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特許7590542樹脂組成物、その製造方法、該樹脂組成物を含むゴム組成物、それを含むガスバリアフィルム、及び該ガスバリアフィルムを含むタイヤ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-18
(45)【発行日】2024-11-26
(54)【発明の名称】樹脂組成物、その製造方法、該樹脂組成物を含むゴム組成物、それを含むガスバリアフィルム、及び該ガスバリアフィルムを含むタイヤ
(51)【国際特許分類】
   C08L 57/02 20060101AFI20241119BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20241119BHJP
   B60C 5/14 20060101ALI20241119BHJP
   B60C 1/00 20060101ALI20241119BHJP
【FI】
C08L57/02
C08L101/00
B60C5/14 A
B60C1/00 Z
B60C5/14 Z
【請求項の数】 21
(21)【出願番号】P 2023503458
(86)(22)【出願日】2021-10-28
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-10
(86)【国際出願番号】 KR2021015344
(87)【国際公開番号】W WO2022108169
(87)【国際公開日】2022-05-27
【審査請求日】2023-01-18
(31)【優先権主張番号】10-2020-0156932
(32)【優先日】2020-11-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】518215493
【氏名又は名称】コーロン インダストリーズ インク
(74)【代理人】
【識別番号】100121382
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 託嗣
(72)【発明者】
【氏名】イ,ジュン ソク
(72)【発明者】
【氏名】ジョン,ヘ ミン
(72)【発明者】
【氏名】パク,ス ヨン
【審査官】菅原 愛
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-048723(JP,A)
【文献】特開平05-214170(JP,A)
【文献】特開2013-231196(JP,A)
【文献】特開2019-218416(JP,A)
【文献】特開2009-256504(JP,A)
【文献】特表2017-533296(JP,A)
【文献】国際公開第2014/125921(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/14
B60C 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
混合留分と環状ジオレフィン単量体との共重合体を含むベース樹脂と、
少なくとも一部が水素化または非水素化された石油樹脂の両端のうちの、少なくとも一末端に、1つ以上のチオール基(-SH)を含む有機メルカプタン系分子量調節剤が結合された構造を有する改質された石油樹脂を含む添加剤と、を含み、
前記ベース樹脂と前記添加剤との重量比は、9:1ないし1:1である、樹脂組成物。
【請求項2】
前記ベース樹脂は、
重量平均分子量(Mw)が200ないし2,000であり、
軟化点が80℃ないし150℃であり、
160℃で測定された粘度が250ないし2,000cpsであり、
ガラス転移温度が30℃ないし100℃である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前記分子量調節剤は、エチルメルカプタン、ブチルメルカプタン、ヘキシルメルカプタン、ドデシルメルカプタン、フェニルメルカプタン、ベンジルメルカプタン、メルカプトエタノール、チオールグリコール酸、メルカプトプロピオン酸、ペンタエリトリトールテトラキス(3-メルカプト)プロピノ-ネート、またはそれらの組み合わせを含む、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
前記添加剤は、
数平均分子量(Mn)が200ないし500であり、
ガラス転移温度が-25ないし-15℃である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
前記添加剤は、粘度調節剤をさらに含み、
前記粘度調節剤は、25℃で測定された粘度が、20ないし500cpsである低粘度樹脂を含む、請求項に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
前記低粘度樹脂は、水添ジシクロペンタジエン(DCPD)・C共重合体樹脂、水添ジシクロペンタジエン(DCPD)、またはそれらの組み合わせを含む、請求項に記載の樹脂組成物。
【請求項7】
前記添加剤は、60℃で測定された粘度が2,000ないし4,000cpsである、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項8】
前記樹脂組成物は、
数平均分子量(Mn)が100ないし550であり、
ガラス転移温度が0℃ないし60℃であり、
軟化点が50℃ないし90℃である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項9】
前記樹脂組成物は、芳香族性が5%ないし35%である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項10】
原料ゴムと、
請求項1ないしのいずれか1項に記載の樹脂組成物と、を含み、
前記樹脂組成物は、原料ゴム100重量部を基準に、1ないし50重量部で含まれる、ゴム組成物。
【請求項11】
前記ゴム組成物は、プロセスオイルを含まない、請求項10に記載のゴム組成物。
【請求項12】
前記ゴム組成物は、原料ゴム100重量部を基準に、均質配合剤1ないし8重量部、補強剤20ないし80重量部、及び加硫助剤0.1ないし10重量部をさらに含む、請求項10に記載のゴム組成物。
【請求項13】
前記ゴム組成物は、原料ゴム100重量部を基準に、硫黄0.1ないし2重量部、及び加硫促進剤0.5ないし5重量部をさらに含む、請求項12に記載のゴム組成物。
【請求項14】
前記ゴム組成物は、ゴム試片で製造された後、KS M ISO2556の方法で測定されたガス透過度が150cm/(m・day・atm)以下であり、
ガラス転移温度(Tg)が-16℃以下である、請求項12に記載のゴム組成物。
【請求項15】
請求項10に記載のゴム組成物を含む、ガスバリアフィルム。
【請求項16】
請求項15に記載のガスバリアフィルムを含む、タイヤ。
【請求項17】
混合留分と環状ジオレフィン単量体との共重合体を含むベース樹脂と、少なくとも一部が水素化または非水素化された石油樹脂の両端のうちの少なくとも一末端に、1つ以上のチオール基(-SH)を含む有機メルカプタン系分子量調節剤が結合された構造を有する改質された石油樹脂を含む添加剤と、を100℃ないし180℃温度でブレンディングし、半固形状の樹脂を得る段階を含み、
前記ベース樹脂と前記添加剤との重量比は、9:1ないし1:1である、樹脂組成物の製造方法。
【請求項18】
前記添加剤は、粘度調節剤をさらに含み、
前記粘度調節剤は、25℃で測定された粘度が、20ないし500cpsである低粘度樹脂を含む、請求項17に記載の樹脂組成物の製造方法。
【請求項19】
前記添加剤は、少なくとも一部が、水素化または非水素化された石油樹脂1つ以上のチオール基(-SH)を含む有機メルカプタン系分子量調節剤、及び粘度調節剤を含む溶液に、重合触媒または/及び熱を加えて重合反応を遂行することで得られる、請求項18に記載の樹脂組成物の製造方法。
【請求項20】
前記重合触媒は、AlCl、BF、SnCl、TiCl、AgClO、IO、またはその組み合わせを含む、請求項19に記載の樹脂組成物の製造方法。
【請求項21】
前記熱を加えることは、230℃ないし280℃で行われる、請求項19に記載の樹脂組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規組成の樹脂組成物、その製造方法、前記樹脂組成物を含むゴム組成物、それを含むガスバリアフィルム、及び前記ガスバリアフィルムを含むタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
