(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-18
(45)【発行日】2024-11-26
(54)【発明の名称】ラップフィルム
(51)【国際特許分類】
B65D 65/40 20060101AFI20241119BHJP
B32B 27/28 20060101ALI20241119BHJP
【FI】
B65D65/40 D
B32B27/28 101
(21)【出願番号】P 2023221507
(22)【出願日】2023-12-27
【審査請求日】2023-12-27
(32)【優先日】2023-10-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(73)【特許権者】
【識別番号】501296612
【氏名又は名称】南亞塑膠工業股▲分▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】NAN YA PLASTICS CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】廖 ▲徳▼超
(72)【発明者】
【氏名】袁 ▲敬▼堯
(72)【発明者】
【氏名】王 誌鋒
【審査官】宮崎 基樹
(56)【参考文献】
【文献】特開平6-106668(JP,A)
【文献】特開2014-148346(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0034928(US,A1)
【文献】特開2001-240114(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 65/40
B32B 27/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
断面構造において、内層部と、前記内層部を完全に覆う表層部とを含むラップフィルムであって、
前記内層部は、前記内層部の総重量を100重量%として、エチレンエラストマー40重量%~60重量%と、プロピレンランダム共重合体35重量%~55重量%と、水素化石油樹脂1重量%~10重量%と、を含み、
前記表層部は、エチレン酢酸ビニルを含むことを特徴とする、ラップフィルム。
【請求項2】
前記内層部に含まれた前記エチレンエラストマー、前記プロピレンランダム共重合体及び前記水素化石油樹脂は、連続相となるように均一に混合されてなる、請求項1に記載のラップフィルム。
【請求項3】
前記プロピレンランダム共重合体の融点は130℃~150℃である、請求項1に記載のラップフィルム。
【請求項4】
前記プロピレンランダム共重合体のメルトインデックスは1g/10mm~10g/10mmである、請求項1に記載のラップフィルム。
【請求項5】
前記プロピレンランダム共重合体は、プロピレンモノマーとエチレンモノマーとの共重合で合成されてなる、請求項1に記載のラップフィルム。
【請求項6】
前記水素化石油樹脂は、炭素数が5であるモノマーで重合された水素化石油樹脂、もしくは炭素数が9であるモノマーで重合された水素化石油樹脂である、請求項1に記載のラップフィルム。
【請求項7】
前記内層部は、前記内層部の総重量を100重量%として、防曇剤4重量%~8重量%を更に含む、請求項1に記載のラップフィルム。
【請求項8】
前記表層部は、前記表層部の総重量を100重量%として、防曇剤2重量%~5重量%を更に含む、請求項1に記載のラップフィルム。
【請求項9】
前記ラップフィルムの総厚みを100%として、前記内層部は、前記ラップフィルムの総厚みの50%~70%を占める、請求項1に記載のラップフィルム。
【請求項10】
ヤング率は3.5MPa~5.6MPaである、請求項1に記載のラップフィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラップフィルムに関し、特に、全自動包装機に適用するラップフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
他の高分子材料を採用したラップフィルムに比べて、ポリ塩化ビニル(polyvinyl chloride,PVC)ラップフィルムは優れた引張特性を備えるため、全自動包装機に広くに応用することができる。しかしながら、ポリ塩化ビニルラップフィルムには環境に影響を与えやすい塩素成分が含まれている。
