び/又はソルビタンのエーテル及びアルコキシル化ソルビタンのエーテル、ポリグリコールのエーテル及びコレステロールのエーテル、C12-30脂肪酸のエステル並びにソルビトール及び/又はソルビタンのアルコキシル化エーテルのエステル、並びにこれらの組み合わせが挙げられる。特に有用な種類の乳化剤は、ラウレス-1からラウレス-50(例えばラウレス-4)などのラウリルアルコールのポリエチレングリコールエーテルである。乳化剤の更に他の例としては、グリセロール、ポリグリセロール、スクロース、グルコース、又はソルビトールのエーテル;グリセロール、ポリグリセロール、スクロース、グルコース、又はソルビトールのエステル;及びこれらの混合物が挙げられる。他の特に有用な種類の乳化剤は、ポリソルベート20、ポリソルベート21及びポリソルベート40などのソルビトール及びソルビトール無水物のアルキルエステルである。
【0053】
シリコーン乳化剤は、本明細書での使用に好適であり得る。直鎖又は分岐鎖型シリコーン乳化剤もまた使用してもよい。特に有用なシリコーン乳化剤としては、KF-6011、KF-6012、KF-6013、KF-6015、KF-6015、KF-6017、KF-6043、KF-6028、及びKF-6038などのポリエーテル変性シリコーン、並びにKF-6100、KF-6104、及びKF-6105などのポリグリセロール化直鎖又は分岐鎖シロキサン乳化剤(全て信越化学工業製)が挙げられる。本明細書で使用するのに特に好適な乳化剤は、信越化学工業からKF-6011として販売されているPEG-11メチルエーテルジメチコンである。驚くべきことに、PEG-11メチルエーテルジメチコン乳化剤は、アニオン性ポリマー増粘剤の粘着感を更に低下させることによって、低pH組成物の全体的な感触を改善することが発見された。乳化剤は、0.1%~10%(例えば、1%~5%、又は2%~4%)の量で存在し得る。
【0054】
他の任意選択的成分
低pH及び第2のスキンケア組成物は、任意選択的に、化粧品組成物(例えば、着色剤、スキンケア活性物質、抗炎症剤、日焼け止め剤、乳化剤、緩衝液、レオロジ変性剤、これらの組み合わせなど)に一般的に使用される1つ以上の追加の成分を含んでもよく、但し、追加の成分は、本組成物によって提供される皮膚の健康上又は外観上の利益を望ましくなく変えるものではない。組成物中に組み入れられる場合、追加の成分は、過度の毒性、不適合性、不安定性、アレルギー反応などを示すことなく、ヒトの皮膚組織に接触させて使用するのに好適であることが必要である。追加活性物質のいくつかの非限定的な例としては、ビタミン、ミネラル、ペプチド及びペプチド誘導体、糖アミン、日焼け止め剤、オイルコントロール剤、微粒子、フラボノイド化合物、育毛調節剤、抗酸化剤及び/又は抗酸化剤前駆体、防腐剤、プロテアーゼ阻害剤、チロシナーゼ阻害剤、抗炎症剤、保湿剤、角質除去剤、皮膚美白剤、サンレスタンニング剤、潤滑剤、抗ニキビ活性物質、抗セルライト活性物質、キレート剤、しわのばし活性物質、抗萎縮活性物質、フィトステロール及び/又は植物ホルモン、N-アシルアミノ酸化合物、抗菌剤、並びに抗真菌剤が挙げられる。本明細書での使用に好適であり得るスキンケア組成物並びに追加の成分及び/又はスキンケア活性物質のいくつかの非限定的な例が、米国特許出願公開第2002/0022040号、同第2003/0049212号、同第2004/0175347号、同第2006/0275237号、同第2007/0196344号、同第2008/0181956号、同第2008/0206373号、同第2010/00092408号、同第2008/0206373号、同第2010/0239510号、同第2010/0189669号、同第2010/0272667号、同第2011/0262025号、同第2011/0097286号、同第2012/0197016号、同第2012/0128683号、同第2012/0148515号、同第2012/0156146号、及び同第2013/0022557号、並びに米国特許第5,939,082号、同第5,872,112号、同第6,492,326号、同第6,696,049号、同第6,524,598号、同第5,972,359号、及び同第6,174,533号に記載されている。
【0055】