タイヤインナーライナは、タイヤ構造において、最も内側に位置するゴム層であり、タイヤ内の空気圧を維持し、耐屈曲性を有し、隣接する支持部(例:カーカス)に対する優れた接着性を有さなければならないのであり、そのうち、タイヤの耐空気圧を維持しながら、耐屈曲性の耐久性能を維持するためのタイヤインナーライナに関連する研究が持続的に行われているのである。
【0003】
これまでのところ、タイヤインナーライナの耐空気透過度を向上させるための技術として、ゴム層の厚みを増大させたり、ハロゲン化ブチルゴムの含量を増加させたりする方法が活用されている。しかしながら、インナーライナの厚みを増大させる場合、タイヤ全体の重量が増大することになり、燃費の低下が引き起こされる。また、耐空気透過度に優れるハロゲン化ブチルゴム含量を増加させたり、ハロゲン化ブチルゴムを原料ゴムとして、単独で使用したりする場合、タイヤの製造工程性が低下し、製造コストが上昇するという問題点が依然として存在する。
【0004】
そのような問題点を解決するために、ハロゲン化ブチルゴムを、天然ゴムと共に配合し、プロセスオイル、加工助剤、フィラー(有機フィラー及び/または無機フィラー)を添加し、インナーライナ用ゴム組成物を製造する技術が研究されてきた。しかしながら、ハロゲン化ブチルゴム以外の材料の配合により、ハロゲン化ブチルゴムの耐空気透過度が低下するという問題点が生じた。
【0005】
すなわち、製造工程性と耐空気透過度とは、トレードオフ(trade off)の関係にあり、それらを同時に向上させるための研究が持続的に行われているのである。
【0006】
従って、耐空気透過度及び製造工程性が向上されたインナーライナ用のゴム製造のための樹脂組成物に対する要求が存在する。
【0007】
また、ブチルゴムの単独配合が困難であるために、配合時、天然ゴムの比率を高め、その他の材料であるプロセスオイル、加工助剤、フィラ(有機フィラ及び無機フィラ)を使用し、インナーライナ用ゴムを配合する。ブチルゴムを除いた材料が入れば、耐空気透過度には、不利になってしまう。そのために、気体の透過度を低くするために、非極性でありながら、分子量が小さく、加工性にすぐれており、非結晶性で高粘度の半固形状炭化水素樹脂が、ポリマーの無定形領域に相溶され、膜を形成させる効果があり、インナーライナに適用することにより、加工性の向上と共に、耐空気透過度の改善が可能である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、ゴムの耐空気透過性及び製造工程性が向上された樹脂組成物、その製造方法、それを含むゴム組成物及びガスバリアフィルム、並びにそれを含むタイヤを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
一態様によれば、少なくとも一部が、水素化または非水素化された石油樹脂を含むベース樹脂と、少なくとも一部が、水素化または非水素化された石油樹脂の両端のうち少なくとも一末端に、分子量調節剤が結合された構造を有する改質された石油樹脂を含む添加剤と、を含む樹脂組成物が提供される。
【0010】
他の態様によれば、原料ゴムと前記樹脂組成物とを含み、前記樹脂組成物は、原料ゴム100重量部を基準に、1ないし50重量部で含まれるゴム組成物が提供される。
【0011】
さらに他の態様によれば、前記ゴム組成物を含むガスバリアフィルムが提供される。
【0012】
さらに他の態様によれば、前記ガスバリアフィルムを含むタイヤが提供される。
【0013】
さらに他の態様によれば、少なくとも一部が、水素化または非水素化された石油樹脂を含むベース樹脂と、少なくとも一部が、水素化または非水素化された石油樹脂の両端のうち少なくとも一末端に、分子量調節剤が結合された構造を有する改質された石油樹脂を含む添加剤と、を100℃ないし180℃温度でブレンディングし、半固形状の樹脂を得る段階を含む、樹脂組成物の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0014】
本発明の一具現例による樹脂組成物は、プロセスオイルの不在にもかかわらず、分子量調節剤でもって改質された石油樹脂を含む添加剤を含むことにより、原料配合工程中に原料分散を円滑にさせ、配合時間を短縮させることにより、経済的利点をもたらすだけではなく、前記樹脂組成物は、ゴムとの相溶性にすぐれ、それによって製造されたガスバリアフィルムは、向上された耐空気透過度を有する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】タイヤの基本的な構成を概略的に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下で説明される本創意的思想(present inventive concept)は、多様な変換を加えることができる、さまざまな実施例を有しうるが、特定実施例を図面に例示し、詳細な説明によって詳細に説明する。しかしながら、それらは、本創意的思想を、特定の実施形態について限定するものではなく、本創意的思想の技術範囲に含まれる全ての変換、均等物または代替物を含むと理解されなければならない。
【0017】
以下で使用される用語は、単に、特定実施例についての説明に使用されたものであり、本創意的思想を限定する意図ではない。単数の表現は、文脈上、明白に異なって意味しない限り、複数の表現を含む。以下において、「含む」または「有する」のような用語は、明細書上に記載された特徴、数、段階、動作、構成要素、部品、成分、材料、またはそれらの組み合わせが存在するということを示すものであり、1またはそれ以上の他の特徴、数、段階、動作、構成要素、部品、成分、材料、またはそれらの組み合わせの存在または付加の可能性を事前に排除するものではないと理解されなければならない。以下で使用される「/」は、状況により、「及び」と解釈されることがあり得、「または」と解釈されることがあり得る。
【0018】
図面において、さまざまな層及び領域を明確に表現するために、厚みは、拡大されたり縮小されたりして示されている。明細書全体を通じて、類似した部分については、同一図面符号を付した。明細書全体において、層、膜、領域、板などの部分が、他の部分の「上」または「上部」にあるとするとき、それは、他の部分の真上にある場合だけではなく、その中間に、さらに他の部分がある場合も含む。明細書全体において、第1、第2などの用語は、多様な構成要素についての説明に使用されうるが、該構成要素は、該用語によって限定されるものではない。該用語は、1つの構成要素を、他の構成要素から区別する目的のみに使用される。
【0019】
本明細書で使用される科学用語は、異なるように定義されない限り、本発明の技術分野に属する当業者が一般的に理解するところと同一に理解されうる。
【0020】
本明細書において、「石油樹脂」は、C単量体、C混合留分、C単量体、C混合留分、環状ジオレフィン単量体及び線状オレフィン単量体のうちの1つ以上が重合された重合体を含む。例えば、前記石油樹脂は、ホモポリマー、コポリマーなどを含む。前記ホモポリマー石油樹脂の例としては、C単量体が重合された重合体、C混合留分が重合された重合体、C単量体が重合された重合体、C混合留分が重合された重合体、環状ジオレフィン単量体が重合された重合体、線状オレフィン単量体が重合された重合体を挙げることができる。前記コポリマー石油樹脂の例としては、互いに異なる2種のC単量体が重合された共重合体、互いに異なる2種のC単量体が重合された共重合体、互いに異なる2種の環状ジオレフィン単量体が重合された共重合体、互いに異なる2種の線状オレフィン単量体が重合された共重合体、C留分とC単量体との共重合体、C留分とC単量体との共重合体、C留分とC単量体との共重合体、C単量体とC単量体との共重合体、C留分とC単量体との共重合体、C留分と線状オレフィン単量体との共重合体、C留分と線状オレフィン単量体との共重合体。C留分と環状ジオレフィン単量体との共重合体、C留分と環状ジオレフィン単量体との共重合体、C単量体と環状ジオレフィン単量体との共重合体、C単量体と線状オレフィン単量体との共重合体、環状ジオレフィン単量体と線状オレフィン単量体との共重合体を挙げることができる。
【0021】
本明細書において「水添石油樹脂」は、前述の石油樹脂におけるエチレンといった不飽和モイエティの少なくとも一部が、水素添加反応により、飽和炭化水素に改質された石油樹脂を意味する。
【0022】
本明細書において「C(混合)留分」は、ナフサの分解から誘導された脂肪族Cパラフィン及び脂肪族Cパラフィン、オレフィン、並びにジオレフィンを含む。例えば、C留分は、ペンテン、イソプレン、2-メチル-2-ブテン、2-メチル-2-ペンテン、シクロペンタジエン及びピペリレンを含むのでありうるが、それらに限定されるものではなく、C単量体のうちの2種以上の混合物をいずれも含む。また、前記C留分は、選択的にアルキル化されうる。
【0023】