【0003】
環境汚染を避けるため、各国が相次いで対応する政策を提案している。例えば、オーストラリアは2025年にポリ塩化ビニルラップフィルムを禁止する予定である。残念ながら、現在市販されている非PVC材料のラップフィルム(例えば、ポリエチレンラップフィルムなど)は塩素を含んでいないが、全自動包装機に応用することができない。
【0004】
ポリエチレンラップフィルムを例として、ポリエチレンの結晶性が高く、延伸された後に結晶変形が発生することがある。ラップフィルムが全自動包装機を介して延伸された後に、ラップフィルムの表面に横ストライプや明らかなシワがでることがある。このように、製品の包装外観が不良となり、消費者に受け入れられない。
【0005】
故に、材料の改良により、ポリエチレンラップフィルムの引張特性を向上して、ポリ塩化ビニルラップフィルム代わりとして用いられることは、本事業にとって重要な課題となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする技術の課題は、従来技術の不足に対し、ラップフィルムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の技術的課題を解決するために、本発明が採用する一つの技術的手段は、ラップフィルムを提供する。ラップフィルムの断面構造において、ラップフィルムは内層部と、内層部を完全に覆う表層部とを含む。内層部は、内層部の総重量を100重量%として、エチレンエラストマー40重量%~60重量%と、プロピレンランダム共重合体35重量%~55重量%と、水素化石油樹脂1重量%~10重量%と、を含む。表層部は、エチレン酢酸ビニルを含む。
【0008】
一つの実施形態において、内層部に含まれたエチレンエラストマー、プロピレンランダム共重合体及び水素化石油樹脂は、連続相となるように均一に混合されてなる。
【0009】
一つの実施形態において、プロピレンランダム共重合体の融点は130℃~150℃である。
【0010】
一つの実施形態において、プロピレンランダム共重合体のメルトインデックスは1g/10mm~10g/10mmである。
【0011】
一つの実施形態において、プロピレンランダム共重合体は、プロピレンモノマーとエチレンモノマーとの共重合で合成されてなる。
【0012】
一つの実施形態において、水素化石油樹脂は、炭素数が5であるモノマーで重合された水素化石油樹脂、もしくは炭素数が9であるモノマーで重合された水素化石油樹脂である。
【0013】
一つの実施形態において、内層部は、内層部の総重量を100重量%として、防曇剤4重量%~8重量%を更に含む。
【0014】
一つの実施形態において、表層部は、表層部の総重量を100重量%として、防曇剤2重量%~5重量%を更に含む。
【0015】
一つの実施形態において、ラップフィルムの総厚みを100%として、内層部は、ラップフィルムの総厚みの50%~70%を占める。
【0016】
一つの実施形態において、ラップフィルムのヤング率は3.5MPa~5.6MPaである。
【発明の効果】
【0017】
本発明の有利な効果として、本発明に係るラップフィルムは、「内層部は、内層部の総重量を100重量%として、エチレンエラストマー40重量%~60重量%と、プロピレンランダム共重合体35重量%~55重量%と、水素化石油樹脂1重量%~10重量%と、を含む」といった技術的特徴によって、ラップフィルムの引張特性を向上させる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明に係るラップフィルムの立体図である。
【
図2】
図1におけるII-IIの断面の断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の特徴及び技術内容がより一層分かるように、以下の本発明に関する詳細な説明と添付図面を参照されたい。しかし、提供される添付図面は参考と説明のために提供するものに過ぎず、本発明の請求の範囲を制限するためのものではない。
【0020】
