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特許7590489ポリアミック酸製造システム及び製造方法、並びにポリイミド製造システム及び製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-18
(45)【発行日】2024-11-26
(54)【発明の名称】ポリアミック酸製造システム及び製造方法、並びにポリイミド製造システム及び製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08G 73/10 20060101AFI20241119BHJP
【FI】
C08G73/10
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2023071353
(22)【出願日】2023-04-25
(62)【分割の表示】P 2020502937の分割
【原出願日】2019-02-14
(65)【公開番号】P2023090806
(43)【公開日】2023-06-29
【審査請求日】2023-04-25
(31)【優先権主張番号】P 2018036465
(32)【優先日】2018-03-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2018036466
(32)【優先日】2018-03-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2018069715
(32)【優先日】2018-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2018069746
(32)【優先日】2018-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2018069418
(32)【優先日】2018-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】100131705
【弁理士】
【氏名又は名称】新山 雄一
(74)【代理人】
【識別番号】100145713
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 竜太
(72)【発明者】
【氏名】豊田 倶透
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 利尚
(72)【発明者】
【氏名】古谷 浩行
(72)【発明者】
【氏名】清水 一弘
(72)【発明者】
【氏名】山口 清
【審査官】久保田 葵
(56)【参考文献】
【文献】特開昭62-214912(JP,A)
【文献】特開平01-016832(JP,A)
【文献】特開2005-105079(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G73/00-73/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
重付加性の第1重合性化合物が溶解した第1溶液と、前記第1重合性化合物と重付加する重付加性の第2重合性化合物が溶解した第2溶液とを原料としてポリアミック酸を製造するポリアミック酸製造システムであって、
前記第1溶液を供給する第1供給部と、
前記第2溶液を供給する第2供給部と、
前記第1溶液と前記第2溶液とを密閉した管内において気体に接触しない状態で合流させることにより混合して第1混合溶液を生成する第1混合部と、
前記第1混合溶液を密閉した管内において気体に接触しない状態で撹拌し、前記第1重合性化合物と前記第2重合性化合物との重合反応を進行させて、ポリアミック酸が溶解した第1重合溶液を生成する第1反応部と、を備え
前記第1混合部が、前記第1溶液が通液される管状の送液ラインと、前記第2溶液が通液される管状の送液ラインと、前記第1混合溶液が通液される管状の送液ラインとの連結部であるポリアミック酸製造システム。
【請求項2】
前記第1重合性化合物及び前記第2重合性化合物のうち、一方がテトラカルボン酸二無水物であり、他方がジアミンである請求項1に記載のポリアミック酸製造システム。
【請求項3】
前記第1重合性化合物及び前記第2重合性化合物のうち、一方が酸無水物基末端又はアミノ基末端のポリアミック酸であり、他方がジアミン又はテトラカルボン酸二無水物である請求項1に記載のポリアミック酸製造システム。
【請求項4】
前記第1重合溶液に含まれるポリアミック酸が酸無水物基末端又はアミノ基末端のポリアミック酸であり、
前記第1重合溶液に含まれる酸無水物基末端又はアミノ基末端のポリアミック酸に重付加するジアミン又はテトラカルボン酸二無水物が溶解した第3溶液を供給する第3供給部と、
前記第1重合溶液と前記第3溶液とを密閉した管内において気体に接触しない状態で合流させることにより混合して第2混合溶液を生成する第2混合部と、
前記第2混合溶液を密閉した管内において気体に接触しない状態で撹拌し、前記第2混合溶液に含まれる前記第1重合溶液からの酸無水物基末端又はアミノ基末端のポリアミック酸と、前記第3溶液からのジアミン又はテトラカルボン酸二無水物との重合反応を進行させて、ポリアミック酸が溶解した第2重合溶液を生成する第2反応部と、を更に備え、
前記第2混合部が、前記第1重合溶液が通液される管状の送液ラインと、前記第3溶液が通液される管状の送液ラインと、前記第2混合溶液が通液される管状の送液ラインとの連結部である請求項1~3のいずれか1項に記載のポリアミック酸製造システム。
【請求項5】
前記第1溶液及び前記第2溶液の少なくとも一方がフィラーを含有する請求項1~4のいずれか1項に記載のポリアミック酸製造システム。
【請求項6】
前記第1重合溶液を収容する第1クッションタンクを更に備える請求項1~3のいずれか1項に記載のポリアミック酸製造システム。
【請求項7】
前記第2重合溶液を収容する第2クッションタンクを更に備える請求項4に記載のポリアミック酸製造システム。
【請求項8】
前記第1反応部が、前記第1混合溶液の温度を調整する第1反応温度調整部を含んで構成される請求項1~7のいずれか1項に記載のポリアミック酸製造システム。
【請求項9】
前記第2反応部が、前記第2混合溶液の温度を調整する第2反応温度調整部を含んで構成される請求項4に記載のポリアミック酸製造システム。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか1項に記載のポリアミック酸製造システムと、
前記ポリアミック酸製造システムにより製造されたポリアミック酸をイミド化するイミド化部と、を備えるポリイミド製造システム。
【請求項11】
重付加性の第1重合性化合物が溶解した第1溶液と、前記第1重合性化合物と重付加する重付加性の第2重合性化合物が溶解した第2溶液とを原料としてポリアミック酸を製造するポリアミック酸製造方法であって、
前記第1溶液を供給する第1供給工程と、
前記第2溶液を供給する第2供給工程と、
前記第1溶液と前記第2溶液とを密閉した管内において気体に接触しない状態で合流させることにより混合して第1混合溶液を生成する第1混合工程と、
前記第1混合溶液を密閉した管内において気体に接触しない状態で撹拌し、前記第1重合性化合物と前記第2重合性化合物との重合反応を進行させて、ポリアミック酸が溶解した第1重合溶液を生成する第1反応工程と、を含み、
前記第1混合工程では、前記第1溶液が通液される管状の送液ラインと、前記第2溶液が通液される管状の送液ラインと、前記第1混合溶液が通液される管状の送液ラインとの連結部において、前記第1溶液と前記第2溶液とを混合して前記第1混合溶液を生成するポリアミック酸の製造方法。
【請求項12】
前記第1重合性化合物及び前記第2重合性化合物のうち、一方がテトラカルボン酸二無水物であり、他方がジアミンである請求項11に記載のポリアミック酸の製造方法。
【請求項13】
前記第1重合性化合物及び前記第2重合性化合物のうち、一方が酸無水物基末端又はアミノ基末端のポリアミック酸であり、他方がジアミン又はテトラカルボン酸二無水物である請求項11に記載のポリアミック酸の製造方法。
【請求項14】
前記第1重合溶液に含まれるポリアミック酸が酸無水物基末端又はアミノ基末端のポリアミック酸であり、
前記第1重合溶液に含まれる酸無水物基末端又はアミノ基末端のポリアミック酸に重付加するジアミン又はテトラカルボン酸二無水物が溶解した第3溶液を供給する第3供給工程と、
前記第1重合溶液と前記第3溶液とを密閉した管内において気体に接触しない状態で合流させることにより混合して第2混合溶液を生成する第2混合工程と、
前記第2混合溶液を密閉した管内において気体に接触しない状態で撹拌し、前記第2混合溶液に含まれる前記第1重合溶液からの酸無水物基末端又はアミノ基末端のポリアミック酸と、前記第3溶液からのジアミン又はテトラカルボン酸二無水物との重合反応を進行させて、ポリアミック酸が溶解した第2重合溶液を生成する第2反応工程と、を更に含み、
前記第2混合工程では、前記第1重合溶液が通液される管状の送液ラインと、前記第3溶液が通液される管状の送液ラインと、前記第2混合溶液が通液される管状の送液ラインとの連結部において、前記第1重合溶液と前記第3溶液とを混合して前記第2混合溶液を生成する請求項11~13のいずれか1項に記載のポリアミック酸の製造方法。
【請求項15】
前記第1溶液及び前記第2溶液の少なくとも一方がフィラーを含有する請求項11~14のいずれか1項に記載のポリアミック酸の製造方法。
【請求項16】
前記第1重合溶液を第1クッションタンクに収容する第1収容工程を更に含む請求項11~13のいずれか1項に記載のポリアミック酸の製造方法。
【請求項17】
前記第2重合溶液を第2クッションタンクに収容する第2収容工程を更に含む請求項14に記載のポリアミック酸の製造方法。
【請求項18】
前記第1反応工程では、第1反応温度調整部により前記第1混合溶液の温度を調整する請求項11~17のいずれか1項に記載のポリアミック酸の製造方法。
【請求項19】
前記第2反応工程では、第2反応温度調整部により前記第2混合溶液の温度を調整する請求項14に記載のポリアミック酸の製造方法。
【請求項20】
請求項11~19のいずれか1項に記載の製造方法によりポリアミック酸を製造するポリアミック酸製造工程と、
前記ポリアミック酸製造工程において製造されたポリアミック酸をイミド化するイミド化工程と、を含むポリイミドの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリイミドの前駆体であるポリアミック酸を製造するポリアミック酸製造システム及び製造方法、並びにポリイミドを製造するポリイミド製造システム及び製造方法に関する。詳細には、本発明は、ポリアミック酸を連続的に製造可能なポリアミック酸製造システム及び製造方法、並びにポリイミドを連続的に製造可能なポリイミド製造システム及び製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ポリアミック酸の製造方法として、撹拌槽を利用するバッチ方式の製造方法が知られている。バッチ方式の製造方法においては、撹拌槽に注入された原料溶液を撹拌して重合反応を進行させているが、この場合、撹拌によって撹拌槽上部の気相が液相中に巻き込まれてしまい、重合溶液中に気泡が含まれた状態になる。そして、ポリアミック酸を利用したポリイミドフィルム作製のためにキャストした場合、重合溶液中に気泡が残っているとフィルム欠陥となる。重合溶液中に気泡が存在することは、品質面における大きな課題となる。
【0003】
これに対し、例えば、重合溶液の効率的な脱気方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。しかし、特許文献1に開示された方法は、減圧設備を必要とするため、実施には高額な設備費用が必要になる場合があった。また、本方法においては、長い脱気時間が必要であり、生産性が低下する場合があった。
【0004】
また、連続的なポリアミック酸の製造方法として、例えば、チューブ状等の管型反応器を用いてポリアミック酸(ポリアミド酸)の微粒子を製造する方法が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第2741208号公報
【文献】特開2006-249380号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述の通り、撹拌槽を利用したバッチ方式の製造方法においては、気泡の発生という課題がある。これに対し、特許文献2に開示された方法のように、チューブ状等の管型反応器を利用する場合には、気泡の発生に関する課題は少ない。
【0007】
しかし、特許文献2に開示された方法は、ポリアミック酸の微粒子を製造する場合には適しているものの、溶液に溶解した状態でポリアミック酸を製造する場合には、所望のポリアミック酸を安定的に得ることが難しいという課題があった。
【0008】
本発明は、連続的且つ安定的なポリアミック酸の製造が可能であるとともに、製造時における気泡の発生を抑制可能なポリアミック酸製造システム及び製造方法を提供することを目的とする。また、本発明は、連続的且つ安定的なポリイミドの製造が可能であるとともに、製造時における気泡の発生を抑制可能なポリイミド製造システム及び製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための具体的な手段には、以下の実施態様が含まれる。
<1> 重付加性の第1重合性化合物が溶解した第1溶液と、前記第1重合性化合物と重付加する重付加性の第2重合性化合物が溶解した第2溶液とを原料としてポリアミック酸を製造するポリアミック酸製造システムであって、
前記第1溶液を供給する第1供給部と、
前記第2溶液を供給する第2供給部と、
前記第1溶液と前記第2溶液とを密閉した管内において気体に接触しない状態で合流させることにより混合して第1混合溶液を生成する第1混合部と、
前記第1混合溶液を密閉した管内において気体に接触しない状態で撹拌し、前記第1重合性化合物と前記第2重合性化合物との重合反応を進行させて、ポリアミック酸が溶解した第1重合溶液を生成する第1反応部と、を備え
前記第1混合部が、前記第1溶液が通液される管状の送液ラインと、前記第2溶液が通液される管状の送液ラインと、前記第1混合溶液が通液される管状の送液ラインとの連結部であるポリアミック酸製造システム。
【0017】
> 前記第1重合性化合物及び前記第2重合性化合物のうち、一方がテトラカルボン酸二無水物であり、他方がジアミンである<1>に記載のポリアミック酸製造システム。
【0018】
> 前記第1重合性化合物及び前記第2重合性化合物のうち、一方が酸無水物基末端又はアミノ基末端のポリアミック酸であり、他方がジアミン又はテトラカルボン酸二無水物である<1>に記載のポリアミック酸製造システム。
【0019】
> 前記第1重合溶液に含まれるポリアミック酸が酸無水物基末端又はアミノ基末端のポリアミック酸であり、
前記第1重合溶液に含まれる酸無水物基末端又はアミノ基末端のポリアミック酸に重付加するジアミン又はテトラカルボン酸二無水物が溶解した第3溶液を供給する第3供給部と、
前記第1重合溶液と前記第3溶液とを密閉した管内において気体に接触しない状態で合流させることにより混合して第2混合溶液を生成する第2混合部と、
前記第2混合溶液を密閉した管内において気体に接触しない状態で撹拌し、前記第2混合溶液に含まれる前記第1重合溶液からの酸無水物基末端又はアミノ基末端のポリアミック酸と、前記第3溶液からのジアミン又はテトラカルボン酸二無水物との重合反応を進行させて、ポリアミック酸が溶解した第2重合溶液を生成する第2反応部と、を更に備え
前記第2混合部が、前記第1重合溶液が通液される管状の送液ラインと、前記第3溶液が通液される管状の送液ラインと、前記第2混合溶液が通液される管状の送液ラインとの連結部である<1>~<>のいずれか1項に記載のポリアミック酸製造システム。
<5> 前記第1溶液及び前記第2溶液の少なくとも一方がフィラーを含有する<1>~<4>のいずれか1項に記載のポリアミック酸製造システム。
<6> 前記第1重合溶液を収容する第1クッションタンクを更に備える<1>~<3>のいずれか1項に記載のポリアミック酸製造システム。
<7> 前記第2重合溶液を収容する第2クッションタンクを更に備える<4>に記載のポリアミック酸製造システム。
<8> 前記第1反応部が、前記第1混合溶液の温度を調整する第1反応温度調整部を含んで構成される<1>~<7>のいずれか1項に記載のポリアミック酸製造システム。
<9> 前記第2反応部が、前記第2混合溶液の温度を調整する第2反応温度調整部を含んで構成される<4>に記載のポリアミック酸製造システム。
【0020】
10> <1>~<>のいずれか1項に記載のポリアミック酸製造システムと、
前記ポリアミック酸製造システムにより製造されたポリアミック酸をイミド化するイミド化部と、を備えるポリイミド製造システム。
【0021】
11> 重付加性の第1重合性化合物が溶解した第1溶液と、前記第1重合性化合物と重付加する重付加性の第2重合性化合物が溶解した第2溶液とを原料としてポリアミック酸を製造するポリアミック酸製造方法であって、
前記第1溶液を供給する第1供給工程と、
前記第2溶液を供給する第2供給工程と、
前記第1溶液と前記第2溶液とを密閉した管内において気体に接触しない状態で合流させることにより混合して第1混合溶液を生成する第1混合工程と、
前記第1混合溶液を密閉した管内において気体に接触しない状態で撹拌し、前記第1重合性化合物と前記第2重合性化合物との重合反応を進行させて、ポリアミック酸が溶解した第1重合溶液を生成する第1反応工程と、を含み、
前記第1混合工程では、前記第1溶液が通液される管状の送液ラインと、前記第2溶液が通液される管状の送液ラインと、前記第1混合溶液が通液される管状の送液ラインとの連結部において、前記第1溶液と前記第2溶液とを混合して前記第1混合溶液を生成するポリアミック酸の製造方法。
【0029】
12> 前記第1重合性化合物及び前記第2重合性化合物のうち、一方がテトラカルボン酸二無水物であり、他方がジアミンである<11>に記載のポリアミック酸の製造方法。
【0030】
13> 前記第1重合性化合物及び前記第2重合性化合物のうち、一方が酸無水物基末端又はアミノ基末端のポリアミック酸であり、他方がジアミン又はテトラカルボン酸二無水物である<11>に記載のポリアミック酸の製造方法。
