(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-18
(45)【発行日】2024-11-26
(54)【発明の名称】改変型トランスグルタミナーゼ
(51)【国際特許分類】
C12N 9/10 20060101AFI20241119BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20241119BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20241119BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20241119BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20241119BHJP
C12N 15/54 20060101ALI20241119BHJP
【FI】
C12N9/10 ZNA
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12N15/54
(21)【出願番号】P 2023120137
(22)【出願日】2023-07-24
(62)【分割の表示】P 2019557205の分割
【原出願日】2018-11-22
【審査請求日】2023-08-22
(31)【優先権主張番号】P 2017231192
(32)【優先日】2017-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000216162
【氏名又は名称】天野エンザイム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124431
【氏名又は名称】田中 順也
(74)【代理人】
【識別番号】100174160
【氏名又は名称】水谷 馨也
(74)【代理人】
【識別番号】100175651
【氏名又は名称】迫田 恭子
(72)【発明者】
【氏名】吉田 和典
【審査官】岡部 佐知子
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-194004(JP,A)
【文献】特開2002-253272(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-15/90
C12N 1/00- 7/08
C12N 9/00- 9/99
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
UniProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号1のアミノ酸配列において、以下の(1)~(9)の中のいずれか一つのアミノ酸置換を含むアミノ酸配列、又は該アミノ酸配列と
90%以上の同一性を示すアミノ酸配列(但し、前記アミノ酸置換の位置以外の部分でアミノ酸配列の相違が生じている)を有し、前記アミノ酸置換に対応した特性変化が認められる改変型トランスグルタミナーゼ:
(1)変異点がV6、置換後のアミノ酸がP、アミノ酸置換による特性変化が温度安定性低下及び抗酸化性向上;
(2)変異点がE28、置換後のアミノ酸がV、R、K、M、N、F、G、L又はY、アミノ酸置換による特性変化が温度安定性低下及び抗酸化性向上;
(3)変異点がY42、置換後のアミノ酸がF、L又はM、アミノ酸置換による特性変化が温度安定性低下及び抗酸化性向上;
(4)変異点がE58、置換後のアミノ酸がY、M、A、F、I、V、R、K、L又はQ、アミノ酸置換による特性変化が温度安定性低下及び抗酸化性向上;
(5)変異点がV67、置換後のアミノ酸がA又はS、アミノ酸置換による特性変化が温度安定性低下及び抗酸化性向上;
(6)変異点がT68、置換後のアミノ酸がC、L又はM、アミノ酸置換による特性変化が温度安定性低下及び抗酸化性向上;
(7)変異点がT77、置換後のアミノ酸がC、アミノ酸置換による特性変化が温度安定性低下及び抗酸化性向上;
(8)変異点がT273、置換後のアミノ酸がE、アミノ酸置換による特性変化が温度安定性低下及び抗酸化性向上;
(9)変異点がY291、置換後のアミノ酸がI、L、C、N、S又はV、アミノ酸置換による特性変化が温度安定性低下及び抗酸化性向上。
【請求項2】
配列番号5~10のいずれかのアミノ酸配列からなる、請求項1に記載の改変型トランスグルタミナーゼ。
【請求項3】
請求項1
又は2に記載の改変型トランスグルタミナーゼをコードする遺伝子。
【請求項4】
配列番号21~26のいずれかの塩基配列を含む、請求項
3に記載の遺伝子。
【請求項5】
請求項
3又は
4に記載の遺伝子を含む組換えDNA。
【請求項6】
請求項
5に記載の組換えDNAを保有する微生物。
【請求項7】
請求項1
又は2に記載の改変型トランスグルタミナーゼを含む酵素剤。
【請求項8】
以下のステップ(I)~(III)を含む、改変型トランスグルタミナーゼの調製法:
(I)請求項1
又は2の改変型トランスグルタミナーゼのアミノ酸配列をコードする核酸を用意するステップ;
(II)前記核酸を発現させるステップ、及び
(III)発現産物を回収するステップ。
【請求項9】
前記アミノ酸配列が配列番号5~10のいずれかのアミノ酸配列である、請求項
8に記載の調製法。
【請求項10】
前記核酸が、配列番号21~26のいずれかの塩基配列を含む、請求項
9に記載の調製法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はトランスグルタミナーゼに関する。詳しくは、特性が変化ないし向上した改変型トランスグルタミナーゼ及びその用途等に関する。本出願は、2017年11月30日に出願された日本国特許出願第2017-231192号に基づく優先権を主張するものであり、当該特許出願の全内容は参照により援用される。
【背景技術】
【0002】
トランスグルタミナーゼは、ペプチド鎖内にあるグルタミン残基のγ-カルボキシルアミド基のアシル転移反応を触媒する酵素であり、アシル受容体としてタンパク質中のリジン残基のε-アミノ基が作用すると、タンパク質分子の分子内あるいは分子間においてε-(γ-Gln)-Lys架橋結合を形成させる。従って、トランスグルタミナーゼの作用を利用すればタンパク質又はペプチドの改質を行うことができるため、ストレプトミセス属由来のトランスグルタミナーゼ(例えば特許文献1を参照)が肉の結着、ソーセージ、豆腐、パン、麺類の製造に使用されている。また、食品分野に限らず、線維分野、医療分野、香粧品分野等でのトランスグルタミナーゼの利用も検討されている。このような利用拡大に伴い、トランスグルタミナーゼの特性(耐熱性、比活性、基質特異性、安定性など)を改良することが試みられている(例えば特許文献2、3、非特許文献1~4を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
特許文献1 : 特開平4-108381号公報
特許文献2 : 特開2002-253272号公報
特許文献3 : 特開2008-194004号公報
非特許文献
【0004】
非特許文献1 : Marx CK et al., J Biotechnol. 2008 Sep 10;136(3-4):156-62.
非特許文献2 : Tagami U et al., Protein Eng Des Sel. 2009 Dec; 22(12): 747-752.
非特許文献3 : Yokoyama K et al., Appl Microbiol Biotechnol (2010) 87:2087-2096.
非特許文献4 : Buettner K et al., Amino Acids. 2012 Feb;42(2-3):987-96.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の通り、これまでにも、耐熱性や比活性の向上等を目的としてトランスグルタミナーゼの改良が試みられているが、その有用性の高さや用途の更なる拡大等の理由から、トランスグルタミナーゼの改良に対するニーズは依然として高い。そこで本発明は、トランスグルタミナーゼの改良に有効な新たな変異を見出し、有用性の高い改変型のトランスグルタミナーゼ(変異体)及びその用途などを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決すべく本発明者らは、アミノ酸置換(特定のアミノ酸残基を別のアミノ酸へ変換すること)による、ストレプトマイセス・モバラエンシス由来のトランスグルタミナーゼの改良を試みた。試行錯誤の末、その特性の変化(温度安定性の低下、耐熱性の向上、抗酸化性の向上、反応性の向上、脱アミド酵素化)に有効な複数の変異(アミノ酸残基及び置換後のアミノ酸の組合せ)を同定することに成功した。注目すべきことに、二つ以上の特性の変化をもたらす変異も見出された。更には、このような複合的な改良が達成された変異の中には、温度安定性の低下と抗酸化性の向上という、相反するともいえる特性の変化が生じたものも存在した。この事実は極めて予想外かつ期待を超えるものであり、特筆に値する。一方、以上の成果は、トランスグルタミナーゼの改良という目的を達成し得る改変型トランスグルタミナーゼを設計、取得するための情報・手段を提供する点においても重要である。
【0007】
ところで、効果的な二つの変異を組み合わせることによって相加的又は相乗的効果が生まれる可能性が高いことも多く経験するところである。また、同種の酵素については構造(一次構造、立体構造)の類似性が高く、同様の変異が同様の効果を生む蓋然性が高いという技術常識に鑑みれば、配列番号1のアミノ酸配列を有するストレプトマイセス・モバラエンシス由来のトランスグルタミナーゼにおいて見出された有用な変異を、当該トランスグルタミナーゼとの間で構造上の類似性が高い他のトランスグルタミナーゼに対して適用すれば、同等の効果が奏される蓋然性が高く、また、当業者であれば、このような適用が有効であることを認識し得る。
【0008】
以下の発明は以上の成果及び考察に基づく。
[1]配列番号1のアミノ酸配列において、以下の(1)~(134)の中のいずれか一つのアミノ酸置換を含むアミノ酸配列、又は該アミノ酸配列と80%以上の同一性を示すアミノ酸配列(但し、前記アミノ酸置換の位置以外の部分でアミノ酸配列の相違が生じている)を有し、前記アミノ酸置換に対応した特性変化が認められる改変型トランスグルタミナーゼ:
(1)変異点がV6、置換後のアミノ酸がQ、I、M、S、C、K、L、H、F、G、N、P、R、W又はY、アミノ酸置換による特性変化が温度安定性低下;
(2)変異点がR26、置換後のアミノ酸がK、Q、M、H、Y、D、G、N、P又はS、アミノ酸置換による特性変化が温度安定性低下;
(3)変異点がE28、置換後のアミノ酸がV、Q、W、R、K、M、N、F、G、L、P又はY、アミノ酸置換による特性変化が温度安定性低下;
(4)変異点がV30、置換後のアミノ酸がP、C、A、E、F、G、H、K、N、Q、R、W、Y又はL、アミノ酸置換による特性変化が温度安定性低下;
(5)変異点がY34、置換後のアミノ酸がA、アミノ酸置換による特性変化が温度安定性低下;
(6)変異点がY42、置換後のアミノ酸がF、A、C、D、E、G、I、L、M、Q、S、T、V又はW、アミノ酸置換による特性変化が温度安定性低下;
(7)変異点がE58、置換後のアミノ酸がY、M、A、F、I、V、R、K、N、L、S、Q、G又はH、アミノ酸置換による特性変化が温度安定性低下;
(8)変異点がW59、置換後のアミノ酸がR、N、Y、A、S、I、V、D、G又はP、アミノ酸置換による特性変化が温度安定性低下;
(9)変異点がL60、置換後のアミノ酸がI、M、V、A、C、E、F、Q、S、T、W又はY、アミノ酸置換による特性変化が温度安定性低下;
(10)変異点がY62、置換後のアミノ酸がC、R、G、K又はS、アミノ酸置換による特性変化が温度安定性低下;
(11)変異点がV65、置換後のアミノ酸がN、L、M、F、W又はY、アミノ酸置換による特性変化が温度安定性低下;
(12)変異点がV67、置換後のアミノ酸がL、N、A、C、M、Q又はS、アミノ酸置換による特性変化が温度安定性低下;
(13)変異点がT68、置換後のアミノ酸がC、L、A、S、M、F、N、Q又はY、アミノ酸置換による特性変化が温度安定性低下;
(14)変異点がW69、置換後のアミノ酸がH、M、I、C、E、F、G、K、L、N、Q、R、S、T又はV、アミノ酸置換による特性変化が温度安定性低下;
(15)変異点がQ74、置換後のアミノ酸がW、D、G又はK、アミノ酸置換による特性変化が温度安定性低下;
(16)変異点がY75、置換後のアミノ酸がR、Q、T又はG、アミノ酸置換による特性変化が温度安定性低下;
(17)変異点がT77、置換後のアミノ酸がM、H、E、C又はG、アミノ酸置換による特性変化が温度安定性低下;
(18)変異点がF85、置換後のアミノ酸がM、アミノ酸置換による特性変化が温度安定性低下;
(19)変異点がF90、置換後のアミノ酸がC、M、H、L又はV、アミノ酸置換による特性変化が温度安定性低下;
(20)変異点がF108、置換後のアミノ酸がR、L、T、A、I、K、N又はV、アミノ酸置換による特性変化が温度安定性低下;
(21)変異点がF117、置換後のアミノ酸がM又はL、アミノ酸置換による特性変化が温度安定性低下;
(22)変異点がS199、置換後のアミノ酸がG、M、N、K又はV、アミノ酸置換による特性変化が温度安定性低下;
(23)変異点がF202、置換後のアミノ酸がL又はW、アミノ酸置換による特性変化が温度安定性低下;
(24)変異点がW203、置換後のアミノ酸がF、アミノ酸置換による特性変化が温度安定性低下;
(25)変異点がF254、置換後のアミノ酸がY又はM、アミノ酸置換による特性変化が温度安定性低下;
(26)変異点がT273、置換後のアミノ酸がI、V、M、C、S、L、R、G、A、E、F、Y、D、K、W又はH、アミノ酸置換による特性変化が温度安定性低下;
(27)変異点がN276、置換後のアミノ酸がC、E、K、L、S、T又はV、アミノ酸置換による特性変化が温度安定性低下;
(28)変異点がY278、置換後のアミノ酸がM、L、H、I、K、R、W、C、G、N、Q、S、T又はV、アミノ酸置換による特性変化が温度安定性低下;
(29)変異点がS284、置換後のアミノ酸がW、Y、M、F又はNアミノ酸置換による特性変化が温度安定性低下;
(30)変異点がY291、置換後のアミノ酸がI、W、L、A、C、K、N、Q、R、S又はV、アミノ酸置換による特性変化が温度安定性低下;
(31)変異点がS299、置換後のアミノ酸がI、Y、V、K、M、Q、A、F、G又はE、アミノ酸置換による特性変化が温度安定性低下;
(32)変異点がS303、置換後のアミノ酸がN、G、C、V、P又はY、アミノ酸置換による特性変化が温度安定性低下;
(33)変異点がY310、置換後のアミノ酸がC、M又はI、アミノ酸置換による特性変化が温度安定性低下;
(34)変異点がD3、置換後のアミノ酸がQ、P、E、S又はY、アミノ酸置換による特性変化が耐熱性向上;
(35)変異点がR26、置換後のアミノ酸がV、アミノ酸置換による特性変化が耐熱性向上;
(36)変異点がY34、置換後のアミノ酸がW、アミノ酸置換による特性変化が耐熱性向上;
(37)変異点がV67、置換後のアミノ酸がH、アミノ酸置換による特性変化が耐熱性向上;
(38)変異点がT68、置換後のアミノ酸がV又はI、アミノ酸置換による特性変化が耐熱性向上;
(39)変異点がQ74、置換後のアミノ酸がF、アミノ酸置換による特性変化が耐熱性向上;
(40)変異点がT77、置換後のアミノ酸がQ、アミノ酸置換による特性変化が耐熱性向上;
(41)変異点がS199、置換後のアミノ酸がC又はQ、アミノ酸置換による特性変化が耐熱性向上;
(42)変異点がT273、置換後のアミノ酸がQ、アミノ酸置換による特性変化が耐熱性向上;
(43)変異点がS284、置換後のアミノ酸がL、H、K、P又はR、アミノ酸置換による特性変化が耐熱性向上;
(44)変異点がS299、置換後のアミノ酸がN、アミノ酸置換による特性変化が耐熱性向上;
(45)変異点がS303、置換後のアミノ酸がK、アミノ酸置換による特性変化が耐熱性向上;
(46)変異点がD3、置換後のアミノ酸がE、Q、S又はY、アミノ酸置換による特性変化が抗酸化性向上;
(47)変異点がV6、置換後のアミノ酸がP、アミノ酸置換による特性変化が抗酸化性向上;
(48)変異点がR26、置換後のアミノ酸がM、K、W、C、Q、G、Y、E、T、N、D、I、S、P又はV、アミノ酸置換による特性変化が抗酸化性向上;
(49)変異点がE28、置換後のアミノ酸がL、M、K、C、V、R、W、G、N、F、Y又はH、アミノ酸置換による特性変化が抗酸化性向上;
(50)変異点がY42、置換後のアミノ酸がL、N又はF、アミノ酸置換による特性変化が抗酸化性向上;
(51)変異点がE58、置換後のアミノ酸がQ、A、I、V、L、T、M、K、Y、W、F又はR、アミノ酸置換による特性変化が抗酸化性向上;
(52)変異点がV67、置換後のアミノ酸がT、S又はA、アミノ酸置換による特性変化が抗酸化性向上;
(53)変異点がT68、置換後のアミノ酸がL、I、V又はM、アミノ酸置換による特性変化が抗酸化性向上;
(54)変異点がQ74、置換後のアミノ酸がV、アミノ酸置換による特性変化が抗酸化性向上;
(55)変異点がT77、置換後のアミノ酸がD、アミノ酸置換による特性変化が抗酸化性向上;
(56)変異点がS199、置換後のアミノ酸がC、アミノ酸置換による特性変化が抗酸化性向上;