以下、所定の具体的な実施態様によって本発明の実施形態に係る「ラップフィルム」を説明し、当業者は、本明細書に開示された内容に基づいて本発明の利点と効果を理解することができる。本発明は、他の異なる具体的な実施態様によって実行または適用でき、本明細書における各細部についても、異なる観点と用途に基づいて、本発明の構想から逸脱しない限り、各種の修正と変更を行うことができる。また、事前に説明するように、本発明の添付図面は、簡単な模式的説明であり、実際のサイズに基づいて描かれたものではない。以下の実施形態に基づいて本発明に係る技術内容を更に詳細に説明するが、開示される内容によって本発明の保護範囲を制限することはない。また、本明細書において使用される「または」という用語は、実際の状況に応じて、関連して挙げられる項目におけるいずれか1つまたは複数の組み合わせを含むことがある。
【0021】
ポリエチレンラップフィルムの伸び性及び延伸外観が不良である問題を解決するために、本発明において、良好な伸び性及び良好な延伸外観(即ち、適切な引張特性)を備え、全自動包装機に応用することができる、ラップフィルムを提供する。よって、本発明に係るラップフィルムは、市販のポリ塩化ビニルラップフィルムの代わりとして用いられる。
【0022】
一般的に、引張特性とヤング率とは正比例をなす。よって、本明細書において、ヤング率(Young’s modulus)でラップフィルムの引張特性を量化する。具体的に説明すると、ラップフィルムのヤング率は、ASTM D638の国際規格の測定方法で測定され、本発明に係るラップフィルムのヤング率は、3.5MPa~5.6MPaに到達することができる。
【0023】
本発明に係るラップフィルムは、適切な引張特性を備えた上で、低いヘイズ値を維持することができ、引張特性の変化によってラップフィルムの透明度に影響しない。具体的に説明すると、ラップフィルムのヘイズ値は5%未満であってもよく、好ましくは、ラップフィルムのヘイズ値は2%未満であってもよい。
【0024】
図1及び
図2に示すように、本発明に係るラップフィルムZの断面構造において、ラップフィルムZは、内層部1と、内層部1を完全に覆う表層部2とを含む。
【0025】
製品の外観から見れば、内層部1及び表層部2が一体成型されているが、それらに含まれた成分を分析すると、ラップフィルムZを、内層部1と表層部2とに分けられる。
【0026】
例えば、ラップフィルムZは、三層フィルム構造を積層することによって形成されてもよい。三層フィルム構造は、2つの表層フィルムと、2つの表層フィルムの間にある内層フィルムと、を含む。積層した後に、内層フィルムで内層部1として形成され、2つの表層フィルムで、内層部1を覆う表層部2として形成されるが、本発明はこれに制限されるものではない。
【0027】
内層部1及び表層部2の成分組成を調整することによって、本発明に係るラップフィルムZは、通常のラップフィルムに近い機能特性を有し、それによって、本発明に係るラップフィルムZは適切な引張特性を備えて、全自動包装機に応用することが可能となり、延伸の過程において横ストライプを生じることがない。
【0028】
即ち、材料に基づいてラップフィルムZを内層部1と表層部2に分けることによって、ラップフィルムZが元の機能特性を維持する前提で、市販のポリ塩化ビニルラップフィルムの代わりとして用いられる。
【0029】
本発明に係るラップフィルムは特に、ポリエチレンラップフィルムに対して改良を行った。従来のポリエチレンラップフィルムの延伸された後に外観が不良である問題を改良するために、本発明では、内層部1の材料の一つとして、エチレンエラストマーを採用する。
【0030】
エチレンエラストマーには、ソフトセグメント部分及びハードセグメント部分を含む。よって、エチレンポリマーに比べて、エチレンエラストマーの方は、ラップフィルムZにより優れた引張特性及び弾性回復力を与えられる。
【0031】
しかしながら、エチレンエラストマー自体が硬いため、エチレンエラストマーの含有量が高すぎると、フィルム(15μm以下のフィルム)を製造する過程において、フィルムが破りやすくなる。よって、ラップフィルムZの内層部1において、内層部の総重量を100重量%として、エチレンエラストマーの含有量は65重量%未満にする必要があり、好ましくは、エチレンエラストマーの含有量は60重量%以下である。
【0032】
具体的に説明すると、ラップフィルムZの内層部1において、エチレンエラストマーの含有量は40重量%~60重量%である。好ましくは、エチレンエラストマーの含有量は40重量%~50重量%である。例えば、エチレンエラストマーの含有量は、42重量%、44重量%、46重量%又は48重量%であってもよい。
