(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-18
(45)【発行日】2024-11-26
(54)【発明の名称】ダイレータ
(51)【国際特許分類】
A61M 25/06 20060101AFI20241119BHJP
【FI】
A61M25/06 556
(21)【出願番号】P 2023060828
(22)【出願日】2023-04-04
【審査請求日】2023-10-26
(73)【特許権者】
【識別番号】594170727
【氏名又は名称】日本ライフライン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100116274
【氏名又は名称】富所 輝観夫
(72)【発明者】
【氏名】桝田 拓也
【審査官】中村 一雄
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2007/0276288(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2002/0072712(US,A1)
【文献】国際公開第97/020530(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 25/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダイレータであって、
第1通し孔と前記第1通し孔を径方向外側に開く第1開口部とが形成されるアウターシャフトと、
前記第1通し孔内に通されるインナーシャフトと、を備え、
前記アウターシャフトの先端部の内周部は先端に向かって先細りとなり、
前記インナーシャフトには、ガイドワイヤーが通される第2通し孔と前記第2通し孔を径方向外側に開く第2開口部とが形成され、
前記ダイレータは、前記アウターシャフト及び前記インナーシャフトが相対移動することで、前記第1開口部及び前記第2開口部内を経由する前記ガイドワイヤーの出し入れが許容される第1状態と、前記第1開口部の少なくとも先端部内を経由する前記ガイドワイヤーの脱落を阻止可能な第2状態との間を移行可能であるダイレータ。
【請求項2】
前記ダイレータが前記第2状態にあるとき、前記第1開口部の少なくとも先端部が前記インナーシャフトにより閉鎖されるとともに前記第2開口部の少なくとも一部が前記アウターシャフトにより閉鎖され、
前記ダイレータが前記第1状態にあるとき、前記インナーシャフトにより閉鎖されていた前記第1開口部が開放されるとともに、前記アウターシャフトにより閉鎖されていた前記第2開口部が開放される請求項1に記載のダイレータ。
【請求項3】
前記インナーシャフトは、前記ダイレータが前記第2状態にあるとき、前記第1開口部の先端部から基端部にかけての軸方向範囲を閉鎖する請求項1に記載のダイレータ。
【請求項4】
前記インナーシャフト及び前記アウターシャフトの一方に設けられガイド経路を形成するガイド部と、
前記インナーシャフト及び前記アウターシャフトの他方に設けられる被ガイド部と、を備え、
前記ダイレータは、前記ガイド経路に沿って前記被ガイド部がガイドされることで、前記第1状態と前記第2状態との間を移行可能である請求項1に記載のダイレータ。
【請求項5】
前記ダイレータが前記第1状態及び前記第2状態のいずれかにあるとき、前記ガイド経路の端部に前記被ガイド部が位置する請求項4に記載のダイレータ。
【請求項6】
前記インナーシャフト及び前記アウターシャフトの相対移動をロック可能なロック構造を備える請求項1に記載のダイレータ。
【請求項7】
前記インナーシャフト及び前記アウターシャフトのうちの一方のシャフトには、前記第1通し孔及び前記第2通し孔のうちの一方の通し孔と、前記第1開口部及び前記第2開口部のうちの一方の開口部とが形成され、
前記一方の開口部は、前記アウターシャフトの軸方向に延びる溝状をなし、少なくとも一部の軸方向範囲において、前記一方の通し孔とは別に設けられ、
前記一方の開口部には、前記軸方向範囲において、前記一方の開口部の長手方向に向かうに連れて周方向に延びる周方向延び部が形成される請求項1に記載のダイレータ。
【請求項8】
前記一方のシャフトの基端部は、前記ダイレータが前記第2状態にあるとき、前記インナーシャフト及び前記アウターシャフトのうちの他方のシャフトよりも基端側に位置しており、
前記周方向延び部は、前記一方のシャフトの前記基端部に設けられる請求項7に記載のダイレータ。
【請求項9】
前記アウターシャフトの中心線を挟んで設けられる一対のつまみ部を備え、
前記つまみ部は、前記アウターシャフトに設けられる第1つまみ構成部と、前記インナーシャフトに設けられる第2つまみ構成部とが並ぶことで構成される請求項1に記載のダイレータ。
【請求項10】
ダイレータであって、
第1通し孔と前記第1通し孔を径方向外側に開く第1開口部とが形成されるアウターシャフトと、
前記第1通し孔内に通されるインナーシャフトと、を備え、
前記インナーシャフトには、ガイドワイヤーが通される第2通し孔と前記第2通し孔を径方向外側に開く第2開口部とが形成され、
前記ダイレータは、前記アウターシャフト及び前記インナーシャフトが相対移動することで、前記第1開口部及び前記第2開口部内を経由する前記ガイドワイヤーの出し入れが許容される第1状態と、前記第1開口部の少なくとも先端部内を経由する前記ガイドワイヤーの脱落を阻止可能な第2状態との間を移行可能であ
り、
前記インナーシャフトには、前記ダイレータが前記第2状態にあるとき、前記第1開口部の先端部に嵌合される嵌合部が設けられ
るダイレータ。
【請求項11】
前記インナーシャフトは、前記ダイレータが前記第1状態及び前記第2状態のいずれにあるときも、前記アウターシャフトに支持されている請求項1に記載のダイレータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、医療デバイスの体内への挿入予定箇所を拡張するためのダイレータに関する。
【背景技術】
【0002】
シースイントロデューサ等の医療デバイスを体内に挿入する場合、その体内への挿入予定箇所を拡張するためにダイレータを用いる場合がある。このダイレータは、通常、ガイドワイヤーが通される通し孔が形成されるシャフトを備えている。このダイレータを用いる場合、体内にガイドワイヤーの一部を留置しておき、そのガイドワイヤーによりガイドさせつつシャフトが体内に押し込まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本願発明者は、ダイレータを用いた手技の作業性を良好にするためのアイデアを検討した。この結果、通し孔を径方向外側に開く開口部をシャフトに形成することが有効であるとの認識を得た(特許文献1参照)。この一方で、このように開口部をシャフトに形成した場合、通し孔内のガイドワイヤーが、開口部を経由して意図せず脱落してしまう恐れがあるという新たな知見を得た。