【0031】
14> 前記第1重合溶液に含まれるポリアミック酸が酸無水物基末端又はアミノ基末端のポリアミック酸であり、
前記第1重合溶液に含まれる酸無水物基末端又はアミノ基末端のポリアミック酸に重付加するジアミン又はテトラカルボン酸二無水物が溶解した第3溶液を供給する第3供給工程と、
前記第1重合溶液と前記第3溶液とを密閉した管内において気体に接触しない状態で合流させることにより混合して第2混合溶液を生成する第2混合工程と、
前記第2混合溶液を密閉した管内において気体に接触しない状態で撹拌し、前記第2混合溶液に含まれる前記第1重合溶液からの酸無水物基末端又はアミノ基末端のポリアミック酸と、前記第3溶液からのジアミン又はテトラカルボン酸二無水物との重合反応を進行させて、ポリアミック酸が溶解した第2重合溶液を生成する第2反応工程と、を更に含み、
前記第2混合工程では、前記第1重合溶液が通液される管状の送液ラインと、前記第3溶液が通液される管状の送液ラインと、前記第2混合溶液が通液される管状の送液ラインとの連結部において、前記第1重合溶液と前記第3溶液とを混合して前記第2混合溶液を生成する11>~<13>のいずれか1項に記載のポリアミック酸の製造方法。
<15> 前記第1溶液及び前記第2溶液の少なくとも一方がフィラーを含有する<11>~<14>のいずれか1項に記載のポリアミック酸の製造方法。
<16> 前記第1重合溶液を第1クッションタンクに収容する第1収容工程を更に含む<11>~<13>のいずれか1項に記載のポリアミック酸の製造方法。
<17> 前記第2重合溶液を第2クッションタンクに収容する第2収容工程を更に含む<14>に記載のポリアミック酸の製造方法。
<18> 前記第1反応工程では、第1反応温度調整部により前記第1混合溶液の温度を調整する<11>~<17>のいずれか1項に記載のポリアミック酸の製造方法。
<19> 前記第2反応工程では、第2反応温度調整部により前記第2混合溶液の温度を調整する<14>に記載のポリアミック酸の製造方法。
【0032】
20> <11>~<19>のいずれか1項に記載の製造方法によりポリアミック酸を製造するポリアミック酸製造工程と、
前記ポリアミック酸製造工程において製造されたポリアミック酸をイミド化するイミド化工程と、を含むポリイミドの製造方法。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、連続的且つ安定的なポリアミック酸の製造が可能であるとともに、製造時における気泡の発生を抑制可能なポリアミック酸製造システム及び製造方法を提供することができる。また、本発明によれば、連続的且つ安定的なポリイミドの製造が可能であるとともに、製造時における気泡の発生を抑制可能なポリイミド製造システム及び製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】第1実施形態におけるポリアミック酸製造システムを示す図である。
図2】第1実施形態におけるポリアミック酸の製造方法を説明するフロー図である。
図3】第2実施形態におけるポリアミック酸製造システムを示す図である。
図4】第2実施形態におけるポリアミック酸の製造方法を説明するフロー図である。
図5】第3実施形態におけるポリアミック酸製造システムを示す図である。
図6】第3実施形態におけるポリアミック酸製造システムのブロック図である。
図7】第3実施形態におけるポリアミック酸製造システムの動作を説明するフロー図である。
図8】第3実施形態におけるポリアミック酸製造システムの他の動作を説明するフロー図である。
図9】第4実施形態におけるポリアミック酸製造システムを示す図である。
図10】第4実施形態におけるポリアミック酸製造システムのブロック図である。
図11】第4実施形態におけるポリアミック酸製造システムの動作を説明するフロー図である。
図12】第4実施形態におけるポリアミック酸製造システムの他の動作を説明するフロー図である。
図13】第5実施形態におけるポリアミック酸製造システムを示す図である。
図14】第5実施形態における制御前後の流量波形を示す図である。
図15】第5実施形態におけるポリアミック酸製造システムの動作を説明するフロー図である。
図16】第6実施形態におけるポリアミック酸製造システムを示す図である。
図17】第6実施形態におけるポリアミック酸製造システムの動作を説明するフロー図である。
図18】第7実施形態におけるポリアミック酸製造システムを示す図である。
図19】第7実施形態における制御前後の流量波形を示す図である。
図20】第7実施形態におけるポリアミック酸製造システムの動作を説明するフロー図である。
図21】第8実施形態におけるポリアミック酸製造システムを示す図である。
図22】第8実施形態におけるポリアミック酸製造システムの動作を説明するフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0036】
<第1実施形態>
図1及び図2により、第1実施形態におけるポリアミック酸製造システムについて説明する。第1実施形態は、反応部が1段であるポリアミック酸製造システムの例である。
【0037】
まず、図1により、第1実施形態におけるポリアミック酸製造システム1の概要について説明する。
ポリアミック酸製造システム1は、重付加性の第1重合性化合物が溶解した第1溶液A1と、第1重合性化合物と重付加する重付加性の第2重合性化合物が溶解した第2溶液A2とを原料としてポリアミック酸を製造するシステムである。
【0038】
以下では一例として、第1重合性化合物及び第2重合性化合物のうち、一方がテトラカルボン酸二無水物であり、他方がジアミンである場合について説明する。より具体的には、第1溶液A1に含まれる第1重合性化合物がテトラカルボン酸二無水物であり、第2溶液A2に含まれる第2重合性化合物がジアミンである場合について説明する。
【0039】
テトラカルボン酸二無水物としては、特に制限されず、従来のポリイミド合成で用いられているものと同様のものを用いることができる。テトラカルボン酸二無水物の具体例としては、3,3',4,4'-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3',4,4'-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3',4'-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ピロメリット酸二無水物、1,3-ビス(2,3-ジカルボキシフェノキシ)ベンゼン二無水物、1,4-ビス(2,3-ジカルボキシフェノキシ)ベンゼン二無水物、2,3,3',4'-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2',3,3'-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2',3,3'-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2',6,6'-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ナフタレン-1,2,4,5-テトラカルボン酸二無水物、アントラセン-2,3,6,7-テトラカルボン酸二無水物、フェナンスレン-1,8,9,10-テトラカルボン酸二無水物、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパンジベンゾエート-3,3’,4,4’-テトラカルボン酸酸二無水物等の芳香族テトラカルボン酸二無水物;ブタン-1,2,3,4-テトラカルボン酸二無水物等の脂肪族テトラカルボン酸二無水物;シクロブタン-1,2,3,4-テトラカルボン酸二無水物等の脂環族テトラカルボン酸二無水物;チオフェン-2,3,4,5-テトラカルボン酸二無水物、ピリジン-2,3,5,6-テトラカルボン酸二無水物等の複素環族テトラカルボン酸二無水物;などが挙げられる。テトラカルボン酸二無水物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0040】
第1溶液A1の溶媒としては、テトラカルボン酸二無水物及びポリアミック酸が溶解するものが用いられる。溶媒の具体例としては、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、アセトアニリド等のアミド系溶媒;γ-ブチロラクトン等の環状エステル系溶媒;酢酸エチル等の鎖状エステル系溶媒;2-プロパノン、3-ペンタノン、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒;テトラヒドロフラン、ジオキソラン等のエーテル系溶媒;メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール系溶媒;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒;などが挙げられる。これらの中でも、ポリアミック酸の溶解性が高いアミド系溶媒、環状エステル系溶媒、及びエーテル系溶媒が好ましい。溶媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合してもよい。例えば、アセトン、酢酸エチル、メチルエチルケトン、トルエン、キシレン等のポリアミック酸の溶解性が比較的低い溶媒に対して極性の高いアルコ―ル系溶媒を混合することで、ポリアミック酸の溶解性を向上させることも可能である。
【0041】
第1溶液A1は、テトラカルボン酸二無水物の溶解性を高め、又はジアミンとの反応性を高めるため、トリメチルアミン、トリエチルアミン等の第3級アミンを少量含有していてもよい。
【0042】
ジアミンとしては、特に制限されず、従来のポリイミド合成で用いられているものと同様のものを用いることができる。ジアミンの具体例としては、4,4'-ジアミノジフェニルメタン、4,4'-ジアミノジフェニルエーテル、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、4,4'-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、1,4'-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3'-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、o-フェニレンジアミン、m-フェニレンジアミン、p-フェニレンジアミン、3,4'-ジアミノジフェニルエーテル、4,4'-ジアミノジフェニルスルフォン、3,4’-ジアミノジフェニルスルフォン、3,3'-ジアミノジフェニルスルフォン、4,4'-メチレン-ビス(2-クロロアニリン)、3,3'-ジメチル-4,4'-ジアミノビフェニル、4,4'-ジアミノジフェニルスルフィド、2,6-ジアミノトルエン、2,4-ジアミノクロロベンゼン、1,2-ジアミノアントラキノン、1,4-ジアミノアントラキノン、3,3'-ジアミノベンゾフェノン、3,4’-ジアミノベンゾフェノン、4,4'-ジアミノベンゾフェノン、4,4'-ジアミノビベンジル等の芳香族ジアミン;1,2-ジアミノエタン、1,4-ジアミノブタン、テトラメチレンジアミン、1,10-ジアミノドデカン等の脂肪族ジアミン;1,4-ジアミノシクロヘキサン、1,2-ジアミノシクロヘキサン、ビス(4-アミノシクロヘキシル)メタン、4,4'-ジアミノジシクロヘキシルメタン等の脂環族ジアミン;3,4-ジアミノピリジン等の複素環族ジアミン;などが挙げられる。ジアミンは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0043】
第2溶液A2の溶媒としては、ジアミン及びポリアミック酸が溶解するものが用いられる。溶媒の具体例としては、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、アセトアニリド等のアミド系溶媒;γ-ブチロラクトン等の環状エステル系溶媒;酢酸エチル等の鎖状エステル系溶媒;2-プロパノン、3-ペンタノン、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒;テトラヒドロフラン、ジオキソラン等のエーテル系溶媒;メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール系溶媒;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒;などが挙げられる。これらの中でも、ポリアミック酸の溶解性が高いアミド系溶媒、環状エステル系溶媒、及びエーテル系溶媒が好ましい。溶媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合してもよい。例えば、アセトン、酢酸エチル、メチルエチルケトン、トルエン、キシレン等のポリアミック酸の溶解性が比較的低い溶媒に対して極性の高いアルコ―ル系溶媒を混合することで、ポリアミック酸の溶解性を向上させることも可能である。
【0044】
図1に示すように、ポリアミック酸製造システム1は、原料である第1溶液A1及び第2溶液A2を第1混合部20において混合して第1混合溶液Bを生成し、第1反応部30において重合反応を進行させて第1重合溶液Cを生成することで、ポリアミック酸を製造するよう構成されている。
【0045】
ここで、ポリアミック酸製造システム1は、後述の第1タンク11及び第2タンク12から第1クッションタンク40までを密閉した状態でつなぐ管状の送液ラインLを有する。これにより、ポリアミック酸製造システム1は、第1混合溶液Bや第1重合溶液Cに気泡を発生させない状態で連続的にポリアミック酸を製造することができる。
【0046】
続けて、ポリアミック酸製造システム1の具体的な構成について説明する。
図1に示すように、ポリアミック酸製造システム1は、第1タンク11と、第2タンク12と、第1供給ポンプ15(第1供給部)と、第2供給ポンプ16(第2供給部)と、第1混合部20と、第1反応部30と、第1クッションタンク40と、送液ラインLと、を備える。上述の送液ラインLは、第1送液部L1と、第2送液部L2と、第3送液部L3と、を有する。
【0047】
第1タンク11は、重付加性の第1重合性化合物が溶解した第1溶液A1を収容する。本実施形態においては、第1タンク11は、テトラカルボン酸二無水物が溶解した第1溶液A1を収容する。第1タンク11に収容された第1溶液A1は、第1送液部L1を介して、第1混合部20に供給される。
【0048】
第2タンク12は、第1重合性化合物と重付加する重付加性の第2重合性化合物が溶解した第2溶液A2を収容する。本実施形態においては、第2タンク12は、ジアミンが溶解した第2溶液A2を収容する。第2タンク12に収容された第2溶液A2は、第2送液部L2を介して、第1混合部20に供給される。
【0049】
第1供給ポンプ15(第1供給部)は、第1タンク11に収容されている第1溶液A1を第1混合部20に供給する。第1供給ポンプ15は、第1溶液A1を所定の送液量で供給する。例えば、第1供給ポンプ15は、所望の性状のポリアミック酸が得られる条件で第1溶液A1を供給するよう調整される。
【0050】
第2供給ポンプ16(第2供給部)は、第2タンク12に収容されている第2溶液A2を第1混合部20に供給する。第2供給ポンプ16は、第2溶液A2を所定の送液量で供給する。例えば、第2供給ポンプ16は、所望の性状のポリアミック酸が得られる条件で第2溶液A2を供給するよう調整される。
【0051】
第1混合部20は、第1供給ポンプ15及び第2供給ポンプ16の下流側に配置される。第1混合部20は、第1溶液A1と第2溶液A2とを混合して第1混合溶液Bを生成する。第1混合部20は、第1供給ポンプ15により供給される第1溶液A1と、第2供給ポンプ16により供給される第2溶液A2とを合流させる合流弁により構成される。
【0052】
第1反応部30は、第1混合溶液Bに含まれる第1重合性化合物と第2重合性化合物との重合反応を進行させる部分である。第1反応部30において、第1混合溶液Bに含まれる第1重合性化合物と第2重合性化合物との重合反応が徐々に進行し、第1重合溶液Cが得られる。
【0053】
第1反応部30は、所定方向に延びる二重管で構成され、径方向の内側に配置される第1反応撹拌部31と、径方向の外側に配置される第1反応温度調整部32と、を有する。第1反応部30は、第1混合溶液Bが所望の滞留時間で流通するように形成されている。
【0054】
第1反応撹拌部31は、第1溶液A1及び第2溶液A2が混合された第1混合溶液Bを気体に接触しない状態で撹拌する。本実施形態において、第1反応撹拌部31は、第1反応温度調整部32により重合反応に適した温度に調整された第1混合溶液Bを気体に接触しない状態で撹拌する。
【0055】
第1反応撹拌部31は、例えば、スタティックミキサー、ノズル、オリフィス等の静止型混合器や、遠心ポンプ、渦巻きポンプ、撹拌羽を有するインラインミキサー等の駆動型混合器を含んで構成され、好ましくは静止型混合器を含んで構成され、より好ましくはスタティックミキサーを含んで構成される。なお、ツイストテープの内挿された管(特開2003-314982号公報の[図19]等を参照)でもスタティックミキサーと同様に撹拌促進効果が得られるが、スタティックミキサーの方がより撹拌促進効果が得られるため好ましい。
【0056】
スタティックミキサーとしては、特に限定されず、例えば、Kenics mixer型、Sulzer SMV型、Sulzer SMX型、Tray Hi-mixer型、Komax mixer型、Lightnin mixer型、Ross ISG型、Bran&Lube mixer型等のスタティックミキサーが挙げられる。これらの中でも、Kenics mixer型のスタティックミキサーは、構造が単純であるためデッドスペースがなく、より好ましい。
【0057】
第1反応温度調整部32は、第1反応撹拌部31の径方向の外側に配置される配管部である。第1反応温度調整部32は、第1反応撹拌部31を流通する第1混合溶液Bを、所望の温度条件に温調(例えば、冷却)する。第1反応温度調整部32において、第1混合溶液Bは、重合反応に適した温度に調整され、第1反応撹拌部31を流通される。
【0058】