【0033】
また、ラップフィルムZの引張特性とテクスチャとの間にバランスを取るために、エチレンエラストマーのメルトインデックス(melt flow index,MI)は、0.5g/10mm~10g/10mmであり、1g/10mm~3g/10mmであることが好ましい。
【0034】
上述したように、エチレンエラストマーの含有量には上限が存在するため、エチレンエラストマーとの単一の材料でフィルムを製造することができない。よって、本発明において、プロピレンランダム共重合体と、エチレンエラストマーとを混合することによって、内層部1の材料として用いられる。
【0035】
プロピレンランダム共重合体の添加によって、エチレンエラストマーで向上された引張特性を維持した上で、内層部1の材料が硬くなってもろくならないので、成膜過程におけるフィルムが破裂する問題を防止することができる。
【0036】
他のポリマー構造(例えば、交互共重合体又はブロック共重合体)に比べて、ランダム共重合体は比較的に多い非晶相を有するため、結晶変形の発生を回避することができる。よって、プロピレンランダム共重合体の添加によって、横ストライプの発生を回避することができる。
【0037】
具体的に説明すると、ラップフィルムの内層部1において、内層部の総重量を100重量%として、プロピレンランダム共重合体の含有量は、35重量%~55重量%であり、40重量%~50重量%であることが好ましい。例えば、プロピレンランダム共重合体の含有量は、42重量%、44重量%、46重量%又は48重量%であってもよい。
【0038】
一つの好ましい実施形態において、プロピレンランダム共重合体は、エチレンモノマー及びプロピレンモノマーから合成される。プロピレンランダム共重合体の一部は、エチレンモノマーから合成されるため、エチレンエラストマーとの相溶性が比較的に優れており、ラップフィルムの引張した後に横ストライプが生じる可能性を低減させることができる。
【0039】
プロピレンランダム共重合体を合成するためのモノマーの総重量を100重量%として、エチレンモノマーの含有量は1重量%~5重量%であり、プロピレンモノマーの含有量は95重量%~99重量%である。適量のエチレンモノマーによって、プロピレンランダム共重合体とエチレンエラストマーとの相溶性を向上させることができるが、エチレンモノマーの含有量が高すぎると、ラップフィルムのテクスチャがラップの質感が柔らかくなる。
【0040】
更に、本発明において、プロピレンランダム共重合体の融点が150℃未満となるように制御される。好ましくは、プロピレンランダム共重合体の融点は、130℃~150℃である。より好ましくは、プロピレンランダム共重合体の融点は、130℃~135℃である。
【0041】
通常、融点と、結晶性とは正比例をなす。材料の結晶性が高くなると、ラップフィルムZが高強度で引っ張ったとき、横ストライプが形成されることがあり、包装に悪影響を与える。プロピレンランダム共重合体の融点を調整することによって、ラップフィルムZの引張特性とテクスチャとのバランスを取れる。
【0042】
また、融点以外に、プロピレンランダム共重合体のメルトインデックス(melt flow index,MI)を1g/10mm~10g/10mmに制御してもよい。プロピレンランダム共重合体のメルトインデックスは、材料の流動性に関連し、前記範囲を制御することによって、フィルムの製造に有利となる。
【0043】
ラップフィルムZ弾性回復力と、ヤング率と、適切な柔らかさと硬さと、適切な結晶性とのバランスを取るために、本発明において、エチレンエラストマーとプロピレンランダム共重合体との重量比を0.9~1.1に制御することによって、エチレンエラストマーとプロピレンランダム共重合体の相補的な特性を確保する。エチレンエラストマーの含有量が高すぎると、ラップフィルムのテクスチャが硬く過ぎて成膜に不利となる。ランダム共重合体の含有量が高すぎると、ラップフィルムの引張特性が低下となり、全自動包装機に応用することができなくなる。
【0044】