【0005】
そこで、本開示の目的の1つは、手技の作業性を良好にしつつガイドワイヤーの脱落を防止できるダイレータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のダイレータは、第1通し孔と前記第1通し孔を径方向外側に開く第1開口部とが形成されるアウターシャフトと、前記第1通し孔内に通されるインナーシャフトと、を備え、前記インナーシャフトには、ガイドワイヤーが通される第2通し孔と前記第2通し孔を径方向外側に開く第2開口部とが形成され、前記ダイレータは、前記アウターシャフト及び前記インナーシャフトが相対移動することで、前記第1開口部及び前記第2開口部内を経由する前記ガイドワイヤーの出し入れが許容される第1状態と、前記第1開口部の少なくとも先端部内を経由する前記ガイドワイヤーの脱落を阻止可能な第2状態との間を移行可能である。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、手技の作業性を良好にしつつガイドワイヤーの脱落を防止できるダイレータを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】ダイレータが用いられる手技の途中状態を示す模式図である。
【
図2】
図2(A)は、ダイレータの効果を説明する第1説明図であり、
図2(B)は、その第2説明図である。
【
図3】ダイレータの効果を説明する他の説明図である。
【
図4】実施形態のダイレータを示す第1斜視図である。
【
図5】実施形態のダイレータを示す第2斜視図である。
【
図6】実施形態のダイレータを示す第3斜視図である。
【
図7】実施形態のダイレータを示す第1側面断面図である。
【
図8】実施形態のダイレータを示す第2側面断面図である。
【
図12】
図4の矢視Cからダイレータの一部を見た図である。
【
図13】
図6の矢視Dからダイレータの一部を見た図である。
【
図15】
図15(A)は、実施形態のインナーシャフトの先端部を示す斜視図であり、
図15(B)は、実施形態のアウターシャフト及びインナーシャフトの先端部を示す斜視図である。
【
図16】実施形態のアウターシャフト及びインナーシャフトを軸方向先端側から見た断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示のダイレータを実施するための実施形態を説明する。同一又は同等の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。各図面では、説明の便宜のため、適宜、構成要素を省略、拡大、縮小する。図面は符号の向きに合わせて見るものとする。
【0010】
まず、本実施形態のダイレータが用いられる手技の概要と併せて、本実施形態のダイレータを想到するに至った背景を説明する。
図1を参照する。ダイレータ10は、後続する医療デバイス(シースイントロデューサ、カテーテル等)の体内への挿入予定箇所に先行して挿入される。ダイレータ10は、医療デバイスの体内への挿入予定箇所を医療デバイスの外径まで拡張することで、その医療デバイスの挿入を容易にするために用いられる。
【0011】
ダイレータ10は、例えば、セルジンガー法に用いられる。セルジンガー法では、まず、穿刺針を用いて、血管等の管腔臓器12に繋がる穿刺孔14を体表に形成する。この後、穿刺針を用いて管腔臓器12内にガイドワイヤー16を挿入したうえで、その一部を体内に留置する。この後、体外においてダイレータ10のシャフト18内にガイドワイヤー16を配置する。この後、
図1に示すように、ガイドワイヤー16によるガイドを伴い、穿刺孔14を経由してダイレータ10を管腔臓器12内に挿入することで、管腔臓器12及び穿刺孔14が拡張される。この後、ダイレータ10を抜去した後、拡張された管腔臓器12及び穿刺孔14を経由して、ガイドワイヤー16によりガイドさせつつ、体内の目標部位まで後続する医療デバイス(不図示)が挿入される。
【0012】
図2(A)を参照する。仮に、シャフト18に通し孔を径方向外側に開く開口部が形成されていない場合を想定する。この場合、体外においてシャフト18内にガイドワイヤー16を配置するうえで、ガイドワイヤー16の体外側端部16aからシャフト18内に軸方向にガイドワイヤー16を挿入する必要がある。このため、ガイドワイヤー16の体外側端部16aのある箇所までシャフト18を動かしたうえで、ガイドワイヤー16の体内への挿入開始位置までシャフト18を大きく動かす必要があり、作業性に難がある。
【0013】
図2(B)を参照する。これをふまえ、本実施形態のダイレータ10は、第1通し孔20の他に、第1通し孔20を径方向外側に開く第1開口部22が形成されるアウターシャフト18を用いている。これにより、第1開口部22を経由してガイドワイヤー16を径方向に出し入れ可能となり、体外にあるガイドワイヤー16の任意の箇所をアウターシャフト18内に径方向に挿入可能となる。ひいては、ガイドワイヤー16の体外側端部16aのある箇所までアウターシャフト18を大きく動かす必要がなくなり、ダイレータ10を用いる手技の作業性が良好となる。
【0014】
図3を参照する。図では、アウターシャフト18が挿入される管腔臓器12(血管)において大きく曲がる曲げ部12aがある場合を示す。この曲げ部12aは、例えば、腸骨血管等の複雑に蛇行している血管において特に多くなる。理想的には、管腔臓器12の曲げ部12a内でガイドワイヤー16に沿ってアウターシャフト18をガイドさせることで、アウターシャフト18の先端部を曲げ変形させつつアウターシャフト18を体内に押し込めると望ましい。
【0015】
本願発明者は、アウターシャフト18に第1開口部(
図3では不図示)を形成した場合、次の問題があるという新たな知見を得た。詳しくは、この場合、アウターシャフト18を体内に押し込む過程で、ガイドワイヤー16が、第1開口部の先端部を経由して意図せず脱落してしまう恐れがある。
図3では、アウターシャフト18からガイドワイヤー16が脱落してしまった箇所16bに符号を付す。このようにガイドワイヤー16が脱落してしまうと、ガイドワイヤー16によりアウターシャフト18をガイドさせることができなくなる。このため、管腔臓器12の曲げ部12a内において、ガイドワイヤー16に沿ってアウターシャフト18の先端部を曲げ変形させることができなくなり、アウターシャフト18をスムーズに押し込むことができなくなってしまう。このように管腔臓器12の曲げ部12a内でアウターシャフト18をスムーズに押し込むことができない場合、アウターシャフト18の先端部が生体組織に強く当たってしまう。