第1クッションタンク40は、第1反応部30からの第1重合溶液Cを収容する。第1クッションタンク40は、例えば、ポリアミック酸をイミド化してポリイミドを製造する際においては原料溶液を収容するタンクになる。
【0059】
本実施形態におけるポリアミック酸製造システム1がポリイミドを製造するポリイミド製造システムの一部である場合がある。この場合、ポリイミド製造システムは、ポリアミック酸をイミド化するイミド化部を更に備える。イミド化部(不図示)は、例えば、熱的に脱水閉環する熱的イミド化方法、脱水剤及びイミド化促進剤を用いる化学的イミド化方法等により、ポリアミック酸をイミド化する。
【0060】
なお、本実施形態におけるポリアミック酸製造システム1がポリイミドを製造するポリイミド製造システムの一部である場合、第1クッションタンク40を省略し、第1反応部30からイミド化部に送液されるように構成してもよい。ただし、上記のように、ポリアミック酸を一旦、第1クッションタンク40に収容しておく方が好ましい。
【0061】
次に、図2により、第1実施形態におけるポリアミック酸の製造方法を説明する。
図2に示すように、第1供給工程ST11において、第1供給ポンプ15は、第1タンク11に収容されている第1溶液A1を第1混合部20へ供給する。
また、並行して、第2供給工程ST12において、第2供給ポンプ16は、第2タンク12に収容されている第2溶液A2を第1混合部20へ供給する。
【0062】
次いで、第1混合工程ST13において、第1混合部20は、第1供給ポンプ15により供給された第1溶液A1と、第2供給ポンプ16により供給された第2溶液A2とを合流させて混合し、第1混合溶液Bを生成する。
【0063】
次いで、第1反応工程ST14において、第1反応部30は、第1混合溶液Bに含まれる第1重合性化合物と第2重合性化合物との重合反応を進行させて、ポリアミック酸が溶解した第1重合溶液Cを生成する。具体的に、第1反応撹拌部31は、第1反応温度調整部32で重合反応に適した温度に調整された第1混合溶液Bを気体に接触しない状態で撹拌して重合反応を進行させ、第1重合溶液Cを生成する。第1反応撹拌部31がスタティックミキサー等の静止型混合器である場合、第1混合溶液Bは通液されるだけで撹拌される。
【0064】
ここで、例えば、本実施形態におけるポリアミック酸の製造方法がポリイミドの製造方法の一部である場合がある。この場合、ポリイミドの製造方法は、ポリアミック酸をイミド化するイミド化工程を更に含む。
【0065】
本実施形態のポリアミック酸製造システム1によれば、以下の効果を奏する。
ポリアミック酸製造システム1は、第1溶液A1及び第2溶液A2が混合された第1混合溶液Bを気体に接触しない状態で撹拌し、ポリアミック酸が溶解した第1重合溶液Cを生成する第1反応部30を備える。このようなポリアミック酸製造システム1によれば、連続的且つ安定的なポリアミック酸の製造が可能であるとともに、製造時における気泡の発生を抑制可能である。具体的には、ポリアミック酸製造システム1によれば、ポリアミック酸が溶解した第1重合溶液Cを連続的且つ安定的に製造可能であるとともに、第1重合溶液Cに気泡が発生することを抑制できる。
【0066】
また、ポリアミック酸製造システム1において、第1反応部30は、静止型混合器を有して構成されることがある。例えば、ポリアミック酸製造システム1では、第1反応部30を構成する第1反応撹拌部31として静止型混合器を配置できる。これにより、ポリアミック酸製造システム1によれば、第1反応撹拌部31に通液するだけで、第1混合溶液Bを撹拌できる。
【0067】
なお、本実施形態では、第1重合性化合物及び第2重合性化合物のうち、一方がテトラカルボン酸二無水物であり、他方がジアミンである場合について説明したが、これに限定されるものではない。例えば、第1重合性化合物及び第2重合性化合物のうち、一方が酸無水物基末端又はアミノ基末端のポリアミック酸(プレポリマー)であり、他方がジアミン又はテトラカルボン酸二無水物であってもよい。この場合、第1重合性化合物及び第2重合性化合物のうち、一方が酸無水物基末端のポリアミック酸であると、他方はジアミンである。また、第1重合性化合物及び第2重合性化合物のうち、一方がアミノ基末端のポリアミック酸であると、他方はテトラカルボン酸二無水物である。
【0068】
また、本実施形態では、第1反応部30が第1反応撹拌部31と第1反応温度調整部32との二重管で構成される場合について説明したが、これに限定されるものではない。例えば、第1反応部30を第1反応撹拌部31のみの一重管で構成し、この第1反応撹拌部31を温調用の液に浸漬するようにしてもよい。
【0069】
また、本実施形態では、第1タンク11及び第2タンク12から第1クッションタンク40までを、管状の送液ラインLにより密閉した状態でつなぐ場合について説明したが、これに限定されるものではない。例えば、第1重合溶液Cに気泡が発生することを抑制するためには、少なくとも第1反応部30が気体と接触しない状態で溶液を撹拌可能なものであればよい。ただし、上述のように送液ラインLの全体で溶液が気体と接触しないことがより好ましい。
【0070】
また、本実施形態では、第1混合溶液Bを気体に接触しない状態で撹拌する反応部(第1反応部)が1つである場合について説明したが、これに限定されるものではない。例えば、第1混合溶液Bを気体に接触しない状態で撹拌する反応部は、混合撹拌部と、混合撹拌部の下流側に連続して配置される反応撹拌部と、を有するものであってもよい。混合撹拌部及び反応撹拌部は、第1反応部30と同様に、静止型混合器を有して構成することができる。この場合、混合撹拌部は、第1混合溶液Bを気体に接触しない状態で撹拌し、反応撹拌部は、混合撹拌部で撹拌された溶液を気体に接触しない状態で更に撹拌し、第1重合溶液Cを生成する。このようなポリアミック酸製造システムによれば、製造されるポリアミック酸の品質や歩留まり等をより向上させることができる。
【0071】
<第2実施形態>
次に、図3及び図4により、第2実施形態におけるポリアミック酸製造システムについて説明する。第2実施形態は、処理部(反応部)が2段であるポリアミック酸製造システムの例である。
【0072】
まず、図3により、第2実施形態におけるポリアミック酸製造システム1Aについて説明する。
図3に示すように、ポリアミック酸製造システム1Aは、第1処理部K1と、第2処理部K2と、を有する。
【0073】
第1処理部K1は、第1実施形態におけるポリアミック酸製造システム1と同様の構成であるため、本実施形態での詳細な説明を省略する。第1処理部K1における構成要件や動作等については、第1実施形態における説明を援用できる。ただし、第1処理部K1で製造される第1重合溶液Cは、酸無水物基末端又はアミノ基末端のポリアミック酸(プレポリマー)を含むものとする。
【0074】
第2処理部K2は、第1処理部K1(第1実施形態におけるポリアミック酸製造システム1)により製造された第1重合溶液Cと、第3溶液A3とを原料として重合反応を更に進行させ、(より分子量の大きい)ポリアミック酸を製造する。第2処理部K2は、基本的な構成は第1処理部K1と同様であるが、第1処理部K1により製造された第1重合溶液Cを原料としてポリアミック酸を製造する点で第1処理部K1と相違する。
【0075】
第2処理部K2は、第3タンク13と、第3供給ポンプ17(第3供給部)と、第2混合部50と、第2反応部60と、第2クッションタンク70と、送液ラインLの一部と、を備える。上述の送液ラインLの一部は、第4送液部L4と、第5送液部L5と、を有する。
【0076】
第3タンク13は、第1重合溶液Cに含まれる酸無水物基末端又はアミノ基末端のポリアミック酸に重付加するジアミン又はテトラカルボン酸二無水物が溶解した第3溶液A3を収容する。第3タンク13に収容された第3溶液A3は、第4送液部L4を介して、第2混合部50に供給される。
【0077】
以下では一例として、第1重合溶液Cが酸無水物基末端のポリアミック酸を含み、第3溶液A3がジアミンを含む場合について説明する。
【0078】
第3供給ポンプ17(第3供給部)は、第3タンク13に収容されている第3溶液A3を第2混合部50に供給する。第3供給ポンプ17は、第3溶液A3を所定の送液量で供給する。例えば、第3供給ポンプ17は、所望の性状のポリアミック酸が得られる条件で第3溶液A3を供給するよう調整される。第3供給ポンプ17における供給量は、第1重合溶液Cにおける性状や組成に応じて設定できる。また、第3供給ポンプ17における供給量は、第1重合溶液Cにおける反応率等に応じて設定できる。言い換えると、第3供給ポンプ17における供給量は、目標とする性状、組成や反応率になるような供給量に調整できる。
【0079】
第2混合部50は、第1処理部K1の第1反応部30及び第3供給ポンプ17の下流側に配置される。第2混合部50は、第1反応部30からの第1重合溶液Cと、第3供給ポンプ17からの第3溶液A3とを混合して第2混合溶液Dを生成する。第2混合部50は、第1反応部30からの第1重合溶液Cと、第3供給ポンプ17からの第3溶液A3とを合流させる合流弁により構成される。
【0080】
第2反応部60は、所定方向に延びる二重管で構成され、径方向の内側に配置される第2反応撹拌部61と、径方向の外側に配置される第2反応温度調整部62と、を有する。第2反応部60は、第2混合溶液Dが所望の滞留時間で流通するように形成されている。
【0081】
第2反応撹拌部61は、第1重合溶液C及び第3溶液A3が混合された第2混合溶液Dを気体に接触しない状態で撹拌する。本実施形態において、第2反応撹拌部61は、第2反応温度調整部62により重合反応に適した温度に調整された第2混合溶液Dを気体に接触しない状態で撹拌する。
【0082】
第2反応撹拌部61は、例えば、スタティックミキサー、ノズル、オリフィス等の静止型混合器や、遠心ポンプ、渦巻きポンプ、撹拌羽を有するインラインミキサー等の駆動型混合器を含んで構成され、好ましくは静止型混合器を含んで構成され、より好ましくはスタティックミキサーを含んで構成される。なお、上述の通り、ツイストテープの内挿された管でもスタティックミキサーと同様に撹拌促進効果が得られるが、スタティックミキサーの方がより撹拌促進効果が得られるため好ましい。
【0083】
スタティックミキサーとしては、特に限定されず、例えば、Kenics mixer型、Sulzer SMV型、Sulzer SMX型、Tray Hi-mixer型、Komax mixer型、Lightnin mixer型、Ross ISG型、Bran&Lube mixer型等のスタティックミキサーが挙げられる。これらの中でも、Kenics mixer型のスタティックミキサーは、構造が単純であるためデッドスペースがなく、より好ましい。
【0084】
第2反応温度調整部62は、第2反応撹拌部61の径方向の外側に配置される配管部である。第2反応温度調整部62は、第2反応撹拌部61を流通する第2混合溶液Dを、所望の温度条件に温調(例えば、冷却)する。第2反応温度調整部62において、第2混合溶液Dは、重合反応に適した温度に調整され、第2反応撹拌部61を流通される。
【0085】
第2クッションタンク70は、第2反応部60からの第2重合溶液Eを収容する。第2クッションタンク70は、例えば、ポリアミック酸をイミド化してポリイミドを製造する際においては原料溶液を収容するタンクになる。
【0086】
本実施形態におけるポリアミック酸製造システム1Aがポリイミドを製造するポリイミド製造システムの一部である場合がある。この場合、ポリイミド製造システムは、ポリアミック酸をイミド化するイミド化部を更に備える。イミド化部(不図示)は、例えば、熱的に脱水閉環する熱的イミド化方法、脱水剤及びイミド化促進剤を用いる化学的イミド化方法等により、ポリアミック酸をイミド化する。
【0087】
なお、本実施形態におけるポリアミック酸製造システム1がポリイミドを製造するポリイミド製造システムの一部である場合、第2クッションタンク70を省略し、第2反応部60からイミド化部に送液されるように構成してもよい。ただし、上記のように、ポリアミック酸を一旦、第2クッションタンク70に収容しておく方が好ましい。
【0088】
次に、図4により、第2実施形態におけるポリアミック酸の製造方法を説明する。
ここで、本実施形態におけるST21~ST24は、第1実施形態におけるST11~ST14と同じ内容であるので、詳細な説明を省略する。本実施形態におけるST21~ST24の内容は、第1実施形態におけるST11~ST14の記載を援用できる。
【0089】
図4に示すように、第3供給工程ST25において、第3供給ポンプ17は、第3タンク13に収容されている第3溶液A3を第2混合部50へ供給する。
また、並行して、第1反応部30からの第1重合溶液Cが第2混合部50へ供給される。
【0090】
次いで、第2混合工程ST26において、第2混合部50は、第1反応部30からの第1重合溶液Cと、第3供給ポンプ17により供給された第3溶液A3とを合流させて混合し、第2混合溶液Dを生成する。
【0091】
次いで、第2反応工程ST27において、第2反応部60は、第2混合溶液Dに含まれる第1重合溶液Cからの酸無水物基末端のポリアミック酸と、第3溶液A3からのジアミンとの重合反応を進行させて、ポリアミック酸が溶解した第2重合溶液Eを生成する。具体的に、第2反応撹拌部61は、第2反応温度調整部62で重合反応に適した温度に調整された第2混合溶液Dを気体に接触しない状態で撹拌して重合反応を進行させ、第2重合溶液Eを生成する。第2反応撹拌部61がスタティックミキサー等の静止型混合器である場合、第2混合溶液Dは通液されるだけで撹拌される。
【0092】
ここで、例えば、本実施形態におけるポリアミック酸の製造方法がポリイミドの製造方法の一部である場合がある。この場合、ポリイミドの製造方法は、ポリアミック酸をイミド化するイミド化工程を更に含む。
【0093】
本実施形態のポリアミック酸製造システム1Aによれば、上述の第1実施形態における効果のほか、以下の効果を奏する。
ポリアミック酸製造システム1Aは、第1処理部K1及び第2処理部K2を有し、重合反応を2段階で行うよう構成されている。これにより、ポリアミック酸製造システム1Aによれば、目標とする反応率等を達成することがより容易になり、製造されるポリアミック酸の品質や歩留まり等をより向上させることができる。
【0094】
また、ポリアミック酸製造システム1Aは、第1反応部30のほか、第1重合溶液C及び第3溶液A3が混合された第2混合溶液Dを気体に接触しない状態で撹拌し、ポリアミック酸が溶解した第2重合溶液Eを生成する第2反応部60を備える。このようなポリアミック酸製造システム1Aによれば、連続的且つ安定的なポリアミック酸の製造が可能であるとともに、製造時における気泡の発生を抑制可能である。具体的には、ポリアミック酸製造システム1Aによれば、ポリアミック酸が溶解した第2重合溶液Eを連続的且つ安定的に製造可能であるとともに、第2重合溶液Eに気泡が発生することを抑制できる。
【0095】
なお、本実施形態では、第1重合溶液Cが酸無水物基末端のポリアミック酸を含み、第3溶液A3がジアミンを含む場合について説明したが、これに限定されるものではない。例えば、第1重合溶液Cがアミノ基末端のポリアミック酸を含み、第3溶液A3がテトラカルボン酸二無水物を含んでいてもよい。
【0096】
また、本実施形態では、第2反応部60が第2反応撹拌部61と第2反応温度調整部62との二重管で構成される場合について説明したが、これに限定されるものではない。例えば、第2反応部60を第2反応撹拌部61のみの一重管で構成し、この第2反応撹拌部61を温調用の液に浸漬するようにしてもよい。
【0097】
また、本実施形態では、第1タンク11及び第2タンク12から第2クッションタンク70までを、管状の送液ラインLにより密閉した状態でつなぐ場合について説明したが、これに限定されるものではない。例えば、第2重合溶液Eに気泡が発生することを抑制するためには、少なくとも第1反応部30及び第2反応部60が気体と接触しない状態で溶液を撹拌可能なものであればよい。ただし、上述のように送液ラインLの全体で溶液が気体と接触しないことがより好ましい。
【0098】
また、本実施形態では、第2混合溶液Dを気体に接触しない状態で撹拌する反応部(第2反応部)が1つである場合について説明したが、これに限定されるものではない。例えば、第2混合溶液Dを気体に接触しない状態で撹拌する反応部は、混合撹拌部と、混合撹拌部の下流側に連続して配置される反応撹拌部と、を有するものであってもよい。混合撹拌部及び反応撹拌部は、第2反応部60と同様に、静止型混合器を有して構成することができる。この場合、混合撹拌部は、第2混合溶液Dを気体に接触しない状態で撹拌し、反応撹拌部は、混合撹拌部で撹拌された溶液を気体に接触しない状態で更に撹拌し、第2重合溶液Eを生成する。このようなポリアミック酸製造システムによれば、製造されるポリアミック酸の品質や歩留まり等をより向上させることができる。
【0099】
<第3実施形態>
次に、図5図8により、第3実施形態におけるポリアミック酸製造システムについて説明する。第3実施形態は、処理部(反応部)が1段であるポリアミック酸製造システムの例であって、測定部からの測定情報に基づいて原料である溶液の供給量を制御可能なシステムの例である。
【0100】
まず、図5により、第3実施形態におけるポリアミック酸製造システム1Bについて説明する。ただし、第1実施形態と同様の構成についてはその説明を省略する。
【0101】
ポリアミック酸製造システム1Bは、第1溶液A1、第2溶液A2、第1混合溶液B、及び第1重合溶液Cのいずれか1以上(以下、「第1測定対象」という。)における物理量及び/又は組成に関する1又は2以上の第1反応情報を取得する第1測定部を有する。本実施形態において、ポリアミック酸製造システム1Bは、複数の第1測定部を有する。より具体的に、ポリアミック酸製造システム1Bは、ポンプ圧測定部81と、第1差圧測定部91、92と、第1粘度測定部111と、を有する。
【0102】
ポンプ圧測定部81は、第1供給ポンプ15のポンプ圧の情報を第1反応情報として取得する。ポンプ圧測定部81は、例えば、ポンプ圧の数値情報や、電圧や電流値の情報を第1反応情報として取得する。
【0103】
第1差圧測定部91、92は、第1反応部30における入出の差圧(上流側と下流側との差圧)の情報を第1反応情報として取得する。
【0104】
第1粘度測定部111は、第1重合溶液Cの粘度情報を第1反応情報として取得する。重合反応が進行することで粘度が上昇するため、粘度情報は、第1反応情報として有効な情報である。