(57)変異点がT273、置換後のアミノ酸がE、アミノ酸置換による特性変化が抗酸化性向上;
(58)変異点がS284、置換後のアミノ酸がR又はH、アミノ酸置換による特性変化が抗酸化性向上;
(59)変異点がY291、置換後のアミノ酸がI、S、F、L、C、N、V又はM、アミノ酸置換による特性変化が抗酸化性向上;
(60)変異点がS284、置換後のアミノ酸がM、K又はV、アミノ酸置換による特性変化が反応性向上;
(61)変異点がF251、置換後のアミノ酸がY、アミノ酸置換による特性変化が反応性向上;
(62)変異点がV6とY75、変異点V6の置換後のアミノ酸がE、変異点Y75の置換後のアミノ酸がF、アミノ酸置換による特性変化が反応性向上;
(63)変異点がD3とT77、変異点D3の置換後のアミノ酸がP、変異点T77の置換後のアミノ酸がQ、アミノ酸置換による特性変化が反応性向上;
(64)変異点がD3、置換後のアミノ酸がQ、S又はY、アミノ酸置換による特性変化が耐熱性向上及び抗酸化性向上;
(65)変異点がD3、置換後のアミノ酸がP、アミノ酸置換による特性変化が耐熱性向上及び反応性向上;
(66)変異点がD3、置換後のアミノ酸がE、アミノ酸置換による特性変化が耐熱性向上、抗酸化性向上及び反応性向上;
(67)変異点がV6、置換後のアミノ酸がP、アミノ酸置換による特性変化が温度安定性低下及び抗酸化性向上;
(68)変異点がR26、置換後のアミノ酸がK、Q、M、Y、D、G、N、P又はS、アミノ酸置換による特性変化が温度安定性低下及び抗酸化性向上;
(69)変異点がR26、置換後のアミノ酸がV、アミノ酸置換による特性変化が耐熱性向上及び抗酸化性向上;
(70)変異点がR26、置換後のアミノ酸がH、アミノ酸置換による特性変化が温度安定性低下、抗酸化性向上及び反応性向上;
(71)変異点がE28、置換後のアミノ酸がV、R、K、M、N、F、G、L又はY、アミノ酸置換による特性変化が温度安定性低下及び抗酸化性向上;
(72)変異点がV30、置換後のアミノ酸がP、G、N、R又はY、アミノ酸置換による特性変化が温度安定性低下及び反応性向上;
(73)変異点がY42、置換後のアミノ酸がF、L又はM、アミノ酸置換による特性変化が温度安定性低下及び抗酸化性向上;
(74)変異点がE58、置換後のアミノ酸がY、M、A、F、I、V、R、K、L又はQ、アミノ酸置換による特性変化が温度安定性低下及び抗酸化性向上;
(75)変異点がL60、置換後のアミノ酸がI、アミノ酸置換による特性変化が温度安定性低下及び反応性向上;
(76)変異点がV67、置換後のアミノ酸がA又はS、アミノ酸置換による特性変化が温度安定性低下及び抗酸化性向上;
(77)変異点がT68、置換後のアミノ酸がC、L又はM、アミノ酸置換による特性変化が温度安定性低下及び抗酸化性向上;
(78)変異点がT68、置換後のアミノ酸がV又はI、アミノ酸置換による特性変化が耐熱性向上及び抗酸化性向上;
(79)変異点がQ74、置換後のアミノ酸がV、アミノ酸置換による特性変化が抗酸化性向上及び反応性向上;
(80)変異点がT77、置換後のアミノ酸がC、アミノ酸置換による特性変化が温度安定性低下及び抗酸化性向上;
(81)変異点がT77、置換後のアミノ酸がE、アミノ酸置換による特性変化が温度安定性低下及び反応性向上;
(82)変異点がT77、置換後のアミノ酸がD、アミノ酸置換による特性変化が抗酸化性向上及び反応性向上;
(83)変異点がS199、置換後のアミノ酸がG、アミノ酸置換による特性変化が温度安定性低下及び反応性向上;
(84)変異点がS199、置換後のアミノ酸がC、アミノ酸置換による特性変化が耐熱性向上、抗酸化性向上及び反応性向上;
(85)変異点がT273、置換後のアミノ酸がE、アミノ酸置換による特性変化が温度安定性低下及び抗酸化性向上;
(86)変異点がS284、置換後のアミノ酸がM又はF、アミノ酸置換による特性変化が温度安定性低下及び反応性向上;
(87)変異点がS284、置換後のアミノ酸がL又はK、アミノ酸置換による特性変化が耐熱性向上及び反応性向上;
(88)変異点がS284、置換後のアミノ酸がH又はR、アミノ酸置換による特性変化が耐熱性向上及び抗酸化性向上;
(89)変異点がY291、置換後のアミノ酸がI、L、C、N、S又はV、アミノ酸置換による特性変化が温度安定性低下及び抗酸化性向上;
(90)変異点がS299、置換後のアミノ酸がV、K、M又はA、アミノ酸置換による特性変化が温度安定性低下及び反応性向上;
(91)変異点がS303、置換後のアミノ酸がK、アミノ酸置換による特性変化が耐熱性向上及び反応性向上;
(92)変異点がR5、置換後のアミノ酸がQ、P、C、M、I、V、Y、F、S、N、T又はG、アミノ酸置換による特性変化が脱アミド酵素化;
(93)変異点がY34、置換後のアミノ酸がH又はM、アミノ酸置換による特性変化が脱アミド酵素化;
(94)変異点がW59、置換後のアミノ酸がK又はE、アミノ酸置換による特性変化が脱アミド酵素化;
(95)変異点がS61、置換後のアミノ酸がT、V、Y、D、I、L、N、E、M、F、W、Q、P、H又はK、アミノ酸置換による特性変化が脱アミド酵素化;
(96)変異点がY62、置換後のアミノ酸がD又はP、アミノ酸置換による特性変化が脱アミド酵素化;
(97)変異点がG63、置換後のアミノ酸がD、Q、Y、R、K、H、P、M、N、C、F、L、W、T、V又はS、アミノ酸置換による特性変化が脱アミド酵素化;
(98)変異点がV65、置換後のアミノ酸がC、T又はK、アミノ酸置換による特性変化が脱アミド酵素化;
(99)変異点がG66、置換後のアミノ酸がW又はK、アミノ酸置換による特性変化が脱アミド酵素化;
(100)変異点がT68、置換後のアミノ酸がP又はH、アミノ酸置換による特性変化が脱アミド酵素化;
(101)変異点がW69、置換後のアミノ酸がY、D又はP、アミノ酸置換による特性変化が脱アミド酵素化;
(102)変異点がQ74、置換後のアミノ酸がR又はP、アミノ酸置換による特性変化が脱アミド酵素化;
(103)変異点がF85、置換後のアミノ酸がY、W、L、I、Q、C、T、A、V、S、R、H又はN、アミノ酸置換による特性変化が脱アミド酵素化;
(104)変異点がF108、置換後のアミノ酸がQ、C、E、S又はN、アミノ酸置換による特性変化が脱アミド酵素化;
(105)変異点がF117、置換後のアミノ酸がC、I、W、V、A、G、T又はN、アミノ酸置換による特性変化が脱アミド酵素化;
(106)変異点がY198、置換後のアミノ酸がF、H、L、S、M又はI、アミノ酸置換による特性変化が脱アミド酵素化;
(107)変異点がS199、置換後のアミノ酸がQ又はP、アミノ酸置換による特性変化が脱アミド酵素化;
(108)変異点がK200、置換後のアミノ酸がY、M、I、R、L又はV、アミノ酸置換による特性変化が脱アミド酵素化;
(109)変異点がH201、置換後のアミノ酸がK、R、M、L又はQ、アミノ酸置換による特性変化が脱アミド酵素化;
(110)変異点がF202、置換後のアミノ酸がY、M、H、V又はC、アミノ酸置換による特性変化が脱アミド酵素化;
(111)変異点がW203、置換後のアミノ酸がY、アミノ酸置換による特性変化が脱アミド酵素化;
(112)変異点がF223、置換後のアミノ酸がY、M、L、W、V、H、G又はA、アミノ酸置換による特性変化が脱アミド酵素化;
(113)変異点がR238、置換後のアミノ酸がA、D、V、G、H又はS、アミノ酸置換による特性変化が脱アミド酵素化;
(114)変異点がF251、置換後のアミノ酸がH、N、C、M、R、S、A、T、L、P、G、V又はQ、アミノ酸置換による特性変化が脱アミド酵素化;
(115)変異点がV252、置換後のアミノ酸がM、L、T又はC、アミノ酸置換による特性変化が脱アミド酵素化;
(116)変異点がN253、置換後のアミノ酸がT、V、K、C又はR、アミノ酸置換による特性変化が脱アミド酵素化;
(117)変異点がY256、置換後のアミノ酸がL、V又はI、アミノ酸置換による特性変化が脱アミド酵素化;
(118)変異点がG257、置換後のアミノ酸がA又はC、アミノ酸置換による特性変化が脱アミド酵素化;
(119)変異点がW258、置換後のアミノ酸がY、F又はN、アミノ酸置換による特性変化が脱アミド酵素化;
(120)変異点がT273、置換後のアミノ酸がN、アミノ酸置換による特性変化が脱アミド酵素化;
(121)変異点がG275、置換後のアミノ酸がA、C、S、V、K、I、F、H、R、L、P、Q、Y、N、M又はT、アミノ酸置換による特性変化が脱アミド酵素化;
(122)変異点がN276、置換後のアミノ酸がG、M、Q又はH、アミノ酸置換による特性変化が脱アミド酵素化;
(123)変異点がH277、置換後のアミノ酸がN、S、Q、C、E、K、D、I、R、M、P、L、W、V、Y、G、F又はT、アミノ酸置換による特性変化が脱アミド酵素化;
(124)変異点がY278、置換後のアミノ酸がP又はD、アミノ酸置換による特性変化が脱アミド酵素化;
(125)変異点がH279、置換後のアミノ酸がN、アミノ酸置換による特性変化が脱アミド酵素化;
(126)変異点がS284、置換後のアミノ酸がC、アミノ酸置換による特性変化が脱アミド酵素化;
(127)変異点がM288、置換後のアミノ酸がV、Q又はT、アミノ酸置換による特性変化が脱アミド酵素化;
(128)変異点がV290、置換後のアミノ酸がT、C、L、M、A、S又はN、アミノ酸置換による特性変化が脱アミド酵素化;
(129)変異点がY291、置換後のアミノ酸がH、T、E又はG、アミノ酸置換による特性変化が脱アミド酵素化;
(130)変異点がW298、置換後のアミノ酸がF、Y、I、L又はM、アミノ酸置換による特性変化が脱アミド酵素化;
(131)変異点がS299、置換後のアミノ酸がN又はP、アミノ酸置換による特性変化が脱アミド酵素化;
(132)変異点がY302、置換後のアミノ酸がL、H、M、V、C、T、P、S又はW、アミノ酸置換による特性変化が脱アミド酵素化;
(133)変異点がS303、置換後のアミノ酸がI、Q、D、H又はE、アミノ酸置換による特性変化が脱アミド酵素化;
(134)変異点がF305、置換後のアミノ酸がW、H又はY、アミノ酸置換による特性変化が脱アミド酵素化。
[2]前記同一性が82%以上である、[1]に記載の改変型トランスグルタミナーゼ。
[3]前記同一性が85%以上である、[1]に記載の改変型トランスグルタミナーゼ。
[4]前記同一性が90%以上である、[1]に記載の改変型トランスグルタミナーゼ。
[5]配列番号2~10のいずれかのアミノ酸配列からなる、[1]に記載の改変型トランスグルタミナーゼ。
[6][1]~[5]のいずれか一項に記載の改変型トランスグルタミナーゼをコードする遺伝子。
[7]配列番号18~26のいずれかの塩基配列を含む、[6]に記載の遺伝子。
[8][6]又は[7]に記載の遺伝子を含む組換えDNA。
[9][8]に記載の組換えDNAを保有する微生物。
[10][1]~[5]のいずれか一項に記載の改変型トランスグルタミナーゼを含む酵素剤。
[11]以下のステップ(I)~(III)を含む、改変型トランスグルタミナーゼの調製法:
(I)[1]~[5]のいずれか一項の改変型トランスグルタミナーゼのアミノ酸配列をコードする核酸を用意するステップ;
(II)前記核酸を発現させるステップ、及び
(III)発現産物を回収するステップ。
[12]前記アミノ酸配列が配列番号2~10のいずれかのアミノ酸配列である、[11]に記載の調製法。
[13]前記核酸が、配列番号18~26のいずれかの塩基配列を含む、[12]に記載の調製法。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1-1】温度安定性低下に有効な変異点。各変異点を各種アミノ酸に置換し、置換後の酵素(変異体)の活性残存率を野生型酵素と比較することで有効なアミノ酸置換を特定した。活性測定値から、変異株の培養液1mL当たりのTG(トランスグルタミナーゼ)活性を算出し、評価に用いた。
【
図2-1】耐熱性向上に有効な変異点。各変異点を各種アミノ酸に置換し、置換後の酵素(変異体)の活性残存率を野生型酵素と比較することで有効なアミノ酸置換を特定した。活性測定値から、変異株の培養液1mL当たりのTG(トランスグルタミナーゼ)活性を算出し、評価に用いた。
【
図3-1】抗酸化性向上に有効な変異点。各変異点を各種アミノ酸に置換し、置換後の酵素(変異体)の活性残存率を野生型酵素と比較することで有効なアミノ酸置換を特定した。活性測定値から、変異株の培養液1mL当たりのTG(トランスグルタミナーゼ)活性を算出し、評価に用いた。
【
図4】反応性向上に有効な変異点。各変異点を各種アミノ酸に置換し、置換後の酵素(変異体)の活性を野生型酵素と比較することで有効なアミノ酸置換を特定した。活性測定値から、変異株の培養液1mL当たりのTG(トランスグルタミナーゼ)活性を算出し、評価に用いた。V6E/Y75FとD3P/T77Qは、2箇所でアミノ酸置換された二重変異体である。
【
図5-1】二以上の特性の変化に有効な変異点。複合的な改良に有効な変異(アミノ酸置換)を変異点毎に示した。
【
図6-1】脱アミド酵素化に有効な変異点。各変異点を各種アミノ酸に置換し、置換後の酵素(変異体)の脱アミド活性とトランスグルタミナーゼ活性の各々を、野生型酵素に対する相対値として算出した後、脱アミド活性(対野生型比率)/トランスグルタミナーゼ活性(対野生型比率)の値を求め、評価に用いた。
【発明を実施するための形態】
【0010】
説明の便宜上、本発明に関して使用する用語の一部について以下で定義する。
(用語)
用語「改変型トランスグルタミナーゼ」とは、基準となるトランスグルタミナーゼ(以下、「基準トランスグルタミナーゼ」と呼ぶ)を改変ないし変異して得られる酵素である。基準トランスグルタミナーゼは、典型的には、配列番号1のアミノ酸配列を有する、ストレプトマイセス・モバラエンシス(Streptomyces mobaraensis)由来のトランスグルタミナーゼである。
【0011】
用語「ストレプトマイセス・モバラエンシス由来のトランスグルタミナーゼ」とは、その起源がストレプトマイセス・モバラエンシスであるトランスグルタミナーゼのことであり、ストレプトマイセス・モバラエンシスが産生するトランスグルタミナーゼ又は当該トランスグルタミナーゼの遺伝情報を利用して他の微生物等で発現させたトランスグルタミナーゼなどを含む。
【0012】
本発明では、改変ないし変異として「アミノ酸置換」が行われる。従って、改変型トランスグルタミナーゼと基準トランスグルタミナーゼを比較すると、一部のアミノ酸残基に相違が認められる。尚、本明細書では、改変型トランスグルタミナーゼのことを改変型酵素又は変異体とも呼ぶ。
【0013】
本明細書では慣例に従い、以下の通り、各アミノ酸を1文字で表記する。
メチオニン:M、セリン:S、アラニン:A、トレオニン:T、バリン:V、チロシン:Y、ロイシン:L、アスパラギン:N、イソロイシン:I、グルタミン:Q、プロリン:P、アスパラギン酸:D、フェニルアラニン:F、グルタミン酸:E、トリプトファン:W、リジン:K、システイン:C、アルギニン:R、グリシン:G、ヒスチジン:H
【0014】
本明細書では、成熟体トランスグルタミナーゼのN末端のアミノ酸残基を1番目としてN末端からC末端に向かって付けた番号によって変異点の位置を特定する。
【0015】
慣例に従い、アミノ酸置換を施すアミノ酸残基、即ち「変異点」を、アミノ酸の種類を表す1文字とアミノ酸の位置を表す数字との組合せで表現する。また、アミノ酸置換による変異を、変異点の表示の右に置換後のアミノ酸の種類を表す1文字を追加したものによって表現する。従って、例えば、6位のバリンが変異点であれば「V6」と表現され、6位のバリンがグルタミンに置換される変異であれば「V6Q」と表現される。
【0016】
1.改変型トランスグルタミナーゼ
本発明の第1の局面は改変型トランスグルタミナーゼ(以下、「改変型酵素」と呼ぶ)に関する。本発明の改変型酵素は、典型的には、配列番号1のアミノ酸配列において、一又は二以上の特定のアミノ酸置換(変異)を含むアミノ酸配列を有する。当該特徴により、配列番号1のアミノ酸配列からなるトランスグルタミナーゼに対して、温度安定性低下、耐熱性向上、抗酸化性向上、反応性向上、脱アミド酵素化(トランスグルタミナーゼ活性に対する脱アミド活性の比率の向上)或いはこれらの中の二つ以上の特性変化が認められる。温度安定性が低下した改変型酵素は酵素の熱失活工程における食品の変性防止という実用上の利点があり、例えばヨーグルトやチーズの製造等の用途での利用価値が高い。一方、耐熱性が向上した改変型酵素は、高温下においても高い活性を発揮し、例えばペプチド化合物の合成等の用途での使用に特に適する。また、抗酸化性が向上した改変型酵素は、高い保存安定性を有する等の利点があり、酵素の製造、保存、使用の際の失活を防ぐ効果が期待できる。反応性が向上した改変型酵素については、高い反応効率を望める、酵素使用量を低減できる等の利点があり、用途を問わずその利用価値が高い。脱アミド酵素化は基質特異性を改変するものであり、特に、用途の拡大(例えばタンパク質の可溶化、乳化、起泡性の向上等の用途への利用)ないし創出に繋がる。トランスグルタミナーゼはペプチド鎖内にあるグルタミン残基のγ-カルボキシルアミド基と1級アミンとの間のアシル転移反応を触媒する酵素であるが、1級アミンが存在しないと水がアシル受容体として作用し、グルタミン残基をグルタミン酸残基に変換する脱アミド反応を触媒することになる。脱アミド酵素化された改変型酵素は高い脱アミド化触媒能を示し、脱アミド化に利用される酵素としてより好ましいものとなる。尚、配列番号1のアミノ酸配列は、ストレプトマイセス・モバラエンシス由来のトランスグルタミナーゼの配列である。