【0016】
図7、
図8を参照する。これをふまえ、本実施形態のダイレータ10は、アウターシャフト18の他に、アウターシャフト18の第1通し孔20内に通されるインナーシャフト24を備えている。インナーシャフト24には、ガイドワイヤー16が通される第2通し孔26と、第2通し孔26を径方向外側に開く第2開口部28とが形成される。ダイレータ10は、アウターシャフト18及びインナーシャフト24が相対移動することで、アウターシャフト18の第1開口部22及びインナーシャフト24の第2開口部28を経由するガイドワイヤー16の出し入れが許容される第1状態としての開放状態Sa(
図7参照)と、その第1開口部22の少なくとも先端部内を経由するガイドワイヤー16の脱落が阻止される第2状態としての閉鎖状態Sb(
図8参照)との間を移行可能である。これにより、
図7に示すように、ダイレータ10が開放状態Saにあるとき、第1開口部22及び第2開口部28を経由して径方向(方向Da)にガイドワイヤー16を出し入れ可能となり、前述のように手技の作業性が良好となる。また、
図8に示すように、ダイレータ10が閉鎖状態Sbにあるとき、第1開口部22の先端部を経由するガイドワイヤー16の脱落をインナーシャフト24により阻止できる。ひいては、手技の作業性を良好にしつつガイドワイヤー16の脱落を防止できるようになる。
【0017】
以下、実施形態のダイレータ10の詳細を説明する。
図4~
図8を参照する。
図4、
図7は、ダイレータ10が開放状態Saにあり、
図6、
図8は、ダイレータ10が閉鎖状態Sbにあり、
図5は、ダイレータ10が開放状態Saから閉鎖状態Sbに移行する途中の状態にある。
【0018】
本実施形態のダイレータ10は単独で用いられる例を説明するが、シースイントロデューサー等の他の医療デバイスの一部として用いられてもよい。ダイレータ10は、後続して体内に挿入される医療デバイスの挿入予定箇所の拡張のために用いられる。ダイレータ10による体内の拡張箇所は、管腔臓器12及び穿刺孔14の少なくとも一方となる。ここでの管腔臓器は血管を例に説明するが、この他にも胆管、膵管、尿道等の消化器(特に、消化器の狭窄部)であってもよい。穿刺孔14は、体外から管腔臓器12内に医療デバイス等を挿入するために体表又は管腔臓器12に形成される。
【0019】
ダイレータ10は、アウターシャフト18と、アウターシャフト18に相対移動可能に支持されるインナーシャフト24と、を備える。本明細書では、特に言及がない限り、各シャフト18、24が直線的に延びた状態にあるときの各構成要素の位置関係を説明する。本明細書では、アウターシャフト18の中心線C18に沿った方向を、単に「軸方向」といい、その中心線C18を円中心とする円周方向及び半径方向のそれぞれを、単に「周方向」及び「径方向」という。
【0020】
図7~
図10を参照する。アウターシャフト18は、全体として一方向に長尺状に延びている。アウターシャフト18は、曲げ変形可能な可撓性を持ち、樹脂等を素材として構成される。アウターシャフト18には、インナーシャフト24が通される第1通し孔20と、第1通し孔20を径方向外側に開く第1開口部22とが形成される。第1通し孔20は、アウターシャフト18を軸方向に貫通する。第1開口部22は、アウターシャフト18の外周部に開口し、その開口箇所から奥側に向かう一部の部分を構成するとともに軸方向に延びる溝状をなす。第1通し孔20は、第1開口部22とは別に第1開口部22よりも奥側に設けられ、溝状の第1開口部22よりも幅広な箇所を含むように形成される。ここでの幅とは、軸方向に直交する断面において、言及している溝状の開口部の幅方向(開口部を形成する対の側面が対向する方向)での内寸をいう。第1開口部22の長手方向の両端部は長手方向外側に向かって開いている。ここでの長手方向とは、言及している溝状の開口部が軸方向一端から軸方向他端に長く延びる方向をいう。本実施形態の第1開口部22は、アウターシャフト18の基端部から先端部にかけて形成されている。
【0021】
インナーシャフト24は、全体として軸方向に長尺状に延びている。インナーシャフト24は、曲げ変形可能な可撓性を持ち、樹脂等を素材として構成される。インナーシャフト24には、ガイドワイヤー16が通される第2通し孔26と、第2通し孔26を径方向外側に開く第2開口部28とが形成される。第2通し孔26は、インナーシャフト24を軸方向に貫通する。第2開口部28は、インナーシャフト24の外周部に開口し、その開口箇所から奥側に向かう一部の部分を構成するとともに軸方向に延びる溝状をなす。第2開口部28は、第2通し孔26の一部又は第2通し孔26とは別に設けられる。本実施形態では、インナーシャフト24の基端部24aの少なくとも一部の軸方向範囲Raにおいて、第2開口部28は第2通し孔26とは別に設けられる(
図8、
図10(B)参照)。また、その軸方向範囲Raよりもインナーシャフト24の先端側の軸方向範囲Rbにおいて、第2開口部28は第2通し孔26の一部として設けられる(
図8、
図10(A)参照)。第2開口部28が第2通し孔26の一部として設けられる場合、
図10(A)に示すように、第2通し孔26は、インナーシャフト24の外周部に開口する溝部として設けられる。この場合、第2通し孔26の構成する溝部の開口箇所から溝底部に至るまで、その溝部の開口箇所側の部分を構成する第2開口部28よりも幅広となる箇所が形成されない。第2開口部28が第2通し孔26とは別に設けられる場合、
図10(B)に示すように、第2通し孔26は、溝状の第2開口部28よりも奥側において第2開口部28よりも幅広な箇所を含むように形成される。第2開口部28の長手方向の両端部は長手方向外側に向かって開いている。本実施形態の第2開口部28は、インナーシャフト24の基端部から先端部にかけて形成されている。なお、第2開口部28は、インナーシャフト24の軸方向範囲の全域において、第2通し孔26の一部として設けられてもよいし、第2通し孔26とは別に設けられてもよい。
【0022】
インナーシャフト24は、アウターシャフト18に軸方向及び周方向に相対移動可能に支持される。アウターシャフト18の第1通し孔20内にはインナーシャフト24が軸方向に摺動可能に嵌め込まれる。また、アウターシャフト18の第1通し孔20内にインナーシャフト24は相対回転可能に嵌め込まれる。これを実現するうえで、本実施形態において、アウターシャフト18は第1開口部22により一部を切り欠いた円筒状をなし、インナーシャフト24はアウターシャフト18の第1通し孔20内において第2通し孔26により一部を切り欠いた円柱状をなす。
【0023】