本明細書において「C単量体」は、前述のC5(混合)留分に含まれた成分のうちのいずれか一つを指示する。
【0024】
本明細書において「C(混合)留分」は、本発明が属する技術分野で一般的に理解されるように、石油加工、例えば、分解から誘導された組成物であり、大気圧及び約100℃ないし300℃で沸騰する、C,C及び/またはC10のオレフィン種を含み、例えば、ビニルトルエン、α-メチルスチレン、スチレン、ジシクロペンタジエン、インデン、トランス-ベータ-メチルスチレン及びメチルインデンを含むのでありうるが、それらに限定されるものではなく、C単量体のうちの2種以上の混合物を全て含む。また、前記C留分は、選択的に、アルキル化されうる。例えば、本発明においてC留分は、ビニルトルエン、インデン、スチレン、ジシクロペンタジエン、及び、これら成分のアルキル化された誘導体、例えば、α-メチルスチレン、メチルインデンなどを含むのでありうる。
【0025】
本明細書において「C単量体」は、前述のC留分に含まれた成分のうちのいずれか一つを指示する。
【0026】
本明細書において「オレフィン」は、少なくとも1つのエチレン性不飽和基(C=C)結合を含む不飽和化合物を含む。例えば、該オレフィンは、線状オレフィン、環状オレフィン、α-オレフィンなどを含むのでありうるが、それらに限定されるものではない。
【0027】
本明細書において「環状ジオレフィン」は、2個のC=C結合を含む環状不飽和化合物を含む。例えば、該環状ジオレフィンは、ジシクロペンタジエン、トリシクロペンタジエンなどを含むのでありうるが、それらに限定されるものではない。
【0028】
以下においては、本願発明の樹脂組成物、それを含むゴム組成物及びガスバリアフィルム、前記ガスバリアフィルムを含むタイヤ、並びに前記樹脂組成物の製造方法について具体的に説明する。
【0029】
[樹脂組成物]
一態様による樹脂組成物は、少なくとも一部が、水素化または非水素化された石油樹脂を含むベース樹脂と、少なくとも一部が、水素化または非水素化された石油樹脂の両端のうちの少なくとも一末端に、分子量調節剤が結合された構造を有する改質された石油樹脂を含む添加剤と、を含む。
【0030】
前記ベース樹脂に前記添加剤を含むことにより、加工性が向上され、そこから製造されたガスバリアフィルムは、向上された耐空気透過度を有する。
【0031】
一具現例によれば、前記石油樹脂は、C混合留分由来の反復単位を少なくとも一つ含むのでありうる。例えば、前記石油樹脂は、C混合留分由来の反復単位によって構成されうる。
【0032】
一具現例によれば、前記樹脂組成物において、前記ベース樹脂と前記添加剤との重量比は、12:1ないし1:12でありうる。例えば、前記樹脂組成物において、前記ベース樹脂と前記添加剤との重量比は、11:1ないし1:11、10:1ないし1:10、または9:1ないし1:9でありうる。
【0033】
一具現例によれば、前記樹脂組成物において、前記ベース樹脂の含量は、前記添加剤の含量以上で含まれうる。例えば、前記樹脂組成物において、前記ベース樹脂と前記添加剤との重量比は、12:1ないし1:1でありうる。例えば、前記樹脂組成物において、前記ベース樹脂と前記添加剤との重量比は、11:1ないし1:1、10:1ないし1:1、または、9:1ないし1:1でありうる。
【0034】
前記ベース樹脂と前記添加剤との含量比を満足することにより、原料ゴムとの相溶性及び配合性にすぐれる樹脂組成物が得られ、タイヤインナーライナ用原料ゴムの無定形領域に相溶されるようにして膜を形成することにより、耐空気透過度が向上する。
【0035】
一具現例によれば、前記ベース樹脂は、重量平均分子量(Mw)が200ないし2,000であり、軟化点が80℃ないし150℃であり、160℃で測定された粘度が、250ないし2,000cpsであり、ガラス転移温度が、30℃ないし100℃でありうる。
【0036】
例えば、前記ベース樹脂は、重量平均分子量(Mw)が400ないし1,000であり、軟化点が90℃ないし120℃であり、160℃で測定された粘度が、500ないし1,000cpsであり、ガラス転移温度が40℃ないし70℃でありうる。
【0037】
一具現例によれば、前記ベース樹脂は、C単量体、C混合留分、C単量体、C混合留分、環状ジオレフィン単量体及び線状オレフィン単量体のうちから選択された1つ以上が重合された重合体を含む、石油樹脂でありうる。
【0038】
一具現例によれば、前記ベース樹脂は、C単量体、C混合留分、C単量体、C混合留分、環状ジオレフィン単量体及び線状オレフィン単量体のうちから選択された2種の共重合体を含む石油樹脂でありうる。例えば、前記ベース樹脂は、C混合留分と環状ジオレフィンとの共重合体を含むのでありうる。
【0039】
一具現例によれば、前記ベース樹脂は、C・ジシクロペンタジエン(DCPD)共重合体を含むものでありうる。例えば、前記石油樹脂は、C・ジシクロペンタジエン(DCPD)共重合体樹脂でありうる。
【0040】
一具現例によれば、前記ベース樹脂は、C単量体、C混合留分、C単量体、C混合留分、環状ジオレフィン単量体及び線状オレフィン単量体のうちから選択された2種の共重合体の水素化によって得られた水添石油樹脂でありうる。例えば、前記ベース樹脂は、C混合留分と環状ジオレフィンとの共重合体のエチレン官能基が水素化された水添C・環状ジオレフィン系樹脂を含むのでありうる。
【0041】
一具現例によれば、前記ベース樹脂は、水添C・ジシクロペンタジエン(DCPD)共重合体を含むのでありうる。例えば、前記ベース樹脂は、水添C・ジシクロペンタジエン(DCPD)共重合体樹脂でありうる。
【0042】
一具現例によれば、前記分子量調節剤は、連鎖移動剤(chain transfer agent)であり、チオール類(thiols)、または四塩化炭素といったハロカーボン類(halocarbons)などを挙げることができる。
【0043】
一具現例によれば、前記分子量調節剤は、チオール類、すなわち、1つ以上のチオール基を含む有機メルカプタン系分子量調節剤を含むのでありうる。例えば、前記有機メルカプタン系分子量調節剤は、脂肪族メルカプタン類化合物、環状脂肪族メルカプタン類化合物、芳香族メルカプタン類化合物、またはそれらの組み合わせを含む。
【0044】
一具現例によれば、前記有機メルカプタン系分子量調節剤に含まれたチオール基の個数は、特別に限定されるものではないが、1分子当たり、1個ないし4個のチオール基を含みうるのであり、1チオール基当たり、1個ないし20個の炭素、望ましくは、1個ないし15個の炭素を含む炭化水素基を含むのでありうる。
【0045】
また、炭化水素基及びチオール基以外に、他の置換基を追加して含みうるのであり、そのような置換基の例には、ヒドロキシ基、カルボン酸基、エーテル基、エステル基、スルフィド基、アミン基、アミド基などが含まれる。
【0046】
一具現例によれば、前記分子量調節剤は、チオール基を有する有機化合物であるならば、特別に限定されるものではなく、例えば、エチルメルカプタン、ブチルメルカプタン、ヘキシルメルカプタンまたはドデシルメルカプタンといったアルキルメルカプタン類;フェニルメルカプタンまたはベンジルメルカプタンといったチオールフェノール類;2-メルカプトエタノール、チオールグリコール酸または3-メルカプトプロピオン酸といった、ヒドロキシ基含有またはカルボン酸基含有のメルカプタン類;あるいはペンタエリトリトールテトラキス(3-メルカプト)プロピオネートなどといった、機能基を2つ以上有するメルカプタン類;またはそれらの混合物を含むのでありうる。
【0047】
例えば、前記分子量調節剤は、メチルメルカプタン、エチルメルカプタン、ブチルメルカプタン、オクチルメルカプタン、ラウリルメルカプタン、メルカプトエタノール、メルカプトプロパノール、メルカプトブタノール、メルカプト酢酸、メルカプトプロピオン酸、ベンジルメルカプタン、フェニルメルカプタン、シクロヘキシルメルカプタン、1-チオグリセロール、2,2’-ジメルカプトジエチルエーテル、2,2’-ジメルカプトジプロピルエーテル、2,2’-ジメルカプトジイソプロピルエーテル、3,3’-ジメルカプトジプロピルエーテル、2,2’-ジメルカプトジエチルスルフィド、3,3’-ジメルカプトジプロピルスルフィド、ビス(β-メルカプトエトキシ)メタン、ビス(β-メルカプトエチルチオ)メタン、トリメチロールプロパントリチオグリコレート、ペンタエリトリトールテトラチオグリコレート、またはそれらの混合物を含みうるのであるが、それらに限定されるものではない。
【0048】
例えば、前記分子量調節剤には、エチルメルカプタン、ブチルメルカプタン、ヘキシルメルカプタン、ドデシルメルカプタン、フェニルメルカプタン、ベンジルメルカプタン;メルカプトエタノール、チオールグリコール酸、メルカプトプロピオン酸、ペンタエリトリトールテトラキス(3-メルカプト)プロピオネート、またはそれらの混合物を含むのでありうる。