【0105】
第1測定部は、本実施形態の測定部(物理量及び/又は組成の種類、測定方式)に限定されない。第1測定部は、例えば、粘度計、圧力計、ポンプ圧計、吸光度計、赤外分光計、近赤外分光計、密度計、色差計、屈折率計、分光光度計、導電率計、濁度計、及び蛍光X線分析装置からなる群より選択される1又は2以上を有して構成される。
【0106】
第1測定部は、第1測定対象における物理量及び/又は組成に関する1又は2以上の第1反応情報を取得するとともに、取得した第1反応情報を後述する第1制御部200Bに出力する。
【0107】
次に、図6により、第3実施形態におけるポリアミック酸製造システム1Bのブロック図について説明する。
図6に示すように、ポリアミック酸製造システム1Bは、複数の第1測定部(第1測定部群)と、第1制御部200Bと、第1記憶部300Bと、制御対象である第1供給ポンプ15及び第2供給ポンプ16と、を有する。
【0108】
第1測定部は、上述の通り、第1測定対象における物理量及び/又は組成に関する1又は2以上の第1反応情報を取得する。ポリアミック酸製造システム1Bは、複数の第1測定部を有する。より具体的に、ポリアミック酸製造システム1Bは、ポンプ圧測定部81と、第1差圧測定部91、92と、第1粘度測定部111と、を有する。
ここで、第1反応情報は、物理量及び/又は組成の測定値等の数値情報のほか、物理量及び/又は組成に対応して変化する電気信号等を含む。
【0109】
第1制御部200Bは、第1測定部により取得された第1反応情報に基づいて、第1供給ポンプ15及び/又は第2供給ポンプ16における供給を制御する。
第1制御部200Bは、判定部210Bと、選択部220Bと、指示部230Bと、を有する。
【0110】
判定部210Bは、第1測定部からの第1反応情報に基づいて、第1測定対象における物理量及び/又は組成に関する測定値等が所定の許容範囲内であるか否かを判定する。判定部210Bは、後述する測定間隔情報記憶部310Bに記憶された測定間隔に基づいて第1測定部から第1反応情報を取得するとともに、後述する許容範囲情報記憶部320Bに記憶された許容範囲情報に基づいて、取得された第1反応情報が所定の許容範囲内であるか否かを判定する。
【0111】
選択部220Bは、判定部210Bが許容範囲外であると判定した第1反応情報が複数ある場合、後述する優先度情報記憶部340Bからの優先度情報に基づいて、制御において優先する第1反応情報を選択する。
また、選択部220Bは、判定部210Bが許容範囲外であると判定した第1反応情報が特定の情報である場合、例えば、当該第1反応情報が粘度情報である場合、後述する補完情報記憶部330Bからの補完情報に基づいて、制御内容を確定するために補完すべき他の第1反応情報を選択する。例えば、第1反応情報が粘度情報の場合、粘度測定値からは重合反応が不足していることが分かったとしても、第1溶液A1及び第2溶液A2のいずれを増加させるかについては分からない場合もある。選択部220Bは、補完情報に基づいて、粘度情報に対して補完すべき他の第1反応情報を選択する。
【0112】
指示部230Bは、後述する制御情報記憶部350Bからの制御情報に基づいて、第1供給ポンプ15及び/又は第2供給ポンプ16における供給を制御する。指示部230Bは、判定部210B及び選択部220Bからの情報に基づいて制御情報記憶部350Bに記憶される制御内容である制御情報を取得する。そして、指示部230Bは、取得した制御情報に基づいて、第1供給ポンプ15及び/又は第2供給ポンプ16を制御する。
【0113】
続けて、第1記憶部300Bは、測定間隔情報記憶部310Bと、許容範囲情報記憶部320Bと、補完情報記憶部330Bと、優先度情報記憶部340Bと、制御情報記憶部350Bと、を有する。
【0114】
測定間隔情報記憶部310Bは、第1制御部200B(判定部210B)が第1測定部から第1反応情報を取得する間隔に関する測定間隔情報を記憶する。測定間隔は、第1測定部(第1反応情報)ごとに設定されている。また、測定間隔は、第1測定部が配置されている位置(送液ラインLにおける上流、下流に関する位置)に応じて設定される。
【0115】
許容範囲情報記憶部320Bは、各第1測定部により取得された第1反応情報ごとに、所望の重合体を得るために必要な品質等に対応した許容範囲(例えば、測定値の範囲、信号の強弱等)の情報を記憶する。
【0116】
補完情報記憶部330Bは、各種第1反応情報(各種第1測定部)が特定の第1反応情報(特定の測定部)である場合、補完情報として選択されるべき第1反応情報を特定可能な情報を記憶する。補完情報記憶部330Bは、特定の第1反応情報と、補完すべき第1反応情報とを関連付けて記憶する。補完情報記憶部330Bは、例えば、粘度情報に対して所定の第1反応情報を補完する旨の情報を記憶する。
【0117】
優先度情報記憶部340Bは、複数の第1反応情報(第1測定部)が上記許容範囲外にあると判定部210Bに判定された場合、優先すべき第1反応情報に関する情報(例えば、優先順位の情報)を記憶する。優先度情報記憶部340Bは、例えば、粘度情報を優先する旨の情報を記憶する。
【0118】
制御情報記憶部350Bは、許容範囲外と判定された第1反応情報の内容に対応した制御内容に関する情報を記憶する。制御情報記憶部350Bは、例えば、第1供給ポンプ15及び/又は第2供給ポンプ16における供給量を増加/減少させる内容の制御情報を記憶する。
【0119】
次に、図7により、第3実施形態におけるポリアミック酸製造システム1Bの動作を説明する。ここでは、第1反応情報として粘度情報を利用した制御について説明している。
図7に示すように、ステップST31において、判定部210Bは、第1測定部である第1粘度測定部111から第1反応情報である粘度情報を取得する。
【0120】
次いで、ステップST32において、判定部210Bは、許容範囲情報記憶部320Bに記憶される許容範囲情報に基づいて、取得した粘度情報が所定の許容範囲内にあるか否かを判定する。
そして、判定部210Bは、粘度情報(粘度の値)が所定範囲内にあると判定した場合(YES)、第2供給ポンプ16の供給量を変更しない(ステップST33)。
また、判定部210Bは、粘度情報(粘度の値)が所定範囲内にないと判定した場合(NO)、処理をステップST34に進める。
【0121】
次いで、ステップST34において、選択部220Bは、補完情報記憶部330Bから粘度情報を補完する第1反応情報(種類)に関する情報である補完情報を取得する。
【0122】
次いで、ステップST35において、指示部230Bは、粘度情報の内容と、補完情報により特定された第1反応情報の内容とに基づいて、制御情報記憶部350Bから制御条件等の制御情報を取得する。
そして、指示部230Bは、取得した制御情報に基づいて、第2供給ポンプ16を制御する。指示部230Bは、制御内容が第2供給ポンプ16における供給量を増加させる内容のものである場合(増加)、供給量を増加させるよう第2供給ポンプ16を制御する(ステップST36)。
また、指示部230Bは、制御内容が第2供給ポンプ16における供給量を減少させる内容のものである場合(減少)、供給量を減少させるよう第2供給ポンプ16を制御する(ステップST37)。
【0123】
次いで、第1制御部200Bは、待機状態となる(ステップST38)。ここで、第1制御部200Bは、測定間隔情報記憶部310Bに記憶された測定間隔情報に基づいて、所定間隔で第1粘度測定部111からの粘度情報を取得する。
【0124】
次に、図8により、第3実施形態におけるポリアミック酸製造システム1Bの他の動作を説明する。ここでは、複数の第1反応情報を利用した制御について説明している。
図8に示すように、ステップST41において、判定部210Bは、第1測定部群の各測定部からの第1反応情報を取得する。
【0125】
次いで、ステップST42において、判定部210Bは、許容範囲情報記憶部320Bに記憶される許容範囲情報に基づいて、取得した全ての第1反応情報が所定の許容範囲内にあるか否かを判定する。
そして、判定部210Bは、全ての第1反応情報が所定範囲内にあると判定した場合(YES)、第2供給ポンプ16の供給量を変更しない(ステップST43)。
また、判定部210Bは、全ての第1反応情報が所定範囲内にあるのではない(1つ以上の第1反応情報が所定範囲外)と判定した場合(NO)、処理をステップST44に進める。
【0126】
次いで、ステップST44において、判定部210Bは、所定範囲外となった第1反応情報が複数である場合(YES)、処理をステップST45に進める。判定部210Bは、所定範囲外となった第1反応情報が複数でない場合(NO)、処理をステップ46に進める。
【0127】
次いで、ステップST45において、選択部220Bは、優先度情報記憶部340Bに記録された優先度情報に基づいて、優先度の高い第1反応情報(種類)を選択する。
【0128】
次いで、ステップST46において、指示部230Bは、所定範囲外である第1反応情報の内容に基づいて、制御情報記憶部350Bから制御条件等の制御情報を取得する。
そして、指示部230Bは、取得した制御情報に基づいて、第2供給ポンプ16を制御する。指示部230Bは、制御内容が第2供給ポンプ16における供給量を増加させる内容のものである場合(増加)、供給量を増加させるよう第2供給ポンプ16を制御する(ステップST47)。
また、指示部230Bは、制御内容が第2供給ポンプ16における供給量を減少させる内容のものである場合(減少)、供給量を減少させるよう第2供給ポンプ16を制御する(ステップST48)。
【0129】
次いで、第1制御部200Bは、待機状態となる(ステップST49)。ここで、第1制御部200Bは、測定間隔情報記憶部310Bに記憶された測定間隔情報に基づいて、所定間隔で第1測定部群の各測定部からの第1反応情報を取得する。
【0130】
本実施形態のポリアミック酸製造システム1Bによれば、上述の第1実施形態における効果のほか、以下の効果を奏する。
ポリアミック酸製造システム1Bは、第1測定対象における物理量及び/又は組成に関する第1反応情報を取得する第1測定部と、第1測定部により取得された第1反応情報に基づいて、第1供給ポンプ15及び/又は第2供給ポンプ16における供給を制御する第1制御部と、を備える。このようなポリアミック酸製造システム1Bによれば、所望のポリアミック酸を連続的且つ安定的に得ることが可能である。また、ポリアミック酸製造システム1Bによれば、連続的なポリアミック酸の製造において、スペックアウト率を低減可能である。
【0131】
また、ポリアミック酸製造システム1Bにおいて、第1測定部は、粘度計、圧力計、ポンプ圧計、吸光度計、赤外分光計、近赤外分光計、密度計、色差計、屈折率計、分光光度計、導電率計、濁度計、及び蛍光X線分析装置からなる群より選択される1又は2以上を有して構成される。これにより、ポリアミック酸製造システム1Bは、複数種類の第1測定部により取得された複数種類の第1反応情報に基づいて、第1供給ポンプ15及び/又は第2供給ポンプ16における供給を制御できるため、重合反応をより好適に調整できる。
【0132】
<第4実施形態>
次に、図9図12により、第4実施形態におけるポリアミック酸製造システムについて説明する。第4実施形態は、処理部(反応部)が2段であるポリアミック酸製造システムの例であって、測定部からの測定情報に基づいて原料である溶液の供給量を制御可能なシステムの例である。
【0133】
まず、図9により、第4実施形態におけるポリアミック酸製造システム1Cについて説明する。
図9に示すように、ポリアミック酸製造システム1Cは、第1処理部K3と、第2処理部K4と、を有する。
【0134】
第1処理部K3は、第3実施形態におけるポリアミック酸製造システム1Bと同様の構成であるため、本実施形態での詳細な説明を省略する。また、第2処理部K4のうち第2実施形態と同様の構成については、本実施形態での詳細な説明を省略する。
【0135】
ポリアミック酸製造システム1Cは、上述の第1測定部のほか、第1重合溶液C、第3溶液A3、第2混合溶液D、及び第2重合溶液Eのいずれか1以上(以下、「第2測定対象」という。)における物理量及び/又は組成に関する1又は2以上の第2反応情報を取得する第2測定部を有する。本実施形態において、ポリアミック酸製造システム1Cは、複数の第2測定部を有する。より具体的に、ポリアミック酸製造システム1Cは、第2差圧測定部93、94と、第2粘度測定部112と、第1吸光度測定部101と、第2吸光度測定部102と、を有する。
【0136】
第2差圧測定部93、94は、第2反応部60における入出の差圧(上流側と下流側との差圧)の情報を第2反応情報として取得する。
【0137】
第2粘度測定部112は、第2重合溶液Eの粘度情報を第2反応情報として取得する。重合反応が進行することで粘度が上昇するため、粘度情報は、第2反応情報として有効な情報である。
【0138】
第1吸光度測定部101は、第1重合溶液Cにおける特定波長の吸光度に関する情報を第2反応情報として取得する。
第2吸光度測定部102は、第2重合溶液Eにおける特定波長の吸光度に関する情報を第2反応情報として取得する。
ここで、第1吸光度測定部101が取得した吸光度情報と、第2吸光度測定部102が取得した吸光度情報とにより、吸光度の差分を算出することができる。
【0139】
第2測定部は、本実施形態の測定部(物理量及び/又は組成の種類、測定方式)に限定されない。第2測定部は、例えば、粘度計、圧力計、ポンプ圧計、吸光度計、赤外分光計、近赤外分光計、密度計、色差計、屈折率計、分光光度計、導電率計、濁度計、及び蛍光X線分析装置からなる群より選択される1又は2以上を有して構成される。
【0140】
第2測定部は、第2測定対象における物理量及び/又は組成に関する1又は2以上の第2反応情報を取得するとともに、取得した第2反応情報を後述する第2制御部200Cに出力する。
【0141】
次に、図10により、第4実施形態におけるポリアミック酸製造システム1Cのブロック図について説明する。
図6に示すように、ポリアミック酸製造システム1Cは、複数の第1測定部(第1測定部群)と、複数の第2測定部(第2測定部群)と、第2制御部200Cと、第2記憶部300Cと、制御対象である第1供給ポンプ15、第2供給ポンプ16、及び第3供給ポンプ17と、を有する。
【0142】
第2測定部は、上述の通り、第2測定対象における物理量及び/又は組成に関する1又は2以上の第2反応情報を取得する。ポリアミック酸製造システム1Cは、複数の第2測定部を有する。より具体的に、ポリアミック酸製造システム1Cは、第2差圧測定部93、94と、第2粘度測定部112と、第1吸光度測定部101と、第2吸光度測定部102と、を有する。
ここで、第2反応情報は、物理量及び/又は組成の測定値等の数値情報のほか、物理量及び/又は組成に対応して変化する電気信号等を含む。
【0143】
第2制御部200Cは、第1測定部により取得された第1反応情報及び/又は第2測定部により取得された第2反応情報に基づいて、第3供給ポンプ17における供給を制御する。ここで、第2制御部200Cは、第1制御部の機能も有するので、第1測定部により取得された第1反応情報に基づいて、第1供給ポンプ15及び/又は第2供給ポンプ16における供給を制御可能に構成される。以下、第3実施形態における名称と同じ構成要素については、本実施形態において以下に説明する機能に加え、第3実施形態で説明した機能も有する。
【0144】
第2制御部200Cは、判定部210Cと、選択部220Cと、指示部230Cと、を有する。
【0145】
判定部210Cは、第1反応情報及び/又は第2反応情報に基づいて、第1測定対象及び/又は第2測定対象における物理量及び/又は組成に関する測定値等が所定の許容範囲内であるか否かを判定する。判定部210Cは、後述する測定間隔情報記憶部310Cに記憶された測定間隔に基づいて、第1測定部及び/又は第2測定部から第1反応情報及び/又は第2反応情報を取得するとともに、後述する許容範囲情報記憶部320Cに記憶された許容範囲情報に基づいて、取得された第1反応情報及び/又は第2反応情報が所定の許容範囲内であるか否かを判定する。
【0146】
選択部220Cは、判定部210Cが許容範囲外であると判定した第1反応情報及び/又は第2反応情報が複数ある場合、後述する優先度情報記憶部340Cからの優先度情報に基づいて、制御において優先する第1反応情報及び/又は第2反応情報を選択する。
【0147】
また、選択部220Cは、判定部210Cが許容範囲外であると判定した第1反応情報及び/又は第2反応情報が特定の情報である場合、例えば、当該第1反応情報及び/又は第2反応情報が粘度情報である場合、後述する補完情報記憶部330Cからの補完情報に基づいて、制御内容を確定するために補完すべき他の第1反応情報及び/又は第2反応情報を選択する。例えば、第1反応情報及び/又は第2反応情報が粘度情報の場合、粘度測定値からは重合反応が不足していることが分かったとしても、第1重合溶液C及び第3溶液A3のいずれを増加させるかについては分からない場合もある。選択部220Cは、補完情報に基づいて、粘度情報に対して補完すべき他の第1反応情報及び/又は第2反応情報を選択する。
【0148】
指示部230Cは、後述する制御情報記憶部350Cからの制御情報に基づいて、第3供給ポンプ17における供給を制御する。指示部230Cは、判定部210C及び選択部220Cからの情報に基づいて、制御情報記憶部350Cに記憶される制御内容である制御情報を取得する。そして、指示部230Cは、取得した制御情報に基づいて、第3供給ポンプ17を制御する。
【0149】
続けて、第2記憶部300Cは、測定間隔情報記憶部310Cと、許容範囲情報記憶部320Cと、補完情報記憶部330Cと、優先度情報記憶部340Cと、制御情報記憶部350Cと、を有する。以下、第3実施形態における名称と同じ構成要素については、本実施形態において以下に説明する機能に加え、第3実施形態で説明した機能も有する。
【0150】
測定間隔情報記憶部310Cは、第2制御部200C(判定部210C)が第1測定部から第1反応情報を取得する間隔、及び第2測定部から第2反応情報を取得する間隔に関する測定間隔情報を記憶する。測定間隔は、第1測定部(第1反応情報)ごとに設定されている。また、測定間隔は、第1測定部が配置されている位置(送液ラインLにおける上流、下流に関する位置)に応じて設定される。同様に、測定間隔は、第2測定部(第2反応情報)ごとに設定されている。また、測定間隔は、第2測定部が配置されている位置(送液ラインLにおける上流、下流に関する位置)に応じて設定される。