アウターシャフト18は、アウターシャフト18の先端部においてアウターシャフト18の外周部に形成され、先端側に向かって先細りとなる第1テーパー部30を備える。第1テーパー部30は、体内にダイレータ10を挿入するときに体内への挿入箇所を押し広げて拡張するために設けられる。本実施形態の第1テーパー部30には、その外周部の他に内周部(つまり、第1通し孔20)も先端に向かって先細りとなる。インナーシャフト24は、任意の構成として、インナーシャフト24の先端部においてインナーシャフト24の外周部に形成され、先端側に向かって先細りとなる第2テーパー部32を備える。第2テーパー部32は、アウターシャフト18の第1テーパー部30の内周部に嵌合させるために設けられる。
【0024】
第1開口部22及び第2開口部28の内幅W22、W28は、ガイドワイヤー16の直径での外径R16以上の大きさとなる。本実施形態では内幅W22、W28は、外径R16より僅かに大きくなる。ここでの溝幅とは、言及している溝状の開口部の幅方向での内寸をいう。
【0025】
以上のダイレータ10は、アウターシャフト18及びインナーシャフト24が相対移動することで、第1開口部22及び第2開口部28内を経由するガイドワイヤー16の出し入れが許容される開放状態Sa(
図7、
図9参照)と、第1開口部22の少なくとも先端部22a内を経由するガイドワイヤー16の脱落を阻止可能な閉鎖状態Sb(
図8、
図10(A)参照)との間を移行可能である。この相対移動の仕方は後述する。
【0026】
図8、
図10(A)に示すように、ダイレータ10が閉鎖状態Sbにあるとき、アウターシャフト18にインナーシャフト24が支持された状態となる。このとき、アウターシャフト18の第1開口部22の少なくとも先端部22aがインナーシャフト24により閉鎖される。このとき、本実施形態のインナーシャフト24は、第1開口部22の先端部22aから基端部22bにかけての軸方向範囲をインナーシャフト24により閉鎖する。これにより、インナーシャフト24により閉鎖された第1開口部22の少なくとも先端部22a内を経由する第1通し孔20内と外部空間34との間でのガイドワイヤー16の径方向での出し入れが、インナーシャフト24により阻止される。また、このとき、インナーシャフト24の第2開口部28の少なくとも一部がアウターシャフト18により閉鎖される。このとき、本実施形態では、アウターシャフト18の第1通し孔20内に通されている軸方向範囲において、インナーシャフト24の第2開口部28の一部がアウターシャフト18により閉鎖される。これにより、アウターシャフト18により閉鎖される第2開口部28を経由する第2通し孔26内と外部空間34との間でのガイドワイヤー16の径方向での出し入れが、アウターシャフト18により阻止される。この結果、第1開口部22の少なくとも先端部22a内を経由するガイドワイヤー16の脱落が阻止される。
【0027】
図7、
図9に示すように、ダイレータ10が開放状態Saにあるとき、アウターシャフト18にインナーシャフト24が支持された状態となる。このとき、第1開口部22の内部空間と第2開口部28の内部空間が径方向に重なる位置に配置される。このとき、インナーシャフト24により閉鎖されていたアウターシャフト18の第1開口部22が開放されるとともに、アウターシャフト18により閉鎖されていたインナーシャフト24の第2開口部28が開放される。これにより、第1開口部22及び第2開口部28内を経由するガイドワイヤー16の出し入れが許容される。これは、開放された第1開口部22内を経由する第1通し孔20内と外部空間34との間でのガイドワイヤー16の径方向での出し入れが許容されるとともに、開放された第2開口部28内を経由する第2通し孔26内と外部空間34との間でのガイドワイヤー16の径方向での出し入れが許容されることを意味する。
図7、
図9では、このガイドワイヤー16の出し入れ方向Daを示す。これにより、前述の通り、ダイレータ10を用いる手技の作業性が良好となる。
【0028】
以上の構成により、手技の作業性を良好にしつつも、第1開口部22を経由するガイドワイヤー16の意図しない脱落を防止できる。このようにガイドワイヤー16の脱落を防止することで、管腔臓器12の曲げ部12a内において、ガイドワイヤー16によるガイドを伴いアウターシャフト18及びインナーシャフト24を安定してスムーズに押し込むことができる。また、管腔臓器12の曲げ部12a内において、ガイドワイヤー16の抜けに起因して、アウターシャフト18の先端部が生体組織に強く当たる事態も回避できる。
【0029】
また、インナーシャフト24は、ダイレータ10が閉鎖状態Sbにあるとき、アウターシャフト18の第1開口部22の先端部22aから基端部22bにかけての軸方向範囲を閉鎖する。このため、ダイレータ10が閉鎖状態Sbにあるとき、第1開口部22の広い軸方向範囲において、第1開口部22を経由するガイドワイヤー16の脱落を防止できる。
【0030】
また、インナーシャフト24は、ダイレータ10が開放状態Sa及び閉鎖状態Sbのいずれにあるときも、アウターシャフト18に支持されている。よって、ダイレータ10が開放状態Saにあるときに、インナーシャフト24をアウターシャフト18から分離させずに済ませることができ、ダイレータ10の取り扱いが容易になる。
【0031】
次に、ダイレータ10の他の特徴を説明する。
図4、
図11(A)を参照する。
図11(A)は、
図4の状態に対応し、
図11(B)、
図11(C)は、
図5、
図6の状態に対応する。
図11は、アウターシャフト18の一部を軸方向に沿って切り開いたうえで平面に展開した状態を示す模式図である。
【0032】
ダイレータ10は、任意の構成として、アウターシャフト18に設けられるガイド部40と、インナーシャフト24に設けられる被ガイド部42と、を備える。ガイド部40は、例えば、スリット溝、有底溝等の溝部によって構成される。被ガイド部42は、例えば、凸部によって構成される。ガイド部40は、被ガイド部42をガイドするためのガイド経路44を形成する。本実施形態のガイド経路44は、軸方向に延びる軸方向経路部44aと、周方向に延びる周方向経路部44bと、ガイド経路44において屈曲する屈曲部44cと、を備える。軸方向経路部44a、周方向経路部44bは直線状をなす例を示すが、それ以外の形状(例えば、曲線状、波状等)をなしてもよい。屈曲部44cは、軸方向経路部44aと周方向経路部44bとの交差箇所に設けられる。
【0033】
被ガイド部42はガイド経路44に沿ってガイドされる。ガイド経路44は、ガイド経路44に沿った経路方向での被ガイド部42の進行を許容し、経路方向以外の方向(以下、進行拘束方向という)への進行を拘束する。経路方向及び進行拘束方向は、ガイド経路44上での被ガイド部42の位置によって向きが変化する。例えば、
