(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-18
(45)【発行日】2024-11-26
(54)【発明の名称】鞍乗型車両及び制御方法
(51)【国際特許分類】
B62J 50/21 20200101AFI20241119BHJP
B62M 9/16 20060101ALI20241119BHJP
【FI】
B62J50/21
B62M9/16 Z
(21)【出願番号】P 2023042292
(22)【出願日】2023-03-16
【審査請求日】2023-11-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】荒井 大
(72)【発明者】
【氏名】田中 政隆
【審査官】大野 明良
(56)【参考文献】
【文献】特開昭62-64687(JP,A)
【文献】実開昭62-79683(JP,U)
【文献】特開2015-59611(JP,A)
【文献】特開2009-51636(JP,A)
【文献】中国実用新案第202372348(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62J 1/00-99/00
B62M 1/00-29/02
F16H 7/00- 7/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動ユニットと、前記駆動ユニットの駆動力を駆動輪に伝達するチェーンと、を備えた鞍乗型車両であって、
前記駆動ユニットの出力軸の回転数を検知する検知部と、
所定の検知期間における前記検知部の検知結果が閾値を超えたかどうかを判定する判定部と、
前記判定部の判定結果に基づいて、前記チェーンの遊びの度合いに関する報知を行う報知部と、を有し、
前記所定の検知期間は、前記鞍乗型車両の停車状態において、前記駆動ユニットから前記チェーンへ駆動力が作用し始める期間である、
ことを特徴とする鞍乗型車両。
【請求項2】
前記駆動ユニットは、エンジンと、前記出力軸を含む変速機と、前記エンジンと前記変速機とを断接するクラッチと、を含み、
前記所定の検知期間は、前記鞍乗型車両が停車状態で、前記エンジンが作動中であり、前記変速機がニュートラルからインギアする期間である、
ことを特徴とする請求項1に記載の鞍乗型車両。
【請求項3】
前記報知部は、前記判定部により前記所定の検知期間における前記検知部の検知結果が前記閾値を超えたと判定された場合に、前記報知を行う、ことを特徴とする請求項1に記載の鞍乗型車両。
【請求項4】
前記所定の検知期間は、前記変速機がニュートラルから1速又は2速にインギアする期間である、ことを特徴とする請求項2に記載の鞍乗型車両。
【請求項5】
前記閾値は、前記変速機のインギアの変速段ごとに設定されている、ことを特徴とする請求項2に記載の鞍乗型車両。
【請求項6】
前記判定部は、
前記所定の検知期間における前記検知部の検知結果の最大値が前記閾値を超えたかどうかを判定し、
所定の中止条件が成立した場合は、前記所定の検知期間における前記検知部の検知結果の最大値が前記閾値を超えたかどうかの判定を中止する、
ことを特徴とする請求項1に記載の鞍乗型車両。
【請求項7】
前記所定の中止条件は、スロットル操作、クラッチ操作、及び、エンジンストールのうちの少なくとも1つを含む、ことを特徴とする請求項6に記載の鞍乗型車両。
【請求項8】
前記報知部は、前記判定部により前記所定の検知期間における前記検知部の検知結果が前記閾値を超えたと複数回判定した場合に、前記報知を行う、ことを特徴とする請求項1に記載の鞍乗型車両。
【請求項9】
駆動ユニットと、前記駆動ユニットの駆動力を駆動輪に伝達するチェーンと、を備えた鞍乗型車両であって、
前記駆動ユニットが含む回転体の回転数を検知する第1検知部と、
前記駆動輪の回転数を検知する第2検知部と、
前記鞍乗型車両の加減速が切り替わってから所定の期間における前記第1検知部の検知結果と前記第2検知部の検知結果との差分に基づく検出値が閾値を超えたかどうかを判定する判定部と、
前記判定部の判定結果に基づいて、前記チェーンの遊びの度合いに関する報知を行う報知部と、
を有する、ことを特徴とする鞍乗型車両。
【請求項10】
前記判定部は、前記差分の積分値のピーク値が前記閾値を超えたかどうかを判定する、ことを特徴とする請求項9に記載の鞍乗型車両。
【請求項11】
前記回転体は、前記駆動ユニットの出力軸である、ことを特徴とする請求項9に記載の鞍乗型車両。
【請求項12】
前記駆動ユニットは、エンジンと、変速機と、前記エンジンと前記変速機とを断接するクラッチと、を含み、
前記回転体は、前記エンジンの出力軸である、
ことを特徴とする請求項9に記載の鞍乗型車両。
【請求項13】
前記判定部は、前記変速機の各変速段のギアの遊び情報に基づいて、前記差分に基づく検出値が前記閾値を超えたかどうかを判定する、ことを特徴とする請求項12に記載の鞍乗型車両。
【請求項14】
前記判定部は、前記鞍乗型車両の加速度が正から負に切り替わるタイミング、又は、前記鞍乗型車両の加速度が負から正に切り替わるタイミングにおいて、前記差分に基づく検出値が前記閾値を超えたかどうかを判定する、ことを特徴とする請求項9に記載の鞍乗型車両。
【請求項15】
前記判定部は、所定の中止条件が成立した場合は、前記差分の積分値のピーク値が前記閾値を超えたかどうかの判定を中止する、ことを特徴とする請求項10に記載の鞍乗型車両。
【請求項16】
前記所定の中止条件は、前記鞍乗型車両の加減速の切り替わり、クラッチ操作、及び、変速機の変速段の切り替えのうちの少なくとも1つを含む、ことを特徴とする請求項15に記載の鞍乗型車両。
【請求項17】
前記報知部は、前記判定部により前記差分に基づく検出値が前記閾値を超えたと複数回判定した場合に、前記報知を行う、ことを特徴とする請求項9に記載の鞍乗型車両。
【請求項18】
駆動ユニットと、前記駆動ユニットの駆動力を駆動輪に伝達するチェーンと、を備えた鞍乗型車両の制御方法であって、
前記駆動ユニットの出力軸の回転数を検知する第1工程と、
所定の検知期間における前記第1工程の検知結果が閾値を超えたかどうかを判定する第2工程と、
前記第2工程の判定結果に基づいて、前記チェーンの遊びの度合いに関する報知を行う第3工程と、を有し、
前記所定の検知期間は、前記鞍乗型車両の停車状態において、前記駆動ユニットから前記チェーンへ駆動力が作用し始める期間である、
ことを特徴とする制御方法。
【請求項19】
駆動ユニットと、前記駆動ユニットの駆動力を駆動輪に伝達するチェーンと、を備えた鞍乗型車両の制御方法であって、
前記駆動ユニットが含む回転体の回転数を検知する第1工程と、
前記駆動輪の回転数を検知する第2工程と、
前記鞍乗型車両の加減速が切り替わってから所定の期間における前記第1工程の検知結果と前記第2工程の検知結果との差分に基づく検出値が閾値を超えたかどうかを判定する第3工程と、
前記第3工程の判定結果に基づいて、前記チェーンの遊びの度合いに関する報知を行う第4工程と、
を有する、ことを特徴とする制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鞍乗型車両及び制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動二輪車などの鞍乗型車両においては、コストや駆動ロスの観点から、駆動方式として、チェーンドライブ方式が多く採用されている。チェーンドライブ方式とは、エンジンの出力(駆動力)を、チェーンを介して、駆動輪(後輪)に伝達する駆動方式である。
【0003】
一方、チェーンドライブ方式が採用された自動二輪車では、チェーンのメンテナンスを定期的に行う必要がある。チェーンのメンテナンスには、チェーンの給油や清掃などに加えて、チェーンの遊び量(たるみ)の調整も含まれる。チェーンは、自動二輪車の長期的な使用によって伸びるため、チェーン外れを招く虞がある。従って、チェーンのメンテナンスでは、チェーンの伸びに応じて、チェーンの遊び量を調整することが特に重要となる。
【0004】
そこで、チェーンのたるみを検知するための技術が従来から提案されている(特許文献1参照)。特許文献1には、チェーンが一定以上近接した際に信号を出力するホール素子センサをスイングアームに取り付け、ホール素子センサから出力される信号に基づいて警報をライダ(ユーザ)に通知して、チェーンの遊び量の調整を促す技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示された技術では、チェーンの遊びを検知するホール素子センサなどの新たなデバイスが必要となるため、コストの増加の要因となる。