【0017】
本明細書において「アミノ酸置換を含む」とは、変異点(即ち、特定のアミノ酸置換が生ずるアミノ酸残基の位置)が置換後のアミノ酸になっていることを意味する。従って、アミノ酸置換を含むアミノ酸配列(変異アミノ酸配列)を、アミノ酸置換を含まない配列番号1のアミノ酸配列(基準アミノ酸配列)と比較すれば、当該アミノ酸置換の位置においてアミノ酸残基の相違が認められることになる。
【0018】
温度安定性は、例えば、50℃で30分間処理した場合の残存活性に基づき評価できる。温度安定性が低下した改変型酵素では、その活性残存率が基準トランスグルタミナーゼよりも低くなる。改変型酵素の活性残存率は、基準トランスグルタミナーゼの活性残存率の例えば90%以下、好ましくは30%以下、更に好ましくは10%以下である。尚、活性残存率は、以下の通り算出される。
活性残存率(%)=(熱処理後の酵素活性)/(熱処理前の酵素活性) ×100
【0019】
耐熱性は、温度安定性と同様に、例えば、50℃で30分間処理した場合の残存活性に基づき評価できる。耐熱性が向上した改変型酵素では、その活性残存率が基準トランスグルタミナーゼよりも高くなる。改変型酵素の活性残存率は、基準トランスグルタミナーゼの活性残存率の例えば110%以上、好ましくは120%以上、更に好ましくは130%以上である。
【0020】
抗酸化性は、酸化剤である過酸化水素で処理した場合の残存活性に基づき評価できる。詳細な評価方法は後述する。抗酸化性が向上した改変型酵素では、その活性残存率が基準トランスグルタミナーゼよりも高くなる。改変型酵素の活性残存率は、基準トランスグルタミナーゼの活性残存率の例えば110%以上、好ましくは120%以上、更に好ましくは130%以上である。尚、活性残存率は、以下の通り算出される。
活性残存率(%)=(過酸化水素処理後の酵素活性)/(処理前の酵素活性) ×100
【0021】
上記の特性(温度安定性、耐熱性、抗酸化性)が変化した改変型酵素は、変化した特性の点において基準トランスグルタミナーゼよりも有用であるが、使用量(酵素量)の低減が可能になることから、その反応性は高い方がよい。例えば、改変型酵素の反応性は基準トランスグルタミナーゼの反応性の50%以上であることが好ましい。
【0022】
反応性は、例えば、後述の実施例に示す測定法で算出した活性に基づき評価することができる。反応性が向上した改変型酵素では、基準トランスグルタミナーゼ)よりも高い活性を示す。改変型酵素の反応性(活性)は、基準トランスグルタミナーゼの反応性(活性)の110%以上、好ましくは120%以上、更に好ましくは130%以上である。
【0023】
脱アミド酵素化は、トランスグルタミナーゼ活性(対基準トランスグルタミナーゼ比率)に対する脱アミド活性(対基準トランスグルタミナーゼ比率)の比率(脱アミド活性/トランスグルタミナーゼ活性)に基づき評価することができる。詳細な評価方法は後述する。脱アミド酵素化が生じた改変型酵素では、脱アミド活性(対基準トランスグルタミナーゼ比率)/トランスグルタミナーゼ活性(対基準トランスグルタミナーゼ比率)が1を超える値となり、好ましくは1.2以上、より好ましくは2以上、更に好ましくは10以上となる。
【0024】
以下、上記の各特性変化をもたらすアミノ酸置換(変異点及び置換後のアミノ酸)を列挙する。
<温度安定性低下に有効なアミノ酸置換>
(1)変異点がV6、置換後のアミノ酸がQ、I、M、S、C、K、L、H、F、G、N、P、R、W又はY
(2)変異点がR26、置換後のアミノ酸がK、Q、M、H、Y、D、G、N、P又はS
(3)変異点がE28、置換後のアミノ酸がV、Q、W、R、K、M、N、F、G、L、P又はY
(4)変異点がV30、置換後のアミノ酸がP、C、A、E、F、G、H、K、N、Q、R、W、Y又はL
(5)変異点がY34、置換後のアミノ酸がA
(6)変異点がY42、置換後のアミノ酸がF、A、C、D、E、G、I、L、M、Q、S、T、V又はW
(7)変異点がE58、置換後のアミノ酸がY、M、A、F、I、V、R、K、N、L、S、Q、G又はH
(8)変異点がW59、置換後のアミノ酸がR、N、Y、A、S、I、V、D、G又はP
(9)変異点がL60、置換後のアミノ酸がI、M、V、A、C、E、F、Q、S、T、W又はY
(10)変異点がY62、置換後のアミノ酸がC、R、G、K又はS
(11)変異点がV65、置換後のアミノ酸がN、L、M、F、W又はY
(12)変異点がV67、置換後のアミノ酸がL、N、A、C、M、Q又はS
(13)変異点がT68、置換後のアミノ酸がC、L、A、S、M、F、N、Q又はY
(14)変異点がW69、置換後のアミノ酸がH、M、I、C、E、F、G、K、L、N、Q、R、S、T又はV
(15)変異点がQ74、置換後のアミノ酸がW、D、G又はK
(16)変異点がY75、置換後のアミノ酸がR、Q、T又はG
(17)変異点がT77、置換後のアミノ酸がM、H、E、C又はG
(18)変異点がF85、置換後のアミノ酸がM
(19)変異点がF90、置換後のアミノ酸がC、M、H、L又はV
(20)変異点がF108、置換後のアミノ酸がR、L、T、A、I、K、N又はV
(21)変異点がF117、置換後のアミノ酸がM又はL
(22)変異点がS199、置換後のアミノ酸がG、M、N、K又はV
(23)変異点がF202、置換後のアミノ酸がL又はW
(24)変異点がW203、置換後のアミノ酸がF
(25)変異点がF254、置換後のアミノ酸がY又はM
(26)変異点がT273、置換後のアミノ酸がI、V、M、C、S、L、R、G、A、E、F、Y、D、K、W又はH
(27)変異点がN276、置換後のアミノ酸がC、E、K、L、S、T又はV
(28)変異点がY278、置換後のアミノ酸がM、L、H、I、K、R、W、C、G、N、Q、S、T又はV
(29)変異点がS284、置換後のアミノ酸がW、Y、M、F又はN
(30)変異点がY291、置換後のアミノ酸がI、W、L、A、C、K、N、Q、R、S又はV
(31)変異点がS299、置換後のアミノ酸がI、Y、V、K、M、Q、A、F、G又はE
(32)変異点がS303、置換後のアミノ酸がN、G、C、V、P又はY
(33)変異点がY310、置換後のアミノ酸がC、M又はI
【0025】
以上のアミノ酸置換の中でも、下記のアミノ酸置換は温度安定性低下の程度が大きく、より好ましいアミノ酸置換である。
V6S、V6C、V6K、V6L、V6H、V6F、V6G、V6N、V6P、V6R、V6W、V6Y
R26M、R26H、R26Y、R26D、R26G、R26N、R26P、R26S
E28N、E28F、E28G、E28L、E28P、E28Y
V30P、V30C、V30A、V30E、V30F、V30G、V30H、V30K、V30N、V30Q、V30R、V30W、V30Y、V30L
Y34A
Y42A、Y42C、Y42D、Y42E、Y42G、Y42I、Y42L、Y42M、Y42Q、Y42S、Y42T、Y42V、Y42W
E58G、E58H
W59S、W59I、W59V、W59D、W59G、W59P
L60M、L60V、L60A、L60C、L60E、L60F、L60Q、L60S、L60T、L60W、L60Y
Y62C、Y62R、Y62G、Y62K、Y62S
V65N、V65L、V65M、V65F、V65W、V65Y
V67L、V67N、V67A、V67C、V67M、V67Q、V67S
T68M、T68F、T68N、T68Q、T68Y
W69M、W69I、W69C、W69E、W69F、W69G、W69K、W69L、W69N、W69Q、W69R、W69S、W69T、W69V
Y75T、Y75G
F85M
F90V
F108T、F108A、F108I、F108K、F108N、F108V
F117L
S199K、S199V
F202W
T273L、T273R、T273G、T273A、T273E、T273F、T273Y、T273D、T273K、T273W、T273H
N276C、N276E、N276K、N276L、N276T、N276V、N276S
Y278L、Y278H、Y278I、Y278K、Y278R、Y278W、Y278C、Y278G、Y278N、Y278Q、Y278S、Y278T、Y278V
Y291W、Y291L、Y291A、Y291C、Y291K、Y291N、Y291Q、Y291R、Y291S、Y291V
S299E
Y310I
【0026】
下記のアミノ酸置換は温度安定性低下の程度が特に大きく、特に好ましいアミノ酸置換である。
V6H、V6F、V6G、V6N、V6P、V6R、V6W、V6Y
R26H、R26Y、R26D、R26G、R26N、R26P、R26S
E28F、E28G、E28L、E28P、E28Y
V30C、V30A、V30E、V30F、V30G、V30H、V30K、V30N、V30Q、V30R、V30W、V30Y、V30L
Y34A
Y42A、Y42C、Y42D、Y42E、Y42G、Y42I、Y42L、Y42M、Y42Q、Y42S、Y42T、Y42V、Y42W
W59I、W59V、W59D、W59G、W59P
L60V、L60A、L60C、L60E、L60F、L60Q、L60S、L60T、L60W、L60Y
Y62C、Y62R、Y62G、Y62K、Y62S
V65M、V65F、V65W、V65Y
V67A、V67C、V67M、V67Q、V67S
T68F、T68N、T68Q、T68Y
W69M、W69I、W69C、W69E、W69F、W69G、W69K、W69L、W69N、W69Q、W69R、W69S、W69T、W69V
Y75T、Y75G
F108A、F108I、F108K、F108N、F108V
F117L
F202W
T273F、T273Y、T273D、T273K、T273W、T273H
N276C、N276E、N276K、N276L、N276S、N276T、N276V
Y278K、Y278R、Y278W、Y278C、Y278G、Y278N、Y278Q、Y278S、Y278T、Y278V
Y291L、Y291A、Y291C、Y291K、Y291N、Y291Q、Y291R、Y291S、Y291V
S299E
【0027】
下記のアミノ酸置換は温度安定性低下の程度が特に大きい上に反応性も高く、極めて好ましいアミノ酸置換である。
V6H、V6G、V6N、V6W
R26H、R26Y、R26N、R26S
E28F、E28G、E28L、E28Y
V30C、V30A、V30E、V30F、V30G、V30H、V30K、V30N、V30Q、V30R、V30W、V30Y、V30L
Y42C、Y42L、Y42M、Y42Q、Y42S、Y42W
W59I、W59V、W59G
L60V、L60C、L60F
Y62C、Y62R
V67C、V67M
W69M、W69I、W69C、W69F、W69L、W69T、W69V
Y75T
T273F、T273Y、T273H
Y278W
Y291L、Y291K、Y291R
【0028】
<耐熱性向上に有効なアミノ酸置換>
(34)変異点がD3、置換後のアミノ酸がQ、P、E、S又はY
(35)変異点がR26、置換後のアミノ酸がV
(36)変異点がY34、置換後のアミノ酸がW
(37)変異点がV67、置換後のアミノ酸がH
(38)変異点がT68、置換後のアミノ酸がV又はI
(39)変異点がQ74、置換後のアミノ酸がF
(40)変異点がT77、置換後のアミノ酸がQ
(41)変異点がS199、置換後のアミノ酸がC又はQ
(42)変異点がT273、置換後のアミノ酸がQ
(43)変異点がS284、置換後のアミノ酸がL、H、K、P又はR
(44)変異点がS299、置換後のアミノ酸がN
(45)変異点がS303、置換後のアミノ酸がK
【0029】
以上のアミノ酸置換の中でも、下記のアミノ酸置換は耐熱性向上の程度が大きく、より好ましいアミノ酸置換である。
D3P、D3E、D3S、D3Y
R26V
Y34W
V67H
T77Q
S199C、S199Q
T273Q
S284H、S284K、S284P、S284R
S303K
【0030】
下記のアミノ酸置換は耐熱性向上の程度が特に大きく、特に好ましいアミノ酸置換である。
D3E、D3S、D3Y
R26V
Y34W
V67H
S199Q
T273Q
S284H、S284K、S284P、S284R
【0031】
下記のアミノ酸置換は耐熱性向上の程度が特に大きい上に反応性も高く、極めて好ましいアミノ酸置換である。
D3E、D3S、D3Y
R26V
Y34W
T273Q
S284H、S284K、S284P、S284R
【0032】
<抗酸化性向上に有効なアミノ酸置換>
(46)変異点がD3、置換後のアミノ酸がE、Q、S又はY
(47)変異点がV6、置換後のアミノ酸がP
(48)変異点がR26、置換後のアミノ酸がM、K、W、C、Q、G、Y、E、T、N、D、I、S、P又はV
(49)変異点がE28、置換後のアミノ酸がL、M、K、C、V、R、W、G、N、F、Y又はH
(50)変異点がY42、置換後のアミノ酸がL、N又はF
(51)変異点がE58、置換後のアミノ酸がQ、A、I、V、L、T、M、K、Y、W、F又はR
(52)変異点がV67、置換後のアミノ酸がT、S又はA
(53)変異点がT68、置換後のアミノ酸がL、I、V又はM
(54)変異点がQ74、置換後のアミノ酸がV
(55)変異点がT77、置換後のアミノ酸がD
(56)変異点がS199、置換後のアミノ酸がC
(57)変異点がT273、置換後のアミノ酸がE
(58)変異点がS284、置換後のアミノ酸がR又はH
(59)変異点がY291、置換後のアミノ酸がI、S、F、L、C、N、V又はM
【0033】
以上のアミノ酸置換の中でも、下記のアミノ酸置換は抗酸化性向上の程度が大きく、より好ましいアミノ酸置換である。
D3S、D3Y
V6P
R26W、R26C、R26Q、R26G、R26Y、R26E、R26T、R26N、R26D、R26I、R26S、R26P、R26V
E28L、E28M、E28K、E28C、E28V、E28R、E28W、E28G、E28N、E28F、E28Y、E28H
E58A、E58I、E58V、E58L、E58T、E58M、E58K、E58Y、E58W、E58F、E58R
V67S、V67A
T68I、T68V、T68M
T273E
S284R、S284H
Y291C、Y291N、Y291V、Y291M
【0034】
下記のアミノ酸置換は抗酸化性向上の程度が特に大きく、特に好ましいアミノ酸置換である。
V6P
R26C、R26Q、R26G、R26Y、R26E、R26T、R26N、R26D、R26I、R26S、R26P、R26V
E28V、E28R、E28W、E28G、E28N、E28F、E28Y、E28H
Y42F
E58I、E58V、E58L、E58T、E58M、E58K、E58Y、E58W、E58F、E58R
T68I、T68V、T68M
S284H
【0035】
下記のアミノ酸置換は抗酸化性向上の程度が特に大きい上に反応性も高く、極めて好ましいアミノ酸置換である。
R26C、R26Q、R26Y、R26E、R26T、R26N、R26I、R26S、R26V
E28V、E28R、E28W、E28G、E28N、E28F、E28Y
Y42F
E58I、E58V、E58L、E58T、E58M、E58K、E58Y、E58W、E58F、E58R
S284H
【0036】
<反応性向上に有効なアミノ酸置換>
(60)変異点がS284、置換後のアミノ酸がM、K又はV
(61)変異点がF251、置換後のアミノ酸がY
(62)変異点がV6とY75、変異点V6の置換後のアミノ酸がE、変異点Y75の置換後のアミノ酸がF
(63)変異点がD3とT77、変異点D3の置換後のアミノ酸がP、変異点T77の置換後のアミノ酸がQ
【0037】
以上のアミノ酸置換の中でも、下記のアミノ酸置換は反応性向上の程度が大きく、より好ましいアミノ酸置換である。
S284V
F251Y
V6EとY75Fの二重変異
D3PとT77Qの二重変異
【0038】
下記のアミノ酸置換は反応性向上の程度が特に大きく、特に好ましいアミノ酸置換である。
V6EとY75Fの二重変異
D3PとT77Qの二重変異
【0039】
後述の実施例に示す通り、いくつかのアミノ酸置換は二つ以上の特性変化をもたらした。即ち、複合的な改良に有効なアミノ酸置換が同定された。以下、同定に成功したアミノ酸置換(変異点及び置換後のアミノ酸)を、対応する特性変化と併せて列挙する。
(64)変異点がD3、置換後のアミノ酸がQ、S又はY、アミノ酸置換による特性変化が耐熱性向上及び抗酸化性向上
(65)変異点がD3、置換後のアミノ酸がP、アミノ酸置換による特性変化が耐熱性向上及び反応性向上
(66)変異点がD3、置換後のアミノ酸がE、アミノ酸置換による特性変化が耐熱性向上、抗酸化性向上及び反応性向上
(67)変異点がV6、置換後のアミノ酸がP、アミノ酸置換による特性変化が温度安定性低下及び抗酸化性向上
(68)変異点がR26、置換後のアミノ酸がK、Q、M、Y、D、G、N、P又はS、アミノ酸置換による特性変化が温度安定性低下及び抗酸化性向上
(69)変異点がR26、置換後のアミノ酸がV、アミノ酸置換による特性変化が耐熱性向上及び抗酸化性向上
(70)変異点がR26、置換後のアミノ酸がH、アミノ酸置換による特性変化が温度安定性低下、抗酸化性向上及び反応性向上
(71)変異点がE28、置換後のアミノ酸がV、R、K、M、N、F、G、L又はY、アミノ酸置換による特性変化が温度安定性低下及び抗酸化性向上
(72)変異点がV30、置換後のアミノ酸がP、G、N、R又はY、アミノ酸置換による特性変化が温度安定性低下及び反応性向上
(73)変異点がY42、置換後のアミノ酸がF、L又はM、アミノ酸置換による特性変化が温度安定性低下及び抗酸化性向上
(74)変異点がE58、置換後のアミノ酸がY、M、A、F、I、V、R、K、L又はQ、アミノ酸置換による特性変化が温度安定性低下及び抗酸化性向上