また、内層部1には、水素化石油樹脂を更に添加してもよい。水素化石油樹脂の添加によって、ラップフィルムZの弾性回復力を向上させると共に、エチレンエラストマーとプロピレンランダム共重合体との相溶性を向上させることができる。相溶性が向上した後に、ラップフィルムを引張るときに、横ストライプが形成されにくくなる。また、相溶性を向上した後に、ラップフィルムを一定の透明性を維持して、ラップフィルムのヘイズ値が2%未満である効果を果たせる。
【0045】
一定時間用いられた後に、水素添加石油樹脂がラップフィルムZの表面に移行することがある。そのため、水素化石油樹脂の添加によって、ラップフィルムZの表面密着性を向上させる効果もある。
【0046】
しかしながら、水素化石油樹脂の添加量が多すぎると、材料の粘度が高くなり、加工製膜に不利となる。よって、ラップフィルムZの内層部1において、水素化石油樹脂の含有量は、10重量%未満にする必要である。
【0047】
具体的に説明すると、ラップフィルムZの内層部1において、内層部の総重量を100重量%として、水素化石油樹脂の含有量は1重量%~10重量%であり、3重量%~7重量%であることが好ましい。例えば、水素化石油樹脂の含有量は、4重量%、5重量%又は6重量%であってもよい。
【0048】
一つの実施形態において、水素化石油樹脂は、炭素数が5であるモノマーで重合された水素化石油樹脂、もしくは炭素数が9であるモノマーで重合された水素化石油樹脂である。
【0049】
例えば、石油樹脂は例えば、ピペリレン水素化樹脂又はジシクロペンタジエン(DCPD)水素化樹脂であってもよく、エチレン分解の副生成物であるC9留分を重合・水素化して得られる水性白色熱可塑性樹脂であってもよいが、本発明はこれに制限されるものではない。
【0050】
特筆すべきことは、前記エチレンエラストマーと、プロピレンランダム共重合体と、水素化石油樹脂と、を均一に混合した後に、内層部1に均一な連続相が形成され、それによって、内層部1に優れた引張特性を与える。よって、本発明に係るラップフィルムZは、従来のポリ塩化ビニルラップフィルムの代わりとして用いられ、全自動包装機に応用することができる。
【0051】
内層部1は、ラップフィルムZにおいて主に支持する役割を果たせるため、ラップフィルムZ全体において、内層部1の厚みの占める比が多い。ラップフィルムZの総厚みを100%として、内層部1の厚みは50%~70%であり、(内層部1の上方及び下方にある)表層部2の総厚みは30%~50%である。
【0052】
一つの示範例において、ラップフィルムZの総厚みは、8μm~12μmであり、9μm~11μmであることが好ましい。即ち、内層部1の厚みは、4μm~8.4μmであってもよく,表層部2の総厚みは2.4μm~6μmであってもよい。
【0053】
ラップフィルムZの表層部2は、主な成分としてエチレン酢酸ビニル(ethylene-vinyl acetate,EVA)を用いる。エチレン酢酸ビニルは、ラップフィルムZの表面にわずかな接着力を与えて、包装材としての包装性を向上することができる。一つの示範例において、エチレン酢酸ビニルのメルトインデックスは、1g/10mm~5g/10mmである。
【0054】
用途の要求を満たすため、ラップフィルムZに良好な透明性、防曇性及び包装性(以下、機能特性とも呼ばれる)を与えるように、ラップフィルムZに機能性助剤を添加してもよい。
【0055】
一つの示範例において、ラップフィルムZの内層部1及び表層部2はいずれも、ラップフィルムZの低温環境(冷蔵状態)で曇が生じないように、防曇剤を含んでもよい。ラップフィルムZの総重量を100重量%として、ラップフィルムZは、防曇剤3重量%~5重量%を含む。
【0056】
好ましくは、内層部1及び表層部2はいずれも防曇剤を含む。長期間使用すると防曇剤がラップフィルムの表面に移行して、防曇効果が失われる。よって、内層部1及び表層部2はいずれも防曇剤を含むと、表層部2の防曇剤がラップフィルムの表面に移行したとしても、内層部1の防曇剤があるため、ラップフィルムZの防曇効果を延長させることができる。
【0057】
内層部1及び表層部2に添加された防曇剤は同一であっても異なってもよい。
【0058】
例えば、内層部1に添加された防曇剤は、グリセリド化合物であってもよく、グリセリド化合物として、モノオレイン酸ソルビタン(sorbitan monooleate)であってもよい。
【0059】