【0049】
一具現例によれば、前記分子量調節剤は、下記化学式1のn-ドデシルメルカプタン、下記化学式2の2-メルカプトエタノール、またはそれらの混合物を使用することにより、分子量調節の効果を極大化させることができる。
【0050】
【化1】
【0051】
【化2】
【0052】
一具現例によれば、前記添加剤は、粘度調節剤をさらに含むのでありうる。
【0053】
一具現例によれば、前記粘度調節剤は、25℃において、粘度が20ないし500cpsである低粘度樹脂を含むのでありうる。前記粘度調節剤としては、前記粘度を満足する樹脂であるならば、特別な制限なしに使用されうる。
【0054】
例えば、前記低粘度樹脂は、水添ジシクロペンタジエン(DCPD)・C共重合体樹脂(hydrogenated DCPD-C9 copolymer resin)、水添ジシクロペンタジエン(DCPD)樹脂、及びそれらの混合物を含むのでありうる。
【0055】
ここで、水添ジシクロペンタジエン(DCPD)・C共重合体樹脂は、ジシクロペンタジエン(DCPD)の重合と水添とを介して得られる白色の熱可塑性樹脂を意味し、そのような水添ジシクロペンタジエン(DCPD)・C共重合体樹脂として、SUKOREZ(登録商標)樹脂といった市販樹脂を使用することもできる。
【0056】
一具現例によれば、前記粘度調節剤は、下記構造を有する水添ジシクロペンタジエン(DCPD)・C共重合体樹脂を含み、それにより、粘度調節及び耐空気透過度向上の効果を極大化させることができることになる。
【0057】
【化3】
【0058】
一具現例による改質された石油樹脂は、C単量体、C混合留分、C単量体、C混合留分、環状ジオレフィン単量体及び線状オレフィン単量体のうちの1つ以上が重合され、少なくとも一部が、水素化または非水素化された石油樹脂が、前記分子量調節剤でもって改質された形態の改質石油樹脂であるところ、前記石油樹脂について分子量調節剤でもって末端を改質することにより、ゴムとの相溶性及び配合性にすぐれるだけではなく、ポリマーの無定形領域に相溶されるようにして膜を形成することができ、加工性と耐空気透過度とをさらに向上させることができる。それと異なり、分子量調節剤でもって末端が改質されていない場合、非極性度が高いことにより、ゴムとの相溶性が低く、配合が良好になされないという問題点が生じうる。その結果、加工性、及び最終製品の性能が低下する。
【0059】
他の具現例による前記改質石油樹脂は、C混合留分由来の反復単位を少なくとも一つ含み、前記改質石油樹脂が、前記分子量調節剤でもって末端が改質されることにより、ゴムとの相溶性及び配合性がさらに改善され、加工性と耐空気透過度とがさらに向上されうる。
【0060】
一具現例による改質された石油樹脂は、後述するが、該改質石油樹脂は、付加重合(addition polymerization)反応または鎖重合(chain polymerization)反応による、前述のC単量体、C混合留分、C単量体、C混合留分、環状ジオレフィン単量体及び線状オレフィン単量体のうちの1つ以上が重合され、少なくとも一部が水素化または非水素化された石油樹脂についての両端のうちの少なくとも一末端に、前記分子量調節剤が結合されている構造を有する。
【0061】
前記改質された石油樹脂は、C混合留分由来の反復単位を少なくとも一つ含むのでありうる。
【0062】
一具現例によれば、前記改質された石油樹脂は、下記化学式4aのような反復単位が結合されている構造を有する。例えば、前記改質された石油樹脂は、C混合留分に含まれる、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、インデン、メチルインデン、ジシクロペンタジエン、及び、α-メチルスチレンやメチルインデン並びにこれら成分のアルキル化された誘導体単量体が重合する反応によって形成された下記のような構造を含むのでありうる。
【0063】
【化4a】
【0064】
前記化学式4aは、例示的に表現されたものに過ぎず、前記構造に追加して、表示されていない他の、C単量体、C単量体、環状ジオレフィン単量体及び線状オレフィン単量体が、反復単位として含まれることもありうる。
【0065】
例えば、前記改質された石油樹脂は、前記構造によって表現される重合体であり、前記重合体がランダム重合体を意味するが、それに限定されるものではなく、ブロック共重合体または交互(alternating)共重合体なども含まれる。
【0066】
別途に図示されていないが、前記改質された石油樹脂は、前記化学式4aで表された反復単位のうちの少なくとも一つが、水素化された構造を含むのでありうる。
【0067】
他の具現例において、前記改質された石油樹脂は、下記のような反復単位が結合されている構造を含むのでありうる。例えば、前記改質された石油樹脂の両端のうちの少なくとも一つが、二重結合を有する構造を有するのであり、両端のいずれにも二重結合を有する構造を、例示的に下記化学式4bに表した。
【0068】
【化4b】
【0069】
このように、少なくとも1つの末端に位置する二重結合と分子量調節剤とが結合され、分子量調節剤でもって改質された石油樹脂(例えば、C混合留分の重合体)を形成することになる。該分子量調節剤は、両端のいずれにも結合されるのであってもよく、例示的に表現された下記化学式4cのように、いずれか1つの末端だけに結合されるのであってもよい。
【0070】
別途に図示されていないが、前記改質された石油樹脂は、化学式4bまたは4cで表された反復単位のうちの少なくとも一つが水素化された構造を含むのでありうる。
【0071】
【化4c】
【0072】
一具現例によれば、前記改質された石油樹脂を含む添加剤は、数平均分子量(Mn)が200ないし500であり、このような範囲において、改質重合体は、原料ゴムとの相溶性及び加工性にすぐれるのでありうる。数平均分子量が200より小さければ、配合効率が低くなるという問題がありうるのであって、500より大きければ、配合加工性が低下されうる。
【0073】
一具現例によれば、前記改質石油樹脂を含む添加剤は、非極性によって加工性にすぐれるのであり、結晶化度が低く、ポリマーの無定形領域に相溶されて膜を形成することができることから、加工性と耐空気透過度とをさらに向上させることができる。また、前記添加剤は、60℃において、粘度が2,500ないし4,000cpsであり、ガラス転移温度が-25℃ないし-15℃である。
【0074】
前記添加剤の粘度は、2,700ないし3,800、または3,000ないし3,500でありうる。
【0075】
前記添加剤のガラス転移温度が-25℃よりも低ければ、耐空気透過度に問題がありうるのであり、-15℃よりも高ければ、低温耐久性に問題が引き起こされうる。
【0076】
一具現例によれば、前記添加剤は、芳香族性(aromaticity)が20%ないし60%でありうる。例えば、前記添加剤は、芳香族性が30%ないし50%、または35%ないし45%でありうる。芳香族性が20%未満である場合は、原料ゴムとの相溶性が低くなり、それによって製造されたガスバリアフィルムの耐空気透過度向上効果が微々たるものであり、60%を超える場合には、ガラス転移温度(Tg)の上昇により、工程性が低下しうる。
【0077】
一具現例によれば、前記添加剤は、改質された石油樹脂、及び粘度調節剤を含み、前記改質された石油樹脂、及び前記粘度調節剤を、それぞれ、80ないし98重量%と、2ないし20重量%とで含むのでありうる。
【0078】
前記粘度調節剤は、生成物である重合体の構造形成には加わらず、反応物と生成物との粘度を調節する役割を行うので、前記添加剤は、C単量体、C混合留分、C単量体、C混合留分、環状ジオレフィン単量体及び線状オレフィン単量体のうちの1つ以上、分子量調節剤、粘度調節剤を含む溶液に、重合触媒、または/及び熱を加えて重合反応を行うことで得られうるが、そのような重合反応生成物は、改質された石油樹脂と、粘度調節剤との混合物でありうる。
【0079】
一具現例によれば、前記樹脂組成物は、前記ベース樹脂と添加剤とが適切な比率で配合されることにより、原料ゴムとの相溶性にすぐれ、耐空気透過性能が向上されうる。
【0080】
前記樹脂組成物は、数平均分子量(Mn)が100ないし550であり、ガラス転移温度が0℃ないし60℃であり、軟化点が50℃ないし90℃であり、芳香族性が5ないし35%である。
【0081】
例えば、前記樹脂組成物の数平均分子量(Mn)は、150ないし500、200ないし450、250ないし400、または300ないし350でありうる。
【0082】
例えば、前記ガラス転移温度は、5℃ないし65℃、10℃ないし60℃、15℃ないし55℃、20℃ないし50℃、25℃ないし45℃、または30℃ないし40℃でありうる。