(75)変異点がL60、置換後のアミノ酸がI、アミノ酸置換による特性変化が温度安定性低下及び反応性向上
(76)変異点がV67、置換後のアミノ酸がA又はS、アミノ酸置換による特性変化が温度安定性低下及び抗酸化性向上
(77)変異点がT68、置換後のアミノ酸がC、L又はM、アミノ酸置換による特性変化が温度安定性低下及び抗酸化性向上
(78)変異点がT68、置換後のアミノ酸がV又はI、アミノ酸置換による特性変化が耐熱性向上及び抗酸化性向上
(79)変異点がQ74、置換後のアミノ酸がV、アミノ酸置換による特性変化が抗酸化性向上及び反応性向上
(80)変異点がT77、置換後のアミノ酸がC、アミノ酸置換による特性変化が温度安定性低下及び抗酸化性向上
(81)変異点がT77、置換後のアミノ酸がE、アミノ酸置換による特性変化が温度安定性低下及び反応性向上
(82)変異点がT77、置換後のアミノ酸がD、アミノ酸置換による特性変化が抗酸化性向上及び反応性向上
(83)変異点がS199、置換後のアミノ酸がG、アミノ酸置換による特性変化が温度安定性低下及び反応性向上
(84)変異点がS199、置換後のアミノ酸がC、アミノ酸置換による特性変化が耐熱性向上、抗酸化性向上及び反応性向上
(85)変異点がT273、置換後のアミノ酸がE、アミノ酸置換による特性変化が温度安定性低下及び抗酸化性向上
(86)変異点がS284、置換後のアミノ酸がM又はF、アミノ酸置換による特性変化が温度安定性低下及び反応性向上
(87)変異点がS284、置換後のアミノ酸がL又はK、アミノ酸置換による特性変化が耐熱性向上及び反応性向上
(88)変異点がS284、置換後のアミノ酸がH又はR、アミノ酸置換による特性変化が耐熱性向上及び抗酸化性向上
(89)変異点がY291、置換後のアミノ酸がI、L、C、N、S又はV、アミノ酸置換による特性変化が温度安定性低下及び抗酸化性向上
(90)変異点がS299、置換後のアミノ酸がV、K、M又はA、アミノ酸置換による特性変化が温度安定性低下及び反応性向上
(91)変異点がS303、置換後のアミノ酸がK、アミノ酸置換による特性変化が耐熱性向上及び反応性向上
【0040】
以上のアミノ酸置換の中で、下記のアミノ酸置換は温度安定性の低下と抗酸化性の向上という、相反するともいえる二つの特性変化を伴う。
V6P
R26K、R26Q、R26M、R26Y、R26D、R26G、R26N、R26P、R26S
E28V、E28R、E28K、E28M、E28N、E28F、E28G、E28L、E28Y
Y42F、Y42L、Y42M
E58Y、E58M、E58A、E58F、E58I、E58V、E58R、E58K、E58L、E58Q
V67A、V67S
T68C、T68L、T68M
T77C
T273E
Y291I、Y291L、Y291C、Y291N、Y291S、Y291V
【0041】
<脱アミド酵素化に有効なアミノ酸置換>
(92)変異点がR5、置換後のアミノ酸がQ、P、C、M、I、V、Y、F、S、N、T又はG
(93)変異点がY34、置換後のアミノ酸がH又はM
(94)変異点がW59、置換後のアミノ酸がK又はE
(95)変異点がS61、置換後のアミノ酸がT、V、Y、D、I、L、N、E、M、F、W、Q、P、H又はK
(96)変異点がY62、置換後のアミノ酸がD又はP
(97)変異点がG63、置換後のアミノ酸がD、Q、Y、R、K、H、P、M、N、C、F、L、W、T、V又はS
(98)変異点がV65、置換後のアミノ酸がC、T又はK
(99)変異点がG66、置換後のアミノ酸がW又はK
(100)変異点がT68、置換後のアミノ酸がP又はH
(101)変異点がW69、置換後のアミノ酸がY、D又はP
(102)変異点がQ74、置換後のアミノ酸がR又はP
(103)変異点がF85、置換後のアミノ酸がY、W、L、I、Q、C、T、A、V、S、R、H又はN
(104)変異点がF108、置換後のアミノ酸がQ、C、E、S又はN
(105)変異点がF117、置換後のアミノ酸がC、I、W、V、A、G、T又はN
(106)変異点がY198、置換後のアミノ酸がF、H、L、S、M又はI
(107)変異点がS199、置換後のアミノ酸がQ又はP
(108)変異点がK200、置換後のアミノ酸がY、M、I、R、L又はV
(109)変異点がH201、置換後のアミノ酸がK、R、M、L又はQ
(110)変異点がF202、置換後のアミノ酸がY、M、H、V又はC
(111)変異点がW203、置換後のアミノ酸がY
(112)変異点がF223、置換後のアミノ酸がY、M、L、W、V、H、G又はA
(113)変異点がR238、置換後のアミノ酸がA、D、V、G、H又はS
(114)変異点がF251、置換後のアミノ酸がH、N、C、M、R、S、A、T、L、P、G、V又はQ
(115)変異点がV252、置換後のアミノ酸がM、L、T又はC
(116)変異点がN253、置換後のアミノ酸がT、V、K、C又はR
(117)変異点がY256、置換後のアミノ酸がL、V又はI
(118)変異点がG257、置換後のアミノ酸がA又はC
(119)変異点がW258、置換後のアミノ酸がY、F又はN
(120)変異点がT273、置換後のアミノ酸がN
(121)変異点がG275、置換後のアミノ酸がA、C、S、V、K、I、F、H、R、L、P、Q、Y、N、M又はT
(122)変異点がN276、置換後のアミノ酸がG、M、Q又はH
(123)変異点がH277、置換後のアミノ酸がN、S、Q、C、E、K、D、I、R、M、P、L、W、V、Y、G、F又はT
(124)変異点がY278、置換後のアミノ酸がP又はD
(125)変異点がH279、置換後のアミノ酸がN
(126)変異点がS284、置換後のアミノ酸がC
(127)変異点がM288、置換後のアミノ酸がV、Q又はT
(128)変異点がV290、置換後のアミノ酸がT、C、L、M、A、S又はN
(129)変異点がY291、置換後のアミノ酸がH、T、E又はG
(130)変異点がW298、置換後のアミノ酸がF、Y、I、L又はM
(131)変異点がS299、置換後のアミノ酸がN又はP
(132)変異点がY302、置換後のアミノ酸がL、H、M、V、C、T、P、S又はW
(133)変異点がS303、置換後のアミノ酸がI、Q、D、H又はE
(134)変異点がF305、置換後のアミノ酸がW、H又はY
【0042】
以上のアミノ酸置換の中でも、下記のアミノ酸置換は脱アミド酵素化の程度が大きく、より好ましいアミノ酸置換である。
R5Q、R5P、R5C、R5M、R5I、R5V、R5Y、R5F、R5S、R5N、R5T、R5G
Y34H、Y34M
W59K、W59E
S61T、S61V、S61Y、S61D、S61I、S61L、S61N、S61E、S61M、S61F、S61W、S61Q、S61P、S61H、S61K
Y62D、Y62P
G63D、G63Q、G63Y、G63R、G63K、G63H、G63P、G63M、G63N、G63C、G63F、G63L、G63W、G63T、G63V、G63S
V65C、V65T、V65K
G66W、G66K
T68P、T68H
W69Y、W69D、W69P
Q74R、Q74P
F85Y、F85W、F85L、F85I、F85Q、F85C、F85T、F85A、F85V、F85S、F85R、F85H、F85N
F108Q、F108C、F108E、F108S、F108N
F117C、F117I、F117W、F117V、F117A、F117G、F117T、F117N
Y198F、Y198H、Y198L、Y198S、Y198M、Y198I
S199Q、S199P
K200Y、K200M、K200I、K200R、K200L、K200V
H201K、H201R、H201M、H201L、H201Q
F202Y、F202M、F202H、F202V、F202C
W203Y
F223Y、F223M、F223L、F223W、F223V、F223H、F223G、F223A
R238A、R238D、R238V、R238G、R238H、R238S
F251H、F251N、F251C、F251M、F251R、F251S、F251A、F251T、F251L、F251P、F251G、F251V、F251Q
V252M、V252L、V252T、V252C
N253T、N253V、N253K、N253C、N253R
Y256L、Y256V、Y256I
G257A、G257C
W258Y、W258F、W258N
T273N
G275A、G275C、G275S、G275V、G275K、G275I、G275F、G275H、G275R、G275L、G275P、G275Q、G275Y、G275N、G275M、G275T
N276G、N276M、N276Q、N276H
H277N、H277S、H277Q、H277C、H277E、H277K、H277D、H277I、H277R、H277M、H277P、H277L、H277W、H277V、H277Y、H277G、H277F、H277T
Y278P、Y278D
H279N
S284C
M288V、M288Q、M288T
V290T、V290C、V290L、V290M、V290A、V290S、V290N
Y291H、Y291T、Y291E、Y291G
W298F、W298Y、W298I、W298L、W298M
S299N、S299P
Y302L、Y302H、Y302M、Y302V、Y302C、Y302T、Y302P、Y302S、Y302W
S303I、S303Q、S303D、S303H、S303E
F305W、F305H、F305Y
【0043】
下記のアミノ酸置換は脱アミド酵素化の程度が一段と大きく、更に好ましいアミノ酸置換である。
R5Y、R5F、R5S、R5N、R5T、R5G
Y34M
S61T、S61V、S61Y、S61D、S61I、S61L、S61N、S61E、S61M、S61F、S61W、S61Q、S61P、S61H、S61K
Y62P
G63D、G63Q、G63Y、G63R、G63K、G63H、G63P、G63M、G63N、G63C、G63F、G63L、G63W、G63T、G63V、G63S
V65C、V65T、V65K
G66K
T68P、T68H
W69D、W69P
F85L、F85I、F85Q、F85C、F85T、F85A、F85V、F85S、F85R、F85H、F85N
F108C、F108E、F108S、F108N
F117C、F117I、F117W、F117V、F117A、F117G、F117T、F117N
Y198L、Y198S、Y198M、Y198I
S199Q、S199P
K200Y、K200M、K200I、K200R、K200L、K200V
H201K、H201R、H201M、H201L、H201Q
F202M、F202H、F202V、F202C
W203Y
F223M、F223L、F223W、F223V、F223H、F223G、F223A
R238H、R238S
F251N、F251C、F251M、F251R、F251S、F251A、F251T、F251L、F251P、F251G、F251V、F251Q
V252L、V252T、V252C
N253T、N253V、N253K、N253C、N253R
Y256L、Y256V、Y256I
G257A、G257C
W258Y、W258F、W258N
T273N
G275C、G275S、G275V、G275K、G275I、G275F、G275H、G275R、G275L、G275P、G275Q、G275Y、G275N、G275M、G275T
N276G、N276M、N276Q、N276H
H277S、H277Q、H277C、H277E、H277K、H277D、H277I、H277R、H277M、H277P、H277L、H277W、H277V、H277Y、H277G、H277F、H277T
Y278P、Y278D
M288Q、M288T
V290M、V290A、V290S、V290N
Y291T、Y291E、Y291G
W298F、W298Y、W298I、W298L、W298M
S299P
Y302L、Y302H、Y302M、Y302V、Y302C、Y302T、Y302P、Y302S、Y302W
F305H、F305Y
【0044】
下記のアミノ酸置換は脱アミド酵素化の程度が特に大きく、特に好ましいアミノ酸置換である。
S61Y、S61D、S61I、S61L、S61N、S61E、S61M、S61F、S61W、S61Q、S61P、S61H、S61K
Y62P
G63D、G63Q、G63Y、G63R、G63K、G63H、G63P、G63M、G63N、G63C、G63F、G63L、G63W、G63T、G63V、G63S
V65T、V65K
G66K
T68P、T68H
W69D、W69P
F85H、F85N
F117G、F117T、F117N
Y198S、Y198M、Y198I
S199P
K200M、K200I、K200R、K200L、K200V
H201M、H201L、H201Q
F202V、F202C
W203Y
F223W、F223V、F223H、F223G、F223A
F251L、F251P、F251G、F251V、F251Q
N253T、N253V、N253K、N253C、N253R
Y256L、Y256V、Y256I
G257C
W258N
G275V、G275K、G275I、G275F、G275H、G275R、G275L、G275P、G275Q、G275Y、G275N、G275M、G275T
N276G、N276M、N276Q、N276H
H277S、H277Q、H277C、H277E、H277K、H277D、H277I、H277R、H277M、H277P、H277L、H277W、H277V、H277Y、H277G、H277F、H277T
Y278P、Y278D
M288T
V290S、V290N
Y291G
W298Y、W298I、W298L、W298M
F305Y
【0045】
本発明の改変型酵素の具体例として、配列番号2~10のいずれかのアミノ酸配列からなるトランスグルタミナーゼ(順に、R26N変異体、R26Y変異体、R26S変異体、E28N変異体、E28G変異体、E28F変異体、E28Y変異体、E58R変異体、E58L変異体が対応する)を挙げることができる。後述の実施例に示す通り、これらの変異体は温度安定性が低下し、且つ抗酸化性が向上していることが確認されている。
【0046】
一般に、あるタンパク質のアミノ酸配列の一部を変異させた場合において変異後のタンパク質が変異前のタンパク質と同等の機能を有することがある。即ちアミノ酸配列の変異がタンパク質の機能に対して実質的な影響を与えず、タンパク質の機能が変異前後において維持されることがある。一方、二つのタンパク質のアミノ酸配列の同一性が高い場合、両者が同等の特性を示す蓋然性が高い。これらの技術常識を考慮すれば、上記改変型酵素のアミノ酸配列、即ち、「配列番号1のアミノ酸配列において、上記(1)~(134)のいずれかのアミノ酸置換を含むアミノ酸配列(当該アミノ酸配列の具体例は配列番号2~10のアミノ酸配列)」と完全に同一(即ち100%の同一性)でないものの、高い同一性を示すアミノ酸配列を有し、且つ所望の特性変化を認めるものであれば、上記改変型酵素と実質的に同一の酵素(実質同一トランスグルタミナーゼ)であると見なすことができる。ここでの同一性は、70%以上、80%以上、82%以上、85%以上、90%以上、93%以上、95%以上、98%、又は99%以上である。同一性は高いほど好ましい。従って、最も好ましい態様では、同一性が99%以上となる。
【0047】
上記改変型酵素と実質同一トランスグルタミナーゼを比較すれば、アミノ酸配列の僅かな相違が認められることになる。但し、アミノ酸配列の相違は上記アミノ酸置換が施された位置以外の位置で生ずることとする。従って、例えば、同一性の基準が配列番号2のアミノ酸配列の場合は26位N以外の位置、同一性の基準が配列番号3のアミノ酸配列の場合は26位Y以外の位置、同一性の基準が配列番号4のアミノ酸配列の場合は26位S以外の位置、同一性の基準が配列番号5のアミノ酸配列の場合は28位N以外の位置、同一性の基準が配列番号6のアミノ酸配列の場合は28位G以外の位置、同一性の基準が配列番号7のアミノ酸配列の場合は28位F以外の位置、同一性の基準が配列番号8のアミノ酸配列の場合は28位Y以外の位置、同一性の基準が配列番号9のアミノ酸配列の場合は58位R以外の位置、同一性の基準が配列番号10のアミノ酸配列の場合は58位L以外の位置においてアミノ酸配列の相違が生じることになる。換言すれば、配列番号2のアミノ酸配列と上記の同一性(70%以上、80%以上、82%以上、85%以上、90%以上、93%以上、95%以上、98%、又は99%以上)を示すアミノ酸配列では、26位アミノ酸はNである。同様に、配列番号3のアミノ酸配列と上記の同一性を示すアミノ酸配列では26位アミノ酸はYであり、配列番号4のアミノ酸配列と上記の同一性を示すアミノ酸配列では26位アミノ酸はSであり、配列番号5のアミノ酸配列と上記の同一性を示すアミノ酸配列では28位アミノ酸はNであり、配列番号6のアミノ酸配列と上記の同一性を示すアミノ酸配列では28位アミノ酸はGであり、配列番号7のアミノ酸配列と上記の同一性を示すアミノ酸配列では28位アミノ酸はFであり、配列番号8のアミノ酸配列と上記の同一性を示すアミノ酸配列では28位アミノ酸はYであり、配列番号9のアミノ酸配列と上記の同一性を示すアミノ酸配列では58位アミノ酸はRであり、配列番号10のアミノ酸配列と上記の同一性を示すアミノ酸配列では58位アミノ酸はLである。
【0048】