図11(A)に示すような、ガイド経路44の末端では、ガイド経路44の反対端に向かう方向が経路方向Dbとなる。また、経路方向Dbとは正反対の方向Dc1や、経路方向Dbと交差する方向Dc2が進行拘束方向となる。また、図示しないものの、ガイド経路44の軸方向経路部44aのような、ガイド経路44の屈曲部44c及び両端以外の箇所では、その箇所から見てガイド経路44の両端側に向かう方向が経路方向となり、経路方向と交差する方向が進行拘束方向となる。また、
図11(B)に示すようなガイド経路44の屈曲部44cでは、その箇所から見てガイド経路44の両端側に向かう方向が経路方向Dbとなり、その経路方向Dbとは正反対の方向Dc1が進行拘束方向となる。
【0034】
ガイド経路44は、ガイド経路44の全長部分のうちの大部分(例えば、全長部分のうちの8割以上の部分)において進行拘束方向への被ガイド部42の進行を拘束していればよい。例えば、本実施形態においてガイド経路44の周方向経路部44bの途中部分には第1開口部22が交差するように形成され、第1開口部22を経由して進行拘束方向への被ガイド部42の進行が許容されている。この第1開口部22を経由して被ガイド部42を進行させることで、ガイド部40に対して被ガイド部42を出し入れ可能となる。
【0035】
アウターシャフト18及びインナーシャフト24は、ガイド経路44に沿った被ガイド部42のガイドを伴い相対移動させることができる。ダイレータ10は、このようにガイド経路44に沿った被ガイド部42のガイドを伴い各シャフト18、24を相対移動させることで、開放状態Saと閉鎖状態Sbとの間を移行可能である。本実施形態では、ガイド経路44の一端側部分(詳しくは、ガイド経路44の一端部44e)に被ガイド部42が位置するときにダイレータ10が開放状態Saとなる(
図11(A)参照)。以下、このときの被ガイド部42の位置を開放位置Paという。また、ガイド経路44の他端部44f側の部分に被ガイド部42が位置するときにダイレータ10が閉鎖状態Sbとなる(
図11(C)参照)。以下、このときの被ガイド部42の位置を閉鎖位置Pbという。
【0036】
ダイレータ10を開放状態Saから閉鎖状態Sbに移行させるとき、ガイド経路44に沿って被ガイド部42を開放位置Paから閉鎖位置Pb側に向けて進行させる。このとき、本実施形態では、ガイド経路44の周方向経路部44bの一端部44eから周方向経路部44bに沿って被ガイド部42を周方向一方側(
図11(A)の方向Db)に向けて進行させ、ガイド経路44の屈曲部44cに到達させる。このようにガイド経路44の周方向経路部44bに沿って被ガイド部42を進行させるとき、アウターシャフト18に対してインナーシャフト24を周方向一方側Dd(
図4参照)に相対移動させる。この後、ガイド経路44の軸方向経路部44aに沿って軸方向先端側(
図11(B)の下向きの方向Db)に向けて被ガイド部42を進行させ、被ガイド部42を閉鎖位置Pbに到達させる。このようにガイド経路44の軸方向経路部44aに沿って被ガイド部42を進行させるとき、アウターシャフト18に対してインナーシャフト24を軸方向先端側De(
図5参照)に相対移動させる。
【0037】
ダイレータ10を閉鎖状態Sbから開放状態Saに移行させるとき、ガイド経路44に沿って被ガイド部42を閉鎖位置Pbから開放位置Pa側に向けて進行させる。このときの被ガイド部42の進行の仕方は、ダイレータ10を開放状態Saから閉鎖状態Sbに移行させるときと逆向きになる。
【0038】
このように、ガイド経路44に沿った被ガイド部42のガイドを伴い各シャフト18、24を相対移動させるだけで、ダイレータ10を開放状態Saと閉鎖状態Sbに移行させることができる。このとき、ガイド経路44において経路方向Dbとは異なる進行拘束方向Dc1、Dc2への被ガイド部42の進行が制限される。このため、ダイレータ10の状態を開放状態Saと閉鎖状態Sbとの間で切り替えるうえ、各シャフト18、24を相対移動させるべき方向を把握し易くなり、その切り替えが容易となる。
【0039】
また、ダイレータ10が開放状態Saとなるとき、ガイド経路44の一端部44eに被ガイド部42が位置し、ガイド経路44の一端側への被ガイド部42の進行がガイド経路44により拘束される。このため、ガイド経路44により許容される被ガイド部42の進行方向が、自身のいるガイド経路44の端部とは反対端に向かう方向(
図11の方向Db)のみに制限される。これにより、ダイレータ10が開放状態Saにあるとき、ダイレータ10の状態を切り替えるためにアウターシャフト18に対してインナーシャフト24を相対移動させるべき方向も一方向(
図4の方向Dd)のみに制限することができる。ひいては、ダイレータ10の状態を切り替えるうえで、アウターシャフト18に対してインナーシャフト24を相対移動させるべき方向が更に把握し易くなる。
【0040】
なお、同様の効果を得る観点から、ダイレータ10が閉鎖状態Sbにあるとき、ガイド経路44の他端部44fに被ガイド部42が位置し、ガイド経路44の他端側への被ガイド部42の進行がガイド経路44により拘束されていてもよい。この場合も、ダイレータ10が閉鎖状態Sbにあるとき、アウターシャフト18に対してインナーシャフト24を相対移動させるべき方向が一方向のみに制限され、同様の効果を得ることができる。
【0041】
図12、
図13を参照する。前述の通り、ダイレータ10は、アウターシャフト18に対してインナーシャフト24を軸方向先端側Deに相対移動させることで閉鎖状態Sbに移行可能である。本実施形態のダイレータ10は、任意の構成として、アウターシャフト18及びインナーシャフト24の相対移動をロック可能なロック構造50を備える。本実施形態のロック構造50は、ダイレータ10が閉鎖状態Sbにあるときに、アウターシャフト18に対するインナーシャフト24の軸方向基端側Dfへの相対移動をロックする。
【0042】
ロック構造50は、アウターシャフト18に設けられる第1ロック部52と、インナーシャフト24に設けられる第2ロック部54と、を備える。本実施形態の第1ロック部52と第2ロック部54はスナップフィット用の爪受け部(第1ロック部52)と弾性爪(第2ロック部54)との組み合わせである。ロック構造50は、第1ロック部52及び第2ロック部54が協働して各シャフト18,24の相対移動をロック可能であるとともに、ロック構造50によるロックを解除可能である。本実施形態では爪受け部(第1ロック部52)に弾性爪(第2ロック部54)が引っ掛けられることで、各シャフト18、24の相対移動がロックされ、その引っ掛けが解除されることでロック構造50によるロックが解除される。第1ロック部52と第2ロック部54の組み合わせはこれに限定されず、極性の異なる対のマグネット、ピンとピン孔の組み合わせ等により実現されてもよい。本実施形態において、第1ロック部52(爪受け部)はアウターシャフト18の基端部に凸部として設けられ、第2ロック部54(弾性爪)はインナーシャフト24の後述する第2つまみ構成部64aの先端部に設けられる。