存在する場合、任意選択的成分は、組成物の0.0001重量%~50重量%、0.001重量%~20重量%、又は更には、0.01重量%~10重量%(例えば、50重量%、40重量%、30重量%、20重量%、10重量%、5重量%、4重量%、3重量%、2重量%、1重量%、0.5重量%、又は0.1重量%)の量で含まれてもよい。
【0056】
方法
不透明度試験方法
この方法は、製品又は材料の不透明度を測定するために使用される。結果は百分率として報告され、百分率が高い程、サンプルの不透明度がより大きい。不透明度を測定する前に、試験組成物を、サンプル中に空気を導入しないように注意しながら、10,000rpmで1分間、S 25 N-25 F分散ツール(又は同等物)と共にUltra-turraxT25(IKA(Germany)製)を使用して試験するために粉砕する。2mmの光路(例えば、Konica Minolta製かのCM-A130長方形セル又は同等物)を提供する好適な透過率セルに十分な量の組成物を配置することによって、サンプルを調製する。この方法に使用される可視スペクトルにわたってCIE D65照明条件下で三刺激値CIE XYZをもたらすことができる好適な分光光度計を使用してサンプルの不透明度を測定する(例えば、Konica Minoltaから入手可能なCM-3600A分光光度計、又は同等物)。分光光度計を、2°のオブザーバ及びD65光源を用いて1931 CIEにより定義された三刺激XYZ値をもたらすように設定する。不透明度を計算するために2組の三刺激値が必要であり、1つは、白色背景の前での製品の2mmサンプルセルの値であり、もう1つは、黒色背景の前での値である。許容可能な白色背景としては、不透明カード(Opacity Card Form 2A,Leneta Company,Inc(Mahwah,NJ,USA)、又は等価物など)の白色部分が挙げられ、許容可能な黒色背景は、不透明カード(Opacity Card Form 2A,Leneta Company,Inc(Mahwah,NJ,USA)、又は等価物など)の黒色部分である。不透明度は、黒色背景を使用するY三刺激値を、白色背景を用いるY三刺激値で除した商に100%を乗じて計算することによって決定される。不透明度は、整数百分率刻みで報告される。
【0057】
レオロジ法
この方法は、BROOKFIELDブランドの粘度計(モデルDV2T又は同等品など)及び好適なスピンドル(RV4又は同等品など)を製造元の説明書に従って使用して、組成物又は材料の絶対粘度を測定する方法を提供する。当業者が製造元の推奨に従って適切なスピンドルを選択することができることを理解されたい。粘度計を較正した後、スピンドルを十分な量(例えば、スピンドルをスピンドルシャフト上の浸漬マークまで浸漬するのに十分な量)の試験サンプルに浸漬する。スピンドル回転速度を5rpmに設定し、粘度計を起動する。表示された粘度の読み取り値が安定するまで待つ(約10~30秒)。読み取り値が安定してから、10秒間隔で5回の読み取りを行う。5回の読み取り値の平均として粘度を計算する。
【実施例】
【0058】
実施例1-配合物
表1は、本明細書に記載される低pHスキンケア組成物の例を提供する。組成物を、スキンケア組成物を製造する従来の方法を使用して調製した。このような方法は、典型的には、加熱、冷却、真空の適用などを用いて又は用いずに、成分を1つ以上のステップで比較的均質な状態になるまで混合することを伴う。典型的には、エマルジョンは、最初に水相の材料を脂肪相の材料とは別に混合し、その後、2つの相を適宜組み合わせて所望の連続層を得ることにより調製される。好ましくは、組成物は、安定性(物理的安定性、化学的安定性、光安定性)、及び/又は活性材料の送達を最適化するように調製される。この最適化としては、pHの(すなわち、5未満への)調節、活性剤と複合体を形成して、それによる安定性又は送達に有害な影響を与え得る材料の排除(例えば混入鉄の排除)、複合体形成を防止する手法(例えば、適切な分散剤又は二重区画包装)の使用、適切な光安定性の手法(例えば、日焼け止め剤/日焼け防止剤の配合、不透明包装の使用)の使用などが挙げられ得る。
【0059】
本実施例で試験した組成物のpHを、平坦な表面電極/プローブ(例えばVWRカタログ20 No.89231-584)を装備したORIONブランド525A pH計(又は同等物)で測定した。pH計のプローブを、組成物の未希釈サンプルに直接浸漬した。