【0083】
例えば、前記軟化点は、55℃ないし85℃でありうる。
【0084】
例えば、前記芳香族性は、10%ないし30%でありうる。
【0085】
前記樹脂組成物が前述のような物性を満足させることにより、ゴムとの相溶性が向上され、優れた耐空気透過性能を有する。
【0086】
単量体、C混合留分、C単量体、C混合留分、環状ジオレフィン単量体及び線状オレフィン単量体は、前述したところを参照するのであり、分子量調節剤、粘度調節剤などのさまざまな具現例は、前述の通りである。
【0087】
[樹脂組成物の製造方法]
一態様による前記樹脂組成物の製造方法は、少なくとも一部が、水素化または非水素化された石油樹脂を含むベース樹脂と、少なくとも一部が、水素化または非水素化された石油樹脂の両端のうち少なくとも一末端に、分子量調節剤が結合された構造を有する改質された石油樹脂を含む添加剤とを、100℃ないし180℃温度でブレンディングし、半固形状の樹脂を得る段階を含む。ここで、該半固形状は、固体と液体との中間状態の物質を意味する。
【0088】
一具現例によれば、前記ベース樹脂の含量と、前記添加剤の含量は、12:1ないし1:12の重量比を有しうる。例えば、前記樹脂組成物において、前記ベース樹脂と前記添加剤との重量比は、11:1ないし1:1、10:1ないし1:1、または9:1ないし1:1でありうる。
【0089】
一具現例によれば、前記ベース樹脂の含量が、前記添加剤の含量よりも多い。例えば、前記ベース樹脂の含量と、前記添加剤の含量とは、9:1ないし5:5の重量比を有しうる。
【0090】
前記ベース樹脂と前記添加剤との含量比が前述の範囲を有する場合、タイヤインナーライナ用原料ゴムとの相溶性、及び工程性が向上され、耐空気透過度が向上されたタイヤインナーライナの製造が可能である。
【0091】
一具現例によれば、前記添加剤は、粘度調節剤をさらに含みうるのであり、前記粘度調節剤に係わる内容は、前述のところを参照する。
【0092】
一具現例によれば、前記添加剤は、C単量体、C混合留分、C単量体、C混合留分、環状ジオレフィン単量体及び線状オレフィン単量体のうちの1つ以上、分子量調節剤、及び粘度調節剤を含む溶液に、重合触媒または/及び熱を付加して重合反応を遂行することで得られうる。
【0093】
一具現例によれば、前記重合触媒は、ルイス酸触媒、ハロゲン化水素酸(halohydric acid)、AlCl、BF、及びそれらの混合物のうちから選択されうる。
【0094】
例えば、前記重合触媒は、AlCl、BF、SnCl、TiCl、AgClO、I、及びこれらの混合物のうちから選択されうる。
【0095】
一具現例によれば、前記熱の付加は、約230ないし約280℃にて行われうる。
【0096】
一具現例によれば、前記添加剤の重合反応は、約1時間ないし約3時間にわたって、5ないし10barの圧力下にて遂行されうる。
【0097】
[ゴム組成物]
一態様によれば、原料ゴムと、前述の樹脂組成物と、を含み、前記樹脂組成物が、原料ゴム100重量部を基準に、1ないし50重量部で含まれるゴム組成物が提供される。
【0098】
前記樹脂組成物の含量が1重量部未満であるならば、耐空気透過度の向上を期待し難く、50重量部を超えれば、原料ゴムの配合の際、分散性の低下によるゴム配合物の物性低下が引き起こされる。
【0099】
一具現例によれば、前記ゴム組成物は、原料ゴム及び前述の樹脂組成物の他に、均質剤、補強剤、加硫助剤、硫黄及び加硫促進剤をさらに含むのでありうる。
【0100】
一具現例によれば、前記ゴム組成物は、原料ゴム100重量部を基準に、均質剤1ないし8重量部、補強剤20ないし80重量部、加硫助剤0.1ないし10重量部を含むのでありうる。
【0101】
一具現例によれば、前記ゴム組成物は、原料ゴム100重量部を基準に、硫黄0.1ないし2重量部、加硫促進剤0.5ないし5重量部をさらに含むのでありうる。
【0102】
以下、前記樹脂と共にゴム組成物を構成する成分について、詳細に説明すれば、以下の通りである。
【0103】
一具現例によれば、前記原料ゴムは、オレフィン性二重結合(炭素・炭素二重結合)を有するものであるならば、特別に制限されるところはなく、天然ゴム、合成ゴム、またはこれらを混合して使用されうる。
【0104】
一具現例によれば、前記原料ゴムは、天然ゴム(NR)、ブタジエンゴム、ニトリルゴム、シリコンゴム、イソプレンゴム、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)、イソプレン・ブタジエンゴム、スチレン・イソプレン・ブタジエンゴム、アクリロニトリル・ブタジエンゴム(NBR)、エチレン・プロピレン・ジエンゴム、ハロゲン化ブチルゴム、ハロゲン化イソプレンゴム、ハロゲン化イソブチレン共重合体、クロロプレンゴム、ブチルゴム及びハロゲン化イソブチレン-p-メチルスチレンゴムよりなる群のうちから選択される1種以上を含むのでありうる。
【0105】
例えば、前記原料ゴムは、天然ゴムと合成ゴムとの混合物を含むのでありうる。例えば、前記原料ゴムは、ハロゲン化ブチルゴム(例:クロロ化ブチルゴム)と天然ゴムとの混合物でありうる。
【0106】
一具現例によれば、ゴム組成物は、均質剤を含むのでありうる。前記均質剤としては、40MS(Strcucktol社製)を使用することができるのであり、前記均質剤を添加することにより、良好に混ざらないブチルゴムと天然ゴムとの混練性を改善させる効果を得ることができる。
【0107】
一具現例によれば、ゴム組成物は、補強剤を含むのでありうる。例えば、前記補強剤は、カーボンブラックを含むのでありうる。前記カーボンブラックは、高い比表面積に起因し、ゴム組成物の加工性を向上させ、最終ゴム組成物から製造されたフィルムは、耐磨耗性の向上、回転抵抗特性の向上、紫外線による亀裂または劣化の防止などの有利な効果を有する。
【0108】
前記カーボンブラックの種類は、特別に限定されるものではなく、タイヤ分野で一般的に使用されるものであるならば、いずれでも使用が可能である。例えば、前記カーボンブラックとしては、ファーネスブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、チャネルブラック、グラファイトなどのカーボンブラックを使用することができる。
【0109】
また、カーボンブラックの粒子直径、細孔容積、比表面積などの物理的特性についても、特別に限定されるものではなく、従来、ゴム工業で使用されている各種のカーボンブラック、例えば、SAF、ISAF、HAF、FEF、GPF、SRF(いずれも、米国ASTM規格D-1765-82aによって分類されたカーボンブラックの略称)などを適切に使用することができる。
【0110】
このようなカーボンブラックは、原料ゴム100重量部につき、20ないし80重量部で含まれることが望ましい。前記カーボンブラックは、補強性充填剤として、ゴム配合に必須な要素であり、もしその含量が、前記範囲未満である場合には、補強の効果が低下することになり、それと反対に前記範囲を超える場合には、分散に困難が伴う。
【0111】
一具現例によれば、前記補強剤として、前記カーボンブラック以外に、シリカ、クレイ、滑石などの鉱物の粉末類;炭酸マグネシウム、炭酸カルシウムなどの炭酸塩類;水酸化アルミニウムなどのアルミナ水和物などを使用することができる。
【0112】
一具現例によれば、前記ゴム組成物は、硫黄を含むのでありうる。前記硫黄としては、加硫工程を進めることができるものであるならば、特別な制限なしに使用することができる。そのような硫黄の含量は、原料ゴム100重量部につき、0.1ないし2重量部で使用することにより、最終ゴム組成物から製造されたフィルムの耐空気透過度が向上されうる。
【0113】
一具現例によれば、前記ゴム組成物は、加硫促進剤を含むのでありうる。ここで、「加硫」とは、硫黄原子を少なくとも1個介在させる架橋を示す。前記加硫促進剤としては、例えば、テトラメチルチウラムモノスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィドなどのチウラム系促進剤;N-t-ブチルベンゾチアゾール-2-スルフェンアミド(TBBS)、2-メルカプトベンゾチアゾール、ジベンゾチアゾールジスルフィドなどのチアゾール系促進剤;N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアジルスルフェンアミド、N-オキシジエチレン-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミドなどのスルフェンアミド系促進剤;ジフェニルグアニジン(DPG)、ジオルトトリルグアニジンなどのグアニジン系促進剤;n-ブチルアルデヒド・アニリン縮合物、ブチルアルデヒド・モノブチルアミン縮合物などのアルデヒド・アミン系促進剤;ヘキサメチレンテトラミンなどのアルデヒド・アンモニア系促進剤;チオカルバニリドなどのチオ尿素系促進剤などを挙げることができる。それら加硫促進剤を配合する場合には、1種類を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。前記加硫促進剤は、ジベンゾチアゾールジスルフィドでありうる。