ここでの「アミノ酸配列の僅かな相違」は、アミノ酸の欠失、置換、付加、挿入、又はこれらの組合せにより生じる。典型的には、アミノ酸配列を構成する1~数個(上限は例えば3個、5個、7個、10個)のアミノ酸の欠失、置換、若しくは1~数個(上限は例えば3個、5個、7個、10個)のアミノ酸の付加、挿入、又はこれらの組合せによりアミノ酸配列に変異(変化)が生じていることをいう。「アミノ酸配列の僅かな相違」は、好ましくは保存的アミノ酸置換により生じている。ここでの「保存的アミノ酸置換」とは、あるアミノ酸残基を、同様の性質の側鎖を有するアミノ酸残基に置換することをいう。アミノ酸残基はその側鎖によって塩基性側鎖(例えばリシン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖(例えばアスパラギン酸、グルタミン酸)、非荷電極性側鎖(例えばグリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニン、チロシン、システイン)、非極性側鎖(例えばアラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)、β分岐側鎖(例えばスレオニン、バリン、イソロイシン)、芳香族側鎖(例えばチロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)のように、いくつかのファミリーに分類されている。保存的アミノ酸置換は好ましくは、同一のファミリー内のアミノ酸残基間の置換である。尚、ストレプトマイセス・モバラエンシス由来のトランスグルタミナーゼ(配列番号1)の活性残基は64位システインであることが知られていることから、変異を施す際には当該酸残基に影響がないようにするとよい。
【0049】
ところで、二つのアミノ酸配列又は二つの塩基配列(以下、これらを含む用語として「二つの配列」を使用する)の同一性(%)は例えば以下の手順で決定することができる。まず、最適な比較ができるよう二つの配列を並べる(例えば、第一の配列にギャップを導入して第二の配列とのアライメントを最適化してもよい)。第一の配列の特定位置の分子(アミノ酸残基又はヌクレオチド)が、第二の配列における対応する位置の分子と同じであるとき、その位置の分子が同一であるといえる。二つの配列の同一性は、その二つの配列に共通する同一位置の数の関数であり(すなわち、同一性(%)=同一位置の数/位置の総数 × 100)、好ましくは、アライメントの最適化に要したギャップの数およびサイズも考慮に入れる。
【0050】
二つの配列の比較及び同一性の決定は数学的アルゴリズムを用いて実現可能である。配列の比較に利用可能な数学的アルゴリズムの具体例としては、KarlinおよびAltschul (1990) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87:2264-68に記載され、KarlinおよびAltschul (1993) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:5873-77において改変されたアルゴリズムがあるが、これに限定されることはない。このようなアルゴリズムは、Altschulら (1990) J. Mol. Biol. 215:403-10に記載のNBLASTプログラムおよびXBLASTプログラム(バージョン2.0)に組み込まれている。等価なヌクレオチド配列を得るには例えば、NBLASTプログラムでscore = 100、wordlength = 12としてBLASTヌクレオチド検索を行えばよい。等価なアミノ酸配列を得るには例えば、XBLASTプログラムでscore = 50、wordlength = 3としてBLASTポリペプチド検索を行えばよい。比較のためのギャップアライメントを得るためには、Altschulら (1997) Amino Acids Research 25(17):3389-3402に記載のGapped BLASTが利用可能である。BLASTおよびGapped BLASTを利用する場合は、対応するプログラム(例えばXBLASTおよびNBLAST)のデフォルトパラメータを使用することができる。詳しくはhttp://www.ncbi.nlm.nih.govを参照されたい。配列の比較に利用可能な他の数学的アルゴリズムの例としては、MyersおよびMiller (1988) Comput Appl Biosci. 4:11-17に記載のアルゴリズムがある。このようなアルゴリズムは、例えばGENESTREAMネットワークサーバー(IGH Montpellier、フランス)またはISRECサーバーで利用可能なALIGNプログラムに組み込まれている。アミノ酸配列の比較にALIGNプログラムを利用する場合は例えば、PAM120残基質量表を使用し、ギャップ長ペナルティ=12、ギャップペナルティ=4とすることができる。
【0051】
二つのアミノ酸配列の同一性を、GCGソフトウェアパッケージのGAPプログラムを用いて、Blossom 62マトリックスまたはPAM250マトリックスを使用し、ギャップ加重=12、10、8、6、又は4、ギャップ長加重=2、3、又は4として決定することができる。また、二つの塩基配列の同一性を、GCGソフトウェアパッケージ(http://www.gcg.comで利用可能)のGAPプログラムを用いて、ギャップ加重=50、ギャップ長加重=3として決定することができる。
【0052】
典型的には、配列番号1のアミノ酸配列からなるトランスグルタミナーゼ、即ち、ストレプトマイセス・モバラエンシス由来のトランスグルタミナーゼが変異(上記(1)~(134)のいずれかのアミノ酸置換)することによって、本発明の改変型酵素となる。上記の実質同一トランスグルタミナーゼについては、配列番号1のアミノ酸配列からなるトランスグルタミナーゼが変異(上記(1)~(134)のいずれかのアミノ酸置換)したものに更に変異を加えること、配列番号1のアミノ酸配列からなるトランスグルタミナーゼを産生するストレプトマイセス・モバラエンシス株と同種同属由来のトランスグルタミナーゼ等、配列番号1のアミノ酸配列と同一性の高いアミノ酸配列からなるトランスグルタミナーゼに対して同等の変異を加えること、又は当該変異によって得られるものに更に変異を加えること、によって得ることができる。ここでの「同等の変異」では、配列番号1のアミノ酸配列と同一性の高いアミノ酸配列において、本発明における変異点(上記(1)~(134)のいずれかのアミノ酸置換における変異点)のアミノ酸残基に相当するアミノ酸残基が置換されることになる。尚、配列番号1のアミノ酸配列と同一性の高いアミノ酸配列からなるトランスグルタミナーゼの例として、ストレプトマイセス・モバラエンシス(Streptomyces mobaraensis)(以前はストレプトベルティシリウム・ラダカヌム(Streptoverticillium ladakanum)に分類されていた)に由来し、配列番号11のアミノ酸配列を有するトランスグルタミナーゼ(アミノ酸列の同一性93%)、ストレプトマイセス・アルビレティクリ(Streptomyces albireticuli)に由来し、配列番号12のアミノ酸配列を有するトランスグルタミナーゼ(アミノ酸列の同一性82%)、ストレプトマイセス・ルテイレティクリー(Streptomyces luteireticuli)に由来し、配列番号13のアミノ酸配列を有するトランスグルタミナーゼ(アミノ酸列の同一性82%)、ストレプトマイセス・シンナモネウス(Streptomyces cinnamoneus)に由来し、配列番号14のアミノ酸配列を有するトランスグルタミナーゼ(アミノ酸列の同一性81%)、ストレプトマイセス・プラテンシス(Streptomyces platensis)に由来し、配列番号15のアミノ酸配列を有するトランスグルタミナーゼ(アミノ酸列の同一性80%)、ストレプトマイセス・ヒグロスコピクス(Streptomyces hygroscopicus)に由来し、配列番号16のアミノ酸配列を有するトランスグルタミナーゼ(アミノ酸列の同一性80%)を挙げることができる。
【0053】
本明細書においてアミノ酸残基について使用する場合の用語「相当する」とは、比較されるタンパク質(酵素)間においてその機能の発揮に同等の貢献をしていることを意味する。例えば、基準トランスグルタミナーゼのアミノ酸配列(配列番号1のアミノ酸配列)に対して比較対象のアミノ酸配列を、一次構造(アミノ酸配列)の部分的な相同性を考慮しつつ、最適な比較ができるように並べたときに(このときに必要に応じてギャップを導入し、アライメントを最適化してもよい)、基準のアミノ酸配列中の特定のアミノ酸に対応する位置のアミノ酸を「相当するアミノ酸」として特定することができる。一次構造同士の比較に代えて、又はこれに加えて立体構造(三次元構造)同士の比較によって「相当するアミノ酸」を特定することもできる。立体構造情報を利用することによって信頼性の高い比較結果が得られる。この場合は、複数の酵素の立体構造の原子座標を比較しながらアライメントを行っていく手法を採用できる。変異対象酵素の立体構造情報は例えばProtein Data Bank(http://www.pdbj.org/index_j.html)より取得することができる。
【0054】
X線結晶構造解析によるタンパク質立体構造の決定方法の一例を以下に示す。
(1)タンパク質を結晶化する。結晶化は、立体構造決定のためには欠かせないが、それ以外にも、タンパク質の高純度の精製法、高密度で安定な保存法として産業上の有用性もある。この場合、リガンドとして基質もしくはそのアナログ化合物を結合したタンパク質を結晶化すると良い。
(2)作製した結晶にX線を照射して回折データを収集する。なお、タンパク質結晶はX線照射によりダメージを受け回折能が劣化するケースが多々ある。その場合、結晶を急激に-173℃程度に冷却し、その状態で回折データを収集する低温測定技術が最近普及してきた。なお、最終的に、構造決定に利用する高分解能データを収集するために、輝度の高いシンクロトロン放射光が利用される。
(3)結晶構造解析を行うには、回折データに加えて、位相情報が必要になる。目的のタンパク質に対して、類縁のタンパク質の結晶構造が未知の場合、分子置換法で構造決定することは不可能であり、重原子同型置換法により位相問題が解決されなくてはならない。重原子同型置換法は、水銀や白金等原子番号が大きな金属原子を結晶に導入し、金属原子の大きなX線散乱能のX線回折データへの寄与を利用して位相情報を得る方法である。決定された位相は、結晶中の溶媒領域の電子密度を平滑化することにより改善することが可能である。溶媒領域の水分子は揺らぎが大きいために電子密度がほとんど観測されないので、この領域の電子密度を0に近似することにより、真の電子密度に近づくことができ、ひいては位相が改善されるのである。また、非対称単位に複数の分子が含まれている場合、これらの分子の電子密度を平均化することにより位相が更に大幅に改善される。このようにして改善された位相を用いて計算した電子密度図にタンパク質のモデルをフィットさせる。このプロセスは、コンピューターグラフィックス上で、MSI社(アメリカ)のQUANTA等のプログラムを用いて行われる。この後、MSI社のX-PLOR等のプログラムを用いて、構造精密化を行い、構造解析は完了する。目的のタンパク質に対して、類縁のタンパク質の結晶構造が既知の場合は、既知タンパク質の原子座標を用いて分子置換法により決定できる。分子置換と構造精密化はプログラム CNS_SOLVE ver.11などを用いて行うことができる。
【0055】
2.改変型トランスグルタミナーゼをコードする核酸等
本発明の第2の局面は本発明の改変型酵素に関連する核酸を提供する。即ち、改変型酵素をコードする遺伝子、改変型酵素をコードする核酸を同定するためのプローブとして用いることができる核酸、改変型酵素をコードする核酸を増幅又は突然変異等させるためのプライマーとして用いることができる核酸が提供される。
【0056】
改変型酵素をコードする遺伝子は典型的には改変型酵素の調製に利用される。改変型酵素をコードする遺伝子を用いた遺伝子工学的調製法によれば、より均質な状態の改変型酵素を得ることが可能である。また、当該方法は大量の改変型酵素を調製する場合にも好適な方法といえる。尚、改変型酵素をコードする遺伝子の用途は改変型酵素の調製に限られない。例えば、改変型酵素の作用機構の解明などを目的とした実験用のツールとして、或いは酵素の更なる改変体をデザイン又は作製するためのツールとして、当該核酸を利用することもできる。
【0057】
本明細書において「改変型酵素をコードする遺伝子」とは、それを発現させた場合に当該改変型酵素が得られる核酸のことをいい、当該改変型酵素のアミノ酸配列に対応する塩基配列を有する核酸は勿論のこと、そのような核酸にアミノ酸配列をコードしない配列が付加されてなる核酸をも含む。また、コドンの縮重も考慮される。
【0058】
改変型酵素をコードする遺伝子の配列(塩基配列)の例を配列番号18~26に示す。これらの配列は、下記の通り、後述の実施例に示した変異体をコードする。
配列番号18:R26N変異体
配列番号19:R26Y変異体
配列番号20:R26S変異体
配列番号21:E28N変異体
配列番号22:E28G変異体
配列番号23:E28F変異体
配列番号24:E28Y変異体
配列番号25:E58R変異体
配列番号26:E58L変異体
【0059】
本発明の遺伝子を宿主内で発現させる場合には、通常、発現産物である改変型酵素の構造安定化等のために、上記の配列(例えば、配列番号18~26のいずれか)の5'末端側にプロペプチド(プロ配列)をコードする配列を付加した遺伝子コンストラクトを宿主に導入することになる。また、分泌型タンパク質として発現させる場合には、更に、プロ配列をコードする配列の5'末端側にプレ配列(シグナル配列)をコードする配列を付加した遺伝子コントラクトを用意する。当該遺伝子コンストラクトを用いた場合、プレ配列及びプロ配列が連結されたプレプロ型トランスグルタミナーゼとして発現した後、プレ配列の切断(プロ型トランスグルタミナーゼへの変換)及びプロ配列の切断を経て成熟型トランスグルタミナーゼが得られる。プレ配列をコードする配列、及びプロ配列をコードする配列には、本来の配列、即ち、基準トランスグルタミナーゼ(改変前のトランスグルタミナーゼ)の配列を用いるとよい。プレ配列の具体例を配列番号27(ストレプトマイセス・モバラエンシス由来のトランスグルタミナーゼのプレ配列)、プロ配列の具体例を配列番号28(ストレプトマイセス・モバラエンシス由来のトランスグルタミナーゼのプロ配列)、プレ配列をコードする配列の具体例を配列番号29(ストレプトマイセス・モバラエンシス由来のトランスグルタミナーゼのプレ配列をコードする配列)、プロ配列をコードする配列の具体例を配列番号30(ストレプトマイセス・モバラエンシス由来のトランスグルタミナーゼのプロ配列をコードする配列)に示す。
【0060】
本発明の核酸は、本明細書又は添付の配列表が開示する配列情報を参考にし、標準的な遺伝子工学的手法、分子生物学的手法、生化学的手法、化学合成などを用いることによって、単離された状態に調製することができる。
【0061】
本発明の他の態様では、本発明の改変型酵素をコードする遺伝子の塩基配列と比較した場合にそれがコードするタンパク質の機能は同等であるものの一部において塩基配列が相違する核酸(以下、「相同核酸」ともいう。また、相同核酸を規定する塩基配列を「相同塩基配列」ともいう)が提供される。相同核酸の例として、本発明の改変型酵素をコードする核酸の塩基配列を基準として1若しくは複数の塩基の置換、欠失、挿入、付加、又は逆位を含む塩基配列からなり、改変型酵素に特徴的な酵素活性(即ちトランスグルタミナーゼ活性)を有するタンパク質をコードするDNAを挙げることができる。塩基の置換や欠失などは複数の部位に生じていてもよい。ここでの「複数」とは、当該核酸がコードするタンパク質の立体構造におけるアミノ酸残基の位置や種類によっても異なるが例えば2~40塩基、好ましくは2~20塩基、より好ましくは2~10塩基である。
【0062】
相同核酸は、基準となる塩基配列に対して、例えば60%以上、好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上、より一層好ましくは85%以上、さらに好ましくは約90%以上、更に一層好ましくは95%以上、最も好ましくは99%以上の同一性を有する。
【0063】
以上のような相同核酸は例えば、制限酵素処理、エキソヌクレアーゼやDNAリガーゼ等による処理、位置指定突然変異導入法(Molecular Cloning, Third Edition, Chapter 13 ,Cold Spring Harbor Laboratory Press, New York)やランダム突然変異導入法(Molecular Cloning, Third Edition, Chapter 13 ,Cold Spring Harbor Laboratory Press, New York)による変異の導入などによって得られる。また、紫外線照射など他の方法によっても相同核酸を得ることができる。
【0064】
本発明の他の態様は、本発明の改変型酵素をコードする遺伝子の塩基配列に対して相補的な塩基配列を有する核酸に関する。本発明の更に他の態様は、本発明の改変型酵素をコードする遺伝子の塩基配列、或いはそれに相補的な塩基配列に対して少なくとも約60%、70%、80%、90%、95%、99%、99.9%同一な塩基配列を有する核酸を提供する。
【0065】