【0043】
本実施形態のロック構造50は、アウターシャフト18に対するインナーシャフト24の軸方向先端側Deへの相対移動に連動して、各シャフト18、24の相対移動をロック可能である。本実施形態では、各シャフト18、24の相対移動に連動して、弾性爪(第2ロック部54)が弾性変形を伴い爪受け部(第1ロック部52)に引っ掛けられることで、各シャフト18、24の相対移動がロックされる。このとき、ロック構造50は、ガイド経路44による被ガイド部42のガイドを伴い各シャフト18、24を相対移動させたときに、各シャフト18、24の相対移動をロック可能である。各シャフト18、24の相対移動をロックした状態にあるとき、ガイド経路44による被ガイド部42のガイドを伴う相対移動がロックされる。このとき、ダイレータ10が閉鎖状態Sbとなる。
【0044】
また、本実施形態のロック構造50は、アウターシャフト18に対するインナーシャフト24の軸方向基端側Dfへの相対移動に連動して、ロック構造50によるロックを解除可能である。このとき、アウターシャフト18に対してインナーシャフト24を軸方向基端側Dfに相対移動させるための強い外力F1を付与することで、そのロックを解除可能であってもよい。このとき、本実施形態では、各シャフト18、24の相対移動に連動して、弾性爪(第2ロック部54)が弾性変形を伴い爪受け部(第1ロック部52)に対する引っ掛けを解除することで、ロック構造50によるロックが解除される。このとき、後述のように、弾性爪(第2ロック部54)の引っ掛けを解除するために、第2つまみ構成部64aの基端側部分に外力F2を付与できるようにしてもよい。
【0045】
これにより、ダイレータ10が特定状態(ここでは閉鎖状態Sb)にあるときの各シャフト18、24の相対移動をロック構造50によりロックすることで、その特定状態が意図せず解除される事態を回避できる。本実施形態のようにダイレータ10が閉鎖状態Sbにあるときの各シャフト18、24の相対移動をロックした場合、閉鎖状態Sbにあるダイレータ10を体内に押し込むとき、アウターシャフト18に対してインナーシャフト24が軸方向基端側Dfに相対移動することで、インナーシャフト24の閉鎖状態Sbが意図せず解除される事態を回避できる。
【0046】
図13、
図14を参照する。インナーシャフト24の基端部24aは、ダイレータ10が閉鎖状態Sbにあるとき、アウターシャフト18よりも基端側に位置している。第2通し孔26は、ダイレータ10が閉鎖状態Sbにあるとき、インナーシャフト24の基端部24aにおいて第2開口部28を経由して外部空間に開放している。
【0047】
第2通し孔26は、前述した第2通し孔26と第2開口部28が別体に設けられる軸方向範囲Raにおいて、その中心線(不図示)が軸方向に沿って直線状に延びるように設けられる。本実施形態の第2通し孔26は、この軸方向範囲Raにおいて、軸方向に沿ってストレートに延びるストレート部26aと、ストレート部26aの内径に近づくように基端側に向かって内径が徐々に大きくなるテーパー部26bとを備える。
【0048】
第2開口部28には、前述の軸方向範囲Raにおいて、軸方向に沿った一つの直線上において直線状に延びる少なくとも一つの直線部56と、第2開口部28の長手方向に向かうに連れて周方向に延びる周方向延び部58A、58Bとが形成される。本実施形態の第2開口部28には、前述の軸方向範囲Raにおいて、軸方向に間を空けた位置に設けられる二つの直線部56が形成され、周方向延び部58A、58Bは、二つの直線部56の間に設けられる。周方向延び部58A、58Bは、インナーシャフト24の基端部24aに設けられる。直線部56の個数は単数でもよい。第2開口部28は、直線部56及び周方向延び部58A、58B58の双方において、ガイドワイヤー16の外径R16以上の内幅W22となる。
【0049】
本実施形態の周方向延び部58A、58Bは、軸方向に対して周方向一方側に斜めに延びる第1周方向延び部58Aと、第1周方向延び部58Aに接続され軸方向に対して周方向他方側に延びる第2周方向延び部58Bとを含んでいる。第1周方向延び部58A及び第2周方向延び部58Bは、全体として周方向一方側に向けて凸となる曲線状(波状)をなす。この他にも周方向延び部58A、58Bは周方向に沿って延びていてもよい。
【0050】
(A)このような周方向延び部58A、58Bが第2開口部28に形成されることで、直線部56の軸方向での延長上において、第2開口部28の設けられるインナーシャフト24の一部59(ダブルハッチング箇所)が設けられる。これにより、インナーシャフト24の第2開口部28を経由して、その第2通し孔26内で直線状に延びるガイドワイヤー16が抜けようとしたとき、そのインナーシャフト24の一部59にガイドワイヤー16が当たることで、ガイドワイヤー16の抜けを阻害することができる。よって、インナーシャフト24内のガイドワイヤー16が意図せず第2開口部28を経由して抜ける事態を回避できる。
【0051】
(B)インナーシャフト24の基端部24aは、インナーシャフト24が閉鎖状態Sbにあるとき、アウターシャフト18よりも基端側に位置しており、第2開口部28を経由して第2通し孔26が外部空間に開放している。このため、インナーシャフト24内のガイドワイヤー16は、第2開口部28を経由して抜け易くなる。本実施形態の第2開口部28の周方向延び部58A、58Bは、このようなガイドワイヤー16の抜け易い第2開口部28の基端部28aに設けられるため、そのガイドワイヤー16が抜ける事態を効果的に回避できる。
【0052】
なお、第2開口部28を経由してインナーシャフト24内にガイドワイヤー16を径方向に入れる場合を考える。この場合、第2開口部28の周方向延び部58A、58Bに沿ってガイドワイヤー16の押し込み箇所を徐々に変えることで、その周方向延び部58A、58Bの形状に追従させてガイドワイヤー16を変形させつつ、インナーシャフト24内にガイドワイヤー16を入れることができる。よって、第2開口部28に直線部56の他に周方向延び部58A、58Bがある場合でも、インナーシャフト24内にガイドワイヤー16を容易に入れることができる。
【0053】
図13を参照する。軸方向に直交する一方向を左右方向Xといい、軸方向及び左右方向Xに直交する方向を上下方向(
図13の紙面奥行方向)という。ダイレータ10は、任意の構成として、アウターシャフト18の中心線C18を挟んで左右方向Xに間隔を空けて設けられる一対のつまみ部60を備える。一対のつまみ部60は、アウターシャフト18の軸方向中央位置よりも基端側にある基端側部分に設けられる。