【0114】
そのような加硫促進剤の含量は、原料ゴム100重量部につき、0.5ないし5重量部で使用することにより、最終ゴム組成物から製造されたフィルムの耐空気透過度が向上されうる。
【0115】
一具現例によれば、前記ゴム組成物は、加硫助剤を含むのでありうる。前述のように、「加硫」とは、硫黄原子を少なくとも1個介在させる架橋を示す。
【0116】
例えば、前記加硫助剤としては、酸化亜鉛(亜鉛華)、酸化マグネシウムなどの金属酸化物;水酸化カリウムなどの金属水酸化物;炭酸亜鉛、塩基性炭酸亜鉛などの金属炭酸塩;ステアリン酸、オレイン酸などの脂肪酸;ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウムなどの脂肪族金属塩;ジ(n-ブチル)アミン、ジシクロヘキシルアミンなどのアミン類;エチレンジメタクリレート、ジアリルフタレート、N,N-m-フェニレンジマレイミド、トリアリルイソシアヌレート、トリメチロールプロパントリメタクリレートなどを挙げることができる。
【0117】
それら加硫助剤を配合する場合には、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。そのような加硫助剤の含量は、原料ゴム100重量部につき、0.1ないし10重量部で使用することにより、最終ゴム組成物から製造したフィルムの耐空気透過度が向上されうる。
【0118】
一具現例によれば、前記ゴム組成物は、また、ゴム工業の分野で使用される各種添加剤、例えば、老化防止剤、加硫遅延剤、釈解剤、可塑剤などを、1種または2種以上混合し、必要によってさらに含むのでありうる。これら添加剤の配合量は、原料ゴム100重量部につき、0.1ないし10重量部であることが望ましい。
【0119】
前述のような組成を含む組成物は、公知の方法を利用し、ガスバリアフィルムに製造される。例えば、前記ガスバリアフィルムは、タイヤに、例えば、インナーライナとして適用可能である。
【0120】
一具現例によれば、前記ゴム組成物は、前述の各成分を、例えば、プラストミル(plastomill)、バンバリーミキサ、ロール、インターナルミキサなどの混練機を利用して混練することによって調製することができる。
【0121】
一具現例によれば、前述の各成分において、硫黄及び加硫促進剤以外の成分をまず混練し、その後、得られた混練物に、硫黄及び加硫促進剤を添加し、さらに混練することによって調製することができる。
【0122】
前記方法によって製造されたゴム組成物は、ガスバリアフィルムを構成する材料として使用することができる。そのように製造されたガスバリアフィルムは、機械的物性(硬度、引っ張り強度、モジュラスなど)にすぐれる。特に、耐空気透過度にすぐれ、タイヤインナーライナ用フィルムへの適用が可能である。
【0123】
一具現例によって得られたゴム組成物を、ゴム試片に製造した後、KS M ISO 2556の方法によりガス透過度を測定した結果、ガス透過度が150cm/(m・day・atm)以下でありうる。例えば、前記ガス透過度は、145cm/(m・day・atm)以下でありうる。また、前記ゴム試片は、ガラス転移温度(Tg)が-16℃以下でありうる。前記ゴム試片は、ガラス転移温度が-16℃以下であることにより、加工性が向上され、製造コストが低減され、最終生成物の物性が向上されるという利点を有する。
【0124】
前記ゴム試片製造方法は、前記ゴム組成物を使用し、当業界で一般的に使用する方法によって製造することができる。例えば、前記ゴム組成物について、ホットプレスで圧縮成形方法により、試片は、サイズ12cmx12cm(横x縦)、厚み0.5mm±0.2mmに作製した後、25℃ 60RH%の雰囲気下で、ガス透過度を測定することができる。
【0125】
前記樹脂組成物は、既存のタイヤを形成するゴム組成物の添加剤として使用されうるのであり、例えば、タイヤインナーライナの製造過程にて、原料の混和性改善のために添加されるプロセスオイルを代替する樹脂として含まれる。
【0126】
本発明の一態様によるタイヤインナーライナゴム組成物は、プロセスオイルの代わりに、本発明の一具現例による樹脂組成物を含むことにより、既存のプロセスオイルを含む場合に比べ、耐空気透過度及び加工性が向上される。
【0127】
例えば、既存に知られたプロセスオイルは、石油系オイルとして、パラフィン系オイル、ナフテン系オイル、芳香族系オイル、及びそれらの組み合わせを含む。
【0128】
[タイヤ]
図1は、タイヤの構成を概略的に示す図面である。
【0129】
図1を参照すれば、前記タイヤは、トレッド部1、ショルダ部2、サイドウォール部3、ビード部4、ベルト部5、インナーライナ部6、カーカス部7及びキャッププライ部8を含む。
【0130】
前記トレッド部は、路面と直接接触する部分であり、キャッププライの外側に位置する、耐磨耗性にすぐれるゴムによって形成される。また、運送装置におけるタイヤの路面に対するウェットグリップ力及びドライグリップ力を向上させる役割を行う。
【0131】
前記ショルダ部は、前記トレッドと前記サイドウォール部との間にて、前記トレッドの側方に位置し、前記サイドウォール部とトレッドとを連結する役割を行う。
【0132】
前記サイドウォール部は、前記トレッドと前記ビード部との間に位置し、タイヤの側面部分をカバーする。前記サイドウォール部は、カーカス部をカバーすることにより、外部の刺激から該カーカス部を保護し、運送装置の運行時にタイヤにて生じる、遠心力によるタイヤ外形の変形を抑制することにより、該運送装置の安定した運行を保証する。
【0133】
前記ビード部は、カーカス部の末端部を巻き付ける1つまたは複数の鋼鉄ワイヤ束が撚られた状態で存在する領域であり、前記鋼鉄ワイヤは、ゴム膜によって完全にカバーされている。また、前記ビード部は、タイヤをホイールリムに装着させて固定する役割を行う。特に、空気が漏れ出す際におけるホイールリムからのタイヤの分離を防止する役割を行う。
【0134】
前記ベルト部は、前記トレッド部と前記カーカス部との中間に位置したコーティング層である。該ベルト部は、外部からの衝撃や、外部条件によるカーカス部などの内部構造物の損傷を防止する役割を行い、前記トレッド部と路面との接触面積を向上させる役割を行う。
【0135】
前記インナーライナ部は、タイヤの最内側に位置し、内部の空気が外部に流出することを防止し、タイヤ内の空気圧を一定に維持する役割を行う。
【0136】
前記カーカス部は、高強度の合成纎維によって形成され、タイヤの骨格を形成して維持する役割を行う。該カーカス部は、運送装備の運行中に伝達される、荷重及び衝撃に耐えて空気圧を維持する役割を行う。
【0137】
前記キャッププライ部は、前記トレッド部の下方に位置する保護層であり、トレッド部から伝達される熱及び外部の衝撃から、内部の構成要素を保護する役割を行う。
【0138】
[トレッド部]
前記トレッド部は、タイヤの路面に対するグリップ力を向上させる機能を有する。前記グリップ力は、タイヤと路面との付着力を意味し、該グリップ力が向上されれば、運送装備のコーナリング時または停車時の制動性が向上される。
【0139】
前記トレッド部は、原料ゴム及び樹脂を含むゴム組成物を利用して形成されうる。ここで、該トレッド部は、単層のゴム組成物、または複数のゴム組成物の積層体を含むのでありうる。
【0140】
前記原料ゴムは、天然ゴム、合成ゴム、またはそれらの組み合わせを含むものでありうる。
【0141】
例えば、該天然ゴムは、一般的な天然ゴム、または変性天然ゴムでありうるのであり、該合成ゴムは、ブタジエンゴム、ニトリルゴム、シリコンゴム、イソプレンゴム、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)、イソプレン・ブタジエンゴム、スチレン・イソプレン・ブタジエンゴム、アクリロニトリル・ブタジエンゴム(NBR)、エチレン・プロピレン・ジエンゴム、ハロゲン化ブチルゴム、ハロゲン化イソプレンゴム、ハロゲン化イソブチレン共重合体、クロロプレンゴム、ブチルゴム、ハロゲン化イソブチレン-p-メチルスチレンゴム、またはそれらの混合物でありうる。
【0142】
例えば、前記樹脂は、前述の樹脂組成物、炭化水素樹脂、アルキルフェノール樹脂、フェノール/アセチレン樹脂、テルペンフェノール樹脂、ロジン由来樹脂、及びそれらの混合物のうちから選択されうる。
【0143】