【0007】
本発明は、コストの増加を招くことなく、チェーンの遊び量を検知するのに有利な新たな技術を提供することを例示的目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一側面としての鞍乗型車両は、駆動ユニットと、前記駆動ユニットの駆動力を駆動輪に伝達するチェーンと、を備えた鞍乗型車両であって、前記駆動ユニットの出力軸の回転数を検知する検知部と、所定の検知期間における前記検知部の検知結果が閾値を超えたかどうかを判定する判定部と、前記判定部の判定結果に基づいて、前記チェーンの遊びの度合いに関する報知を行う報知部と、を有し、前記所定の検知期間は、前記鞍乗型車両の停車状態において、前記駆動ユニットから前記チェーンへ駆動力が作用し始める期間である、ことを特徴とする。
【0009】
本発明の別の側面としての鞍乗型車両は、駆動ユニットと、前記駆動ユニットの駆動力を駆動輪に伝達するチェーンと、を備えた鞍乗型車両であって、前記駆動ユニットが含む回転体の回転数を検知する第1検知部と、前記駆動輪の回転数を検知する第2検知部と、前記鞍乗型車両の加減速が切り替わってから所定の期間における前記第1検知部の検知結果と前記第2検知部の検知結果との差分に基づく検出値が閾値を超えたかどうかを判定する判定部と、前記判定部の判定結果に基づいて、前記チェーンの遊びの度合いに関する報知を行う報知部と、を有する、ことを特徴とする。
【0010】
本発明の更に別の側面としての制御方法は、駆動ユニットと、前記駆動ユニットの駆動力を駆動輪に伝達するチェーンと、を備えた鞍乗型車両の制御方法であって、前記駆動ユニットの出力軸の回転数を検知する第1工程と、所定の検知期間における前記第1工程の検知結果が閾値を超えたかどうかを判定する第2工程と、前記第2工程の判定結果に基づいて、前記チェーンの遊びの度合いに関する報知を行う第3工程と、を有し、前記所定の検知期間は、前記鞍乗型車両の停車状態において、前記駆動ユニットから前記チェーンへ駆動力が作用し始める期間である、ことを特徴とする。
【0011】
本発明の更に別の側面としての制御方法は、駆動ユニットと、前記駆動ユニットの駆動力を駆動輪に伝達するチェーンと、を備えた鞍乗型車両の制御方法であって、前記駆動ユニットが含む回転体の回転数を検知する第1工程と、前記駆動輪の回転数を検知する第2工程と、前記鞍乗型車両の加減速が切り替わってから所定の期間における前記第1工程の検知結果と前記第2工程の検知結果との差分に基づく検出値が閾値を超えたかどうかを判定する第3工程と、前記第3工程の判定結果に基づいて、前記チェーンの遊びの度合いに関する報知を行う第4工程と、を有する、ことを特徴とする。
【0012】
本発明の更なる目的又はその他の側面は、以下、添付図面を参照して説明される実施形態によって明らかにされるであろう。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、例えば、コストの増加を招くことなく、チェーンの遊び量を検知するのに有利な新たな技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一側面としての鞍乗型車両の左側面図である。
【
図3】
図1に示す鞍乗型車両の制御装置のブロック図である。
【
図4】チェーンの遊び量と変速機の出力軸の回転数との間にある相関関係の一例を示す図である。
【
図5】第1実施形態における検知処理を説明するためのフローチャートである。
【
図6】スロットル開度、エンジン出力、変速機の出力軸の回転数及び後輪の回転数のそれぞれの時間変化を示す図である。
【
図7】変速機の出力軸の遊び角と、チェーンの遊び量との間にある相関関係の一例を示す図である。
【
図8】第2実施形態における検知処理を説明するためのフローチャートである。
【
図9】スロットル開度、エンジン出力、エンジンの出力軸の回転数及び後輪の回転数のそれぞれの時間変化を示す図である。
【
図10】第3実施形態における検知処理を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。なお、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものでなく、また実施形態で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明に必須のものとは限らない。実施形態で説明されている複数の特徴のうち二つ以上の特徴が任意に組み合わされてもよい。また、同一若しくは同様の構成には同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0016】
図1は、本発明の一側面としての鞍乗型車両10の左側面図である。
図2は、
図1に示す鞍乗型車両10の上面図である。
図3は、
図1に示す鞍乗型車両10の制御装置のブロック図である。以下では、
図1及び
図2に示す矢印で示すように、鞍乗型車両10の全長方向を前後方向と称し、鞍乗型車両10幅方向を左右方向と称し、鞍乗型車両10の高さ方向を上下方向と称する場合がある。また、鞍乗型車両10を、単に、車両10と称する場合がある。車両10は、本実施形態では、ネイキッドタイプの自動二輪車であるが、本発明は、他の形式の自動二輪車を含む各種の鞍乗型車両にも適用可能である。
【0017】
車両10は、ダブルクレードル型の車体フレーム12を有する。車体フレーム12は、ヘッドパイプ14と、左右一対のメインフレーム16と、ダウンフレーム18と、を含む。左右一対のメインフレーム16は、ヘッドパイプ14から左右に分岐して緩やかに後ろ下がりで後方に延びた後、湾曲部16aを介して下方に延びている。ダウンフレーム18は、ヘッドパイプ14から左右に分岐してメインフレーム16の下方を、後ろ斜め下方に延びた後、湾曲部18aを介して略水平に後方に延び、メインフレーム16の後端部に接続される。
【0018】
車体フレーム12は、左右一対のシートフレーム20と、左右一対のピボットプレート22と、左右一対の補強ステー24と、を更に含む。左右一対のシートフレーム20は、左右一対のメインフレーム16の湾曲部16aの近傍から後方やや後ろ上がりに延びている。左右一対のピボットプレート22は、メインフレーム16の後端部の近傍に配置される。左右一対の補強ステー24は、メインフレーム16のピボットプレート22が設けられている付近から斜め後ろ上がりに延びてシートフレーム20に接続される。左右一対のピボットプレート22には、ピボット26が設けられている。
【0019】
左右一対のフロントフォーク28は、ヘッドパイプ14によって回転自在に軸支されている。左右一対のフロントフォーク28の上端には、トップブリッジ30aを介して、操舵用のハンドルバー32が取り付けられている。
【0020】
トップブリッジ30aには、スピードメータなど含むパネル部34が取り付けられている。パネル部34は、例えば、液晶パネルなどで構成され、車両10に関する各種情報(例えば、車両10の車速やエンジン40の回転数、ライダへの警告や報知など)を表示可能な表示装置として機能する。ヘッドパイプ14の前方には、車両10の前方を照射するヘッドライト36、及び、左右一対のフロントウインカ37が設けられている。前輪WFは、左右一対のフロントフォーク28によって回転自在に軸支されている。前輪WFの上部には、フロントフェンダ38が設けられている。
【0021】
メインフレーム16とダウンフレーム18との間には、エンジン40及び変速機42が設けられている。エンジン40は、例えば、単気筒の4ストローク・DOHC・エンジンで構成される。エンジン40は、吸気量を調整するスロットル52と、燃料を噴射する燃料噴射装置(インジェクタ)40bと、燃焼室内の混合気に着火する点火装置40cと、を含む。エンジン40の上方であって、メインフレーム16の前側上方には、エンジン40に供給される燃料を収容した燃料タンク44が取り付けられている。エンジン40には、排気管46が取り付けられている。排気管46には、マフラー48が接続されている。オイルクーラ50は、エンジン40の前方であって、ダウンフレーム18の前側に設けられている。エンジン40のスロットル52に供給される空気やスロットル52を通過してエンジン40に供給される空気を浄化するエアクリーナ54は、エンジン40の後方に設けられている。