【0054】
一対のつまみ部60は、術者の二本の指(例えば、親指と人差し指)でつまむために用いられる。一対のつまみ部60のそれぞれは個別の指に対応しており、その対応する指を当てることで、二本の指でつまむことのできる形状となる。また、一対のつまみ部60は、術者が二本の指でつまんだ状態で先端側及び基端側のそれぞれに向けて二本の指を動かしたときに、その指を受けることのできる形状となる。これを実現するうえで、つまみ部60は、上下方向から見て、左右方向X内側に窪む凹状をなす。このような凹状をなすうえで、本実施形態のつまみ部60は、上下方向から見て曲面状をなすが、V字状、矩形溝状等をなしていてもよい。一対のつまみ部60は、指を当てることでつまむことのできる形状を実現するうえで、軸方向に沿って延びる平面状をなしていてもよい。これにより、インナーシャフト24が閉鎖状態Sbにあるときに、術者が二本の指で一対のつまみ部60をつまむことで、体内にアウターシャフト18及びインナーシャフト24の一部を挿入した状態のまま、アウターシャフト18及びインナーシャフト24の押し引きが容易となる。
【0055】
アウターシャフト18には、一対のつまみ部60を構成するための第1つまみ構造62が設けられる。第1つまみ構造62は、左右方向Xに間隔を空けて設けられる一対の第1つまみ構成部62aと、一対の第1つまみ構成部62aとアウターシャフト18を接続しアウターシャフト18から突出する第1突出壁部62b、62cと、を備える。第1つまみ構成部62aは軸方向に延びる壁状をなす。第1突出壁部62b、62cは、一対の第1つまみ構成部62aの先端側部分とアウターシャフト18を接続する先端側突出壁部62bと、一対の第1つまみ構成部62aの後端側部分とアウターシャフト18を接続する基端側突出壁部62cとを含む。第1つまみ構造62は、更に、第1つまみ構成部62aと先端側突出壁部62bと基端側突出壁部62cに囲まれた箇所に配置される内壁部62dとを備える。第1突出壁部62b、62cは、
図12に示すように、アウターシャフト18の第1開口部22のある箇所では分断されている。また、第1突出壁部62b、62cは、
図13に示すように、アウターシャフト18の中心線C18を挟んで第1開口部22とは上下方向で正反対の箇所(
図13で中心線C18よりも紙面手前側にある箇所)では分断せずに左右方向Yに連続している。
【0056】
インナーシャフト24には、一対のつまみ部60を構成するための第2つまみ構造64が設けられる。第2つまみ構造64は、左右方向Xに間隔を空けて設けられる一対の第2つまみ構成部64aと、一対の第2つまみ構成部64aとインナーシャフト24を接続しインナーシャフト24から突出する第2突出壁部64bと、を備える。第2つまみ構成部64aは軸方向に延びる壁状をなす。第2突出壁部64bは、第2つまみ構成部64aの軸方向中間部分とインナーシャフト24を接続している。第2突出壁部64bは、インナーシャフト24の第2開口部28のある箇所では分断されている。第2突出壁部64bは、図示しないものの、アウターシャフト18の中心線C18を挟んで第2開口部28とは上下方向で正反対の箇所(
図13で中心線C18よりも紙面奥側にある箇所)では分断せずに左右方向Yに連続している。
【0057】
つまみ部60は、アウターシャフト18に設けられる第1つまみ構成部62aとインナーシャフト24に設けられる第2つまみ構成部64aとが軸方向に並ぶことで構成される。術者の指は第1つまみ構成部62aの外側面62eと第2つまみ構成部64aの外側面64eに当てられる。本実施形態において、第1つまみ構成部62aと第2つまみ構成部64aが軸方向に並ぶうえで、両者の外側面62e、64eは間隔を空けずに軸方向に並ぶように面一に設けられる。この他にも、第1つまみ構成部62aと第2つまみ構成部64aが軸方向に並ぶうえで、両者の外側面62e、6eaはわずかに間隔を空けてもよいし、両者の間に僅かに段差があってもよい。
【0058】
このように、つまみ部60は、アウターシャフト18の第1つまみ構成部62aとインナーシャフト24の第2つまみ構成部64aが並ぶことで構成される。よって、第1つまみ構成部62aと第2つまみ構成部64aに同時に指を当てた状態で一対のつまみ部60を術者の二本の指でつまむことができる。このため、アウターシャフト18及びインナーシャフト24の双方に軸方向に押し引きする力を付与することができ、これらを分離させることなく、アウターシャフト18及びインナーシャフト24の押し引きが容易となる。
【0059】
なお、第2つまみ構成部64aは、第2突出壁部64bのみによりインナーシャフト24と接続されている。第2つまみ構成部64aにおいて、第2突出壁部64bとの接続位置に対して軸方向両側部分は、インナーシャフト24から間隔を空けて設けられ、左右方向Xでの撓み変形が許容されている。これにより、第2つまみ構成部64aの基端側部分に左右方向内側に向かう外力F2を付与することで、第2つまみ構成部64aの先端側部分に設けられた弾性爪(ロック部52)の、第2ロック部54に対する引っ掛けを容易に解除することができる。
【0060】
図15(A)、
図15(B)、
図16を参照する。インナーシャフト24には、任意の構成として、ダイレータ10が閉鎖状態Sbにあるとき、第1開口部22の先端部に嵌合される嵌合部70が設けられる。本実施形態の嵌合部70はインナーシャフト24の外周部(第2テーパー部32)において径方向外側に突き出る凸部により構成される。
【0061】
嵌合部70は、軸方向から見て、溝状の第1開口部22の内周端22cから外周端22d側にかけての少なくとも一部の範囲を埋めるように第1開口部22内に嵌合されている。嵌合部70の外周面は、第1開口部22の先端位置においてはアウターシャフト18の外周面と面一となる。また、嵌合部70の外周面は、第1開口部22の先端位置から基端側に向かうに連れて、アウターシャフト18の外周面と面一となる位置から徐々に径方向内側に遠ざかるように設けられる。これにより、インナーシャフト24に嵌合部70がない場合と比べ、第1開口部22の外周端22dからインナーシャフト24の外周面(嵌合部70の外周面)までの段差を小さくすることができる。ひいては、第1開口部22内に生体組織が入り込み難くなり、第1開口部22の外周端22dとアウターシャフト18の外周面のなす角部72が生体組織に強く当たる事態を回避し易くすることができる。
【0062】
インナーシャフト24に設けられる嵌合部70の先端面70aは、アウターシャフト18の先端面18aと面一に設けられる。これにより、インナーシャフト24に嵌合部70がない場合と比べ、アウターシャフト18の先端面18aと第1開口部22の側面のなす角部74が生体組織に強く当たる事態を回避し易くすることができる。