本発明の更に別の態様は、本発明の改変型酵素をコードする遺伝子の塩基配列又はその相同塩基配列に相補的な塩基配列に対してストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列を有する核酸に関する。ここでの「ストリンジェントな条件」とは、いわゆる特異的なハイブリッドが形成され、非特異的なハイブリッドが形成されない条件をいう。このようなストリンジェントな条件は当業者に公知であって例えばMolecular Cloning(Third Edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press, New York)やCurrent protocols in molecular biology(edited by Frederick M. Ausubel et al., 1987)を参照して設定することができる。ストリンジェントな条件として例えば、ハイブリダイゼーション液(50%ホルムアミド、10×SSC(0.15M NaCl, 15mM sodium citrate, pH 7.0)、5×Denhardt溶液、1% SDS、10% デキストラン硫酸、10μg/mlの変性サケ精子DNA、50mMリン酸バッファー(pH7.5))を用いて約42℃~約50℃でインキュベーションし、その後0.1×SSC、0.1% SDSを用いて約65℃~約70℃で洗浄する条件を挙げることができる。更に好ましいストリンジェントな条件として例えば、ハイブリダイゼーション液として50%ホルムアミド、5×SSC(0.15M NaCl, 15mM sodium citrate, pH 7.0)、1×Denhardt溶液、1%SDS、10%デキストラン硫酸、10μg/mlの変性サケ精子DNA、50mMリン酸バッファー(pH7.5))を用いる条件を挙げることができる。
【0066】
本発明の更に他の態様は、本発明の改変型酵素をコードする遺伝子の塩基配列、或いはそれに相補的な塩基配列の一部を有する核酸(核酸断片)を提供する。このような核酸断片は、本発明の改変型酵素をコードする遺伝子の塩基配列を有する核酸などを検出、同定、及び/又は増幅することなどに用いることができる。核酸断片は例えば、本発明の改変型酵素をコードする遺伝子の塩基配列において連続するヌクレオチド部分(例えば約10~約100塩基長、好ましくは約20~約100塩基長、更に好ましくは約30~約100塩基長)にハイブリダイズする部分を少なくとも含むように設計される。プローブとして利用される場合には核酸断片を標識化することができる。標識化には例えば、蛍光物質、酵素、放射性同位元素を用いることができる。
【0067】
本発明のさらに他の局面は、本発明の遺伝子(改変型酵素をコードする遺伝子)を含む組換えDNAに関する。本発明の組換えDNAは例えばベクターの形態で提供される。本明細書において用語「ベクター」は、それに挿入された核酸を細胞等のターゲット内へと輸送することができる核酸性分子をいう。
【0068】
使用目的(クローニング、タンパク質の発現)に応じて、また宿主細胞の種類を考慮して適当なベクターが選択される。大腸菌を宿主とするベクターとしてはM13ファージ又はその改変体、λファージ又はその改変体、pBR322又はその改変体(pB325、pAT153、pUC8など)、pET21等、酵母を宿主とするベクターとしてはpYepSec1、pMFa、pYES2、pPIC3.5K等、昆虫細胞を宿主とするベクターとしてはpAc、pVL等、哺乳類細胞を宿主とするベクターとしてはpCDM8、pMT2PC等を例示することができる。
【0069】
本発明のベクターは好ましくは発現ベクターである。「発現ベクター」とは、それに挿入された核酸を目的の細胞(宿主細胞)内に導入することができ、且つ当該細胞内において発現させることが可能なベクターをいう。発現ベクターは通常、挿入された核酸の発現に必要なプロモーター配列や、発現を促進させるエンハンサー配列等を含む。選択マーカーを含む発現ベクターを使用することもできる。かかる発現ベクターを用いた場合には、選択マーカーを利用して発現ベクターの導入の有無(及びその程度)を確認することができる。
【0070】
本発明の核酸のベクターへの挿入、選択マーカー遺伝子の挿入(必要な場合)、プロモーターの挿入(必要な場合)等は標準的な組換えDNA技術(例えば、Molecular Cloning, Third Edition, 1.84, Cold Spring Harbor Laboratory Press, New Yorkを参照することができる、制限酵素及びDNAリガーゼを用いた周知の方法)を用いて行うことができる。
【0071】
宿主細胞としては、取り扱いの容易さの点から、麹菌(例えばアスペルギルス・オリゼ)、バチルス属細菌(例えばバチルス・サチルス、バチルス・リケニフォルミス、バチルス・アミノリクファシエンス)、ブレビバチルス属細菌(例えばブレビバチルス・チョウシネンシス)、大腸菌(エシェリヒア・コリ)、出芽酵母(サッカロマイセス・セレビシエ)などの微生物を用いることができるが、組換えDNAが複製可能で且つ改変型酵素の遺伝子が発現可能な宿主細胞であれば利用可能である。好ましくは大腸菌(エシェリヒア・コリ)、出芽酵母(サッカロマイセス・セレビシエ)を用いることができる。ストレプトマイセス属微生物(例えばストレプトマイセス・モラバエンシス)を宿主にすることもできる。また、大腸菌の例としてT7系プロモーターを利用する場合は大腸菌BL21(DE3)、そうでない場合は大腸菌JM109を挙げることができる。また、出芽酵母の例として出芽酵母SHY2、出芽酵母AH22あるいは出芽酵母INVSc1(インビトロジェン社)を挙げることができる。
【0072】
本発明の他の局面は、本発明の組換えDNAを保有する微生物(即ち形質転換体)に関する。本発明の微生物は、上記本発明のベクターを用いたトランスフェクション乃至はトランスフォーメーションによって得ることができる。例えば、塩化カルシウム法(ジャーナル オブ モレキュラー バイオロジー(J.Mol. Biol.)、第53巻、第159頁 (1970))、ハナハン(Hanahan)法(ジャーナル オブ モレキュラー バイオロジー、第166巻、第557頁 (1983))、SEM法(ジーン(Gene)、第96巻、第23頁(1990))、チャング(Chung)らの方法(プロシーディングズ オブ ザ ナショナル アカデミー オブ サイエンシーズ オブ ザ USA、第86巻、第2172頁(1989))、リン酸カルシウム共沈降法、エレクトロポーレーション(Potter,H. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 81, 7161-7165(1984))、リポフェクション(Felgner, P.L. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 84,7413-7417(1984))等によって実施することができる。尚、本発明の微生物は、本発明の改変型酵素を生産することに利用することができる。
【0073】
3.改変型トランスグルタミナーゼを含む酵素剤
本発明の改変型酵素は例えば酵素剤の形態で提供される。酵素剤は、有効成分(本発明の改変型酵素)の他、賦形剤、緩衝剤、懸濁剤、安定剤、保存剤、防腐剤、生理食塩水、各種タンパク質、各種タンパク質の分解物、各種エキス類、各種塩類、各種酸化防止剤、システイン、グルタチオン、グルタミン酸ナトリウム、イノシン酸ナトリウム、グアニル酸ナトリウム、貝殻焼成カルシウム、二酸化ケイ素などを含有していてもよい。賦形剤としてはデンプン、デキストリン、マルトース、トレハロース、乳糖、D-グルコース、ソルビトール、D-マンニトール、白糖、グリセロール等を用いることができる。緩衝剤としてはリン酸塩、クエン酸塩、酢酸塩等を用いることができる。安定剤としてはプロピレングリコール、アスコルビン酸等を用いることができる。保存剤としてはフェノール、塩化ベンザルコニウム、ベンジルアルコール、クロロブタノール、メチルパラベン等を用いることができる。防腐剤としてはエタノール、塩化ベンザルコニウム、パラオキシ安息香酸、クロロブタノール等を用いることができる。タンパク質の例は、大豆タンパク質、小麦タンパク質、トウモロコシタンパク質、乳タンパク質、動物由来タンパク質などである。エキス類の例は肉エキス、植物エキス、酵母エキスなどである。塩類の例は、塩化塩、リン酸塩、ポリリン酸塩、ピロリン酸塩、クエン酸塩、乳酸塩、炭酸塩などである。酸化防止剤の例は、L-アスコルビン酸塩、亜硫酸水素ナトリウムなどである。本発明の酵素製剤の形状は特に限定されず、例えば粉末状、顆粒状、液体状、カプセル状等である。
【0074】
4.改変型トランスグルタミナーゼの調製法
本発明の更なる局面は改変型酵素の調製法に関する。本発明の調製法の一態様では、本発明の改変型酵素を遺伝子工学的手法で調製する。この態様の場合、本発明の改変型酵素のアミノ酸配列(例えば配列番号2~10のいずれか)をコードする核酸を用意する(ステップ(I))。ここで、「特定のアミノ酸配列をコードする核酸」は、それを発現させた場合に当該アミノ酸配列を有するポリペプチドが得られる核酸であり、当該アミノ酸配列に対応する塩基配列からなる核酸は勿論のこと、そのような核酸に余分な配列(アミノ酸配列をコードする配列であっても、アミノ酸配列をコードしない配列であってもよい)が付加されていてもよい。また、コドンの縮重も考慮される。「本発明の改変型酵素のアミノ酸配列をコードする核酸」は、本明細書又は添付の配列表が開示する配列情報を参考にし、標準的な遺伝子工学的手法、分子生物学的手法、生化学的手法などを用いることによって、単離された状態に調製することができる。ここで、本発明の改変型酵素のアミノ酸配列は基準トランスグルタミナーゼのアミノ酸配列に変異を施したものである。従って、基準トランスグルタミナーゼをコードする遺伝子に対して必要な変異を加えることによっても、「本発明の改変型酵素のアミノ酸配列をコードする核酸」を得ることができる。位置特異的塩基配列置換のための方法は当該技術分野において数多く知られており(例えば、Molecular Cloning, Third Edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press, New Yorkを参照)、その中から適切な方法を選択して用いることができる。位置特異的変異導入法として、位置特異的アミノ酸飽和変異法を採用することができる。位置特異的アミノ酸飽和変異法は、タンパクの立体構造を基に、求める機能の関与する位置を推定し、アミノ酸飽和変異を導入する「Semi-rational,semi-random」手法である(J.Mol.Biol.331,585-592(2003))。例えば、Quick change(ストラタジーン社)等のキット、Overlap extention PCR(Nucleic Acid Res. 16,7351-7367(1988))を用いて位置特異的アミノ酸飽和変異を導入することが可能である。PCRに用いるDNAポリメラーゼはTaqポリメラーゼ等を用いることができる。但し、KOD-PLUS-(東洋紡社)、Pfu turbo(ストラタジーン社)などの精度の高いDNAポリメラーゼを用いることが好ましい。
【0075】
ステップ(I)に続いて、用意した核酸を発現させる(ステップ(II))。例えば、まず上記核酸を挿入した発現ベクターを用意し、これを用いて宿主細胞を形質転換する。
【0076】
次に、発現産物である改変型酵素が産生される条件下で形質転換体を培養する。形質転換体の培養は常法に従えばよい。培地に使用する炭素源としては資化可能な炭素化合物であればよく、例えばグルコース、シュークロース、ラクトース、マルトース、糖蜜、ピルビン酸などが使用される。また、窒素源としては利用可能な窒素化合物であればよく、例えばペプトン、肉エキス、酵母エキス、カゼイン加水分解物、大豆粕アルカリ抽出物などが使用される。その他、リン酸塩、炭酸塩、硫酸塩、マグネシウム、カルシウム、カリウム、鉄、マンガン、亜鉛などの塩類、特定のアミノ酸、特定のビタミンなどが必要に応じて使用される。
【0077】
一方、培養温度は30℃~40℃の範囲内(好ましくは33~37℃付近)で設定することができる。培養時間は、培養対象の形質転換体の生育特性や改変型酵素の産生特性などを考慮して設定することができる。培地のpHは、形質転換体が生育し且つ酵素が産生される範囲内に調製される。好ましくは培地のpHを6.0~9.0程度(好ましくはpH7.0付近)とする。
【0078】
続いて、発現産物(改変型酵素)を回収する(ステップ(III))。培養後の菌体を含む培養液をそのまま、或いは濃縮、不純物の除去などを経た後に酵素溶液として利用することもできるが、一般的には培養液又は菌体より発現産物を一旦回収する。発現産物が分泌型タンパク質であれば培養液より、それ以外であれば菌体内より回収することができる。培養液から回収する場合には、例えば培養上清をろ過、遠心処理して不溶物を除去した後、減圧濃縮、膜濃縮、硫酸アンモニウムや硫酸ナトリウムを利用した塩析、メタノールやエタノール又はアセトンなどによる分別沈殿法、透析、加熱処理、等電点処理、ゲルろ過や吸着クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティクロマトグラフィー等の各種クロマトグラフィー(例えば、セファデックス(Sephadex)ゲル(GEヘルスケアバイオサイエンス)などによるゲルろ過、DEAEセファロースCL-6B (GEヘルスケアバイオサイエンス)、オクチルセファロースCL-6B (GEヘルスケアバイオサイエンス)、CMセファロースCL-6B(GEヘルスケアバイオサイエンス))などを組み合わせて分離、精製を行ことにより改変型酵素の精製品を得ることができる。他方、菌体内から回収する場合には、培養液をろ過、遠心処理等することによって菌体を採取し、次いで菌体を加圧処理、超音波処理、物理破砕処理などの機械的方法またはリゾチームなどによる酵素的方法で破壊した後、上記と同様に分離、精製を行うことにより改変型酵素の精製品を得ることができる。
【0079】
上記のようにして得られた精製酵素を、例えば凍結乾燥や真空乾燥或いはスプレードライなどにより粉末化して提供することも可能である。その際、精製酵素を予めリン酸緩衝液、トリエタノールアミン緩衝液、トリス塩酸緩衝液やGOODの緩衝液に溶解させておいてもよい。好ましくは、リン酸緩衝液、トリエタノールアミン緩衝液を使用することができる。尚、ここでGOODの緩衝液としてはPIPES、MES又はMOPSが挙げられる。
【0080】
通常は、以上のように適当な宿主-ベクター系を利用して遺伝子の発現~発現産物(改変型酵素)の回収を行うが、無細胞合成系を利用することにしてもよい。ここで、「無細胞合成系(無細胞転写系、無細胞転写/翻訳系)」とは、生細胞を用いるのではく、生細胞由来の(或いは遺伝子工学的手法で得られた)リボソームや転写・翻訳因子などを用いて、鋳型である核酸(DNAやmRNA)からそれがコードするmRNAやタンパク質をin vitroで合成することをいう。無細胞合成系では一般に、細胞破砕液を必要に応じて精製して得られる細胞抽出液が使用される。細胞抽出液には一般に、タンパク質合成に必要なリボソーム、開始因子などの各種因子、tRNAなどの各種酵素が含まれる。タンパク質の合成を行う際には、この細胞抽出液に各種アミノ酸、ATP、GTPなどのエネルギー源、クレアチンリン酸など、タンパク質の合成に必要なその他の物質を添加する。勿論、タンパク質合成の際に、別途用意したリボソームや各種因子、及び/又は各種酵素などを必要に応じて補充してもよい。
【0081】
タンパク質合成に必要な各分子(因子)を再構成した転写/翻訳系の開発も報告されている(Shimizu, Y. et al.: Nature Biotech., 19, 751-755, 2001)。この合成系では、バクテリアのタンパク質合成系を構成する3種類の開始因子、3種類の伸長因子、終結に関与する4種類の因子、各アミノ酸をtRNAに結合させる20種類のアミノアシルtRNA合成酵素、及びメチオニルtRNAホルミル転移酵素からなる31種類の因子の遺伝子を大腸菌ゲノムから増幅し、これらを用いてタンパク質合成系をin vitroで再構成している。本発明ではこのような再構成した合成系を利用してもよい。
【0082】
用語「無細胞転写/翻訳系」は、無細胞タンパク質合成系、in vitro翻訳系又はin vitro転写/翻訳系と交換可能に使用される。in vitro翻訳系ではRNAが鋳型として用いられてタンパク質が合成される。鋳型RNAとしては全RNA、mRNA、in vitro転写産物などが使用される。他方のin vitro転写/翻訳系ではDNAが鋳型として用いられる。鋳型DNAはリボソーム結合領域を含むべきであって、また適切なターミネータ配列を含むことが好ましい。尚、in vitro転写/翻訳系では、転写反応及び翻訳反応が連続して進行するように各反応に必要な因子が添加された条件が設定される。
【実施例】
【0083】
<特性の向上に有効な変異点の探索>
有用性の高い改変型のトランスグルタミナーゼの取得を目指し、蛋白質工学を用い、ストレプトマイセス・モバラエンシス由来のトランスグルタミナーゼ(野生型酵素。配列番号1)の酵素機能の改良(温度安定性の低減、耐熱性の向上、抗酸化性の向上、反応性の向上、脱アミド酵素化)を試みた。まず、アミノ酸置換による変異を導入することにし、CASTing library(例えばAngew Chem Int Ed Engl. 2006 Feb 13;45(8):1236-41.を参照)及びアラニンスキャニング(Ala scanning)(例えばJ Mol Biol. 1995 Feb 17;246(2):317-30.を参照)を利用して変異点の候補を選出した。次に、以下の方法で各変異点に変異を導入し、変異酵素を調製した。
【0084】