【0022】
電動機41は、エンジン40に連結されている。電動機41は、エンジン40を始動するスタータとして機能するとともに、エンジン40で駆動されて電力を発生するオルタネータとしても機能する。
【0023】
変速機42は、クラッチ43を介してエンジン40の出力軸40A(クランク軸(回転体))と連結され、後輪WRに伝達されるエンジン40の回転を変速して出力する。変速機42は、ギアチェンジペダル88に対するライダのシフト操作に応じて、例えば、1速から6速のギア比と、ニュートラルとのいずれかの状態に切り替え可能な常時噛み合い式の変速機である。1速から6速のギア比のいずれかが選択されている状態は、インギアとも呼ばれる。ギアチェンジペダル88は、ライダが操作可能に左側のステップ64の前方に設けられたシフト操作子である。ライダが左側のステップ64に左足を置いて、ギアチェンジペダル88を左足で操作することで、変速機42の状態が切り替わる。クラッチ43は、例えば、湿式多板コイルスプリング式の手動クラッチである。クラッチ43は、エンジン40と変速機42との間の駆動力の伝達を接続又は遮断する。換言すれば、クラッチ43は、エンジン40と変速機42とを断接する機能を有する。
【0024】
左右一対のピボットプレート22には、ピボット26を介して、スイングアーム56が略上下方向に揺動自在に軸支されている。スイングアーム56の後端部上側とシートフレーム20との間には、リアクッション58が介装されている。スイングアーム56の後端には、駆動輪である後輪WRが回転可能に軸支されている。エンジン40で生成される駆動力は、変速機42及びチェーン60を介して、駆動輪である後輪WRに伝達される。左右一対のピボットプレート22には、後方に延びる左右一対のステップホルダ62が固定されている。左右一対のステップホルダ62の前部及び後部には、それぞれ、ライダ用のステップ64及び同乗者用のステップ66が左右に取り付けられている。
【0025】
燃料タンク44の後方、且つ、シートフレーム20の上部には、ライダ及び同乗者が着座する(跨る)ためのシート68が取り付けられている。シート68は、例えば、ライダが乗車するライダ用シート68aと、同乗者が乗車する同乗者用シート68bと、を含むタンデムシートである。シートフレーム20の後部には、同乗者が把持する左右一対のグラブバー70、及び、リアウインカ72が取り付けられている。シートフレーム20の後方には、リアフェンダ74が設けられている。リアフェンダ74には、テールランプ76が取り付けられている。
【0026】
図2に示すように、ハンドルバー32の右端側には、ハンドルバー32に対して回動可能に設けられたスロットルグリップ80が設けられている。スロットルグリップ80は、ライダが操作可能に設けられ、スロットル52の開度をライダが調整可能なスロットル操作子である。本実施形態において、スロットルグリップ80とスロットル52とは、メカニカルワイヤで物理的に連結されている。但し、スロットルグリップ80とスロットル52とを物理的に連結せずに、ライダのスロットル操作(アクセル操作)を電気信号に変換してスロットルを制御するスロットル・バイ・ワイヤ方式を採用してもよい。
【0027】
ハンドルバー32には、スロットルグリップ80の前方にブレーキレバー82が設けられている。ブレーキレバー82は、ライダが操作可能に設けられ、車両10の前輪WFに制動力を与える前輪ブレーキの作動を操作可能なブレーキ操作子である。ライダがブレーキレバー82を右手で操作することで、前輪WFに設けられた前輪ブレーキが作動し、前輪WFに制動力が与えられる。前輪ブレーキは、例えば、ディスクブレーキを含む。
【0028】
右側のステップ64の前方には、フットブレーキペダル84が設けられている。フットブレーキペダル84は、ライダが操作可能に設けられ、車両10の後輪WRに制動力を与える後輪ブレーキの作動を操作可能なブレーキ操作子である。ライダが右側のステップ64に右足を置いて、フットブレーキペダル84を右足で操作することで、後輪WRに設けられた後輪ブレーキが作動し、後輪WRに制動力が与えられる。後輪ブレーキは、例えば、ディスクブレーキを含む。
【0029】
また、ハンドルバー32には、ハンドルバー32の左端側の前方にクラッチレバー86が設けられている。クラッチレバー86は、ライダが操作可能に設けられ、クラッチ43の断続を操作可能なクラッチ操作子である。ライダがクラッチレバー86を引くと、クラッチ43は遮断状態となり、ライダがクラッチレバー86を離すと、クラッチ43は接続状態となる。
【0030】
本実施形態において、エンジン40、変速機42及びクラッチ43は、車両10の駆動ユニットとして構成されている。エンジン40で生成され、クラッチ43及び変速機42を介して出力される駆動力、即ち、駆動ユニットからの駆動力は、上述したように、チェーン60を介して、駆動輪である後輪WRに伝達される。チェーン60は、
図3に示すように、駆動ユニットの出力軸でもある変速機42の出力軸42A(カウンタ軸(回転体))に設けられた駆動スプロケット92と、後輪WRの車軸に設けられた従動スプロケット94との間に掛け渡されている。駆動スプロケット92及び従動スプロケット94は、チェーン60のリンクと噛み合うように設計された歯車状の駆動力伝達部材である。
【0031】
図3を参照して、車両10の制御装置について説明する。車両10は、制御ユニット(ECU)100を含む。制御ユニット100は、CPUに代表されるプロセッサ、半導体メモリなどの記憶デバイス、外部デバイスとの入出力インタフェース、センサ信号の処理回路、アクチュエータの駆動回路を含む。記憶デバイスには、プロセッサが実行するプログラムやプロセッサが処理に使用するデータなどが格納される。プロセッサや記憶デバイスは、複数設けられていてもよい。
【0032】
制御ユニット100は、センサ110~117の検知結果を取得して、エンジン40や電動機41を制御する。スロットル操作センサ110は、スロットルグリップ80に対するライダの操作を検知する検知部として機能する。スロットル操作センサ110は、スロットルグリップ80に設けられ、スロットルグリップ80の回動量を検知するセンサであってもよいし、スロットル52に設けられ、スロットル開度を検知するセンサであってもよい。クラッチ操作センサ111は、クラッチレバー86に対するライダの操作を検知する検知部として機能する。クラッチ操作センサ111は、クラッチレバー86に設けられ、クラッチレバー86が引かれたこと(遮断操作)を検知するセンサであってもよいし、クラッチ43に設けられ、クラッチ43のアームの回動を検知するセンサであってもよい。
【0033】
ブレーキ操作センサ112は、フットブレーキペダル84に対するライダの操作を検知する検知部として機能する。エンジン回転数センサ113は、エンジン40の出力軸40A(クランク軸)の回転数(回転速度)を検知する検知部として機能する。シフトポジションセンサ114は、変速機42の状態(1速から6速のいずれか、又は、ニュートラル)を検知する検知部として機能する。車速センサ115は、車両10の車速を検知する検知部として機能し、例えば、前輪WFの回転量を検知するセンサを含む。出力軸回転数センサ116は、変速機42の出力軸42A(カウンタ軸)の回転数(回転速度)を検知する検知部として機能する。後輪回転数センサ117は、駆動輪である後輪WRの回転数(回転速度)を検知する検知部として機能する。
【0034】
車両10では、長期的な使用や経時劣化などに起因してチェーン60が伸びると、チェーン60がたるんで駆動スプロケット92や従動スプロケット94から外れる現象、所謂、チェーン外れが発生する可能性が高まる。従って、チェーン外れが発生する前に、チェーン60のメンテナンス、例えば、チェーン60の遊び量の調整やチェーン60の交換を促すために、チェーン60の遊び(の度合い)に関する情報を報知することが好ましい。この際、チェーン60の遊び量を検知する技術が必要となるが、従来技術のように、チェーン60の遊びを検知するような新たなデバイスを追加することは、コストの増加の要因となる。
【0035】
そこで、以下の各実施形態において、新たなデバイスを追加することなく、車両10が備えている構成、即ち、
図1、
図2及び