【0063】
次に、ここまで説明した各構成要素の変形形態を説明する。
【0064】
インナーシャフト24は、ダイレータ10が閉鎖状態Sbにあるとき、第1開口部22の少なくとも先端部22aを閉鎖していればよい。これを実現するうえで、インナーシャフト24は、閉鎖状態Sbにあるとき、第1開口部22の先端部22aのみを閉鎖していてもよいし、先端部22aから基端側にかけての一部の軸方向範囲のみを閉鎖してもよい。また、ダイレータ10が開放状態Saにあるとき、アウターシャフト18からインナーシャフト24を分離させた状態にあってもよい。
【0065】
ダイレータ10が開放状態Saと閉鎖状態Sbに移行するうえで、アウターシャフト18及びインナーシャフト24の仕方は特に限定されない。例えば、ダイレータ10は、アウターシャフト18に対してインナーシャフト24を周方向又は軸方向のいずれかのみに相対移動させることで、開放状態Saと閉鎖状態Sbとの間を移行可能であってもよい。
【0066】
被ガイド部42は、アウターシャフト18及びインナーシャフト24の一方に設けられ、ガイド部40は、アウターシャフト18及びインナーシャフト24の他方に設けられていればよい。実施形態では、この「一方」がインナーシャフト24であり、「他方」がアウターシャフト18である例を説明したが、その逆であってもよい。ガイド経路44の具体例は特に限定されず、例えば、前述した周方向経路部44b、軸方向経路部44aの一方のみを備えていてもよいし、これらの少なくとも一方に加えて又はこれらを備えずに他の部位を備えていてもよい。ここでの他の部位とは、例えば、軸方向に斜めに延びる部位である。ダイレータ10が開放状態Sa及び閉鎖状態Sbのいずれにあるときも、ガイド経路44の端部に被ガイド部42が位置していなくともよい。
【0067】
ここまでロック構造50は、ダイレータ10が閉鎖状態Sbにあるときに、アウターシャフト18及びインナーシャフト24の相対移動をロック可能な例を説明した。これに替えて、ロック構造50は、ダイレータ10が開放状態Saにあるときに、両者の相対移動をロック可能であってもよい。また、ここまで、ロック構造50は、アウターシャフト18及びインナーシャフト24の相対移動に連動して両者の相対移動をロック可能であるとともに、そのロックを解除可能である例を説明した。これに替えて、ロック構造50は、押しボタン等の操作部に対する操作に連動して、各シャフト18、24の相対移動をロック可能であるとともに、そのロックを解除可能であってもよい。また、ロック構造50は、ガイド経路44による被ガイド部42のガイドを伴う軸方向での相対移動をロック可能な例を説明したが、そのガイドを伴う周方向での各シャフト18、24の相対移動をロック可能であってもよい。これは、例えば、
図11(A)に示すような、ダイレータ10が開放状態Saにあるときにロックする場合を想定している。
【0068】
実施形態ではインナーシャフト24の第2開口部28に周方向延び部58A、58Bが形成される例を説明した。これに替えて、(A)で説明した効果との関係では、アウターシャフト18の第1開口部22に周方向延び部58A、58Bが形成されてもよい。この場合、(A)で説明した効果は、「インナーシャフト24」、「第2通し孔26」、「第2開口部28」を「アウターシャフト18」、「第1通し孔20」、「第1開口部22」に置き替えて捉えればよい。アウターシャフト18及びインナーシャフト24のうちの一方を一方のシャフト、第1通し孔20及び第2通し孔26のうちの一方を一方の通し孔、第1開口部22、第2開口部28のうちの一方を一方の開口部という。実施形態では、一方のシャフト、通し孔、開口部がインナーシャフト24、第2通し孔26、第2開口部28であり、その一方の開口部(第2開口部28)に周方向延び部58A、58Bが形成される例を説明した。これに替えて、一方のシャフト、通し孔、開口部がアウターシャフト18、第1通し孔20、第1開口部22であり、その一方の開口部(第1開口部22)に周方向延び部58A、58Bが形成されてもよいということである。いずれの場合も、一方の開口部と一方の通し孔とが別に設けられる軸方向範囲において、一方の開口部に周方向延び部58A、58Bが形成されていればよい。また、第1開口部22、第2開口部28の周方向延び部58A、58Bは、それら開口部の基端部の他にも先端部に設けられていてもよいし、その中間部に設けられていてもよい。この他にも、第1開口部22及び第2開口部28の双方に周方向延び部58A、58Bが形成されてもよい。
【0069】
インナーシャフト24の基端部は、アウターシャフト18よりも基端側に位置し、そのインナーシャフト24の基端部に第2開口部28の周方向延び部58A、58Bが設けられる例を説明した。これに替えて、(B)で説明した効果との関係では、アウターシャフト18の基端部が、インナーシャフト24よりも基端側に位置し、そのアウターシャフト18の基端部に第1開口部22の周方向延び部58A、58Bが設けられてもよい。前述した一方のシャフトの基端部は、アウターシャフト18及びインナーシャフト24のうちの他方のシャフト(実施形態でいうアウターシャフト18)よりも基端側に位置し、その一方のシャフトの基端部において、一方の開口部に周方向延び部58A、58Bが設けられていてもよいともいえる。
【0070】
つまみ部60を構成するうえで、第1つまみ構成部62aと第2つまみ構成部64aは軸方向に並ぶ例を説明したが、これらは上下方向に並んでいてもよい。
【0071】
以上の実施形態及び変形形態は例示である。これらを抽象化した技術的思想は、実施形態及び変形形態の内容に限定的に解釈されるべきではない。実施形態及び変形形態の内容は、構成要素の変更、追加、削除等の多くの設計変更が可能である。前述の実施形態では、このような設計変更が可能な内容に関して、「実施形態」との表記を付して強調している。しかしながら、そのような表記のない内容でも設計変更が許容される。図面の断面に付したハッチングは、ハッチングを付した対象の材質を限定するものではない。実施形態及び変形形態において言及している構造、数値には、製造誤差等を考慮すると同一とみなすことができるものも当然に含まれる。
【符号の説明】
【0072】
10…ダイレータ、16…ガイドワイヤー、18…アウターシャフト、20…第1通し孔、22…第1開口部、22a…先端部、22b…基端部、24…インナーシャフト、26…第2通し孔、28…第2開口部、40…ガイド部、42…被ガイド部、44…ガイド経路、50…ロック構造、58A、58B…周方向延び部、60…つまみ部、62a…第1つまみ構成部、64a…第2つまみ構成部、70…嵌合部。