1.変異酵素の調製
1-1.変異の導入
(1)変異導入用のPCRプライマーを設計する。
(2)各変異点用のプライマーセットを用い、トランスグルタミナーゼ遺伝子(配列番号17)が組み込まれたプラスミドpET20bを鋳型としてPCR(98℃で1分の反応の後、98℃で10秒、60℃で15秒、68℃で2分の反応を15サイクル行い、68℃で5分反応させた後、4℃で放置)。
(3)PCR反応液(25μL/チューブ)にDpnI(1.5μL/チューブ)を添加して処理(37℃、3時間以上)する。
(4)T4キナーゼを用い、ライゲーション処理(16℃、一晩)する。
(5)ライゲーション反応液(11μL/チューブ)でE.coli BL21(DE3)を形質転換し、アンピシリン含有LB培地で培養(37℃、一晩)する。
【0085】
1-2.酵素抽出液の取得
(1)変異が導入された株(変異株)をアンピシリン含有TB培地に植菌し、33℃、48時間培養する。培養開始から24時間の時点でIPTG(最終濃度0.1mM)を添加する。
(2)培養液を遠心分離(3,000 g × 10分)した後、上澄みを除去して菌体を回収する。
(3)溶菌剤を添加して菌体を溶菌させる。
(4)溶菌液を遠心分離(3,000 g × 10分)した後、上澄みを回収して酵素抽出液とする。
【0086】
1-3.成熟体化(プロペプチド配列の除去)
(1)酵素抽出液と2mg/mLプロテアーゼ(ディスパーゼ)溶液を等量混合し、反応(30℃、2時間以上)させる。
(2)混合液を遠心分離(3,000 g × 10分)した後、上澄みを回収して成熟体化酵素とする。
【0087】
2.変異酵素の特性評価
調製した各変異酵素の特性を評価する際には以下の活性測定法を用いた。
<活性測定法>
成熟体化酵素を200mM Tris-HCl pH6.0で適当な濃度に希釈する(サンプル溶液)。サンプル溶液10μLに基質溶液(R-1) 100μLを添加し混合した後、37℃で10分間反応させる。発色溶液(R-2) 100μLを加えて反応を停止させるともにFe錯体を形成させた後、525nmの吸光度を測定する。対照として、予め熱失活させた酵素液を用いて同様に反応させたものの吸光度を測定し、サンプル溶液との吸光度差を求める。別途、酵素液の代わりにL-グルタミン酸-γ-モノヒドロキサム酸を用いて検量線を作成し、前記吸光度差より生成されたヒドロキサム酸の量を求める。1分間に1μモルのヒドロキサム酸を生成する酵素活性を1単位(1U)とする。
(基質溶液(R-1))
2-アミノ-2-ヒドロキシメチル-1.3-プロパンジオール 2.42g、塩酸ヒドロキシアンモニウム 0.70g、還元型グルタチオン 0.31g、Z-Gln-Gly (ベンジルオキシカルボニル-L-グルタミニルグリシン) 1.01gを蒸留水に溶解し総量100 mLとする(pH 6.0)。
(基質溶液(R-2))
3M 塩酸溶液 30 mL、12% トリクロロ酢酸溶液 30 mL、5% 塩化鉄(III)溶液 30 mLを混合する。
【0088】
2-1.温度安定性/耐熱性の評価
成熟体化酵素を200mM Tris-HCl pH6.0で2倍希釈し、所定の温度(20℃、30℃、40℃、50℃、60℃)にて30分間処理する。処理後に活性測定し、処理前の活性と比較することで、活性の残存率を算出する。
【0089】
50℃で30分間処理した場合の活性残存率と野生型に対する相対値を以下の計算式で算出し、温度安定性の低下に有効なアミノ酸置換と、耐熱性向上に有効なアミノ酸置換を特定した。
活性残存率(%)=(熱処理後の酵素活性)/(熱処理前の酵素活性)×100
対野生型(%)=(変異酵素の活性残存率)/(野生型酵素の活性残存率)×100
【0090】
温度安定性の評価結果を
図1に示す。対野生型(%)が90%以下である、以下の(1)~(33)を有効なアミノ酸置換と判断した。
(1)変異点がV6、置換後のアミノ酸がQ、I、M、S、C、K、L、H、F、G、N、P、R、W又はY
(2)変異点がR26、置換後のアミノ酸がK、Q、M、H、Y、D、G、N、P又はS
(3)変異点がE28、置換後のアミノ酸がV、Q、W、R、K、M、N、F、G、L、P又はY
(4)変異点がV30、置換後のアミノ酸がP、C、A、E、F、G、H、K、N、Q、R、W、Y又はL
(5)変異点がY34、置換後のアミノ酸がA
(6)変異点がY42、置換後のアミノ酸がF、A、C、D、E、G、I、L、M、Q、S、T、V又はW
(7)変異点がE58、置換後のアミノ酸がY、M、A、F、I、V、R、K、N、L、S、Q、G又はH
(8)変異点がW59、置換後のアミノ酸がR、N、Y、A、S、I、V、D、G又はP
(9)変異点がL60、置換後のアミノ酸がI、M、V、A、C、E、F、Q、S、T、W又はY
(10)変異点がY62、置換後のアミノ酸がC、R、G、K又はS
(11)変異点がV65、置換後のアミノ酸がN、L、M、F、W又はY
(12)変異点がV67、置換後のアミノ酸がL、N、A、C、M、Q又はS
(13)変異点がT68、置換後のアミノ酸がC、L、A、S、M、F、N、Q又はY
(14)変異点がW69、置換後のアミノ酸がH、M、I、C、E、F、G、K、L、N、Q、R、S、T又はV
(15)変異点がQ74、置換後のアミノ酸がW、D、G又はK
(16)変異点がY75、置換後のアミノ酸がR、Q、T又はG
(17)変異点がT77、置換後のアミノ酸がM、H、E、C又はG
(18)変異点がF85、置換後のアミノ酸がM
(19)変異点がF90、置換後のアミノ酸がC、M、H、L又はV
(20)変異点がF108、置換後のアミノ酸がR、L、T、A、I、K、N又はV
(21)変異点がF117、置換後のアミノ酸がM又はL
(22)変異点がS199、置換後のアミノ酸がG、M、N、K又はV
(23)変異点がF202、置換後のアミノ酸がL又はW
(24)変異点がW203、置換後のアミノ酸がF
(25)変異点がF254、置換後のアミノ酸がY又はM
(26)変異点がT273、置換後のアミノ酸がI、V、M、C、S、L、R、G、A、E、F、Y、D、K、W又はH
(27)変異点がN276、置換後のアミノ酸がC、E、K、L、S、T又はV
(28)変異点がY278、置換後のアミノ酸がM、L、H、I、K、R、W、C、G、N、Q、S、T又はV
(29)変異点がS284、置換後のアミノ酸がW、Y、M、F又はN
(30)変異点がY291、置換後のアミノ酸がI、W、L、A、C、K、N、Q、R、S又はV
(31)変異点がS299、置換後のアミノ酸がI、Y、V、K、M、Q、A、F、G又はE
(32)変異点がS303、置換後のアミノ酸がN、G、C、V、P又はY
(33)変異点がY310、置換後のアミノ酸がC、M又はI
【0091】
より好ましいアミノ酸置換として、対野生型(%)が30%以下である、下記のアミノ酸置換を特定した。
V6S、V6C、V6K、V6L、V6H、V6F、V6G、V6N、V6P、V6R、V6W、V6Y
R26M、R26H、R26Y、R26D、R26G、R26N、R26P、R26S
E28N、E28F、E28G、E28L、E28P、E28Y
V30P、V30C、V30A、V30E、V30F、V30G、V30H、V30K、V30N、V30Q、V30R、V30W、V30Y、V30L
Y34A
Y42A、Y42C、Y42D、Y42E、Y42G、Y42I、Y42L、Y42M、Y42Q、Y42S、Y42T、Y42V、Y42W
E58G、E58H
W59S、W59I、W59V、W59D、W59G、W59P
L60M、L60V、L60A、L60C、L60E、L60F、L60Q、L60S、L60T、L60W、L60Y
Y62C、Y62R、Y62G、Y62K、Y62S
V65N、V65L、V65M、V65F、V65W、V65Y
V67L、V67N、V67A、V67C、V67M、V67Q、V67S
T68M、T68F、T68N、T68Q、T68Y
W69M、W69I、W69C、W69E、W69F、W69G、W69K、W69L、W69N、W69Q、W69R、W69S、W69T、W69V
Y75T、Y75G
F85M
F90V
F108T、F108A、F108I、F108K、F108N、F108V
F117L
S199K、S199V
F202W
T273L、T273R、T273G、T273A、T273E、T273F、T273Y、T273D、T273K、T273W、T273H
N276C、N276E、N276K、N276L、N276T、N276V、N276S
Y278L、Y278H、Y278I、Y278K、Y278R、Y278W、Y278C、Y278G、Y278N、Y278Q、Y278S、Y278T、Y278V
Y291W、Y291L、Y291A、Y291C、Y291K、Y291N、Y291Q、Y291R、Y291S、Y291V
S299E
Y310I
【0092】
特に好ましいアミノ酸置換として、対野生型(%)が10%以下である、下記のアミノ酸置換を特定した。
V6H、V6F、V6G、V6N、V6P、V6R、V6W、V6Y
R26H、R26Y、R26D、R26G、R26N、R26P、R26S
E28F、E28G、E28L、E28P、E28Y
V30C、V30A、V30E、V30F、V30G、V30H、V30K、V30N、V30Q、V30R、V30W、V30Y、V30L
Y34A
Y42A、Y42C、Y42D、Y42E、Y42G、Y42I、Y42L、Y42M、Y42Q、Y42S、Y42T、Y42V、Y42W
W59I、W59V、W59D、W59G、W59P
L60V、L60A、L60C、L60E、L60F、L60Q、L60S、L60T、L60W、L60Y
Y62C、Y62R、Y62G、Y62K、Y62S
V65M、V65F、V65W、V65Y
V67A、V67C、V67M、V67Q、V67S
T68F、T68N、T68Q、T68Y
W69M、W69I、W69C、W69E、W69F、W69G、W69K、W69L、W69N、W69Q、W69R、W69S、W69T、W69V
Y75T、Y75G
F108A、F108I、F108K、F108N、F108V
F117L
F202W
T273F、T273Y、T273D、T273K、T273W、T273H
N276C、N276E、N276K、N276L、N276S、N276T、N276V
Y278K、Y278R、Y278W、Y278C、Y278G、Y278N、Y278Q、Y278S、Y278T、Y278V
Y291L、Y291A、Y291C、Y291K、Y291N、Y291Q、Y291R、Y291S、Y291V
S299E
【0093】
耐熱性の評価結果を
図2に示す。対野生型(%)が110%以上である、以下の(34)~(45)を有効なアミノ酸置換と判断した。
(34)変異点がD3、置換後のアミノ酸がQ、P、E、S又はY
(35)変異点がR26、置換後のアミノ酸がV
(36)変異点がY34、置換後のアミノ酸がW
(37)変異点がV67、置換後のアミノ酸がH
(38)変異点がT68、置換後のアミノ酸がV又はI
(39)変異点がQ74、置換後のアミノ酸がF
(40)変異点がT77、置換後のアミノ酸がQ
(41)変異点がS199、置換後のアミノ酸がC又はQ
(42)変異点がT273、置換後のアミノ酸がQ
(43)変異点がS284、置換後のアミノ酸がL、H、K、P又はR
(44)変異点がS299、置換後のアミノ酸がN
(45)変異点がS303、置換後のアミノ酸がK
【0094】
より好ましいアミノ酸置換として、対野生型(%)が120%以上である、下記のアミノ酸置換を特定した。
D3P、D3E、D3S、D3Y
R26V
Y34W
V67H
T77Q
S199C、S199Q
T273Q
S284H、S284K、S284P、S284R
S303K
【0095】
特に好ましいアミノ酸置換として、対野生型(%)が130%以上である、下記のアミノ酸置換を特定した。
D3E、D3S、D3Y
R26V
Y34W
V67H
S199Q
T273Q
S284H、S284K、S284P、S284R
【0096】
2-2.抗酸化性の評価
過酸化水素(30~35%)(Wako, 試薬特級)を200mM Tris-HCl pH6.0で希釈し、酸化剤としての過酸化水素溶液(0.03%)を調製する。成熟体酵素を過酸化水素溶液で2倍希釈した後、30℃で1時間反応させる。反応度に活性測定し、処理前の活性と比較することで、活性の残存率を算出する。
【0097】
過酸化水素処した場合の活性残存率と野生型に対する相対値を以下の計算式で算出し、抗酸化性の向上に有効なアミノ酸置換を特定した。
活性残存率(%)=(過酸化水素処理後の酵素活性)/(処理前の酵素活性) ×100
対野生型(%)=(変異酵素の活性残存率)/(野生型酵素の活性残存率) ×100
【0098】
抗酸化性の評価結果を
図3に示す。対野生型(%)が110%以上である、以下の(46)~(59)を有効なアミノ酸置換と判断した。
(46)変異点がD3、置換後のアミノ酸がE、Q、S又はY
(47)変異点がV6、置換後のアミノ酸がP
(48)変異点がR26、置換後のアミノ酸がM、K、W、C、Q、G、Y、E、T、N、D、I、S、P又はV
(49)変異点がE28、置換後のアミノ酸がL、M、K、C、V、R、W、G、N、F、Y又はH
(50)変異点がY42、置換後のアミノ酸がL、N又はF
(51)変異点がE58、置換後のアミノ酸がQ、A、I、V、L、T、M、K、Y、W、F又はR
(52)変異点がV67、置換後のアミノ酸がT、S又はA
(53)変異点がT68、置換後のアミノ酸がL、I、V又はM
(54)変異点がQ74、置換後のアミノ酸がV
(55)変異点がT77、置換後のアミノ酸がD
(56)変異点がS199、置換後のアミノ酸がC
(57)変異点がT273、置換後のアミノ酸がE
(58)変異点がS284、置換後のアミノ酸がR又はH
(59)変異点がY291、置換後のアミノ酸がI、S、F、L、C、N、V又はM
【0099】
より好ましいアミノ酸置換として、対野生型(%)が120%以上である、下記のアミノ酸置換を特定した。
D3S、D3Y
V6P
R26W、R26C、R26Q、R26G、R26Y、R26E、R26T、R26N、R26D、R26I、R26S、R26P、R26V
E28L、E28M、E28K、E28C、E28V、E28R、E28W、E28G、E28N、E28F、E28Y、E28H
E58A、E58I、E58V、E58L、E58T、E58M、E58K、E58Y、E58W、E58F、E58R
V67S、V67A
T68I、T68V、T68M
T273E
S284R、S284H
Y291C、Y291N、Y291V、Y291M
【0100】
特に好ましいアミノ酸置換として、対野生型(%)が130%以上である、下記のアミノ酸置換を特定した。
V6P
R26C、R26Q、R26G、R26Y、R26E、R26T、R26N、R26D、R26I、R26S、R26P、R26V
E28V、E28R、E28W、E28G、E28N、E28F、E28Y、E28H
Y42F
E58I、E58V、E58L、E58T、E58M、E58K、E58Y、E58W、E58F、E58R
T68I、T68V、T68M
S284H
【0101】
2-3.反応性の評価
成熟体化酵素を200mM Tris-HCl pH6.0で適当な濃度に希釈し(サンプル溶液)、活性測定する。野生型に対する相対値を以下の計算式で算出し、反応性の向上に有効なアミノ酸置換を特定した。
対野生型(%)=(変異酵素の活性)/(野生型酵素の活性) ×100
【0102】
尚、比活性を求める場合には、サンプル溶液の吸光度280nmを測定してタンパク質濃度を算出し、活性測定値とタンパク質濃度から比活性を算出する。
【0103】
反応性の評価結果を
図4に示す。対野生型(%)が110%以上である、以下の(60)~(63)を有効なアミノ酸置換と判断した。
(60)変異点がS284、置換後のアミノ酸がM、K又はV
(61)変異点がF251、置換後のアミノ酸がY
(62)変異点がV6とY75、変異点V6の置換後のアミノ酸がE、変異点Y75の置換後のアミノ酸がF
(63)変異点がD3とT77、変異点D3の置換後のアミノ酸がP、変異点T77の置換後のアミノ酸がQ
【0104】
より好ましいアミノ酸置換として、対野生型(%)が120%以上である、下記のアミノ酸置換を特定した。
S284V
F251Y
V6EとY75Fの二重変異
D3PとT77Qの二重変異
【0105】
特に好ましいアミノ酸置換として、対野生型(%)が130%以上である、下記のアミノ酸置換を特定した。
V6EとY75Fの二重変異
D3PとT77Qの二重変異
【0106】
図5に示す通り、以下の(64)~(91)は二つ以上の特性変化をもたらし、複合的な改良に有効なアミノ酸置換であった。
(64)変異点がD3、置換後のアミノ酸がQ、S又はY、アミノ酸置換による特性変化が耐熱性向上及び抗酸化性向上
(65)変異点がD3、置換後のアミノ酸がP、アミノ酸置換による特性変化が耐熱性向上及び反応性向上
(66)変異点がD3、置換後のアミノ酸がE、アミノ酸置換による特性変化が耐熱性向上、抗酸化性向上及び反応性向上
(67)変異点がV6、置換後のアミノ酸がP、アミノ酸置換による特性変化が温度安定性低下及び抗酸化性向上
(68)変異点がR26、置換後のアミノ酸がK、Q、M、Y、D、G、N、P又はS、アミノ酸置換による特性変化が温度安定性低下及び抗酸化性向上
(69)変異点がR26、置換後のアミノ酸がV、アミノ酸置換による特性変化が耐熱性向上及び抗酸化性向上
(70)変異点がR26、置換後のアミノ酸がH、アミノ酸置換による特性変化が温度安定性低下、抗酸化性向上及び反応性向上
(71)変異点がE28、置換後のアミノ酸がV、S、R、K、M、N、F、G、L又はY、アミノ酸置換による特性変化が温度安定性低下及び抗酸化性向上