図3を参照して説明した構成を用いて、チェーン60の遊び量を検知する技術について説明する。
【0036】
<第1実施形態>
第1実施形態では、変速機42の出力軸42Aの回転数を検知する出力軸回転数センサ116(の検知結果)を用いて、チェーン60の遊び量を検知する技術を説明する。
【0037】
本発明者らが鋭意検討した結果、車両10が停車状態で、エンジン40が作動中であり、変速機42がニュートラルからインギアする期間では、チェーン60の遊び量と変速機42の出力軸42Aの回転数との間に相関関係があることを見出した。このような相関がある理由は、チェーン60の遊び量の違いによって、変速機42の出力軸42Aが、出力軸42Aの遊び角の範囲内で揺り返し回転するからであると考えられる。なお、車両10が停車状態で、エンジン40が作動中であり、変速機42がニュートラルからインギアする期間とは、車両10の停車状態において、駆動ユニットからチェーン60へ駆動力が作用し始める期間である。
【0038】
そこで、チェーン60の遊び量を30mm、70mmに設定し、それぞれの場合について、変速機42の出力軸42Aの回転数を出力軸回転数センサ116で検知すると、
図4に示す検知結果が得られた。
図4には、車両10が停車状態で、エンジン40が作動中であり、変速機42がニュートラルから1速にインギアする期間における出力軸回転数センサ116の検知結果を示している。また、
図4では、横軸が変速機42の出力軸42Aのピーク回転数を示し、縦軸が変速機42の出力軸42Aのピーク回転数の発生回数を示している。
【0039】
図4を参照するに、チェーン60の遊び量が大きくなるほど、変速機42の出力軸42Aに高い回転数(回転速度(角速度))が生じる頻度が増加しており、チェーン60の遊び量と変速機42の出力軸42Aの回転数との間には、正の相関があることがわかる。このように、チェーン60の遊び量(の違い)は、変速機42の出力軸42Aの回転数(の違い)として現れる。車両10が停車状態で、エンジン40が作動中であり、変速機42がニュートラルからインギアする期間における出力軸回転数センサ116の検知結果から、チェーン60の遊び量を検知することが可能である。
【0040】
以下、
図5を参照して、第1実施形態におけるチェーン60の遊び量の検知に関する処理例(検知処理)について説明する。かかる検知処理は、制御ユニット100のプロセッサによって実行される。
【0041】
S1002では、車両10が停車状態であるかどうかを判定する。具体的には、まず、車速センサ115、出力軸回転数センサ116及びスロットル操作センサ110のそれぞれから検知結果を取得する。そして、車速センサ115で検知された車速が0、且つ、出力軸回転数センサ116で検知された変速機42の出力軸42Aの回転数が0、且つ、スロットル操作センサ110で検知されたスロットル開度が0であるかどうかを判定する。これらの全てが0である場合には、車両10が停車状態であると判定して、S1004に移行する。一方、これらの全てが0でない場合(1つでも0でないものがある場合)には、車両10が停車状態でないと判定して、検知処理を終了する。
【0042】
S1004では、エンジン40が作動中(アイドリング中)であるかどうかを判定する。具体的には、まず、エンジン回転数センサ113から検知結果を取得する。そして、エンジン回転数センサ113で検知されたエンジン40の出力軸40Aの回転数が0でなく、且つ、所定の回転数(アイドリングに対応する回転数)以下であるかどうかを判定する。エンジン回転数センサ113で検知されたエンジン40の出力軸40Aの回転数が0でなく、且つ、所定の回転数以下である場合には、エンジン40が作動中(アイドリング中)であると判定して、S1006に移行する。一方、これらを満たしていない場合には、エンジン40が作動中(アイドリング中)でないと判定して、検知処理を終了する。
【0043】
S1006では、変速機42がニュートラルからインギアしたかどうかを判定する。具体的には、クラッチ操作センサ111及びシフトポジションセンサ114のそれぞれから検知結果を取得する。そして、これらの検知結果から、インギア操作が行われたかどうか、即ち、クラッチレバー86が引かれた状態(クラッチ43が遮断状態)で、シフト操作により変速機42の状態がニュートラルから1速又は2速に切り替えられたかどうかを判定する。このようなインギア操作が行われている場合には、変速機42がニュートラルからインギアしたと判定して、S1008に移行する。一方、このようなインギア操作が行われていない場合には、変速機42がニュートラルからインギアしていないと判定して、検知処理を終了する。
【0044】
S1008では、変速機42がニュートラルからインギアしてから(インギア操作が行われてから)一定期間において、変速機42の出力軸42Aの回転数をモニタして取得する。換言すれば、所定の検知期間における出力軸回転数センサ116の検知結果、即ち、所定の検知期間中に出力軸回転数センサ116で検知される変速機42の出力軸42Aの回転数を取得する。なお、本実施形態では、所定の検知期間における出力軸回転数センサ116の検知結果の最大値である変速機42の出力軸42Aの回転数の最大値を特定(抽出)し、例えば、制御ユニット100の記憶デバイスに記憶する。
【0045】
S1010では、変速機42がニュートラルからインギアしてから一定期間(所定の検知期間)中に、スロットル操作、クラッチ操作(クラッチ43を接続状態とする操作)、又は、エンジンストールがあったかどうかを判定する。これらの判定は、スロットル操作センサ110、クラッチ操作センサ111及びエンジン回転数センサ113のそれぞれから得られる検知結果に基づいて行うことが可能である。スロットル操作、クラッチ操作、又は、エンジンストールがない場合には、S1012に移行する。一方、スロットル操作、クラッチ操作、又は、エンジンストールがあった場合には、検知処理を終了する。
【0046】
S1012では、S1008で取得(記憶)された変速機42の出力軸42Aの回転数の最大値が閾値を超えているかどうかを判定する。このように、本実施形態において、制御ユニット100(のプロセッサ)は、所定の検知期間における出力軸回転数センサ116の検知結果が閾値を超えたかどうかを判定する判定部として機能する。変速機42の出力軸42Aの回転数の最大値が閾値を超えている場合には、S1014に移行する。一方、変速機42の出力軸42Aの回転数の最大値が閾値を超えていない場合には、S1016に移行する。
【0047】
ここで、閾値には、チェーン60の遊び量と変速機42の出力軸42Aの回転数との間の相関関係に基づいて、チェーン外れが発生しない範囲内でチェーン60に許容される遊び量に対応する、変速機42の出力軸42Aの回転数を設定する。従って、変速機42の出力軸42Aの回転数(の最大値)が閾値を超えている場合には、チェーン60の遊び量がチェーン60に許容される遊び量を超えている(一定量以上となっている)ため、チェーン外れが発生する可能性が高いと考えられる。一方、変速機42の出力軸42Aの回転数(の最大値)が閾値を超えていない場合には、チェーン60の遊び量がチェーン60に許容される遊び量の範囲内であるため、チェーン外れが発生する可能性は低いと考えられる。
【0048】
S1014では、上述したように、チェーン外れが発生する可能性が高いと考えられるため、チェーン60の遊び量(チェーン60の遊びの度合い)に関する報知を行うかどうかを判定(決定)するためのカウンタをインクリメントする。例えば、カウンタの数値に1を加算する。
【0049】
S1016では、上述したように、チェーン外れが発生する可能性が低いと考えられるため、チェーン60の遊びの度合いに関する報知を行うかどうかを判定するためのカウンタをリセットする。例えば、カウンタの数値を0にする。
【0050】
S1018では、今回のドライビングサイクルにおいて、チェーン60の遊びの度合いに関する報知を行うかどうかを判定するためのカウンタの数値が所定の値を超えているかどうかを判定する。なお、ドライビングサイクルとは、車両10のイグニッションをオンにしてからオフにするまでの1回のサイクルを意味する。カウンタの数値が所定の値を超えている場合には、S1020に移行する。一方、カウンタの数値が所定の値を超えていない場合には、検知処理を終了する。
【0051】