【0151】
許容範囲情報記憶部320Cは、各第1測定部により取得された第1反応情報ごとに、所望の重合体を得るために必要な品質等に対応した許容範囲(例えば、測定値の範囲、信号の強弱等)の情報を記憶する。また、許容範囲情報記憶部320Cは、各第2測定部により取得された第2反応情報ごとに、所望の重合体を得るために必要な品質等に対応した許容範囲(例えば、測定値の範囲、信号の強弱等)の情報を記憶する。
【0152】
補完情報記憶部330Cは、各種第1反応情報(各種第1測定部)及び/又は各種第2反応情報(各種第2測定部)が特定の第1反応情報(特定の測定部)及び/又は特定の第2反応情報(特定の測定部)である場合、補完情報として選択されるべき第1反応情報及び/又は第2反応情報を特定可能な情報を記憶する。補完情報記憶部330Cは、特定の第1反応情報及び/又は第2反応情報と、補完すべき第1反応情報及び/又は第2反応情報とを関連付けて記憶する。補完情報記憶部330Cは、例えば、粘度情報に対して所定の第1反応情報及び/又は第2反応情報を補完する旨の情報を記憶する。
【0153】
優先度情報記憶部340Cは、複数の第1反応情報(第1測定部)及び/又は第2反応情報(第2測定部)が上記許容範囲外にあると判定部210Cに判定された場合、優先すべき第1反応情報及び/又は第2反応情報に関する情報(例えば、優先順位の情報)を記憶する。優先度情報記憶部340Cは、例えば、粘度情報を優先する旨の情報を記憶する。
【0154】
制御情報記憶部350Cは、許容範囲外と判定された第1反応情報及び/又は第2反応情報の内容に対応した制御内容に関する情報を記憶する。制御情報記憶部350Cは、例えば、第3供給ポンプ17における供給量を増加/減少させる内容の制御情報を記憶する。
【0155】
次に、図11により、第4実施形態におけるポリアミック酸製造システム1Cの動作を説明する。ここでは、第2反応情報として粘度情報を利用した制御について説明している。
図11に示すように、ステップST51において、判定部210Cは、第2測定部である第2粘度測定部112から第2反応情報である粘度情報を取得する。
【0156】
次いで、ステップST52において、判定部210Cは、許容範囲情報記憶部320Cに記憶される許容範囲情報に基づいて、取得した粘度情報が所定の許容範囲内にあるかを判定する。
そして、判定部210Cは、粘度情報(粘度の値)が所定範囲内にあると判定した場合(YES)、第3供給ポンプ17の供給量を変更しない(ステップST53)。
また、判定部210Cは、粘度情報(粘度の値)が所定範囲内にないと判定した場合(NO)、処理をステップST54に進める。
【0157】
続けて、ステップST54において、選択部220Cは、補完情報記憶部330Cから粘度情報を補完する第1反応情報(種類)及び/又は第2反応情報(種類)に関する情報である補完情報を取得する。
【0158】
続けて、ステップST55において、指示部230Cは、粘度情報の内容と、補完情報により特定された第1反応情報及び/又は第2反応情報の内容とに基づいて、制御情報記憶部350Cから制御条件等の制御情報を取得する。
そして、指示部230Cは、取得した制御情報に基づいて、第3供給ポンプ17を制御する。指示部230Cは、制御内容が第3供給ポンプ17における供給量を増加させる内容のものである場合(増加)、供給量を増加させるよう第3供給ポンプ17を制御する(ステップST56)。
また、指示部230Cは、制御内容が第3供給ポンプ17における供給量を減少させる内容のものである場合(減少)、供給量を減少させるよう第3供給ポンプ17を制御する(ステップST57)。
【0159】
続けて、第2制御部200Cは、待機状態となる(ステップST58)。ここで、第2制御部200Cは、測定間隔情報記憶部310Cに記憶された測定間隔情報に基づいて、所定間隔で第2粘度測定部112からの粘度情報を取得する。
【0160】
次に、図12により、第4実施形態におけるポリアミック酸製造システム1Cの他の動作を説明する。ここでは、複数の第1反応情報及び第2反応情報を利用した制御について説明している。
図12に示すように、ステップST61において、判定部210Cは、第1測定部群の各測定部からの第1反応情報を取得するとともに、第2測定部群の各測定部からの第2反応情報を取得する。
【0161】
次いで、ステップST62において、判定部210Cは、許容範囲情報記憶部320Cに記憶される許容範囲情報に基づいて、取得した全ての第1反応情報及び第2反応情報が所定の許容範囲内にあるか否かを判定する。
そして、判定部210Cは、全ての第1反応情報及び第2反応情報が所定範囲内にあると判定した場合(YES)、第3供給ポンプ17の供給量を変更しない(ステップST63)。
また、判定部210Cは、全ての第1反応情報及び第2反応情報が所定範囲内にあるのではない(1つ以上の反応情報が所定範囲外)と判定した場合(NO)、処理をステップST64に進める。
【0162】
次いで、ステップST64において、判定部210Cは、所定範囲外となった反応情報が複数である場合(YES)、処理をステップST65に進める。判定部210Cは、所定範囲外となった反応情報が複数でない場合(NO)、処理をステップ66に進める。
【0163】
次いで、ステップST65において、選択部220Cは、優先度情報に基づいて、優先度の高い第1反応情報(種類)及び/又は第2反応情報(種類)を選択する。
【0164】
次いで、ステップST66において、指示部230Cは、所定範囲外である反応情報の内容に基づいて、制御情報記憶部350Cから制御条件等の制御情報を取得する。
そして、指示部230Cは、取得した制御情報に基づいて、第3供給ポンプ17を制御する。指示部230Cは、制御内容が第3供給ポンプ17における供給量を増加させる内容のものである場合(増加)、供給量を増加させるよう第3供給ポンプ17を制御する(ステップST67)。
また、指示部230Cは、制御内容が第3供給ポンプ17における供給量を減少させる内容のものである場合(減少)、供給量を減少させるよう第3供給ポンプ17を制御する(ステップST68)。
【0165】
次いで、第2制御部200Cは、待機状態となる(ステップST69)。ここで、第2制御部200Cは、測定間隔情報記憶部310Cに記憶された測定間隔情報に基づいて、所定間隔で各第1測定部からの第1反応情報及び各第2測定部からの第2反応情報を取得する。
【0166】
本実施形態のポリアミック酸製造システム1Cによれば、上述の第2実施形態における効果のほか、以下の効果を奏する。
ポリアミック酸製造システム1Cは、第1測定対象における物理量及び/又は組成に関する第1反応情報を取得する第1測定部と、第2測定対象における物理量及び/又は組成に関する第2反応情報を取得する第2測定部と、第1測定部により取得された第1反応情報及び/又は第2測定部により取得された第2反応情報に基づいて、第1供給ポンプ15、第2供給ポンプ16、及び第3供給ポンプ17のいずれか1以上における供給を制御する第1制御部と、を備える。このようなポリアミック酸製造システム1Cによれば、所望のポリアミック酸を連続的且つ安定的に得ることが可能である。また、ポリアミック酸製造システム1Cによれば、連続的なポリアミック酸の製造において、スペックアウト率を低減可能である。
【0167】
また、ポリアミック酸製造システム1Cにおいて、第1測定部及び第2測定部は、粘度計、圧力計、ポンプ圧計、吸光度計、赤外分光計、近赤外分光計、密度計、色差計、屈折率計、分光光度計、導電率計、濁度計、及び蛍光X線分析装置からなる群より選択される1又は2以上を有して構成される。これにより、ポリアミック酸製造システム1Cは、複数種類の第1測定部により取得された複数種類の第1反応情報及び/又は複数種類の第2測定部により取得された複数種類の第2反応情報に基づいて、第1供給ポンプ15、第2供給ポンプ16、及び第3供給ポンプ17のいずれか1以上における供給を制御できるため、重合反応をより好適に調整できる。
【0168】
(制御の具体例)
以下、ポリアミック酸製造システム1B及びポリアミック酸製造システム1Cにおける制御の具体例について説明する。ただし、以下の具体例に限定されるものではない。
【0169】
(1)例1
第1反応部30の出口における第1重合溶液Cの粘度が設定値に対して低い場合を想定する。第1反応部30の出口にインライン式粘度計を設置し、第1重合溶液Cの粘度情報を経時的に取得する。粘度を上昇させるためには、テトラカルボン酸二無水物/ジアミン比が等量比に近づくように流量比率を制御すればよい。
【0170】
(2)例2
第1反応部30の出口における第1重合溶液Cの粘度が設定値に対して低い場合を想定する。第1反応部30の出口付近に2つの圧力計を設置し、差圧を用いて第1重合溶液Cの粘度情報を経時的に取得する。粘度を上昇させるためには、テトラカルボン酸二無水物/ジアミン比が等量比に近づくように流量比率を制御すればよい。
【0171】
(3)例3
第1反応部30の出口における第1重合溶液Cの粘度が設定値に対して低い場合を想定する。第1反応部30の出口にインライン式粘度計を設置し、第1重合溶液Cの粘度情報を経時的に取得する。更に、第1反応部30の出口にインライン式吸光度計を設置し、第1重合溶液Cの吸光度情報を経時的に取得する。そして、余剰モノマーがある場合に検出される吸光度情報を基に、テトラカルボン酸二無水物とジアミンとのいずれが過剰であるかを判定する。粘度を上昇させるためには、テトラカルボン酸二無水物/ジアミン比が等量比に近づくように流量比率を制御すればよい。
【0172】
(4)例4
第1反応部30の出口における第1重合溶液Cの粘度が設定値に対して低い場合を想定する。第1反応部30の出口にインライン式粘度計を設置し、第1重合溶液Cの粘度情報を経時的に取得する。更に、第1反応部30の出口にインライン式赤外分光計を設置し、第1重合溶液Cの赤外分光情報を経時的に取得する。そして、余剰モノマーがある場合に検出される赤外分光情報を基に、テトラカルボン酸二無水物とジアミンとのいずれが過剰であるかを判定する。粘度を上昇させるためには、テトラカルボン酸二無水物/ジアミン比が等量比に近づくように流量比率を制御すればよい。
【0173】
(5)例5
第1反応部30の出口における第1重合溶液Cの粘度が設定値に対して低い場合を想定する。第1反応部30の出口付近に2つの圧力計を設置し、差圧を用いて第1重合溶液Cの粘度情報を経時的に取得する。更に、第1反応部30の出口にインライン式吸光度計を設置し、第1重合溶液Cの吸光度情報を経時的に取得する。そして、余剰モノマーがある場合に検出される吸光度情報を基に、テトラカルボン酸二無水物とジアミンとのいずれが過剰であるかを判定する。粘度を上昇させるためには、テトラカルボン酸二無水物/ジアミン比が等量比に近づくように流量比率を制御すればよい。
【0174】
(6)例6
第1反応部30の出口における第1重合溶液Cの粘度が設定値に対して低い場合を想定する。第1反応部30の出口付近に2つの圧力計を設置し、差圧を用いて第1重合溶液Cの粘度情報を経時的に取得する。更に、第1反応部30の出口にインライン式赤外分光計を設置し、第1重合溶液Cの赤外分光情報を経時的に取得する。そして、余剰モノマーがある場合に検出される吸光度情報を基に、テトラカルボン酸二無水物とジアミンとのいずれが過剰であるかを判定する。粘度を上昇させるためには、テトラカルボン酸二無水物/ジアミン比が等量比に近づくように流量比率を制御すればよい。
【0175】
(7)例7
第1反応部30の出口における第1重合溶液Cの粘度が設定値に対して低い場合を想定する。第1反応部30の出口にインライン式粘度計を設置し、第1重合溶液Cの粘度情報を経時的に取得する。次いで、第1溶液A1及び第2溶液A2のいずれかの流量を減少させ、粘度が上昇するか下降するかを確認する。そして、流量増減と粘度増減との相関を確認し、粘度を上昇させる方向に流量比率を制御すればよい。
【0176】
(8)例8
第1溶液A1としてのポリアミック酸溶液の粘度と、第1溶液A1におけるテトラカルボン酸二無水物/ジアミン比とに関する検量線を作成する。目的の粘度となるテトラカルボン酸二無水物/ジアミン比を予め求めておけば、第1溶液A1に加えるべき第2溶液A2の添加量を計算することができる。第1供給ポンプ15の出口にインライン式粘度計を設置し、第1溶液A1の粘度情報を経時的に取得する。得られた第1溶液A1の粘度情報を用いて、第1反応部30の出口における粘度が設定粘度になるのに必要な第2溶液A2の添加量を算出し、算出された流量になるように第2溶液A2の供給量を制御する。
【0177】
(9)例9
第2反応部60の出口における第2重合溶液Eの粘度が設定値に対して低い場合を想定する。第2反応部60の出口にインライン式粘度計を設置し、第2重合溶液Eの粘度情報を経時的に取得する。更に、第2反応部60の出口にインライン式吸光度計を設置し、第2重合溶液Eの吸光度情報を経時的に取得する。また、第1反応部30の出口にインライン式粘度計を設置し、第1重合溶液Cの粘度情報を経時的に取得する。更に、第1反応部30の出口にインライン式吸光度計を設置し、第1重合溶液Cの吸光度情報を経時的に取得する。
【0178】
第1反応部30の出口における第1重合溶液Cの粘度が設定値に対してずれている場合には、余剰モノマーがある場合に検出される吸光度情報を基に、テトラカルボン酸二無水物とジアミンとのいずれが過剰であるかを判定する。そして、第1重合溶液Cの粘度が設定値となるようなテトラカルボン酸二無水物/ジアミン比に近づくように、第2溶液A2の流量を制御すればよい。
一方、第1反応部30の出口における第1重合溶液Cの粘度が設定値を示している場合、余剰モノマーがある場合に検出される吸光度情報を基に、テトラカルボン酸二無水物とジアミンとのいずれが過剰であるかを判定する。そして、第2重合溶液Eの粘度が設定値となるようなテトラカルボン酸二無水物/ジアミン比に近づくように、第3溶液A3の流量を制御すればよい。
【0179】
<第5実施形態>
次に、図13図15により、第5実施形態におけるポリアミック酸製造システムについて説明する。第5実施形態は、処理部(反応部)が1段であるポリアミック酸製造システムの例であって、原料である溶液の流量変動に基づいて溶液の供給を制御可能なシステムの例である。
【0180】
まず、図13及び図14により、第5実施形態におけるポリアミック酸製造システム1Dについて説明する。ただし、第1実施形態と同様の構成についてはその説明を省略する。
【0181】
ポリアミック酸製造システム1Dにおいて、第1タンク11と第1混合部20との間には、第1供給ポンプ15、第1流量調整弁151、及び第1流量測定部152が、上流側から下流側に向かってこの順で配置される。
【0182】
第1供給ポンプ15は、容積式ポンプで構成される。容積式ポンプとしては、例えば、プランジャポンプ等の押し出し式の往復ポンプ;歯車を備えたギアポンプ等の回転ポンプ;などが挙げられる。
【0183】
第1供給ポンプ15としては、固有の脈動率(流量変動率)が小さいものを選択することが好ましい。なお、第1供給ポンプ15として固有の脈動率(流量変動率)が小さいものを選択する代わりに、あるいは、第1供給ポンプ15として固有の脈動率(流量変動率)が小さいものを選択することに加えて、送液ラインLに流量変動の緩衝装置(例えば、アキュムレータ)を配置することも好ましい。アキュムレータ等の緩衝装置を配置することで、流量変動率をより低減することができる。
【0184】
第1流量調整弁151は、第1供給ポンプ15と第1混合部20との間に配置される。第1流量調整弁151は、第1供給ポンプ15により供給された第1溶液A1の流量を調整可能な弁である。本実施形態においては、第1流量調整弁151の弁開度を調整することで、第1溶液A1の流量が調整される。第1流量調整弁151の弁開度は、後述する第1制御部200Dにより制御される。
【0185】
第1流量測定部152は、第1送液部L1における第1供給ポンプ15の下流側の第1溶液A1の流量を測定する。本実施形態においては、第1流量測定部152は、第1流量調整弁151と第1混合部20との間に配置される。なお、第1流量測定部152を、第1流量調整弁151の上流側であって第1供給ポンプ15の下流側に配置してもよい。第1流量測定部152は、測定した第1溶液A1の流量を後述する第1制御部200Dに出力する。
【0186】
また、ポリアミック酸製造システム1Dにおいて、第2送液部L2における第2タンク12と第1混合部20との間には、第2供給ポンプ16、第2流量調整弁161、及び第2流量測定部162が、上流側から下流側に向かってこの順で配置される。
【0187】
第2供給ポンプ16は、上述した第1供給ポンプ15と同様に、容積式ポンプで構成される。
【0188】
第2供給ポンプ16としては、固有の脈動率(流量変動率)が小さいものを選択することが好ましい。なお、第2供給ポンプ16として固有の脈動率(流量変動率)が小さいものを選択する代わりに、あるいは、第2供給ポンプ16として固有の脈動率(流量変動率)が小さいものを選択することに加えて、送液ラインLに流量変動の緩衝装置(例えば、アキュムレータ)を配置することも好ましい。アキュムレータ等の緩衝装置を配置することで、流量変動率をより低減することができる。
【0189】
第2流量調整弁161は、第2供給ポンプ16と第1混合部20との間に配置される。第2流量調整弁161は、第2供給ポンプ16により供給された第2溶液A2の流量を調整可能な弁である。本実施形態においては、第2流量調整弁161の弁開度を調整することで、第2溶液A2の流量が調整される。第2流量調整弁161の弁開度は、後述する第1制御部200Dにより制御される。
【0190】
第2流量測定部162は、第2送液部L2における第2供給ポンプ16の下流側の第2溶液A2の流量を測定する。本実施形態においては、第2流量測定部162は、第2流量調整弁161と第1混合部20との間に配置される。なお、第2流量測定部162を、第2流量調整弁161の上流側であって第2供給ポンプ16の下流側に配置してもよい。第2流量測定部162は、測定した第2溶液A2の流量を後述する第1制御部200Dに出力する。
【0191】
第1制御部200Dについて説明する。第1制御部200Dには、第1供給ポンプ15、第2供給ポンプ16、第1流量調整弁151、第1流量測定部152、第2流量調整弁161、及び第2流量測定部162が電気的に接続されている。
【0192】