(72)変異点がV30、置換後のアミノ酸がP、G、N、R又はY、アミノ酸置換による特性変化が温度安定性低下及び反応性向上
(73)変異点がY42、置換後のアミノ酸がF、L又はM、アミノ酸置換による特性変化が温度安定性低下及び抗酸化性向上
(74)変異点がE58、置換後のアミノ酸がY、M、A、F、I、V、R、K、L又はQ、アミノ酸置換による特性変化が温度安定性低下及び抗酸化性向上
(75)変異点がL60、置換後のアミノ酸がI、アミノ酸置換による特性変化が温度安定性低下及び反応性向上
(76)変異点がV67、置換後のアミノ酸がA又はS、アミノ酸置換による特性変化が温度安定性低下及び抗酸化性向上
(77)変異点がT68、置換後のアミノ酸がC、L又はM、アミノ酸置換による特性変化が温度安定性低下及び抗酸化性向上
(78)変異点がT68、置換後のアミノ酸がV又はI、アミノ酸置換による特性変化が耐熱性向上及び抗酸化性向上
(79)変異点がQ74、置換後のアミノ酸がV、アミノ酸置換による特性変化が抗酸化性向上及び反応性向上
(80)変異点がT77、置換後のアミノ酸がC、アミノ酸置換による特性変化が温度安定性低下及び抗酸化性向上
(81)変異点がT77、置換後のアミノ酸がE、アミノ酸置換による特性変化が温度安定性低下及び反応性向上
(82)変異点がT77、置換後のアミノ酸がD、アミノ酸置換による特性変化が抗酸化性向上及び反応性向上
(83)変異点がS199、置換後のアミノ酸がG、アミノ酸置換による特性変化が温度安定性低下及び反応性向上
(84)変異点がS199、置換後のアミノ酸がC、アミノ酸置換による特性変化が耐熱性向上、抗酸化性向上及び反応性向上
(85)変異点がT273、置換後のアミノ酸がE、アミノ酸置換による特性変化が温度安定性低下及び抗酸化性向上
(86)変異点がS284、置換後のアミノ酸がM又はF、アミノ酸置換による特性変化が温度安定性低下及び反応性向上
(87)変異点がS284、置換後のアミノ酸がL又はK、アミノ酸置換による特性変化が耐熱性向上及び反応性向上
(88)変異点がS284、置換後のアミノ酸がH又はR、アミノ酸置換による特性変化が耐熱性向上及び抗酸化性向上
(89)変異点がY291、置換後のアミノ酸がI、L、C、N、S又はV、アミノ酸置換による特性変化が温度安定性低下及び抗酸化性向上
(90)変異点がS299、置換後のアミノ酸がV、K、M又はA、アミノ酸置換による特性変化が温度安定性低下及び反応性向上
(91)変異点がS303、置換後のアミノ酸がK、アミノ酸置換による特性変化が耐熱性向上及び反応性向上
【0107】
以上のアミノ酸置換の中で、下記のアミノ酸置換は温度安定性の低下と抗酸化性の向上という、相反するともいえる二つの特性変化を伴う。このようなアミノ酸置換が同定されたことは予想外の成果である。このような特徴的なアミノ酸置換を伴う改変型酵素には、低温で酵素を失活させる必要がある食品用途への利用が期待される。
R26K、R26Q、R26M、R26Y、R26D、R26G、R26N、R26P、R26S
E28V、E28R、E28K、E28M、E28N、E28F、E28G、E28L、E28Y
Y42F、Y42L、Y42M
E58Y、E58M、E58A、E58F、E58I、E58V、E58R、E58K、E58L、E58Q
V67A、V67S
T68C、T68L、T68M
T77C
T273E
Y291I、Y291L、Y291C、Y291N、Y291S、Y291V
【0108】
2-4.脱アミド酵素化の評価
成熟体酵素の脱アミド活性とトランスグルタミナーゼ活性の各々を、野生型酵素に対する相対値として以下の計算式で算出した後、脱アミド活性(対野生型比率)/トランスグルタミナーゼ活性(対野生型比率)の値によって、基質特異性の変化(即ち、脱アミド酵素化)の程度を評価し、脱アミド酵素化に有効なアミノ酸置換を特定した。尚、脱アミド活性は以下の方法で測定し、トランスグルタミナーゼ活性については、基質溶液(R-1)を用いた上記の活性測定法で測定した。
脱アミド活性(対野生型比率)(%)=(変異酵素の脱アミド活性)/(野生型酵素の脱アミド活性)×100
トランスグルタミナーゼ活性(対野生型比率)(%)=(変異酵素のトランスグルタミナーゼ活性)/(野生型酵素のトランスグルタミナーゼ活性)×100
【0109】
<脱アミド活性の測定方法>
成熟体化酵素を200mMリン酸カリウム緩衝液(pH7.0)で適当な濃度に希釈する(サンプル溶液)。サンプル溶液20μLに基質溶液(1% Z-Gln-Gly、200mMリン酸カリウム緩衝液、pH7.0)を80μL添加し混合した後、37℃で24時間反応させる。アンモニアテストワコー(WAKO)を用いて、反応サンプル20μLに発色試薬A 40μL、発色試薬B 20μL、発色試薬C 40μLを添加して、37℃で10分反応させる。発色サンプル50μLと除蛋白液50μLを混合し、遠心分離した後、上澄みを回収して、630nmの吸光度を測定する。
【0110】
脱アミド酵素化の評価結果を
図6に示す。脱アミド活性/トランスグルタミナーゼ活性の値が1を超えれば脱アミド酵素化が生じていることになる。以下の(92)~(134)を有効なアミノ酸置換と判断した。
(92)変異点がR5、置換後のアミノ酸がQ、P、C、M、I、V、Y、F、S、N、T又はG
(93)変異点がY34、置換後のアミノ酸がH又はM
(94)変異点がW59、置換後のアミノ酸がK又はE
(95)変異点がS61、置換後のアミノ酸がT、V、Y、D、I、L、N、E、M、F、W、Q、P、H又はK
(96)変異点がY62、置換後のアミノ酸がD又はP
(97)変異点がG63、置換後のアミノ酸がD、Q、Y、R、K、H、P、M、N、C、F、L、W、T、V又はS
(98)変異点がV65、置換後のアミノ酸がC、T又はK
(99)変異点がG66、置換後のアミノ酸がW又はK
(100)変異点がT68、置換後のアミノ酸がP又はH
(101)変異点がW69、置換後のアミノ酸がY、D又はP
(102)変異点がQ74、置換後のアミノ酸がR又はP
(103)変異点がF85、置換後のアミノ酸がY、W、L、I、Q、C、T、A、V、S、R、H又はN
(104)変異点がF108、置換後のアミノ酸がQ、C、E、S又はN
(105)変異点がF117、置換後のアミノ酸がC、I、W、V、A、G、T又はN
(106)変異点がY198、置換後のアミノ酸がF、H、L、S、M又はI
(107)変異点がS199、置換後のアミノ酸がQ又はP
(108)変異点がK200、置換後のアミノ酸がY、M、I、R、L又はV
(109)変異点がH201、置換後のアミノ酸がK、R、M、L又はQ
(110)変異点がF202、置換後のアミノ酸がY、M、H、V又はC
(111)変異点がW203、置換後のアミノ酸がY
(112)変異点がF223、置換後のアミノ酸がY、M、L、W、V、H、G又はA
(113)変異点がR238、置換後のアミノ酸がA、D、V、G、H又はS
(114)変異点がF251、置換後のアミノ酸がH、N、C、M、R、S、A、T、L、P、G、V又はQ
(115)変異点がV252、置換後のアミノ酸がM、L、T又はC
(116)変異点がN253、置換後のアミノ酸がT、V、K、C又はR
(117)変異点がY256、置換後のアミノ酸がL、V又はI
(118)変異点がG257、置換後のアミノ酸がA又はC
(119)変異点がW258、置換後のアミノ酸がY、F又はN
(120)変異点がT273、置換後のアミノ酸がN
(121)変異点がG275、置換後のアミノ酸がA、C、S、V、K、I、F、H、R、L、P、Q、Y、N、M又はT
(122)変異点がN276、置換後のアミノ酸がG、M、Q又はH
(123)変異点がH277、置換後のアミノ酸がN、S、Q、C、E、K、D、I、R、M、P、L、W、V、Y、G、F又はT
(124)変異点がY278、置換後のアミノ酸がP又はD
(125)変異点がH279、置換後のアミノ酸がN
(126)変異点がS284、置換後のアミノ酸がC
(127)変異点がM288、置換後のアミノ酸がV、Q又はT
(128)変異点がV290、置換後のアミノ酸がT、C、L、M、A、S又はN
(129)変異点がY291、置換後のアミノ酸がH、T、E又はG
(130)変異点がW298、置換後のアミノ酸がF、Y、I、L又はM
(131)変異点がS299、置換後のアミノ酸がN又はP
(132)変異点がY302、置換後のアミノ酸がL、H、M、V、C、T、P、S又はW
(133)変異点がS303、置換後のアミノ酸がI、Q、D、H又はE
(134)変異点がF305、置換後のアミノ酸がW、H又はY
【0111】
より好ましいアミノ酸置換として、脱アミド活性/トランスグルタミナーゼ活性の値が1.2以上である、下記のアミノ酸置換を特定した。
R5Q、R5P、R5C、R5M、R5I、R5V、R5Y、R5F、R5S、R5N、R5T、R5G
Y34H、Y34M
W59K、W59E
S61T、S61V、S61Y、S61D、S61I、S61L、S61N、S61E、S61M、S61F、S61W、S61Q、S61P、S61H、S61K
Y62D、Y62P
G63D、G63Q、G63Y、G63R、G63K、G63H、G63P、G63M、G63N、G63C、G63F、G63L、G63W、G63T、G63V、G63S
V65C、V65T、V65K
G66W、G66K
T68P、T68H
W69Y、W69D、W69P
Q74R、Q74P
F85Y、F85W、F85L、F85I、F85Q、F85C、F85T、F85A、F85V、F85S、F85R、F85H、F85N
F108Q、F108C、F108E、F108S、F108N
F117C、F117I、F117W、F117V、F117A、F117G、F117T、F117N
Y198F、Y198H、Y198L、Y198S、Y198M、Y198I
S199Q、S199P
K200Y、K200M、K200I、K200R、K200L、K200V
H201K、H201R、H201M、H201L、H201Q
F202Y、F202M、F202H、F202V、F202C
W203Y
F223Y、F223M、F223L、F223W、F223V、F223H、F223G、F223A
R238A、R238D、R238V、R238G、R238H、R238S
F251H、F251N、F251C、F251M、F251R、F251S、F251A、F251T、F251L、F251P、F251G、F251V、F251Q
V252M、V252L、V252T、V252C
N253T、N253V、N253K、N253C、N253R
Y256L、Y256V、Y256I
G257A、G257C
W258Y、W258F、W258N
T273N
G275A、G275C、G275S、G275V、G275K、G275I、G275F、G275H、G275R、G275L、G275P、G275Q、G275Y、G275N、G275M、G275T
N276G、N276M、N276Q、N276H
H277N、H277S、H277Q、H277C、H277E、H277K、H277D、H277I、H277R、H277M、H277P、H277L、H277W、H277V、H277Y、H277G、H277F、H277T
Y278P、Y278D
H279N
S284C
M288V、M288Q、M288T
V290T、V290C、V290L、V290M、V290A、V290S、V290N
Y291H、Y291T、Y291E、Y291G
W298F、W298Y、W298I、W298L、W298M
S299N、S299P
Y302L、Y302H、Y302M、Y302V、Y302C、Y302T、Y302P、Y302S、Y302W
S303I、S303Q、S303D、S303H、S303E
F305W、F305H、F305Y
【0112】
更に好ましいアミノ酸置換として、脱アミド活性/トランスグルタミナーゼ活性の値が2以上である、下記のアミノ酸置換を特定した。
R5Y、R5F、R5S、R5N、R5T、R5G
Y34M
S61T、S61V、S61Y、S61D、S61I、S61L、S61N、S61E、S61M、S61F、S61W、S61Q、S61P、S61H、S61K
Y62P
G63D、G63Q、G63Y、G63R、G63K、G63H、G63P、G63M、G63N、G63C、G63F、G63L、G63W、G63T、G63V、G63S
V65C、V65T、V65K
G66K
T68P、T68H
W69D、W69P
F85L、F85I、F85Q、F85C、F85T、F85A、F85V、F85S、F85R、F85H、F85N
F108C、F108E、F108S、F108N
F117C、F117I、F117W、F117V、F117A、F117G、F117T、F117N
Y198L、Y198S、Y198M、Y198I
S199Q、S199P
K200Y、K200M、K200I、K200R、K200L、K200V
H201K、H201R、H201M、H201L、H201Q
F202M、F202H、F202V、F202C
W203Y
F223M、F223L、F223W、F223V、F223H、F223G、F223A
R238H、R238S
F251N、F251C、F251M、F251R、F251S、F251A、F251T、F251L、F251P、F251G、F251V、F251Q
V252L、V252T、V252C
N253T、N253V、N253K、N253C、N253R
Y256L、Y256V、Y256I
G257A、G257C
W258Y、W258F、W258N
T273N
G275C、G275S、G275V、G275K、G275I、G275F、G275H、G275R、G275L、G275P、G275Q、G275Y、G275N、G275M、G275T
N276G、N276M、N276Q、N276H
H277S、H277Q、H277C、H277E、H277K、H277D、H277I、H277R、H277M、H277P、H277L、H277W、H277V、H277Y、H277G、H277F、H277T
Y278P、Y278D
M288Q、M288T
V290M、V290A、V290S、V290N
Y291T、Y291E、Y291G
W298F、W298Y、W298I、W298L、W298M
S299P
Y302L、Y302H、Y302M、Y302V、Y302C、Y302T、Y302P、Y302S、Y302W
F305H、F305Y
【0113】
特に好ましいアミノ酸置換として、脱アミド活性/トランスグルタミナーゼ活性の値が10以上である、下記のアミノ酸置換を特定した。
S61Y、S61D、S61I、S61L、S61N、S61E、S61M、S61F、S61W、S61Q、S61P、S61H、S61K
Y62P
G63D、G63Q、G63Y、G63R、G63K、G63H、G63P、G63M、G63N、G63C、G63F、G63L、G63W、G63T、G63V、G63S
V65T、V65K
G66K
T68P、T68H
W69D、W69P
F85H、F85N
F117G、F117T、F117N
Y198S、Y198M、Y198I
S199P
K200M、K200I、K200R、K200L、K200V
H201M、H201L、H201Q
F202V、F202C
W203Y
F223W、F223V、F223H、F223G、F223A
F251L、F251P、F251G、F251V、F251Q
N253T、N253V、N253K、N253C、N253R
Y256L、Y256V、Y256I
G257C
W258N
G275V、G275K、G275I、G275F、G275H、G275R、G275L、G275P、G275Q、G275Y、G275N、G275M、G275T
N276G、N276M、N276Q、N276H
H277S、H277Q、H277C、H277E、H277K、H277D、H277I、H277R、H277M、H277P、H277L、H277W、H277V、H277Y、H277G、H277F、H277T
Y278P、Y278D
M288T
V290S、V290N
Y291G
W298Y、W298I、W298L、W298M
F305Y
【産業上の利用可能性】
【0114】
本発明の改変型トランスグルタミナーゼは実用上重要な特性が改善しており、産業的価値が高い。従って、既存の用途での利用はもとより、新たな用途への適用も期待される。
【0115】
この発明は、上記発明の実施の形態及び実施例の説明に何ら限定されるものではない。特許請求の範囲の記載を逸脱せず、当業者が容易に想到できる範囲で種々の変形態様もこの発明に含まれる。本明細書の中で明示した論文、公開特許公報、及び特許公報などの内容は、その全ての内容を援用によって引用することとする。
【0116】
配列番号2:人工配列の説明:R26N変異体
配列番号3:人工配列の説明:R26Y変異体
配列番号4:人工配列の説明:R26S変異体
配列番号5:人工配列の説明:E28N変異体
配列番号6:人工配列の説明:E28G変異体
配列番号7:人工配列の説明:E28F変異体
配列番号8:人工配列の説明:E28Y変異体
配列番号9:人工配列の説明:E58R変異体
配列番号10:人工配列の説明:E58L変異体
配列番号18:人工配列の説明:R26N変異体
配列番号19:人工配列の説明:R26Y変異体
配列番号20:人工配列の説明:R26S変異体
配列番号21:人工配列の説明:E28N変異体
配列番号22:人工配列の説明:E28G変異体
配列番号23:人工配列の説明:E28F変異体
配列番号24:人工配列の説明:E28Y変異体
配列番号25:人工配列の説明:E58R変異体
配列番号26:人工配列の説明:E58L変異体
【配列表】