S1020では、チェーン60のメンテナンス(チェーン60の遊び量の調整やチェーン60の交換)を促すために、チェーン60の遊び量(チェーン60の遊びの度合い)に関する報知を行う。例えば、
図4に示すようなチェーン60の遊び量と変速機42の出力軸42Aの回転数との相関関係を示す情報を参照して、S1008で取得された変速機42の出力軸42Aの回転数(の最大値)に対応するチェーン60の遊び量を求める。そして、このようにして求められたチェーン60の遊び量をパネル部34に表示する。また、S1008で取得された変速機42の出力軸42Aの回転数(の最大値)に対応するチェーン60の遊び量を求めずに、チェーン60のメンテナスが必要であることを警告する警告灯をパネル部34に表示(点灯)させてもよい。このように、本実施形態において、制御ユニット100(のプロセッサ)は、パネル部34を介して、S1012及びS1014の判定結果に基づいて、チェーン60の遊びの度合いに関する報知を行う報知部として機能する。
【0052】
以上説明したように、本実施形態では、変速機42の出力軸42Aの回転数を検知する出力軸回転数センサ116(の検知結果)を用いて、チェーン60の遊び量を検知する。そして、所定の検知期間における出力軸回転数センサ116の検知結果が閾値を超えたかどうかの判定結果に基づいて、チェーン60の遊びの度合いに関する報知を行う。従って、チェーン60の遊びを検知するような新たなデバイスが不要であり、コストの増加を招くことなく、チェーン60の遊び量を検知するのに有利な新たな技術を提供することができる。
【0053】
また、本実施形態では、車両10が停車状態で、エンジン40が作動中であり、変速機42がニュートラルからインギアする期間における出力軸回転数センサ116の検知結果からチェーン60の遊び量を検知している。かかる期間では、変速機42の出力軸42Aの回転数の変化が大きくなるため、出力軸回転数センサ116の検知結果から得られるチェーン60の遊び量の検知精度を向上させることができる。なお、変速機42がニュートラルからインギアする期間を、例えば、ニュートラルから1速又は2速にインギアする期間とすることで、チェーン60の遊び量を検知する機会(回数)を増やすことが可能となる。
【0054】
また、本実施形態では、所定の検知期間における出力軸回転数センサ116の検知結果が閾値を超えたと判定された場合に、チェーン60の遊びの度合いに関する報知を行う。これにより、チェーン外れが発生する可能性が低いにもかかわらず、チェーン60の遊びの度合いに関する報知が行われることを抑制し、ライダに対して、チェーン60のメンテナスが必要であることを促すような報知を適切なタイミングで行うことができる。
【0055】
なお、所定の検知期間における出力軸回転数センサ116の検知結果と比較する閾値は、変速機42のインギアの変速段ごとに設定されていることが好ましい。これにより、変速機42のインギアの変速段に応じて、チェーン60の遊び量がチェーン60に許容される遊び量の範囲内であるかを精密に判定することが可能となり、チェーン60の遊びの度合いに関する報知をより適切なタイミングで行うことができる。
【0056】
また、本実施形態では、スロットル操作、クラッチ操作、及び、エンジンストールのうちの少なくとも1つを含む所定の中止条件が成立した場合には、所定の検知期間における出力軸回転数センサ116の検知結果が閾値を超えたかどうかの判定を中止している。上述したような所定の中止条件が成立した場合には、出力軸回転数センサ116の検知結果からチェーン60の遊び量を高精度に求めることができない。このような場合には、出力軸回転数センサ116の検知結果が閾値を超えたかどうかの判定を中止することで、ライダに対して、チェーン60の遊びの度合いに関する報知が不要に行われることを抑制することができる。
【0057】
また、本実施形態では、所定の検知期間における出力軸回転数センサ116の検知結果が閾値を超えたと複数回判定した場合に、チェーン60の遊びの度合いに関する報知を行う。これにより、チェーン60の遊び量がチェーン60に許容される遊び量の範囲内であるかをより精密に判定し、ライダに対して、チェーン60の遊びの度合いに関する報知をより適切なタイミングで行うことが可能となる。但し、本実施形態は、所定の検知期間における出力軸回転数センサ116の検知結果が閾値を超えたと1回判定した場合に、チェーン60の遊びの度合いに関する報知を行うことを排除するものではない。
【0058】
<第2実施形態>
第2実施形態では、変速機42の出力軸42Aの回転数を検知する出力軸回転数センサ116(の検知結果)と、後輪WRの回転数を検知する後輪回転数センサ117(の検知結果)とを用いて、チェーン60の遊びを検知する技術を説明する。
【0059】
本発明者らが鋭意検討した結果、車両10が走行状態で、加減速が切り替わった時点から所定の期間では、チェーン60の遊び量と、変速機42の出力軸42Aの回転数と後輪WRの回転数との差分(回転差)との間に相関関係があることを見出した。このような相関がある理由は、チェーン60の遊び量(の違い)が、変速機42の出力軸42Aの回転数と後輪WRの回転数とが一致するまでの時間差として、出力軸42Aの遊び角で現れるからであると考えられる。
【0060】
例えば、チェーン60に遊びがない場合には、エンジン40で生成された駆動力(エンジン出力)が、変速機42の出力軸42Aから後輪WRに直ちに伝達される。従って、変速機42の出力軸42Aの回転数と後輪WRの回転数とが一致するまでの時間差は、ほぼ0となる。一方、チェーン60に遊びがある場合には、エンジン40で生成された駆動力(エンジン出力)が、変速機42の出力軸42Aから後輪WRに伝達されるまでに、チェーン60の遊びに応じた時間差が生じる。従って、
図6に示すように、変速機42の出力軸42Aの回転数と後輪WRの回転数とが一致するまでに、チェーン60の遊びに応じた時間差が生じることになる。
図6は、スロットル開度、エンジン出力、変速機42の出力軸42Aの回転数及び後輪WRの回転数のそれぞれの時間変化を示す図である。なお、
図6では、後輪WRの回転数は、変速機42の出力軸42Aでの回転数に変換(レシオ変換)した変換値を示しており、以下では、後輪WRの回転数は、変速機42の出力軸42Aへの変換値を指すものとする。
【0061】
本実施形態では、変速機42の出力軸42Aの回転数と後輪WRの回転数との差分(回転差)を積分して積分値を求め、かかる積分値を、変速機42の出力軸42Aの遊び角とする。また、変速機42の出力軸42Aの遊び角と、チェーン60の遊び量との間には、
図7に示すように、正の相関がある。
図7は、変速機42の出力軸42Aの遊び角とチェーン60の遊び量との間にある相関関係の一例を示す図である。
図7では、縦軸がチェーン60の遊び量を示し、横軸が変速機42の出力軸42Aの遊び角(変速機42の出力軸42Aと後輪WRとの回転差の積分値)、即ち、回転差に基づく検出値を示している。従って、出力軸回転数センサ116の検知結果と後輪回転数センサ117の検知結果との差分から(即ち、かかる差分をチェーン60の遊び量に換算することで)、チェーン60の遊び量を検知することが可能である。
【0062】
以下、
図8を参照して、第2実施形態におけるチェーン60の遊び量の検知に関する処理例(検知処理)について説明する。かかる検知処理は、制御ユニット100のプロセッサによって実行される。
【0063】
S2002では、車両10が、チェーン60の遊び量が検出可能な走行状態であるかどうかを判定する。具体的には、まず、クラッチ操作センサ111及び車速センサ115のそれぞれから検知結果を取得する。そして、これらの検知結果から、クラッチ操作が行われていない、且つ、車速が一定速度以上であるかどうかを判定する。クラッチ操作が行われていない、且つ、車速が一定速度以上である場合には、車両10が、チェーン60の遊び量が検出可能な走行状態であると判定して、S2004に移行する。一方、これらを満たしていない場合には、車両10が、チェーン60の遊び量が検出可能な走行状態でないと判定して、検知処理を終了する。
【0064】
S2004では、車両10の加減速が切り替わったかどうかを判定する。具体的には、まず、スロットル操作センサ110及びエンジン回転数センサ113のそれぞれから検知結果を取得する。そして、これらの検知結果から、エンジン出力が正から負又は負から正に切り替わったかを判定する。エンジン出力が正から負又は負から正に切り替わった場合には、車両10の加減速が切り替わったと判定して、S2005に移行する。一方、エンジン出力が正から負又は負から正に切り替わっていない場合には、車両10の加減速が切り替わっていないと判定して、検知処理を終了する。