前記トレッド部は、ゴム組成物以外に、タイヤコードをさらに含むのでありうる。
【0144】
前記タイヤコードは、ゴムとの接着性、タイヤの剛性及び耐疲労性、耐熱性及び寸法安定性を考慮し、当業者が適切に選択することができる。
【0145】
前記タイヤコードとしては、例えば、レーヨン、ナイロン、ポリエステル、アラミド及びスチールなどがある。前記タイヤコードは、必要により、導電材が混入されうる。
【0146】
前記トレッド用ゴム組成物は、原料ゴム及び樹脂以外に、均質剤、補強剤、加硫助剤、硫黄及び加硫促進剤をさらに含むのでありうる。前述の均質剤、補強剤、加硫助剤、硫黄及び加硫促進剤は、本明細書の記載を参照する。
【0147】
また、必要により、植物性オイル、老化防止剤などの各種添加剤がさらに添加されうる。
【0148】
前記トレッド用ゴム組成物に含まれる成分の含量は、所望する物性により、当業者が適切に選択して実施することができる。
【0149】
[ショルダ部]
ショルダ部は、タイヤのトレッド部から、タイヤの側面に位置するサイドウォール部を連結する、トレッド部とサイドウォール部との間に配置される。前記ショルダ部は、タイヤの構成要素のうちで、厚みが最も厚いために、走行中に内部で生じる熱が外部に排出されやすいように設計される。
【0150】
例えば、前記ショルダ部は、ラウンドショルダー構造またはスクエアショルダー構造を有しうる。
【0151】
ショルダ部は、トレッド用ゴム組成物を利用して形成されうるのであり、所望する物性に応じて、構成成分の組成比を当業者が適切に選択することができる。
【0152】
[サイドウォール部]
サイドウォール部は、ショルダからビードの側へと延びるタイヤの側面部分を意味し、タイヤ内部のカーカス部を保護する機能を遂行する。特に、該サイドウォール部は、タイヤの上下運動の際に伝達される衝撃を吸収するだけではなく、運送装備の走行中、反復的なタイヤの膨脹及び収縮を受容する機能を有する。
【0153】
サイドウォール部は、原料ゴム及びタイヤコードを含むゴム組成物によって形成されうる。
【0154】
例えば、前記原料ゴムは、天然ゴム、合成ゴム、変性天然ゴム、またはそれらの組み合わせを含むのでありうる。
【0155】
前記天然ゴム及び前記合成ゴムは、トレッド部で述べたところを参照する。
【0156】
前記変性天然ゴムは、一般的な天然ゴムの相溶性、物性改善のために、天然ゴムの変性段階または精製段階を遂行して得られるものであり、例えば、エポキシ化天然ゴム、脱タンパク天然ゴム、水素化天然ゴムなどがある。
【0157】
前記タイヤコードは、トレッド部にて述べたところを参照するが、耐衝撃性向上の側面から、アラミド纎維を使用することができる。
【0158】
サイドウォール部の製造に使用されるゴム組成物は、前述の原料ゴム及びタイヤコード以外に、必要により、均質剤、補強剤、加硫助剤、硫黄、加硫促進剤、植物性オイル、老化防止剤などの各種添加剤がさらに添加されうる。
【0159】
サイドウォール部の製造に使用されるゴム組成物成分の含量は、所望する物性により、当業者が適切に選択して実施することができる。
【0160】
[ビード部]
前記ビード部は、タイヤにおいて、ホイールと突き当てられる部分であり、空気を充填した際、タイヤをホイールに固定させ、空気気密性を維持する機能を遂行する。
【0161】
前記ビード部は、ゴムでコーティングされた1つ以上の鋼鉄ワイヤを含み、前述の1つ以上の鋼鉄ワイヤが、相互間にツイストされた形態で存在しうる。
【0162】
[ベルト部]
ベルト部は、トレッド部の下方に位置し、該トレッド部の接地面積を維持し、該トレッド部から伝達される外部の衝撃を緩和させるだけではなく、タイヤに加えられる荷重を支持する役割を行う。
【0163】
ベルト部は、原料ゴム及びタイヤコードを含むゴム組成物でもって形成されうる。ここで、該タイヤコードは、タイヤの円周方向に作用する外力に耐えるために、タイヤ円周方向に配置されうる。
【0164】
例えば、前記原料ゴムは、天然ゴム、合成ゴム、変性天然ゴム、またはそれらの組み合わせを含むのでありうる。
【0165】
前記天然ゴム及び前記合成ゴムは、トレッド部で述べたところを参照し、該変性天然ゴムは、サイドウォール部で述べたところを参照する。
【0166】
前記タイヤコードは、トレッド部で述べたところを参照する。
【0167】
前記ベルト部用ゴム組成物は、タイヤコードとの堅固な接着のために、接着剤をさらに含むのでありうる。該接着剤としては、例えば、ラテックス、ロジン系樹脂、テルペン・フェノール樹脂、脂肪族系石油樹脂、芳香族系石油樹脂及びジシクロペンタジエン系石油樹脂などが使用されうる。
【0168】
前記ベルト部用ゴム組成物の成分組成比は、所望する物性により、当業者が適切に選択して実施することができる。
【0169】
[インナーライナ部]
インナーライナ部は、前述のガスバリアフィルムを含むのでありうる。または、前記インナーライナ部には、前述のガスバリアフィルム、及び原料ゴムとポリアミド系樹脂との混合物を含むゴム組成物によって製造されたポリアミド系ガスバリアフィルムが共に使用されうる。
【0170】
例えば、前記インナーライナ部は、本発明の一具現例によるガスバリアフィルムの単一層の構造によって形成されるか、あるいは本発明の一具現例によるガスバリアフィルム層及びポリアミド系ガスバリアフィルム層を含む多重層の構造を有しうる。
【0171】
例えば、そのようなポリアミド系ガスバリアフィルムは、ポリアミド単位体とポリエーテル単位体とを含む共重合体、またはポリアミド単位体を含む重合体と、ポリエーテル単位体を含む重合体との混合物を含むのでありうる。
【0172】
ポリアミド系ガスバリアフィルム内に含まれたポリアミド単位体の比率は、ポリエーテル単位体の比率よりも高いのでありうる。例えば、該ガスバリアフィルム内に含まれたポリアミド単位体とポリエーテル単位体との重量比は、9.5:0.5ないし5.5:4.5でありうる。
【0173】
前記ポリアミド単位体は、例えば、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン46、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン610、ナイロン612、ナイロン6/66の共重合体、ナイロン6/66/610共重合体、ナイロンMXD6、ナイロン6T、ナイロン6/6T共重合体、ナイロン66/PP共重合体、ナイロン66/PPS共重合体、6-ナイロンのメトキシメチル化物、6-610-ナイロンのメトキシメチル化物、及び612-ナイロンのメトキシメチル化物よりなる群のうちから選択された1種のポリアミド系樹脂に含まれる主要反復単位でありうる。
【0174】
前記ポリエーテル系単位体は、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリオキシエチレンジアミン、ポリオキシプロピレンジアミン、ポリオキシテトラメチレンジアミン、及びそれらの共重合体よりなる群のうちから選択された1種のポリエーテル系樹脂に含まれる主要反復単位でありうる。
【0175】
インナーライナ部は、隣接構成要素との堅固な結合を維持するために、その表面にさらなる接着フィルムを含むのでありうる。前記接着フィルムは、単一層または多重層でありうる。前記接着フィルムが多重層である場合、該多重層のうちのいずれか1層は、酸素遮断膜を含む離型フィルムでありうる。前記酸素遮断膜は、本発明の一具現例によるガスバリアフィルムを含むのでありうる。
【0176】
インナーライナ部の厚みは、特別に限定されるものではなく、運送装備の燃費、耐空気透過度を考慮し、当業者が適切に選択して実施することができる。
【0177】
[カーカス部]
カーカス部は、インナーライナ部の上方に位置し、タイヤの骨格を形成する部分であり、タイヤの外形維持、内部空気圧の維持、外部の衝撃に対する緩衝の作用を行う機能を有する。
【0178】
該カーカス部は、原料ゴム及びタイヤコード材料を含むゴム組成物によってなり、タイヤの半径方向に作用する力に耐えるように、タイヤコード材料が半径方向に配置されうる。
【0179】
例えば、前記原料ゴムは、天然ゴム、合成ゴム、変性天然ゴム、またはそれらの組み合わせを含むのでありうる。
【0180】
前記天然ゴム及び前記合成ゴムは、トレッド部で述べたところを参照し、該変性天然ゴムは、サイドウォール部で述べたところを参照する。
【0181】
前記タイヤコードは、トレッド部で述べたところを参照する。
【0182】
前記カーカス用ゴム組成物は、タイヤコードとの堅固な接着のために、前述の接着剤をさらに含むのでありうる。
【0183】
前記カーカス用ゴム組成物の成分組成比は、所望する物性により、当業者が適切に選択して実施することができる。
【0184】
[キャッププライ部]