【0060】
【表1】
1信越化学工業から入手可能なKSG-16
2Ashland,Inc.から入手可能なCHRONOGEN YST
3Lucas Meyer Cosmeticsから入手可能なPROGELINE
4Seppicから入手可能なSEPIMAX ZEN
5信越化学工業から入手可能なKF-6011
*比較例
【0061】
【表2】
6Clariantから入手可能なARISTOFLEX SILK
7Ajinomoto OmniChemから入手可能なELDEW SL 205
【0062】
【表3】
8Evonikから入手可能なTEGO RENEWHA LACTO
9Evonikから入手可能なTEGO RENEWHA MALTO
10Jungbunzlauerから入手可能
11Corbion製のPURAMEX Zn
【0063】
実施例2-ビタミンB3化合物の改善された皮膚浸透
この実施例は、ナイアシンアミドの皮膚浸透を改善するための本レジメンの能力を実証する。この実施例では、低pH組成物(表1の実施例I)をエクスビボ皮膚サンプルに塗布し、続いて、第2のスキンケア組成物を塗布した。この試験で使用される第2の皮膚組成物は、Procter&Gamble Companyから市販の様々なスキンケア組成物を含んでいた。第2のスキンケア組成物の各々は、5%ナイアシンアミドを含む。第1の試験(以下の表2Aに要約)では、皮膚サンプルを分析して、角質層を通って表皮に浸透するナイアシンアミドの量を決定した。第2の試験(以下の表2Bに要約)では、皮膚サンプルを分析して、皮膚サンプル中に及び/又は皮膚サンプルを通って浸透したナイアシンアミドの総量を決定した。
【0064】
皮膚浸透法(Franz Cell)
局所塗布した配合物からのナイアシンアミドなどの活性物質のインビトロ皮膚浸透は、Franz拡散セルアッセイ(Franz,T.J.Percutaneous absorption.On the relevance of in vitro data.J.Invest.Dermatol.64:190-195,1975、Franz,et al.The use of excised human skin to assess the bioequivalence of topical products.Skin Pharmacol.Physiol.22:276-286,2009)を使用して決定することができる。Franz拡散セルアッセイは、皮膚の浸透の評価及び皮膚吸収安全性評価のために、スキンケア産業において広く使用されている。
【0065】
皮膚サンプルは、周囲条件で解凍された、分層ヒト死体皮膚から調製され、適切にサイズ決定された切片に切断され、37℃で維持された標準的な静的Franz型拡散セル(0.79cm2表面積)に取り付けられる。約5mlのレセプタ溶液を、各セルの底部のレセプタ区画に配置して、皮膚サンプル全体を通って浸透する任意のナイアシンアミドを収集する。レセプタ溶液は、1%ポリソルベート-20及び0.02%アジ化ナトリウムを含むリン酸緩衝生理食塩水(PBS-pH7.4)である。皮膚サンプルを2時間平衡化する。各処理群は、典型的には6つの複製物を有する。
【0066】
試験組成物を調製するために、試験組成物のアリコートを、約3μCi/300mgアリコートを含む14C-ナイアシンアミドでスパイクする。試験組成物アリコートを混合し、ULTIMA GOLDブランドの液体シンチレーションカクテル(liquid scintillation cocktail、LSC)(PerkinElmer(Boston)から入手可能)又は同等物及び好適な液体シンチレーションカウンタ(例えば、PerkinElmerから入手可能なTRI-CARB 2500 TRブランドの液体シンチレーションアナライザ)を使用して、3つ組の全放射活性についてアッセイする。
【0067】