【0065】
S2005では、車両10の加減速が切り替わったことをトリガーとして、タイマーをスタートさせる。換言すれば、車両10の加減速が切り替わった時点(時刻)からの経過時間を計測する(計時を開始する)。
【0066】
S2006では、変速機42の出力軸42Aの回転数、及び、後輪WRの回転数のそれぞれをモニタして取得する。換言すれば、出力軸回転数センサ116の検知結果、即ち、出力軸回転数センサ116で検知される変速機42の出力軸42Aの回転数、及び、後輪回転数センサ117の検知結果、即ち、後輪回転数センサ117で検知される後輪WRの回転数を取得する。
【0067】
S2008では、S2006で取得された変速機42の出力軸42Aの回転数と後輪WRの回転数との差分を積分して積分値(変速機42の出力軸42Aの遊び角)を取得する。
【0068】
S2010では、S2004で車両10の加減速が切り替わったと判定した後、所定の時間が経過する前に、再度、車両10の加減速の切り替わり、クラッチ操作、又は、変速機42の変速段の切り替えがあったかどうかを判定する。これらの判定は、スロットル操作センサ110、エンジン回転数センサ113、クラッチ操作センサ111及びシフトポジションセンサ114のそれぞれから得られる検知結果に基づいて行うことが可能である。車両10の加減速の切り替わり、クラッチ操作、又は、変速機42の変速段の切り替えがない場合には、S2012に移行する。一方、車両10の加減速の切り替わり、クラッチ操作、又は、変速機42の変速段の切り替えがあった場合には、検知処理を終了する。
【0069】
S2012では、車両10の加減速が切り替わってから、所定の時間が経過しているかを判定する。所定の時間が経過していない場合には、S2008に移行する。一方、所定の時間が経過している場合には、S2014に移行する。
【0070】
S2014では、S2008で取得された変速機42の出力軸42Aの回転数と後輪WRの回転数との差分の積分値のピーク値を特定(抽出)し、変速機42の出力軸42Aの遊び角として、例えば、制御ユニット100の記憶デバイスに記憶する。
【0071】
S2016では、S2014で記憶した変速機42の出力軸42Aの回転数と後輪WRの回転数との差分の積分値のピーク値、即ち、変速機42の出力軸42Aの遊び角から、チェーン60の遊び量を求める。例えば、
図7に示すような変速機42の出力軸42Aの遊び角とチェーン60の遊び量との相関関係を示す情報を参照して、S2014で記憶された変速機42の出力軸42Aの遊び角に対応するチェーン60の遊び量を求める。
【0072】
S2018では、S2016で求められたチェーン60の遊び量に移動平均処理を施して、チェーン60の遊び量の移動平均を求める。
【0073】
S2020では、S2018で求めたチェーン60の遊び量の移動平均が閾値を超えているかどうかを判定する。換言すれば、本実施形態において、制御ユニット100は、車両10の加減速が切り替わってから所定の期間における出力軸回転数センサ116の検知結果と後輪回転数センサ117の検出結果との差分の積分値が閾値を超えたかどうかを判定する判定部として機能する。チェーン60の遊び量の移動平均が閾値を超えている場合には、S2022に移行する。一方、チェーン60の遊び量の移動平均が閾値を超えていない場合には、S2024に移行する。
【0074】
ここで、閾値には、チェーン外れが発生しない範囲内でチェーン60に許容される遊び量を設定する。従って、チェーン60の遊び量の移動平均が閾値を超えている場合には、チェーン60の遊び量がチェーン60に許容される遊び量を超えている(一定量以上となっている)ため、チェーン外れが発生する可能性が高いと考えられる。一方、チェーン60の遊び量の移動平均が閾値を超えていない場合には、チェーン60の遊び量がチェーン60に許容される遊び量の範囲内であるため、チェーン外れが発生する可能性は低いと考えられる。
【0075】
S2022では、チェーン60のメンテナンス(チェーン60の遊び量の調整やチェーン60の交換)を促すために、チェーン60の遊び量(チェーン60の遊びの度合い)に関する報知を行う。例えば、S2016で求められたチェーン60の遊び量、或いは、S2018で求められたチェーン60の遊び量の移動平均をパネル部34に表示する。また、チェーン60の遊び量や移動平均を表示させるのではなく、チェーン60のメンテナスが必要であることを警告する警告灯をパネル部34に表示(点灯)させてもよい。このように、本実施形態において、制御ユニット100は、パネル部34を介して、S2020の判定結果に基づいて、チェーン60の遊びの度合いに関する報知を行う報知部として機能する。
【0076】
S2024では、チェーン60の遊び量を更新する。例えば、パネル部34に表示されているチェーン60の遊び量を、S2016で求められたチェーン60の遊び量、或いは、S2018で求められたチェーン60の遊び量の移動平均に更新する。なお、パネル部34にチェーン60の遊び量を表示していない場合には、制御ユニット100の内部で管理されているチェーン60の遊び量を更新する。
【0077】
以上説明したように、本実施形態では、変速機42の出力軸42Aの回転数を検知する出力軸回転数センサ116(の検知結果)と、後輪WRの回転数を検知する後輪回転数センサ117(の検知結果)とを用いて、チェーン60の遊び量を検知する。そして、車両10の加減速が切り替わってから所定の期間における出力軸回転数センサ116の検知結果と後輪回転数センサ117の検知結果との差分の積分値が閾値を超えたかどうかの判定結果に基づいて、チェーン60の遊びの度合いに関する報知を行う。従って、チェーン60の遊びを検知するような新たなデバイスが不要であり、コストの増加を招くことなく、チェーン60の遊び量を検知するのに有利な新たな技術を提供することができる。
【0078】
また、本実施形態では、出力軸回転数センサ116の検知結果と後輪回転数センサ117の検知結果との差分に基づく検出値として、かかる差分の積分値のピーク値や移動平均を用いている。これは、出力軸回転数センサ116の検知結果及び後輪回転数センサ117の検知結果から得られるチェーン60の遊び量の検知精度を向上させるためである。従って、出力軸回転数センサ116の検知結果と後輪回転数センサ117の検知結果との差分に基づく検出値が得られればよく、かかる差分の積分値のピーク値や移動平均は必ずしも求めなくてもよい。
【0079】
また、本実施形態では、エンジン出力(車両10の加速度)が正から負に切り替わるタイミング、又は、負から正に切り替わるタイミングにおいて、上述した差分が閾値を超えているかを判定し、チェーン60の遊び量を求めている。これにより、チェーン60の遊び量を検知する機会(回数)を増やすことが可能となる。
【0080】
また、本実施形態では、車両10の加減速の切り替わり、クラッチ操作、及び、変速機42の変速段の切り替えのうちの少なくとも1つを含む所定の中止条件が成立した場合には、上述した差分が閾値を超えたかどうかの判定を中止している。上述したような所定の中止条件が成立した場合には、出力軸回転数センサ116の検知結果と後輪回転数センサ117の検知結果との差分からチェーン60の遊び量を高精度に求めることができない。このような場合には、上述した差分が閾値を超えたかどうかの判定を中止することで、ライダに対して、チェーン60の遊びの度合いに関する報知が不要に行われることを抑制することができる。
【0081】
なお、本実施形態では、出力軸回転数センサ116の検知結果と後輪回転数センサ117の検知結果との差分が閾値を超えたと1回判定した場合に、チェーン60の遊びの度合いに関する報知を行っている。但し、第1実施形態と同様に、出力軸回転数センサ116の検知結果と後輪回転数センサ117の検知結果との差分が閾値を超えたと複数回判定した場合に、チェーン60の遊びの度合いに関する報知を行うようにしてもよい。これにより、チェーン60の遊び量がチェーン60に許容される遊び量の範囲内であるかをより精密に判定し、ライダに対して、チェーン60の遊びの度合いに関する報知をより適切なタイミングで行うことが可能となる。
【0082】
<第3実施形態>