第1制御部200Dは、第1溶液A1の流量値及び第2溶液A2の流量値のピーク値が同期して変動するように(すなわち、第1溶液A1の流量変動と第2溶液A2の流量変動とが同期するように)、第1溶液A1及び/又は第2溶液A2の流量変動を制御する。
【0193】
ここで、流量値のピーク値が同期して変動するとは、流量変動の周期が実質的に同じであればよく、位相については若干の差異が許容される。例えば、第1溶液A1の流量値の隣接するピーク(山)間の距離をLとし、第1溶液A1の流量値及び第2溶液A2の流量値の隣接するピーク(山)間の距離(すなわち、位相のずれ)をMとしたとき、L及びMが以下の式(1)を満たすことが好ましい。
0≦(M/L)≦0.1 ・・・(1)
【0194】
例えば、図14の制御前の流量波形においては、第1溶液A1の流動変動と第2溶液A2の流動変動とは同期していない。この場合、第1制御部200Dは、第1溶液A1の流動変動と第2溶液A2の流動変動とが同期するように、第1溶液A1及び/又は第2溶液A2の流量変動を制御する。
【0195】
第1溶液A1の流量変動と第2溶液A2の流量変動とが同期するように制御する方法としては、例えば、以下の方法が挙げられる。
第1供給ポンプ15及び第2供給ポンプ16としてプランジャポンプを用い、第1流量測定部152及び第2流量測定部162としてコリオリ式質量流量計を用いる。そして、第1制御部200Dは、第1溶液A1の流量変動と第2溶液A2の流量変動とが同期するように、得られた流量の情報に基づいて、第1供給ポンプ15及び/又は第2供給ポンプ16に新たなストローク及び回転数の設定を指示する。このようにして、第1溶液A1の流量変動と第2溶液A2の流量変動とが同期するように制御することができる。
【0196】
なお、図14では、第1溶液A1の流量変動の周期が一定である場合について図示しているが、第1溶液A1の流量変動の周期は必ずしも一定でなくてもよい。すなわち、第1溶液A1の流量値の隣接するピーク(山)間の距離は必ずしも一定でなくてもよい。同様に、図14では、第2溶液A2の流量変動の周期が一定である場合について図示しているが、第2溶液A2の流量変動の周期は必ずしも一定でなくてもよい。すなわち、第2溶液A2の流量値の隣接するピーク(山)間の距離は必ずしも一定でなくてもよい。
【0197】
更に、第1制御部200Dは、第1溶液A1の流量変動率(以下、「第1流量変動率」ともいう。)と第2溶液A2の流量変動率(以下、「第2流量変動率」ともいう。)との差が小さくなるように、第1流量変動率及び/又は第2流量変動率を制御する。本実施形態においては、第1流量変動率と第2流量変動率との差は、例えば3%以下であることが好ましく、1%以下であることがより好ましい。第1流量変動率と第2流量変動率との差の下限値は0%であってもよいが、0.001%以上であることが好ましい。第1流量変動率と第2流量変動率との差を0.001%以上とし、第1溶液A1と第2溶液A2との混合の割合を僅かにずらすことで、第1溶液A1と第2溶液A2とを良好に混合することができる傾向にある。
【0198】
本実施形態においては、例えば、図14の制御前の流量波形に示すように、第1流量変動率Haを、流量変動の振幅の中心の流量値Kaに対する流量変動の振幅の半分の流量Saの割合と定義する(Ha=(Sa/Ka)×100[%])。また、例えば、第2流量変動率Hbを、流量変動の振幅の中心の流量値Kbに対する流量変動の振幅の半分の流量Sbの割合と定義する(Hb=(Sb/Kb)×100[%])。
また、第1流量変動率Haと第2流量変動率Hbとの差xとしては、第1流量変動率Ha及び第2流量変動率Hbの差の絶対値を用いる(x=|Ha-Hb|)。
図14の制御前の流量波形においては、第1流量変動率Haは、第2溶液A2の第2流量変動率Hbよりも大きい(Ha>Hb)。
【0199】
第1制御部200Dは、第1流量変動率Haと第2流量変動率Hbとの差が所定範囲外である場合に、第1流量変動率Haと第2流量変動率Hbとの差が小さくなるように、第1流量調整弁151及び/又は第2流量調整弁161により流量を調整するとともに、第1供給ポンプ15及び/又は第2供給ポンプ16により供給する溶液の供給圧力を調整する。本実施形態においては、第1流量変動率Haと第2流量変動率Hbとの差における所定範囲は、例えば3%以下に設定される。
【0200】
第1制御部200Dは、第1流量変動率Haと第2流量変動率Hbとの差が小さくなるように制御する場合に、第1流量変動率Haが小さくなるように制御してもよいし、大きくなるように制御してもよい。また、第2流量変動率Hbが小さくなるように制御してもよいし、大きくなるように制御してもよい。
【0201】
これは、第1溶液A1の流量値及び第2溶液A2の流量値のピーク値が同期して変動している場合には、第1流量変動率Haと第2流量変動率Hbとの差が小さければ、第1流量変動率Ha及び第2流量変動率Hbの大小にかかわらずに、第1溶液A1及び第2溶液A2の流量変動の山谷において、流量値の山同士及び谷同士が重なるためである。すなわち、第1溶液A1と第2溶液A2とを混合した場合に、流量値の山同士が混合され、流量値の谷同士が混合されるためである。したがって、第1流量変動率Haと第2流量変動率Hbとの差を小さくする制御を実行することで、第1流量変動率Ha及び第2流量変動率Hbの大小にかかわらずに、第1溶液A1と第2溶液A2との混合の割合を同じ割合に近づけることができる。
【0202】
例えば、図14に示すように、第1制御部200は、第1流量変動率Haと第2流量変動率Hbとの差を小さくする場合に、制御前において流量変動率が小さい第2流量変動率Hbに合わせて、第1流量変動率Haを小さくするように制御する。流量変動率が小さい第2流量変動率Hbに合わせて第1流量変動率Haを小さくすることで、何らかの要因により、仮に第1溶液A1及び第2溶液A2の同期がずれた場合においても、第1溶液A1と第2溶液A2との混合の割合の変動を最小限に抑制して、第1溶液A1及び第2溶液A2の混合の割合を安定させることができる。
【0203】
具体的には、図14の制御前の流量波形において、第1流量変動率Haは第2流量変動率Hbよりも大きい(Ha>Hb)。そのため、第1制御部200Dは、第1流量変動率Haが小さくなるように、第1流量調整弁151の弁開度を小さくさせる。また、第1制御部200Dは、第1供給ポンプ15の供給量が第1流量調整弁151の弁開度を小さくする前の供給量と同じ供給量になるように、第1供給ポンプ15の供給圧力(吐出圧力)を増加させる。その結果、第1流量変動率Haと第2流量変動率Hbとの差x(=|Ha-Hb|)が小さくなる。
【0204】
なお、第1制御部200は、流量変動率が小さい第2流量変動率Hbに合わせて第1流量変動率Haを小さくするように制御することに限定されず、流量変動率が大きい第1流量変動率Haに合わせて、第2流量変動率Hbを大きくするように制御してもよい。
【0205】
次に、図15により、第5実施形態におけるポリアミック酸製造システム1Dの動作を説明する。
まず、ポリアミック酸製造システム1Dにおいて、動作を開始することで、第1供給ポンプ15が第1溶液A1を供給し、第2供給ポンプ16が第2溶液A2を供給する。ここで、第1供給ポンプ15及び第2供給ポンプ16は、第1溶液A1及び第2溶液A2を所望の割合で供給するように、互いの供給圧力(吐出圧力)が第1制御部200Dにより制御されている。
【0206】
次いで、図15に示すように、ステップST71において、第1流量測定部152は、第1溶液A1の流量を測定して取得する。また、第2流量測定部162は、第2溶液A2の流量を測定して取得する。本実施形態においては、第1溶液A1の流量変動と第2溶液A2の流量変動とが同期するように、第1制御部200Dにより制御されている。
【0207】
次いで、ステップST72において、第1制御部200Dは、第1流量変動率と第2流量変動率との差が所定範囲外であるか否かを判定する。本実施形態においては、第1流量変動率と第2流量変動率との差における所定範囲は、例えば3%以下に設定される。第1流量変動率と第2流量変動率との差が例えば3%以下である場合に、所望のポリアミック酸を安定して得ることが可能であるためである。
【0208】
そして、第1制御部200Dは、第1流量変動率と第2流量変動率との差が所定範囲外であると判定した場合(YES)、処理をステップST73に進める。また、第1制御部200Dは、第1流量変動率と第2流量変動率との差が所定範囲外でないと判定した場合(NO)、処理をステップST71に戻す。
【0209】
次いで、ステップST73において、第1制御部200Dは、第1流量変動率と第2流量変動率との差が所定範囲内となるように制御する。例えば、図14の制御前の流量波形において、第1流量変動率Haは第2流量変動率Hbよりも大きい(Ha>Hb)。そのため、第1制御部200Dは、第1流量変動率Haが小さくなるように、第1流量調整弁151の弁開度を小さくさせる。また、第1制御部200Dは、第1供給ポンプ15の供給量が第1流量調整弁151の弁開度を小さくする前の供給量と同じ供給量になるように、第1供給ポンプ15の供給圧力(吐出圧力)を増加させる。その結果、第1流量変動率Haと第2流量変動率Hbとの差x(=|Ha-Hb|)が所定範囲内となる。
【0210】
ここで、第1溶液A1と第2溶液A2とは、第1溶液A1の流量値及び第2溶液A2の流量値のピーク値が同期して変動しているため、第1溶液A1と第2溶液A2とは、流量変動の山谷が一致した状態で混合されることになる。したがって、第1流量変動率と第2流量変動率との差が所定範囲内となるように制御することで、第1溶液A1と第2溶液A2とを同じ割合に近づけて混合することができ、所望のポリアミック酸を安定して得ることができる。
【0211】
次いで、第1制御部200Dは、待機状態となる(ステップST74)。その後、処理は、ステップST71に戻される。
【0212】
本実施形態のポリアミック酸製造システム1Dによれば、上述の第1実施形態における効果のほか、以下の効果を奏する。
ポリアミック酸製造システム1Dは、第1溶液A1の流量変動と第2溶液A2の流量変動とが同期し、且つ、第1流量変動率と第2流量変動率との差が小さくなるように、第1溶液A1及び/又は第2溶液A2の供給を制御する第1制御部200Dを備える。このようなポリアミック酸製造システム1Dによれば、第1溶液A1の流量変動と第2溶液A2の流量変動とを同期させ、且つ、第1流量変動率と第2流量変動率との差を小さくできるため、所望のポリアミック酸をより安定的に得ることが可能である。
【0213】
<第6実施形態>
次に、図16及び図17により、第6実施形態におけるポリアミック酸製造システムについて説明する。第6実施形態は、処理部(反応部)が2段であるポリアミック酸製造システムの例であって、原料である溶液の流量変動に基づいて溶液の供給を制御可能なシステムの例である。
【0214】
まず、図16により、第6実施形態におけるポリアミック酸製造システム1Eについて説明する。
図16に示すように、ポリアミック酸製造システム1Eは、第1処理部K5と、第2処理部K6と、を有する。
【0215】
第1処理部K5は、第5実施形態におけるポリアミック酸製造システム1Dと同様の構成であるため、本実施形態での詳細な説明を省略する。また、第2処理部K6のうち第2実施形態と同様の構成については、本実施形態での詳細な説明を省略する。
【0216】
ポリアミック酸製造システム1Eにおいて、第3タンク13と第2混合部50との間には、第3供給ポンプ17、第3流量調整弁171、及び第3流量測定部172が、上流側から下流側に向かってこの順で配置される。
【0217】
第3供給ポンプ17は、上述した第1供給ポンプ15と同様に、容積式ポンプで構成される。
【0218】
第3供給ポンプ17としては、固有の脈動率(流量変動率)が小さいものを選択することが好ましい。なお、第3供給ポンプ17として固有の脈動率(流量変動率)が小さいものを選択する代わりに、あるいは、第3供給ポンプ17として固有の脈動率(流量変動率)が小さいものを選択することに加えて、送液ラインLに流量変動の緩衝装置(例えば、アキュムレータ)を配置することも好ましい。アキュムレータ等の緩衝装置を配置することで、流量変動率をより低減することができる。
【0219】
第3流量調整弁171は、第3供給ポンプ17と第2混合部50との間に配置される。第3流量調整弁171は、第3供給ポンプ17により供給された第3溶液A3の流量を調整可能な弁である。本実施形態においては、第3流量調整弁171の弁開度を調整することで、第3溶液A3の流量が調整される。第3流量調整弁171の弁開度は、後述する第2制御部200Eにより制御される。
【0220】
第3流量測定部172は、第4送液部L4における第3供給ポンプ17の下流側の第3溶液A3の流量を測定する。本実施形態においては、第3流量測定部172は、第3流量調整弁171と第2混合部50との間に配置される。なお、第3流量測定部172を、第3流量調整弁171の上流側であって第3供給ポンプ17の下流側に配置してもよい。第3流量測定部172は、測定した第3溶液A3の流量を後述する第2制御部200Eに出力する。
【0221】
また、ポリアミック酸製造システム1Eにおいて、第1反応部30と第2混合部50との間には、第4流量測定部182が配置される。
【0222】
第4流量測定部182は、第3送液部L3における第1反応部30の下流側において、第1重合溶液Cの流量を測定する。第4流量測定部182は、測定した第1重合溶液Cの流量を後述する第2制御部200Eに出力する。
【0223】
第2制御部200Eについて説明する。第2制御部200Eには、第1供給ポンプ15、第2供給ポンプ16、第1流量調整弁151、第1流量測定部152、第2流量調整弁161、第2流量測定部162、第3流量調整弁171、第3流量測定部172、及び第4流量測定部182が電気的に接続されている。
【0224】
なお、第2制御部200Eは、第5実施形態における第1制御部200Dの機能も有するが、以下では第1制御部200Dと共通する部分については詳細な説明を省略する。
【0225】
第2制御部200Eは、第1重合溶液Cの流量値及び第3溶液A3の流量値のピーク値が同期して変動するように(すなわち、第1重合溶液Cの流量変動と第3溶液A3の流量変動とが同期するように)、第1重合溶液C及び/又は第3溶液A3の流量変動を制御する。
【0226】
ここで、流量値のピーク値が同期して変動するとは、流量変動の周期が実質的に同じであればよく、位相については若干の差異が許容される。例えば、第1重合溶液Cの流量値の隣接するピーク(山)間の距離をLとし、第1重合溶液Cの流量値及び第3溶液A3の流量値の隣接するピーク(山)間の距離(すなわち、位相のずれ)をMとしたとき、L及びMが以下の式(2)を満たすことが好ましい。
0≦(M/L)≦0.1 ・・・(2)
【0227】
第1重合溶液Cの流量変動と第3溶液A3の流量変動とが同期するように制御する方法としては、例えば、以下の方法が挙げられる。
第1供給ポンプ15、第2供給ポンプ16、及び第3供給ポンプ17としてプランジャポンプを用い、第3流量測定部172及び第4流量測定部182としてコリオリ式質量流量計を用いる。そして、第2制御部200Eは、第1重合溶液Cの流量変動と第3溶液A3の流量変動とが同期するように、得られた流量の情報に基づいて、第3供給ポンプ17に新たなストローク及び回転数の設定を指示する。このようにして、第1重合溶液Cの流量変動と第3溶液A3の流量変動とが同期するように制御することができる。
【0228】
なお、第5実施形態と同様に、第1重合溶液Cの流量変動の周期及び第3溶液A3の流量変動の周期は、必ずしも一定でなくてもよい。
【0229】
更に、第2制御部200Eは、第1重合溶液Cの流量変動率(以下、「重合溶液流量変動率」ともいう。)と、第3溶液A3の流量変動率(以下、「第3流量変動率」ともいう。)との差が小さくなるように、第3流量変動率を制御する。本実施形態においては、重合溶液流量変動率と第3流量変動率との差は、例えば3%以下であることが好ましく、1%以下であることがより好ましい。重合溶液流量変動率と第3流量変動率との差の下限値は0%であってもよいが、0.001%以上であることが好ましい。重合溶液流量変動率と第3流量変動率との差を0.001%以上とし、第1重合溶液Cと第3溶液A3との混合の割合を僅かにずらすことで、第1重合溶液Cと第3溶液A3とを良好に混合することができる傾向にある。
【0230】
本実施形態においては、第5実施形態の第1流量変動率Ha及び第2流量変動率Hbと同様の考え方により、例えば、重合溶液流量変動率Hcを、流量変動の振幅の中心の流量値Kcに対する流量変動の振幅の半分の流量Scの割合と定義する(Hc=(Sc/Kc)×100[%])。また、例えば、第3流量変動率Hdを、流量変動の振幅の中心の流量値Kdに対する流量変動の振幅の半分の流量Sdの割合と定義する(Hd=(Sd/Kd)×100[%])。
また、重合溶液流量変動率Hcと第3流量変動率Hdとの差yとしては、第5実施形態の第1流量変動率Haと第2流量変動率Hbとの差xと同様の考え方により、重合溶液流量変動率Hcと第3流量変動率Hdとの差の絶対値を用いる(y=|Hc-Hd|)。
【0231】
第2制御部200Eは、重合溶液流量変動率Hcと第3流量変動率Hdとの差が所定範囲外である場合に、重合溶液流量変動率Hcと第3流量変動率Hdとの差が小さくなるように、第3流量調整弁171により第3溶液A3の流量を調整するとともに、第3供給ポンプ17により供給する溶液の供給圧力を調整する。本実施形態においては、重合溶液流量変動率Hcと第3流量変動率Hdとの差における所定範囲は、例えば3%以下に設定される。
【0232】
第2制御部200Eは、重合溶液流量変動率Hcと第3流量変動率Hdとの差が小さくなるように制御する場合に、第3流量変動率Hdが小さくなるように制御してもよいし、大きくなるように制御してもよい。
【0233】
これは、重合溶液流量変動率Hc及び第3流量変動率Hdの流量値のピーク値が同期して変動している場合には、重合溶液流量変動率Hcと第3流量変動率Hdとの差が小さければ、重合溶液流量変動率Hc及び第3流量変動率Hdの大小にかかわらずに、第1重合溶液C及び第3溶液A3の流量変動の山谷において、流量値の山同士及び谷同士が重なるためである。すなわち、第1重合溶液Cと第3溶液A3とを混合した場合に、流量値の山同士が混合され、流量値の谷同士が混合されるためである。したがって、重合溶液流量変動率Hcと第3流量変動率Hdとの差を小さくする制御を実行することで、重合溶液流量変動率Hc及び第3流量変動率Hdの大小にかかわらずに、第1重合溶液Cと第3溶液A3との混合の割合を同じ割合に近づけることができる。