皮膚サンプルを、容積型ピペットを使用して、5μLの試験組成物を局所投与する。製品を、ガラスロッドを使用して皮膚の表面上に穏やかに広げる(約0.79cm2)。2つ以上の製品のレジメンが試験される場合、塗布間に3分間隔がある。試験の終了時(投与後6時間)に、レセプタ溶液を収集し、各々の皮膚サンプルの表面を、PBS/Tween20を含浸したWhatman濾紙で2回、70%/30%エタノール/水を含浸した濾紙で1回拭い、吸収されなかった(残渣)製品を拭い取った。表皮を剥離によって真皮から分離し、次いで、表皮及び真皮切片を、0.50~1.25mLのSOLUENE-350(PerkinElmerから入手可能)中で、60℃で一晩溶解する。ナイアシンアミド皮膚浸透は、上記のように液体シンチレーション計数を使用して定量化される。シンチレーション計数は、表皮サンプル、真皮サンプル、及びレセプタ溶液で行われる。表皮皮膚浸透の量は、表皮サンプル(角質層を含む)から測定された蛍光の総量である。総浸透は、表皮サンプル、真皮サンプル、及びレセプタ区画から測定された蛍光の合計である。皮膚浸透データは、用量の%及び/又はug/cm2として表され得る。
【0068】
この実施例で行った皮膚浸透試験の結果を、表2A及び表2Bに要約し、
図1及び
図2に示す。ナイアシンアミド浸透の予想量は、皮膚の標的部分に塗布されたナイアシンアミドの総濃度にフィックの拡散の法則を適用することによって決定した。表2A及び表2Bで分かるように、レジメンは、各場合においてナイアシンアミドの浸透の予想外の増加を提供した。場合によっては、
図1及び
図2に示されるように、レジメンは、典型的には同じ濃度のナイアシンアミドを有する、したがって、浸透に対して同じ熱力学的ポテンシャルを有する組成物からのみ予想され倍率、添加剤皮膚浸透結果を更に提供した。しかしながら、表2BのOLAY REGENERIST CELLSCIENCE Anti-Aging Cream製品で分かるように、本低pH組成物をレジメンとして塗布した場合でも、全ての組成物がナイアシンアミドの皮膚浸透の予想外の増加を提供するものではない。
【0069】
【0070】
【0071】
実施例3-熱力学的ポテンシャル
この実施例は、本レジメンに従ってスキンケア製品を塗布することが、より低い皮膚浸透結果をもたらすこととなる理由について、定性的に示す。基本的な用語では、スキンケア組成物から皮膚に浸透するためのビタミンB3の熱力学的ポテンシャルは、組成物中のビタミンB3化合物の濃度に正比例する。言い換えれば、ビタミンB3化合物の熱力学的ポテンシャルは、ビタミンB3濃度対製品質量の比として表すことができる。また、異なる濃度のビタミンB3化合物の2つの組成物が、レジメン中に皮膚上で組み合わされた場合、希釈効果があり、これは、より高い濃度の組成物に対して、組み合わされた組成物の熱力学的ポテンシャルを減少させることとなる。この効果を以下の表3に要約し、これは実施例2からの試験組成物の測定された皮膚浸透に依存する。表3に示されるように、レジメンで塗布されたナイアシンアミドの皮膚浸透は、予想外に高い。
【0072】
【0073】
実施例4-不透明度
この実施例は、本低pH組成物の所望の不透明度を実証する。15~75の不透明度が概して望まれる。不透明度が15より低い場合、組成物は、かなり水のように見え、消費者はその有効性を疑問視する場合がある。しかし、不透明度が75を超える場合、消費者は、組成物が濃く、粘着性であり、及び/又は皮膚に浸透しないと想定し得る。本実施例では、組成物J、M、N、P、Q、R、S、及びTを試験した。加えて、従来のスキンケア組成物(C1)の不透明度も試験した。従来の組成物は、Deckner,et alの米国特許第5,968,528号の実施例1である。試験の結果を表4に要約する。表4で分かるように、油を完全に含まない組成物(すなわち、組成物J及びR)は、十分な不透明度を提供せず、油及び増粘剤、スキンケア活性物質、並びに/又は緩衝系の量のバランスを取るように調整されていない組成物は、組成物C1によって実証されるように、不透明すぎる場合がある。
【0074】
【0075】
実施例5-低刺激性
この実施例は、本低pH組成物の低刺激性を実証する。低pH組成物を、臨床試験、インビトロ細胞ベースアッセイ、及びインビボヒト試験で試験して、組成物の相対的な刺激可能性を決定した。
【0076】
臨床試験