第3実施形態では、エンジン40の出力軸40Aの回転数を検知するエンジン回転数センサ113(の検知結果)と、後輪WRの回転数を検知する後輪回転数センサ117(の検知結果)とを用いて、チェーン60の遊び量を検知する技術を説明する。
【0083】
本発明者らが鋭意検討した結果、車両10が走行状態で、加減速が切り替わった時点から所定の期間では、チェーン60の遊び量と、エンジン40の出力軸40Aの回転数と後輪WRの回転数との差分(回転差)との間に相関関係があることを見出した。このような相関がある理由は、第2実施形態と同様であると考えられる。但し、エンジン40の出力軸40Aと後輪WRとの間には変速機42の変速段があるため、エンジン回転数センサ113の検知結果を用いる場合には、変速機42の各変速段のギアの遊び(遊び角)を考慮する必要がある。
【0084】
チェーン60に遊びがある場合には、エンジン40で生成された駆動力(エンジン出力)が、エンジン40の出力軸40Aから後輪WRに伝達されるまでに、変速機42の変速段のギアの遊び角及びチェーン60の遊びに応じた時間差が生じる。従って、
図9に示すように、エンジン40の出力軸40Aの回転数と後輪WRの回転数とが一致するまでに、変速機42の変速段のギアの遊び角及びチェーン60の遊びに応じた時間差が生じることになる。
図9は、スロットル開度、エンジン出力、エンジン40の出力軸40Aの回転数及び後輪WRの回転数のそれぞれの時間変化を示す図である。なお、
図9では、エンジン40の出力軸40Aの回転数及び後輪WRの回転数は、変速機42の出力軸42Aでの回転数に変換(レシオ変換)した変換値を示している。以下では、エンジン40の出力軸40Aの回転数及び後輪WRの回転数は、変速機42の出力軸42Aへの変換値を指すものとする。
【0085】
本実施形態では、エンジン40の出力軸40Aの回転数と後輪WRの回転数との差(回転差)を積分して積分値を求め、かかる積分値から変速機42の各変速段のギアの遊び角に相当する分を減算した値を、変速機42の出力軸42Aの遊び角とする。なお、変速機42の各変速段のギアの遊び角に相当する分とは、変速機42の各変速段のギアの遊び角を変速機42の出力軸42Aでの遊び角に変換(レシオ変換)した変換値である。また、
図7を参照して第2実施形態で説明したように、変速機42の出力軸42Aの遊び角と、チェーン60の遊び量との間には、
図7に示すように、正の相関がある。従って、エンジン回転数センサ113の検知結果と後輪回転数センサ117の検知結果との差分から(即ち、かかる差分をチェーン60の遊び量に換算することで)、チェーン60の遊び量を検知することが可能である。但し、上述したように、本実施形態では、変速機42の各変速段のギアの遊び角を考慮する必要がある。
【0086】
以下、
図10を参照して、第3実施形態におけるチェーン60の遊び量の検知に関する処理例(検知処理)について説明する。かかる検知処理は、制御ユニット100のプロセッサによって実行される。
【0087】
S3002、S3004及びS3005は、それぞれ、
図8に示すS2002、S2004及びS2005と同様であるため、ここでの詳細な説明は省略する。
【0088】
S3006では、エンジン40の出力軸40Aの回転数、及び、後輪WRの回転数のそれぞれをモニタして取得する。換言すれば、エンジン回転数センサ113の検知結果、即ち、エンジン回転数センサ113で検知されるエンジン40の出力軸40Aの回転数、及び、後輪回転数センサ117の検知結果、即ち、後輪回転数センサ117で検知される後輪WRの回転数を取得する。
【0089】
S3008では、S3006で取得されたエンジン40の出力軸40Aの回転数と後輪WRの回転数との差分を積分して積分値を取得する。
【0090】
S3010及びS3012は、それぞれ、
図8に示すS2010及びS2012と同様であるため、ここでの詳細な説明は省略する。
【0091】
S3014では、S3008で取得された積分値のピーク値を特定し、かかるピーク値から変速機42の現在の変速段のギアの遊び角に相当する分を減算した値を、変速機42の出力軸42Aの遊び角として、例えば、制御ユニット100の記憶デバイスに記憶する。なお、変速機42の各変速段のギアの遊び角に相当する分、即ち、変速機42の各変速段のギアの遊び角の変速機42の出力軸42Aでの変換値は、事前に求めて、変速機42の各変速段のギアの遊び情報として、制御ユニット100の内部で管理するとよい。また、変速機42の現在の変速段については、シフトポジションセンサ114の検知結果から得られる。
【0092】
S3016、S3018、S3020、S3022及びS3024は、それぞれ、
図8に示すS2016、S2018、S2020、S2022及びS2024と同様であるため、ここでの詳細な説明は省略する。
【0093】
以上説明したように、本実施形態では、エンジン40の出力軸40Aの回転数を検知するエンジン回転数センサ113(の検知結果)と、後輪WRの回転数を検知する後輪回転数センサ117(の検知結果)とを用いて、チェーン60の遊び量を検知する。そして、車両10の加減速が切り替わってから所定の期間におけるエンジン回転数センサ113の検知結果と後輪回転数センサ117の検知結果との差分の積分値が閾値を超えたかどうかの判定結果に基づいて、チェーン60の遊びの度合いに関する報知を行う。従って、チェーン60の遊びを検知するような新たなデバイスが不要であり、また、エンジン回転数センサ113及び後輪回転数センサ117という車両制御に用いるために車両10に一般的に備えられているセンサのみを用いているため、コストの増加を招くことなく、チェーン60の遊び量を検知するのに有利な新たな技術を提供することができる。
【0094】
また、本実施形態では、変速機の各変速段のギアの遊び情報(遊び角)を考慮して、エンジン回転数センサ113の検知結果と後輪回転数センサ117の検知結果との差分の積分値が閾値を超えているかどうかを判定している。これは、エンジン回転数センサ113の検知結果及び後輪回転数センサ117の検知結果から得られるチェーン60の遊び量の検知精度を向上させるためである。従って、チェーン60の遊び量をそれほど高い精度で検知する必要がない場合や、特定のギアポジションのみでチェーン60の遊び量を検出する場合など、変速機の各変速段のギアの遊び角が無視できる程度である場合には、変速機の各変速段のギアの遊び角を考慮しなくてもよい。
【0095】
<実施形態のまとめ>
1. 上述の実施形態の鞍乗型車両は、
駆動ユニット(例えば、40、42、43)と、前記駆動ユニットの駆動力を駆動輪(例えば、WR)に伝達するチェーン(例えば、60)と、を備えた鞍乗型車両(例えば、10)であって、
前記駆動ユニットの出力軸(例えば、42A)の回転数を検知する検知部(例えば、116)と、
所定の検知期間における前記検知部の検知結果が閾値を超えたかどうかを判定する判定部(例えば、100)と、
前記判定部の判定結果に基づいて、前記チェーンの遊びの度合いに関する報知を行う報知部(例えば、100、34)と、を有し、
前記所定の検知期間は、前記鞍乗型車両の停車状態において、前記駆動ユニットから前記チェーンへ駆動力が作用し始める期間である、
ことを特徴とする。
【0096】
この実施形態によれば、コストの増加を招くことなく、チェーンの遊び量を検知することができる。
【0097】
2. 上述の鞍乗型車両(例えば、10)では、
前記駆動ユニットは、エンジン(例えば、40)と、前記出力軸(例えば、42A)を含む変速機(例えば、42)と、前記エンジンと前記変速機とを断接するクラッチ(例えば、43)と、を含み、
前記所定の検知期間は、前記鞍乗型車両が停車状態で、前記エンジンが作動中であり、前記変速機がニュートラルからインギアする期間である、
ことを特徴とする。
【0098】
この実施形態によれば、チェーンの遊び量の検知精度を向上させることができる。
【0099】
3. 上述の鞍乗型車両(例えば、10)では、
前記報知部(例えば、100、34)は、前記判定部(例えば、100)により前記所定の検知期間における前記検知部の検知結果が前記閾値を超えたと判定された場合に、前記報知を行う、ことを特徴とする。
【0100】
この実施形態によれば、チェーンのメンテナスが必要であることを促すような報知を適切なタイミングで行うことができる。
【0101】
4. 上述の鞍乗型車両(例えば、10)では、