好ましくは、グリセリド化合物の分子量は、350g/mol~450g/molであってもよく、例えば、グリセリド化合物の分子量は、375g/mol、400g/mol又は425g/molであってもよい。グリセリド化合物の分子量を制御することによって、グリセリド化合物のラップフィルムZの表面に移行する時間を延長させることができる。
【0060】
表層部2に添加された防曇剤は、グリセリド化合物又はエーテル化合物であってもよい。グリセリド化合物の種類及び特性は上述した通りであるため、ここで重複に説明しない。エーテル化合物の分子量は、150g/mol~250g/molであり、例えば、エーテル化合物の分子量は、175g/mol、200g/mol又は225g/molであってもよい。防曇剤の分子量を制御することによって、防曇剤のラップフィルムZの表面へ移行する時間を延長させることができる。
【0061】
位置の相違によって、内層部1にある防曇剤は、表層部2にある防曇剤に比べて、ラップフィルムZに比較的に長い時間が存在することが可能である。また、分子量を制御することによって、内層部1にある防曇剤及び表層部2にある防曇剤は共に、ラップフィルムZの防曇性を維持することができる。
【0062】
この示範例において、表層部2にある防曇剤は既にラップフィルムZの表面に移行したとしても、ラップフィルムZは依然として内層部1の防曇剤を含む。そのため、防曇剤をラップフィルムZの異なる部分(内層部1及び表層部2)に添加することによって、ラップフィルムZの防曇効果を延長させることができる。
【0063】
一つの示範例において、内層部1の総重量を100重量%として、内層部1での防曇剤の含有量は、4重量%~8重量%であり、例えば、5重量%、6重量%又は7重量%であってよい。表層部2の総重量を100重量%として、表層部2での防曇剤の含有量は、2重量%~5重量%であり,例えば、3重量%又は4重量%であってもよい。
【0064】
[実験データ]
本発明のラップフィルムに良好な引張特性を備え、全自動包装機に応用することができ、且つ延伸されることによる横ストライプが生じないことを証明するために、表1の組成比に基づいて、キャスティング押し出しによって、実施例1~3及び比較例1~3のラップフィルムを製造し、更に、比較例4として示範のポリエチレンラップフィルム(品番:Miaojieプラスチックラップ)を採用した。
【0065】
表1において、台湾プラスチック製のプロピレンランダム共重合体(品番:5050)と、ダウ(DOW)製のエチレンエラストマー(品番:ENGAGE(登録商標)8100)と、日本出光製の水素化石油樹脂(品番:P-125)と、理研(RIKEN)製のグリセリド化合物(品番:EAR-770)と、日本東ソー製のエチレン酢酸ビニル(品番:630)とを用いた。補充に説明すると、内層部及び表層部に用いた防曇剤は同一であった。
【0066】
実施例1~3及び比較例1~3において、ロスインウェイト式供給装置で(lost in weight feeder)特定の含有量(表1に示すように)に基づいてエチレンエラストマー、プロピレンランダム共重合体、水素化石油樹脂及び防曇剤を量って、ミキサーで溶融混合させて内層材料とした。また、ロスインウェイト式供給装置で特定の含有量(表1に示すように)に基づいてエチレン酢酸ビニル及び防曇剤を量って、ミキサーで溶融混合させて表層材料とした。
【0067】
次に、前記内層材料及び表層材料をそれぞれ、一軸スクリュー押し出しで溶融させて、Tダイ成形金型を通過した後に内層フィルム及び表層フィルムを形成した。内層フィルム及び表層フィルムの厚みを測定して、表2に示す通りである。
【0068】
内層フィルム及び表層フィルムを製造した後に、内層フィルムを二層の表層フィルムの間に設置されるような三層フィルム構造を形成して、共押出しで積層してラップフィルムZを製造した。具体的に説明すると、共押出された内層フィルム及び二層の表層フィルムは、内層フィルムが二層の表層フィルムで覆われるように一体化される。ここで、内層フィルムで内層部1を構成し、二層の外層フィルムで表層部2を構成した。
【0069】
実施例1~3及び比較例1~4に係るラップフィルムの物理特性を測定し、その結果は表2に示すとおりである。
【0070】
表2において、ラップフィルムのヤング率(Young’s modulus)は、ASTM-D638の標準測定方法に基づいて測定した。