上記の実施例3に記載の臨床試験の一部として、被験者に、皮膚に塗布された試験製品と関連する刺激性のレベルを評価するアンケートに記入するように求めた。アンケートは、被験者に、試験製品が「皮膚を刺激しない」ことに関して評価するように求めた。アンケートは、1)非常にそう思う;2)そう思う;3)ややそう思う;4)分からない;5)あまりそう思わない;6)そう思わない;及び7)まったくそう思わない、の7つの可能な選択肢を提供した。この実施例で使用した試験組成物は、表1の組成物G及びI並びに実施例3のビヒクル対照であった。4週目及び8週目の試験結果を以下の表5に要約する。「上位3」は、「非常にそう思う」、「そう思う」、「ややそう思う」と回答した被験者の百分率を指す。
【0077】
【0078】
4週目では、被験者の98%が、本発明の組成物が皮膚を刺激しなかったことに同意したのに対し、97%が、ビヒクル対照が皮膚を刺激しなかったことに同意した。8週目では、被験者の100%が、試験組成物が皮膚を刺激しなかったことに同意したのに対し、98%が、ビヒクル対照が皮膚を刺激しなかったことに同意した。したがって、この試験結果は、本発明の低pH組成物が使用者の皮膚を刺激することなく皮膚の外観を改善することができることを示唆している。
【0079】
インビトロ試験
この実施例のインビトロ部分は、試験組成物が市販のHEK293細胞において周知のTRPV1感覚レセプタを活性化する能力を調べる。TRP受容体(例えば、TRPA1、TRPV1、及びTRPM8)は、中枢神経系への熱感覚(すなわち、高温及び低温)の伝達に関与することが知られている感覚レセプタである。TRPV1はまた、かゆみ、灼熱感、疼痛、うずき、刺痛、及び炎症などの皮膚感覚刺激の誘発に関与すると考えられている。従来、ある材料又は組成物がTRPV1を活性化する能力を評価するため、特に、様々な消費者製品配合物の灼熱感、うずき、味覚及び/又は疼痛緩和効果を評価するために、特定のヒトTRPV1レセプタ発現細胞株が使用されてきた。この実施例では、HEK293細胞を、カルシウム結合色素であるFluo-4 AMで前処理し、FLIPR TETRAブランドの細胞スクリーニングシステム(Molecular Devices,LLCから入手可能)又は同等物を使用した高スループットの様式で、対照物質及び試験組成物で処理する。TRPV1イオンチャネルが活性化されると、カルシウムイオンが細胞に入り、Fluo-4色素に結合して蛍光シグナルを生成し、応答の定量化を可能にする。TRPV1活性化に関係しない非特異的なカルシウム動員の影響を低減するために、特定のTRPV1阻害剤/アンタゴニスト化合物の存在下及び不在下で配合応答を測定する。特定のアンタゴニストの存在下では、配合によるTRPV1レセプタ活性化の陽性シグナルが消失又は減少し、それによって、配合依存性のTRPV1活性化に起因するデータ収集の精度が向上する。
【0080】
TRPV1アッセイ
アッセイを開始するために、HEK293細胞を、10%のFBS、高グルコース、L-グルタミン、フェノールレッド、100ug/mlのG418、及びピルビン酸ナトリウムを含有するDMEM培地中で、33℃及び5%のCO2で4~5日間培養する(80~90%コンフルエント)(例えば、Sadofsky,L.R.らによるUnique Responses are Observed in Transient Receptor Potential Ankyrin 1 and Vanilloid 1 (TRPA1 and TRPV1)Co-Expressing Cells.Cells 2014,3,616-626を参照)。第2継代の細胞をPBSと共に組織培養容器から取り出し、分離した細胞を遠心分離器中で低速(800~1000rpm)で3分間遠心分離してペレットを形成する。PBS培地を除去し、細胞ペレットを4mLの増殖培地に再懸濁させる。25μLのPluronic F-127に溶解させた50μgのFluo-4 AMカルシウム色素を添加し、次いで、細胞を穏やかに振盪しながら室温で1時間インキュベートする。細胞を、45mLアッセイ緩衝液(1×HBSS、20mM HEPES)で3分間の低速遠心分離(800~1000rpm)により1回洗浄し、次いで、10mLのアッセイ緩衝液中に再懸濁させる。96ウェルの黒色平底プレートの各ウェルに100μLのアリコート(約15×104細胞)を分注する。プレートを室温で30分間静置し、次いで、細胞スクリーニングシステム(例えば、FLIPR TETRA又は等価物)を使用して、λex 488nm及びλem 514nmでベースライン蛍光を記録する。カプサイシン(350nM)を各プレートのアゴニスト対照として使用し、イオノマイシン(2uM)を陽性対照として使用する。