前記所定の検知期間は、前記変速機(例えば、42)がニュートラルから1速又は2速にインギアする期間である、ことを特徴とする。
【0102】
この実施形態によれば、チェーンの遊び量を検知する機会(回数)を増やすことが可能となる。
【0103】
5. 上述の鞍乗型車両(例えば、10)では、
前記閾値は、前記変速機(例えば、42)のインギアの変速段ごとに設定されている、ことを特徴とする。
【0104】
この実施形態によれば、変速機のインギアの変速段に応じて、チェーンの遊び量がチェーンに許容される遊び量の範囲内であるかを精密に判定することが可能となり、チェーンの遊びの度合いに関する報知をより適切なタイミングで行うことができる。
【0105】
6. 上述の鞍乗型車両(例えば、10)では、
前記判定部(例えば、100)は、
前記所定の検知期間における前記検知部(例えば、116)の検知結果の最大値が前記閾値を超えたかどうかを判定し、
所定の中止条件が成立した場合は、前記所定の検知期間における前記検知部の検知結果の最大値が前記閾値を超えたかどうかの判定を中止する、
ことを特徴とする。
【0106】
この実施形態によれば、ライダに対して、チェーンの遊びの度合いに関する報知が不要に行われることを抑制することができる。
【0107】
7. 上述の鞍乗型車両(例えば、10)では、
前記所定の中止条件は、スロットル操作、クラッチ操作、及び、エンジンストールのうちの少なくとも1つを含む、ことを特徴とする。
【0108】
この実施形態によれば、ライダに対して、チェーンの遊びの度合いに関する報知が不要に行われることを抑制することができる。
【0109】
8. 上述の鞍乗型車両(例えば、10)では、
前記報知部(例えば、100、34)は、前記判定部(例えば、100)により前記所定の検知期間における前記検知部(例えば、116)の検知結果が前記閾値を超えたと複数回判定した場合に、前記報知を行う、ことを特徴とする。
【0110】
この実施形態によれば、ライダに対して、チェーンの遊びの度合いに関する報知をより適切なタイミングで行うことが可能となる。
【0111】
9. 上述の実施形態の鞍乗型車両は、
駆動ユニット(例えば、40、42、43)と、前記駆動ユニットの駆動力を駆動輪(例えば、WR)に伝達するチェーン(例えば、60)と、を備えた鞍乗型車両(例えば、10)であって、
前記駆動ユニットが含む回転体(例えば、40A、42A)の回転数を検知する第1検知部(例えば、113、116)と、
前記駆動輪の回転数を検知する第2検知部(例えば、117)と、
前記鞍乗型車両の加減速が切り替わってから所定の期間における前記第1検知部の検知結果と前記第2検知部の検知結果との差分に基づく検出値が閾値を超えたかどうかを判定する判定部(例えば、100)と、
前記判定部の判定結果に基づいて、前記チェーンの遊びの度合いに関する報知を行う報知部(例えば、100、34)と、
を有する、ことを特徴とする。
【0112】
この実施形態によれば、コストの増加を招くことなく、チェーンの遊びを検知することができる。
【0113】
10. 上述の鞍乗型車両(例えば、10)では、
前記判定部(例えば、10)は、前記差分の積分値のピーク値が前記閾値を超えたかどうかを判定する、ことを特徴とする。
【0114】
この実施形態によれば、チェーンの遊び量の検知精度を向上させることができる。
【0115】
11. 上述の鞍乗型車両(例えば、10)では、
前記回転体は、前記駆動ユニット(例えば、42)の出力軸(例えば、42A)である、ことを特徴とする。
【0116】
この実施形態によれば、駆動ユニットの出力軸の回転量及び駆動輪の回転量から、チェーンの遊び量を検知することができる。
【0117】
12. 上述の鞍乗型車両(例えば、10)では、
前記駆動ユニットは、エンジン(例えば、40)と、変速機(例えば、42)と、前記エンジンと前記変速機とを断接するクラッチ(例えば、43)と、を含み、
前記回転体は、前記エンジンの出力軸(例えば、42A)である、
ことを特徴とする。
【0118】
この実施形態によれば、エンジンの出力軸の回転量及び駆動輪の回転量から、チェーンの遊び量を検知することができる。
【0119】
13. 上述の鞍乗型車両(例えば、10)では、
前記判定部(例えば、100)は、前記変速機(例えば、42)の各変速段のギアの遊び情報に基づいて、前記差分に基づく検出値が前記閾値を超えたかどうかを判定する、ことを特徴とする。
【0120】
この実施形態によれば、チェーンの遊び量の検知精度を向上させることができる。
【0121】
14. 上述の鞍乗型車両(例えば、10)では、
前記判定部(例えば、100)は、前記鞍乗型車両(例えば、10)の加速度が正から負に切り替わるタイミング、又は、前記鞍乗型車両の加速度が負から正に切り替わるタイミングにおいて、前記差分に基づく検出値が前記閾値を超えたかどうかを判定する、ことを特徴とする。
【0122】
この実施形態によれば、チェーンの遊び量を検知する機会(回数)を増やすことが可能となる。
【0123】
15. 上述の鞍乗型車両(例えば、10)では、
前記判定部(例えば、100)は、所定の中止条件が成立した場合は、前記差分の積分値のピーク値が前記閾値を超えたかどうかの判定を中止する、ことを特徴とする。
【0124】
この実施形態によれば、ライダに対して、チェーンの遊びの度合いに関する報知が不要に行われることを抑制することができる。
【0125】
16. 上述の鞍乗型車両(例えば、10)では、
前記所定の中止条件は、前記鞍乗型車両の加減速の切り替わり、クラッチ操作、及び、変速機(例えば、42)の変速段の切り替えのうちの少なくとも1つを含む、ことを特徴とする。
【0126】
この実施形態によれば、ライダに対して、チェーンの遊びの度合いに関する報知が不要に行われることを抑制することができる。
【0127】
17. 上述の鞍乗型車両(例えば、10)では、
前記報知部(例えば、100、34)は、前記判定部(例えば、100)により前記差分に基づく検出値が前記閾値を超えたと複数回判定した場合に、前記報知を行う、ことを特徴とする。
【0128】
この実施形態によれば、ライダに対して、チェーンの遊びの度合いに関する報知をより適切なタイミングで行うことが可能となる。
【0129】
18. 上述の実施形態の制御方法は、
駆動ユニット(例えば、40、42、43)と、前記駆動ユニットの駆動力を駆動輪(例えば、WR)に伝達するチェーン(例えば、60)と、を備えた鞍乗型車両(例えば、10)の制御方法であって、
前記駆動ユニットの出力軸(例えば、42A)の回転数を検知する第1工程と、
所定の検知期間における前記第1工程の検知結果が閾値を超えたかどうかを判定する第2工程と、
前記第2工程の判定結果に基づいて、前記チェーンの遊びの度合いに関する報知を行う第3工程と、を有し、
前記所定の検知期間は、前記鞍乗型車両の停車状態において、前記駆動ユニットから前記チェーンへ駆動力が作用し始める期間である、
ことを特徴とする。
【0130】
この実施形態によれば、コストの増加を招くことなく、チェーンの遊び量を検知することができる。
【0131】
19. 上述の実施形態の制御方法は、
駆動ユニット(例えば、40、42、43)と、前記駆動ユニットの駆動力を駆動輪(例えば、WR)に伝達するチェーン(例えば、60)と、を備えた鞍乗型車両(例えば、10)の制御方法であって、
前記駆動ユニットが含む回転体(例えば、40A、42A)の回転数を検知する第1工程と、
前記駆動輪の回転数を検知する第2工程と、
前記鞍乗型車両の加減速が切り替わってから所定の期間における前記第1工程の検知結果と前記第2工程の検知結果との差分に基づく検出値が閾値を超えたかどうかを判定する第3工程と、
前記第3工程の判定結果に基づいて、前記チェーンの遊びの度合いに関する報知を行う第4工程と、
を有する、ことを特徴とする。
【0132】
この実施形態によれば、コストの増加を招くことなく、チェーンの遊び量を検知することができる。
【0133】
発明は上記の実施形態に制限されるものではなく、発明の要旨の範囲内で、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0134】
10:鞍乗型車両 40:エンジン 40A:出力軸(クランク軸) 42:変速機 42A:出力軸(カウンタ軸) 60:チェーン 100:制御ユニット 113:エンジン回転数センサ 116:出力軸回転数センサ 117:後輪回転数センサ