【0234】
次に、図17により、第6実施形態におけるポリアミック酸製造システム1Eの動作を説明する。
まず、ポリアミック酸製造システム1Eにおいて、動作を開始することで、第1供給ポンプ15が第1溶液A1を供給し、第2供給ポンプ16が第2溶液A2を供給し、第3供給ポンプ17が第3溶液A3を供給する。ここで、第1供給ポンプ15及び第2供給ポンプ16は、第1溶液A1及び第2溶液A2を所望の割合で供給するように、互いの供給圧力(吐出圧力)が第2制御部200Eにより制御されている。第3供給ポンプ17は、第3溶液A3を所望の割合で供給するように、供給圧力(吐出圧力)が第2制御部200Eにより制御されている。
【0235】
次いで、図17に示すように、ステップST81において、第4流量測定部182は、第1重合溶液Cの流量を測定して取得する。また、第3流量測定部172は、第3溶液A3の流量を測定して取得する。本実施形態においては、第1重合溶液Cの流量変動と第3溶液A3の流量変動とが同期するように、第2制御部200Eにより制御されている。
【0236】
次いで、ステップST82において、第2制御部200Eは、重合溶液流量変動率と第3流量変動率との差が所定範囲外であるか否か判定する。本実施形態においては、重合溶液流量変動率と第3流量変動率との差における所定範囲は、例えば3%以下に設定される。重合溶液流量変動率と第3流量変動率との差が例えば3%以下である場合に、所望のポリアミック酸を安定して得ることが可能であるためである。
【0237】
そして、第2制御部200Eは、重合溶液流量変動率と第3流量変動率との差が所定範囲外であると判定した場合(YES)、処理をステップST83に進める。また、第2制御部200Eは、重合溶液流量変動率と第3流量変動率との差が所定範囲外でないと判定した場合(NO)、処理をステップST81に戻す。
【0238】
次いで、ステップST83において、第2制御部200Eは、重合溶液流量変動率と第3流量変動率との差が所定範囲内となるように制御する。例えば、第2制御部200Eは、第3流量調整弁171の弁開度を小さくするように又は大きくするように調整するとともに、第3溶液A3の供給量が第3流量調整弁171の弁開度を小さく又は大きくする前の供給量と同じ供給量になるように、第3供給ポンプ17の供給圧力(吐出圧力)を減少又は増加させる。これにより、制御後には、第3流量変動率が小さくなるように又は大きくなるように調整され、重合溶液流量変動率と第3流量変動率との差yが所定範囲内となる。
【0239】
ここで、第1重合溶液Cと第3溶液A3とは、第1重合溶液Cの流量値及び第3溶液A3の流量値のピーク値が同期して変動しているため、第1重合溶液Cと第3溶液A3とは、流量変動の山谷が一致した状態で混合されることになる。したがって、重合溶液流量変動率と第3流量変動率との差が所定範囲内となるように制御することで、第1重合溶液Cと第3溶液A3とを同じ割合に近づけて混合することができ、所望のポリアミック酸を安定して得ることができる。
【0240】
次いで、第2制御部200Eは、待機状態となる(ステップST84)。その後、処理は、ステップST81に戻される。
【0241】
本実施形態のポリアミック酸製造システム1Eによれば、上述の第2実施形態における効果のほか、以下の効果を奏する。
ポリアミック酸製造システム1Eは、第1重合溶液Cの流量変動と第3溶液A3の流量変動とが同期し、且つ、重合溶液流量変動率と第3流量変動率との差が小さくなるように、第3溶液A3の供給を制御する第2制御部200Eを備える。このようなポリアミック酸製造システム1Eによれば、第1重合溶液Cの流量変動と第3溶液A3の流量変動とを同期させ、且つ、重合溶液流量変動率と第3流量変動率との差を小さくできるため、所望のポリアミック酸をより安定的に得ることが可能である。
【0242】
<第7実施形態>
次に、図18図20により、第7実施形態におけるポリアミック酸製造システムについて説明する。第7実施形態は、処理部(反応部)が1段であるポリアミック酸製造システムの例であって、原料である溶液の流量変動率に基づいて溶液の供給を制御可能なシステムの例である。
【0243】
まず、図18及び図19により、第7実施形態におけるポリアミック酸製造システム1Fについて説明する。ただし、ポリアミック酸製造システム1Fは、第1制御部200Fを除いて上述の第5実施形態と同様であるため、第1制御部200F以外の構成についてはその説明を省略する。
【0244】
なお、本実施形態においては、第1実施形態と同様に、第1溶液A1に含まれる第1重合性化合物がテトラカルボン酸二無水物であり、第2溶液A2に含まれる第2重合性化合物がジアミンであるものとする。
【0245】
第1制御部200Fは、第1供給ポンプ15及び/又は第2供給ポンプ16を制御することにより、第1溶液A1に含まれるテトラカルボン酸二無水物と第2溶液A2に含まれるジアミンとのモル比が所定範囲内になるように制御する。上記のモル比は、例えば、所望の性状のポリアミック酸が得られるように設定される。
【0246】
本実施形態においては、例えば、テトラカルボン酸二無水物のモル数に対して当量比となるときのジアミンのモル数を100とした場合に、ジアミンのモル数が95~105の範囲内となることが好ましく、97.5~102.5の範囲内となることがより好ましい。
【0247】
ここで、本実施形態においては、テトラカルボン酸二無水物とジアミンとのモル比が当量比であるときに、ポリアミック酸の分子量が最大となり、第1重合溶液Cの粘度も最大となる。また、テトラカルボン酸二無水物とジアミンとのモル比が当量比からずれるに従って、ポリアミック酸の分子量が大幅に低下し、第1重合溶液Cの粘度も大幅に低下する。このため、第1供給ポンプ15及び第2供給ポンプ16の固有の脈動等に起因し、テトラカルボン酸二無水物とジアミンとのモル比が変動すると、ポリアミック酸の分子量が大きく変化し、第1重合溶液Cの粘度も大きく変化する。このように、第1重合溶液Cに粘度のムラが生じると、第1重合溶液Cに流量変動(脈動)が生じ、それに伴い、第1溶液A1及び第2溶液A2にも流量変動(脈動)が生じる。この流量変動(脈動)は、粘度が高いときほど影響が顕著になる。
【0248】
このとき、送液ラインLを流通する溶液に掛かる背圧が十分に高いと、粘度のムラに起因する第1重合溶液Cの流量変動(脈動)が小さくなり、それに伴う第1溶液A1及び第2溶液A2の流量変動(脈動)も小さくなる。しかし、第1溶液A1及び第2溶液A2の流量変動(脈動)には、第1供給ポンプ15及び第2供給ポンプ16の固有の脈動が重畳されるため、第1溶液A1及び第2溶液A2の流量は複雑に変動することになる。本実施形態では、このような状況においても所望のポリアミック酸を連続的且つ安定的に得るため、第1制御部200Fにおいて各種の制御を実行する。
【0249】
第1制御部200Fには、第1供給ポンプ15、第2供給ポンプ16、第1流量調整弁151、第1流量測定部152、第2流量調整弁161、及び第2流量測定部162が電気的に接続されている。
【0250】
第1制御部200Fは、第1溶液A1の流量変動率(第1流量変動率)が第1閾値以下になるように制御し、第2溶液A2の流量変動率(第2流量変動率)が第2閾値以下になるように制御する。本実施形態においては、第1流量変動率及び/又は第2流量変動率は、例えば3%以下であることが好ましく、2.5%以下であることがより好ましい。第1流量変動率及び/又は第2流量変動率の下限値は特に制限されないが、例えば0.01%であってもよい。
【0251】
第1制御部200Fは、例えば、図19の制御前の流量波形に示すように、第1流量変動率Haが第1閾値TH1よりも大きい場合に、第1流量変動率Haを第1閾値TH1以下にするため、第1流量調整弁151の弁開度を小さくするように調整するとともに、第1溶液A1の供給量が第1流量調整弁151の弁開度を調整する前の供給量と同じ供給量になるように、第1供給ポンプ15により供給する溶液の供給圧力を大きくするように変更する。また、第1制御部200Fは、第2流量変動率Hbが第2閾値TH2よりも大きい場合に、第2流量変動率Hbを第2閾値TH2以下にするため、第2流量調整弁161の弁開度を小さくするように調整するとともに、第2溶液A2の供給量が第2流量調整弁161の弁開度を調整する前の供給量と同じ供給量になるように、第2供給ポンプ16により供給する溶液の供給圧力を大きくするように変更する。これにより、図19の制御後の流量波形に示すように、第1流量変動率Haは、第1閾値TH1以下(Ha≦TH1)に調整され、第2流量変動率Hbは、第2閾値TH2以下(Hb≦TH2)に調整される。本実施形態においては、第1流量変動率Haの第1閾値TH1及び第2流量変動率Hbの第2閾値TH2は、例えば3%であることが好ましく、2.5%であることがより好ましい。
【0252】
このように、第1流量調整弁151及び/又は第2流量調整弁161の弁開度を調整するのに応じて、第1供給ポンプ15及び/又は第2供給ポンプ16により供給する溶液の供給圧力を調整することにより、第1溶液A1に含まれるテトラカルボン酸二無水物と第2溶液A2に含まれるジアミンとの比を変化させることなく、第1溶液A1と第2溶液A2とを混合することができる。
【0253】
次に、図20により、第7実施形態におけるポリアミック酸製造システム1Fの動作を説明する。
まず、ポリアミック酸製造システム1Fにおいて、動作を開始することで、第1供給ポンプ15が第1溶液A1を供給し、第2供給ポンプ16が第2溶液A2を供給する。ここで、第1供給ポンプ15及び第2供給ポンプ16は、第1溶液A1及び第2溶液A2を所望の割合で供給するように、互いの供給圧力(吐出圧力)が第1制御部200Fにより制御されている。
【0254】
次いで、図20に示すように、ステップST91において、第1流量測定部152は、第1溶液A1の流量を測定して取得する。また、第2流量測定部162は、第2溶液A2の流量を測定して取得する。
【0255】
次いで、ステップST92において、第1制御部200Fは、第1流量変動率が第1閾値よりも大きいか否か、第2流量変動率が第2閾値よりも大きいか否かを判定する。本実施形態においては、第1閾値及び第2閾値は、例えば3%に設定される。第1流量変動率及び第2流量変動率が3%以下である場合に、所望のポリアミック酸を安定して得ることが可能であるためである。
【0256】
そして、第1制御部200Fは、第1流量変動率が第1閾値よりも大きい、又は、第2流量変動率が第2閾値よりも大きいと判定した場合(YES)、処理をステップST93に進める。また、第1制御部200Fは、第1流量変動率が第1閾値以下であり、且つ、第2流量変動率が第2閾値以下であると判定した場合(NO)、処理をステップST91に戻す。
【0257】
次いで、ステップST93において、第1制御部200Fは、第1流量変動率及び/又は第2流量変動率を制御する。第1流量変動率が第1閾値よりも大きい場合、第1制御部200Fは、第1流量変動率を第1閾値以下にするため、第1流量調整弁151の弁開度を小さくするように調整するとともに、第1溶液A1の供給量が第1流量調整弁151の弁開度を調整する前の供給量と同じ供給量になるように、第1供給ポンプ15により供給する溶液の供給圧力を大きくするように変更する。また、第2流量変動率が第2閾値よりも大きい場合、第1制御部200Fは、第2流量変動率を第2閾値以下にするため、第2流量調整弁161の弁開度を小さくするように調整するとともに、第2溶液A2の供給量が第2流量調整弁161の弁開度を調整する前の供給量と同じ供給量になるように、第2供給ポンプ16により供給する溶液の供給圧力を大きくするように変更する。これにより、図19に示すように、制御後の第1流量変動率Haは、第1閾値TH1以下(Ha≦TH1)となり、制御後の第2流量変動率Hbは、第2閾値TH2以下(Hb≦TH2)となる。
【0258】
次いで、第1制御部200Fは、待機状態となる(ステップST94)。その後、処理は、ステップST91に戻される。
【0259】
本実施形態のポリアミック酸製造システム1Fによれば、上述の第1実施形態における効果のほか、以下の効果を奏する。
ポリアミック酸製造システム1Fは、第1流量変動率が第1閾値以下になるように制御し、第2流量変動率が第2閾値以下になるように制御する第1制御部200Fを備える。このようなポリアミック酸製造システム1Fによれば、第1流量変動率及び第2流量変動率を小さくできるため、所望のポリアミック酸をより安定的に得ることが可能である。
【0260】
<第8実施形態>
次に、図21及び図22により、第8実施形態におけるポリアミック酸製造システムについて説明する。第8実施形態は、処理部(反応部)が2段であるポリアミック酸製造システムの例であって、原料である溶液の流量変動率に基づいて溶液の供給を制御可能なシステムの例である。
【0261】
まず、図21により、第8実施形態におけるポリアミック酸製造システム1Gについて説明する。ただし、ポリアミック酸製造システム1Gは、第2制御部200Gを除いて上述の第6実施形態と同様であるため、第2制御部200G以外の構成についてはその説明を省略する。
【0262】
なお、本実施形態においては、第2実施形態と同様に、第1重合溶液Cに含まれるポリアミック酸が酸無水物基末端のポリアミック酸であり、第3溶液A3に含まれる重合性化合物がジアミンであるものとする。
【0263】
第2制御部200Gは、第3供給ポンプ17を制御することにより、第1重合溶液Cに含まれる酸無水物基末端のポリアミック酸と第3溶液A3に含まれるジアミンとのモル比が所定範囲内になるように制御する。上記のモル比は、例えば、所望の性状のポリアミック酸が得られるように設定される。
【0264】
本実施形態においては、酸無水物基末端のポリアミック酸のモル数に対して当量比となるときのジアミンのモル数を100と仮定した場合に、ジアミンのモル数が95~105の範囲内となることが好ましく、97.5~102.5の範囲内となることがより好ましい。
【0265】
ここで、本実施形態においては、酸無水物基末端のポリアミック酸とジアミンとのモル比が当量比であるときに、ポリアミック酸の分子量が最大となり、第2重合溶液Eの粘度も最大となる。また、酸無水物基末端のポリアミック酸とジアミンとのモル比が当量比からずれるに従って、ポリアミック酸の分子量が大幅に低下し、第2重合溶液Eの粘度も大幅に低下する。このため、第3供給ポンプ17の固有の脈動等に起因し、酸無水物基末端のポリアミック酸とジアミンとのモル比が変動すると、ポリアミック酸の分子量が大きく変化し、第2重合溶液Eの粘度も大きく変化する。このように、第2重合溶液Eに粘度のムラが生じると、第2重合溶液Eに流量変動(脈動)が生じ、それに伴い、第3溶液A3にも流量変動(脈動)が生じる。この流量変動(脈動)は、粘度が高いときほど影響が顕著になる。
【0266】
このとき、送液ラインLを流通する溶液に掛かる背圧が十分に高いと、粘度のムラに起因する第2重合溶液Eの流量変動(脈動)が小さくなり、それに伴う第3溶液A3の流量変動(脈動)も小さくなる。しかし、第3溶液A3の流量変動(脈動)には、第3供給ポンプ17の固有の脈動が重畳されるため、第3溶液A3の流量は複雑に変動することになる。本実施形態では、このような状況においても所望のポリアミック酸を連続的且つ安定的に得るため、第2制御部200Gにおいて各種の制御を実行する。
【0267】
第2制御部200Gには、第1供給ポンプ15、第2供給ポンプ16、第1流量調整弁151、第1流量測定部152、第2流量調整弁161、第2流量測定部162、第3流量調整弁171、第3流量測定部172、及び第4流量測定部182が電気的に接続されている。
【0268】
なお、第2制御部200Gは、第7実施形態における第1制御部200Fの機能も有するが、以下では第1制御部200Fと共通する部分については詳細な説明を省略する。
【0269】
第2制御部200Gは、第3溶液A3の流量変動率(第3流量変動率)が第3閾値以下になるように制御する。本実施形態においては、第3流量変動率は、例えば3%以下であることが好ましく、2.5%以下であることがより好ましい。第3流量変動率の下限値は特に制限されないが、例えば0.01%であってもよい。
【0270】
第2制御部200Gは、例えば、第3流量変動率が第3閾値よりも大きい場合に、第3流量変動率を第3閾値以下にするため、第3流量調整弁171の弁開度を小さくするように調整するとともに、第3溶液A3の供給量が第3流量調整弁171の弁開度を調整する前の供給量と同じ供給量になるように、第3供給ポンプ17により供給する溶液の供給圧力を大きくするように変更する。本実施形態においては、第3流量変動率の第3閾値は、例えば3%であることが好ましく、2.5%であることがより好ましい。
【0271】
このように、第3流量調整弁171の弁開度を調整するのに応じて、第3供給ポンプ17により供給する溶液の供給圧力を調整することにより、第1重合溶液Cに含まれる酸無水物基末端のポリアミック酸と、第3溶液A3に含まれるジアミンとの比を変化させることなく、第1重合溶液Cと第3溶液A3とを混合することができる。
【0272】
次に、図22により、第8実施形態におけるポリアミック酸製造システム1Gの動作を説明する。
まず、ポリアミック酸製造システム1Gにおいて、動作を開始することで、第1供給ポンプ15が第1溶液A1を供給し、第2供給ポンプ16が第2溶液A2を供給し、第3供給ポンプ17が第3溶液A3を供給する。ここで、第1供給ポンプ15及び第2供給ポンプ16は、第1溶液A1及び第2溶液A2を所望の割合で供給するように、互いの供給圧力(吐出圧力)が第2制御部200Gにより制御されている。第3供給ポンプ17は、第3溶液A3を所望の割合で供給するように、供給圧力(吐出圧力)が第2制御部200Gにより制御されている。
【0273】
次いで、図22に示すように、ステップST101において、第4流量測定部182は、第1重合溶液Cの流量を測定して取得する。また、第3流量測定部172は、第3溶液A3の流量を測定して取得する。
【0274】
次いで、ステップST102において、第2制御部200Gは、第3流量変動率が第3閾値よりも大きいか否かを判定する。本実施形態においては、第3閾値は、例えば3%に設定される。第3流量変動率が3%以下である場合に、所望のポリアミック酸を安定して得ることが可能であるためである。