【0081】
試験サンプルを、アッセイ緩衝液(w/v)中の12X(配合率10.8%)ストックとして調製し、室温で1時間静置する。次いで、全てのサンプルを14,000rpmで3分間遠心分離する。遠心分離したサンプルから水相を取り出し、好適なチューブに入れ、アッセイ緩衝液で1:1に混合して6Xストックを作製する。分離した水相をカプサゼピンの12Xストック(最終濃度25uM)と1:1で混合することによって、TRPV1アンタゴニスト組成物を調製する。6Xサンプルをアッセイ緩衝液又はTRPV1アンタゴニストカプサゼピンの6Xストック(25uM)で1:3に希釈する。希釈した組成物20μLを96ウェルプレートウェルにトリプリケートで加え、配合率0.3%の最終希釈物を得る。
【0082】
アゴニスト対照応答のピーク時点までの各ウェルの最大蛍光値(典型的には40~50秒)を記録する。複製ウェルの値を平均し、次いでカプサイシンアゴニスト対照応答の百分率に変換する。各試験サンプル応答を、(平均試験サンプル応答)-(平均試験サンプル応答+アンタゴニスト)間の差として報告する。ゼロ未満の応答は、「応答なし」として報告される。表1の組成物M、N、及びQを、この実施例で試験した。以下の表6A及び表6Bに示される組成物も試験した。試験結果を、表6Cに要約し、
図3に示し、それは、とりわけ、本発明の組成物の乳酸/乳酸ナトリウム緩衝系が、比較例の低pH組成物よりも有意に少ないTRPV1活性化を示したことを示す。具体的には、本発明の組成物は、アゴニスト対照に対して10%未満のTRPV1活性化を示した。
【0083】
【表9】
1Symriseから入手可能なSYMDIOL 68
2Corbionから入手可能なPURAC HIPURE 90
3Corbionから入手可能なPURASAL S HQ-60
4Seppicから入手可能なSEPIMAX ZEN
5信越化学工業から入手可能なKF-6011P
【0084】
【表10】
1Corbionから入手可能なPURAC HIPURE 90
2Corbionから入手可能なPURASAL S HQ-60
3Jungbunzlauerから入手可能
4Seppicから入手可能なSEPIMAX ZEN
5信越化学工業から入手可能なKF-6011P
【0085】
【0086】
インビボ試験
この実施例のインビボ部分は、異なる緩衝系を使用した比較例の低pH配合物と比較して、本組成物の刺激性が低いことを示している。この試験は、25~54歳の女性被験者を使用した単一製品の盲検試験であった。被験者に、試験組成物約0.5g(すなわち、ポンプ1押し分)を1日2回(朝及び夜)、顔全体に塗布するように求めた。この試験で試験された組成物を、上記の表6Aに提供する。1週間の使用後、試験組成物が皮膚を刺激するかどうかを被験者に尋ねた。インビボ試験の結果を以下の表7に要約する。表7から分かるように、データは、本発明の実施例が2つの比較例に対して皮膚への刺激が少ないことを示唆している。
【0087】
【0088】
実施例/組み合わせ
1.ビタミンB3化合物の皮膚浸透を改善する方法であって、
皮膚の健康又は外観上の利益が望まれる皮膚の標的部分を特定することと、
低pHスキンケア組成物を皮膚の標的部分に塗布することであって、低pHスキンケア組成物が、第1の濃度のビタミンB3化合物を含む、塗布することと、
その後、第2のスキンケア組成物を皮膚の標的部分に塗布することであって、第2のスキンケア組成物が、第2の濃度のビタミンB3化合物を含み、第2の濃度が、第1の濃度よりも高い、塗布することと、を含む、方法。
2.低pH組成物が、約2.0~約5.0、好ましくは約2.5~約4.5、及びより好ましくは約3.0~約4.3のpHを有する、段落Aに記載の方法。
3.第2のスキンケア組成物が、約5.0~約8.0のpHを有する、先行する段落のいずれか1つに記載の方法。
4.ビタミンB3化合物が、ナイアシンアミド、ニコチン酸、ニコチニルアルコール、これらの誘導体、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、先行する段落のいずれか1つに記載の方法。
5.ビタミンB3化合物が、ナイアシンアミドである、段落Dに記載の方法。