【0071】
ラップフィルムの自動包装性は、寺岡精工製の包装機(品番:AW4600)で包装を行った後に評価した。包装後の外観がスムーズで、横ストライプや明らかなシワがない場合は「○」と表示された。包装後の外観に横ストライプや明らかなシワがない場合は「×」と表示された。
【0072】
ラップフィルムの防曇性について、100mlの水を250mlのビーカーに量った。ラップフィルムをビーカーに置き、4℃の冷蔵庫に10分間置き、包装袋表面の水滴の付着状況を観察した。表1において、水気が包装袋の表面に水膜が形成され、曇が生じない場合「〇」で表された。水気が包装袋の表面に雫が形成され、透視できない場合「×」で表された。
【0073】
【0074】
【0075】
表1及び表2の結果によれば、本発明に係るラップフィルムは、適切なヤング率を備える。ラップフィルムのマシン方向(machine direction,MD)のヤング率は、4.8MPa~5.6MPaであり、横方向(cross direction,CD)のヤング率は、3.5MPa~4.5MPaである。好ましくは、ラップフィルムのマシン方向(machine direction,MD)のヤング率は、4.9MPa~5.5MPaであり、横方向(cross direction,CD)のヤング率は、3.8MPa~4.2MPaである。
【0076】
比較例1によれば、水素化石油樹脂の添加によって、ラップフィルムが延伸される時に横ストライプや明らかなシワがでることを回避することができる。比較例2、3によれば、内層部及び表層部に同時に防曇剤を添加することによって、優れた防曇効果を達成することができる。比較例4によれば、本発明に係るラップフィルムは、従来のポリエチレンラップフィルムの延伸されるときに横ストライプや明らかなシワが出る問題を解決することができる。
【0077】
[実施形態による有利な効果]
本発明の有利な効果として、本発明に係るラップフィルムは、「内層部は、内層部の総重量を100重量%として、エチレンエラストマー40重量%~60重量%と、プロピレンランダム共重合体35重量%~55重量%と、水素化石油樹脂1重量%~10重量%と、を含む」といった技術的特徴によって、ラップフィルムの引張特性を向上させる。
【0078】
更に説明すると、内層材料として、エチレンエラストマー、プロピレンランダム共重合体及び水素化石油樹脂が均一に混合されてなるものを用いると、本発明に係るラップフィルムを適切な引張特性に与えることができ、全自動包装機で延伸されたとしても良好な外観を備える。よって、従来のポリ塩化ビニルラップフィルムの代わりとして用いられる。
【0079】
本発明では、内層材料の総合特性を最適化するように、エチレンエラストマー、プロピレンランダム共重合体及び水素化石油樹脂をそれぞれ制御する。例えば、エチレンエラストマーの含有量及び重量平均分子量を制御すること、プロピレンランダム共重合体を合成するためのモノマー、プロピレンランダム共重合体の融点及びメルトインデックスを制御すること、及び水素化石油樹脂を合成するためのモノマーを制御することが挙げられる。
【0080】
また、本発明では、内層部及び表層部の両方に防曇剤を含んでいる。特定の防曇剤を用いることによって、ラップフィルムのヘイズ値が増加しない前提で防曇効果を向上することができる。また、ラップフィルムに防曇効果が長く持続させるように、防曇剤の分子量の範囲を更に制御することができる。
【0081】
以上に開示された内容は、ただ本発明の好ましい実行可能な実施態様であり、本発明の請求の範囲はこれに制限されない。そのため、本発明の明細書及び図面内容を利用して成される全ての等価な技術変更は、いずれも本発明の請求の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0082】
Z...ラップフィルム
1...内層部
2...表層部
【要約】
【課題】本発明は、ラップフィルムを提供する。
【解決手段】ラップフィルムは、ラップフィルムの断面構造において、内層部と、内層部を完全に覆う表層部とを含む。内層部は、内層部の総重量を100重量%として、エチレンエラストマー40重量%~60重量%と、プロピレンランダム共重合体35重量%~55重量%と、水素化石油樹脂1重量%~10重量%と、を含む。表層部は、エチレン酢酸ビニルを含む。
【選択図】
図1