【0275】
そして、第2制御部200Gは、第3流量変動率が第3閾値よりも大きいと判定した場合(YES)、処理をステップST103に進める。また、第2制御部200Gは、第3流量変動率が第3閾値以下であると判定した場合(NO)、処理をステップST101に戻す。
【0276】
次いで、ステップST103において、第2制御部200Gは、第3流量変動率を第3閾値以下にするため、第3流量調整弁171の弁開度を小さくするように調整するとともに、第3溶液A3の供給量が第3流量調整弁171の弁開度を調整する前の供給量と同じ供給量になるように、第3供給ポンプ17により供給する溶液の供給圧力を大きくするように変更する。これにより、制御後の第3流量変動率は、第3閾値以下となる。
【0277】
次いで、第2制御部200Gは、待機状態となる(ステップST104)。その後、処理は、ステップST101に戻される。
【0278】
本実施形態のポリアミック酸製造システム1Gによれば、上述の第2実施形態における効果のほか、以下の効果を奏する。
ポリアミック酸製造システム1Gは、第3流量変動率が第3閾値以下になるように制御する第2制御部200Gを備える。このようなポリアミック酸製造システム1Gによれば、第3流量変動率を小さくできるため、所望のポリアミック酸をより安定的に得ることが可能である。
【0279】
<変形例>
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲内での変形、改良等は本発明に含まれる。
【0280】
上述の実施形態では、便宜上、第1実施形態~第8実施形態に分けて説明したが、各実施形態に記載された事項を適宜組み合わせてもよい。例えば、第5実施形態又は第7実施形態においては、第3実施形態と同様に、第1測定部により取得された第1反応情報に基づいて、第1供給ポンプ15及び/又は第2供給ポンプ16における供給を制御するようにしてもよい。また、第5実施形態においては、第7実施形態と同様に、第1流量変動率が第1閾値以下になるように制御し、第2流量変動率が第2閾値以下になるように制御するようにしてもよい。
【0281】
また、上述の実施形態では、ポリアミック酸製造システムが1つ又は2つの処理部を有して構成されるものとしたが、これに限定されず、3つ以上の処理部を有して構成されていてもよい。すなわち、ポリアミック酸製造システムは、1段又は2段の反応を行うものに限定されず、3段以上の反応を行うものであってもよい。例えば、ポリアミック酸製造システムは、混合部と反応部とのセットを3セット以上有するように構成されていてもよい。ポリアミック酸製造システムは、各処理部を経るごとに目標とする反応率や品質に近づくように多段的に供給量等を調整可能である。
【0282】
また、ポリアミック酸製造システムは、第1溶液A1及び/又は第2溶液A2がフィラーを含有するものであってもよい。第1溶液A1及び/又は第2溶液A2にフィラーを添加することにより、製造されるポリアミック酸に簡便にフィラーを導入することが可能である。
【実施例
【0283】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0284】
<実施例1>
実施例1では、図1に示すような構造のポリアミック酸製造システム1を用いてポリアミック酸を製造した。第1タンク11には、4,4’-ジアミノジフェニルエーテルとピロメリット酸二無水物との反応により得られた酸無水物基末端のポリアミック酸をN,N-ジメチルホルムアミド中に溶解した第1溶液A1を収容した。また、第2タンク12には、p-フェニレンジアミンをN,N-ジメチルホルムアミド中に溶解した第2溶液A2を収容した。
【0285】
まず、第1混合部20において、第1供給ポンプ15により供給された第1溶液A1と、第2供給ポンプ16により供給された第2溶液A2とを混合して第1混合溶液Bを生成した。次いで、第1反応部30において、第1混合溶液Bを気体に接触しない状態で撹拌することにより、ポリアミック酸が溶解した第1重合溶液Cを生成した。具体的には、Kenics mixer型のスタティックミキサー(内径8mm、長さ335mm)により、溶液を気体に接触しない状態で撹拌して、重合反応を進行させた。その結果、第1溶液A1よりも粘度の高い第1重合溶液Cが得られた。得られた第1重合溶液C中に気泡は観察されなかった。
【0286】
<実施例2>
実施例2では、図1に示すような構造のポリアミック酸製造システム1を用いてポリアミック酸を製造した。第1タンク11には、4,4’-ジアミノジフェニルエーテルとピロメリット酸二無水物との反応により得られた酸無水物基末端のポリアミック酸をN,N-ジメチルホルムアミド中に溶解した第1溶液A1を収容した。また、第2タンク12には、p-フェニレンジアミンをN,N-ジメチルホルムアミド中に溶解した第2溶液A2を収容した。
【0287】
まず、第1混合部20において、第1供給ポンプ15により供給された第1溶液A1と、第2供給ポンプ16により供給された第2溶液A2とを混合して第1混合溶液Bを生成した。次いで、第1反応部30において、第1混合溶液Bを気体に接触しない状態で撹拌することにより、ポリアミック酸が溶解した第1重合溶液Cを生成した。具体的には、駆動型混合器(FQミキサー、FQ40、櫻製作所製)により、溶液を気体に接触しない状態で撹拌した後、Kenics mixer型のスタティックミキサー(内径8mm、長さ335mm)により、溶液を気体に接触しない状態で更に撹拌して、重合反応を進行させた。駆動型混合器の回転数は350rpmとした。その結果、第1溶液A1よりも粘度の高い第1重合溶液Cが得られた。得られた第1重合溶液C中に気泡は観察されなかった。
【0288】
<実施例3>
実施例3では、図1に示すような構造のポリアミック酸製造システム1を用いてポリアミック酸を製造した。第1タンク11には、4,4’-ジアミノジフェニルエーテルとピロメリット酸二無水物との反応により得られた酸無水物基末端のポリアミック酸をN,N-ジメチルホルムアミド中に溶解した第1溶液A1を収容した。また、第2タンク12には、p-フェニレンジアミンをN,N-ジメチルホルムアミド中に溶解した第2溶液A2を収容した。
【0289】
まず、第1混合部20において、第1供給ポンプ15により供給された第1溶液A1と、第2供給ポンプ16により供給された第2溶液A2とを混合して第1混合溶液Bを生成した。次いで、第1反応部30において、第1混合溶液Bを気体に接触しない状態で撹拌することにより、ポリアミック酸が溶解した第1重合溶液Cを生成した。具体的には、Kenics mixer型のスタティックミキサー(内径8mm、長さ335mm)により、溶液を気体に接触しない状態で撹拌した後、Kenics mixer型のスタティックミキサー(内径8mm、長さ260mm)により、溶液を気体に接触しない状態で更に撹拌して、重合反応を進行させた。その結果、第1溶液A1よりも粘度の高い第1重合溶液Cが得られた。得られた第1重合溶液C中に気泡は観察されなかった。
【0290】
<実施例4>
第1溶液A1として、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパンジベンゾエート-3,3’,4,4’-テトラカルボン酸二無水物をN,N-ジメチルホルムアミド中に溶解した溶液を用いた以外は実施例3と同様にして、ポリアミック酸が溶解した第1重合溶液Cを生成した。その結果、第1溶液A1よりも粘度の高い第1重合溶液Cが得られた。得られた第1重合溶液C中に気泡は観察されなかった。
【0291】
<実施例5>
実施例5では、図1に示すような構造のポリアミック酸製造システム1を用いてポリアミック酸を製造した。第1タンク11には、4,4’-ジアミノジフェニルエーテルとピロメリット酸二無水物との反応により得られたアミノ基末端のポリアミック酸をN,N-ジメチルホルムアミド中に溶解した第1溶液A1を収容した。また、第2タンク12には、ピロメリット酸二無水物をN,N-ジメチルホルムアミド中に溶解した第2溶液A2を収容した。
【0292】
まず、第1混合部20において、第1供給ポンプ15により供給された第1溶液A1と、第2供給ポンプ16により供給された第2溶液A2とを混合して第1混合溶液Bを生成した。次いで、第1反応部30において、第1混合溶液Bを気体に接触しない状態で撹拌することにより、ポリアミック酸が溶解した第1重合溶液Cを生成した。具体的には、Kenics mixer型のスタティックミキサー(内径8mm、長さ100mm)により、溶液を気体に接触しない状態で撹拌した後、Kenics mixer型のスタティックミキサー(内径8mm、長さ235mm)により、溶液を気体に接触しない状態で更に撹拌して、重合反応を進行させた。その結果、第1溶液A1よりも粘度の高い第1重合溶液Cが得られた。得られた第1重合溶液C中に気泡は観察されなかった。
【0293】
<実施例6>
実施例6では、図5に示すような構造のポリアミック酸製造システム1Bを用いてポリアミック酸を製造した。第1タンク11には、4,4’-ジアミノジフェニルエーテルとピロメリット酸二無水物との反応により得られた酸無水物基末端のポリアミック酸をN,N-ジメチルホルムアミド中に溶解した第1溶液A1を収容した。また、第2タンク12には、p-フェニレンジアミンをN,N-ジメチルホルムアミド中に溶解した第2溶液A2を収容した。また、第1粘度測定部111として、インライン式吸光度計を設置した。
【0294】
まず、第1混合部20において、第1供給ポンプ15により供給された第1溶液A1と、第2供給ポンプ16により供給された第2溶液A2とを混合して第1混合溶液Bを生成した。次いで、第1反応部30において、Kenics mixer型のスタティックミキサーにより第1混合溶液Bを気体に接触しない状態で撹拌することにより、ポリアミック酸が溶解した第1重合溶液Cを生成した。
【0295】
溶液の吸光度Aは、ランバート・ベールの法則により以下の式(3)で表される。
A=εcl ・・・(3)
ここで、εはモル吸光係数、cは試料のモル濃度、lは光路長である。予めオフラインで所定の重合処方で得られた重合溶液の吸光度を測定した結果、吸光度と粘度とに所定の関係があることを見出した。具体的には、波長490nmにおける吸光度が小さくなるほど粘度が上昇する。目標粘度を3200ポアズとしたとき、吸光度は0.178となる必要がある。第1溶液A1及び第2溶液A2の送液中に吸光度が0.199(換算粘度:2100ポアズ)である測定情報が得られたため、第2溶液A2が増加するように流量比率を変化させ、吸光度を0.178に調整した。その結果、第1重合溶液Cの粘度は3200ポアズとなった。得られた第1重合溶液C中に気泡は観察されなかった。
【0296】
<実施例7>
実施例7では、図5に示すような構造のポリアミック酸製造システム1Bを用いてポリアミック酸を製造した。第1タンク11には、4,4’-ジアミノジフェニルエーテルとピロメリット酸二無水物との反応により得られた酸無水物基末端のポリアミック酸をN,N-ジメチルホルムアミド中に溶解した第1溶液A1を収容した。また、第2タンク12には、p-フェニレンジアミンをN,N-ジメチルホルムアミド中に溶解した第2溶液A2を収容した。また、第1差圧測定部91、92として、2つの圧力計を設置した。
【0297】
まず、第1混合部20において、第1供給ポンプ15により供給された第1溶液A1と、第2供給ポンプ16により供給された第2溶液A2とを混合して第1混合溶液Bを生成した。次いで、第1反応部30において、Kenics mixer型のスタティックミキサーにより第1混合溶液Bを気体に接触しない状態で撹拌することにより、ポリアミック酸が溶解した第1重合溶液Cを生成した。
【0298】
層流で流れる溶液の円管での圧力損失ΔPは、以下の式(4)に示すハーゲンポアズイユの式より求めることができる。
ΔP=32μLu/D ・・・(4)
ここで、μは溶液の粘度、Lは管長(2つの圧力計間の距離)uは溶液の管断面平均流速、Dは管径である。ΔP、L、u、Dの値は得ることができるため、上記式(4)を用いて差圧と溶液の粘度との関係を求めることができる。このとき、圧力の測定精度を考慮して差圧を測定する2点間の距離を決めておけばよい。予め差圧と粘度との関係を確認した結果、差圧の測定値が小さくなるほど粘度が直線的に上昇することを見出した。目標粘度を1500ポアズとしたとき、差圧は0.6MPaとなる必要がある。第1溶液A1及び第2溶液A2の送液中に差圧が0.4MPa(換算粘度:600ポアズ)である測定情報が得られたため、第2溶液A2が増加するように流量比率を変化させ、差圧を0.6MPaに調整した。その結果、第1重合溶液Cの粘度は1500ポアズとなった。得られた第1重合溶液C中に気泡は観察されなかった。
【0299】
<実施例8>
実施例8では、図13に示すような構造のポリアミック酸製造システム1Dを用いてポリアミック酸を製造した。第1タンク11には、4,4’-ジアミノジフェニルエーテルとピロメリット酸二無水物との反応により得られた酸無水物基末端のポリアミック酸をN,N-ジメチルホルムアミド中に溶解した第1溶液A1を収容した。また、第2タンク12には、p-フェニレンジアミンをN,N-ジメチルホルムアミド中に溶解した第2溶液A2を収容した。
【0300】
まず、第1混合部20において、第1供給ポンプ15により供給された第1溶液A1と、第2供給ポンプ16により供給された第2溶液A2とを合流させて混合し、第1混合溶液Bを生成した。次いで、第1反応部30において、第1混合溶液Bを気体に接触しない状態で撹拌することにより、ポリアミック酸が溶解した第1重合溶液Cを生成した。具体的には、Kenics mixer型のスタティックミキサー(内径8mm、長さ670mm)により、溶液を気体に接触しない状態で撹拌して、重合反応を進行させた。その際、E型粘度計を用いて、得られた重合溶液の23℃における粘度を測定した。流動変動が同期した第1溶液A1及び第2溶液A2について、第1流量変動率が1.1%、第2流量変動率が3.6%となるように制御した結果、粘度ムラのない1030ポアズの第1重合溶液C(ポリアミック酸の重量分率:21%)が得られた。得られた第1重合溶液C中に気泡は観察されなかった。
【0301】
<実施例9>
実施例9では、図18に示すような構造のポリアミック酸製造システム1Fを用いてポリアミック酸を製造した。第1タンク11には、4,4’-ジアミノジフェニルエーテルとピロメリット酸二無水物との反応により得られた酸無水物基末端のポリアミック酸をN,N-ジメチルホルムアミド中に溶解した第1溶液A1を収容した。また、第2タンク12には、p-フェニレンジアミンをN,N-ジメチルホルムアミド中に溶解した第2溶液A2を収容した。
【0302】
まず、第1混合部20において、第1供給ポンプ15により供給された第1溶液A1と、第2供給ポンプ16により供給された第2溶液A2とを合流させて混合し、第1混合溶液Bを生成した。次いで、第1反応部30において、第1混合溶液Bを気体に接触しない状態で撹拌することにより、ポリアミック酸が溶解した第1重合溶液Cを生成した。具体的には、Kenics mixer型のスタティックミキサー(内径8mm、長さ520mm)により、溶液を気体に接触しない状態で撹拌して、重合反応を進行させた。その際、E型粘度計を用いて、得られた重合溶液の23℃における粘度を測定した。第1流量変動率が0.25%、第2流量変動率が0.50%となるように制御した結果、粘度ムラのない2410ポアズの第1重合溶液C(ポリアミック酸の重量分率:20%)が得られた。得られた第1重合溶液C中に気泡は観察されなかった。
【0303】
<実施例10>
実施例10では、図18に示すような構造のポリアミック酸製造システム1Fを用いてポリアミック酸を製造した。第1タンク11には、4,4’-ジアミノジフェニルエーテルとピロメリット酸二無水物との反応により得られた酸無水物基末端のポリアミック酸をN,N-ジメチルホルムアミド中に溶解した第1溶液A1を収容した。また、第2タンク12には、p-フェニレンジアミンをN,N-ジメチルホルムアミド中に溶解した第2溶液A2を収容した。
【0304】
まず、第1混合部20において、第1供給ポンプ15により供給された第1溶液A1と、第2供給ポンプ16により供給された第2溶液A2とを合流させて混合し、第1混合溶液Bを生成した。次いで、第1反応部30において、第1混合溶液Bを気体に接触しない状態で撹拌することにより、ポリアミック酸が溶解した第1重合溶液Cを生成した。具体的には、Kenics mixer型のスタティックミキサー(内径8mm、長さ520mm)により、溶液を気体に接触しない状態で撹拌して、重合反応を進行させた。その際、E型粘度計を用いて、得られた重合溶液の23℃における粘度を測定した。第1流量変動率が0.32%、第2流量変動率が0.40%となるように制御した結果、粘度ムラのない5700ポアズの第1重合溶液C(ポリアミック酸の重量分率:20%)が得られた。得られた第1重合溶液C中に気泡は観察されなかった。
【0305】
<比較例1>
4,4’-ジアミノジフェニルエーテルとピロメリット酸二無水物との反応により得られた酸無水物基末端のポリアミック酸を3Lのセパラブルフラスコ内に投入した。そして、フラスコ内の溶液を45度傾斜パドル翼により200rpmで撹拌しながらp-フェニレンジアミンを含む溶液を滴下し、ポリアミック酸の重量分率が18%となるようにポリアミック酸の重合反応を進行させた。E型粘度計を用いて、得られた重合溶液の23℃における粘度を測定したところ、2000ポアズであった。1時間重合した後の溶液は気泡を巻き込んでおり、静置しても容易に脱泡されなかった。
【符号の説明】
【0306】
1 ポリアミック酸製造システム
11 第1タンク
12 第2タンク
15 第1供給ポンプ(第1供給部)
16 第2供給ポンプ(第2供給部)
20 第1混合部
30 第1反応部
40 第1クッションタンク
A1 第1溶液
A2 第2溶液
B 第1混合溶液
C 第1重合溶液
L 送液ライン
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
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図17
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図19
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図22