6.低pH組成物が、約0.01重量%~約3重量%のビタミンB3化合物を含む、段落Dに記載の方法。
7.第2のスキンケア組成物が、約2重量%~約10重量%のビタミンB3化合物を含む、段落Dに記載の方法。
8.低pH緩衝系が、乳酸、グルコン酸、ラクトビオン酸、及びマルトビオン酸から選択される酸緩衝剤、並びに乳酸ナトリウム、グルコン酸ナトリウム、グルコン酸カルシウム、及びグルコン酸カリウムから選択される塩緩衝剤を更に含む、先行する段落のいずれか1つに記載の方法。
9.低pH組成物中のビタミンB3化合物対第2のスキンケア組成物中のビタミンB3化合物の重量%比が、約1:10~約3:4、好ましくは約1:5~約1:2である、先行する段落のいずれか1つに記載の方法。
10.低pH組成物が、
a)酸緩衝剤及び塩緩衝剤を含む約0.1%~5%のpH緩衝系と、
b)低pH耐性増粘剤を含む約0.1%~5%のポリマー増粘剤と、
c)25℃で100cSt以下の粘度を有する、約0.1%~10%の粘着性低減油と、を含む、先行する段落のいずれか1つに記載の方法。
11.粘着性低減油が、シリコーン油、好ましくはジメチコンである、段落Jに記載の方法。
12.低pH組成物が、約0.01%~約1%のシリコーン乳化剤を更に含む、先行する段落のいずれか1つに記載の方法。
13.第1及び第2のスキンケア組成物の少なくとも1つが、ビタミン、ミネラル、ペプチド、糖アミン、日焼け止め剤、オイルコントロール剤、フラボノイド化合物、抗酸化剤、プロテアーゼ阻害剤、チロシナーゼ阻害剤、抗炎症剤、保湿剤、角質除去剤、皮膚美白剤、抗ニキビ剤、しわのばし剤、フィトステロール、N-アシルアミノ酸化合物、抗菌剤、抗真菌剤、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、追加のスキンケア活性物質を含む、先行する段落のいずれか1つに記載の方法。
14.スキンケア組成物が、不透明度試験に従って、約15~約75、好ましくは約35~約60の不透明度を有する、先行する段落のいずれか1つに記載の方法。
15.低pH組成物が、TRPV1アッセイに従って、約10%未満、好ましくは約5%未満のTRPV1活性化を示す、先行する段落のいずれか1つに記載の方法。
16.低pH組成物が、25℃で約1cP~約30000cP、好ましくは約1000cP~約15000cPの粘度を有するスキンケアエッセンス製品である、先行する段落のいずれか1つに記載の方法。
17.処置期間にわたって低pHスキンケア組成物及び第2のスキンケア組成物を塗布することが、皮膚の標的部分に対する皮膚刺激をもたらさない、先行する段落のいずれか1つに記載の方法。
【0089】
本明細書に開示される寸法及び値は、列挙された正確な数値に厳密に限定されるものとして理解されるべきではない。その代わりに、特に指示がない限り、そのような寸法は各々、列挙された値とその値を囲む機能的に同等な範囲との両方を意味することが意図される。例えば、「40mm」として開示される寸法は、「約40mm」を意味することが意図される。
【0090】
相互参照される又は関連するあらゆる特許又は特許出願、及び本願が優先権又はその利益を主張する任意の特許出願又は特許を含む、本明細書に引用される全ての文書は、除外又は限定することを明言しない限りにおいて、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。いかなる文献の引用も、本明細書中で開示又は特許請求されるいかなる発明に対する先行技術であるとはみなされず、あるいはそれを単独で又は他の任意の参考文献(単数又は複数)と組み合わせたときに、そのようないかなる発明も教示、示唆又は開示するとはみなされない。更に、本文書における用語の任意の意味又は定義が、参照により組み込まれた文書内の同じ用語の任意の意味又は定義と矛盾する場合、本文書においてその用語に与えられた意味又は定義が適用されるものとする。
【0091】
本発明の特定の実施形態を例示及び説明してきたが、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく様々な他の変更及び修正を行うことができる点は当業者には明白であろう。したがって、本発明の範囲内にある全てのそのような変更及び修正を添付の特許請求の範囲に網羅することが意図される。