キャッププライ部は、ベルト部とトレッド部との間に配置され、ベルト部を固定する役割を行う。
【0185】
キャッププライ部は、レーヨン、ナイロン、ポリエステル、アラミドまたはスチールから形成されるのでありうる。例えば、該キャッププライ部は、ナイロンフィルムによって構成されうる。
【0186】
キャッププライ部は、必要により、接着性を向上させるために、接着剤をさらに含むのでありうる。
【0187】
接着剤としては、例えば、ラテックス、ロジン系樹脂、テルペン・フェノール樹脂、脂肪族系石油樹脂、芳香族系石油樹脂及びジシクロペンタジエン系石油樹脂などが使用されうる。
【0188】
それ以外に、キャッププライ部は、必要により、耐熱剤、酸化防止剤、安定剤、補強剤、消泡剤及びフィラーのうち1種以上をさらに含むのでありうる。
【0189】
前記キャッププライ部材料成分の組成比は、所望する物性により、当業者が適切に選択して実施することができる。
【0190】
以下において、実施例などを通じて、本発明についてさらに詳細に説明する。ただし、以下において、実施例などにより、本発明の範囲と内容とが縮小されたり制限されたりして解釈され得ない。また、以下の実施例を含む本発明の開示内容に基づくならば、具体的に実験結果が提示されていない本発明を、当業者が容易に実施することができるということは明白なことであり、そのような変形及び修正は、特許請求の範囲に属するということは、言うまでもない。
【0191】
また、以下で提示される実験結果は、前述の実施例、及び比較例の代表的な実験結果のみを記載したものであり、以下で明示上に提示されていない本発明のさまざまな具現例のそれぞれの効果は、当該部分にて具体的に記載する。
【実施例
【0192】
(樹脂組成物の製造)
【0193】
<製造例1>
精製C留分(YCNCC社製)93重量%と、粘度調節剤LP200(コーロンインダストリー社製)7重量%とによって構成された組成物100重量部を基準に、分子量調節剤n-ドデシルメルカプタン2.5重量部を追加した後、260℃及び高圧(5ないし10bar)で、重合反応を2時間進めた。重合触媒であるBFを投入する場合には、180℃及び高圧(5ないし10bar)で、2時間重合反応を行った。重合が完了した重合物は、脱気過程を経て、未反応反応物を除去し、添加剤用途の樹脂組成物を製造した。
【0194】
<製造例2>
製造例1で得られた添加剤と、C/ジシクロペンタジエン(DCPD)共重合樹脂(SU-400またはSU-490)とを、3:7の重量比で、高温(100℃ないし180℃)の温度にてブレンディングして、樹脂組成物を製造した。
【0195】
<製造例3>
製造例1で得られた添加剤と、C/ジシクロペンタジエン(DCPD)共重合樹脂(SU-400またはSU-490)とを、1:9の重量比で、高温(100℃ないし180℃)の温度にてブレンディングして、樹脂組成物を製造した。
【0196】
<試験例1:樹脂組成物の評価>
製造例1ないし3で製造された樹脂組成物に係わるガラス転移温度、軟化点、粘度、数平均分子量、芳香族性を測定し、下記表1に示した。
【0197】
前記ガラス転移温度は、示差走査熱量測定(DSC)分析を通じて確認した。
【0198】
前記軟化点は、Ring and ball softening method(環球式軟化法;ASTM E28)を利用して測定した。環状のフレームに樹脂を溶かして投入し、グリセリンが入れられたビーカーに据え置いた後、樹脂が入れられたリングにボールを載せておき、温度を、一分当たり2.5℃ずつ昇温させ、樹脂が溶けてボールが落ちる際の温度(軟化点)を測定した。
【0199】
前記粘度は、ブルックフィールド(Brookfield)粘度計を使用し(ASTM D3236)、スピンドル No.27(spindle#27番)を使用して測定した。
【0200】
前記数平均分子量は、ゲル透過クロマトグラフィ(モデルHP-1100(ヒューレットパッカード社製))により、ポリスチレン換算数平均分子量(Mn)を求めた。
【0201】
前記芳香族性は、核磁気共鳴(NMR)分析を介して確認した。
【0202】
【表1】
【0203】
(ゴム試片の製造)
<実施例1>
クロロ化ブチルゴム(HT-1066(エクソン化学社製))80重量部と、天然ゴム(NR(Sritrang社製))20重量部とによってなる原料ゴム100重量部、前記製造例2で製造された樹脂組成物10重量部、均質剤(40MS(Strucktol社製))4重量部、カーボンブラック(N-660(Pentacarbon社製))60重量部、酸化亜鉛(ZnO(Kemai Chem社製))3重量部、及びステアリン酸(Kemai Chem社製)2重量部をバンバリーミキサに入れ、150℃で混合させた後、一次配合ゴムを放出させた。次に、該一次配合ゴムに、硫黄(Miwon Chem社製)0.5重量部、加硫促進剤(DM(ジベンゾチアゾールジスルフィド)(Sunsine社製))1.2重量部をバンバリーミキサに入れ、100℃で加硫した後に放出することで、ゴム試片を製造した。
【0204】
<実施例2>
ゴム試片の製造時、製造例2で製造された樹脂組成物の代わりに、製造例3で製造された樹脂組成物10重量部を使用した点を除いては、実施例1と同一の方法で、ゴム試片を製造した。
【0205】
<比較例1>
ゴム試片の製造時、製造例2で製造された樹脂組成物の代わりに、製造例1で製造された添加剤10重量部を使用した点を除いては、実施例1と同一の方法で、ゴム試片を製造した。
【0206】
<比較例2>
ゴム試片の製造時、製造例2で製造された樹脂組成物の代わりに、プロセスオイル(TDAE(H&R社製))10重量部を使用した点を除いては、実施例1と同一の方法で、ゴム試片を製造した。
【0207】
<比較例3>
ゴム試片の製造時、製造例2で製造された樹脂組成物の代わりに、パラフィンオイル(MICHANG石油社製)10重量部を使用した点を除いては、実施例1と同一の方法で、ゴム試片を製造した。
【0208】
<比較例4>
ゴム試片の製造時、製造例2で製造された樹脂組成物の代わりに、ナフテンオイル(MICHANG石油社製)10重量部を使用した点を除いては、実施例1と同一の方法で、ゴム試片を製造した。
【0209】
<比較例5>
ゴム試片の製造時、製造例2で製造された樹脂組成物の代わりに、40MS(Strucktol社製)10重量部を使用した点を除いては、実施例1と同一の方法で、ゴム試片を製造した。
【0210】
<比較例6>
ゴム試片の製造時、製造例2で製造された樹脂組成物の代わりに、C/ジシクロペンタジエン(DCPD)共重合樹脂(SU-400(コーロン社製))10重量部を使用した点を除いては、実施例1と同一の方法で、ゴム試片を製造した。
【0211】
<試験例2:ゴム試片の物性評価>
前記実施例1,2、及び比較例1ないし6で製造されたゴム試片のそれぞれにつき、物性を測定し、その結果を下記表2に示した。
【0212】
【表2】
【0213】
ゴムレオメータで測定されるレオメータの結果は、工程への適用時、硬化速度、及びゴム組成物の挙動に関連するパラメータであり、タイヤ製造時の加工性との関連がある。ここで、その数値(Toq(Min)、Toq(Max))が非常に高いか、あるいは非常に低い場合、既存の工程への適用が容易ではなく、新たな工程設計が必要であることを意味する。前記表2で提示された前記実施例1のToq(Min)、Toq(Max)、Tc50(50%硬化に至る時間)、Tc90(90%硬化に至る時間)などの結果を、比較例1ないし4の結果と比較してみると、既存工程に容易に適用可能な仕様に該当するということが分かる。
【0214】
また、ムーニー粘度の結果及び機械的物性(モジュラス、引っ張り強度、伸率、硬度など)も、前記表2に示されているように、実施例1及び2の結果は、比較例2ないし5の結果と対等であるか、あるいはそれら以上であるということを示す。
【0215】
なお、ガス透過量及びTgの値は、それぞれ耐空気透過性及び工程性との関連がある値であり、ガス透過量は、低いほど、タイヤインナーライナとしての活用性が高いのであり、Tg値は、低いほど工程過程において有利である。
【0216】
これと関連して、実施例1及び2のガス透過量は、132cm/(m・day・atm)及び125cm/(m・day・atm)であり、比較例1ないし5のゴム試片に比べて顕著に向上されたガス透過量を示しているということが分かる。
【0217】
また、実施例1及び2は、比較例6に比べて低いTg値を有することにより、向上された工程性を有するということが分かる。
【0218】
そのような結果から、本発明によるタイヤインナーライナ用ゴム組成物は、タイヤの構成として要求される基本物性、すなわち、引っ張り強度、耐磨耗性、耐久性及び硬度などを満足するだけではなく、加工性を向上させると共に、耐空気透過度を顕著に向上させることが分かる。
図1